JP2021535198A - 膵臓癌を治療する方法 - Google Patents

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Abstract

有効量のチューブリン重合阻害剤化合物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵臓癌を治療する方法が本明細書に記載される。より詳細には、有効量の置換逆ピリミジンチューブリン重合阻害剤化合物を単独でまたは他の化学療法剤と組み合わせて対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵管腺癌を治療する方法が、本明細書に記載される。

Description

有効量のチューブリン重合阻害剤化合物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵臓癌を治療する方法が本明細書に記載される。より詳細には、有効量の置換逆ピリミジンチューブリン重合阻害剤化合物を単独でまたは他の化学療法剤と組み合わせて対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵管腺癌を治療する方法が、本明細書に記載される。
2018年に膵臓癌と診断されたアメリカ人は推定55,440人であり、膵臓癌は癌関連死亡率の5番目に多い原因である。これらの数字は、今後10年間で増加することが予想される。膵管腺癌(PDA)は化学療法抵抗性の高い癌で、年間45,000人を超える死亡の原因であり、膵臓腫瘍の約93%を占める。近年のいくつかの大きな進歩にもかかわらず、PDAは依然として主として難治性の癌であり、生存期間中央値は6カ月未満、5年生存率はわずか8.7%である。
いくつかの因子がこの予後不良に寄与する。ほとんどの患者(85%)は、1つの有効な介入:外科的切除を妨げる進行性疾患を呈する。しかし、手術を受けた限局性疾患を有する患者の間でも、5年および10年生存率は高い再発率により各々わずか25%および8%である(A. Richter et al., World J Surg 27, 324, Mar 2003)。これらの残り85%の患者、および再発性疾患を有する患者については、利用可能な治療が少ない。国の標準治療療法であるゲムシタビンは、生存を数週間緩やかに延長し、主に生活の質の指標を改善することが認められている(H. A. Burris, 3rd et al., J Clin Oncol 15, 2403, Jun 1997)。進行性PDAの唯一の他のFDA承認薬としてはタルセバがあり、これはゲムシタビンと組み合わせた場合、平均でちょうど10日の追加の利点を提供する。様々な剤および組み合わせの60を超える臨床試験(H. Q. Xiong, K. Carr, J. L. Abbruzzese, Drugs 66, 1059, 2006)にもかかわらず、他の有効な療法は同定されていない。
PDAの最も顕著な特徴の一つは、高い間質性流体圧、血管分布の低下、ならびに組織灌流および拡散の低下をもたらす、局所微小環境を調整する拡張性線維形成性間質の存在である。結果的に、膵臓腫瘍への薬物送達は、正常な組織よりも効率が悪く、この疾患を特徴付ける広範な一次化学療法抵抗性に寄与する。細胞傷害性療法に対するPDAの広範な抵抗性は、一つには、薬物送達に対するこの生物物理学的障害に起因する。
KPC(KrasLSL.G12D/+;p53R172H/+;PdxCretg/+)遺伝子操作マウスモデルにおける化学療法剤の前臨床試験は、PDAに対する薬物の開発努力が、薬物暴露を改善する手段として長い半減期および高い治療指数(有効性と毒性との間の濃度範囲)を有する剤を重視すべきであることを示唆している。同様に、腫瘍細胞内での薬物安定性および保持率も、PDAの新しいレジメンの設計において考慮されるべきである。
残念なことに、最も伝統的な細胞毒性剤は、循環から急速に除去されるか、正常な増殖組織に対して急性毒性があるか、急速に代謝されるか、または腫瘍細胞から積極的に排出される。有益な反例としては、転移性膵臓癌患者のためのゲムシタビンと組み合わせた、FDA承認のアルブミン結合形態の微小管安定化剤パクリタキセルであるnab−パクリタキセル(Abraxane、Celgene)がある。nab−パクリタキセルは、循環において27時間の末端半減期を有し、非修飾パクリタキセルよりも毒性が低い。このレジメンの成功は、膵臓癌薬の開発における薬理学の重要性を立証する一助となり、ゲムシタビン(デオキシシチジン類似体)と微小管標的剤との組み合わせの利点を実証した。
したがって、PDAの生物物理学的障害を克服して、腫瘍組織への有効な生体内分布をもたらし、必要な薬力学的特性を有し、膵臓癌の治療のための他の化学療法剤と相乗的に組み合わせられる化学療法剤が依然として必要とされている。
式(I)の構造を有する5−フルオロ−2−(6−フルオロ−2−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)−N4−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピリミジン−4,6−ジアミンと称される化合物1、またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物は、チューブリン重合およびBMI−1タンパク質機能を阻害するのに有用な小分子抗癌剤である(WO2014/081906を参照のこと)。
Figure 2021535198
式(I)
化合物1は、長い循環半減期およびP糖タンパク質(PGP)基質活性の欠如および腫瘍組織への有効な生体内分布を含む薬理学的特性を示した。さらに、化合物1は、複数のPDA細胞株において有糸分裂停止およびアポトーシスを誘導することが示された。
機構研究により、いずれか1つの特定の理論に限定されずに、化合物1は、微小管重合阻害剤として機能することが示された。さらに、化合物1は、ゲムシタビンおよびnab−パクリタキセルのいずれかまたは両方など、標準的な臨床レジメンと相乗的に組み合わせて、患者由来の異種移植モデル(PDX)における有効性を改善し、強力かつ永続的な癌の退行をもたらす。さらに、化合物1は、化学療法抵抗性の高い遺伝子操作KPC PDAマウスモデルにおいて、ゲムシタビンとの組み合わせにおける有効性を示した。
臨床開発中の抗癌剤としてのこれらのデータおよび実証された安全性プロファイルは、PDAに対する標準治療化学療法と組み合わせた化合物1の開発の明確な理論的根拠を実証する。
説明
本明細書に記載される一態様は、式(I)の構造を有する、有効量の化合物1である5−フルオロ−2−(6−フルオロ−2−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)−N4−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピリミジン−4,6−ジアミン、またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵臓癌を治療する方法を含む。
Figure 2021535198
式(I)
別の態様は、有効量の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵管腺癌を治療する方法を含む。
本明細書に記載される一態様は、有効量の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を有効量の1つまたは複数の化学療法剤と組み合わせて対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵臓癌を治療する方法を含む。
別の態様は、有効量の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を有効量の1つまたは複数の化学療法剤と組み合わせて対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵管腺癌を治療する方法を含む。
本明細書に記載される一態様は、有効量の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を、有効量のゲムシタビンおよびnab−パクリタキセルのいずれかまたは両方と組み合わせて対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵管腺癌を治療する方法を含む。
別の態様は、有効量の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を、有効量のゲムシタビンおよびnab−パクリタキセルのいずれかまたは両方と組み合わせて対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵管腺癌を治療する方法を含む。
ビヒクルまたは化合物1(0.1μMまたは1.0μM)での処理後の経時的な相対的Aspc1細胞生存率を示すグラフである。結果は、ビヒクルと比較して、化合物1が、ヒトPDA細胞生存率の用量および時間依存的低下を示すことを示している。 ヒビクルまたは化合物1(0.1μMまたは1.0μM)で処理したAspc1細胞からの7−AAD蛍光のフローサイトメトリーにより測定したDNA含有量を示す代表的なヒストグラムである。 ビヒクル(DMSO)、化合物1(0.1μM、1.0μM)または0.1μMのノコダゾール(NOC、陽性対照)での処理から24時間後のG0/G1期、S期およびG2/M期におけるAspc1細胞のパーセントを示すグラフである。 DMSO、化合物1(0.1μMまたは1.0μM)、または0.1μMのノコダゾール(NOC)での24時間の処理後の有糸分裂におけるAspc1細胞(PH3+/4N DNA含有量)のパーセントを示すプロットである。図1b、1cおよび1dは、化合物1がヒトPDA細胞の細胞周期停止の用量および時間依存的効果を示すことを示している。 24時間、48時間および72時間の時点でのビヒクルまたは化合物1(1.0μM)で処理したAspc1細胞のDAPI蛍光により測定したDNA含有量を示す代表的なヒストグラムである。 24時間、48時間、72時間の時点でのDMSOまたは化合物1(0.1μMまたは1.0μM)での処理後の>4NのDNA含有量を有するAspc1細胞のパーセントを示すグラフである。図2aおよび2bは、化合物1が、倍数性に影響されるヒトPDA細胞の量の用量および時間依存的増加を示すことを示している。 DMSOで24時間、または1.0μMの化合物1で72時間の処理後のAspc1細胞におけるアポトーシスの誘導を示す代表的なフローサイトメトリー散布図である。未固定細胞を、活性カスパーゼ3およびDAPIで染色して、生細胞(下部左)を初期アポトーシス(上部左)、後期アポトーシス(上部右)および壊死(下部右)と区別した。 24時間、48時間および72時間の時点でDMSOまたは化合物について定量した総アポトーシス性Aspc1細胞(活性カスパーゼ3+)を示すグラフである。図3aおよび3bは、ビヒクルと比較して、化合物1が細胞バイオマーカーの時間依存的増加を示し、これは細胞アポトーシスの対応する増加を示すことを示している。 ベースラインでまたは化合物1(10mg/kg)の単回経口用量の2、4、7、24もしくは48時間後に質量分析で測定したマウスにおける化合物1の血漿レベルを示すグラフである。図4aは、化合物1が、長い血漿半減期を有し、CNSを透過し、脳組織に分布することを示している。 化合物1、化合物2、クロルプロマジン、ピューロマイシン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、パクリタキセルおよびビンクリスチンでのMDCK−P−gp対MDCK−WT細胞の処理に対するCC50値の比を示すプロットである。図4bは、細胞周期停止を引き起こす他の化学療法剤と比較して、化合物1、化合物2およびクロルプロマジンが、PGP基質として機能しないことを示している。 単独でまたはゲムシタビン(100mg/kg)と組み合わせた化合物1(10mg/kg)の単回経口用量の24時間後のKPCマウスからの血漿、四頭筋およびPDA組織における化合物1の濃度を示すプロットである。図5aは、該組み合わせの有効性の改善が、薬物動態学的薬物−薬物相互作用によるものではないことを示している。 10mg/kgの化合物1で処置したKPCマウスからの腫瘍に対するサイクリンB1のウエスタンブロットである。腫瘍生検試料(Bx)を、第1の用量の48時間前に得、第3の用量の24時間後に剖検(nx)で得た試料と比較した。 ビンキュリン(Vinc)に対して正規化された図5bからのサイクリンB1(CycB1)を定量するグラフである。図5aは、化合物1がPDA組織に分布していることを示しており、図5bおよび5cは、化合物1が、ビンキュリンと比較してサイクリンB1の一貫した減少を示すことを示しており、ビンキュリンに誘導されるアポトーシスと比較してサイクリンB1の減少により誘導されるPDA細胞の有糸分裂の進行の低減を示唆している。 化合物1とゲムシタビンとの組み合わせで処置したKPCマウスの経時的な体重を示すプロットである。 ビヒクル(VEH)、ゲムシタビン(GEM、100mg/kg週2回)、化合物1(Cpd1、17mg/kg週2回)または化合物1とゲムシタビンとの組み合わせ(Cpd/GEM)で処置したKPCマウスの経時的な生存を示すプロットである。 ビヒクル(VEH)、ゲムシタビン(GEM)、化合物1(Cpd1)、または化合物1とゲムシタビンとの組み合わせ(Cpd/GEM)で処置したKPCマウスにおける縦方向の腫瘍体積から計算した腫瘍増殖率の計算を示すプロットである。 ビヒクル(VEH)、ゲムシタビン(GEM)、化合物1(Cpd1)または化合物1とゲムシタビンとの組み合わせ(Cpd/GEM)で処置したKPCマウスの剖検後の1腫瘍あたり10視野にわたって、40倍1視野あたりの平均陽性細胞を示す、リン酸化ヒストンH3(PH3)細胞の免疫組織化学定量を示すプロットである。 ビヒクル(VEH)、ゲムシタビン(GEM)、化合物1(Cpd1)または化合物1とゲムシタビンとの組み合わせ(Cpd1/GEM)で処置したKPCマウスの剖検後、1腫瘍あたり10視野にわたって、40倍1視野あたりの平均陽性細胞を示す、リン酸化切断型カスパーゼ3(CC3)細胞の免疫組織化学定量を示すプロットである。図6a、6b、6c、6dおよび6eは、ゲムシタビンと組み合わせた化合物1が、KPCマウスモデルの全生存を相乗的に増加させることを示している。そこで、図6aは、ゲムシタビンと組み合わせた化合物1が、KPCマウスの相対的体重を維持することを示している。図6bは、ビヒクル、ゲムシタビン単独または化合物1単独と比較して、ゲムシタビンと組み合わせた化合物1が、各剤単独と比較して、全生存を相乗的に増加させながら、腫瘍体積を同時に低下させることを示している。図6c、6dおよび6eは、ビヒクル、ゲムシタビン単独または化合物1単独と比較して、ゲムシタビンと組み合わせた化合物1が、PDA細胞および特定の細胞バイオマーカーの増殖率の全体的な低下を示すことを示している。 ビヒクル(veh)または化合物1(Cpd1)で処置したKPCマウスの3D高解像度超音波で測定した腫瘍体積を示すプロットである。 ビヒクル(veh)または化合物1とゲムシタビンとの組み合わせ(Cpd1/gem)で処置したKPCマウスの3D高解像度超音波で測定した腫瘍体積を示すプロットである。図7aは、ビヒクルと比較して、化合物1が、KPCマウスモデルPDA腫瘍体積の時間依存的低下を示すことを示しており、図7bは、ゲムシタビン単独または化合物1単独と比較して、ゲムシタビンと組み合わせた化合物1が、KPCマウスPDA腫瘍体積のさらなる時間依存的低下を示すことを示している。 ビヒクル(VEH)、化合物1(Cpd1)、ゲムシタビン(GEM)または化合物1とゲムシタビンとの組み合わせ(Cpd1/GEM)で処置したKPCマウスにおいて7日にわたって体積パーセント変化により測定した腫瘍増殖を示すプロットである。 ビヒクル(V)、化合物1(Cpd1+V)、ゲムシタビン(G)または化合物1とゲムシタビンとの組み合わせ(Cpd1+G)で処置したKPCマウスにおいてマウスが肝転移を有するパーセントを示すプロットである。図8aは、ビヒクル、ゲムシタビン単独または化合物1単独と比較して、ゲムシタビンと組み合わせた化合物1が、KPCマウスPDA腫瘍増殖の低下を示すことを示しており、図8bは、ビヒクルおよびゲムシタビン単独と比較して、ゲムシタビンと組み合わせた化合物1が、KPCマウスPDA駆動肝転移の減少を示すことを示している。 ゲムシタビン(GEM)で処置したKPCマウスからの染色腫瘍切片を示す画像である。 化合物1とゲムシタビンとの組み合わせ(Cpd1/GEM)で処置したKPCマウスからの染色腫瘍切片を示す画像である。図9aは、ゲムシタビン誘導アポトーシス細胞集団を示しており、図9bは、ゲムシタビンと組み合わせた化合物1により誘導されるアポトーシス細胞集団を示している。そこで、ゲムシタビンと組み合わせた化合物1は、アポトーシス細胞集団の顕著な増加を示し、アポトーシス誘導の相乗的増加を示唆している。 ビンキュリン(VINC)負荷対照と比較した、ビヒクル(VEH)、0.1μMのノコダゾール(NOC)、0.1μMの化合物1(0.1)または1.0μMの化合物1(1.0)で24時間処理したAspc1、MiaPaCa−2およびPanc1細胞のBMI−1レベルを示す一連のウエスタンブロットである。図10aは、ビヒクルおよびビンキュリンの発現と比較して、化合物1が、様々な細胞型におけるBMI−1タンパク質発現の一貫した減少を示すことを示している。 ビヒクル(VEH)、0.1μMの化合物1(Cpd1)または1.0μMの化合物1(Cpd1)で96時間にわたって処理したJ1002VEHおよびJ1002TAM細胞の相対的生存率を示すグラフである。図10bは、ビヒクルおよびJ1002の存在と比較して、化合物1が、BMI−1タンパク質発現に依存する細胞の生存率の用量および時間依存的低下を示すことを示している。 化合物1で72時間処理したJ1002VEHおよびJ1002TAM細胞の用量応答曲線を示すグラフである。図10cは、ビヒクル処理した細胞と比較して、化合物1が、J1002の存在下でBMI−1タンパク質発現の減少に対してサブμMの活性を示すことを示している。 ビヒクル(VEH)または1.0μMの化合物1(Cpd1)で24時間処理したJ1002VEH細胞の代表的なDNAヒストグラムを示すグラフである。 ビヒクル(VEH)または1.0μMの化合物1(Cpd1)での処理から24時間後のG0/G1期、S期およびG2/M期におけるJ1002VEH細胞のパーセントを示すグラフである。 ビヒクル(VEH)または1.0μMの化合物1(Cpd1)で24時間処理したJ1002TAM細胞の代表的なDNAヒストグラムを示すグラフである。 ビヒクル(VEH)または1.0μMの化合物1(Cpd1)での処理から24時間後のG0/G1期、S期およびG2/M期におけるJ1002TAM細胞のパーセントを示すグラフである。図10d、10e、10fおよび10gは、ビヒクルおよびJ1002の存在と比較して、化合物1が、倍数性に影響されるBMI−1依存性細胞の量の用量および時間依存的増加を示すことを示しており、そこでデータは総体的に、化合物1が有糸分裂停止の結果として間接的にBMI−1過剰リン酸化を誘導することを示唆している。 8、16および24時間の時点にわたって組み込まれた、DMSOまたは1μMの化合物1(Cpd1)で処理したAspc1細胞のRNA−seqにより測定された差次的発現遺伝子を示すプロットである。 ビヒクル(VEH)、3.0μMの化合物1(Cpd1)、1.0μMのコルヒチン(COL)または1.0μMのパクリタキセル(TAX)で2時間処理したAspc1細胞からの遊離チューブリンを示すウエスタンブロットである。処理後、細胞溶解物を遠心分離により分画し、遊離チューブリンを微小管から分離した。LSP=低速ペレット(1,000×g、5分)、HSP=高速ペレット(100,000×g、1時間)、HSS=高速上清(100,000×g、1時間)。図11aおよび11bは、ビヒクル、COL(カルボプラチン)およびTAX(タモキシフェン)と比較して、化合物1が、チューブリン形成の防止において有意な倍率変化の増加を示すことを示している。 ビヒクル(VEH)で24時間処理したAspc1細胞におけるチューブリンおよびDAPIを示す画像である。 化合物1(Cpd1)で24時間処理したAspc1細胞におけるチューブリンおよびDAPIを示す画像である。図11cおよび11dは、ビヒクルと比較して、化合物1がチューブリン形成の有意な減少を示すことを示している。 ビヒクル(DMS)、タモキシフェン(TAX)、カルボプラチン(COL)および化合物1(0.12μM、0.37μM、1.11μM、3.33μMおよび10μM)で処理した細胞の経時的なチューブリン重合アッセイを示すグラフである。 図11eに示す蛍光単位/分を示すグラフである。図11eおよび11fは、ビヒクル、COL(カルボプラチン)およびTAX(タモキシフェン)と比較して、化合物1がチューブリン重合の用量依存的低下を示すことを示しており、そこでデータは総体的に、化合物1が微小管形成を直接阻害することを示唆している。 ビヒクル(veh)、ゲムシタビン(gem)、nab−パクリタキセル(nabP)、ゲムシタビンとnab−パクリタキセルとの組み合わせ(gm/nabP)、化合物1(Cpd1)、化合物1とゲムシタビンとの組み合わせ(Cpd1/gem)、化合物1とnab−パクリタキセルとの組み合わせ(Cpd1/nabP)および化合物1とゲムシタビンとnab−パクリタキセルとの組み合わせ(Cpd1/gem/nabP)で処置したヒトPDAに由来する患者由来の皮下異種移植片の経時的な平均腫瘍体積を示すグラフである。 ビヒクル(veh)、ゲムシタビン(gem)、nab−パクリタキセル(nabP)、ゲムシタビンとnab−パクリタキセルとの組み合わせ(gm/nabP)、化合物1(Cpd1)、化合物1とゲムシタビンとの組み合わせ(Cpd1/gem)、化合物1とnab−パクリタキセルとの組み合わせ(Cpd1/nabP)および化合物1とゲムシタビンとnab−パクリタキセルとの組み合わせ(Cpd1/gem/nabP)で処置したマウスの経時的な体重を示すグラフである。 ゲムシタビン(gem)、nab−パクリタキセル(nabP)および化合物1(Cpd1)で処理した腫瘍の増殖定数および減衰定数を示すグラフである。 ビヒクル(veh)、ゲムシタビン(gem)、nab−パクリタキセル(nabP)、ゲムシタビンとnab−パクリタキセルとの組み合わせ(gm/nabP)、化合物1(Cpd1)、化合物1とゲムシタビンとの組み合わせ(Cpd1/gem)、化合物1とnab−パクリタキセルとの組み合わせ(Cpd1/nabP)および化合物1とゲムシタビンとnab−パクリタキセルとの組み合わせ(Cpd1/gem/nabP)で処置した各マウスの腫瘍応答を示すプロットである。図12a、12b、12cおよび12dは、nab−パクリタキセルとの二重の組み合わせ、ならびにゲムシタビンとnab−パクリタキセルとの三重の組み合わせのいずれかまたは両方での化合物1が、PDAのヒト由来異種移植片モデルにおいて腫瘍体積および全体的な腫瘍増殖を相乗的に低下させることを示している。そこで、図12aは、ビヒクル、ゲムシタビン単独、化合物1単独、nab−パクリタキセル単独、nab−パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビンおよび化合物1と組み合わせたゲムシタビンと比較して、nab−パクリタキセルとの二重の組み合わせ、ならびにゲムシタビンとnab−パクリタキセルとの三重の組み合わせのいずれかまたは両方での化合物1が、腫瘍体積を相乗的に低下させることを示している。図12bは、ビヒクル、ゲムシタビン単独、化合物1単独、nab−パクリタキセル単独、nab−パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビンおよび化合物1と組み合わせたゲムシタビンと比較して、nab−パクリタキセルと組み合わせた化合物1およびゲムシタビンとnab−パクリタキセルの両方と組み合わせた化合物1では、相乗的に、すべての組み合わせが、KPCマウスの相対的体重を維持することを示している。図12cは、ゲムシタビン、化合物1およびnab−パクリタキセルのいずれかの存在または不在と比較して、ゲムシタビンおよびnab−パクリタキセルのいずれかまたは両方と組み合わせた化合物1が、腫瘍体積の減衰率を増加させながら、全体的な腫瘍増殖率を有意に低下させることを示している。図12dは、ゲムシタビン、化合物1およびnab−パクリタキセルのいずれかの存在または不在と比較して、ゲムシタビンおよびnab−パクリタキセルのいずれかまたは両方と組み合わせた化合物1が、初期腫瘍体積を有意に低下させることを示している。
定義
本明細書で使用する用語「約」は、得られた値が明示的に列挙される値と実質的に同じである、所与の値の付近の範囲を意味する。一態様において、「約」は、所与の値または範囲の25%以内を意味する。例えば、表現「約70質量%」は、52質量%〜88質量%の少なくともすべての値を含む。別の態様において、用語「約」は、所与の値または範囲の10%以内を意味する。例えば、表現「約70質量%」は、63質量%〜77質量%の少なくともすべての値を含む。別の態様において、用語「約」は、所与の値または範囲の7%以内を意味する。例えば、表現「約70質量%」は、65質量%〜75質量%の少なくともすべての値を含む。
濃度、量、細胞数、パーセンテージおよび他の数値は、範囲形式で本明細書に示され得る。このような範囲形式は、単に簡便性および簡潔性のために用いられ、範囲の限度として明示的に列挙された数値を含むだけでなく、各数値および部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含される個々の数値または部分範囲すべてを含むと柔軟に解釈されるべきであることが理解されるべきである。
本明細書で使用する用語「療法(therapyiesおよびtherapy)」は、状態もしくは障害、またはこれらの1つもしくは複数の症状(例えば、膵臓癌、あるいはこれに関連する1つもしくは複数の症状または1つもしくは複数の状態)の予防、治療、管理または改善に使用できる任意のプロトコル、方法、組成物、製剤および/または剤を指し得る。
ある種の態様において、用語「療法(therapyiesおよびtherapy)」は、状態もしくは障害またはこれらの1つもしくは複数の症状(例えば、膵臓癌、あるいはこれに関連する1つもしくは複数の症状または1つもしくは複数の状態)の治療、管理、予防または改善に有用な化学療法などの薬物療法、補助療法、放射線、手術、生物学的療法、支持療法、抗ウイルス療法および/または他の療法を指す。ある種の態様において、用語「療法」は、化合物1、またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物以外の療法を指す。具体的な態様において、「追加療法(additional therapyおよびadditional therapyies)」は、化合物1、またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を用いる治療以外の療法を指す。具体的な態様において、療法は、補助療法としての化合物1の使用を含む。例えば、化合物1を、状態もしくは障害またはこれらの1つもしくは複数の症状(例えば、膵臓癌、あるいはこれに関連する1つもしくは複数の症状または1つもしくは複数の状態)の治療、管理、予防または改善に有用な化学療法などの薬物療法、生物学的療法、手術、支持療法、抗ウイルス療法および/または他の療法と組み合わせて使用する。
本明細書で使用する用語「ヒト乳児」は、新生児から1歳までのヒトを指す。
本明細書で使用する用語「ヒト幼児」は、1歳から3歳までのヒトを指す。
本明細書で使用する用語「ヒト小児」は、1歳〜18歳のヒトを指す。
本明細書で使用する用語「ヒト成人」は、18歳以上のヒトを指す。
本明細書で使用する用語「中年のヒト」は、30歳〜64歳のヒトを指す。
本明細書で使用する用語「高齢のヒト」は、65歳以上のヒトを指す。
本明細書で使用する用語「対象」は、本明細書に記載される療法が投与される個体を指す。具体的な態様において、個体はヒトである。
本明細書で使用する用語「膵臓癌」は、全般的に本明細書に記載される膵臓癌を指す。具体的な態様において、膵臓癌の総称は、膵管腺癌の用語を具体的に使用しなくても膵管腺癌(PDA)を指し得る。
化合物1を膵臓癌を有する対象に投与する文脈において、本明細書で使用する用語「有効量」は、有益な効果または治療効果をもたらす化合物1の用量を指す。具体的な態様において、化合物1の「有効量」は、以下の有益な効果または治療効果のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上を達成するのに十分な化合物1の量を指す:(i)膵臓癌の阻害;(ii)膵臓癌の退行;(iii)膵臓癌の根絶、除去または完全な寛解;(iv)膵臓癌に関連する1つまたは複数の症状の発生または発症の予防;(v)膵臓癌に関連する1つまたは複数の症状の重症度の低減または改善;(vi)膵臓癌に関連する1つまたは複数の症状の数の減少;(vii)膵臓癌に関連する1つまたは複数の症状の重症度の改善;(viii)膵臓癌に関連する1つまたは複数の症状の持続期間の短縮;(ix)増殖または膵臓癌に関連する1つもしくは複数の症状の再発の予防;(x)死亡率の低下;(xi)対象の生存率の増加;(xii)無再発生存の増加;(xiii)寛解状態の膵臓癌対象の数の増加;(xiv)対象の入院の減少;(xv)入院期間の短縮;(xvi)入院率の低下;(xvii)対象の生存の増加;(xviii)膵臓癌対象の無症状生存の増加;(xix)対象における膵臓癌の寛解期間の延長;(xx)当技術分野で周知の方法、例えば、QOLアンケートなどにより評価される生活の質(QOL)の改善;(xxi)別の化学療法剤での治療前の化合物1の投与による増殖の低下;(xxii)別の化学療法剤での治療後の化合物1の投与による増殖の低下;(xxiii)別の化学療法剤と共に化合物1の投与による組み合わせ療法での増殖の低下;(xxiv)別の化学療法剤と共に化合物1の投与による組み合わせ療法での相加的な抗増殖効果;(xxv)別の化学療法剤と共に化合物1の投与による組み合わせ療法での相乗的な抗増殖効果;(xxvi)放射線による療法前の化合物1の投与による増殖の低下;(xxvii)放射線による療法後の化合物1の投与による増殖の低下;(xxviii)放射線との組み合わせ療法での化合物1の投与による増殖の低下;(xxix)手術による治療前の化合物1の投与による増殖の低下;(xxx)手術との組み合わせ治療における化合物1の投与による増殖の低下;(xxxi)対症療法と共に化合物1の投与による治療効果の向上または改善;(xxxii)膵臓癌を有する対象におけるBMI−1の血漿濃度の低下;(xxxiii)膵臓癌を有する対象の血漿における循環増殖細胞の減少;(xxxiv)膵臓癌を有する対象における膵臓癌バイオマーカー(例えば、BMI−1、チューブリン重合、アポトーシスマーカーまたは組織など)の血漿濃度の変化(例えば、低下または増加);(xxxv)膵臓癌を有する対象からの生体試料(例えば、血漿、血清、尿または任意の他の生体液)におけるBMI−1の濃度の低下;(xxxvi)磁気共鳴画像法(MRI)、ダイナミック造影MRI(DCE−MRI)、X線、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、陽電子放出断層撮影(PET)スキャン、7−AAD蛍光またはDAPI蛍光など、当業者に利用可能な従来の方法により測定したとき、増殖細胞数は、本明細書に記載される療法の投与後維持される;(xxxvii)磁気共鳴画像法(MRI)、ダイナミック造影MRI(DCE−MRI)、X線、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、陽電子放出断層撮影(PET)スキャン、7−AAD蛍光またはDAPI蛍光など、当業者に利用可能な従来の方法により測定したとき、増殖細胞数は、本明細書に記載される療法の投与後減少する;(xxxviii)磁気共鳴画像法(MRI)、ダイナミック造影MRI(DCE−MRI)、X線、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、陽電子放出断層撮影(PET)スキャン、7−AAD蛍光またはDAPI蛍光など、当業者に利用可能な従来の方法により測定したとき、増殖細胞数は、本明細書に記載される療法の投与後増加しないか、または増加が予想を下回る。
本明細書で使用する用語「24時間で」は、状態が維持される期間を指す。例えば、化合物1の有効量は、化合物1の平均血漿濃度が達成され、24時間の大部分で維持される場合に同定される。言い換えれば、化合物1の平均血漿濃度は、24時間を超え得るかまたは下回り得る好適な時間に到達され得る。
本明細書で使用する用語「本明細書に記載される療法」は、有効量の化合物1を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵臓癌の治療または改善において、チューブリン重合の阻害を標的化することによる、BMI−1機能の阻害剤としての化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の使用方法を指す。
一態様において、膵臓癌は膵管腺癌である。本明細書に記載される療法の別の態様において、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の使用方法は、相乗的な抗増殖活性を有する他の化学療法剤との組み合わせを含む。一態様において、他の化学療法剤は、BMI−1の機能的活性を阻害する。別の態様において、他の化学療法剤は、チューブリン重合を阻害する。
本明細書で使用する用語「薬学的に許容される塩」は、無機酸および塩基、ならびに有機酸および塩基を含む、薬学的に許容される非毒性の酸または塩基から調製される塩を指す;例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1990)またはRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 19 th eds., Mack Publishing, Easton PA (1995)を参照のこと。
本明細書で使用する用語「化合物1」は全般的に、5−フルオロ−2−(6−フルオロ−2−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)−N4−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピリミジン−4,6−ジアミン化合物およびその薬学的に許容される塩を指す。「化合物1」は、実質的に純粋(例えば、約90%、約95%、約98%、約99%または約99.9%純粋)であり得る。様々な態様において、用語「化合物1」は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開番号WO2014/081906に開示される化合物109を指す。
使用方法
本明細書に示されるように、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物は、有効量の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵臓癌の治療または改善において使用するためのチューブリン重合およびBMI−1機能の阻害剤である。
一態様において、膵臓癌は膵管腺癌である。
別の態様において、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の使用方法は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物と、1つまたは複数の他の化学療法剤との組み合わせを含み、該組み合わせは、相乗的な抗増殖活性を示す。一態様において、他の化学療法剤はBMI−1の機能的活性を阻害する。別の態様において、他の化学療法剤はチューブリン重合を阻害する。しかし、膵臓癌の治療において使用するためのBMI−1の機能的活性またはチューブリン重合のいずれかまたは両方の公知のまたは承認された阻害剤は存在しない。したがって、強力かつ選択的活性、好ましい製薬学的特性および広範な臨床経験は、化合物1が膵臓癌の治療に有用な剤であることを示唆している。
一態様において、増殖細胞または細胞株において細胞周期停止を誘導するために、チューブリン重合およびBMI−1機能を阻害するかまたは低下させる方法が本明細書に記載される。
別の態様において、増殖細胞または細胞株における細胞周期停止を誘導するために、チューブリン重合およびBMI−1機能を阻害するかまたは低下させる方法は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物と、増殖細胞または細胞株とを接触させることを含み、この増殖細胞または細胞株はナイーブであり得るか、またはチューブリン重合およびBMI−1機能の阻害または低下に影響を受けることが示されている。
別の態様において、このような細胞または細胞株の非限定的な例は、HL−60、HeLa、HT1080、HCT116、HEK293、NCI H460、U−87MG、ASPC−1、PL−45、HPAF−2、PC−3、MDA−MB−231、MDA−MB−468、A431、SNU−1、AGS、Kato III、A549、Calu−6、A375、SY5Y、SKOV3、Capan−1、sNF96.2、TIVE−L1、TIVE−L2、LNCaP細胞などから選択される。より具体的な態様において、細胞または細胞株は膵臓癌細胞であり得る。
一態様において、膵臓癌を有するそれを必要とする対象においてチューブリン重合およびBMI−1機能を阻害するかまたは低下させる方法は、本明細書に記載されるように有効量の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を対象に投与することを含む。
具体的な態様において、対象は、チューブリン重合およびBMI−1機能を阻害するかまたは低下させることにより治療できる膵臓癌と診断される。
具体的な態様において、本明細書に記載されるチューブリン重合およびBMI−1機能を阻害するかまたは低下させる方法は、当技術分野で周知の方法により評価したとき、対象への化合物1の投与前のチューブリン重合およびBMI−1機能と比較して、チューブリン重合およびBMI−1機能を約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、80%、85%、90%、95%または100%阻害するかまたは低下させる。
具体的な態様において、本明細書に記載されるチューブリン重合およびBMI−1機能を阻害するかまたは低下させる方法は、当技術分野で周知の方法により評価したとき、対象への化合物1の投与前のチューブリン重合およびBMI−1機能と比較して、チューブリン重合およびBMI−1機能を約5%〜約20%、10%〜30%、15%〜40%、15%〜50%、20%〜30%、20%〜40%、20%〜50%、30%〜60%、30%〜70%、30%〜80%、30%〜90%、30%〜95%、30%〜99%もしくは約40%〜約100%の範囲でまたはその間の任意の範囲で阻害するかまたは低下させる。
具体的な態様において、本明細書に記載されるチューブリン重合およびBMI−1機能を阻害するかまたは低下させる方法は、当技術分野で周知の方法により評価したとき、対象への化合物1の投与前のin vitroまたはin vivo増殖細胞または細胞株集団と比較して、増殖を約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、80%、85%、90%、95%または100%阻害するか、またはin vitroもしくはin vivo増殖細胞もしくは細胞株集団を前記の割合で減少させる。
具体的な態様において、本明細書に記載されるチューブリン重合およびBMI−1機能を阻害するかまたは低下させる方法は、当技術分野で周知の方法により評価したとき、対象への化合物1の投与前のin vitroまたはin vivo増殖細胞または細胞株集団と比較して、増殖を約5%〜約20%、10%〜30%、15%〜40%、15%〜50%、20%〜30%、20%〜40%、20%〜50%、30%〜60%、30%〜70%、30%〜80%、30%〜90%、30%〜95%、30%〜99%もしくは約40%〜約100%またはその間の任意の範囲で阻害するか、またはin vitroもしくはin vivo増殖細胞もしくは細胞株集団を前記の範囲で減少させる。
様々な態様において、本明細書に記載されるチューブリン重合およびBMI−1機能を阻害するかまたは低下させる方法は、当技術分野で周知の方法、例えば、ELISAにより評価したとき、対象におけるBMI−1の血漿濃度を低下させる。
一態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、本明細書に記載されるように、対象においてチューブリン重合およびBMI−1機能を阻害するかまたは低下させるのに有効な量の化合物1を投与することを含む。
具体的な態様において、本明細書に記載されるように、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、当技術分野で周知の方法により評価したとき、対象への化合物1の投与前のチューブリン重合およびBMI−1機能と比較して、チューブリン重合およびBMI−1機能を約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、80%、85%、90%、95%または100%阻害するかまたは低下させる。
具体的な態様において、本明細書に記載されるように、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、当技術分野で周知の方法により評価したとき、対象への化合物1の投与前のチューブリン重合およびBMI−1機能と比較して、チューブリン重合およびBMI−1機能を約5%〜約20%、10%〜30%、15%〜40%、15%〜50%、20%〜30%、20%〜40%、20%〜50%、30%〜60%、30%〜70%、30%〜80%、30%〜90%、30%〜95%、30%〜99%もしくは約40%〜約100%の範囲でまたはその間の任意の範囲で阻害するかまたは低下させる。
様々な態様において、本明細書に記載されるように、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、当技術分野で周知の方法、例えば、ELISAにより評価したとき、対象におけるBMI−1の濃度を低下させる。
一態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、本明細書に記載されるように、増殖を阻害するかまたは対象のin vitroもしくはin vivo増殖細胞もしくは細胞株集団を減少させるのに有効な量の化合物1を投与することを含む。
具体的な態様において、本明細書に記載されるように、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、当技術分野で周知の方法により評価したとき、対象への化合物1の投与前の増殖または対象のin vitroもしくはin vivo増殖細胞もしくは細胞株集団と比較して、増殖を約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、80%、85%、90%、95%もしくは100%阻害するか、または対象のin vitroもしくはin vivo増殖細胞もしくは細胞株集団を前記の割合で減少させる。
具体的な態様において、本明細書に記載されるように、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、当技術分野で周知の方法により評価したとき、対象への化合物1の投与前の増殖または対象のin vitroもしくはin vivo増殖細胞もしくは細胞株集団と比較して、増殖を約5%〜約20%、10%〜30%、15%〜40%、15%〜50%、20%〜30%、20%〜40%、20%〜50%、30%〜60%、30%〜70%、30%〜80%、30%〜90%、30%〜95%、30%〜99%もしくは約40%〜約100%またはその間の任意の範囲で阻害するか、または対象のin vitroもしくはin vivo増殖細胞もしくは細胞株集団を前記の範囲で減少させる。
様々な態様において、本明細書に記載されるように、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、当技術分野で周知の方法、例えば、ELISAにより評価したとき、増殖を阻害するか、または対象のin vitroもしくはin vivo増殖細胞もしくは細胞株集団を減少させる。
一態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、本明細書に記載されるように、増殖を阻害するか、または対象のin vitroもしくはin vivo増殖細胞もしくは細胞株集団を減少させるのに有効な量の化合物1を、別の療法(例えば、化合物1を含まないか、または異なる抗増殖剤を含む、1つまたは複数の追加療法)と組み合わせてそれを必要とする対象に投与することを含む。
このような方法は、追加療法の投与前、投与と同時、または投与後に化合物1を投与することを含み得る。ある種の態様において、このような方法は、相加効果または相乗効果を有する。
具体的な態様において、有効量の化合物1および有効量の別の療法をそれを必要とする対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法が本明細書に提供される。
本明細書に提供される方法に従って予防、治療または改善できる癌の具体例としては、膵臓癌、例えば、これに限定されないが膵管腺癌が挙げられるが、これに限定されない。
ある種の態様において、本明細書に提供される方法に従って予防、治療または改善できる膵臓癌は、膵管腺癌から選択される。
一態様において、(a)1回または複数回用量の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物をそれを必要とする対象に投与する工程と、(b)工程(a)の前および/またはその後に特定のバイオマーカーの濃度を監視する工程とを含む、膵臓癌を予防、治療または改善する方法が本明細書に提供される。
具体的な態様において、監視工程(b)は、一定数の用量(例えば、1、2、4、6、8、10、12、14、15もしくは29用量またはそれ以上の用量;2〜4、2〜8、2〜20または、2〜30用量)または一定期間(例えば、1、2、3、4、5、6もしくは7日間;または1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、45、48もしくは50週間)の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の投与前および/または投与後に行われる。
具体的な態様において、これらの監視パラメーターのうちの1つまたは複数は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を対象に投与する前に検出される。
具体的な態様において、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の投与後のin vitroまたはin vivo増殖細胞または細胞株集団の増殖の低下は、一連の治療が膵臓癌を予防、治療または改善するのに有効であることを示す。
具体的な態様において、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の投与後のin vitroまたはin vivo増殖細胞または細胞株集団の増殖における変化は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の投与の投薬量、頻度および/または期間が調整(例えば、増加、減少または維持)され得ることを示し得る。
具体的な態様において、対象の生体試料における特定のバイオマーカーの濃度は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の対象への投与を含む膵臓癌の一連の治療前、治療中および/または治療後監視される。
化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の投与の投薬量、頻度および/または期間は、in vitroまたはin vivo増殖細胞または細胞株集団の増殖の結果によって変更され得る。代替的には、これらの監視パラメーター(例えば、特定のバイオマーカーの濃度)の変化は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の投与を含む一連の治療が、膵臓癌を予防、治療または改善するのに有効であることを示し得る。
対象における特定のバイオマーカーの濃度は、当業者に公知の任意の技術により検出され得る。ある種の態様において、対象の特定のバイオマーカーの濃度を検出する方法は、生体試料(例えば、組織または体液試料)を対象から得、特定の種類の処理(例えば、遠心分離)が施された生体試料(例えば、血漿、血清、尿または任意の他の生体液)におけるバイオマーカーの濃度を検出すること、および免疫学的技術、例えば、ELISAの使用による検出を含む。
具体的な態様において、本明細書に記載されるELISAアッセイは、特定の種類の処理(例えば、遠心分離)が施された生体試料(例えば、血漿、血清、尿または任意の他の生体液)におけるバイオマーカーの濃度を検出するために用いられ得る。生体試料におけるバイオマーカーの濃度を検出するために用いられ得る当技術分野で公知の他の技術としては、多重アッセイまたはプロテオミクスアッセイが挙げられる。
具体的な態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、膵臓癌に関連する1つ、2つまたはそれ以上の症状を軽減または管理する。膵臓癌の1つ、2つまたはそれ以上の症状の軽減または管理は、膵臓癌を予防、治療または改善するための化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の有効性の臨床エンドポイントとして用いられ得る。いくつかの態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、膵臓癌に関連する1つまたは複数の症状の持続時間および/または重症度を低減する。いくつかの態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、膵臓癌に関連する1つまたは複数の症状の発症、進行および/または再発を阻害する。いくつかの態様において、本明細書に提供される膵臓癌を治療する方法は、膵臓癌に関連する症状の数を減少させる。
ある種の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、細胞周期のG1/S期またはG1/S後期(すなわち、後期チェックポイント(休薬または前DNA合成期)から初期DNA合成期までの期間)を延長または遅延させる。他の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、細胞周期のS期またはG2/M期(DNA合成期から初期分裂期までの期間)を延長または遅延させる。
いくつかの態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、膵臓癌および/またはその1つもしくは複数の症状の重症度を低減、改善または軽減する。他の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、膵臓癌と診断された対象の入院(例えば、入院頻度または入院の持続期間)を減少させる。
ある種の態様において、本明細書に提供される方法は、膵臓癌と診断された対象の生存を増加させる。具体的な態様において、本明細書に提供される方法は、膵臓癌と診断された対象の生存を約6カ月以上、約7カ月以上、約8カ月以上、約9カ月以上または約12カ月以上増加させる。
特定の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、膵臓癌、またはこれに関連する1つもしくは複数の症状の進行を阻害または低減する。具体的な態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、別の療法(例えば、抗癌剤、放射線、化学療法などの薬物療法、抗アンドロゲン療法または手術)の治療効果を向上または改善する。ある種の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、補助療法としての化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の使用を含む。
特定の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、膵臓癌と診断された対象の死亡率を低下させる。ある種の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、寛解状態の対象の数を増加させるか、または入院率を低下させる。他の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、膵臓癌に関連する1つまたは複数の症状の発生、発症または進行を予防する。
特定の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、膵臓癌対象の無症状生存を増加させる。いくつかの態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、対象における膵臓癌を治癒するのではなく、疾患の進行または悪化を予防する。いくつかの態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、対象の生活の質を改善する。
ある種の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、癌と診断された対象の無癌生存率を増加させる。いくつかの態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、無再発生存を増加させる。ある種の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、寛解状態の対象の数を増加させる。他の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、対象の寛解期間を延長する。
治療集団
いくつかの態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、膵臓癌を有するか、または膵臓癌と診断されたヒトである。他の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、膵臓癌に罹患しやすいか、またはその影響を受けやすいヒトである。いくつかの態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、膵臓癌を発生するリスクのあるヒトである。
一態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、ヒト乳児である。別の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、ヒト幼児である。別の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、ヒト小児である。別の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、ヒト成人である。別の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、中年のヒトである。別の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、高齢のヒトである。
ある種の態様において、本明細書に提供される方法に従って癌の治療を受ける対象は、身体の他の部分、例えば、骨、肺および肝臓に転移した膵臓癌を有する。ある種の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、膵臓癌からの寛解状態にある。いくつかの態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、膵臓癌の再発を有していた。ある種の態様において、本明細書に提供される方法に従って治療を受ける対象は、膵臓癌に関連する1つまたは複数の症状の再発を経験している。
ある種の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、約1〜約5歳、約5〜約10歳、約10〜約18歳、約18〜約30歳、約25〜約35歳、約35〜約45歳、約40〜約55歳、約50〜約65歳、約60〜約75歳、約70〜約85歳、約80〜約90歳、約90〜約95歳または約95〜約100歳、またはその間の任意の年齢のヒトである。
具体的な態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、18歳以上のヒトである。特定の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、1歳〜18歳の年齢のヒト小児である。ある種の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、12歳〜18歳の年齢のヒトである。ある種の態様において、対象は男性のヒトである。別の態様において、対象は女性のヒトである。一態様において、対象は妊娠していないか、または授乳していない女性のヒトである。一態様において、対象は、妊娠しているか、もしくは妊娠する予定である/可能性があるか、または授乳している女性である。
特定の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、免疫無防備状態または免疫抑制状態にあるヒトである。ある種の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、免疫抑制療法を受けているか、またはそれから回復しているヒトである。ある種の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、膵臓癌を有するか、またはそれに罹患するリスクがあるヒトである。ある種の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、手術、化学療法などの薬物療法、ホルモン療法および/または放射線療法を受けているか、これらを受ける予定であるかまたはこれらを受けたヒトである。
いくつかの態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象には、化合物1以外の療法に対する何らかの有害な作用またはそれに対する不耐性が発生する前に、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物、あるいは組み合わせ療法が投与される。いくつかの態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、不応性である対象である。ある種の態様において、不応性である対象は、標準的療法(例えば、手術、放射線および/または化学療法などの薬物療法)に不応性である対象である。ある種の態様において、膵臓癌が有意に根絶されなかった場合、および/または1つもしくは複数の症状が有意に軽減されなかった場合、膵臓癌を有する対象は療法に不応性である。対象が不応性であるかどうかの決定は、このような文脈において「不応性」に関して当技術分野で認められる意味を用いて、膵臓癌の治療の有効性をアッセイする当技術分野で公知の任意の方法により、in vivoまたはin vitroのいずれかで行われ得る。
いくつかの態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物での治療以外の療法に対して不応性であることが証明されたが、もはやこれらの療法を受けていないヒトである。ある種の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、1つまたは複数の従来の抗癌療法、例えば、手術、化学療法などの薬物療法、抗アンドロゲン療法または放射線をすでに受けているヒトである。とりわけ対象は不応性である対象、従来の療法には若すぎる対象、既存の療法での治療にもかかわらず膵臓癌が再発した対象である。
いくつかの態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、従来の療法に対する有害反応の影響を受けやすいヒトである。いくつかの態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の投与前に、化学療法などの薬物療法、手術、抗アンドロゲン療法または放射線療法などの療法を受けていないヒトである。他の態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の投与前に療法を受けたヒトである。いくつかの態様において、本明細書に提供される方法に従って膵臓癌の治療を受ける対象は、前の療法に対する有害な副作用を経験したヒト、または前の療法が、ヒトに対する許容できないレベルの毒性により中断されたヒトである。
投薬量および投与
化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物は、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法に従って、有益な効果または治療効果をもたらす量で、様々な経路によりそれを必要とする対象に投与され得る。化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物は、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法に従ってそれを必要とする対象に経口投与され得る。化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の経口投与は、このような治療を必要とする対象が、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の接種のレジメンに従うことを容易にし得る。したがって、具体的な態様において、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物は、それを必要とする対象に経口投与される。別の態様において、本明細書に提供される化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物は、食物または水を伴わず、またはそれを伴って経口投与され得る。
他の投与経路としては、静脈内、皮内、髄腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内、吸入、経皮、局所、経粘膜、頭蓋内、硬膜外および関節滑液嚢内が挙げられるが、これらに限定されない。一態様において、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物は、それを必要とする対象に全身(例えば、非経口)投与される。一態様において、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物が、血液脳関門を横断することを可能にする経路(例えば、経口)を介して投与される。
化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物、および1つまたは複数の追加療法は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を1つまたは複数の追加療法と組み合わせて投与することを含む、本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法に従って、同じ投与経路または異なる投与経路で投与され得る。
本明細書に提供される膵臓癌を予防、治療または改善する方法に従って、それを必要とする対象に投与される、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の投与の投薬量および頻度は、何らかの副作用を最小限に抑えながら効果がある。化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の投与の正確な投薬量および頻度は、治療を必要とする対象に関連する因子を考慮して、実務者により決定され得る。
考慮され得る因子としては、疾患状態の重症度、対象の全般的な健康、対象の年齢、体重および性別、食事、投与の時間および頻度、薬物の組み合わせ、反応感度および療法に対する耐性/応答が挙げられる。化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の投与の投薬量および頻度は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物の有効量を提供するため、または所望の効果を維持するために、経時的に調整され得る。
本明細書に記載されるように、本明細書に提供されるそれを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、有効量の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を対象に投与することを含み、そこで有効量は、対象に週2回異なる日に投与される用量であり、ある週の2回目の用量は1回目の3日目までに続き、翌週の1回目の用量は前週の2回目の用量の4日目までに続く。
具体的な態様において、有効量は対象に投与される用量であり、これは、対象の応答に応じて増加または減少され得る。
具体的な態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、有効量の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を対象に投与することを含み、そこで有効量は、週2回経口投与される約50mg〜約200mg、約100mg〜約200mg、約150mg〜約200mgなどの範囲、またはその間の任意の範囲の用量から選択される用量である。
具体的な態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、有効量の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を対象に投与することを含み、そこで有効量は、週2回経口投与される約50mg、約100mg、約150mgまたは約200mgなど、またはその間の任意の範囲から選択される用量である。
具体的な態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、有効量の化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を対象に投与することを含み、そこで有効量は、週2回経口投与される約50mgの用量である。
いくつかの態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、有効量の化合物1またはその医薬組成物を対象に投与することを含み、そこで有効量は、1平方メートルあたりのmg(mg/m2)で表される投薬量である。化合物1のmg/m2は、例えば、動物の変換係数に1キログラムあたりのmg(mg/kg)の動物の用量を乗じて、ヒト用量相当のmg/m2の用量を得ることにより求められ得る。規制上、以下の変換係数が用いられ得る:マウス=3、ハムスター=4.1、ラット=6、モルモット=7.7(Freireich et al., Cancer Chemother. Rep. 50(4):219-244 (1966)に基づく)。ヒトの身長および体重を使用して、ヒトの体表面積をボイドの体表面積算出式を適用して算出することができる。具体的な態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、有効量の化合物1またはその医薬組成物を対象に投与することを含み、そこで有効量は、約0.1mg/m2〜約1000mg/m2の範囲またはその間の任意の範囲の量である。
一態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、有効量の化合物1またはその医薬組成物を対象に投与することを含み、そこで有効量は、膵臓癌を有する対象または予め確立された膵臓癌を有する動物モデルにおいて化合物1の標的平均血漿濃度を達成する投薬量である。
具体的な態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、有効量の化合物1またはその医薬組成物を対象に投与することを含み、そこで有効量は、膵臓癌を有する対象または予め確立された膵臓癌を有する動物モデルにおいて、24時間での化合物1の平均血漿濃度を約3時間μg/mL〜約70時間μg/mL、約3時間μg/mL〜約60時間μg/mL、約3時間μg/mL〜約50時間μg/mL、約3時間μg/mL〜約40時間μg/mL、約3時間μg/mL〜約30時間μg/mL、約3時間μg/mL〜約20時間μg/mL、約3時間μg/mL〜約10時間μg/mLなどの範囲で、またはその間の任意の範囲で達成する投薬量である。
具体的な態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、有効量の化合物1またはその医薬組成物を対象に投与することを含み、そこで有効量は、膵臓癌を有する対象または予め確立された膵臓癌を有する動物モデルにおいて、24時間での化合物1の平均血漿濃度を約3時間μg/mL、約10時間μg/mL、約20時間μg/mL、約30時間μg/mL、約40時間μg/mL、約50時間μg/mL、約60時間μg/mL、約70時間μg/mLなどまたはその間の任意の範囲で達成する投薬量である。
このような血漿濃度を達成するために、化合物1またはその医薬組成物の本明細書に記載される用量が投与され得る。ある種の態様において、化合物1またはその医薬組成物のその後の用量は対象に投与された化合物1またはその医薬組成物の用量で達成された化合物1の平均血漿濃度に基づき相応に調整され得る。
具体的な態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、有効量の化合物1またはその医薬組成物を対象に投与することを含み、そこで有効量は、膵臓癌を有する対象または予め確立された膵臓癌を有する動物モデルにおいて、1つまたは複数のバイオマーカーの標的平均血漿濃度の低下を達成する投薬量である。
特定の態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、有効量の化合物1またはその医薬組成物を対象に投与することを含み、そこで有効量は、膵臓癌を有する対象または予め確立された膵臓癌を有する動物モデルにおいて、例えば、当技術分野で公知の任意の撮像技術により決定される化合物1またはその医薬組成物の所望の組織対平均血漿濃度比を達成する投薬量である。
いくつかの態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、有効量の化合物1またはその医薬組成物を対象に投与することを含み、そこで有効量は、各用量で同じであってもよく、または同じでなくてもよい。特定の態様において、化合物1またはその医薬組成物の第1の(すなわち、初期)用量は第1の期間にそれを必要とする対象に投与され、次いで、化合物1またはその医薬組成物の第2の(すなわち、負荷)用量が第2の期間に対象に投与され、その後、化合物1またはその医薬組成物の第3の(すなわち、維持)用量が第2の期間に対象に投与される。第1の用量は第2の用量より多くてもよく、または第1の用量は第2の用量より少なくてもよい。同様の方式において、化合物1またはその医薬組成物の第3の用量は、第2の用量より多くてもまたは少なくてもよく、第1の用量より多くてもまたは少なくてもよい。
いくつかの態様において、本明細書に記載される投薬量は、投与される総量を指す;すなわち、1超の化合物が投与される場合、いくつかの態様において、投薬量は、投与される総量に対応する。具体的な態様において、経口組成物は、約5質量%〜約95質量%の化合物1を含有する。
それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法に従って化合物1またはその医薬組成物がそれを必要とする対象に投与される期間は、無癌生存または症状からの解放により決定される期間である。ある種の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を治療する方法は、化合物1またはその医薬組成物を、膵臓癌に関連する1つまたは複数の症状の重症度および/または数が減少するまでの期間投与することを含む。
いくつかの態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、化合物1またはその医薬組成物を最大48週間投与することを含む。他の態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、化合物1またはその医薬組成物を最大4週間、8週間、12週間、16週間、20週間、24週間、26週間(0.5年間)、52週間(1年間)、78週間(1.5年間)、104週間(2年間)、または130週間(2.5年間)またはそれ以上投与することを含む。
ある種の態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、化合物1またはその医薬組成物を無期限投与することを含む。いくつかの態様において、本明細書に提供される膵臓癌を治療する方法は、化合物1またはその医薬組成物を一定期間投与し、次いで、休薬期間(すなわち、化合物1またはその医薬組成物が投与されない期間)の後、化合物1またはその医薬組成物の投与が再開されることを含む。
具体的な態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、化合物1またはその医薬組成物を、1週間サイクル、2週間サイクル、3週間サイクル、4週間サイクル、5週間サイクル、6週間サイクル、8週間サイクル、9週間サイクル、10週間サイクル、11週間サイクルまたは12週間サイクルなどのサイクルで投与することを含む。このようなサイクルにおいて、化合物1またはその医薬組成物は、週1回または週2回投与され得る。毎週のサイクルの具体的な態様において、化合物1またはその医薬組成物は、週2回投与され得る。このような毎週のサイクルの具体的な態様において、化合物1またはその医薬組成物は1日1回投与され得る。
具体的な態様において、化合物1またはその医薬組成物の投与期間は、1つまたは複数の監視パラメーター、例えば、特定のバイオマーカーの濃度により指示され得る。
特定の態様において、化合物1またはその医薬組成物の投与期間は、1つまたは複数の監視パラメーター、例えば、バイオマーカーの濃度に基づき調整され得る。
ある種の態様において、化合物1またはその医薬組成物は、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法に従って、それを必要とする対象に、食事(例えば、朝食、昼食または夕食)の前、食事と同時または食事の後に投与される。具体的な態様において、化合物1またはその医薬組成物は、本明細書に提供される膵臓癌を治療する方法に従って、それを必要とする対象に午前中(例えば、午前5時〜午後12時)に投与される。
ある種の態様において、化合物1またはその医薬組成物は、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法に従って、それを必要とする対象に正午(すなわち、午後12時)に投与される。特定の態様において、化合物1またはその医薬組成物は、本明細書に提供される膵臓癌を治療する方法に従って、それを必要とする対象に午後(すなわち、午後12時〜午後5時)、夕方(例えば、午後5時から就寝まで)、および/または就寝前に投与される。
具体的な態様において、化合物1またはその医薬組成物の一用量は、対象に1日1回および週2回投与される。
組み合わせ療法
化合物1またはその医薬組成物を1つまたは複数の追加療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む、膵臓癌の治療のための組み合わせ療法が、本明細書に提供される。具体的な態様において、有効量の化合物1またはその医薬組成物を有効量の別の療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む、膵臓癌の治療のための組み合わせ療法が、本明細書に提供される。
本明細書で使用する用語「組み合わせ」は、化合物1またはその医薬組成物の投与の文脈において、膵臓癌の治療において使用するための1つまたは複数の追加療法(例えば、剤、手術または放射線)の投与前、投与と同時、または投与後に化合物1またはその医薬組成物を投与することを指す。用語「組み合わせ」の使用は、1つまたは複数の治療剤および1つまたは複数の追加療法が対象に投与される順番を制限しない。具体的な態様において、化合物1またはその医薬組成物の投与と1つまたは複数の追加療法の投与との間の時間間隔は、約1〜5分間、1〜30分間、30〜60分間、1時間、1〜2時間、2〜6時間、2〜12時間、12〜24時間、1〜2日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、15週間、20週間、26週間、52週間、11〜15週間、15〜20週間、20〜30週間、30〜40週間、40〜50週間、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間、5カ月間、6カ月間、7カ月間、8カ月間、9カ月間、10カ月間、11カ月間、12カ月間、1年間、2年間またはその間の任意の期間であり得る。ある種の態様において、化合物1またはその医薬組成物および1つまたは複数の追加療法は、1日未満、1週間未満、2週間未満、3週間未満、4週間未満、1カ月未満、2カ月未満、3カ月未満、6カ月未満、1年未満、2年未満または5年未満あけて投与される。
いくつかの態様において、本明細書に提供される組み合わせ療法は、化合物1またはその医薬組成物を毎日投与する工程、および1つまたは複数の追加療法を週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、月1回、2カ月に1回(例えば、約8週間)、3カ月に1回(例えば、約12週間)または4カ月に1回(例えば、約16週間)投与する工程を含む。ある種の態様において、化合物1またはその医薬組成物および1つまたは複数の追加療法は、対象に周期的に投与される。サイクリング療法は、化合物1またはその医薬組成物を一定期間投与し、次いで1つまたは複数の追加療法を一定期間投与し、この順次投与を繰り返すことを含む。ある種の態様において、サイクリング療法は、化合物1もしくはその医薬組成物または追加療法が、一定期間(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、10週間、20週間、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間、5カ月間、6カ月間、7カ月間、8カ月間、9カ月間、10カ月間、11カ月間、12カ月間、2年間または3年間)投与されない休薬期間も含み得る。一態様において、投与サイクル数は1〜12サイクル、2〜10サイクルまたは2〜8サイクルである。
いくつかの態様において、それを必要とする対象における膵臓癌を予防、治療または改善する方法は、化合物1またはその医薬組成物を追加療法と組み合わせて投与する前に、化合物1またはその医薬組成物を単剤として一定期間投与することを含む。ある種の態様において、本明細書に提供される膵臓癌を治療する方法は、化合物1またはその医薬組成物を追加療法と組み合わせて投与する前に、追加療法を単独で一定期間投与することを含む。
いくつかの態様において、本明細書に提供される方法に従った化合物1またはその医薬組成物および1つまたは複数の追加療法の投与は、化合物1もしくはその医薬組成物または前記1つもしくは複数の追加療法の単独での投与と比較して、相加効果を有する。いくつかの態様において、本明細書に提供される方法に従った化合物1またはその医薬組成物および1つまたは複数の追加療法の投与は、化合物1もしくはその医薬組成物または前記1つもしくは複数の追加療法の単独での投与と比較して、相乗効果を有する。
本明細書で使用する用語「相乗」は、化合物1またはその医薬組成物を1つまたは複数の追加療法(例えば、剤)と組み合わせて投与する効果を指し、その組み合わせは、任意の2つ以上の単一療法(例えば、剤)の相加効果よりも有効である。
具体的な態様において、組み合わせ療法の相乗効果は、化合物1もしくはその医薬組成物または追加療法のより低い投薬量(すなわち、最適以下の用量)の使用、ならびに/あるいは対象への化合物1もしくはその医薬組成物または追加療法のより低い頻度の投与を可能にする。
ある種の態様において、化合物1もしくはその医薬組成物または追加療法のより低い投薬量を利用するか、ならびに/あるいは化合物1もしくはその医薬組成物または前記追加療法をより低い頻度で投与する能力は、膵臓癌の治療において、化合物1もしくはその医薬組成物または前記追加療法各々の有効性を低下させずに、対象に対する化合物1もしくはその医薬組成物または前記追加療法各々の投与に関連する毒性を低減する。
いくつかの態様において、相乗効果は、膵臓癌の治療において、化合物1またはその医薬組成物および各前記追加療法の有効性の改善をもたらす。いくつかの態様において、化合物1またはその医薬組成物と1つまたは複数の追加療法との組み合わせの相乗効果は、任意の単一療法の使用に関連する有害または望ましくない副作用を回避または低減する。
化合物1またはその医薬組成物と1つまたは複数の追加療法との組み合わせは、同じ医薬組成物中で対象に投与され得る。代替的に、化合物1またはその医薬組成物および1つまたは複数の追加療法は、別個の医薬組成物中で対象に同時投与され得る。化合物1またはその医薬組成物および1つまたは複数の追加療法は、別個の医薬組成物中で対象に順次投与され得る。化合物1またはその医薬組成物および1つまたは複数の追加療法はまた、同じまたは異なる投与経路で対象に投与され得る。
本明細書に提供される組み合わせ療法は、化合物1またはその医薬組成物を、膵臓癌を治療するための従来のまたは公知の療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。膵臓癌またはこれに関連する状態の他の療法は、1つまたは複数の症状を制御または緩和することが目的とされる。したがって、いくつかの態様において、本明細書に提供される組み合わせ療法は、鎮痛剤、または膵臓癌に関連する1つもしくは複数の症状またはこれに関連する状態を緩和または制御することを目的とした他の療法を、それを必要とする対象に投与することを含む。
膵臓癌を治療するための化合物1またはその医薬組成物と組み合わせて用いられ得る抗癌剤の具体例としては、ホルモン剤(例えば、アロマターゼ阻害剤、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)およびエストロゲン受容体アンタゴニスト)、化学療法剤(例えば、微小管分解ブロッカー、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤およびDNA架橋剤または損傷剤)、血管新生阻害剤(例えば、VEGFアンタゴニスト、受容体アンタゴニスト、インテグリンアンタゴニスト、血管標的剤(VTA)/血管破壊剤(VDA))、放射線療法および従来の手術が挙げられる。
膵臓癌を治療するための化合物1またはその医薬組成物と組み合わせて用いられ得るホルモン剤の非限定的な例としては、アロマターゼ阻害剤、SERMおよびエストロゲン受容体アンタゴニストが挙げられる。アロマターゼ阻害剤であるホルモン剤は、ステロイド系または非ステロイド系であり得る。非ステロイド系ホルモン剤の非限定的な例としては、レトロゾール、アナストロゾール、アミノグルテチミド、ファドロゾールおよびボロゾールが挙げられる。ステロイド系ホルモン剤の非限定的な例としては、アロマシン(エキセメスタン)、ホルメスタンおよびテストラクトンが挙げられる。SERMであるホルモン剤の非限定的な例としては、タモキシフェン(Nolvadex(登録商標)として商標が付され/市販されている)、アフィモキシフェン、アルゾキシフェン、バゼドキシフェン、クロミフェン、フェマレル、ラソホキシフェン、オルメロキシフェン、ラロキシフェンおよびトレミフェンが挙げられる。エストロゲン受容体アンタゴニストであるホルモン剤の非限定的な例としては、フルベストラントが挙げられる。他のホルモン剤としては、アビラテロンおよびロナプリサンが挙げられるが、これらに限定されない。
癌を治療するための化合物1またはその医薬組成物と組み合わせて用いられ得る化学療法剤の非限定的な例としては、微小管分解ブロッカー、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤およびDNA架橋剤または損傷剤が挙げられる。
微小管分解ブロッカーである化学療法剤としては、タキサン(例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)として商標が付され/市販されている)、ドセタキセル、nab−パクリタキセル(ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル、ABRAXANE(登録商標)として商標が付され/市販されている)、ラロタキセル、オルタタキセルおよびテセタキセル);エポチロン(例えば、イクサベピロン);およびビンカアルカロイド(Vincalkaloid)(例えば、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標)として商標が付され/市販されている))が挙げられるが、これらに限定されない。
代謝拮抗剤である化学療法剤としては、葉酸代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、アミノプテリン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド);プリン代謝拮抗剤(例えば、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、チオグアニン);ピリミジン代謝拮抗剤(例えば、5−フルオロウラシル、カペシタビン(capcitabine)、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、テガフール):およびデオキシリボヌクレオチド代謝拮抗剤(例えば、ヒドロキシ尿素)が挙げられるが、これらに限定されない。
トポイソメラーゼ阻害剤である化学療法剤としては、クラスI(カンプトテカ)トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、トポテカン(HYCAMTIN(登録商標)として商標が付され/市販されている)、イリノテカン、ルビテカンおよびベロテカン);クラスII(ポドフィルム)トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシドまたはVP−16、およびテニポシド);アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ドキシル、アクラルビシン、アムルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、バルルビシンおよびゾルビシン);およびアントラセンジオン(例えば、ミトキサントロンおよびピクサントロン)が挙げられるが、これらに限定されない。
DNA架橋剤(またはDNA損傷剤)である化学療法剤としては、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メクロレタミン、イホスファミド(IFEX(登録商標)として商標が付され/市販されている)、トロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、プレドニムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチン、エストラムスチン、カルムスチン(BiCNU(登録商標)として商標が付され/市販されている)、ロムスチン、セムスチン、フォテムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ストレプトゾシン、ブスルファン、マンノスルファン、トレオスルファン、カルボコン、N,N’,N’−トリエチレンチオホスホラミド、トリアジコン、トリエチレンメラミン);アルキル化様剤(例えば、カルボプラチン(PARAPLATIN(登録商標)として商標が付され/市販されている)、シスプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン);非古典的DNA架橋剤(例えば、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾロミド(TEMODAR(登録商標)として商標が付され/市販されている)、アルトレタミン、ミトブロニトール);および挿入剤(例えば、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシンおよびプリカマイシン)が挙げられるが、これらに限定されない。
膵臓癌を治療するための化合物1またはその医薬組成物と組み合わせて用いられ得る血管新生阻害剤の非限定的な例としては、VEGFアンタゴニスト、受容体アンタゴニスト、インテグリンアンタゴニスト(例えば、ビタキシン、シレンギチドおよびS247)、およびVTA/VDA(例えば、フォスブレタブリン)が挙げられる。VEGFアンタゴニストとしては、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)として商標が付され/市販されている)およびラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標)として商標が付され/市販されている))、VEGFトラップ(例えば、アフリベルセプト)、VEGFアンチセンスまたはsiRNAもしくはmiRNAおよびアプタマー(例えば、ペガプタニブ(MACUGEN(登録商標)として商標が付され/市販されている)が挙げられるが、これらに限定されない。受容体アンタゴニストである血管新生阻害剤としては、抗体(例えば、ラムシルマブ)、およびキナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、セジラニブ、パゾパニブ(panzopanib)、バンデタニブ、アキシチニブおよびAG−013958)、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。血管新生阻害剤の他の非限定的な例としては、ATN−224、酢酸アネコルタブ(RETAANE(登録商標)として商標が付され/市販されている)、微小管脱重合阻害剤、例えば、コンブレタスタチンA4プロドラッグ、およびタンパク質またはタンパク質断片、例えば、コラーゲン18(エンドスタチン)が挙げられる。
膵臓癌を治療するための化合物1またはその医薬組成物と組み合わせて対象に投与され得る他の療法の非限定的な例としては、以下が挙げられる:
(1)スタチン、例えば、ロバスタチン(例えば、MEVACOR(登録商標)として商標が付され/市販されている);
(2)mTOR阻害剤、例えば、ラパマイシン(例えば、RAPAMUNE(登録商標)として商標が付され/市販されている)としても公知であるシロリムス、テムシロリムス(例えば、TORISEL(登録商標)として商標が付され/市販されている)、エベロリムス(evorolimus)(例えば、AFINITOR(登録商標)として商標が付され/市販されている)およびデフォロリムス;
(3)ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、チピファルニブ(例えば、ZARNESTRA(登録商標)として商標が付され/市販されている);
(4)抗線維化剤、例えば、ピルフェニドン;
(5)ペグ化インターフェロン、例えば、PEG−インターフェロンアルファ−2b;
(6)CNS刺激剤、例えば、メチルフェニデート(RITALIN(登録商標)として商標が付され/市販されている);
(7)HER−2アンタゴニスト、例えば、抗HER−2抗体(例えば、トラスツズマブ)およびキナーゼ阻害剤(例えば、ラパチニブ);
(8)IGF−1アンタゴニスト、例えば、抗IGF−1抗体(例えば、AVE1642およびIMC−A11)またはIGF−1キナーゼ阻害剤;
(9)EGFR/HER−1アンタゴニスト、例えば、抗EGFR抗体(例えば、セツキシマブ、パニツムマブ(panitumamab))またはEGFRキナーゼ阻害剤(例えば、エルロチニブ(例えば、TARCEVA(登録商標)として商標が付され/市販されている)、ゲフィチニブ);
(10)SRCアンタゴニスト、例えば、ボスチニブ;
(11)サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤、例えば、セリシクリブ;
(12)ヤヌスキナーゼ2阻害剤、例えば、レスタウルチニブ;
(13)プロテアソーム阻害剤、例えば、ボルテゾミブ;
(14)ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えば、アナグレリド;
(15)イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、例えば、チアゾフリン;
(16)リポキシゲナーゼ阻害剤、例えば、マソプロコール;
(17)エンドセリンアンタゴニスト;
(18)レチノイド受容体アンタゴニスト、例えば、トレチノインまたはアリトレチノイン;
(19)免疫モジュレータ、例えば、レナリドミド、ポマリドミドまたはサリドマイド(例えば、THALIDOMID(登録商標)として商標が付され/市販されている);
(20)キナーゼ(例えば、チロシンキナーゼ)阻害剤、例えば、イマチニブ(例えば、GLEEVEC(登録商標)として商標が付され/市販されている)、ダサチニブ、エルロチニブ、ニロチニブ、ゲフィチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ(例えば、SUTENT(登録商標)として商標が付され/市販されている)、ラパチニブ、AEE788またはTG100801;
(21)非ステロイド系抗炎症剤、例えば、セレコキシブ(CELEBREX(登録商標)として商標が付され/市販されている);
(22)ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、例えば、フィルグラスチム(NEUPOGEN(登録商標)として商標が付され/市販されている);
(23)フォリン酸またはロイコボリンカルシウム;
(24)インテグリンアンタゴニスト、例えば、インテグリンα5β1−アンタゴニスト(例えば、JSM6427);
(25)核内因子カッパベータ(NF−κβ)アンタゴニスト、例えば、抗酸化剤でもあるOT−551;
(26)ヘッジホッグ阻害剤、例えば、CUR61414、シクロパミン、GDC−0449、または抗ヘッジホッグ抗体;
(27)ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えば、SAHA(ボリノスタット(ZOLINZA(登録商標)として商標が付され/市販されている)としても公知である)PCI−24781、SB939、CHR−3996、CRA−024781、ITF2357、JNJ−26481585またはPCI−24781;
(28)レチノイド、例えば、イソトレチノイン(例えば、ACCUTANE(登録商標)として商標が付され/市販されている);
(29)肝細胞増殖因子/散乱因子(HGF/SF)アンタゴニスト、例えば、HGF/SFモノクローナル抗体(例えば、AMG102);
(30)合成化学物質、例えば、アンチネオプラストン;
(31)抗糖尿病薬、例えば、マレイン酸ロシグリタゾン(例えば、AVANDIA(登録商標)として商標が付され/市販されている);
(32)抗マラリア薬および殺アメーバ薬、例えば、クロロキン(例えば、ARALEN(登録商標)として商標が付され/市販されている);
(33)合成ブラジキニン、例えば、RMP−7;
(34)血小板由来増殖因子受容体阻害剤、例えば、SU−101;
(35)FIk−1/KDR/VEGFR2、FGFR1およびPDGFRベータの受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、SU5416およびSU6668;
(36)抗炎症剤、例えば、スルファサラジン(例えば、AZULFIDINE(登録商標)として商標が付され/市販されている);ならびに
(37)TGF−ベータアンチセンス療法。
膵臓癌を治療するための化合物1またはその医薬組成物と組み合わせて対象に投与され得る他の療法の非限定的な例としては、天然に存在するゴナドトロピン放出ホルモンの合成ノナペプチド類似体、例えば、酢酸ロイプロリド(LUPRON(登録商標)として商標が付され/市販されている);非ステロイド系抗アンドロゲン、例えば、フルタミド(ELUEXIN(登録商標)として商標が付され/市販されている)またはニルタミド(NILANDRON(登録商標)として商標が付され/市販されている);非ステロイド系アンドロゲン受容体阻害剤、例えば、ビカルタミド(CASODEX(登録商標)として商標が付され/市販されている);ステロイド系ホルモン、例えば、プロゲステロン;抗真菌剤、例えば、ケトコナゾール(NIZORAL(登録商標)として商標が付され/市販されている);グルココルチコイド、例えば、プレドニゾン;リン酸エストラムスチンナトリウム(EMCYT(登録商標)として商標が付され/市販されている);ならびにビスホスホネート、例えば、パミドロネート、アレンドロネートおよびリセドロネートが挙げられる。
膵臓癌を治療するための化合物1またはその医薬組成物と組み合わせて用いられ得る療法のさらなる具体例としては、癌免疫療法に関連する剤(例えば、サイトカイン、インターロイキンおよび癌ワクチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
化合物1またはその医薬組成物との組み合わせ療法として用いられ得る、膵臓癌に関連する副作用を軽減する剤の具体例としては、制吐剤、例えば、塩酸オンダンセトロン(ZOFRAN(登録商標)として商標が付され/市販されている)、塩酸グラニセトロン(KYTRIL(登録商標)として標識が付され/市販されている)、ロラゼパム(ATIVAN(登録商標)として標識が付され/市販されている)およびデキサメタゾン(DECADRON(登録商標)として標識が付され/市販されている)が挙げられるが、これらに限定されない。
ある種の態様において、膵臓癌を治療するための本明細書に提供される組み合わせ療法は、化合物1またはその医薬組成物を、副作用、例えば、出血(通常、一過性で軽度の鼻出血)、動脈および静脈血栓症、高血圧、創傷治癒の遅延、無症候性タンパク尿、鼻中隔穿孔、高血圧に関連する可逆性後白質脳症症候群、意識朦朧、運動失調、頭痛、嗄声、悪心、嘔吐、下痢、発疹、爪下出血、骨髄異形成症候群、骨髄抑制、疲労、甲状腺機能低下症、QT間隔延長または心不全を治療および/または管理するために用いられる1つまたは複数の剤と組み合わせて投与することを含む。
ある種の態様において、化合物1またはその医薬組成物は、膵臓癌を治療するために、CYP2D6により主に代謝される薬物(例えば、抗うつ薬(例えば、非三環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤など)、抗精神病薬、ベータアドレナリン受容体ブロッカーまたは特定の種類の抗不整脈薬)と組み合わせて用いられない。
キット
化合物1またはその医薬組成物が充填された1つまたは複数の容器を含む医薬パックまたはキットが本明細書に提供される。さらに、膵臓癌の治療に有用な1つもしくは複数の他の療法、または他の適切な剤も、医薬パックまたはキットに含まれ得る。本明細書に記載される医薬組成物の成分のうちの1つまたは複数が充填された1つまたは複数の容器を含む医薬パックまたはキットも本明細書に提供される。医薬品または生物由来物質の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知がこのようなキットに関連してもよく、この通知は、ヒト投与のための製造、使用または販売に関する機関による承認を反映する。
本明細書において引用される文書が、参照により組み込まれるように具体的かつ個々に示されたかどうかにかかわらず、本明細書において参照されるすべての文書は、あたかも各々の個々の参照が、本明細書に十分に記載されていたかのように、あらゆる目的のために同じ程度で参照により本出願に組み込まれる。
次に、特許請求の範囲の主題が十分に記載され、前記が、本明細書に記載される主題の範囲または態様に影響を与えずに、広範囲の等価物内で実施され得ることが当業者により理解されるであろう。添付の特許請求の範囲は、すべてのこのような等価物を含むと解釈されることが意図される。
以下の実施例は、本発明の様々な方法を例示することが意図されるものであるが、本発明の範囲を限定することが意図されるものでは決してない。
以下の実施例で用いられる材料および方法は、商業的供給源から入手可能であったか、または公知の手順もしくは示された参考文献に記載される手順に従って当業者に公知の方法により得られた。
化合物1は、国際公開WO2014/081906に記載される手順に従って調製された。
化合物2は、BMI−1機能の公知の阻害剤である6−(5,6−ジフルオロ−2−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)−N−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)ピラジン−2−アミンを指し、国際公開WO2015/076800に記載される手順に従って調製された。
細胞株、細胞培養物および生存率アッセイ
認証されたヒト細胞株をATCCから購入し、最初の購入から30累積継代以内で利用した。マウスKPC株を産生し、30累積継代以内で使用した。J1002細胞をKPBBRマウスから産生し、15累積継代以内で使用した。MycoAlertマイコプラズマ検出キット(Lonza;LT07−318)を用いて、実験期間を通して全細胞株のマイコプラズマ陰性を一貫して試験した。細胞を、37℃および5%CO2の標準条件下で維持し、ペニシリンおよびストレプトマイシン(Corning、30−003−CI)ならびに10%FBS(Life Technologies、10438−034)を補足したDMEM(Life Technologies、12430−054)で増殖した。
増殖曲線については、細胞を96ウェルプレート(Corning、3603)にプレーティングし、一晩播種させた。生存率測定がエンドポイント法であったため、各時点で複製プレートをプレーティングした。翌日、細胞を、指示された濃度の化合物1で処理し、最高使用濃度(常に0.003%未満)のDMSOで処理した。細胞を96時間処理し、生存率を、AlamarBlue試薬(BioRad、BUF012B)を用いて24時間ごとに求めた。簡単に言えば、10μLのAlamarBlueを各ウェル(100μL)に添加し、簡単に混合し、37℃および5%CO2で4時間インキュベートさせた。インキュベーション後、蛍光をPromegaマルチモードマイクロプレートリーダーで測定した。分析のために、バックグラウンドレベルを生の結果から減算し、次いでこれを正規化して、0日目のDMSO処理細胞と比較した倍数変化として表した。すべてのアッセイを、処理群ごと、実験ごとに4〜8の技術的複製を用いて、少なくとも3連で行った。(図1aおよび図10b)
用量応答曲線については、細胞を96ウェルプレート(Corning、3603)にプレーティングし、一晩播種させた。翌日、細胞を化合物1で処理した。用量応答曲線は10μMで開始し、3倍の増加において低下し、最高使用濃度(常に0.03%未満)のDMSOで終了した。細胞を72時間処理し、次いで生存率を、AlamarBlue試薬(BioRad、BUF012B)を用いて求めた。簡単に言えば、10μLのAlamarBlueを各ウェル(100μL)に添加し、簡単に混合し、37℃および5%CO2で4時間インキュベートさせた。インキュベーション後、蛍光をPromegaマルチモードマイクロプレートリーダーで測定した。分析のために、バックグラウンドレベルを生の結果から減算し、次いでこれを正規化して、DMSO処理細胞のパーセントとして表した。すべてのアッセイを、実験ごとに4〜8の技術的複製を用いて、少なくとも3連で行った。(図10c)
細胞周期分析
16時間後、細胞が約30〜50%コンフルエントであるように、細胞を12ウェルまたは6ウェルプレートに播種した。次いで、細胞を、DMSO(<0.003%)、化合物1(100nMまたは1μM)、または100nMのノコダゾール(Sigma、M1404)のいずれかで24時間処理した。処理後、細胞を採取し、70%氷冷エタノールに最低1時間固定した。固定後、細胞をPBS+2%FBS+3μMのDAPI(BioLegend、422801)または0.25μgの7−AAD(BD Pharmingen、559925)に再懸濁し、MACSQuant(登録商標)アナライザー10(Miltenyi Biotec)またはBD LSR II(商標)で分析した。細胞周期分析時間経過実験については、細胞を24、48または72時間処理したことを除いて、上記のように調製した。データを、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。G2/Mの集団パーセントを、FlowJoソフトウェアにより得られた単変量細胞周期プラットフォームを用いて同定した。DMSO−処理細胞の4N集団にゲートをかけることにより、>4Nの集団パーセントを求めた。(図1b、図1c、図2a、図2b、図10eおよび図10g)
細胞内タンパク質のフローサイトメトリー
リン酸化ヒストンH3(PH3)染色については、細胞を、eBioscience Foxp3/転写因子染色バッファーセット(ThermoFisher、00−5523−00)を用いて、製造業者の指示書に従って、固定および透過処理した。細胞をFc Block(BD Biosciences、564220)でブロッキングし、100万細胞あたり5μLのPH3(Ser10)抗体(BioLegend、650805)を用いて染色した(45分、室温、暗所)。試料をBD Fortessa(商標)で分析し、FlowJoソフトウェアにより分析した。(図1dおよび図3a)
活性カスパーゼ3(ActCasp3)染色については、カスパーゼ3(活性)FITC染色キット(Abcam、ab65613)を製造業者の指示書に従って使用した。約16時間後、細胞が約50〜60%コンフルエントであるように、細胞を12ウェルプレートに播種した。次いで、細胞を指示された濃度の薬物またはDMSOビヒクルで24時間処理し、この時点で、細胞を採取し、FITC−DEVD−FMKで染色し(1μL/試料、1時間、室温、暗所)、洗浄し、次いでDAPIで染色して、分析した。試料をBD LSR II(商標)で分析し、FlowJoソフトウェアにより分析した。(図3aおよび図3b)
ウエスタンブロッティング
ウエスタンブロッティングを、処理した細胞から単離した溶解物で行った。細胞を、cOmplete(商標)EDTA不含プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma、11836170001)およびHalt(商標)ホスファターゼ阻害剤カクテル(ThermoFisher、78420)を補足した、RIPAバッファー(50mMのTris、pH7.4、150mMのNaCl、1%Nonidet P−40、0.1%SDS、0.5%デオキシコール酸塩)を用いて溶解した。溶解物を、Pierce BCAタンパク質アッセイキット(ThermoFisher、23227)を用いて定量し、SDS試料バッファーで希釈し、SDS−PAGE(15〜30μg/試料)により分離し、PVDF膜にトランスファーした。膜をTBS−T(0.1%Tween20)中の5質量/体積%無脂肪乾燥乳でブロッキングし、一次抗体を4℃で一晩インキュベートし、指示された濃度のTBS−T中の5%BSAで希釈した。HRPコンジュゲート二次抗体をブロッキングバッファー中で室温で1時間インキュベートした後、Super Digital−ECL(商標)基質溶液(Kindle Biosciences、R1002)を用いて検出した。(図5b、図10aおよび図11b)
ウエスタンブロット抗体;
Bmi1:細胞シグナル伝達、#5856、1:1000
ビンキュリン:細胞シグナル伝達、#4650S、1:1000
ベータ−チューブリン:細胞シグナル伝達、#2146S、1:1000
P−糖タンパク質基質の活性実験
MDCKII−mdr1およびMDCKII−wt細胞をNetherlands Cancer Institute、NKI−AVLから購入した。細胞を、10%FBSおよび1%ペニシリン−ストレプトマイシンを補足したダルベッコ改変必須培地(DMEM)で培養し、3〜9継代で使用した。細胞を3×103細胞/ウェルの密度で96ウェル組織培養処理プレートに播種した。細胞を付着させた4時間後、細胞を、P−糖タンパク質阻害剤Valspodarの存在下または不在下で、試験化合物で処理した。プレートを37℃、5%CO2で72時間インキュベートし、ATPを、CellTiter−Glo(登録商標)試薬(Promega)を用いて蛍光により測定した。(図4b)
RNAシーケンシング
1試料あたり約1.75μgの総RNAをpoly−Aプルダウンして、mRNAを濃縮した。次いで、これを、Illumina TruSeq RNAプレップキットのインプットとして使用した。試料を、Beckmann−Coulter RoboterおよびSPRIworks断片ライブラリーキットIを用いてIllumina HiSeq4000プラットフォーム用に調製した。PCRをKAPA PCR増幅キットを用いて行った。次いで、ライブラリーを、Columubia Genome Centerでシーケンシングして、3000万個の100bp長のシングルエンドリードを生成した。(図11a)
RNA−seq解析
リードを、STARアライナー(バージョン2.4.2)(Dobin A, Davis CA, Schlesinger F, et al. STAR: Ultrafast Universal RNA-Seq Aligner, Bioinformatics 2013;29:15-21)を用いてヒト参照ゲノム(NCMl/Build 37.2)にマッピングし、Rパッケージからの遺伝子アノテーション情報「TxDb.Hsapiens.UCSC.hg19.knownGene」(Carlson M, Maintainer BP. TxDb.Hsapiens.UCSC.hg19.knownGene: Annotation Package for TxDb Object(s). 2015)を用いるRパッケージからのsummarizeOverlaps機能「GenomicAlignments」(Lawrence M, Huber W, Pages H, et al. Software for computing and annotating genomic ranges, PLoS Computational Biology 2013;9:e1003118)を用いて遺伝子レベルで定量した。RNA−seqデータをGEO(ID:GSE118441)に蓄積させた。(図11a)
差次的遺伝子発現(DEG)
指示された条件間の差次的遺伝子発現解析を、Rパッケージ「limma」を実装するvoom−limmaフレームワークを用いて行った(Ritchie ME, Phipson B, Wu D, et al. Limma powers differential expression analyses for RNA-sequencing and microarray studies, Nucleic Acids Research 2015;43:e47)。DMSOと比較した化合物1の処理の全体的効果を、処理と時点の両方を考慮する多変量設計を用いて評価した。
遺伝子セット濃縮
デフォルトパラメーターを用いた単一試料のGSEA:遺伝子セット変動解析のR実装を使用した(Hanzelmann S, Castelo R, Guinney J. GSVA: gene set variation analysis for microarray and RNA-seq data, BMC Bioinformatics 2013;14:7)。RNAシーケンシングからの生のカウントを、様々なライブラリーサイズを考慮して正規化し、DESeq2 Rパッケージに実装される負の二項分布に分散を適合させることにより、分散を安定化させた(Love MI, Huber W, Anders S. Moderated estimation of fold change and dispersion for RNA-seq data with DESeq2, Genome Biol 2014;15:550)。遺伝子セットをMSigDb v6.0モジュールHALLMARK、C2 canonical経路およびC6発癌性シグネチャーから回収した(Subramanian A, Tamayo P, Mootha VK, et al. Gene set enrichment analysis: a knowledge-based approach for interpreting genome-wide expression profiles, Proc Natl Acad Sci U S A 2005;102:15545-50およびLiberzon A, Subramanian A, Pinchback R, et al. Molecular signatures database (MSigDB) 3.0, Bioinformatics 2011;27:1739-40)。DMSOの処理と化合物1の処理との間でのこれらの遺伝子セットの差次的濃縮解析を、limma Rパッケージを用いて行い(Ritchie ME, Phipson B, Wu D, et al. limma powers differential expression analyses for RNA-sequencing and microarray studies, Nucleic Acids Res 2015;43:e47)、<0.1の偽発見率(FDR)を有意とみなした。厳選された経路の単一試料の濃縮結果を、pheatmap Rパッケージを用いてヒートマップに示した(http://CRAN R-project org/package= pheatmap R package version 2017;1:2)。(図11a)
遺伝子セットシグネチャー
Figure 2021535198

無細胞チューブリン重合アッセイ
ブタの脳からの>99%純粋なチューブリンを使用する、Cytoskeleton製の蛍光ベースチューブリン重合アッセイキット(#BK011P)を用いて、製造業者の推奨に従って、アッセイを行った。使用した薬物をすべてDMSOに溶解し、次いで超純水で10倍の最終濃度に希釈した。DMSOの最終パーセンテージをすべての試料で一定に保った。チューブリンを、80mMのPIPES pH6.9、2.0mMのMgCl2、0.5mMのEGTA、1.0mMのGTP、15%グリセロールおよび10μMの蛍光レポーター中で2mg/mLで再懸濁して調製した。すべての薬物試料(10倍)を、予め昇温させたハーフエリア96ウェルプレート(Corning Costar、3686)に2連で添加し、次いで37℃に1分間昇温させた。次いで、チューブリン(50μL/ウェル)をすべてのウェルに添加し、プレートを37℃に予め昇温させたプレートリーダーに置いた。プレートを、5秒間の中程度の軌道振盪により混合し、蛍光をBioTek Synergy 2プレートリーダーで90分間60秒ごとに測定した(Ex:340〜360+/−20nm、Em:410〜460nm+/−20nm)。重合曲線の増殖期の直線部分の最大勾配(線形回帰による)を測定することにより、重合速度(蛍光単位/分)を求めた。(図11eおよび図11f)
遊離チューブリン含有量の分析
遊離ヘテロ二量体チューブリンを、微小管/チューブリンIn vivo生化学アッセイキット(Cytoskeleton、#BK038)を用いて、製造業者の推奨に従って、微小管に組み込まれたチューブリンから分離した。約16時間後、細胞が約50〜60%コンフルエントであるように、細胞を12ウェルプレートに播種した。細胞を指示された濃度の薬物またはDMSOビヒクルで2時間処理し、この時点で、細胞をPBSで1回洗浄し、採取した。このアッセイのすべての工程を37℃で行って、微小管塊を保存した。細胞を、0.1mMのGTP、1.0mMのATPおよび1倍のプロテアーゼ阻害剤カクテル(#PIC02)を補足したCytoskeletonの溶解および微小管安定化バッファー(LMS01)に溶解した。試料を1,000×gで37℃にて5分間遠心分離した。上清を超遠心分離のために慎重に回収し、低速ペレット(LSP)をSDS試料バッファー(SDS01)に懸濁し、−20℃で凍結し、その後ウエスタンブロットにより分析した。低速上清を100,000×gで37℃にて60分間遠心分離した。上清(高速上清、HSS)を慎重に回収し、SDS試料バッファーに再懸濁し、−20℃で凍結し、その後ウエスタンブロットにより分析した。ペレット(高速ペレット、HSP)を最初に1倍の微小管脱重合バッファー(BUF01)に15分間溶解し、SDS試料バッファーに再懸濁し、−20℃で凍結し、その後ウエスタンブロットにより分析した。(図11b)
免疫細胞化学
細胞を12ウェルプレートのガラスカバースリップに播種した。1N HClに浸漬し(60℃、6時間)、70%エタノールで洗浄し、製造業者の指示書に従ってポリ−l−リジン(Sigma、P5899)でコーティングすることにより、カバースリップを調製した。翌日、細胞が約50%コンフルエントであるように、細胞を播種した。次いで、細胞をビヒクル(DMSO、<0.003%)または1μMの化合物1で処理し、24時間インキュベートした。処理後、細胞をTBSで洗浄し、遊離チューブリンを、4mMのEGTAおよび0.5%Triton−Xを補足したBrinkleyバッファー1980(80mMのPIPES pH6.8、1mMのMgCl2、1mMのEGTA)で抽出した(30秒)。抽出後、細胞を、0.32Mのショ糖を補足したCytoskeletonバッファー(10mMのMES pH6.1、138mMのKCl、3mMのMgCl2、2mMのEGTA)で希釈した4%ホルムアルデヒドに20分間固定した。固定後、細胞をTBSで洗浄し、次いで、TBS−T(0.1%Triton−X)+2%BSA+22.52mg/mLのグリシンで30分間ブロッキングした。ベータチューブリン抗体を4℃で一晩インキュベートし(Abcam179513、1:1000)、次いで1:500でヤギ抗ウサギ594二次抗体(Life Technologies、A11012)を用いて、二次抗体を室温で1時間インキュベートした。すべての洗浄をTBS−Tで行い、すべてのブロッキングおよび抗体インキュベーションをTBS−T(0.1%Triton−X)+2%BSA+22.52mg/mLのグリシンで行った。染色後、細胞を300nMのDAPI(BioLegend、422801)で5分間インキュベートし、洗浄し、ProLong Diamond褐色防止用封入剤(Invitrogen、P36965)に載せた。スライドを放置して室温で24時間乾燥し、次いで画像が得られるまで4℃で暗所で貯蔵した。
共焦点撮像を、60倍/1.49 ApoTIRF油浸対物ならびに標準レーザーおよびフィルターセットを用いるEclipse Ti顕微鏡スタンド上でA1レーザー走査型共焦点アタッチメント(Nikon Instruments、Melville、NY)を用いて行った。ピンホール径を1エアリーユニットに設定し、単一の光学切片を細胞の基底面付近で得て、微小管の検出を最大にした。すべての撮像条件を一定に保った。ImageJのFijiディストリビューションを用いて画像を視覚化し、分析し、公表用に作成した(Schindelin J, Arganda-Carreras I, Frise E, et al. Fiji: an open-source platform for biological-image analysis. Nature Methods 2012;9:676-682)。(図10dおよび図10f)
動物の繁殖および遺伝子型判定
以下の遺伝子操作系統を交雑させることにより、混合遺伝バックグラウンドの遺伝子操作モデルを産生した:
KrasLSL.G12D−Tuveson DA, Shaw AT, Willis NA, et al. Endogenous oncogenic K-ras(G12D) stimulates proliferation and widespread neoplastic and developmental defects, Cancer Cell 2004;5:375-87に報告された。
Tp53LSL.R172H−Olive KP, Tuveson DA, Ruhe ZC, et al. Mutant p53 gain of function in two mouse models of Li-Fraumeni syndrome, Cell 2004;119:847-60に報告された。
Pdx1−Cretg−Hingorani SR, Petricoin EF, Maitra A, et al. Preinvasive and invasive ductal pancreatic cancer and its early detection in the mouse, Cancer Cell 2003;4:437-50に報告された。
Tp53Flox−Jonkers J, Meuwissen R, van der Gulden H, et al. Synergistic tumor suppressor activity of BRCA2 and p53 in a conditional mouse model for breast cancer, Nat Genet 2001;29:418-25に報告された。
KrasFSF.G12D−Jackson Laboratory、在庫番号008653。
Tp53R172H−Tp53LSL.R172H系統をDeleter−Creと交雑させて、生殖系列組換えを誘導し、次いでCre対立遺伝子を交雑除去することにより、この系統を産生した。これは、Tp53LSL.R172H対立遺伝子のLox−STOP−LOXカセットの組換えを誘導し、イントロン1に単一の外因性LoxP部位を有する生殖系列Tp53R172H対立遺伝子をもたらした。
Pdx1−FlpOtg−Pdx1−Cre導入遺伝子の6kb近位プロモーターを、哺乳動物コドン最適化耐熱性Flpリコンビナーゼ(FlpO)の開始コドンに融合させ、その後、FlpOオープンリーディングフレームの5’末端をhGHポリアデニル化シグナル配列に融合させた。
Bmi1Flox−Mich JK, Signer RA, Nakada D, et al. Prospective identification of functionally distinct stem cells and neurosphere-initiating cells in adult mouse forebrain, Elife 2014;3:e02669に記載された。
Rosa26Cre-ERT2−Ventura A, Kirsch DG, McLaughlin ME, et al. Restoration of p53 function leads to tumour regression in vivo, Nature 2007;445:661-5に記載された。
KrasLSL.G12D/+;p53LSL.G12D/+;Pdx1−Cretg/+(KPC)マウスおよび関連マウスを、Hingorani SR, Wang L, Multani AS, et al. Trp53R172H and KrasG12D cooperate to promote chromosomal instability and widely metastatic pancreatic ductal adenocarcinoma in mice, Cancer Cell 2005;7:469-83に記載されるように利用した。J1002細胞は、KrasFSF.G12D/+;p53R172H/+;Pdx1−FlpOtg/+;Bmi1Fl/Fl;Rosa26CreERT2/+(KPFBR)マウスの自発性膵臓腫瘍に由来し、これは、セルリアン処理後(腫瘍発生を促進する)であるが、タモキシフェン処理前に発生した。遺伝子型判定をTransnetyx(Cordova、TN)により行った。試験では雄と雌両方の動物を利用した。動物には標準的な固形飼料を与え、12時間の明/暗サイクル下で収容した。
KPFBR初代腫瘍細胞株の産生
腫瘍の小片(約30mg)を、氷冷腫瘍消化バッファー(5mL/試料)中で滅菌ハサミで最低5分間切断することにより、機械的に解離した。腫瘍消化バッファーは、滅菌PBSで希釈された75μg/mLのDNaseI(ThermoScientific、EN0521)、80μg/mLのディスパーゼII(ThermoFisher、17105041)および1mg/mLのコラゲナーゼV(Sigma Aldrich、C9263)で構成されていた。切断後、解離した腫瘍を、消化バッファー中37℃で20分間インキュベートした。消化後、40mLの氷冷PBSを使用して、消化した腫瘍を希釈し、全45mLを70μmの滅菌メッシュフィルターを通して濾過した。単一細胞懸濁液をスピンダウンし(300×g、5分)、PBSで1回洗浄し、無血清管培地(SFDM、以下の製法)に再懸濁し、コラーゲンコーティング6ウェルプレート(Corning、354400)の1〜2ウェルにプレーティングした。細胞をコラーゲンコーティングプレート上のSFDMに広げ、標準DMEM(10%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、1%L−グルタミン)および標準組織培養プレート(コラーゲンなし)に移行した。
SFDM製法
DMEM/F−12培地(ThermoFisher、12634010)
1.22mg/mLのニコチンアミド(Sigma、N3376)
5mg/mLのグルコース(Sigma、G6152)
5%ITS+(BD Biosciences、354352)
2.5μg/mLのアンホテリシンB(ThermoFisher、15290018)
5%Nu−血清IV(Corning、392−0321)
25μg/mLのウシ脳下垂体抽出物(Sigma、1476)
20ng/mLのEGF(ThermoFisher、PMG8041)
50nMの3,3’,5−トリヨード−L−チロニン(Sigma、564605)
1μMのデキサメタゾン(Sigma、D1756)
100ng/mLのコレラ毒素(Quadratech、100)
Bmi1欠失の評価
J1002細胞中の条件的Bmi1対立遺伝子の組換えを評価するために、PCRを、フェノール−クロロホルム−イソアミルアルコール抽出により単離したDNAで行った。細胞を、1mg/mLのプロテイナーゼK(New England BioLabs、P8107S)を補足した溶解バッファー(10mMのTris pH7.5、10mMのEDTA、10mMのNaClおよび0.5%サルコシル)中55℃で一晩消化した。翌日、溶解物を50%フェノール、48%クロロホルムおよび2%イソアミルアルコールの混合物と組み合わせ、16,000×gで30分間遠心分離することにより、DNAを単離した。DNAを含有する上層を除去し、沈殿させ、2.5体積の100%エタノールで洗浄した。DNA濃度を、ThermoScientific(商標)NanoDrop2000分光光度計を用いて測定した。PCR反応を、GoTaq(登録商標)Green Master Mix(Promega、M712B)、1ngのDNAおよび250nMの各プライマーを用いて行った。野生型Bmi1(Bmi1WT)、loxP導入部位を有するBmi1(Bmi1fl/fl)および組換えBmi1(Bmi1Δ)をすべて単一反応で増幅する3つのプライマー(DN437、DN438、DN946)を使用した。PCR後、増幅したDNAを、SYBR(商標)Safe DNA Gel Stain(ThermoFisher、S33102)を補足した2%アガロースゲルで分離し、UV光を用いて視覚化した。
プライマー
DN437:gctagcattcctggttttgc
DN438:ggcacagtgatgaggtgttg
DN946:cacgaggtgcttctttcctc
サイクリング条件:
1.95℃、2分
2.95℃、15秒
3.51.4℃、15秒
4.68℃、45秒
(工程2〜4を30回繰り返す)
5.68℃、5分
6.4℃、永久
予想される増幅産物:
野生型Bmi1(Bmi1WT)=400bp
フロックス化Bmi1(Bmi1fl/fl)=500bp
組換えBmi1(Bmi1Δ)=300bp
PDXモデル介入試験
ChampionsモデルCTG−1462からの初期継代腫瘍断片を、nu/nuマウスに皮下移植し、次いで、腫瘍が150〜300mm3に達したら、処置群に無作為化した。マウス(n=5/群)を、7群:ビヒクル、ゲムシタビン(50mg/kg、週1回、腹腔内)、nab−パクリタキセル(10mg/kg、静脈内、週1回×3)、化合物1(12.5mg/kg、週2回×4、経口)またはゲムシタビン+nab−パクリタキセル、ゲムシタビン+化合物1、nab−パクリタキセル+化合物1またはゲムシタビン+nab−パクリタキセル+化合物1の全用量の組み合わせのうちの1つで処置した。エンドポイントは、腫瘍が1500mm3に達するか、または試験の90日後であった。腫瘍の長さ(L)および幅(W)径を、デジタルカリパーを用いて測定し、マウスを週2回秤量した。腫瘍体積を(L×W2)/2で計算した。(図12aおよび図12b)
KPC介入/生存試験
KPCマウスにおける腫瘍形成を、塊が検出されるまで毎週触診して監視した。触診陽性後、腫瘍が4〜7mmの平均径の登録可能なサイズに達するまで、塊を週2回の超音波により監視した。登録可能になったら、KPCマウスを介入試験の処置群に無作為に登録した。マウスを、ビヒクル、化合物1(17mg/kg、経口、週2回)、ゲムシタビン単独(100mg/kg、腹腔内、週2回)または化合物1+ゲムシタビンで処置した。化合物1が投与されたマウスには、ゲムシタビンビヒクル(生理食塩水、腹腔内、週2回)も50×体重(g)の体積(μL)で投与した。ゲムシタビンが投与されたマウスには、5.7×体重(g)の体積(μL)で化合物1ビヒクル(0.1%Tween80(w/v)を含む0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、経口、週2回)も投与した。薬物とビヒクルとの組み合わせをすべて同時に投与した。
血漿および組織試料における化合物1のレベルの測定
分析のために用いられる血漿および組織試料をドライアイス上で即時凍結し、分析まで−80℃で貯蔵した。試料中の化合物1の濃度を、高性能液体クロマトグラフィーとタンデム質量分析(LC−MS/MS)を用いて定量した。化合物1およびその内部標準物質(重水素化された化合物1)を、試料からのタンパク質沈殿抽出により回収した。
血漿薬物動態時間経過試験のために、標準曲線を、0.001μg/mL〜3.0μg/mLの濃度に対応するように作成した。血漿中の化合物1(いずれかのバージョン)の定量下限(LLOQ)は0.001μg/mLであった。(図4a)
単回用量の化合物1の後に血漿、四頭筋および腫瘍組織を評価した薬物動態試験については、アッセイ条件は以下の通りであった(図5a):
血漿:標準曲線を、0.002μg/mL〜6.0μg/mLの濃度に対応するように作成した。血漿中の化合物1(いずれかのバージョン)のLLOQは0.001μg/mLであった。
四頭筋:標準曲線を、0.001μg/gの湿潤組織〜3.0μg/gの湿潤組織の濃度に対応するように作成した。化合物1(いずれかのバージョン)のLLOQは0.01μg/gの湿潤組織であった。
腫瘍組織:標準曲線を、0.001μg/gの湿潤組織〜3.0μg/gの湿潤組織の濃度に対応するように作成した。化合物1(いずれかのバージョン)のLLOQは0.02μg/gの湿潤組織であった。
超音波
腫瘍の超音波検査および体積定量を、Sastra SA, Olive KP, Quantification of murine pancreatic tumors by high-resolution ultrasound, Methods Mol Biol 2013;980:249-66に記載されるように行った。(図7aおよび図7b)
免疫組織化学
免疫組織化学用試料を調製するために、組織を最初に10%リン酸緩衝ホルマリンに一晩固定し、次いで70%エタノールに貯蔵して、長期貯蔵した。次いで、固定した組織に、標準脱水プロトコルを行って、それをパラフィンワックスブロックに包埋した。組織を、Leica RM2235ミクロトームを用いて5μmの厚さに切開し、正電荷ガラススライド上に載せて、60℃で30分間焼成した。染色用に調製するために、スライドを最初にキシレンで脱パラフィン化し、次いで、一連のエタノール工程で再水和した後、蒸留水ですすいだ。次に、抗原賦活化を、実験的に決定した抗体特異的抗原賦活化バッファー(通常10mMのクエン酸、pH6.0または10mMのTris、pH10.0)で行った。抗原賦活化バッファーを加熱して、プレッシャークッカー中で沸騰させ、この時点でスライドを5分間導入した。室温に冷却した後、スライドをPBS中の3%過酸化水素に20分間浸漬して、内因性ペルオキシダーゼを失活させた。
次いで、スライドを、TBS−T(0.1%Tween20)+1.5%正常ウマ血清(Vector Laboratories、S−2000)+2%Animal Free Blocker(Vector Laboratories、SP−5030)中で室温で1時間ブロッキングした。一次抗体を、ブロッキング溶液で希釈し、4℃で、指示された濃度で一晩インキュベートした。翌日、二次抗体インキュベーションをImmPRESS HRP抗ウサギIgG(ペルオキシダーゼ)ポリマー検出キット(Vector Laboratories、MP−7401)を用いて室温で30分間行った。検出を、ImmPACT DABペルオキシダーゼ(HRP)基質(Vector Laboratories、SK−4105)を用いて行った後、スライドをヘマトキシリンで対比染色し、キシレンで脱水し、Permount(Fisher、S70104)でカバースリップした。(図6dおよび図6e)
IHC抗体:
PH3:細胞シグナル伝達、#9701、1:100
CC3:細胞シグナル伝達、#9664S、1:100

Claims (5)

  1. 式(I)の構造を有する有効量の5−フルオロ−2−(6−フルオロ−2−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)−N4−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピリミジン−4,6−ジアミン、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における膵臓癌を治療する方法。
    Figure 2021535198
    式(I)
  2. 有効量の5−フルオロ−2−(6−フルオロ−2−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)−N4−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピリミジン−4,6−ジアミン、またはその薬学的に許容される塩を有効量の1つまたは複数の化学療法剤と組み合わせて対象に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 化学療法剤が、ゲムシタビン、nab−パクリタキセルおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の方法。
  4. 膵臓癌が膵管腺癌である、請求項1に記載の方法。
  5. 医薬組成物の形態で有効量の5−フルオロ−2−(6−フルオロ−2−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)−N4−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピリミジン−4,6−ジアミン、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
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