以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図8は、本実施の形態に係る硬貨入出金機10(硬貨処理装置)を示す図である。また、図9は、従来の硬貨入出金機における折り返し部分から第2搬送路に搬送される硬貨の動作を示す説明図である。なお、図1乃至図9において、処理される硬貨を参照符号Cで示す。また、処理される硬貨のうち直径が最も小さい硬貨および最も大きい硬貨をそれぞれ参照符号C1、C2で示す。本実施の形態に係る硬貨入出金機10は、硬貨の入金処理および出金処理等を行うものである。
まず、硬貨入出金機10の全体構成について図1を用いて説明する。図1に示すように、硬貨入出金機10は、繰出部20と、搬送部30と、識別部40と、選別部50と、複数の硬貨収納部60と、回収ボックス100と、収納ドロア102とを備えている。また、硬貨入出金機10は略直方体形状の筐体12を有している。そして、この筐体12の内部に、繰出部20、搬送部30、識別部40、選別部50、複数の硬貨収納部60、回収ボックス100、収納ドロア102等が配置されている。
図1における硬貨入出金機10の筐体12の左側の面が、硬貨入出金機10を手前側から見た時の正面である。また、図1における右方向は、硬貨入出金機10の奥行き方向である。
繰出部20は、筐体12の上面に設けられた硬貨投入口(図示せず)を介して筐体12の外部から内部に投入された硬貨が収納される。また、繰出部20は、収納されている硬貨を1枚ずつ搬送部30に繰り出す。このような繰出部20の構成の詳細については後述する。
搬送部30は、繰出部20から繰り出された硬貨を1枚ずつ搬送する。また、搬送部30には識別部40が設けられている。識別部40は、搬送部30により搬送される硬貨の金種、真偽、正損、搬送状態等の識別を行う。また、図3に示すように、搬送部30には複数の検出部42が設けられている。各検出部42は、搬送部30により搬送される硬貨が通過したときにこの硬貨を検出する。このような搬送部30の構成の詳細については後述する。
搬送部30には複数(具体的には、8つ)の選別部50が設けられている。各選別部50は、識別部40による硬貨の識別結果に基づいて、搬送部30により搬送される硬貨を選別してこの搬送部30から硬貨収納部60に送る。このような選別部50の構成の詳細については後述する。
図1および図2に示すように搬送部30の下方には複数(具体的には、8つ)の硬貨収納部60が設けられている。ここで、複数の選別部50の各々は、複数の硬貨収納部60の各々に対応している。そして、搬送部30により搬送される硬貨が選別部50により選別されると、選別された硬貨は選別部50に対応する硬貨収納部60に送られる。
各硬貨収納部60は、選別部50から送られた硬貨を収納するとともに収納されている硬貨を1枚ずつ繰り出して収納ドロア102に送る。収納ドロア102は、筐体12の前面側から当該筐体12の外部に引き出し可能となっている。また、収納ドロア102の下方には回収ボックス100が設けられている。回収ボックス100も筐体12の前面側から当該筐体12の外部に引き出し可能となっている。
なお、各硬貨収納部60の下方であって収納ドロア102の上方の位置に出金搬送部が設けられるとともに、出金搬送部から硬貨が搬送される硬貨出金部が設けられていてもよい。より詳細には、出金搬送部は、各硬貨収納部60から繰り出された硬貨を硬貨出金部および収納ドロア102のうち何れかに送る。硬貨出金部は硬貨受け部分を有しており、出金搬送部から硬貨出金部に送られた硬貨は硬貨受け部分に集積される。また、操作者は筐体12の外部から硬貨出金部の硬貨受け部分にアクセス可能となっている。このことにより、硬貨受け部分に集積された出金硬貨を操作者は筐体12の外部に取り出すことができる。
また、筐体12の内部における前面側には、オーバーフローボックス106、偽貨ボックス108、異物返却ボックス110およびリジェクト口112が設けられている。オーバーフローボックス106、偽貨ボックス108、異物返却ボックス110はそれぞれ筐体12の外部に引き出し可能となっている。また、操作者は筐体12の外部からリジェクト口112の内部にアクセス可能となっている。このため、リジェクト口112に送られた硬貨を操作者は筐体12の外部に取り出すことができる。
次に、繰出部20、搬送部30、識別部40、各検出部42および各選別部50等の構成の詳細について図3を用いて説明する。
図3に示すように、繰出部20は、軸22aを中心として回転する円盤22を有している。円盤22は表面に複数の突起22bを有している。また、円盤22は傾斜状態で回転可能に設けられている。円盤22が図3において反時計回りの方向に回転すると、各突起22bに硬貨が引っ掛けられることによりこの硬貨は上昇する。
また、繰出部20は取出機構28を有している。取出機構28は、各突起22bに引っ掛けられることにより上昇した硬貨を1枚のみ把持して円盤22上から取り除いて円盤22の外に出す。取出機構28により円盤22の外に出された硬貨は搬送部30に送られる。このようにして、繰出部20から硬貨が1枚ずつ搬送部30に繰り出される。
また、繰出部20には、この繰出部20に収納されている硬貨を検知するための残留検知センサ(図示せず)が設けられている。
また、繰出部20の底部に設けられた異物排除ゲート29が開くとこの繰出部20に収容されているクリップ等の異物は自重により繰出部20から異物返却ボックス110に落下して異物返却ボックス110に収容されるようになっている。操作者は異物返却ボックス110を筐体12から外部に引き出すことにより、異物返却ボックス110に収納されている異物を取り出すことができる。
搬送部30は、第1搬送路32と、第1搬送路32の上方に設けられた第2搬送路36と、第1搬送路32により搬送される硬貨の搬送方向を180°変えて第2搬送路36に送る折り返し部分34とを有している。繰出部20から搬送部30に繰り出された硬貨はまず第1搬送路32に沿って図3における右方向に搬送され、次に折り返し部分34で搬送方向が180°変えられる。
そして、折り返し部分34から第2搬送路36に送られた硬貨は第2搬送路36に沿って図3における左方向に搬送される。また、第2搬送路36の下流側端部には、第2搬送路36から繰出部20に硬貨を案内するための案内部38が設けられている。そして、第2搬送路36から案内部38に硬貨が送られると、この硬貨は案内部38により繰出部20の円盤22の上部位置に戻される。
案内部38の構成の詳細について図5を用いて説明する。図5に示すように、案内部38は、ベルト30aが掛け渡されるプーリ39の下方に設けられている。この案内部38は、第2搬送路36の搬送面から硬貨を持ち上げるためのスロープから構成されている。このようなスロープの下端部は、繰出部20の円盤22の表面よりも高い位置となる。
このように、第2搬送路36から繰出部20に硬貨が戻される際に、スロープ等の案内部38によってこの硬貨は繰出部20の円盤22の表面よりも高い位置に案内される。このことにより、案内部38から繰出部20に戻される硬貨が、繰出部20において円盤22の突起22bに引っ掛けられながら搬送される硬貨と衝突してしまうことを防止することができる。よって、繰出部20の円盤22による搬送部30の第1搬送路32への硬貨の繰出動作が、案内部38から繰出部20に戻される硬貨に邪魔されることはない。
搬送部30は無端状のベルト30aを有しており、このベルト30aには複数の突起30bが等間隔で設けられている。ベルト30aは複数のプーリ31、35、39等に掛けられており、複数のプーリ31、35、39等のうちあるプーリがモータによって回転させられることによりベルト30aが図3において反時計回りの方向に循環移動する。このことにより、繰出部20から搬送部30に繰り出された硬貨は突起30bに引っ掛けられることにより1枚ずつ搬送される。
搬送部30の折り返し部分34の構成の詳細について図6乃至図8を用いて説明する。図6は、搬送部30の折り返し部分34の構成の詳細を示す構成図であり、図7は、図6に示す折り返し部分34に設けられたプーリ35の底面側を示す斜視図である。また、図8は、図6に示す折り返し部分34から第2搬送路36に搬送される硬貨の動作を示す説明図である。
折り返し部分34は、円弧状の湾曲面である内側側壁34aおよび円弧状の湾曲面である外側側壁34bを有している。これらの内側側壁34aおよび外側側壁34bは、同じ中心で直径が異なる2つの円の半円部分に沿って延びている。ベルト30aの突起30bに引っ掛けられた硬貨は、これらの内側側壁34aおよび外側側壁34bの間に形成される搬送路に沿って搬送される。
また、図6および図8に示すように、第2搬送路36は、内側側壁36aおよび外側側壁36bを有している。そして、ベルト30aの突起30bに引っ掛けられた状態で折り返し部分34から第2搬送路36に送られた硬貨は、これらの内側側壁36aおよび外側側壁36bの間に形成される搬送路に沿って搬送される。
また、図6および図8に示すように、折り返し部分34の外側側壁34bと、第2搬送路36の外側側壁36bとの間には、外側に向かって徐々に広がるようなつなぎ部分34cが形成されている。
また、折り返し部分34の外側側壁34bとつなぎ部分34cとの間には水平部分34dが形成されている。このような水平部分34dは外側側壁34bと異なり平面状となっている。また、第2搬送路36の内側側壁36aは、折り返し部分34の内側側壁34aよりも高い位置にある。すなわち、折り返し部分34の内側側壁34aと、第2搬送路36の内側側壁36aとの間にも、外側に向かって徐々に広がるようなつなぎ部分34eが形成されている。
本実施の形態では、図8に示すように、ベルト30aの突起30bに引っ掛けられた硬貨は、折り返し部分34において当該硬貨の遠心力により外側側壁34bに接しながら第2搬送路36まで搬送される。そして、図8に示すように、折り返し部分34から第2搬送路36に受け渡された硬貨は、水平部分34dにより搬送方向が第2搬送路36の延びる方向(図8の左方向)となった後、当該硬貨の自重により第2搬送路36の内側側壁36aに向かって片寄せされる。
その後、第2搬送路36においてベルト30aの突起30bに引っ掛けられた硬貨は内側側壁36aに接しながら搬送される。このことにより、第2搬送路36に沿って搬送される硬貨を選別部50等によってより確実に選別することができるようになる。
図6および図8に示す構成では、折り返し部分34の外側側壁34bに接しながら搬送される硬貨の搬送方向を、水平部分34dにより第2搬送路36の延びる方向(図8の左方向)にし、その後、この硬貨の自重により第2搬送路36の内側側壁36aに向かって片寄せしている。このように、水平部分34dから硬貨が離れて内側側壁36aに向かって片寄せされる際に、硬貨の放出点である水平部分34dが第2搬送路36の外側側壁36bよりも低い位置にあり、しかも第2搬送路36の内側側壁36aが折り返し部分34の内側側壁34aよりも高い位置にあるため、硬貨が内側側壁36aに到達する時の入射角度が小さくなる。このことにより、内側側壁36aに衝突したときの硬貨の鉛直方向のバウンドを抑えることができ、よって第2搬送路36の内側側壁36aで硬貨が跳ね返ってしまい選別部50により適切に選別することができなくなってしまうことを抑制することができる。
比較例として、従来の硬貨入出金機における折り返し部分134から第2搬送路136に搬送される硬貨の動作を図9に示す。図9に示す硬貨入出金機の折り返し部分134は、円弧状の湾曲面である内側側壁134aおよび円弧状の湾曲面である外側側壁134bを有している。これらの内側側壁134aおよび外側側壁134bは、同じ中心で直径が異なる2つの円の半円部分に沿って延びている。ベルト130aの突起130bに引っ掛けられた硬貨は、これらの内側側壁134aおよび外側側壁134bの間に形成される搬送路に沿って搬送される。
また、図9に示すように、折り返し部分134から硬貨が受け渡される第2搬送路136は、内側側壁136aおよび外側側壁136bを有している。そして、ベルト130aの突起130bに引っ掛けられた状態で折り返し部分134から第2搬送路136に送られた硬貨は、これらの内側側壁136aおよび外側側壁136bの間に形成される搬送路に沿って搬送される。
図9に示すような従来の硬貨入出金機では、折り返し部分134の外側側壁134bと第2搬送路136の外側側壁136bとの間に片寄せレバー135が設けられている。片寄せレバー135は、例えば板状の金属を折り曲げたものであり、根本部分が折り返し部分134の外側側壁134bに取り付けられるとともに、先端部分が第2搬送路136の内側側壁136aに向かって延びている。
折り返し部分134において外側側壁134bに接しながら搬送される硬貨は、片寄せレバー135によって第2搬送路136の内側側壁136a側に向かって強制的に片寄せされる。その後、第2搬送路136において、ベルト130aの突起130bに引っ掛けられた状態で硬貨が内側側壁136aに接しながら搬送される。
このような片寄せレバー135が設けられていることにより、第2搬送路136の内側側壁136aで硬貨が跳ね返ってしまうことを抑制することができる。しかしながら、図9に示すような従来の硬貨入出金機では、直径が非常に小さい硬貨は折り返し部分134から第2搬送路136に受け渡される際に片寄せレバー135からすり抜けてしまい第2搬送路136の内側側壁136aに片寄せすることができない場合があった。
これに対し、本実施の形態の折り返し部分34では、折り返し部分34の外側側壁34bに接しながら搬送される硬貨の搬送方向を、水平部分34dにより第2搬送路36の延びる方向(図8の左方向)にし、その後、この硬貨の自重により第2搬送路36の内側側壁36aに向かって片寄せしている。このため、直径が非常に小さい硬貨でも折り返し部分34から第2搬送路36に受け渡される際に第2搬送路36の内側側壁36aに片寄せすることができる。
また、図7に示すように、折り返し部分34に設置されるプーリ35は軸35aを中心として回転するようになっている。また、このプーリ35の側面35bにはベルト30aが掛け渡される。また、プーリ35の底面には、複数の(例えば、5つ)突起35cが、プーリ35の周方向に沿って等間隔で形成されている。各突起35cは、硬貨のすり抜け防止用に設けられている。
また、プーリ35の側面35bには、ベルト30aの突起30bが収容される凹部35dが複数(例えば、5つ)形成されている。ベルト30aがプーリ35の側面35bに掛け渡されたときに、このベルト30aの突起30bが凹部35dに収容される。また、各突起35cは、プーリ35の周方向において各凹部35dと同じ位相に配置されている。
図6において参照符号C2で示すように直径の大きい硬貨が折り返し部分34においてベルト30aの突起30bに引っ掛けられながら搬送される場合は、折り返し部分34の内側側壁34aと突起30bとの間から硬貨がすり抜けてしまうことはない。
一方、図6において参照符号C1で示すように直径の小さい硬貨が折り返し部分34においてベルト30aの突起30bに引っ掛けられながら搬送される場合は、この硬貨の直径が、折り返し部分34の内側側壁34aと突起30bとの間の距離よりも小さいと、折り返し部分34の内側側壁34aと突起30bとの間から硬貨がすり抜けてしまうおそれがある。
これに対し、本実施の形態では、プーリ35の周方向においてベルト30aの突起30bが収容される各凹部35dと同じ位相に突起35cが形成されている。このため、直径が小さい硬貨が折り返し部分34の内側側壁34aと突起30bとの間からすり抜けようとしても、この硬貨は突起35cに引っかかることによりすり抜けることができない。このため、折り返し部分34において硬貨の搬送異常が生じることを抑制することができる。
搬送部30における硬貨の搬送路には識別部40および複数の検出部42が配置されている。識別部40は、例えばラインセンサおよび磁気センサを組み合わせたものである。識別部40は、搬送部30により搬送される硬貨の金種、真偽、正損、搬送状態等の識別を行う。
各検出部42は、硬貨の搬送路を挟むよう設けられた発光素子および受光素子を含む光学センサである。搬送部30においてベルト30aにより搬送される硬貨が各検出部42を通過する際に、発光素子から発せられた光が硬貨に遮られて受光素子により受けられなくなることにより各検出部42は硬貨を検出する。このような検出部42による硬貨の検出結果により硬貨の搬送異常(例えば、連鎖や重送)も検出することができる。
ベルト30aによる硬貨の搬送方向における識別部40の下流側にはリジェクト部56が設けられている。リジェクト部56は、この識別部40の上流側にある検出部42により検出されたが識別部40により識別できなかった硬貨(例えば、樹脂から構成される樹脂貨等)を搬送部30から選別してリジェクト口112に送る。また、上述したように、操作者はリジェクト口112に送られた硬貨を筐体12の外部に取り出すことができる。
ベルト30aによる硬貨の搬送方向におけるリジェクト部56の下流側には複数の選別部50が設けられている。複数の選別部50は、第1選別部50A、第2選別部50B、第3選別部50C、第4選別部50D、第5選別部50E、第6選別部50F、第7選別部50Gおよび第8選別部50Hから構成されている。
各選別部50は各硬貨収納部60に対応している。また、各硬貨収納部60には金種がそれぞれ割り当てられている。そして、各選別部50は、識別部40による硬貨の識別結果に基づいて、対応する硬貨収納部60に割り当てられた金種の硬貨を搬送部30から選別して対応する硬貨収納部60に送る。
ベルト30aによる硬貨の搬送方向における各選別部50の下流側にはオーバーフロー選別部52および偽貨選別部54が設けられている。識別部40により識別された硬貨の金種に対応する硬貨収納部60がフル状態またはニアフル状態でありこの硬貨収納部60に硬貨をこれ以上収納することができない場合は、この硬貨は硬貨収納部60に対応する選別部50により選別されない。そして、この硬貨はオーバーフロー選別部52により搬送部30から選別されてオーバーフローボックス106に送られる。
また、識別部40により偽貨であると識別された硬貨は、偽貨選別部54により搬送部30から選別されて偽貨ボックス108に送られる。操作者はオーバーフローボックス106および偽貨ボックス108を筐体12から外部に引き出すことにより、オーバーフローボックス106に収納されている硬貨および偽貨ボックス108に収納されている偽貨としての硬貨を取り出すことができる。
搬送部30の下方には複数の硬貨収納部60が設けられている。複数の硬貨収納部60は、第1硬貨収納部60A、第2硬貨収納部60B、第3硬貨収納部60C、第4硬貨収納部60D、第5硬貨収納部60E、第6硬貨収納部60F、第7硬貨収納部60Gおよび第8硬貨収納部60Hから構成されている。
上述したように、各硬貨収納部60は、対応する選別部50により搬送部30から選別された硬貨を収納する。また、各硬貨収納部60は、収納されている硬貨を1枚ずつ繰り出して収納ドロア102や回収ボックス100に送ることができるようになっている。また、各硬貨収納部60には、収納される硬貨の金種が割り当てられている。このことにより、各硬貨収納部60は硬貨を金種別に収納する。
硬貨の出金処理が行われる際に、各硬貨収納部60から繰り出された硬貨は収納ドロア102に送られ、この収納ドロア102に収納される。そして、硬貨の出金処理が完了した後、操作者は収納ドロア102を筐体12の前面から手前側に引き出すことにより出金硬貨を収納ドロア102から取り出すことができるようになる。
また、硬貨の回収処理が行われる際に、回収ボックス100が筐体12の内部に装着されているが収納ドロア102が筐体12の内部に装着されていないときには、各硬貨収納部60から繰り出された硬貨は回収ボックス100に送られてこの回収ボックス100に収納される。そして、硬貨の回収処理が完了した後、操作者は回収ボックス100を筐体12の前面から手前側に引き出すことにより硬貨を回収ボックス100ごと回収することができるようになる。
また、図4に示すように、硬貨入出金機10の筐体12の内部には、例えばCPU(中央演算処理装置)等の制御部90が設けられている。制御部90には繰出部20、搬送部30、識別部40、各検出部42、各選別部50、リジェクト部56、各硬貨収納部60等の各構成要素が接続されている。識別部40による硬貨の識別結果や各検出部42による硬貨の検出結果は制御部90に送られる。また、制御部90は硬貨入出金機10の各構成要素の指令信号を送ることにより各構成要素を制御する。
また、図4に示すように、制御部90には操作表示部92、記憶部94および通信部96が接続されている。操作表示部92は、例えば筐体12の前面または上面に設けられたタッチパネルである。硬貨入出金機10における硬貨の処理状況や各硬貨収納部60に収納されている硬貨の在高等の情報が操作表示部92に表示される。また、操作者は操作表示部92により制御部90に様々な指令を入力することができる。
記憶部94は、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)またはSSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶部94には、硬貨入出金機10における硬貨の処理履歴や各硬貨収納部60に収納されている硬貨の在高等の情報が記憶される。
なお、操作表示部92や記憶部94は硬貨入出金機10の内部に設けられるのではなく硬貨入出金機10の外部に設けられていてもよい。この場合、制御部90は通信部96を介して硬貨入出金機10の外部に設けられている操作表示部92や記憶部94と信号の送受信を行うようになっていてもよい。
制御部90は、通信部96により硬貨入出金機10以外の装置に対して様々な信号の送受信を行うことができる。例えば、制御部90は、通信部96によりPOSレジスタ等の上位端末に対して硬貨入出金機10における硬貨の処理状況や各硬貨収納部60に収納されている硬貨の在高等の情報を送信する。また、POSレジスタ等の上位端末から通信部96を介して制御部90に硬貨の入金処理開始指令や出金処理開始指令が送られる場合がある。
次に、本実施の形態の硬貨入出金機10による硬貨の処理方法について説明する。なお、以下の動作は制御部90が硬貨入出金機10の各構成要素を制御することにより行われる。
まず、硬貨入出金機10により行われる硬貨の入金処理について説明する。筐体12の上面に設けられた硬貨投入口を介して筐体12の外部から内部に硬貨が投入されると、この投入された硬貨は繰出部20に収納される。
繰出部20に硬貨が収納され、この硬貨が残留検知センサにより検知されると、繰出部20の円盤22が軸22aを中心として図3における矢印方向に回転するとともに搬送部30のベルト30aが図3における矢印方向に循環移動する。このことにより、繰出部20から搬送部30に硬貨が1枚ずつ繰り出される。
繰出部20から搬送部30に繰り出された硬貨はベルト30aに設けられた突起30bに引っ掛けられることにより図3における矢印方向に搬送される。硬貨の搬送路に沿ってベルト30aにより搬送される硬貨は各検出部42により検出される。このことにより、ベルト30aにより搬送される硬貨に搬送異常が生じている場合にはこのことが各検出部42により検出される。また、ベルト30aにより搬送される硬貨が識別部40を通過する際に、この硬貨の金種、真偽、正損、搬送状態等が識別部40により識別される。
識別部40を通過した硬貨のうち、この識別部40の上流側にある検出部42により検出されたが識別部40により識別できなかった硬貨(例えば、樹脂から構成される樹脂貨等)はリジェクト部56により搬送部30から選別される。リジェクト部56により選別された硬貨はリジェクト口112に送られる。
また、識別部40を通過した硬貨のうち、正常な硬貨であると識別部40により識別された硬貨は、この硬貨の金種が割り当てられた硬貨収納部60に対応する選別部50により搬送部30から選別される。選別部50により選別された硬貨はこの選別部50に対応する硬貨収納部60に送られ、この硬貨収納部60に収納される。
なお、識別部40により識別された硬貨の金種に対応する硬貨収納部60がフル状態またはニアフル状態でありこの硬貨収納部60に硬貨をこれ以上収納することができない場合は、この硬貨は硬貨収納部60に対応する選別部50により選別されない。そして、この硬貨はオーバーフロー選別部52により搬送部30から選別されてオーバーフローボックス106に送られる。
また、識別部40により偽貨であると識別された硬貨は、偽貨選別部54により搬送部30から選別されて偽貨ボックス108に送られる。
また、制御部90がリジェクト部56、各選別部50、オーバーフロー選別部52および偽貨選別部54を制御して何れの選別場所にも選別しなかった場合に、繰出部20から搬送部30に繰り出された硬貨は搬送部30の第2搬送路36から案内部38により繰出部20に戻される。具体的には、検出部42による検出結果に基づいて搬送部30により搬送される硬貨を繰出部20に戻すべきであると判断した場合に、識別部40による硬貨の識別結果に基づく各選別部50等による硬貨の選別を行わずに当該硬貨を繰出部20に戻すよう制御を行う。
より詳細には、制御部90は、検出部42による検出結果に基づいて搬送部30により搬送される硬貨に搬送異常(例えば、連鎖や重送)が生じていると判断した場合に、識別部40による硬貨の識別結果に基づく各選別部50等による硬貨の選別を行わずに当該硬貨を繰出部20に戻すよう制御を行う。
このような制御が行われることにより、搬送部30においてベルト30aにより搬送される硬貨がリジェクト部56、各選別部50、オーバーフロー選別部52および偽貨選別部54の何れにも選別されなかった場合には、この硬貨は搬送部30から案内部38により繰出部20に戻される。
また、制御部90がリジェクト部56、各選別部50、オーバーフロー選別部52および偽貨選別部54を制御して何れの選別場所にも選別しなかった場合に、繰出部20から繰り出された硬貨が繰出部20に戻された後に繰出部20から再び繰り出される。このことにより、搬送異常等によって搬送部30から繰出部20に戻された硬貨が再び繰出部20から搬送部30に繰り出され、この繰り出された硬貨が搬送部30で搬送されるようになる。
繰出部20の円盤22が回転動作を開始してから所定の時間(具体的には、繰出部20に収納されている硬貨が全て搬送部30に繰り出されて各硬貨収納部60に収納されるのに十分な時間)が経過すると、繰出部20の底部が開く。繰出部20の底部が開くと、この繰出部20に残されたクリップ等の異物は自重により繰出部20から異物返却ボックス110に落下して異物返却ボックス110に収容される。
このようにして、硬貨入出金機10における硬貨の入金処理が完了する。
次に、硬貨入出金機10により行われる硬貨の出金処理について説明する。まず、硬貨の出金処理開始指令が制御部90に入力されるとともに、出金されるべき硬貨の合計金額または金種毎の枚数に係る情報が制御部90に入力される。このことにより、出金されるべき硬貨が各硬貨収納部60から繰り出され、この繰り出された硬貨は収納ドロア102に収納される。
このようにして、出金されるべき硬貨が全て各硬貨収納部60から繰り出され、収納ドロア102に収納されると、硬貨入出金機10における硬貨の出金処理が完了する。その後、操作者は収納ドロア102を筐体12の前面から手前側に引き出すことにより、出金硬貨を収納ドロア102から取り出すことができる。
次に、硬貨入出金機10により行われる硬貨の回収処理について説明する。操作者はまず回収ボックス100を筐体12の内部に収容するとともに収納ドロア102を筐体12の外部に取り出す。そして、硬貨の回収処理開始指令が制御部90に入力されると、回収されるべき硬貨が各硬貨収納部60から繰り出され、この繰り出された硬貨は回収ボックス100に収納される。なお、回収されるべき硬貨とは、各硬貨収納部60に収納されている全ての硬貨であってもよい。あるいは、釣銭準備金として所定の枚数の硬貨が各硬貨収納部60に残され、それ以外の硬貨が回収されるべき硬貨として各硬貨収納部60から繰り出されてもよい。
回収されるべき硬貨が全て各硬貨収納部60から繰り出されて回収ボックス100に送られると、操作者は回収ボックス100を筐体12から引き出すことにより硬貨を回収ボックス100ごと回収することができる。このようにして硬貨入出金機10における硬貨の回収処理が完了する。
以上のような構成からなる本実施の形態の硬貨入出金機10(硬貨処理装置)によれば、複数枚の硬貨を収納するとともに収納されている硬貨を1枚ずつ繰り出すことができる繰出部20と、硬貨を搬送する搬送部30と、硬貨を識別する識別部40と、硬貨を複数種類に選別する選別部50と、を備え、搬送部30は、繰出部20から繰り出された硬貨を識別部40および選別部50を経由した後に繰出部20に戻すようになっている。
このような硬貨入出金機10によれば、硬貨を選別部50によって複数種類に選別することができ、また、選別されなかった硬貨は繰出部20に戻すことによって特別な操作なしにこの繰出部20から再び繰り出させることができる。
より詳細に説明すると、従来の硬貨処理装置では、循環搬送経路に設けられている入出金口を通らないと硬貨を再識別することができなかった。このため、硬貨の再識別を行う際に入出金口への硬貨の入金処理を行うことができず、連続した入金処理を行うことができないという問題があった。また、従来の別の硬貨処理装置では、選別部が1つしかないため1種類の硬貨しか選別することができず、硬貨を複数種類に選別するのに適していないという問題があった。
これに対し、本実施の形態の硬貨入出金機10では、硬貨を選別部50によって複数種類に選別することができるため例えば硬貨を金種毎に各硬貨収納部60に収納することができる。また、選別部50によって選別されなかった硬貨は繰出部20に戻すことによって特別な操作なしにこの繰出部20から再び繰り出させることができるため、硬貨の入金処理が途中で中断されてしまうことを防止することができる。
また、上述したように、本実施の形態の硬貨入出金機10は、識別部40による硬貨の識別結果に基づいて選別部50を制御して硬貨の選別動作を行わせる制御部90を更に備え、制御部90が選別部50を制御して何れの選別箇所にも選別しなかった場合に、繰出部20から繰り出された硬貨が繰出部20に戻された後に繰出部20から再び繰り出される。この場合には、制御部90が選別部50を制御して何れの選別箇所にも選別しなかった場合に、繰出部20に戻された硬貨が繰出部20によって搬送部30に再び繰り出されるため、操作者は繰出部20に戻された硬貨について特別な操作が必要なくなり、よって利便性を高めることができる。
また、上述したように、本実施の形態の硬貨入出金機10は、搬送部30により搬送される硬貨の搬送状態を検出する検出部42を更に備え、制御部90は、検出部42による検出結果に基づいて搬送部30により搬送される硬貨を繰出部20に戻すべきであると判断した場合に、識別部40による硬貨の識別結果に基づく選別部50による硬貨の選別を行わずに当該硬貨を繰出部20に戻すよう制御を行う。この場合には、搬送部30により搬送される硬貨の搬送状態を検出部42により検出することによって、搬送異常が生じている硬貨が選別部50により選別されなくなるため、選別部50による硬貨の選別が行われる際に詰まり等のトラブルが生じることを防止することができる。
また、上述したように、制御部90は、検出部42による検出結果に基づいて搬送部30により搬送される硬貨に搬送異常が生じていると判断した場合に、識別部40による硬貨の識別結果に基づく選別部50による硬貨の選別を行わずに当該硬貨を繰出部20に戻すよう制御を行う。この場合には、検出部42により搬送異常が生じていることが検出された硬貨を繰出部20に戻すことによって、この繰出部20から当該硬貨を搬送部30に特別な操作なしで再び繰り出させることができる。
また、上述したように、本実施の形態の硬貨入出金機10は、搬送部30により搬送される硬貨を排出するためのリジェクト部56を更に備え、識別部40による識別結果に基づいて硬貨が選別部50により選別されるべきであると判断された場合には選別部50により硬貨が選別され、識別部40による識別結果に基づいて硬貨がリジェクト部56により排出されるべきであると判断された場合にはリジェクト部56により硬貨が排出され、それ以外の場合は搬送部30により搬送される硬貨が繰出部20に戻された後に繰出部20から再び繰り出される。この場合には、リジェクト部56により排出されるべきであると判断された硬貨以外の硬貨を、繰出部20に戻した後に特別な操作なしで繰出部20から再び繰り出させることができる。
なお、従来では、識別部40により正常な硬貨であると識別された硬貨以外の硬貨は全てリジェクト部56により排出していた。しかしながら、このような従来の方法では、搬送異常等の硬貨についてもリジェクト部56により排出されていたため、操作者が硬貨投入口に再投入する必要があった。これに対し、本実施の形態の硬貨入出金機10では、搬送異常等の硬貨はリジェクト部56により排出されないため、操作者が硬貨投入口に再投入する手間を省くことができる。
また、上述したように、繰出部20は傾斜状態で回転可能に設けられた円盤22を有しており、円盤22は、表面に複数の突起22bを有し、回転時に各突起22bにより硬貨が引っ掛けられて上昇させられることにより繰出部20から繰り出される。また、搬送部30が繰出部20に硬貨を戻すときに円盤22の表面よりも高い位置に硬貨を案内する案内部38が設けられている。この場合には、案内部38から繰出部20に戻される硬貨が、繰出部20において円盤22の突起22bに引っ掛けられながら搬送される硬貨と衝突してしまうことを防止することができる。よって、繰出部20の円盤22による搬送部30の第1搬送路32への硬貨の繰出動作が、案内部38から繰出部20に戻される硬貨に邪魔されることはない。
また、上述したように、搬送部30は、第1搬送路32および第1搬送路32よりも上方に位置する第2搬送路36を順に経由するよう硬貨を搬送し、第2搬送路36から円盤22の上部位置に硬貨が戻されるようになっており、第2搬送路36の下流側端部に案内部38が設けられている。
なお、本実施の形態に係る硬貨入出金機は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
例えば、識別部40とは別に設けられた検出部42により硬貨の搬送状態が検出される代わりに、識別部40によって硬貨の搬送状態が検出されるようになっていてもよい。この場合は、搬送部30により搬送される硬貨に搬送異常が生じていると識別部40により識別された場合に、制御部90は搬送部30により搬送される硬貨を何れの選別箇所にも選別しないよう選別部50等を制御する。このことにより、搬送異常が生じている硬貨が選別部50等により選別されなくなるため、選別部50等による硬貨の選別が行われる際に詰まり等のトラブルが生じることを防止することができる。
また、本実施の形態による硬貨入出金機は、例えば店舗や金融機関のバックオフィス領域に設置されるものである。しかしながら、このような態様に限定されることはない。本実施の形態による硬貨入出金機が例えば店舗のフロント領域において釣銭機として用いられてもよい。