JP2022041296A - 非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れ、かつ、高温に曝された場合でも収縮し難い非水系二次電池用セパレータ、並びに、非水系二次電池の提供。【解決手段】多孔質基材と、上記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、(i)融点が164℃~200℃である第一のフッ化ビニリデン系樹脂、(ii)アクリル系樹脂及び融点が164℃未満である第二のフッ化ビニリデン系樹脂の少なくとも一方、並びに、(iii)フィラーを含む接着性多孔質層と、を備えた、非水系二次電池用セパレータ及びその応用。【選択図】なし

Description

本開示は、非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池に関する。
非水系二次電池を構成する部材の一つであるセパレータには、外部から衝撃を受けたり、充放電に伴って電極が膨張及び収縮したりしても、容易に電極から剥がれない接着性が求められる。電極への接着性を高めたセパレータとしては、多孔質基材上に電極に対して接着性を示す樹脂を含む樹脂層を備えたセパレータが知られている。例えば、特許文献1~3には、多孔質基材上にアクリル系樹脂及びフッ化ビニリデン系樹脂を含む多孔質層を備えたセパレータが開示されている。
また、セパレータには、電池の安全性を担保するために、電池内部が高温になっても容易に破膜及び/又は収縮したりしない耐熱性も求められる。電極への接着性に加えて、耐熱性も高めたセパレータとしては、多孔質基材上に特定の構造を有する耐熱性樹脂と電極に対して接着性を示す樹脂とを含む樹脂層を備えたセパレータが知られている。例えば、特許文献4には、多孔質基材上にアミド構造を有する耐熱性樹脂及びアクリル系樹脂を含む多孔質層を備えたセパレータが開示されている。
国際公開第2016/098684号 国際公開第2018/055882号 米国特許公開第2018/233727号 米国特許公開第2019/044118号
ところで、電極に対して接着性を示す樹脂層を有するセパレータを用いた電池の製造方法には、正極と負極との間にセパレータを配置した積層体を、セパレータに電解液を含浸させずに熱プレス(以下、「ドライヒートプレス」ともいう。)する方法と、正極と負極との間にセパレータを配置した積層体を外装材に収容し、セパレータに電解液を含浸させた状態で熱プレス(以下、「ウェットヒートプレス」ともいう。)する方法と、がある。
ドライヒートプレスによって電極とセパレータとが良好に接着すると、電池の製造工程において電極とセパレータとが位置ずれし難くなり、電池の製造歩留りを向上させることが可能となる。しかし、ドライヒートプレスによって電極とセパレータとを接着させていても、電解液を含浸させた際に電極とセパレータとが剥離する場合がある。電極とセパレータとが剥離すると、外部からの衝撃、充放電に伴う電極の膨張及び収縮等によって短絡が発生する場合がある。このため、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても、電池とセパレータとを良好に接着できる技術の開発が期待される。
本開示は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れ、かつ、高温に曝された場合でも収縮し難い非水系二次電池用セパレータを提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記非水系二次電池用セパレータを備えた非水系二次電池を提供することにある。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 多孔質基材と、上記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、(i)融点が164℃~200℃である第一のフッ化ビニリデン系樹脂、(ii)アクリル系樹脂及び融点が164℃未満である第二のフッ化ビニリデン系樹脂の少なくとも一方、並びに、(iii)フィラーを含む接着性多孔質層と、を備えた、非水系二次電池用セパレータ。
<2> 上記第一のフッ化ビニリデン系樹脂の融点が、170℃~200℃である、<1>に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<3> 上記第一のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量が、60万~300万である、<1>又は<2>に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<4> 上記アクリル系樹脂が、アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含むアクリル系共重合体である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<5> 上記接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める上記第一のフッ化ビニリデン系樹脂の割合が、40質量%~90質量%である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<6> 上記接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める上記アクリル系樹脂及び上記第二のフッ化ビニリデン系樹脂の合計割合が、10質量%~60質量%である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<7> 上記接着性多孔質層に占める上記フィラーの割合が、20質量%~90質量%である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<8> 上記フィラーの平均一次粒径が、0.01μm~0.30μmである、<1>~<7>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<9> 上記フィラーが、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、及び金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<10> 上記接着性多孔質層が、アミド結合又はアミドイミド結合を有する耐熱性樹脂を更に含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<11> 上記接着性多孔質層が、アミド結合を有する耐熱性樹脂を更に含み、上記アミド結合を有する耐熱性樹脂が、全芳香族ポリアミドを含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<12> 上記接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める上記耐熱性樹脂の割合が、2質量%~30質量%である、<10>又は<11>に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<13> 正極と、負極と、上記正極及び上記負極の間に配置された<1>~<12>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る、非水系二次電池。
本開示の一実施形態によれば、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れ、かつ、高温に曝された場合でも収縮し難い非水系二次電池用セパレータが提供される。
本開示の他の実施形態によれば、上記非水系二次電池用セパレータを備えた非水系二次電池が提供される。
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の成分の合計量を意味する。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、2つ以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において「固形分」との語は、溶媒を除く成分を意味し、溶剤以外の低分子量成分等の液状の成分も本開示における「固形分」に含まれる。
本開示において、「溶媒」との語は、水、有機溶剤、及び水と有機溶剤との混合溶媒を包含する意味で用いられる。
本開示において「MD方向」とは、長尺状に製造される多孔質基材及びセパレータにおいて長尺方向を意味し、「TD方向」とは、「MD方向」に直交する方向を意味する。本開示では、「MD方向」を「機械方向(machine direction)」ともいい、「TD方向」を「幅方向(transverse direction)」ともいう。
本開示において「耐熱性樹脂」とは、融点が200℃以上の樹脂、又は、融点を有さず分解温度が200℃以上の樹脂を指す。換言すると、本開示における耐熱性樹脂とは、200℃未満の温度領域おいて、溶融及び分解を起こさない樹脂である。
本開示において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語である。
本開示において、共重合体又は樹脂の「単量体単位」とは、共重合体又は樹脂の構成単位であって、単量体が重合してなる構成単位を意味する。
[非水系二次電池用セパレータ]
本開示の非水系二次電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」ともいう。)は、多孔質基材と、上記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、(i)融点が164℃~200℃である第一のフッ化ビニリデン系樹脂、(ii)アクリル系樹脂及び融点が164℃未満である第二のフッ化ビニリデン系樹脂の少なくとも一方、並びに、(iii)フィラーを含む接着性多孔質層と、を備えたセパレータである。
本開示のセパレータは、上記のような構成を有することにより、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れ、かつ、高温(例えば、150℃以上)に曝された場合でも収縮し難いという効果を奏し得る。
本開示のセパレータがこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示のセパレータを限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
フッ化ビニリデン系樹脂は、電解液に対する安定性、電気化学的な安定性、電極への接着性、耐熱性等の観点から、接着性多孔質層のバインダ樹脂として好適な樹脂である。フッ化ビニリデン系樹脂を接着性多孔質層のバインダ樹脂として用いることにより、非水系二次電池用に好適なセパレータが得られる。
本開示のセパレータの接着性多孔質層は、上記のような特定を有するフッ化ビニリデン系樹脂として、融点が特定の温度以上である第一のフッ化ビニリデン系樹脂を含む。このため、接着性多孔質層は、耐熱性に優れ、例えば、150℃以上の高温に曝された場合でも収縮し難い。
また、本開示のセパレータの接着性多孔質層は、第一のフッ化ビニリデン系樹脂に加えて、アクリル系樹脂及び/又は第一のフッ化ビニリデン系樹脂よりも融点が低い第二のフッ化ビニリデン系樹脂を含む。
アクリル系樹脂は、フッ化ビニリデン系樹脂との親和性が高い。したがって、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂とは相溶している状態又は均一性高く混合している状態でフィブリル状となって、均一性の高い3次元の網目構造を形成すると考えられる。均一性の高い3次元の網目構造からなる接着性多孔質層は、電極及び多孔質基材との接着に優れると推測される。また、アクリル系樹脂のガラス転移温度は比較的低いため、ヒートプレスによって接着性多孔質層中のアクリル系樹脂の流動性が高まり、電極表面の凹凸にポリマー鎖が入り込んでアンカー効果を発現すると考えられる。このため、電極に対する接着性多孔質層の接着性(ドライ接着性及びウェット接着性)が向上し得ると推測される。
第二のフッ化ビニリデン系樹脂は、第一のフッ化ビニリデン系樹脂よりも融点が低く、アクリル系樹脂と同様に、接着性多孔質層中の第二のフッ化ビニリデン系樹脂は、ヒートプレスによって流動性が高まり、電極表面の凹凸にポリマー鎖が入り込んでアンカー効果を発現すると考えられる。このため、電極に対する接着性多孔質層の接着性(ドライ接着性及びウェット接着性)が向上し得ると推測される。
さらに、本開示のセパレータの接着性多孔質層は、フィラーを含むことで、高温に曝された場合に収縮し難くなる。
以上の作用が相乗することで、本開示のセパレータは、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れ、かつ、高温(例えば、150℃以上)に曝された場合でも収縮し難いと推測される。
以下、本開示のセパレータが備える多孔質基材及び接着性多孔質層の詳細を説明する。
以下の説明では、「融点が164℃~200℃である第一のフッ化ビニリデン系樹脂」を単に「第一のフッ化ビニリデン系樹脂」ともいい、「融点が164℃未満である第二のフッ化ビニリデン系樹脂」を単に「第二のフッ化ビニリデン系樹脂」ともいう。また、「ドライヒートプレスによる電極との接着性」を「ドライ接着性」ともいい、「ウェットヒートプレスによる電極との接着性」を「ウェット接着性」ともいう。
〔多孔質基材〕
本開示のセパレータは、多孔質基材を備えている。
本開示において「多孔質基材」とは、内部に多数の細孔を有し、これら細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能となった基材を意味する。このような基材としては、微多孔膜;繊維状物からなる多孔性シート(例:不織布、紙等);微多孔膜又は多孔性シートに他の多孔性の層を1層以上積層した複合多孔質シート;などが挙げられる。
本開示における多孔質基材としては、セパレータの薄膜化及び強度の観点から、微多孔膜が好ましい。「微多孔膜」とは、内部に多数の微細孔を有する多孔質基材を意味する。
多孔質基材の材料としては、電気絶縁性を有する材料が好ましく、有機材料又は無機材料のいずれであってもよい。
多孔質基材は、多孔質基材にシャットダウン機能を付与するため、熱可塑性樹脂を含むことが望ましい。シャットダウン機能とは、電池温度が高まった際に、構成材料が溶解して多孔質基材の孔を閉塞することによりイオンの移動を遮断し、電池の熱暴走を防止する機能をいう。熱可塑性樹脂としては、融点200℃未満の熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;などが挙げられる。
これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが好ましい。
多孔質基材としては、ポリオレフィンを含む微多孔膜(以下、「ポリオレフィン微多孔膜」ともいう。)が好ましい。ポリオレフィン微多孔膜としては、例えば、従来の電池用セパレータに適用されているポリオレフィン微多孔膜が挙げられ、これらの中から十分な力学特性及びイオン透過性を有するものを選択することが望ましい。
ポリオレフィン微多孔膜は、シャットダウン機能を発現する観点から、ポリエチレンを含む微多孔膜であることが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜がポリエチレンを含む場合、ポリエチレンの含有量は、ポリオレフィン微多孔膜全体の質量に対して95質量%以上であることが好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜としては、高温に曝された際に容易に破膜しない耐熱性を備える観点から、ポリプロピレンを含む微多孔膜が好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜としては、シャットダウン機能と、高温に曝された際に容易に破膜しない耐熱性とを備える観点から、ポリエチレン及びポリプロピレンを含む微多孔膜が好ましい。このようなポリオレフィン微多孔膜としては、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンとが1つの層において混在している態様の微多孔膜、及び、2層以上の積層構造を備え、少なくとも1層はポリエチレンを含み、少なくとも1層はポリプロピレンを含む態様の微多孔膜が挙げられる。
ポリオレフィン微多孔膜がポリエチレン及びポリプロピレンを含む微多孔膜である場合、ポリエチレンの含有量及びポリプロピレンの含有量は、シャットダウン機能と上記耐熱性とをバランス良く兼ね備える観点から、ポリオレフィン微多孔膜全体の質量に対して、それぞれ95質量%以上及び5質量%以下であることが好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、10万~500万が好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンのMwが10万以上であると、微多孔膜に十分な力学特性を付与できる。一方、ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンのMwが500万以下であると、微多孔膜のシャットダウン特性がより良好になると共に、微多孔膜をより成形しやすくなる。
ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される値である。
具体的には、試料(ポリオレフィン微多孔膜又はポリオレフィン)をo-ジクロロベンゼン中に加熱溶解させ、試料溶液とする。測定装置としてWaters社製のGPC装置「Alliance GPC 2000型」を用い、カラムとして東ソー(株)製の「TSKgel GMH6-HT」及び「TSKgel GMH6-HTL」を用いる。測定条件は、カラム温度135℃、流速1.0mL/分とし、ポリスチレン換算の分子量を求める。
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、溶融したポリオレフィンをT-ダイから押し出してシート化し、これを結晶化処理した後延伸し、次いで熱処理をして微多孔膜とする方法;流動パラフィン等の可塑剤と一緒に溶融したポリオレフィンをT-ダイから押し出し、これを冷却してシート化し、延伸した後、可塑剤を抽出し、次いで熱処理をして微多孔膜とする方法;などが挙げられる。
繊維状物からなる多孔性シートとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱性樹脂;セルロース;などの繊維状物からなる多孔性シート(例:不織布、紙等)が挙げられる。
複合多孔質シートとしては、例えば、微多孔膜又は繊維状物からなる多孔性シートに、機能層を積層したシートが挙げられる。このような複合多孔質シートは、機能層によって更なる機能が付加される観点から好ましい。
機能層としては、例えば、耐熱性を付与するという観点からは、耐熱性樹脂からなる多孔性の層、耐熱性樹脂及び無機フィラーからなる多孔性の層等が挙げられる。
耐熱性樹脂としては、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、及びポリエーテルイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の耐熱性樹脂が挙げられる。
無機フィラーとしては、アルミナ等の金属酸化物;水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;などが挙げられる。
複合化の手法としては、微多孔膜又は多孔性シートに機能層を塗工する方法、微多孔膜又は多孔性シートと機能層とを接着剤で接合する方法、微多孔膜又は多孔性シートと機能層とを熱圧着する方法等が挙げられる。
多孔質基材には、多孔質基材の性質が損なわれない範囲で、各種の表面処理が施されていてもよい。多孔質基材に表面処理が施されていると、後述する接着性多孔質層を形成するための塗工液との濡れ性が向上し得る。
表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
〔多孔質基材の特性〕
<<厚さ>>
多孔質基材の厚さは、電池のエネルギー密度を高める観点から、25μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下が更に好ましい。また、多孔質基材の厚さは、セパレータの製造歩留り及び電池の製造歩留りの観点から、4μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、6μm以上が更に好ましい。
<<ガーレ値>>
多孔質基材のガーレ値(JIS P8117:2009)は、イオン透過性及び電池の短絡抑制の観点から、50秒/100mL~300秒/100mLが好ましい。
<<空孔率>>
多孔質基材の空孔率は、適切な膜抵抗及びシャットダウン機能を得る観点から、20%~60%が好ましい。多孔質基材の空孔率は、下記の式により求める。
ε={1-Ws/(ds・t)}×100
式中のε、Ws、ds及びtは、以下の通りである。
ε:多孔質基材の空孔率(%)
Ws:多孔質基材の目付(g/m
ds:多孔質基材の真密度(g/cm
t:多孔質基材の厚さ(μm)
<<平均孔径>>
多孔質基材の平均孔径は、イオン透過性及び電池の短絡抑制の観点から、20nm~100nmが好ましく、30nm~90nmがより好ましく、40nm~80nmが更に好ましい。
多孔質基材の平均孔径は、パームポロメーターを用いて、ASTM E1294-89に準拠して測定される値である。パームポロメーターとしては、例えば、PMI社製のCFP-1500-Aを好適に使用できる。
<<突刺強度>>
多孔質基材の突刺強度は、セパレータの製造歩留り及び電池の製造歩留りの観点から、300g以上が好ましい。
多孔質基材の突刺強度は、カトーテック社のKES-G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/秒の条件で突刺試験を行って測定する最大突刺荷重(g)を指す。
〔接着性多孔質層〕
接着性多孔質層は、(i)融点が164℃~200℃である第一のフッ化ビニリデン系樹脂、(ii)アクリル系樹脂及び融点が164℃未満である第二のフッ化ビニリデン系樹脂の少なくとも一方、並びに、(iii)フィラーを含む。
本開示のセパレータにおいて、接着性多孔質層は、多孔質基材の片面又は両面にセパレータの最外層として設けられ、セパレータと電極とを重ねてプレス(圧着)又は熱プレスしたときに電極と接着する層である。接着性多孔質層は、内部に多数の細孔を有し、これら細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となっている層である。
本開示のセパレータにおいて、接着性多孔質層は、多孔質基材の片面のみに設けられていてもよく、多孔質基材の両面に設けられていてもよい。
接着性多孔質層が多孔質基材の両面に設けられていると、電池の両極に対してセパレータの接着性が良好となる。また、セパレータにカールが発生し難く、電池製造時のハンドリング性が良好となる。一方、接着性多孔質層が多孔質基材の片面のみに設けられていると、セパレータのイオン透過性がより向上し得る。また、セパレータ全体の厚さが抑えられるため、エネルギー密度の高い電池の製造が可能となる。
接着性多孔質層は、樹脂として、少なくとも、融点が164℃~200℃である第一のフッ化ビニリデン系樹脂、並びに、アクリル系樹脂及び融点が164℃未満である第二のフッ化ビニリデン系樹脂の少なくとも一方を含む。
接着性多孔質層における上記樹脂の組み合わせの態様としては、第一のフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂との組み合わせ、第一のフッ化ビニリデン系樹脂と第二のフッ化ビニリデン系樹脂との組み合わせ、及び第一のフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂と第二のフッ化ビニリデン系樹脂との組み合わせが挙げられる。
これらの中でも、接着性多孔質層における上記樹脂の組み合わせの態様としては、ドライ接着性とウェット接着性と高温(例えば、150℃以上)に曝された場合でも収縮し難い性質とをバランス良く兼ね備えたセパレータの製造が可能となる観点から、第一のフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂と第二のフッ化ビニリデン系樹脂との組み合わせが、特に好ましい。
<第一のフッ化ビニリデン系樹脂>
第一のフッ化ビニリデン系樹脂は、融点が164℃~200℃である。
第一のフッ化ビニリデン系樹脂の融点が164℃以上であると、高温(例えば、150℃以上)に曝された場合に接着性多孔質層がより収縮し難くなる傾向がある。一方、第一のフッ化ビニリデン系樹脂の融点は、入手容易性の観点から、200℃以下である。
このような観点から、第一のフッ化ビニリデン系樹脂の融点は、167℃~200℃が好ましく、170℃~200℃がより好ましい。
本開示において樹脂の融点は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。樹脂10mgを試料とし、窒素ガス雰囲気下、測定用サンプルを昇温速度5℃/分で30℃から200℃まで昇温した後、降温速度2℃/分で200℃から30℃まで降温し、更に昇温速度2℃/分で30℃から200℃まで昇温した際に得られた吸熱ピークのピークトップを樹脂の融点とする。
なお、セパレータが備える接着性多孔質層に含まれる樹脂の融点は、接着性多孔質層を多孔質基材から剥がし、その剥がした接着性多孔質層15mgを測定用サンプルとし、上記と同様の方法により、DSCを行うことにより確認できる。
第一のフッ化ビニリデン系樹脂は、融点が164℃~200℃であれば、その種類は、特に限定されない。
第一のフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体(所謂、ポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンと他の単量体との共重合体、及びこれらの混合物が挙げられる。
フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリクロロエチレン等が挙げられ、1種類又は2種類以上を用いることができる。
第一のフッ化ビニリデン系樹脂は、電極に対する接着性多孔質層の接着性(ドライ接着性及びウェット接着性)の観点から、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体(VDF-HFP共重合体)が好ましい。本開示においてVDF-HFP共重合体には、VDFとHFPのみを重合した共重合体、及び、VDFとHFPと他の単量体とを重合した共重合体のいずれも含まれる。
VDF-HFP共重合体は、HFP単位の含有量を増減させることによって、共重合体の結晶性、耐熱性、電解液に対する耐溶解性等を適切な範囲に制御できる。
第一のフッ化ビニリデン系樹脂がVDF-HFP共重合体である場合、VDF-HFP共重合体のHFP単位の含有量は、全単量体単位の3質量%~20質量%であることが好ましい。
VDF-HFP共重合体のHFP単位の含有量が、全単量体単位の3質量%以上であると、ドライヒートプレスを行った際のポリマー鎖の運動性が高く、電極表面の凹凸にポリマー鎖が入り込んでアンカー効果を発現するため、電極に対する接着性多孔質層の接着性(ドライ接着性及びウェット接着性)がより向上し得る。また、電解液への膨潤度が高まるため、ウェットヒートプレスによって容易に電極のバインダ樹脂と接着し得る。このような観点から、VDF-HFP共重合体のHFP単位の含有量は、全単量体単位の5質量%以上であることがより好ましく、6質量%以上であることが更に好ましい。
VDF-HFP共重合体のHFP単位の含有量が、全単量体単位の20質量%以下であると、接着性多孔質層が電解液に溶解し難く、過度な膨潤が抑制されるため、電池内部において電極と接着性多孔質層との接着をより良好に保持し得る。このような観点から、VDF-HFP共重合体のHFP単位の含有量は、全単量体単位の18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
第一のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、60万~300万が好ましい。
第一のフッ化ビニリデン系樹脂の融点は、重量平均分子量が高いほど高くなる傾向がある。このような観点から、第一のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、60万以上が好ましく、65万以上がより好ましい。
第一のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量が300万以下であると、接着性多孔質層の形成に用いる塗工液の粘度が高くなり過ぎず、成形性及び結晶形成がより良好となるため、接着性多孔質層の表面性状の均一性がより高まる傾向がある。その結果、電極に対する接着性多孔質層の接着性(ドライ接着性及びウェット接着性)がより向上し得る。このような観点から、第一のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、250万以下がより好ましく、200万以下が更に好ましい。
本開示において接着性多孔質層に含まれる樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される値である。具体的には、測定装置として日本分光(株)製のGPC装置「GPC-900」を用い、カラムとして東ソー(株)製のTSKgel SUPER AWM-Hを2本用い、かつ、溶媒としてジメチルホルムアミドを用いる。測定条件は、カラム温度40℃、流速0.6mL/分とし、ポリスチレン換算の分子量を求める。
接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める第一のフッ化ビニリデン系樹脂の割合は、特に限定されないが、例えば、40質量%~90質量%が好ましい。
接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める第一のフッ化ビニリデン系樹脂の割合が、40質量%以上であると、高温(例えば、150℃以上)に曝された場合に接着性多孔質層がより収縮し難くなる傾向がある。このような観点から、接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める第一のフッ化ビニリデン系樹脂の割合は、40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める第一のフッ化ビニリデン系樹脂の割合が、90質量%以下であると、電極に対する接着性多孔質層の接着性(ドライ接着性及びウェット接着性)がより向上し得る。このような観点から、接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める第一のフッ化ビニリデン系樹脂の割合は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
第一のフッ化ビニリデン系樹脂を製造する方法としては、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。また、市販のフッ化ビニリデン系樹脂を使用することも可能である。
<アクリル系樹脂及び/又は第二のフッ化ビニリデン系樹脂>
(アクリル系樹脂)
本開示においてアクリル系樹脂は、アクリル系単量体単位を有する樹脂を意味し、アクリル系単量体のみを重合した重合体、及び、アクリル系単量体と他の単量体とを重合した共重合体のいずれも含む。
アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアクリル系単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸塩としては、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸亜鉛等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、及び(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
アクリル系樹脂としては、フッ化ビニリデン系樹脂との相溶性が高い観点から、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル(アルキル基の炭素数1~6、好ましくはアルキル基の炭素数1~4)に由来する単量体単位を含むアクリル系樹脂が好ましく、アクリル酸メチル単位及びメタクリル酸メチル単位の少なくとも一方を含むアクリル系樹脂がより好ましく、メタクリル酸メチル単位を含むアクリル系樹脂が更に好ましい。アクリル酸メチル単位及びメタクリル酸メチル単位の少なくとも一方を含むアクリル系樹脂は、接着性多孔質層のガラス転移温度を下げる効果があることからも好ましい。
アクリル系樹脂に含まれるアクリル系単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、20質量%~70質量%が好ましく、25質量%~70質量%がより好ましく、30質量%~70質量%が更に好ましい。
アクリル系樹脂がアクリル酸メチル単位及びメタクリル酸メチル単位の少なくとも一方を含む場合、アクリル酸メチル単位及びメタクリル酸メチル単位の合計含有量は、全単量体単位に対して、20質量%~60質量%が好ましく、25質量%~55質量%がより好ましく、30質量%~50質量%が更に好ましい。
アクリル系樹脂は、スチレン系単量体単位を含むこと、すなわち、アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含むことが好ましい。換言すると、アクリル系樹脂は、アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含むアクリル系共重合体であることが好ましい。アクリル系樹脂は、スチレン系単量体単位を有することで、電解液に対して溶解又は膨潤し難くなる。このため、フッ化ビニリデン系樹脂及びスチレン系単量体単位を有するアクリル系樹脂をバインダ樹脂とする接着性多孔質層は、フッ化ビニリデン系樹脂のみをバインダ樹脂とする接着性多孔質層に比べて、接着性多孔質層と電極及び多孔質基材との接着が、電池内部において(即ち、電解液が含浸した状態において)維持される傾向を示し得る。
スチレン系単量体としては、スチレン(St)、メタクロロスチレン、パラクロロスチレン、パラフルオロスチレン、パラメトキシスチレン、メタ-tert-ブトキシスチレン、パラ-tert-ブトキシスチレン、パラビニル安息香酸、パラメチル-α-メチルスチレン等が挙げられる。
スチレン系単量体としては、スチレン、パラメトキシスチレン、パラメチル-α-メチルスチレンが好ましく、アクリル系樹脂の電解液への溶解を抑制する観点から、スチレンが特に好ましい。
アクリル系樹脂がスチレン系単量体単位(好ましくはスチレン単位;以下、同じ。)を含む場合、スチレン系単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、25質量%~75質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましく、35質量%~65質量%が更に好ましい。
アクリル系樹脂の一形態として、アクリル系単量体単位と、不飽和カルボン酸無水物に由来する単量体単位とを含む共重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の別の一形態として、アクリル系単量体単位と、スチレン系単量体単位と、不飽和カルボン酸無水物に由来する単量体単位とを含む共重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂を構成する単量体である不飽和カルボン酸無水物としては、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、4-メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物、トリメリット酸無水物等が挙げられる。
アクリル系樹脂が不飽和カルボン酸無水物単位を含むと、接着性多孔質層と電極との接着性がより向上し得る。理由としては、不飽和カルボン酸無水物単位の分極の強さが電極の構成成分と分子間相互作用を生み出す、又は、不飽和カルボン酸無水物に由来する残存カルボキシ基が電極中の樹脂成分のアミノ末端と反応するためと推測される。
アクリル系樹脂が不飽和カルボン酸無水物単位を含む場合、不飽和カルボン酸無水物単位の含有量は、接着性多孔質層と電極との接着性を向上させる観点から、全単量体単位に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。
アクリル系樹脂が不飽和カルボン酸無水物単位を含む場合、不飽和カルボン酸無水物単位の含有量は、アクリル系樹脂のガラス転移温度を150℃以下に抑え、ドライヒートプレスによる電極との接着を可能にする観点から、全単量体単位に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-20℃~150℃が好ましい。
アクリル系樹脂のガラス転移温度が-20℃以上であると、接着性多孔質層がブロッキングを引き起こし難い傾向がある。
アクリル系樹脂のガラス転移温度が低いほど、ヒートプレスによってアクリル系樹脂の流動性が高まるため、電極表面の凹凸にポリマー鎖が入り込んでアンカー効果を発現し、電極に対する接着性多孔質層の接着性(ドライ接着性及びウェット接着性)が向上し得る。このような観点から、アクリル系樹脂のガラス転移温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。
アクリル系樹脂のガラス転移温度は、FOX式を指針にして、アクリル系単量体、スチレン系単量体、不飽和カルボン酸無水物等の共重合比を変更することにより制御できる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万~50万が好ましい。
アクリル系樹脂の重量平均分子量が1万以上であると、電極に対する接着性多孔質層の接着性(ドライ接着性及びウェット接着性)がより向上し得る。このような観点から、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、1万以上が好ましく、3万以上がより好ましく、5万以上が更に好ましい。
アクリル系樹脂の重量平均分子量が50万以下であると、ドライヒートプレスの際に接着性多孔質層の流動性がより高まりやすい傾向がある。このような観点から、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、50万以下が好ましく、30万以下がより好ましく、20万以下が更に好ましい。
(第二のフッ化ビニリデン系樹脂)
第二のフッ化ビニリデン系樹脂は、融点が164℃未満である。
第二のフッ化ビニリデン系樹脂の融点が164℃未満であると、電極とのドライ接着及びウェット接着に優れるセパレータを実現できる傾向がある。このような観点から、第二のフッ化ビニリデン系樹脂の融点は、164℃未満であり、160℃以下が好ましく、156℃以下がより好ましい。
第二のフッ化ビニリデン系樹脂の融点の下限は、特に限定されないが、例えば、120℃以上が好ましい。
第一のフッ化ビニリデン系樹脂の融点と、第二のフッ化ビニリデン系樹脂の融点との温度差は、10℃~40℃が好ましく、15℃~25℃がより好ましい。
第一のフッ化ビニリデン系樹脂の融点と、第二のフッ化ビニリデン系樹脂の融点との温度差が上記範囲内であると、ドライ接着性とウェット接着性と高温(例えば、150℃以上)に曝された場合でも収縮し難い性質とをバランス良く兼ね備えたセパレータの製造が可能となる。
第二のフッ化ビニリデン系樹脂は、融点が164℃未満であれば、その種類は、特に限定されない。第二のフッ化ビニリデン系樹脂の具体例は、第一のフッ化ビニリデン系樹脂の具体例と同様である。
第二のフッ化ビニリデン系樹脂は、電極に対する接着性多孔質層の接着性(ドライ接着性及びウェット接着性)の観点から、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体(VDF-HFP共重合体)が好ましい。第二のフッ化ビニリデン系樹脂におけるVDF-HFP共重合体のHFP単位の含有量の好ましい態様及びその理由は、第二のフッ化ビニリデン系樹脂におけるVDF-HFP共重合体のHFP単位の含有量の好ましい態様及びその理由と同様である。
第二のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、60万~200万が好ましい。
第二のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量が60万以上であると、適度な結晶厚みを担保することができるため、融点が極端に低くなり難く、耐熱性をより良好に保持し得る。このような観点から、第二のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、70万以上が好ましく、80万以上がより好ましい。
第二のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量が200万以下であると、接着性多孔質層の形成に用いる塗工液の粘度が高くなり過ぎず、成形性及び結晶形成がより良好となるため、接着性多孔質層の表面性状の均一性がより高まる傾向がある。その結果、電極に対する接着性多孔質層の接着性(ドライ接着性及びウェット接着性)がより向上し得る。
接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占めるアクリル系樹脂及び第二のフッ化ビニリデン系樹脂の合計割合は、10質量%~60質量%であることがより好ましい。
接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める第二のフッ化ビニリデン系樹脂の割合が、10質量%以上であると、電極に対する接着性多孔質層の接着性(ドライ接着性及びウェット接着性)がより向上し得る。このような観点から、接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める第二のフッ化ビニリデン系樹脂の割合は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。
接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める第二のフッ化ビニリデン系樹脂の割合が、60質量%以下であると、高温(例えば、150℃以上)に曝された場合に接着性多孔質層がより収縮し難くなる傾向がある。このような観点から、接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める第二のフッ化ビニリデン系樹脂の割合は、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
第二のフッ化ビニリデン系樹脂を製造する方法としては、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。また、市販のフッ化ビニリデン系樹脂を使用することも可能である。
接着性多孔質層における、アクリル系樹脂及び第二のフッ化ビニリデン系樹脂の合計含有質量に対する第一のフッ化ビニリデン系樹脂の含有質量の比(第一のフッ化ビニリデン系樹脂の含有質量/アクリル系樹脂及び第二のフッ化ビニリデン系樹脂の合計含有質量)は、特に限定されないが、例えば、ドライ接着性とウェット接着性と高温(例えば、150℃以上)に曝された場合でも収縮し難い性質とをバランス良く兼ね備えたセパレータの製造が可能となる観点から、40/60~90/10が好ましく、45/55~85/15がより好ましく、50/50~80/20が更に好ましい。
<アミド結合又はアミドイミド結合を有する耐熱性樹脂>
接着性多孔質層は、アミド結合又はアミドイミド結合を有する耐熱性樹脂(以下、「特定耐熱性樹脂」ともいう。)を更に含むことが好ましい。
接着性多孔質層が特定耐熱性樹脂を含むと、セパレータの透気度が向上し得る。また、接着性多孔質層が特定耐熱性樹脂を含むと、接着性多孔質層の耐熱性が向上し得る。
アミド結合を有する耐熱性樹脂としては、例えば、全芳香族ポリアミド(メタ型全芳香族ポリアミド及びパラ型全芳香族ポリアミド)、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、共重合ポリエーテルアミド等のポリアミド系樹脂が挙げられる。
メタ型全芳香族ポリアミドとしては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド等が挙げられる。
パラ型全芳香族ポリアミドとしては、コポリパラフェニレン・3.4’オキシジフェニレン・テレフタラミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド等が挙げられる。
アミドイミド結合を有する耐熱性樹脂としては、例えば、ポリアミドイミド等のポリアミドイミド系樹脂が挙げられる。
特定耐熱性樹脂は、全芳香族ポリアミドを含むことが好ましく、全芳香族ポリアミドであることがより好ましい。特定耐熱性樹脂が全芳香族ポリアミドを含むと、高温(例えば、150℃以上)に曝された場合に接着性多孔質層がより収縮し難くなる傾向がある。また、セパレータの透気度がより向上し得る。
全芳香族ポリアミドとしては、接着性多孔質層を形成しやすく、かつ、耐酸化還元性に優れる観点から、メタ型全芳香族ポリアミドが好ましく、ポリメタフェニレンイソフタルアミドがより好ましい。
全芳香族ポリアミドは、上市されている市販品を用いてもよい。
市販品の例としては、帝人株式会社製のコーネックス(登録商標;メタ型)、テクノーラ(登録商標;パラ型)、トワロン(登録商標;パラ型)等が挙げられる。
接着性多孔質層が特定耐熱性樹脂を含む場合、特定耐熱性樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
接着性多孔質層が特定耐熱性樹脂を含む場合、接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める特定耐熱性樹脂の割合は、2質量%~30質量%が好ましく、2質量%~25質量%がより好ましく、2質量%~20質量%が更に好ましく、2質量%~15質量%が特に好ましい。
<その他の樹脂>
接着性多孔質層は、発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、上記樹脂以外の樹脂(所謂、その他の樹脂)を含んでいてもよい。
〔フィラー〕
接着性多孔質層は、フィラーを含む。
フィラーは、無機粒子であってもよく、有機粒子であってもよい。
フィラーは、耐熱性の向上、膜抵抗の低減、及び摩擦係数の低減の観点から、無機粒子であることが好ましい。
フィラーの材質は、特に限定されない。
フィラーとしては、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、及び金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
金属酸化物としては、アルミナ、ジルコニア、イットリア、セリア、マグネシア、チタニア、シリカ等が挙げられる。
金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
金属窒化物としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
金属塩としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
接着性多孔質層は、材質の異なる2種以上のフィラーを含んでいてもよい。
フィラーとしては、耐熱性の向上、膜抵抗の低減、及び摩擦係数の低減の観点から、2価金属含有粒子が好ましい。
2価金属含有粒子としては、マグネシウム含有粒子又はバリウム含有粒子が好ましい。
マグネシウム含有粒子としては、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等の粒子が好ましく、水酸化マグネシウムの粒子がより好ましい。
バリウム含有粒子としては、硫酸バリウムの粒子が好ましい。
フィラーの平均一次粒径は、特に限定されないが、例えば、0.01μm~0.30μmであることが好ましい。
フィラーの平均一次粒径が0.01μm以上であると、フィラー同士の凝集が抑制され、より均一性の高い接着性多孔質層を形成し得る。このような観点から、フィラーの平均一次粒径は、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上が更に好ましい。
フィラーの平均一次粒径が0.30μm以下であると、高温(例えば、150℃以上)に曝された場合に接着性多孔質層がより収縮し難くなる傾向がある。このような観点から、フィラーの平均一次粒径は、0.30μm以下が好ましく、0.28μm以下がより好ましく、0.25μm以下が更に好ましい。
接着性多孔質層は、平均一次粒径の異なるフィラーを2種以上含んでいてもよい。
平均一次粒径の異なる2種以上のフィラーの材質は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
接着性多孔質層が平均一次粒径の異なるフィラーを2種以上含む場合、それぞれの平均一次粒径が上記範囲内であることが好ましく、それぞれの平均一次粒径が上記範囲内であり、かつ、全体(即ち、平均一次粒径の異なるフィラーの混合粒子)の平均一次粒径が上記範囲内であることが好ましい。
フィラーの平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察において無作為に選んだフィラー100個の長径を計測し、100個の長径を平均することで求める。
フィラーの一次粒径が小さくフィラーの長径が測定困難な場合及び/又はフィラーの凝集が顕著でありフィラーの長径が測定できない場合は、フィラーのBET比表面積(m/g)を測定し、フィラーを真球と仮定して、下記の式に従い、フィラーの平均一次粒径を算出する。
平均一次粒径(μm)=6÷[比重(g/cm)×BET比表面積(m/g)]
なお、BET比表面積の測定においては、吸着質として不活性ガス(例えば、窒素ガス)を使用し、フィラー表面に液体窒素の沸点温度(-196℃)で吸着させる。試料に吸着する気体量を吸着質の圧力の関数として測定し、吸着量から試料の比表面積を求める。
SEM観察に供する試料は、接着性多孔質層の材料であるフィラー、又は、セパレータから取り出したフィラーである。セパレータからフィラーを取り出す方法に制限はなく、例えば、セパレータを800℃程度に加熱して樹脂を消失させフィラーを取り出す方法;セパレータを有機溶剤に浸漬して有機溶剤で樹脂を溶解させフィラーを取り出す方法;等の方法が挙げられる。
フィラーの粒子形状は、特に限定されず、球状、板状、針状、繊維状、又は不定形のいずれであってもよい。本開示における「球状」には、真球状のみならず、略球状も含まれる。フィラーは、電池の短絡抑制の観点から、板状の粒子、凝集していない一次粒子等が好ましい。
接着性多孔質層に占めるフィラーの割合は、特に限定されないが、例えば、20質量%~90質量%が好ましい。
接着性多孔質層に占めるフィラーの割合が20質量%以上であると、高温(例えば、150℃以上)に曝された場合に接着性多孔質層がより収縮し難くなる傾向がある。このような観点から、接着性多孔質層に占めるフィラーの割合は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。
接着性多孔質層に占めるフィラーの割合が90質量%以下であると、接着性多孔質層が多孔質基材からより剥がれ難くなる傾向がある。このような観点から、接着性多孔質層に占めるフィラーの割合は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
〔その他の成分〕
接着性多孔質層は、必要に応じて、既述の樹脂及びフィラー以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。その他の成分としては、各種添加剤が挙げられる。添加剤としては、界面活性剤等の分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などが挙げられる。
分散剤は、接着性多孔質層を形成するための塗工液に、分散性、塗工性又は保存安定性を向上させる目的で添加される。湿潤剤、消泡剤及びpH調整剤は、それぞれ多孔質基材とのなじみをよくする目的、塗工液へのエア噛み込みを抑制する目的、及びpH調整の目的で、接着性多孔質層を形成するための塗工液に添加される。
〔接着性多孔質層の特性〕
<<厚さ>>
接着性多孔質層の厚さは、電極との接着性の観点から、片面0.5μm以上が好ましく、片面1.0μm以上がより好ましい。また、接着性多孔質層の厚さは、電池のエネルギー密度の観点から、片面8.0μm以下が好ましく、片面6.0μm以下であることがより好ましい。
多孔質基材の両面に接着性多孔質層が設けられている場合、接着性多孔質層の厚さは、両面の合計として、1.0μm以上が好ましく、2.0μm以上がより好ましい。また、接着性多孔質層の厚さは、両面の合計として、10.0μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましい。
多孔質基材の両面に接着性多孔質層が設けられている場合、一方の面における接着性多孔質層の厚さと、他方の面における接着性多孔質層の厚さとの差は、小さいことが好ましく、例えば、両面合計の厚さの20%以下であることが好ましい。
<<単位面積当たりの質量>>
単位面積当たりの接着性多孔質層の質量は、電極との接着性の観点から、片面1.0g/m以上が好ましく、片面2.0g/m以上がより好ましい。また、単位面積当たりの接着性多孔質層の質量は、イオン透過性の観点から、片面8.0g/m以下が好ましく、片面7.0g/m以下がより好ましい。
多孔質基材の両面に接着性多孔質層が設けられている場合、接着性多孔質層の質量に係る一方の面と他方の面との差は、セパレータのカールを抑制する観点から、両面合計に対して20質量%以下であることが好ましい。
<<空孔率>>
接着性多孔質層の空孔率は、イオン透過性の観点から、30%以上であることが好ましい。また、接着性多孔質層の空孔率は、接着性多孔質層の力学的強度の観点から、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることが更に好ましい。
接着性多孔質層の空孔率ε(%)は、下記の式により求める。
ε={1-(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
式中、接着性多孔質層の構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm)であり、接着性多孔質層の厚さがt(cm)である。
<<平均孔径>>
接着性多孔質層の平均孔径は、イオン透過性の観点から、10nm以上であることが好ましい。また、接着性多孔質層の平均孔径は、電極との接着性の観点から、200nm以下であることが好ましい。
接着性多孔質層の平均孔径(nm)は、全ての孔が円柱状であると仮定し、下記の式により求める。
d=4V/S
式中、dは接着性多孔質層の平均孔径(直径)、Vは接着性多孔質層1m当たりの空孔体積、及びSは接着性多孔質層1m当たりの空孔表面積を表す。
接着性多孔質層1m当たりの空孔体積Vは、接着性多孔質層の空孔率から算出する。
接着性多孔質層1m当たりの空孔表面積Sは、以下の方法で求める。
まず、接着性多孔質基材の比表面積(m/g)とセパレータの比表面積(m/g)とを、窒素ガス吸着法にBET式を適用することにより、窒素ガス吸着量から算出する。これらの比表面積(m/g)にそれぞれの目付(g/m)を乗算して、それぞれの1m当たりの空孔表面積を算出する。そして、多孔質基材1m当たりの空孔表面積をセパレータ1m当たりの空孔表面積から減算して、接着性多孔質層1m当たりの空孔表面積Sを算出する。
[セパレータの特性]
<<厚さ>>
本開示のセパレータの厚さは、セパレータの機械的強度の観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、本開示のセパレータの厚さは、電池のエネルギー密度の観点から、35μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましい。
セパレータの厚さは、接触式の厚み計(LITEMATIC、(株)ミツトヨ製)を用い、直径5mmの円柱状の測定端子にて測定される値である。測定中は、7gの荷重が印加されるように調整し、10cm×10cm内の任意の20点を測定して、その平均値を算出する。
<<突刺強度>>
本開示のセパレータの突刺強度は、セパレータの機械的強度及び電池の耐短絡性の観点から、250g~1000gであることが好ましく、300g~600gであることがより好ましい。
セパレータの突刺強度の測定方法は、多孔質基材の突刺強度の測定方法と同様である。
<<空孔率>>
本開示のセパレータの空孔率は、電極に対する接着性、セパレータのハンドリング性、イオン透過性、及び機械的強度の観点から、30%~65%であることが好ましく、30%~60%であることがより好ましい。
セパレータの空孔率ε(%)は、下記の式により求める。
ε={1-(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
式中、セパレータの構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm)であり、セパレータの厚さがt(cm)である。
<<ガーレ値>>
本開示のセパレータのガーレ値(JIS P8117:2009)は、機械的強度と電池の負荷特性の観点から、100秒/100mL~300秒/100mLであることがより好ましい。
<<熱収縮率>>
本開示のセパレータは、150℃で1時間熱処理したときのMD方向の収縮率が、18%以下であることが好ましく、16%以下であることがより好ましく、14%以下であることが更に好ましく、12%以下であることが特に好ましい。
本開示のセパレータは、150℃で1時間熱処理したときのTD方向の収縮率が、19%以下であることが好ましく、17%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましく、13%以下であることが特に好ましい。
セパレータを150℃で1時間熱処理したときのMD方向の収縮率及びTD方向の収縮率は、以下の測定方法によって求める。
セパレータをTD方向60mm×MD方向180mmの長方形に切り出し、試験片とする。次いで、試験片のTD方向を2等分する線上で、かつ、一方の端から20mm及び170mmの箇所に印を付ける(それぞれ点A、点Bという)。また、MD方向を2等分する線上で、かつ、一方の端から10mm及び50mmの箇所に印を付ける(それぞれ点C、点Dという)。次いで、印を付けた試験片にクリップをつける。なお、クリップは、試験片における点Aから最も近い端と点Aとの間につける。次いで、クリップをつけた試験片を、庫内の温度を150℃に調整したオーブンの中につるし、無張力の状態で30分間熱処理を施す。AB間及びCD間の長さを熱処理の前後で測定し、下記の式により、MD方向及びTD方向の熱収縮率(%)をそれぞれ求める。
MD方向の熱収縮率={(熱処理前のABの長さ-熱処理後のABの長さ)/熱処理前のABの長さ}×100
TD方向の熱収縮率={(熱処理前のCDの長さ-熱処理後のCDの長さ)/熱処理前のCDの長さ}×100
本開示のセパレータは、多孔質基材及び接着性多孔質層以外の層(所謂、他の層)を更に備えていてもよい。他の層としては、例えば、セパレータの耐熱性の向上を主たる目的に設けられる耐熱層が挙げられる。
[セパレータの製造方法]
本開示のセパレータは、例えば、多孔質基材上に接着性多孔質層を湿式塗工法又は乾式塗工法で形成することにより製造できる。本開示において、湿式塗工法とは、塗工層を凝固液中で固化させる方法であり、乾式塗工法とは、塗工層を乾燥させて固化させる方法である。
以下に、湿式塗工法の実施形態例を説明する。以下の実施形態例の説明においては、第一のフッ化ビニリデン系樹脂、第二のフッ化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂、特定耐熱性樹脂等の樹脂を「バインダ樹脂」と総称して説明する。
湿式塗工法は、例えば、バインダ樹脂及びフィラーが溶媒に溶解又は分散した塗工液を調製する工程、調製した塗工液を多孔質基材上に塗工し、多孔質基材の片面又は両面に塗工層を形成する工程、並びに、塗工層を形成した多孔質基材を凝固液に浸漬し、塗工層を固化させる工程を含む方法である。
接着性多孔質層形成用の塗工液は、バインダ樹脂及びフィラーを溶媒に溶解又は分散させて作製する。塗工液には、必要に応じて、バインダ樹脂及びフィラー以外の成分(即ち、他の成分)を溶解又は分散させてもよい。
塗工液の調製に用いる溶媒は、バインダ樹脂を溶解する溶媒(以下、「良溶媒」ともいう。)を含む。良溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の極性アミド溶媒が挙げられる。
塗工液の調製に用いる溶媒は、良好な多孔構造を有する接着性多孔質層を形成する観点から、相分離を誘発させる相分離剤を含むことが好ましい。したがって、塗工液の調製に用いる溶媒は、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であることが好ましい。相分離剤は、塗工に適切な粘度が確保できる範囲の量で良溶媒と混合することが好ましい。
相分離剤としては、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる
塗工液の調製に用いる溶媒としては、良好な多孔構造を形成する観点から、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であって、良溶媒を60質量%以上含み、相分離剤を5質量%~40質量%含む混合溶媒が好ましい。
塗工液のバインダ樹脂濃度は、良好な多孔構造を形成する観点から、1質量%~20質量%であることが好ましい。塗工液のフィラー濃度は、良好な多孔構造を形成する観点から、2質量%~50質量%であることが好ましい。
塗工液は、界面活性剤等の分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、非水系二次電池の使用範囲において電気化学的に安定で電池内反応を阻害しないものであれば、接着性多孔質層に残存するものであってもよい。
多孔質基材への塗工液の塗工手段としては、マイヤーバー、ダイコーター、リバースロールコーター、ロールコーター、グラビアコーター等が挙げられる。
接着性多孔質層を多孔質基材の両面に形成する場合、塗工液を両面同時に多孔質基材へ塗工することが生産性の観点から好ましい。
塗工層の固化は、塗工層を形成した多孔質基材を凝固液に浸漬し、塗工層において相分離を誘発しつつバインダ樹脂を固化させることで行われる。これにより、多孔質基材と接着性多孔質層とからなる積層体が得られる。
凝固液は、塗工液の調製に用いた良溶媒及び相分離剤と、水とを含むことが一般的である。良溶媒と相分離剤の混合比は、塗工液の調製に用いた混合溶媒の混合比に合わせるのが生産上好ましい。凝固液中の水の含有量は、多孔構造の形成及び生産性の観点から、40質量%~90質量%であることが好ましい。凝固液の温度は、例えば、20℃~50℃である。
凝固液中で塗工層を固化させた後、積層体を凝固液から引き揚げる。凝固液から引き揚げた積層体は、水洗することが好ましい。水洗することによって、積層体から凝固液を除去する。水洗は、例えば、水浴中積層体を搬送させることによって行う。
水洗後の積層体は、乾燥させることによって、水分を除去する。乾燥は、例えば、高温環境中積層体を搬送させること、積層体に風をあてること、積層体をヒートロールに接触させること等によって行う。乾燥温度は、40℃~80℃であることが好ましい。
本開示のセパレータは、乾式塗工法でも製造し得る。乾式塗工法は、塗工液を多孔質基材に塗工し、塗工層を乾燥させて溶媒を揮発除去することにより、接着性多孔質層を多孔質基材上に形成する方法である。ただし、乾式塗工法は、湿式塗工法に比べて接着性多孔質層が緻密になりやすいため、良好な多孔構造を得る観点からは、湿式塗工法の方が好ましい。
本開示のセパレータは、接着性多孔質層を独立したシートとして作製し、この接着性多孔質層を多孔質基材に重ねて、熱圧着又は接着剤によって複合化する方法によっても製造し得る。接着性多孔質層を独立したシートとして作製する方法としては、上述した湿式塗工法又は乾式塗工法を適用して、剥離シート上に接着性多孔質層を形成する方法が挙げられる。
[非水系二次電池]
本開示の非水系二次電池は、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であり、正極と、負極と、正極及び負極の間に配置された本開示の非水系二次電池用セパレータとを備える。
「ドープ」とは、吸蔵、担持、吸着、又は挿入を意味し、正極等の電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。
本開示の非水系二次電池は、例えば、負極と正極とがセパレータを介して対向した電池素子が、電解液と共に外装材内に封入された構造を有する。本開示の非水系二次電池は、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池に好適である。
本開示の非水系二次電池は、本開示のセパレータが電極とのドライ接着性に優れるため、製造歩留まりが向上し得る。また、電池のサイクル特性(容量維持率)が向上し得る。
本開示の非水系二次電池は、本開示のセパレータが、電極とのウェット接着性に優れ、かつ、高温(例えば、150℃以上)に曝された場合でも収縮し難いため、高温下での使用する場合の安全性が向上し得る。
以下、本開示の非水系二次電池が備える正極、負極、電解液及び外装材の形態例を説明する。
正極の実施形態例としては、正極活物質及びバインダ樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造が挙げられる。活物質層は、更に導電助剤を含んでいてもよい。
正極活物質としては、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。
リチウム含有遷移金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn1/2Ni1/2、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3、LiMn、LiFePO、LiCo1/2Ni1/2、LiAl1/4Ni3/4等の化合物が挙げられる。
バインダ樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体等の樹脂が挙げられる。
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末等の炭素材料が挙げられる。
集電体としては、例えば、厚さが5μm~20μmの、アルミ箔、チタン箔、ステンレス箔等の金属箔が挙げられる。
負極の実施形態例としては、負極活物質及びバインダ樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造が挙げられる。活物質層は、更に導電助剤を含んでもよい。
負極活物質としては、リチウムを電気化学的に吸蔵し得る材料が挙げられる。このような材料としては、具体的には、炭素材料;ケイ素、スズ、アルミニウム等とリチウムとの合金;ウッド合金;などが挙げられる。
バインダ樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体等が挙げられる。
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末等の炭素材料が挙げられる。
集電体としては、例えば、厚さが5μm~20μmの、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔等の金属箔が挙げられる。また、上記の負極に代えて、金属リチウム箔を負極として用いてもよい。
電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した溶液である。
リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO等が挙げられる。
リチウム塩は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、これらのフッ素置換体等の鎖状カーボネート;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル;などが挙げられる。
非水系溶媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
電解液としては、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを質量比(環状カーボネート:鎖状カーボネート)20:80~40:60で混合し、リチウム塩を0.5mol/L~1.5mol/Lの範囲にて溶解した溶液が好適である。
外装材としては、金属缶、アルミラミネートフィルム製パック等が挙げられる。
電池の形状には、例えば、角型、円筒型、コイン型等の形状があるが、本開示のセパレータは、いずれの形状にも好適である。
[非水系二次電池の製造方法]
本開示の非水系二次電池の製造方法としては、例えば、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置した積層体を製造する積層工程と、積層体にドライヒートプレスを行って正極及び負極の少なくとも一方とセパレータとを接着させるドライ接着工程と、ドライ接着工程を経た積層体を電解液と共に外装材の内部に封止する封止工程と、を含む第1の製造方法が挙げられる。
また、本開示の非水系二次電池の製造方法としては、例えば、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置した積層体を製造する積層工程と、積層体を電解液と共に外装材の内部に封止する封止工程と、封止工程を経た積層体に外装材の上からウェットヒートプレスを行って正極及び負極の少なくとも一方とセパレータとを接着させるウェット接着工程と、を含む第2の製造方法が挙げられる。
(第1の製造方法)
積層工程は、例えば、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置し、長さ方向に巻き回して巻回体を製造する工程、又は、正極、セパレータ、負極をこの順に少なくとも1層ずつ積層する工程である。
ドライ接着工程は、積層体を外装材(例えば、アルミラミネートフィルム製パック)に収容する前に行ってもよく、積層体を外装材に収容した後に行ってもよい。つまり、ドライヒートプレスによって電極とセパレータとが接着した積層体を外装材に収容してもよく、積層体を外装材に収容した後に外装材の上からドライヒートプレスを行って電極とセパレータとを接着させてもよい。
ドライ接着工程におけるプレス温度は、50℃~120℃であることが好ましく、60℃~110℃であることがより好ましく、70℃~100℃であることが更に好ましい。
ドライ接着工程におけるプレス温度が、上記範囲内であると、電極とセパレータとの接着が良好であり、また、セパレータが幅方向に適度に膨張し得るので、電池の短絡が起こり難くなる傾向がある。
ドライ接着工程におけるプレス圧は、電極1cm当たりの荷重として0.5kg~40kgであることが好ましい。
ドライ接着工程におけるプレス時間は、プレス温度及びプレス圧に応じて調節することが好ましく、例えば、0.1分間~60分間の範囲で調節する。
積層工程の後、ドライ接着工程の前に、積層体に常温プレス(常温下での加圧)を施して、積層体を仮接着してもよい。
封止工程は、例えば、積層体が収容されている外装材に電解液を注入した後、外装材の開口部を封止する工程である。外装材の開口部の封止は、例えば、外装材の開口部を接着剤で接着すること、又は、外装材の開口部を加熱加圧して熱圧着することによって行われる。外装材の開口部の封止前に、外装体の内部を真空状態にすることが好ましい。
封止工程においては、外装材の開口部を加熱加圧して熱圧着すると同時に、外装材の上から積層体を熱プレス処理することが好ましい。積層体と電解液とが共存する状態で熱プレス処理(所謂、ウェットヒートプレス)が行われることにより、電極とセパレータとの接着がより強固になる。
封止工程において行われるウェットヒートプレスのプレス温度は、60℃~110℃であることが好ましく、プレス圧は、0.5MPa~2MPaであることが好ましい。
プレス時間は、プレス温度及びプレス圧に応じて調節することが好ましく、例えば、0.5分間~60分間の範囲で調節する。
(第2の製造方法)
積層工程は、第1の製造方法における積層工程と同様に、例えば、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置し、長さ方向に巻き回して巻回体を製造する工程、又は、正極、セパレータ、負極をこの順に少なくとも1層ずつ積層する工程である。
封止工程は、例えば、積層体が収容されている外装材(例えば、アルミラミネートフィルム製パック)に電解液を注入した後、外装材の開口部を封止する工程である。外装材の開口部の封止は、例えば、外装材の開口部を接着剤で接着すること、又は、外装材の開口部を加熱加圧して熱圧着することによって行われる。外装材の開口部の封止前に、外装体の内部を真空状態にすることが好ましい。
ウェット接着工程は、外装材に電解液と共に収容されている積層体に、外装材の上から熱プレス処理(所謂、ウェットヒートプレス)を行って電極とセパレータとを接着させる工程である。
ウェット接着工程におけるプレス温度は、60℃~110℃であることが好ましく、70℃~100℃であることがより好ましく、70℃~90℃であることが更に好ましい。
ウェット接着工程におけるプレス温度が、上記範囲内であると、電解液の分解を抑制できると共に、電極とセパレータとの接着が良好であり、また、セパレータが幅方向に適度に膨張し得るので、電池の短絡が起こり難くなる傾向がある。
ウェット接着工程におけるプレス圧は、電極1cm当たりの荷重として0.5kg~20kgであることが好ましい。
ウェット接着工程におけるプレス時間は、プレス温度及びプレス圧に応じて調節することが好ましく、例えば、0.1分間~60分間の範囲で調節する。
以下に実施例を挙げて、本開示のセパレータ及び非水系二次電池を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示のセパレータ及び非水系二次電池の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
[測定方法及び評価方法]
実施例及び比較例で適用した測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
〔樹脂の融点〕
樹脂の融点は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求めた。測定装置には、TA Instruments社製の示差走査熱量計(Q20 Differential Scanning Calorimeter)を用い、樹脂10mgを試料とした。窒素ガス雰囲気下、測定用サンプルを昇温速度5℃/分で30℃から200℃まで昇温した後、降温速度2℃/分で200℃から30℃まで降温し、更に昇温速度2℃/分で30℃から200℃まで昇温した際に得られた吸熱ピークのピークトップを樹脂の融点とした。
〔樹脂のガラス転移温度〕
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求めた。測定装置には、TA Instruments社製の示差走査熱量計(Q20 Differential Scanning Calorimeter)を用い、樹脂10mgを試料とした。低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、階段状変化部分の曲線の接線であって勾配が最大の接線とが交わる点の温度を樹脂のガラス転移温度とした。
〔樹脂の重量平均分子量〕
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)により測定した。GPCによる分子量測定は、測定装置として日本分光(株)製のGPC装置GPC-900を用い、カラムとして東ソー(株)製のTSKgel SUPER AWM-Hを2本用い、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミドを使用した。測定条件は、カラム温度40℃、流速10mL/分とし、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
〔フィラーの平均一次粒径〕
多孔質層を形成するための塗工液に添加する前のフィラーを試料とした。
フィラーの平均一次粒径は、比重(g/cm)とBET比表面積(m/g)とをそれぞれ測定し、フィラーを真球と仮定して、下記の式に従い求めた。BET比表面積の測定装置には、Micromeritics社製のASAP2020を用いた。測定は、具体的には、以下の手順に従い行った。吸着質として不活性ガスを使用し、フィラー表面に液体窒素の沸点温度(-196℃)で吸着させた。次いで、資料に吸着する気体量を吸着質の圧力の関数として測定し、吸着量から試料のBET比表面積を求めた。
平均一次粒径(μm)=6÷[比重(g/cm)×BET比表面積(m/g)]
〔多孔質基材及びセパレータの厚さ〕
多孔質基材及びセパレータの厚さ(μm)は、接触式の厚み計〔LITEMATIC VL-50、(株)ミツトヨ製〕を用いて測定した。
測定端子として直径5mmの円柱状の端子を用い、測定中に7gの荷重が印加されるように調整した。10cm×10cm内の任意の20点の厚さを測定し、それらの平均値を求めた。
〔接着性多孔質層の厚さ〕
接着性多孔質層の厚さ(μm)は、セパレータの厚さ(μm)から多孔質基材の厚さ(μm)を減算して両面合計の厚さを求め、この半分を片面の厚さとした。
〔多孔質基材の空孔率〕
多孔質基材の空孔率ε(%)は、下記の式により求めた。
ε={1-Ws/(ds・t)}×100
式中、Wsは、多孔質基材の目付(g/m)を示し、dsは、多孔質基材の真密度(g/cm)を示し、tは、多孔質基材の厚さ(μm)を示す。なお、多孔質基材の目付は、10cm×10cmに切り出した多孔質基材の質量を測定し、質量を面積で除することにより求めた。
〔接着性多孔質層の空孔率〕
接着性多孔質層の空孔率ε(%)は、下記の式により求めた。
ε={1-(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
式中、接着性多孔質層の構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm)であり、接着性多孔質層の厚さがt(cm)である。
〔多孔質基材及びセパレータのガーレ値〕
多孔質基材及びセパレータのガーレ値(秒/100mL)は、JIS P8117:2009に準拠した方法により測定した。測定装置には、ガーレ式デンソメータ〔G-B2C、東洋精機(株)製〕を用いた。
〔多孔質基材と接着性多孔質層との間の剥離強度〕
セパレータに対し、T字剥離試験を行った。具体的には、以下の操作を行った。
セパレータの一方の表面に、粘着テープ(12mm幅、3M製)を貼り、セパレータを粘着テープごと、TD方向12mm×MD方向70mmの長方形に切り出した。なお、粘着テープをセパレータの表面に貼る際には、粘着テープの長さ方向をセパレータのMD方向に一致させた。粘着テープを直下の接着性多孔質層と共に少し剥がし、2つに分離した端部をテンシロン(RTC-1210A、オリエンテック社製)に把持させてT字剥離試験を行った。なお、粘着テープは、接着性多孔質層を多孔質基材から剥がすための支持体として用いたものである。T字剥離試験の引張速度は20mm/分とし、測定開始後10mmから40mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出した後、幅10mmあたりの荷重(N/10mm)に換算し、さらに試験片3枚の荷重(N/10mm)を平均して、多孔質基材と接着性多孔質層との間の剥離強度(N/10mm)とした。
〔正極との接着強度:ドライヒートプレス〕
正極活物質であるコバルト酸リチウム粉末89.5g、導電助剤であるアセチレンブラック4.5g、及びバインダであるポリフッ化ビニリデン6gを、ポリフッ化ビニリデンの濃度が6質量%となるようにN-メチルピロリドンに溶解又は分散し、双腕式混合機にて撹拌し、正極用スラリーを作製した。この正極用スラリーを厚さ20μmのアルミ箔の片面に塗布し、乾燥後プレスして、正極活物質層を有する正極を得た。
上記で得た正極を幅15mm、長さ70mmに切り出し、セパレータをTD方向18mm×MD方向75mmの長方形に切り出した。正極とセパレータとを重ね、温度80℃、圧力5.0MPa、時間3分の条件で熱プレスして、正極とセパレータとを接着させ、これを試験片とした。試験片の長さ方向(即ち、セパレータのMD方向)の一端において正極からセパレータを少し剥がし、2つに分離した端部をテンシロン(RTC-1210A、オリエンテック社製)に把持させてT字剥離試験を行った。T字剥離試験の引張速度は20mm/分とし、測定開始後10mmから40mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出した後、さらに試験片3枚の測定値を平均して、ドライヒートプレスしたときのセパレータと正極との接着強度(N/15mm)とした。
〔負極との接着強度:ドライヒートプレス〕
負極活物質である人造黒鉛300g、バインダであるスチレン-ブタジエン共重合体の変性体を40質量%含有する水溶性分散液7.5g、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース3g、及び適量の水を双腕式混合機にて撹拌して混合し、負極用スラリーを作製した。この負極用スラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥後プレスして、負極活物質層を有する負極を得た。
上記で得た負極を用いて、上記〔正極との接着強度:ドライヒートプレス〕における方法と同様にしてT字剥離試験を行い、ドライヒートプレスしたときのセパレータと負極との接着強度(N/15mm)を求めた。
〔正極との接着強度:ウェットヒートプレス〕
上記で得た正極を幅15mm、長さ70mmに切り出し、セパレータをTD方向18mm×MD方向75mmの長方形に切り出した。正極とセパレータとを重ね、外装材の中に入れてから電解液(1mol/LのLiBF-エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:プロピレンカーボネート[質量比1:1:1])を注入し、真空脱泡を5回繰り返した。次いで、余分な電解液を除去し、外装材を封止後、24時間放置した。外装材を温度85℃、圧力1.0MPa、時間120秒の条件で熱プレスして、外装材の中の正極とセパレータとを接着させた。外装材から正極とセパレータとの積層体を取り出し、これを試験片とした。試験片の長さ方向(即ち、セパレータのMD方向)の一端において正極からセパレータを少し剥がし、2つに分離した端部をテンシロン(RTC-1210A、オリエンテック社製)に把持させてT字剥離試験を行った。T字剥離試験の引張速度は20mm/分とし、測定開始後10mmから40mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出した後、さらに試験片3枚の測定値を平均して、ウェットヒートプレスしたときのセパレータと正極との接着強度(N/15mm)とした。
〔負極との接着強度:ウェットヒートプレス〕
上記で得た負極を用いて、上記〔正極との接着強度:ウェットヒートプレス〕における方法と同様にしてT字剥離試験を行い、ウェットヒートプレスしたときのセパレータと負極との接着強度(N/15mm)を求めた。
〔熱収縮率〕
セパレータをTD方向60mm×MD方向180mmの長方形に切り出し、試験片とした。次いで、試験片のTD方向を2等分する線上で、かつ、一方の端から20mm及び170mmの箇所に印を付けた(それぞれ点A、点Bという)。また、MD方向を2等分する線上で、かつ、一方の端から10mm及び50mmの箇所に印を付けた(それぞれ点C、点Dという)。次いで、印を付けた試験片にクリップをつけた。なお、クリップは、試験片における点Aから最も近い端と点Aとの間につけた。次いで、クリップをつけた試験片を、庫内の温度を150℃に調整したオーブンの中につるし、無張力の状態で30分間熱処理を施した。AB間及びCD間の長さを熱処理の前後で測定し、下記の式により、MD方向及びTD方向の熱収縮率(%)をそれぞれ求め、さらに試験片3枚の熱収縮率(%)をそれぞれ平均した。
MD方向の熱収縮率={(熱処理前のABの長さ-熱処理後のABの長さ)/熱処理前のABの長さ}×100
TD方向の熱収縮率={(熱処理前のCDの長さ-熱処理後のCDの長さ)/熱処理前のCDの長さ}×100
〔サイクル特性(容量維持率)〕
上記で得た正極及び負極にリードタブを溶接し、正極、セパレータ、負極の順に積層した。この積層体をアルミラミネートフィルム製のパック中に挿入し、真空シーラーを用いてパック内を真空状態にして仮封止し、パックごと積層体の積層方向に熱プレス機を用いて熱プレスを行い、これにより、電極とセパレータとの接着を行った。熱プレスの条件は、温度90℃、電極1cm当たり20kgの荷重、プレス時間2分間とした。次いで、パック内に電解液(1mol/L LiPF-エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート[質量比3:7])を注入し、積層体に電解液をしみ込ませた後、真空シーラーを用いてパック内を真空状態にして封止し、試験用二次電池を得た。
温度40℃の環境下、上記で得た試験用二次電池に500サイクルの充放電を行った。充電は1C且つ4.2Vの定電流定電圧充電とし、放電は1C且つ2.75Vカットオフの定電流放電とした。500サイクル目の放電容量を初回の放電容量で除し、電池10個の平均を算出し、得られた値(%)を容量維持率とした。
〔負荷特性〕
上記〔サイクル特性(容量維持率)〕における電池の製造方法と同様にして、試験用二次電池を得た。温度15℃の環境下、電池に充放電を行い、0.2Cで放電した際の放電容量と、2Cで放電した際の放電容量とを測定し、後者を前者で除し、電池10個の平均を算出し、得られた値(%)を負荷特性とした。充電は0.2C且つ4.2Vの定電流定電圧充電8時間行い、放電は2.75Vカットオフの定電流放電とした。
<セパレータの作製>
(実施例1)
ジメチルアセトアミド(DMAc)に、第一のフッ化ビニリデン系樹脂(フッ化ビニリデンの単独重合体、融点172℃、重量平均分子量157万)と、アクリル系樹脂〔メタクリル酸メチル(MMA)/アクリル酸n-ブチル(n-BA)/スチレン(St)共重合体、重合比[質量比]40:20:40、重量平均分子量14.4万、ガラス転移温度64℃〕とを溶解させ、さらに硫酸バリウム粒子(平均一次粒径0.05μm;フィラー)を分散させて、接着性多孔質層形成用の塗工液を調製した。調製に際しては、塗工液に含まれる第一のフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂との質量比(第一のフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂)を65:35とし、樹脂濃度を4.0質量%とした。また、塗工液に含まれるフィラーの量を、最終的に形成される接着性多孔質層に占める割合が75質量%となるようにした。
塗工液を、多孔質基材であるポリエチレン微多孔膜(膜厚6.0μm、ガーレ値145秒/100mL、空孔率35%)の両面に塗工し、塗工層を形成した。塗工に際しては、表裏の塗工量が等量になるようにした。次いで、塗工層を形成したポリエチレン微多孔膜を凝固液(水:DMAc=50:50[質量比]、液温25℃)に浸漬し、塗工層を固化させた後、凝固液から取り出して水洗し、乾燥させた。以上のようにして、多孔質基材の両面に接着性多孔質層が設けられたセパレータを作製した。
(実施例2)
実施例1において、第一のフッ化ビニリデン系樹脂を別の第一のフッ化ビニリデン系樹脂(VDF-HFP共重合体、HFP単位含有量4質量%、融点164℃、重量平均分子量67万)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(実施例3)
実施例1において、第一のフッ化ビニリデン系樹脂を別の第一のフッ化ビニリデン系樹脂(VDF-HFP共重合体、HFP単位含有量5質量%、融点164℃、重量平均分子量180万)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(実施例4)
実施例1において、塗工液に含まれる第一のフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂との質量比(第一のフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂)を40:60に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(実施例5)
実施例1において、塗工液に含まれるフィラーの量を、最終的に形成される接着性多孔質層に占める割合が40質量%となるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(実施例6)
実施例1において、アクリル系樹脂の代わりに、第二のフッ化ビニリデン系樹脂(VDF-HFP共重合体、HFP単位含有量5質量%、融点152℃、重量平均分子量113万)を用いて塗工液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(実施例7)
実施例1において、樹脂として、第一のフッ化ビニリデン系樹脂(フッ化ビニリデンの単独重合体、融点172℃、重量平均分子量157万)と、第二のフッ化ビニリデン系樹脂(VDF-HFP共重合体、HFP単位含有量5質量%、融点152℃、重量平均分子量113万)と、アクリル系樹脂〔メタクリル酸メチル(MMA)/アクリル酸n-ブチル(n-BA)/スチレン(St)共重合体、重合比[質量比]40:20:40、重量平均分子量14.4万、ガラス転移温度64℃〕と、を用い、かつ、これらの質量比(第一のフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂:第二のフッ化ビニリデン系樹脂)を65:17.5:17.5としたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(実施例8)
実施例1において、樹脂として、第一のフッ化ビニリデン系樹脂(フッ化ビニリデンの単独重合体、融点172℃、重量平均分子量157万)と、アクリル系樹脂〔メタクリル酸メチル(MMA)/アクリル酸n-ブチル(n-BA)/スチレン(St)共重合体、重合比[質量比]40:20:40、重量平均分子量14.4万、ガラス転移温度64℃〕と、アミド結合を有する耐熱性樹脂〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド(メタ型全芳香族ポリアミド)、ガラス転移温度275℃、重量平均分子量82万〕と、を用い、かつ、これらの質量比(第一のフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂:アミド結合を有する耐熱性樹脂)を60:30:10としたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(実施例9)
実施例1において、樹脂として、第一のフッ化ビニリデン系樹脂(フッ化ビニリデンの単独重合体、融点172℃、重量平均分子量157万)と、第二のフッ化ビニリデン系樹脂(VDF-HFP共重合体、HFP単位含有量5質量%、融点152℃、重量平均分子量113万)と、アミド結合を有する耐熱性樹脂〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド(メタ型全芳香族ポリアミド)、ガラス転移温度275℃、重量平均分子量82万〕と、を用い、かつ、これらの質量比(第一のフッ化ビニリデン系樹脂:第二のフッ化ビニリデン系樹脂:アミド結合を有する耐熱性樹脂)を60:30:10としたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(実施例10)
実施例1において、樹脂として、第一のフッ化ビニリデン系樹脂(フッ化ビニリデンの単独重合体、融点172℃、重量平均分子量157万)と、第二のフッ化ビニリデン系樹脂(VDF-HFP共重合体、HFP単位含有量5質量%、融点152℃、重量平均分子量113万)と、アクリル系樹脂〔メタクリル酸メチル(MMA)/アクリル酸n-ブチル(n-BA)/スチレン(St)共重合体、重合比[質量比]40:20:40、重量平均分子量14.4万、ガラス転移温度64℃〕と、アミド結合を有する耐熱性樹脂〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド(メタ型全芳香族ポリアミド)、ガラス転移温度275℃、重量平均分子量82万〕と、を用い、かつ、これらの質量比(第一のフッ化ビニリデン系樹脂:第二のフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂:アミド結合を有する耐熱性樹脂)を60:15:15:10としたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(実施例11)
実施例1において、樹脂として、第一のフッ化ビニリデン系樹脂(フッ化ビニリデンの単独重合体、融点172℃、重量平均分子量157万)と、アクリル系樹脂〔メタクリル酸メチル(MMA)/アクリル酸n-ブチル(n-BA)/スチレン(St)共重合体、重合比[質量比]40:20:40、重量平均分子量14.4万、ガラス転移温度64℃〕と、アミド結合を有する耐熱性樹脂〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド(メタ型全芳香族ポリアミド)、ガラス転移温度275℃、重量平均分子量82万〕と、を用い、かつ、これらの質量比(第一のフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂:アミド結合を有する耐熱性樹脂)を64:33:3としたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(実施例12)
実施例1において、フィラーを、硫酸バリウム粒子(平均一次粒径0.05μm)から硫酸バリウム粒子(平均一次粒径0.03μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(実施例13)
実施例1において、フィラーを、硫酸バリウム粒子(平均一次粒径0.05μm)から硫酸バリウム粒子(平均一次粒径0.085μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(実施例14)
実施例1において、フィラーを、硫酸バリウム粒子(平均一次粒径0.05μm)から硫酸バリウム粒子(平均一次粒径0.05μm)と水酸化マグネシウム粒子(平均一次粒径0.5μm)との組み合わせ(硫酸バリウム粒子:水酸化マグネシウム粒子=70:30[質量比])に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
なお、上記硫酸バリウム粒子及び上記水酸化マグネシウム粒子の混合粒子の平均一次粒径は、0.19μmであった。
(比較例1)
実施例1において、樹脂として、第一のフッ化ビニリデン系樹脂を用いずに、第二のフッ化ビニリデン系樹脂(VDF-HFP共重合体、HFP単位含有量5質量%、融点152℃、重量平均分子量113万)と、アクリル系樹脂〔メタクリル酸メチル(MMA)/アクリル酸n-ブチル(n-BA)/スチレン(St)共重合体、重合比[質量比]40:20:40、重量平均分子量14.4万、ガラス転移温度64℃〕と、を用い、かつ、これらの質量比(第二のフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂)を65:35としたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(比較例2)
実施例1において、フィラーを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(比較例3)
実施例1において、樹脂として、第一のフッ化ビニリデン系樹脂(フッ化ビニリデンの単独重合体、融点172℃、重量平均分子量157万)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(比較例4)
実施例1において、樹脂として、アクリル系樹脂〔メタクリル酸メチル(MMA)/アクリル酸n-ブチル(n-BA)/スチレン(St)共重合体、重合比[質量比]40:20:40、重量平均分子量14.4万、ガラス転移温度64℃〕のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
(比較例5)
実施例1において、樹脂として、第一のフッ化ビニリデン系樹脂を用いずに、第二のフッ化ビニリデン系樹脂〔KF9300(VDF-HFP共重合体、HFP単位含有量2.0質量%、融点163℃、重量平均分子量193万)、呉羽化学(株)製〕と、アクリル系樹脂〔アクリペットMD001(メタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸(MAA)共重合体、三菱ケミカル(株)製〕と、を用い、かつ、これらの質量比(第二のフッ化ビニリデン系樹脂:アクリル系樹脂)を75:25としたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製した。
実施例1~7の各セパレータの組成、物性、及び評価結果を表1に示し、実施例8~14の各セパレータの組成、物性、及び評価結果を表2に示し、比較例1~5の各セパレータの組成、物性、及び評価結果を表3に示す。
Figure 2022041296000001
Figure 2022041296000002
Figure 2022041296000003
表1及び表2に示すように、接着性多孔質層が、第一のフッ化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂及び第二のフッ化ビニリデン系樹脂の少なくとも一方、並びに、フィラーを含む、実施例1~14のセパレータは、いずれも、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れ、かつ、高温に曝された場合でも収縮し難いことが確認された。また、実施例1~14のセパレータを適用した電池は、いずれもサイクル特性及び負荷特性に優れていた。
一方、表3に示すように、接着性多孔質層が第一のフッ化ビニリデン系樹脂を含まない、比較例1、比較例4、及び比較例5のセパレータは、いずれも高温に曝された場合に収縮しやすいことが確認された。
接着性多孔質層がフィラーを含まない比較例2のセパレータは、高温に曝された場合に収縮しやすいことが確認された。
接着性多孔質層がアクリル系樹脂及び第二のフッ化ビニリデン系樹脂のいずれも含まない比較例3のセパレータは、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれの場合も電極との接着性に劣ることが確認された。

Claims (13)

  1. 多孔質基材と、
    前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、(i)融点が164℃~200℃である第一のフッ化ビニリデン系樹脂、(ii)アクリル系樹脂及び融点が164℃未満である第二のフッ化ビニリデン系樹脂の少なくとも一方、並びに、(iii)フィラーを含む接着性多孔質層と、
    を備えた、非水系二次電池用セパレータ。
  2. 前記第一のフッ化ビニリデン系樹脂の融点が、170℃~200℃である、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  3. 前記第一のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量が、60万~300万である、請求項1又は請求項2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  4. 前記アクリル系樹脂が、アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含むアクリル系共重合体である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  5. 前記接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める前記第一のフッ化ビニリデン系樹脂の割合が、40質量%~90質量%である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  6. 前記接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める前記アクリル系樹脂及び前記第二のフッ化ビニリデン系樹脂の合計割合が、10質量%~60質量%である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  7. 前記接着性多孔質層に占める前記フィラーの割合が、20質量%~90質量%である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  8. 前記フィラーの平均一次粒径が、0.01μm~0.30μmである、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  9. 前記フィラーが、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、及び金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  10. 前記接着性多孔質層が、アミド結合又はアミドイミド結合を有する耐熱性樹脂を更に含む、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  11. 前記接着性多孔質層が、アミド結合を有する耐熱性樹脂を更に含み、
    前記アミド結合を有する耐熱性樹脂が、全芳香族ポリアミドを含む、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  12. 前記接着性多孔質層に含まれる全樹脂に占める前記耐熱性樹脂の割合が、2質量%~30質量%である、請求項10又は請求項11に記載の非水系二次電池用セパレータ。
  13. 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る、非水系二次電池。
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