JP2022027726A - ガスバリア樹脂組成物、多層シート、包装材及び容器 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物を含み、上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(X)、及び上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(X)よりも融点が低いエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Y)を含み、上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物の原料であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来である、ガスバリア樹脂組成物;
[2]上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(X)のエチレン単位含有量が20モル%以上50モル%以下であり、上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Y)のエチレン単位含有量が30モル%以上60モル%以下である、[1]のガスバリア樹脂組成物;
[3]上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Y)と上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(X)とのエチレン単位含有量差(Y-X)が5モル%以上である、[1]または[2]のガスバリア樹脂組成物;
[4]上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(X)と上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Y)との質量比(X/Y)が60/40以上95/5以下である、[1]~[3]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[5]上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(X)と上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Y)との融点の差(X-Y)が15℃以上である、[1]~[4]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[6]上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Y)よりも融点が低いエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Z)をさらに含む、[1]~[5]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[7]上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、原料であるエチレン及びビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A)と、化石燃料由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(B)とを含む、[1]~[6]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[8]上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A)と上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(B)との質量比(A/B)が1/99~99/1である、[7]のガスバリア樹脂組成物;
[9]上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、原料であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A’)を含む、[1]~[6]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[10]上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物のバイオベース度が1%以上99%以下である、[1]~[9]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[11]バイオベース度が1%以上99%以下である、[1]~[10]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[12]硫黄化合物を硫黄原子換算で0ppmを超えて100ppm以下含む、[1]~[11]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[13]上記硫黄化合物が、ジメチルスルフィドまたはジメチルスルホキシドである、[12]のガスバリア樹脂組成物;
[14]上記原料のうちのエチレンの少なくとも一部がバイオマス由来である、[1]~[13]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[15]上記原料のうちのビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来である、[1]~[14]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[16]上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物のうちの少なくとも一種が、下記一般式(I)で表される構造単位を有する、[1]~[15]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[17][1]~[16]のいずれかのガスバリア樹脂組成物からなるバリア層と、このバリア層の少なくとも一方の面側に積層される熱可塑性樹脂層とを備える多層シート;
[18]上記バリア層と熱可塑性樹脂層とが共押出成形法により積層されている、[17]の多層シート;
[19][17]または[18]の多層シートを加熱延伸成形法により成形してなる、包装材;
[20][17]または[18]の多層シートを真空圧空成形法により成形してなる、容器;
を提供することにより達成される。
本発明のガスバリア樹脂組成物は、エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(エチレン-ビニルアルコール共重合体;以下「EVOH」ともいう。)を含み、上記EVOHが、EVOH(X)、及び上記EVOH(X)よりも融点が低いEVOH(Y)を含み、上記EVOHの原料(原料モノマー)であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来である、ガスバリア樹脂組成物である。
EVOH(X)はEVOH(Y)よりも高い融点を有するEVOHであり、通常、本発明のガスバリア樹脂組成物に含まれるEVOHにおいて、最も高い融点を有するEVOHである。本発明のガスバリア樹脂組成物がEVOH(X)を含むことで、優れたガスバリア性を有する傾向となる。EVOH(X)の融点の下限は150℃が好ましく、155℃がより好ましく、160℃がさらに好ましい。EVOH(X)の融点の上限は200℃が好ましい。EVOH(X)の融点が上記範囲内であると、本発明のガスバリア樹脂組成物のガスバリア性が良好となる傾向となる。
EVOH(Y)は、EVOH(X)よりも低い融点を有するEVOHである。本発明のガスバリア樹脂組成物がEVOH(Y)を含むことで、優れた成形性を示す傾向となる。EVOH(Y)の融点の下限は100℃が好ましく、105℃がより好ましく、110℃がさらに好ましい。EVOH(Y)の融点の上限は180℃が好ましい。EVOH(Y)の融点が上記範囲内であると、本発明のガスバリア樹脂組成物のガスバリア性が良好となる傾向となる。
EVOH(Y)とEVOH(X)とのエチレン単位含有量差(Y-X)は5モル%以上が好ましく、7モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましい。また、上記エチレン単位含有量差(Y-X)は25モル%以下であってもよい。上記エチレン単位含有量差(Y-X)が上記範囲であると、良好なガスバリア性を示しつつ成形性が良好となる傾向となる。
本発明のガスバリア樹脂組成物において、EVOHは、EVOH(Y)よりも融点が低いEVOH(Z)をさらに含んでいてもよい。当該ガスバリア樹脂組成物がEVOH(Z)を含むと、優れた成形性を示す傾向となる。EVOH(Z)の好適な態様は、EVOH(Y)よりも融点が低いことを除き、EVOH(Y)と同様である。
当該ガスバリア樹脂組成物に含まれるEVOHは、その原料であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来である。以下、特に、バイオマス由来の原料について言及しつつ、説明する。
(I)原料であるエチレン及びビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来であるEVOH(A)と、化石燃料由来であるEVOH(B)とを含む形態
(II)原料であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来であるEVOH(A’)を含む形態
EVOH(X)及びEVOH(Y)のうちの一方がEVOH(A)であり、他方がEVOH(B)である形態、
EVOH(X)及びEVOH(Y)の少なくとも一方がEVOH(A)又はEVOH(A’)とEVOH(B)との双方を含む形態、
EVOH(X)及びEVOH(Y)がEVOH(A’)である形態
などが挙げられる。
EVOH(A)は、原料モノマーであるエチレン及びビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来であるEVOHである。EVOH(A)がバイオマス由来の原料を含むことで、本発明のガスバリア樹脂組成物のバイオベース度を高め、環境負荷を低減できる。
EVOH(B)は、化石燃料由来のEVOHである。ここで、化石燃料由来のEVOHとは、化石燃料由来の原料を用いて合成されたEVOHを意味する。すなわち、EVOH(B)は、原料モノマーであるエチレン、ビニルエステル及び必要に応じて用いられるその他の単量体の全てが化石燃料由来であるEVOHである。換言すれば、EVOH(B)は、バイオマス由来の原料を用いずに合成されたEVOHである。本発明のガスバリア樹脂組成物がEVOH(B)を含むことで、十分なロングラン性を発揮することができる。
EVOH(A’)は、原料モノマーであるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、上記原料モノマーであるエチレン及びビニルエステルの残部が化石燃料由来であるEVOHである。EVOH(A’)の原料がバイオマス由来の原料を含むことで、本発明のガスバリア樹脂組成物におけるバイオベース度を高め、環境負荷を低減できる傾向となる。また、EVOH(A’)の原料が化石燃料由来の原料を含むことで、本発明のガスバリア樹脂組成物のロングラン性を良好なものとすることができる。
本発明のガスバリア樹脂組成物はカルボン酸をさらに含有することが好ましい。本発明のガスバリア樹脂組成物がカルボン酸を含有すると、溶融成形性や高温下での着色耐性を改善できる。特に、ガスバリア樹脂組成物のpH緩衝能力が高まり、酸性物質や塩基性物質に対する着色耐性を改善できる場合がある点から、カルボン酸のpKaが3.5~5.5の範囲にあることがより好ましい。
本発明のガスバリア樹脂組成物のバイオベース度の下限は、環境負荷を低減する観点から1%が好ましく、5%がより好ましく、20%がさらに好ましく、40%が特に好ましい。また、例えば特に優れたロングラン性が要求されない用途などにおいては、本発明のガスバリア樹脂組成物のバイオベース度の下限は、60%であってもよく、80%であってもよい。一方、本発明のガスバリア樹脂組成物のバイオベース度の上限は、ロングラン性を良好とする観点から99%が好ましく、95%がより好ましく、85%、75%、65%、55%、45%、35%又は25%がさらに好ましい場合もある。なお、このガスバリア樹脂組成物のバイオベース度とは、EVOH以外の任意成分に含まれる他の樹脂等も考慮して測定される値をいう。
本発明のガスバリア樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されない。例えば、
(1)複数種のEVOHのペレットを、必要に応じて上述したその他成分をさらに加えて混合(ドライブレンド)し、混合されたペレットを溶融混練する方法、
(2)複数種のEVOHのペレットの少なくとも一種に必要に応じて上述したその他成分等が含まれる溶液に浸漬させた後、複数種のEVOHのペレットをドライブレンドし、これらを溶融混練する方法、
(3)複数種のEVOHのペレットをドライブレンドし、これらを溶融混練する際に、押出機の途中で必要に応じて上述したその他成分を含む水溶液を液添する方法
(4)各EVOHの溶融樹脂を溶融状態でブレンドする方法(その他成分は、必要に応じていずれかのEVOHに予め含ませておいても、押出機内で液添してもよい)等が挙げられる。
本発明のガスバリア樹脂組成物を含む成形体は、本発明の好適な一実施態様である。本発明のガスバリア樹脂組成物は、単層構造の成形体とすることもできるし、他の各種基材等と共に2種以上の多層構造の成形体、すなわち多層構造体とすることもできる。成形方法としては、例えば押出成形、熱成形、異形成形、中空成形、回転成形、射出成形が挙げられる。本発明のガスバリア樹脂組成物を用いた成形体の用途は多岐に亘り、例えばフィルム、シート、容器、ボトル、タンク、パイプ、ホース等が挙げられる。
本発明の多層シートは、本発明のガスバリア樹脂組成物からなるバリア層と、このバリア層の少なくとも一方の面側に直接又は他の層を介して積層される熱可塑性樹脂層とを備える。当該多層シートの層数の下限としては、2であってよいが、3が好ましい。また、当該多層シートの層数の上限としては、例えば1000であってよく、100であってもよく、20又は10であってもよい。当該多層シートの層構成としては、本発明のガスバリア樹脂組成物以外の樹脂からなる層をx層、バリア層をy層、接着性樹脂層(接着層)をz層とすると、例えばx/y、x/y/x、x/z/y、x/z/y/z/x、x/y/x/y/x、x/z/y/z/x/z/y/z/x等が挙げられる。複数のx層、y層、z層を設ける場合は、その種類は同じでも異なってもよい。また、成形時に発生するトリム等のスクラップからなる回収樹脂を用いた層を別途設けてよいし、回収樹脂を他の樹脂からなる層に混合してもよい。多層シートの各層の厚さ構成は、成形性及びコスト等の観点から、全層厚さに対するy層の厚さ比が通常2~20%である。
上記多層シートを加熱延伸成形法により成形してなる包装材は、簡便かつ確実に製造することができ、また外観性、ガスバリア性等に優れる。当該包装材はシート状であってもよく、他の形状に成形加工されていてもよい。当該包装材は、従来公知の包装材と同様の各種用途に用いることができる。
X-110≦Y≦X-10 ・・・(1)
上記多層シートを真空圧空成形法により成形してなる容器は、簡便かつ確実に製造することができ、また外観性、ガスバリア性等に優れる。当該容器は、従来公知の容器と同様の各種用途に用いることができる。
S=(容器の深さ)/(容器の開口部に内接する最大径の円の直径) ・・・(2)
(1)EVOHのエチレン単位含有量及びケン化度
合成して得られたEVOHペレット並びに実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットについて、内部標準物質としてテトラメチルシラン、添加剤としてテトラフルオロ酢酸(TFA)を含むジメチルスルホキシド(DMSO)-d6に溶解し、500MHzの1H-NMR(日本電子株式会社製「JMTC-400/54/SS」)を用いて80℃で測定し、エチレン単位含有量及びケン化度を測定した。
上記測定のスペクトル中の各ピークは、以下のように帰属される。
0.6~1.9ppm:エチレン単位のメチレンプロトン(4H)、ビニルアルコール単位のメチレンプロトン(2H)、酢酸ビニル単位のメチレンプロトン(2H)
1.9~2.0ppm:酢酸ビニル単位のメチルプロトン(3H)
3.1~4.2ppm:ビニルアルコール単位のメチンプロトン(1H)
合成して得られたEVOHペレットについて、TA Instruments製の示差走査型熱量計「Q2000」を用い、30℃から250℃までを10℃/分の速度で昇温し測定されるピーク温度より融点を求めた。
合成して得られたEVOHペレット並びに実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレット20gとイオン交換水100mLとを共栓付き200mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付け、95℃で6時間攪拌抽出した。得られた抽出液にフェノールフタレインを指示薬としてN/50のNaOHで中和滴定し、カルボン酸のカルボン酸根換算の含有量を定量した。なお、リン化合物が含まれる態様においては、後述の評価方法で測定されるリン化合物の含有量を加味して、カルボン酸量を算出した。
合成して得られたEVOHペレット並びに実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレット0.5gをテフロン(登録商標)製圧力容器に入れ、ここに濃硝酸5mLを加えて室温で30分間分解させた。30分後蓋をし、湿式分解装置(アクタック社の「MWS-2」)により150℃で10分間、次いで180℃で5分間加熱することで分解を行い、その後室温まで冷却した。この処理液を50mLのメスフラスコ(TPX製)に移し純水でメスアップした。この溶液について、ICP発光分光分析装置(パーキンエルマー社の「OPTIMA4300DV」)により元素分析を行い、EVOHペレット又はガスバリア樹脂組成物ペレットに含まれる、金属イオンの金属原子換算量、リン化合物のリン原子換算量及びホウ素化合物のホウ素原子換算量を求めた。
合成して得られたEVOHペレット並びに実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットについて、ASTM D6866-18に記載の方法に従い、加速器質量分析器(AMS)により放射性炭素(14C)の濃度を測定し、放射性炭素年代測定の原理に基づいて、バイオベース度を算出した。
(6-1)単層フィルム製膜欠点評価
単軸押出装置(株式会社東洋精機製作所の「D2020」;D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=3.0、スクリュー:フルフライト)を用い、実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットから平均厚み20μmの単層フィルムを作製した。このときの各条件は以下に示す通りである。
(単軸押出装置条件)
押出温度:210℃
スクリュー回転数:40rpm
ダイス幅:30cm
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:3.1m/分
上記条件で連続運転して単層フィルムを作製し、運転開始10時間後及び50時間後に作製された各フィルムについて、フィルム長17cm当たりの欠点数をカウントした。上記欠点数のカウントは、フィルム欠点検査装置(フロンティアシステム社の「AI-10」) を用いて行った。なお、このフィルム欠点検査装置における検出カメラは、そのレンズ位置がフィルム面より195mmの距離となるように設置した。製膜欠点は、欠点数が50個未満の場合を「良好(A)」、50個以上200個未満の場合を「やや良好(B)」、200個以上の場合を「不良(C)」として判断した。
運転開始10時間後及び50時間後に作製されたフィルムについて、目視にて外観性(ストリーク)を下記評価基準により評価した。また、フィルム100mを紙管に巻き取ったロールを作製し、ロールの端部の黄変による外観性(着色)を目視で下記評価基準により評価した。
(ストリークの評価基準)
良好(A):ストリークは認められなかった
やや良好(B):ストリークが確認された
不良(C):多数のストリークが確認された
(ロール端部の着色の評価基準)
良好(A):無色
やや良好(B):黄変
不良(C):著しく黄変
実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットを用いて、下記条件で厚み20μmの単層フィルムを製膜し、20℃/65%RHの条件下で調湿した後、酸素透過度測定装置(ModernControl社の「OX-Tran2/20」)を使用し、20℃/65%RHの条件下で酸素透過度を測定した。なお、本測定はJIS K 7126-2(等圧法;2006年)に準拠して実施した。
(単層フィルムの作製)
単軸押出装置(株式会社東洋精機製作所の「D2020」、D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=3.0、スクリュー:フルフライト)を用い、上記ガスバリア樹脂組成物ペレットから厚み20μmの単層フィルムを作製した。押出条件は以下に示すとおりである。
押出温度:210℃
ダイス幅:30cm
引取りロール温度:80℃
スクリュー回転数:40rpm
引取りロール速度:3.1m/分
実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレット、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製「ノバテック(登録商標)PP EA7AD」)、及び接着性樹脂(三井化学株式会社製「アドマー(登録商標)QF551」)を用い、3種5層共押出装置を用いて、下記条件にて多層シート(ポリプロピレン/接着性樹脂/ガスバリア樹脂組成物/接着性樹脂/ポリプロピレン、厚み(μm):368/16/32/16/368)を作成した。
(押出機条件)
各樹脂の押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=150℃/150℃/210℃/210℃
ポリプロピレン樹脂の押出機:32φ単軸押出機、GT-32-A型(株式会社プラスチック工学研究所製)
接着性樹脂の押出機:25φ単軸押出機、P25-18-AC型(大阪精機工作株式会社製)
EVOH樹脂組成物の押出機:20φ押出機、ラボ機ME型CO-EXT(株式会社東洋精機製作所製)
Tダイ:300mm幅3種5層用(株式会社プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:80℃
引取速度:1m/分
運転開始30分後、10時間後、50時間後に作製された多層シートを採取し、得られた多層シートを熱成形機(株式会社浅野製作所製:真空圧空深絞り成形機「FX-0431-3型」)にて、シート温度を160℃にして、圧縮空気(気圧5kgf/cm2)により、丸カップ形状(金型形状:上部75mmφ、下部60mmφ、深さ75mm、絞り比S=1.0)に熱成形することにより、熱成形容器を得た。成形条件を以下に示す。
ヒーター温度:400℃
プラグ :45φ×65mm
金型温度 :40℃
目視にて得られたカップ形状の熱成形容器の外観を下記評価基準により評価した。
(外観の評価基準)
良好(A):ムラおよび局部的偏肉は認められなかった
やや良好(B):わずかなムラおよび局部的偏肉が確認された
不良(C):著しいムラおよび局部的偏肉が確認された
上海海源化工科技有限公司製シリカ球体担体HSV-I(球体直径5mm、比表面積160m2/g、吸水率0.75g/g)23g(吸水量19.7g)に、56質量%テトラクロロパラジウム酸ナトリウム水溶液1.5g及び17質量%テトラクロロ金酸四水和物水溶液1.5gを含む担体吸水量相当の水溶液を含浸させた後、メタケイ酸ナトリウム9水和物2.5gを含む水溶液40mLに浸漬し、20時間静置した。続いて、52質量%ヒドラジン水和物水溶液3.3mLを添加し、室温で4時間静置した後、水中に塩化物イオンが無くなるまで水洗し、110℃で4時間乾燥した。得られたパラジウム/金/担体組成物を1.7質量%酢酸水溶液60mLに浸漬し、一晩静置した。次いで、一晩水洗し、110℃で4時間乾燥した。その後、2gの酢酸カリウムの担体吸水量相当水溶液に含浸し、110℃で4時間乾燥することで酢酸ビニル合成触媒を得た。
<VAM1の合成例>
上記酢酸ビニル合成触媒3mLをガラスビーズ75mLで希釈してSUS316L製反応管(内径22mm、長さ480mm)に充填し、温度150℃、圧力0.6MPaGでエチレン/酸素/水/酢酸/窒素=47.3/6.1/5.6/26.3/14.7(mol%)の割合に混合したガスを流量20NL/時で流通させ、反応を行い、酢酸ビニル(VAM1)を合成した。エチレンには、バイオマス由来のエチレン(Braskem S.A.製、サトウキビ由来のバイオエチレン)を用い、このエチレンが充填されたガスボンベ(エチレン純度96.44%、内容積29.502L、内圧1.8234MPa)を使用した。また、酢酸には、バイオマス由来の酢酸(Godavari Biorefineries Ltd.製、サトウキビ由来のバイオ酢酸)を用い、220℃で気化させてから蒸気で反応系に導入した。
原料のエチレン及び酢酸を表1に記載の通り、バイオマス由来及び/又は化石燃料由来のものに変更した以外は、VAM1と同様の方法でVAM2~VAM4の各酢酸ビニルを合成した。
・バイオマス由来のエチレン :Braskem S.A.製、サトウキビ由来のバイオエチレン
・化石燃料由来のエチレン:エア・リキード工業ガス株式会社製、化石燃料由来のエチレン
・バイオマス由来の酢酸 :Godavari Biorefineries Ltd.製、サトウキビ由来のバイオ酢酸
・化石燃料由来の酢酸 :富士フィルム和光純薬株式会社製、化石燃料由来の酢酸
<EVOH(A1)ペレットの作製>
(エチレン-酢酸ビニル共重合体の重合)
ジャケット、攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口及び開始剤添加口を備えた250L加圧反応槽に、VAM1を105kg、及びメタノール(以下、MeOHと称することもある)を32.3kg仕込み、65℃に昇温した後、30分間窒素バブリングして反応槽内を窒素置換した。次いで反応槽圧力(エチレン圧力)が3.67MPaとなるようにエチレンを昇圧して導入した。エチレンには、バイオマス由来のエチレン(Braskem S.A.製、サトウキビ由来のバイオエチレン)を用いた。反応槽内の温度を65℃に調整した後、開始剤として16.8gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社の「V-65」)をメタノール溶液として添加し、重合を開始した。重合中はエチレン圧力を3.67MPaに、重合温度を65℃に維持した。3時間後にVAcの重合率が45%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下で未反応のVAcを除去した後、エチレン-酢酸ビニル共重合体にMeOHを添加して20質量%MeOH溶液とした。
得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体ジャケットの20質量%MeOH溶液250kgを、攪拌機、窒素導入口、還流冷却器及び溶液添加口を備えた500L反応槽に入れ、かかる溶液に窒素を吹き込みながら60℃に昇温し、水酸化ナトリウム4kgを濃度2規定のMeOH溶液として添加した。水酸化ナトリウムの添加終了後、系内温度を60℃に保ちながら2時間攪拌してケン化反応を進行させた。2時間経過した後に、再度、同様の方法で水酸化ナトリウムを4kg添加し、2時間加熱攪拌を継続した。その後、酢酸を14kg添加してケン化反応を停止し、イオン交換水50kgを添加した。加熱攪拌しながら反応槽外にMeOHと水を留出させ反応液を濃縮した。3時間経過した後、更にイオン交換水50kgを添加し、EVOHを析出させた。デカンテーションにより析出したEVOHを収集し、ミキサーで粉砕した。得られたEVOH粉末を1g/Lの酢酸水溶液(浴比20:イオン交換水200Lに対し粉末10kgの割合)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液し、さらに1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液したものを、イオン交換水(浴比20)に投入して攪拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して精製を行った。これを60℃で16時間乾燥させることでEVOHの粗乾燥物を25kg得た。
得られたEVOHの粗乾燥物25kgを、ジャケット、攪拌機及び還流冷却器を備えた100L攪拌槽に入れ、さらに水20kg及びMeOH20gを加え、70℃に昇温して溶解させた。この溶解液を径3mmのガラス管を通して5℃に冷却した重量比で水/MeOH=90/10の混合液中に押し出してストランド状に析出させ、このストランドをストランドカッターでペレット状にカットすることでEVOHの含水ペレットを得た。このEVOHの含水ペレットを濃度1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液し、さらに1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。脱液後、酢酸水溶液を更新し同様の操作を行った。酢酸水溶液で洗浄してから脱液したものを、イオン交換水(浴比20)に投入して攪拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して精製を行い、ケン化反応時の触媒残渣とストランド析出時に使用したMeOHが除去された、EVOHの含水ペレットを得た。得られたEVOHの含水ペレットの含水率をメトラー社のハロゲン水分計「HR73」で測定したところ、110質量%であった。
得られたEVOHの含水ペレットを酢酸ナトリウム、酢酸、リン酸及びホウ酸が含まれる水溶液(浴比20)に投入し、定期的に攪拌しながら4時間浸漬させた。なお、各成分の濃度は、得られたEVOH(A1)ペレットにおける各成分の含有量が表2に記載の通りとなるように調整した。浸漬後に脱液し、空気下で80℃、3時間、及び空気下で130℃、7.5時間乾燥することにより、酢酸ナトリウム、酢酸、リン酸及びホウ酸を含むEVOH(A1)ペレットを得た。
原料(原料モノマー)のエチレン及び酢酸ビニルの種類、並びにカルボン酸、金属イオン、リン酸化合物及びホウ素化合物の含有量を表2に記載の通りとし、且つエチレン及び酢酸ビニルの使用量を適宜変更した以外は、EVOH(A1)ペレットと同様の方法で、EVOH(A2)ペレット~EVOH(A9)ペレット、EVOH(A11)~EVOH(A16)、及びEVOH(B1)~EVOH(B3)ペレットを作製した。化石燃料由来のエチレンには、エア・リキード工業ガス株式会社製のエチレンを用いた。
特開2003-231715号公報段落[0158]及び図1に記載の装置を用い、以下の手順でEVOH(A10)ペレットを作製した。東芝機械社製TEM-35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、バレルC1を水冷し、バレルC2~C3を200℃、バレルC4~C15を240℃に設定し、スクリュー回転数400rpmで運転した。C1の樹脂フィード口からEVOH(A9)ペレットを11kg/hrの割合でフィードし、溶融した後、ベント1から水及び酸素を除去し、C9の液圧入口から変性剤2としてエポキシプロパンを2.4kg/hrの割合でフィードした(フィード時の圧力:6MPa)。その後、ベント2から未反応のエポキシプロパンを除去し、ペレタイズすることで、5モル%変性された(変性基を含む構造単位の含有量が5モル%である)EVOH(A10)ペレットを得た。得られたEVOH(A10)ペレットについて、上記評価方法(1)~(5)に記載の方法に従い、エチレン単位含有量及びケン化度、融点、カルボン酸の定量、金属イオン、リン酸化合物及びホウ素化合物の定量、並びにバイオベース度の測定を行った。結果を表2に示す。
EVOH(A10)ペレットの合成における原料EVOHをEVOH(A9)ペレットからEVOH(B3)ペレットに変更した以外は、EVOH(A10)ペレットの合成と同様にしてEVOH(B4)ペレットを作製し、測定を行った。結果を表2に示す。
<硫黄化合物含有量の測定>
硫黄化合物の定量は三菱アナリテック製微量窒素硫黄分析装(TS-2100H型)を用いて行い、測定条件は以下の通りとした。
ヒーター温度:Inlet 900℃,Outlet 900℃
ガス流量:Ar,O2各300ml/min
[分析システム NSX-2100]
測定モード:TS
パラメータ:SD-210
測定時間(タイマー):540秒(9分)
PMT感度:高濃度
硫黄化合物の同定は、ガスクロマトグラフィー(GC)と、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)を用いて行った。GCの検出器としては、微量の硫黄化合物、リン化合物に対して高い感度を示すFPD(炎光光度検出器)を用いて行い、硫黄化合物が検出された保持時間で観測された質量成分を解析することで、同定を行った。
<実施例1>
EVOH(X)として、EVOH(A1)ペレット及びEVOH(B1)ペレットを、EVOH(Y)としてEVOH(B2)ペレットを用い、質量比(A1/B1/B2)10/60/30でドライブレンドした後、二軸押出機(株式会社東洋精機製作所の「2D25W」、25mmφ,ダイ温度220℃,スクリュー回転数100rpm)を用い、窒素雰囲気下で押出しペレット化を行い、実施例1のガスバリア樹脂組成物ペレットを得た。
用いたEVOHの種類及び質量比(割合)を、表3に記載の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2~23及び比較例1~4の各ガスバリア樹脂組成物ペレットを作製し、評価した。結果を表3、4に示す。
前記実施例1で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットの硫黄化合物含有量の測定、及びその同定を、EVOH(A)及びEVOH(B)ペレットを測定した手法と同様の方法で行った結果、硫黄化合物の含有量は硫黄原子換算で0.1ppmであり、硫黄化合物はジメチルスルフィドであった。前記実施例1について、上記評価方法(8)熱成形容器評価で得られた運転開始30分後の熱成形容器を用いて、追跡可能性(トレーサビリティ性)の評価を行った。具体的には得られた熱成形容器のEVOH層を取り出し、トレーサビリティ用試料とした。取り出したEVOH層のバイオベース度を上記評価方法(5)に記載の方法に従って測定したところ10%であり、実施例1のガスバリア樹脂組成物ペレットで得られた値と一致し、トレーサビリティ性があることが確認された。また、取り出したEVOH層の硫黄化合物含有量の測定、及びその同定を行ったところ、硫黄化合物は硫黄原子換算で0.1ppmであり、硫黄化合物はジメチルスルフィドであり、実施例1のガスバリア樹脂組成物ペレットで得られた値と一致し、トレーサビリティ性があることが確認された。
Claims (20)
- エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物を含み、
上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(X)、及び上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(X)よりも融点が低いエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Y)を含み、
上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物の原料であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来である、ガスバリア樹脂組成物。 - 上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(X)のエチレン単位含有量が20モル%以上50モル%以下であり、上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Y)のエチレン単位含有量が30モル%以上60モル%以下である、請求項1に記載のガスバリア樹脂組成物。
- 上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Y)と上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(X)とのエチレン単位含有量差(Y-X)が5モル%以上である、請求項1または2に記載のガスバリア樹脂組成物。
- 上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(X)と上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Y)との質量比(X/Y)が60/40以上95/5以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
- 上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(X)と上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Y)との融点の差(X-Y)が15℃以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
- 上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Y)よりも融点が低いエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(Z)をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
- 上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、
原料であるエチレン及びビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A)と、化石燃料由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(B)とを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。 - 上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A)と上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(B)との質量比(A/B)が1/99~99/1である、請求項7に記載のガスバリア樹脂組成物。
- 上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、
原料であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A’)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。 - 上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物のバイオベース度が1%以上99%以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
- バイオベース度が1%以上99%以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
- 硫黄化合物を硫黄原子換算で0ppmを超えて100ppm以下含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
- 上記硫黄化合物が、ジメチルスルフィドまたはジメチルスルホキシドである、請求項12に記載のガスバリア樹脂組成物。
- 上記原料のうちのエチレンの少なくとも一部がバイオマス由来である、請求項1~13のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
- 上記原料のうちのビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来である、請求項1~14のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
- 請求項1~16のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物からなるバリア層と、このバリア層の少なくとも一方の面側に積層される熱可塑性樹脂層とを備える多層シート。
- 上記バリア層と熱可塑性樹脂層とが共押出成形法により積層されている、請求項17に記載の多層シート。
- 請求項17または請求項18に記載の多層シートを加熱延伸成形法により成形してなる、包装材。
- 請求項17または請求項18に記載の多層シートを真空圧空成形法により成形してなる、容器。
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