以下、添付図面を参照して、医用画像処理装置、X線診断装置及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、図1に示す医用画像処理システム1を例として説明する。例えば、医用画像処理システム1は、X線診断装置10と、医用画像処理装置30とを備える。また、X線診断装置10と医用画像処理装置30とは、ネットワークNWを介して相互に接続される。なお、図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。
X線診断装置10は、被検体P1について画像収集を実行する装置である。例えば、X線診断装置10は、被検体P1に対する血管内治療の開始に先立って、被検体P1から血管像を収集し、収集した血管像を医用画像処理装置30に送信する。また、例えば、X線診断装置10は、被検体P1に対する血管内治療が行なわれている間、被検体P1から経時的に2次元のX線画像を収集し、収集したX線画像を医用画像処理装置30に順次送信する。なお、X線診断装置10の構成については後述する。
医用画像処理装置30は、X線診断装置10によって収集された血管像及びX線画像を取得し、血管像及びX線画像を用いた各種の処理を実行する。例えば、医用画像処理装置30は、血管像に対して第1処理を行ない、第1処理の結果に基づいて、X線画像に対する第2処理を実行する。また、医用画像処理装置30は、第2処理を施した後のX線画像を表示させる。なお、医用画像処理装置30が行なう処理については後述する。例えば、医用画像処理装置30は、図1に示すように、入力インタフェース31と、ディスプレイ32と、メモリ33と、処理回路34とを有する。
入力インタフェース31は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路34に出力する。例えば、入力インタフェース31は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インタフェース31は、処理回路34と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース31は、モーションキャプチャによりユーザからの入力操作を受け付ける回路であっても構わない。一例を挙げると、入力インタフェース31は、トラッカーを介して取得した信号やユーザについて収集された画像を処理することにより、ユーザの体動や視線等を入力操作として受け付けることができる。また、入力インタフェース31は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用画像処理装置30本体とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を医用画像処理装置30本体へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース31の例に含まれる。
ディスプレイ32は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ32は、後述する処理回路34による処理後のX線画像を表示する。また、例えば、ディスプレイ32は、入力インタフェース31を介してユーザから各種の指示や設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。例えば、ディスプレイ32は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ32は、デスクトップ型でもよいし、医用画像処理装置30本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
なお、図1においては医用画像処理装置30がディスプレイ32を備えるものとして説明するが、医用画像処理装置30は、ディスプレイ32に代えて又は加えて、プロジェクタを備えてもよい。プロジェクタは、処理回路34による制御の下、スクリーンや壁、床、被検体P1の体表面等に対して投影を行なうことができる。一例を挙げると、プロジェクタは、プロジェクションマッピングによって、任意の平面や物体、空間等への投影を行なうこともできる。
メモリ33は、各種のデータを保存する。例えば、メモリ33は、後述する処理回路34による処理前後の血管像やX線画像を記憶する。また、メモリ33は、医用画像処理装置30に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。例えば、メモリ33は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。或いは、メモリ33は、医用画像処理装置30とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
処理回路34は、制御機能34a、取得機能34b、処理機能34c及び出力機能34dを実行することで、医用画像処理装置30全体の動作を制御する。ここで、取得機能34bは、取得部の一例である。また、処理機能34cは、処理部の一例である。また、出力機能34dは、出力部の一例である。
例えば、処理回路34は、制御機能34aに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、入力インタフェース31を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、取得機能34b、処理機能34c、出力機能34dといった各種の機能を制御する。
また、例えば、処理回路34は、取得機能34bに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、被検体P1の血管像及びX線画像を取得する。また、例えば、処理回路34は、処理機能34cに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、血管像に対する第1処理を実行し、第1処理の結果に基づいて、X線画像に対する第2処理を実行する。また、例えば、処理回路34は、出力機能34dに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、処理機能34cによる処理後のX線画像を出力する。なお、取得機能34b、処理機能34c及び出力機能34dによる処理の詳細については後述する。
図1に示す医用画像処理装置30においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ33へ記憶されている。処理回路34は、メモリ33からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路34は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
なお、図1においては単一の処理回路34にて、制御機能34a、取得機能34b、処理機能34c及び出力機能34dが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路34を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路34が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
また、処理回路34は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路34は、メモリ33から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、医用画像処理装置30とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図1に示す各機能を実現する。
次に、X線診断装置10について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置10の構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、X線診断装置10は、X線高電圧装置101と、X線管102と、X線絞り器103と、天板104と、Cアーム105と、X線検出器106と、入力インタフェース107と、ディスプレイ108と、メモリ109と、処理回路110とを備える。
X線高電圧装置101は、処理回路110による制御の下、X線管102に高電圧を供給する。例えば、X線高電圧装置101は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管102に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管102が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
X線管102は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管102は、X線高電圧装置101から供給される高電圧を用いて、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。
X線絞り器103は、X線管102により発生されたX線の照射範囲を絞り込むコリメータと、X線管102から曝射されたX線を調節するフィルタとを有する。
X線絞り器103におけるコリメータは、例えば、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。コリメータは、絞り羽根をスライドさせることで、X線管102が発生したX線を絞り込んで被検体P1に照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管102のX線照射口付近に設けられる。
X線絞り器103におけるフィルタは、被検体P1に対する被曝線量の低減とX線画像の画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、被検体P1に吸収されやすい軟線成分を低減したり、X線画像のコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタは、その材質や厚み、位置などによってX線の線量及び照射範囲を変化させ、X線管102から被検体P1へ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
例えば、X線絞り器103は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路110による制御の下、駆動機構を動作させることによりX線の照射を制御する。例えば、X線絞り器103は、処理回路110から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、コリメータの絞り羽根の開度を調整して、被検体P1に対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、X線絞り器103は、処理回路110から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、フィルタの位置を調整することで、被検体P1に対して照射されるX線の線量の分布を制御する。
天板104は、被検体P1を載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。なお、被検体P1は、X線診断装置10に含まれない。例えば、寝台は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路110による制御の下、駆動機構を動作させることにより、天板104の移動・傾斜を制御する。例えば、寝台は、処理回路110から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、天板104を移動させたり、傾斜させたりする。
Cアーム105は、X線管102及びX線絞り器103と、X線検出器106とを、被検体P1を挟んで対向するように保持する。例えば、Cアーム105は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路110による制御の下、駆動機構を動作させることにより、回転したり移動したりする。例えば、Cアーム105は、処理回路110から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、X線管102及びX線絞り器103と、X線検出器106とを被検体P1に対して回転・移動させ、X線の照射位置や照射角度を制御する。なお、図2では、X線診断装置10がシングルプレーンの場合を例に挙げて説明しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、バイプレーンの場合であってもよい。
X線検出器106は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器106は、X線管102から照射されて被検体P1を透過したX線を検出して、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路110へと出力する。なお、X線検出器106は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
入力インタフェース107は、上述した入力インタフェース31と同様にして構成することができる。例えば、入力インタフェース107は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路110に出力する。
ディスプレイ108は、上述したディスプレイ32と同様にして構成することができる。例えば、ディスプレイ108は、処理回路110による制御の下、被検体P1から収集された血管像やX線画像の表示を行なう。また、X線診断装置10は、ディスプレイ108に代えて又は加えて、プロジェクタを備えることとしてもよい。
メモリ109は、上述したメモリ33と同様にして構成することができる。例えば、メモリ109は、被検体P1から収集された血管像やX線画像の保存を行なったり、X線診断装置10に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶したりする。
処理回路110は、制御機能110a、収集機能110b及び出力機能110cを実行することで、X線診断装置10全体の動作を制御する。なお、収集機能110bは、収集部の一例である。また、出力機能110cは、出力部の一例である。
例えば、処理回路110は、制御機能110aに対応するプログラムをメモリ109から読み出して実行することにより、入力インタフェース107を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、収集機能110b、出力機能110cといった各種の機能を制御する。
また、例えば、処理回路110は、収集機能110bに対応するプログラムをメモリ109から読み出して実行することにより、被検体P1から血管像及びX線画像を収集する。また、例えば、処理回路110は、出力機能110cに対応するプログラムをメモリ109から読み出して実行することにより、被検体P1から収集された血管像及びX線画像を出力する。
例えば、収集機能110bは、被検体P1に対する血管内治療が実行されている間、X線画像を経時的に収集する。例えば、収集機能110bは、心臓PCI(Percutaneous Coronary Intervention:経皮的冠動脈形成術)が実行されている間、冠動脈を撮像範囲に含んだX線画像を経時的に収集する。なお、撮像範囲は、血管内治療を実行する医師等のユーザが設定してもよいし、患者情報等に基づいて収集機能110bが自動設定することとしても構わない。
具体的には、収集機能110bは、X線絞り器103の動作を制御し、コリメータが有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体P1に対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、収集機能110bは、X線絞り器103の動作を制御し、フィルタの位置を調整することで、X線の線量の分布を制御する。また、収集機能110bは、Cアーム105の動作を制御することで、Cアーム105を回転させたり、移動させたりする。また、例えば、収集機能110bは、寝台の動作を制御することで、天板104を移動させたり、傾斜させたりする。即ち、収集機能110bは、X線絞り器103やCアーム105、天板104といった機械系の動作を制御することで、収集されるX線画像の撮像範囲や撮像角度を制御する。
また、収集機能110bは、X線高電圧装置101を制御し、X線管102に供給する電圧を調整することで、被検体P1に対して照射されるX線量やオン/オフを制御する。また、収集機能110bは、X線検出器106から受信した検出信号に基づいてX線画像を生成する。ここで、収集機能110bは、生成したX線画像に対して各種画像処理を行なってもよい。例えば、収集機能110bは、生成したX線画像に対して、画像処理フィルタによるノイズ低減処理や、散乱線補正を実行することができる。また、出力機能110cは、収集されたX線画像を、医用画像処理装置30に対して順次送信する。
また、収集機能110bは、被検体P1に対する血管内治療の開始に先立って、被検体P1から血管像を収集する。ここで、収集機能110bは、治療中に収集されるX線画像の撮像範囲に応じて、血管像を収集する。例えば、心臓PCIが行なわれる場合には、冠動脈を撮像範囲に含んだX線画像の収集が予定されるため、収集機能110bは、冠動脈を撮像範囲に含んだ血管像を収集する。
具体的には、収集機能110bは、血管内に造影剤が注入された状態の被検体P1を撮像して、複数のX線画像を収集する。なお、血管内に造影剤が注入された状態で収集されたX線画像については、コントラスト画像とも記載する。ここで、造影剤の種類については特に限定されるものではなく、ヨードや硫酸バリウム等を主成分とする陽性造影剤であってもよいし、二酸化炭素等の気体造影剤であってもよい。また、造影剤の注入は医師等のユーザが手動で行なってもよいし、X線診断装置10に設けられたインジェクタが自動で行なってもよい。
例えば、収集機能110bは、被検体P1の血管内に造影剤が注入された後にX線を繰り返し照射することで、複数のコントラスト画像を収集する。また、収集機能110bは、被検体P1の血管内に造影剤が注入される前にX線を繰り返し照射することで、複数のマスク画像を収集する。そして、収集機能110bは、複数のマスク画像と複数のコントラスト画像との間で差分処理を行なうことにより、複数の血管像を生成する。或いは、収集機能110bは、マスク画像の収集を省略し、コントラスト画像の画素値について閾値処理を行なったり、コントラスト画像に対してセマンティックセグメンテーション処理を施したりすることで、コントラスト画像において造影血管を示す画素を抽出して、血管像を生成することとしてもよい。また、出力機能110cは、収集された血管像を、医用画像処理装置30に対して送信する。
図2に示すX線診断装置10においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ109へ記憶されている。処理回路110は、メモリ109からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路110は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
なお、図2においては単一の処理回路110にて、制御機能110a、収集機能110b及び出力機能110cが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路110を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路110が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
また、処理回路110は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路110は、メモリ109から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、X線診断装置10とネットワークNWを介して接続されたサーバ群を計算資源として利用することにより、図2に示す各機能を実現する。
以上、医用画像処理システム1の構成例について説明した。かかる構成の下、医用画像処理システム1における医用画像処理装置30は、処理回路34による処理によって、動きのある部位について収集されたX線画像の視認性を向上させる。
ここで、医用画像処理装置30によるX線画像の表示の一例について、図3A及び図3Bを用いて説明する。図3A及び図3Bは、第1の実施形態に係る表示例を示す図である。なお、図3A及び図3Bにおいては、被検体P1の冠動脈について収集されたX線画像を表示する場合について説明する。また、図3A及び図3Bにおいては、X線画像を血管像と合成して表示する場合について説明する。
まず、血管内治療の開始に先立って、血管像の収集が行われる。例えば、収集機能110bは、血管内に造影剤が注入された状態の被検体P1を撮像して、図3Aに示すX線画像I11~I1nを収集する。即ち、図3Aに示すX線画像I11~I1nは、コントラスト画像である。また、収集機能110bは、X線画像I11~I1nから血管を抽出することにより、図3Aに示す血管像I21~I2nを収集する。例えば、収集機能110bは、X線画像I11~I1nの画素値について閾値処理を行なうことにより、血管に相当する画素を抽出して、血管像I21~I2nを生成する。また、例えば、収集機能110bは、血管内に造影剤が注入される前の被検体P1を撮像して複数のマスク画像を収集し、X線画像I11~I1nとの差分処理を行なうことで、血管像I21~I2nを生成する。
次に、取得機能34bは、血管像I21~I2nを取得する。例えば、出力機能110cは、血管像I21~I2nを、ネットワークNWを介して画像保管装置に送信する。この場合、取得機能34bは、ネットワークNWを介して画像保管装置から血管像I21~I2nを取得することができる。このような画像保管装置の例としては、例えば、PACS(Picture Archiving Communication System)のサーバが挙げられる。或いは、取得機能34bは、他の装置を介することなく、X線診断装置10から直接的に血管像I21~I2nを取得することとしても構わない。
血管内治療が開始された後、収集機能110bは、血管内にデバイスが挿入された状態の被検体P1を撮像して、図3Aに示すX線画像I31を収集する。また、取得機能34bは、X線画像I31を取得する。例えば、出力機能110cは、X線画像I31を、ネットワークNWを介して画像保管装置に送信する。この場合、取得機能34bは、ネットワークNWを介して画像保管装置からX線画像I31を取得することができる。或いは、取得機能34bは、他の装置を介することなく、X線診断装置10から直接的にX線画像I31を取得することとしても構わない。
なお、被検体P1の体内に挿入されるデバイスは、一般にワイヤ状である。このようなワイヤ状デバイスの例としては、血管内治療において使用されるカテーテルやガイドワイヤが挙げられる。例えば、心臓PCIにおいて、医師等のユーザは、被検体P1の体内に挿入したガイドワイヤを操作し、病変部まで進行させる。ここで、病変部とは、例えば、慢性完全閉塞病変(Chronic Total Occlusion:CTO)等の血管の狭窄部である。かかる場合、収集機能110bは、ガイドワイヤの先端を撮像範囲に含むようにして、X線画像I31を収集する。なお、収集機能110bは、ガイドワイヤの先端位置が移動した際、ガイドワイヤの先端位置に追従するように撮像範囲を適宜調整することもできる。
次に、出力機能34dは、X線画像I31に対して血管像を合成する。ここで、血管像I21~I2n及びX線画像I31は、被検体P1の冠動脈について収集されたものであり、心拍による動きが生じている。そこで、出力機能34dは、血管像I21~I2nの中から心拍の位相がX線画像I31に対応するものを選択して、X線画像I31に合成する。
例えば、出力機能34dは、位相情報に基づいて、X線画像I31に対応する位相の血管像を選択することができる。ここで、位相情報とは、例えば、心周期におけるいずれの局面でその画像が収集されたのかを示す情報である。例えば、収集機能110bは、被検体P1の心拍を計測しつつX線画像I11~I1nを収集し、X線画像I11~I1nのそれぞれに位相情報を付帯させる。これらの位相情報は、X線画像I11~I1nに基づいて生成される血管像I21~I2nにも継承される。また、収集機能110bは、被検体P1の心拍を計測しつつX線画像I31を収集し、X線画像I31に位相情報を付帯させる。そして、出力機能34dは、血管像I21~I2nのそれぞれに付帯した位相情報と、X線画像I31に付帯した位相情報とを比較して、血管像I21~I2nの中からX線画像I31に対応する位相の血管像を選択する。また、出力機能34dは、選択した血管像とX線画像I31とを合成して合成画像I41を生成し、ディスプレイ32に表示させる。
合成画像I41においては、例えば図3Bに示すように、血管像における血管B1と、X線画像I31におけるデバイスD1とが重畳表示されることとなる。これにより、血管内治療を実行するユーザは、デバイスD1と血管B1との位置関係を把握しつつ、デバイスD1の操作を行なうことができる。
また、収集機能110bは、X線画像I31と同様に、複数のX線画像を経時的に収集する。また、出力機能34dは、複数のX線画像のそれぞれに対して、血管像I21~I2nの中から対応する位相の血管像を選択し、合成画像を生成する。また、出力機能34dは、合成画像を生成するごとに、新たに生成した合成画像をディスプレイ32に順次表示させる。即ち、出力機能34dは、合成画像をリアルタイム表示する。これにより、血管内治療を実行するユーザは、血管B1に対するデバイスD1の現在の位置を把握しつつ、CTO等の病変部までデバイスD1を進行させることができる。
ここで、順次表示される複数の合成画像においては、デバイスD1及び血管B1が心拍に合わせてダイナミックに動いている。そして、フレームごとに位置が変化するデバイスD1及び血管B1を目で追って観察することは、ユーザにとって負担となる場合がある。
また、動きのある部位について収集されたX線画像を表示させる場合において、その動きを抑制して表示させる技術が知られている。例えば、デバイスD1にマーカが付されている場合には、複数のX線画像それぞれからマーカを検出して位置合わせすることにより、デバイスD1のマーカ部分を固定表示することが可能である。なお、マーカとは、例えば所定の形状及びサイズを有する金属片である。
しかしながら、このような固定表示を行なう場合、デバイスD1のマーカ近傍についての視認性は向上するものの、血管B1についての視認性が向上するとは限らない。例えば、血管B1は、心拍によって全体的に位置が移動するのみならず、変形も生じる。従って、デバイスD1のマーカを固定しても、血管B1は固定されない場合が多い。
また、ユーザは、デバイスD1に注目する場合もあれば、血管B1に注目する場合もある。例えば、ユーザは、これからデバイスD1を進行させる予定の血管領域に注目して合成画像の観察を行ない、デバイスD1を操作する場合がある。しかしながら、デバイスD1のマーカを検出して固定表示を行なう場合、固定場所をマーカから変更することはできない。そして、例えばデバイスD1を進行させる予定の血管領域が動いてしまうことにより、デバイスD1を操作する際の視認性が不十分となる場合があった。
そこで、医用画像処理装置30における処理回路34は、以下詳細に説明する第1処理及び第2処理を実行することによって、画像上の任意の位置の動きを抑制することを可能とし、視認性を向上させる。以下、処理回路34が行なう処理について、図4A、図4B及び図4Cを用いて説明する。図4A、図4B及び図4Cは、第1の実施形態に係る第1処理及び第2処理について説明するための図である。
まず、処理機能34cは、血管像において、動きを抑制する処理の対象とする血管領域を選択する。例えば、処理機能34cは、ユーザからの入力操作に基づいて血管領域を選択する。
例えば、出力機能34dは、血管像I21~I2nのうち1又は複数の血管像を、ディスプレイ32に表示させる。一例を挙げると、出力機能34dは、血管像I21をディスプレイ32に表示させる。また、ユーザは、デバイスD1を到達させる予定の血管領域に応じて、血管像I21上に矩形のROIを配置する。例えば、ユーザは、デバイスD1を到達させる目標の血管領域に応じて、血管像I21上にROIを配置する。一例を挙げると、ユーザは、到達目標の血管領域に至るまでの経路となる血管領域にROIを配置する。或いは、ユーザは、到達目標の血管領域それ自体にROIを配置してもよい。これにより、処理機能34cは、ROI内の血管領域を、動きを抑制する血管領域として選択することができる。なお、図4Aにおいては矩形のROIを示すが、ROIの形状及びサイズについては任意に変更可能である。
次に、処理機能34cは、複数の血管像の間で、選択した血管領域の動きを抑制する第1処理を特定する。なお、図4Aにおいては、複数の血管像の間で血管領域の位置及び向きが略一致するように血管像を移動及び回転させる回転並進処理を、第1処理として特定する場合について説明する。例えば、処理機能34cは、まず、血管像I21において選択した血管領域の血管パターンVPを取得する。次に、処理機能34cは、血管像I22、血管像I23といった他の血管像において、血管パターンVPに近いパターンVP’を探索する。
一例を挙げると、処理機能34cは、血管像I22、血管像I23といった各血管像に含まれる血管パターンを、木構造で管理する。ここで、血管は一般に分岐部を有し、血流の上流に向かって或いは下流に向かって、徐々に多く分岐する形状を有する。そこで、処理機能34cは、分岐部それぞれに対してノードを設け、各分岐部の形状を木構造で管理することができる。また、処理機能34cは、根(ルート)ノードから葉(リーフ)ノードに向けて順に、各分岐部の形状を血管パターンVPと比較することで、パターンVP’を高速で探索することができる。
次に、処理機能34cは、血管像I21における血管パターンVPの位置及び向きと、他の血管像におけるパターンVP’の位置及び向きとに基づいて、回転並進行列Wを算出する。例えば、処理機能34cは、血管像I21における血管パターンVPと血管像I22におけるパターンVP’とに基づいて、回転並進行列W1を算出する。また、処理機能34cは、血管像I22における血管パターンVP’と血管像I23におけるパターンVP’とに基づいて、回転並進行列W2を算出する。即ち、処理機能34cは、回転並進行列W1及び回転並進行列W2を算出することにより、第1処理として回転並進処理を特定する。
そして、処理機能34cは、算出した回転並進行列Wを各血管像に適用することで、選択された血管領域の動きを抑制する第1処理を実行する。例えば、処理機能34cは、図4Aに示すように、血管像I22に回転並進行列W1を適用することで、血管像I21に対して血管像I22を位置合わせする。また、処理機能34cは、血管像I23に回転並進行列W1及び回転並進行列W2を適用することで、血管像I21に対して血管像I23を位置合わせする。これによって、図4Aの下段に示すように、複数の血管像において、選択された血管領域が位置合わせされる。即ち、図4Aに示す場合、処理機能34cは、基準フレームである血管像I21における血管領域と、基準フレームと異なるフレームの血管像における血管領域との位置及び向きが略一致するように各血管像を移動及び回転させる回転並進処理を、第1処理として実行する。
次に、処理機能34cは、図4Aに示した第1処理の結果に基づいて、第2処理を行なう。具体的には、処理機能34cは、図4Aで特定した第1処理を複数のX線画像に対して適用することにより、複数のX線画像の間で動きを抑制する第2処理を行なう。例えば、処理機能34cは、第2処理を行なうことによって、図4Bに示すように、複数のX線画像を位置合わせする。
図4Bにおいては、X線画像I31と血管像I21との位相が対応付いており、X線画像I32と血管像I22との位相が対応付いており、X線画像I33と血管像I23との位相が対応付いているものとして説明する。この場合、処理機能34cは、例えば、処理機能34cは、X線画像I32に回転並進行列W1を適用することで、X線画像I31に対してX線画像I32を位置合わせする。また、処理機能34cは、X線画像I33に回転並進行列W1及び回転並進行列W2を適用することで、X線画像I31に対してX線画像I33を位置合わせする。これによって、血管像と同様に、複数のX線画像が位置合わせされる。
即ち、処理機能34cは、X線画像の間で動きを抑制する第2処理として、血管像に対して実行した回転並進処理を、対応する位相のX線画像に対してそのまま実行する。これにより、X線画像上には血管が現れていないとしても、X線画像において血管パターンVPに相当する領域が相互に位置合わせされることとなる。
そして、出力機能34dは、図4Cに示すように、位置合わせ後の血管像と位置合わせ後のX線画像との合成画像を生成し、順次ディスプレイ32に表示させる。例えば、出力機能34dは、位置合わせ後の血管像I21と位置合わせ後のX線画像I31との合成画像I41を生成し、ディスプレイ32に表示させる。また、出力機能34dは、位置合わせ後の血管像I22と位置合わせ後のX線画像I32との合成画像I42を生成し、ディスプレイ32に表示させる。また、出力機能34dは、位置合わせ後の血管像I23と位置合わせ後のX線画像I33との合成画像I43を生成し、ディスプレイ32に表示させる。即ち、出力機能34dは、第1処理により動きが抑制された血管像と、第2処理により動きが抑制されたX線画像との合成画像を出力する。
図4A、図4B及び図4Cに示したように、処理機能34cは、第1処理及び第2処理を実行することにより、任意に選択された血管領域の動きを抑制することができる。例えば図5に示す場合において、処理機能34cは、矩形で示す血管領域を固定場所として選択し、矩形領域内の動きを抑制する。これにより、X線画像においては、矩形領域内のデバイスD1の動きが抑制される。また、血管像においては、矩形領域内の血管B1の動きが抑制される。また、矩形領域内の動きが抑制された状態において、デバイスD1と血管B1とは合成表示される。従って、矩形領域内でのデバイスD1の操作において、ユーザは高い視認性を得ることができ、例えば到達目標までデバイスD1を進行させる操作を容易に実行することができる。なお、図5は、第1の実施形態に係る固定場所について説明するための図である。
なお、図4Aに示した血管像I21、血管像I22、血管像I23は、一回の撮影において収集された一連の血管像であってもよいし、別の撮影において収集された血管像の組み合わせであってもよい。即ち、処理機能34cは、1カット分の血管像を用いて上記の第1処理及び第2処理を実行してもよいし、心周期上の位相や撮像範囲がX線画像に略一致する別カットの血管像がある場合にはこれを更に利用することとしてもよい。
一例を挙げると、血管像が10f/s(frame/second)のフレームレートで収集され、X線画像が20f/sのフレームレートで収集されている場合のように、X線画像の一部に対して対応する位相の血管像を特定できないケースが想定される。ここで、過去にも同じ部位について10f/sのフレームレートで血管像が収集されており、0.05s分だけ心周期上の位相がずれている場合、処理機能34cは、これら2カットの血管像を組み合わせて、各X線画像に対して位相が対応付いた血管像を特定することができる。これにより、処理機能34cは、血管像とX線画像とでフレームレートが異なっていたり、心周期上の位相にずれがあったりする場合でも、フレームレートの低下を回避することができる。
次に、医用画像処理装置30による処理の手順の一例を、図6を用いて説明する。図6は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置30の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS101、ステップS102、ステップS103、ステップS104、ステップS105、ステップS106及びステップS108は、処理機能34cに対応するステップである。ステップS107は、出力機能34dに対応するステップである。
まず、処理回路34は、X線画像の動きを抑制する処理を開始するか否かを判定する(ステップS101)。例えば、デバイスD1の先端位置に追従するように撮像範囲を制御する場合において、デバイスD1の位置によっては、X線画像の動きを抑制する処理が必要とならない場合がある。例えば、心臓PCIにおいて、デバイスD1は、被検体P1の大腿動脈から挿入され、心臓に向けて血管内を進行する。ここで、X線画像の動きを抑制する処理は、デバイスD1が被検体P1の下肢に位置している時には不要であり、デバイスD1が心臓に近づいて心拍の影響を受けるようになった時に必要とされる。そこで、処理回路34は、デバイスD1が心臓近辺に到達したときに、X線画像の動きを抑制する処理を開始すると判定することができる。
なお、ステップS101の判定は、医師等のユーザからの入力操作を受け付けることにより行なってもよいし、デバイスD1の位置を解析することで処理回路34が自動で行なってもよい。処理回路34は、処理を開始しない場合には(ステップS101否定)、待機状態となり、処理を開始する場合には(ステップS101肯定)、ステップS102に移行する。
次に、処理回路34は、血管領域を選択する(ステップS102)。例えば、処理回路34は、血管像I21をディスプレイ32に表示させ、ユーザからの入力操作を受け付けることにより、血管領域を選択する。次に、処理回路34は、選択された血管領域の血管パターンVPに近いパターンVP’を、血管像I21以外の各血管像において探索する(ステップS103)。ここで、パターンVP’が見つからなかった場合(ステップS104否定)、処理回路34は、処理を終了する。一方で、パターンVP’が見つかった場合(ステップS104肯定)、処理回路34は、血管像I21における血管パターンVPの位置及び向きと、他の血管像におけるパターンVP’の位置及び向きとに基づいて、回転並進行列Wを算出する(ステップS105)。
次に、処理回路34は、回転並進行列Wを各画像に適用する(ステップS106)。具体的には、処理回路34は、回転並進行列Wを血管像に適用することで、複数の血管像の間で血管領域の動きを抑制する。即ち、処理回路34は、血管像の間で血管領域の動きを抑制する第1処理を実行する。また、処理回路34は、回転並進行列WをX線画像に適用することで、X線画像の間で、血管領域に相当する領域の動きを抑制する。即ち、処理回路34は、第1処理の結果に基づいて、X線画像の間で動きを抑制する第2処理を実行する。そして、処理回路34は、第1処理により動きが抑制された血管像と、第2処理により動きが抑制されたX線画像との合成画像をディスプレイ32に表示させる(ステップS107)。
次に、処理回路34は、選択された血管領域の動きを抑制する処理を継続するか否かを判定し(ステップS108)、継続する場合には(ステップS108肯定)、再度ステップS103に移行する。一方で、処理を継続しない場合には(ステップS108否定)、処理回路34は、処理を終了する。例えば、CTOに対する治療が行なわれている場合において、CTOにデバイスD1が到達するまでの間においては、処理回路34は、デバイスD1を進行させやすいように、CTOまでの経路となる血管領域の動きを抑制する処理を継続する。一方で、CTOにデバイスD1が到達した際、処理回路34は、デバイスD1を用いてCTOを拡張する作業等が行ない易いように、デバイスD1の動きを抑制する処理に切り替える。即ち、CTOにデバイスD1が到達した際、処理回路34は、ステップS108において、選択された血管領域の動きを抑制する処理を継続しないと判定する。例えば、CTOにデバイスD1が到達した際、処理回路34は、複数のX線画像それぞれにおいて、デバイスD1に付されたマーカの位置を特定し、マーカを固定表示する処理を開始する。
なお、図6の処理が実行されている間には、例えばユーザによってCアーム105が操作されることにより、ワーキングアングルが変更される場合がある。即ち、血管像とX線画像との間で、撮像角度が変化してしまう場合がある。このような場合には、血管像について行なった第1処理の結果を、X線画像の動きを抑制するために使用することができなくなる場合がある。
そこで、処理回路34は、撮像角度が変化した際には、X線画像の動きを抑制する処理を自動で終了することとしてもよい。また、処理回路34は、撮像角度が元に戻った際、X線画像の動きを抑制する処理を自動で再開することとしてもよい。或いは、処理回路34は、撮像角度が変化した際に、変化後の撮像角度に応じた血管像を取得し、X線画像の動きを抑制する処理を継続してもよい。
上述したように、第1の実施形態によれば、取得機能34bは、周期的な動きのある部位について収集された複数の血管像と複数のX線画像とを取得する。また、処理機能34cは、血管像において血管領域を選択し、複数の血管像の間で血管領域の動きを抑制する第1処理を特定する。また、処理機能34cは、第1処理を複数のX線画像に対して適用することにより、複数のX線画像の間で動きを抑制する第2処理を行なう。また、出力機能34dは、第2処理により動きが抑制されたX線画像を出力する。従って、第1の実施形態に係る医用画像処理装置30は、動きのある部位について収集されたX線画像の視認性を向上させることができる。
例えば、動きのある部位について収集されたX線画像については、デバイスD1に付されたマーカを特定して固定表示することも可能である。しかしながら、このような固定表示は固定場所についての選択肢が少なく、また、デバイスD1が到達していない血管領域を固定表示することはできない。これに対し、第1の実施形態に係る医用画像処理装置30は、固定場所についての自由度を向上させることができる。例えば、医用画像処理装置30は、デバイスD1が到達していない血管領域を固定表示することもできる。
また、動きのある部位について収集されたX線画像に、常にデバイスD1が含まれているとは限らない。例えば、治療計画の段階では、被検体P1の体内にデバイスD1を挿入することなくX線画像の収集が行われる場合がある。また、X線画像にデバイスD1が含まれている場合でも、デバイスD1にマーカが付されているとは限らない。即ち、X線画像には、位置合わせに使用可能な特徴が含まれていない場合もある。このような場合でも、医用画像処理装置30は、血管像を介することで、X線画像の動きを抑制することが可能である。
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
例えば、上述した実施形態では、血管像I21等の血管像をディスプレイ32に表示させ、血管像を参照したユーザからの入力操作を受け付けることにより、動きを抑制する血管領域を選択する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。
例えば、処理機能34cは、血管像以外の画像を介してユーザからの入力操作を受け付け、血管領域を選択することとしてもよい。一例を挙げると、出力機能34dは、被検体P1から収集された血管モデルをディスプレイ32に表示させる。このような血管モデルは、例えばX線CT(Computed Tomography)装置によって、造影剤が注入された状態の被検体P1をスキャンすることにより、収集することができる。ここで、ユーザは、例えば、デバイスD1を到達させる目標の血管領域に応じて、血管モデル上にROIを配置したり、血管モデル上のいずれかの血管を指定したりする。また、処理機能34cは、血管モデル上に配置されたROI内の血管や指定された血管に相当する血管領域を、血管像において特定する。このように、処理機能34cは、血管モデルを介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、動きを抑制する血管領域を選択することができる。
また、処理機能34cは、画像を介することなく、ユーザからの入力操作を受け付け、血管領域を選択することとしてもよい。一例を挙げると、処理機能34cは、血管像を解析し、血管像に含まれる各血管領域に対して、血管名を示す解剖学的ラベルを付加する。そして、処理機能34cは、ユーザから血管名の指定を受け付けることで、動きを抑制する血管領域を選択することができる。
一例を挙げると、出力機能34dは、血管像に含まれている血管名を示すリストをディスプレイ108に表示させる。そして、処理機能34cは、リスト内のいずれかの血管名を選択する操作をユーザから受け付けることができる。また、例えば、処理機能34cは、キーボード等によって血管名を文字入力する操作や、血管名の音声入力をユーザから受け付けることもできる。
或いは、処理機能34cは、自動で血管領域を選択してもよい。例えば、処理機能34cは、血管像の中央における所定サイズ及び所定形状の領域を、動きを抑制する血管領域として選択してもよい。
また、例えば、処理機能34cは、デバイスD1の位置に基づいて、動きを抑制する血管領域を自動選択してもよい。例えば、ユーザが病変部に向けてデバイスD1を進行させる操作を行なっている場合、処理機能34cは、デバイスD1の進行方向にある最も近い血管の分岐部を血管像において特定し、動きを抑制する血管領域として選択してもよい。
また、上述した実施形態では、第1処理により動きが抑制された血管像と、第2処理により動きが抑制されたX線画像との合成画像を表示させるものとして説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、出力機能34dは、第2処理により動きが抑制されたX線画像を、血管像と合成することなく、ディスプレイ32に表示させてもよい。即ち、医用画像処理装置30は、血管像をX線画像の動きを抑制するためにのみ使用し、血管像の表示は省略してもよい。
また、上述した実施形態では、パターンVP’を血管像において探索することにより、回転並進行列Wを算出し、複数の血管像の間で血管領域の動きを抑制するものとして説明した。即ち、上述した実施形態では、パターンマッチングによって第1処理を実行する場合について説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではない。
例えば、処理機能34cは、特定のパターンについての探索を行なわずとも、画像間のマッチング処理を行なうことによって、第1処理を実行することもできる。一例を挙げると、処理機能34cは、端点フリーDP(Dynamic Programming)マッチングにより、第1処理を実行することもできる。
例えば、処理機能34cは、図4Aに示した血管像I21から、血管領域の輪郭を抽出する。次に、処理機能34cは、抽出した輪郭に基づいて、輪郭モデルC1を生成する。例えば、処理機能34cは、血管領域の芯線を輪郭として抽出し、芯線に沿って複数の頂点を生成することにより、輪郭モデルC1を生成する。同様に、処理機能34cは、血管像I22に基づいて輪郭モデルC2を生成し、血管像I23に基づいて輪郭モデルC3を生成する。
次に、処理機能34cは、輪郭モデル間で対応点を求める。例えば、処理機能34cは、輪郭モデルC1における複数の頂点と輪郭モデルC2における複数の頂点との対応付けに応じたコストを定義し、コストを最小化することによって、対応点を求める。ここで、コストは、例えば、対応付けた頂点それぞれが有する特徴量の差に応じて定義することができる。例えば、処理機能34cは、輪郭モデルC1及び輪郭モデルC2における各頂点に対して、その位置における血管の曲率を特徴量として付加する。また、処理機能34cは、特徴量の差に応じてコストを定義し、コストを最小化する最小化問題を解くことによって、同程度の特徴量を持った頂点同士が対応関係となるように対応点を求めることができる。
更に、処理機能34cは、頂点の対応関係に基づいて、血管像I21に対して血管像I22を位置合わせする。例えば、処理機能34cは、頂点の対応関係に基づき、特異値分解等を用いて、血管像I22を血管像I21に位置合わせするための回転並進行列W1を算出する。同様にして、処理機能34cは、血管像I23を血管像I22に位置合わせするための回転並進行列W2を算出する。そして、処理機能34cは、血管像I22に回転並進行列W1を適用することで、血管像I21に対して血管像I22を位置合わせする。また、処理機能34cは、血管像I23に回転並進行列W1及び回転並進行列W2を適用することで、血管像I21に対して血管像I23を位置合わせする。
即ち、処理機能34cは、端点フリーDPマッチングによって回転並進行列W1及び回転並進行列W2を算出し、第1処理を実行することができる。また、図4Bに示した場合と同様に、処理機能34cは、回転並進行列W1及び回転並進行列W2を用いて、各X線画像の位置合わせを行なうことができる。即ち、処理機能34cは、端点フリーDPマッチングによる処理結果に基づいて、X線画像の間で動きを抑制する第2処理を行なうことができる。
また、上述した実施形態では、複数の血管像に対して第1処理を実行することにより、複数の血管像における動きを抑制するものとして説明した。しかしながら、複数の血管像に対する第1処理の実行は省略してもよい。即ち、処理機能34cは、複数の血管像の間で血管領域の動きを抑制する第1処理を特定し、第1処理を複数の血管像に対して実行することなく、第1処理を複数のX線画像に対して適用することにより、複数のX線画像の間で動きを抑制する第2処理を行なってもよい。
また、上述した実施形態では、周期的な動きのある部位の一例として冠動脈について説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、心拍の影響を受ける各種の部位について同様に適用が可能である。また、呼吸の影響を受ける各種の部位についても、同様に適用が可能である。この場合、処理機能34cは、呼吸周期における位相に基づいて、血管像に対して行なった回転並進処理を対応する位相のX線画像に対して実行することで、X線画像の間で動きを抑制する第2処理を行なうことができる。
また、上述した実施形態では、血管領域の動きを抑制する処理の説明において、例えば図4Aに示したように、各血管像における血管領域を相互に一致させるものとして説明した。即ち、上述した実施形態では、血管領域の動きを抑制する処理として、血管領域を固定する処理について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、処理機能34cは、血管領域の動きを抑制する処理として、血管領域の位置や向きの画像間における差を小さくする処理を行なってもよい。即ち、血管領域の動きを抑制する処理は、血管領域を固定する処理であってもよいし、血管領域の動きを小さくする程度の処理であってもよい。同様に、X線画像の動きを抑制する処理は、X線画像において選択された血管領域に相当する領域を固定する処理であってもよいし、当該領域の動きを小さくする程度の処理であってもよい。
また、上述した実施形態では、第1処理として回転並進処理を特定する場合について説明した。即ち、上述した実施形態では、血管領域の動きを抑制する処理において、血管領域の位置及び向きを補正する場合について説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、処理機能34cは、血管領域の位置及び向きのいずれか一方のみ補正してもよい。
血管領域の位置を補正する場合、処理機能34cは、例えば、基準フレームである血管像I21における血管領域と、基準フレームと異なるフレームの血管像における血管領域との位置が略一致するように各血管像を位置合わせする処理を、第1処理として特定する。例えば、処理機能34cは、各血管像を並進移動させる並進行列を、第1処理として特定する。そして、処理機能34cは、第2処理として、第1処理として特定した位置合わせする処理を、位相が各血管像に対応するX線画像に対して実行する。これにより、処理機能34cは、複数のX線画像の間で動きを抑制することができる。
また、血管領域の位置を補正する場合、処理機能34cは、例えば、基準フレームである血管像I21における血管領域と、基準フレームと異なるフレームの血管像における血管領域との向きが略一致するように各血管像を回転させる処理を、第1処理として特定する。例えば、処理機能34cは、各血管像を回転させる回転行列を、第1処理として特定する。そして、処理機能34cは、第2処理として、第1処理として特定した回転させる処理を、位相が各血管像に対応するX線画像に対して実行する。これにより、処理機能34cは、複数のX線画像の間で動きを抑制することができる。
また、上述した実施形態では、第2処理により動きが抑制されたX線画像を、ディスプレイ32に表示させるものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力機能34dは、動きが抑制されたX線画像を、X線診断装置10等の他の装置に送信してもよい。この場合、画像を受信した装置において表示が行なわれることで、動きが抑制されたX線画像をユーザに提供することができる。
また、上述した実施形態では、被検体P1からの血管像の収集をX線診断装置10が実行するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。即ち、血管像の収集は、X線診断装置10以外の他のX線診断装置において行なわれてもよい。
また、上述した実施形態では、X線画像の動きを抑制する処理を、医用画像処理装置30が行なうものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述した処理機能34cに相当する機能を、X線診断装置10の処理回路110が実行しても構わない。以下、この点について図7を用いて説明する。図7は、第2の実施形態に係るX線診断装置10の構成の一例を示すブロック図である。図7に示すように、処理回路110は、制御機能110a、収集機能110b、出力機能110c、及び処理機能110dを実行する。なお、処理機能110dは、処理部の一例である。
例えば、収集機能110bは、被検体P1における周期的な動きのある部位について、複数のX線画像を収集する。また、処理機能110dは、被検体P1における周期的な動きのある部位について収集された血管像において、血管領域を選択する。ここで、血管像は、収集機能110bによって被検体P1から収集されたものであってもよいし、別装置において収集された血管像を、ネットワークNWを介して取得したものであってもよい。次に、処理機能110dは、複数の血管像の間で、選択された血管領域の動きを抑制する第1処理を行なう。次に、処理機能110dは、第1処理の結果に基づいて、複数のX線画像の間で動きを抑制する第2処理を行なう。そして、出力機能110cは、第2処理により動きが抑制されたX線画像を出力する。例えば、出力機能110cは、第1処理により動きが抑制された血管像と、第2処理により動きが抑制されたX線画像との合成画像をディスプレイ108に表示させる。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
また、図1においては、単一のメモリ33が処理回路34の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。また、図2及び図7においては、単一のメモリ109が処理回路110の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリ33を分散して配置し、処理回路34は、個別のメモリ33から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。同様に、複数のメモリ109を分散して配置し、処理回路110は、個別のメモリ109から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
また、上述した実施形態で説明した医用画像処理方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、動きのある部位について収集されたX線画像の視認性を向上させることができる。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
(付記1)
周期的な動きのある部位について収集された複数の血管像と、前記部位について収集された複数のX線画像とを取得する取得部と、
前記血管像において血管領域を選択し、複数の前記血管像の間で前記血管領域の動きを抑制する第1処理を特定し、前記第1処理を複数の前記X線画像に対して適用することにより、複数の前記X線画像の間で動きを抑制する第2処理を行なう処理部と、
前記第2処理により動きが抑制された前記X線画像を出力する出力部と、
を備える、医用画像処理装置。
(付記2)
前記処理部は、複数の前記血管像に対して前記第1処理を実行することにより、複数の前記血管像における動きを抑制し、
前記出力部は、前記第1処理により動きが抑制された前記血管像と、前記第2処理により動きが抑制された前記X線画像との合成画像を出力してもよい。
(付記3)
前記処理部は、基準フレームの第1血管像における前記血管領域と、基準フレームと異なるフレームの第2血管像における前記血管領域との位置が略一致するように前記第2血管像を位置合わせする処理を前記第1処理として特定し、前記第2処理として、前記周期的な動きにおける位相が前記第2血管像に対応する前記X線画像に対して前記位置合わせする処理を実行してもよい。
(付記4)
前記処理部は、基準フレームの第1血管像における前記血管領域と、基準フレームと異なるフレームの第2血管像における前記血管領域との向きが略一致するように前記第2血管像を回転させる処理を前記第1処理として特定し、前記第2処理として、前記周期的な動きにおける位相が前記第2血管像に対応する前記X線画像に対して前記回転させる処理を実行してもよい。
(付記5)
前記処理部は、基準フレームの第1血管像における前記血管領域と、基準フレームと異なるフレームの第2血管像における前記血管領域との位置及び向きが略一致するように前記第2血管像を移動及び回転させる回転並進処理を前記第1処理として特定し、前記第2処理として、前記周期的な動きにおける位相が前記第2血管像に対応する前記X線画像に対して前記回転並進処理を実行してもよい。
(付記6)
周期的な動きのある部位について複数のX線画像を収集する収集部と、
前記部位について収集された血管像において血管領域を選択し、複数の前記血管像の間で前記血管領域の動きを抑制する第1処理を特定し、前記第1処理を複数の前記X線画像に対して適用することにより、複数の前記X線画像の間で動きを抑制する第2処理を行なう処理部と、
前記第2処理により動きが抑制された前記X線画像を出力する出力部と、
を備える、X線診断装置。
(付記7)
上記の医用画像処理装置の各構成をコンピュータに実行させるプログラム。