実施形態の紙幣処理装置を図面を参照して以下に説明する。
図1に示す実施形態の紙幣処理装置10は、外部から投入された紙幣Sを識別しつつ内部に一時貯留する入金処理、このように一時貯留した紙幣Sを種類別に分類して内部に収納する分配処理(収納処理)、分類されて収納されている紙幣Sを外部に取り出し可能に出金する出金処理等が可能な紙幣入出金装置である。なお、以下の説明における「前」は操作者側を、「後」は操作者とは反対側を、「左」は操作者から見て左を、「右」は操作者から見て右を示す。
紙幣処理装置10の前面側の上部には、入金用の紙幣Sが外部から投入されると共に投入された紙幣Sを内部に繰り出す入金部11が設けられている。また、紙幣処理装置10の前面側の上部には、この入金部11の上方かつ後方に、入金用の紙幣Sのうち受け入れ不可なリジェクト紙幣Sが内部から繰り出されるとともに出金用の紙幣Sが内部から繰り出され、これらを外部に取り出し可能に出金する出金部12が設けられている。
紙幣処理装置10の上面の出金部12の後方には操作者の操作入力を受け付けるとともに操作者に対し表示を行うタッチパネル式の操作表示部14と、紙幣処理装置10の全体を制御する制御装置部15とが設けられている。操作表示部14は、紙幣処理装置10の操作画面や稼働状況に関する情報画面を表示する。
紙幣処理装置10の内部には、入金部11の後方に、紙幣Sを識別する識別部17が設けられており、この識別部17の後方に、識別部17によって識別された紙幣Sを一時貯留すると共に貯留した紙幣Sを繰り出し可能な一時貯留部18が設けられている。
入金部11には、載置板19が設けられており、この載置板19は、入金部11内で昇降する。入金部11は、下降状態にある載置板19上に集積状態の紙幣Sが外部から載置されることになり、載置板19の上昇後、集積状態の紙幣Sを集積方向の上端のものから一枚ずつ紙幣処理装置10の内部に繰り出す。
紙幣処理装置10は、上記した入金部11、出金部12、識別部17および一時貯留部18に加えて、紙幣Sを収納する前方カセット51(収納部)と、紙幣Sを収納する複数の収納庫52(収納部)とを内部に有している。また、紙幣処理装置10は、入金部11、出金部12、識別部17、一時貯留部18、前方カセット51および複数の収納庫52の間で紙幣Sを搬送する搬送部20を内部に有している。識別部17は、搬送部20で搬送中の紙幣Sを識別する。
搬送部20は、入金部11の後端部から延びて、入金部11から繰り出された紙幣Sを識別部17に搬送し、その後、一時貯留部18に搬送する入金搬送路21を有している。言い換えれば、入金搬送路21は入金部11と一時貯留部18とを結んでおり、その中間位置に識別部17が設けられている。
また、搬送部20は、入金搬送路21における入金部11と識別部17との間から下方に分岐する上下搬送路55と、入金搬送路21における識別部17と一時貯留部18との間から上方に分岐する出金搬送路35とを有している。上下搬送路55と出金搬送路35とが分岐することで、入金搬送路21は、入金部11と上下搬送路55の分岐位置との間の前側送路部21aと、上下搬送路55の分岐位置と出金搬送路35の分岐位置との間の中間送路部21bと、出金搬送路35の分岐位置と一時貯留部18との間の後側送路部21cとに分けられる。
識別部17は、中間送路部21bに設けられており、中間送路部21bで搬送中の紙幣Sの真偽、正損、金種および券種を含む種別と、重送および斜行を含む搬送異常の有無とを識別する。例えば、入金部11に投入された紙幣Sが、入金部11から入金搬送路21の前側送路部21aおよび中間送路部21bで識別部17に向けて搬送され、識別部17で識別後に中間送路部21bおよび後側送路部21cで一時貯留部18に搬送される。
一時貯留部18は、紙幣Sを一時的に貯留するもので、入金搬送路21の少なくとも中間送路部21bおよび後側送路部21cで搬送されてきた紙幣Sを一枚ずつ取り込んで収納し、収納している紙幣Sを一枚ずつ後側送路部21cに繰り出す。一時貯留部18は、例えば、入金部11に投入された紙幣Sの貯留および当該貯留した紙幣Sの繰り出しを行う。この一時貯留部18は、紙幣Sを一枚ずつ間隔をあけてテープ30とともに回転体であるドラム31に巻き付けて収納する巻付収納タイプであり、よって、貯留している紙幣Sをテープ30とともにドラム31から解いて一枚ずつ間隔をあけて計数しながら繰り出す。言い換えれば、一時貯留部18は、紙幣Sを一枚ずつ巻き取り可能に構成されたドラム31を有し、ドラム31は、巻き取った紙幣Sを一枚ずつ繰り出す。
巻付収納タイプの一時貯留部18は、紙幣Sを貯留する際の順番とは逆の順番で繰り出すことになる。このため、複数金種の紙幣Sをランダムに混合して貯留する場合であっても、制御装置部15は、識別部17の識別結果から一時貯留部18に貯留する各紙幣Sの金種等の種別を把握可能となっており、よって、一時貯留部18から繰り出す各紙幣Sの金種等の種別を把握可能となっている。
一時貯留部18のドラム31は、回転軸回りに回転可能に設けられており、回転軸回りの一方の方向(図1では右回り)に回転することでテープ30を巻き取るようになっている。ドラム31は、テープ30を巻き取ることで、巻き取るテープ30の間に紙幣Sを一枚ずつ挟み込んで保持するようになっている。また、ドラム31は、回転軸回りの他方の方向(図1では左回り)に回転することで、巻き取っていたテープ30を送り出すことになり、送り出すテープ30の間に保持している紙幣Sを一枚ずつ繰り出すようになっている。
出金搬送路35は、入金搬送路21の中間送路部21bと後側送路部21cとの間から上方に延出した後、前方に延出しており、この出金搬送路35の末端が出金部12に接続されている。中間送路部21bと後側送路部21cとの間は、紙幣Sの行き来が可能であり、中間送路部21bと出金搬送路35との間は、中間送路部21bから出金搬送路35への紙幣Sの搬送が可能である。また、後側送路部21cと出金搬送路35との間は、後側送路部21cから出金搬送路35への紙幣Sの搬送が可能である。出金搬送路35は、中間送路部21bで搬送されてきた紙幣Sを出金部12に搬送する。また、出金搬送路35は、一時貯留部18から繰り出されて後側送路部21cで搬送されてきた紙幣Sを出金部12に搬送する。
ここで、出金部12は、出金搬送路35から繰り出された紙幣Sを下側から上側に集積させる。出金部12に集積された紙幣Sは、出金部12から外部に取り出される。出金搬送路35は、例えば、一時貯留部18から後側送路部21cに繰り出された紙幣Sを上方に分岐搬送して出金部12に搬送する。
入金部11、出金部12、操作表示部14、識別部17、一時貯留部18、入金搬送路21、出金搬送路35および制御装置部15は、紙幣処理装置10の上部を構成する上部ユニット41に設けられている。
上部ユニット41の下側には、紙幣処理装置10の高さ方向の中間部から下部を構成する下部ユニット42が設けられている。下部ユニット42には、前部位置に前方カセット51が設けられており、前方カセット51の後方に、上下2段、前後4列の合計8台の収納庫52が設けられている。8台の収納庫52のうち、上段の4台は高さ方向の位置を一致させており、下段の4台も高さ方向の位置を一致させている。前方カセット51の高さは、収納庫52の2台分の高さと同等であり、前方カセット51は、上下2段の収納庫52と高さ方向の位置を重ね合わせている。
入金搬送路21の前側送路部21aと中間送路部21bとの間から下方に分岐する上下搬送路55は、入金搬送路21から下方に延出して前方カセット51に接続されている。前側送路部21aと中間送路部21bとの間は、前側送路部21aから中間送路部21bへの紙幣Sの搬送が可能であり、上下搬送路55と中間送路部21bとの間は紙幣Sの行き来が可能である。上下搬送路55は、例えば、一時貯留部18から入金搬送路21の後側送路部21cに繰り出され、後側送路部21cおよび中間送路部21bで搬送されて識別部17を通過した後の紙幣Sを中間送路部21bと前側送路部21aとの間から下方に分岐搬送して前方カセット51に収納する。
前方カセット51は、紙幣Sを一枚ずつ取り込んで収納可能であり、収納している紙幣Sを一枚ずつ繰り出し可能となっている。前方カセット51は、紙幣Sを上部から受け入れて水平状態で下から上に集積させて収納するとともに、収納している紙幣Sを上端部のものから繰り出す集積収納タイプとなっている。集積収納タイプの前方カセット51は、一時貯留部18および後述する収納庫52のような巻付収納タイプに比べて紙幣Sの収納効率が大幅に高い。その一方で、一時貯留部18および後述する収納庫52のような巻付収納タイプは、集積収納タイプの前方カセット51に比べて、紙幣Sの重送を生じる可能性が低く、貯留している紙幣Sを正確に一枚ずつ分離し間隔をあけて繰り出し可能である。
搬送部20は、上下搬送路55の中間位置から後方に分岐する収納搬送路57を有している。この収納搬送路57は、上下搬送路55から後方に延出した後、紙幣処理装置10の後端部付近で下方に延出して最後列の上段の収納庫52に接続されており、この収納庫52を介して最後列の下段の収納庫52にも接続されている。収納搬送路57が分岐することによって、上下搬送路55は、収納搬送路57の分岐位置から上側の上側送路部55aと、収納搬送路57の分岐位置から下側の下側送路部55bとに分けられる。
搬送部20は、収納搬送路57の中間位置から下方に分岐する複数具体的には3カ所の分岐搬送路61,62,63を有している。分岐搬送路61は、最前列の上段の収納庫52に接続されており、この収納庫52を介して、最前列の下段の収納庫52に接続されている。分岐搬送路62は、前から2列目の上段の収納庫52に接続されており、この収納庫52を介して、前から2列目の下段の収納庫52に接続されている。分岐搬送路63は、前から3列目の上段の収納庫52に接続されており、この収納庫52を介して、前から3列目の下段の収納庫52に接続されている。
8台の収納庫52は、いずれも、紙幣Sを一枚ずつ間隔をあけてテープ70とともにドラム71に巻き付けて収納する巻付収納タイプであり、よって、収納している紙幣Sをテープ70とともにドラム71から解いて一枚ずつ間隔をあけて計数しながら繰り出す。巻付収納タイプの収納庫52は、紙幣Sを収納する際の順番とは逆の順番で繰り出す。このため、1台の収納庫52に複数金種の紙幣Sをランダムに混合して収納する場合であっても、制御装置部15は、識別部17の識別結果から、この収納庫52に収納する各紙幣Sの金種などの種別を把握可能となっており、よって、この収納庫52から繰り出す各紙幣Sの金種などの種別も把握可能となっている。
上下搬送路55の上側送路部55a、収納搬送路57および分岐搬送路61,62,63は、例えば、一時貯留部18から入金搬送路21の後側送路部21cに繰り出され、後側送路部21cおよび中間送路部21bで搬送されて識別部17を通過後の紙幣Sを中間送路部21bと前側送路部21aとの間から分岐搬送して8台の収納庫52に選択的に収納させる。8台の収納庫52は、例えば、8台全部を、それぞれが設定された単一金種の紙幣Sのみを収納する単金種収納庫に設定したり、そのうちの何台かを、それぞれが設定された単一金種の紙幣Sのみを収納する単金種収納庫に設定し、残りを、それぞれ複数金種の紙幣Sを金種混合で収納する金種混合収納庫に設定したりすることができる。
下部ユニット42には、前方カセット51と、8台の収納庫52と、上下搬送路55の上側送路部55aの下部と、下側送路部55bと、収納搬送路57と、分岐搬送路61~63とが設けられている。上下搬送路55の上側送路部55aの上部は上部ユニット41に設けられている。
下部ユニット42は、前方に開口する直方体の箱状の筐体75と、8台の収納庫52が設けられて筐体75内に配置されるユニット本体76と、筐体75の前部開口を開閉する扉体77とを有している。前方カセット51は、ユニット本体76に対し着脱可能に設けられている。
搬送部20の入金搬送路21、出金搬送路35、上下搬送路55、収納搬送路57、分岐搬送路61~63が、紙幣処理装置10の内部で各部を繋ぐ搬送路65を構成している。
制御装置部15は、紙幣処理装置10の入金部11、出金部12、操作表示部14、識別部17、一時貯留部18、搬送部20、前方カセット51および全ての収納庫52の駆動制御を行う制御部81と、識別部17が識別した紙幣Sの種別等を記憶する記憶部82とを有している。
次に、実施形態の紙幣処理装置10の制御装置部15により制御される主な作動について説明する。
紙幣処理装置10は、操作表示部14への設定操作で第1モードでの作動と第2モードでの作動とが選択可能となっている。
<第1モード>
まず、第1モードでの作動について説明する。
[入金処理]
入金処理は、入金部11に外部から投入された紙幣Sを装置内部の一時貯留部18に一時貯留する処理である。
入金部11に外部から紙幣Sが投入されたことを図示略のセンサで検知した状態で、操作表示部14へ入金処理開始の操作が入力されると、制御部81の制御によって、入金部11および搬送部20が、図2に太線で示す入金処理ルートで紙幣Sを搬送する。
つまり、入金部11が紙幣Sを一枚ずつ分離し所定の間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、搬送部20の入金搬送路21の前側送路部21aおよび中間送路部21bが搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別を行う。具体的に、識別部17は、紙幣Sが、真券であるか偽券であるかの真偽識別と、汚損が少ない正券であるか汚損が多い汚損券であるかの正損識別とを行い、真券かつ正券については、いずれの金種であるかの金種識別と、世代が現行券であるか旧券であるかの券種識別とを行う。これらの種別の識別に加えて、識別部17は、紙幣Sの重送および斜行を含む搬送異常の有無を識別する。
識別部17の識別の結果、種別が真券かつ正券であって搬送異常がない、受け入れ可能と識別された正常紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21bおよび後側送路部21cが一時貯留部18に搬送して、一時貯留部18が貯留する(図2の太実線参照)。それ以外の紙幣Sであって識別部17が受け入れ不可と識別したリジェクト紙幣Sについては、入金搬送路21の中間送路部21bが出金搬送路35に搬送し、出金搬送路35が出金部12に搬送する(図2の太実線から太破線参照)。なお、制御部81は、入金処理中に、出金部12に搬送する紙幣Sが生じた場合、それに応じて、一時貯留部18を停止させ、一時貯留部18に貯留する紙幣Sと紙幣Sとの取り込み間隔が一定になるように制御する。リジェクト紙幣Sは、偽券、汚損率(汚損の度合い)が所定値よりも高い汚損券、斜行や重送などの搬送異常券である。
入金部11に投入された紙幣Sを全て一時貯留部18および出金部12のいずれかに搬送した状態になると、識別部17の識別結果から一時貯留部18が貯留している紙幣Sの金種別の枚数および総額などの金額情報を操作表示部14が表示する。出金部12に搬送された紙幣Sは、外部に取り出し可能となる。なお、出金部12とは別に、紙幣Sを外部に取り出し可能とするリジェクト部を設けて、このリジェクト部に受け入れ不可の紙幣Sを搬送するようにしても良い。
以上のように、入金処理において、制御部81は、種別が真券かつ正券であって搬送異常がない、受け入れ可能と識別された正常紙幣Sを、識別部17での識別後に一時貯留部18に貯留させる。その際に、制御部81は、一時貯留部18に貯留する紙幣Sに関しては、識別部17で識別された真偽(すなわち真券であること)、正損(すなわち正券であること)、金種および券種を含む種別と一時貯留部18への貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。なお、貯留種別順序情報の種別には、真偽、正損、金種および券種に加えて、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の中から、少なくともいずれか一つを含めても良い。
具体例として、この入金処理において、まず受け入れ可能と識別されて一時貯留部18に貯留される1番目の紙幣Sの金種が万円券であって券種が現行券である場合、制御部81は、万円券の真券かつ正券の現行券が1番目に一時貯留部18に貯留されたとする貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。次に受け入れ可能と識別されて一時貯留部18に貯留される2番目の紙幣Sの金種が千円券であって券種が現行券である場合、制御部81は、千円券の真券かつ正券の現行券が2番目に一時貯留部18に貯留されたとする貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。次に受け入れ可能と識別されて一時貯留部18に貯留される3番目の紙幣Sの金種が五千円券であって券種が現行券である場合、制御部81は、五千円券の真券かつ正券の現行券が3番目に一時貯留部18に貯留されたとする貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
このような処理を、この入金処理において、一時貯留部18に一時貯留する全ての紙幣について行う。その結果、具体例として、この入金処理において、上記3枚と合わせて6枚以上の紙幣Sが一時貯留部18に貯留され、受け入れ可能と識別されて一時貯留部18に貯留された最後から3番目の紙幣Sの金種が千円券であって券種が現行券であった場合、千円券の真券かつ正券の現行券が最後から3番目に一時貯留部18に貯留されたとする貯留種別順序情報が記憶部82に記憶される。また、受け入れ可能と識別されて一時貯留部18に貯留された最後から2番目の紙幣Sの金種が五千円券であって券種が現行券であった場合、五千円券の真券かつ正券の現行券が最後から2番目に一時貯留部18に貯留されたとする貯留種別順序情報が記憶部82に記憶される。さらに、受け入れ可能と識別されて一時貯留部18に貯留された最後の紙幣Sの金種が万円券であって券種が現行券である場合、万千円券の真券かつ正券の現行券が最後に一時貯留部18に貯留されたとする貯留種別順序情報が記憶部82に記憶されることになる。
このように、入金部11の紙幣Sを一時貯留部18に貯留する入金処理時に、制御部81は、紙幣Sの真偽、正損、金種および券種を含む種別と一時貯留部18への貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
[分配処理]
分配処理は、上記した入金処理で一時貯留部18に一時貯留した紙幣Sを装置内部の収納庫52に分類して収納する処理である。
入金処理後の金額情報の操作表示部14への表示後、操作者が操作表示部14に承認操作を入力すると、制御部81の制御によって、一時貯留部18と、搬送部20と、8台の収納庫52のうちの適宜のものとが、例えば図3に太線で示す分配処理ルートで紙幣Sを搬送し収納する。
つまり、一時貯留部18が一時貯留させていた紙幣Sを一枚ずつ間隔をあけて繰り出し、入金搬送路21の後側送路部21cおよび中間送路部21bと、上下搬送路55の上側送路部55aと収納搬送路57とが搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が、紙幣Sの識別の順序と搬送異常の有無とを再度識別することになる。なお、このとき、識別部17は、真偽、正損、金種および券種を含む種別の識別は行わない。
そして、制御部81は、搬送異常がなければ、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている入金処理時の貯留種別順序情報とに基づいて、この紙幣Sの種別を取得して計数する。このときの識別順序は、貯留種別順序情報の順序とは逆順となる。このように種別を得て計数した紙幣Sを、収納搬送路57および分岐搬送路61~63の適宜のものが制御部81で制御されて、8台の収納庫52のうちの、この判定した種別の紙幣Sを収納する収納先のものに収納させる。言い換えれば、制御部81は、記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報の種別情報にしたがって、但し、貯留種別順序情報とは逆順で、紙幣Sを一枚ずつ、収納先である収納庫52に選択搬送する。
このとき、制御部81は、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報とに基づいて判定した紙幣Sの種別と、識別部17で識別した紙幣Sの識別順序とに基づいて、収納庫52に収納する紙幣Sの種別と収納庫52への収納順序とを関連付けた収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。すなわち、制御部81は、分配処理時に、一時貯留部18の貯留種別順序情報を基に紙幣Sの搬送先を選択するのに加えて、収納庫52ごとの収納種別順序情報を作成して記憶部82へ記憶させる。また、記憶部82に記憶している貯留種別順序情報の中から、収納庫52に収納する紙幣Sに関する貯留種別順序情報を削除する。
ここで、一の紙幣Sについての収納種別順序情報に含められる種別は、この一の紙幣Sについて貯留種別順序情報に含められた種別と同じとなる。すなわち、一の紙幣Sについての貯留種別順序情報に含められた種別が、真偽、正損、金種および券種からなる場合、この一の紙幣Sについての収納種別順序情報に含められる種別も、真偽、正損、金種および券種からなる。また、一の紙幣Sについての貯留種別順序情報に含められた種別が、真偽、正損、金種および券種に加えて、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報のうちの少なくともいずれか一つからなる場合、この一の紙幣Sについての収納種別順序情報に含められる種別も、真偽、正損、金種および券種に加えて、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報のうちの同じ少なくともいずれか一つからなることになる。
例えば、入金処理において、上記具体例の順番で6枚以上の紙幣Sが一時貯留部18に貯留されていた場合であって、この分配処理で、搬送異常が検出されない場合について説明する。
制御部81は、まず一時貯留部18から繰り出されて1番目に識別部17で搬送異常なしと識別した紙幣Sを、分配処理における識別部17での識別の順番(1番目)に対応して記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報から、入金処理において最後に貯留された万円券の真券かつ正券の現行券であると判定して、万円券の真券かつ正券の現行券用の収納庫52に収納すると共に、記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報から、この紙幣Sに関する貯留種別順序情報を削除し、さらに、今回の分配処理において、この収納庫52に1番目の収納順序で収納した紙幣Sが万円券の真券かつ正券の現行券であるという収納順序および種別を含む収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
制御部81は、次に一時貯留部18から繰り出されて2番目に識別部17で搬送異常なしと識別した紙幣Sを、分配処理における識別部17での識別の順番(2番目)に対応して記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報から、入金処理において最後から2番目に貯留された五千円券の真券かつ正券の現行券であると判定して、五千円券の真券かつ正券の現行券用の収納庫52に収納すると共に、記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報から、この紙幣Sに関する貯留種別順序情報を削除し、さらに、今回の分配処理において、この収納庫52に1番目の収納順序で収納した紙幣Sが五千円券の真券かつ正券の現行券であるという収納順序および種別を含む収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
制御部81は、次に一時貯留部18から繰り出されて3番目に識別部17で搬送異常なしと識別した紙幣Sを、分配処理における識別部17での識別の順番(3番目)に対応して記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報から、入金処理において最後から3番目に貯留された千円券の真券かつ正券の現行券であると判定して、千円券の真券かつ正券の現行券用の収納庫52に収納すると共に、記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報から、この紙幣Sに関する貯留種別順序情報を削除し、さらに、今回の分配処理において、この収納庫52に1番目の収納順序で収納した紙幣Sが千円券の真券かつ正券の現行券であるという収納順序および種別を含む収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
制御部81は、このような処理を、一時貯留部18に一時貯留していた全ての紙幣Sについて順次行うことになる。そして、制御部81は、一時貯留部18から繰り出されて最後から3番目に識別部17で搬送異常なしと識別した紙幣Sを、分配処理における識別部17での識別の順番(最後から3番目)に対応して記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報から、入金処理において最初から3番目に貯留された五千円券の真券かつ正券の現行券であると判定して、五千円券の真券かつ正券の現行券用の収納庫52に収納すると共に、記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報から、この紙幣Sに関する貯留種別順序情報を削除し、さらに、この収納庫52に収納したこの紙幣Sが五千円券の真券かつ正券の現行券であるという種別および収納順序を含む収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
制御部81は、次に一時貯留部18から繰り出されて最後から2番目に識別部17で識別した紙幣Sを、分配処理における識別部17での識別の順番(最後から2番目)に対応して記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報から、入金処理において最初から2番目に貯留された千円券の真券かつ正券の現行券であると判定して、千円券の真券かつ正券の現行券用の収納庫52に収納すると共に、記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報から、この紙幣Sに関する貯留種別順序情報を削除し、さらに、この収納庫52に収納したこの紙幣Sが千円券の真券かつ正券の現行券であるという種別および収納順序を含む収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
制御部81は、次に一時貯留部18から繰り出されて最後に識別部17で識別した紙幣Sを、分配処理における識別部17での識別の順番(最後)に対応して記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報から、入金処理において最初に貯留された万円券の真券かつ正券の現行券であると判定して、万円券の真券かつ正券の現行券用の収納庫52に収納すると共に、記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報から、この紙幣Sに関する貯留種別順序情報を削除し、さらに、この収納庫52に収納したこの紙幣Sが万円券の真券かつ正券の現行券であるという種別および収納順序を含む収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
このように、制御部81は、入金処理に続いて行われる分配処理において再度識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と、記憶部82に記憶されている、入金処理時に取得した貯留順序および種別を含む貯留種別順序情報とに基づいて、この紙幣Sの種別を判定して収納先を選択する。
他方、制御部81は、分配処理において、搬送異常があれば、搬送異常の紙幣Sを処理不可と判定して、一時貯留部18、搬送部20および収納庫52の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、搬送異常の紙幣Sを含んで、搬送路65に残留している紙幣Sを取り出すことになる。
このように、一時貯留部18の紙幣Sを収納庫52に収納する分配処理時に、識別部17は、紙幣Sの種別を識別せずに搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、搬送異常がない紙幣Sを処理可能と判定して対応する収納庫52に収納する一方、搬送異常がある紙幣Sを処理不可と判定して、一時貯留部18、搬送部20および収納庫52の駆動を停止して、エラー表示を操作表示部14に表示させる。
以上のように、分配処理において、収納先の収納庫52の選択については、記憶部82に記憶している貯留種別順序情報での種別情報に基づいて行わせているが、このとき、識別部17では、少なくとも斜行や重送など、紙幣Sの搬送状態を監視しており、搬送異常の紙幣Sを検出すると、制御部81は、直ちに搬送異常に起因するエラーとして、搬送駆動を停止させる。これは、搬送異常状態の紙幣Sでは、うまく振り分けができずに搬送ジャムを誘発するためである。したがって、分配処理では、一時貯留部18の貯留種別順序情報を利用しつつ、識別部17の搬送状態の検知情報も活用していることとなる。そして、搬送異常に起因するエラーが発生した後は、制御部81は、操作表示部14へエラー復旧の手順を表示し、操作者へ搬送部20の確認を行わせる。残留紙幣を抜き取らせ、入金部11への戻し入れを行わせてエラー復旧となる。
以上により、分配処理動作において、識別部17の識別は、搬送状態に係るもの(斜行、重送)のみに限定しているため、それ以外の要因(例えば、偽券、汚損)で発生するリジェクトとはならない。搬送異常状態を検出した際でも、エラーにより搬送停止となるため、リジェクト発生はない。したがって、分配処理動作中に識別部17で通常の識別をさせる(入金処理と同じ識別をさせる)場合に比べて、リジェクト紙幣の発生を回避できる効果を奏することになる。
[出金処理]
出金処理は、装置内部の収納庫52に収納されている紙幣Sを外部に取り出し可能となるように出金部12に出金する処理である。
操作表示部14に、出金させる紙幣Sの金額情報とともに出金処理の選択操作が入力されると、制御部81は、金額情報に応じて金種別の出金枚数を決定し、出金対象金種の紙幣Sが収納された収納庫52から、搬送部20によって、例えば図4に太線で示す出金処理ルートで紙幣Sを出金部12に搬送する。
例えば、単一の金種が指定され、一つの第1の収納庫52から紙幣Sを繰り出して出金部12へ搬送する場合を例にとって出金処理を説明すると、以下のようになる。なお、複数金種の組み合わせで出金処理される場合には、適宜、複数ある収納庫52を切り替えながら、単一金種の場合と同じ処理を繰り返すことになる。
つまり、第1の収納庫52が、収納していた紙幣Sを一枚ずつ分離し計数しつつ間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、分岐搬送路61~63の適宜のもの、収納搬送路57、上下搬送路55の上側送路部55a、入金搬送路21の中間送路部21bおよび出金搬送路35が、出金部12に向けて搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別順序と搬送異常の有無とを再度識別することになる。なお、このとき、識別部17は、真偽、正損、金種および券種を含む種別の識別は行わない。
そして、制御部81は、搬送異常がなければ、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と、記憶部82に記憶されている、この第1の収納庫52の収納順序および種別を含む収納種別順序情報とに基づいて、この紙幣Sの種別を取得して計数する。このときの識別順序は、第1の収納庫52の収納種別順序情報の順序とは逆順となる。このように種別を取得して計数した紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21bおよび出金搬送路35で出金部12に出金させる。このとき、制御部81は、記憶部82に記憶している、この第1の収納庫52の収納種別順序情報の中から、この紙幣Sに関する収納種別順序情報を削除する。
例えば、第1の収納庫52からの出金処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が1番目である場合、これに対応して記憶部82に記憶されている第1の収納庫52における収納順序が出金処理開始時に最後であった収納種別順序情報の種別を、出金部12に出金させる種別とする。
また、例えば、第1の収納庫52からの出金処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が2番目である場合、これに対応して記憶部82に記憶されている第1の収納庫52における収納順序が出金処理開始時に最後から2番目であった収納種別順序情報の種別を、出金部12に次に出金させる種別とする。
他方、制御部81は、出金処理において、搬送異常があれば、搬送異常の紙幣Sを処理不可と判定して、第1の収納庫52、搬送部20および出金部12の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、搬送異常の紙幣Sを含んで、搬送部20に残留している紙幣Sを取り出すことになる。言い換えれば、搬送異常の紙幣Sを検出すると、制御部81は、直ちに搬送異常に起因するエラーが発生したと判定して、第1の収納庫52、搬送部20および出金部12の駆動を停止させる。このように、出金処理では、第1の収納庫52の収納種別順序情報を利用しつつ、識別部17の搬送状態の検知情報も活用していることとなる。
搬送異常に起因するエラーが発生した後は、制御部81は、操作表示部14へエラー復旧の手順を表示し、操作者へ搬送路65の確認を行わせる。残留紙幣を抜き取らせ、入金部11より戻し入れを行わせてエラー復旧となる。
分配処理動作と同じく出金処理動作においても、識別部17の種別は、搬送状態に係るもの(斜行、重送)のみに限定しているため、それ以外の要因(例えば、偽券、汚損)で発生するリジェクトとはならない。搬送異常状態を検出した際でも、エラーにより搬送停止となるため、リジェクト発生はない。したがって、出金処理動作中に識別部17で通常の識別をさせる(入金処理と同じ識別をさせる)場合に比べて、リジェクト紙幣の発生を回避できる効果を奏することになる。
以上のように、収納庫52の紙幣Sを出金部12に出金する出金処理時に、識別部17は、紙幣Sの種別を識別せずに搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、搬送異常がない紙幣Sを処理可能と判定して出金部12に出金する一方、搬送異常がある紙幣Sを処理不可と判定して、収納庫52、搬送部20および出金部12の駆動を停止して、エラー表示を操作表示部14に表示させる。
出金処理時に、制御部81の制御により、収納庫52がそれぞれ必要な枚数の紙幣Sを一枚ずつ繰り出し、繰り出された紙幣Sを搬送部20が搬送して、識別部17を通過させる。このとき、識別部17では、少なくとも斜行や重送など、紙幣Sの搬送状態を監視する。すなわち、分配処理時と同様に、識別部17での識別は、搬送状態に係るものに限定しており、金種と券種の情報は、分配処理時等の収納庫52への収納時に記憶部82に記憶している収納種別順序情報に基づいて得ることになる。
なお、出金処理時に、収納庫52から繰り出された搬送異常の紙幣Sは、搬送異常が重送である場合に枚数が特定できないため、この繰り出しを行った収納庫52の在り高が不明瞭となる。
また、例えば、出金動作中に搬送ジャムなどのエラーが発生した場合、その時に繰り出しを行っていた収納庫52は在り高が不明瞭となる。これは、一つの収納庫52だけとは限らない。出金処理では、出金される紙幣Sの種別に応じて、順次、金種別の収納庫52を切り替えて出金していくことになるが、一の収納庫52から紙幣Sが繰り出された後、すぐに次の収納庫52から紙幣Sが繰り出され始めたときに、エラーが発生した場合は、一の収納庫52から繰り出された紙幣Sが出金部12まで到達しておらず途中の搬送路65上で停まった状況となる。このような場合、一の収納庫52および次の収納庫52の2つが、在り高が不明の収納庫となり得る。
エラー復旧後に、在り高が不明瞭となった収納庫52がある場合に、従来は自己精査処理に入る。この自己精査処理は、精査対象の収納庫52の紙幣Sを全て繰り出して一時貯留部18に貯留させ、その後、一時貯留部18の紙幣Sを識別部17で識別して種別を取得しつつ計数し、精査対象の収納庫52に戻して、この収納庫52の在り高を確定する処理である。
但し、このように自己精査処理をエラー復旧後に即座に行うという従来と同様の運用では、処理時間が掛かってしまい、次の処理を直ちに行えないという問題が生じてしまう。実施形態では、処理効率の向上のため、自己精査を後回しにする運用となっている。このように自己精査の後回し運用によって、処理効率の向上が見込めることになる。
すなわち、収納庫52からの出金動作中にエラーが発生したら、エラーの復旧を行う。そして、エラー復旧後に在り高が不明瞭になったときでも自己精査を開始しないで、この収納庫52には自動精査が必要というフラグ(自己精査要フラグ)だけ立てて復旧させる。その場合、次からの出金は識別部17で真偽、正損、金種および券種の判定および計数を行い、それにしたがって出金処理を行う。この識別部17で真偽、正損、金種および券種の判定および計数を行う出金処理において、リジェクト紙幣Sは一時貯留部18に入れて、出金完了後に、出金元の収納庫52、前方カセット51および出金元以外の収納庫52のうちの設定されたものに収納させる。
その後、自己精査を開始できるタイミングとなったら制御部81は自己精査を開始する。自己精査を開始できるタイミングは、例えば、上位端末からフラグの立った収納庫52の自己精査の指示を受けた場合や、操作者による取引動作が終了して紙幣処理装置10が待機状態となった場合などである。なお、エラーの復旧後に即座に自己精査処理動作を行わせてから、出金処理を再開するようにしても良い。
以上のように、装置内在り高が不明瞭となったときに行われるエラー復旧処理時に、制御部81は、在り高が不明瞭となった収納庫52の紙幣Sを、この収納庫52から全て繰り出し、識別部17で識別しつつ、この収納庫52に戻す自己精査処理が必要である旨の自己精査要フラグをこの収納庫52と関連付けて記憶部82へ記憶させる。そして、エラー復旧処理後、すなわち、搬送部20に残留している紙幣Sが全て取り出された後、制御部81は、残りの出金処理を行って、取引処理を終了させる。その後、制御部81は、記憶部82に記憶されている自己精査要フラグに基づいて、この自己精査要フラグと関連付けられている収納庫52について、自己精査処理が可能なタイミングで自己精査処理を行う。
このように、紙幣処理装置10は、エラー発生のない通常処理時は出金リジェクトがない効率の良い処理で動作し、搬送異常(ジャム)発生後は紙幣Sの種別を識別部17で識別して出金金額をしっかり確認して出金する動作に切り替わる。また、エラー復旧処理では、自己精査が必要となった場合でも、直ちに自己精査を行わせるのではなく、自己精査処理を後回しにして、操作者を待たせないようにする。このため、処理効率が向上する効果を奏する。
なお、上記では、単一金種を収納している収納庫52からの出金を例にとり説明を行ったが、複数金種混合で紙幣を収納している収納庫52からの出金についても同様に、識別部17が搬送異常の有無を検知して、出金部12への搬送の可否を判断する。搬送異常があって出金部12への搬送が不可となった場合に、制御部81は、処理効率の向上のため、自己精査を後回しにする運用行わせる。このような金種混合で紙幣Sを収納している収納庫52からの出金処理時も、エラーの復旧後に即座に自己精査処理動作を行わせてから、出金処理を再開するようにしても良い。
制御部81は、出金処理において、第1の収納庫52の紙幣Sを出金部12に出金させることで、第1の収納庫52の紙幣Sの出金が終了すると、第2の収納庫52に対して、上記した処理を同様に行う。このようにして、収納庫52の適宜のものから、金額情報に応じた金種別の出金枚数を出金させると、操作者が、出金部12から出金した紙幣Sを取り出す。
[カセット回収処理]
カセット回収処理は、装置内部の収納庫52に収納されている紙幣Sを前方カセット51に収納して前方カセット51ごと外部に回収する処理である。
「カセット回収往路処理」
操作表示部14に、カセット回収処理の選択操作が入力されると、制御部81は、収納庫52に収納されている紙幣Sを収納庫52ごとに、搬送部20によって、例えば図5に太線で示すカセット回収往路ルートで一時貯留部18に搬送するカセット回収往路処理(移動処理)を行う。
つまり、第1の収納庫52が、収納していた紙幣Sを一枚ずつ分離し計数しつつ間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、分岐搬送路61~63の適宜のもの、収納搬送路57、上下搬送路55の上側送路部55a、入金搬送路21の中間送路部21bおよび後側送路部21cが一時貯留部18に向けて搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別の順序と搬送異常の有無とを識別することになる。なお、このとき、識別部17は、真偽、正損、金種および券種を含む種別の識別は行わない。
そして、制御部81は、搬送異常がなければ、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている第1の収納庫52の収納種別順序情報とに基づいて、この紙幣Sの種別を得て計数する。このときの識別順序は、第1の収納庫52の収納種別順序情報の順序とは逆順となる。このように種別を取得した紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21bおよび後側送路部21cで一時貯留部18に貯留させる。
このとき、制御部81は、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている第1の収納庫52の収納種別順序情報とに基づいて判定した紙幣Sの種別と、識別部17で識別した紙幣Sの識別順序とに基づいて、一時貯留部18に貯留する紙幣Sの種別と貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。また、制御部81は、記憶部82に記憶している第1の収納庫52の収納種別順序情報の中から、この紙幣Sに関する収納種別順序情報を削除する。
例えば、第1の収納庫52からのカセット回収往路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が1番目である場合、これに対応して記憶部82に記憶されている第1の収納庫52における収納順序がカセット回収往路処理開始時に最後であった収納種別順序情報の種別を、一時貯留部18における貯留順序の1番目と対応付けた貯留種別順序情報を、今回のカセット回収往路処理時の貯留種別順序情報として記憶部82に記憶させる。
また、例えば、第1の収納庫52からのカセット回収往路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が2番目である場合、これに対応して記憶部82に記憶されている第1の収納庫52における収納順序がカセット回収往路処理開始時に最後から2番目であった収納種別順序情報の種別を、一時貯留部18における貯留順序の2番目と対応付けた貯留種別順序情報を、今回のカセット回収往路処理時の貯留種別順序情報として記憶部82に記憶させる。
他方、制御部81は、カセット回収往路処理において、搬送異常があれば、搬送異常の紙幣Sを処理不可と判定して、第1の収納庫52、搬送部20および一時貯留部18の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、搬送異常の紙幣Sを含んで、搬送部20に残留している紙幣Sを取り出すことになる。
以上のように、第1の収納庫52の紙幣Sを一時貯留部18に移動させる移動処理であるカセット回収往路処理時に、識別部17は、紙幣Sの種別を識別せずに搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、搬送異常がない紙幣Sを処理可能と判定して一時貯留部18に移動させる一方、搬送異常がある紙幣Sを処理不可と判定して、第1の収納庫52、搬送部20および一時貯留部18の駆動を停止して、エラー表示を操作表示部14に表示させる。
以上のようにして、制御部81は、第1の収納庫52から全ての紙幣Sを一枚ずつ繰り出し、繰り出された紙幣Sを搬送部20で搬送して、識別部17を通過させる。このとき、識別部17では、少なくとも斜行や重送など、紙幣Sの搬送状態を監視する。すなわち、分配処理時や出金処理時と同様に、識別部17の種別は、搬送状態に係るものに限定しており、金種と券種の情報は予め記憶部82に記憶している第1の収納庫52の収納種別順序情報に基づいて判定し計数する。搬送異常の紙幣Sを検出すると、制御部81は、直ちに搬送異常に起因するエラーが発生したとして、第1の収納庫52および搬送部20の駆動を停止させる。このように、カセット回収往路処理では、第1の収納庫52の収納種別順序情報を利用しつつ、識別部17による搬送状態の検知情報も活用していることとなる。カセット回収往路処理においても、前述した他の分配処理や出金処理と同様に、リジェクト発生の抑制の効果を奏することができる。
「カセット回収復路処理」
制御部81は、カセット回収往路処理において第1の収納庫52の紙幣を一時貯留部18に移動させることで、第1の収納庫52に紙幣がなくなると、一時貯留部18から、搬送部20によって、図6に太線で示すカセット回収復路ルートで紙幣Sを前方カセット51に搬送するカセット回収復路処理(収納処理)を行う。
つまり、一時貯留させていた紙幣Sを一時貯留部18が一枚ずつ間隔をあけて繰り出し、入金搬送路21の後側送路部21cおよび中間送路部21b、上下搬送路55の上側送路部55aおよび下側送路部55bが搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別の順序と搬送異常の有無とを再度識別することになる。なお、このとき、識別部17は、真偽、正損、金種および券種を含む種別の識別は行わない。
そして、制御部81は、搬送異常がなければ、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報とに基づいて、この紙幣Sの種別を取得して計数する。このときの識別順序は、一時貯留部18の貯留種別順序情報の順序とは逆順となる。このように種別を得た紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21b、上下搬送路55の上側送路部55aおよび下側送路部55bが搬送して前方カセット51に収納する。
このとき、制御部81は、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報とに基づいて判定した紙幣Sの種別と、識別部17で識別した紙幣Sの識別順序とに基づいて、前方カセット51に収納する紙幣Sの種別と収納順序とを関連付けた収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。また、制御部81は、記憶部82に記憶している一時貯留部18の貯留種別順序情報の中から、この紙幣Sに関する貯留種別順序情報を削除する。
例えば、一時貯留部18からのカセット回収復路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が1番目である場合、これに対応して記憶部82に記憶されている一時貯留部18における収納順序がカセット回収復路処理開始時に最後であった貯留種別順序情報の種別を、前方カセット51における収納順序の1番目と対応付けた収納種別順序情報を、今回のカセット回収復路処理時の収納種別順序情報として記憶部82に記憶させる。
また、例えば、一時貯留部18からのカセット回収復路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が2番目である場合、これに対応して記憶部82に記憶されている一時貯留部18における収納順序がカセット回収復路処理開始時に最後から2番目であった貯留種別順序情報の種別を、前方カセット51における収納順序の2番目と対応付けた収納種別順序情報を、今回のカセット回収復路処理時の収納種別順序情報として記憶部82に記憶させる。
他方、制御部81は、カセット回収復路処理において、搬送異常があれば、搬送異常の紙幣Sを処理不可と判定して、一時貯留部18、搬送部20および前方カセット51の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、搬送異常の紙幣Sを含んで、搬送部20に残留している紙幣Sを取り出すことになる。
このように、一時貯留部18の紙幣Sを前方カセット51に収納するカセット回収復路処理時に、識別部17は、紙幣Sの種別を識別せずに搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、搬送異常がない紙幣Sを処理可能と判定して前方カセット51に収納する一方、搬送異常がある紙幣Sを処理不可と判定して、一時貯留部18、搬送部20および前方カセット51の駆動を停止して、エラー表示を操作表示部14に表示させる。
カセット回収復路処理においても、カセット回収往路処理と同じように、紙幣Sの識別部17を通過する時の識別を搬送状態に係るものに限定することにより、リジェクト紙幣Sの発生の回避の効果を奏することができる。
制御部81は、カセット回収復路処理において、一時貯留部18の紙幣Sを前方カセット51に移動させることで、一時貯留部18に紙幣Sがなくなると、次の収納庫52に対して、上記したカセット回収往路処理およびカセット回収復路処理を同様に行う。このようにして、全ての収納庫52について、収納庫52ごとにカセット回収往路処理およびカセット回収復路処理を行って、全ての収納庫52の紙幣Sを前方カセット51に収納する。そして、操作者が、この前方カセット51を紙幣処理装置10から取り出す。
[カセット補充処理]
カセット補充処理は、装置外部で前方カセット51に装填された紙幣Sを前方カセット51ごと紙幣処理装置10にセットして収納庫52に補充する処理である。
「カセット補充往路処理」
前方カセット51がセットされて、操作表示部14に、カセット補充処理の選択操作が入力されると、制御部81は、前方カセット51から、搬送部20によって、図7に太線で示すカセット補充往路ルートで紙幣Sを一時貯留部18に搬送するカセット補充往路処理(補充処理)を行う。カセット補充往路処理では、前方カセット51から紙幣Sを一時貯留部18に搬送する。
つまり、前方カセット51が、収納していた紙幣Sを一枚ずつ分離し計数しつつ間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、上下搬送路55の下側送路部55bおよび上側送路部55a、入金搬送路21の中間送路部21bおよび後側送路部21cが一時貯留部18に向けて搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別を行う。具体的に、識別部17は、入金処理時と同様、紙幣Sが、真券であるか偽券であるかの真偽識別と、汚損が少ない正券であるか汚損が多い損券であるかの正損識別とを行い、真券かつ正券については、いずれの金種であるかの金種識別と、世代情報である券種識別とを行う。加えて、識別部17は、紙幣Sの重送および斜行を含む搬送異常の有無を識別することになる。
識別部17の識別の結果、種別が真券かつ正券であって搬送異常がない受け入れ可能と識別された正常紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21bおよび後側送路部21cが一時貯留部18に搬送して、一時貯留部18が貯留する(図7の太実線参照)。それ以外の紙幣Sであって識別部17が受け入れ不可と識別した紙幣Sについては、入金搬送路21の中間送路部21bが出金搬送路35に搬送し、出金搬送路35が出金部12に搬送する(図7の太実線から太破線参照)。なお、制御部81は、カセット補充往路処理中に、出金部12に搬送する紙幣Sが生じた場合、それに応じて、一時貯留部18を停止させ、一時貯留部18に貯留する紙幣Sと紙幣Sとの取り込み間隔が一定になるように制御する。
前方カセット51の紙幣Sを全て一時貯留部18および出金部12のいずれかに搬送した状態になると、識別部17の識別結果から一時貯留部18に一時貯留させている紙幣Sの金種別の枚数および総額等の金額情報を操作表示部14が表示する。出金部12に搬送された紙幣Sは、外部に取り出し可能となる。なお、出金部12とは別に、紙幣Sを外部に取り出し可能とするリジェクト部を設けて、このリジェクト部に受け入れ不可の紙幣Sを搬送するようにしても良い。
このカセット補充往路処理において、入金処理と同様、制御部81は、種別が真券かつ正券であり搬送異常がない、受け入れ可能と識別された正常紙幣Sを、識別部17での識別後に一時貯留部18に貯留することになるが、その際に、この紙幣Sの真偽(すなわち真券であること)、正損(すなわち正券であること)、金種および券種を含む種別と一時貯留部18への貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。このような処理を、このカセット補充往路処理において、一時貯留部18に一時貯留する全ての紙幣Sについて行う。
このように、紙幣Sが装填された状態でセットされ、装填されている紙幣Sを繰り出す前方カセット51の紙幣Sを一時貯留部18に貯留するカセット補充往路処理時に、制御部81は、紙幣Sの種別と一時貯留部18への貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
このカセット補充往路処理において、制御部81は、識別部17により、種別が真券かつ正券であり搬送異常がない、受け入れ可能と識別された正常紙幣Sを、識別部17での識別後に一時貯留部18へ搬送して貯留させる一方、識別部17で正常紙幣と判定されない紙幣Sは、リジェクト券として、出金部12へ搬送し返却する。このとき、カセット補充往路処理にて受け付けた正常紙幣Sについては、この紙幣Sの真偽(すなわち真券であること)、正損(すなわち正券であること)、金種および券種を含む種別と、一時貯留部18への貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。なお、貯留種別順序情報の種別には、真偽、正損、金種および券種に加えて、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の中から、少なくともいずれか一つを含めても良い。
「カセット補充復路処理」
カセット補充往路処理後の金額情報の操作表示部14の表示後、操作者が操作表示部14に承認操作を入力すると、紙幣処理装置10は、カセット補充往路処理で一時貯留部18に一時貯留した紙幣Sを、搬送部20によって、図3に太線で示すカセット補充復路ルートで装置内部の収納庫52に収納するカセット補充復路処理(収納処理)を行う。このカセット補充復路処理は、上記した分配処理と同様である。よって、制御部81は、カセット補充復路処理時に、一時貯留部18の貯留種別順序情報を基に搬送先の収納庫52を選択すると共に、収納庫52ごとの収納種別順序情報を作成して記憶部82へ記憶させる。なお、貯留種別順序情報に、真偽、正損、金種および券種に加えて、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報のうちの少なくともいずれか一つを含めた場合、収納種別順序情報にも、真偽、正損、金種および券種に加えて、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報のうちの同じ少なくともいずれか一つを含めことになる。
よって、一時貯留部18の紙幣Sを収納庫52に収納するカセット補充復路処理時に、識別部17は、紙幣Sの種別を識別せずに搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、搬送異常がない紙幣Sを処理可能と判定して対応する収納庫52に収納する一方、搬送異常がある紙幣Sを処理不可と判定して、一時貯留部18、搬送部20および収納庫52の駆動を停止して、エラー表示を操作表示部14に表示させる。
以上に述べたように、紙幣処理装置10は、第1モードに設定されている場合、入金部11の紙幣Sを一時貯留部18に貯留する入金処理時において、制御部81が、識別部17で識別した紙幣Sの種別と一時貯留部18への貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。また、入金処理後に行われる分配処理時において、制御部81は、再度識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と、記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報とに基づいて、この紙幣Sの種別を判定する。したがって、入金処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別を、分配処理時においても使用することができるため、入金処理時に紙幣Sに関して識別部17で識別した種別の有効利用が可能となる。その結果、分配処理時においても識別部17で種別を識別する場合と比べて、識別部17による電力消費を抑制することができる。
また、紙幣処理装置10は、第1モードに設定されている場合、前方カセット51の紙幣Sを一時貯留部18に貯留するカセット補充往路処理時において、制御部81が、識別部17で識別した紙幣Sの種別と一時貯留部18への貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。また、カセット補充往路処理後に行われるカセット補充復路処理時において、制御部81は、再度識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と、記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報とに基づいて、この紙幣Sの種別を判定する。したがって、カセット補充往路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別を、カセット補充復路処理時においても使用することができるため、カセット補充往路処理時に紙幣Sに関して識別部17で識別した種別の有効利用が可能となる。その結果、カセット補充復路処理時においても識別部17で紙幣Sの種別を識別する場合と比べて、識別部17による電力消費を抑制することができる。
ここで、テープ式の一時貯留部18は、紙幣Sを、貯留したときの状態(紙幣Sの傾きや紙幣Sの間隔など)を保ったまま繰り出すことができる特徴がある。しかしながら、テープ式の一時貯留部18であっても、一時貯留部18から収納庫52への分配処理およびカセット補充復路処理や、一時貯留部18から前方カセット51へのカセット回収復路処理においては、その前に識別部17により正常紙幣(偽券でない紙幣であるとともに汚損もなく搬送状態も良好である紙幣)と認定された紙幣Sが、再度識別部17で種別の識別を行うことにより、リジェクト券と識別される場合がある。主原因としては、搬送路65上で紙幣Sが搬送される間に紙幣Sの姿勢が変化した結果、識別部17で識別不能と判断されるためと考えられる。本来正常紙幣であるはずの紙幣Sが、分配処理時やカセット補充復路処理時、カセット回収復路処理時にリジェクト券となると、処理の効率を著しく低下させてしまう。
これに対して、紙幣処理装置10は、第1モードに設定されている場合、一時貯留部18の紙幣Sを収納庫52に収納する分配処理時およびカセット補充復路処理時と、一時貯留部18の紙幣Sを前方カセット51に収納するカセット回収復路処理時とにおいては、識別部17が、紙幣Sの種別を識別せずに搬送異常の有無を識別することになる。よって、リジェクト紙幣Sの発生を抑制することができる。すなわち、分配処理動作中、カセット補充復路処理動作中およびカセット回収復路処理動作中の識別部17の識別は、搬送状態に係るもの(斜行、重送)のみに限定しているため、それ以外の要因(例えば、偽券、汚損)で発生するリジェクトはない。したがって、分配処理動作中、カセット補充復路処理動作中およびカセット回収復路処理動作中に識別部17で通常の識別を行う(入金処理と同じ識別をさせる)場合に比べて、リジェクトを回避できる効果を奏することになる。言い換えれば、例えば、入金処理動作時に識別部17を通過する際に正常券と判定された正常紙幣Sは、その後の搬送で、搬送姿勢や汚損状態が多少変化した場合であっても、正常紙幣Sとして収納庫52あるいは前方カセット51へ搬送する。これによって、リジェクト紙幣の発生を抑制する効果を奏することになり、処理動作の効率を高めることができる。
また、紙幣処理装置10は、第1モードに設定されている場合、制御部81が、分配処理時およびカセット補充復路処理時に、識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と、記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報とに基づいて、収納庫52に収納する紙幣Sの種別と収納庫52への収納順序とを関連付けた収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。したがって、入金処理時およびカセット補充往路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別を、出金処理時およびカセット回収往路処理時にも使用可能となる。よって、入金処理時およびカセット補充往路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別のさらなる有効利用が可能となる。その結果、出金処理時およびカセット回収往路処理時においても識別部17で紙幣Sの種別を識別する場合と比べて、識別部17による電力消費をさらに抑制することができる。
ここで、テープ式の収納庫52は、紙幣Sを、収納したときの状態(紙幣Sの傾きや紙幣Sの間隔など)を保ったまま繰り出すことができる特徴がある。しかしながら、テープ式の収納庫52であっても、収納庫52から出金部12への出金処理や、収納庫52から一時貯留部18へのカセット回収往路処理においては、その前に識別部17によって正常紙幣S(偽券でない紙幣Sであるとともに、汚損もなく搬送状態も良好である紙幣S)と認定された紙幣Sが、再度識別部17で種別の識別を行うことにより、リジェクト券と識別される場合がある。このように本来正常券であるはずの紙幣Sが、出金処理時やカセット回収往路処理時にリジェクト券となると、処理の効率を著しく低下させてしまう。
これに対して、紙幣処理装置10は、第1モードに設定されている場合、収納庫52の紙幣Sを出金部12へ出金する出金処理時および収納庫52の紙幣Sを一時貯留部18へ貯留するカセット回収往路処理時に、識別部17は、紙幣Sの種別を識別せずに搬送異常の有無を識別することになる。よって、出金処理時およびカセット回収往路処理時のリジェクト紙幣Sの発生を抑制することができる。
また、紙幣処理装置10は、装置内在り高が不明瞭となったときに行われるエラー復旧処理時に、制御部81が、在り高が不明瞭となった収納庫52の紙幣Sを収納庫52から全て繰り出し、識別部17で識別しつつ、この収納庫52に戻す自己精査処理が必要である自己精査要フラグを記憶部82へ記憶させて、当該エラー復旧処理後、取引処理を終了させた後、この自己精査要フラグに基づいて、自己精査処理が可能なタイミングで在り高が不明瞭となった収納庫52の自己精査処理を行う。よって、エラー復旧処理では、自己精査が必要となった場合でも、直ちに自己精査を行わせるのではなく、自己精査処理を後回しにして、操作者を待たせないようにするため、処理効率が向上する効果を奏する。
また、紙幣処理装置10は、エラー発生のない通常の出金処理では、出金リジェクト紙幣を出さない効率の良い処理で動作する一方、搬送異常(ジャム)発生後の出金処理では、識別部17で紙幣Sの種別を識別し、この紙幣Sの種別を使用して出金金額をしっかり確認して出金する動作に切り替えている。よって、処理効率が向上する効果を奏する。
<第2モード>
次に、第2モードでの作動について、第1モードでの作動との相違部分を中心に説明する。
[入金処理]
第2モードの入金処理は、第1モードの入金処理とほぼ同様である。但し、第2モードの入金処理では、貯留種別順序情報の種別に、真偽(すなわち真券であること)、正損(すなわち正券であること)、金種および券種に加えて、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の中から、少なくともいずれか一つを含めている。ここでは、貯留種別順序情報の種別に、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報を全て含んでいる場合を例にとり説明する。
[分配処理]
入金処理後の金額情報の操作表示部14の表示後、操作者が操作表示部14に承認操作を入力すると、制御部81の制御によって、一時貯留部18、搬送部20および8台の収納庫52の適宜のものが図3に太線で示す分配処理ルートで紙幣Sを搬送し収納する。
つまり、一時貯留させていた紙幣Sを一時貯留部18が一枚ずつ間隔をあけて繰り出し、入金搬送路21の後側送路部21cおよび中間送路部21bと、上下搬送路55の上側送路部55aと収納搬送路57とが搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が、紙幣Sに対し、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の全項目の識別と、識別の順序と、搬送異常の有無とを再度識別することになる。
そして、制御部81は、搬送異常がなければ、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報とに基づいて、この紙幣Sに対して入金処理時に得た種別を取得すると共に、分配処理において識別部17で識別した、この紙幣Sの種別と比較する。これらの種別が全ての項目において一致する場合、この紙幣Sの種別を、この種別として計数する。このときの識別順序は、入金処理時の一時貯留部18の貯留種別順序情報の順序とは逆順となる。
すなわち、例えば、一時貯留部18から繰り出されて識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が1番目である場合、これに対応して記憶部82に記憶されている一時貯留部18における貯留順序が分配処理開始時に最後であった貯留種別順序情報の種別と、分配処理において識別部17で識別した、この紙幣Sの種別とを比較する。そして、真偽が一致し、かつ正損が一致し、かつ金種が一致し、かつ券種が一致し、かつ汚損率が許容範囲内で一致し、かつ記番号が一致し、かつ表裏情報が一致し、かつ天地情報が一致する場合、この紙幣Sの種別を、この種別として計数する。
また、例えば、一時貯留部18から繰り出されて識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が2番目である場合、これに対応して記憶部82に記憶されている一時貯留部18における貯留順序が分配処理開始時に最後から2番目であった貯留種別順序情報の種別と、分配処理において識別部17で識別した、この紙幣Sの種別とを比較する。そして、真偽が一致し、かつ正損が一致し、かつ金種が一致し、かつ券種が一致し、かつ汚損率が許容範囲内で一致し、かつ記番号が一致し、かつ表裏情報が一致し、かつ天地情報が一致する場合、この紙幣Sの種別を、この種別として計数する。
このように入金処理時と分配処理時とで種別の全項目が一致して計数した紙幣Sを、制御部81の制御により、中間送路部21b、収納搬送路57および分岐搬送路61~63の適宜のものが、8台の収納庫52のうちの、この判定した種別の紙幣Sを収納する収納先のものに収納させる。言い換えれば、制御部81は、入金処理時に得て記憶部82に記憶した貯留種別順序情報での種別情報と、分配処理時に得た識別部17での種別情報との一致を確認して、一致する場合、この種別情報にしたがって、但し、貯留種別順序情報とは逆順で、紙幣Sを一枚ずつ、収納先である収納庫52に選択搬送する。
また、制御部81は、分配処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報とに基づいて判定した、入金処理時に得た真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の種別と、分配処理において識別部17で識別した、この紙幣Sの真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の種別とが、全項目において一致する場合、この紙幣Sの種別と、識別部17で識別した紙幣Sの識別順序とに基づいて、この紙幣Sの収納先の収納庫52に収納するこの紙幣Sの種別とこの収納庫52への収納順序とを関連付けた収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。すなわち、制御部81は、分配処理時に、入金処理時に得た一時貯留部18の貯留種別順序情報と、分配処理時に得た識別部17での識別結果とを基に、紙幣Sの搬送先を選択するのに加えて、収納庫52ごとの収納種別順序情報を作成して記憶部82へ記憶させる。また、制御部81は、記憶部82に記憶している貯留種別順序情報の中から、この紙幣Sに関する貯留種別順序情報を削除する。
例えば、分配処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が1番目であって、これに対応して記憶部82に記憶されている貯留順序が分配処理開始時に最後であった貯留種別順序情報の種別と、分配処理において識別部17で識別したこの紙幣Sの種別とが、全項目において一致して、この紙幣Sを第1の収納庫52に収納する場合、この紙幣Sの種別と第1の収納庫52への収納順序の1番目とを対応付けた収納種別順序情報を、第1の収納庫52の今回の分配処理時の収納種別順序情報として記憶部82に記憶させる。
また、例えば、分配処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が2番目であって、これに対応して記憶部82に記憶されている貯留順序が分配処理開始時に最後から2番目であった貯留種別順序情報の種別と、分配処理において識別部17で識別したこの紙幣Sの種別とが、全項目において一致して、この紙幣Sを第1の収納庫52に収納する場合、この紙幣Sの種別と第1の収納庫52への収納順序の2番目とを対応付けた収納種別順序情報を、第1の収納庫52の今回の分配処理時の収納種別順序情報として記憶部82に記憶させる。
また、例えば、分配処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が3番目であって、これに対応して記憶部82に記憶されている貯留順序が分配処理開始時に最後から3番目であった貯留種別順序情報の種別と、分配処理において識別部17で識別したこの紙幣Sの種別とが、全項目において一致して、この紙幣Sを第2の収納庫52に収納する場合、この紙幣Sの種別と第2の収納庫52への収納順序の1番目とを対応付けた収納種別順序情報を、第2の収納庫52の今回の分配処理時の収納種別順序情報として記憶部82に記憶させる。
このように、一時貯留部18の紙幣Sを収納庫52に収納する分配処理時に、識別部17は、紙幣Sの種別および搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、当該分配処理時に識別した種別と、当該識別した紙幣Sの識別順序および記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報に基づいて判定した入金処理時に得た種別とが、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報のうちの少なくとも一項目において不一致となる種別不一致、および、搬送異常のいずれもない紙幣Sを処理可能と判定して収納庫52に収納する。言い換えれば、制御部81は、入金処理に続いて行われる分配処理において再度識別部17で識別した紙幣Sの種別と、分配処理時の識別順序と記憶部82に記憶されている入金処理時の貯留種別順序情報とに基づいて、この紙幣Sの種別を判定する。
他方、制御部81は、分配処理において、種別不一致および搬送異常の少なくともいずれか一方があれば、この紙幣Sを処理不可と判定して、一時貯留部18、搬送部20および収納庫52の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、種別不一致および搬送異常の少なくともいずれか一方があった紙幣Sを含んで、搬送路65に残留している紙幣Sを取り出すことになる。
このように、一時貯留部18の紙幣Sを収納庫52に収納する分配処理時に、識別部17は、紙幣Sの種別を識別しつつ搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、分配処理時および入金処理時での種別不一致、および、搬送異常のいずれもない紙幣Sを処理可能と判定して対応する収納庫52に収納する一方、分配処理時および入金処理時での種別不一致および搬送異常の少なくともいずれか一方がある紙幣Sを処理不可と判定して、一時貯留部18、搬送部20および収納庫52の駆動を停止して、エラー表示を操作表示部14に表示させる。
上記第1モードでの分配処理は、図3に示す搬送ルート上にある識別部17で分配処理動作中に再度識別させたとき、識別部17の識別情報は、搬送状態に係るものに限定していた。これに対し、第2モードでの分配処理では、搬送状態に加えて、識別部17により真偽、正損、金種、券種、記番号、表裏情報および天地情報の種別情報を識別している。そして、搬送状態が正常であれば、分配処理での真偽、正損、金種、券種、記番号、表裏情報および天地情報の種別情報と、記憶部82に記憶している入金処理時に取得した真偽、正損、金種、券種、記番号、表裏情報および天地情報の貯留種別順序情報と、の比較を行っている。これにより、例えば、一時貯留部18に紙幣Sを一時貯留させた状態で紙幣処理装置10の電源がOFFにされ、その状態で一時貯留部18へのアクセスがあって紙幣Sが抜き取られた場合でも、真偽、正損、金種、券種、記番号、表裏情報および天地情報のいずれかの種別情報が一致しないことを検知することで、違算を検知することが可能となる。すなわち、簡素な構成で違算を防止するという効果を、分配処理中に発揮することが可能となる。しかもこの機能は新たな部品を必要とせず現行メカのまま当該制御を加えるだけで実現可能である。
言い替えれば、第2モードでの分配処理では、入金処理時の貯留種別順序情報に含める種別および分配処理時に識別部17で識別する種別を、真偽、正損、金種および券種の情報に加えて、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報として、それぞれの一致を確認する。これにより、貯留種別順序情報に含まれる真偽、正損、金種および券種と、分配処理時の識別部17で識別した真偽、正損、金種および券種との比較のみを行う場合よりも、不正アクセスをより厳格に見抜くことができる。制御部81は、同一の紙幣Sについて、貯留種別順序情報から得られた種別と、分配処理時に識別部17で識別した種別との比較で種別不一致となったときには、操作表示部14へ種別不一致エラーの報知を行うと共に、操作者へ自己精査の実施を行うように促す。これにより、現金違算の異常状態を回避することが可能となる。しかもこの機能は新たな部品を必要とせず現行メカのまま当該制御を加えるだけで実現可能である。
[出金処理]
操作表示部14に、出金させる紙幣Sの金額情報とともに出金処理の選択操作が入力されると、制御部81は、金額情報に応じて金種別の出金枚数を決定し、出金対象金種の紙幣Sが収納された収納庫52ごとに、搬送部20によって、例えば図4に太線で示す出金処理ルートで紙幣Sを出金部12に搬送する。
つまり、収納庫52のうち出金対象金種である出金元のものが、収納していた紙幣Sを一枚ずつ分離し計数しつつ間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、分岐搬送路61~63の適宜のもの、収納搬送路57、上下搬送路55の上側送路部55a、入金搬送路21の中間送路部21bおよび出金搬送路35が出金部12に向けて搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が、紙幣Sに対し、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報と、識別の順序と、搬送異常の有無とを再度識別することになる。
そして、制御部81は、搬送異常がなければ、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている出金元の収納庫52の収納種別順序情報とに基づいて、この紙幣Sの分配処理時あるいは後述するカセット補充復路処理時に得た種別を取得すると共に、この種別と、出金処理において識別部17で識別した、この紙幣Sの種別とを比較して一致をみる。このときの識別部17での識別順序は、出金元の収納庫52の収納種別順序情報の順序とは逆順となる。
例えば、第1の収納庫52からの出金処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が1番目である場合、これに対応して記憶部82に記憶されている第1の収納庫52における収納順序が出金処理開始時に最後であった収納種別順序情報の種別と、出金処理において識別部17で識別した、この紙幣Sの種別とを比較して一致をみる。
また、例えば、第1の収納庫52からの出金処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が2番目である場合、これに対応して記憶部82に記憶されている第1の収納庫52における収納順序が出金処理開始時に最後から2番目であった収納種別順序情報の種別と、出金処理において識別部17で識別した、この紙幣Sの種別とを比較して一致をみる。
また、例えば、第2の収納庫52からの出金処理時に識別部17で識別した紙幣Sの識別順序が1番目である場合、これに対応して記憶部82に記憶されている第2の収納庫52における収納順序が出金処理開始時に最後であった収納種別順序情報の種別と、出金処理において識別部17で識別した、この紙幣Sの種別とを比較して一致をみる。
そして、種別について、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の全ての項目が一致する場合、制御部81は、この紙幣Sの種別を、この種別として計数する。
このように分配処理時および後述するカセット補充復路処理時と、出金処理時とで種別を得て全ての項目の一致を確認し計数した紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21bおよび出金搬送路35で出金部12に出金させる。このとき、制御部81は、記憶部82に記憶している、出金元の収納庫52の収納種別順序情報の中からこの紙幣Sに関する収納種別順序情報を削除する。言い換えれば、制御部81は、分配処理時および後述するカセット補充復路処理時に得て記憶部82に記憶した収納種別順序情報の種別情報と、出金処理時に得た識別部17での種別情報との一致を確認して、一致する場合、この種別情報にしたがって、但し、収納種別順序情報とは逆順で、紙幣Sを一枚ずつ、出金部12に搬送する。
このように、収納庫52の紙幣Sを出金部12に出金する出金処理時に、識別部17は、紙幣Sの種別および搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、当該識別した種別と、当該識別した紙幣Sの識別順序および記憶部82にこの出金処理時以前に記憶されている収納種別順序情報に基づいて判定した種別とが不一致となる種別不一致、および、搬送異常のいずれもない紙幣Sを出金可能と判定して出金部12に出金する。
他方、制御部81は、識別部17で識別した識別順序と記憶部82に記憶されている収納種別順序情報とに基づく種別と、出金処理時において識別部17で識別した種別とが不一致となる種別不一致、および、搬送異常のいずれか一方がある紙幣Sを、処理不可と判定して、収納庫52、搬送部20および出金部12の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、処理不可の紙幣Sを含んで、搬送部20に残留している紙幣Sを取り出すことになる。
以上のように、収納庫52の紙幣Sを出金部12に出金する出金処理時に、識別部17は、紙幣Sの種別を識別しつつ搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、識別部17で識別した識別順序と記憶部82に記憶されている収納種別順序情報とに基づく種別と、出金処理において識別部17で識別した種別とが不一致となる種別不一致、および、搬送異常が、いずれもない紙幣Sを処理可能と判定して出金部12に出金する一方、種別不一致および搬送異常の少なくともいずれか一方がある紙幣Sを処理不可と判定して、収納庫52、搬送部20および出金部12の駆動を停止して、エラー表示を操作表示部14に表示させる。
第2モードにおいても、収納庫52からの出金動作中にエラーが発生したら、エラーの復旧を行う。そして、エラー復旧後に在り高が不明瞭になったときでも自己精査を開始しないで、この収納庫52には自動精査が必要というフラグ(自己精査要フラグ)だけ立てて復旧させる。
その後、自己精査を開始できるタイミングとなったら制御部81は自己精査を開始する。自己精査を開始できるタイミングは、例えば、上位端末からフラグの立った収納庫52の自己精査の指示を受けた場合や、操作者による取引動作が終了して紙幣処理装置10が待機状態となった場合などである。なお、エラーの復旧後に即座に自己精査処理動作を行わせてから、出金処理を再開するようにしても良い。
制御部81は、出金処理において、第1の収納庫52の紙幣Sを出金部12に出金させることで、第1の収納庫52の紙幣Sの出金が終了すると、第2の収納庫52に対して、上記した処理を同様に行う。このようにして、収納庫52の適宜のものから、金額情報に応じた金種別の出金枚数を出金させると、操作者が、出金部12から紙幣Sを取り出す。
「カセット回収往路処理」
操作表示部14に、カセット回収処理の選択操作が入力されると、制御部81は、収納庫52に収納されている紙幣Sを収納庫52ごとに、搬送部20によって、例えば図5に太線で示すカセット回収往路ルートで一時貯留部18に搬送するカセット回収往路処理(移動処理)を行う。
つまり、第1の収納庫52が、収納していた紙幣Sを一枚ずつ分離し計数しつつ間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、分岐搬送路61~63の適宜のもの、収納搬送路57、上下搬送路55の上側送路部55a、入金搬送路21の中間送路部21bおよび後側送路部21cが一時貯留部18に向けて搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が、紙幣Sに対し、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報からなる種別の識別と、識別の順序と、搬送異常の有無とを再度識別することになる。
そして、制御部81は、搬送異常がなければ、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている分配処理時あるいは後述するカセット補充往路処理時の収納種別順序情報とに基づいて、この紙幣Sの種別を取得すると共に、この種別を、カセット回収往路処理において識別部17で識別した、この紙幣Sの種別と比較し、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の全ての項目が一致する場合、この紙幣Sの種別を、この種別として計数する。このときの識別順序は、第1の収納庫52の収納種別順序情報の順序とは逆順となる。
このように分配処理時あるいは後述するカセット補充往路処理時と、カセット回収往路処理時とで種別を得て一致を確認し計数した紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21bおよび後側送路部21cで一時貯留部18に貯留させる。
また、このとき、制御部81は、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている収納種別順序情報とに基づいて判定した紙幣Sの種別と、カセット回収往路処理において識別した、この紙幣Sの種別とが、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の全ての項目において一致する場合、この紙幣Sの真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の種別と、識別部17で識別した紙幣Sの識別順序とに基づいて、一時貯留部18に貯留する紙幣Sの真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の種別と、貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を入金処理時と同様に記憶部82に記憶させる。また、制御部81は、記憶部82に記憶している第1の収納庫52の収納種別順序情報の中から、この紙幣Sに関する収納種別順序情報を削除する。
例えば、カセット回収往路処理時に識別部17で識別した第1の収納庫52からの紙幣Sの識別順序が1番目であって、これに対応して記憶部82に記憶されている第1の収納庫52における収納順序がカセット回収往路処理開始時に最後であった収納種別順序情報の種別と、カセット回収往路処理において識別部17で識別したこの紙幣Sの種別とが、全項目において一致して、この紙幣Sを一時貯留部18に貯留する場合、この紙幣Sの種別と一時貯留部18への貯留順序の1番目と対応付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
また、例えば、カセット回収往路処理時に識別部17で識別した第1の収納庫52からの紙幣Sの識別順序が2番目であって、これに対応して記憶部82に記憶されている第1の収納庫52における収納順序がカセット回収往路処理開始時に最後から2番目であった収納種別順序情報の種別と、カセット回収往路処理において識別部17で識別したこの紙幣Sの種別とが、全項目において一致して、この紙幣Sを一時貯留部18に貯留する場合、この紙幣Sの種別と一時貯留部18への貯留順序の2番目と対応付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
他方、制御部81は、紙幣Sの識別部17で識別した識別順序と記憶部82に記憶されている収納種別順序情報とに基づく種別と、カセット回収往路処理において識別部17で識別した、この紙幣Sの種別とが、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報のうちの少なくとも一項目において不一致となる種別不一致、および、搬送異常のいずれか一方があれば、この紙幣Sを処理不可と判定して、第1の収納庫52、搬送部20および一時貯留部18の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、処理不可の紙幣Sを含んで、搬送部20に残留している紙幣Sを取り出すことになる。
以上のように、第1の収納庫52の紙幣Sを一時貯留部18に移動させる移動処理であるカセット回収往路処理時に、識別部17は、紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている収納種別順序情報とに基づく種別と、カセット回収往路処理において識別部17で識別した、この紙幣Sの種別とが不一致となる種別不一致、および、搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、種別不一致および搬送異常のいずれもない紙幣Sを処理可能と判定して一時貯留部18に移動させる一方、種別不一致および搬送異常の少なくともいずれ一方がある紙幣Sを処理不可と判定して、収納庫52、搬送部20および一時貯留部18の駆動を停止して、エラー表示を操作表示部14に表示させる。
上記した第1モードでは、カセット回収往路処理時の識別部17による紙幣Sの識別は、搬送状態に係るものに限定していたが、第2モードでは、これに加えて、カセット回収往路処理時にも識別部17により紙幣Sの種別情報を取得している。そして、この取得した種別情報と、識別部17による識別順序に対し記憶部82に記憶している収納種別順序情報との比較を行う。これにより、カセット回収往路処理においても、前述した分配処理および出金処理の動作と同様に、不正アクセスの発見、違算防止の効果を奏することができる。しかもこの機能は新たな部品を必要とせず現行メカのまま当該制御を加えるだけで実現可能である。制御部81は、同一の紙幣Sについて、カセット回収往路処理時に識別部17により取得した種別情報と、記憶部82に記憶されている収納種別順序情報との比較で種別不一致となったときには、操作表示部14へ種別不一致エラーの報知を行うと共に、操作者へ自己精査の実施を行うように促す。
「カセット回収復路処理」
制御部81は、カセット回収往路処理において第1の収納庫52の紙幣を一時貯留部18に移動させることで、第1の収納庫52に紙幣Sがなくなると、一時貯留部18から、搬送部20によって、図6に太線で示すカセット回収復路ルートで紙幣Sを前方カセット51に搬送するカセット回収復路処理(収納処理)を行う。
つまり、一時貯留させていた紙幣Sを一時貯留部18が一枚ずつ間隔をあけて繰り出し、入金搬送路21の後側送路部21cおよび中間送路部21b、上下搬送路55の上側送路部55aおよび下側送路部55bが搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が、紙幣Sに対し、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報からなる種別の識別と、識別の順序と、搬送異常の有無とを再度識別することになる。
そして、制御部81は、搬送異常がなければ、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報とに基づいて、この紙幣Sの種別を取得すると共に、カセット回収復路処理において識別した、この紙幣Sの種別と比較し、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の全ての項目が一致する場合、この紙幣Sの種別を、この種別として計数する。このときの識別順序は、一時貯留部18の貯留種別順序情報の順序とは逆順となる。このように種別を得た紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21b、上下搬送路55の上側送路部55aおよび下側送路部55bが搬送して前方カセット51に収納する。
このとき、制御部81は、紙幣Sの識別部17での識別順序と記憶部82に記憶されているカセット回収往路処理時の貯留種別順序情報とに基づく種別と、カセット回収復路処理において識別部17で識別した、この紙幣Sの種別とが一致する場合、この紙幣Sの種別と識別部17で識別した識別順序とに基づいて、前方カセット51に収納する紙幣Sの、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の種別と、収納順序とを関連付けた収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。また、制御部81は、記憶部82に記憶している一時貯留部18の貯留種別順序情報の中から、この紙幣Sに関する貯留種別順序情報を削除する。
例えば、カセット回収復路処理時に識別部17で識別した一時貯留部18からの紙幣Sの識別順序が1番目であって、これに対応して記憶部82に記憶されている貯留順序がカセット回収復路処理開始時に最後であった貯留種別順序情報の種別と、カセット回収復路処理において識別部17で識別したこの紙幣Sの種別とが、全項目において一致して、この紙幣Sを前方カセット51に貯留する場合、この紙幣Sの種別と前方カセット51への収納順序である1番目とを対応付けた収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
また、例えば、カセット回収復路処理時に識別部17で識別した一時貯留部18からの紙幣Sの識別順序が2番目であって、これに対応して記憶部82に記憶されている貯留順序がカセット回収復路処理開始時に最後から2番目であった貯留種別順序情報の種別と、カセット回収復路処理において識別部17で識別したこの紙幣Sの種別とが、全項目において一致して、この紙幣Sを前方カセット51に貯留する場合、この紙幣Sの種別と前方カセット51への収納順序である2番目とを対応付けた収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
他方、制御部81は、カセット回収復路処理において、紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されているカセット回収往路処理時の貯留種別順序情報とに基づく種別と、識別部17で識別した、この紙幣Sの種別との不一致、および、搬送異常の少なくともいずれか一方があれば、この紙幣Sを処理不可と判定して、一時貯留部18、搬送部20および前方カセット51の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、この処理不可の紙幣Sを含んで、搬送部20に残留している紙幣Sを取り出すことになる。
このように、一時貯留部18の紙幣Sを前方カセット51に収納するカセット回収復路処理時に、識別部17は、紙幣Sの識別順序と記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報とに基づく種別と、カセット回収復路処理時に識別部17で識別した、この紙幣Sの種別との不一致、および、搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、種別の不一致および搬送異常のいずれもない紙幣Sを処理可能と判定して前方カセット51に収納する一方、種別の不一致および搬送異常のうちの少なくともいずれか一方がある紙幣Sを処理不可と判定して、一時貯留部18、搬送部20および前方カセット51の駆動を停止して、エラー表示を操作表示部14に表示させる。
制御部81は、カセット回収復路処理において、一時貯留部18の紙幣Sを前方カセット51に移動させることで、一時貯留部18に紙幣Sがなくなると、第2の収納庫52に対して、上記したカセット回収往路処理およびカセット回収復路処理を同様に行う。このようにして、全ての収納庫52について、収納庫52ごとにカセット回収往路処理およびカセット回収復路処理を行って、全ての収納庫52の紙幣Sを前方カセット51に収納する。そして、操作者によって前方カセット51が紙幣処理装置10から取り出される。
上記した第1モードでは、カセット回収復路処理時の識別部17による紙幣Sの識別は、搬送状態に係るものに限定していたが、第2モードでは、これに加えて、カセット回収復路処理時に識別部17により紙幣Sの種別を取得する。そして、この取得した種別情報と、識別順序に対し記憶部82に記憶している貯留種別順序情報との比較を行う。これにより、カセット回収復路処理においても、前述した分配処理、出金処理およびカセット回収往路処理の動作と同様に、不正アクセスの発見、違算防止の効果を奏することができる。しかもこの機能は新たな部品を必要とせず現行メカのまま当該制御を加えるだけで実現可能である。制御部81は、同一の紙幣Sについて、カセット回収復路処理時に識別部17により取得した種別情報と、記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報の種別情報との比較で種別不一致となったときには、操作表示部14へ種別不一致エラーの報知を行うと共に、操作者へ自己精査の実施を行うように促す。
「カセット補充往路処理」
装置外部で紙幣Sが装填された前方カセット51が紙幣処理装置10にセットされて、操作表示部14に、カセット補充処理の選択操作が入力されると、制御部81は、前方カセット51から、搬送部20によって、図7に太線で示すカセット補充往路ルートで紙幣Sを一時貯留部18に搬送するカセット補充往路処理(補充処理)を行う。カセット補充往路処理では、前方カセット51から紙幣Sを一時貯留部18に搬送する。
つまり、前方カセット51が、収納していた紙幣Sを一枚ずつ分離し計数しつつ間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、上下搬送路55の下側送路部55bおよび上側送路部55a、入金搬送路21の中間送路部21bおよび後側送路部21cが一時貯留部18に向けて搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別を入金処理時と同様に行う。すなわち、識別部17は、紙幣Sが、真券であるか偽券であるかの真偽識別と、汚損が少ない正券であるか汚損が多い損券であるかの正損識別とを行い、真券かつ正券については、いずれの金種であるかの金種識別と、世代情報である券種識別とを行う。加えて、識別部17は、紙幣Sの記番号、表裏情報および天地情報の識別を行うと共に、紙幣Sの重送および斜行を含む搬送異常の有無を識別することになる。
識別部17の識別の結果、種別が真券かつ正券であって搬送異常がない受け入れ可能と識別された正常紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21bおよび後側送路部21cが一時貯留部18に搬送して、一時貯留部18が貯留する(図7の太実線参照)。それ以外の紙幣Sであって識別部17が受け入れ不可と識別した紙幣Sについては、入金搬送路21の中間送路部21bが出金搬送路35に搬送し、出金搬送路35が出金部12に搬送する(図7の太実線から太破線参照)。なお、制御部81は、カセット補充往路処理中に、出金部12に搬送する紙幣Sが生じた場合、それに応じて、一時貯留部18を停止させ、一時貯留部18に貯留する紙幣Sと紙幣Sとの取り込み間隔が一定になるように制御する。
前方カセット51の紙幣Sを全て一時貯留部18および出金部12のいずれかに搬送した状態になると、識別部17の識別結果から一時貯留部18に一時貯留させている紙幣Sの金種別の枚数および総額等の金額情報を操作表示部14が表示する。出金部12に搬送された紙幣Sは、外部に取り出し可能となる。なお、出金部12とは別に、紙幣Sを外部に取り出し可能とするリジェクト部を設けて、このリジェクト部に受け入れ不可の紙幣Sを搬送するようにしても良い。
このカセット補充往路処理において、入金処理と同様、制御部81は、種別が真券かつ正券であり搬送異常がない、受け入れ可能と識別された正常紙幣Sを、識別部17での識別後に一時貯留部18に貯留する際に、この紙幣Sの真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報を含む種別と、一時貯留部18への貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。このような処理を、このカセット補充往路処理において、一時貯留部18に一時貯留する全ての紙幣Sについて行う。
このように、紙幣Sが装填された状態でセットされ、装填されている紙幣Sを繰り出す前方カセット51の紙幣Sを一時貯留部18に貯留するカセット補充往路処理時に、制御部81は、紙幣Sの種別と一時貯留部18への貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
このカセット補充往路処理において、制御部81は、識別部17により、種別が真券かつ正券であり搬送異常がない、受け入れ可能と識別された正常紙幣Sを、識別部17での識別後に一時貯留部18へ搬送して貯留させる一方、識別部17で正常紙幣と判定されない紙幣Sは、リジェクト券として、出金部12へ搬送し返却する。このとき、カセット補充往路処理にて受け付けた正常紙幣Sについては、この紙幣Sの真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報を含む種別と、一時貯留部18への貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。
「カセット補充復路処理」
カセット補充往路処理後の金額情報の操作表示部14の表示後、操作者が操作表示部14に承認操作を入力すると、紙幣処理装置10は、カセット補充往路処理で一時貯留部18に一時貯留した紙幣Sを、搬送部20によって、図4に太線で示すカセット補充復路処理ルートで装置内部の収納庫52に収納するカセット補充復路処理(収納処理)を行う。このカセット補充復路処理は、上記した分配処理と同様である。よって、制御部81は、カセット補充復路処理時に、一時貯留部18の貯留種別順序情報を基に搬送先の収納庫52を選択すると共に、収納庫52ごとの収納種別順序情報を作成して記憶部82へ記憶させる。
よって、一時貯留部18の紙幣Sを収納庫52に収納するカセット補充復路処理時に、識別部17は、紙幣Sの真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報の各項目からなる種別を識別しつつ搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、種別の少なくともいずれか一項目が、カセット補充往路処理時と一致しない種別不一致、および、搬送異常の、いずれもない紙幣Sを処理可能と判定して対応する収納庫52に収納する一方、種別不一致および搬送異常の少なくともいずれか一方がある紙幣Sを処理不可と判定して、一時貯留部18、搬送部20および収納庫52の駆動を停止して、エラー表示を操作表示部14に表示させる。
上記した第1モードでは、カセット補充復路処理時の識別部17による紙幣Sの識別は、搬送状態に係るものに限定していたが、第2モードでは、これに加えて、真偽、正損、金種、券種、汚損率、記番号、表裏情報および天地情報からなる種別情報を取得している。そして、この取得した種別情報と、識別部17による識別順序に対し記憶部82に記憶している貯留種別順序情報との比較を行う。これにより、カセット補充復路処理においても、前述した分配処理、出金処理、カセット回収往路処理、カセット回収復路処理およびカセット補充往路処理の動作と同様に、不正アクセスの発見、違算防止の効果を奏することができる。しかもこの機能は新たな部品を必要とせず現行メカのまま当該制御を加えるだけで実現可能である。制御部81は、同一の紙幣Sについて、カセット補充復路処理時に識別部17により取得した種別情報と、記憶部82に記憶されている貯留種別順序情報との比較で種別不一致となったときには、操作表示部14へ種別不一致エラーの報知を行うと共に、操作者へ自己精査の実施を行うように促す。
以上に述べたように、紙幣処理装置10は、第2モードに設定されている場合、入金部11の紙幣Sを一時貯留部18に貯留する入金処理時において、制御部81が、識別部17で識別した紙幣Sの種別と一時貯留部18への貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。また、入金処理後に行われる分配処理時において、制御部81は、再度識別部17で識別した紙幣Sの種別と、当該識別した紙幣Sの識別順序および記憶部82に記憶されている入金処理時の貯留種別順序情報に基づく種別とが不一致となる種別不一致、および、搬送異常のいずれもない紙幣Sを処理可能と判定して収納庫52に収納する一方、種別不一致および搬送異常の少なくともいずれか一方がある紙幣Sを処理不可と判定する。したがって、分配処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別について、入金処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別との一致を確認することができるため、入金処理時に紙幣Sに関して識別部17で識別した種別の有効利用が可能となる。
また、分配処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別と、入金処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別との一致を確認することができるため、簡素な構成で、不正アクセスをより厳格に見抜けることができ、現金違算の異常状態を回避することが可能となる。しかもこの機能は新たな部品を必要とせず現行メカのまま当該制御を加えるだけで実現可能である。
また、紙幣処理装置10は、第2モードに設定されている場合、前方カセット51の紙幣Sを一時貯留部18に貯留するカセット補充往路処理時において、制御部81が、識別部17で識別した紙幣Sの種別と一時貯留部18への貯留順序とを関連付けた貯留種別順序情報を記憶部82に記憶させる。また、カセット補充往路処理後に行われるカセット補充復路処理時において、制御部81は、再度識別部17で識別した紙幣Sの種別と、当該識別した紙幣Sの識別順序および記憶部82に記憶されているカセット補充往路処理時の貯留種別順序情報に基づく種別とが不一致となる種別不一致、および、搬送異常のいずれもない紙幣Sを処理可能と判定して一時貯留部18に貯留する一方、種別不一致および搬送異常の少なくともいずれか一方がある紙幣Sを処理不可と判定する。したがって、カセット補充復路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別について、カセット補充往路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別との一致を確認することができるため、カセット補充往路処理時に紙幣Sに関して識別部17で識別した種別の有効利用が可能となる。
また、カセット補充復路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別と、カセット補充往路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別との一致を確認することができるため、簡素な構成で、不正アクセスをより厳格に見抜けることができ、現金違算の異常状態を回避することが可能となる。しかもこの機能は新たな部品を必要とせず現行メカのまま当該制御を加えるだけで実現可能である。
また、紙幣処理装置10は、第2モードに設定されている場合、制御部81が、分配処理時に、識別部17で識別した紙幣Sの種別と、識別部17で識別した紙幣Sの識別順序および記憶部82に記憶されている、この紙幣Sの入金処理時の貯留種別順序情報の種別とに基づいて、収納庫52に収納する紙幣Sの種別と収納庫52への収納順序とを関連付けた収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。したがって、入金処理時および分配処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別を、出金処理時およびカセット回収往路処理時にも使用可能となる。よって、識別部17で識別した紙幣Sの種別のさらなる有効利用が可能となる。
また、分配処理時に、識別部17で識別した紙幣Sの種別と、出金処理時あるいはカセット回収往路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別との一致を確認することができるため、簡素な構成で、不正アクセスをより厳格に見抜けることができ、現金違算の異常状態を回避することが可能となる。しかもこの機能は新たな部品を必要とせず現行メカのまま当該制御を加えるだけで実現可能である。
また、紙幣処理装置10は、第2モードに設定されている場合、制御部81が、カセット補充復路処理時に、識別部17で識別した紙幣Sの種別と、識別部17で識別した紙幣Sの識別順序および記憶部82に記憶されている、この紙幣Sのカセット補充往路処理時の貯留種別順序情報の種別とに基づいて、収納庫52に収納する紙幣Sの種別と収納庫52への収納順序とを関連付けた収納種別順序情報を記憶部82に記憶させる。したがって、カセット補充往路処理時およびカセット補充復路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別を、出金処理時およびカセット回収往路処理時にも使用可能となる。よって、識別部17で識別した紙幣Sの種別のさらなる有効利用が可能となる。
また、カセット補充往路処理時およびカセット補充復路処理時に、識別部17で識別した紙幣Sの種別と、出金処理時あるいはカセット回収往路処理時に識別部17で識別した紙幣Sの種別との一致を確認することができるため、簡素な構成で、不正アクセスをより厳格に見抜けることができ、現金違算の異常状態を回避することが可能となる。しかもこの機能は新たな部品を必要とせず現行メカのまま当該制御を加えるだけで実現可能である。
また、紙幣処理装置10は、第2モードに設定されている場合、収納庫52の紙幣Sを出金部12に出金する出金処理時に、識別部17が、紙幣Sの種別および搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、当該識別した種別と、当該識別した紙幣Sの識別順序および収納種別順序情報に基づいて判定した種別とが不一致となる種別不一致および搬送異常のいずれもない紙幣Sを処理可能と判定して出金部12に出金する一方、種別不一致および搬送異常の少なくともいずれか一方がある紙幣Sを処理不可と判定する。その結果、簡素な構成で、不正アクセスをより厳格に見抜けることができ、現金違算の異常状態を回避することが可能となる。しかもこの機能は新たな部品を必要とせず現行メカのまま当該制御を加えるだけで実現可能である。
また、紙幣処理装置10は、第2モードに設定されている場合、収納庫52の紙幣Sを一時貯留部18に移動させるカセット回収往路処理時に、識別部17が、紙幣Sの種別および搬送異常の有無を識別することになり、制御部81は、当該識別した種別と、当該識別した紙幣Sの識別順序および収納種別順序情報に基づいて判定した種別とが不一致となる種別不一致および搬送異常のいずれもない紙幣Sを処理可能と判定して一時貯留部18に移動させる一方、種別不一致および搬送異常の少なくともいずれか一方がある紙幣Sを処理不可と判定する。その結果、簡素な構成で、不正アクセスをより厳格に見抜けることができ、現金違算の異常状態を回避することが可能となる。しかもこの機能は新たな部品を必要とせず現行メカのまま当該制御を加えるだけで実現可能である。