JP2021531345A - 腫瘍ワクチン接種に用いるための組合せ製品 - Google Patents

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Abstract

本発明は、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発するために用いるための組合せ製品であって、・免疫原としての非ヒト抗原性ポリペプチド、または該免疫原をコードする核酸を含む免疫原性組成物、および要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤;ならびに・該非ヒト抗原性ポリペプチド、または該ポリペプチドをコードする核酸を含み、ここで、該ポリペプチドまたは核酸が、腫瘍内送達のために調製されている、組合せ製品に関する。本発明はまた、本明細書に記載の処置法において使用することができる融合タンパク質およびタンパク質−タンパク質接合体を提供する。

Description

発明の分野
本発明は、腫瘍免疫療法の分野に関する。より具体的には、本発明は、治療用腫瘍ワクチンとして用いられ得る医薬の組合せの分野に関する。本発明は、癌の処置における新しい概念に基づいており、その概念は、腫瘍抗原に依存しないワクチン接種を含む。本発明は、そのような概念を具体化する医薬の組合せに関する。
先行技術
伝統的に、そして現在まで、腫瘍治療用ワクチンの焦点は、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)によって開始され、それによってT細胞の活性化および腫瘍に対する免疫応答を形成(mount)する腫瘍抗原でのワクチン接種にある。
このようなワクチン接種戦略の目標は、天然レパートリーから腫瘍特異的T細胞の集団を増殖させることであるが、腫瘍抗原の提示を通じて腫瘍関連の休眠またはアネルギーを逆転させ、それらの抗原に対する中枢性免疫寛容を破壊し、CD4および/またはCD8 T細胞のレパートリーの鈍化を克服することである。
腫瘍特異的エピトープに対するT細胞を優先的に刺激する治療用腫瘍ワクチンを設計することの難しさは、腫瘍抗原の発現を減少させるために、あるいはT細胞および免疫系の他の細胞にとって阻害的な環境(腫瘍微小環境またはTME)を作り出すことによって、腫瘍が免疫制御を回避する傾向にあることにある。このようにして、腫瘍抗原を認識するT細胞レパートリーが不活性化され、不活性化または枯渇したT細胞集団をもたらす。その結果、腫瘍抗原を用いたワクチン接種では、もはや効果的なT細胞応答が得られなくなる。
現在のワクチン接種アプローチは、腫瘍によって特定の瞬間に発現される腫瘍抗原によって変わる。このことは、腫瘍に対する自然選択圧が一般的に腫瘍に細胞死を生じさせるほど強くないため、これらのワクチン接種アプローチが腫瘍細胞の免疫回避性によって回避されていることを意味する。さらに、自己抗原ではない腫瘍特異的抗原を用いることは依然として困難であり、該自己抗原は一般的に免疫系によって寛容化を有するか、あるいは弱いT細胞介在性免疫応答を提供する。治療用腫瘍ワクチンの分野における現在の研究の焦点は、特に腫瘍ネオ抗原の同定にある。これらのネオ抗原はワクチン接種後にT細胞を十分に刺激し得るが、それらは一般的に患者特異的であるという内在的な欠点を有しており、従って、患者集団に広く適用される腫瘍ワクチンとしては適していない。また、それらは安定して発現されておらず、時間の経過とともに変化する可能性があり、正しいワクチン製剤を作製することはさらに困難である。上記から明らかなように、現在の腫瘍ワクチン接種アプローチは、腫瘍抗原によるワクチン接種に基づいており、所定の時点での腫瘍の抗原性状態に向けられており、したがって、腫瘍の抗原性状態を積極的に改変しない。
従って、腫瘍によって発現される腫瘍抗原に依存せず、ワクチン接種時に最適なT細胞応答を提供する抗原を組み込んだ、改良された治療用腫瘍ワクチンの必要がある。
本発明はこのような必要性を満たし、治療用腫瘍ワクチンの分野における新たな洞察に基づいている。
本発明
本発明は、“腫瘍抗原に依存しないワクチン接種”とも呼ばれる腫瘍ワクチン接種における新規な戦略に基づいている。腫瘍抗原から独立したワクチン接種アプローチを設計することにより、免疫応答は、ヒト対象において免疫原性を有し、かつ外来(非ヒト)由来の抗原に対して起こる。そのような免疫原は、例えば、天然レパートリーからのT細胞を活性化することによって、または腫瘍に対する免疫応答ではなく、好ましくは、感染症に対する一般的なワクチン接種の結果として腫瘍が確立する前に生じた免疫応答である、以前の免疫応答の間に生じたメモリーT細胞および/またはメモリーB細胞を再活性化することによって、既存の免疫を活用することによって、強力な免疫応答を提供する。この原理は、上記の腫瘍抗原に基づくワクチン接種の制限を克服し、患者集団全体に適用可能である。この新しいワクチン接種の概念は、2つの重要な柱に基づいている。
腫瘍抗原非依存性ワクチン接種における第1の柱は、免疫原としてヒト対象に対して外来性または外因性の抗原を含む免疫原性組成物(ワクチン組成物など)の投与(ワクチン接種)を含む。このような抗原は、好ましくは、免疫原性が高く、感染症に対する一般的なワクチン接種を介した場合を除いて、ヒト対象の免疫系が遭遇しないか、または殆ど遭遇しない抗原であり得る。言い換えれば、ワクチン接種工程は、好ましくは腫瘍抗原ではない非ヒト抗原を用いて行われる。
腫瘍抗原非依存性ワクチン接種における第2の柱は、ワクチン接種に関連する第1の柱で採用されたのと同じ抗原を用いて、腫瘍細胞またはその直接もしくは即時の環境である腫瘍微小環境(TME)を積極的にマーキングすることを含む。言い換えれば、腫瘍またはその直接環境−腫瘍微小環境(TME)−は、好ましくは腫瘍抗原ではない非ヒト抗原の提示によって操作されて、免疫応答の標的として腫瘍をマーキングする。好ましくは、腫瘍のマーキングに先立って、そのような免疫応答はすでに誘発されているか、または形成されている。
従って、このワクチン接種戦略は、腫瘍の増殖および発生の間の特定の時点で発現される腫瘍ネオ抗原のような腫瘍抗原でのワクチン接種に依存しない。それどころか、例えば天然レパートリーからT細胞を活性化することによって、または目的の腫瘍に特異的な抗原ではない抗原に対する既存の免疫を利用することによって、ヒト対象において免疫原性があり、外来(非ヒト)由来であり、かつ強い免疫応答を提供すると予期される任意の抗原を選択することが可能になり、(i)前記抗原に対して所望の免疫応答を獲得するように前記抗原に対してワクチンを接種すること、および(ii)腫瘍近傍での対応する抗原の提示を可能にすることにより、そのような免疫応答の標的として腫瘍をマーキングすることができる。免疫原性組成物を投与する工程は、腫瘍マーキングの前または後に実施することができる。そのようなワクチン接種工程が、腫瘍マーキング工程に先立って実施されることが非常に好ましい。
この新規な戦略は、腫瘍の抗原発現パターンへの積極的な干渉(または操作)を必要とするが、これまでは意図または想定されていなかった。本発明は、腫瘍ワクチン研究の新たな分野を切り開き、この概念の複数の実際的な実施が予見される。通常は腫瘍抗原によって活性化されないメモリーT細胞および/またはB細胞のような既存の免疫細胞であっても、腫瘍を操作して、そのような既存の免疫細胞を活性化する抗原を提示することによって、腫瘍に対する免疫応答に動員することができるようになった。
従って、本発明は、第一の面において、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発するために用いるための組合せ製品を提供し、該製品は:
・免疫原として非ヒト抗原性ポリペプチドを含む免疫原性組成物、または該免疫原をコードする核酸を含む免疫原性組成物、および要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤;ならびに、
・該非ヒト抗原性ポリペプチド、または該ポリペプチドをコードする核酸を含み、
ここで、該ポリペプチドまたは核酸が、腫瘍内送達のために調製される、組合せ製品を提供する。
同様に、本発明はまた、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発するために用いるための2つの部分の組合せ製品を提供し、該組合せ製品は:
・免疫応答を発生させるための第1の部分であって、該第1の部分は、免疫原として非ヒト抗原性ポリペプチドを含む免疫原性組成物、または該免疫原をコードする核酸を含む免疫原性組成物、および要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤;ならびに、
・腫瘍への送達のための第2の部分であって、該第2の部分は、該非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含み、
ここで、該ポリペプチドまたは核酸が、腫瘍内送達のために調製されるような形態である、組合せ製品を提供する。
実施例2および図4および5は、本発明による使用のための組合せ製品が用いられるとき、2つの異なる固形腫瘍モデルにおいて腫瘍増殖が遅くなることを示している。さらに、外来抗原を負荷したDCOne樹状細胞を腫瘍マーキングに用いるとき、有意に増加したT細胞介在性のIgMからIgGへのスイッチが観察される(実施例3および図6)。
本明細書で用いる用語“組合せ製品”は、1つの投与量単位形態の製品の組み合わせ、または組合せ製品の組み合わせ投与のための複数部分のキットのいずれかを意味する。組合せ製品は、同時に共に投与されてもよいか、同時に互いに別個に投与されてもよいか、または時間をずらして別個に投与されてもよい。例えば、組合せ製品の同時投与、個別投与および逐次投与が想定される。腫瘍内送達のために調製された免疫原性組成物および非ヒト抗原性ポリペプチド(実施例では“非ヒト抗原性ポリペプチド”とも略す)は、併用療法において本明細書に記載されており、別個に投与され得る。好ましくは、組合せ製品は、別個に投与され、より好ましくは逐次投与され、最も好ましくは、免疫原性組成物が最初に投与され、腫瘍内送達のために調製された非ヒト抗原性ポリペプチドが次に投与される。好ましくは、該投与間の時間は、その状況下で、誘発される免疫応答が可能な限り強いものとなるような時間である。該投与間の時間は、5〜60日、10〜60日または15〜40日を含む、1〜90日であり得る。
本明細書で用いる用語“免疫応答”は、T細胞介在性免疫応答および/またはB細胞介在性免疫応答を含む。T細胞の例示的な免疫機能は、例えば、サイトカイン産生および他の細胞における細胞毒性の誘導を含む。B細胞の機能には、抗体産生が含まれる。さらに、この用語はT細胞の活性化によって間接的に影響を受ける免疫応答、例えば、抗体産生およびサイトカイン応答性細胞、例えばマクロファージの活性化が含まれる。免疫応答に関与する免疫細胞には、B細胞およびT細胞(CD4細胞およびCD8細胞)などのリンパ球;抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球、ランゲルハンス細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞およびケラチノサイト、内皮細胞、アストロサイト、線維芽細胞、オリゴデンドロサイトなどのノンプロフェッショナル抗原提示細胞);ナチュラルキラー細胞;マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球および顆粒球などのミエロイド細胞が挙げられる。好ましくは、この用語は、T細胞介在免疫応答を意味する。免疫応答は、いくつかの態様において、T細胞依存性免疫応答であってもよい。当業者は、本発明において、語句“腫瘍に対する免疫応答”はまた、(i)該ポリペプチドを負荷した自己または同種異系の樹状細胞を含む樹状細胞、または(ii)該ポリペプチドをコードする核酸を含むウイルス、の腫瘍内投与などの腫瘍内投与によって腫瘍微小環境に導入される非ヒト抗原性ポリペプチドに対する免疫応答を含むことを理解している。
本明細書で用いる用語“T細胞依存性免疫応答”は、T細胞、B細胞またはT細胞およびB細胞の両方の集団のいずれかが活性化され、T細胞がさらに、T細胞およびB細胞ならびに他の免疫細胞がそれらの機能を実行する際に補助する免疫応答を意味する。
本明細書で用いる用語“腫瘍”は、異常に速く増殖している細胞塊、例えば組織への言及を含む。新生物細胞を含む増殖は、“腫瘍”としても知られる新生物であり、一般に、対象の体内に別個の組織塊を形成する。腫瘍は、正常組織との構造的組織および機能的協調性の部分的または完全な欠如を示すことがある。本明細書で用いる腫瘍は、造血腫瘍ならびに固形腫瘍を包含することを意図する。好ましくは、腫瘍は固形腫瘍である。本明細書で用いる用語“腫瘍”は、腫瘍微小環境、すなわち、腫瘍内の領域および腫瘍組織の直接外側の領域であるが、好ましくはまだ腫瘍組織の境界内にある、好ましくは腫瘍の腫瘍間質性部分(これは、本明細書中、新生細胞の血漿膜と新しく形成された新生血管の血管壁との間に介在するすべてのものとして定義される)を含む。
腫瘍は、良性(良性腫瘍)であるか、または悪性(悪性腫瘍もしくは癌)であってもよい。悪性腫瘍は、大きく分けて3つのタイプに分類することができ、上皮構造に由来するものを癌腫と呼び、筋肉、軟骨、脂肪または骨などの結合組織に由来するものを肉腫と呼び、そして免疫系の構成要素を含む造血構造(血液細胞の形成に関わる構造)に影響を及ぼすものを白血病およびリンパ腫と呼ぶ。他の腫瘍としては、神経線維腫症が挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、腫瘍は膀胱腫瘍ではなく、より好ましくは膀胱癌ではなく、さらに好ましくは切除された膀胱癌ではない。
本明細書で用いる用語“対象”は、本明細書に記載の組合せ製品−またはその成分−のレシピエント、すなわち、細胞性免疫応答を発現し得るレシピエントを意味し、哺乳動物、好ましくはヒトである。本明細書で用いる用語“患者”および“対象”は、互換的に用いられてもよい。対象は、好ましくはヒトであり、より好ましくは腫瘍に罹患しているヒトである。
本明細書で用いる用語“ポリペプチド”は、アミド結合(ペプチド結合)により直線的に連結されたアミノ酸モノマーから構成される分子を意味する。本明細書で用いるように、この用語は、本明細書で用いる用語“ペプチド”および“タンパク質”を相互受容的に包含し、該ポリペプチドの部分を含む。
本明細書で用いる用語“核酸”は、mRNAまたはcDNAを含むDNAおよびRNA、ならびにそれらの合成同族体を意味する。核酸は、組換えまたは合成核酸であり得る。
本明細書に記載のポリペプチドに関連して用いる用語“抗原”または“抗原性”は、一般的に、T細胞受容体、抗体または特定の体液性および/または細胞性免疫の他の要素により特異的に認識される少なくとも1つのエピトープを含む生物学的分子を意味する。例えば、ポリペプチドのMHCペプチド抗原複合体(complex)への細胞内プロセシングおよびその後の抗原提示に続いて、分子全体または分子の1以上の部分が認識され得る。本明細書で用いる用語“抗原性ポリペプチド”は、“ポリペプチド抗原”と互換的に用いられる。この用語は、該ポリペプチドの抗原性部分を含み、例えばポリペプチドの細胞内プロセシング後に、MHCペプチド抗原複合体として生成される。本明細書で用いる用語“抗原”または“抗原性”には、本明細書に記載のポリペプチドの少なくとも1つ、またはそれ以上の抗原性エピトープへの言及が含まれる。
さらに、本発明の目的のために、本明細書で用いる用語“抗原”または“抗原性”はまた、免疫原としてのポリペプチドでのワクチン接種後に、該ポリペプチドがT細胞受容体および/または抗体によって特異的に認識される能力を維持する限り、天然配列への欠失、付加および置換などの改変を含むポリペプチドを意味するためにも用いられ得る。これらの改変は、部位特異的突然変異誘発、特定の合成手順、または遺伝子工学的アプローチによる意図的なものである場合もあれば、抗原を産生する宿主の突然変異のような偶発的なものである場合もある。合成抗原、例えばポリエピトープ、隣接エピトープおよび他の組換えまたは合成由来の抗原も包含される(Bergmann et al. (1993) Eur. J. Immunol. 23:2777 2781; Bergmann et al. (1996) J. Immunol. 157:3242 3249; Suhrbier, A. (1997) Immunol. and Cell Biol. 75:402 408; Gardner et al. (1998) 12th World AIDS Conference, Geneva, Switzerland, Jun. 28-Jul. 3, 1998)。好ましくは、抗原性ポリペプチドは、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個のCD4 Tヘルパー細胞エピトープおよび/または少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個のCD8 細胞傷害性T細胞エピトープを含む。
本明細書で用いる用語“免疫原性組成物”は、免疫原に対する免疫応答を必要とする対象において、該免疫原に対する特定の免疫応答を誘導する物質を意味する。組成物は、アジュバント、および要すれば1以上の薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含み得る。免疫原性組成物は、少なくとも2回、3回、4回または5回の免疫接種を時間間隔を空けて行うような、プライムブーストワクチン接種(prime-boost vaccination)において用いることができる。免疫原性組成物は、前記免疫原を含む(同種異系の)樹状細胞であり得る。
本明細書で用いる用語“免疫原”は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドに対して特異的な免疫応答を誘発することができるポリペプチドなどの化合物を意味する。本発明において、免疫原はまた、抗原、すなわち抗原性ポリペプチドである。対照的に、抗原は、必ずしも免疫原ではない。本発明において、免疫原は、ワクチン接種に用いられ(ワクチン組成物などの免疫原性組成物において)、腫瘍内送達のために調製された抗原性ポリペプチドは、そうではなくて、対象において誘発されるべき免疫応答の標的として、または既に誘発されている免疫応答の標的として、腫瘍をマーキングするために使用される。本明細書で用いる用語“免疫原”はまた、本明細書に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドをコードする核酸を意味するために用いられる。加えて、抗原性ポリペプチドを記載する態様はまた、本明細書に記載の免疫原にも適用される。
抗原性ポリペプチドと関連して本明細書で用いる用語“非ヒト”は、細菌ポリペプチド、古細菌ドメイン(Archaea domain)の菌類のポリペプチド、真菌ポリペプチドおよびウイルスポリペプチドを含む、ヒト由来ではないポリペプチを含む。また、植物ポリペプチドおよび非ヒト哺乳動物ポリペプチド、例えば非ヒト哺乳動物、齧歯動物(例えば、マウスおよびラット)、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、ウマおよびロバ、ならびに鳥類(例えば、ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウなど)のポリペプチドも含まれる。また、カギアナカサガイ(Megathura crenulata)を含むカタツムリまたは他の軟体動物のポリペプチドも含まれる。この用語はまた、合成ポリペプチド、すなわち、ヒトによって設計された人工的な配列を有するポリペプチドであって、天然には存在しないか、または天然で未だ同定されていないポリペプチドを包含する。加えて、この用語は、天然配列からのアミノ酸改変を含むヒトポリペプチドを含み、この改変はヒト対象において免疫原性を提供する。
本明細書で用いる用語“腫瘍内”は、抗原性ポリペプチド、または該ポリペプチドをコードする核酸の腫瘍内への送達または輸送を意味する。本明細書に記載の抗原性ポリペプチドの腫瘍内送達または輸送の一例は、当技術分野で一般的に知られている投与経路である腫瘍内投与によるものである。腫瘍内投与のための別の経路として、抗原は、腫瘍に遺伝子配列を送達するために広く開発されている腫瘍特異的担体、例えば腫瘍溶解性ウイルスまたは遺伝子治療ベクターを介して腫瘍に送達されてもよい。そのようなビークルの使用は、複数の投与経路−腫瘍内投与に加えて−例えば、静脈内または腹腔内投与と、その後に腫瘍への該ポリペプチドをコードする核酸の送達をもたらすことを可能にする(Lundstrom, Diseases, 6(2):42 (2018); Alemany, Biomedicines, 2, p.36-49 (2014); Twumasi-Boateng et al., Nature Reviews Cancer 18, p.419-432 (2018))。
本明細書で用いる語句“腫瘍内送達のために調製される”は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは本明細書に記載の該ポリペプチドをコードする核酸(免疫原ではない)が、腫瘍内送達に適合されているか、または言い換えれば、腫瘍内送達を可能にする形態であるという事実を意味する。腫瘍内送達に用いられる調製物は、免疫系と腫瘍との間の相互作用に有益な効果を有するように構成され得る。例えば、自己由来または同種異系樹状細胞などの樹状細胞は、該ポリペプチドを負荷されてよく、そして腫瘍内投与時に、腫瘍に入るT細胞との直接的な相互作用を介して、および/または近隣(bystander)の抗原提示細胞を動員することによって間接的に、さらなる免疫刺激を提供することができる(Laurell et al., Journal for Immunotherapy of Cancer, 5:52 (2017); Wallgren et al., Scandinavian Journal of Immunology, 62, p.234-242 (2005)。そのような調製物の別の例は、本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸が、腫瘍細胞に感染し、(i)腫瘍細胞内での該核酸の発現、および(ii)(その後の)該腫瘍細胞による該(発現された)ポリペプチドの細胞内プロセシングおよび抗原提示(MHC)を可能にする、腫瘍溶解性ウイルス(または腫瘍細胞内で選択的に複製する任意の他のウイルス)のような腫瘍特異的ウイルスを含む腫瘍標的化ビークルのような腫瘍送達ビークル内に構成され得ることを特徴とする。当業者は、ポリペプチド、または前記ポリペプチドをコードする核酸を、体腔内送達のために調製するための他の方法および手段を十分に認識している。例えば、当業者は、腫瘍特異的ナノ粒子のような他の腫瘍標的送達ビークルを適用することができるか、または該ポリペプチドもしくは核酸を腫瘍内に送達するために、腫瘍内注射による腫瘍内投与を適用することができる。好ましくは、本明細書に記載の腫瘍内送達のために調製されたポリペプチドまたは核酸は、腫瘍標的化ビークル中に構成される。
本明細書に記載の使用のための組合せ製品は、対象の腫瘍に対して特異的に向けられた免疫応答を誘発するために使用するためのものである。当業者は、“特異的に向けられた”とは、腫瘍に対して特異的な免疫応答を意味することを理解する。特異性は、免疫応答の標的として非ヒト抗原性ポリペプチドで腫瘍をマーキングする工程と、該非ヒト抗原性ポリペプチドの抗原性部分(すなわち標的)に対する免疫応答を誘発する工程によって導入される。したがって、好ましくは、本明細書に記載の使用のための組合せ製品は、該免疫応答の標的としてマークされた腫瘍に対する免疫応答を誘発するために使用するためのものである。好ましくは、本明細書に記載の使用のための組合せ製品は、該免疫応答の標的としてマークされた腫瘍に対する免疫応答を誘発するために使用するためのものである;ここで、該標的は、本明細書に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドである。
本発明において、本明細書に記載の腫瘍内送達のために調製された非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸は、免疫応答の標的として腫瘍をマーキングする目的を果たす(腫瘍をマーキングするためのポリペプチド/核酸)。したがって、好ましくは、該ポリペプチドまたは腫瘍内送達のために調製された該核酸は、腫瘍を、腫瘍内送達後の免疫応答の標的としてマーキングする。
本明細書で用いる用語“マーキング”、“マーク”または“マークされた”は、本明細書に記載の、抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の腫瘍内送達による腫瘍の抗原性状態の能動的な操作を意味する。これは、該腫瘍細胞による該ポリペプチドの細胞内送達ならびにその後のプロセシングおよび提示を介した腫瘍細胞の直接標識を提供するか、あるいは(i)該腫瘍内の非腫瘍細胞による該ポリペプチドの細胞内送達ならびにその後のプロセシングおよび提示、または(ii)該腫瘍への該抗原性ポリペプチドの細胞外送達(すなわち、マーキング前の該腫瘍内に存在する細胞への細胞外送達)を介した、該抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む、または該抗原性ポリペプチドを負荷した樹状細胞を用いることによる、腫瘍の間接標識を提供する。
本明細書に記載の免疫原性組成物はまた、該非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含むが、免疫原(免疫応答を誘発するためのポリペプチド/核酸)として、該非ヒト抗原性ポリペプチドで標識されている、または標識されるべき腫瘍に対する免疫応答を誘発する目的を果たす。したがって、好ましくは、該免疫原は、該非ヒト抗原性ポリペプチドまたは核酸で標識されている、または標識されるべき腫瘍に対する免疫応答を誘発するためのものであり、これは、腫瘍内送達のために調製されたものである。本発明では、原理的に、何れかの抗原性ポリペプチドを腫瘍に導入して、新しい抗原性標的、好ましくは、該標的に対する免疫応答が本明細書に記載の免疫学的組成物の対象への投与後に誘発されるときに、それぞれ、抗体および/またはT細胞受容体によって認識可能なB細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープである標的を生成することができる。
当業者は、(i)本明細書に記載の腫瘍内送達のために調製された非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸(腫瘍をマーキングするためのポリペプチド/核酸)、および(ii)本明細書に記載の免疫原性組成物中の免疫原として構成される非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸(免疫応答を誘発するためのポリペプチド/核酸)は、投与されたとき、その免疫原が、腫瘍のマーキング用ポリペプチドまたは核酸によって確立された1以上の(標的)エピトープに対して向けられる免疫応答を誘発するという点で一致することを理解する。したがって、例えば、(i)および(ii)のポリペプチドは、腫瘍内のマーキング用ポリペプチドのT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープが、免疫原として用いられたポリペプチドによって誘発されるT細胞および/またはB細胞応答によって認識されるか、またはそれと反応性であるという点で、免疫学的に一致している。したがって、(i)および(ii)のポリペプチドは、同じ非ヒト抗原性ポリペプチドに基づいており、好ましくは、その同一の抗原性部分、好ましくは、その少なくとも1つのB細胞および/またはT細胞エピトープを共有している(すなわち、免疫学的に一致している)ことが理解される。このようにして、誘発された免疫応答は、該免疫応答の標的としてマーキングされた腫瘍に特異的に向けられる。したがって、一方では免疫応答を誘発するために用いられる該ポリペプチドの剤形と、他方では腫瘍マーキングのために用いられる該ポリペプチドの剤形は、同じである必要はない。実際に、当業者は、ワクチン接種および腫瘍マーキングのために該ポリペプチドの異なる剤形を用いることが有益である可能性があることを理解している。
好ましくは、本発明の使用のための組合せ製品は、対象の腫瘍に対するT細胞介在性免疫応答を誘発するために使用するためのものである。さらに好ましくは、本発明の使用のための組合せ製品は、腫瘍抗原非依存性ワクチン接種における使用のためのものである。好ましくは、対象はヒト対象である。
本明細書で用いる用語“T細胞介在性免疫応答”は、T細胞が駆動する免疫応答を意味し、ここで、別の免疫応答またはさらなる免疫応答の誘発がT細胞の活性化に依存して変わる。好ましくは、本発明において、免疫応答は、T細胞介在性免疫応答/T細胞依存性免疫応答である。当業者は、T細胞介在性免疫応答/T細胞依存性免疫応答を開始するための方法および手段、例えば、細菌−、真菌−、軟体動物−、カタツムリ−、昆虫−または植物由来の抗原を含むがこれらに限定されない多くの文献に記載されている好適な抗原の選択を介する方法および手段、または測定可能なT細胞応答が記載されている昆虫または植物由来の抗原、または化学的アジュバント、生物学的アジュバント、タンパク質、ウイルスワクチン、樹状細胞ワクチンもしくはワクチン組成物として投与可能な何れか他の組成物などの好適なアジュバントまたは担体を選択することによる方法および手段を十分に認識している(Bender et al., J. Exp. Med, 182:1663-1671 (1995); Bennett et al., Nature, 393:478-480 (1998); Kalinski and Moser, Nature、5:251-260 (2005); Pashine et al., Nature Medicine Supplement, 11:S63-S68 (2005))。
本明細書で用いる用語“腫瘍特異的ウイルス”は、腫瘍細胞において選択的に複製する能力を有する何れかのウイルスへの言及を含む。
本明細書で用いる用語“腫瘍溶解性ウイルス”は、正常細胞と比較して腫瘍細胞を優先的に殺すウイルスを意味する。さらに、この用語は、ポリペプチドをコードする核酸構築物を担持するように設計され得るウイルスを意味し、この核酸構築物は、腫瘍細胞の感染後に該腫瘍細胞で発現される。
本明細書で用いる用語“ナノ粒子”は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドなどの目的の化合物を担持することができ、腫瘍標的化または腫瘍特異的な部位でそれらの表面上で機能化することができる組成物を意味する。腫瘍細胞を積極的に標的化するように設計され得るナノ粒子の例は、ミセルおよびリポソームである。
本明細書で用いる用語“樹状細胞”は、抗原性ポリペプチドなどの抗原をその細胞内に取り込むことができ、該抗原またはその免疫原性部分をMHCクラスI複合体もしくはMHCクラスII複合体と共に提示することができる、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)を意味する。この用語には、成熟度に応じて、未成熟樹状細胞(“imDC”)および成熟樹状細胞(“mDC”)の両方が含まれる。好ましくは、樹状細胞は、成熟樹状細胞である。より好ましくは、樹状細胞は、2012年11月15日にブダペスト条約の条件下でDSMZに寄託された受託番号DSMZ ACC3189の細胞株DCOneの細胞から得られた成熟樹状細胞である。寄託されたDCOne細胞株から成熟樹状細胞を得る工程は、例えばEP2931878B1に記載されている。
免疫原性組成物
本発明の第1の柱は、非ヒト抗原性ポリペプチドを免疫原として含む、または該免疫原をコードする核酸を含む免疫原性組成物の投与(ワクチン接種)に関し、この組成物は、1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含んでいてもよい。
本発明で用いる非ヒト抗原性ポリペプチドは、2つの目的に役立つことを理解することが重要である。第一の目的は、免疫原性組成物中に免疫原として挿入されることにより、該ポリペプチドに対する免疫応答、好ましくはT細胞介在性免疫応答を生成することである。第二の目的は、該免疫応答の標的として腫瘍をマーキングすることである。当業者であれば、腫瘍マーキングおよび免疫応答の負荷/生成が、負荷された免疫応答がこのようにマーキングされた腫瘍に対して向けられるという点で一致していることが必要であることを直ちに理解することができる。“マッチしている”とは、誘発される(されるべき)免疫応答が、腫瘍に積極的に導入された抗原性ポリペプチドに対して特異的に向けられていることを意味する。好ましくは、腫瘍のマーキングおよび免疫応答の誘発において、同じかまたは対応する抗原性エピトープが用いられる。したがって、好ましくは、本明細書に記載の免疫原性組成物の対象への投与後に、同じ抗原に基づく免疫応答の標的として、マーキングされるべき腫瘍(または既にマーキングされている腫瘍)に対して特異的に向けられた免疫応答が誘発される。
言い換えれば、マーキングのための抗原性ポリペプチドおよび該免疫原性組成物中の免疫原とは、対象への免疫原性組成物の投与後に誘発される免疫応答が、同じかまたは少なくとも免疫原的に同じ抗原性ポリペプチドの腫瘍内送達後に、該抗原性ポリペプチドでマーキングされた腫瘍に対して向けられるという点で一致している。より具体的には、この好ましい手段は、本明細書に記載の免疫原性組成物の投与後に誘発される免疫応答が、腫瘍がマーキングされるべき(またはマーキングされる)少なくとも1つのT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープに特異的に向けられることを意味する。好ましくは、該免疫原性組成物中の非ヒト抗原性ポリペプチドは、本明細書に記載の腫瘍のマーキングに用いられるポリペプチドに対応するポリペプチドである。
好ましくは、本明細書に記載の免疫原性組成物の投与後に誘発される免疫応答は、T細胞介在性免疫応答またはT細胞依存性免疫応答である。免疫細胞群を活性化する適当な免疫原および/またはアジュバントを同定することは、当業者の能力の範囲内である。当業者が適当な抗原を選択するのを助ける参考文献は、例えば、Bender et al., J. Exp. Med, 182:1663-1671 (1995); Bennett et al., Nature, 393:478-480 (1998); Kalinski and Moser, Nature, 5:251-260 (2005); Van Tenderloo et al., PNAS, 107:31, p. 13824-13829 (2010); Anguille et al., Blood, 12;130(15):1713-1721 (2017); Tacken et al., Blood, 106:4, p.1278-1285 (2005); Vigneron et al, Cancer Immunity, 13:15 (2013); および、Cheever et al, Clin Cancer Res;15:5323-5337 (2009)である。当業者は、免疫原性組成物に関連して記載された抗原性ポリペプチドが、腫瘍内送達面にも関連しており、逆もまた同様であることを直ちに理解する。好適な抗原の例としては、ウイルス、細菌、真菌由来のタンパク質;アレルゲン、毒素および毒物、または鶏卵オバルブミンおよびジャイアントキーホールリンペット(Megathura crenulata)由来のキーホールリンペットヘモシアニンなどの様々な供給源のモデル抗原が挙げられる。他の好適な抗原性ポリペプチドは、対象の先行ワクチン接種において用いられたポリペプチドであり、例えば、本明細書中以下に、より詳細に記載されるリコール(recall)抗原などである。そのようなワクチン接種で用いられる一般的なワクチンは、異なる抗原性ポリペプチドを含んでもよく、これは、アジュバントの有無にかかわらず、異なる微生物(リコール)抗原を構成するという点で多価であり得る。本明細書で用いる用語“リコール抗原”は、以前に(腫瘍が生じる前に)対象が、好ましくはワクチン接種を介して遭遇した抗原性ポリペプチドを意味し、該対象に既存の免疫が存在する抗原性ポリペプチドを意味する。免疫応答を細胞免疫に向けるアジュバントの選択において当業者を補助する参考文献は、例えば、Pashine et al., Nature Medicine Supplement, 11:S63-S68 (2005)およびAwate et al., Frontiers in Immunology, 4:114, p.1-10 (2013)である。そのようなアジュバントの例としては、アルミニウム金属塩、水中油型エマルジョン、リポソーム、トール様受容体アゴニストまたはそれらの組み合わせが挙げられる。他のアジュバントとしては、リポソーム、ビロソーム(virosome)、MF59、モンタニド、ISCOM、QS-21、アルミニウム、AS04、ポリI:C、MPL、GLA、イミキモド、CpG ODN、キチン、キトサン、β−グルカンまたはそれらの組み合わせが挙げられる(Temizoz et al. Int Immunol. 2016 Jul; 28(7): 329−338)。
当業者は、本明細書に記載の免疫原性組成物中に含まれる免疫原としての非ヒト抗原性ポリペプチドに対する免疫応答の開始を提供するために、常套的に適用できる複数の方法および手段を自由に用い得る。
好ましくは、本発明に従って使用するための組合せ製品において、該免疫原性組成物は、該免疫原または該免疫原をコードする核酸を含む樹状細胞;T細胞免疫応答誘発性アジュバント;該免疫原または該免疫原をコードする核酸を含むT細胞免疫応答誘発性ウイルスまたはウイルス様粒子;あるいは、それらの組み合わせを含む。
一般的に、本明細書では、本発明に従って使用するための組合せ製品に関する態様が、例えば、(i)本発明に従って使用するための非ヒト抗原性ポリペプチドまたは核酸、(ii)本発明に従って使用するための免疫原性組成物、(iii)本発明に従って免疫応答を誘発するための方法、(iv)本発明による処置方法、および適当な場合には本発明の他の面にも適用されることが明示的に想定されている。
当業者が用い得る免疫原性組成物の好ましい例としては、免疫原として非ヒト抗原性ポリペプチド、または該免疫原をコードする核酸を含む樹状細胞が挙げられる。樹状細胞は、かかる細胞が本明細書に記載の免疫原を負荷される場合に、樹状細胞ワクチンとして用いられ得ることが一般的に知られている。好ましい免疫原性組成物は、2012年11月15日にDSMZに寄託された受託番号DSMZ ACC3189の細胞株DCOneの細胞から得られた成熟樹状細胞を含み、該成熟樹状細胞は、抗原性ポリペプチド(本明細書に記載の)を免疫原として含むか、または該免疫原をコードする核酸を含む。樹状細胞のためのローディング戦略は以下で記載される。当業者は、樹状細胞を免疫原性組成物の形態で効果的に用いる方法について十分なガイダンスを有しており、これは、例えば、EP2931878 B1、WO2014/006058 A1およびSaxena and Bhardwaj, Trends in Cancer, 4:2, p.119-137 (2018)を含む複数の文献に記載されている。
したがって、好ましくは、本発明による使用のための製品において、免疫原性組成物は、該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含む樹状細胞を含み、好ましくは、該樹状細胞は、2012年11月15日にDSMZに寄託された受託番号DSMZ ACC3189の細胞株DCOneの細胞から得られた成熟樹状細胞である。
本明細書に記載の樹状細胞を含む免疫原性組成物の投与は、好ましくは静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、皮内投与、鼻腔内投与、リンパ管内投与および筋肉内投与を含む非経腸経路を介して行われ、これらは全て当業者に公知である。本明細書に記載の樹状細胞を含む免疫原性組成物の投与において、該投与は、腫瘍内ではなく、代わりに腫瘍外であり、好ましくは皮内、静脈内、結節内またはリンパ内、より好ましくは皮内、静脈内またはそれらの組み合わせである。本明細書に記載の樹状細胞を含む免疫原性組成物の投与は、好ましくは、その状況下で、最適なT細胞介在性免疫応答が誘発されるようなものである。最適なT細胞介在性免疫応答とは、例えば、異なる投与経路、投与量、アジュバントおよび/または抗原を用いた場合の同等の応答よりも高いT細胞介在性免疫応答である。
好ましくは、薬学的に有効量の樹状細胞を含む免疫原性組成物が投与される。これは、免疫応答 該樹状細胞に含まれる該免疫原に対する免疫応答、また、本明細書に記載の対応する抗原性ポリペプチドでマーキングされるべき(またはマーキングされる)腫瘍に対する免疫応答を誘導するのに十分な量である。
本明細書に記載の免疫原性組成物はさらに、T細胞免疫応答誘発アジュバントを含み得る。本明細書中アジュバントまたはウイルスまたはウイルス様粒子に関連して用いる用語“T細胞免疫応答誘発”は、CD4および/またはCD8 T細胞免疫応答を増強するか、またはCD4および/もしくはCD8 T細胞活性化に向ける免疫応答を駆動することを意味する。当業者は、例えばリポソーム、ビロソーム、MF59、モンタニド、ISCOM、QS−21、アルミニウム、AS04、ポリI:C、MPL、GLA、イミキモド、CpG ODN、キチン、キトサン、β−グルカンまたはそれらの組み合わせなどを、この目的のために用いられ得るアジュバントをよく知っている(Temizoz et al. Int Immunol. 2016 Jul; 28(7): 329−338)。
本明細書に記載の免疫原性組成物はまた、該免疫原または該免疫原をコードする核酸を含む、T細胞免疫応答誘発ウイルスまたはウイルス様粒子(VLP)を含み得る。本明細書に記載の免疫原性組成物中に、または本明細書に記載の免疫原性組成物として用いられ得るウイルスまたはVLPを設計および製造することは常套的な実験の範囲内である。このようなウイルス、とりわけT細胞免疫応答誘発ウイルスまたはVLPは、ワクチン接種の目的で詳しく記載されている。これは、例えば、Frietze et al., Curr Opin Virol., 18: 44−49 (2016); Koup and Douek, Cold Spring Harb Perspect Med, 2011;1:a007252に記載されている。T細胞免疫応答誘発ウイルスまたはVLPの例としては、例えば、牛痘(ワクシニア)ウイルスまたはその誘導体、例えば改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、アデノウイルスもしくはアデノ随伴ウイルスおよびヒトパピローマウイルスに基づくVLP、B型肝炎ウイルスもしくは異なる腫瘍抗原を提示するように設計されたVLPが挙げられる。
本明細書に記載のウイルスまたはウイルス様粒子を含む免疫原性組成物の投与は、好ましくは、非経腸経路を介して行われ、これには静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、皮内投与および筋肉内投与が含まれ、これらは当業者によく知られている。このような投与は、腫瘍内投与ではなく、腫瘍外投与であり、好ましくは筋肉内投与または皮下投与であり、より好ましくは皮下投与である。本明細書に記載のウイルスまたはウイルス様粒子を含む免疫原性組成物の投与は、好ましくは、その状況下で、最適なT細胞介在性免疫応答が誘発されるようなものである。当業者は、例えば、ウイルス/VLP、抗原、アジュバントおよび投与経路の組み合わせを最適化することによって、この状況下で最適なT細胞介在性免疫応答を誘発する方法をよく知っている。最適なT細胞介在性免疫応答とは、例えば、異なる投与経路、用量、アジュバント、抗原および/またはウイルス/VLPを用いた同等の応答よりも高いT細胞介在性免疫応答である。
好ましくは、ウイルスまたはウイルス様粒子を含む免疫原性組成物の薬学的に有効量が投与される。これは、ウイルスまたはVLPに含まれる該免疫原に対しても、また本明細書に記載の対応する抗原性ポリペプチドでマーキングされた腫瘍に対しても、免疫応答を誘導するのに十分な量である。
当業者は、本明細書に記載の免疫原に対して免疫応答を誘発する他の適切な免疫原性組成物を知っている。例えば、他の選択肢は、本明細書に記載の免疫原を含むサブユニットワクチン、および免疫原に結合された担体タンパク質の使用を含む。
腫瘍内送達のために調製されたポリペプチド
好ましくは、本発明の使用のための組合せ製品において、腫瘍内送達のために調製されたポリペプチド、または該ポリペプチドをコードする該核酸構築物は、腫瘍標的化されているか、または腫瘍内投与のためのものである。腫瘍抗原非依存性ワクチン接種の新しい概念は、腫瘍のマーキングに関しても、既に記載されているマーキングされた腫瘍に対する免疫応答を誘発するワクチン接種に関しても、当技術分野で知られている複数の方法および手段を用いて実現され得ることを当業者は理解し得る。
本明細書に記載の医学的方法において、本明細書に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドを用いることにより、免疫応答の標的としての腫瘍のマーキングまたは標識が、インビトロまたはエクスビボではなく、インビボで起こる。
より具体的には、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸は、当技術分野で一般的によく知られている種々の方法で、腫瘍内送達のために調製することができる。例えば、調製は、例えばポリペプチドまたは核酸を含む腫瘍標的化組成物を調製することによって、該ポリペプチドまたは核酸の腫瘍標的化を伴っていてもよい。腫瘍標的化組成物は、腫瘍特異的となるような方法でポリペプチドまたは核酸を含む。腫瘍標的化の利点は、腫瘍標的化されたポリペプチドまたは核酸を対象に投与すると、非腫瘍組織と比較して腫瘍組織に対する特異性に基づいて腫瘍内送達が効果的に行われることである。腫瘍特異性はまた、腫瘍内送達を提供するために腫瘍への標的化を可能にし得ることを示す。
好ましくは、本発明に従って使用するための組合せ製品において、腫瘍内送達のために調製されたポリペプチド、または該ポリペプチドをコードする核酸は、以下のうち1以上を用いて腫瘍を標的化する:該ポリペプチドをコードする核酸を含む、腫瘍溶解性ウイルスを含む、腫瘍特異的ウイルス;該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含む腫瘍特異的ナノ粒子。あるいは、該ポリペプチドまたは核酸は、該ポリペプチドまたは核酸に融合した腫瘍標的化抗体、ペプチド、小分子または核酸アプタマーを用いて腫瘍標的化される。
本明細書に記載のポリペプチドを腫瘍に標的化する1つの好ましい方法は、ジフテリア毒素の使用を含み、この用語は、交差反応性物質(CRM)−197のようなその無毒化変異体を包含する。ジフテリア毒素は、ジフテリア毒素の受容体であるヘパリン結合性上皮成長因子様前駆体(HB−EGF)と相互作用するC末端受容体結合(R)ドメインを含む(例えば、Mishra et al., Bioscience Reports (2018) 38 BSR20180238; Malito et al., PNAS, 109:14, p. 5229-5234 (2012); Bell et al., Biochemistry 1997, 36, 481-488を参照のこと)。この受容体は、種々のタイプの腫瘍細胞上で発現している。ジフテリア毒素が該受容体に結合した後、毒素は、受容体介在エンドサイトーシスを介して内在化され、その後、MHCペプチド抗原複合体にプロセシングされる。従って、該受容体結合ドメインは、ジフテリア毒素およびジフテリア毒素の受容体結合(R)ドメインに連結された本明細書に記載の他の抗原性ポリペプチドの腫瘍内(および細胞内)送達を可能にする。腫瘍マーキングにおいて有益に用いられ得るジフテリア毒素、ジフテリア毒素に基づく融合タンパク質およびジフテリア毒素に基づくタンパク質複合体は、本明細書中以下に記載されている。
本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸を腫瘍標的化する(対象への投与時に腫瘍内送達を達成するための)別の方法は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む腫瘍溶解性ウイルスを調製することを含み、このウイルスは、該核酸を腫瘍細胞内で発現させるように設計されている。腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞を特異的に標的化するために使用され得ることは、当技術分野において広く記載されており、例えば、Lawler et al., JAMA Oncol. 1;3(6):841-849 (2017); Howells et al., Front Oncol. 7:195 (2017)に記載されている。さらに、例えばWO2014138314 A1に例示されているように、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞と結合するように改変することができる。腫瘍溶解性ウイルスが、ポリペプチドをコードする核酸構築物を腫瘍細胞に送達するために用いられ得て、該ウイルスは、該ポリペプチドを腫瘍細胞にて発現するように改変されることも当技術分野でよく知られている(Hutzler et al., Scientific Reports, 7: 16892 (2017); Grossardt et al., Human Gene Therapy, 24:644−654 (2013); Andtbacka et al., Journal of Clinical Oncology, 22:25, p.2780-2788 (2015))。該ポリペプチドのその後の細胞内プロセシングおよび該腫瘍細胞による抗原提示は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドでマーキングされた腫瘍を提供する。言い換えれば、好ましくは、腫瘍内送達後に本明細書に記載の抗原性ポリペプチドは、本明細書に記載の該核酸が腫瘍の細胞内で発現された際に、該腫瘍細胞のMHC系によって提示され、それによって免疫応答の標的として該腫瘍をマーキングする。
本発明において、腫瘍標的化に用いられ得る腫瘍溶解性ウイルスの例は、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、コクサッキーウイルス、マラバウイルス(Maraba virus)、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルスである(Lal and Rajala, Cancer Gene Therapy, DOI 10.1038/s41417-018-0018-1 (2018); Haddad, Frontiers in Immunology, 7:96 (2017); Bommareddy et al., Nature Reviews Immunology (2018))。
腫瘍溶解性ウイルスのような腫瘍特異的ウイルスは、好ましくは、非経腸投与に適した医薬製剤に調製される。このような製剤は一般に、例えば水性または油性の溶液、分散液、乳化剤および/または懸濁液などの担体を含む。非経腸投与は、好ましくは注射器、針またはカテーテルを用いる身体組織または体液への注射または注入を含む。好ましくは、担体は、水溶液、好ましくは蒸留滅菌水、生理食塩水、緩衝生理食塩水または他の薬学的に許容される注射用賦形剤である。非経腸投与様式の例としては、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与および腫瘍内投与が挙げられ、これらは当業者にはよく知られている。腫瘍溶解性ウイルスなどの腫瘍特異的ウイルスの好ましい投与様式は、静脈内投与または腫瘍内投与である(Marelli et al., Frontiers in Immunology, 866 (2018))。
腫瘍溶解性ウイルスなどの腫瘍特異的ウイルスが投与されるべき用量は、薬学的に有効な用量、すなわち、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸を腫瘍に送達するのに十分な用量である。腫瘍特異的ウイルスの投与レジメンを決定することは、常套的に行われている。
本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸を腫瘍標的化する(対象への投与時に腫瘍内送達を効果的に行うための)別の方法は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸を含む腫瘍特異的ナノ粒子を調製することを含み、後者は、送達後に腫瘍細胞内で該核酸を発現させるように設計されている。癌療法の分野では、例えば目的のポリペプチドを担持させた、または例えばそれと組み合わせたナノキャリアを含むナノ粒子が、特異的/選択的に腫瘍細胞を標的化(ホーミング)し、その後、例えばポリペプチドなどの薬剤を該腫瘍細胞に送達することに関連して広く記載されていることはよく知られている。ナノ粒子またはナノキャリアの腫瘍標的化のための方法および手段は一般に知られており、とりわけ、Olusanya et al., Molecules 23:907 (2018); Din et al., Int J Nanomedicine, 12:7291-7309 (2017); Alibakhshi et al., J Control Release, 268:323-334 (2017); および、US 2013/0330399 A1に記載されている。
ナノ粒子またはその主要部分としてのナノキャリアは、高分子ナノ粒子、ミセル、リポソーム、ナノゲルまたはカーボンナノチューブであり得る。このような粒子または担体(キャリア)は、目的の化合物(ポリペプチドなど)を担持し、そのような粒子または担体を、例えば腫瘍細胞の表面上に発現した腫瘍抗原に特異的な抗体または抗体フラグメントで修飾することにより、腫瘍を積極的に標的化することができる(上記の参考文献も参照のこと)。ナノ粒子の腫瘍標的化部位は、原則として、ペプチド、オリゴペプチドもしくはポリペプチド、タンパク質、ホルモン、ビタミン、酵素、腫瘍抗原のリガンドまたは腫瘍抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体フラグメントなど、腫瘍細胞上に発現する分子に対して親和性を示す何らかの生物学的または化学的構造であり得る。好ましくは、腫瘍標的化ナノ粒子の投与ならびにその後の腫瘍細胞への移行および結合の後、受容体介在性エンドサイトーシス(内在化)により、腫瘍細胞によるナノキャリアの取り込みを可能にし、それにより、例えば目的のポリペプチドの細胞内送達を提供し、これは、細胞内でプロセシングされ、その後、腫瘍細胞によってMHC複合体中の抗原として提示され得る。
あるいは、腫瘍標的化ナノ粒子の投与およびその後の腫瘍への移行および貪食細胞または線維芽細胞などの免疫細胞を含む腫瘍内の非腫瘍細胞への結合後、受容体介在性エンドサイトーシス(内在化)により、該細胞によるナノキャリアの取り込みを可能にし、それにより、例えば腫瘍中で目的のポリペプチドの細胞内送達を提供し、それは細胞内でプロセシングされ、その後、該腫瘍内の該細胞によってMHC複合体中の抗原として提示され得る。本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸の腫瘍内送達のために用い得る腫瘍特異的(または腫瘍標的化された)ナノ粒子の具体例は、例えば、ポリ(プロピレン)サルファイド(PPS)ナノ粒子、金ナノ粒子、PLGAナノ粒子、人工エキソソーム、ミセルまたはデンドリマーである。
本明細書に記載の腫瘍特異的ナノ粒子は、好ましくは、非経腸投与に適した医薬製剤に調製される。このような製剤は、一般的に、例えば、水性または油性溶液、分散液、乳剤および/または懸濁液のような担体を含む。非経腸投与は、好ましくは注射器、針またはカテーテルを用いる身体組織または体液への注射または注入を含む。好ましくは、担体は、水溶液、好ましくは蒸留滅菌水、生理食塩水、緩衝生理食塩水または他の薬学的に許容される注射用賦形剤である。非経腸投与様式の例としては、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与および腫瘍内投与が挙げられ、これらは当業者にはよく知られている。腫瘍特異的ナノ粒子の好ましい投与様式は、静脈内投与または腫瘍内投与である。
投与される腫瘍特異的ナノ粒子の用量は、薬学的に有効な用量、すなわち、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸を腫瘍に送達するのに十分な用量である。当業者であれば、腫瘍特異的ナノ粒子の投与レジメンを決定することは常套的に行われる。
あるいは、本発明による使用のための組合せ製品において、腫瘍内送達のために調製されたポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸は、腫瘍内投与用、好ましくは腫瘍内注射用であり、以下から選択される:該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含む樹状細胞;および/または、該ポリペプチドを含む水性懸濁液または溶液。あるいは、該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸が腫瘍内投与のために調製されるとき、該ポリペプチドまたは該核酸は、該核酸を含むウイルスとして調製することができ、好ましくは、該ウイルスが必ずしも腫瘍特異的である必要はないか、または該核酸が裸のDNA、mRNAとして調製されるか、または該ポリペプチドもしくは該核酸がリポソーム中に存在する。
本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸が腫瘍標的化されていない態様において、それらは、腫瘍内注射を可能にする形態であることにより腫瘍内送達のために調製される。当業者は、本明細書に記載の腫瘍標的化組成物もまた、腫瘍内に投与され得ることを直ちに理解する。当業者は、腫瘍内注射に適合され、例えば水性または油性溶液、分散液、乳剤および/または懸濁液のような担体を含んでいてもよい、医薬製剤を認識している。本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸が腫瘍標的化されていない態様において、抗原性ポリペプチドおよび/または核酸は、好ましくは樹状細胞中に含まれるか、または抗原性ポリペプチドは水性懸濁液もしくは溶液中にある。同様に、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸が腫瘍標的化されていない態様において、抗原性ポリペプチドおよび/または核酸は、ウイルス中に含まれ得る。従って、抗原性ポリペプチドによる腫瘍のマーキングは、腫瘍細胞で起こり得るが、必ずしも腫瘍細胞自体による細胞内プロセシングおよび抗原提示を必要としないことが、本明細書中明示的に想定されている。例えば、そのような細胞内プロセシングはまた、貪食細胞などの免疫細胞−マクロファージが一例として挙げられる−または線維芽細胞を含む、腫瘍内の他の細胞タイプによって影響を受ける可能性がある。樹状細胞が腫瘍のマーキングに用いられるとき、腫瘍のマーキングは、樹状細胞が腫瘍内に注射される樹状細胞自体のMHC系を介した抗原プロセシングによって行われ得る。また、樹状細胞、特に同種異系樹状細胞は、NK細胞を含む内因性免疫細胞および腫瘍内の免疫応答を強制するクロスプライミング(cross-prime)樹状細胞を引き寄せ得ることも知られている(Laurell et al. 2017, J for Immunother. Of Cancer 5: 52)。
理論はともかく、以前は‘手つかずの’免疫細胞を腫瘍に動員するか、または−腫瘍マーキングの前に−腫瘍に対して指向されていなかった既存の免疫を用いることにより、免疫寛容が破壊され、結果的に、腫瘍の腫瘍抗原に対して指向された免疫細胞がさらに動員される。
腫瘍マーキングに関して、当業者は、抗原性ポリペプチドまたはそのようなポリペプチドをコードするmRNAなどの核酸を樹状細胞に負荷することに関連する方法および手段をよく知っている。例えば、Van Nuffel et al., ISBT Science Series, 8, 161−164 (2013); WO 2014/006058 A1; WO 2009/034172 A1を参照のこと。さらに、当業者は、樹状細胞を腫瘍内に注射するための方法および手段をよく知っている。例えば、US 2004/0057935 A1; Cripe et al., Molecular Therapy, 23: 3, p. 602−608 (2015); Hirooka et al., Oncotarget, 9:2, p.2838-2847 (2018); Triozzi et al., Cancer, 89:12, p.2646-2654 (2000); Laurell et al., Journal for ImmunoTherapy of Cancer, 5:52 (2017)を参照のこと。好ましくは、腫瘍内送達のために調製された該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする該核酸は、腫瘍内投与のためのものであり、樹状細胞、好ましくは、本明細書に記載の細胞株DCOneの細胞から得られた(成熟)樹状細胞の形態であって、該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする該核酸を含む。当業者は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸(例えば、mRNA)を含む樹状細胞の腫瘍内投与に適した投与レジメンを常套的に決定することができる。本明細書に記載の抗原性ポリペプチドを含む水性懸濁液または溶液も同様である。
腫瘍のマーキングは、腫瘍が本明細書に記載の抗原性ポリペプチドでマーキングされている限り、複数の異なる方法および手段を介して実施できることは明らかである。例えば、腫瘍マーキングは、腫瘍細胞または腫瘍内の他の細胞型による抗原性ポリペプチドの細胞内プロセシングによってのみ実施される必要はない。腫瘍内送達のために調製された抗原性ポリペプチドは、腫瘍細胞外であり、したがって、該腫瘍内の細胞によって内在化されないことも可能である。腫瘍内の細胞外抗原性ポリペプチドの存在は、本明細書に記載のワクチン接種工程によるマーキングの前に活性化された免疫細胞を引き付け得る。このようなワクチン接種工程およびその後の免疫の生成は、腫瘍のマーキングに先立って行われることが好ましい。
さらに、腫瘍内送達のために調製されたポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸は、好ましくは、免疫応答に対する感受性を高めるように、好ましくは、少なくとも部分的に免疫寛容な腫瘍環境を免疫感受性の腫瘍環境に変換するように、またはTMEにおけるT細胞の(最適な)機能性を促進するように、腫瘍、好ましくはTMEを調節する、ケモカインおよび/またはサイトカインなどの免疫調節化合物を伴う。そのような免疫調節化合物は、好ましくは、ポリペプチドの形態で、またはそのようなポリペプチドをコードする核酸として、本明細書に記載の腫瘍特異的ウイルス、腫瘍特異的ナノ粒子、樹状細胞または水性懸濁液もしくは溶液中に含まれる。そのような免疫調節化合物の好ましい例は、例えば、GM−CSF、CCR5、XCL1、CCL20およびCCL21である(Mohan et al., Immunobiology, 223:477−485 (2018); He et al., Journal of Experimental & Clinical Cancer Research、29:37 (2010); Nguyen-Hoai et al., Cancer Gene Therapy, 19: 69−76 (2012))。したがって、本発明による使用のための組合せ製品において、腫瘍内送達のために調製された該非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸は、少なくとも部分的に免疫寛容な腫瘍微小環境(TME)を免疫感受性TMEに変換し、および/またはTMEにおけるT細胞の機能性を促進する、免疫調節化合物(例えば、免疫調節ポリペプチドまたは該免疫調節ポリペプチドをコードする核酸)も含む組成物である。好ましくは、該免疫調節化合物は、免疫調節ポリペプチドまたは該免疫調節ポリペプチドをコードする核酸であり、好ましくは、該免疫調節ポリペプチドが、GM-CSF、CCR5、XCL1またはCCL20、より好ましくはヒトGM−CSF、CCR5、XCL1またはCCL20であるか、またはそれらをコードする核酸である。好ましくは、そのような免疫調節化合物は、TMEにおけるT細胞機能を促進する。
本明細書で用いる用語“免疫寛容性TME”は、腫瘍内の環境が抗腫瘍免疫応答に対する寛容性または非感受性を提供する、よく確立された現象を意味する。好ましくは、TMEは、腫瘍の外側の環境中、例えば、健康な細胞または健康な組織内またはその近くの環境中の標的に対して向けられた免疫応答と比較して、該TME内の腫瘍に対して向けられた免疫応答により寛容性であるか、またはより非感受性である場合、免疫寛容である。
本明細書で用いる用語“免疫感受性TME”は、腫瘍が抗腫瘍免疫応答に対して感受性または影響を受けやすい状況を意味する。
本発明による使用のための組合せ製品において、抗原性ポリペプチドおよび対応する免疫原に関して、ポリペプチドが腫瘍抗原ではないことは、本発明の一態様である。本明細書で用いる用語“腫瘍抗原”は、腫瘍関連抗原(TAA)および腫瘍ネオ抗原を含む腫瘍特異的抗原(TSA)の両方を含む。腫瘍関連抗原は、正常細胞上で観察されるよりも大量に腫瘍細胞の表面上に発現される抗原、または胎児発育中に正常細胞上で発現される抗原である。腫瘍特異的抗原とは、腫瘍細胞に固有の抗原であり、正常細胞に発現しない抗原である。腫瘍抗原という用語には、すでに同定されているTAAまたはTSAと、未だ同定されていないTAAまたはTSAとが含まれる。
原則として、本発明において、ヒト対象に免疫原性である限り、何れかの抗原性ポリペプチドを用いることができる。これには、ヒト由来および非ヒト由来の抗原性ポリペプチドの両方が含まれる。したがって、抗原性ポリペプチドは、ヒト対象において免疫原性であるヒト由来または非ヒト由来の抗原性ポリペプチドであり得る。抗原性ポリペプチドが非ヒト由来であることが特に好ましい。それにもかかわらず、用語“非ヒト抗原性ポリペプチド”に言及する面および/または態様において、その面または態様は、“ヒト抗原性ポリペプチド”に言及するように修正することができるか、または用語“ヒト抗原性ポリペプチド”をかかる面および/または態様に追加することができることを、明示的に想定している。ヒト対象において免疫原性であるヒト抗原性ポリペプチドは、例えば、胚ポリペプチド、卵巣ポリペプチドまたは精巣ポリペプチドである。これは、例えば、NY−ESO−1、WT−1およびMAGE抗原に適用される(例えば、Cheever et al, Clin Cancer Res;15:5323-5337 (2009); Vigneron et al, Cancer Immunity, 13:15 (2013)を参照のこと)。これらの理由から、本発明はまた、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発するのに使用するための組合せ製品を提供し、該組合せ製品は、
・免疫原としての抗原性ポリペプチド(好ましくは、ヒトまたは非ヒト抗原性ポリペプチド)、または該免疫原をコードする核酸を含む免疫原性組成物、および要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤;および、
・該抗原性ポリペプチド(好ましくは、ヒトまたは非ヒト)または該ポリペプチドをコードする核酸
(ここで、該ポリペプチドまたは該核酸は、腫瘍内送達のために調製される)
を含む。
本発明の重要な面は、本発明の面において免疫原およびマーカーとして用いられるべき非ヒト抗原性ポリペプチドは、腫瘍に対する免疫応答の一部として対象が以前に遭遇していないことである。示されているように、抗原性ポリペプチドは、好ましくは腫瘍抗原ではない。それらは、対象の免疫系によって以前に遭遇しておらず、したがって対象が免疫学的にナイーブである抗原であり得るか、またはそれらは、対象により以前に遭遇した抗原性ポリペプチドであり得るが、腫瘍に対する免疫応答の一部としてではなく、好ましくは保護免疫(メモリーT細胞および/またはB細胞)が存在する抗原性ポリペプチドであり得る。後者は、導入するのに時間がかかるが、その代わり、既存の免疫に入り込み−または再活性化して−本発明の原則的メカニズムに従って腫瘍に誘導する、新規な(デノボ)免疫応答を導入する必要がないため、非常に有益であり得る。従って、1つの態様において、本明細書に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドは、潜在的なワクチン接種を意図したヒト集団の大部分によって(免疫系によって)遭遇することは殆どないか、または免疫が予め存在する(対象に存在する)抗原性ポリペプチドであり、ここで、該免疫は腫瘍に対して向けられていない。後者の形態の免疫は、例えば、A型および/またはB型肝炎、ジフテリア、破傷風、百日咳、インフルエンザ、インフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b)、ポリオ(ポリオ性骨髄炎)、麻疹、おたふくかぜ、風疹、水痘、ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)(肺炎)、ナイセリア髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(髄膜炎)またはロタウイルス(rotavirus)(ロタウイルス感染症)などの肝炎に対するワクチン接種を含む、人生の早い段階での感染症に対する以前のワクチン接種によって提供され得る。本発明により用いるための非ヒト抗原ポリペプチドとして本明細書で明示的に想定されるのは、A型および/またはB型肝炎、ジフテリア、破傷風、百日咳、インフルエンザ、インフルエンザ菌B型、ポリオ、麻疹、おたふくかぜ、風疹、水痘、ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌(肺炎)、ナイセリア髄膜炎菌またはロタウイルスを含む肝炎の1以上の免疫原性ポリペプチドである。本明細書に記載の非ヒト抗原ポリペプチドは、好ましくは、該対象の以前のワクチン接種に用いられた微生物ポリペプチドであり、好ましくは、該以前のワクチン接種が感染症に対するものであり、より好ましくは、該以前のワクチン接種がA型肝炎および/またはB型肝炎;ジフテリア;破傷風;百日咳;インフルエンザ;インフルエンザ菌b型;ポリオ;麻疹;おたふくかぜ;風疹;水痘;ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、ナイセリア髄膜炎菌またはロタウイルスに対するものである。当業者は、以前のワクチン接種で用いられたポリペプチドが、(i)サブユニットワクチン、(ii)不活化または弱毒化微生物、(iii)トキソイドワクチン(すなわち、不活化毒素を含むワクチン)の一部など、種々の形態で投与され得ることを理解している。
より具体的には、本明細書に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドは、好ましくはUniProtKB受託番号P08617(最終更新日:1988年8月1日−v1)で同定されたVP3を含む、A型肝炎ウイルス由来のVP3;UniProtKB受託番号P04958(最終更新日:2007年1月23日 - v2)で同定された破傷風トキシンを含む、Clostridium tetani由来の破傷風トキシン;UniProtKB受託番号P04977(最終更新日:1987年8月13日 - v1)で同定された百日咳毒素を含む、Bordetella pertussis由来の百日咳毒素; タンパク質 1987年8月13日-v1;UniprotKb受託番号R4R7Q5(最終更新日:2013年7月24日 - v1)で同定されたプロテインDを含む、Haemophilus influenzae由来のプロテインD;UniProtKB受託番号P03300(最終更新日:2007年1月23日 - v3)で同定されたVp1キャプシドタンパク質を含む、ポリオウイルス由来のVp1キャプシドタンパク質;UniProtKB受託番号P08362(最終更新日:1988年8月1日 - v1)で同定されたヘマグルチニンを含む、麻疹ウイルス由来のヘマグルチニン;UniProtKB受託番号Q77IS8(最終更新日:2004年7月5日 - v1)で同定された核タンパク質を含む、ムンプスウイルス由来の核タンパク質;UniprotKb受託番号P08563(最終更新日:2006年5月30日 - v2)で同定された糖タンパク質E1またはE2を含む、風疹ウイルス由来の糖タンパク質E1またはE2;UniprotKb受託番号P09310(最終更新日:1989年7月1日-v1)で同定された即時初期(immediate early)62(IE62)タンパク質を含む、水痘帯状疱疹ウイルス由来のIE62タンパク質;UniprotKb受託番号P03126(最終更新日:1986年7月21日-v1)、P03129(最終更新日:1986年7月21日-v1)、P06463(最終更新日:1988年1月1日-v1)またはP06788(最終更新日:1990年4月1日-v2)で同定されたE6またはE7タンパク質を含む、HPV16またはHPV18由来のE6またはE7タンパク質;Spr96/2021、PV7(7価)および/またはPV13(13価)、好ましくは肺炎球菌に由来するか、または肺炎球菌に基づく;UniprotKb受託番号Q7WYZ0(最終更新日:2003年10月1日 - v1)で同定されたナイセリアヘパリン結合抗原(NHBA)、UniprotKb受託番号B2CQ00(最終更新日:2008年5月20日 - v1)で同定された第H因子結合タンパク質(fHbp)またはUniprotKb受託番号Q9K105(最終更新日:2000年10月1日-v1)で同定されたナイセリアアドへシンA(nadA)を含む、Neisseria meningitides由来のNHBA、fHbpまたはnadA;UniprotKb受託番号P12473(最終更新日:2009年3月24日 - v2)で同定されたVP8またはUniprotKb受託番号P04509(最終更新日:2000年5月30日-v2)で同定されたVP6を含む、ロタウイルス由来のVP8またはVP6;ならびに、CRM−197と呼ばれるその無害化変種を含む、コリネバクテリウムジフテリア由来のジフテリア毒素によって形成される群より選択されるポリペプチドである。以前のワクチン接種で用いられたポリペプチドに言及する場合、該用語には、無害化された免疫原性変異体またはその一部も含まれることに留意されたい。従って、好ましくは、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドは、リコール抗原、より好ましくは微生物リコール抗原である。
好ましくは、選択された抗原性ポリペプチドは、免疫原としてのそのような抗原性ポリペプチドによるワクチン接種およびそのような抗原性ポリペプチドによる腫瘍マーキングが、該既存免疫を利用する(すなわち、該腫瘍に対する免疫応答を誘導するために、メモリーT細胞および/またはB細胞を活性化する)ように、対象における既存の免疫(好ましくは、メモリーT細胞および/またはB細胞の形態のメモリー免疫)と適合される。当業者は、抗原性ポリペプチドに対する免疫が存在するかどうかを容易に確立することができる。好ましくは、既存の免疫は、腫瘍の確立前に、より好ましくは、例えば0〜20歳の間、さらに好ましくは、1〜12歳または1〜6歳の間の人生の早い段階で形成された。既存の免疫を活用するために、休眠免疫細胞は、好ましくは、本明細書に記載の免疫原性組成物を用いた少なくとも1回の免疫化によって再活性化される。
従って、本発明の面で用いられる抗原性ポリペプチドは、腫瘍に対する免疫応答の一部として対象が以前に遭遇していないことが好ましく、より好ましくは、(i)免疫応答の一部としてヒト対象が遭遇していない(または殆ど遭遇していない)か、または(ii)免疫応答の一部として遭遇しているが、腫瘍に対する免疫応答ではなく、ここで、保護免疫が対象に存在する。
好ましくは、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドは、癌患者、好ましくは腫瘍に罹患している患者において免疫応答を誘導する。好ましくは、抗原性ポリペプチドは、本発明の方法を用いた潜在的なワクチン接種を意図した患者の少なくとも90%において免疫応答を誘導する。このようにして癌患者に誘導された免疫応答は、患者の免疫系が以前にこの免疫原に遭遇していないという事実のために、新規な(de novo)応答であり得る。
本発明により用いるための組合せ製品において、ポリペプチドは、好ましくは、微生物ポリペプチドなどの非哺乳動物ポリペプチド、または合成ポリペプチドである。さらに、本発明により用いるための組合せ製品において、ポリペプチドは、好ましくは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)を含む緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびジフテリア毒素からなる群より選択される。
本明細書で用いる用語“微生物ポリペプチド”は、細菌、古細菌、原生生物、真菌、単細胞植物およびウイルスを含む微生物のポリペプチドを意味する。
好ましくは、非ヒト抗原性ポリペプチドは、細菌ポリペプチド、古細菌ドメイン(Archaea domain)の生物に由来するポリペプチド、真菌ポリペプチドまたはウイルスポリペプチドである。また、植物ポリペプチドも好ましい。また、非ヒト霊長動物、げっ歯類(例えば、マウスおよびラットなど)、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ロバなどの非ヒト哺乳動物のポリペプチド、鳥類(例えば、ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウなど)のポリペプチドも想定される。また、抗原性ポリペプチドは、カタツムリなどの軟体動物のポリペプチドであってもよく、好ましくはMegathura属、より好ましくはMegathura crenulata属のポリペプチドである。
非哺乳動物抗原性ポリペプチドは、ヒト対象に投与したとき、哺乳動物ポリペプチドよりも免疫原性が高いため、哺乳動物ポリペプチドではない抗原性ポリペプチドが最も好ましい。好適な非哺乳動物抗原性ポリペプチドの例としては、例えば、増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)を含む緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼおよびβ−ガラクトシダーゼが挙げられる。
高度に好ましい抗原性ポリペプチドの一例は、Megathura crenulataのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)である。KLHは、KLH1(アミノ酸配列は、UniProtKB−Q53IP9に提供される。最終更新日:2014年2月19日 - v2)またはKLH2(アミノ酸配列は、UniProtKB−Q1MVA1に提供される。最終更新日:2006年5月30日 - v1)のいずれかであり得る。KLHは、免疫原性の高い抗原の一例であり、普遍的な免疫原およびワクチン担体として広く用いられてきた。
高度に好ましい抗原性ポリペプチドの別の例は、ジフテリア毒素であり、この用語は、交差反応物質(CRM)−197などのその無害化された変異体を含む。好ましくは、ジフテリア毒素は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。ジフテリア毒素の好ましい無害化変異体は、アミノ酸残基位置52のグリシン(G)がグルタミン酸(E)で置換されていることを除いて、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するCRM−197である。この用語はまた、少なくとも100、少なくとも200または少なくとも300の連続的なアミノ酸残基長を有する配列番号1あるいは配列番号1の一部と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または少なくとも99%の配列同一性を有するジフテリア毒素の変異体を含み、ここで、好ましくは、該連続的なアミノ酸長は、配列番号1の位置1〜385によって示されるアミノ酸領域内にあるか、またはアミノ酸領域である。あるいは、そのような変異体は、1〜50、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10のアミノ酸残基が欠失、挿入または置換されていることを除いて、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。そのような変異体は、好ましくは、本明細書に記載の抗原性および/または免疫原性を示す。
用語“%配列同一性”は、本明細書中、最大%の配列同一性を達成するために配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入後、目的のアミノ酸配列中のアミノ酸と同一であるアミノ酸の%として定義される。アライメントのための方法およびコンピュータプログラムは、当技術分野でよく知られている。配列同一性は、目的のアミノ酸配列の実質的に全長、好ましくは全長(完全長)にわたって計算される。当業者は、あるアミノ酸配列における連続したアミノ酸残基が、別のアミノ酸配列における連続したアミノ酸残基と比較されることを理解する。
好ましくは、ジフテリア毒素が抗原性ポリペプチドの腫瘍内送達のために用いられる本発明の医学的用途および方法において、腫瘍は、HB−EGF受容体を発現する腫瘍であり、好ましくは、卵巣腫瘍;肺腫瘍;膀胱腫瘍;胃腫瘍;膵臓腫瘍;乳房腫瘍;肝臓腫瘍、好ましくは肝細胞癌;脳腫瘍、好ましくは膠芽腫;神経芽腫;ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、好ましくは組織球性リンパ腫または未分化大細胞リンパ腫;ならびに、白血病、好ましくはAML、CMLまたはALLからなる群より選択されるHB−EGF受容体を発現する腫瘍である。より好ましくは、HB−EGF受容体を発現する腫瘍は、卵巣癌;肺癌;膀胱癌;胃癌;膵臓癌;乳癌;肝細胞癌;脳腫瘍、好ましくは膠芽腫;神経芽腫;ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、好ましくは組織球性リンパ腫または未分化大細胞リンパ腫;ならびに、白血病、好ましくはAML、CMLまたはALLからなる群より選択される悪性腫瘍である。
本発明はまた、第2のタンパク質に連結された第1のタンパク質を含む融合タンパク質またはタンパク質−タンパク質接合体(conjugate)に関し、ここで、該第1のタンパク質は、ジフテリア毒素またはジフテリア毒素の(HB−EGF)受容体結合ドメインを含み、該第2のタンパク質は、本明細書に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドを含む。非常に好ましいジフテリア毒素は、CRM−197である。好ましくは、該第2のタンパク質は、ジフテリア毒素ではない。該第1のタンパク質は、該第1のタンパク質に直接結合しているか、またはグリシン−セリン(GS)、好ましくは反復性のリンカーペプチド配列などのリンカーペプチド配列を介して結合している。該第2のタンパク質は、該第1のタンパク質のN末端側またはC末端側で連結され得る。本明細書で用いる用語“融合タンパク質”は、互いに共有結合している少なくとも2つのタンパク質(その一部を含む)を含むタンパク質性分子を意味する。一般的に、該2つのタンパク質は、異なるタンパク質に由来する。
あるいは、化学的架橋剤を用いて、異なるタンパク質を互いに連結することができる。従って、このような化学的架橋は、ジフテリア毒素またはジフテリア毒素のHB−EGF受容体結合ドメインを、本明細書に記載の第2のタンパク質に結合させるために用いることができる。当業者は、好ましくは、マレイミドまたはスクシニミジルエステル指向架橋のような、よく確立された技術を用いる(Mattson, G., et al. 1993 “A practical approach to crosslinking”, Molecular Biology Reports 17:167-183)。従って、第1のタンパク質および第2のタンパク質はまた、いわゆる架橋または結合を介して、例えば、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または少なくとも20個のマレイミドまたはスクシニミジルエステルのような1以上を介して結合することができる。本明細書で用いる用語“タンパク質−タンパク質接合体”は、化学的架橋剤−リンカーを介して共に連結されている、その一部を含む少なくとも2つのタンパク質を含むタンパク質性分子を意味する。化学的架橋は、マレイミドまたはスクシニミジルエステル指向(directed)架橋によって行うことができる。
好ましくは、ジフテリア毒素の該受容体結合ドメインは、配列番号2または配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する。本明細書に記載のジフテリア毒素の受容体結合ドメインはまた、(i)配列番号2または配列番号3と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または少なくとも99%の配列同一性を有し;および、該変異体がHB−EGF受容体に結合する(結合可能である)および/またはHB−EGF受容体に結合して腫瘍細胞内に内在化される変異体、あるいは(ii)1−30、好ましくは1−20、より好ましくは1−10アミノ酸残基が除去、挿入または置換されており;および、該変異体がHB−EGF受容体に結合する(結合可能である)および/またはHB−EGF受容体に結合して腫瘍細胞内に内在化される以外、配列番号2または配列番号3で示されるアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有する変異体を含む。
好ましくは、該第2のタンパク質は、本明細書に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドであり、より好ましくは、(i)キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)を含む緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびジフテリア毒素、(ii)本明細書に記載の対象の以前のワクチン接種に用いられた微生物ポリペプチド、好ましくは、該以前のワクチン接種が感染症に対するものであり、より好ましくは、該以前のワクチン接種がA型および/またはB型肝炎;ジフテリア;破傷風;百日咳;インフルエンザ;インフルエンザ菌B型;ポリオ;麻疹;おたふくかぜ;風疹;水痘、ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌、髄膜炎ナイセリアまたはロタウイルスに対するものである、および/または(iii)A型肝炎ウイルス由来のVP3;破傷風菌由来の破傷風毒素;百日咳菌由来の百日咳毒素;インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)由来のタンパク質D;ポリオウイルス由来のVp1キャプシドタンパク質;麻疹ウイルス由来のヘマグルチニン;おたふくかぜウイルス由来の核タンパク質;風疹ウイルス由来の糖タンパク質E1またはE2;水痘帯状疱疹ウイルス由来の即時初期62(IE62)タンパク質;HPV16またはHPV18由来のE6またはE7タンパク質;好ましくは肺炎球菌に由来するか、または肺炎球菌に基づくSpr96/2021、PV7(7価)および/またはPV13(13価);Neisseria meningitides由来のナイセリアヘパリン結合抗原(NHBA)、H因子結合タンパク質(fHbp)またはナイセリアアドヘシンA(nadA);ならびに、ロタウイルス由来のVP8またはVP6からなる群より選択される。
好ましくは、本明細書に記載の融合タンパク質またはタンパク質−タンパク質接合体は、本発明の医学的用途および方法に用いられ、好ましくは医薬としての使用のためのものである。好ましくは、本明細書に記載の融合タンパク質またはタンパク質−タンパク質接合体は、腫瘍内送達のために調製された非ヒト抗原性ポリペプチドとして用いられる。また、本明細書に記載の免疫原性組成物に用いることもできる。従って、腫瘍内送達のために調製された非ヒト抗原性ポリペプチドおよび非ヒト抗原性ポリペプチドを含む免疫原性組成物を引用する態様はまた、本明細書に記載の融合タンパク質またはタンパク質−タンパク質接合体に関連するものでもある。重要なことに、本明細書に記載の免疫原性組成物に言及されるとき、当業者は、全体としての融合タンパク質またはタンパク質−タンパク質接合体のいずれかを使用できるか、またはその第2のタンパク質のみが使用できることを理解し得る。
本発明はまた、本発明の融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
本発明はまた、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発または誘導する方法で使用するための、または免疫反応の標的として対象の腫瘍をマーキングする方法で使用するための、本発明の融合タンパク質、タンパク質−タンパク質接合体または核酸を提供し、ここで、好ましくは、該対象は、免疫原として該融合タンパク質、タンパク質−タンパク質接合体または該第2のタンパク質を含むか、あるいは該免疫原をコードする核酸を含み、要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含んでいてよい、免疫原性組成物でワクチン接種される。
本明細書に記載の融合タンパク質またはタンパク質−タンパク質接合体は、好ましくは、非経腸投与用であり、より好ましくは腹腔内または腫瘍内投与用である。好ましくは、本明細書に記載の融合タンパク質またはタンパク質−タンパク質接合体は、非経腸投与、より好ましくは腫瘍内注射に適した医薬製剤の形態での投与用であり、これは、例えば、水溶液または油性溶液、分散液、エマルジョンおよび/または懸濁液などの担体を含んでいてもよい。
本明細書に記載のタンパク質またはポリペプチドのアミノ酸配列は、当技術分野で一般的に利用可能な方法および手段によって生成することができる。例えば、当業者は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするDNA配列を生成する方法、ならびに一般的に知られている組換えDNA技術を用いて該DNA配列を有する核酸分子を製造および単離する方法を理解し得る。核酸分子の配列は、好ましくは、宿主細胞中での発現のためにコドン最適化される。このようにして、特定の宿主細部で高レベルの発現に有利なコドンが用いられる。核酸分子は、好ましくは、当業者に知られている組換えDNA技術を用いて発現ベクターに挿入される。発現ベクターは、宿主細胞において本明細書に記載の融合タンパク質の発現を指向する。これらの発現ベクターは、好ましくはエピソームとして、または染色体DNAの一部として、宿主細胞中で複製可能である。さらに、発現ベクターは、好ましくは、(i)CMVまたはSV40プロモーターなどの強力なプロモーター/エンハンサー、(ii)リボソーム結合部位および開始コドンなどの最適な翻訳開始配列、好ましくはKOZAKコンセンサス配列、および(iii)タンパク質が真核細胞で発現されるときのポリ(A)シグナルを含む転写終結配列、を含む。好適な発現ベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレトロウイルスなどのプラスミドおよびウイルスベクターを含む。当業者は、用いられる発現ベクターが、組換えタンパク質の発現に用いられる宿主細胞に依存することを理解し得る。発現ベクターは、好ましくは、細菌細胞を含む原核細胞における、またはより好ましくは、酵母細胞および哺乳動物細胞などの真核宿主細胞における核酸の発現に適している。好適な例は、哺乳動物発現ベクターpCMV4である。
代替として、核酸分子を宿主細胞のゲノムに挿入することができる。該挿入は、好ましくは、宿主細胞における本発明の核酸分子の発現を確実にする遺伝子座または遺伝子領域内にある。
好適な宿主細胞としては、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、マウス細胞、ラット細胞、ヒツジ細胞、サル細胞およびヒト細胞などの原核細胞および真核細胞が挙げられる。適当な真核生物宿主細胞の例としては、HEK293細胞、ハムスター細胞株CHOおよびBHK−21;マウス宿主細胞NIH3T3、NSOおよびC127;シミアン宿主細胞COSおよびVero;ならびに、ヒト宿主細胞HeLa、PER.C6、U−937およびHep G2が挙げられるが、これらに限定されない。適切な細胞は、ATCCおよびLife Technologiesなどの公的な供給源から入手可能である。多くのトランスフェクション技術が当技術分野で知られており、例えば、Graham et al., 1973. Virology 52: 456; Green et al., 2012. “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, CSHL Press; Davis et al., “Basic Methods in Molecular Biology”, 1986, Elsevier; and Chu et al., 1981. Gene 13: 197を参照のこと。当業者は、好ましくは、これらの文献に記載の技術を用いて、1以上の外因性核酸分子を好適な宿主細胞に導入する。本明細書に記載の融合タンパク質を産生するための宿主細胞の例は、HEK293細胞である。
本明細書に記載の抗原性ポリペプチドはまた、合成ポリペプチド、好ましくはヒト対象への投与時に強い細胞免疫応答を誘発するように設計されたポリペプチドであり得る。
抗原性ポリペプチドが免疫原として投与するためのものであるとき、免疫応答の誘発を増強するように、さらにポリペプチドまたは複合パートナーを含んでいてもよい。従って、該免疫原は、該抗原性ポリペプチドおよび例えば担体タンパク質を含む融合ポリペプチドであり得る。
本発明による組合せ製品は、固定された組合せ、固定されていない組合せ、または複数部分のキットであり得る。
本発明における“固定された組合せ”は、当業者に知られているように使用され、組合せ製品の両成分が1つの単位用量または単一医薬(entity)で共に存在する組合せとして定義される。“固定された組合せ”の一例は、組合せ製品の両成分が、製剤のような同時投与用の混合物中に存在する医薬組成物である。“固定された組合せ”の別の例は、組合せ製品の両成分が混合物であることなく一単位で存在する医薬組成物である。
本明細書で用いる、固定されていない組合せまたは“複数部分のキット”は、当業者に知られており、両成分が2以上の単位中に存在する組合せ製品として定義される。固定されていない組合せまたは複数部分のキットの一例は、組合せ製品の両成分が別個に存在している組合せ製品である。固定されていない組合せまたは複数部分のキットの成分は、別個に、逐次に、同時に(simultaneously)、一挙に(concurrently)および/または経時的に交互に投与されてもよい。
好ましくは、本発明の使用のための組合せ製品は、固定されていない組合せ製品または複数部分のキットである。好ましくは、組合せ製品の成分は、別個に、逐次におよび経時的に交互に投与される。
従って、本発明による使用のための製品は、別個の投与、逐次投与、同時投与、共投与または経時的に交互の投与のためのものである。
好ましくは、本発明による使用のための組合せ製品において、腫瘍内送達のために調製されたポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸、および免疫原性組成物は、逐次投与用であり、ここで、腫瘍内送達のために調製されたポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸は、免疫原性組成物の投与に続く投与のためのものであり、またはその逆である。
本発明はまた、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発または誘導する際に用いるための、非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を提供し、ここで、該ポリペプチドまたは該核酸は、腫瘍内送達のために調製され、該対象は、該ポリペプチドを免疫原として含むか、または該免疫原をコードする核酸を含み、要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含んでいてもよい、免疫原性組成物でワクチン接種される。好ましくは、(i)腫瘍内送達のために調製されたポリペプチド/核酸、(ii)免疫原性組成物、および(iii)医学的使用は、本発明の組合せ製品について定義された通りである。腫瘍抗原に依存しないワクチン接種および腫瘍マーキングは、好ましくは、時間的に別個に起こり、誘発される免疫応答の標的としての腫瘍のマーキングが、ワクチン接種工程後に起こってもよいことは明らかである。従って、好ましくは、該対象は、本明細書に記載の該非ヒト抗原性ポリペプチドの投与の前に、本明細書に記載の免疫原性組成物でワクチン接種される(または、投与される)。好ましくは、本明細書に記載の使用のための、非ヒト抗原性ポリペプチドまたは核酸において、腫瘍内送達のために調製される該ポリペプチドまたは該核酸を、腫瘍内送達後の免疫応答の標的としてマークする。好ましくは、本明細書に記載の使用のための、非ヒト抗原性ポリペプチドまたは核酸において、該非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の腫瘍内送達後に、該腫瘍に対する免疫応答が特異的に誘発される。
本発明はまた、対象における免疫応答の標的として腫瘍をマーキングする際に使用するための、非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を提供し、ここで、該ポリペプチドまたは該核酸は、本明細書に記載の腫瘍内送達のために調製される。本発明はまた、対象における免疫応答の標的として腫瘍をマーキングする方法を提供し該方法は、以下の工程を含む:本明細書に記載の腫瘍内送達のために調製される、腫瘍に罹患している対象に薬学的に有効量の非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を投与する工程。好ましくは、腫瘍内送達のために調製された該非ヒトポリペプチドまたは該核酸は、腫瘍内投与用であり、該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする該核酸を含む樹状細胞、好ましくは本明細書に記載の細胞株DCOneの細胞から得られた樹状細胞である。同様に、本発明は、対象における免疫応答の標的として腫瘍をマーキングする際に用いるための、本明細書に記載の非ヒトポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含む樹状細胞、好ましくは本明細書に記載の細胞株DCOneの細胞から得られた樹状細胞を提供し、ここで、該樹状細胞は、腫瘍内投与用である。本発明はまた、医薬としての使用のための、好ましくは腫瘍ワクチン、腫瘍マーキングもしくは腫瘍の処置に用いるための、本明細書に記載の非ヒトポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含む樹状細胞、好ましくは本明細書に記載の細胞株DCOneの細胞から得られた樹状細胞を提供し、ここで、該樹状細胞は、腫瘍内投与用である。
本発明はまた、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発する際に用いるための、非ヒト抗原性ポリペプチドを免疫原として含むか、または該免疫原をコードする核酸を含む免疫原性組成物を提供し、ここで、該対象は、本明細書に記載の腫瘍内送達用に調製された該非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の投与後、免疫応答の標的としてマークされた腫瘍を有している。好ましくは、(i)腫瘍内送達のために調製されたポリペプチド/核酸、(ii)免疫原性組成物、および(iii)医学的用途は、本発明の組合せ製品について定義されている通りである。
本発明はまた、腫瘍の処置における使用のための、本発明による使用のための組合せ製品を提供する。
本発明はまた、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発するための組合せ製品の製造のための、好ましくは腫瘍に罹患している対象を処置するための、本明細書に記載の腫瘍内送達のために調製された非ヒト抗原性ポリペプチドおよび/または本明細書に記載の免疫原性組成物の使用を提供する。好ましくは、(i)腫瘍内送達のために調製されたポリペプチド/核酸、(ii)免疫原性組成物、および(iii)医学的用途は、本発明の組合せ製品について定義されている通りである。
本発明はまた、腫瘍に罹患している対象に対して免疫応答を誘発する方法を提供し、この方法は、腫瘍に罹患している対象に、腫瘍内送達のために調製された、薬学的に有効量の非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を投与する工程;および、該対象に、薬学的に有効量の、免疫原として該ポリペプチドまたは該免疫原をコードする核酸を含み、要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含んでいてもよい、免疫原性組成物を投与することを含む工程、を含む。好ましくは、(i)腫瘍内送達のために調製されたポリペプチド/核酸、(ii)免疫原性組成物、および(iii)医学的用途は、本発明の組合せ製品について定義されている通りである。
好ましくは、かかる方法は、腫瘍内送達のために調製された、該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする該核酸の腫瘍内送達後、該ポリペプチドからMHCペプチド抗原複合体を産生することを可能にする工程をさらに含む。
好ましくは、本発明のそのような方法において、該免疫原性組成物は、該腫瘍内ポリペプチドに対するT細胞介在性免疫応答、好ましくは該MHCペプチド抗原複合体に対するT細胞介在性免疫応答を誘発する。
本発明はまた、腫瘍に罹患している対象に、腫瘍内送達のために調製された、非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の薬学的に有効量を投与する工程を含む、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発または指示する方法を提供し、ここで、該対象は、該ポリペプチドを免疫原として含むか、または該免疫原をコードする核酸を含む免疫原性組成物、および要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤でワクチン接種される。この面において、対象は、本明細書に記載の免疫原性組成物で既にワクチン接種されており、その後の腫瘍のマーキングは、該腫瘍に対して誘発された免疫応答を指示することを可能にする。好ましくは、(i)腫瘍内送達のために調製されたポリペプチド/核酸、(ii)免疫原性組成物、および(iii)医学的用途は、本発明の組合せ製品について定義された通りである。
本発明はまた、腫瘍に罹患している対象に、免疫原として非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該免疫原をコードする核酸を含み、要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含む免疫原性組成物の薬学的に有効量を投与する工程を含む、態様の腫瘍に対する免疫応答を誘発する方法を提供し、ここで、該対象は、腫瘍内送達のために調製した、該非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を投与される。この面において、対象は、本明細書に記載の免疫応答の標的としてマークされた腫瘍を有する。その後のワクチン接種は、既にマークされた腫瘍に向けられた免疫応答の誘発を可能にする。好ましくは、(i)腫瘍内送達のために調製されたポリペプチド/核酸、(ii)免疫原性組成物、および(iii)医学的用途は、本発明の組合せ製品について定義されている通りである。
本発明はまた、腫瘍を罹患している対象に薬学的に有効量の本明細書に記載の組合せ製品を投与することを含む、腫瘍に罹患している対象を処置するための方法を提供し、ここで、この組合せ製品は、別個に、逐次に、同時に(simultaneous)、一挙に(concurrent)または経時的に交互に投与するためのものである。
本明細書に記載の医学的使用において、それぞれの成分の投与は、薬学的に有効量または用量である。
本明細書で用いる用語“薬学的に有効な量”は、所望の効果を達成するために、必要な投与量および期間での、有効な量を意味する。例えば、腫瘍内送達のために調製される、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドの所望の効果は、免疫応答の標的として腫瘍をマーキングすることである。例えば、本明細書に記載の免疫原性組成物の所望の効果は、該免疫応答の標的としてマーキングされる、対象における腫瘍に対する免疫応答の誘発である。
明確化および簡潔な説明の目的で、特徴は、同じかまたは別個の面およびその好ましい態様の一部として本明細書に記載されるが、本発明の範囲は、記載される特徴の全てまたはいくつかの組み合わせを有する態様を含み得ることが理解される。例えば、ポリペプチドに関する態様はまた、そのようなポリペプチドをコードする核酸にも適用されてよく、逆もまた同様である。同じことが、例えば、使用のための製品、使用および方法形式で定義された医学的用途に関連する態様にも適用される。さらに、説明は、特許請求の範囲にも記載されている特徴の態様の形態で詳細を提供するとき、とりわけ、そのような態様が、請求項に関連して記載されることが理解されるべきである。
本明細書で言及される文献の内容は、引用により本明細書中に包含される。
図1.4時間後および24時間後の、DCOne mDC(n=3)によるサブユニットKLHタンパク質の取り込み(A)およびOV90卵巣癌細胞(n=2)の標識化(B)。0.08%トリパンブルー(TB)を添加して、細胞外結合サブユニットKLH−FITCをクエンチし、細胞内サブユニットKLH−FITCの割合を視覚化した。 図2.4時間後および24時間後の、DCOne mDC(n=3)によるβ−ガラクトシダーゼタンパク質の取り込み(A)およびOV90卵巣癌細胞(n=2)の標識化(B)。0.08%トリパンブルーを添加して、細胞外結合β−ガラクトシダーゼ−FITCをクエンチし、細胞内β−ガラクトシダーゼ−FITCの割合を視覚化した。 図3.4時間後および24時間後の、DCOne mDC(n=2)によるCRM197タンパク質の取り込み(A)およびOV90卵巣癌細胞(n=2)の標識化(B)。0.08%トリパンブルー(TB)を添加して、細胞外結合CRM197−Alexa488をクエンチし、細胞内CRM197−Alexa488の割合を視覚化した。 図4.ヒト化U87−MG膠芽腫モデルにおける、腫瘍増殖阻害。 図5.ヒト化A375黒色腫モデルにおける、腫瘍増殖阻害。 図6.経時的なマウス血清中の抗KLH IgGおよびIgMレベル。抗KLH IgMおよび抗KLH IgM濃度(UI/mL)は、D0、D14および屠殺時に採取したマウスの血清でElisa検定を用いて測定した。1群当たり5匹のマウス。グラフは、1群毎の抗KLH IgGおよびIgMの個々のデータを表している((A)は神経膠芽腫群、(B)は黒色腫群)。ダネット(Dunnet)の多重比較検定を用いた双方向ANOVAを用いた(* vsビークル群、* <0.05、** <0.01、*** <0.001、**** <0.0001)。
配列表
Figure 2021531345

Figure 2021531345

Figure 2021531345
実施例
材料および方法
DCOne成熟樹状細胞(mDC)の作製
DCOne前駆細胞(2012年11月15日に受託番号DSMZ ACC3189でDSMZに寄託された細胞)を、WO2009019320 A2に記載の方法により分化および成熟化させた。細胞を計数し、DCOne mDC細胞の表現型分析をフローサイトメトリーを用いて行った(FACSVerse; BDBiosciences)。
卵巣癌細胞の培養
OV90卵巣癌細胞を、15% FBSおよび2% P/Sを含むmedium199/MCDB105培地(1:1)中、37℃にて5% COでインキュベーター中で培養した。OV90細胞はATCCから得た。
DCOne mDCによる外来抗原の取り込み
DCOne mDCによる取り込みを、成熟中の4時間および24時間、終濃度10μg/mLの3つの異なる外来抗原について評価した。750,000細胞を、各条件の6ウェルプエートに播種した。用いる抗原は、CRM197−Alexa488、サブユニットKLH−FITCおよびβ−ガラクトシダーゼ−FITCであった。CRM197−Alexa488はFina Biosolutionsから購入した。サブユニットKLHはStellar Biotechnologies Incから購入した。β−ガラクトシダーゼをRocheから購入した。サブユニットKLHおよびβ−ガラクトシダーゼを、製造者プロトコールによりフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識キットを用いて、試験室内で蛍光色素FITCに結合させた。外来抗原の取り込みをフローサイトメトリーにより評価した。0.08%トリパンブルーを用いて、外部に結合したタンパク質をクエンチし、内在化したタンパク質のみを視覚化した。
外来抗原による腫瘍細胞の標識
OV90卵巣癌細胞の標識を、4時間および24時間、終濃度10μg/mLの3つの異なる外来タンパク質について評価した。100,000細胞を、各条件の96ウェルプエートに播種した。用いるタンパク質は、CRM197−Alexa488、サブユニットKLH−FITCおよびβ−ガラクトシダーゼ−FITCであった。インビトロでの腫瘍細胞の標識は、DCOne mDCsについて上記のようにフローサイトメトリーにより評価した。
ヒト化U87−MG神経膠芽腫マウスモデル
4週齢の免疫不全メスNOD/Shi−scid/IL−2Rγnull免疫不全マウス株(NCG;Taconic)に、骨髄機能廃絶化学療法(chemical myeloablative treatment)の2日後、5e4臍帯血由来CD34+造血幹細胞および前駆細胞(French Blood Bank)を静脈内(IV)注射で移植した。ヒト化マウスを、GM−CSF/IL3/IL4 流体ブーストおよびFlt3L組換えタンパク質で樹状細胞集団を増強させた。7日後、腫瘍生着のためにマウス右脇腹に1e U87−MG膠芽腫細胞/マウス(Sigma Aldrich)を皮下注射した。腫瘍生着の15日後、マウスを無作為化し、1群当たり5匹のマウスを含む異なるワクチン接種群に分けた。全てのマウスは、腹腔内(i.p.)ワクチン接種1回および腫瘍をマーキングするため腫瘍内(i.t.)注射1回を受けた。
マウスは、以下のスケジュールで、腹腔内(i.p.)投与当たり100μg KLHまたは100μl PBSのi.p投与を受け、200,000 KLHを添加したDCOne mDCsまたは50μl中、100μg KLHをi.t.注射した:
群1(PBS/KLH)は、PBSワクチン接種の腹腔内(i.p.)投与1回(無作為化の1日後)、およびKLHによる腫瘍内(i.t.)注射1回(無作為化の8日後)を受けた。
群2(KLH/KLH)は、KLHワクチン接種のi.p.投与1回(無作為化の1日後)、およびKLHによるi.t.注射1回(無作為化の8日後)を受けた。
群3(PBS/KLH添加DCOne)は、PBSワクチン接種のi.p.投与1回(無作為化の1日後)、およびKLH添加DCOne mDC によるi.t.注射1回(無作為化の8日後)を受けた。
群4(KLH/KLH添加DCOne)は、KLHワクチン接種のi.p.投与1回(無作為化の1日後)、およびKLH添加DCOne mDC によるi.t.注射1回(無作為化の8日後)を受けた。
サブユニットKLHは、Stellar Biotechnologies Incから購入した。腫瘍増殖の減少および免疫応答の誘導を測定した。
ヒト化A375黒色腫モデルマウス
上記のようにCD34幹細胞でヒト化し、およびサイトカインで流体ブーストを行った後、腫瘍生着のために、マウスの右脇腹に2e A375黒色腫細胞/マウス(Sigma Aldrich)を皮下接種した。腫瘍生着の15日後、マウスを無作為化し、1群当たり5匹のマウスを含む異なるワクチン接種群に分けた。マウスは、腹腔内(i.p.)ワクチン接種2回および腫瘍をマーキングするため腫瘍内(i.t.)注射1回を受けた。
マウスは、以下のスケジュールで、腹腔内(i.p.)投与当たり100μl中、100μg KLHまたは100μl PBSのi.p投与を受け、200,000 KLHを添加したDCOne mDCsまたは50μl中、100μg KLHをi.t.注射した:
群1(PBS/KLH)は、PBSワクチン接種の腹腔内(i.p.)投与2回(無作為化の1日後および8日後)、およびKLHによる腫瘍内(i.t.)注射1回(無作為化の15日後)を受けた。
群2(KLH/KLH)は、KLHワクチン接種のi.p.投与2回(無作為化の1日後及び8日後)、およびKLHによるi.t.注射1回(無作為化の15日後)を受けた。
群3(PBS/KLH添加DCOne)は、PBSワクチン接種のi.p.投与2回(無作為化の1日後および8日後)、およびKLH添加DCOne mDC によるi.t.注射1回(無作為化の15日後)を受けた。
群4(KLH/KLH添加DCOne)は、KLHワクチン接種のi.p.投与2回(無作為化の1日後および8日後)、およびKLH添加DCOne mDC によるi.t.注射1回(無作為化の15日後)を受けた。
サブユニットKLHをStellar Biotechnologies Incから購入した。腫瘍増殖の減少およびワクチン接種により誘発された免疫応答を測定した。
実施例1.外来タンパク質の取り込み
DCOne mDCによるサブユニットKLH−FITCの取り込み
DCOne mDCに、材料および方法セクションに記載の通り、4時間および24時間、成熟プロセス中に蛍光色素結合サブユニットKLHを添加した。サブユニットKLHの内在化を、フローサイトメトリーを用いて分析した。トリパンブルーは、細胞表面結合抗原をクエンチし、表面結合抗原と内在化抗原を区別するために用いた。4時間後のDCOnemDCによるサブユニットKLH−FITCの観察された内在化は、54.6±8.8%であり、トリパンブルーで49.9±9.8%であり、24時間後に86.1±7.0%であり、トリパンブルーで81.7±8.0%であって、これらはDCOne mDCによる効果的な抗原取り込みを示している(図1A)。
サブユニットKLHでのOV90腫瘍細胞の標識化
OV90卵巣癌腫細胞を、材料および方法セクションに記載の通り、4時間および24時間、サブユニットKLH−FITCと共に培養した。本発明者らは、表面結合サブユニットKLH−FITCシグナルをトリパンブルーで消光することで示されるように、4時間後に、OV90細胞の13.5±2.6%が標識され、細胞内抗原を有する細胞では7.5±1.0%であり、24時間後には、OV90細胞の16.5±11.5%が標識され、細胞内抗原を有する細胞では9.5±3.8%が標識された(図1B)。
DCOne mDCによるβ−ガラクトシダーゼ−FITCの取り込み
DCOne mDCを、材料および方法セクションに記載のように、β−ガラクトシダーゼ−FITCと共に4時間および24時間インキュベートした。β−ガラクトシダーゼ−FITCの取り込みを、細胞外で結合したβ−ガラクトシダーゼ−FITCと内在化β−ガラクトシダーゼ−FITCを区別するために、トリパンブルーの不存在下または存在下でフローサイトメトリーを用いて測定した。図2Aは、トリパンブルーの消光がシグナルにほとんど影響を与えなかった(34.5±10.2%)ため、4時間のインキュベーション後、DCOne mDCの39.7±10.7%がβ−ガラクトシダーゼ−FITCを内在化していることを示し、DCOne mDC中β−ガラクトシダーゼ−FITCの細胞内局在が示唆された。DCOne mDCによるβ−ガラクトシダーゼ−FITCの内在化は、24時間後に57.6±10.2%、トリパンブルーによる内在化は49.9±13.0%であり、細胞内β−ガラクトシダーゼ−FITCの内在化が示唆された。
β−ガラクトシダーゼ−FITCによるOV90の標識化
卵巣癌細胞株OV−90を、4時間後および24時間後にβ−ガラクトシダーゼ−FITCで標識したところ、それぞれ11.3±8.9%(トリパンブルーで6.0±4.6%)および10.4±4.2%(トリパンブルーで6.5±3.6%)であり、β−ガラクトシダーゼ−FITCの表面結合および細胞内存在の両方を示した(図2B)。
DCOne mDCによるCRM197の取り込み
成熟プロセス中、DCOne mDCを、材料および方法セクションに記載のように、CRM197−Alexa488と共に4時間および24時間培養した。4時間および24時間後、DCOne mDCによる抗原CRM−197の取り込みを、上記のセクションで記載の通り、トリパンブルーの存在および不存在下でフローサイトメトリーを用いて分析した。本発明者らは、DCOne mDCの90.6±5.4%および99.4±0.1%が、それぞれ4時間および24時間後、効率的な内在化CRM−197を有し、トリパンブルー消光は結果に影響しなかった(それぞれ87.6±8.0%および99.5±0.2%;図3A)ことを観察した。
CRM197によるOV90腫瘍細胞の標識化
OV90腫瘍細胞による4時間後のCRM197−Alexa488の取り込みの割合は、82.0±2.5%であり、24時間後の標識は、98.2±0.1%まで増加した(図3B)。トリパンブルー消光は、シグナルに影響を与えず、これはCRM−197が主に、細胞内に存在することを示唆している(それぞれ4時間後および24時間後に、トリパンブルーで72.7±11.9%および97.6±1.4%)。
DCOne mDCによる外来タンパク質の取り込みのインビボデータは、DCOne mDCが外来タンパク質の内在化に非常に効率的であることを示した。試験した全ての外来タンパク質、CRM197、KLHおよびβ−ガラクトシダーゼは、DCOne mDCによって非常によく取り込まれる。従って、DCOne細胞は、ワクチン接種および/または外来タンパク質の腫瘍内送達のための担体として用いることができる。
卵巣癌細胞による外来タンパク質の取り込みのデータは、卵巣癌細胞が、DCOne細胞と比べて、外来タンパク質の内在化においてより特異的であることを示した。文献に記載されているように(例えば Miyamoto et al. Cancer Sci, 97(5):341-7 (2006))、ジプテリア毒素/CRM197に対する特異的なHB−EGF受容体の存在により、腫瘍細胞では受容体介在性エンドサイトーシスによりCRM197が非常に効率的に取り込まれるが(Moya et al. J Cell Biol, 101(2):548-59 (1985))、KLHおよびβ−ガラクトシダーゼの取り込みは低い。これらの知見は、腫瘍が外来タンパク質によってマークされ得ることを示している。これは、とりわけCRM197についての場合であり、したがって、CRM197に結合した他の外来タンパク質を腫瘍マーキングのための担体として用い得る可能性がある。
実施例2.ヒト化U87−MG神経膠芽腫マウスモデルおよびヒト化A375黒色腫マウスモデルにおける腫瘍増殖阻害
U87−MGマウスは、PBSまたはKLHのいずれかのi.p.ワクチン接種1回およびKLHまたはKLH添加DCOne mDCのいずれかで腫瘍をマークするためのi.t.注射1回を受けた。腫瘍増殖を、デジタルノギスを用いて週に3回モニターした。腫瘍体積(mm3)を、以下の式に従って計算した:体積=(幅×長さ^2)/2。本発明者らは、18日目に、PBSを注射したマウスと比べて、ワクチン接種したマウスの腫瘍増殖が遅くなったことを観察し、KLH添加DCOneのi.t.注射が最も強い効果を示した(図4)。
A375黒色腫マウスは、PBSまたはKLHのいずれかの2回のi.p.ワクチン接種、およびKLHまたはKLH添加DCOne mDCのいずれかで腫瘍をマークするための1回のi.t.注射を受けた。腫瘍増殖を、デジタルノギスを用いて週に3回モニターした。腫瘍体積(mm3)は、以下の式に従って計算した:体積=(幅×長さ^2)/2。U87−MGマウスと同様に、我々は、ワクチン接種したマウス群が、PBSを注射した群と比較して腫瘍増殖が遅くなったことを観察した(図5)。この効果は、KLH/KLHを添加したDCOneで処理したマウスで最も強かった。
ヒト化マウスにおけるこれらのインビボデータは、ワクチン接種に続いて腫瘍内注射(腫瘍マーキング)を行うと、特にDCOne mDCを担体として用いて腫瘍マーキングを行ったときに、2つの別個の固形腫瘍モデルにおいて腫瘍増殖が遅くなることを示している。統計的に有意ではなかったが、腫瘍増殖の遅延傾向は、2つの別個の固形腫瘍モデルにおいて一貫していた。
実施例3.T細胞介在性KLH特異的抗体産生
腫瘍内注射および/またはワクチン接種に起因するKLHに対する可能性のある抗体反応をELISAにより定量した(D0、D14および屠殺)。U87−MGマウスおよびA375マウスにおいて、処置群とPBS対照群との間で、抗KLH IgM濃度に関して経時的に有意差がないことが観察された。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、KLH/KLH添加DCOne群のマウスが、屠殺時にPBS対照群よりも有意に多くの抗KLH IgMを産生していることが観察された(図6)。これは、T細胞依存性のIgMからIgGへのスイッチを示唆している(Geha et al., NEJM, 330:1008-1009 (1994))。

Claims (33)

  1. 対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発するために用いるための組合せ製品であって、該組合せ製品が、
    ・免疫原として非ヒト抗原性ポリペプチドを含むか、または該免疫原をコードする核酸を含む免疫原性組成物、および要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤;ならびに
    ・該非ヒト抗原性ポリペプチド、または該ポリペプチドをコードする核酸
    を含み、ここで、該ポリペプチドまたは核酸が、腫瘍内送達のために調製されている、
    組合せ製品。
  2. 腫瘍内送達のために調製されるポリペプチドまたは核酸が、腫瘍内送達後の免疫応答の標的として腫瘍をマーキングする、請求項1に記載の組合せ製品。
  3. 組合せ製品が、免疫応答の標的としてマーキングされている腫瘍に対する該免疫応答を誘発するために用いるためのものである、請求項1または2に記載の組合せ製品。
  4. 免疫応答がT細胞介在性免疫応答である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  5. 腫瘍内送達のために調製されるポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸が、腫瘍を標的とするか、または腫瘍内投与のために調製されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  6. ポリペプチドが腫瘍抗原ではない、請求項1から5のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  7. ポリペプチドが、微生物ポリペプチドなどの非哺乳動物ポリペプチド、または合成ポリペプチドである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  8. ポリペプチドが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、β−ガラクトシダーゼ、増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)を含む緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼおよびジフテリア毒素、好ましくはCRM−197からなる群より選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  9. ポリペプチドが、対象の以前のワクチン接種に用いられた微生物ポリペプチドであり、好ましくは、該以前のワクチン接種が感染症に対するものであり、より好ましくは、該以前のワクチン接種がA型肝炎および/またはB型肝炎;ジフテリア;破傷風;百日咳;インフルエンザ;インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae type b);ポリオ;麻疹;おたふくかぜ;風疹;水痘、ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌、髄膜炎ナイセリアまたはロタウイルスに対するものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  10. ポリペプチドが、A型肝炎ウイルス由来のVP3;破傷風菌由来の破傷風毒素;百日咳菌由来の百日咳毒素;インフルエンザ菌由来のプロテインD;ポリオウイルス由来のVp1キャプシドタンパク質;麻疹ウイルス由来のヘマグルチニン;ムンプスウイルス由来のヌクレオタンパク質;風疹ウイルス由来の糖タンパク質E1またはE2;水痘帯状疱疹ウイルス由来の即時初期62(IE62)タンパク質;HPV16またはHPV18由来のE6またはE7タンパク質;Spr96/2021、PV7(7価)および/またはPV13(13価);髄膜炎菌由来のナイセリアヘパリン結合抗原(NHBA)、第H因子結合タンパク質(fHbp)またはナイセリアアドへシンA(nadA);ロタウイルス由来のVP8またはVP6;ならびに、コリネバクテリウムジフテリア由来のジフテリア毒素からなる群より選択される、請求項1から7および9のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  11. 腫瘍内送達のために調製されるポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸が、
    ・該ポリペプチドをコードする核酸を含む、腫瘍溶解性ウイルスを含む腫瘍特異的ウイルス;および/または
    ・該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含む腫瘍特異的ナノ粒子
    の1以上を用いることにより腫瘍標的化されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  12. 腫瘍内送達のために調製されるポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸が、腫瘍内投与用であり、かつ、
    ・該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含む樹状細胞;
    ・該ポリペプチドを含む水性懸濁液または溶液;および/または
    ・該ポリペプチドをコードする核酸を含むウイルス
    から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  13. 腫瘍内送達のために調製されるポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸が、腫瘍内投与用であり、かつ該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含む樹状細胞であり、ここで、好ましくは、該樹状細胞が、2012年11月15日にDSMZに寄託された受託番号DSMZ ACC3189の細胞株DCOneの細胞から得られた成熟樹状細胞であり、該成熟樹状細胞が、該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含む成熟樹状細胞である、請求項12に記載の組合せ製品。
  14. 腫瘍内送達のために調製された該ポリペプチドが、第2のタンパク質に連結された第1のタンパク質を含む融合タンパク質またはタンパク質−タンパク質接合体である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組合せ製品であって、ここで、該第1のタンパク質が、ジフテリア毒素またはジフテリア毒素の受容体結合ドメインを含み、該第2のタンパク質が、非ヒト抗原性ポリペプチド、好ましくは、ジフテリア毒素ではない非ヒト抗原性ポリペプチド、より好ましくは、請求項8から10のいずれか一項に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドを含む、組合せ製品。
  15. 免疫原性組成物が、
    ・該免疫原を含む樹状細胞または該免疫原をコードする核酸;
    ・T細胞免疫応答誘発性アジュバント;
    ・該免疫原または該免疫原をコードする核酸を含むT細胞免疫応答誘発ウイルスもしくはウイルス様粒子、または
    ・それらの組合せ
    を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  16. 免疫原性組成物が、ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含む樹状細胞を含み、ここで、好ましくは、該樹状細胞が、2012年11月15日にDSMZに受託された受託番号DSMZ ACC3189の細胞株DCOneの細胞から得られた成熟樹状細胞である、請求項15に記載の組合せ製品。
  17. 腫瘍内送達のために調製されている非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸が、少なくとも部分的に免疫寛容な腫瘍微小環境(TME)を免疫感受性のTMEに変換する、免疫調節ポリペプチドまたは該免疫調節ポリペプチドをコードする核酸も含む組成物中にあり、ここで、好ましくは、該免疫調節ポリペプチドが、GM−CSF、CCR5、XCL1もしくはCCL20であるか、またはそれらをコードする核酸である、請求項1から16のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  18. 組合せ製品が、別個に、逐次に、同時に、一挙に、または経時的に投与するためのものである、請求項1から17のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  19. 腫瘍内送達のために調製されるポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸、および免疫原性組成物が、逐次投与用であり、かつ、腫瘍内送達のために調製されるポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸が、前記免疫原性組成物の投与後の投与用である、請求項1から18のいずれか一項に記載の組合せ製品。
  20. 対象における腫瘍に対する免疫応答を誘発または誘導するために用いるための、非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸であって、ここで、該ポリペプチドまたは該核酸が、腫瘍内送達のために調製され、該対象が、免疫原として該ポリペプチドを含むか、または該免疫原をコードする核酸を含む免疫原性組成物、および要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤でワクチン接種される、非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸。
  21. 腫瘍内送達のために調製されるポリペプチドまたは該核酸が、該腫瘍内送達後の免疫応答の標的としてマークされる、請求項20に記載の非ヒト抗原性ポリペプチド。
  22. 非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の腫瘍内送達後の免疫応答が、該腫瘍に対して特異的に指向される、請求項20または21に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドまたは核酸。
  23. 対象における免疫応答の標的として腫瘍をマーキングするために用いるための、非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含む樹状細胞であって、ここで、前記樹状細胞が腫瘍内投与のためのものである、樹状細胞。
  24. 第2のタンパク質に連結された第1のタンパク質含む融合タンパク質またはタンパク質−タンパク質接合体であって、ここで、該第1のタンパク質が、ジフテリア毒素またはジフテリア毒素の受容体結合ドメインを含み、該第2のタンパク質が、非ヒト抗原性ポリペプチドを含む、融合タンパク質またはタンパク質−タンパク質接合体。
  25. 第1のタンパク質がジフテリア毒素の受容体結合ドメインからなる、請求項24に記載の融合タンパク質または複合体。
  26. 非ヒト抗原性ポリペプチドが、請求項8から10のいずれか一項に記載のポリペプチドである、請求項24または25に記載の融合タンパク質または複合体。
  27. 請求項24から26のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
  28. 医薬として使用するための、好ましくは、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発または誘導する方法で用いるための、請求項24から26のいずれか一項に記載の融合タンパク質もしくは複合体、または請求項27に記載の核酸。
  29. 対象が、免疫原として該融合タンパク質、複合体または該第2のタンパク質を含むか、または該免疫原をコードする核酸を含み、要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含んでいてもよい、免疫原性組成物でワクチン接種される、請求項28に記載の融合タンパク質、複合体または核酸。
  30. 腫瘍に罹患している対象に対して免疫応答を誘発する方法であって、
    ・腫瘍に罹患している対象に、腫瘍内送達のために調製された非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の薬学的に有効な量を投与する工程;および
    ・該対象に、免疫原として該ポリペプチドを含むか、または該免疫原をコードする核酸を含み、要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含む免疫原性組成物の薬学的に有効な量を投与する工程
    を含む、方法。
  31. 腫瘍内送達のために調製されるポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を腫瘍内送達後に、該ポリペプチドからMHCペプチド抗原複合体を産生することを可能にする工程
    をさらに含む、請求項30に記載の方法。
  32. 免疫原性組成物が、腫瘍内ポリペプチドに対する免疫応答、好ましくはMHCペプチド抗原複合体に対するT細胞介在性免疫応答を誘発する、請求項30または31に記載の方法。
  33. 腫瘍に罹患している対象を処置する方法であって、
    腫瘍に罹患している対象に、請求項1から17のいずれか一項に記載の組合せ製品の薬学的に有効な量を投与する工程を含み、ここで、該組合せ製品が、同時、個別または逐次投与される、方法。
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