JP2022021666A - ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板 - Google Patents

ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板 Download PDF

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Abstract

【課題】絶縁信頼性に優れるプリプレグを与えることのできる低誘電ガラスクロス、並びに、当該低誘電ガラスクロスを用いたプリプレグ及びプリント配線板を提供することを目的とする。【解決手段】複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として構成されたガラスクロスであって、下記式(1)において、380℃、2時間の加熱処理におけるガラス成分由来の重量減少割合と、前記ガラスモノフィラメントの平均半径との積として求められる重量減少係数が、0.38以上0.9以下であり、白色度が、95以上である、ガラスクロス。重量減少係数=前記重量減少割合(%)×前記ガラスフィラメントの平均半径(μm)・・・(1)【選択図】なし

Description

本発明は、ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板に関する。
近年の情報通信社会の発達とともに、データ通信及び/又は信号処理が大容量で高速に行われるようになり、電子機器に用いられるプリント配線板の低誘電率化が著しく進行している。そのため、プリント配線板を構成するガラスクロスにおいても、低誘電ガラスクロスが多く提案されている。
例えば、特許文献1に開示されている低誘電ガラスクロスは、従来から一般に使用されているEガラスクロスに対して、ガラス組成中にB23を多く配合し、同時にSiO2等の他の成分の配合量を調整することで、低誘電率を実現している。
特開2007-262632号公報
ガラスクロスを低誘電化するためにガラス糸中のB23含有割合を増加すると、ガラス糸の弾性係数が低下し、製造工程中のガラス糸の切断が生じやすくなる。そのため、特許文献1に記載されるように、ガラス繊維束の紡糸時や整経時にサイズ剤で被覆処理が施こされ、製織後にヒートクリーニングと呼ばれる処理を施し、ガラス繊維束に付着している有機物であるサイズ剤を除去することが行われている。
特許文献1に記載されている、従来から一般的に行われるヒートクリーニング法としては、例えば、350~500℃でのバッチ式ヒートクリーニング法や、550~700℃の高温で連続的に加熱炉に通すヒートクリーニング法がある。しかしながら、低誘電ガラスクロスにおいて、このようなヒートクリーニング法を適用すると、それにより得られたガラスクロスを用いた場合に、絶縁信頼性が劣るプリプレグが混在することがわかってきた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、絶縁信頼性に優れるプリプレグを与えることのできる低誘電ガラスクロス、並びに、当該低誘電ガラスクロスを用いたプリプレグ及びプリント配線板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定の重量減少傾向を有するガラス糸において、白色度を所定のものとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として構成されたガラスクロスであって、
下記式(1)において、380℃、2時間の加熱処理におけるガラス成分由来の重量減少割合と、前記ガラスモノフィラメントの平均半径との積として求められる重量減少係数が、0.38以上0.9以下であり、
重量減少係数=前記重量減少割合(%)×前記ガラスフィラメントの平均半径(μm)・・・(1)
白色度が、95以上である、
ガラスクロス。
〔2〕
前記ガラスクロスの、
Si含量が、SiO2換算で、40~60質量%であり、
B含量が、B23換算で、15~30質量%であり、
〔1〕に記載のガラスクロス。
〔3〕
前記Fe含量が、Fe22換算で、0.001~0.10質量%である、
〔1〕又は〔2〕に記載のガラスクロス。
〔4〕
1GHzの周波数において5.0以下の誘電率を有する、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のガラスクロス。
〔5〕
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のガラスクロスと、
該ガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂と、を有する、
プリプレグ。
〔6〕
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のガラスクロスを備える、
プリント配線板。
本発明によれば、絶縁信頼性に優れるプリプレグを与えることのできる低誘電ガラスクロス、並びに、当該低誘電ガラスクロスを用いたプリプレグ及びプリント配線板を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
〔ガラスクロス〕
本実施形態のガラスクロスは、複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として構成されたガラスクロスであって、下記式(1)において、380℃、2時間の加熱処理におけるガラス成分由来の重量減少割合とガラスフィラメントの平均半径の積として求められる重量減少係数が、0.38以上0.90以下であり、白色度が、95以上である。
重量減少係数=重量減少割合(%)×ガラスフィラメントの平均半径(μm)・・・(1)
従来ヒートクリーニングを経て得られる低誘電率ガラスクロスを用いた場合に、絶縁信頼性に劣るプリント配線板が得られることがわかってきた。低誘電効果の大きいガラスクロスほど、絶縁信頼性が劣る傾向にある。この理由は定かではないが、ヒートクリーニングにおいて加熱除去されるはずのサイズ剤が難燃性の反応生成物を生じ、これが除去されずにガラスクロス上に残留することが原因の一つであると考えられる。即ち、低誘電ガラスクロスを構成する成分が何らかの触媒的作用をもたらし、サイズ剤が難燃性成分に変性し、除去しにくくしていることが推察される。この様な状況は、従来のEガラスクロスなどにおいては顕在化されていなかった。残留量が同程度である場合の絶縁信頼性の低下は、Eガラスクロスなどと比べて低誘電ガラスクロスでより顕著となる傾向があるものと考えられる。さらに、低誘電ガラスクロスは、高温下においてガラスを構成する成分が揮発しやすい傾向にあるため、ヒートクリーニングにおいて十分に高温処理を行うことが困難であるという制限も存在する。従って、本実施形態では、所定の重量減少傾向を有するガラスクロスであることを規定する。
さらに、本実施形態においては、ガラスクロスの白色度についても調整する。本実施形態のガラスクロスは、後述するように、ガラスクロスのガラス糸に付着したサイズ剤を除く脱糊工程を経て得られる。この脱糊工程では、ガラスクロスを熱処理することによりガラス糸に付着したサイズ剤を除去するが、上記のとおり高温処理が困難であるガラスクロスにおいては、サイズ剤の除去が不十分となりガラスクロスに残留することがある。この残留について検討をしたところ、ガラスクロス表面ではサイズ剤の残留が少なく、残留したとしてもさらさらして物理的に除去しやすい白っぽい灰状のものが多いことが分かった。これに対して、織目(経糸と横糸の交錯点)等のガラス糸の入り組んだ部分においては、除去しにくい色の濃い粘稠物が多いことがわかってきた。これは、ガラス糸の入り組んだ部分においてはサイズ剤が除去されにくく、熱処理の経過とともに粘稠物(難燃性の反応生成物)を生じさせたものと推察される。さらに検討を進めると、このような粘稠物は比較的吸湿性が高く、ガラスクロスの吸湿性を向上させ、絶縁信頼性を低下させることがわかってきた。そして、特に、重量減少傾向が所定のものは、ガラス糸から成分が揮発して抜けた部分が吸湿しやすく、それにこの粘稠物が付着するとより一層の絶縁信頼性の低下を招くことがわかってきた。
本実施形態においては、当該粘稠物量を示す指標として白色度を用い、所定の重量減少傾向を満たすガラスクロスにおいて、白色度が所定値以上であることを規定する。これにより、絶縁信頼性に優れるプリント配線板を与えることのできるガラスクロスを提供することができる。以下、本実施形態の構成についてより詳細に説明する。
(重量減少係数)
ガラスクロスを、380℃、2時間の加熱処理をした場合におけるガラス成分由来の重量減少割合とガラスフィラメントの平均半径との積として求められる重量減少係数(以下、単に「重量減少係数」ともいう。)が、0.38以上0.90以下であり、好ましくは0.42以上0.85以下であり、より好ましくは0.46以上0.80以下である。
「ガラス成分由来の重量減少割合」とは、380℃、2時間の加熱処理をした場合における重量減少割合が、加熱処理中にガラス成分の揮発等により消失することに起因するものであることを意味する。後述するように本実施形態の重量減少割合は、ガラスクロスにシランカップリング剤などの表面処理剤が付着している場合や有機系不純物が多く付着している場合には、予めアルコール類やアセトン等の良溶媒で物理吸着しているシランカップリング剤などの表面処理剤や有機系不純物付着成分を除去してから算出する。したがって、そのような380℃で加熱分解する付着成分を除去した後のガラスクロスの加熱処理後の重量減少割合はガラス成分由来の減少割合となる。
また、この重量減少割合は、ガラス糸のフィラメント径に依存することが確認された。ガラスフィラメント径によって、重量減少割合は異なり、フィラメント径が小さいほど重量減少量が大きくなる。一方で、重量減少割合とフィラメント半径の積は、フィラメント径によらずほぼ一定値になる。そのため、本実施形態では重量減少係数としてフィラメント径で規格化している。
重量減少係数が0.38以上であることにより、そのままでは吸湿性の粘稠物の影響を受けやすく、得られるプリプレグの絶縁信頼性の低下を引き起こしやすい。すなわち、粘稠物の残留量が同程度である場合の絶縁信頼性の低下は、重量減少係数が小さいEガラスクロスなどと比べて低誘電ガラスクロスでより顕著となる傾向があるものと考えられる。これに対して、本実施形態では、粘稠物の残量指標として白色度を用い、重量減少傾向と白色度とを各々特定範囲に規定し組み合わせることで、得られるプリント配線板の絶縁信頼性を向上させることができる。また、重量減少係数が0.90以下であることにより、ガラス自体の吸湿性が大きくなりすぎないため、著しい絶縁信頼性の低下を抑制することができる。
重量減少割合の測定方法は、以下の手順で行うことができる。まず、ガラスクロスを105℃±5℃の乾燥機の中に入れて60分間乾燥し、その後、ガラスクロスをデシケータに移し、室温まで放冷する。放冷後、ガラスクロスの重量を0.1mg以下の単位で量る(ガラスクロス重量a)。ついで、ガラスクロスを380℃で2時間加熱し、その後、ガラスクロスをデシケータに移し、室温まで放冷する。放冷後、ガラスクロスの重量を0.1mg以下の単位で量る(加熱処理後のガラスクロス重量b)。そして、加熱処理により減少した重量を求め、下記式(2)より、重量減少割合(%)を算出する。
重量減少割合(%)= (a-b)/a×100 ・・・(2)
上記のようにして得られる重量減少割合は、好ましくは0.05~0.7%であり、より好ましくは0.1~0.5%であり、さらに好ましくは0.12~0.4%である。重量減少割合が0.05%以上であることにより、そのままでは絶縁信頼性低下を引き起こしやすい。しかしながら、後述する白色度を調整することにより、本実施形態にあっては、絶縁信頼性低下を抑制することができ、また、ガラスクロスを構成する組成の関係からより低い誘電率を有するガラスクロスを得ることもできる。また、重量減少割合が0.7%以下であることにより、著しい絶縁信頼性の低下を抑制することができる。
次いで、JIS R3420に準拠してガラスクロスを構成するガラス糸のガラスフィラメントの平均直径を測定し、該フィラメント径の半分量として平均フィラメント径を求める。本実施形態において、単にガラスフィラメントというときは、ガラスモノフィラメントを意味する。また、重量減少係数の算出に用いるガラスフィラメントの平均半径は、加熱処理前の平均半径である。このようにして求められるガラスフィラメントの平均半径は、好ましくは1.25~4.5μmであり、より好ましくは1.5~3.75μmであり、さらに好ましくは1.75~2.7μmである。
なお、上述した重量減少割合の測定方法に用いるガラスクロスには、適宜前処理をすることができる。例えば、脱糊処理(ヒートクリーニング)後の中間ロールから引き出したガラスクロスには、付着物がガラスフィラメントに付着していないため、そのまま上述した重量減少割合の測定方法に用いることができる。
一方で、ガラスクロスにシランカップリング剤等の表面処理剤が塗布してあるガラスクロスを対象として重量減少割合を求める際は、予めアルコール類、アセトン等の良溶剤で、物理吸着しているシランカップリング剤等の表面処理剤を洗浄除去したのちに、上記方法で重量減少係数を求めることができる。
なお、「物理吸着しているシランカップリング剤」とは、ガラスフィラメントに付着しているシランカップリング剤であって、化学結合によりガラスフィラメントに結合しているシランカップリング剤ではないものをいう。これに対して、化学結合によりガラスフィラメントに結合しているシランカップリング剤は、「化学吸着しているシランカップリング剤」という。
また、ガラスクロスに、有機系不純物(ガラス糸製造過程で塗布する澱粉系サイジング剤、前期サイジング剤のヒートクリーニング工程における燃焼残さ等)が含まれる場合も、同様に、予めアルコール類、アセトン等の洗浄除去操作により、ガラスクロスに付着している有機系不純物を除去したのち、上記方法で重量減少係数を求めることができる。
上記洗浄は、物理吸着しているシランカップリング剤や有機系不純物を除去するものであり、化学吸着しているシランカップリング剤を除去するものではない。しかしながら、380℃で2時間加熱したとしても、化学吸着しているシランカップリング剤は分解しないか、仮に一部が分解したとしても誤差範囲を超えるものではないため、本実施形態の重量減少割合の測定においては、化学吸着しているシランカップリング剤を前処理で除去する必要はない。
なお、前処理をするかどうかの判断を単純化する観点から、一律に、予めアルコール類、アセトン等の良溶剤によって洗浄したガラスクロスを重量減少割合の測定に用いるようにしてもよい。これにより、脱糊処理(ヒートクリーニング)後の中間ロールから引き出したガラスクロスであっても、物理吸着しているシランカップリング剤や有機系不純物が付着しているガラスクロスであっても、同じ状態で重量減少割合の測定を行うことができる。
また、別の方法として、上記の重量減係数を求める際に、加熱前後の表面処理剤量や有機系不純物を定量し、表面処理剤起因の重量減少分を得られた重量減少から差し引くことで、ガラス成分由来の重量減少係数を求めることもできる。表面処理剤起因の重量減少分を求める方法としては、特許6472082号公報などに記載のシランカップリング剤の定量方法など、公知の方法を用いてもよい。
重量減少係数は、ガラスクロスの組成のうち、例えば、比較的に揮発しやすい成分、例えばB含量などの増減により調整することができ、同様の観点からその他の成分の増減によっても調整することができる。
また、重量減少係数は、ガラスクロスにおけるガラスの空間充填率の調整(織密度や厚さ)、開繊加工等によるガラス糸束を構成するモノフィラメントの解し具合の調整、用いるガラス糸のモノフィラメント径の調整、等により、ガラス表面が高温雰囲気に晒される機会の増減によっても調整することができる。
即ち、重量減少係数は、ガラスクロスの組成のみによって決定されるものではない。
(白色度)
白色度は、95以上であり、好ましくは95.5以上であり、より好ましくは96以上であり、さらに好ましくは97以上である。なお、白色度の上限は特限定されないが、上限はガラス自体の色調を反映した値となり99.5程度である。白色度が95以上であることにより、絶縁信頼性がより向上する。白色度は、JIS2000 L1916繊維製品の自色度測定方法に準じて測定することができる。
また、白色度はサイズ剤(あるいは糊剤ともいう。)の使用量を低減したり、熱処理温度を高くしたり、サイズ剤の組成を変えたり、ガラスクロスの組成を変えることにより向上させることができる。
(組成)
以下、本実施形態のガラスクロスの組成について説明する。なお、ガラスクロスの組成とは、ガラスクロスを構成するガラス糸の組成と同義である。本実施形態のガラスクロスの組成において、Fe含量は、Fe23換算で、好ましくは0.001質量%以上0.10質量%以下であり、より好ましくは0.001質量%以上0.08質量%以下であり、更に好ましくは0.01質量%以上0.05質量%以下である。Fe含量が0.10質量%以下であることにより、得られるプリプレグの絶縁信頼性がより向上することができる。これは、比較的に汎用な触媒活性を有すると考えられるFe含量を特定範囲以下に少なくすることで、サイズ剤が難燃性成分に変性されるのが抑制されるためと推測される。Fe含量の下限は、特に制限されないが、0.001質量%以上である。Fe含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量、原材料からのマグネットフィルター等による精製除去、追添等に応じて調整することができる。
ガラスクロスのSi含量は、SiO2換算で、好ましくは40~60質量%であり、より好ましくは45~55質量%であり、さらに好ましくは47~53質量%であり、48~52質量%である。Siはガラス糸の骨格構造を形成する成分であり、Si含量が40質量%以上であることにより、ガラス糸の強度がより向上し、ガラスクロスの製造工程及びガラスクロスを用いたプリプレグの製造などの後工程において、ガラスクロスの破断がより抑制される傾向にある。また、Si含量が40質量%以上であることにより、ガラスクロスの誘電率がより低下する傾向にある。一方で、Si含量が60質量%以下であることにより、ガラスフィラメントの製造過程において、溶融時の粘度がより低下し、より均質なガラス組成のガラス繊維が得られ、結果としてガラスクロスは破断しにくいものとなる。Si含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
ガラスクロスのB含量は、B23換算で、好ましくは15~30質量%であり、より好ましくは17~28質量%であり、さらに好ましくは20~27質量%であり、よりさらに好ましくは21~25質量%であり、さらにより好ましくは21.5~24質量%である。B含量が15質量%以上であることにより、誘電率がより低下する傾向にある。また、B含量が30質量%以下であることにより、耐吸湿性が向上し、絶縁信頼性がより向上する傾向にある。B含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。なお、ガラスフィラメント作製中に変動しうる場合には、それを予め見越して、仕込み量を調整することができる。
ガラスクロスのF含量は、好ましくは0.001~0.1質量%であり、より好ましくは0.001~0.07質量%であり、さらに好ましくは0.001~0.05質量%である。ここで、F含量は、F2換算で得られる値である。F含量が上記範囲内であることにより、ガラスクロスの破断がより抑制される傾向にある。F含量の調製によりガラスクロスの破断が抑制される理由は限定されるものではないが、以下のように考えられる。Fはガラス製造過程の溶融ガラスの粘性を小さくする。そのため、F含量が所定の範囲であることにより、Fe等の金属成分がガラス構造に取り込まれる際に、局在化することなく均一に分散し、均一なガラスを形成することができる。Feが均一に分散していることにより、上記のサイズ剤が難燃性成分に変性されるのを抑制する作用が、より効果的に発現される可能性が考えられる。F含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
また、ガラスフィラメントは、上記他、その他の組成を有していてもよい。その他の組成としては、特に限定されないが、例えば、Al、Ca、Mg、P、Na、K、Ti、Znなどが挙げられる。
ガラスクロスのAl含量は、Al23換算で、好ましくは10~20質量%であり、より好ましくは12~18質量%であり、さらに好ましくは14~17質量%である。Al含量が上記範囲内であることにより、電気特性、強度がより向上する傾向にある。Al含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
ガラスクロスのCa含量は、CaO換算で、好ましくは1.0~6.0質量%であり、好ましくは2.0~5.0質量%であり、より好ましくは2.5~4.0質量%である。Ca含量が1.0質量%以上であることにより、ガラスフィラメントの製造過程において、溶融時の粘度がより低下し、より均質なガラス組成のガラス繊維が得られる傾向にある。また、Ca含量が6.0質量%以下であることにより、誘電率がより向上する傾向にある。Ca含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
ガラスクロスのMg含量は、MgO換算で、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.01~1.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.05~0.5質量%以下であり、さらにより好ましくは0.05~0.3質量%以下である。Mg含量が5.0質量%以下であることにより、ガラスクロス製造時の開繊工程や表面処理工程等において、ガラスクロスが濡れた状態でスクイズロールやニップロール等を通過する際に、破断が生じ難くなる傾向にある。また、ガラスフィラメント製造時の相分離が抑制され、得られるガラスフィラメントの耐吸湿性がより向上する。これにより、得られるプリント配線板は、高湿度環境の使用環境の影響を受けにくく、誘電率の環境依存性を低減することができる。Mg含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
ガラスクロスのP含量は、P25換算で、好ましくは1.0~7.0質量%であり、より好ましくは2.0~6.0質量%であり、さらに好ましくは3.0~6.0質量%であり、よりさらに好ましくは3.0~5.5質量%である。P含量が1.0質量%以上であることにより、誘電率がより低下する傾向にある。また、P含量が7.0質量%以下であることにより、ガラスクロス製造時の開繊工程や表面処理工程等において、ガラスクロスが濡れた状態でスクイズロールやニップロール等を通過する際に、破断が生じ難くなる傾向にある。また、ガラスフィラメント製造時の相分離が抑制され、得られるガラスフィラメントの耐吸湿性がより向上する。これにより、得られるプリント配線板は、高湿度環境の使用環境の影響を受けにくく、誘電率の環境依存性を低減することができる。P含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
なお、上記各含量は、ICP発光分光分析法により測定することができる。具体的には、Si含量及びB含量は、秤取したガラスクロスサンプルを水酸化ナトリウムで加圧分解したのち、希硝酸で溶解してろ別する。そして、不溶解分は炭酸ナトリウムで融解して、ろ液と合わせて定容し、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得ることができる。
Fe含量、Al含量、Ca含量、Ma含量、P含量は、秤取したガラスクロスサンプルを、過塩素酸、硝酸、塩酸およびフッ化水素により加熱分解した後、希王水で加熱溶解してろ別する。ろ液は定容とする。そして、不溶解分は硫酸、硝酸、塩酸およびフッ化水素で加熱分解して定溶し、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得ることができる。なお、ICP発光分光分析装置としては、日立ハイテクサイエンス社製のPS3520VDD IIを用いることができる。
また、F含量は、秤取したガラスクロスサンプルを、管状電気炉で燃焼したのち、発生ガスを吸収液に吸収させる。この溶液について、イオンクロマトグラフィーでフッ化物イオン(F-)を測定し、試料中の含有量を求めることができる。なお、燃焼装置は三菱ケミカルアナリテック製の自動試料燃焼装置(AQF-2100S)、測定装置はThermo Fisher Scientific 製のイオンクロマトグラフ ICS-1500、を用いることができる。
ガラスクロスの弾性係数は、好ましくは50~70GPaであり、より好ましくは50~63GPaであり、さらに好ましくは53~63GPaであり、特に好ましくは53~60GPaである。ガラスクロスの弾性係数が低いほど破断が生じやすくなる。したがって弾性係数が50GPa以上であることにより、開繊工程や表面処理工程等のガラスクロスの製造工程において、ガラスクロスが濡れた状態でスクイズロールやニップロール等を通過する際に、破断が生じ難くなる傾向にある。また、プリプレグの製造などの後工程においても、ガラスクロスへの樹脂の含浸量を制御する目的でガラスクロスをスリットに通過させる際に、破断が生じにくくなる傾向にある。また、ガラス糸の弾性係数が70GPa以下であることにより、相対的に誘電率がより低下する傾向にある。弾性係数は、実施例に記載の方法により測定することができる。また、弾性係数は、ガラス糸の組成により調整することができる。
本実施形態のガラスクロスの誘電率は、1GHzの周波数において、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは4.7以下であり、さらに好ましくは4.5以下であり、特に好ましくは4.0以下である。なお、本実施形態において、誘電率という時は特に断りがない限り、1GHzの周波数におけるものをいう。
(構成)
ガラス糸は複数本のガラスフィラメントを束ね、必要に応じて撚って得られるものであり、ガラスクロスは上記ガラス糸を経糸及び緯糸として製織して得られるものである。ガラス糸はマルチフィラメント、ガラスフィラメントはモノフィラメントにそれぞれ分類される。
経糸及び緯糸を構成するガラスフィラメントの平均直径は、各々独立して、好ましくは2.5~9μmであり、より好ましくは3.0~7.5μmであり、さらに好ましくは3.5~5.4μmである。ガラスフィラメントの平均直径が上記範囲内であることにより、得られる基板を、メカニカルドリルや炭酸ガスレーザ、UV-YAGレーザにより加工する際、加工性がより向上する傾向にある。そのため薄くて高密度実装のプリント配線板を実現することができる。特に、平均直径が5.4μm以下になると、同じ加熱時間での重量減少量が大きくなるためにガラスクロス自体の吸湿性が増加する傾向にあるのに加え、ガラスフィラメントの単位体積当りの表面積が増えることにより、サイズ剤由来の吸湿性の粘稠物の付着量が多くなり、ガラスクロスの吸湿性が助長されてしまう点で、本実施形態の絶縁信頼性の向上効果がより重要となる。また、平均直径が2.5μm以上であることにより、開繊工程や表面処理工程等のガラスクロスの製造工程において、ガラスクロスが濡れた状態でスクイズロールやニップロール等を通過する際に、破断が生じ難くなる傾向にある。また、プリプレグの製造などの後工程においても、ガラスクロスへの樹脂の含浸量を制御する目的でガラスクロスをスリットに通過させる際に、破断が生じにくくなる傾向にある。
ガラスクロスを構成する経糸及び緯糸の打ち込み密度は、好ましくは30~120本/25mmであり、より好ましくは40~110本/25mmであり、さらに好ましくは50~100本/25mmである。
ガラスクロスの厚さは、好ましくは8~100μmであり、より好ましくは10~70μmであり、さらに好ましくは12~50μmである。ガラスクロスの厚さが上記範囲内であることにより、薄くて比較的に強度の高いガラスクロスが得られる傾向にある。なお、重量減少係数はガラスクロスの面積に依存し、ガラスクロスを構成するフィラメントの径に依存するため、厚さには依存し難い。当該傾向は少なくとも上記厚さ範囲においては保たれる。
ガラスクロスの布重量(目付け)は、好ましくは8~250g/m2であり、より好ましくは8~100g/m2であり、さらに好ましくは8~50g/m2であり、特に好ましくは8~35g/m2である。
ガラスクロスの織り構造については、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り、等の織り構造が挙げられる。このなかでも、平織り構造がより好ましい。
(表面処理)
ガラスクロスは表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。表面処理剤としては、特に制限されないが、例えば、シランカップリング剤が挙げられ、必要に応じて水、有機溶剤、酸、染料、顔料、界面活性剤等を合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、式(1)で示される化合物が挙げられる。
X(R)3-nSiYn ・・・(1)
(式(1)中、Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも1つ以上有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは、1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基及びフェニル基からなる群より選ばれる基である。)
Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも3つ以上を有する有機官能基であることが好ましく、Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも4つ以上を有する有機官能基であることがより好ましい。
上記のアルコキシ基としては、いずれの形態も使用できるが、ガラスクロスへの安定処理化の観点から、炭素数5以下のアルコキシ基が好ましい。
シランカップリング剤としては、具体的には、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリ同エトキシシラン及びその塩酸塩、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の公知の単体、又はこれらの混合物が挙げられる。
シランカップリング剤の分子量は、好ましくは100~600であり、より好ましくは150~500であり、さらに好ましくは200~450である。この中でも、分子量が異なる2種類以上のシランカップリング剤を用いることが好ましい。分子量が異なる2種類以上のシランカップリング剤を用いてガラス糸の表面を処理することにより、ガラスクロスの表面における表面処理剤密度が高くなり、マトリックス樹脂との反応性がさらに向上する傾向にある。
〔ガラスクロスの製造方法〕
本実施形態のガラスクロスの製造方法は、特に限定されないが、例えば、ガラス糸を製織してガラスクロスを得る製織工程と、ガラスクロスのガラス糸を開繊する開繊工程と、ガラスクロスのガラス糸に付着したサイズ剤を除く脱糊工程と、を有する方法が挙げられる。また、必要に応じて、シランカップリング剤による表面処理工程を有していてもよい。
製織方法は、所定の織構造となるように緯糸と縦糸を折るものであれば特に制限されない。また、開繊方法としては、特に制限されないが、例えば、スプレー水(高圧水開繊)、バイブロウォッシャー、超音波水、マングル等で開繊加工する方法が挙げられる。
さらに、脱糊方法としては、特に制限されないが、例えば、サイズ剤を加熱除去する方法が挙げられる。なお、サイズ剤は製織工程等において、ガラス糸の糸切れなどが生じないよう保護する目的で用いられるものである。このようなサイズ剤としては、特に制限されないが、例えば、澱粉系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダーが挙げられる。なお、サイズ剤を加熱除去する際の温度としては、破断強度を維持しながら十分にサイズ剤を除去する観点から、好ましくは300~500℃であり、より好ましくは330~450℃であり、さらに好ましくは350~430℃である。
また、表面処理方法としては、シランカップリング剤を含む表面処理剤をガラスクロスと接触させ、乾燥等する方法が挙げられる。なお、ガラスクロスへの表面処理剤の接触は、表面処理剤中にガラスクロスを浸漬させる方法や、ロールコーター、ダイコーター、又はグラビアコーター等を用いてガラスクロスに表面処理剤を塗布する方法等が挙げられる。表面処理剤の乾燥方法としては、特に制限されないが、例えば、熱風乾燥や、電磁波を用いる乾燥方法が挙げられる。
〔プリプレグ〕
本実施形態のプリプレグは、上記ガラスクロスと、該ガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂組成物とを有する。上記ガラスクロスを有するプリプレグは、絶縁信頼性がより向上したものとなり、最終製品の歩留まりの高いものとなる。また、誘電特性に優れ、耐吸湿性に優れるために使用環境の影響、特に高湿度環境で誘電率の変動が小さい、プリント配線板を提供することができるという効果も奏することができる。
本実施形態のプリプレグは、常法に従って製造することができる。例えば、本実施形態のガラスクロスに、エポキシ樹脂のようなマトリックス樹脂を有機溶剤で希釈したワニスを含浸させた後、乾燥炉にて有機溶剤を揮発させ、熱硬化性樹脂をBステージ状態(半硬化状態)にまで硬化させることにより製造することができる。
マトリックス樹脂組成物としては、上述のエポキシ樹脂の他に、ビスマレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、BT樹脂、官能基化ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、全芳香族ポリエステルの液晶ポリマー(LCP)、ポリブタジエン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂;及び、それらの混合樹脂等が挙げられる。誘電特性、耐熱性、耐溶剤性、及びプレス成形性を向上させる観点から、マトリックス樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂で変性した樹脂を用いてもよい。
また、マトリックス樹脂組成物は、樹脂中にシリカ及び水酸化アルミニウム等の無機充填剤;臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤;その他シランカップリング剤;熱安定剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;顔料;着色剤;滑沢剤等を含んでいてもよい。
〔プリント配線板〕
本実施形態のプリント配線板は、上記ガラスクロスを備える。本実施形態のプリント配線板は、絶縁信頼性がより向上したものとなり、最終製品の歩留まりの高いものとなる。また、誘電特性に優れ、耐吸湿性に優れるために使用環境の影響、特に高湿度環境で誘電率の変動が小さいという効果も奏することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
〔ガラスクロスの物性〕
ガラスクロスの物性、具体的には、ガラスクロスの厚さ、経糸及び緯糸を構成するフィラメントの径、フィラメント数、経糸及び緯糸の打ち込み密度(織密度)は、JIS R3420に準拠して測定した。
〔重量減少係数〕
重量減少係数は、以下の手順で測定した。
まず、中間ロールから引き出したガラスクロスを105℃±5℃の乾燥機の中に入れて60分間乾燥し、その後、ガラスクロスをデシケータに移し、室温まで放冷した。放冷後、ガラスクロスの重量を0.1mg以下の単位で量った(ガラスクロスの重量a)。ついで、ガラスクロスを380℃で2時間加熱し、その後、ガラスクロスをデシケータに移し、室温まで放冷した。放冷後、ガラスクロスの重量を0.1mg以下の単位で量った(加熱処理後のガラスクロス重量b)。そして、加熱処理により減少した重量を求め、下記式(2)より、重量減少割合(%)を算出した。
重量減少割合(%)= (a-b)/a×100 ・・・(2)
次いで、JIS R3420のB法に準拠してモノフィラメントの直径を測定し、その1/2の値をモノフィラメントの半径とした。なお、JIS R3420のB法には、無作為に25個のフィラメント断面の直径を測定するとあるが、ガラス糸(マルチフィラメント)を構成する全モノフィラメントの直径を測定し、その平均値としてフィラメント直径を求めた。
重量減少割合(%)と、ガラスフィラメントの平均半径(μm)をもちいて、下記式(1)より、重量減少係数を算出した。
重量減少係数=重量減少割合(%)×ガラスフィラメントの平均半径(μm) ・・・(1)
〔ガラス糸の組成〕
ガラスクロスの組成は、ICP発光分光分析法により測定した。具体的には、Si含量及びB含量は、秤取したガラスクロスサンプルを水酸化ナトリウムで加圧分解したのち、希硝酸で溶解してろ別した。不溶解分は炭酸ナトリウムで融解して、ろ液と合わせて定容し、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得た。
また、Fe含量、Al含量、Ca含量、Ma含量、P含量は、秤取したガラスクロスサンプルを、過塩素酸、硝酸、塩酸およびフッ化水素により加熱分解した後、希王水で加熱溶解してろ別した。ろ液は定容とした。不溶解分は硫酸、硝酸、塩酸およびフッ化水素で加熱分解して定溶し、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得た。なお、ICP発光分光分析装置としては、日立ハイテクサイエンス社製のPS3520VDD IIを用いた。
さらに、F含量は、秤取したガラスクロスサンプルを、管状電気炉で燃焼したのち、発生ガスを吸収液に吸収させた。この溶液について、イオンクロマトグラフィーでフッ化物イオン(F-)を測定し、試料中の含有量を求めた。なお、燃焼装置は三菱ケミカルアナリテック製の自動試料燃焼装置(AQF-2100S)、測定装置はThermo Fisher Scientific 製のイオンクロマトグラフ ICS-1500、を用いた。
〔白色度の測定〕
分光測色計(CM-2600d、コニカミノルタ社製)を用い、JIS2000 L1916繊維製品の自色度測定方法に準じて、白色度を測定した。なお、白色度の測定はガラスクロスを8枚折り重ねた状態で測定し、5回の測定値の平均値とした。
〔絶縁信頼性の評価〕
<基板の作製方法>
実施例、比較例で得られたガラスクロスに、エポキシ樹脂ワニス(低臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製)40質量部、O-クレゾール型ノポラックエポキシ樹脂(三菱化学社製)10質量部、ジメチルホルムアミド50質量部、ジシアンジアミド1質量部、2-エチル-4-メチルイミダゾール0.1質量部の混合物)を含浸させ、 160℃で2分間乾燥させ、実施例1~3、比較例1~6、参考例1は樹脂含量が78質量%、実施例4は樹脂含量が73質量%、実施例5は樹脂含量が58質量%のプリプレグを得た。このプリプレグをそれぞれ所定枚数重ね、さらに上下に厚さ12μmの銅箔を重ね、175℃、40kg/cm2で60分間加熱加圧して、厚さ約0.4mmの基板を得た。得られた基板の両面の銅箔上に0.15mm間隔のスルーホールを配する配線パターンを作製して、絶縁信頼性評価の試験用基板を得た。
<基板の絶縁信頼性の評価方法>
得られた試験用基板に対して温度120℃湿度85%RHの雰囲気下で10Vの電圧をかけ、抵抗値の変化を測定した。試験開始後500時間以内に抵抗が1MQ未満になった場合を絶縁不良としてカウン卜した。
試験用基板を100個作成し、このなかから任意に選んだ30個のプリプレグについて絶縁信頼性の測定を行った。その測定結果に基づいて、下記評価基準により絶縁信頼性を評価した。
A:絶縁不良を示す試験用基板はなかった。
B:絶縁不良を示すプリプレグが1つあった。
C:絶縁不良を示すプリプレグが2つあった。
D:絶縁不良を示すプリプレグが3つ以上あった。
〔実施例1~3〕
エアージェットルームにより、表1に示す組成を有するガラス糸(フィラメントの平均直径:4.0μm、フィラメント数:50本)を製織し、経糸及び緯糸の打ち込み密度がそれぞれ95本/25mm、厚さが14μmであるガラスクロスを得た。次いで、加熱により400℃、24時間でヒートクリーニング処理を行い、高圧水スプレーにより開繊工程を実施し、幅1280mm、長さ2000mのガラスクロスの中間体を得た。続いて、シランカップリング剤を用いて表面処理を行い、ガラスクロスを作製した。
〔実施例4〕
フィラメント平均直径5.0μm、フィラメント数100本からなる低誘電ガラス糸を製織し、経糸の打ち込み密度が65本、緯糸の打込み密度67本/25mmとしてガラスクロスを作製したこと以外は、実施例2と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの厚さは30μmであり、組成は表1の通りであった。
〔実施例5〕
フィラメント平均直径7.0μm、フィラメント数200本からなる低誘電ガラス糸を製織し、経糸及び緯糸の打ち込み密度を52.5本/25mmとしてガラスクロスを作製したこと以外は、実施例2と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの厚さは92μmであり、組成は表1の通りであった。
〔実施例6〕
ヒートクリーニング後に、ガラスクロスの水洗を行い、ヒートクリーニング後に残留したサイズ剤燃焼残さを洗浄除去する試みを行った以外は、比較例5と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表1の通りであった。
〔比較例1、3、6〕
ガラス糸の組成が異なる以外は、実施例1と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表1の通りであった。
〔比較例2〕
ヒートクリーニング処理時間を48時間としたこと以外は、比較例1と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表1の通りであった。
〔比較例4〕
ヒートクリーニング処理時間を48時間としたこと以外は、比較例3と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表1の通りであった。
〔比較例5〕
ヒートクリーニング処理前に、ガラスクロスを水洗してヒートクリーニング処理前にサイズ剤の低減を試みたこと以外は、比較例3と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表1の通りであった。
〔参考例1〕
ガラス糸の組成を変更し所謂Eガラス組成としたこと以外は、実施例1と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表1の通りであった。
Figure 2022021666000001
実施例のガラスクロスを用いた場合には、いずれも絶縁信頼性の高い基板を得ることができ、絶縁信頼性に劣る基板の発生率は低いものであった。また、参考例1のガラスクロスは、白色度が劣るものであったが絶縁信頼性に劣る基板の発生率は低く、絶縁信頼性の低下の問題は、従来のEガラスなどでは生じにくく、低誘電ガラスクロス特有の問題であることが示唆される。
一方で、比較例1、3のガラスクロスは、白色度が低く、絶縁信頼性に劣ることが分かった。難燃性の粘稠物の発生に起因したものと推測される。
また、比較例2,4では、ヒートクリーニング処理時間を2倍に延長することで白色度は徐々に向上するものの、その向上の程度は大きいとは言えないことが分かる。
さらに、比較例5では、ヒートクリーニング処理前にサイズ剤等を洗浄することを試みたものの、比較例3と比べて顕著な差は見られなかった。比較例6では、重量減少係数が高く、揮発成分が脱離しやすいガラスクロスでは、絶縁信頼性が劣ることが分かる。
本発明は、プリプレグ等に用いる低誘電ガラスクロスとして、産業上の利用可能性を有する。

Claims (6)

  1. 複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として構成されたガラスクロスであって、
    下記式(1)において、380℃、2時間の加熱処理におけるガラス成分由来の重量減少割合と、前記ガラスモノフィラメントの平均半径との積として求められる重量減少係数が、0.38以上0.9以下であり、
    重量減少係数=前記重量減少割合(%)×前記ガラスフィラメントの平均半径(μm)・・・(1)
    白色度が、95以上である、
    ガラスクロス。
  2. 前記ガラスクロスの、
    Si含量が、SiO2換算で、40~60質量%であり、
    B含量が、B23換算で、15~30質量%であり、
    請求項1に記載のガラスクロス。
  3. 前記Fe含量が、Fe22換算で、0.001~0.10質量%である、
    請求項1又は2に記載のガラスクロス。
  4. 1GHzの周波数において5.0以下の誘電率を有する、
    請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスクロス。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスクロスと、
    該ガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂と、を有する、
    プリプレグ。
  6. 請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスクロスを備える、
    プリント配線板。
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