JP2022012846A - ポジ型ドライフィルムレジスト - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、ラミネート法で熱圧着する際に基材との密着不良が発生し難く、露光部が現像液に完全に溶解するまでの時間が短縮されることによって、未露光部の現像液への接触時間が低減されて、膜減りやレジストパターンの欠けが生じ難いポジ型ドライフィルムレジストを提供することである。【解決手段】少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層がこの順で積層してなり、(b)剥離層がポリビニルアルコールを含み、(c)ポジ型感光性レジスト層が、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルを主成分として含み、ノボラック樹脂が、p-クレゾールとm-クレゾールとアルデヒド類若しくはケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂であり、且つ、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上であることを特徴とするポジ型ドライフィルムレジスト。【選択図】図1
Description
本発明は、ポジ型ドライフィルムレジストに関する。
プリント配線板、リードフレーム、メタルマスク、シャドウマスク、半導体パッケージ、電極部材、電磁波シールド等の製造において、金属のエッチングや金属めっき等の金属加工を行う際に、レジストが使用されている。例えば、メタルマスク、リードフレーム、シャドウマスク、プリント基板等の製造において、各種基材の金属をエッチングする方法が行われている。このエッチングに使用されるレジストとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子に、重クロム酸アンモニウム等の光架橋試薬を混合することによる光架橋を利用した感光性樹脂組成物が用いられてきた。しかし、この感光性樹脂組成物は、クロム廃液の処理が難しい等の問題を有しており、現在では、そのほとんどがアルカリ水溶液現像型感光性樹脂組成物を使用したドライフィルムレジストに置き換わっている。
現在、このドライフィルムレジストとしてはネガ型感光性レジストが利用されており、アルカリ可溶性樹脂と光重合性架橋剤と光重合開始剤を組み合わせた組成物が一般的である。基材にドライフィルムレジストを熱圧着して感光性レジスト層を形成し、画像形成したフォトマスクを通した紫外線露光によって画像状に感光性レジスト層を硬化、難溶性とした後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液等のアルカリ性現像液で未露光部を現像液に溶出させてレジストパターンが形成される。
しかしながら、ネガ型感光性レジストには、経時変化により感度変化が生じる問題及び現像後に基材の表面にレジスト成分の残渣が生じる問題がある。また、金属のエッチング加工後にレジストを剥離させる際には、強アルカリ性又は有機アミンを含有する特殊な剥離液を使用する必要がある。
一方、ポジ型感光性レジストは光重合を阻害する空気中の酸素の影響を受けにくく、経時変化による感度変化も小さく、さらには基材のエッチング加工後はレジストを全面露光して現像液等で処理することによって、レジストパターンを容易に溶解剥離できる等の利点がある。また、ネガ型感光性レジストと比較し、レジストが現像液に膨潤し難いため、微細パターンに有利である。
ポジ型感光性レジストにおいては、近年、液状レジストが広く使用されており、基材への感光性レジスト層の形成方法としては、スピンコートやロールコート等で、直接、基材へ塗工する方法が適用されている。しかしながら、液状レジストにおいては、液のロスが多く、塗工の手間がかかる。ポジ型感光性レジストは高価であるため、液のロスは好ましくない。また、液状レジストにおいては、両面同時に感光性レジスト層を形成したり、感光性レジスト層を均一に形成したりすることも難しい。そのため、ポジ型感光性レジストをドライフィルムレジストとして、熱圧着してラミネートする方法が強く望まれている。
一方、従来から広く用いられてきたポジ型感光性レジストとしては、キノンジアジド系の材料とノボラック樹脂を主成分とする材料が挙げられる。このポジ型感光性レジストをポリエチレンテレフタレートフィルム等の支持体に塗工し、ポジ型ドライフィルムレジストにすると、支持体フィルムとポジ型感光性レジスト層との接着力が高く、ラミネート法で基材上に熱圧着したのち、支持体フィルムを剥がす工程において、支持体フィルムが剥がれない問題があった(例えば、特許文献1)。
また、ポジ型感光性レジスト層が柔軟性に欠け、脆いことから、ポジ型ドライフィルムレジストが折れ曲がった場合、割れ(クラック)が発生する場合がある。また、ポジ型ドライフィルムレジストをロール状とすることに難点がある。すなわち、通常、広幅のロールから所望の幅のロール製品へとスリット加工するが、脆いポジ型感光性レジスト層に割れが発生して、端部から切り屑が発生し易い。また、通常、ロール状のポジ型ドライフィルムレジストを、枚葉の基材へ連続で熱圧着するが、各基材間でポジ型ドライフィルムレジストをカットする必要があり、その際にもポジ型感光性レジスト層が割れて、切り屑が発生し易い。そして、切り屑が基材の上に付着して、ラミネート欠陥となる問題が発生する場合があった(例えば、特許文献2)。
これらの問題に対し、支持体フィルムとポジ型感光性レジスト層との間に剥離層を設けるという解決策がある(例えば、特許文献3及び4)。具体的には、特許文献3には、離型層を有する可剥性支持体層(支持体フィルム)、感光性レジスト層の第1層及び貼付け可能な架橋又は架橋性有機重合体の第2層の順で構成されている多層ドライフィルムフォトレジストが開示されている。また、特許文献4には、支持フィルム(支持体フィルム)と、レジスト膜の機械的強度を補強するためのドライフィルムレジスト膜と、パターン形成に供されるレジスト膜とを含むレジストフィルムが開示されている。
ところで、キノンジアジド系の材料とノボラック樹脂を主成分とするポジ型感光性レジストでは、ポジ型感光性レジスト層の剛性及びTgが高く、熱圧着の際に基材との密着不良が発生し易い、露光部が現像液に完全に溶解するまでの時間が長く、現像液に接触している未露光部の膜減りやレジストパターンの欠けが生じ易いという問題があった。熱圧着の際に密着不良が生じると、エッチングレジストとして利用できなくなる上、膜減り、レジストパターンの欠けは、レジストパターン及びエッチングパターンの再現性に影響するため、熱圧着の際に密着不良が発生しにくく、かつ、露光部の現像液への溶解速度が高いポジ型ドライフィルムレジストが求められている。
本発明の課題は、ラミネート法で熱圧着する際に基材との密着不良が発生し難く、露光部が現像液に完全に溶解するまでの時間が短縮されることによって、未露光部の現像液への接触時間が低減されて、膜減りやレジストパターンの欠けが生じ難いポジ型ドライフィルムレジストを提供することである。
上記課題は、下記のポジ型ドライフィルムレジストにより解決される。
<1>
少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層がこの順で積層してなり、(b)剥離層がポリビニルアルコールを含み、(c)ポジ型感光性レジスト層が、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルを主成分として含み、ノボラック樹脂がp-クレゾールとm-クレゾールとアルデヒド類若しくはケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂であり、且つ、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上であることを特徴とするポジ型ドライフィルムレジスト。
少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層がこの順で積層してなり、(b)剥離層がポリビニルアルコールを含み、(c)ポジ型感光性レジスト層が、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルを主成分として含み、ノボラック樹脂がp-クレゾールとm-クレゾールとアルデヒド類若しくはケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂であり、且つ、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上であることを特徴とするポジ型ドライフィルムレジスト。
本発明のポジ型ドライフィルムレジストの一態様では、図1に示すように、少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層がこの順で積層してなる。本発明のポジ型ドライフィルムレジストでは、(c)ポジ型感光性レジスト層に含まれるノボラック樹脂がp-クレゾールとm-クレゾールとアルデヒド類若しくはケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂であり、且つ、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上であることによって、(c)ポジ型感光性レジストを基材にラミネートし、レジストパターンを形成する際に、ラミネート法で熱圧着する際に基材との密着不良が発生し難く、かつ、未露光部の現像液への接触時間が低減されて、膜減りやレジストパターンの欠けが生じ難いという効果が得られる。
本発明のポジ型ドライフィルムレジストは、少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層がこの順で積層してなり、(b)剥離層がポリビニルアルコールを含み、(c)ポジ型感光性レジスト層が、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルを主成分として含み、ノボラック樹脂がp-クレゾールとm-クレゾールとアルデヒド類若しくはケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂であり、且つ、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上であることを特徴とする。
<(a)支持体フィルム>
(a)支持体フィルムとしては、(b)剥離層を形成でき、ポジ型ドライフィルムレジストを、ラミネート法で基材に貼り付けた後に剥離することができれば、どのようなフィルムであってもよい。光を透過する透明フィルム、又は、光を遮光する白色フィルム若しくは有色フィルムであってもよい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;ポリイミド;ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、難燃ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルのフィルム;ポリカーボネート、ポリフェニレンサルフィド、ポリエーテルイミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン等のフィルムが使用できる。その中でも特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すると、ラミネート適性、剥離適性、平滑性に対して有利であり、また、安価で、脆化せず、耐溶剤性に優れ、高い引っ張り強度を持つ等の利点から、非常に利用しやすい。
(a)支持体フィルムとしては、(b)剥離層を形成でき、ポジ型ドライフィルムレジストを、ラミネート法で基材に貼り付けた後に剥離することができれば、どのようなフィルムであってもよい。光を透過する透明フィルム、又は、光を遮光する白色フィルム若しくは有色フィルムであってもよい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;ポリイミド;ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、難燃ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルのフィルム;ポリカーボネート、ポリフェニレンサルフィド、ポリエーテルイミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン等のフィルムが使用できる。その中でも特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すると、ラミネート適性、剥離適性、平滑性に対して有利であり、また、安価で、脆化せず、耐溶剤性に優れ、高い引っ張り強度を持つ等の利点から、非常に利用しやすい。
(a)支持体フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましく、12~50μmであることがより好ましい。
(a)支持体フィルムの(b)剥離層側に、(b)剥離層を形成する前にコロナ放電処理が施されていてもよい。コロナ放電処理は、電極から支持体フィルム表面に向けてコロナ放電を照射する。(a)支持体フィルムの表面にコロナ放電処理を施すことによって、表面張力を低下させ、(b)剥離層との密着力を高めることができ、(c)ポジ型感光性レジスト層から(a)支持体フィルムと(b)剥離層を同時に剥がし易くなる。好ましいコロナ放電量は、10~200W・min/m2である。
<(b)剥離層>
(b)剥離層は、ポリビニルアルコールを含む。剥離層用塗液であるポリビニルアルコール水溶液を、(a)支持体フィルム上に塗工することによって、(b)剥離層を形成できる。(a)支持体フィルムの(b)剥離層側に、(b)剥離層を形成する前にコロナ放電処理が施されている場合は、ポリビニルアルコール水溶液を、(a)支持体フィルムのコロナ放電処理が施された面(コロナ放電処理面)上に塗工して、乾燥することによって、(b)剥離層を形成できる。
(b)剥離層は、ポリビニルアルコールを含む。剥離層用塗液であるポリビニルアルコール水溶液を、(a)支持体フィルム上に塗工することによって、(b)剥離層を形成できる。(a)支持体フィルムの(b)剥離層側に、(b)剥離層を形成する前にコロナ放電処理が施されている場合は、ポリビニルアルコール水溶液を、(a)支持体フィルムのコロナ放電処理が施された面(コロナ放電処理面)上に塗工して、乾燥することによって、(b)剥離層を形成できる。
本発明において、(b)剥離層は、(b)剥離層上に(c)ポジ型感光性レジスト層をむら無く均一に形成できる特性を有している。また、(a)支持体フィルムと(b)剥離層の密着力に優れ、且つポジ型ドライフィルムレジストをロール化した際の、(c)ポジ型感光性レジスト層の剥がれやクラック発生が抑制されるよう(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層との密着力が調整されている。
(b)剥離層に用いられるポリビニルアルコールは、けん化度82mol%以上のポリビニルアルコールを含むことが好ましく、けん化度82mol%以上のポリビニルアルコールであることが特に好ましい。
該ポリビニルアルコールとしては、(a)支持体フィルムと(b)剥離層間の密着力が高く、且つ(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層間の密着力によって、ポジ型ドライフィルムレジストが折れ曲がった場合でも、(c)ポジ型感光性レジスト層の剥がれが抑制され、且つ、(a)支持体フィルムと(b)剥離層を、(c)ポジ型感光性レジスト層から剥離する際に、(c)ポジ型感光性レジスト層の凝集破壊が生じ難いポリビニルアルコールが好ましい。
上記ポリビニルアルコールのけん化度は、82~99.5mol%であることがより好ましく、83~98mol%であることがさらに好ましい。使用するポリビニルアルコールは、未変性のものでも、部分的に変性基を導入し、耐水性、耐溶剤性、耐熱性、バリア性、柔軟性等の機能性を付与したものを用いることもできる。また、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
市販品としては、限定はされないが、例えば、株式会社クラレ製のクラレポバール(登録商標)3-98、4-98 HV、5-98、11-98、28-98、60-98、(以上、けん化度=98~99mol%)、3-88、5-88、9-88、22-88、30-88、44-88、95-88(以上、けん化度=86~89mol%)、29-99、25-100(以上、けん化度=99mol%以上);日本酢ビ・ポバール株式会社製のJC-25、JC-33(以上、けん化度=99mol%以上)、JF-03、JF-04、JF-05(以上、けん化度=98~99mol%)、JP-03、JP-04(以上、けん化度=86~90mol%)、JP-05(けん化度=87~89mol%)、JP-45(けん化度=86.5~89.5mol%)、JL-18E(けん化度=83~86mol%)、三菱ケミカル株式会社製のゴーセネックス(登録商標)シリーズZ-100、Z-200、Z-205(以上、けん化度=99mol%以上)、Z-300、Z-410(以上、けん化度=97.5~99mol%)、Z-210(けん化度=95~97mol%)、Z-220、Z-320(以上、けん化度=90.5~94mol%)が挙げられる。
(b)剥離層において、ポリビニルアルコールの含有率は、(b)剥離層に対して、80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることがさらに好ましい。該含有率が80質量%未満である場合、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層間の密着力の調節が困難となり、密着力が高くなり過ぎることによって、(b)剥離層と(a)支持体フィルムを一緒に剥がすことが難しくなる場合があり、(a)支持体フィルムを剥がすと、(b)剥離層が(c)ポジ型感光性レジスト上に残るおそれ、又は、(c)ポジ型感光性レジスト層ごと部分的に剥がれるおそれがあるほか、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層間の密着力が低下し、フィルムを折り曲げた際に(c)ポジ型感光性レジスト層に容易にクラックや剥がれが生じるおそれがある。
なお、ポリビニルアルコールの含有率が100質量%未満である場合、残りの成分としては、可塑剤等の低分子化合物又は高分子化合物等が挙げられる。これらの化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、にかわ、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロイルモルホリン等の水溶性樹脂が挙げられる。
(b)剥離層において、けん化度82mol%以上のポリビニルアルコールの含有率は(b)剥離層に対して、80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることがさらに好ましい。該含有率が80質量%未満である場合、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層間の密着力が高くなり過ぎることによって、(b)剥離層と(a)支持体フィルムを一緒に剥がすことが難しくなる場合があり、(a)支持体フィルムを剥がす際に、(b)剥離層が(c)ポジ型感光性レジスト上に残る場合、又は、(c)ポジ型感光性レジスト層ごと部分的に剥がれる場合がある。なお、該含有率が100質量%未満である場合、残りの成分としては、特に限定は無いが、上述した、可塑剤等の低分子化合物又は高分子化合物等が挙げられる。また、けん化度82mol%未満のポリビニルアルコールが挙げられる。
(b)剥離層の厚さは、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。また、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。1μmより薄いと、皮膜形成した際に厚さむらやピンホールの問題が発生しやすい場合がある。20μmより厚いと、(b)剥離層用塗液が水系であるために乾き難く、塗工後の乾燥工程が長引く傾向にある。また、(b)剥離層用塗液中の気泡が残存し、それによるピンホール欠陥が発生する課題を解決するためには、(b)剥離層の厚さが4μm以下であることがさらに好ましい。(b)剥離層の厚さは、乾燥後の厚さである。
<(c)ポジ型感光性レジスト層>
(c)ポジ型感光性レジスト層は、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルを主成分として含む。「主成分として含む」とは、(c)ポジ型感光性レジスト層の全量に対する、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルの合計の含有率が、60質量%以上であることを言う。該含有率は、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましく、上限値は97質量%であることが好ましい。なお、上記「全量」とは、ポジ型感光性レジスト層用塗液を(b)剥離層上に塗工し、乾燥させて(c)ポジ型感光性レジスト層を形成させた場合における(c)ポジ型感光性レジスト層全体の質量のことを言う。
(c)ポジ型感光性レジスト層は、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルを主成分として含む。「主成分として含む」とは、(c)ポジ型感光性レジスト層の全量に対する、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルの合計の含有率が、60質量%以上であることを言う。該含有率は、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましく、上限値は97質量%であることが好ましい。なお、上記「全量」とは、ポジ型感光性レジスト層用塗液を(b)剥離層上に塗工し、乾燥させて(c)ポジ型感光性レジスト層を形成させた場合における(c)ポジ型感光性レジスト層全体の質量のことを言う。
上記ノボラック樹脂は、フェノール類若しくはナフトール類と、アルデヒド類若しくはケトン類とを、酸触媒を用いて縮合して得られる樹脂である。なお、ここでの「フェノール類」とは、クレゾール類、キシレノール類、レゾルシノール類、カテコール類、レゾルシノール類、ピロガロール類等の「ベンゼン環等の芳香環にフェノール性水酸基が結合したもの全体」をも含むものである。ノボラック樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、キシレノールノボラック樹脂、レゾルシノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等が挙げられる。
ノボラック樹脂の原料となるフェノール類若しくはナフトール類としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-プロピルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、オクチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、メトキシフェノール、2-メトキシ-4-メチルフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール、ベンジルフェノール、メトキシカルボニルフェノール、ベンゾイルオキシフェノール、クロロフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、β-ナフトール、p-ヒドロキシフェニル-2-エタノール、p-ヒドロキシフェニル-3-プロパノール、p-ヒドロキシフェニル-4-ブタノール、ヒドロキシエチルクレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
ノボラック樹脂を得るために用いられるアルデヒド類若しくはケトン類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、メトキシフェニルアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、クロロフェニルアセトアルデヒド、アセトン、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸フェニル、グリオキシル酸ヒドロキシフェニル、ホルミル酢酸、ホルミル酢酸メチル等が挙げられる。これらのアルデヒド類若しくはケトン類は単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。また、これらの縮合物を用いてもよい。
上記ノボラック樹脂は、p-クレゾールとm-クレゾールとアルデヒド類若しくはケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂であり、且つ、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上である。ここで、「p-クレゾールとm-クレゾールとアルデヒド類若しくはケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂」とは、ノボラック樹脂の原料となるフェノール類若しくはナフトール類の全体に対して、p-クレゾールとm-クレゾールの合計が50~100mol%である。
フェノール類若しくはナフトール類の全体に対して、p-クレゾールとm-クレゾールの合計が60~100mol%であることがより好ましく、70~100mol%であることがさらに好ましく、80~100mol%であることがそれ以上に好ましく、90~100mol%であることが一層好ましく、96~100mol%であることが特に好ましく、100mol%であっても良い。フェノール類若しくはナフトール類の全体に対して、p-クレゾールとm-クレゾールの合計が100mol%未満である場合、残りの成分としては、特に限定は無いが、p-クレゾールとm-クレゾールを除く前記した「フェノール類若しくはナフトール類」等が挙げられる。
また、フェノール類若しくはナフトール類の全体に対して、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの縮合物を、50~100mol%含むことが好ましく、60~100mol%含むことがより好ましく、70~100mol%含むことがさらに好ましく、80~100mol%含むことがそれ以上に好ましく、90~100mol%含むことが一層好ましく、96~100mol%含むことが特に好ましい。ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの縮合物が100mol%未満の場合、残りの成分としては、特に限定は無いが、ホルムアルデヒドとホルムアルデヒドの縮合物を除く前記した「アルデヒド類若しくはケトン類」等が挙げられる。
上記p-クレゾールとm-クレゾールとアルデヒド類若しくはケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂は、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上であることによって、共縮合反応時に分子が直線的に成長しやすくなり、三次元方向の架橋が抑制されることで、得られる共縮合ノボラック樹脂の質量平均分子量(Mw)が6,000以下に抑制される。低分子量化によって共縮合ノボラック樹脂のTgの低下、可とう性の向上を達成することができ、ラミネート法で熱圧着する際に基材への密着不良が発生し難くなる。また、p-クレゾールの割合が増大することで、(c)ポジ型感光性レジスト層の露光部の溶解速度が上昇し、未露光部の現像液への接触時間が低減されて、膜減りやレジストパターンの欠けが生じ難くなる。ここで、質量平均分子量は、高速液体クロマトグラフによるポリスチレン換算の質量平均分子量を言う。共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上であり、60mol%以上であることがより好ましく、70mol%以下であることが好ましい。
上記した「p-クレゾールとm-クレゾールとアルデヒド類若しくはケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂であり、且つ、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上である共縮合ノボラック樹脂」の、「(c)ポジ型感光性レジスト層に含有されるノボラック樹脂」全体に対する含有率は、60~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、80~100質量%がさらに好ましく、90~100質量%が特に好ましい。上記範囲内にすることによって、前記した効果が特に得られる。
上記含有率が100質量%でない場合には、その他のノボラック樹脂としては、前記したようなノボラック樹脂、前記した原料から得られるノボラック樹脂等が挙げられる。
(c)ポジ型感光性レジスト層に含有されるキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、具体的には、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,3,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等が挙げられる。また、例えば、フェノール樹脂のキノンジアジドスルホン酸エステル、クミルフェノールのキノンジアジドスルホン酸エステル、ピロガロール・アセトン樹脂のキノンジアジドスルホン酸エステル等を挙げることができる。本発明では、上記キノンジアジドスルホン酸エステルが、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含むことが好ましい。
本発明において、キノンジアジドスルホン酸エステルの配合量は、ノボラック樹脂100質量部に対し、10~50質量部であることが好ましく、15~40質量部であることがより好ましい。この配合量とすることによって、耐酸性や基材との密着性が著しく優れ、金属や金属酸化膜等の種々の素材に対するエッチング加工に好適である。
本発明における(c)ポジ型感光性レジスト層においては、前記した「p-クレゾールとm-クレゾールとアルデヒド類若しくはケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂であり、且つ、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上である共縮合ノボラック樹脂」を含み、且つ、上記キノンジアジドスルホン酸エステルがナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含むことが特に好ましい。
(c)ポジ型感光性レジスト層は、溶剤成分を含んでも良い。溶剤成分としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤成分としては、(c)ポジ型感光性レジスト層に含まれる溶剤成分の成分に対し、十分な溶解性を有し、良好な塗工性を有していれば、特に限定されない。このような溶剤成分としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のプロピレングリコール系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート系溶剤;酢酸ブチル、酢酸ペンチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤;アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、メチルペンチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メチルフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;ジオキサン、ジオキソラン等の環状エーテル系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の高極性溶剤;及びこれらの混合溶剤を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
溶剤成分については、(c)ポジ型感光性レジスト層の上記全量に対し、3質量%以上10質量%以下であることが好ましく、4質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上7質量%以下であることがさらに好ましい。溶剤成分の含有率が3質量%未満である場合、(c)ポジ型感光性レジスト層の露光部の現像液に対する溶解速度が低下し、レジストパターンの形成が困難となる場合がある。溶剤成分の含有率が10質量%超である場合、露光部・未露光部両方の現像液に対する溶解速度が高くなり過ぎるために、現像の過程で未露光部の表面が溶解し、レジストパターンの欠けや画線のばらつきが生じ易くなる場合がある。また、未露光部の膜減りが起こる場合がある。
(c)ポジ型感光性レジスト層の溶剤成分の含有率は、以下の方法で算出する。(a)支持体フィルム上に(b)剥離層、(c)ポジ型感光性レジスト層がこの順に形成されてなるドライフィルムレジストを、(c)ポジ型感光性レジスト層が銅箔に接触するようにして、ラミネート法によって熱圧着して貼り付け、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を(c)ポジ型感光性レジスト層上から除去してから、10cm四方の試料を切り出す。該試料の質量W1を測定した後、乾燥機にて130℃で15分乾燥を行う。乾燥後室温に戻した状態の質量W2を測定し、質量減少量W1-W2を、(c)ポジ型感光性レジスト層が含む溶剤成分の質量W3とする。その後、メチルエチルケトンで(c)ポジ型感光性レジスト層を溶かし銅箔から除去し、80℃で5分乾燥させた銅箔の質量W4を測定する。質量W1から銅箔の質量W4を除いた値W1-W4を、溶剤成分を含む(c)ポジ型感光性レジスト層の質量(全量)W5とする。質量W5中の質量W3の割合(W3/W5×100)を、(c)ポジ型感光性レジスト層の溶剤成分の含有率として算出する。
(c)ポジ型感光性レジスト層には、ノボラック樹脂、キノンジアジドスルホン酸エステル及び溶剤成分以外にも、必要に応じて他の成分を含有させても良い。例えば、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド等の樹脂を含有してもよい。これらの樹脂等の「他の成分」の配合によって、可とう性、耐エッチング液性、現像性、密着性が向上する場合がある。また、着色剤(染料、顔料)、光発色剤、光減色剤、熱発色防止剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱硬化剤、撥水剤及び撥油剤等の添加剤を含有してもよい。
上記した「他の成分」や「添加剤」は、(c)ポジ型感光性レジスト層の全量に対して、各々0.01~20質量%程度含有することができる。これらの成分は1種を単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
(c)ポジ型感光性レジスト層の厚さは、1~20μmが好ましく、2~10μmがより好ましい。1μm未満であると、基材に熱圧着する際に気泡が入り易くなる場合がある。また、皮膜形成した際に厚さむらやピンホールの問題が発生し易くなる。一方、20μmより厚いと、露光時に光が(c)ポジ型感光性レジスト層の底部まで届かず、レジストパターンのボトムが太くなって台形形状になり、細線が形成できない場合がある。(c)ポジ型感光性レジスト層の厚さは、乾燥後の厚さである。
(a)支持体フィルム上に(b)剥離層を形成する方法、及び、(b)剥離層上に(c)ポジ型感光性レジスト層を設ける方法としては、ロールコータ、コンマコータ(登録商標)、グラビアコータ、エアーナイフ、ダイコータ、バーコータ等を用いた塗工方法が挙げられる。
<(d)保護フィルム>
本発明のポジ型ドライフィルムレジストは、必要に応じて(d)保護フィルムで(c)ポジ型感光性レジスト層を被覆してもよい。(d)保護フィルムは、ポジ型ドライフィルムレジストを巻回した際等に、(c)ポジ型感光性レジスト層の(a)支持体フィルムへのブロッキングを防止するために設けられるもので、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層とは反対側の(c)ポジ型感光性レジスト層上に設けられる。(d)保護フィルムとしては、フィッシュアイの小さいものが好まれる。例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。
本発明のポジ型ドライフィルムレジストは、必要に応じて(d)保護フィルムで(c)ポジ型感光性レジスト層を被覆してもよい。(d)保護フィルムは、ポジ型ドライフィルムレジストを巻回した際等に、(c)ポジ型感光性レジスト層の(a)支持体フィルムへのブロッキングを防止するために設けられるもので、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層とは反対側の(c)ポジ型感光性レジスト層上に設けられる。(d)保護フィルムとしては、フィッシュアイの小さいものが好まれる。例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。
(d)保護フィルムとしては、自己粘着性樹脂フィルムを使用することが好ましい。該自己粘着性樹脂フィルムは、基材層と粘着層とが共押し出しで形成されるフィルムである。このような自己粘着性樹脂フィルムは、アウトガス成分による製品の汚染や糊残りや成分移行等の懸念が少なく好適である。また、加熱することなく、(d)保護フィルムによって、(c)ポジ型感光性レジスト層を被覆することができる。
自己粘着性樹脂フィルムは、少なくとも基材層と粘着層とからなり、該基材層は自己粘着性を有さず、材質としては、前記したもの等が挙げられる。また、該粘着層としては、PMMA(ポリメチルメタクリレート)板と23℃で張り合わせることが可能で、その際の粘着力が0.01N/50mm幅以上、0.30N/50mm幅以下のものを用いることが好ましい。該粘着層の例としては、エチレン酢酸ビニル共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド;合成ゴム;ポリアクレート;ポリウレタン;等が挙げられる。粘着層の材料は、分子量の調整や可塑剤を添加することで、自己粘着性の特性を有するように設計される。市中から入手可能なものとしては、例えば、トレテック(登録商標、東レフィルム加工株式会社製)、FSA(登録商標、フタムラ化学株式会社製)、サニテクト(登録商標、株式会社サンエー化研製)等が挙げられる。
(d)保護フィルムの厚みは、5~100μmが好ましい。(d)保護フィルムの厚みが5μmより薄いと、ハンドリング性が難しい場合があり、100μmより厚いと、コスト高、ロール状体における嵩高、質量増になる場合がある。
<エッチング方法>
次に、本発明のポジ型ドライフィルムレジストを用いたエッチング方法について詳説する。まず、本発明のポジ型ドライフィルムレジストを基材の少なくとも片面に、(c)ポジ型感光性レジスト層が基材に接触するようにして、ラミネート法によって熱圧着して貼り付けることが好ましい。本発明のポジ型ドライフィルムレジストが(d)保護フィルムを有するものである場合は、(d)保護フィルムを剥がした後に、基材の少なくとも片面に貼り付ける。
次に、本発明のポジ型ドライフィルムレジストを用いたエッチング方法について詳説する。まず、本発明のポジ型ドライフィルムレジストを基材の少なくとも片面に、(c)ポジ型感光性レジスト層が基材に接触するようにして、ラミネート法によって熱圧着して貼り付けることが好ましい。本発明のポジ型ドライフィルムレジストが(d)保護フィルムを有するものである場合は、(d)保護フィルムを剥がした後に、基材の少なくとも片面に貼り付ける。
本発明に係わる基材とは、エッチング加工を実施する基材であり、製造物によって決定される。プリント配線板、リードフレーム、メタルマスク、シャドウマスク、半導体パッケージ、電極部材、電磁波シールド等の製造においては、金属を含有する基材が選択される。例えば、銅、銅系合金(チタン銅合金、銅ニッケル合金等)、ニッケル、クロム、鉄、タングステン、ステンレスや42アロイ等の鉄系合金、アルミニウム、アモルファス合金等の「金属を含有する基材」が使用できる。また、ITO、FTO等の金属酸化膜が使用できる。さらに、プリント配線板製造等に使用される、銅張積層板、(無)電解めっき済基板、フレキシブル銅張積層板、フレキシブルステンレス板、積層体等が使用できる。
基材の少なくとも片面に、本発明のポジ型ドライフィルムレジストを貼り付ける方法は、ラミネート法が使用される。一般的な、プリント基板用熱ラミネーター、また、真空ラミネーターが使用できる。ニップ圧力、搬送速度、ロール温度は、使用する基材によって異なるが、気泡やむらが無い状態で、熱圧着によって貼り付けることができれば、いずれの条件であってもよい。
ポジ型ドライフィルムレジストを基材に貼り付けた後、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を(c)ポジ型感光性レジスト層上から除去する。この場合、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を同時に除去することが好ましい。本発明によれば、このように、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を、同時に剥離等で除去することができる。ただし、(a)支持体フィルムのみを除去する態様を排除する訳ではなく、その場合でも、残存する(b)剥離層は、その後に現像してレジストパターンを形成する際に、現像液によって同時に除去することができる。
次に、所望のパターンを露光する。露光には紫外線を使用することが好ましい。露光方法は、レーザー直接描画、フォトマスクを介した密着露光、投影露光等によって行われる。露光の光源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、レーザー、LED等を用いることができる。
次に、現像を実施する。現像によって、(c)ポジ型感光性レジスト層の露光部を除去する。現像に使用する現像液としては、アルカリ水溶液が有用に使用される。現像液に使用される塩基性化合物としては、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物;エタノールアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、モルホリン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機塩基性化合物;等を挙げることができる。
露光部の(c)ポジ型感光性レジスト層に対する現像性を調整するために、現像液の濃度、温度、スプレー圧等を調整する必要がある。現像液の温度が高いほど、現像速度が速くなり、40℃以上の温度が好ましい。現像液における塩基性化合物の濃度としては、水酸化カリウムの場合、1~4質量%であることが好ましい。装置としては、ディップ処理装置、シャワースプレー装置等を利用することができる。
次に、基材のエッチング処理を実施する。本発明において、使用される基材を溶解除去できるものであれば、どのようなエッチング液、装置、方法であってもよい。エッチング液としては、例えば、アルカリ性アンモニア、硫酸-過酸化水素、塩化第二銅、過硫酸塩、塩化第二鉄、王水等が挙げられる。また、装置や方法としては、例えば、水平スプレーエッチング、浸漬エッチング、等の装置や方法を使用できる。これらの詳細は、「プリント回路技術便覧」(社団法人日本プリント回路工業会編、1987年刊行、日刊工業新聞社発行)に記載されている。
次に、剥離液によってレジスト剥離を実施するが、その前に、レジストパターンに紫外線を照射する露光をしてもよい。露光をすることによって、(c)ポジ型感光性レジスト層は、剥離液によって除去し易くなる。剥離液としては、強アルカリ水溶液が有用に使用される。剥離液に使用される塩基性化合物としては、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物;エタノールアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、モルホリン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機塩基性化合物;等を挙げることができる。
レジスト剥離工程において、剥離液の濃度、温度、スプレー圧、超音波条件等を調整する必要がある。該剥離液の温度が高いほど、(c)ポジ型感光性レジスト層が溶解する速度が速くなり、40℃以上の温度が好ましい。剥離液における塩基性化合物の濃度としては、溶解性に適した濃度がよく、塩基性化合物が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの場合、1~4質量%であることが好ましい。装置としては、ディップ処理装置、超音波装置、シャワースプレー装置等を利用することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
ポリビニルアルコール(商品名:クラレポバール(登録商標)44-88、株式会社クラレ)を準備し、ポリビニルアルコール5質量部に対して80質量部の水を加え、温水で攪拌することによって溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。次に、15質量部のエタノールを加えて、固形分5質量%の剥離層用塗液を作製した。ワイヤーバーを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム((a)支持体フィルム、商品名:ダイアホイル(登録商標)T100、25μm厚、三菱ケミカル株式会社製)の片面に、各剥離層用塗液を塗工した。90℃で15分間乾燥し、(a)支持体フィルム上にポリビニルアルコールを含む(b)剥離層を厚さ4μmで設け、(a)支持体フィルムと(b)剥離層の積層フィルムを得た。
次に、実施例1では、100質量部のp-クレゾールとm-クレゾールとホルムアルデヒドよりなる共縮合ノボラック樹脂EP6050G(旭有機材株式会社製、質量平均分子量2,500~4,000、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が60mol%)、30質量部の2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300質量部に溶解した溶液を、メンブレンフィルター(孔径1μm)にてろ過して、ポジ型感光性レジスト層用塗液を得た。
続いて実施例1と同様に、実施例2及び比較例1~3でも、100質量部のp-クレゾールとm-クレゾールとホルムアルデヒドよりなる共縮合ノボラック樹脂、30質量部の2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300質量部に溶解した溶液を、メンブレンフィルター(孔径1μm)にてろ過して、(c)ポジ型感光性レジスト層用塗液をそれぞれ得た。
塗液の調製に際して、共縮合ノボラック樹脂として、実施例2ではEP6030G(旭有機材株式会社製、質量平均分子量約5,000、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が60mol%)及び比較例1ではEP4020G(旭有機材株式会社製、質量平均分子量9,000~14,000、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が40mol%)、比較例2ではEP4050G(旭有機材株式会社製、質量平均分子量5,000~7,500、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が40mol%)、比較例3ではEPR5010G(旭有機材株式会社製、質量平均分子量7,000~12,500、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が50mol%)をそれぞれ用いた。
次に、実施例1~2及び比較例1~3の(c)ポジ型感光性レジスト層用塗液について、それぞれワイヤーバーを用いて、積層フィルムの(b)剥離層面に、(c)ポジ型感光性レジスト層用塗液を塗工した後、90℃で10分間乾燥し、(b)剥離層上に(c)ポジ型感光性レジスト層を厚さ6μmで設け、3層の構造((a)支持体フィルム/(b)剥離層/(c)ポジ型感光性レジスト層)からなるポジ型ドライフィルムレジストを作製した。
(ラミネート試験)
研磨及び脱脂した銅張積層板の銅層表面に、上記実施例1~2及び比較例1~3のポジ型ドライフィルムレジストの(c)ポジ型感光性レジスト層が銅層表面に接触するように、ラミネート法で熱圧着により貼り付けた。その際、一般的なプリント基板用ラミネーターを用いた。ラミネート条件は、ロール温度100℃、搬送速度0.3m/min、圧力0.4MPaにて実施した。
研磨及び脱脂した銅張積層板の銅層表面に、上記実施例1~2及び比較例1~3のポジ型ドライフィルムレジストの(c)ポジ型感光性レジスト層が銅層表面に接触するように、ラミネート法で熱圧着により貼り付けた。その際、一般的なプリント基板用ラミネーターを用いた。ラミネート条件は、ロール温度100℃、搬送速度0.3m/min、圧力0.4MPaにて実施した。
実施例1及び実施例2においては熱圧着後の銅層表面と(c)ポジ型感光性レジスト層は密着していたものの、比較例1~3ではそれぞれ部分的に(c)ポジ型感光性レジスト層の銅層からの浮きが見られた。
ポジ型ドライフィルムレジストを貼り付けた銅張積層板から(a)支持体フィルム、及び(b)剥離層を剥がした後、超高圧水銀灯紫外線照射装置を用い、50μmのラインとスペースを有するテストチャートマスクを、(c)ポジ型感光性レジスト層上に被せ、吸引密着させて露光した。次に、1質量%の水酸化カリウム水溶液(現像液、40℃)に浸漬させ、露光部の(c)ポジ型感光性レジスト層が現像液に溶解して銅張積層板上から完全に除去されるまでの現像時間を測定した。現像時間は、実施例1においては30秒、実施例2においては40秒だった。よって、未露光部の現像液への接触時間は、それぞれ30秒、40秒である。一方、現像時間は、比較例1においては70秒、比較例2においては65秒、比較例3においては60秒であり、露光部の(c)ポジ型感光性レジスト層が現像液中で完全に溶出するのに1分以上を要し、未露光部への現像液の接触時間は1分以上であった。
(レジストパターン再現性)
実施例1~2及び比較例1~3において、(a)支持体フィルム、及び(b)剥離層を剥がした後、超高圧水銀灯紫外線照射装置を用い、50μmのラインとスペースを有するテストチャートマスクを、(c)ポジ型感光性レジスト層上に被せ、吸引密着させて露光した。次に、1質量%の水酸化カリウム水溶液(現像液、40℃)に、各現像時間の1.1倍の時間浸漬させ、(c)ポジ型感光性レジスト層の露光部を除去して、現像を行った。その後、水洗を行い、乾かした。テストチャートマスクと同等のラインとスペースが再現できているかどうかを確認したところ、実施例1~2では、再現性は良好であり、レジストパターンの画線上に欠けや膜減りは確認されなかった。しかし、比較例1~3では、ラミネート時の(c)ポジ型感光性レジスト層の基材への密着不良、及び、未露光部の現像液への接触時間が長いことに起因すると考えられるレジストパターンの画線の欠けや膜減りが多発していた。
実施例1~2及び比較例1~3において、(a)支持体フィルム、及び(b)剥離層を剥がした後、超高圧水銀灯紫外線照射装置を用い、50μmのラインとスペースを有するテストチャートマスクを、(c)ポジ型感光性レジスト層上に被せ、吸引密着させて露光した。次に、1質量%の水酸化カリウム水溶液(現像液、40℃)に、各現像時間の1.1倍の時間浸漬させ、(c)ポジ型感光性レジスト層の露光部を除去して、現像を行った。その後、水洗を行い、乾かした。テストチャートマスクと同等のラインとスペースが再現できているかどうかを確認したところ、実施例1~2では、再現性は良好であり、レジストパターンの画線上に欠けや膜減りは確認されなかった。しかし、比較例1~3では、ラミネート時の(c)ポジ型感光性レジスト層の基材への密着不良、及び、未露光部の現像液への接触時間が長いことに起因すると考えられるレジストパターンの画線の欠けや膜減りが多発していた。
(エッチングパターン再現性)
次に、60℃の塩化第二鉄溶液を用意し、0.2MPaの圧力でスプレー処理を約5分間実施し、銅のエッチングを行った。その後、速やかに水洗-乾燥を実施した。次に、300mJ/cm2の紫外線を全面に照射した後、1質量%水酸化カリウム水溶液(レジスト剥離液、40℃)に3分間浸漬して、レジスト剥離を実施し、銅層にエッチングパターンを形成した。銅層の50μmのエッチングパターンを観察したところ、実施例1~2についてはエッチングパターンの欠けも無く、再現性は良好であった。一方、比較例1~3については、エッチングパターンに欠けがあり、また、エッチングパターンの線幅に、厚さむらが原因と考えられるばらつきが見られた。
次に、60℃の塩化第二鉄溶液を用意し、0.2MPaの圧力でスプレー処理を約5分間実施し、銅のエッチングを行った。その後、速やかに水洗-乾燥を実施した。次に、300mJ/cm2の紫外線を全面に照射した後、1質量%水酸化カリウム水溶液(レジスト剥離液、40℃)に3分間浸漬して、レジスト剥離を実施し、銅層にエッチングパターンを形成した。銅層の50μmのエッチングパターンを観察したところ、実施例1~2についてはエッチングパターンの欠けも無く、再現性は良好であった。一方、比較例1~3については、エッチングパターンに欠けがあり、また、エッチングパターンの線幅に、厚さむらが原因と考えられるばらつきが見られた。
以上の結果から明らかなように、本発明によれば、ラミネート法で熱圧着する際に基材との密着不良が発生し難く、露光部が現像液に完全に溶解するまでの時間が短縮されることによって、未露光部の現像液への接触時間が低減されて、膜減りやレジストパターンの欠けが生じ難いポジ型ドライフィルムレジストが得られることが判る。また、本発明のポジ型ドライフィルムレジストを用いたエッチング方法では、レジストパターン及びエッチングパターンの再現性に優れることが判る。
本発明のポジ型ドライフィルムレジストは、プリント配線板、リードフレーム、メタルマスク、シャドウマスク、半導体パッケージ、電極部材、電磁波シールド等の製造において、金属基材のエッチング加工に利用できる。また、めっきによる金属加工の際のレジストとしても利用可能である。
(a)支持体フィルム
(b)剥離層
(c)ポジ型感光性レジスト層
(b)剥離層
(c)ポジ型感光性レジスト層
Claims (1)
- 少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層がこの順で積層してなり、(b)剥離層がポリビニルアルコールを含み、(c)ポジ型感光性レジスト層が、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルを主成分として含み、ノボラック樹脂が、p-クレゾールとm-クレゾールとアルデヒド類若しくはケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂であり、且つ、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上であることを特徴とするポジ型ドライフィルムレジスト。
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