JP2022024348A - イソマルトオリゴ糖の製造方法 - Google Patents

イソマルトオリゴ糖の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 効率的なイソマルトオリゴ糖の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】 澱粉又は澱粉部分分解物に作用し、そのα-1,4グルカン鎖の非還元末端グルコース残基の6位水酸基にグルコース重合度2以上のα-1,6グルカンがα-1,6結合した分岐構造を有する分岐α-グルカンを生成する活性を有するα-グルコシル転移酵素と、イソプルラナーゼとを組合せ、澱粉又は澱粉部分分解物に作用させることによりイソマルトオリゴ糖を生成させる工程と、生成したイソマルトオリゴ糖を採取する工程を含んでなるイソマルトオリゴ糖の製造方法を提供することにより上記課題を解決する。【選択図】 図1

Description

本発明は、イソマルトオリゴ糖の製造方法、詳細には、糖転移酵素とイソプルラナーゼとを組合せた澱粉又は澱粉部分分解物からのイソマルトオリゴ糖の製造方法に関するものである。
イソマルトオリゴ糖とは、2分子以上のD-グルコースがα-1,6グルコシド結合(以下、「α-1,6結合」と略す場合がある。)を介して鎖状に連結したオリゴ糖の総称であり、グルコース重合度2乃至8のイソマルトース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオース、イソマルトペンタオース、イソマルトヘキサオース、イソマルトヘプタオース、イソマルトオクタオースなどを含み、また、パノース(6-α-D-グルコシル-マルトース)やイソパノース(6-α-マルトシル-D-グルコース)などの分岐糖を含む場合がある。通常、これら複数のイソマルトオリゴ糖の混合物の形態にある糖質を「イソマルトオリゴ糖」と呼称している。イソマルトオリゴ糖は、耐酸性、耐熱性、まろやかな甘味を有し、保湿性、澱粉の老化防止作用を有することから各種食品に用いられている。また、イソマルトオリゴ糖は、ビフィズス菌を選択的に増加させ、腸内環境を良好に保つなどの生理機能を発揮することから、厚生労働省が定める特定保健用食品の成分として認められている。
イソマルトオリゴ糖の製造方法としては、澱粉をβ-アミラーゼで加水分解して得られるマルトース(麦芽糖)に麹菌(Aspergillus)由来のα-グルコシダーゼ(別名「トランスグルコシダーゼ」)を作用させ、その糖転移反応によりイソマルトース、イソマルトトリオース、パノース、イソマルトテトラオースなどのイソマルトオリゴ糖を生成させる方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法で得られるイソマルトオリゴ糖含有糖質(特許文献1では「分岐オリゴ糖」と記載)の糖組成中、約50質量%はマルトースの加水分解物としてのD-グルコースであり、含まれるイソマルトオリゴ糖を合計した含量は最大でも46質量%程度に過ぎない。そして、このイソマルトオリゴ糖含有糖質をクロマト分画することにより混在するD-グルコースや未反応のマルトースなどを除去すれば、イソマルトオリゴ糖含量を90質量%以上に高めることができるものの、収率は低いものとならざるを得ない。
一方、イソマルトオリゴ糖の別の製造方法としては、D-グルコースが主としてα-1,6結合を介して連結した高分子多糖であるデキストランを原料基質とし、これを適宜の酸又は酵素(デキストラナーゼ)で加水分解した後、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどで分画、回収する方法がある。しかしながら、原料とするデキストランは、通常、ショ糖(スクロース)を原料として乳酸菌に属するロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)を培養し、当該微生物由来のデキストランスクラーゼ(EC 2.4.1.5)により培地中に生成するデキストランを採取する方法で製造されており、スクロースからの収率が低く、また、粘性が高いため精製操作が煩雑で、コスト高になるという不都合があることから、デキストランを原料とする上記方法は、イソマルトオリゴ糖を工業的に製造する方法として採用されていない。
また、イソマルトオリゴ糖の別の製造方法としては、澱粉又は澱粉部分分解物(デキストリン)に、デキストリンからデキストランを生成するデキストリンデキストラナーゼ(EC 2.1.1.2、例えば、非特許文献1を参照)を作用させデキストランを生成させるとともに、デキストラナーゼを併用することにより、デキストリンを原料としてイソマルトオリゴ糖を製造する方法が考えられるものの、従来から知られている酢酸菌であるアセトバクター・カプスラタム(Acetobacter capsulatum)由来のデキストリンデキストラナーゼは、デキストランの生成効率が低く、酵素自体の安定性が低いなどの問題点があり、実用的な方法とは言えない。
このような状況下、安価な澱粉又は澱粉部分分解物を原料として、より効率よくイソマルトオリゴ糖を製造する方法が求められている。
特開昭61-219345号公報
山本一也ら、「バイオサイエンス・バイオテクノロジー・バイオケミストリー」、第56巻、(1992年)、第169頁乃至173頁
本発明は、効率的なイソマルトオリゴ糖の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、イソマルトオリゴ糖の製造に有用な酵素として、本願と同じ出願人が国際公開第2002/010361号パンフレットに開示したα-グルコシル転移酵素に着目した。当該α-グルコシル転移酵素は、澱粉又は澱粉部分分解物(α-1,4グルカン)に作用し、そのα-1,4グルカン鎖の非還元末端グルコース残基を他のα-1,4グルカン分子の非還元末端グルコース残基の6位水酸基に転移し、転移したグルコース残基の6位水酸基にさらにグルコース残基を転移する作用を有しており、この糖転移反応を繰り返すことにより、分子内に複数個のグルコースがα-1,6結合を介して連結した構造(イソマルトオリゴ糖構造、α-1,6グルカン構造)を有する分岐α-グルカン混合物を生成する作用を有している。加えて、本発明者らは、D-グルコースがα-1,6結合を介して連結したイソマルトオリゴ糖(α-1,6グルカン)の還元末端グルコースの1位にD-グルコースがα-1,4結合を介して結合した構造を有する糖質のα-1,4結合を特異的に加水分解し、イソマルトオリゴ糖を遊離させる活性を有する酵素として、イソプルラナーゼに着目した。そして、上記したそれぞれの活性を有する上記2種類の酵素を組合せて澱粉又は澱粉部分分解物に作用させる酵素反応を試みたところ、意外にも、従来公知の方法よりも顕著に効率よくイソマルトオリゴ糖を製造できることを新たに見出し、α-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼとを組合せて用いる効率的なイソマルトオリゴ糖の製造方法を確立して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、澱粉又は澱粉部分分解物に作用し、そのα-1,4グルカン鎖の非還元末端グルコース残基の6位水酸基にD-グルコース若しくはグルコース重合度2以上のα-1,6グルカンがα-1,6結合した分岐構造を有する分岐α-グルカンを生成する活性を有するα-グルコシル転移酵素と、イソプルラナーゼとを組合せ、澱粉又は澱粉部分分解物に作用させることによりイソマルトオリゴ糖を生成させる工程と、生成したイソマルトオリゴ糖を採取する工程を含んでなるイソマルトオリゴ糖の製造方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
本発明のイソマルトオリゴ糖の製造方法によれば、澱粉又は澱粉部分分解物を原料としてイソマルトオリゴ糖を効率よく製造することができ、工業的規模でのイソマルトオリゴ糖の生産が可能となる。また、このイソマルトオリゴ糖の製造方法の確立により、イソマルトオリゴ糖の還元物であるイソマルトオリゴ糖アルコールの製造も容易となることから、イソマルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖アルコールをより安価に市場に供給できることとなる。
本発明のイソマルトオリゴ糖の製造方法におけるイソマルトオリゴ糖生成反応の概要を示す模式図である。 各種酵素を組合せて澱粉部分分解物に作用させて得た反応物のTLCクロマトグラムである。 澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素、イソプルラナーゼ、イソアミラーゼ及びα-アミラーゼを組合せて作用させ得た反応物をさらにグルコアミラーゼ処理して得た糖質組成物のHPLCクロマトグラムである。
本発明は、澱粉又は澱粉部分分解物に作用し、そのα-1,4グルカン鎖の非還元末端グルコース残基の6位水酸基にD-グルコース若しくはグルコース重合度2以上のα-1,6グルカンがα-1,6結合した分岐構造を有する分岐α-グルカンを生成する活性を有するα-グルコシル転移酵素と、イソプルラナーゼとを組合せ、澱粉又は澱粉部分分解物に作用させることによりイソマルトオリゴ糖を生成させる工程と、生成したイソマルトオリゴ糖を採取する工程を含んでなるイソマルトオリゴ糖の製造方法に係るものである。
本発明のイソマルトオリゴ糖の製造方法におけるイソマルトオリゴ糖生成反応の概要を模式図として図1に示した。この方法は、本願と同じ出願人が国際公開第2002/010361号パンフレットに開示したα-グルコシル転移酵素と、イソプルラナーゼとを組合せた新規なイソマルトオリゴ糖生成反応である。α-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼとを組合せ澱粉又は澱粉部分分解物に作用させると、α-グルコシル転移酵素の作用により、α-1,4グルカン鎖の非還元末端グルコース残基の6位水酸基にD-グルコース若しくはグルコース重合度2以上のα-1,6グルカンがα-1,6結合した分岐構造を有する分岐α-グルカンが生成し、次いで、その末端のイソマルトシル基若しくはグルコース重合度3以上のα-1,6グルカンが結合したα-1,4結合をイソプルラナーゼが特異的に加水分解することによりグルコース重合度2以上のイソマルトオリゴ糖が生成する。図1には、イソマルトトリオース及びイソマルトテトラオースが生成する反応機構が例示されているものの、α-1,4グルカン鎖の非還元末端グルコース残基の6位水酸基にD-グルコースがα-1,6結合した分岐構造を有する分岐α-グルカンが生成した場合には、その末端のイソマルトシル基が結合したα-1,4結合をイソプルラナーゼが特異的に加水分解することによりグルコース重合度2のイソマルトースが生成し、α-1,4グルカン鎖の非還元末端グルコース残基の6位水酸基にグルコース重合度4のα-1,6グルカンがα-1,6結合した分岐構造を有する分岐α-グルカンが生成した場合には、イソプルラナーゼの作用によりグルコース重合度5のイソマルトペンタオースが生成することになる。そして、反応液中でこれらの反応が繰り返されることにより、反応液中にイソマルトース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオース、イソマルトペンタオースなどのイソマルトオリゴ糖が蓄積することとなる。
本発明のイソマルトオリゴ糖の製造方法において用いることのできる前記α-グルコシル転移酵素は、前記酵素活性を有するかぎり特に限定されないものの、好適な酵素としては、例えば、本願と同じ出願人が国際公開第2002/010361号パンフレットに開示した、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans) PP710由来のα-グルコシル転移酵素、及び、アルスロバクター・グロビホルミス(Arthrobacter globiformis) PP349由来のα-グルコシル転移酵素が挙げられる。本発明で用いるα-グルコシル転移酵素は、その精製度により限定されず、目的とするイソマルトオリゴ糖生成反応に支障とならない限り、粗酵素、部分精製酵素及び精製酵素のいずれであってもよい。
本発明で用いるα-グルコシル転移酵素の酵素活性は、本願と同じ出願人が国際公開第2002/010361号パンフレットに開示した、基質としてマルトースを用い、α-グルコシル転移酵素がマルトースの非還元末端側のグルコシル基を転移した際に残存するD-グルコースを定量する方法で測定することができる。具体的には、マルトースを最終濃度1%(w/v)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解させて基質液とし、その基質液5mLに、酵素液0.5mLを加え40℃で30分間酵素反応させ、その反応液0.5mLと5mLの20mMリン酸緩衝液(pH7.0)とを混合し、沸騰水浴中で10分間加熱することにより反応停止させた後、反応液中のグルコース量を、常法に従ってグルコースオキシダーゼ-パーオキシダーゼ法で測定し、酵素反応によって生成したD-グルコース量を算出する。α-グルコシル転移酵素の活性1単位(U)は、上記の条件下で1分間に1μモルのD-グルコースを生成する酵素量と定義する。
本発明のイソマルトオリゴ糖の製造方法において用いることのできる前記イソプルラナーゼは、パノースを加水分解してイソマルトースとD-グルコースとを生成する活性、及び、プルランを加水分解してイソパノースを生成する活性を有し、且つ、イソマルトトリオース及びデキストランに作用しない酵素である限り、特に給源によって限定されるものではないが、例えば、アスベルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のイソプルラナーゼは酵素剤が市販されており、本発明の製造方法において有利に用いることができる。
また、本願と同じ出願人は、特開2004-261132号公報において、プルラン生産菌でもあるオーレオバシディウム(Aureobasidium)属微生物が培養上清中にプルランを加水分解しイソパノースを生成する「プルラン分解酵素」、すなわち、イソプルラナーゼを産生することを見出した。このオーレオバシディウム属微生物が産生するイソプルラナーゼも、本発明のイソマルトオリゴ糖の製造方法において有利に用いることができる。
本発明で用いるイソプルラナーゼの活性測定法は特に限定されず、イソプルラナーゼが有する上記活性に基づき、パノースを基質として用い、パノースを加水分解してイソマルトースとD-グルコースとを生成する活性を測定することも、また、プルランを基質として用い、プルランを加水分解してイソパノースを生成する活性を測定することもできる。本願明細書に記載したイソプルラナーゼの酵素活性は、基質としてのプルランを濃度1.0%(w/v)となるように濃度100mMのギ酸緩衝液(pH3.5)に溶解させて基質溶液とし、その基質溶液に同緩衝液で希釈、調製した酵素液を加えて40℃で反応させ、プルランの加水分解により生成するイソパノースの還元力をD-グルコースを標準品としてD-グルコース換算で測定した。イソプルラナーゼの活性1単位(U)は、上記の条件下で1分間に1μモルのD-グルコースに相当する還元力を生成する酵素量と定義した。
本発明のイソマルトオリゴ糖の製造方法において、原料基質としては、例えば、とうもろこし澱粉、米澱粉、小麦澱粉などの地上澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉などの地下澱粉及びそれらの部分加水分解物(澱粉部分分解物)を好適に用いることができる。前記澱粉部分分解物は、通常、上記した地上又は地下澱粉を水に懸濁して、通常、濃度10質量%以上、より好ましくは、15質量%乃至65質量%、更に好ましくは、20質量%乃至50質量%の澱粉乳とし、これを加熱して糊化し、次いで、酸或いは耐熱性α-アミラーゼにより液化(部分分解)して得ることができる。液化の程度は、比較的低く設定するのがよく、通常、DE(Dextrose Equivalent、グルコース当量)15未満、好ましくは、DE10未満、より好ましくは、DE9乃至0.1の範囲とするのが望ましい。酸で液化する場合には、例えば、塩酸、燐酸、蓚酸などの酸剤により液化した後、通常、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤を用いて所望のpHに中和する方法を採用する。
本発明のイソマルトオリゴ糖の製造方法のイソマルトオリゴ糖生成反応において、反応液における澱粉又は澱粉部分分解物の濃度は特に限定されないものの、固形物濃度で、通常、40質量%以下、望ましくは、35質量%以下が好適であり、この条件下でイソマルトオリゴ糖を有利に製造できる。反応温度はα-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼによるイソマルトオリゴ糖生成反応が進行する温度、すなわち40℃までで行えばよい。好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃付近の温度を用いる。反応pHは、通常、4.0乃至6.0の範囲、好ましくはpH5.0乃至5.5の範囲に調整するのがよい。酵素の使用量と反応時間とは密接に関係しており、目的とする酵素反応の進行により酵素の使用量と反応時間を適宜調整すればよい。
なお、本発明のイソマルトオリゴ糖の製造方法の前記イソマルトオリゴ糖を生成させる工程においては、さらに、必要に応じて、イソアミラーゼやプルラナーゼなどの澱粉枝切酵素、α-アミラーゼ、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase)及びグルコアミラーゼから選ばれる1種又は2種以上の酵素を併用することも有利に実施できる。とりわけ、澱粉枝切酵素は、原料とする澱粉又は澱粉部分分解物におけるα-1,6結合を介した分岐構造のα-1,6結合を特異的に加水分解(枝切り)する酵素であるため、併用することによりα-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼとを組合せたイソマルトオリゴ糖の生成反応の効率を高め、イソマルトオリゴ糖の生成量を顕著に高める効果を奏する。また、α-アミラーゼやCGTaseは澱粉又は澱粉部分分解物を加水分解する作用を有することから、高分子澱粉質の残存による反応液の濁りを抑制することができる。
さらに、本発明は、上記のイソマルトオリゴ糖の製造方法に、さらにイソマルトオリゴ糖を水素添加することにより還元しイソマルトオリゴ糖アルコールに変換する工程と、変換されたイソマルトオリゴ糖アルコールを採取する工程とを付加してなるイソマルトオリゴ糖アルコールの製造方法に係るものでもある。上記のイソマルトオリゴ糖の製造方法で得られるイソマルトオリゴ糖を、還元触媒下で水素添加して還元することにより、イソマルトオリゴ糖アルコールに変換することができ、イソマルトオリゴ糖アルコール又はイソマルトオリゴ糖アルコール含有物を高収率で得ることができる。具体的には、例えば、固形物濃度40乃至60質量%のイソマルトオリゴ糖含有水溶液にラネーニッケル触媒を加え、これを耐圧性容器内に入れ、この容器内に水素を充填し、加圧し、温度100乃至120℃にて水素が消費されなくなるまで攪拌して水素添加する。この際、イソマルトオリゴ糖中に含まれるイソマルトースはイソマルチトールに、イソマルトトリオースはイソマルトトリイトールに、イソマルトテトラオースはイソマルトテトライトールに、イソマルトペンタオースはイソマルトペンタイトールにそれぞれ変換されるとともに、イソマルトオリゴ糖含有糖質中に含まれる場合がある他の還元性糖質、例えば、D-グルコース、マルトース、マルトトリオース、他の還元性澱粉部分加水分解物も同様に還元されそれぞれ対応する糖アルコールとなる。得られたイソマルトオリゴ糖アルコール含有物をラネーニッケル触媒と分離し、常法にしたがって活性炭により脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂等で脱塩し、精製し、濃縮してシラップ状物とするか、更に、これを乾燥して粉末状物とする。必要ならば、更に、例えば、イオン交換カラムクロマトグラフィー、活性炭カラムクロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィーによる分画、アルコール及びアセトンなど有機溶媒を用いる分別、膜分離法等の1種又は2種以上の方法を適宜組み合わせて精製し、高純度のイソマルトオリゴ糖アルコールとすることもできる。
上記した本発明のイソマルトオリゴ糖の製造方法によって得られた反応物、又は、本発明のイソマルトオリゴ糖アルコールの製造方法によって得られた反応物は、そのままイソマルトオリゴ糖含有糖液、イソマルトオリゴ糖アルコール含有液として用いることができるものの、一般的には、さらに精製して用いられる。精製方法としては、糖及び糖アルコールの精製に用いられる通常の方法を適宜採用すればよく、例えば、活性炭による脱色、H型、OH型イオン交換樹脂による脱塩、イオン交換カラムクロマトグラフィー、活性炭カラムクロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィーによる分画、アルコールおよびアセトンなど有機溶媒による分別、適度な分離性能を有する膜による分離、更には、イソマルトオリゴ糖やイソマルトオリゴ糖アルコールを利用せず夾雑糖質を資化、分解する微生物、例えば酵母などによる発酵処理などの精製方法が適宜採用できる。
とりわけ、大量生産方法としては、イオン交換カラムクロマトグラフィーの採用が好適であり、例えば、特開昭58-23799号公報、特開昭58-72598号公報などに開示されている強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにより夾雑糖類を除去し、目的物の含量を向上させたイソマルトオリゴ糖含有糖質、イソマルトオリゴ糖アルコール含有物を有利に製造することができる。この際、固定床方式、移動床方式、擬似移動床方式のいずれの方式を採用することも随意である。
このようにして得られたイソマルトオリゴ糖含有糖質、イソマルトオリゴ糖アルコール含有物を含む水溶液は、通常、濃縮してシラップ状製品とすることができる。このシラップ状製品は、更に、乾燥して非晶質固状物製品又は非晶質粉末製品にすることも随意である。
本発明の製造方法で得られるイソマルトオリゴ糖含有糖質、イソマルトオリゴ糖アルコール含有物は、甘味料、呈味改良剤、品質改良剤、安定剤、変色防止剤、賦形剤などとして、他の成分と組合せ、飲食物、嗜好物、飼料、餌料、化粧品、医薬品、工業用品などの各種組成物に有利に利用できる。
なお、上記のような各種組成物に、本発明の製造方法で得られるイソマルトオリゴ糖含有糖質、イソマルトオリゴ糖アルコール含有物を含有させる方法としては、その製品が完成するまでの工程に含有せしめればよく、例えば、混和、混捏、溶解、融解、浸漬、浸透、散布、塗布、被覆、噴霧、注入、晶析、固化など公知の方法が適宜選ばれる。その量は、通常0.1質量%以上、望ましくは1質量%以上含有せしめるのが好適である。
以下、実験により本発明を詳細に説明する。
<実験:α-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼを組合せた澱粉部分分解物からのイソマルトオリゴ糖の製造>
市販のイソプルラナーゼ酵素剤を、本願と同じ出願人が国際公開第2002/010361号パンフレットに開示した、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans) PP710由来α-グルコシル転移酵素と組合せて澱粉部分分解物に作用させ、イソマルトオリゴ糖の製造を試みた。
<実験1:イソマルトオリゴ糖生成反応における各種酵素の併用効果>
澱粉部分分解物(商品名『パインデックス#100』、松谷化学工業株式会社販売)を原料基質とし、1mM塩化カルシウムを含む20mM酢酸緩衝液(pH5.5)に終濃度10質量%になるよう溶解し基質溶液とした。次いで、これに基質固形物1g当たり10Uのα-グルコシル転移酵素(株式会社林原調製品)、10Uの市販のイソプルラナーゼ(アスペルギルス・ニガー由来、メガザイム社販売)、1,000fuのイソアミラーゼ(株式会社林原調製品)、及び、1.0Uのα-アミラーゼ(商品名『クライスターゼE5CC』、天野エンザイム株式会社販売)を、それぞれ表1に示す組合せで添加し、さらに防腐剤としてヒノキチオールを終濃度60ppmになるよう添加した後、30℃で72時間反応させた。反応終了後、100℃で10分間加熱して酵素を失活させた後、各反応液を下記条件による薄層クロマトグラフィー(TLC)に供し、各反応液に含まれる糖質を予備的に分析した。TLCクロマトグラムを図2に示す。
<TLC分析条件>
TLCプレート:シリカゲルアルミニウムプレート(商品名『シリカゲル60F254』、10×20cm、メルク社製)
展開溶媒:n-ブタノール:ピリジン:水混液(容量比6:4:1)
展開方法:上昇法、2回展開
検出方法:硫酸-メタノール法
図2に見られるとおり、原料基質とした澱粉部分分解物(図2のレーン0)、α-グルコシル転移酵素反応物(図2のレーン1)及びイソプルラナーゼ反応物(図2のレーン2)では、それぞれのTLCクロマトグラムにおいて、いずれも試料をスポットした原点以外に明瞭な糖質のスポットは認められず、同時にTLCを行ったマルトオリゴ糖マーカー(図2の「Gn」)、イソマルトオリゴ糖マーカー(図2の「IGn」)のクロマトグラムと対比すると、少なくともグルコース重合度(DP、Degree of Polymerization)10以下のマルトオリゴ糖やグルコース重合度4以下のイソマルトオリゴ糖は実質的に存在しないことが分った。一方、澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼを作用させて得た反応物(図2のレーン3)、α-グルコシル転移酵素、イソプルラナーゼ及びイソアミラーゼを作用させて得た反応物(図2のレーン4)、及び、α-グルコシル転移酵素、イソプルラナーゼ、イソアミラーゼ及びα-アミラーゼを作用させて得た反応物(図2のレーン5)のクロマトグラムには、D-グルコース、イソマルトース、イソマルトトリオース及びイソマルトテトラオースのスポットが認められ、また、これら試料にもDP10以下のマルトオリゴ糖のスポットは認められなかった。この結果から、これら3種の反応物中にはDP10以下のマルトオリゴ糖は実質的に存在しないと考えられた。
さらに、各反応液の糖組成を下記条件のHPLCにて測定するとともに、DP2~DP8のイソマルトオリゴ糖の含量の合計値を求めた。また、上記4種の酵素全てを作用させて得た反応液についてはさらに固形物1g当たり10Uのグルコアミラーゼ(リゾプス属由来、富士フィルム和光純薬株式会社販売)を添加し、pH5.0、50℃で18時間処理し、得られたグルコアミラーゼ処理物についても同様に糖組成及びDP2~DP8のイソマルトオリゴ糖の含量の合計値を求めた。結果を表1に示す。
<HPLC条件>
カラム;『MCIgel CK04SS』(三菱ケミカル株式会社製造)
カラム2本を直列に連結して使用;
溶離液:超純水
カラム温度:80℃
流速:0.4mL/分
検出:示差屈折計RID-10A(株式会社島津製作所製)
Figure 2022024348000002
表1に見られるとおり、原料とした澱粉部分分解物(対照)、α-グルコシル転移酵素反応物(試料1)及びイソプルラナーゼ反応物(試料2)では、DP11以上の糖質がほぼ90質量%以上を占め、DP10以下の糖質はごく少量であった。一方、澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼを作用させて得た反応物(試料3)は、DP11以上の糖質が46.8質量%まで低減し、DP1~DP10の糖質の生成が認められ、その合計は53.2質量%であり、DP2~DP8のイソマルトオリゴ糖(イソマルトース~イソマルトオクタオース)が合計で42.4質量%含まれていた。さらに、澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼに加えさらに澱粉枝切酵素であるイソアミラーゼを作用させて得た反応物(試料4)ではDP11以上の糖質が10.9質量%まで低減し、DP1~DP10の糖質が合計で89.1質量%を占めており、DP2~DP8のイソマルトオリゴ糖(イソマルトース~イソマルトオクタオース)が合計で73.2質量%含まれていた。またさらに、澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素、イソプルラナーゼ、イソアミラーゼに加え、さらにα-アミラーゼを添加し作用させて得た反応物(試料5)ではDP11以上の糖質が5.8質量%まで低減し、DP1~DP10の糖質が合計で96.2質量%を占めており、DP2~DP8のイソマルトオリゴ糖(イソマルトース~イソマルトオクタオース)が合計で77.7質量%含まれていた。
また、澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素、イソプルラナーゼ、イソアミラーゼ及びα-アミラーゼを作用させて得た反応物(試料5)をさらにグルコアミラーゼ処理して得た反応物(試料6)のHPLCクロマトグラムを図3に示すとともに、分析により得られた糖組成を表1に併記した。図3に見られるとおり、HPLCクロマトグラムでは、DP1のD-グルコースからDP10までの糖質がそのグルコース重合度の違いによって分離された一連のピークが認められ、その糖組成は表1の試料6の欄に見られるとおりであった。グルコアミラーゼ処理前(試料5)の糖組成と比べ、グルコアミラーゼ処理後(試料6)の糖組成は、D-グルコースが4質量%増加していたものの大きな変化はなかった。試料5において、仮に原料澱粉部分分解物由来のマルトオリゴ糖が未反応物として僅かに混在していたとしても、それらは試料6ではグルコアミラーゼにより分解されることから、試料6のD-グルコース以外の糖質はほぼ全てイソマルトオリゴ糖と見なすことができる。なお、当該試料6のDP2~DP8のイソマルトオリゴ糖の合計値は74.2質量%であった。
さらに、上記で得られた試料3~5において新たに生成した糖質の大部分がイソマルトオリゴ糖であることを確認する目的で、各試料を常法のメチル化分析に供し、各試料中の糖質を構成するグルコースの結合様式を調べた。原料とした澱粉部分分解物(対照)及び各酵素反応物(試料1~5)について、常法に従って部分メチル化アルジトールアセテートを調製し、ガスクロマトグラフィー法で定量し、各グルコシド結合にかかわるグルコースの含量を調べた。結果を表2にまとめた。
Figure 2022024348000003
表2に見られるとおり、メチル化分析により、原料とした澱粉部分分解物(対照)では、非還元末端グルコース(1位の水酸基のみを介して他のグルコースと結合したグルコース)が5.2%、α-1,4結合したグルコース(1位と4位の水酸基を介して他のグルコースと結合したグルコース)が90.3%、α-1,4,6結合したグルコース(1位、4位及び6位の水酸基を介して他のグルコースと結合したグルコース、すなわち、澱粉において本来的に存在するα-1,4グルカンがα-1,6結合で分岐した分岐点のグルコース)が4.5%存在し、他の結合様式で結合したグルコースは存在しないことが確認された。また、イソプルラナーゼ反応物(試料2)では、原料とした澱粉部分分解物と変わらない結果となり、このことは、イソプルラナーゼは単独では澱粉部分分解物に実質的に作用しないことを示している。一方、α-グルコシル転移酵素反応物(試料1)では、α-1,4結合したグルコースが57.1%まで減少した一方、α-1,6結合したグルコース(1位と6位の水酸基を介して他のグルコースと結合したグルコース)が新たに28.3%認められ、α-1,3結合したグルコース(1位と3位の水酸基を介して他のグルコースと結合したグルコース)及びα-1,3,6結合したグルコース(1位、3位及び6位の水酸基を介して他のグルコースと結合したグルコース)もそれぞれ僅かに(0.7%と0.9%)認められた。
一方、澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼを作用させて得た反応物(試料3)では、α-1,4結合したグルコースが27.9%まで減少し、α-1,6結合したグルコースが47.1%認められた。さらに、澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼに加えさらにイソアミラーゼを作用させて得た反応物(試料4)では、α-1,4結合したグルコースが5.7%まで減少し、α-1,6結合したグルコースが63.4%認められた。なお、本試料では、イソアミラーゼを作用させ澱粉部分分解物に本来的に存在する分岐点のα-1,6結合を分解したため、α-1,4,6結合したグルコースは0.5%まで低下した。またさらに、澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素、イソプルラナーゼ、イソアミラーゼに加え、さらにα-アミラーゼを添加し作用させて得た反応物(試料5)ではα-1,4結合したグルコースが2.8%まで減少し、α-1,6結合したグルコースが61.7%認められた。
また、表2に示す通り、非還元末端グルコース(遊離のD-グルコースをも含む)を除いた全グルコース中に占めるα-1,6結合したグルコース(1位と6位の水酸基のみを介して他のグルコースと結合したグルコース)の割合を算出すると、澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素、イソプルラナーゼ及びイソアミラーゼを作用させて得た反応物(試料4)では88.3%、澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素、イソプルラナーゼ、イソアミラーゼ及びα-アミラーゼを作用させて得た反応物(試料5)では91.7%となり、試料中に存在している糖質中の大部分のグルコースがα-1,6結合したグルコースであることが分った。このことから、試料3~5において生成した糖質の大部分がイソマルトオリゴ糖であることが確認された。
本実験の結果は、α-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼとを組合せて澱粉又は澱粉部分分解物に作用させると、DP2のイソマルトースからDP8のイソマルトオクタオースまでのイソマルトオリゴ糖を合計で42質量%以上含むイソマルトオリゴ糖混合物が製造でき、さらにイソアミラーゼやα-アミラーゼを併用することで、DP2のイソマルトースからDP8のイソマルトオクタオースまでのイソマルトオリゴ糖を合計で73質量%以上含むイソマルトオリゴ糖混合物を澱粉又は澱粉部分分解物を原料として効率よく製造できることを物語っている(表1を参照)。
<実験2:イソマルトオリゴ糖生成反応における基質濃度の影響>
イソマルトオリゴ糖の生成反応に用いる基質濃度を5、10、20又は30質量%と変えたこと、及び、実験1で用いた4種類の酵素を全て作用させた以外は実験1と同じ条件で酵素反応を行い、得られた各反応液の糖組成を前述したHPLC分析により測定し、実験1と同様に、DP2のイソマルトースからDP8のイソマルトオクタオース)までのイソマルトオリゴ糖の合計値を算出した。結果を表3に示す。
Figure 2022024348000004
表3に見られるとおり、基質濃度を5、10,20又は30質量%と変化させても生成物の糖組成は大きく変化することなく、D-グルコースを約13質量%、イソマルトースを約19質量%、イソマルトトリオースを約17質量%、イソマルトテトラオースを約14質量%、イソマルトペンタオースを約11質量%、イソマルトヘキサオースを約8.5質量%、イソマルトヘプタオースを約6質量%、及び、イソマルトオクタオースを約4質量%含有するイソマルトオリゴ糖混合物が得られた。また、DP2のイソマルトースからDP8のイソマルトオクタオースまでの合計値は78~81質量%を示した。
実験1及び実験2の結果は、α-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼを組合せて用いる本発明のイソマルトオリゴ糖の製造方法によれば、比較的基質濃度が高い条件においても、澱粉枝切酵素やα-アミラーゼなどの他の酵素も適宜併用することにより、固形物当たりの、DP2のイソマルトースからDP8のイソマルトオクタオースまでのイソマルトオリゴ糖の合計の含量が少なくとも73質量%以上の糖組成物が得られ、澱粉又は澱粉部分分解物を原料として効率よくイソマルトオリゴ糖混合物を製造できることを物語っている。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
<澱粉からのイソマルトオリゴ糖の製造>
とうもろこし澱粉を濃度約30質量%の澱粉乳とし、これに炭酸カルシウムを0.1質量%加え、pH6.5に調整し、耐熱性α-アミラーゼ(商品名『ターマミール60L』、ノボ社製)を澱粉当たり0.3質量%加え、95℃で15分間反応させ、次いで120℃で20分間オートクレーブし、更に約40℃まで冷却してDE約4の澱粉液化液を調製した。この澱粉液化液をpH5.5に調整し、澱粉固形物1g当たり10Uのα-グルコシル転移酵素(バチルス・サーキュランス PP710由来、株式会社林原調製品)、10Uのイソプルラナーゼ(アスペルギルス・ニガー由来、メガザイム社販売)、1,000fuの澱粉枝切り酵素(イソアミラーゼ、株式会社林原調製品)、及び、1.0Uのα-アミラーゼ(商品名『クライスターゼ E5CC』、天野エンザイム株式会社販売)を添加し、さらに防腐剤としてピロ亜硫酸ナトリウムを終濃度0.01質量%になるよう添加した後、30℃で72時間反応させた。反応終了後、96℃で30分間加熱して酵素を失活させた後、反応液の糖組成をHPLCにて測定したところ、D-グルコース12.1質量%、イソマルトース17.0質量%、イソマルトトリオース16.3質量%、イソマルトテトラオース13,4質量%、イソマルトペンタオース10.5質量%、イソマルトヘキサオース8.5質量%、イソマルトヘプタオース以上の糖22.2質量%であった。このイソマルトオリゴ糖含有糖液は脱色、脱塩、濃縮した後、イソマルトオリゴ糖高含有シラップとして、甘味料、発酵用炭素源、試薬、化学品、医薬品の原料及び中間体などとして有利に利用できる。
<澱粉部分分解物からのイソマルトオリゴ糖の製造>
澱粉部分分解物(商品名『パインデックス#100』、松谷化学工業株式会社販売)を、1mM塩化カルシウムを含む20mM酢酸緩衝液(pH5.5)に終濃度20質量%になるよう溶解し、これに基質固形物1g当たりα-グルコシル転移酵素(アルスロバクター・グロビホルミス PP349由来、株式会社林原調製品)を10U、オーレオバシディウム・プルランス IFO6353を常法により培養し、培養液を遠心分離し、部分精製して得たイソプルラナーゼ酵素液をイソプルラナーゼとして5U、イソアミラーゼ(株式会社林原調製品)を1,000fu、及び、1.0Uのα-アミラーゼ(商品名『クライスターゼ E5CC』、天野エンザイム株式会社販売)を添加し、さらに防腐剤としてピロ亜硫酸ナトリウムを終濃度0.01質量%になるよう添加した後、30℃で72時間反応させた。反応終了後、96℃で30分間加熱して酵素を失活させた後、反応液の糖組成をHPLCにて測定したところ、D-グルコース11.1質量%、イソマルトース15.5質量%、イソマルトトリオース14.9質量%、イソマルトテトラオース12.6質量%、イソマルトペンタオース10.3質量%、イソマルトヘキサオース9.0質量%、イソマルトヘプタオース以上の糖26.6質量%であった。このイソマルトオリゴ糖含有糖液を冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って、活性炭で脱色し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮し、乾燥し、DP2(イソマルトース)以上のイソマルトオリゴ糖含量が88.9質量%のイソマルトオリゴ糖含有粉末を得た。本品は、優れた保湿性、低甘味性、浸透圧調節性、賦形性、照り付与性、保湿性、粘性、糖質晶出防止性、難醗酵性、澱粉の老化防止性等を有していることから、各種飲食品、健康食品、飼料、餌料、化粧品、医薬品、嗜好品などに有利に用いることができる。
<イソマルトオリゴ糖組成物>
実施例1の方法で得られたイソマルトオリゴ糖高含有シラップを水で希釈し、強酸性カチオン交換樹脂(商品名『アンバーライトCR-1310』、Na型、オルガノ株式会社製)を用いてカラムクロマトグラフィーを行なった。即ち、前記樹脂を内径12.5cmのジャケット付きステンレス製カラム10本に充填し、これらカラムを直列接続して樹脂層全長を16mとした。カラム内温度を40℃に維持しつつ、前記希釈液を樹脂量に対して1.5%(v/v)加え、これに40℃の温水をSV0.2で流して分画し、溶出液の糖組成をHPLC法でモニターしながら、D-グルコース画分及びDP7以上のイソマルトオリゴ糖画分を除去してDP2~DP6のイソマルトオリゴ糖画分を採取し、これを精製し、イソマルトオリゴ糖含有液を固形物当たりの収率約65%で得た。本液を常法に従って、脱色、脱塩、濃縮して、濃度約75%のイソマルトオリゴ糖シラップを得た。本品は、難結晶性で優れた保湿性、低甘味性、浸透圧調節性、賦形性、照り付与性、保湿性、粘性、糖質晶出防止性、難醗酵性、澱粉の老化防止性等を有していることから、各種飲食品、健康食品、飼料、餌料、化粧品、医薬品、嗜好品などに有利に用いることができる。
<イソマルトオリゴ糖アルコール含有シラップ>
実施例3で得たイソマルトオリゴ糖シラップに活性化したラネーニッケルを加え、常法により水素添加した後、ラネーニッケルを除去し、活性炭で脱色し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩、精製し、固形物当たりイソマルチトール25.8質量%、イソマルトトリイトール24.0質量%、イソマルトテトライトール20.1質量%、イソマルトペンタイトール16.1質量%、イソマルトヘキサイトール10.6質量%、その他の糖アルコールを3.4質量%含有するイソマルトオリゴ糖アルコール含有シラップを固形物当たり約90%の収率で得た。本イソマルトオリゴ糖アルコール含有シラップを濃度約75質量%に濃縮し、缶に充填し製品とした。本品は、非還元性、非吸湿性、低甘味性、浸透圧調節性、賦形性、照り付与性、保湿性、粘性付与性、糖質晶出防止性、難醗酵性、澱粉の老化防止性等を有していることから、各種飲食品、健康食品、健康補助食品、飼料、餌料、化粧品、医薬品、嗜好品などに有利に用いることができる。
<水羊羹>
400mLの水道水に棒寒天1本を入れ、火にかけ沸騰させた後、黒砂糖25g、上白糖50g及び実施例1の方法で調製したイソマルトオリゴ糖含有シラップを固形分として20g加え、さらに漉し餡約300gを加えた後、中火で煮ながらあくを取り、沸騰させて5分後に火を止め、適量の食塩を加えよく撹拌した後、型に流し込み、室温に30分間保持して固め、さらに冷蔵庫で冷却して水ようかんを作成した。本品はイソマルトオリゴ糖を含有し、上品な甘さを有する水羊羹である。
<乳酸飲料>
実施例2の方法で調製したイソマルトオリゴ糖含有粉末を100gとり、これに牛乳300mLを加えた後、加熱沸騰させ、火を止めてあくを取り、自然冷却した。品温が37℃以下になったことを確認した後、適量のクエン酸、乳酸、乳酸エッセンス及びレモンエッセンスを入れて良く撹拌し、ビンに詰め蓋をして冷蔵庫で冷却し、乳酸飲料を作成した。本品はイソマルトオリゴ糖を含有し、甘さとカロリーを低減した乳酸飲料である。
<乳液>
下記の配合に基づき乳液を調製した。
(配合成分) 質量%
スクワラン 5.0
オリーブ油 5.0
ホホバ油 5.0
セチルアルコール 1.5
グリセリンモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル 3.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート 2.0
1,3-ブチレングリコール 1.0
グリセリン 2.0
実施例4の方法で得たイソマルトオリゴ糖アルコール 7.0
防腐剤(パラオキシ安息香酸エステル) 適量
香料 適量
精製水 100とする残余
α-グルコシル転移酵素とイソプルラナーゼとを組合せて用いる本発明のイソマルトオリゴ糖の製造法の確立は、澱粉又は澱粉部分分解物を原料とした工業的規模でのイソマルトオリゴ糖の生産、さらにはイソマルトオリゴ糖アルコールの生産を可能にするものであり、製糖産業のみならず、これに関連する食品、化粧品、医薬品産業における意義が極めて大きい。
図2において、
G1:D-グルコース
G2:マルトース
G3:マルトトリオース
G4:マルトテトラオース
G5:マルトペンタオース
G6:マルトヘキサオース
G7:マルトヘプタオース
G8:マルトオクタオース
IG2:イソマルトース
IG3:イソマルトトリオース
IG4:イソマルトテトラオース
Gn:マルトオリゴ糖マーカー
IGn:イソマルトオリゴ糖マーカー
レーン0:澱粉部分分解物(原料基質)
レーン1:澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素を作用させて得た反応物
レーン2:澱粉部分分解物にイソプルラナーゼを作用させて得た反応物
レーン3:澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素及びイソプルラナーゼを作用させて得た反応物
レーン4:澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素、イソプルラナーゼ及びイソアミラーゼを作用させて得た反応物
レーン5:澱粉部分分解物にα-グルコシル転移酵素、イソプルラナーゼ、イソアミラーゼ及びα-アミラーゼを作用させて得た反応物
図3において、
G1:D-グルコース
IG2:イソマルトース
IG3:イソマルトトリオース
IG4:イソマルトテトラオース
IG5:イソマルトペンタオース
IG6:イソマルトヘキサオース
IG7:イソマルトヘプタオース
IG8:イソマルトオクタオース
IG9:イソマルトノナオース
IG10:イソマルトデカオース

Claims (5)

  1. 澱粉又は澱粉部分分解物に作用し、そのα-1,4グルカン鎖の非還元末端グルコース残基の6位水酸基にD-グルコース若しくはグルコース重合度2以上のα-1,6グルカンがα-1,6結合した分岐構造を有する分岐α-グルカンを生成する活性を有するα-グルコシル転移酵素と、イソプルラナーゼとを組合せ、澱粉又は澱粉部分分解物に作用させることによりイソマルトオリゴ糖を生成させる工程と、生成したイソマルトオリゴ糖を採取する工程を含んでなるイソマルトオリゴ糖の製造方法。
  2. 前記α-グルコシル転移酵素が、バチルス(Bacillus)属微生物又はアルスロバクター(Arthrobacter)属微生物由来の酵素である請求項1記載のイソマルトオリゴ糖の製造方法。
  3. 前記イソプルラナーゼが、アスペルギルス(Aspergillus)属微生物又はオーレオバシディウム(Aureobasidium)属微生物由来の酵素である請求項1又は2記載のイソマルトオリゴ糖の製造方法。
  4. 前記イソマルトオリゴ糖を生成させる工程において、さらに、澱粉枝切酵素、α-アミラーゼ、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ及びグルコアミラーゼから選ばれる1種又は2種以上の酵素を併用する請求項1乃至3のいずれかに記載のイソマルトオリゴ糖の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載のイソマルトオリゴ糖の製造方法に、さらにイソマルトオリゴ糖を水素添加することにより還元しイソマルトオリゴ糖アルコールに変換する工程と、変換されたイソマルトオリゴ糖アルコールを採取する工程とを付加してなるイソマルトオリゴ糖アルコールの製造方法。
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