以下、本発明の一実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について、図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態のカード供給装置40が組み込まれるカードプリンタ50について説明する。
図1は、本実施形態のカードプリンタ50を概略的に示す正面図である。
図1を含む以下の図中及び以下の説明において、理解を容易にするために、水平面内において互いに直交する2方向をX方向及びY方向とし、垂直方向、つまり、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。X方向は、図1の左右方向とし、右方向を+X方向、左方向を-X方向とする。Y方向は、図の1の紙面手前奥方向とし、手前から奥への方向を+Y方向とし、奥から手前への方向を-Y方向とする。Z方向は、図1の上下方向であり、上方向を+Z方向とし、下方向を-Z方向とする。また、以下の説明において、Z方向を垂直方向又は縦方向といい、X方向を水平方向又は横方向ということもある。また、カードプリンタ50の図1における手前側を正面側といい、その反対である奥側を背面側とする。
このカードプリンタ50は、例えば、カード使用者の個人情報が書き込まれたICカードを作成することが可能な装置であるが、その他の種類のカードを作成するために使用されるものであってもよい。
図1に示すように、カードプリンタ50は、カード1を収納及び供給するカード供給装置40と、カードプリンタ50内においてカード1をベルトコンベアなどにより搬送するカード搬送部53と、カード1を反転させるカード反転装置54と、カード1に顔写真や文字情報などを印刷する情報印刷部55と、カード1に透明保護層を付与する透明保護層付与部56と、カードプリンタ50の操作及び情報表示を行う操作パネル57と、エラーが発生したときに警報を発する警報装置58と、カードプリンタ50を制御する制御部59と、を有している。
カード供給装置40は、予め枚葉状にカットされた複数枚のカード1を収納するカード収納装置20と、カード収納装置20に収納されているカード1をカードプリンタ50のカード搬送部53まで移送するカード移送機構30と、を有している。図1に示す例では、カード供給装置40は、4つのカード収納装置20を有している。この4つのカード収納装置20は、それぞれ異なる種類のカードを収納している。
カード収納装置20に収納されているカードは、印刷が施される面(例えば、顔写真を記録する面)を下に向け、印刷が施されない面を上に向けて、積層されている。より詳しく説明すると、カード1は、支持体と受像層とからなり、支持体が上に向けられ、受像層が下に向けられた状態でカード1がストックされる。カード移送機構30は、カード1を、選択されたカード収納装置20から、所定のタイミングで1枚ずつ上方に取り出し、カードプリンタ50のカード搬送部53に自動供給する。
カード収納装置20から取り出されたカード1は、まず、カード移送機構30により、印刷を施されない面を上方に向けられた状態でカード搬送部53に置かれる。その後、カード1は、カード搬送部53によって反転装置54に送られ、カード反転装置54によって反転された後、情報印刷部55に供給される。本実施形態では、カード1が情報印刷部55内で上方から印刷を施されるため、上述したカード反転装置54が設けられる。
なお、カード1は、カード収納装置20において印刷を施される面を上に向けてストックされてもよく、この場合には、カード反転装置54は設けられなくてもよい。ただし、カード1を取り出すときの接触を原因とする印刷不良の発生を抑制するために、カード1は、カード収納装置20において印刷を施される面を下に向けてストックされていることが好ましい。
情報印刷部55は、昇華印刷ユニット55aと、溶融印刷ユニット55bと、を有している。昇華印刷ユニット55aは、カード1が移動されている間に、Y印刷(イエロー印刷)、M印刷(マゼンタ印刷)、C印刷(シアン印刷)及びOP印刷(オーバープリント印刷)などにより、その受像層の所定領域にカード使用者の顔写真等の諧調を有する画像を印刷する。溶融印刷ユニット55bは、文字リボン等の熱転写シートによる熱転写で、その氏名やカード発行日等の認証識別情報を印刷する。
透明保護層付与部56では、転写箔カセット(図示せず)が配置され、この転写箔カセットに対応して熱転写ヘッド(図示せず)が配置されている。そして、この透明保護層付与部56によって、カード1上に透明保護層が設けられる。
次に、カード収納装置20について説明する。
図1に示すように、カード収納装置20は、カードマガジン10を収納するマガジンホルダ21と、カードプリンタ50に固定され、マガジンホルダ21が載置されて装着されるホルダ載置台22と、を有する。カードマガジン10は、複数のカード1を上下方向に積層して収納するカード包装容器である。マガジンホルダ21は、ホルダ載置台22に着脱自在に装着されるとともに、カードマガジン10を所定位置に保持した状態で収納する。
図2A及び図2Bは、本実施形態のカードマガジン10の背面側の斜視図である。図2Aは、フラップ10C,10Dが閉じた状態を示し、図2Bは、フラップ10C,10Dが開いた状態を示す。
カードマガジン10は、上面視において矩形形状を有する有底筒状、つまり、四角筒状、のマガジン本体10Bと、マガジン本体10Bの上方に設けられた第1開口10Aと、フラップ10C,10Dと、を有する。
マガジン本体10Bは、第1開口10Aに対向して位置する上面視において矩形形状の底床部10Baと、底床部10Baから立ち上がり、その先端に第1開口10Aを含む側壁部10Bbと、を有する。カードマガジン10の側壁部10Bbは横断面視で長方形状に形成され、側壁部10Bbの先端部分が形成する第1開口10Aの周縁は、一対の長辺部と、一対の長辺部の両端部を連結する一対の短辺部と、で構成される。カード1も長方形状であり、カードマガジン10内に収納される際には、その長手方向をマガジン本体10Bにおける側壁部10Bbの長手方向に沿わせた状態で収納される。
また、マガジン本体10Bは、背面側の側壁部に設けられ、マガジン本体10Bから容易に取り外すことが可能な部分又は部材である易開封性部100を有している。
図示された例では、第1開口10Aの周縁の一対の短辺部のうちの一方に、易開封性部100が設けられている。また、一対の長辺部のうちの一方に、フラップ10Cが接続され、他方に、フラップ10Dが接続されている。
カードマガジン10の材料は、特に限定されないが、樹脂製が好ましく、プラスチック製がより好ましい。特に、軽量且つ折り畳み可能な軟質プラスチックで成形したカードマガジン10は、使用前及び使用後のカードマガジン10の保管スペース及び輸送コスト、並びに、廃棄コストを抑えることができる。なお、本明細書において、軟質プラスチックとは、熱可塑性樹脂の中でも汎用プラスチック(一般的に耐熱温度100℃未満の材料)に分類されるものとする。
カードマガジン10は、上方に開口する第1開口10Aを設けられ、マガジンホルダ21に収納される前の状態において複数のカード1を第1開口10Aから垂直方向に積層して収納可能となっている。図2Bに示すように、カードマガジン10は、上述の第1開口10Aを含むマガジン本体10Bと、第1開口10Aの周縁に折り曲げ自在に接続された折曲部としてのフラップ10C,10Dとを有している。
2つのフラップ10C,10Dは、第1開口10Aを挟んで対向する位置関係にある。図2Bに示す例では、一方のフラップ10Cは、カードマガジン10の蓋として機能するものとなっている。この場合、他方のフラップ10Dを第1開口10A側に折り込んだ後に蓋として機能するフラップ10Cを第1開口10A側に折り込むことで、第1開口10Aを閉鎖することが可能となる。また、図2A及び図2Bに示すカードマガジン10においては、マガジン本体10Bに、第1開口10Aの周縁から下方に延びる易開封性部100が形成されている。
易開封性部100は、マガジン本体10Bから容易に取り外すことが可能な部分又は部材であって、取り外された際に、背面側に開口し且つ垂直方向に延びる第1スリット100Aを形成するか又は開口させるように構成されている。本実施形態では、図2A及び図2Bの破線L1で囲まれる部分が易開封性部100に対応しており、易開封性部100が取り外された際には、破線L1で囲まれた部分に対応する形状の第1スリット100Aが形成される。
後述の図4Bに示すマガジンホルダ21に収納された状態のカードマガジン10においては、易開封性部100が取り外されており、第1スリット100Aが形成されている。第1スリット100Aは、第1開口10Aから下方に長尺状に延びている。なお、易開封性部100は、マガジンホルダ21にカードマガジン10を収納する前に取り外しても良いが、カードマガジン10のマガジンホルダ21への装填容易性、及び、カードマガジン10内に収納されたカード1の落下防止性を考慮すると、マガジンホルダ21にカードマガジン10を収納した後に取り外す方が好ましい。
本実施形態における易開封性部100は、カードマガジン10上において破線L1の箇所に位置するミシン目によって区画される区域によって形成されている。ここで、カードマガジン10は、前述のとおり、好ましくは樹脂製、より好ましくはプラスチック製となっている。カードマガジン10がプラスチック製である場合、易開封性部100の取り外しの容易化を考慮すると、易開封性部100を規定するミシン目はマイクロミシン目であることが好ましく、具体的には、0.25mm以上0.35mm以下のスリット状の貫通部分と、0.15mm以上0.25mm以下の非貫通部分とが線状に交互に並ぶように形成されるミシン目であることが好ましい。
なお、本発明の易開封性部100は、ミシン目によって区画される領域によって形成されるものに限定されず、第1スリット100Aを閉じるようにカードマガジン10に粘着されるテープ等であってもよい。ただし、ミシン目は部材を増加させることなく形成できることから、本発明の易開封性部100は、ミシン目によって区画される領域によって形成されるものが好ましい。
図3は、本実施形態のマガジンホルダ21の背面側の斜視図である。図4A及び図4Bは、本実施形態のカードマガジン10を収納するマガジンホルダ21の背面側の斜視図であり、図4Aは、カードマガジン10の易開封性部100を取り外す前の状態を示し、図4Bは、カードマガジン10の易開封性部100を取り外した後の状態を示す。
マガジンホルダ21は、上面視において矩形形状を有する有底筒状、つまり、四角筒状、のホルダ本体21Bと、ホルダ本体21Bの上方に設けられた第2開口21Aと、背面側の側壁部に設けられた第2スリット210Aと、を有する。
ホルダ本体21Bは、第2開口21Aに対向して位置する上面視において矩形形状の底床部21Baと、底床部21Baから立ち上がり、その先端に第2開口21Aを有する側壁部21Bbと、を有する。マガジンホルダ21の側壁部21Bbは、横断面視でカードマガジン10の側壁部10Bbより一回り大きい長方形状に形成され、側壁部21Bbの先端部分が形成する第2開口21Aの周縁も、一対の長辺部と、一対の長辺部の両端部を連結する一対の短辺部と、で構成される。
マガジンホルダ21は、その上方に開口した第2開口21Aが設けられており、第2開口21Aを通してカードマガジン10を収納することが可能となっている。マガジンホルダ21がカードマガジン10を収納した状態では、第2開口21Aが、上方に開口してカードマガジン10の第1開口10Aを外部に露出させるようになっている。また、マガジンホルダ21には、カードマガジン10を収納した状態で第1スリット100A又は易開封性部100に対向し、背面側に開口して且つ垂直方向に延びる第2スリット210Aが設けられており、第2スリット210Aは、第2開口21Aから下方に長尺状に延びている。
易開封性部100が取り外されていないカードマガジン10をマガジンホルダ21に収納した際に、本実施形態では、第2スリット210Aを通して易開封性部100を取り外すことが可能になっている。ここで、第2スリット210Aの下端部の高さは、第1スリット100Aの下端部の高さよりも低くなっており、第2スリット210Aの水平方向の長さは、第1スリット100Aの水平方向の長さ以上でマガジン本体10Bの第1スリット100Aが設けられた面の水平方向の長さ以下になっている。つまり、カードマガジン10がマガジンホルダ21に挿入されたとき、背面視において、カードマガジン10とマガジンホルダ21とが重なる領域において、第1スリット100Aが第2スリット210Aの内側の領域に含まれるようになっている。
これにより、作業員は、易開封性部100を容易に取り外すことができる。また、カードマガジン10をマガジンホルダ21に収納した後に易開封性部100を取り外すことから、カードマガジン10内のカード1に汚れや傷がつくことを効果的に抑制できる。
また、マガジンホルダ21は、ホルダ本体21Bの下端部に、ホルダ載置台22に挿入される挿入部21Gを有する。本実施形態では、この挿入部21Gがホルダ載置台22に上方から着脱自在に取り付けられることで、マガジンホルダ21がカードプリンタ50に装着されるようになっている。
カード収納装置20へのカードの収納は、図4Aに示すように、マガジンホルダ21にカードマガジン10を収納し、次に、図4Bに示すように、カードマガジン10から易開封性部100を取り外し、つまり、カードマガジン10から第1スリット100Aを切り抜き、その後、カードマガジン10が収納されたマガジンホルダ21をカードプリンタ50に固定されたホルダ載置台22に装着することにより行われる。このように、本実施形態のカード供給装置40は、カードプリンタ50に対してカード1を容易にセットできるものとなっている。
続いて、本実施形態のカード移送機構30について説明する。
図5は、本実施形態のカード供給装置40を示す正面図である。図6A及び図6Bは、本実施形態のカード供給装置40を示す縦断面図であり、図6のA-A断面を示すものである。
カード移送機構30は、複数のカード収納装置20のうちの1つを選択し、そのカード収納装置20に収納されたカードマガジン10の上方の第1開口10Aからカード1を吸着して取り出し、その後、そのカード1をカード搬送部53に移送する。
本実施形態におけるカード移送機構30は、カードプリンタ50のフレーム又は筐体等に固定されたベース体31と、ベース体31に対して水平方向に移動自在となるように支持された水平移動体32と、水平移動体32に対して垂直方向に移動自在となるように支持された垂直移動体33と、カードマガジン10内の最上面のカード1を吸着によって保持することができるように構成されている吸着ヘッド34と、を有する。
ベース体31は、水平方向に延びる水平方向レール311を有する。図示された例では、ベース体31は、カードプリンタ50の一部に固定されているが、カードプリンタ50とは別の部分に固定されてもよい。
水平移動体32は、ベース体31の水平方向レール311に係合する水平方向レール受部321と、垂直方向に延びる垂直方向レール322と、を有する。水平移動体32は、その水平方向レール受部321とベース体31の水平方向レール311とが摺動自在に係合することにより、ベース体31に対して水平方向に移動自在に支持されている。
垂直移動体33は、水平移動体32の垂直方向レール322に係合する垂直方向レール受部331と、垂直方向レール受部331に支持されて且つ水平方向レール311が延びる方向及び垂直方向レール322が延びる方向の両方に直交する方向に延びるアーム332と、を有する。垂直移動体33は、その垂直方向レール受部331と水平移動体32の垂直方向レール322とが摺動自在に係合することにより、水平移動体32に対して垂直方向に移動自在に支持されている。
また、垂直移動体33のアーム332の先端部には、吸着ヘッド34が固定される。つまり、垂直移動体33は、吸着ヘッド34を保持する保持具となっている。以下の説明において、垂直移動体33を吸着ヘッド保持具33ということもある。
このような構成により、吸着ヘッド34を保持する吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33は、水平方向及び垂直方向に移動自在となっている。
図7Aは、本実施形態の吸着ヘッド保持具33の駆動機構を示す正面図である。図7Bは、本実施形態の吸着ヘッド保持具33の駆動機構を示す上面図である。
カード移送機構30のベース体31は、ステッピングモータ315と、ステッピングモータ315により駆動される駆動プーリ316と、従動プーリ317と、駆動プーリ316及び従動プーリ317間にかけ渡された伝動ベルト318と、を有する。駆動プーリ316及び従動プーリ317は、Z方向の回転軸を有している。伝動ベルト318は、水平方向に、ベース体31の水平方向レール311と略同一の長さに亘って延びている。また、伝動ベルト318は、その水平移動体固定部318aにおいて、水平移動体32に固定されている。
カード移送機構30の水平移動体32は、ステッピングモータ325と、ステッピングモータ325により駆動される駆動プーリ326と、従動プーリ327と、駆動プーリ326及び従動プーリ327間にかけ渡された伝動ベルト328と、を有する。駆動プーリ326及び従動プーリ327は、Y方向の回転軸を有している。伝動ベルト328は、垂直方向に、水平移動体32の垂直方向レール322と略同一の長さに亘って延びている。また、伝動ベルト328は、その吸着ヘッド保持具固定部328aにおいて、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33に固定されている。
このような構成によって、水平移動体32は、ステッピングモータ315の駆動により水平方向に移動し、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33は、ステッピングモータ325の駆動により垂直方向に移動するようになっている。つまり、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33は、ステッピングモータ315、325の駆動により、水平方向及び垂直方向に移動するようになっている。ステッピングモータ315、325の駆動は、制御部59により制御される。
図8Aは、本実施形態の吸着ヘッド34を示す側面図である。図8Bは、本実施形態の吸着ヘッド34を示す底面図である。
吸着ヘッド34は、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33のアーム332の先端部に固定されたサポート板341と、下方に吸着面を向けた状態でサポート板341に支持された吸着部342と、接触式センサ343と、光学センサ344と、を有している。
吸着部342は、サポート板341の下面に配置されており、近接するカード1の吸着及び吸着したカード1の解放ができるものとなっている。本実施形態の吸着部342は、吸引ポンプ(図示せず)から延びる真空ライン(図示せず)に連結された吸盤により構成される。このような吸着部342では、吸引ポンプを作動させることによって、カード1を吸着し、吸引ポンプの作動を停止させることによって、カード1を解放する。吸引ポンプの作動及び停止は、制御部59により制御させる。
接触式センサ343は、サポート板341の下面に配置されており、その接触子343aへの物体の接触の有無を検出する。具体的には、接触式センサ343は、カード1又はカードマガジン10の底面の接触子343aへの接触の有無を検出する。
これにより、吸着ヘッド34をカードマガジン10内で下方に移動させる制御を行うときに、吸着ヘッド34がカードマガジン10内の最上面のカード1又はカードマガジン10の底面に近接しているか否かを判断することができる。
後述のカード移送処理においては、吸着ヘッド34及び吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33をカードマガジン10内で下方に移動させる処理を行うとき、接触式センサ343がその接触子343aへの物体の接触を検知したときに、その下方への移動を停止させる、つまり、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33の駆動機構の駆動を停止させる、ことになる。そして、その下方への移動の停止後に、吸着部342によるカード1の吸着保持が行われることになる。
また、吸着部342に吸着されたカード1をカードプリンタ50のカード搬送部53まで移送する制御を行うときに、接触式センサ343によって、カード1が吸着部342により保持されているか否か、つまり、カード1の吸着部342からの落下が生じていないか否か、を判断することができる。
光学センサ344は、サポート板341の下面に配置されており、カード1からの反射光に基づいて、つまり、受光するカード1の表面からの光と、カード1が無くなった場合に受光する光との相違から、カードマガジン10内のカード1の有無を検出する。
本実施形態では、カードマガジン10の内部にカード1とは異なる態様で光を乱反射又は吸収する底材15が設けられ、底材15の表面反射率はカード1の表面反射率と異なっている。この底材15上にカード1が積層されている。光学センサ344は、本例では赤外線センサであるが、特に限られるものではない。この底材15により、光学センサ344によってカード1の有無を検出する際の検出精度を向上させることができる。
なお、上述の接触式センサ343に替えて、吸着ヘッド34に近接する物体を検知することのできる任意の物体検知センサを用いることもできる。この物体検知センサとして、例えば、超音波センサや光学センサを用いることが考えられる。ここで、吸着ヘッド34に近接するとは、その距離に存在するカード1を吸着部342により吸着保持することができる程度の距離に存在していることをいうものとする。また、この物体検知センサが光学センサ344を兼ねるものであってもよい。
以上の構成を有するカード移送機構30は、水平移動体32を水平方向に移動させることにより、図6Aに示すように、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33のアーム332が第1スリット100A及び第2スリット210Aの上方に位置し、且つ、吸着ヘッド34が、選択されたカード収納装置20のカードマガジン10の第1開口10Aの上方に位置する状態となるように、吸着ヘッド34を移動させる。
その後、図6Bに示すように、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33を下方に移動させて、カードマガジン10内の最上面のカード1を吸着ヘッド34の吸着部342で吸着することにより保持する。このとき、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33のアーム332は、第1スリット100A及び第2スリット210A内を移動することになる。
なお、前述のとおり、カード1が印刷を施される面を下に向けてストックされている。そのため、吸着ヘッド34の吸着部342によって吸着されるカード1の面が印刷を施されない面となり、印刷不良の発生が抑制される。
その後、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33を上方に移動させることにより、吸着ヘッド34で保持したカード1をカードマガジン10の第1開口10Aから取り出すことができる。そして、図5に示すように、水平移動体32を左方向に移動させることにより、吸着ヘッド34で保持したカード1をカード搬送部53に移送することができる。
このように、本実施形態のカード移送機構30を有するカード供給装置40は、カード収納装置20の側方から延びる吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33のアーム332がカードマガジン10の第1スリット100A及びマガジンホルダ21の第2スリット210A内を移動できるものとなっている。そのため、カード移送機構30を垂直方向に大型化することなく、カード1を適正にカードプリンタ50へ移送できる。したがって、本実施形態のカード供給装置40は、カードプリンタ50に対しカード1を容易にセットでき、且つ、大型化を抑制しながらカード1をカードプリンタ50に供給することが可能なものとなっている。
図9は、カードマガジン10の易開封性部100を取り外さずにカード供給装置40を作動させた場合におけるカード供給装置40の動きを示す縦断面図である。
カードマガジン10の易開封性部100を取り外さずにカード供給装置40を作動させた場合、つまり、カードマガジン10から第1スリット100Aを切り抜き忘れてカード供給装置40を作動させた場合、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33がその上端位置である初期位置から下方に所定距離dを移動すると、そのアーム332がカードマガジン10の第1開口10Aの縁に位置する易開封性部100の上端に当接して、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33の下方への移動が異常停止することになる。このとき、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33の下方への移動の異常停止に伴って、吸着ヘッド保持具33の駆動機構の駆動、ひいては、ステッピングモータ325の駆動、も異常停止することになる。
そのため、カードマガジン10の易開封性部100を取り外さずにカード供給装置40を作動させると、最初のうちは、カードマガジン10内のカード1を取り出すことができるが、カードマガジン10内のカード1の収納枚数が減少し、カードマガジン10内のカード1を取り出すために吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33を初期位置から下方に所定距離dより長く移動させなければならなくなると、カードマガジン10内のカード1を取り出すことができなくなる。
このことから、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33の下方への移動が異常停止したとき、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33の初期位置から下方への移動距離が所定距離d以内である場合は、カードマガジン10の易開封性部100が取り外されていない可能性が高く、その移動距離が所定距離dより長い場合は、その他の不具合が発生している可能性が高いといえる。ここで、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33の初期位置から下方への移動距離が所定距離dより長い場合は、カード1がカードマガジン10内で立った状態となっていることが想定される。
なお、吸着ヘッド保持具33の初期位置から下方への移動距離は、ステッピングモータ325からの信号に基づいて、ステッピングモータ325のステップ数から算出できる。
上述のエラーの他に、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33を上方に移動させているときに、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33が障害物に接触するなどの機械的不具合(メカ異常)により、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33が異常停止し、それに伴って、吸着ヘッド保持具33の駆動機構の駆動、ひいては、ステッピングモータ325の駆動、も異常停止するというエラーが発生することがある。
また、水平移動体32を水平方向に移動させているときに、水平移動体32が障害物に接触するなどの機械的不具合(メカ異常)により、水平移動体32が異常停止し、それに伴って、吸着ヘッド保持具33の駆動機構の駆動、ひいては、ステッピングモータ325の駆動、も異常停止するというエラーが発生することがある。
また、カードマガジン10内にカード1が収納されていない状態、つまり、カードマガジン10のカードが切れている状態においては、吸着ヘッド34がカード1を吸着することができないというエラーが発生する。
また、吸着ヘッド34がカード1を吸着保持して移送している途中において、何らかの外的要因によって、カード1が吸着ヘッド34から落下してしまうというエラーが発生することもある。
このように、カード供給装置40に発生するエラーには複数の原因が存在することから、発生したエラーに適切かつ迅速に対応するためには、そのエラーの原因を適切に把握する必要がある。この点、本実施形態のカード供給装置40は、以下において説明するとおり、制御部59が発生したエラーの種類に応じて異なる種類のエラー信号を出力するものとなっている。
次に、本実施形態のカード供給装置40の制御について説明する。
図10は、本実施形態のカード供給装置40のカード移送処理の流れを示すフロー図である。
カード移送処理では、最初に、水平移動体32を水平方向に移動させることによって、吸着ヘッド34を指定のカード収納装置20にセットされたカードマガジン10の直上へ移動させる処理である「指定カードマガジンへの移動処理S1」を行う。次に、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33を下方へ移動させることによって、吸着ヘッド34をカードマガジン10内で下方へ移動させる処理である「下方移動処理S2」を行う。次に、吸着ヘッド34の吸着部342によりカードマガジン10内の最上面のカード1を吸着して保持する(S3)。次に、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33を上方へ移動させることによって、カード1を吸着保持した吸着ヘッド34をカードマガジン10内で上方へ移動させる処理である「上方移動処理S4」を行う。次に、水平移動体32を水平方向に移動させることによって、カード1を吸着保持した吸着ヘッド34をカードプリンタ50のカード搬送部53へ移動させる処理である「カード搬送部への移動処理S5」を行う。次に、吸着ヘッド34の吸着部342に吸着保持されているカード1を解放し、カード1をカードプリンタ50のカード搬送部53へ受け渡す(S6)。最後に、水平移動体32を水平方向に移動させることによって、吸着ヘッド34を初期位置へ移動させる処理である「初期位置への移動処理S7」を行う。
図11は、カード移送処理における指定カードマガジンへの移動処理S1の流れを示すフロー図である。
指定カードマガジンへの移動処理S1では、最初に、水平移動体32の水平方向への移動を開始する(S11)。
次に、吸着ヘッド34が指定のカード収納装置20にセットされたカードマガジン10の直上に到達したか否かを判断する(S12)。この判断は、それぞれのカード収納装置20に近接して設けられたポジションセンサの出力などに基づいてなされる。
吸着ヘッド34が指定のカード収納装置20にセットされたカードマガジン10の直上に到達している場合は、水平移動体32の水平移動を停止し(S13)、指定カードマガジンへの移動処理S1を終了する。
吸着ヘッド34が指定のカード収納装置20にセットされたカードマガジン10の直上に到達していない場合は、ステッピングモータ315が停止しているか否かを判断する(S14)。この判断において、ステッピングモータ315が停止している場合は、機械的不具合(メカ異常)のエラー信号を出力してカード移送処理を終了する(S15)。このエラー信号は、エラーが発生した場所を特定するための情報も含んでいる。一方、ステッピングモータ315が停止していない場合は、前述の吸着ヘッド34が指定のカード収納装置20にセットされたカードマガジン10の直上に到達したか否かの判断(S12)に戻り、以後、同様の処理を繰り返す。
図12は、カード移送処理における下方移動処理S2の流れを示すフロー図である。
下方移動処理S2では、最初に、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33の下方への移動を開始する(S21)。
次に、接触式センサ343が接触子343aへの物体の接触を検知しているか否かを判断する(S22)。
接触式センサ343が接触子343aへの物体の接触を検知している場合には、光学センサ344がカード1を検知しているか否かの判断を行う(S23)。この判断において、光学センサ344がカード1を検知している場合には、下方移動処理S2を終了し、光学センサ344がカード1を検知していない場合には、カード切れのエラー信号を出力してカード移送処理を終了する(S28)。このエラー信号は、エラーが発生した場所又はカード収納装置20を特定するための情報も含んでいる。
上述の接触式センサ343が接触子343aへの物体の接触を検知しているか否かの判断(S22)において、接触式センサ343が接触子343aへの物体の接触を検知していない場合には、ステッピングモータ325が停止しているか否かを判断する(S24)。
ステッピングモータ325が停止していない場合には、上述の接触式センサ343が接触子343aへの物体の接触を検知しているか否かの判断(S22)に戻り、以後、同様の処理を繰り返す。
一方、ステッピングモータ325が停止している場合には、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33の初期位置から下方への移動距離が所定距離d以内であるか否かを判断する(S25)。
この判断において、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33の初期位置から下方への移動距離が所定距離d以内である場合は、カードマガジン10のスリット切り抜き忘れのエラー信号を出力し(S26)、その移動距離が所定距離dよりも長い場合は、機械的不具合(メカ異常)のエラー信号を出力してカード移送処理を終了する(S27)。なお、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33の初期位置から下方への移動距離が所定距離dより長い場合は、カード1がカードマガジン10内で立った状態となっていることが想定されることから、これに対応したエラー信号を出力してもよい。これらのエラー信号は、エラーが発生した場所又はカード収納装置20を特定するための情報も含んでいる。
図13は、カード移送処理における上方移動処理S4の流れを示すフロー図である。
上方移動処理S4では、最初に、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33の上方への移動を開始する(S41)。
次に、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33がその上端位置である初期位置に到達したか否かを判断する(S42)。この判断は、初期位置に近接して設けられたポジションセンサの出力などに基づいてなされる。
吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33が上端位置である初期位置に到達している場合には、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33の上方への移動を停止し(S43)、上方移動処理S4を終了する。
吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33が上端位置である初期位置に到達してない場合には、接触式センサ343が接触子343aへの物体の接触を検知しているか否かを判断する(S44)。
接触式センサ343が接触子343aへの物体の接触を検知していない場合には、カード落下のエラー信号を出力してカード移送処理を終了する(S46)。このエラー信号は、エラーが発生した場所又はカード収納装置20を特定するための情報も含んでいる。
一方、接触式センサ343が接触子343aへの物体の接触を検知している場合には、ステッピングモータ325が停止しているか否かを判断する(S45)。この判断において、ステッピングモータ325が停止している場合は、機械的不具合(メカ異常)のエラー信号を出力してカード移送処理を終了する(S47)。このエラー信号は、エラーが発生した場所又はカード収納装置20を特定するための情報も含んでいる。ステッピングモータ325が停止していない場合は、前述の、吸着ヘッド保持具(垂直移動体)33が上端位置である初期位置に到達したか否かの判断(S42)に戻り、以後、同様の処理を繰り返す。
図14は、カード移送処理におけるカード搬送部への移動処理S5の流れを示すフロー図である。
カード搬送部への移動処理S5では、最初に、水平移動体32の水平方向への移動を開始する(S51)。
次に、水平移動体32がカード搬送部53に到達したか否かを判断する(S52)。この判断は、カード搬送部53に近接して設けられたポジションセンサの出力などに基づいてなされる。
水平移動体32がカード搬送部53に到達している場合には、水平移動体32の水平方向への移動を停止し(S53)、カード搬送部への移動処理S5を終了する。
水平移動体32がカード搬送部53に到達してない場合には、接触式センサ343が接触子343aへの物体の接触を検知しているか否かを判断する(S54)。
接触式センサ343が接触子343aへの物体の接触を検知していない場合には、カード落下のエラー信号を出力してカード移送処理を終了する(S56)。このエラー信号は、エラーが発生した場所を特定するための情報も含んでいる。
一方、接触式センサ343が接触子343aへの物体の接触を検知している場合には、ステッピングモータ315が停止しているか否かを判断する(S55)。この判断において、ステッピングモータ315が停止している場合は、機械的不具合(メカ異常)のエラー信号を出力してカード移送処理を終了する(S57)。このエラー信号は、エラーが発生した場所を特定するための情報も含んでいる。ステッピングモータ315が停止していない場合は、前述の、水平移動体32がカード搬送部53に到達したか否かの判断(S52)に戻り、以後、同様の処理を繰り返す。
図15は、カード移送処理における待機位置への移動処理S7の流れを示すフロー図である。
待機位置への移動処理S7では、最初に、最初に、水平移動体32の水平方向への移動を開始する(S71)。
次に、水平移動体32が待機位置に到達したか否かを判断する(S72)。この判断は、待機位置に近接して設けられたポジションセンサの出力などに基づいてなされる。
水平移動体32が待機位置に到達している場合は、水平移動体32の水平移動を停止し(S73)、待機位置の移動処理S7を終了する。
水平移動体32が待機位置に到達していない場合は、ステッピングモータ315が停止しているか否かを判断する(S74)。ステッピングモータ315が停止している場合は、機械的不具合(メカ異常)のエラー信号を出力してカード移送処理を終了する(S75)。このエラー信号は、エラーが発生した場所を特定するための情報も含んでいる。一方、ステッピングモータ315が停止していない場合は、前述の水平移動体32が待機位置に到達したか否かの判断(S72)に戻り、以後、同様の処理を繰り返す。
上述のカード移送処理は、制御部59により制御される。そして、制御部59には警報装置58が接続され、この警報装置58は、制御部59により出力されたエラー信号に基づいて、それぞれのエラー信号の種類に応じて異なる種類の警報を発するものとなっている。具体的には、スリット切り抜き忘れのエラー信号に応じてスリット切り抜き忘れ警報を発し、カード切れのエラー信号に応じてカード切れ警報を発し、カード落下のエラー信号に応じてカード落下警報を発し、機械的不具合(メカ異常)のエラー信号に応じて機械的不具合警報を発するものとなっている。警報装置58は、例えば、エラー情報を表示する情報表示部と、警報音を発生する警報音発生部と、を有する。なお、これらのエラー信号は、警報装置58に替えて、又は、警報装置58とともに、任意の外部機器に入力されるように構成されていてもよい。
また、本実施形態のカード供給装置40は、カード移送処理において、エラー信号を出力してカード移送処理を終了した場合であっても、そのエラーが発生した場所又はカード収納装置20よりもカード搬送部53に近い場所にあるカード収納装置20からのカード移送処理を行うことができるように構成されている。
以上で説明したとおり、本実施形態のカード供給装置40は、発生したエラーの原因に応じて異なる種類のエラー信号が出力されるものとなっている。具体的には、カード供給装置40は、スリット切り抜き忘れのエラー信号と、カード切れのエラー信号と、カード落下のエラー信号と、機械的不具合(メカ異常)のエラー信号と、を出力するものとなっている。なお、本明細書において、機械的不具合(メカ異常)のエラー信号は、スリット切り抜き忘れのエラー信号、カード切れのエラー信号及びカード落下のエラー信号と異なるエラー信号を意味するものとする。また、それらのエラー信号は、エラーが発生した場所又はカード収納装置20を特定するための情報も含んでいる。これにより、カード供給装置40は、作業者が、専門知識を有しない場合であっても、そのエラーに適切かつ迅速に対応することができるものとなっている。
さらに、本実施形態のカード供給装置40は、カード移送処理において、エラー信号を出力してカード移送処理を終了した場合であっても、そのエラーが発生した場所又はカード収納装置20よりもカード搬送部53に近い場所にあるカード収納装置20からのカード移送処理を行うことができるものとなっている。これにより、本実施形態のカード供給装置40は、エラーが発生した場合であっても、カードプリンタ50でのカード1の印刷の作業を妨げる時間を抑えることができるものとなっている。
さらに、本実施形態のカード供給装置40及びカードプリンタ50は、上述な機能を簡易な構成によって実現するものとなっている。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限られるものではなく、各実施の形態においては種々の変更を加えることができる。