本発明は、コンバインに関する。
特許文献1には、圃場の作物を収穫しながら走行するコンバインのための自動走行システムが記載されている。コンバインのタンクが満杯になる前に、畦際に駐車している穀粒運搬車の近傍へ停車し、穀粒を穀粒運搬車へ排出する必要がある。特許文献1の自動走行システムでは、穀粒を受け取る穀粒運搬車の停車位置は予め決定される。そして、穀粒運搬車へ穀粒を排出する際のコンバインの駐車位置も、設定された穀粒運搬車の停車位置の近傍へ、予め設定される。
コンバインから穀粒を受け取った穀粒運搬車は、穀粒の貯留施設や乾燥施設等へ移動し、穀粒を排出する。穀粒運搬車の移動先は、常に同じとは限らない。そうすると、圃場の西に位置する移動先から戻った場合は、圃場の西側の停車位置が適切である。しかし、圃場の東に位置する移動先から戻った場合は、停車位置が圃場の東側である方が、移動距離が短くてすむ。このように、穀粒運搬車の停車位置は、毎回同じ位置が最適とは限らない。また、大きさの異なる穀粒運搬車の場合には、道路の幅に応じて最適な停車位置が変化し得る。特許文献1の自動走行システムでは、穀粒運搬車の停車位置が変化することは考慮されていない。
本発明の目的は、穀粒運搬車の停車位置の変化に対応可能なコンバインを提供することにある。
上記目的を達成するためのコンバインの特徴構成は、穀粒貯留部と、前記穀粒貯留部に貯留された穀粒を排出する穀粒排出装置と、前記穀粒貯留部に貯留された穀粒を排出するタイミングである排出タイミングを決定する排出タイミング決定部と、前記穀粒排出装置から排出される穀粒を受け取る際の穀粒運搬車が停車する位置である受取位置を取得する取得部と、前記受取位置に基づいて前記排出タイミングにおける排出走行経路を生成する走行経路生成部と、を備え、前記排出走行経路の終端部は、圃場の外周と交差する方向に後進しながら前記受取位置へ近づく後進経路である点にある。
上記の特徴構成によれば、取得した穀粒運搬車の受取位置に基づいて排出走行経路が生成されるので、穀粒運搬車の停車位置が変化したとしても、適切な排出走行経路を生成することができる。加えて、排出走行経路の終端部においては後進しながら受取位置に近づくこととなるので、安全に穀粒運搬車へ接近することが可能となる。
本発明に係るコンバインの別の特徴構成は、前記走行経路生成部は、前記後進経路の延長線上に前記受取位置が位置するように、前記排出走行経路を生成する点にある。
上記の特徴構成によれば、後進経路の延長線上に前記受取位置が位置するので、安全且つスムーズに穀粒運搬車への穀粒の排出作業を開始することが可能となる。例えば、排出走行経路の終点が穀粒運搬車への穀粒排出が可能な位置であれば、即時に排出作業を開始できる。排出走行経路の終点が穀粒運搬車から離れた位置であっても、そのまま後進して穀粒運搬車へ接近し、排出作業を開始することができる。
本発明に係るコンバインの別の特徴構成は、前記取得部が取得する前記受取位置は、前記穀粒運搬車に搭載された衛星測位モジュールからの測位データに基づいて算出された前記穀粒運搬車の位置である点にある。
上記の特徴構成によれば、穀粒運搬車の実測位置に基づいて排出走行経路が生成されるので、排出走行経路が更に適切なものとなる。
本発明に係るコンバインの別の特徴構成は、周回した作業地の外周側の領域を外周領域として設定する領域設定部と、機体の後部に設けられると共に、畦への接近を検出可能な検出装置と、前記検出装置からの出力に基づいて、前記畦に接触しないように、前記領域設定部が設定した前記外周領域を超えて機体を後進させる走行制御部と、を備える点にある。
上記の特徴構成によれば、外周領域の外であっても畦に接触しないように機体を後進させ、機体を安全に穀粒運搬車へ接近させることが可能となる。
本発明に係るコンバインの別の特徴構成は、前記受取位置に基づいて、前記穀粒排出装置の動作を制御して、前記穀粒排出装置の排出口を前記穀粒運搬車への穀粒の投入が可能な位置へ移動させる排出制御部を備える点にある。
上記の特徴構成によれば、穀粒排出装置の排出口を自動的に移動させて排出作業を開始することができるので、作業効率を向上さえることができる。
コンバインの左側面図である。
圃場における初期周回走行を示す図である。
αターン周回走行パターンによる自動走行を示す図である。
Uターン周回走行パターンによる自動走行及び排出走行を示す図である。
制御に関する構成を示すブロック図である。
畦検出走行を示す図である。
以下、自動走行を行い未作業地の作物を収穫するコンバインの一例について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、矢印Fの方向を「機体前側」、矢印Bの方向を「機体後側」、矢印Uの方向を「上側」、矢印Dの方向を「下側」とする。左右を示す場合には、機体前側を向いた状態における右手側を「右」、左手側を「左」とする。
〔コンバインの構成〕
図1に、コンバインの一例である自脱型のコンバインが示されている。このコンバイン1には、機体10と、クローラ式の走行装置11と、が備えられている。機体10の前部には、圃場の植立穀稈を刈り取って収穫する収穫部12が設けられている。
機体10において収穫部12の後方に、運転部13が設けられている。運転部13は、機体10の前部における右側に位置する。運転部13の左方に、収穫部12により収穫された収穫物を搬送する搬送部14が設けられている。
搬送部14の後方に、搬送部14により搬送された収穫物を脱穀処理する脱穀装置15が設けられている。脱穀装置15の後部に、排藁を切断処理する排藁処理装置16が設けられている。
運転部13の後方且つ脱穀装置15の右方に、脱穀装置15により得られた穀粒を貯留する穀粒タンク17(「穀粒貯留部」の一例)が設けられている。穀粒タンク17には、穀粒タンク17に貯留されている穀粒の量を検出する貯留量センサ17a(図8参照)が設けられている。
穀粒タンク17の後方に、穀粒タンク17に貯留された穀粒を外部に排出する穀粒排出装置18が設けられている。穀粒排出装置18は、上下方向に延びる旋回軸心周りで旋回可能である。
運転部13の前部における左側部分には、衛星測位モジュール19が設けられている。衛星測位モジュール19は、人工衛星からのGNSS(Global Navigation Satellite System)の信号を受信して、受信した信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを生成する。GNSSとしては、GPS、QZSS、Galileo、GLONASS、BeiDou、等を利用可能である。
運転部13には、管理端末21(図5参照)が配置されている。管理端末21は、種々の情報を表示可能に構成されている。管理端末21が、コンバイン1の自動走行に関する種々の設定(後述する優先する走行パターンの設定など)の入力操作を受け付け可能に構成されてもよい。
外部の通信ネットワークに接続可能な通信部23(図5参照)が設けられている。通信部23は、当該通信ネットワークを通じて穀粒運搬車CVや外部のサーバ等と通信可能に構成されている。
機体10の後部に、畦A(図6)への接近を検出可能な検出装置24(図5参照)が設けられている。検出装置24は、例えば、誘導型、静電容量型、超音波型、電磁波型、赤外線型、接触型の近接センサや、カメラ等である。
コンバイン1は走行装置11により自走可能に構成されており、収穫部12によって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11により走行する収穫走行が可能なように構成されている。
〔穀粒運搬車の構成〕
穀粒運搬車CVは、コンバイン1の穀粒排出装置18から排出された穀粒を受け取り及び貯留可能に構成されている。穀粒運搬車CVは、図5に示されるように、衛星測位モジュール91及び通信部92を備えている。衛星測位モジュール91は、人工衛星からのGNSSの信号を受信して、受信した信号に基づいて、穀粒運搬車CVの自車位置を示す測位データを生成する。通信部92は、外部の通信ネットワークに接続可能であり、当該通信ネットワークを通じてコンバイン1や外部のサーバ等と通信可能に構成されている。
〔コンバインによる収穫作業〕
自脱型のコンバイン1による圃場での収穫作業について、図2~4を参照しながら説明する。本実施形態では、図2に示されるように、圃場の外形が矩形である例が説明される。図示例では、圃場の長辺が東西方向に平行であり、圃場の短辺が南北方向であり、条方向が南北方向である。
まず、図2に示されるように、圃場における外周側の領域において圃場の境界線(圃場の外周)に沿って周回するように収穫走行が行われる(初期周回走行)。この初期周回走行によって既作業地となった領域は外周領域SA(図3参照)として設定され、外周領域SAの内側の未作業地は作業対象領域CA(図3参照)として設定される。外周領域SAの外縁Wは、初期周回走行が圃場の外周から離れず外周に沿って行われた場合には、圃場の外周にほぼ一致し、圃場の外周から離れた場所においては、圃場の外周から離れることになる。
外周領域SAは、作業対象領域CAの植立穀稈の収穫を自動走行により行う際に、コンバイン1が方向転換(後述するターン走行)するためのスペースとして用いられる。また、外周領域SAは、穀粒の排出場所や、燃料の補給場所への移動を行うためのスペースとしても用いられる。
初期周回走行は、外周領域SAの幅をある程度広く確保するために、2周~4周程度行われる。初期周回走行は、手動走行により行われてもよいし、自動走行により行われてもよい。初期周回走行は、作業対象領域CAの1辺(好ましくは対向する2辺)が条方向と平行になるように行われる。本実施形態では、作業対象領域CAが矩形であり、作業対象領域CAの対向する2つの短辺が条方向と平行である場合について説明する。
初期周回走行に続いて、自動走行により作業対象領域CAの植立穀稈が収穫される。この自動走行においては、作業対象領域CAに設定された収穫走行経路Lを自動走行しながら植立穀稈を収穫する自動収穫走行と、1つの自動収穫走行と次の自動収穫走行との間に行われるターン走行とが繰り返し行われる。ターン走行は、2つの収穫走行経路Lの間を繋ぐターン走行経路Tの自動走行である。
上述の自動収穫走行及びターン走行は、所定の走行パターンに沿って行われる。走行パターンとしては、図3に示されるαターン周回走行パターンと、図4に示されるUターン周回走行パターンと、が例示される。
αターン周回走行パターン(図3)は、矩形の作業対象領域CAの4つの辺に平行な収穫走行経路Lを順に走行し、ターン走行をαターン走行にて行う走行パターンである。αターン走行は、先の収穫走行経路Lの延びる方向に沿った前進と、旋回走行を含む後進走行と、次の収穫走行経路Lの延びる方向に沿った前進と、により実行される。図3の例では、コンバイン1は、収穫走行経路L01、L02、L03、L04、及び、ターン走行経路T01、T02、T03を走行する。αターン周回走行パターンによる自動走行は、図3に示されるように、渦巻き状の走行となる。
Uターン周回走行パターン(図4)は、矩形の領域の対向する2辺に平行な収穫走行経路Lを交互に外側から順に走行し、ターン走行をUターン走行にて行う走行パターンである。Uターン走行は、旋回走行を含む前進走行のみにより実行される。図4の例では、コンバイン1は、収穫走行経路L05、L06、L07、L08、及び、ターン走行経路T04、T05、T06を走行する。Uターン周回走行パターンによる自動走行は、図4に示されるように、αターン周回走行パターンと同様に渦巻き状の走行となる。
本実施形態では、Uターン周回走行パターンで走行する収穫走行経路Lを、作業対象領域CAの条方向に平行な2辺に平行な経路とする。すなわち、Uターン周回走行パターンによる自動走行では、自動収穫走行は条方向に平行な経路においてのみ行われる。従って、自脱型コンバインであるコンバイン1において脱穀処理が適切に行われ好ましい。
αターン周回走行パターンによる自動走行は、外周領域SAの幅が狭くてUターン周回走行パターンによる自動走行が実行し難い場合に、Uターン周回走行パターンに先立って行われる。外周領域SAの幅が十分に大きく、Uターン周回走行パターンによる自動走行が可能な場合には、αターン周回走行パターンによる自動走行は実行されなくてもよい。
穀粒タンク17の穀粒の貯留量が大きくなると、図4に示されるように、排出走行経路Xを自動走行する排出走行が実行されて、穀粒運搬車CVへの穀粒の排出が行われる。排出走行経路Xは、収穫走行を中断した収穫中断位置IPから、終端位置EDに至る走行経路である。終端位置EDは、受取位置RPに停車した穀粒運搬車CVの近傍に設定される。本実施形態では、排出走行経路Xは、準備経路Y、及び後進経路Zを含んでいる。準備経路Yは、収穫中断位置IPから後進経路Zの開始位置までの経路である。後進経路Zは、排出走行経路Xの終端部であって、圃場の外周と交差する方向に後進しながら受取位置RPへ近づき、終端位置EDに至る経路である。
穀粒の排出の完了後、作業対象領域CAに未作業地が残っている場合、収穫作業が続行される。作業対象領域CAに未作業地が残っていない場合、収穫作業が終了する。
排出走行は、図4に示されるように、1つの収穫走行経路L上の自動走行が終了した後に実行されてもよいし、収穫走行経路L上の自動走行を中断して実行されてもよい。
〔制御に関する構成〕
以下、図5のブロック図を参照しながら、コンバイン1及び穀粒運搬車CVの制御に関する構成について説明する。コンバイン1の制御装置80は、自車位置算出部81、領域算出部82(「領域設定部」の一例)、経路算出部83(「走行経路生成部」の一例)、走行制御部84、排出タイミング決定部85、取得部86、及び排出制御部87を備えている。詳しくは、制御装置80は、いわゆるECUであり、上述の各機能部に対応するプログラムを記憶するメモリ(HDDや不揮発性RAMなど。図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。穀粒運搬車CVの制御装置90についても同様である。制御装置80は、走行装置11、収穫部12、貯留量センサ17a、衛星測位モジュール19、管理端末21、及び通信部23と接続され、これらを制御可能に構成されている。
自車位置算出部81は、衛星測位モジュール19が生成した測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。
領域算出部82は、自車位置算出部81が算出したコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、外周領域SA及び作業対象領域CAを算出する。具体的には、領域算出部82は、自車位置算出部81が算出したコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、圃場の外周側における周回走行(初期周回走行)でのコンバイン1の走行軌跡を算出する。そして、領域算出部82は、算出されたコンバイン1の走行軌跡に基づいて、コンバイン1が植立穀稈を収穫しながら走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして設定する。すなわち、領域算出部82は、周回した作業地の外周側の領域を外周領域SAとして設定する。また、領域算出部82は、算出された外周領域SAよりも圃場内側の領域を作業対象領域CAとして設定する。
例えば、図2においては、圃場の外周側における周回走行(初期周回走行)においてコンバイン1が走行した経路が矢印で示されている。図示例では、コンバイン1は、3周の周回走行を行っている。そして、この初期周回走行が完了すると、圃場は図3に示される状態となる。
領域算出部82は、図3に示されるように、コンバイン1が植立穀稈を収穫しながら走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして算出し、算出された外周領域SAよりも圃場内側の領域を作業対象領域CAとして算出する。
経路算出部83は、領域算出部82の算出結果に基づいて、作業対象領域CAの内側において、自動収穫走行のための収穫走行経路Lを算出する。本実施形態では、収穫走行経路Lは、作業対象領域CAの4つの辺に平行に延びる複数のメッシュ線(図3)である。また、経路算出部83は、ターン走行(αターン走行、Uターン走行)のための、2つの収穫走行経路Lの間を繋ぐターン走行経路Tを算出する。
また、経路算出部83は、取得部86が取得する受取位置RPに基づいて、排出走行経路Xを生成する。排出走行経路Xは、排出タイミング決定部85が決定した排出タイミングに走行される経路である。経路算出部83は、排出走行経路Xの終端部が、圃場の外周と交差する方向に後進しながら受取位置RPへ近づく経路(後進経路Z)となるように、排出走行経路Xを生成する。経路算出部83は、後進経路Zの延長線上に受取位置RPが位置するように、排出走行経路Xを生成する。
具体的には、まず経路算出部83は、外周領域SAの内部において受取位置RPに最も近く、コンバイン1が停車可能な位置を、終端位置EDとして設定する。図4の図示例では、受取位置RPは外周領域SAの外縁Wの近傍に位置し、外縁Wは南北方向に延びている。経路算出部83は、終端位置EDを、南北方向については緯度が受取位置RPと等しく、東西方向については外周領域SAの内部において外縁Wに最も近くなるように、設定する。そして経路算出部83は、終端位置EDから外周領域SAの外縁Wと直交する方向(図示例では東西方向)に延びる経路を算出し、後進経路Zとする。そうすると、後進経路Zの延長線上に受取位置RPが位置することになる。
経路算出部83は、排出タイミング決定部85が設定する収穫中断位置IPから、後進で後進経路Zに進入可能となる経路を算出し、準備経路Yとする。最終的に、経路算出部83は、準備経路Yと後進経路Zの組を、排出走行経路Xとして算出する。準備経路Yは、収穫中断位置IPから前進しつつ左旋回し、コンバイン1が西を向いた状態にて停車位置SPで停車する走行経路である。後進経路Zは、コンバイン1が西を向いた状態にて停車位置SPから後進し、コンバイン1が西を向いた状態にて終端位置EDで停車する走行経路である。
走行制御部84は、走行装置11及び収穫部12を制御可能に構成されている。走行制御部84は、経路算出部83が算出した走行経路(収穫走行経路L、ターン走行経路T、排出走行経路X等)の内から次に走行する走行経路を設定する。走行制御部84は、走行経路の設定を、上述の走行パターン(αターン周回走行パターン、Uターン周回走行パターン)や、排出タイミング決定部85が設定する排出タイミング(後述)に基づいて実行する。そして走行制御部84は、自車位置算出部81が算出したコンバイン1の位置座標と、設定した走行経路と、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。具体的には、走行制御部84は、設定した走行経路に沿ってコンバイン1が走行するように、コンバイン1の走行装置11を制御する。そして走行制御部84は、コンバイン1が収穫走行経路Lを走行する時に収穫部12を動作させる。
排出タイミング決定部85は、穀粒タンク17に貯留された穀粒を排出するタイミングである排出タイミングを決定する。具体的には、排出タイミング決定部85は、貯留量センサ17aが検出した穀粒タンク17に貯留されている穀粒の量に基づいて、穀粒の排出タイミングを設定する。そして、設定した排出タイミングに基づいて、収穫中断位置IPを設定する。
例えば、排出タイミング決定部85は、穀粒タンク17に貯留されている穀粒の量が所定の閾値を超えたことに応じて、排出タイミングを「現在実行している自動収穫走行の終了後」に設定する。この場合、排出タイミング決定部85は、現在走行している収穫走行経路L(図4の例では収穫走行経路L08)の終点を収穫中断位置IPとして設定する。
排出タイミング決定部85が、自車位置算出部81が算出したコンバイン1の位置座標や、走行制御部84が設定した走行経路、取得部86が取得した受取位置RP等に基づいて排出タイミングを設定してもよい。例えば、排出タイミング決定部85が、現在走行している収穫走行経路Lの終点が受取位置RPから遠い場合に、排出タイミングを「次に実行する自動収穫走行の終了後」に設定してもよい。この場合、排出タイミング決定部85は、次に走行する収穫走行経路Lの終点を収穫中断位置IPとして設定する。
例えば、現在のコンバイン1の位置と受取位置RPとの間の距離が、現在走行している収穫走行経路Lの終点と受取位置RPとの間の距離よりも小さい場合に、排出タイミング決定部85が排出タイミングを「現在」に設定してもよい。この場合、排出タイミング決定部85は、現在のコンバイン1の位置を、収穫中断位置IPに設定する。
排出タイミング決定部85が、運転部13に配置された操作ボタン(図示なし)や管理端末21を通じたオペレータからの人為操作に応じて排出タイミングを決定するように構成されてもよい。
排出タイミング決定部85が排出タイミングを設定したことが、管理端末21を通じてオペレータに報知されてもよい。
取得部86は、穀粒排出装置18から排出される穀粒を受け取る際の穀粒運搬車CVが停車する位置である受取位置RPを取得する。本実施形態では、取得部86は、通信部92を通じて穀粒運搬車CVの制御装置90から受取位置RPを取得する。すなわち、取得部86が取得する受取位置RPは、穀粒運搬車CVに搭載された衛星測位モジュール91からの測位データに基づいて算出された穀粒運搬車CVの位置である。取得部86による受取位置RPの取得は、定期的且つ自動的に行われてもよいし、排出タイミング決定部85が排出タイミングを決定したことに応じて行われてもよいし、受動的(通信部23による受信の待機)に行われてもよい。
排出制御部87は、受取位置RPに基づいて、穀粒排出装置18の動作を制御して、穀粒排出装置18の排出口18a(図6)を穀粒運搬車CVへの穀粒の投入が可能な位置へ移動させる。詳しくは、排出制御部87は、穀粒運搬車CVの穀粒の投入口95(例えば、コンテナやタンク等の開口部、図6)の位置を受取位置RPに基づいて特定し、穀粒排出装置18を旋回させて、穀粒排出装置18の排出口18aを当該投入口の上方に位置させる。そして排出制御部87は、穀粒排出装置18を作動させて、穀粒運搬車CVへ穀粒を排出させる。
穀粒運搬車CVの制御装置90は、衛星測位モジュール91及び通信部92と接続され、これらを制御可能に構成されている。制御装置90は、自車位置算出部93、及び位置送信部94を備えている。
自車位置算出部93は、衛星測位モジュール91が生成した測位データに基づいて、穀粒運搬車CVの位置座標を算出する。
位置送信部94は、通信部92を介して、コンバイン1から穀粒を受け取る際に穀粒運搬車CVが停車する位置である受取位置RPを送信する。例えば、位置送信部94は、圃場に到着して停車した旨の運転者からの操作入力に応じて、自車位置算出部93が算出した現在の穀粒運搬車CVの位置座標を、コンバイン1へ送信する。
以上の通り構成されたコンバイン1及び穀粒運搬車CVは、次のように動作する。穀粒運搬車CVの位置送信部94が受取位置RPを送信し、コンバイン1の取得部86が受取位置RPを取得する。コンバイン1の排出タイミング決定部85が、排出タイミングを決定する。排出タイミングの決定は、受取位置RPの取得の前でもよいし後でもよい。経路算出部83が、排出タイミング及び受取位置RPに基づいて排出走行経路Xを算出する。走行制御部84が、排出タイミングに基づいて、排出走行経路Xを次に走行する走行経路として設定する。走行制御部84が、排出走行経路Xに沿ってコンバイン1を自動走行させる。そしてコンバイン1は、後進経路Zを後進しながら走行し、終端位置EDに停車する。
終端位置EDが穀粒運搬車CVに十分に近く、終端位置EDに停車したコンバイン1から穀粒運搬車CVへの穀粒の排出が可能な場合には、排出制御部87が穀粒排出装置18を作動させて穀粒の排出が行われる。
終端位置EDが穀粒運搬車CVから遠く、終端位置EDに停車したコンバイン1から穀粒運搬車CVへの穀粒の排出が不可能な場合には、コンバイン1を終端位置EDから更に後進させて穀粒運搬車CVへ接近する必要がある。この後進走行は、オペレータにより手動で行われてもよいし、以下述べるように自動走行により行われてもよい。
走行制御部84は、図6に示されるように、検出装置24からの出力に基づいて、畦Aに接触しないように、領域算出部82が設定した外周領域SAを超えてコンバイン1の機体10を後進させる(畦検出走行)。例えば、走行制御部84は、排出停車位置DPを設定し、排出停車位置DPに到達するか検出装置24が畦Aを検出するまで、コンバイン1を後進させる。排出停車位置DPは、停車したコンバイン1から穀粒運搬車CVへの穀粒の排出が可能な停車位置であって、後進経路Zの終端位置EDと穀粒運搬車CVの受取位置RPとの間の停車位置であり、外周領域SAの外の停車位置である。コンバイン1が排出停車位置DPへ到達した場合、排出制御部87は、穀粒排出装置18の排出口18aを穀粒運搬車CVの投入口95の上方に位置させ、穀粒排出装置18を作動させ穀粒を排出させる。コンバイン1が排出停車位置DPへ到達する前に検出装置24が畦Aを検出した場合には、オペレータが手動操作により、コンバイン1の後進による穀粒運搬車CVへの接近、及び穀粒の排出作業を行う。
〔他の実施形態〕
(1)後進経路Zの形態は、実施形態で説明した例に限られない。例えば、後進経路Zが外周領域SAの外縁Wと直交せず、90度未満の角度で交差していてもよい。後進経路Zが直線でなく、曲がっていてもよい。
(2)準備経路Yの形態は、実施形態で説明した例に限られない。例えば、準備経路Yに複数の旋回経路や、1つ又は複数の直進経路(前進や後進)が含まれてもよい。
(3)コンバイン1の取得部86による受取位置RPの取得の形態は、実施形態で説明した例に限られない。例えば、取得部86が、オペレータの携帯情報端末や、農業情報システム等を介して、穀粒運搬車CVの制御装置90から送信された受取位置RPを取得してもよい。受取位置RPが、穀粒運搬車CVに搭載された衛星測位モジュール91からの測位データに基づいて算出されたものでなくてもよい。例えば、受取位置RPが、オペレータや作業管理者、農業情報システム等により決定されコンバイン1の制御装置90へ入力されたものでもよい。
@
(4)コンバイン1の制御装置80の各機能部が、コンバイン1の外部、例えば管理コンピュータ等に設けられてもよい。例えば、領域算出部82や経路算出部83、排出タイミング決定部85、取得部86のうちの1つ又は複数が、コンバイン1の外部のコンピュータに設けられてもよい。コンバイン1及び外部のコンピュータ、又はコンバイン1、穀粒運搬車CV、及び外部のコンピュータにより、システムが構成されてもよい。
本発明は、自脱型コンバインの他、普通型コンバインにも適用可能である。
10 :機体
18 :穀粒排出装置
18a :排出口
24 :検出装置
82 :領域算出部(領域設定部)
83 :経路算出部(走行経路生成部)
84 :走行制御部
85 :排出タイミング決定部
86 :取得部
87 :排出制御部
91 :衛星測位モジュール
A :畦
CV :穀粒運搬車
RP :受取位置
SA :外周領域
X :排出走行経路
Z :後進経路
本発明は、コンバインに関する。
特許文献1には、圃場の作物を収穫しながら走行するコンバインのための自動走行システムが記載されている。コンバインのタンクが満杯になる前に、畦際に駐車している穀粒運搬車の近傍へ停車し、穀粒を穀粒運搬車へ排出する必要がある。特許文献1の自動走行システムでは、穀粒を受け取る穀粒運搬車の停車位置は予め決定される。そして、穀粒運搬車へ穀粒を排出する際のコンバインの駐車位置も、設定された穀粒運搬車の停車位置の近傍へ、予め設定される。
コンバインから穀粒を受け取った穀粒運搬車は、穀粒の貯留施設や乾燥施設等へ移動し、穀粒を排出する。穀粒運搬車の移動先は、常に同じとは限らない。そうすると、圃場の西に位置する移動先から戻った場合は、圃場の西側の停車位置が適切である。しかし、圃場の東に位置する移動先から戻った場合は、停車位置が圃場の東側である方が、移動距離が短くてすむ。このように、穀粒運搬車の停車位置は、毎回同じ位置が最適とは限らない。また、大きさの異なる穀粒運搬車の場合には、道路の幅に応じて最適な停車位置が変化し得る。特許文献1の自動走行システムでは、穀粒運搬車の停車位置が変化することは考慮されていない。
本発明の目的は、穀粒運搬車の停車位置の変化に対応可能なコンバインを提供することにある。
上記目的を達成するためのコンバインの特徴構成は、穀粒貯留部と、前記穀粒貯留部に貯留された穀粒を排出する穀粒排出装置と、前記穀粒貯留部に貯留された穀粒を排出するタイミングである排出タイミングを決定する排出タイミング決定部と、前記穀粒排出装置から排出される穀粒を受け取る際の穀粒運搬車が停車する位置である受取位置を取得する取得部と、前記受取位置に基づいて前記排出タイミングにおける排出走行経路を生成する走行経路生成部と、を備え、前記排出走行経路の終端部は、圃場の外周と交差する方向に後進しながら前記受取位置へ近づく後進経路である点にある。
上記の特徴構成によれば、取得した穀粒運搬車の受取位置に基づいて排出走行経路が生成されるので、穀粒運搬車の停車位置が変化したとしても、適切な排出走行経路を生成することができる。
本発明に係るコンバインの別の特徴構成は、前記排出走行経路の終端部は、圃場の外周と交差する方向に後進しながら前記受取位置へ近づく後進経路である点にある。
上記の特徴構成によれば、排出走行経路の終端部においては後進しながら受取位置に近づくこととなるので、安全に穀粒運搬車へ接近することが可能となる。
本発明に係るコンバインの別の特徴構成は、前記走行経路生成部は、前記後進経路の延長線上に前記受取位置が位置するように、前記排出走行経路を生成する点にある。
上記の特徴構成によれば、後進経路の延長線上に前記受取位置が位置するので、安全且つスムーズに穀粒運搬車への穀粒の排出作業を開始することが可能となる。例えば、排出走行経路の終点が穀粒運搬車への穀粒排出が可能な位置であれば、即時に排出作業を開始できる。排出走行経路の終点が穀粒運搬車から離れた位置であっても、そのまま後進して穀粒運搬車へ接近し、排出作業を開始することができる。
本発明に係るコンバインの別の特徴構成は、前記取得部が取得する前記受取位置は、前記穀粒運搬車に搭載された衛星測位モジュールからの測位データに基づいて算出された前記穀粒運搬車の位置である点にある。
上記の特徴構成によれば、穀粒運搬車の実測位置に基づいて排出走行経路が生成されるので、排出走行経路が更に適切なものとなる。
本発明に係るコンバインの別の特徴構成は、周回した作業地の外周側の領域を外周領域として設定する領域設定部と、機体の後部に設けられると共に、畦への接近を検出可能な検出装置と、前記検出装置からの出力に基づいて、前記畦に接触しないように、前記領域設定部が設定した前記外周領域を超えて機体を後進させる走行制御部と、を備える点にある。
上記の特徴構成によれば、外周領域の外であっても畦に接触しないように機体を後進させ、機体を安全に穀粒運搬車へ接近させることが可能となる。
本発明に係るコンバインの別の特徴構成は、前記受取位置に基づいて、前記穀粒排出装置の動作を制御して、前記穀粒排出装置の排出口を前記穀粒運搬車への穀粒の投入が可能な位置へ移動させる排出制御部を備える点にある。
上記の特徴構成によれば、穀粒排出装置の排出口を自動的に移動させて排出作業を開始することができるので、作業効率を向上さえることができる。
コンバインの左側面図である。
圃場における初期周回走行を示す図である。
αターン周回走行パターンによる自動走行を示す図である。
Uターン周回走行パターンによる自動走行及び排出走行を示す図である。
制御に関する構成を示すブロック図である。
畦検出走行を示す図である。
以下、自動走行を行い未作業地の作物を収穫するコンバインの一例について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、矢印Fの方向を「機体前側」、矢印Bの方向を「機体後側」、矢印Uの方向を「上側」、矢印Dの方向を「下側」とする。左右を示す場合には、機体前側を向いた状態における右手側を「右」、左手側を「左」とする。
〔コンバインの構成〕
図1に、コンバインの一例である自脱型のコンバインが示されている。このコンバイン1には、機体10と、クローラ式の走行装置11と、が備えられている。機体10の前部には、圃場の植立穀稈を刈り取って収穫する収穫部12が設けられている。
機体10において収穫部12の後方に、運転部13が設けられている。運転部13は、機体10の前部における右側に位置する。運転部13の左方に、収穫部12により収穫された収穫物を搬送する搬送部14が設けられている。
搬送部14の後方に、搬送部14により搬送された収穫物を脱穀処理する脱穀装置15が設けられている。脱穀装置15の後部に、排藁を切断処理する排藁処理装置16が設けられている。
運転部13の後方且つ脱穀装置15の右方に、脱穀装置15により得られた穀粒を貯留する穀粒タンク17(「穀粒貯留部」の一例)が設けられている。穀粒タンク17には、穀粒タンク17に貯留されている穀粒の量を検出する貯留量センサ17a(図8参照)が設けられている。
穀粒タンク17の後方に、穀粒タンク17に貯留された穀粒を外部に排出する穀粒排出装置18が設けられている。穀粒排出装置18は、上下方向に延びる旋回軸心周りで旋回可能である。
運転部13の前部における左側部分には、衛星測位モジュール19が設けられている。
衛星測位モジュール19は、人工衛星からのGNSS(Global Navigation Satellite System)の信号を受信して、受信した信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを生成する。GNSSとしては、GPS、QZSS、Galileo、GLONASS、BeiDou、等を利用可能である。
運転部13には、管理端末21(図5参照)が配置されている。管理端末21は、種々の情報を表示可能に構成されている。管理端末21が、コンバイン1の自動走行に関する種々の設定(後述する優先する走行パターンの設定など)の入力操作を受け付け可能に構成されてもよい。
外部の通信ネットワークに接続可能な通信部23(図5参照)が設けられている。通信部23は、当該通信ネットワークを通じて穀粒運搬車CVや外部のサーバ等と通信可能に構成されている。
機体10の後部に、畦A(図6)への接近を検出可能な検出装置24(図5参照)が設けられている。検出装置24は、例えば、誘導型、静電容量型、超音波型、電磁波型、赤外線型、接触型の近接センサや、カメラ等である。
コンバイン1は走行装置11により自走可能に構成されており、収穫部12によって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11により走行する収穫走行が可能なように構成されている。
〔穀粒運搬車の構成〕
穀粒運搬車CVは、コンバイン1の穀粒排出装置18から排出された穀粒を受け取り及び貯留可能に構成されている。穀粒運搬車CVは、図5に示されるように、衛星測位モジュール91及び通信部92を備えている。衛星測位モジュール91は、人工衛星からのGNSSの信号を受信して、受信した信号に基づいて、穀粒運搬車CVの自車位置を示す測位データを生成する。通信部92は、外部の通信ネットワークに接続可能であり、当該通信ネットワークを通じてコンバイン1や外部のサーバ等と通信可能に構成されている。
〔コンバインによる収穫作業〕
自脱型のコンバイン1による圃場での収穫作業について、図2~4を参照しながら説明する。本実施形態では、図2に示されるように、圃場の外形が矩形である例が説明される。図示例では、圃場の長辺が東西方向に平行であり、圃場の短辺が南北方向であり、条方向が南北方向である。
まず、図2に示されるように、圃場における外周側の領域において圃場の境界線(圃場の外周)に沿って周回するように収穫走行が行われる(初期周回走行)。この初期周回走行によって既作業地となった領域は外周領域SA(図3参照)として設定され、外周領域SAの内側の未作業地は作業対象領域CA(図3参照)として設定される。外周領域SAの外縁Wは、初期周回走行が圃場の外周から離れず外周に沿って行われた場合には、圃場の外周にほぼ一致し、圃場の外周から離れた場所においては、圃場の外周から離れることになる。
外周領域SAは、作業対象領域CAの植立穀稈の収穫を自動走行により行う際に、コンバイン1が方向転換(後述するターン走行)するためのスペースとして用いられる。また、外周領域SAは、穀粒の排出場所や、燃料の補給場所への移動を行うためのスペースとしても用いられる。
初期周回走行は、外周領域SAの幅をある程度広く確保するために、2周~4周程度行われる。初期周回走行は、手動走行により行われてもよいし、自動走行により行われてもよい。初期周回走行は、作業対象領域CAの1辺(好ましくは対向する2辺)が条方向と平行になるように行われる。本実施形態では、作業対象領域CAが矩形であり、作業対象領域CAの対向する2つの短辺が条方向と平行である場合について説明する。
初期周回走行に続いて、自動走行により作業対象領域CAの植立穀稈が収穫される。この自動走行においては、作業対象領域CAに設定された収穫走行経路Lを自動走行しながら植立穀稈を収穫する自動収穫走行と、1つの自動収穫走行と次の自動収穫走行との間に行われるターン走行とが繰り返し行われる。ターン走行は、2つの収穫走行経路Lの間を繋ぐターン走行経路Tの自動走行である。
上述の自動収穫走行及びターン走行は、所定の走行パターンに沿って行われる。走行パターンとしては、図3に示されるαターン周回走行パターンと、図4に示されるUターン周回走行パターンと、が例示される。
αターン周回走行パターン(図3)は、矩形の作業対象領域CAの4つの辺に平行な収穫走行経路Lを順に走行し、ターン走行をαターン走行にて行う走行パターンである。αターン走行は、先の収穫走行経路Lの延びる方向に沿った前進と、旋回走行を含む後進走行と、次の収穫走行経路Lの延びる方向に沿った前進と、により実行される。図3の例では、コンバイン1は、収穫走行経路L01、L02、L03、L04、及び、ターン走行経路T01、T02、T03を走行する。αターン周回走行パターンによる自動走行は、図3に示されるように、渦巻き状の走行となる。
Uターン周回走行パターン(図4)は、矩形の領域の対向する2辺に平行な収穫走行経路Lを交互に外側から順に走行し、ターン走行をUターン走行にて行う走行パターンである。Uターン走行は、旋回走行を含む前進走行のみにより実行される。図4の例では、コンバイン1は、収穫走行経路L05、L06、L07、L08、及び、ターン走行経路T04、T05、T06を走行する。Uターン周回走行パターンによる自動走行は、図4に示されるように、αターン周回走行パターンと同様に渦巻き状の走行となる。
本実施形態では、Uターン周回走行パターンで走行する収穫走行経路Lを、作業対象領域CAの条方向に平行な2辺に平行な経路とする。すなわち、Uターン周回走行パターンによる自動走行では、自動収穫走行は条方向に平行な経路においてのみ行われる。従って、自脱型コンバインであるコンバイン1において脱穀処理が適切に行われ好ましい。
αターン周回走行パターンによる自動走行は、外周領域SAの幅が狭くてUターン周回走行パターンによる自動走行が実行し難い場合に、Uターン周回走行パターンに先立って行われる。外周領域SAの幅が十分に大きく、Uターン周回走行パターンによる自動走行が可能な場合には、αターン周回走行パターンによる自動走行は実行されなくてもよい。
穀粒タンク17の穀粒の貯留量が大きくなると、図4に示されるように、排出走行経路Xを自動走行する排出走行が実行されて、穀粒運搬車CVへの穀粒の排出が行われる。排出走行経路Xは、収穫走行を中断した収穫中断位置IPから、終端位置EDに至る走行経路である。終端位置EDは、受取位置RPに停車した穀粒運搬車CVの近傍に設定される。本実施形態では、排出走行経路Xは、準備経路Y、及び後進経路Zを含んでいる。準備経路Yは、収穫中断位置IPから後進経路Zの開始位置までの経路である。後進経路Zは、排出走行経路Xの終端部であって、圃場の外周と交差する方向に後進しながら受取位置RPへ近づき、終端位置EDに至る経路である。
穀粒の排出の完了後、作業対象領域CAに未作業地が残っている場合、収穫作業が続行される。作業対象領域CAに未作業地が残っていない場合、収穫作業が終了する。
排出走行は、図4に示されるように、1つの収穫走行経路L上の自動走行が終了した後に実行されてもよいし、収穫走行経路L上の自動走行を中断して実行されてもよい。
〔制御に関する構成〕
以下、図5のブロック図を参照しながら、コンバイン1及び穀粒運搬車CVの制御に関する構成について説明する。コンバイン1の制御装置80は、自車位置算出部81、領域算出部82(「領域設定部」の一例)、経路算出部83(「走行経路生成部」の一例)、走行制御部84、排出タイミング決定部85、取得部86、及び排出制御部87を備えている。詳しくは、制御装置80は、いわゆるECUであり、上述の各機能部に対応するプログラムを記憶するメモリ(HDDや不揮発性RAMなど。図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。穀粒運搬車CVの制御装置90についても同様である。制御装置80は、走行装置11、収穫部12、貯留量センサ17a、衛星測位モジュール19、管理端末21、及び通信部23と接続され、これらを制御可能に構成されている。
自車位置算出部81は、衛星測位モジュール19が生成した測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。
領域算出部82は、自車位置算出部81が算出したコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、外周領域SA及び作業対象領域CAを算出する。具体的には、領域算出部82は、自車位置算出部81が算出したコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、圃場の外周側における周回走行(初期周回走行)でのコンバイン1の走行軌跡を算出する。そして、領域算出部82は、算出されたコンバイン1の走行軌跡に基づいて、コンバイン1が植立穀稈を収穫しながら走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして設定する。すなわち、領域算出部82は、周回した作業地の外周側の領域を外周領域SAとして設定する。また、領域算出部82は、算出された外周領域SAよりも圃場内側の領域を作業対象領域CAとして設定する。
例えば、図2においては、圃場の外周側における周回走行(初期周回走行)においてコンバイン1が走行した経路が矢印で示されている。図示例では、コンバイン1は、3周の周回走行を行っている。そして、この初期周回走行が完了すると、圃場は図3に示される状態となる。
領域算出部82は、図3に示されるように、コンバイン1が植立穀稈を収穫しながら走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして算出し、算出された外周領域SAよりも圃場内側の領域を作業対象領域CAとして算出する。
経路算出部83は、領域算出部82の算出結果に基づいて、作業対象領域CAの内側において、自動収穫走行のための収穫走行経路Lを算出する。本実施形態では、収穫走行経路Lは、作業対象領域CAの4つの辺に平行に延びる複数のメッシュ線(図3)である。
また、経路算出部83は、ターン走行(αターン走行、Uターン走行)のための、2つの収穫走行経路Lの間を繋ぐターン走行経路Tを算出する。
また、経路算出部83は、取得部86が取得する受取位置RPに基づいて、排出走行経路Xを生成する。排出走行経路Xは、排出タイミング決定部85が決定した排出タイミングに走行される経路である。経路算出部83は、排出走行経路Xの終端部が、圃場の外周と交差する方向に後進しながら受取位置RPへ近づく経路(後進経路Z)となるように、排出走行経路Xを生成する。経路算出部83は、後進経路Zの延長線上に受取位置RPが位置するように、排出走行経路Xを生成する。
具体的には、まず経路算出部83は、外周領域SAの内部において受取位置RPに最も近く、コンバイン1が停車可能な位置を、終端位置EDとして設定する。図4の図示例では、受取位置RPは外周領域SAの外縁Wの近傍に位置し、外縁Wは南北方向に延びている。経路算出部83は、終端位置EDを、南北方向については緯度が受取位置RPと等しく、東西方向については外周領域SAの内部において外縁Wに最も近くなるように、設定する。そして経路算出部83は、終端位置EDから外周領域SAの外縁Wと直交する方向(図示例では東西方向)に延びる経路を算出し、後進経路Zとする。そうすると、後進経路Zの延長線上に受取位置RPが位置することになる。
経路算出部83は、排出タイミング決定部85が設定する収穫中断位置IPから、後進で後進経路Zに進入可能となる経路を算出し、準備経路Yとする。最終的に、経路算出部83は、準備経路Yと後進経路Zの組を、排出走行経路Xとして算出する。準備経路Yは、収穫中断位置IPから前進しつつ左旋回し、コンバイン1が西を向いた状態にて停車位置SPで停車する走行経路である。後進経路Zは、コンバイン1が西を向いた状態にて停車位置SPから後進し、コンバイン1が西を向いた状態にて終端位置EDで停車する走行経路である。
走行制御部84は、走行装置11及び収穫部12を制御可能に構成されている。走行制御部84は、経路算出部83が算出した走行経路(収穫走行経路L、ターン走行経路T、排出走行経路X等)の内から次に走行する走行経路を設定する。走行制御部84は、走行経路の設定を、上述の走行パターン(αターン周回走行パターン、Uターン周回走行パターン)や、排出タイミング決定部85が設定する排出タイミング(後述)に基づいて実行する。そして走行制御部84は、自車位置算出部81が算出したコンバイン1の位置座標と、設定した走行経路と、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。具体的には、走行制御部84は、設定した走行経路に沿ってコンバイン1が走行するように、コンバイン1の走行装置11を制御する。そして走行制御部84は、コンバイン1が収穫走行経路Lを走行する時に収穫部12を動作させる。
排出タイミング決定部85は、穀粒タンク17に貯留された穀粒を排出するタイミングである排出タイミングを決定する。具体的には、排出タイミング決定部85は、貯留量センサ17aが検出した穀粒タンク17に貯留されている穀粒の量に基づいて、穀粒の排出タイミングを設定する。そして、設定した排出タイミングに基づいて、収穫中断位置IPを設定する。
例えば、排出タイミング決定部85は、穀粒タンク17に貯留されている穀粒の量が所定の閾値を超えたことに応じて、排出タイミングを「現在実行している自動収穫走行の終了後」に設定する。この場合、排出タイミング決定部85は、現在走行している収穫走行経路L(図4の例では収穫走行経路L08)の終点を収穫中断位置IPとして設定する。
排出タイミング決定部85が、自車位置算出部81が算出したコンバイン1の位置座標や、走行制御部84が設定した走行経路、取得部86が取得した受取位置RP等に基づいて排出タイミングを設定してもよい。例えば、排出タイミング決定部85が、現在走行している収穫走行経路Lの終点が受取位置RPから遠い場合に、排出タイミングを「次に実行する自動収穫走行の終了後」に設定してもよい。この場合、排出タイミング決定部85は、次に走行する収穫走行経路Lの終点を収穫中断位置IPとして設定する。
例えば、現在のコンバイン1の位置と受取位置RPとの間の距離が、現在走行している収穫走行経路Lの終点と受取位置RPとの間の距離よりも小さい場合に、排出タイミング決定部85が排出タイミングを「現在」に設定してもよい。この場合、排出タイミング決定部85は、現在のコンバイン1の位置を、収穫中断位置IPに設定する。
排出タイミング決定部85が、運転部13に配置された操作ボタン(図示なし)や管理端末21を通じたオペレータからの人為操作に応じて排出タイミングを決定するように構成されてもよい。
排出タイミング決定部85が排出タイミングを設定したことが、管理端末21を通じてオペレータに報知されてもよい。
取得部86は、穀粒排出装置18から排出される穀粒を受け取る際の穀粒運搬車CVが停車する位置である受取位置RPを取得する。本実施形態では、取得部86は、通信部92を通じて穀粒運搬車CVの制御装置90から受取位置RPを取得する。すなわち、取得部86が取得する受取位置RPは、穀粒運搬車CVに搭載された衛星測位モジュール91からの測位データに基づいて算出された穀粒運搬車CVの位置である。取得部86による受取位置RPの取得は、定期的且つ自動的に行われてもよいし、排出タイミング決定部85が排出タイミングを決定したことに応じて行われてもよいし、受動的(通信部23による受信の待機)に行われてもよい。
排出制御部87は、受取位置RPに基づいて、穀粒排出装置18の動作を制御して、穀粒排出装置18の排出口18a(図6)を穀粒運搬車CVへの穀粒の投入が可能な位置へ移動させる。詳しくは、排出制御部87は、穀粒運搬車CVの穀粒の投入口95(例えば、コンテナやタンク等の開口部、図6)の位置を受取位置RPに基づいて特定し、穀粒排出装置18を旋回させて、穀粒排出装置18の排出口18aを当該投入口の上方に位置させる。そして排出制御部87は、穀粒排出装置18を作動させて、穀粒運搬車CVへ穀粒を排出させる。
穀粒運搬車CVの制御装置90は、衛星測位モジュール91及び通信部92と接続され、これらを制御可能に構成されている。制御装置90は、自車位置算出部93、及び位置送信部94を備えている。
自車位置算出部93は、衛星測位モジュール91が生成した測位データに基づいて、穀粒運搬車CVの位置座標を算出する。
位置送信部94は、通信部92を介して、コンバイン1から穀粒を受け取る際に穀粒運搬車CVが停車する位置である受取位置RPを送信する。例えば、位置送信部94は、圃場に到着して停車した旨の運転者からの操作入力に応じて、自車位置算出部93が算出した現在の穀粒運搬車CVの位置座標を、コンバイン1へ送信する。
以上の通り構成されたコンバイン1及び穀粒運搬車CVは、次のように動作する。穀粒運搬車CVの位置送信部94が受取位置RPを送信し、コンバイン1の取得部86が受取位置RPを取得する。コンバイン1の排出タイミング決定部85が、排出タイミングを決定する。排出タイミングの決定は、受取位置RPの取得の前でもよいし後でもよい。経路算出部83が、排出タイミング及び受取位置RPに基づいて排出走行経路Xを算出する。
走行制御部84が、排出タイミングに基づいて、排出走行経路Xを次に走行する走行経路として設定する。走行制御部84が、排出走行経路Xに沿ってコンバイン1を自動走行させる。そしてコンバイン1は、後進経路Zを後進しながら走行し、終端位置EDに停車する。
終端位置EDが穀粒運搬車CVに十分に近く、終端位置EDに停車したコンバイン1から穀粒運搬車CVへの穀粒の排出が可能な場合には、排出制御部87が穀粒排出装置18を作動させて穀粒の排出が行われる。
終端位置EDが穀粒運搬車CVから遠く、終端位置EDに停車したコンバイン1から穀粒運搬車CVへの穀粒の排出が不可能な場合には、コンバイン1を終端位置EDから更に後進させて穀粒運搬車CVへ接近する必要がある。この後進走行は、オペレータにより手動で行われてもよいし、以下述べるように自動走行により行われてもよい。
走行制御部84は、図6に示されるように、検出装置24からの出力に基づいて、畦Aに接触しないように、領域算出部82が設定した外周領域SAを超えてコンバイン1の機体10を後進させる(畦検出走行)。例えば、走行制御部84は、排出停車位置DPを設定し、排出停車位置DPに到達するか検出装置24が畦Aを検出するまで、コンバイン1を後進させる。排出停車位置DPは、停車したコンバイン1から穀粒運搬車CVへの穀粒の排出が可能な停車位置であって、後進経路Zの終端位置EDと穀粒運搬車CVの受取位置RPとの間の停車位置であり、外周領域SAの外の停車位置である。コンバイン1が排出停車位置DPへ到達した場合、排出制御部87は、穀粒排出装置18の排出口18aを穀粒運搬車CVの投入口95の上方に位置させ、穀粒排出装置18を作動させ穀粒を排出させる。コンバイン1が排出停車位置DPへ到達する前に検出装置24が畦Aを検出した場合には、オペレータが手動操作により、コンバイン1の後進による穀粒運搬車CVへの接近、及び穀粒の排出作業を行う。
〔他の実施形態〕
(1)後進経路Zの形態は、実施形態で説明した例に限られない。例えば、後進経路Zが外周領域SAの外縁Wと直交せず、90度未満の角度で交差していてもよい。後進経路Zが直線でなく、曲がっていてもよい。
(2)準備経路Yの形態は、実施形態で説明した例に限られない。例えば、準備経路Yに複数の旋回経路や、1つ又は複数の直進経路(前進や後進)が含まれてもよい。
(3)コンバイン1の取得部86による受取位置RPの取得の形態は、実施形態で説明した例に限られない。例えば、取得部86が、オペレータの携帯情報端末や、農業情報システム等を介して、穀粒運搬車CVの制御装置90から送信された受取位置RPを取得してもよい。受取位置RPが、穀粒運搬車CVに搭載された衛星測位モジュール91からの測位データに基づいて算出されたものでなくてもよい。例えば、受取位置RPが、オペレータや作業管理者、農業情報システム等により決定されコンバイン1の制御装置90へ入力されたものでもよい。
(4)コンバイン1の制御装置80の各機能部が、コンバイン1の外部、例えば管理コンピュータ等に設けられてもよい。例えば、領域算出部82や経路算出部83、排出タイミング決定部85、取得部86のうちの1つ又は複数が、コンバイン1の外部のコンピュータに設けられてもよい。コンバイン1及び外部のコンピュータ、又はコンバイン1、穀粒運搬車CV、及び外部のコンピュータにより、システムが構成されてもよい。
本発明は、自脱型コンバインの他、普通型コンバインにも適用可能である。
10 :機体
18 :穀粒排出装置
18a :排出口
24 :検出装置
82 :領域算出部(領域設定部)
83 :経路算出部(走行経路生成部)
84 :走行制御部
85 :排出タイミング決定部
86 :取得部
87 :排出制御部
91 :衛星測位モジュール
A :畦
CV :穀粒運搬車
RP :受取位置
SA :外周領域
X :排出走行経路
Z :後進経路