JP2004523494A6 - 低免疫原性抗原の免疫原性を増強する医薬組成物 - Google Patents

低免疫原性抗原の免疫原性を増強する医薬組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2004523494A6
JP2004523494A6 JP2002547529A JP2002547529A JP2004523494A6 JP 2004523494 A6 JP2004523494 A6 JP 2004523494A6 JP 2002547529 A JP2002547529 A JP 2002547529A JP 2002547529 A JP2002547529 A JP 2002547529A JP 2004523494 A6 JP2004523494 A6 JP 2004523494A6
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pharmaceutical composition
composition according
vssp
antigen
ganglioside
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2002547529A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2004523494A5 (ja
JP4210519B2 (ja
JP2004523494A (ja
Inventor
モリーナ、ルイス、エンリケ フェルナンデス
ラミレス、ベリンダ サンチェス
ペスターナ、エデュアルド、ラウル スアレス
ラ バルベラ アイラ、アナベル デ
パルデーロ、シルセ メサ
レオン デルガド、ホエル デ
ロドリゲス、イルディアン ディアス
ロドリゲス、ロランド ペレス
Original Assignee
セントロ ド インムノロジア モレキュラー
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from CU20000285A external-priority patent/CU23000A1/es
Priority claimed from CU20010167A external-priority patent/CU23009A1/es
Application filed by セントロ ド インムノロジア モレキュラー filed Critical セントロ ド インムノロジア モレキュラー
Priority claimed from PCT/CU2001/000010 external-priority patent/WO2002045746A2/es
Publication of JP2004523494A publication Critical patent/JP2004523494A/ja
Publication of JP2004523494A5 publication Critical patent/JP2004523494A5/ja
Publication of JP2004523494A6 publication Critical patent/JP2004523494A6/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4210519B2 publication Critical patent/JP4210519B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Abstract

本発明は免疫学の分野に関するものであり、より具体的にはペプチド、ポリペプチド、蛋白、およびそれに対応する配列のDNA、細胞またはその溶解産物、および極小サイズプロテオリポソーム(VSSP)に関連するものである。VSSPは、疎水結合によってNeisseria meningitidisの外膜蛋白複合体(CPME)にガングリオシドを結合させて調製する。特に本発明は、ガンあるいは慢性のウイルスもしくは細菌感染症の患者など免疫抑制状態にある宿主においてさえも抗原特異的な免疫反応を誘発し得る当該免疫刺激製剤を作成する方法を提示する。本発明で開示したワクチン組成物をこのような患者に投与することによって、彼らの免疫系の機能を回復することが可能である。本発明で開示したワクチン組成物は、感染性、悪性、あるいは自己免疫による疾患を予防もしくは治療するために利用することができる。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト医薬品に関するものであり、特に、感染性および自己免疫性の疾患、並びにガンを防ぐための予防用および/または治療用のワクチンに関するものである。特に、本発明は、免疫原性の低い抗原に対する免疫反応を誘発、または増強するためのワクチン組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンを使用した感染性疾患、ガン、および自己免疫疾患の予防および治療が現時点であまり成功していないのには種々の理由がある。主な理由は、当該抗原の免疫原性が低い、免疫系の制御をコントロールする方法を知らない、そして病原体および腫瘍の回避戦略であり、とりわけ宿主の免疫抑制である。
【0003】
従来、免疫原性の低い抗原が、腫瘍および正常組織中に存在し、或いは免疫系による作用を回避することによって慢性の感染症を引き起こす病原体に関連する、ペプチド、ポリペプチド、および蛋白(または、それらに対応するDNA配列)であることがよく知られている。
【0004】
免疫原性の低い抗原の中で、チロシン残基中のキナーゼ活性を有する増殖因子レセプターは、腫瘍の発生および腫瘍の転移と密接な関連を持つことが示されており、いくつかの症例では、ガンにおける予後不良の指標として有用であることが示されている。例として、HER-1としても知られる上皮増殖因子レセプター(EGF-R)、上皮増殖因子レセプター2(HER-2)、および血小板由来増殖因子レセプター(PDGF-R)等のレセプターが挙げられる。
【0005】
主として上皮由来のある種の腫瘍形成におけるこれらレセプターの過剰発現は、ガン免疫療法の標的となっている。例えば乳ガン、膀胱ガン、卵巣ガン、外陰ガン、結腸ガン、肺ガン、脳腫瘍、前立腺ガン、および頭頸部ガンの場合である。EGF-Rの存在は、乳ガンにおける予後不良の指標であることが証明されている(PerezRら1984、Breast Cancer and Treatment 4:189−193)。腫瘍増殖の制御におけるEGF/EGF-Rシステムの役割についてはまだ解明されていないが、腫瘍細胞におけるEGF-Rの発現が自己分泌刺激のための機序となり、これらの細胞の異常な増殖を引き起こすことが示唆されている。(Schlessinger Jら(1983) Crit Rev Biochem 14(2):93−111)。
【0006】
上皮増殖因子レセプターは、腫瘍において多量に発現されているため、そのまま、あるいは薬剤、毒素もしくは放射性同位元素と結合させたモノクローナル抗体による、受動免疫療法(PI)の標的となっている(Vollmar AMら(1987)J Cell Physiol 131:418−425)。モノクローナル抗体(MAb)を用いたいくつかの臨床試験が実施中であり、Mab C225を用いた乳ガン、膵臓細胞および腎細胞におけるフェーズII臨床試験、頭頸部ガンにおけるフェーズIII臨床試験など、有望な結果を示しているものもある(Mendelsohn Jら(1999)American Society of Clinical Oncology Meeting)。良好な結果を示している別のフェーズII臨床試験として、頭頸部腫瘍において実施したMAb IOR egf/r3の臨床試験がある(Crombet Tら(2000)Cancer Biotherapy and Biopharmaceutical、受理済み原稿)。
【0007】
一方、EGF-Rを標的として用いる特異的能動免疫療法(SAI)は、EGF-Rの自己分子としての低い免疫原性、および組織中での広い発現のために、いまだ開発されておらず、この問題が、免疫学者たちにこの選択肢を考慮することを妨げてきた(Disis ML、及びCheever MA(1996)Current Opinion in Immunology 8:637−642)。PIは、免疫反応の特異的細胞エフェクター経路を活性化せず、その効果は使用する抗体の半減期に依存するため、目的とする効果を得るためには一般に連続的な再輸液が必要であることから、SAIの方がPIよりも有利である。
【0008】
有効なワクチンを開発するためには、キャリアおよびアジュバントを利用して免疫系を適切に制御することにより当該抗原の低免疫原性を克服し、病原体および腫瘍の回避戦略を、共同して阻害する必要がある。このため、現時点では新しいキャリアおよびアジュバントシステムを探索することが重要な研究課題である。
【0009】
近年、免疫系の制御に関する新たな理論および知識が得られたため、より有効なキャリアおよびアジュバントを開発するための新しい実験分野が開拓された。Fearonら(Science、272巻、50-53ページ、1996)は、生体防御としての免疫は、先天免疫と後天免疫という2つの重要な免疫系の相互作用の結果である、と述べた。後天免疫に関与する細胞は、免疫反応を必要とする構造と必要としない構造とを識別することができないため、先天免疫系の細胞に教えてもらう必要がある。先天免疫と後天免疫との間に必須の連携は、抗原提示細胞(APC)によって提供され、中でも樹状細胞(DC)は、一次および2次DC共に免疫反応を最も効率よく誘発する誘導因子である。特に、DCは処女Tリンパ球を活性化し得る唯一のAPCであるため、非常に重要である。
【0010】
最近、先天免疫に関与する分子が同定されており、新世代のキャリアおよびアジュバントとみなされる可能性がある。何故なら、これらの分子はDCを成熟させ、それに結合する抗原の交差提示を媒介することができるからである。
【0011】
この点に関して、最新分野で一連の研究が行われている。Giroir(Crit.Care Med.、5巻、780-789ページ、1993)、Cellaら(Nature、388巻、782−787ページ、1997)およびHailmanら(J.Exp.Med.、79巻、269−277、1994)は、リポ多糖類(LPS)と先天免疫認識システムとの間の相互作用が最も強力であり、単球、マクロファージ、および好中球におけるサイトカインおよび前炎症伝達物質の産生を促進することによって粘着分子の発現をさらに増加させる、と述べている。これらの炎症性サイトカインは、感染症および腫瘍に対する反応において非常に重要であるが、これらが過剰に分泌されると敗血症性ショックを引き起こし、患者にとって致命的となりかねないため、LPSをワクチンのアジュバントとして使用することはできない。この反応は、LPSとリポ多糖結合蛋白(LBP)と呼ばれる結合蛋白との間に形成される複合体によって媒介され、この複合体は次にCD14分子と相互作用する。この分子は、LPSがTollレセプター(TLR)と呼ばれるシグナル分子と相互作用するのを助ける。Tollレセプター4(TLR4)がLPSシグナルの変換に関与するTollグループの分子であることを指摘する数多くの証拠が得られている。
【0012】
Ulrich et al.(「ワクチン設計」中:サブユニットおよびアジュバントのアプローチ、495ページ、MF Powel及びMJ Newman編、Plenum Press、ニューヨーク、1995)、Tholenら(Vaccine、16巻、708ページ、1998)、De Beckerら(Int.Immunol.、12巻、807−815ページ。2000)は、毒性のないLPS誘導体が存在すると述べており、例としてモノホスホリルリピドA(MPLA)がある。この物質は、細胞性および体液性の免疫応答経路においてアジュバント活性を持ち、いくつかの臨床試験でヒトに投与されている。MPLAは、LPSの免疫刺激特性を維持することが述べられているが、著者らは、LPSで観察されたよりもずっと低いレベルで、MPLAがin vivoにおいてDCの移動および機能的成熟を誘発することを実証した。
【0013】
Tamuraら(Science、278巻、117−120ページ、1997)およびBinderら(Nature Immunol.、1巻、151−155ページ、2000)は、熱ショック蛋白(HSP)が、その随伴抗原に対する抗原交差提示現象によって細胞免疫を刺激する強力な媒体であると報告している。腫瘍から採取したHSPは、各種モデルにおいて興味深い抗腫瘍効果を示す。CD91が、HSP gp96のレセプターとして同定されたことは、DCによりHSPを特異的に捕獲する経路が存在することを反映すると考えられる。そして、このことは、抗原、感染性物質あるいは損傷細胞に結合するペプチドが効率よく補給されること、および1型主要組織適合遺伝子複合体(MHC 1)中にそれらHSPが提示されることを明らかにした。しかし、HSPは原発病巣、例えば腫瘍などから採取しなければならないため、ワクチン担体としての使用は不便である。このことは、手順を複雑かつ高価とし、どの抗原によって、その効果が発揮されるのか実際には明らかにされていない。
【0014】
Hartmannら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96巻、9305−9310ページ、1999)、Hemmiら Nature、6813巻、740−5ページ、2000)、Sparwasserら(Eur.J.Immunol.、12巻、3591−3597ページ、2000)、Hochreiterら(Int.Arch.Allergy Immunol.、124巻、460−410ページ、2001)、およびDengら(Arthritis Res.、3巻、48−53ページ、2001)は、DC成熟誘発因子として特定される、先天免疫に関与する分子の中に、細菌DNAのCpG配列が存在することを示している。CpG配列に対する細胞の反応はTLR9によって媒介されることが最近証明されているため、このレセプターは細菌DNAと自身のDNAとを識別し得ることが示唆される。CD40、CD4あるいはMHC IIマーカーに対して陰性である遺伝子操作マウスにおいて、各種可溶抗原に対する細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導が再現された。このことから、CpGにより媒介されるCTLの活性化はCD4 T細胞の助けなしに起こり、それによってこれらの種類の分子にアジュバント特性が付与されている、と結論される。しかし、CpG配列がin vivoにおいてTh2からTh1に反応パターンを変更する能力は、抗原の特性および免疫条件に完全に依存しており、特に抗原が蛋白である場合には特にこの事実があてはまる。これは、主に免疫抑制状態の宿主においてCpGオリゴヌクレオチドをアジュバントとして効率よく使用するにあたっての障害となり得る。また、細菌由来のCpG配列は関節炎を誘発する可能性があることも報告されている。
【0015】
Jeanninら(Nature Immunol.、6巻、502−509ページ、2000)およびMiconnetら(J.Immunol.、166巻、4612−4619ページ、2001)は、特に、グラム陰性細菌である肺炎杆菌のOmpA蛋白が重要な免疫刺激特性を有することを見出した。組換え技術によって発現させたこの蛋白(kpOmpA)を用いて行った実験から、この蛋白はDCに結合し、シグナル分子としてTLR2分子を用いてDCを完全に成熟させることが示された。この蛋白によって明らかになったもう1つの重要な特性は、この抗原が疎水結合または共有結合されると、クラス1提示経路により抗原を誘導する能力である。共有結合技術は蛋白自体、および抗原の両方に対して化学的修飾を加える上で不便であり、疎水結合が利用できるのは疎水抗原グループだけであるため、これは実際上、ワクチン担体として重大な制限となる。
【0016】
Lowellはアメリカ特許No.5,726,292の中で、ペプチド、ポリペプチドおよび蛋白の免疫原性を高めるための免疫増強システムについて記載しており、これが本発明に最も近い原型と考えられる。上記特許における組成物は、少なくとも1個のシステイン残基を付加した後、脂肪族脂肪酸または疎水性ペプチドと結合させることによって化学的に修飾した抗原であることを特徴とするものである。その後、透析または凍結乾燥工程によって修飾した抗原をプロテオソームと結合させる。特に、この組成物はグリコシドを含有しない。
【発明の開示】
【0017】
本発明の新規性は、ペプチド、ポリペプチド、蛋白、およびこれらに対応する配列のDNA、並びにワクチン対象たる標的細胞に、先天性免疫増強リガンドおよびガングリオシドをその中に担持するNeisseria meningitidis由来の極小サイズプロテオリポソーム(VSSP)を結合させることにより、当該抗原の構造を変化させる必要なくこれらの抗原に対する免疫原性を付与する製剤を提供する点にある。
【0018】
本発明は、まさに、免疫増強キャリアが、グラム陰性菌であるNeisseria meningitidisの外膜蛋白複合体(OMPC)とガングリオシドとの結合によって得られる極小サイズプロテオリポソーム(VSSP)からなることを示すものである。
【0019】
本発明は、特に、免疫原性の低い抗原を選択し、それを免疫抑制状態の宿主に投与する際に有効な製剤に関するものである。
【0020】
本発明の1つの目的は、抗原としての、ペプチド、ポリペプチド、蛋白、これらに対応するDNA配列、標的細胞、またはこの溶解産物と、Neisseria meningitidis(グラム陰性細菌)由来の外膜蛋白複合体(OMPC)をガングリオシドと疎水結合して作成した極小サイズプロテオリポソーム(VSSP)とを含有する免疫原性組成物を提供することである。また、これらの組成物は、単独で、もしくはフロイントの不完全アジュバント(IFA)を加えた乳剤として製剤化することが可能であり、また凍結乾燥することもできる。
【0021】
本発明のもう1つの目的は、ガンあるいは慢性ウイルス性感染症にかかった患者など、免疫抑制状態の宿主においても抗原特異的な免疫反応を誘発し得る免疫刺激組成物を提供することである。このような患者では、本発明に記載したワクチン組成物を投与することによって、その免疫系の機能を回復することができる。
【0022】
また、本発明に記載したワクチン組成物は、増殖因子レセプターの免疫原性の問題、および腫瘍治療におけるその影響に対する解決策を与えるものである。何故なら、チロシンキナーゼ活性を示す当該レセプターと、当該レセプターに膜分子クラスターで特異的に結合されるガングリオシドとが、VSSPが関与するレッドフラッグシグナルとの関連において、必然的に、宿主の免疫系に対して同時に提示され、樹状細胞(DC)を効率よく活性化し交差提示を起こすからである。これらのワクチン組成物は、新たな擬似主要抗原エピトープを生成する化学的な蛋白結合技術の使用、さらには、その構成要素を免疫系に提示して、腫瘍細胞中で自然に起こる分子結合をまねることを不要とする。
【0023】
一方、この技術的解決は、レセプターの全構造を使用可能とし、それによって主要抗原遺伝子制限の問題を解決することができ、誘導ペプチドを使用し、この点に関してより多くの制限を有することがある他の解決法とは対照的である。
【0024】
より具体的には、本発明はガンを治療するためのワクチン製剤を提供するものである。当該ワクチン組成物は、有効成分として、1種類以上の増殖因子レセプター、または細胞膜貫通ドメインを含むもしくは含まない、当該増殖因子レセプターの細胞外ドメインを含有するとともに、ワクチン担体として、Neisseria meningitidisの膜外蛋白複合体から得た極小サイズプロテオリポソーム(VSSP)と、これに特異的に結合するガングリオシドとを含有し、それによって膜分子クラスターを形成する。当該ワクチン製剤は、更に適切なアジュバントを含有させることができる。
【0025】
本発明のワクチン製剤は、能動免疫療法において利用することができる。具体的には、前立腺、結腸、肺、乳房、卵巣、頭頸部、外陰、および膀胱のガン、神経膠腫のような腫瘍、ならびに非伝染性の慢性疾患の治療である。
【0026】
本発明は、免疫原性の低い抗原の免疫原性を増強することのできる医薬品組成に関し、以下のものを含む:
(A) 1種類以上の低免疫原性抗原;
(B) グラム陰性細菌の外膜蛋白複合体に由来するプロテオリポソームを有し、その中にガングリオシドを担持するワクチン担体;および
(C) 結果的に含有する1種類以上のアジュバント。
【0027】
本発明の組成物は、免疫原性の低い抗原の免疫原性を増強するものであり、当該抗原は、ペプチド、ポリペプチド、蛋白、およびこれらに対応する配列の核酸、並びにワクチン対象である標的細胞またはその溶解産物、さらにこれらの組み合わせたものとすることができる。
【0028】
免疫原性の低い抗原としては、増殖因子のレセプターまたはその細胞外ドメインを使用することができる。当該増殖因子レセプターの細胞外ドメインは、膜貫通ドメインを含有する場合としない場合がある。
【0029】
免疫原性を高めるために使用することができる増殖因子レセプターとしては、HER-1、HER-2、PDGF-R、あるいは細胞外ドメインを含有するそれらの変異体を挙げることができ、膜貫通ドメインは存在してもしなくてもよい。
【0030】
本発明で使用するワクチン担体のためのプロテオリポソームは、グラム陰性細菌の外膜蛋白複合体(OMPC)から得られる。細菌株としてはNeisseria meningitidisが望ましく、野生型でも遺伝的修飾株でもよい。
【0031】
本発明の組成物において、その中にガングリオシドを担持するプロテオリポソームは、Neisseria meningitidisの外膜蛋白複合体(OMPC)中に当該ガングリオシドを疎水的に組み込むことによって得られる。この目的のために、GM1およびGM3ガングリオシド、またはそれらのN-グリコシル化変異体を使用することができる。
【0032】
さらに、本発明の組成物は、油性のアジュバントまたは天然もしくは組換えポリペプチドからなるアジュバントを含有することができる。
【0033】
油性アジュバントとして望ましいのは、フロイントの不完全アジュバントまたはMontanide ISA 51である。
【0034】
また、ポリペプチドのアジュバントを使用する場合には、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子のようなシトシン、あるいはキモシンが望ましい。
【0035】
本発明の組成物は、ガンの予防と治療、特に前立腺、結腸、肺、乳房、卵巣、頭頸部、外陰、および膀胱のガン並びに神経膠腫の予防と治療のために有用であり、さらに非伝染性の慢性疾患の予防と治療のために有用である。
【0036】
また、ウイルス性感染症および細菌性感染症の予防と治療のためにも使用することができ、その中でも、特に後天性免疫不全症候群の治療や自己免疫疾患の治療に使用することができる。
【0037】
本発明は、免疫原性の低い、ペプチド、組換えもしくは天然の蛋白、細胞溶解産物、完全な細胞および核酸に免疫原性を付与する製剤を提供する。免疫刺激製剤とは、特定の抗原に対する体液性応答および細胞性応答の両方を刺激することのできる製剤、として定義される。さらに、本発明の製剤は、ガンおよび慢性のウイルス感染症あるいは特定の自己免疫疾患にかかった患者のように、免疫抑制状態にある者においてその免疫を回復するという独特の特徴をもっている。
【0038】
本発明は、免疫増強担体が、グラム陰性細菌であるNeisseria meningitidis由来の外膜蛋白複合体(OMPC)の中にガングリオシドを組み込ませて得た極小サイズプロテオリポソーム(VSSP)で構成されることについて記載される。OMPC成分を2日から15日の間、継続的に透析することによって、グリコシル化され、および/またはアセチル化されたガングリオシドを組み込ませる。ガングリオシドが外膜複合体中に組み込まれた結果、非小胞性の製剤が得られ、得られた非小胞性製剤は、分子サイズが非常に小さくて電子顕微鏡でも見ることができず、可溶性で高い浮遊性を示す。
【0039】
本発明におけるVSSPは、樹状細胞を成熟させる効果や、免疫抑制状態の患者の免疫を回復する作用など、驚くべき免疫学特性を示す。VSSPは、キューバ特許131/93および130/97、アメリカ特許5,788,985および6,149,921の明細書、並びにEstevezらの論文(Vaccine、18巻、190−197、1999)に従って得られる。
【0040】
本発明で使用する抗原性ペプチドは、合成物質でもよく、いくつかの原料から抽出したものでもよい。好ましいペプチドの大きさは、刺激しようとするT細胞の種類に応じて7個〜25個のアミノ酸とすることができる。もっとも、その長さはアミノ酸3個〜50個の間で変動することができる。ペプチドは、天然のものでもよく、正または負に荷電されたものでもよい。ペプチドの疎水特性も変化させることができる。
【0041】
同様に、本発明は、本発明で使用される組換え蛋白が、細菌、酵母、植物、および哺乳類細胞など各種の発現系において発現され得ることを示す。本発明の好ましい実施形態では、発現系としてN.meningitidisの使用を請求しており、この発現系では、当該発現対象たる蛋白は、その細菌自体の外膜において発現される。これによって、発現蛋白は、直接的にOMPCを構成することが可能となる。このような場合においては、全蛋白の発現は等しく有効であるか、或いは、蛋白のポリペプチドもしくはペプチドの、TBP、Opa、Opc、並びにP1、P2及びP3ポリンなどNeisseria meningitidis由来の外膜蛋白の1箇所以上の結合部への挿入が有効である。
【0042】
本発明の特別な態様においては、これらのワクチン組成物からなる抗原を、腫瘍組織中で過剰発現されているチロシンキナーゼ活性を有する増殖因子レセプター、およびその細胞外ドメイン(膜貫通ドメインの有無は問わない)であり、これらは、腫瘍細胞の膜中で発現されているガングリオシドと特異的な関係を有する。これは、特に、HER-1、HER-2、およびPDGFレセプターの場合にあてはまる。
【0043】
本発明が開示する増殖因子レセプターは、分子生物学の文献(Sambrook J、Fritsch E.F、Maniatis T、「分子クローニング」研究室マニュアル、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)中に記載される典型的な手順の後、組換え技術およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって哺乳類細胞発現プラスミド中に得られる蛋白である。これらレセプターの遺伝子を含有してレセプターもしくはその変異体をコードするプラスミドは、HEK 293(ATCC CRL 1573)、NIH-3T3(ATCC CRL 1658)およびCHOなどの哺乳類細胞中に確実に移入される。どんな場合であれ、レセプターまたはその変異体は、移入された細胞株の膜で発現されるか、その上清中に分泌される。
【0044】
これらの抗原は、それを発現する哺乳類細胞の膜から抽出するか、または細胞培養液の上清から抽出し、クロマトグラフィによって精製する。次に、滅菌条件下でろ過し、凍結乾燥する。4℃で保存する。ワクチン製剤中のこれらの抗原の最適含有量は、1投与量当たり1μgから1000μgの範囲である。
【0045】
この特別な種類の抗原のために、ワクチン製剤の中で使用されるVSSPは、特に、膜分子クラスターを形成するGM3およびGM1のような、増殖因子レセプターに特異的に結合されるガングリオシドの中から選択されるものを含有する。本ワクチン製剤中のVSSPは、ワクチン1投与量当たりのガングリオシド量に換算して1μgから1000μgの範囲である。
【0046】
免疫原性を高める対象たる抗原として増殖因子レセプターを含有する本発明の好ましいワクチン組成物は、以下のいくつかの方法によって調製することができる。
【0047】
(a)一定量のVSSP溶液を、レセプター/ガングリオシドの質量比が0.1/1から1/1の範囲となるよう、凍結乾燥した増殖因子レセプターまたはその細胞外ドメイン(膜貫通ドメインの有無は問わない;1−100mg蛋白)に添加する。4℃〜20℃において、混合物を5分間から24時間の範囲で攪拌する。この製剤を、宿主に投与するまで4℃の温度で保存する。
【0048】
上述の製剤を宿主に投与する直前に、40/60から60/40の間の容積/容積比になるようIFAに添加し、室温で10〜30分間攪拌する。この容積比は、適用される接種経路に応じた所望の乳剤に適切な範囲を包含する。
【0049】
(b)同様に便利な別の調製方法として、凍結乾燥した増殖因子レセプターまたはその細胞外ドメイン(膜貫通ドメインの有無は問わない)とVSSP溶液とを別々の容器に入れ4℃で保存してもよい。宿主に投与する直前に、一定量のVSSP溶液を増殖因子レセプターに添加する;その際には、(a)の項に記載したのと同じ方法でワクチン組成物を調製する。
【0050】
(c)第三の調製方法として、複数の増殖因子レセプターもしくはその細胞外ドメイン(膜貫通ドメインの有無は問わない)を、ワクチン組成物中で、対応するVSSP溶液と混合してもよい。ワクチン組成物中の各抗原の量および各抗原量の比は、ワクチン1投与量当たり1μg〜1000μgの範囲内とする。同様に、ワクチン製剤におけるVSSP中の各ガングリオシドの量は、ワクチン1投与量当たり1μg〜1000μgの範囲内とする。
【0051】
混合ワクチンを調製するために、その成分の一部となる各増殖因子レセプターまたはその細胞外ドメイン(膜貫通ドメインの有無は問わない)を、前記該当箇所で記載した量で凍結乾燥する。その後、一定量のVSSP溶液をレセプター/ガングリオシドの質量比が0.1/1から1/1の範囲となるよう添加する。次に、4℃〜20℃において、混合物を5分間から24時間の範囲で攪拌する。この製剤を、宿主に投与するまで4℃の温度で保存する。
【0052】
上述の製剤を宿主に投与する直前に、40/60から60/40の間の容積/容積比になるよう攪拌によりIFAと混合し、室温で10〜30分間攪拌する。この容積比は、適用される接種経路に応じた所望の乳剤に適切な範囲をカバーする。
【0053】
(d)(c)の項に記載した混合ワクチンを調製するための別の方法は、(b)の項に記載した方法によるものである。
【0054】
一方、確立された腫瘍細胞株から採取した、またはガン患者から直接得た、細胞による多抗原系も、本発明の製剤で使用される。ガンマ線照射療法またはマイトマイシンC治療によって細胞を不活化することができる。同様に便利な別の方法は、腫瘍細胞の物理的な破壊またはウイルス感染によって得られる腫瘍細胞溶解産物を使用することである。
【0055】
本発明の免疫増強製剤は、DNAおよびRNAワクチンにおいても有効に使用できる。ワクチン担体として用いるレトロウイルスおよびアデノウイルスベクターを本発明の記載した製剤と混合すると、免疫原性が増大する。これらのベクターは、対象となる抗原性を持つ蛋白をコードする遺伝子を含有する。
【0056】
一般に、異なる免疫原性の製剤は、異なる抗原系を予め得られたVSSPと混合することによって得られる。組換え技術によりN. meningitidisの外膜中に直接導入されたり、透析工程の間にプロテオリポソーム中に組み込まれる抗原は、VSSP作成工程の終わりに、すでに組み込まれている。しかし、当該修飾されたプロテオリポソームを他の組み込ませていない抗原と共に使用することもできる。これによって多面的なワクチン製剤が得られる。
【0057】
10〜1,000μgの抗原性ペプチドまたは蛋白を、蛋白(ペプチド)/ガングリオシドの総質量比が1〜3の範囲になるよう、一定量のVSSPと混合することにより、蛋白抗原製剤が得られる。この製剤は、宿主に投与するまで4℃において保存する。同様に便利な別の方法は、抗原溶液とVSSP溶液を4℃において別々に保存し、投与直前に混合するというものである。
【0058】
DNA溶液またはRNA溶液をVSSPと直接混合することにより、核酸を含有する製剤が得られる。混合工程は、VSSP中のガングリオシド0.1mg当たり2〜100μgの核酸を用いて4℃において行う。VSSP製剤中にヌクレアーゼが存在しないため、この方法を容易に実施することができる。
【0059】
本発明における特に有用な処理方法においては、ワクチン対象たる蛋白のDNA配列を含む活ウイルスベクター(ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、または他のウイルス)を、10〜5×10pfuの範囲の量で宿主にIV(静脈内)投与する。ウイルスベクター投与の12時間前後の範囲内で、VSSPを、筋肉内、皮下、皮内、経口、または鼻内の経路で投与する。
【0060】
ワクチン対象たる標的細胞またはその溶解産物を用いる製剤は、最初に各培養液を遠心することによって沈殿させ、次にガングリオシド0.1mg当たり10〜5×10個の細胞となるよう、細胞沈渣を一定量のVSSP中に再懸濁することによって得られる。該当する量を、4℃〜20℃において5〜24時間攪拌することにより直接混合する。製剤は、宿主に投与するまで4℃で保存する。
【0061】
同様に便利な別の方法は、細胞懸濁液またはその溶解産物とVSSP溶液を4℃において別々に保存し、投与直前に混合するというものである。
【0062】
本発明において述べられた、抗原をVSSPと混合した、またはVSSP中に組み込ませた製剤は、単独で、もしくはフロイントの不完全アジュバント(IFA)を加えた乳剤として、投与することができる。乳剤は、宿主に投与する直前に調製する。それぞれの製剤は、容積/容積比が40/60から60/40の範囲になるよう、室温で10〜30分間アジュバントと共に攪拌することによって混合する。この容積比は、用いる接種経路に応じた所望の種類の乳剤にとって適切な範囲を網羅する。
【0063】
本発明の別の望ましい態様として、抗原をVSSPと混合した、またはVSSP中に組み込ませた上述の製剤を、単独で、もしくはフロイントの不完全アジュバント(IFA)を加えた乳剤として、投与する前に凍結乾燥する方法がある。
【0064】
本発明のワクチン製剤は、非経口経路(筋肉内、皮内、皮下)または粘膜への直接塗布によって投与することができる。
【実施例】
【0065】
(実施例1) マウス EGF-R の細胞外ドメイン( ECD-mEGF-R )を含むワクチン組成物の抗原の作成
【0066】
マウス肝臓の相補DNA(cDNA)から、PCR法を用いてECD-mEGF-Rをコードする遺伝子を増幅した。PCRは、1μgのcDNAを10pmolの特定の各プライマーと混合することにより実施した。その後、0.2mMの各dNTPおよび1UのTaqポリメラーゼを添加した。計30回のPCRサイクルを実施した:9℃、1分間(3分間実施した最初のサイクルを除く);56℃、1分間;72℃、1分間、および30秒間(5分間実施した最後のサイクルを除く)。増幅した遺伝子を哺乳類細胞発現ベクターpcDNA3(Amp’、f’ori、ColE ori、CMV-プロモーター、SV40 ori、SV40pa、ネオマイシン、インビトロゲン)中でクローニングした後、このプラスミドを用いてHEK-293細胞株を確実にトランスフェクトした。トランスフェクションは従来法で実施し、選択培地中で細胞を増殖させた。ECD-mEGF-Rを確実に発現するHEK-293/ECD-mEGF-R細胞株の上清からECD-mEGF-Rを得る。
【0067】
培養上清から得たECD-mEGF-Rを、リガンドを担体に結合させるアフィニティクロマトグラフィ法によって精製する(「アフィニティクロマトグラフィ」原理と方法3:12、Pharmacia fine Chemicals);その後、ろ過滅菌して凍結乾燥する。
【0068】
(実施例2) ECD-mEGF-R VSSP-GM3 、およびフロイントの不完全アジュバント( IFA )を含むワクチン組成物の作成、及び全成分の投与直前での混合
【0069】
GM3ガングリオシドを組み込み、Neisseria meningitidis由来の外膜蛋白複合体(OMPC)を原料とするプロテオリポソームは、アメリカ特許No.6,149,921に記載の方法に従って作成した。
【0070】
この目的で使用するN.meningitidisからのOMPC複合体は、Carlos J.Finlay研究所(C.Campa et al.EP 301992)から調達した。このOMPC複合体10mgを、10mgのNGcGM3を含有する0.5%のデオキシコール酸ナトリウム溶液および0.1%のドデシル硫酸ナトリウム溶液中に添加し、4℃で一晩静かに混和して分散させた。
【0071】
界面活性剤からの可溶性OMPC-NGcGM3の分離は、3.5 KDaの膜を使用して14日間透析することにより行った。
【0072】
透析物を、100,000gで1時間超遠心し、上清中に存在する免疫原性複合体をろ過滅菌した。
【0073】
蛋白中へのガングリオシドの組み込みの程度は、蛋白に関してはBioRad試薬、シアル酸に関してはレゾルシノールを用いて測定した。
【0074】
このようにして、OMPC 1mg当たりNGcGM3 1mgの組み込みが得られた。
【0075】
予め調整したワクチン担体の量は、ワクチン1回投与量当たりのプロテオリポソーム中に組み込まれたガングリオシドの量に基づき、120μgとした。
【0076】
免疫原性を有する材料を調製するため、1mgのECD-mEGF-Rを凍結乾燥し、免疫原投与時まで4℃で保存した。マウスに投与する直前に、ガングリオシド量に基づき、2.4mgのVSSP-GM3を1ml抗原に添加し、両成分を室温で15分間混合した。次に1mlのIFAを添加し、室温で20分間攪拌することによって混合した。
【0077】
(実施例3) 構成要素をなす各成分を混合することによる、 ECD-mEGF-R VSSP-GM3 、および IFA を含むワクチン組成物の作成、及び投与時までのその混合物の保存
【0078】
GM3ガングリオシドを組み込み、Neisseria meningitidisからの外膜蛋白複合体(OMPC)を原料とするプロテオリポソームは、アメリカ特許No.6,149,921に記載の方法に従って作成した。使用したワクチン担体の量は、ワクチン1回投与量当たりの組み込まれたガングリオシドの量に基づき、120μgとした。
【0079】
免疫原性を有する材料を調製するため、1mgのECD-mEGF-Rを凍結乾燥し、次いで、組み込まれたガングリオシド量に基づき、2.4mgのVSSP-GM3を1ml添加した。両成分を室温で15分間混合し、混合物を免疫時まで4℃で保存した。マウスに投与する直前に1mlのIFAを添加し、室温で20分間攪拌することによって混合した。
【0080】
(実施例4) ECD-HER-1 ECD-HER-2 VSSP-GM3 、および IFA を含む混合ワクチンの作成
【0081】
GM3ガングリオシドを組み込み、Neisseria meningitidisからの外膜蛋白複合体(OMPC)を原料とするプロテオリポソームは、アメリカ特許No.6,149,921に記載の方法に従って作成した。使用したワクチン担体の量は、ワクチン1回投与量当たりの組み込まれたガングリオシドの量に基づき、120μgとした。
【0082】
免疫原性を有する材料を調製するため、1mgのECD-HER-1および1mgのECD-HER-2を共に凍結乾燥し、免疫原投与時まで4℃で保存した。マウスに投与する直前に、ガングリオシド量に基づき、2.4mgのVSSP-GM3を1ml添加した。すべての成分を室温で15分間混合した。次に1mlのIFAを添加し、室温で20分間攪拌することによって混合した。
【0083】
(実施例5) ワクチン組成物による自己 EGF-R に対する特異的免疫反応の誘導
【0084】
例2の記載に従って調製したECD-mEGF-R/VSSP-GM3およびIFAを含有するワクチン組成物により、C57BL/6種のマウスを免疫した。免疫原性物質の投与量は、組成物中の抗原量に基づき、マウス1匹当たり50μgとした。免疫手順は、15日毎に筋肉内(i.m.)投与を3回行い、初回免疫時から0、21、35および56日後に採血を実施した(II群)。対照群として、同じ免疫手順に従って、KLHと化学的に結合させ、フロイントの完全アジュバント(CFA)およびIFAでアジュバントされたECD-mEGF-R(50μg)を用いて同一種のマウスを免疫した(I群)。採取した血清をELISA法で分析し、ECD-mEGF-Rを検出した。ELISAは、プレートを10μg/mlのECD-mEGF-Rでコーティングすることによって実施した。PBS/5%ウシ血清でプレートをブロッキングした後、対照動物および免疫した動物からの血清を連続希釈倍率で添加した。次に、アルカリ性ホスファターゼ(Sigma)と結合させたマウス抗IgG抗体(Fcに特異的)を添加した。上述の培養液のすべてを37℃において1時間培養し、前述の各段階を終了した後、PBS/0.05%Tween20で3回洗浄した。ジエタノールアミン緩衝液(pH9.8)中1mg/mlの基質(p-ニトロフェニルリン酸)を添加することによって反応を展開させた。30分後に、ELISAリーダー中で405nmにおける吸光度を測定した。
【0085】
本発明のワクチン製剤で免疫したマウスの100%において、ECD-mEGF-Rに対して特異的な抗体反応が誘発された。反応は免疫原投与期間中のほうが強く、抗体力価は1/160000まで達したが、その一方、免疫前の血清ではECD-mEGF-Rが認識されなかった。抗体反応のアイソタイプは、主としてIgGタイプであった。
【0086】
ELISAによって、誘導された抗体反応のサブクラス分布を分析した。抗体の20.21%がIgG2a、36.03%がIgG1、そして38.93%がIgG2bであり、対照群と比較してTh1反応パターンへの推移が認められた(図1)。
【0087】
このワクチン組成物を、ECD-mEGF-RをKLHに化学的に結合させアジュバントとしてCFAを使用した組成物と比較すると、ワクチン組成物によって誘導された抗体の力価が高く、サブクラスの分布傾向もTh1パターンであるため、本発明のワクチンの方が有効性が高い。
【0088】
ECD-mEGF-R/VSSP-GM3/IFAで免疫したマウスにおいて臨床的な毒性の徴候は認められず、当該動物からの血清に関して実施した生化学検査の結果も非免疫動物の値と差がなかった(表1)。
【0089】
【表1】
【0090】
(実施例6) ECD-HER-1 VSSP-GM3 IFA で免疫したマウスから得た血清の、ヒト EGF-R を発現する細胞に対する認識
【0091】
ヒト上皮増殖因子レセプターを発現するA431細胞株(細胞10000個/ウエル)を、1/5に希釈した免疫前C57BL/6マウスの血清(A);陽性対照として10μg/mlの濃度のEGF-Rに対するモノクローナル抗体ior egf-r3(B);および1/5に希釈した免疫済みC57BL/6マウスの血清(C)と共に、室温で30分間インキュベートした。
【0092】
リン酸緩衝液/0.5%ウシ血清溶液で洗浄することにより、レセプターに結合していない過剰な抗体、もしくは非特異的な様式で結合した抗体を除去した。1/50に希釈したフルオレセインイソチオシアネートに結合させた抗マウス二次抗体と細胞とを室温で30分間インキュベートすることによって、細胞の免疫学的検出を行った。フローサイトメーター(FC)を用いて蛍光強度を測定した。ワクチン製剤によって免疫したマウスからの血清は、陽性対照実験群と同程度にEGF-R発現細胞を認識したが、同一動物からの免疫前血清は認識しなかった(図2)。
【0093】
(実施例7) ECD-HER-1 VSSP-GM3 IFA で免疫したマウスからの血清の細胞溶解作用
【0094】
A431細胞株(3×10個)を放射性クロムナトリウム51Crと共に1時間インキュベートし、培養液で3回洗浄して過剰な放射性塩類を除去した。
51Crで標識された細胞を以下のものとインキュベートした;
i)50μg/mlのモノクローナル抗体ior-t3(CD3に対するMab、陰性対照として)
ii)50μg/mlのモノクローナル抗体ior-egf-r3(EGF-Rに対するMab、陽性対照として)
iii)1/20に希釈した免疫前C57BL/6マウスの血清
iv)1/20に希釈した、ECD-HER-1/VSSP-GM3/IFAで免疫したマウスの血清。
【0095】
37℃において1時間インキュベートした後、40μlのウサギ補体を添加し、さらに37℃でインキュベートした。その後試験管を遠心し、上清100μlをとって、抗体と補体により媒介される細胞溶解の指標としての51Cr放出量をガンマカウンターで計測した。界面活性剤を用いた完全溶解により、総組み込み量を測定した。
【0096】
本発明のワクチン製剤によって免疫したマウスからの血清は、EGF-Rを発現するA431細胞の80%溶解を引き起こしたのに対して、同一マウスからの免疫前血清は35%溶解しか起こさなかった(図3)。
【0097】
(実施例8) ECD-HER-1 VSSP-GM3 IFA で免疫したマウスからの血清の中和作用。
【0098】
本発明のワクチン組成物によって免疫したマウスからの血清について、A431細胞の膜にあるEGFレセプターへのEGF結合阻害能を測定する目的で分析した。この目的のため、A431細胞を培養プレート中で集密状態になるまで増殖させた。集密状態に達したら、各希釈倍率(1/5、1/10、1/20、1/40)の免疫血清プールを添加し、次いで、100000cpm/ウエルの比でEGF-125Iを添加した。PBS/1%BSAを加えて各ウエルの容積を500μLとした。プレートを室温で1時間インキュベートした後、2mlの冷PBS/1%BSAを添加して反応を停止させた。次に、各ウエル中の液体を除去し、PBS/1%BSAでウエルを静かに洗浄した後、300μlのNaOH 2Mを各ウエルに添加した。室温で30分間放置した後、各ウエルから200μlをとり、ガンマ線カウンターでの測定値を記録した。
【0099】
免疫血清プールは、A431細胞の膜中にあるEGFレセプターへのEGF-125Iの結合を阻害した。阻害の強さは、血清の希釈倍率に依存していた(図4)。
【0100】
(実施例9) ECD-HER-1 VSSP-GM3 IFA で免疫したマウスの寿命。
【0101】
ECD-mEGF-R/VSSP-GM3/IFA(50μgを3回、15日毎)で免疫したC57/BL6マウスに対して、100000個のLewis細胞を筋肉内注射により接種し、マウスを観察して寿命の調査を行った。Lewis細胞は、EGF-Rを発現するマウス肺腺ガンに由来する。これらのマウスの寿命を、ECD-mEGF-R/CFA(50μgを3回、15日毎、皮下)で免疫したマウス群の寿命と比較した。ECD-mEGF-R/VSSP-GM3/IFAワクチン組成物で免疫したマウスは、対照群と比較して有意に長い(p<0.05)寿命を示した(図5)。
【0102】
(実施例10) P3 キメラモノクローナル抗体( P3 cMAb )、 VSSP GM3 )、および IFA を含有するワクチン組成物の作成
【0103】
GM3[VSSP(GM3)]ガングリオシドを含有するNeisseria meningitidisからの外膜蛋白複合体を原料とするプロテオリポソームは、キューバ特許130/97、およびアメリカ特許No.6,149,921に記載の方法に従って作成した。VSSP(GM3)は、使用時までpH 8.9のTris/HCl溶液中4.8mg/mlの濃度で4℃において保存した。
【0104】
免疫原性物質を作成するため、2mg/mlのP3キメラモノクローナル抗体(P3 cMAb)(アメリカ特許No.5,817,513)を含有する溶液を、調製したVSSP(GM3)液と、1/1(v/v)の比で、リン酸緩衝液中で混合した。混合は、室温で15分間、マグネティックスターラーで攪拌することによって行った。その後、IFAを1/1(v/v)の比になるよう添加した。乳濁液となるまで、室温で15分間攪拌した。
【0105】
同様に便利な別の方法として、2mg/mlのP3 cMAbを含有する溶液を、調製したVSSP(GM3)液と、1/1(v/v)の比で、リン酸緩衝液中で混合した。混合は、室温で15分間、マグネティックスターラーで攪拌することによって行い、得られた溶液を0.2μm酢酸セルロース膜を通じてろ過滅菌した。計量、容器への充填、および密閉工程の後、製剤を4℃で最長1年間保存した。宿主に投与する直前に、IFAを1/1(v/v)の比で添加し、室温で15分間攪拌することによって乳化した。
【0106】
(実施例11) P3 cMAb の重鎖の各領域からのペプチド( CDR3 VH-P3 )および VSSP GM3 )を含有するワクチン組成物の作成
【0107】
GM3[VSSP(GM3)]ガングリオシドを含有するNeisseria meningitidisからの外膜蛋白複合体を原料とするプロテオリポソームは、キューバ特許130/97、およびアメリカ特許No.6,149,921に記載の方法に従って作成した。VSSP(GM3)は、使用時までpH 8.9のTris/HCl溶液中4.8mg/mlの濃度で4℃において保存した。
【0108】
宿主に投与する直前に、免疫原性物質を、最初に、凍結乾燥したCDR3/VH-P3ペプチドを4mg/mlの濃度になるようリン酸緩衝液中に溶解して調製した。次いで、この溶液を、1/1(v/v)の比でVSSP(GM3)製剤と混合した。混合は、室温で15分間、マグネティックスターラーで攪拌することによって行った。
【0109】
同様に便利な別の方法では、最初に凍結乾燥したCDR3/VH-P3ペプチドを4mg/mlの濃度になるようリン酸緩衝液中に溶解した。次いで、この溶液を1/1(v/v)の比でVSSP(GM3)製剤と混合した。混合は、室温で15分間、マグネティックスターラーで攪拌することによって行い、得られた溶液を0.2μm酢酸セルロース膜を通じてろ過滅菌した。計量、容器充填、および密閉工程の後、製剤を4℃で最長1年間保存した。
【0110】
(実施例12) B16 メラノーマ腫瘍溶解産物、 VSSP GM3 )および IFA を含有するワクチン組成物の作成
【0111】
GM3[VSSP(GM3)]ガングリオシドを含有するNeisseria meningitidisからの外膜蛋白複合体を原料とするプロテオリポソームは、キューバ特許130/97、およびアメリカ特許No.6,149,921に記載の方法に従って調製した。VSSP(GM3)は、使用時までpH 8.9のTris/HCl溶液中2.4mg/mlの濃度で4℃において保存した。
【0112】
免疫原性物質を調製するため、マウスメラノーマB16細胞株の懸濁液(50×10個/ml)について、液体窒素槽でのインキュベーションと蒸留水槽での37℃におけるインキュベーションとを交互に繰り返す凍結/解凍サイクルを5回実施した。得られた細胞溶解産物を500×gで10分間遠心した。得られた沈渣をVSSP(GM3)中に再懸濁し、VSSP中GM3の2.4mg当たり10×10個細胞に相当する細胞沈渣濃度とした。混合物を室温で10分間攪拌した。次いで、この製剤を1/1(v/v)の比でIFAに添加した。この混合物を室温で約15分間攪拌することによって乳濁液とした。
【0113】
(実施例13)メラノーマ B16 細胞、 VSSP GM3 )および IFA を含有するワクチン組成物の作成
【0114】
GM3[VSSP(GM3)]ガングリオシドを含有するNeisseria meningitidisからの外膜蛋白複合体を原料とするプロテオリポソームは、キューバ特許130/97、およびアメリカ特許No.6,149,921に記載の方法に従って作成した。VSSP(GM3)は、使用時までpH 8.9のTris/HCl溶液中2.4mg/mlの濃度で4℃において保存した。
【0115】
免疫原性物質を調製するため、マウスメラノーマB16細胞株の懸濁液(50×10個/ml)を300×gで10分間遠心した。得られた沈渣をVSSP(GM3)中に再懸濁し、VSSP中GM3の2.4mg当たり10×10個の細胞濃度とした。混合物を室温で10分間攪拌した。次に、この製剤を1/1(v/v)の比でIFAに添加した。この混合物を室温で約15分間攪拌することによって乳剤とした。
【0116】
(実施例14)ヒト EGF レセプターの細胞外ドメインをコードする遺伝子を持つプラスミド( ECD-HER-1 )、 VSSP GM3 )および IFA を含有するワクチン組成物の作成
【0117】
GM3[VSSP(GM3)]ガングリオシドを含有するNeisseria meningitidisからの外膜蛋白複合体を原料とするプロテオリポソームは、キューバ特許130/97、およびアメリカ特許No.6,149,921に記載の方法に従って作成した。VSSP(GM3)は、使用時までpH 8.9のTris/HCl溶液中4.8mg/mlの濃度で4℃において保存した。
【0118】
目的のDNAを挿入するベクターは、pcDNA3哺乳類発現プラスミドで、SV40の複製開始点およびヒト前初期サイトメガロウイルスプロモーター(IECP)を含有する。ヒトEGFレセプターの細胞外ドメインをコードする遺伝子(ECD-HER-1)をこのプラスミド中に挿入した。得られたプラスミド(ECD-HER-1/pcDNA3)は、免疫原性製剤の調製に用いられた。
【0119】
免疫原性物質を作成するため、ECD-HER-1/pcDNA3プラスミド溶液を、リン酸緩衝液中2mg/mlの濃度になるよう調節した。次いで、これを1/1(v/v)の比でVSSP(GM3)製剤と混合した。混合は、室温で5分間攪拌することによって行った。次いで、この製剤を1/1(v/v)の比でIFAに添加した。この混合物を室温で約15分間攪拌することによって乳濁液とした。
【0120】
(実施例15) VSSP GM3 )製剤による in vitro での樹状細胞成熟の誘発。
【0121】
ヒト樹状細胞は、末梢血から分離した単球から調製し、組換えヒトGM-CSF、(hr)(50ng/ml)、およびhr-IL4(1000U/ml)の存在下で7日間増殖させた。第7日に、得られた樹状細胞をVSSP(GM3)(1μg/ml)と18時間接触させるか、させないかのいずれかとした。対照として、Neisseria meningitidis菌株44/76から精製したLPS 0.1μg/mlまたはMPLA(Sigma)と共に樹状細胞を培養した。
【0122】
各製剤の表現型をフローサイトメトリーによって分析した。
【0123】
表2に示すように、VSSP(GM3)で処理することによってCD11cの発現が増加し、DCのCD83成熟マーカーに顕著な変化が認められた。HLA-DR分子の発現量も増加した。VSSP(GM3)は、CD86分子を発現する細胞の数を増加させた。VSSP(GM3)とLPSは、処理したDCの成熟を誘発する上で同程度の作用を持つことが明らかになった。一方、LPSの無毒化変種であるMPLAは、作用が弱かった。
【0124】
【表2】
【0125】
(実施例16)ワクチン組成物の投与による P3 キメラ MAb P3c Mab )に対する特異的な体液性免疫反応の誘導
【0126】
C57BL/6種のマウスを、実施例10に記載したワクチン組成物によって免疫した。50μgのキメラモノクローナル抗体を筋肉内注射により2回接種した(14日毎)。初回免疫から21日後に血清試料を採取した。対照群として、同一種のマウスをIFAまたは水酸化アルミニウム中で乳剤化したP3 cMabによって免疫した。採取した血清をELISA法で分析し、抗P3 cMAb抗体の存在を確認した。
【0127】
本発明に記載したワクチン組成物で免疫したマウスの100%において、P3 cMAbに対する特異的IgG抗体の力価が対照群よりも高かった(表3)。
【0128】
【表3】
【0129】
(実施例17)ワクチン組成物の投与による CDR3 VH-P3 ペプチドに特異的な増殖性細胞反応の誘導
【0130】
MC57BL/6種のマウスを、例11に記載したワクチン組成物によって免疫した。100μgのペプチドを筋肉内注射により4回接種した(14日毎)。対照群として、同一種のマウスをIFAまたはミョウバン中で乳剤化したCDR3/VH-P3ペプチドによって免疫した。最終投与から7日後に動物の鼠径部リンパ神経節を摘出し、臓器灌流によってリンパ球を分離した。リンパ球をCDR3/VH-P3ペプチド(50μg/ml)と共に96時間増殖させた。培養の最後の18時間は1μCi(マイクロキュリー)のトリチウムチミジン(Amersham、イギリス)に接触させ、その後細胞を回収し、シンチレーションカウンター(LKB Wallac、フィンランド)中でβ放射(cpm)を測定した。細胞増殖の程度を刺激指数(SI)として算出した。この実験から得られた結果を表4に示す。
【0131】
【表4】
【0132】
(実施例18)組換え APV ECD-mEGF-R APV VSSP GM3 )および IFA を含有するワクチン組成物の投与による ECD-mEGF-R に特異的な細胞傷害性細胞反応の誘発
【0133】
GM3[VSSP(GM3)]ガングリオシドを含有するNeisseria meningitidisからの外膜蛋白複合体を原料とするプロテオリポソームは、キューバ特許130/97、およびアメリカ特許No.6,149,921に記載の方法に従って調製した。VSSP(GM3)は、使用時までpH 8.9のTris/HCl溶液中2.4mg/mlの濃度で4℃において保存した。
【0134】
目的のDNAを挿入するためのウイルスベクターは、鳥類ポックスウイルス(APV)であった。マウスEGFレセプター(ECD-mEGF-R)の細胞外ドメインをコードする遺伝子を、相同組換えによってAPV中に挿入した。ECD-mEGF-R/APV組換えベクターの溶液は、10pfu/mlの濃度となるよう調節した。
【0135】
VSSP(GM3)の乳濁液を同時に調製し、担体溶液として1/1(v/v)の比でIFAに添加した。混合物を室温で約15分間攪拌した。
【0136】
その後、Balb/cマウスを200μlのECD-mEGF-R/APV溶液の腹腔内投与によって免疫し、次に100μlのVSSP(GM3)/IFAを筋肉内投与した。対照群のマウスには、ECD-mEGF-R/APVとリン酸緩衝生理食塩水(SPBS)を投与した。2週間毎に2回投与し、実験開始から21日後にマウスを屠殺して脾臓細胞を採取した。磁気真珠法を用いてCD8 T細胞を脾細胞から分離した。当該T細胞は、IL-2(50μ/ml)の存在下で、予め10:1(T:bmDC)の比でECD-mEGF-R主要抗原ペプチド「NYGTNRTGL」を適用した骨髄由来の樹状細胞(bmDC)により、5日間刺激した。刺激終了時に、異なる量の当該T細胞を「NYGTNRTGL」ペプチドを適用したP815株と接触させ、その際に放出される51Crの量を測定することにより、細胞傷害実験を実施した(表5)。
【0137】
【表5】
【0138】
(実施例19) VSSP ワクチン担体の免疫回復特性
【0139】
本発明に記載したVSSPワクチン担体を、フェーズ1臨床試験中の転移性メラノーマ患者に対して筋肉内注射により投与した。患者は、6ヶ月間で9回の投与(VSSP中200μgのNGcGM3)を受けた。最初の5回は最初の2ヶ月以内に投与し、残りの4回は月に1回ずつ投与した。
【0140】
第0日に患者から採血し(初回投与の前)、第56日(5回目の投与時)にも採血した。同時に、8人の健常ボランティアからも血液を採取した。Ficoll勾配法によって各試料から末梢単核細胞(PMC)を分離し、CD3+、CD4+およびCD8+細胞の百分率をフローサイトメトリーによって測定した。表6に示すように、3人の患者のPMCにおける第0日のCD3、CD4およびCD8 T細胞マーカーの相対発現率は、健常ドナーの平均発現率よりも低い。
【0141】
同一患者のPMC中におけるCD3、CD4およびCD8 T細胞マーカーの相対発現率は、第56日、すなわち4回のVSSP(NGcGM3)注射を受けた後に明らかに正常値まで復帰した。
【0142】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】ECD-mEGF-R/VSSP-GM3/IFAで免疫した結果誘導された抗体のサブクラス分布。(I)ECD-mEGF-R/KLH/CFAまたは(II)ECD-mEGF-R/VSSP-GM3/IFAによって免疫したC57BL/6マウスからの血清をELISAで分析し、免疫により誘導されるIgGのサブクラス分布を測定した。
【図2】EGF-Rを発現する細胞による、ECD-HER-1/VSSP-GM3/IFAで免疫したマウス血清の認識。A431細胞株を免疫前C57BL/6マウスの血清と共にインキュベートした(A);陽性対照としてのモノクローナル抗体ior egf-r3(B);および免疫したC57BL/6マウスの血清(C)。免疫検出のために、蛍光体を結合させた第2の抗マウス抗体を使用した。フローサイトメーターによって蛍光強度を測定した。
【図3】ECD-HER-1/VSSP-GM3/IFAにより免疫したマウスからの血清の細胞溶解作用。51Crで標識したA431細胞を補体および;I)モノクローナル抗体ior-t3(CD3に対する抗体、陰性対照として);II)iorEGF-R-r3(EGF-Rに対する抗体、陽性対照として);III)C57Bl/6マウスからの免疫前血清;IV)ECD-HER-1/VSSP-GM3/IFAにより免疫したマウスからの血清と共にインキュベートした;V)同数の同一細胞、を界面活性剤で溶解して51Crの総組み込み量を測定した。結果は、特異的溶解百分率で表す。
【図4】ECD-HER-1/VSSP-GM3/IFAにより免疫したマウスからの血清の中和作用。ECD-HER-1/VSSP-GM3/IFAにより免疫したマウスからの血清の1/5、1/10、1/20および1/40希釈、あるいは免疫前血清の同一希釈のいずれかの中でA431細胞をインキュベートした。各ウエルにEGF-125I(100000cpm)を添加し、細胞とEGF125Iとをインキュベートすることによって総結合量を測定した。CPMはガンマカウンターで計測した。
【図5】ECD-mEGF-R/VSSP-GM3/IFAにより免疫しLewis腫瘍を移植したマウスの寿命。例9の記載に従って免疫したC57BL/6マウスに100000個のLewis腫瘍細胞を移植し、寿命調査のための観察を行った。対照群は、ECD-mEGF-R/CFAで免疫した同種のマウスで、同一の方法により移植した。

Claims (20)

  1. (A) 1種類以上の低免疫原性抗原と、(B) グラム陰性菌株(Neisseria meningitidis)の外膜蛋白複合体から得られ、その中にガングリオシドが組み込まれているプロテオリポソームを有するワクチン担体と、(C) 場合によっては1種類以上のアジュバントとを含有する、免疫原性の低い抗原の免疫原性を増強するための医薬組成物。
  2. 該免疫原性の低い抗原が、ペプチド、ポリペプチド、蛋白若しくはこれらに対応する配列の核酸、またはワクチン対象たる標的細胞若しくはその溶解産物、あるいはこれらの組み合わせから選択される請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 該免疫原性の低い抗原またはその細胞外ドメインが、増殖因子レセプターである請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 該増殖因子レセプターの該細胞外ドメインが、膜貫通ドメインを含有する、または含有しない請求項3に記載の医薬組成物。
  5. 該増殖因子レセプターが、膜貫通ドメインを持つまたは持たない、HER-1、HER-2、PDGF-Rまたは細胞外ドメインを含有するあらゆる変異体である、請求項3および4に記載の医薬組成物。
  6. 該ワクチン担体のプロテオリポソームが、野生型のもしくは遺伝的に修飾したNeisseria meningitidis菌株の外膜蛋白複合体から得られる請求項1に記載の医薬組成物。
  7. その中にガングリオシドが組み込まれているワクチン担体のプロテオリポソームが、Neisseria meningitidisの外膜蛋白複合体中に当該ガングリオシドを疎水的に組み込ませることによって得られる請求項1に記載の医薬組成物。
  8. Neisseria meningitidisの外膜蛋白複合体中に疎水的に組み込まれている該ガングリオシドが、GM1、GM3またはこれらのN-グリコシル化変異体である、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 該アジュバントが、油性のアジュバント、または天然もしくは組換えポリペプチドである請求項1に記載の医薬組成物。
  10. 該油性のアジュバントが、フロイントの不完全アジュバントである請求項9に記載の医薬組成物。
  11. 該フロイントの不完全アジュバントが、Montanide ISA51である請求項10に記載の医薬組成物。
  12. 該ポリペプチドアジュバントが、シトシンまたはキモシンである請求項9に記載の医薬組成物。
  13. 該シトシンが、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子である請求項12に記載の医薬組成物。
  14. ガン、特に、前立腺、結腸、肺、乳房、卵巣、頭頸部、外陰、膀胱および脳のガン、神経膠腫、さらに非伝染性慢性疾患の予防と治療のための請求項1から13に記載の医薬組成物。
  15. ウイルス感染性疾患および細菌感染性疾患の予防と治療のための請求項1から13に記載の医薬組成物。
  16. 後天性免疫不全症候群の治療のための請求項14に記載の医薬組成物。
  17. 自己免疫疾患の治療のための請求項1から13に記載の医薬組成物。
  18. ガン、特に、前立腺、結腸、肺、乳房、卵巣、頭頸部、外陰、膀胱および脳のガン、神経膠腫、さらに非伝染性慢性疾患の予防と治療のために請求項1から17に記載の医薬組成物の使用。
  19. ウイルス感染性疾患および細菌感染性疾患の予防と治療のための請求項1から17に記載の医薬組成物の使用。
  20. 自己免疫疾患の治療のための請求項1から17に記載の医薬組成物の使用。
JP2002547529A 2000-12-06 2001-12-06 低免疫原性抗原の免疫原性を増強する医薬組成物 Expired - Lifetime JP4210519B2 (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
CU20000285A CU23000A1 (es) 2000-12-06 2000-12-06 Composiciones vacunales para la inmunoterapia activa específica del cáncer
CU20010167A CU23009A1 (es) 2001-07-12 2001-07-12 Preparaciones para potenciar la inmunogenicidad depreparaciones para potenciar la inmunogenicidad de antígenos poco inmunogénicos antígenos poco inmunogénicos
CU167/2001 2001-07-12
PCT/CU2001/000010 WO2002045746A2 (es) 2000-12-06 2001-12-06 Composiciones farmaceuticas para potenciar la inmunogenicidad de antigenos poco inmunogenicos

Publications (4)

Publication Number Publication Date
JP2004523494A JP2004523494A (ja) 2004-08-05
JP2004523494A5 JP2004523494A5 (ja) 2005-05-26
JP2004523494A6 true JP2004523494A6 (ja) 2005-06-30
JP4210519B2 JP4210519B2 (ja) 2009-01-21

Family

ID=38812545

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002547529A Expired - Lifetime JP4210519B2 (ja) 2000-12-06 2001-12-06 低免疫原性抗原の免疫原性を増強する医薬組成物

Country Status (20)

Country Link
US (1) US7776342B2 (ja)
EP (1) EP1356822B1 (ja)
JP (1) JP4210519B2 (ja)
KR (1) KR100850473B1 (ja)
CN (1) CN1291755C (ja)
AR (1) AR031638A1 (ja)
AT (1) ATE485833T1 (ja)
AU (2) AU2151902A (ja)
BR (1) BRPI0116013B8 (ja)
CA (1) CA2431188C (ja)
DE (1) DE60143363D1 (ja)
DK (1) DK1356822T3 (ja)
EA (1) EA005138B1 (ja)
HK (1) HK1063726A1 (ja)
MX (1) MXPA03005032A (ja)
NZ (1) NZ526282A (ja)
PE (1) PE20020572A1 (ja)
UY (1) UY27059A1 (ja)
WO (1) WO2002045746A2 (ja)
ZA (1) ZA200304411B (ja)

Families Citing this family (20)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1367395A1 (de) * 2002-05-02 2003-12-03 B.R.A.H.M.S Aktiengesellschaft Diagnose von Neoplasmen mit Hilfe von anti-Gangliosid-Antikörpern
EP1358910A1 (de) * 2002-05-02 2003-11-05 B.R.A.H.M.S Aktiengesellschaft Verfahren und Mittel zur Prävention, Hemmung und Therapie von Krebserkrankungen
CU23257A1 (es) * 2003-02-27 2008-01-24 Centro Inmunologia Molecular COMPOSICIONES VACUNALES A BASE DE GANGLIOSIDOS PARA LA ADMINISTRACION SUBCUTáNEA
AR045815A1 (es) * 2003-10-09 2005-11-16 Ct Ingenieria Genetica Biotech Composiciones farmaceuticas que contienen antigenos del virus de papiloma humano
WO2005111079A2 (en) * 2004-05-14 2005-11-24 The United States Of America As Represented By The Secretary Department Of Health And Human Services Hiv vaccine immunogens and immunization strategies to elicit broadly-neutralizing anti-hiv-1 antibodies against the membrane proximal domain of hiv gp41
WO2010003219A1 (en) * 2008-06-17 2010-01-14 Universite Laval Compositions comprising salmonella porins and uses thereof as adjuvants and vaccines
WO2012084951A1 (en) * 2010-12-22 2012-06-28 Bayer Animal Health Gmbh Enhanced immune response in bovine species
KR101323845B1 (ko) * 2011-01-21 2013-10-31 광주과학기술원 외막소포체를 유효성분으로 포함하는 항암용 약제학적 조성물
CU24070B1 (es) * 2011-12-27 2015-01-29 Ct De Inmunología Molecular Composiciones farmacéuticas para el tratamiento de tumores que expresan regf y gangliósidos n-glicolilados gm3 (neugcgm3)
IL286537B (en) * 2013-03-15 2022-07-01 In3Bio Ltd Synthetic proteins that assemble themselves
CU24299B1 (es) * 2013-08-02 2017-12-08 Centro De Inmunología Molecular Composiciones vacunales bivalentes basadas en los receptores de tipo 1 y 2 del factor de crecimiento epidérmico
HK1194912A2 (en) * 2013-09-17 2014-10-24 Bestop Group Holdings Ltd Growth factor concentrate and the use thereof
US10105306B2 (en) * 2013-09-17 2018-10-23 Bestop Group Holdings Limited Method of preparing a growth factor concentrate
WO2015135942A1 (en) * 2014-03-11 2015-09-17 Universite D'aix-Marseille A chimeric peptide that interacts with cell membrane gangliosides
WO2018166542A1 (es) 2017-03-15 2018-09-20 Centro De Inmunologia Molecular Método para el tratamiento de pacientes con carcinomas
US12019073B2 (en) * 2017-03-15 2024-06-25 Centro De Inmunologia Molecular Method for the treatment of patients with carcinomas
CA3076012A1 (en) * 2017-09-27 2019-04-04 L2 Diagnostics, Llc Erbb peptide pharmaceutical and vaccine compositions and therapeutics uses thereof for cancer
CU24534B1 (es) * 2017-11-06 2021-07-02 Ct Inmunologia Molecular Adyuvantes nano-particulados que contienen variantes sintéticas del gangliósido gm3
CU20170173A7 (es) * 2017-12-27 2019-11-04 Ct Inmunologia Molecular Nano-partículas que contienen el gangliósido gm3 como inmunomoduladoras
CN109865137A (zh) * 2019-01-23 2019-06-11 天德悦(北京)生物科技有限责任公司 经碘代乙酰基活化的琼脂糖微球在提高多肽或蛋白类免疫原免疫原性中的应用

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4857637A (en) * 1986-05-07 1989-08-15 Genentech, Inc. Methods and compositions for immunologically modulating growth hormone receptor activity
IT1206250B (it) * 1987-02-18 1989-04-14 Ist Farmacoterapico It Spa Stiche umane e relativi prodotti metodo per l'estrazione di antigeni di membrana aventi proprieta' immunogene a partire da cellule neopla-
US5726292A (en) * 1987-06-23 1998-03-10 Lowell; George H. Immuno-potentiating systems for preparation of immunogenic materials
WO1994001133A1 (en) 1992-07-08 1994-01-20 Schering Corporation Use of gm-csf as a vaccine adjuvant
DE69428763T2 (de) * 1993-12-09 2002-08-01 Ct De Inmunologia Molecular Ci Monoklonale Antikörper gegen Ganglioside und deren Verwendung in der spezifischen, aktiven Immuntherapie gegen bösartige Tumoren
US6149921A (en) * 1993-12-29 2000-11-21 Centro De Inmunologia Molecular Vaccine compositions for eliciting an immune response against N-acetylated gangliosides and their use for cancer treatment
CU22420A1 (es) * 1993-12-29 1996-01-31 Centro Inmunologia Molecular Composicion vacunal para el desarrollo de una respuesta contra gangliosidos n glicolilados y su uso para el tratamiento del cancer
US5880141A (en) 1995-06-07 1999-03-09 Sugen, Inc. Benzylidene-Z-indoline compounds for the treatment of disease
WO1999036085A1 (en) * 1998-01-16 1999-07-22 Biomira Usa Inc. Patient-specific white blood cell malignancy vaccine from membrane-proteoliposomes

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4210519B2 (ja) 低免疫原性抗原の免疫原性を増強する医薬組成物
JP2004523494A6 (ja) 低免疫原性抗原の免疫原性を増強する医薬組成物
JP5519477B2 (ja) T1免疫応答とt2免疫応答との間で調節するためのワクチン
EP3672625B1 (en) Synthetic vaccine
JP2008526763A (ja) 予防又は治療目的のmhcクラスi拘束性エピトープに対する免疫応答の誘導、増強及び保持方法
JP4394570B2 (ja) 抗癌活性を有するHer−2/neuDNAワクチン
Lenarczyk et al. ISCOM® based vaccines for cancer immunotherapy
TWI719351B (zh) 於疫苗中作為佐劑的包含gm3神經節苷脂的合成變體之奈米粒子
WO2002034287A2 (en) Therapeutic vaccine formulations containing chitosan
US20040037840A1 (en) Novel therapeutic vaccine formulations
US20050063952A1 (en) Immunogenic CEA
AU2002309141A1 (en) Vaccine for modulating between T1 and T2 immune responses
EP0422164A1 (en) LARGE SIZE MULTIVALENT IMMUNOGEN.
JP2005247861A (ja) 免疫増強特性を有するムチンペプチド
ES2353857T3 (es) Composiciones farmacéuticas que mejoran la inmunogenicidad de antígenos poco inmunogénicos.
TW201823267A (zh) 瘧疾疫苗
CA2552271A1 (en) Proteoliposomes and its derivatives as adjuvants inducers of citotoxic response and the resultant formulations
JP2023546485A (ja) Pd-l1の細胞外ドメインを含むキメラ抗原
Kinzler et al. Cancer vaccines