JP2022002173A - 非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温下での耐熱性に優れ、且つ、ドライヒートプレスによる電極との接着性に優れる非水系二次電池用セパレータを提供する。【解決手段】非水系二次電池用セパレータは、多孔質基材と、前記多孔質基材の片面又は両面に設けられた、樹脂及び無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、を備え、前記樹脂が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂とを含み、前記耐熱性多孔質層に含まれる前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂と前記アクリル系樹脂との質量比が90:10〜50:50であり、前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が50質量%以上90質量%以下であり、前記無機粒子が、平均一次粒径が0.01μm以上0.3μm以下の第一の無機粒子と、前記第一の無機粒子よりも平均一次粒径が大きい第二の無機粒子とを含む。【選択図】なし

Description

本開示は、非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池に関する。
非水系二次電池を構成する部材の一つであるセパレータには、電池の安全性を担保するために、電池内部が高温になっても容易に破膜したり収縮したりしない耐熱性が要求される。耐熱性を高めたセパレータとして、無機粒子を含有する多孔質層を多孔質基材上に備えたセパレータが知られている。
また、セパレータには、外部から衝撃を受けたり、充放電に伴って電極が膨張及び収縮したりしても、容易に電極から剥がれない接着性が求められる。電極への接着性を高めたセパレータとして、電極に対して接着性を示す樹脂を含有する多孔質層を多孔質基材上に備えたセパレータが知られている。
電池を製造する際に、正極と負極との間にセパレータを配置した積層体にドライヒートプレス(セパレータに電解液を含浸させずに行う熱プレス処理)を施す場合がある。ドライヒートプレスによりセパレータと電極とが良好に接着すれば、電池の製造工程においてセパレータと電極とが位置ずれしにくくなり、電池の製造歩留りを向上させることが可能となる。
耐熱性を有し且つドライヒートプレスによって電極と良好に接着する多孔質層を備えたセパレータとして、例えば、特許文献1のセパレータ及び特許文献2のセパレータが開示されている。
国際公開第2017/002947号 国際公開第2016/098684号
電池の安全性と製造効率をさらに高めるために、高温下(例えば150℃下)での耐熱性に優れ、且つ、ドライヒートプレスによって電極と良好に接着するセパレータが望まれている。
本開示の実施形態は、上記状況のもとになされた。
本開示の実施形態は、高温下での耐熱性に優れ、且つ、ドライヒートプレスによる電極との接着性に優れる非水系二次電池用セパレータを提供することを目的とし、これを達成することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 多孔質基材と、
前記多孔質基材の片面又は両面に設けられた、樹脂及び無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、を備え、
前記樹脂が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂とを含み、
前記耐熱性多孔質層に含まれる前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂と前記アクリル系樹脂との質量比(ポリフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂)が90:10〜50:50であり、
前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が50質量%以上90質量%以下であり、
前記無機粒子が、平均一次粒径が0.01μm以上0.3μm以下の第一の無機粒子と、前記第一の無機粒子よりも平均一次粒径が大きい第二の無機粒子とを含む、
非水系二次電池用セパレータ。
<2> 前記耐熱性多孔質層に含まれる前記第一の無機粒子と前記第二の無機粒子との質量比(第一の無機粒子:第二の無機粒子)が95:5〜10:90である、<1>に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<3> 前記第二の無機粒子の平均一次粒径が0.4μm以上2.0μm以下である、<1>又は<2>に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<4> 前記無機粒子が金属硫酸塩粒子及び金属水酸化物粒子を含む、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<5> 前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量が60万以上200万以下である、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<6> 前記耐熱性多孔質層の厚さが前記多孔質基材の片面において1μm以上8μm以下である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<7> 前記耐熱性多孔質層の空孔率が25%以上60%以下である、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<8> 前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が60質量%以上80質量%以下である、<1>〜<7>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<9> 前記耐熱性多孔質層に含まれる前記第一の無機粒子と前記第二の無機粒子との質量比(第一の無機粒子:第二の無機粒子)が90:10〜50:50である、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<10> 前記耐熱性多孔質層に含まれる前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂と前記アクリル系樹脂との質量比(ポリフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂)が85:15〜65:35である、<1>〜<9>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<11> 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された<1>〜<10>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムイオンのドープ及び脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。
本開示によれば、高温下での耐熱性に優れ、且つ、ドライヒートプレスによる電極との接着性に優れる非水系二次電池用セパレータが提供される。
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において、MD(Machine Direction)とは、長尺状に製造される多孔質基材及びセパレータにおいて長尺方向を意味し、TD(transverse direction)とは、多孔質基材及びセパレータの面方向においてMDに直交する方向を意味する。本開示において、TDを「幅方向」ともいう。
本開示において、セパレータを構成する各層の積層関係について「上」及び「下」で表現する場合、多孔質基材に対してより近い層について「下」といい、多孔質基材に対してより遠い層について「上」という。
本開示において「(メタ)アクリル」との表記は「アクリル」及び「メタクリル」のいずれでもよいことを意味する。
本開示において、共重合体又は樹脂の「単量体単位」とは、共重合体又は樹脂の構成単位であって、単量体が重合してなる構成単位を意味する。
本開示において耐熱性樹脂とは、融点が200℃以上の樹脂、又は、融点を有さず分解温度が200℃以上の樹脂を指す。つまり、本開示における耐熱性樹脂とは、200℃未満の温度領域で溶融及び分解を起こさない樹脂である。
本開示において、セパレータに電解液を含浸させて熱プレス処理を行うことを「ウェットヒートプレス」といい、セパレータに電解液を含浸させずに熱プレス処理を行うことを「ドライヒートプレス」という。
<非水系二次電池用セパレータ>
本開示の非水系二次電池用セパレータ(本開示において単に「セパレータ」ともいう。)は、多孔質基材と、多孔質基材の片面又は両面に設けられた耐熱性多孔質層とを備える。
本開示のセパレータにおいて耐熱性多孔質層は、樹脂及び無機粒子を含有し、
樹脂が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂とを含み、
耐熱性多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂との質量比(ポリフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂)が90:10〜50:50であり、
耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合が50質量%以上90質量%以下であり、
無機粒子が、平均一次粒径が0.01μm以上0.3μm以下の第一の無機粒子と、第一の無機粒子よりも平均一次粒径が大きい第二の無機粒子とを含む。
本開示のセパレータにおいて耐熱性多孔質層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂とを含む。耐熱性多孔質層は、150℃程度の温度では溶融及び分解を起こさないポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有することによって、高温下(例えば150℃下)において収縮しにくいという耐熱性に優れる。そして、耐熱性多孔質層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂にアクリル系樹脂を混合して含有することによって、ドライヒートプレスによる電極との接着性が向上する。
上記のバランスをとる観点から、耐熱性多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂との質量比(ポリフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂)は、90:10〜50:50である。
本開示のセパレータにおいて耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合は、セパレータの耐熱性の観点から、50質量%以上であり、ドライヒートプレスによる電極との接着性に優れる観点、耐熱性多孔質層の成形性の観点、及び耐熱性多孔質層が多孔質基材から剥がれにくい観点から、90質量%以下である。
本開示のセパレータにおいて耐熱性多孔質層は、平均一次粒径が0.01μm〜0.3μmの第一の無機粒子と、第一の無機粒子よりも平均一次粒径が大きい第二の無機粒子とを含む。粒径が小さい第一の無機粒子によって、単位体積あたりの無機粒子の表面積(比表面積)が大きくなり、したがって、無機粒子と樹脂との接触点が多くなるので、高温に曝された際の耐熱性多孔質層の収縮が抑制される。また、粒径が小さい第一の無機粒子が緻密に充填されることにより、高温に曝された際に耐熱性多孔質層の収縮が抑制される。一方、第一の無機粒子よりも平均一次粒径が大きい第二の無機粒子によって耐熱性多孔質層の表面に適度な凹凸が形成され、その結果、耐熱性多孔質層はドライヒートプレスによる電極との接着性に優れる。
以上の各構成の作用が相乗して、本開示のセパレータは、高温下(例えば150℃下)において収縮しにくいという耐熱性に優れ、且つ、ドライヒートプレスによる電極との接着性に優れる。
以下、本開示のセパレータが有する多孔質基材及び耐熱性多孔質層の詳細を説明する。
[多孔質基材]
本開示において多孔質基材とは、内部に空孔ないし空隙を有する基材を意味する。このような基材としては、微多孔膜;繊維状物からなる、不織布、紙等の多孔性シート;これら微多孔膜や多孔性シートに他の多孔性の層を1層以上積層した複合多孔質シート;などが挙げられる。本開示においては、セパレータの薄膜化及び強度の観点から、微多孔膜が好ましい。微多孔膜とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜を意味する。
多孔質基材の材料としては、電気絶縁性を有する材料が好ましく、有機材料又は無機材料のいずれでもよい。
多孔質基材は、多孔質基材にシャットダウン機能を付与するため、熱可塑性樹脂を含むことが望ましい。シャットダウン機能とは、電池温度が高まった際に、構成材料が溶解して多孔質基材の孔を閉塞することによりイオンの移動を遮断し、電池の熱暴走を防止する機能をいう。熱可塑性樹脂としては、融点200℃未満の熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;などが挙げられ、中でもポリオレフィンが好ましい。
多孔質基材としては、ポリオレフィンを含む微多孔膜(本開示において「ポリオレフィン微多孔膜」という。)が好ましい。ポリオレフィン微多孔膜としては、例えば、従来の電池セパレータに適用されているポリオレフィン微多孔膜が挙げられ、この中から十分な力学特性とイオン透過性を有するものを選択することが望ましい。
ポリオレフィン微多孔膜は、シャットダウン機能を発現する観点から、ポリエチレンを含む微多孔膜が好ましく、ポリエチレンの含有量としては、ポリオレフィン微多孔膜全体の質量に対して95質量%以上が好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜は、高温に曝されたときに容易に破膜しない耐熱性を備える観点から、ポリプロピレンを含む微多孔膜が好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜は、シャットダウン機能と、高温に曝されたときに容易に破膜しない耐熱性とを備える観点から、ポリエチレン及びポリプロピレンを含むポリオレフィン微多孔膜が好ましい。ポリエチレン及びポリプロピレンを含むポリオレフィン微多孔膜としては、ポリエチレンとポリプロピレンが1つの層において混在している微多孔膜が挙げられる。該微多孔膜においては、シャットダウン機能と耐熱性の両立という観点から、95質量%以上のポリエチレンと5質量%以下のポリプロピレンとを含むことが好ましい。また、シャットダウン機能と耐熱性の両立という観点からは、2層以上の積層構造を備え、少なくとも1層はポリエチレンを含み、少なくとも1層はポリプロピレンを含む構造のポリオレフィン微多孔膜も好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンとしては、重量平均分子量(Mw)が10万〜500万のポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンのMwが10万以上であると、微多孔膜に十分な力学特性を付与できる。一方、ポリオレフィンのMwが500万以下であると、微多孔膜のシャットダウン特性が良好であるし、微多孔膜の成形がしやすい。
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、溶融したポリオレフィン樹脂をT−ダイから押し出してシート化し、これを結晶化処理した後延伸し、次いで熱処理をして微多孔膜とする方法:流動パラフィンなどの可塑剤と一緒に溶融したポリオレフィン樹脂をT−ダイから押し出し、これを冷却してシート化し、延伸した後、可塑剤を抽出し熱処理をして微多孔膜とする方法;などが挙げられる。
繊維状物からなる多孔性シートとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱性樹脂;セルロース;などの繊維状物からなる、不織布、紙等の多孔性シートが挙げられる。
複合多孔質シートとしては、微多孔膜や繊維状物からなる多孔性シートに、機能層を積層したシートが挙げられる。このような複合多孔質シートは、機能層によってさらなる機能付加が可能となる観点から好ましい。機能層としては、例えば耐熱性を付与するという観点からは、耐熱性樹脂からなる多孔性の層や、耐熱性樹脂及び無機フィラーからなる多孔性の層が挙げられる。耐熱性樹脂としては、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン及びポリエーテルイミドから選ばれる1種又は2種以上の耐熱性樹脂が挙げられる。無機フィラーとしては、アルミナ等の金属酸化物;水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;などが挙げられる。複合化の手法としては、微多孔膜や多孔性シートに機能層を塗工する方法、微多孔膜や多孔性シートと機能層とを接着剤で接合する方法、微多孔膜や多孔性シートと機能層とを熱圧着する方法等が挙げられる。
多孔質基材の表面には、耐熱性多孔質層を形成するための塗工液との濡れ性を向上させる目的で、多孔質基材の性質を損なわない範囲で、各種の表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
[多孔質基材の特性]
多孔質基材の厚さは、電池のエネルギー密度を高める観点から、25μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下が更に好ましく、セパレータの製造歩留り及び電池の製造歩留りの観点から、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。
多孔質基材のガーレ値(JIS P8117:2009)は、イオン透過性又は電池の短絡抑制の観点から、50秒/100mL〜400秒/100mLが好ましく、80秒/100mL〜300秒/100mLがより好ましい。
多孔質基材の空孔率は、適切な膜抵抗やシャットダウン機能を得る観点から、20%〜60%が好ましい。多孔質基材の空孔率ε(%)は、下記の式により求める。
ε={1−Ws/(ds・t)}×100
ここに、Wsは多孔質基材の目付(g/m)、dsは多孔質基材の真密度(g/cm)、tは多孔質基材の厚さ(μm)である。目付とは、単位面積当たりの質量である。
多孔質基材の突刺強度は、セパレータの製造歩留り及び電池の製造歩留りの観点から、160gf(1.6N)以上が好ましく、200gf(2.0N)以上がより好ましい。多孔質基材の突刺強度は、カトーテック社製KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/秒の条件で突刺試験を行って測定する最大突刺強度(gf)を指す。
多孔質基材の平均孔径は、15nm〜100nmが好ましい。多孔質基材の平均孔径が15nm以上であると、イオンが移動しやすく、良好な電池性能が得やすくなる。この観点からは、多孔質基材の平均孔径は、25nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましい。多孔質基材の平均孔径が100nm以下であると、多孔質基材と耐熱性多孔質層との間の剥離強度を向上でき、良好なシャットダウン機能も発現し得る。この観点からは、多孔質基材の平均孔径は、90nm以下がより好ましく、80nm以下が更に好ましい。多孔質基材の平均孔径は、パームポロメーターを用いて測定される値であり、ASTM E1294−89に従いパームポロメーター(PMI社製CFP−1500−A)を用いて測定する。
[耐熱性多孔質層]
本開示のセパレータにおいて耐熱性多孔質層は、多孔質基材の片面又は両面にセパレータの最外層として設けられ、セパレータと電極とを重ねてプレス又は熱プレスしたときに電極と接着する層である。耐熱性多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となっている層である。
本開示のセパレータにおいて耐熱性多孔質層は、多孔質基材の片面のみにあってもよく、多孔質基材の両面にあってもよい。耐熱性多孔質層が多孔質基材の両面にあると、電池の両極に対してセパレータの接着性が良好である。また、セパレータにカールが発生しにくく、電池製造時のハンドリング性に優れる。耐熱性多孔質層が多孔質基材の片面のみにあると、セパレータのイオン透過性がより優れる。また、セパレータ全体の厚さを抑えることができ、エネルギー密度のより高い電池を製造し得る。
本開示のセパレータにおいて耐熱性多孔質層は、樹脂と無機粒子とを含有し、樹脂はポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂とを含み、無機粒子は、平均一次粒径が0.01μm〜0.3μmの第一の無機粒子と、第一の無機粒子よりも平均一次粒径が大きい第二の無機粒子とを含む。本開示のセパレータにおいて耐熱性多孔質層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びアクリル系樹脂以外のその他の樹脂、有機フィラー等を含んでもよい。
−ポリフッ化ビニリデン系樹脂−
ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデンの単独重合体(即ちポリフッ化ビニリデン);フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリクロロエチレン等の含ハロゲン単量体と共重合体;これらの混合物;が挙げられる。ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、電極に対する接着性の観点から、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体(VDF−HFP共重合体)が好ましい。本開示においてVDF−HFP共重合体には、VDFとHFPのみを重合した共重合体、及び、VDFとHFPと他の単量体を重合した共重合体のいずれも含まれる。VDF−HFP共重合体は、HFP単位の含有量を増減することによって、当該共重合体の結晶性、耐熱性、電解液に対する耐溶解性などを適度な範囲に制御できる。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が60万〜200万であることが好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂のMwが60万以上であると、高温下においてポリフッ化ビニリデン系樹脂の溶融及び分解が起こりにくく、耐熱性多孔質層の耐熱性がより向上する。この観点から、ポリフッ化ビニリデン系樹脂のMwは、60万以上が好ましく、70万以上がより好ましく、80万以上が更に好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂のMwが200万以下であると、ドライヒートプレスした際にポリフッ化ビニリデン系樹脂の柔軟性が高まりやすく、電極に対する耐熱性多孔質層の接着性がより向上する。この観点から、ポリフッ化ビニリデン系樹脂のMwは、200万以下が好ましく、180万以下がより好ましく、150万以下が更に好ましい。
−アクリル系樹脂−
本開示においてアクリル系樹脂は、アクリル系単量体単位を有する樹脂を意味し、アクリル系単量体のみを重合した重合体、及び、アクリル系単量体と他の単量体を重合した共重合体のいずれも含む。
アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアクリル系単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸塩としては、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸亜鉛等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。
アクリル系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂との相溶性が高い観点から、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜6、好ましくはアルキル基の炭素数1〜4)に由来する単量体単位を含むアクリル系樹脂が好ましく、アクリル酸メチル単位及びメタクリル酸メチル単位の少なくとも一方を含むアクリル系樹脂がより好ましく、メタクリル酸メチル単位を含むアクリル系樹脂が更に好ましい。アクリル酸メチル単位及びメタクリル酸メチル単位の少なくとも一方を含むアクリル系樹脂は、耐熱性多孔質層のガラス転移温度を下げる効果があることからも好ましい。
アクリル系樹脂に含まれるアクリル系単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、50質量%〜100質量%が好ましく、60質量%〜100質量%がより好ましく、70質量%〜100質量%が更に好ましい。
アクリル系樹脂に含まれるアクリル酸メチル単位及びメタクリル酸メチル単位の合計含有量は、全単量体単位に対して、50質量%〜100質量%が好ましく、60質量%〜100質量%がより好ましく、70質量%〜100質量%が更に好ましい。
アクリル系樹脂に含まれるメタクリル酸メチル単位の含有量は、全単量体単位に対して、50質量%〜100質量%が好ましく、60質量%〜100質量%がより好ましく、70質量%〜100質量%が更に好ましい。
アクリル系樹脂の一形態例として、スチレン系単量体単位を有するアクリル系樹脂、すなわち、スチレンアクリル系樹脂が挙げられる。スチレンアクリル系樹脂は、スチレン系単量体単位を有することにより電解液に対して溶解又は膨潤しにくい故、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びスチレンアクリル系樹脂をバインダ樹脂とする耐熱性多孔質層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂のみをバインダ樹脂とする耐熱性多孔質層に比べて、耐熱性多孔質層と電極及び多孔質基材との接着が電池内部において(つまり電解液が含浸した状態で)維持されると推測される。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、メタクロロスチレン、パラクロロスチレン、パラフルオロスチレン、パラメトキシスチレン、メタ−tert−ブトキシスチレン、パラ−tert−ブトキシスチレン、バラビニル安息香酸、パラメチル−α−メチルスチレン等が挙げられる。スチレン系単量体としては、スチレン、パラメトキシスチレン、パラメチル−α−メチルスチレンが好ましく、アクリル系樹脂の電解液への溶解を抑制する観点から、スチレンが特に好ましい。
アクリル系樹脂がスチレン系単量体単位を含む場合、アクリル系樹脂に含まれるスチレン系単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、25質量%〜75質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましく、35質量%〜65質量%が更に好ましい。
アクリル系樹脂がスチレン単位を含む場合、アクリル系樹脂に含まれるスチレン単位の含有量は、全単量体単位に対して、25質量%〜75質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましく、35質量%〜65質量%が更に好ましい。
アクリル系樹脂の別の一形態例として、アクリル系単量体単位と、不飽和カルボン酸無水物に由来する単量体単位とを含む共重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の別の一形態例として、アクリル系単量体単位と、スチレン系単量体単位と、不飽和カルボン酸無水物に由来する単量体単位とを含む共重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂を構成する単量体である不飽和カルボン酸無水物としては、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物、トリメリット酸無水物等が挙げられる。アクリル系樹脂が不飽和カルボン酸無水物単位を含むと、不飽和カルボン酸無水物単位の分極の強さが電極の構成成分と分子間相互作用を生み出すこと、又は、不飽和カルボン酸無水物に由来する残存カルボキシ基が電極中の樹脂成分のアミノ末端と反応すること、により耐熱性多孔質層と電極との接着性を向上させると推測される。
アクリル系樹脂が不飽和カルボン酸無水物単位を含む場合、アクリル系樹脂に含まれる不飽和カルボン酸無水物単位の含有量は、耐熱性多孔質層と電極との接着性を向上させる観点から、全単量体単位に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。
アクリル系樹脂が不飽和カルボン酸無水物単位を含む場合、アクリル系樹脂に含まれる不飽和カルボン酸無水物単位の含有量は、アクリル系樹脂のガラス転移温度を150℃以下に抑えドライヒートプレスによる電極との接着を可能にする観点から、全単量体単位に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、−20℃〜150℃の範囲が好ましい。アクリル系樹脂のTgが低いほど、ドライヒートプレスによってアクリル系樹脂の流動性が高まるので、電極表面の凹凸にポリマー鎖が入り込んでアンカー効果を発現し、電極に対する耐熱性多孔質層の接着を向上させる。この観点から、アクリル系樹脂のTgは、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。アクリル系樹脂のTgが−20℃以上であると、耐熱性多孔質層がブロッキングを引き起こしにくい。
アクリル系樹脂のTgは、FOX式を指針にして、アクリル系単量体、スチレン系単量体、不飽和カルボン酸無水物等の共重合比を変更することにより制御できる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万〜50万が好ましい。アクリル系樹脂のMwが1万以上であると、電極との接着強度がより向上する。アクリル系樹脂のMwが50万以下であると、ドライヒートプレスの際に耐熱性多孔質層の流動性が高まりやすい。アクリル系樹脂のMwは、3万〜30万がより好ましく、5万〜20万が更に好ましい。
耐熱性多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂との質量比(ポリフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂)は、熱収縮の抑制とドライヒートプレスによる電極との接着性とのバランスの観点から、90:10〜50:50であり、85:15〜65:35がより好ましく、80:20〜70:30が更に好ましい。
耐熱性多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂及びアクリル系樹脂の合計含有量は、耐熱性多孔質層に含まれる全樹脂の全量に対して、85質量%〜100質量%が好ましく、90質量%〜100質量%がより好ましく、95質量%〜100質量%が更に好ましい。
−その他の樹脂−
耐熱性多孔質層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びアクリル系樹脂以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、例えば、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ビニルニトリル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)の単独重合体又は共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、及びこれらの混合物が挙げられる。
耐熱性多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂及びアクリル系樹脂以外のその他の樹脂の含有量は、耐熱性多孔質層に含まれる全樹脂の全量に対して、0質量%〜15質量%が好ましく、0質量%〜10質量%がより好ましく、0質量%〜5質量%が更に好ましい。
−第一の無機粒子−
第一の無機粒子は、平均一次粒径が0.01μm〜0.3μmである。
第一の無機粒子の平均一次粒径は、単位体積あたりの無機粒子の表面積(比表面積)を大きくし、また、無機粒子を緻密に充填して、耐熱性多孔質層の熱収縮を抑制する観点から、0.3μm以下であり、0.2μm以下がより好ましく、0.1μm以下が更に好ましい。
第一の無機粒子の平均一次粒径は、無機粒子の現実的な大きさとハンドリングの容易さの観点から、0.01μm以上であり、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上が更に好ましい。
第一の無機粒子は、平均一次粒径が異なる無機粒子を2種以上併用してもよく、それぞれの平均一次粒径が上記範囲であることが好ましい。
第一の無機粒子の材質は制限されるものではない。第一の無機粒子としては、金属硫酸塩粒子、金属水酸化物粒子、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子、金属フッ化物粒子、粘土鉱物の粒子等が挙げられる。
第一の無機粒子としては、電解液に対して安定でありガス発生を抑制する観点から、金属硫酸塩粒子が好ましい。金属硫酸塩粒子としては、例えば、硫酸バリウム(BaSO)の粒子、硫酸ストロンチウム(SrSO)の粒子、硫酸カルシウム(CaSO)の粒子、硫酸カルシウム二水和物(CaSO・2HO)の粒子、ミョウバン石(KAl(SO(OH))の粒子、ジャロサイト(KFe(SO(OH))の粒子等が挙げられる。中でも硫酸バリウム(BaSO)の粒子が好ましい。金属硫酸塩粒子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
−第二の無機粒子−
第二の無機粒子は、第一の無機粒子よりも平均一次粒径が大きい。第二の無機粒子の平均一次粒径の数値範囲は制限されるものではない。第二の無機粒子の平均一次粒径は、第一の無機粒子の平均一次粒径よりも大きければよく、0.3μm以下でもよく、0.3μm超でもよい。
第二の無機粒子の平均一次粒径/第一の無機粒子の平均一次粒径は、1超200以下が好ましく、3超100以下がより好ましく、5超50以下が更に好ましい。
第二の無機粒子の平均一次粒径は、耐熱性多孔質層の表面に適度な凹凸が形成され、その結果、ドライヒートプレスによる電極との接着性に優れる観点から、0.4μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.6μm以上が更に好ましい。
第二の無機粒子の平均一次粒径は、単位体積あたりの無機粒子の表面積(比表面積)を大きくし、また、無機粒子を緻密に充填して、耐熱性多孔質層の熱収縮を抑制する観点から、2.0μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましく、1.0μm以下が更に好ましい。
第二の無機粒子は、平均一次粒径が異なる無機粒子を2種以上併用してもよく、それぞれの平均一次粒径が上記範囲であることが好ましい。
第二の無機粒子の材質は制限されるものではない。第二の無機粒子としては、金属水酸化物粒子、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子、金属フッ化物粒子、粘土鉱物の粒子等が挙げられる。
第二の無機粒子としては、難燃性の観点から、金属水酸化物粒子が好ましい。金属水酸化物粒子としては、例えば、水酸化マグネシウム(Mg(OH))の粒子、水酸化アルミニウム(Al(OH))の粒子、水酸化カルシウム(Ca(OH))の粒子、水酸化ニッケル(Ni(OH))の粒子等が挙げられる。中でも水酸化マグネシウム(Mg(OH))の粒子が最も好ましい。金属水酸化物粒子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
耐熱性多孔質層に含まれる第一の無機粒子と第二の無機粒子との質量比(第一の無機粒子:第二の無機粒子)は、熱収縮の抑制とドライヒートプレスによる電極との接着性とのバランスの観点から、95:5〜10:90が好ましく、90:10〜50:50がより好ましく、85:15〜55:45が更に好ましい。
無機粒子の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察において無作為に選んだ無機粒子100個の長径を計測し、100個の長径を平均することで求める。
平均一次粒径を測定する際に用いる試料は、耐熱性多孔質層を形成する材料である無機粒子、又は、セパレータの耐熱性多孔質層から取り出した無機粒子である。
耐熱性多孔質層を形成する材料である無機粒子を測定試料にする場合は、用意した第一の無機粒子と第二の無機粒子それぞれの平均一次粒径を測定する。
セパレータの耐熱性多孔質層から取り出した無機粒子を測定試料にする場合は、平均一次粒径の粒度分布に現れるピークの位置によって平均一次粒径を判断する。0.01μm〜0.3μmの範囲に第一の無機粒子由来の第一のピークが現れ、第一のピークよりも大きい範囲に第二の無機粒子由来の第二のピークが現れることで、第一の無機粒子と第二の無機粒子とを含むと判断できる。
セパレータの耐熱性多孔質層から無機粒子を取り出す方法に制限はなく、例えば、セパレータから剥がした耐熱性多孔質層を、樹脂を溶解する有機溶剤に浸漬して有機溶剤で樹脂を溶解させ無機粒子を取り出す方法が挙げられる。または、セパレータから剥がした耐熱性多孔質層を800℃程度に加熱して樹脂を消失させ無機粒子を取り出してもよい。
無機粒子の粒子形状に限定はなく、球形、楕円形、板状、針状、不定形のいずれでもよい。無機粒子は、電池の短絡抑制の観点又は耐熱性多孔質層に緻密に充填されやすい観点から、板状又は球形の粒子、又は、凝集していない一次粒子であることが好ましい。
本開示のセパレータにおいて耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合は、セパレータの耐熱性の観点から、50質量%以上であり、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。
本開示のセパレータにおいて耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合は、ドライヒートプレスによる電極との接着性に優れる観点、耐熱性多孔質層の成形性の観点、及び耐熱性多孔質層が多孔質基材から剥がれにくい観点から、90質量%以下であり、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
−有機フィラー−
有機フィラーとしては、例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋ポリシリコーン、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物等の架橋高分子からなる粒子;ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、アラミド、ポリアセタール等の耐熱性高分子からなる粒子;などが挙げられる。これら有機フィラーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
−その他の成分−
本開示のセパレータにおいて耐熱性多孔質層は、界面活性剤等の分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などの添加剤を含んでいてもよい。分散剤は、耐熱性多孔質層を形成するための塗工液に、分散性、塗工性又は保存安定性を向上させる目的で添加される。湿潤剤、消泡剤、pH調整剤は、耐熱性多孔質層を形成するための塗工液に、例えば、多孔質基材とのなじみをよくする目的、塗工液へのエア噛み込みを抑制する目的、又はpH調整の目的で添加される。
[耐熱性多孔質層の特性]
耐熱性多孔質層の厚さは、セパレータの耐熱性及び電極との接着性の観点から、片面1μm以上が好ましく、片面1.5μm以上がより好ましく、片面2μm以上が更に好ましく、イオン透過性及び電池のエネルギー密度の観点から、片面8μm以下が好ましく、片面7μm以下がより好ましく、片面6μm以下が更に好ましい。
耐熱性多孔質層の厚さは、両面の合計として、2μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましく、6μm以上が更に好ましく、16μm以下が好ましく、12μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。
耐熱性多孔質層が多孔質基材の両面に設けられている場合、一方の面における耐熱性多孔質層の厚さと、他方の面における耐熱性多孔質層の厚さとの差は、両面合計の厚さの25%以下であることが好ましく、低いほど好ましい。
単位面積当たりの耐熱性多孔質層の質量は、セパレータの耐熱性及び電極との接着性の観点から、両面の合計として、2.0g/m以上が好ましく、3.0g/m以上がより好ましく、4.0g/m以上が更に好ましく、イオン透過性及び電池のエネルギー密度の観点から、両面の合計として、30.0g/m以下が好ましく、25.0g/m以下がより好ましく、20.0g/m以下が更に好ましい。
耐熱性多孔質層が多孔質基材の両面に設けられている場合、耐熱性多孔質層の質量に係る一方の面と他方の面との差は、セパレータのカールを抑制する観点又は電池のサイクル特性を良好にする観点から、両面合計に対して25質量%以下であることが好ましい。
耐熱性多孔質層の空孔率は、イオン透過性及び電極に対する接着性の観点から、25%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、35%以上が更に好ましく、耐熱性多孔質層の力学的強度及び耐熱性の観点から、60%以下が好ましく、55%以下がより好ましく、50%以下が更に好ましい。耐熱性多孔質層の空孔率ε(%)は、下記の式により求める。
ε={1−(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
ここに、耐熱性多孔質層の構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の単位面積当たりの質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm)であり、耐熱性多孔質層の厚さがt(cm)である。
耐熱性多孔質層の平均孔径は、耐熱性多孔質層に電解液を含浸させた際に耐熱性多孔質層に含まれる樹脂が膨潤しても孔の閉塞が起きにくい観点から、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、電極に対する耐熱性多孔質層の接着性の観点又は電池のサイクル特性及び負荷特性に優れる観点から、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
耐熱性多孔質層の平均孔径(nm)は、すべての孔が円柱状であると仮定し、以下の式により算出する。
d=4V/S
式中、dは耐熱性多孔質層の平均孔径(直径)、Vは耐熱性多孔質層1m当たりの空孔体積、Sは耐熱性多孔質層1m当たりの空孔表面積を表す。
耐熱性多孔質層1m当たりの空孔体積Vは、耐熱性多孔質層の空孔率から算出する。
耐熱性多孔質層1m当たりの空孔表面積Sは、以下の方法で求める。
まず、多孔質基材の比表面積(m/g)とセパレータの比表面積(m/g)とを、窒素ガス吸着法にBET式を適用することにより、窒素ガス吸着量から算出する。これらの比表面積(m/g)にそれぞれの目付(g/m)を乗算して、それぞれの1m当たりの空孔表面積を算出する。そして、多孔質基材1m当たりの空孔表面積をセパレータ1m当たりの空孔表面積から減算して、耐熱性多孔質層1m当たりの空孔表面積Sを算出する。目付とは、単位面積当たりの質量である。
[セパレータの特性]
本開示のセパレータの厚さは、セパレータの機械的強度の観点から、5μm以上が好ましく、8μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、電池のエネルギー密度の観点から、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましい。
本開示のセパレータの突刺強度は、セパレータの機械的強度又は電池の耐短絡性の観点から、160gf(1.6N)〜1000gf(9.8N)が好ましく、200gf(2.0N)〜600gf(5.9N)がより好ましい。セパレータの突刺強度の測定方法は、多孔質基材の突刺強度の測定方法と同様である。
本開示のセパレータの空孔率は、電極に対する接着性、セパレータのハンドリング性、イオン透過性又は機械的強度の観点から、30%〜65%が好ましく、35%〜60%がより好ましい。
本開示のセパレータのガーレ値(JIS P8117:2009)は、機械的強度と電池の負荷特性の観点から、100秒/100mL〜600秒/100mLが好ましく、120秒/100mL〜500秒/100mLがより好ましい。
本開示のセパレータは、イオン透過性の観点から、セパレータのガーレ値から多孔質基材のガーレ値を減算した値が、400秒/100mL以下が好ましく、300秒/100mL以下がより好ましく、200秒/100mL以下が更に好ましい。セパレータのガーレ値から多孔質基材のガーレ値を減算した値の下限は、特に限定されるものではないが、本開示のセパレータにおいては、好ましくは10秒/100mL以上である。
本開示のセパレータは、150℃で1時間熱処理したときのMDの収縮率が、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、15%以下が更に好ましい。
本開示のセパレータは、150℃で1時間熱処理したときのTDの収縮率が、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、15%以下が更に好ましい。
本開示のセパレータは、150℃で1時間熱処理したときの面積収縮率が、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましい。
セパレータを150℃で1時間熱処理したときの面積収縮率は、以下の測定方法によって求める。
セパレータをMD180mm×TD60mmの長方形に切り出し、試験片とする。この試験片に、TDを2等分する線上で且つ一方の端から20mm及び170mmの箇所に印を付ける(それぞれ点A、点Bという。)。さらに、MDを2等分する線上で且つ一方の端から10mm及び50mmの箇所に印を付ける(それぞれ点C、点Dという。)。印を付けた試験片にクリップをつけて(クリップをつける場所は、点Aから最も近い端と点Aとの間である。)、庫内の温度を150℃に調整したオーブンの中につるし、無張力の状態で1時間熱処理を施す。AB間及びCD間の長さを熱処理の前後で測定し、下記の式により面積収縮率を算出する。
面積収縮率(%)={1−(熱処理後のABの長さ÷熱処理前のABの長さ)×(熱処理後のCDの長さ÷熱処理前のCDの長さ)}×100
本開示のセパレータは、多孔質基材及び耐熱性多孔質層以外のその他の層をさらに有していてもよい。その他の層をさらに有する形態としては、例えば、多孔質基材の一方の面に耐熱性多孔質層を有し、多孔質基材の他方の面に電極との接着を主たる目的に設けられた接着性多孔質層を有する形態が挙げられる。
[セパレータの製造方法]
本開示のセパレータは、例えば、多孔質基材上に耐熱性多孔質層を湿式塗工法又は乾式塗工法で形成することにより製造できる。本開示において、湿式塗工法とは、塗工層を凝固液中で固化させる方法であり、乾式塗工法とは、塗工層を乾燥させて固化させる方法である。以下に、湿式塗工法の実施形態例を説明する。
湿式塗工法は、樹脂及び無機粒子を含有する塗工液を多孔質基材上に塗工し、凝固液に浸漬して塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ水洗及び乾燥を行う方法である。
耐熱性多孔質層形成用の塗工液は、樹脂及び無機粒子を溶媒に溶解又は分散させて作製する。塗工液には、必要に応じて、樹脂及び無機粒子以外のその他の成分を溶解又は分散させる。
塗工液の調製に用いる溶媒は、樹脂を溶解する溶媒(以下、「良溶媒」ともいう。)を含む。良溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の極性アミド溶媒が挙げられる。
塗工液の調製に用いる溶媒は、良好な多孔構造を有する多孔質層を形成する観点から、相分離を誘発させる相分離剤を含むことが好ましい。したがって、塗工液の調製に用いる溶媒は、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であることが好ましい。相分離剤は、塗工に適切な粘度が確保できる範囲の量で良溶媒と混合することが好ましい。相分離剤としては、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
塗工液の調製に用いる溶媒としては、良好な多孔構造を形成する観点から、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であって、良溶媒を60質量%以上含み、相分離剤を5質量%〜40質量%含む混合溶媒が好ましい。
塗工液の樹脂濃度は、良好な多孔構造を形成する観点から、3質量%〜10質量%であることが好ましい。塗工液の無機粒子濃度は、良好な多孔構造を形成する観点から、2質量%〜50質量%であることが好ましい。
塗工液は、界面活性剤等の分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤等を含有していてもよい。これらの添加剤は、非水系二次電池の使用範囲において電気化学的に安定で電池内反応を阻害しないものであれば、耐熱性多孔質層に残存するものであってもよい。
多孔質基材への塗工液の塗工手段としては、マイヤーバー、ダイコーター、リバースロールコーター、ロールコーター、グラビアコーター等が挙げられる。耐熱性多孔質層を多孔質基材の両面に形成する場合、塗工液を両面同時に多孔質基材へ塗工することが生産性の観点から好ましい。
塗工層の固化は、塗工層を形成した多孔質基材を凝固液に浸漬し、塗工層において相分離を誘発しつつ樹脂を固化させることで行われる。これにより、多孔質基材と耐熱性多孔質層とからなる積層体を得る。
凝固液は、塗工液の調製に用いた良溶媒及び相分離剤と、水とを含むことが一般的である。良溶媒と相分離剤の混合比は、塗工液の調製に用いた混合溶媒の混合比に合わせるのが生産上好ましい。凝固液中の水の含有量は40質量%〜90質量%であることが、多孔構造の形成及び生産性の観点から好ましい。凝固液の温度は、例えば20℃〜50℃である。
凝固液中で塗工層を固化させた後、積層体を凝固液から引き揚げ、水洗する。水洗することによって、積層体から凝固液を除去する。さらに、乾燥することによって、積層体から水を除去する。水洗は、例えば、積層体を水浴中を搬送することによって行う。乾燥は、例えば、積層体を高温環境中を搬送すること、積層体に風をあてること、積層体をヒートロールに接触させること等によって行う。乾燥温度は40℃〜80℃が好ましい。
本開示のセパレータは、乾式塗工法でも製造し得る。乾式塗工法は、塗工液を多孔質基材に塗工し、塗工層を乾燥させて溶媒を揮発除去することにより、耐熱性多孔質層を多孔質基材上に形成する方法である。ただし、乾式塗工法は湿式塗工法に比べて多孔質層が緻密になりやすいので、良好な多孔構造を得る観点から湿式塗工法の方が好ましい。
本開示のセパレータは、耐熱性多孔質層を独立したシートとして作製し、この耐熱性多孔質層を多孔質基材に重ねて、熱圧着や接着剤によって複合化する方法によっても製造し得る。耐熱性多孔質層を独立したシートとして作製する方法としては、上述した湿式塗工法又は乾式塗工法を適用して、剥離シート上に耐熱性多孔質層を形成する方法が挙げられる。
<非水系二次電池>
本開示の非水系二次電池は、リチウムイオンのドープ及び脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であり、正極と、負極と、本開示の非水系二次電池用セパレータとを備える。ドープとは、吸蔵、担持、吸着、又は挿入を意味し、正極等の電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。
本開示の非水系二次電池は、例えば、負極と正極とがセパレータを介して対向した電池素子が電解液と共に外装材内に封入された構造を有する。本開示の非水系二次電池は、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池に好適である。
本開示の非水系二次電池は、本開示のセパレータがドライヒートプレスによる電極との接着に優れるので、製造歩留りを向上させ得る。
電極の活物質層は、セパレータとの接着性の観点からは、バインダ樹脂が多く含まれていることが好ましく、電池のエネルギー密度を高める観点からは、活物質が多く含まれていることが好ましく相対的にバインダ樹脂量は少ないことが好ましい。本開示のセパレータは電極との接着性に優れるので、活物質層のバインダ樹脂量を減らして活物質量を増やすことを可能にし、よって、電池のエネルギー密度を高めることができる。
以下、本開示の非水系二次電池が備える正極、負極、電解液及び外装材の形態例を説明する。
正極の実施形態例としては、正極活物質及びバインダ樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造が挙げられる。活物質層は、さらに導電助剤を含んでもよい。正極活物質としては、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物が挙げられ、具体的にはLiCoO、LiNiO、LiMn1/2Ni1/2、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3、LiMn、LiFePO、LiCo1/2Ni1/2、LiAl1/4Ni3/4等が挙げられる。バインダ樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末等の炭素材料が挙げられる。集電体としては、例えば厚さ5μm〜20μmの、アルミニウム箔、チタン箔、ステンレス箔等が挙げられる。
本開示の非水系二次電池においては、本開示のセパレータの耐熱性多孔質層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂が耐酸化性に優れることにより、耐熱性多孔質層を非水系二次電池の正極に接触させて配置することで、正極活物質として、4.2V以上の高電圧で作動可能なLiMn1/2Ni1/2、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3等を適用しやすい。
負極の実施形態例としては、負極活物質及びバインダ樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造が挙げられる。活物質層は、さらに導電助剤を含んでもよい。負極活物質としては、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵し得る材料が挙げられ、具体的には例えば、炭素材料;ケイ素、スズ、アルミニウム等とリチウムとの合金;ウッド合金;などが挙げられる。バインダ樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末、極細炭素繊維等の炭素材料が挙げられる。集電体としては、例えば厚さ5μm〜20μmの、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔等が挙げられる。また、上記の負極に代えて、金属リチウム箔を負極として用いてもよい。
電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した溶液である。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等が挙げられる。非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びそのフッ素置換体等の鎖状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル;などが挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。電解液としては、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを質量比(環状カーボネート:鎖状カーボネート)20:80〜40:60で混合し、リチウム塩を0.5mol/L〜1.5mol/Lの範囲にて溶解した溶液が好適である。
外装材としては、金属缶、アルミニウムラミネートフィルム製パック等が挙げられる。電池の形状は角型、円筒型、コイン型等があるが、本開示のセパレータはいずれの形状にも好適である。
本開示の非水系二次電池の製造方法としては、ドライヒートプレスを行ってセパレータを電極に接着させる工程と、互いに接着した電極及びセパレータを電解液と共に外装材の内部に封止する封止工程と、を含む製造方法が挙げられる。
上記の製造方法は、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置した積層体を製造する積層工程と、積層体にドライヒートプレスを行って正極及び負極の少なくとも一方とセパレータとを接着させるドライ接着工程と、ドライ接着工程を経た積層体を電解液と共に外装材の内部に封止する封止工程と、を有することが好ましい。
積層工程は、例えば、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置し、長さ方向に巻き回して巻回体を製造する工程、又は、正極、セパレータ、負極をこの順に少なくとも1層ずつ積層する工程である。
ドライ接着工程は、積層体を外装材(例えばアルミニウムラミネートフィルム製パック)に収容する前に行ってもよく、積層体を外装材に収容した後に行ってもよい。つまり、ドライヒートプレスによって電極とセパレータとが接着した積層体を外装材に収容してもよく、積層体を外装材に収容した後に外装材の上からドライヒートプレスを行って電極とセパレータとを接着させてもよい。
ドライ接着工程におけるプレス温度は、30℃〜100℃が好ましい。この温度範囲であると、電極とセパレータとの接着が良好であり、また、セパレータが幅方向に適度に膨張し得るので、電池の短絡が起こりにくい。ドライ接着工程におけるプレス圧は、0.2MPa〜9MPaが好ましい。プレス時間は、プレス温度及びプレス圧に応じて調節することが好ましく、例えば0.1分間〜60分間の範囲で調節する。
積層工程の後、ドライ接着工程の前に、積層体に常温プレス(常温下での加圧)を施して、積層体を仮接着してもよい。
封止工程は、積層体が収容されている外装材に電解液を注入した後、外装材の開口部を封止する工程である。外装材の開口部の封止は、例えば、外装材の開口部を接着剤で接着すること、又は、外装材の開口部を加熱加圧して熱圧着することによって行われる。外装材の開口部の封止前に、外装体の内部を真空状態にすることが好ましい。
封止工程においては、外装材の開口部を加熱加圧して熱圧着すると同時に、外装材の上から積層体を熱プレス処理することが好ましい。積層体と電解液とが共存する状態で熱プレス処理(ウェットヒートプレス)が行われることにより、電極とセパレータとの接着がより強固になる。
ウェットヒートプレスの条件としては、プレス温度は60℃〜90℃が好ましく、プレス圧は0.2MPa〜2MPaが好ましい。プレス時間は、プレス温度及びプレス圧に応じて調節することが好ましく、例えば0.5分間〜60分間の範囲で調節する。
以下に実施例を挙げて、本開示のセパレータ及び非水系二次電池をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示のセパレータ及び非水系二次電池の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
<測定方法、評価方法>
実施例及び比較例に適用した測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
[多孔質基材及びセパレータの厚さ]
多孔質基材及びセパレータの厚さ(μm)は、接触式の厚み計(株式会社ミツトヨ、LITEMATIC VL−50−B)にて10cm四方内の20点を測定し、これを平均することで求めた。測定端子には球の半径10mmの球面測定子(株式会社ミツトヨ、超硬球面測定子φ10.5)を用い、測定中に約0.2Nの荷重が印加されるように調整した。
[耐熱性多孔質層の厚さ]
耐熱性多孔質層の厚さ(μm)は、セパレータの厚さ(μm)から多孔質基材の厚さ(μm)を減算して両面合計の厚さを求め、これを2等分して片面の厚さを求めた。
[多孔質基材の空孔率]
多孔質基材の空孔率ε(%)は、下記の式により求めた。
ε={1−Ws/(ds・t)}×100
ここに、Wsは多孔質基材の目付(g/m)、dsは多孔質基材の真密度(g/cm)、tは多孔質基材の厚さ(μm)である。
[耐熱性多孔質層の空孔率]
耐熱性多孔質層の空孔率ε(%)は、下記の式により求めた。
ε={1−(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
ここに、耐熱性多孔質層の構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の単位面積当たりの質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm)であり、耐熱性多孔質層の厚さがt(cm)である。
[ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量]
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)により測定した。GPCによる分子量測定は、日本分光社製のGPC装置GPC−900を用い、カラムに東ソー社製TSKgel SUPER AWM−Hを2本用い、溶媒にN,N−ジメチルホルムアミドを使用し、温度40℃、流量0.6mL/分の条件で測定し、ポリスチレン換算の分子量を得た。
[無機粒子の平均一次粒径]
耐熱性多孔質層を形成するための塗工液に添加する前の無機粒子を試料とした。
無機粒子の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察において無作為に選んだ無機粒子100個の長径を計測し、100個の長径を平均することで求めた。
[ガーレ値]
多孔質基材及びセパレータのガーレ値(秒/100mL)は、JIS P8117:2009に従い、ガーレ式デンソメータ(東洋精機社)を用いて測定した。
セパレータのガーレ値(秒/100mL)から多孔質基材のガーレ値(秒/100mL)を減算した値を、表1に「Δガーレ値」として記した。
[面積収縮率]
セパレータをMD180mm×TD60mmの長方形に切り出し、試験片とした。この試験片に、TDを2等分する線上で且つ一方の端から20mm及び170mmの箇所に印を付けた(それぞれ点A、点Bという)。さらに、MDを2等分する線上で且つ一方の端から10mm及び50mmの箇所に印を付けた(それぞれ点C、点Dという)。印を付けた試験片にクリップをつけて(クリップをつける場所は、点Aから最も近い端と点Aとの間)、庫内の温度を150℃に調整したオーブンの中につるし、無張力の状態で1時間熱処理を施した。AB間及びCD間の長さを熱処理の前後で測定し、下記の式により面積収縮率(%)を算出し、さらに試験片10枚の面積収縮率(%)を平均した。
面積収縮率(%)={1−(熱処理後のABの長さ÷熱処理前のABの長さ)×(熱処理後のCDの長さ÷熱処理前のCDの長さ)}×100
[負極との接着性]
負極活物質である人造黒鉛300g、バインダであるスチレン−ブタジエン共重合体の変性体を40質量%含有する水溶性分散液7.5g、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース3g、及び適量の水を双腕式混合機にて攪拌して混合し、負極用スラリーを作製した。この負極用スラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥後プレスして、負極活物質層を有する負極を得た。
上記で得た負極を幅25mm、長さ70mmに切り出した。セパレータをTD28mm×MD75mmの長方形に切り出した。幅25mm、長さ70mmの離型紙を用意した。負極とセパレータと離型紙とをこの順に重ねた積層体を、アルミニウムラミネートフィルム製のパック中に挿入し、パックごと積層体の積層方向に熱プレス機を用いて熱プレスを行い、これにより負極とセパレータとの接着を行った。熱プレスの条件は、温度90℃、圧力9MPa、時間10秒間とした。その後、パックから積層体を取り出し、離型紙を剥離して、これを試験片とした。
試験片の負極の無塗工面を金属板に両面テープで固定し、金属板をテンシロン(エー・アンド・デイ社、STB−1225S)の下部チャックに固定した。この際、試験片の長さ方向(即ちセパレータのMD)が重力方向になるように、金属板をテンシロンに固定した。セパレータを下部の端から2cm程度負極から剥がして、その端部を上部チャックに固定し、180°剥離試験を行った。180°剥離試験の引張速度は300mm/分とし、測定開始後10mmから40mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出した。さらに試験片10枚の荷重を平均して、負極とセパレータの接着強度(N/25mm)とした。
<セパレータの作製>
[実施例1]
耐熱性多孔質層の材料として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、硫酸バリウム粒子及び水酸化マグネシウム粒子を用意した。これらの物性は表1に記載のとおりである。
PVDF及びPMMAをジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、さらに硫酸バリウム粒子及び水酸化マグネシウム粒子を分散させて、塗工液(1)を得た。塗工液(1)は、樹脂濃度が5質量%であり、樹脂と無機粒子との質量比(樹脂:無機粒子)が25:75であり、PVDFとPMMAとの質量比(PVDF:PMMA)が80:20であり、硫酸バリウム粒子と水酸化マグネシウム粒子との質量比(硫酸バリウム粒子:水酸化マグネシウム粒子)が80:20であった。
塗工液(1)をポリエチレン微多孔膜(厚さ7μm、空孔率36%、ガーレ値120秒/100mL)の両面に塗工した。その際、表裏の塗工量が等量になるように塗工した。これを、凝固液(水:DMAc=70:30[質量比]、液温40℃)に浸漬し塗工層を固化させ、次いで、水洗し、乾燥した。こうして、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層が形成されたセパレータを得た。耐熱性多孔質層の厚さは片面3μmであった。
[実施例2〜20、比較例1〜8]
実施例1と同様にして、但し、耐熱性多孔質層の材料及び組成を表1に記載の仕様にして各セパレータを作製した。
実施例1〜20及び比較例1〜8の各セパレータの組成、物性及び評価結果を表1に示す。
Figure 2022002173

Claims (11)

  1. 多孔質基材と、
    前記多孔質基材の片面又は両面に設けられた、樹脂及び無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、を備え、
    前記樹脂が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂とを含み、
    前記耐熱性多孔質層に含まれる前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂と前記アクリル系樹脂との質量比(ポリフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂)が90:10〜50:50であり、
    前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が50質量%以上90質量%以下であり、
    前記無機粒子が、平均一次粒径が0.01μm以上0.3μm以下の第一の無機粒子と、前記第一の無機粒子よりも平均一次粒径が大きい第二の無機粒子とを含む、
    非水系二次電池用セパレータ。
  2. 前記耐熱性多孔質層に含まれる前記第一の無機粒子と前記第二の無機粒子との質量比(第一の無機粒子:第二の無機粒子)が95:5〜10:90である、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  3. 前記第二の無機粒子の平均一次粒径が0.4μm以上2.0μm以下である、請求項1又は請求項2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  4. 前記無機粒子が金属硫酸塩粒子及び金属水酸化物粒子を含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  5. 前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量が60万以上200万以下である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  6. 前記耐熱性多孔質層の厚さが前記多孔質基材の片面において1μm以上8μm以下である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  7. 前記耐熱性多孔質層の空孔率が25%以上60%以下である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  8. 前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が60質量%以上80質量%以下である、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  9. 前記耐熱性多孔質層に含まれる前記第一の無機粒子と前記第二の無機粒子との質量比(第一の無機粒子:第二の無機粒子)が90:10〜50:50である、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  10. 前記耐熱性多孔質層に含まれる前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂と前記アクリル系樹脂との質量比(ポリフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂)が85:15〜65:35である、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  11. 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムイオンのドープ及び脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。
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