詳細な説明
本発明は、ヒトCD40(“huCD40”)に特異的に結合し、アゴニスト活性を有する、単離された抗体、特にヒト化モノクローナル抗体を提供し、具体的には、huCD40に対する実質的な親和性を保持しつつ、収率を高める、改善された重鎖および軽鎖可変領域配列を提供する。
本発明は、かかる抗体の製造方法、かかる抗体またはその抗原結合フラグメントを含む免疫複合体および二重特異性分子、ならびに該抗体またはフラグメントを含むように製剤化された医薬組成物をさらに提供する。また、本発明は、免疫応答増強のために、単独で、または他の免疫賦活剤(例えば、抗体)および/または癌療法剤もしくは抗感染症療法剤と組合せて抗体を用いる方法も提供する。従って、本明細書に記載の抗huCD40抗体は、例えば、腫瘍増殖を阻害すること、および慢性のウイルス感染症を処置することを含む、広範囲の治療用途で用いることができる。
定義
本明細書の記載をより容易に理解できるように、いくつかの用語を先ず定義する。さらなる定義は、詳細な説明の全体にわたって記載されている。
用語“CD40”は、“TNF受容体スーパーファミリーメンバー5”(TNFRSF5)を意味する。他に特記しない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書中のCD40への言及は、ヒトCD40(“huCD40”)を意味し、“抗CD40抗体”は、抗ヒトCD40抗体を意味する。ヒトCD40は、遺伝子番号(GENE ID NO)958およびMIM(Mendelian Inheritance in Man): 109535にさらに記載されている。20アミノ酸のシグナル配列を含むヒトCD40の配列(GenBank 受託番号NP_001241.1)は、配列番号1に提供される。
CD40は、TNFSF5、gp39およびCD154とも称される、CD40リガンド(CD40L)と相互作用する。他に特記しない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書中“CD40L”への言及は、ヒトCD40L(“huCD40L”)を意味する。ヒトCD40Lは、遺伝子番号959およびMIM:300386にさらに記載されている。ヒトCD40Lの配列(GenBank 受託番号NP_000065.1)は、配列番号2に提供される。
特記しない限り または文脈から明らかでない限り、本明細書で用いる用語“抗体”は、抗体全体および任意の抗原結合フラグメント(すなわち、“抗原結合部分”)またはその一本鎖を含み得る。“抗体”とは、一態様において、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合フラグメントを意味する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中、VHと略される)および重鎖定常領域からなる。特定の天然IgG、IgDおよびIgA抗体において、重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3からなる。特定の天然抗体において、各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中、VLと略される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化できる。各VHおよびVLは、3個のCDRおよび4個のFRから構成され、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと並べられている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。上記抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織もしくは宿主因子への免疫グロブリンの結合に介在し得る。
抗体は、一般的に、10−7から10−11Mまたはそれ以下の解離定数(KD)で示される高親和性でそれらの同族抗原に特異的に結合する。約10−6Mを超えるKDは、一般的に、非特異的結合を示すと考えられる。本明細書で用いるとき、抗原に“特異的に結合する”抗体とは、高い親和性で抗原および実質的に同一の複数の抗原に結合する抗体を意味し、高い親和性とは、10−7M以下のKD、好ましくは10−8M以下のKD、さらにより好ましくは5x10−9M以下のKD、最も好ましくは10−8M以下および10−10M以下のKDを有するが、無関係な抗原に対しては高親和性で結合しないことを意味する。抗原が所定の抗原に対して高度の配列同一性を示す場合、例えば、抗原が、所定の抗原の配列と少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、またはさらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を示す場合、抗原は該所定の抗原と“実質的に同一”である。一例として、ヒトCD40に特異的に結合する抗体は、特定の非ヒト霊長動物種(例えば、カニクイザル)由来のCD40と交差反応し得るが、他の種由来のCD40、またはCD40以外の抗原とは交差反応し得ない。
他に特記しない限り、免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含むが、これらに限定されない、一般的に公知のアイソタイプのいずれか由来であり得る。IgGアイソタイプは、特定の種のサブクラスに分けられる:ヒトではIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4、マウスではIgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3。免疫グロブリン、例えばIgG1には、多くとも数個のアミノ酸が互いに異なる幾つかのアロタイプが存在する。他に特記しない限り、本発明の抗体は、IgG1f定常ドメイン(配列番号44)を含む。他に特記しない限り、“抗体”には、一例として、モノクローナルおよびポリクローナル抗体;キメラおよびヒト化抗体;ヒトおよび非ヒト抗体;完全合成抗体;および、一本鎖抗体が含まれ得る。
本明細書で用いる用語、抗体の“抗原結合部分”または“抗原結合フラグメント”とは、抗原(例えば、ヒトCD40)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上のフラグメントを意味する。用語、抗体の“抗原結合部分”に包含される結合フラグメントの例としては、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2個のFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;および、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546)を含む。単離された相補性決定領域(CDR)、または合成リンカーにより結合された2以上の単離CDRの組合せは、抗原を結合できる場合、抗体の抗原結合ドメインを含み得る。
一本鎖抗体構築物もまた、本発明に包含される。Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは、別個の遺伝子にコードされているが、それらは、組換え法を用いて、VLおよびVH領域が単鎖Fv(scFv)として知られる一価分子を形成するように対形成する、単タンパク質鎖として製造されることを可能とする合成リンカーにより、連結され得る。例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;および、Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883参照。かかる一本鎖抗体はまた、抗体の“抗原結合部分/フラグメント”なる用語に包含されることも意図する。これらおよび他の可能性のある構築物は、Chan & Carter (2010) Nat. Rev. Immunol. 10:301に記載されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られる常套技術を用いて得られ、フラグメントは、インタクト(無傷)抗体と同様の方法で有用性についてスクリーニングされる。抗原結合部分/フラグメンは、組換えDNA技術により、またはインタクト免疫グロブリンの酵素もしくは化学開裂により産生され得る。
特許請求の範囲に記載のように抗体に言及して用いられるとき、他に特記しない限り、用語“フラグメント”は、“抗体またはフラグメント”が、“抗体またはその抗原結合フラグメント”と同じ意味を有するように、抗体の抗原結合フラグメントを意味する。
“二重特異性抗体”または“二機能性抗体”とは、2つの異なる重鎖/軽鎖対を有し、それにより異なる抗原に対する特異性を有する2つの抗原結合部位を生じさせる、人工的ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメント連結を含む、種々の方法により産生できる。例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol. 148, 1547-1553 (1992)を参照。
本明細書で用いる用語“モノクローナル抗体”は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す抗体または抗体の組成物であって、その中の全抗体が特定のエピトープに単一の結合特異性および親和性を示す組成物を意味する。一般的にこのようなモノクローナル抗体は、単一細胞または核酸コード化抗体に由来し、何らかの配列変更を意図的に導入することなく増殖される。従って、用語“ヒトモノクローナル抗体”は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域および所望により定常領域を有する、モノクローナル抗体を意味する。一態様において、ヒトモノクローナル抗体は、例えば、トランスジェニックまたは染色体導入非ヒト動物(例えば、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニックマウス)から得たB細胞を、不死化細胞に融合することにより得たハイブリドーマにより産生する。
本明細書で用いる用語“組換えヒト抗体”は、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子またはそれから製造したハイブリドーマに関してトランスジェニックまたは染色体導入である動物(例えば、マウス)から単離した抗体、(b)抗体を発現するように形質転換した宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離した抗体、(c)組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離した抗体、ならびに(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含むあらゆる他の手段により製造、発現、作製または単離された抗体のような、組換え手段により製造、発現、作製または単離された全てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、生殖系列遺伝子によりコードされる特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列を利用するが、例えば、抗体成熟中に生じるその後の再配列および変異を含む、可変領域および定常領域を含む。当技術分野で知られるように(例えば、Lonberg (2005) Nature Biotech, 23(9):1117-1125参照)、可変領域は抗原結合ドメインを含み、これは、外来抗原に特異的な抗体を形成するように再配列される種々の遺伝子によりコードされる。再配列に加えて、可変領域は、複数の単一アミノ酸変異(体細胞変異または超変異と称する)によりさらに修飾されて、抗体の外来抗原に対する親和性が増加され得る。定常領域は、抗原に対するさらなる応答において変化し得る(すなわち、アイソタイプスイッチ)。それ故に、抗原への応答において軽鎖および重鎖免疫グロブリンポリペプチドをコードする、再配列され、かつ体細胞的に変異した核酸配列は、元の生殖系列配列と同一ではないかもしれないが、それでも実質的に同一であるか、または類似している(すなわち、少なくとも80%同一性を有する)。
“ヒト”抗体(HuMAb)は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来である可変領域を有する抗体を意味する。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本明細書に記載の抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロで無作為もしくは部位特異的変異誘発により、またはインビボで体細胞性変異により導入した変異)を含み得る。しかしながら、本明細書で用いる用語“ヒト抗体”は、マウスのような他の哺乳動物種の生殖系列由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図しない。用語“ヒト”抗体および“完全ヒト”抗体は、同義的に用いられる。
“ヒト化”抗体は、非ヒト抗体のCDRドメイン外のアミノ酸のいくつか、大部分またはすべてが、ヒト免疫グロブリン由来の対応するアミノ酸で置き換えられる抗体を意味する。抗体のヒト化形態の一態様において、CDRドメイン外のアミノ酸のいくつか、大部分またはすべては、ヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸で置き換えられ、一方、1以上のCDR領域内のいくつか、大部分またはすべてのアミノ酸は変化していない。アミノ酸の小さな付加、欠失、挿入、置換または修飾は、それらが抗体の特定の抗原に結合する能力を消失させない限り、許容される。“ヒト化”抗体は、元の抗体に類似する抗原特異性を保持する。
“キメラ抗体”とは、可変領域がマウス抗体由来であり、定常領域がヒト抗体由来である抗体のような、可変領域がある種由来であり、定常領域が別の種由来である抗体を意味する。“ハイブリッド”抗体は、マウス(親の)重鎖およびヒト化軽鎖、またはその逆などの、異なるタイプ重鎖および軽鎖を有する抗体を意味する。
本明細書で用いる“アイソタイプ”は、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgE抗体)を意味する。
“アロタイプ”とは、特定のアイソタイプ群内での天然変異体を意味し、この変異体は、1個または数個のアミノ酸が異なる。例えば、Jefferis et al. (2009) mAbs 1:1参照。
語句“抗原を認識する抗体”および“抗原に特異的な抗体”は、本明細書中、用語“抗原に特異的に結合する抗体”と互換的に用いられる。
本明細書で用いる“単離抗体”は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味することを意図する(例えば、CD40に特異的に結合する単離抗体は、CD40以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、CD40のエピトープに特異的に結合する単離抗体は、異なる種からの他のCD40タンパク質との交差反応性を有している。
抗体Fc領域と任意のFc受容体の相互作用に由来する“エフェクター機能”としては、Clq結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、ADCCおよび抗体依存性細胞貪食(ADCP)のようなFcγR介在エフェクター機能、ならびに細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御が挙げられるが、これらに限定される必要はない。このようなエフェクター機能は、一般的に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と合わさることを必要とする。
“Fc受容体”または“FcR”は、免疫グロブリンのFc領域に結合する受容体である。IgG抗体に結合するFcRは、対立遺伝子変異体を含むFcγRファミリーの受容体およびこれらの受容体の選択的スプライシング型を含む。FcγRファミリーは、3個の活性化型(マウスにおけるFcγRI、FcγRIIIおよびFcγRIV;ヒトにおけるFcγRIA、FcγRIIAおよびFcγRIIIA)および1個の阻害型(FcγRIIbまたはFcγRIIB等価体)受容体からなる。ヒトFcγRの種々の性質を表1にまとめる。生来の(innate)エフェクター細胞タイプの大部分は、1以上の活性化FcγRおよび阻害型FcγRIIBを共発現し、一方、ナチュラルキラー(NK)細胞は、マウスおよびヒトにおいて、1つの活性化Fc受容体(マウスにおいてFcγRIIIおよびヒトにおいてFcγRIIIA)を選択的に発現するが、阻害性FcγRIIBを発現しない。ヒトIgG1は大部分のヒトFc受容体に結合し、それが結合する活性化Fc受容体のタイプに関して、マウスIgG2aに対応すると考えられる。
“Fc領域”(結晶化可能フラグメント領域)または“Fcドメイン”または“Fc”は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)上に位置するFc受容体への結合または古典的補体系の第1成分(C1q)への結合を含む、免疫グロブリンの宿主組織または因子への結合に介在する抗体の重鎖のC末端領域を意味する。従って、Fc領域は、第1の定常領域免疫グロブリンドメイン(例えば、CH1またはCL)を除いた抗体の定常領域を含む。IgG、IgAおよびIgD抗体アイソタイプでは、Fc領域は抗体の2つの重鎖のそれぞれにCH2およびCH3定常ドメインを含む。IgMおよびIgE Fc領域は、各ポリペプチド鎖に3つの重鎖定常ドメイン(CHドメイン2−4)を含む。IgGの場合、Fc領域は免疫グロブリンドメインCγ2およびCγ3ならびにCγ1とCγ2間のヒンジを含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なる場合があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、位置C226またはP230のアミノ酸残基(またはこれら2つのアミノ酸間のアミノ酸)から重鎖のカルボキシ末端までであると定義されおり、ここで、番号付けは、KabatにおけるようなEUインデックスに従う。Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, MD;また、米国特許出願公開第2008/0248028号の図3C−3Fも参照。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは、約アミノ酸231から約アミノ酸340までの長さであり、一方、CH3ドメインは、Fc領域内のCH2ドメインのC末端側に位置し、すなわち、それはIgGの約アミノ酸341から約アミノ酸447まで(C末端リシンを含む)の長さである。本明細書で用いるFc領域は、任意の異型変異体を含む天然配列Fcまたは変異体Fc(例えば、天然に存在しないFc)であり得る。Fcはまた、この領域を単独で、または“Fc融合タンパク質”とも称される“Fc領域を含む結合タンパク質”(例えば、抗体またはイムノアドヘシン)などのFc含有タンパク質ポリペプチドとの関連で意味し得る。
“天然配列Fc領域”または“天然配列Fc”は、天然に存在するFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1 Fc領域;天然配列ヒトIgG2 Fc領域;天然配列ヒトIgG3 Fc領域;および、天然配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびにそれらの天然変異体が含まれる。天然配列Fcは、種々のアロタイプのFcを含む。例えば、Jefferis et al. (2009) mAbs 1:1を参照。
本明細書で用いる用語“特異的結合”、“選択的結合”、“選択的に結合する”および“特異的に結合する”は、所定の抗原上のエピトープに結合するが、他の抗原には結合しない抗体を意味する。一般に、抗体は、(i)例えば、所定の抗原、例えば組換えヒトCD40をアナライトとして、かつ抗体をリガンドとして用いるBIACORE(登録商標)2000表面プラズモン共鳴(SPR)装置における表面プラズモン共鳴(SPR)テクノロジーにより、または抗原陽性細胞への抗体の結合のScatchard分析により決定されるとき、約10−7M未満、例えば、約10−8M、10−9Mまたは10−10M未満またはそれより小さい平衡解離定数(KD)で結合し、(ii)所定の抗原に、所定の抗原または密接に関係する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合についてその親和性より少なくとも2倍大きい親和性で結合する。従って、“ヒトCD40に特異的に結合する”抗体とは、可溶性または細胞結合性ヒトCD40に、10−7M以下、例えば、約10−8M、10−9Mまたは10−10M未満またはそれより小さいKDで結合する抗体を意味する。“カニクイザルCD40と交差反応する”抗体とは、10−7M以下、例えば、約10−8M、10−9Mまたは10−10M未満またはそれより小さいKDでカニクイザルCD40に結合する抗体を意味する。
本明細書で用いる用語“kassoc”または“ka”は、特定の抗体−抗原相互作用の結合速度定数を意味し、一方、本明細書で用いる用語“kdis”または“kd”は、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度定数を意味する。本明細書で用いる用語“KD”は、平衡解離定数を意味し、これはkd対ka比(すなわちkd/ka)から得られ、モル濃度(M)により表される。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立されている方法を用いて決定できる。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、好ましくはForteBio Octet RED 装置を用いる、バイオレイヤー干渉法(BLI)分析、好ましくはBIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴システムまたはフローサイトメトリーのようなバイオセンサーシステムを用いる、表面プラズモン共鳴、またはフローサイトメトリーおよびScatchard分析である。
抗体またはその抗原結合フラグメントを用いるインビトロまたはインビボアッセイにおける用語“EC50”は、最大応答の50%、すなわち、最大応答とベースラインの半分の応答を誘発する、抗体の濃度を意味する。
用語“固定化CD40に結合する”とは、例えば、細胞の表面上に発現されたか、または固体支持体に結合されたCD40に結合する本明細書に記載の抗体の能力を意味する、
本明細書で用いる用語“交差反応”とは、異なる種由来のCD40に結合する本明細書に記載の抗体の能力を意味する。例えば、ヒトCD40に結合する本明細書に記載の抗体はまた、別の種由来のCD40(例えば、カニクイザルCD40)に結合し得る。本明細書において、交差反応性は、結合アッセイ(例えば、SPR、ELISA)において精製された抗原との特異的反応性を検出するか、またはCD40を生理学的に発現する細胞に結合するか、そうでなければ機能的に相互作用することにより、測定され得る。交差反応性を決定するための方法には、本明細書に記載される標準的な結合アッセイ、例えば、BIACORE(登録商標)2000SPR装置(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を用いるBIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)分析、またはフローサイトメトリー技術が含まれる。
対象物に適用される、本明細書で用いる用語“天然(naturally-occurring)”とは、対象物が天然に見いだされるという事実を意味する。例えば、自然界の供給源から単離され得る生物(ウイルスを含む)に存在し、実験室でヒトにより意図的に改変されていない、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然である。
“ポリペプチド”とは、少なくとも2個の連続して連結されたアミノ酸残基を含む鎖を意味し、鎖の長さに上限はない。タンパク質中の1以上のアミノ酸残基は、例えばグリコシル化、リン酸化またはジスルフィド結合などの修飾を含んでいてよいが、これに限定されない。“タンパク質”とは、1以上のポリペプチドを含んでいてよい。
本明細書で用いる用語“核酸分子”は、DNA分子およびRNA分子を含むことを意図する。核酸分子は、一本鎖でも二本鎖でもよく、cDNAであってもよい。
本明細書に記載の抗体配列の“保存的配列修飾”もまた提供され、すなわち、ヌクレオチド配列によりコードされる抗体またはアミノ酸配列を含む抗体の抗原への結合を消失させないヌクレオチドおよびアミノ酸配列修飾である。例えば、修飾は、部位特異的変異誘発およびPCR介在変異誘発のような当分野で知られる標準技術により導入され得る。保存的配列修飾は、アミノ酸残基が類似側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられる保存的アミノ酸置換を含む。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。それゆえに、抗CD40抗体の予想される非必須アミノ酸残基を、好ましくは同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基に置き換える。抗原結合を排除しないヌクレオチドおよびアミノ酸保存的置換を同定する方法は、当分野で周知である。例えば、Brummell et al., Biochem. 32:1180-1187 (1993); Kobayashi et al., Protein Eng, 12(10):879-884 (1999); およびBurks et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:412-417 (1997)参照。
あるいは、別の態様において、変異を、飽和変異誘発によるような、抗CD40抗体コード化配列のすべてまたは一部に添って導入でき、得られた修飾抗CD40抗体を、結合活性の改善についてスクリーニングし得る。
核酸について、用語“実質的相同”は、2個の核酸またはその指定配列が、最適にアラインし、比較したとき、適切なヌクレオチド挿入または欠失を伴い、ヌクレオチドの少なくとも約80%、通常ヌクレオチドの少なくとも約90%〜95%以上、好ましくは少なくとも約98%〜99.5%が同一であることを示す。あるいは、セグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件下で、鎖の相補体とハイブリダイズするとき、実質的相同が存在する。
ポリペプチドに関して、用語“実質的相同”は、2個のポリペプチドまたはその指定配列が、最適にアラインし、比較したとき、適切なアミノ酸挿入または欠失を伴い、アミノ酸の少なくとも約80%、通常アミノ酸少なくとも約90%〜95%以上、より好ましくは少なくとも約98%〜99.5%が同一であることを示す。
2配列間の同一性パーセントは、配列を最適にアラインしたとき、これら配列により共有される同一位置の関数であり(すなわち、相同性%=同一位置の数/位置の総数×100)、最適アラインメントは、2配列の最適アラインメントのために導入することが必要であるギャップ数および各ギャップの長さを考慮して決定する。配列の比較および2配列間の同一性パーセントの決定は、以下の非限定的例に記載するような、数学的アルゴリズムを使用して達成できる。
2ヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを用いて、NWSgapdna.CMPマトリクスおよびギャップ荷重40、50、60、70または80および長さ荷重1、2、3、4、5または6を用いて決定できる。2ヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントはまた、ALIGNプログラム(version 2.0)に取り込まれているE. Meyers and W. Miller (CABIOS, 4:11-17 (1989))のアルゴリズムを用いて、PAM120荷重残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いて決定できる。さらに、2アミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムに取り込まれているNeedleman and Wunsch (J. Mol. Biol. (48):444-453 (1970))アルゴリズムを用いて、Blossum 62マトリクスまたはPAM250マトリクスのいずれかおよびギャップ荷重16、14、12、10、8、6または4および長さ荷重1、2、3、4、5または6を用いて決定できる。
本明細書に記載の核酸およびタンパク質配列を、さらに“クエリー配列”として用いて、例えば、関連配列を同定するために公的データベースに対して検索を実施できる。このような検索は、Altschul, et al., (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)を用いて実施できる。BLASTヌクレオチド検索は、本明細書に記載の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で実施できる。BLASTタンパク質検索は、本明細書に記載のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で実施できる。比較目的でギャップ付アラインメントを得るために、ギャップ付BLASTを、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載のように実施できる。BLASTおよびギャップ付BLASTプログラムを用いるとき、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを用いることができる。
核酸は、全細胞中に、細胞溶解物中にまたは一部精製したもしくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当技術分野で周知のその他を含む標準技術により、他の細胞成分または他の汚染物、例えば、他の細胞核酸(例えば、他の染色体部分)またはタンパク質から精製されたとき、“単離される”または“実質的に純粋にされる”。Ausubel, et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)参照。
本明細書で用いる用語“ベクター”は、それが連結している別の核酸の輸送が可能である核酸分子を意味することを意図する。1タイプのベクターは“プラスミド”であり、これは、さらなるDNAセグメントをライゲートし得る環状二本鎖DNAループを意味する。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここで、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。あるベクターは、それらが導入された宿主細胞内で自律増殖が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入により宿主細胞のゲノムに統合され得て、それにより宿主ゲノムと共に増殖される。さらに、あるベクターは、操作可能に連結している遺伝子の発現の指向が可能である。このようなベクターは、本明細書中、“組換え発現ベクター”(または単に“発現ベクター”)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術に有用な発現ベクターは、プラスミド形態であることが多い。本明細書において、“プラスミド”および“ベクター”は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であるため、互換的に用いられ得る。しかしながら、等価な機能を提供するウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような他の形態の発現ベクターも包含される。
本明細書で用いる用語“組換え宿主細胞”(または単に“宿主細胞”)は、細胞中に天然では存在しない核酸を含む細胞、および組換え発現ベクターが導入されている細胞を意味することを意図する。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の子孫も意味することを意図することが理解されるべきである。ある種の改変が突然変異または環境の影響により次世代に生じ得るため、そのような子孫は、実際、親細胞と同一ではないかもしれないが、なお、本明細書で用いる用語“宿主細胞”の範囲内に包含される。
“免疫応答”とは、外来因子に対する脊椎動物内の生物学的応答を意味し、該応答は、生物をこれらの因子およびそれが原因の疾患から保護する。免疫応答は、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、樹状細胞または好中球)およびこれらの細胞のいずれかまたは肝臓により産生される可溶性巨大分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用が介在し、侵入病原体、病原体に感染した細胞または組織、癌性のまたは他の異常細胞、あるいは、自己免疫性または病理学的炎症の場合、正常ヒト細胞または組織を選択的標的化し、結合し、損傷し、破壊しおよび/または脊椎動物体内から排除する。免疫反応は、例えば、T細胞、例えば、CD4+またはCD8+ T細胞のようなエフェクターT細胞またはTh細胞の活性化または阻害あるいはTreg細胞の阻害または枯渇を含む。“Tエフェクター”(“Teff”)細胞は、細胞溶解性活性を伴うT細胞(例えば、CD4+およびCD8+ T細胞)、ならびにサイトカインを分泌し、他の免疫細胞を活性化および指向するTヘルパー(Th)細胞を意味するが、制御性T細胞(Treg細胞)は含まない。
本明細書で用いる用語“T細胞介在応答”は、エフェクターT細胞(例えば、CD8+細胞)およびヘルパーT細胞(例えば、CD4+細胞)を含む、T細胞が介在する応答を意味する。T細胞介在応答は、例えば、T細胞細胞毒性および増殖を含む。
本明細書で用いる用語“細胞毒性Tリンパ球(CTL)応答”は、細胞毒性T細胞により誘発される免疫応答を意味する。CTL応答は、主にCD8+ T細胞により介在される。
“免疫調節剤”または“免疫制御剤(immunoregulator)”は、免疫応答の調節、制御または修飾に関与し得る、因子、例えば、シグナル伝達経路の成分を意味する。免疫応答の“調節”、“制御”または“修飾”は、免疫系の細胞またはこのような細胞(例えば、エフェクターT細胞)の活性の何らかの変更を意味する。このような調節は、種々の細胞タイプの数の増減、これらの細胞の活性の増減または免疫系内で生じ得る何らかの他の変化により顕在化し得る、免疫系の刺激または抑制を含む。阻害性および刺激性免疫調節剤の両者が同定されており、そのいくつかは、腫瘍微小環境において増強された機能を有し得る。好ましい態様において、免疫調節剤は、T細胞の表面に位置し得る。“免疫調節性標的”または“免疫制御性標的”は、物質、薬剤、成分、化合物または分子による結合のために標的化され、その活性が該結合により改変される、免疫調節剤である。免疫調節性標的としては、例えば、細胞表面の受容体(“免疫調節性受容体”)および受容体リガンド(“免疫調節性リガンド”)が挙げられる。
“免疫療法”は、免疫応答を誘発、増強、抑制または他に修飾することを含む方法による、疾患を有するまたはそれに罹患するもしくは再発するリスクのある対象の処置を意味する。
“免疫刺激療法”または“免疫刺激性療法”は、例えば、癌を処置するための、対象における免疫応答の増加(誘発、増強または刺激;これらは全て互換的に用いられ得る)を引き起こす治療を意味する。
“内在性免疫応答の増強”は、対象における既存の免疫応答の有効性または効力の増大を意味する。有効性および効力のこの増大は、例えば、内在性宿主免疫応答を抑制する機序を制圧することにより、または内在性宿主免疫応答を増強する機序を刺激することにより達成され得る。
本明細書で用いる用語“連結(linked)”は、2以上の分子の結合を意味する。結合は共有結合でも非共有結合でもよい。結合はまた、遺伝子的(すなわち、組換え融合)であってよい。かかる結合は、化学的結合および組換えタンパク質生産のような多くの当技術分野で認識される技術を用いて達成できる。
本明細書で用いる“投与する”は、当業者に知られる種々の方法および送達系のいずれかを用いた、治療剤を含む組成物の対象への物理的導入を意味する。本明細書に記載の抗体のための好ましい投与経路は、例えば注射または点滴による、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊髄または他の非経腸投与経路を含む。本明細書で用いる用語“非経腸投与”は、経腸および局所投与以外の、通常注射による、投与方式をいい、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および点滴、ならびにインビボエレクトロポレーションを含むが、これらに限定されない。あるいは、本明細書に記載の抗体は、局所、上皮または粘膜投与経路のような非経腸ではない経路、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下にまたは局所的に投与され得る。投与はまた、例えば、1回、複数回および/または1回以上の長期にわたり実施されてよい。
本明細書で用いる用語“阻害”または“遮断”は、互換的に用いられ、少なくとも約50%、例えば少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の、部分的および完全阻害/遮断の両方を含む。
本明細書で用いる“癌”は、体内の異常細胞の無制御の増殖により特徴付けられる広範な疾患群を意味する。無制御の細胞分裂は、隣接組織に浸潤し、リンパ系または血流を介して体の離れた部分に転移することができる、悪性の腫瘍または細胞の形成を引き起こし得る。
本明細書で用いる用語“処置(treat)”、“処置する(treating)”および“処置(treatment)”は、症状、合併症、病状または疾患と関係する生化学的兆候の進行、進展、重症度または再発を逆転させる、軽減する、寛解させる、阻止するまたは減速させるあるいは予防する目的で、対象に実施されるあらゆるタイプの介入または過程あるいは活性剤の投与を意味する。予防は、疾患が生じるのを予防する、または生じてもその影響を最小にするための、疾患を有していない対象への投与を意味する。
用語“有効用量”または“有効投与量”は、所望の効果を達成するまたは少なくとも部分的に達成するのに十分な薬剤の量として定義される。薬物または療法剤の“治療的有効用量”または“治療的有効投与量”は、単独でまたは他の療法剤と組み合わせて用いたとき、疾患症状の重症度の軽減、無疾患症状期間の頻度および期間の増大、または疾患罹患による機能障害もしくは身体障害の予防により証明される疾患緩解を促す、薬物の量である。薬物の“予防的有効量”または“予防的有効投与量”は、疾患を発症するまたは疾患を再発するリスクのある対象に単独でまたは他の療法剤と組み合わせて投与したとき、疾患の発症または再発を阻止する薬物の量である。療法剤または予防剤が疾患緩解を促すまたは疾患の発症もしくは再発を阻止する能力は、臨床治験中ヒト対象において、ヒトでの有効性を予測する動物モデルシステムにおいてまたはインビトロアッセイにおける薬剤の活性のアッセイによるなど、当業者に公知の種々の方法を用いて評価できる。
例として、抗癌剤は、対象における癌進行を遅延させるまたは癌退縮を促す薬物である。好ましい態様において、薬物の治療的有効量は、癌を排除するところまで、癌退縮を促す。“癌退縮を促す”とは、有効量の薬物の、単独または抗新生物剤と組合せた投与が、患者において、腫瘍増殖またはサイズの低減、腫瘍の壊死、少なくとも1つの疾患症状の重症度の低減、無疾患症状期間の頻度および期間の増大、疾患罹患による機能障害もしくは身体障害の予防または疾患症状の他の改善をもたらすことを意味する。薬理学的有効性は、該薬物が患者における癌退縮を促す能力である。生理学的安全性は、薬物投与に起因する、細胞、臓器および/または生物レベルでの容認できる低レベルの毒性または他の有害生理作用(有害作用)を意味する。
腫瘍処置に関する例として、薬物の治療的有効量または投与量は、好ましくは細胞増殖または腫瘍増殖を、未処置対象と比較して少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、なおさらにより好ましくは少なくとも約80%阻害する。最も好ましい態様において、薬物の治療的有効量または投与量は、細胞増殖または腫瘍増殖を完全に阻害する、すなわち、好ましくは細胞増殖または腫瘍増殖を100%阻害する。化合物が腫瘍増殖を阻害する能力は、下記アッセイを用いて評価できる。腫瘍増殖の阻害は、処置後直ぐには起こらず、一定期間後または反復投与後にしか起こらないことがある。あるいは、組成物のこの性質を、化合物が細胞増殖を阻害する能力を試験することにより評価でき、このような阻害は、当業者に公知のアッセイによりインビトロで測定できる。本明細書に記載の他の好ましい態様において、腫瘍緩解が観察でき、少なくとも約20日、より好ましくは少なくとも約40日またはよりさらに好ましくは少なくとも約60日の期間継続し得る
本明細書で用いる“併用”療法は、文脈から他の意味が明らかでない限り、2以上の治療剤の協調的な方法での投与を包含することを意味し、同時投与が含まれるが、これに限定されない。具体的には、併用療法は、1つの治療剤の投与が別の治療剤の投与に何らかの形で条件付けられるという条件で、同時投与(例えば、共同製剤の投与または別個の治療組成物の同時投与)および連続または逐次投与の両方を包含する。例えば、1つの治療剤は、異なる治療剤が投与され、所定の期間作用することが可能になった後にのみ投与され得る。例えば、Kohrt et al. (2011) Blood 117:2423参照。
用語“患者”および“対象”は、予防的または治療的処置を受けるあらゆるヒトを意味する。例えば、本明細書に記載の方法および組成物を、癌を有する対象の処置に用いることができる。
本明細書に記載の種々の面を、以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記載する。
I.抗CD40抗体
本出願は、癌および慢性のウイルス感染症などの疾患の処置における療法剤として用いるための望ましい特性を有するアゴニスト抗huCD40抗体を開示する。これらの特性は、ヒトCD40に高親和性で結合する能力、ヒト対象における許容可能な低い免疫原性、およびCHOなどの哺乳動物細胞で発現したときに許容可能な高レベルの抗体産生および低い凝集性のうち1以上を含む。本発明の抗CD40抗体は、改善された抗体と称することができ、この場合、改善は、mAb 12D6-24(配列番号11および8、またはその可変ドメインを含む)などの抗体の元の改変されていない形態を基準にして測定される。改善は、収量および単量体抗体の割合を含む何れかの特性によって、または多量体および他の高分子量種の欠如によって評価することができる。
抗CD40抗体の配列変異体
本明細書に記載の抗体配列における幾つかの変動性は、許容されてよく、抗体の望ましい特性を依然として維持し得る。CDR領域は、Kabatシステム(Kabat, E. A., et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)を用いて描写される。したがって、本発明は、本明細書に記載の抗体(例えば、12D6抗体は、配列番号54および49、配列番号11および49、または配列番号52および49の重鎖および軽鎖可変ドメインを含む)の重鎖および/または軽鎖可変ドメイン配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である重鎖および/または軽鎖可変ドメイン配列を含む抗huCD40抗体を提供する。
II.改変されたおよび修飾された抗体
標的抗原結合
種々の態様において、本発明の抗体は、抗原結合が有害であり得る組織および環境においては抗原結合を選択的に阻止するが、それが有益であり得る組織および環境においては抗原結合を許容するように修飾される。一態様において、抗体の抗原結合表面に特異的に結合し、抗原結合を妨害する遮断ペプチド“マスク”が産生され、このマスクは、ペプチダーゼ開裂可能リンカーにより抗体の結合アームの各々に連結させる。例えば、米国特許第8,518,404号(CytomX)参照。このような構築物は、非腫瘍組織と比較して腫瘍微小環境においてプロテアーゼレベルが高度に上昇している癌の処置に有用である。腫瘍微小環境における開裂可能リンカーの選択的開裂は、抗原結合が望まない副作用を起こす末梢組織ではなく、腫瘍において選択的にマスキング/遮断ペプチドを解離させ、抗原結合させ得る。
あるいは、関連態様において、(二価)抗体の両抗原結合表面に結合し、抗原結合を妨害する2つの抗原結合ドメインを含む二価結合化合物(“マスキングリガンド”)が開発され、ここで、該2つの結合ドメインマスクは、例えばペプチダーゼにより開裂可能な、開裂可能リンカーで互いに(抗体ではない)連結されている。例えば、国際特許出願公開WO2010/077643(Tegopharm Corp.)参照。マスキングリガンドは、抗体による結合が意図される抗原を含むか、またはそれ由来でもよく、あるいは独立して産生されてもよい。このようなマスキングリガンドは、非腫瘍組織と比較して、腫瘍微小環境においてプロテアーゼレベルが高度に上昇している癌の処置に有用である。腫瘍微小環境における開裂可能リンカーの選択的開裂は、2つの結合ドメインの互いからの解離を可能にし、抗体の抗原結合表面に対するアビディティーを低減させる。その結果の、マスキングリガンドの抗体からの解離は、抗原結合が望まない副作用を起こす末梢組織ではなく、腫瘍において選択的な抗原結合を可能とする。
Fcおよび修飾Fc
本発明の抗体は、意図された使用のための抗体の生物学的活性(ある場合)に基づいて選択された、異なるFc領域を含む定常ドメインと組合せた本発明の可変ドメインを含んでいてよい。Salfeld (2007) Nat. Biotechnol. 25:1369。例えば、ヒトIgGは、4つのサブクラス、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4に分類することができ、これらの各々は、Fcγ受容体(活性化受容体FcγRI(CD64)、FcγRIIA、FcγRIIC(CD32,c);FcγRIIIAおよびFcγRIIIB(CD16a,b)および抑制性受容体FcγRIIB(CD32b)の1以上との結合について、および補体の第1成分(C1q)について、独特のプロファイルを有するFc領域を含む。ヒトIgG1およびIgG3は、全Fcγ受容体に結合する;IgG2はFcγRIIAH131に結合し、およびFcγRIIAR131 FcγRIIIAV158に低い親和性で結合する;IgG4は、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIICおよびFcγRIIIAV158に結合する;そして、阻害性受容体FcγRIIBは、IgG1、IgG2およびIgG3に対して他の全Fcγ受容体より低い親和性を有する。Bruhns et al. (2009) Blood 113:3716。FcγRIがIgG2に結合せず、FcγRIIIBがIgG2またはIgG4に結合しないことを示す試験がある。一般に、ADCC活性に関して、ヒトIgG1≧IgG3≫IgG4≧IgG2である。その結果、ADCCが望まれるとき、例えば、IgG2またはIgG4ではなく、IgG1定常ドメインが、薬物における使用のために選択されるはずである;FcγRIIIA発現NK細胞、単球またはマクロファージの活性化が望まれる場合、IgG3が選択されるはずである;そして、抗体がアレルギー患者の脱感作に使用される場合、IgG4が選択されるはずである。抗体が全エフェクター機能を欠くことが望ましい場合、IgG4がまた選択され得る。
本明細書に記載の抗huCD40可変領域は、Fc、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fcに連結(例えば、共有結合または融合)されてよく、これは、あらゆるアロタイプまたはイソアロタイプであり得て、例えば、IgG1に関して、G1m、G1m1(a)、G1m2(x)、G1m3(f)、G1m17(z);IgG2に関して、G2m、G2m23(n);IgG3に関して、G3m、G3m21(g1)、G3m28(g5)、G3m11(b0)、G3m5(b1)、G3m13(b3)、G3m14(b4)、G3m10(b5)、G3m15(s)、G3m16(t)、G3m6(c3)、G3m24(c5)、G3m26(u)、G3m27(v)であってよい。例えば、Jefferis et al. (2009) mAbs 1:1参照。アロタイプの選択は、例えば抗薬物抗体の形成を最小とするための、可能性のある免疫原性の懸念により影響を受け得る。
ある態様において、本発明の抗CD40抗体は、FcγRIIbに結合する、またはFcγRIIbへの結合が増強されているFcを有し、これは増強されたアゴニズムを提供し得る。例えば、WO2012/087928;Li & Ravetch (2011) Science 333:1030; Wilson et al. (2011) Cancer Cell 19:101;White et al. (2011) J. Immunol. 187:1754参照。本明細書に記載の可変領域は、阻害性受容体FcyRIIbに対する親和性を増強する、例えばアポトーシス誘導活性またはアジュバント活性を増強する、Fc変異体に連結されてよい。Li & Ravetch (2012) Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 109:10966;米国特許出願公開2014/0010812。かかる変異体は、例えばB細胞および単球を含むFcγRIIb+細胞に関係する免疫調節活性を有する抗体を提供し得る。一態様において、Fc変異体は、1以上の活性化受容体に比べて、FcγRIIbへの親和性の選択的増強を提供する。かかる変異体はまた、増強されたFcR介在架橋を示し、その結果、増強された治療効果をもたらし得る。FcγRIIbへの結合改変のための修飾は、EUインデックスにより、234、235、236、237、239、266、267、268、325、326、327、328および332からなる群より選択される位置での1以上の修飾を含む。FcyRllb親和性増強のための例示的な置換としては、234D、234E、234F、234W、235D、235F、235R、235Y、236D、236N、237D、237N、239D、239E、266M、267D、267E、268D、268E、327D、327E、328F、328W、328Yおよび332Eが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な置換としては、235Y、236D、239D、266M、267E、268D、268E、328F、328Wおよび328Yが挙げられる。FcyRllbへの結合を増強するための他のFc変異体は、235Y−267E、236D−267E、239D−268D、239D−267E、267E−268D、267E−268Eおよび267E−328Fが挙げられる。特に、ヒトIgG1のS267E−L328F二重変異を含むS267E、G236D、S239D、L328FおよびI332E変異体は、阻害性FcyRIIb受容体への親和性を特異的に増強する上で特に価値がある。Chu et al. (2008) Mol. Immunol. 45:3926;米国特許出願公開2006/024298;WO2012/087928。FcγRIIbへの増強された特異性(FcγRIIaR131と区別して)は、P238D置換および他の変異の付加(Mimoto et al. (2013) Protein. Eng. Des. & Selection 26:589;WO2012/1152410)、ならびにV262EおよびV264Eの付加(Yu et al. (2013) J. Am. Chem. Soc. 135:9723およびWO2014/184545)により得ることができる。WO2017/004006参照。
半減期の延長
特定の態様において、抗体を修飾して、その生物学的半減期を延長させる。種々の試みが可能である。例えば、これは、Fc領域のFcRnへの結合親和性を高めることにより行われ得る。ある態様において、米国特許5,869,046および6,121,022(Presta et al.)に記載のように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから採ったサルベージ受容体結合エピトープを含むように、抗体をCH1またはCL領域内で改変する。FcRnへの結合が増加したおよび/または薬物動態学的特性が改善した他のFcバリアントの例としては、例えば259I、308F、428L、428M、434S、434H、434F、434Yおよび434Mを含む、259位、308位および434位の置換が挙げられる。FcRnへのFc結合が増加した他の変異体は、250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hinton et al. (2004) J. Biol. Chem. 279(8): 6213-6216, Hinton et al. (2006) Journal of Immunology 176:346-356)、256A、272A、305A、307A、311A、312A、378Q、380A、382A、434A(Shields et al. (2001) Journal of Biological Chemistry, 276(9):6591-6604)、252F、252Y、252W、254T、256Q、256E、256D、433R、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H(Dall' Acqua et al. (2002) Journal of Immunology, 169:5171-5180, Dall'Acqua et al. (2006) Journal of Biological Chemistry 281:23514-23524)を含む。米国特許第8,367,805号参照。
N434Aバリアント(Yeung et al. (2009) J. Immunol. 182:7663)のような、IgG Fcにおけるある保存的残基(I253、H310、Q311、H433、N434)の修飾が、FcRn親和性を増大し、それにより循環における抗体半減期を延長する手段として提案されている。WO98/023289参照。M428LおよびN434Sを含む組合せFc変異体は、最大5倍のFcRn結合増加および血清半減期延長が示されている。Zalevsky et al. (2010) Nat. Biotechnol. 28:157。T307A、E380AおよびN434A修飾を含む組合せFc変異体も、IgG1抗体の半減期が延長される。Petkova et al. (2006) Int. Immunol. 18:1759。さらに、M252Y−M428L、M428L−N434H、M428L−N434F、M428L−N434Y、M428L−N434A、M428L−N434MおよびM428L−N434S変異を含む組合せFc変異体も半減期が延長されることが示されている。WO2009/086320参照。
さらに、M252Y、S254TおよびT256Eを含む組合せFc変異体は、半減期を約4倍に延長する。Dall'Acqua et al. (2006) J. Biol. Chem. 281:23514。FcRn親和性を増加させるが、pH依存性は低減する関連IgG1修飾(M252Y−S254T−T256E−H433K−N434F)が、FcRnへの他の抗体の結合を阻止するための競合体(competitor)として用いるIgG1構築物(“MST−HN Abdeg”)の創出に用いられており、内在性IgG(例えば、自己免疫性状況)または他の外来性(治療的)mAbのいずれかにおいて当該他の抗体のクリアランスの増加を生じる。Vaccaro et al. (2005) Nat. Biotechnol. 23:1283;WO2006/130834。
FcRn結合を増加させる他の修飾は、Yeung et al. (2010) J. Immunol. 182:7663-7671;6,277,375;6,821,505;WO97/34631;および、WO2002/060919に記載されている。
特定の態様において、ハイブリッドIgGアイソタイプを用いてFcRn結合を増加させ、おそらく半減期を延長させることができる。例えば、IgG1/IgG3ハイブリッド変異体を、CH2および/またはCH3領域におけるIgG1位置を、IgG3由来のアミノ酸で、これら2つのアイソタイプが異なる位置において置換することによって構築し得る。それゆえに、1以上の置換、例えば、274Q、276K、300F、339T、356E、358M、384S、392N、397M、422I、435Rおよび436Fを含むハイブリッドバリアントIgG抗体を構築し得る。本明細書に記載の他の態様において、IgG1/IgG2ハイブリッド変異体を、CH2および/またはCH3領域におけるIgG2位置を、IgG1由来のアミノ酸で、これら2つのアイソタイプが異なる位置において置換することによって構築し得る。それゆえに、1以上の置換、例えば、以下のアミノ酸置換:233E、234L、235L、−236G(位置236でのグリシンの挿入を意味する)および327Aの1以上を含む、ハイブリッド変異体IgG抗体を構築し得る。米国特許第8,629,113号参照。意図的に血清半減期延長および発現改善がされたIgG1/IgG2/IgG4配列のハイブリッドが産生されている。米国特許第7,867,491号(その中の配列番号18)。
本発明の抗体の血清半減期はまたペグ化により延長できる。例えば、抗体をペグ化して、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を延長できる。抗体をペグ化するために、抗体またはそのフラグメントを、一般に、ポリエチレングリコール(PEG)試薬、例えば、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体と、1以上のPEG基が抗体または抗体フラグメントと結合する条件下で反応させる。好ましくは、ペグ化を、反応性PEG分子(または類似反応性水−可溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応により実施する。本明細書で用いる用語“ポリエチレングリコール”は、モノ(C1−C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールあるいはポリエチレングリコール−マレイミドのような他のタンパク質の誘導体化に用いられているPEGのあらゆる形態を含むことを意図する。特定の態様において、ペグ化されるべき抗体はグリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化する方法は当分野で知られており、本明細書に記載の抗体に適用できる。例えば、EP0154316(Nishimuraら)およびEP0401384(Ishikawaら)参照。
あるいは、ある状況下では、本発明の抗体の半減期を、延長させるのではなく、短縮することが望ましいことがある。ヒトIgG1のFcにおけるI253A(Hornick et al., (2000) J. Nucl. Med. 41:355)およびH435A/R、I253AまたはH310A(Kim et al. (2000) Eur. J. Immunol. 29:2819)のような修飾は、医療造影のような迅速なクリアランスが好ましい状況において使用するために、FcRn結合を低減し、それゆえに半減期を短縮(クリアランス増加)し得る。Kenanova et al., (2005) Cancer Res. 65:622も参照。クリアランスを増強する他の手段は、FabフラグメントのようなFcRnを結合する能力を欠く抗体フラグメントとして、本発明の抗原結合ドメインを形成することを含む。このような修飾は、抗体の循環半減期を、数週間からほんの数時間に短縮できる。次いで、抗体フラグメントの選択的ペグ化を用いて、必要に応じて、抗体フラグメントの半減期を微調整(延長)できる。Chapman et al. (1999) Nat. Biotechnol. 17:780。抗体フラグメントを、半減期を延長させるために、例えば、融合タンパク質構築物において、ヒト血清アルブミンと融合させることもできる。Yeh et al., (1992) Proc. Nat'l Acad. Sci. 89:1904。あるいは、二重特異性抗体を、本発明の第一抗原結合ドメインおよびヒト血清アルブミン(HSA)に結合する第二抗原結合ドメインを用いて構築し得る。国際特許出願公開WO2009/127691およびそこに引用された特許参考文献を参照。あるいは、特殊化されたポリペプチド配列、例えば“XTEN”ポリペプチド配列を抗体フラグメントに付加して、半減期を延長できる。Schellenberger et al., (2009) Nat. Biotechnol. 27:1186;国際特許出願公開WO2010/091122。
さらなるFc変異体
IgG4定常ドメインを用いるとき、置換228Pを包含させることが通常好ましく、これは、IgG1におけるヒンジ配列を模倣し、それゆえに、IgG4分子を安定化し、例えば治療抗体と処置患者における内在性IgG4の間のFabアーム交換を減少させる。Labrijn et al., (2009) Nat. Biotechnol. 27:767; Reddy et al., (2000) J. Immunol. 164:1925。
IgG1構築物のヒンジにおける可能性のあるプロテアーゼ開裂部位を、D221GおよびK222S修飾により排除し、抗体の安定性を増加させることができる。WO2014/043344。
Fcバリアントのそのリガンド(Fc受容体)に対する親和性および結合特性を、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA))または動態(例えば、BIACORE(登録商標)SPR分析)ならびに間接的結合アッセイ、競合的阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)のような他の方法を含むが、これらに限定されない、当技術分野で公知の種々のインビトロアッセイ法(生化学的または免疫学的ベースのアッセイ)により決定できる。これらおよび他の方法は、試験すべき構成成分の1以上の標識および/または発色標識、蛍光標識、発光標識または同位体標識を含むが、これらに限定されない多様な検出方法を用いることができる。結合親和性および動態の詳細な記載は、抗体−免疫原相互作用に焦点を当てる、Paul, W. E., ed., Fundamental Immunology, 4th Ed., Lippincott-Raven, Philadelphia (1999)に見いだされ得る。
さらに他の態様において、抗体のグリコシル化を、エフェクター機能の増強または低減のために修飾する。例えば、位置297の保存的アスパラギン残基の変異(例えばN297A)により、全エフェクター機能を欠き、ゆえに、補体およびFcγRI結合を欠く非グリコシル化抗体を作製することができる。Bolt et al., (1993) Eur. J. Immunol. 23:403。Tao & Morrison (1989) J. Immunol. 143:2595も参照(位置297のグリコシル化排除のためにIgG1のN297Qを使用)。
非グリコシル化抗体は、一般にエフェクター機能を欠くが、変異を導入してその機能を保持させることができる。非グリコシル化抗体、例えばN297A/C/D/またはH変異由来のものまたはタンパク質をグリコシル化しないシステム(例えば大腸菌)で産生させたものを、さらに変異させて、例えばS298Gおよび/またはT299A/G/またはH(WO2009/079242)またはE382VおよびM428I(Jung et al., (2010) Proc. Nat'l Acad. Sci (USA) 107:604)、FcγR結合を保持し得る。
糖エンジニアリングを使用して、Fc領域のAsn297に結合した炭水化物鎖のα2,6シアリル含量の変化により、IgG構築物の抗炎症性特性を修飾することでき、ここで、α2,6シアル酸付加形態の割合の増加が抗炎症性効果増強に至る。Nimmerjahn et al. (2008) Ann. Rev. Immunol. 26:513参照。逆に、α2,6シアル酸付加炭水化物を有する抗体の割合の減少が、抗炎症性特性が望まれない場合に有用であり得る。例えば、α2,6シアル酸付加形態の選択的精製または酵素修飾により、抗体のα2,6シアル酸付加含量を改変する方法が、米国特許出願公開第2008/0206246号に提供される。他の態様において、Fc領域のアミノ酸配列を修飾して、例えば、F241A修飾の包含により、α2,6シアル酸付加の効果を模倣することができる。WO2013/095966。
III.抗体物理的特性
本明細書に記載の抗体は、軽鎖または重鎖可変領域のいずれかに1以上のグリコシル化部位を含み得る。このようなグリコシル化部位は、抗原結合の改変により、抗体の免疫原性増加または抗体のpKの改変をもたらし得る(Marshall et al. (1972) Ann. Rev. Biochem. 41:673-702; Gala and Morrison (2004) J. Immunol 172:5489-94; Wallick et al. (1988) J. Exp. Med. 168:1099-109; Spiro (2002) Glycobiology 12:43R-56R; Parekh et al. (1985) Nature 316:452-7; Mimura et al. (2000) Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N−X−S/T配列を含むモチーフで生じることが知られている。ある状況において、可変領域グリコシル化を含まない抗huCD40抗体を有することが好ましい。これは、可変領域にグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択するか、グリコシル化領域内の残基を変異させることにより、達成できる。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、アスパラギン異性化部位を含まない。アスパラギンの脱アミド化は、N−GまたはD−G配列で生じ得て、その結果、ポリペプチド鎖にねじれを導入し、その安定性を低減し得るイソアスパラギン酸残基の創出に至り得る(イソアスパラギン酸効果)。
各抗体は、固有の等電点(pI)を有し、これは、一般にpH6〜9.5の範囲に入る。IgG1抗体のpIは、一般にpH7〜9.5の範囲に入り、IgG4抗体のpIは、一般にpH6〜8の範囲に入る。正常範囲外のpIを有する抗体は、若干変性(unfolding)しており、インビボ条件下で不安定であり得ると推測される。従って、正常範囲に入るpI値を含む抗CD40抗体を有することが好ましい。これは、正常範囲のpIを有する抗体の選択または荷電表面残基の変異により達成される。
各抗体は、特徴的融解温度を有し、融解温度が高いほど、インビボでの全体的安定性がより高いことを示す(Krishnamurthy & Manning (2002) Curr. Pharm. Biotechnol. 3:361-71)。一般に、TM1(最初の変性温度)が60℃より高いのが好ましく、好ましくは65℃より高い、よりさらに好ましくは70℃より高い。抗体の融点は、示差走査熱量測定(Chen et al. (2003) Pharm Res 20:1952-60; Ghirlando et al. (1999) Immunol Lett. 68:47-52)または円二色性(Murray et al. (2002) J. Chromatogr Sci 40:343-9)を用いて測定できる。好ましい態様において、急速に分解しない抗体を選択する。抗体の分解は、キャピラリー電気泳動(CE)およびMALDI−MSを用いて測定できる(Alexander & Hughes (1995) Anal Chem. 67:3626-32)。
別の好ましい態様において、最小凝集効果を有する抗体を選択し、凝集効果は、望まない免疫応答の惹起および/または改変されたもしくは不都合な薬物動態特性に至り得る。一般に、25%以下、好ましくは20%以下、よりさらに好ましくは15%以下、よりさらに好ましくは10%以下およびよりさらに好ましくは5%以下の凝集を有する抗体が許容される。凝集は、サイズ排除カラム(SEC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および光散乱を含む、いくつかの技術により測定できる。
IV.核酸分子
本明細書に記載の別の面は、本明細書に記載の抗体をコードする核酸分子である。核酸は、細胞全体中、細胞溶解物中または一部精製したもしくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、他の細胞成分または他の汚染物、例えば、他の細胞核酸(例えば、他の染色体DNA、例えば、天然で単離されたDNAと連結している染色体DNA)またはタンパク質から、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、制限酵素、アガロースゲル電気泳動および当技術分野で周知のその他を含む標準技術により精製されたとき、“単離”されまたは“実質的に純粋”である。F. Ausubel, et al., ed. (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York参照。本明細書に記載の核酸は、例えば、DNAでもRNAでもよく、イントロン配列を含んでも、含んでいなくてもよい。特定の態様において、核酸はcDNA分子である。
本明細書に記載の核酸を、標準分子生物学技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、さらに以下に記載するような、ヒト免疫グロブリン遺伝子を担持するトランスジェニックマウスから調製したハイブリドーマ)により発現される抗体に関して、ハイブリドーマにより産生された抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準PCR増幅またはcDNAクローニング技術により得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリー(例えば、ファージディスプレイ技術を用いる)から得られた抗体に関して、抗体をコードする核酸をライブラリーから回収できる。
VHおよびVLセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたら、これらのDNAフラグメントを、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子に、Fabフラグメント遺伝子にまたはscFv遺伝子に変換するために、標準組み換えDNA技術によりさらにエンジニアリングし得る。これらの操作において、VL−またはVH−コード化DNAフラグメントは、抗体定常領域または可動性リンカーのような他のタンパク質をコードする他のDNAフラグメントに操作可能に連結される。この文脈で用いる用語“操作可能に連結”は、2つのDNAフラグメントが、該2つDNAフラグメントによりコードされるアミノ酸配列がフレーム内のままであるように連結されることを意味することを意図する。
VH領域をコードする単離DNAは、VHコード化DNAを重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2および/またはCH3)をコードする他のDNA分子と操作可能に連結することにより、完全長重鎖遺伝子に変換できる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られており(例えば、Kabat, E. A. el al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準PCR増幅により得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域、例えば、IgG1領域であり得る。Fabフラグメント重鎖遺伝子に関して、VHコード化DNAを、重鎖CH1定常領域のみをコードする他のDNA分子に操作可能に連結できる。
VL領域をコードする単離DNAは、軽鎖定常領域CLをコードする他のDNA分子にVLコード化DNAを操作可能に連結することにより、完全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換できる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られており(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準PCR増幅により得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であり得る。
scFv遺伝子を創出するために、VHおよびVLコード化DNAフラグメントを、可動性リンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly4−Ser)3をコードする他のフラグメントと、VHおよびVL配列が隣接一本鎖タンパク質として発現でき、VL領域とVH領域が可動性リンカーにより連結しているように、操作可能に連結される(例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426; Huston et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-554参照)。
V.抗体産生
CD40に対するモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの作製
配列が提供されている特定の抗体および他の関連抗CD40抗体の両者を含む本発明の抗体を、当技術分野で周知のように、例えば、組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション法の組合せを用いて、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生させ得る(Morrison, S. (1985) Science 229:1202)。
例えば、抗体またはその抗体フラグメントを発現させるために、軽鎖および重鎖の一部または完全長をコードするDNAを、標準分子生物学技術(例えば、目的の抗体を発現するハイブリドーマを用いるPCR増幅またはcDNAクローニング)により得ることができ、該DNAを、該遺伝子が転写および翻訳制御配列に操作可能に連結するように、発現ベクターに挿入できる。この文脈において、用語“操作可能に連結”は、抗体遺伝子が、ベクター内での転写および翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を制御する意図する機能を発揮するように、ベクターにライゲートされることを意味することを意図する。発現ベクターおよび発現制御配列は、用いる発現宿主細胞と適合するように選択する。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子を、別々のベクターに挿入しても、両遺伝子同じ発現ベクターに挿入してもよい。抗体遺伝子は、標準方法(例えば、抗体遺伝子フラグメントおよびベクター上の相補性制限部位のライゲーションまたは制限部位が存在しないならば平滑末端ライゲーション)により発現ベクターに挿入される。本明細書に記載の抗体の軽鎖および重鎖可変領域を用いて、VHセグメントがベクター内のCHセグメントに操作可能に連結し、VLセグメントがベクター内のCLセグメントに操作可能に連結するように、所望のアイソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクターにそれらを挿入することにより、あらゆる抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を創出できる。これに加えてまたはこれとは別に、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子を、シグナルペプチドが、抗体鎖遺伝子のアミノ末端にフレーム内で連結されるように、ベクターにクローン化できる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
抗体鎖遺伝子に加えて、組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する制御配列を担持し得る。用語“制御配列”は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御する、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。このような制御配列は、例えば、Goeddel (Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990))に記載される。制御配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換する宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような因子に依存し得ることは、当業者には認識され得る。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい制御配列は、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーのような、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を支持するウイルス要素を含む。あるいは、ユビキチンプロモーターまたはβ−グロビンプロモーターのような非ウイルス制御配列を用い得る。なおさらに、SV40早期プロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルス1型の末端反復配列由来の配列を含む、SRαプロモーターシステムのような異なる起源由来の配列からなる制御要素を用い得る(Takebe, Y. et al., (1988) Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。
抗体鎖遺伝子および制御配列に加えて、組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を制御する配列(例えば、複製起点)および選択可能マーカー遺伝子のようなさらなる配列を担持し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号(全てAxelら)参照)。例えば、一般に、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞に、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートのような薬物に対する耐性を付与する。好ましい選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(dhfr−宿主細胞とメトトレキサート選択/増幅を使用するために)およびneo遺伝子(G418選択のために)を含む。
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを、標準技術により宿主細胞にトランスフェクトする。用語“トランスフェクション”の種々形態は、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどの、原核または真核宿主細胞に外来性DNAを導入するのに一般に用いられる幅広い多くの技術を含むことを意図する。本明細書に記載の抗体を原核または真核宿主細胞で発現させることは理論的には可能であるが、真核細胞および最も好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が、このような真核細胞および特に哺乳動物細胞が原核細胞よりも適切に折りたたまれ、免疫学的に活性な抗体を構築し、分泌する可能性が高いため、最も好ましい。抗体遺伝子の原核細胞発現は、活性抗体の高収率での産生に無効であることが報告されている(Boss, M. A. and Wood, C. R. (1985) Immunology Today 6:12-13)。本発明の抗体はまた、酵母ピキア・パストリスの糖改変株でも産生され得る。Li et al., (2006) Nat. Biotechnol. 24:210。
本明細書に記載の組換え抗体の発現に好ましい哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、R. J. Kaufman and P. A. Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601-621に記載のようにDHFR選択可能マーカーと共に用いる、Urlaub and Chasin (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載のdhfr− CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。特に、NSO骨髄腫細胞と用いるために、別の好ましい発現システムは、WO87/04462、WO89/01036およびEP338,841に開示のGS遺伝子発現システムである。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されたとき、抗体は、宿主細胞における抗体の発現または、より好ましくは、宿主細胞が増殖している培養培地への抗体の分泌を可能とするのに十分な時間、宿主細胞を培養することにより産生される。抗体を、標準タンパク質精製法を用いて、培養培地から回収できる。
本発明の抗体ポリペプチド鎖のNおよびC末端は、一般に観察される翻訳後修飾により、予想される配列と異なるかもしれない。例えば、C末端リシン残基は、抗体重鎖から欠失していることが多い。Dick et al. (2008) Biotechnol. Bioeng. 100:1132。N末端グルタミン残基および程度は少ないがグルタミン酸残基は、治療抗体の軽鎖および重鎖の両者でピログルタミン酸残基に変換されることが多い。Dick et al. (2007) Biotechnol. Bioeng. 97:544; Liu et al. (2011) J. Biol. Chem. 286:11211。
本発明の種々のアゴニスト抗huCD40抗体についてのアミノ酸配列を、表7にまとめる配列リストに提供する。上記の理由により、C末端リシンは、重鎖または重鎖定常ドメインの配列リストのどの配列にも含まれていない。しかしながら、別の態様では、本発明の抗huCD40抗体の各重鎖、および/あるいはそのような抗体またはその重鎖もしくは軽鎖をコードする遺伝子構築物は、重鎖の一方または両方のC末端にこの追加のリシン残基を含む。
VI.アッセイ
本明細書に記載の抗体を、例えば、標準ELISAにより、CD40への結合について試験できる。すなわち、マイクロタイタープレートを、PBS中1〜2μg/mlの精製CD40でコーティングし、次いでPBS中5%ウシ血清アルブミンでブロッキングする。抗体の希釈物(例えば、CD40免疫化マウスの血漿の希釈物)を各ウェルに添加し、37℃にて1〜2時間インキュベートする。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートした二次試薬(例えば、ヒト抗体について、ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル試薬)と、37℃にて1時間インキュベートする。洗浄後、プレートをABTS基質(Moss Inc.、製品: ABTS-1000)と反応させ、分光光度計でOD415〜495で分析する。次いで、免疫化マウスからの血清を、ヒトCD40を発現する細胞株に結合するが、CD40を発現しない対照細胞株に結合しないことについて、フローサイトメトリーによりさらにスクリーニングする。すなわち、抗CD40抗体の結合を、CD40発現CHO細胞と、抗CD40抗体を、1:20希釈でインキュベートすることにより評価する。細胞を洗浄し、結合を、PE標識抗ヒトIgG Abを用いて検出する。フローサイトメトリー分析を、FACScanフローサイトメトリー(Becton Dickinson, San Jose, CA)を用いて行う。好ましくは、最高力価を発生させるマウスを融合に用いる。マウス抗huCD40抗体を検出する場合は、抗マウス検出抗体を用いて同様の試験を行うことができる。
上記のようなELISAアッセイを用いて抗体をスクリーニングし、それゆえに、CD40免疫原と陽性反応性を示す抗体を生産するハイブリドーマをスクリーニングできる。次いで、好ましくは高親和性で、CD40に結合する抗体を生産するハイブリドーマをサブクローン化し、さらに特徴付けすることができる。次いで、親細胞の反応性を保持する(ELISAによる)各ハイブリドーマからの1クローンを、細胞バンクの製造および抗体精製のために選択できる。
抗CD40抗体を精製するために、選択ハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製のために2リットルスピナーフラスコ中で増殖させ得る。上清を濾過し、濃縮して、その後プロテインA−セファロースを用いる親和性クロマトグラフィー(Pharmacia, Piscataway, NJ)に付し得る。溶出IgGを、純度確認のためゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーで確認できる。緩衝液をPBSに交換してよく、濃度を、1.43吸光係数(extinction coefficient)を用いてOD280により決定できる。モノクローナル抗体を分注し、−80℃で保存してよい。
選択抗CD40モノクローナル抗体が固有のエピトープに結合するかを決定するために、各抗体を、市販試薬(Pierce, Rockford, IL)を用いてビオチニル化できる。ビオチニル化mAb結合を、ストレプトアビジン標識プローブで検出できる。非標識モノクローナル抗体およびビオチニル化モノクローナル抗体を用いる競合試験を、上記のようにCD40被覆ELISAプレートを用いて実施できる。
精製抗体のアイソタイプを決定するために、アイソタイプELISAを、特定のアイソタイプの抗体に特異的な試薬を用いて実施できる。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを決定するために、マイクロタイタープレートのウェルを、1μg/mlの抗ヒト免疫グロブリンで、4℃にて一夜被覆できる。1%BSAでブロッキング後、プレートを1μg/ml以下の試験モノクローナル抗体または精製アイソタイプ対照と、環境温度で1〜2時間反応させる。次いで、ウェルをヒトIgG1またはヒトIgM特異的アルカリホスファターゼコンジュゲートプローブと反応させる。プレートを、上記のように反応させ、分析する。
CD40を発現する生存細胞へのモノクローナル抗体の結合を試験するために、フローサイトメトリーを用い得る。簡潔にいうと、膜結合CD40を発現する細胞株(標準増殖条件下で増殖)を、0.1%BSA含有PBS中、種々の濃度のモノクローナル抗体と4℃にて1時間混合する。洗浄後、細胞を、一次抗体染色と同一条件下、フィコエリトリン(PE)標識抗IgG抗体と反応させる。サンプルを、単一細胞をゲーティングする光および側方散乱性質を使用するFACScan装置により分析し、標識抗体の結合を決定する。蛍光顕微鏡を用いる代替アッセイを、フローサイトメトリーアッセイに加えてまたはその代わりに用い得る。細胞をまさに上記のように染色し、蛍光顕微鏡で試験できる。この方法は、個々の細胞の可視化を可能にするが、抗原の密度により感受性が低下し得る。
抗huCD40抗体を、ウェスタンブロッティングによりCD40抗原との反応性についてさらに試験し得る。すなわち、CD40発現細胞からの細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に付し得る。電気泳動後、分離した抗原をニトロセルロース膜に移し、20%マウス血清でブロッキングし、試験すべきモノクローナル抗体でプローブする。IgG結合を抗IgGアルカリホスファターゼを用いて検出し、BCIP/NBT基質錠剤(Sigma Chem, Co., St. Louis, MO)で発色させ得る。
多様な抗CD40抗体の結合親和性、交差反応性および結合動態を分析する方法は、当技術分野で知られる標準アッセイ、例えば、BIACORE(登録商標)2000 SPR装置(Biacore AB, Uppsala, Sweden)を用いる、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)分析を含む。
一態様において、抗体は、ヒトCD40の細胞外領域に特異的に結合する。抗体は、CD40の細胞外ドメイン内の特定のドメイン(例えば、機能性ドメイン)に特異的に結合し得る。特定の態様において、抗体は、ヒトCD40の細胞外領域およびカニクイザルCD40の細胞外領域に特異的に結合する。好ましくは、抗体は、高親和性でヒトCD40に結合する。
VII.二重特異性分子
本明細書に記載の抗体を、二重特異性分子の形成に使用し得る。抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを、別の官能性分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質(例えば、受容体に対する別の抗体またはリガンド)で誘導体化または連結して、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を産生できる。本明細書に記載の抗体は、実際1個を超える他の官能性分子で誘導体化または連結して、2つを超える異なる結合部位および/または標的分子と結合する多特異的分子を産生できる;このような多特異的分子も、本明細書で用いる用語“二重特異性分子”に包含されることを意図する。本明細書に記載の二重特異性分子を創出するために、本明細書に記載の抗体を、二重特異性分子が生じるように、他の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたは結合模倣剤のような1以上の他の結合分子と(例えば、化学カップリング、遺伝的融合、非共有結合的結合またはその他により)機能的に連結できる。
したがって、本発明は、CD40に対する少なくとも1つの第1の結合特異性および第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む、二重特異性分子を提供する。二重特異性分子が多特異的である本明細書に記載の態様において、分子は、第3の結合特異性をさらに含み得る。
一態様において、本明細書に記載の二重特異性分子は、結合特異性として、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvまたは単鎖Fvを含む、少なくとも1個の抗体またはその抗体フラグメントを含む。抗体はまた、軽鎖または重鎖二量体あるいは何らかのその最小フラグメント、例えば、Ladnerらの米国特許第4,946,778号(その内容は引用により明示的に本明細書に包含される)に記載のようなFvまたは単鎖構築物であってもよい。
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本明細書に記載の二重特異性分子に用いられ得る他の抗体としては、マウス、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体が挙げられる。
本明細書に記載の二重特異性分子は、当技術分野で公知の方法を用いて、構成要素の結合特異性を共役化することにより作製できる。例えば、二重特異性分子の各結合特異性は、個別に生成され、次いで互いに合し得る。結合特異性がタンパク質またはペプチドであるとき、種々のカップリング剤または架橋剤を共有結合に用い得る。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5'−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)およびスルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロハキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky et al. (1984) J. Exp. Med. 160:1686; Liu, MA et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648参照)。他の方法には、Paulus (1985) Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132; Brennan et al. (1985) Science 229:81-83、およびGlennie et al. (1987) J. Immunol. 139: 2367-2375に記載の方法がふくまれる。好ましい共役剤は、SATAおよびスルホ−SMCCであり、両方ともPierce Chemical Co.(Rockford、IL)から入手可能である。
結合特異性分子が抗体であるとき、それらは2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して結合(コンジュゲーション)可能である。特に好ましい態様において、ヒンジ領域は、コンジュゲーション前に、奇数個の、好ましくは1個のスルフヒドリル残基を含むように修飾される。
あるいは、両結合特異性分子を同じベクター内にコードし、同じ宿主細胞内で発現および組み立てることもできる。この方法は、二重特異性分子が、mAb x mAb、mAb x Fab、Fab x F(ab’)2またはリガンド x Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。本明細書に記載の二重特異性分子は、1つの単鎖抗体および結合決定基を含む単鎖分子であるか、または2つの結合決定基を含む単鎖に二重特異性分子であり得る。二重特異性分子は、少なくとも2つの単鎖分子を含み得る。二重特異性分子を作製する方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;同第5,455,030号;同第4,881,175号;同第5,132,405号;同第5,091,513号;同第5,476,786号;同第5,013,653号;同第5,258,498号;および、同第5,482,858号に記載されている。
それらの特異的標的への二重特異性分子の結合は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害)、またはウェスタンをブロットアッセイなどの当技術分野で認識された方法を用いて確認することができる。これらのアッセイのそれぞれは、一般的に、目的の複合体に特異的な標識試薬(例えば、抗体)を用いることにより、特定の目的のタンパク質−抗体複合体の存在を検出する。
VIII.組成物
本発明は、薬学的に許容される担体と共に製剤される、本明細書に記載の1以上の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを含む組成物、例えば医薬組成物をさらに提供する。かかる組成物は、本明細書に記載の(例えば、2以上の異なる)抗体、または免疫複合体もしくは二重特異性分子のうち1つまたは組み合わせを含み得る。例えば、本明細書に記載の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合するか、または相補的な活性を有する抗体(または免疫複合体もしくは二重特異性分子)の組み合わせを含み得る。
特定の態様において、組成物は、抗CD40抗体を、少なくとも1mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、50mg/ml、100mg/ml、150mg/ml、200mg/ml、または1−300mg/mlもしくは100−300mg/mlの濃度で含む。
本明細書に記載の医薬組成物はまた、併用療法において、すなわち、他の薬剤と組合せて投与され得る。例えば、併用療法は、本明細書に記載の抗CD40抗体を少なくとも1つの他の抗癌剤および/またはT細胞刺激剤(例えば、活性化剤)と組み合わせることを含む。併用療法で用いられ得る療法剤の例は、本明細書に記載の抗体の使用の項で以下にさらに詳細に記載されている。
ある態様において、本明細書に記載の治療用組成物は、癌の処置に用いられる他の化合物、薬剤および/または薬物を含んでいてよい。かかる化合物、薬剤および/または薬物としては、例えば、化学療法剤、小分子薬剤または所与の癌に対する免疫応答を刺激する抗体が挙げられる。いくつかの例において、治療用組成物としては、例えば、抗CTLA−4抗体、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、抗TIGIT抗体、抗OX40(CD134、TNFRSF4、ACT35および/またはTXGP1Lとしても公知)抗体、抗LAG−3抗体、抗CD73抗体、抗CD137抗体、抗CD27抗体、抗CSF−1R抗体、TLRアゴニストまたはIDOもしくはTGFβの小分子アンタゴニストが挙げられる。
本明細書で用いる“薬学的に許容される担体”は、生理学的に適合性である、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与(例えば、注射または点滴による)に適する。投与経路により、活性化合物、すなわち、抗体、免疫複合体または二重特異性分子を、該化合物を不活化し得る酸および他の天然条件から該化合物を保護する物質でコーティングし得る。
本明細書に記載の医薬化合物は、1以上の薬学的に許容される塩を含み得る。“薬学的に許容される塩”は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、望まない毒性効果を何ら付与しない塩を意味する(例えば、Berge, S.M., et al., (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19)。このような塩の例は、酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、亜リン酸塩などのような非毒性無機酸ならびに脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などのような非毒性有機酸由来のものを含む。塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのようなアルカリ土類金属ならびにN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどのような非毒性有機アミン由来のものを含む。
本明細書に記載の医薬組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化剤も含み得る。薬学的に許容される抗酸化剤の例は、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどのような水可溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなどのような油可溶性抗酸化剤;および(3)クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などのような金属キレート剤を含む。
本明細書に記載の医薬組成物で用い得る適当な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)および適当なこれらの混合物、オリーブ油のような植物油およびオレイン酸エチルのような注射用有機エステルを含む。適切な流動性を、例えば、レシチンのようなコーティング物質の使用により、分散製剤の場合必要な粒子径の維持により、そして界面活性剤の使用により維持できる。
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントも含み得る。微生物の存在の防止は、上記の滅菌法および種々の抗細菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含ませることの両者により確実にできる。組成物に糖、塩化ナトリウムなどのような等張剤を含ませることも望ましいことがある。さらに、注射用医薬形態の持続吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる薬剤を含ませることにより達成し得る。
薬学的に許容される担体は、無菌水溶液または分散液および無菌注射用溶液または分散液の即座の調製のための無菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬物の使用は当分野で公知である。ある常用の媒体または薬物が活性化合物と非適合性ではない限り、本明細書に記載の医薬組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性化合物も組成物に包含させ得る。
治療組成物は、一般に製造および保存条件下で、無菌かつ安定でなければならない。組成物を溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは他の高薬物濃度に適する規則的構造として製剤できる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)および適当なこれらの混合物を含む、溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性を、例えば、レシチンのようなコーティング物質の使用により、分散製剤の場合必要な粒子径の維持によりおよび界面活性剤の使用により維持できる。
無菌注射用溶液を、必要な量の活性化合物を、適切な溶媒に、必要に応じて上記成分の1個または組み合わせと共に組み込み、次いでマイクロ濾過により滅菌することにより調製できる。一般に、分散剤は、活性化合物を、塩基性分散媒体および上記のものからの必要な他の成分を含む、無菌媒体に取り込むことにより調製する。無菌注射用溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製法は、予め無菌濾過した溶液からの活性成分とさらなる所望の成分の粉末が得られる、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
単一投与量形態を作製するために担体物質と組み合わせ得る活性成分の量は、処置すべき対象および特定の投与方法により変わる。単一投与量形態を作製するために担体物質と組み合わせ得る活性成分の量は、一般に治療効果を生じる組成物の量である。一般に、100%中、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わせた約0.01パーセント〜約99パーセントの活性成分、好ましくは約0.1パーセント〜約70パーセント、最も好ましくは約1パーセント〜約30パーセントの活性成分の範囲である。
投与量レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)が提供されるように調節される。例えば、1回のボーラスを投与してよく、数分割用量を長い期間をかけて投与してよくまたは治療状況の緊急度により示されるように、用量を徐々に減らしても増やしてもよい。投与の容易さおよび用量の均一さのために、非経腸組成物を投与量単位形態に製剤するのが特に有利である。本明細書で用いる投与量単位形態は、処置すべき対象のための単位投与量として適する物理的に分かれた単位であり、各単位は、必要な医薬担体と共に、所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性化合物を含む。本明細書に記載の投与量単位形態の仕様は、(a)活性化合物の固有の特徴および達成すべき特定の治療効果、ならびに(b)個体の感受性に対するこのような活性化合物の処置における当技術分野に固有の制限、によって定められ、これらに直接的に依存する。
抗体の投与について、投与量は、約0.0001〜100mg/宿主体重kgの範囲であり、より一般には0.01〜5mg/宿主体重kgの範囲である。例えば投与量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg体重または1〜10mg/kgの範囲内である。例示的処置レジメは、週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、月1回、3ヶ月に1回または3〜6ヶ月に1回の投与を必要とする。
ある方法において、異なる結合特異性を有する2以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、この場合、投与する各抗体の投与量は、示された範囲内に入る。治療用抗体は、通常複数回投与する。一投与量の間の間隔は、例えば、週、月、3ヶ月または年であり得る。患者における標的抗原に対する抗体の血中レベルの測定により指示されるように、間隔は不規則でもよい。ある方法において、投与量を、約1〜1000μg/ml、ある方法において約25〜300μg/mlの血漿抗体濃度となるよう調節する。
抗体を、持続放出製剤として投与でき、この場合、必要な投与頻度は少ない。投与量および頻度は、患者における抗体の半減期により変わる。一般に、ヒト抗体は、最長半減期を示し、続いてヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体である。投与量および頻度は、処置が予防的であるかまたは治療的であるかにより変わり得る。予防適用において、長期間にわたり、比較的低投与量を、比較的低頻度の間隔で投与する。ある患者は、死亡するまで処置を受け続ける。治療適用において、比較的短い間隔で比較的高投与量が、疾患の進行が低減するか停止するまで、好ましくは患者が疾患症の部分的なまたは完全な改善を示すまで、時には必要である。その後、多くの免疫腫瘍学の適応症では継続処置は必要ないが、患者に予防レジメンを投与することができる。
本明細書に記載の医薬組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性ではなく、特定の患者、組成物および投与方法で所望の治療応答を達成するのに有効である活性成分の量を得るように、変えてよい。選択された投与量レベルは、用いる本明細書に記載の特定の組成物またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排泄速度、処置の期間、他の薬物、用いる特定の組成物と組み合わせて使用する他の薬物、化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、病状、全般的健康状態および既往症ならびに医薬分野で周知の類似要素を含む、多くの薬物動態要素により変わる。
本明細書に記載の抗CD40抗体の“治療有効投与量”は、好ましくは疾患症状の重症度の軽減、無疾患症状期間の頻度および期間の増大または疾患罹患による機能障害もしくは身体障害の予防をもたらす。癌の状況において、治療有効用量は、好ましくは癌と関連する身体的症状のさらなる悪化を予防する。癌の症状は当分野で周知であり、例えば、異常な黒子特徴、非対称、境界、色および/または直径を含む黒子の見かけの変化、新たに着色された皮膚領域、異常黒子、爪の下の黒ずんだ領域、乳房腫瘤、乳頭変化、乳房嚢胞、乳房痛、死亡、体重減少、弱化、過度の疲労、摂食困難、食欲減退、慢性の咳、進行性息切れ、喀血、血尿、血便、悪心、嘔吐、肝臓転移、肺転移、骨転移、腹部膨満、鼓腸、腹水、膣出血、便秘、腹部膨張、結腸穿孔、急性腹膜炎(感染、発熱、疼痛)、疼痛、吐血、重度発汗、発熱、高血圧、貧血、下痢、黄疸、めまい、悪寒、筋肉痙攣、結腸転移、肺転移、膀胱転移、肝臓転移、骨転移、腎臓転移および膵臓転移、嚥下困難などを含む。治療効果は、本発明のアゴニスト抗huCD40mAbの最初の投与直後に観察できるか、または一定期間および/または一連の投与後にのみ観察され得る。このような効果の遅れは、数か月後、最大6月、9月または12月後にのみ観察される。本発明のアゴニスト抗huCD40 mAbは、幾つかの免疫腫瘍剤によって示される遅延効果に照らして、治療効果がないということを時期尚早に決定しないことが重要である。
治療有効用量は、癌の発症を、該疾患の早期または先行徴候が存在するときに望まれるように、予防または遅延し得る。癌の診断に利用する臨床検査は、化学(可溶性CD40またはCD40Lレベル測定を含む)(Hock et al. (2006) Cancer 106:2148; Chung & Lim (2014) J. Trans. Med. 12:102)、血液学、血清学および放射線学を含む。したがって、前記のいずれかをモニターするあらゆる臨床的または生化学的アッセイを、特定の処置が、癌処置に治療有効用量であるか否かを決定するために使用し得る。当業者は、対象の体格、対象の症状の重症度および選択した特定の組成物または投与経路のような因子に基づき、このような量を決定できる。
本明細書に記載の組成物を、当技術分野で知られる1以上の多くの方法を用いて、1以上の投与経路で投与できる。当業者には明らかなとおり、投与経路および/または方法は、所望の結果によって変わる。本明細書に記載の抗体の好ましい投与経路は、例えば注射または点滴による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経腸投与経路を含む。本明細書で用いる用語“非経腸投与”は、通常注射による、経腸および局所投与以外の投与方式をいい、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および点滴を含むが、これらに限定されない。
あるいは、本明細書に記載の抗体を、局所、上皮または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下または局所的のような非経腸ではない経路で投与できる。
活性化合物を、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む、制御放出製剤のような、急速な放出から化合物を保護する担体を用いて製造できる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生分解性、生体適合性ポリマーを用い得る。このような製剤の製造のための多くの方法が特許されるか、または当業者に一般に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978参照。
治療組成物を、当技術分野で知られる医療装置を用いて投与できる。例えば、好ましい態様において、本明細書に記載の治療組成物を、米国特許第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号;または同第4,596,556号に開示の装置のような無針皮下組織注射器で投与できる。本明細書に記載の抗huCD40抗体で用いるための周知のインプラントおよびモジュールの例としては、米国特許第4,487,603号(制御された速度で薬を分配するためのインプラント可能微量注入ポンプを記載);米国特許4,486,194(皮膚から薬を投与するための治療デバイスを記載);米国特許第4,447,233号(正確な注射速度で薬を送達するための投薬注入ポンプを記載);米国特許第4,447,224号(連続的薬物送達のための可変流動インプラント可能注入装置を記載);米国特許第4,439,196号(多チャンバー区画を有する浸透圧性薬物送達系を記載);および、米国特許第4,475,196号(浸透圧性薬物送達系を記載)が挙げられる。これらの特許を、引用により本明細書中に包含させる。多くの他のこのようなインプラント、送達系およびモジュールが当業者に知られている。
特定の態様において、本明細書に記載の抗huCD40抗体を、インビボでの適切な分布を確実にするように製剤できる。例えば、血液−脳関門(BBB)は、多くの高度に親水性の化合物を排除する。本明細書に記載の治療化合物がBBBを通過することを確実にするために(望むのであれば)、例えば、リポソームに製剤できる。リポソームを製造する方法について、例えば、米国特許第4,522,811号;同第5,374,548号;および同第5,399,331号を参照。リポソームは、特定の細胞または臓器に選択的に輸送され、そうして標的化薬物送達を増強する1以上の成分を含み得る(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685参照)。例示的ターゲティング成分は、葉酸またはビオチン(例えば、米国特許第5,416,016号(Lowら)参照);マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al., (1995) FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al., (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoe et al., (1995) Am. J. Physiol. 1233:134);p120(Schreier et al., (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)を含む;K. Keinanen; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273も参照。
IX.使用および方法
本明細書に記載の抗体、抗体組成物および方法は、例えば、CD40シグナル伝達をアゴナイズすることにより免疫増強を伴う、多くのインビトロおよびインビボ適用を有する。好ましい態様において、本明細書に記載の抗体はヒトまたはヒト化抗体である。例えば、本明細書に記載の抗huCD40抗体を、培養中の細胞に、インビトロまたはエクスビボでまたはヒト対象に、例えば、インビボで投与し、多くの疾患における免疫を増強できる。したがって、本発明は、対象に、該対象における免疫応答が増強、刺激または上方制御されるように、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを投与することを含む、対象における免疫応答を修飾する方法を提供する。
好ましい対象には、免疫応答の増強が望ましいであろうヒト患者が含まれる。方法は、免疫応答(例えば、T細胞介在免疫応答)を増強することによって処置することができる障害を有するヒト患者を処置するのに特に適している。特定の態様において、方法は、インビボでの癌処置に特に適する。免疫の抗原特異的増強を達成するために、本明細書に記載の抗huCD40抗体を、目的の抗原または処置対象(例えば、腫瘍担持対象またはウイルス担持対象)に既に存在し得る抗原と共に投与できる。CD40に対する抗体を他の薬剤と投与するとき、2剤を別々に投与しても、同時に投与してもよい。
サンプルおよび対照サンプルと、ヒトCD40に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを、抗体またはそのフラグメントとヒトCD40の複合体の形成を可能にする条件下で、接触させることを含む、該サンプルにおけるヒトCD40抗原の存在を検出するまたはヒトCD40抗原の量を測定する方法も包含される。次いで、複合体の形成を検出し、ここで、対照サンプルと比較したサンプル間の複合体形成の差異が、該サンプルにおけるヒトCD40抗原の存在の指標である。さらに、本明細書に記載の抗CD40抗体を、免疫親和性精製によるヒトCD40精製に用い得る。
T細胞応答、例えば抗原特異的T細胞応答の共刺激を増強するために本明細書に記載の抗huCD40抗体の能力を考慮すると、本発明は、本明細書に記載の抗体を用いて、抗原特異的T細胞応答、例えば、抗腫瘍T細胞応答を刺激、増強または上方制御する、インビトロおよびインビボ方法を提供する。CD4+およびCD8+ T細胞応答は、抗CD40抗体を用いて増強できる。T細胞は、Teff細胞、例えば、CD4+ Teff細胞、CD8+ Teff細胞、Tヘルパー(Th)細胞およびT細胞毒性(Tc)細胞であり得る。
さらに、対象における免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)が増強されるように、該対象に本明細書に記載の抗huCD40抗体を投与することを含む、対象における免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)を増強する方法も包含される。好ましい態様において、対象は、腫瘍担持対象であって、腫瘍に対する免疫応答が増強される。腫瘍は、固形腫瘍または液性腫瘍(liquid tumor)、例えば、血液悪性腫瘍(hematological malignancy)である。特定の態様において、腫瘍は、免疫原性腫瘍である。特定の態様、腫瘍は非免疫原性腫瘍である。特定の態様において、腫瘍は、PD−L1陽性である。特定の態様において、腫瘍は、PD−L1陰性である。対象は、ウイルス担持対象であってもよく、ウイルスに対する免疫応答が増強される。
さらに、対象において腫瘍の増殖を阻害するように、本明細書に記載の抗huCD40抗体を該対象に投与することを含む、対象における腫瘍細胞の増殖阻害の方法も提供される。また、対象において慢性のウイルス感染症が処置されるように、本明細書に記載の抗huCD40抗体を該対象に投与することを含む、対象における慢性のウイルス感染症の処置法も提供される。
特定の態様において、抗huCD40抗体は、補助療法剤として対象に投与される。癌を有する対象の抗huCD40抗体での処置は、現在の標準療法と比べて長期的な持続的応答;少なくとも1、2、3、4、5、10年またはそれ以上の長期生存、少なくとも1、2、3、4、5または10年あるいはそれ以上の無再発生存期間をもたらし得る。特定の態様において、癌を有する対象の抗huCD40抗体での処置は、例えば、1、2、3、4、5または10年あるいはそれ以上、癌の再発を防止するか、または癌の再発を遅延させる。
本明細書に記載のこれらおよび他の方法を、以下にさらに詳細に記載する。
癌
本発明は、癌、対象が処置されるように、例えば、癌性腫瘍の増殖を阻止または低減する、および/または腫瘍が退行するように、本明細書に記載の抗huCD40抗体を対象に投与することを含む、癌を有する対象を処置するための方法を提供する。抗huCD40抗体を、癌性腫瘍の増殖阻止に単独で用い得る。あるいは、抗huCD40抗体を、下記のように、他の薬剤、例えば、他の免疫原性薬剤、標準癌処置または他の抗体と組み合わせて用い得る。抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体のようなPD−1の阻害剤との併用もまた提供される。例えば、Ellmark et al. (2015) OncoImmunology 4:7 e1011484参照。
従って、本発明は、治療的有効量の本明細書に記載の抗huCD40抗体、例えば、12D6、5F11、8E8、5G7もしくは19G3のヒト化形態、またはその抗原結合フラグメントを、対象に投与することを含む、該対象における、例えば、腫瘍細胞の増殖阻止による、癌を処置する方法を提供する。抗体は、ヒト抗huCD40抗体(例えば、本明細書に記載のヒト化抗huCD40抗体のいずれか)、ヒトキメラ抗huCD40抗体、またはヒト化非ヒト抗huCD40抗体、例えば、本明細書に具体的に記載の抗huCD40抗体の少なくとも1つと、結合に関して競合するか、またはそれと同じエピトープに結合するヒト、キメラまたはヒト化抗huCD40抗体であり得る。
本発明の抗体を用いて増殖が阻害され得る癌は、一般に免疫療法に応答性の癌を含む。処置のための癌の非限定的例は、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞性肺癌、扁平上皮非小細胞性肺癌(NSCLC)、非NSCLC、神経膠腫、消化器癌、腎臓癌(例えば明細胞癌)、卵巣癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌(例えば、腎細胞癌(RCC))、前立腺癌(例えばホルモン難治性前立腺腺癌)、甲状腺癌、神経芽腫、膵臓癌、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫)、子宮頚癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌および頭頸部癌(または癌腫)、胃癌、胚細胞腫瘍、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫(例えば、皮膚または眼内悪性黒色腫のような転移悪性黒色腫)、骨腫瘍、皮膚癌、子宮癌、肛門周辺癌、精巣癌、ファロピウス管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形腫瘍、輸尿管癌、腎盂癌、中枢神経系の新生物(CNS)、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管形成、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮細胞癌、T細胞リンパ腫、アスベストにより誘発されるものを含む環境誘発癌、ウイルス関連癌(例えば、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)関連腫瘍)および2つの主要な血液細胞系統、すなわち、骨髄細胞株(顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージおよび肥満細胞を産生する)またはリンパ系細胞株(B、T、NKおよび形質細胞を産生する)のいずれか由来の血液系腫瘍、例えば、全タイプの白血病、リンパ腫および骨髄腫、例えば、急性、慢性、リンパ性および/または骨髄性白血病、例えば急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)および慢性骨髄性白血病(CML)、未分化AML (M0)、骨髄芽球性白血病(M1)、骨髄芽球性白血病(M2;細胞成熟を伴う)、前骨髄球性白血病(M3またはM3バリアント[M3V])、骨髄単球性白血病(M4または好酸球増加症を伴うM4バリアント[M4E])、単球性白血病(M5)、赤白血病(M6)、巨核芽球性白血病(M7)、孤立性顆粒球性肉腫および緑色腫;リンパ腫、例えばホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ系組織(MALT)リンパ腫、未分化(例えば、Ki 1+)大細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸T細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、前駆体Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性;およびリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)、末梢T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、真性組織球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性体液性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ系造血性腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、汎発性大B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、汎発性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞リンパ腫、前駆体Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚性T細胞リンパ腫(CTLC)(菌状息肉症またはセザリー症候群とも呼ばれる)およびワルデンシュトレーム高ガンマグロブリン血症を伴うリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL);骨髄腫、例えば、IgG骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌型骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(緩徐進行性骨髄腫とも呼ばれる)、孤立性形質細胞腫および多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞リンパ腫;骨髄系造血性腫瘍、線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉性起源の腫瘍;星状細胞腫、シュワン腫を含む、精上皮腫、奇形癌、中枢および末梢神経の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫および骨肉腫を含む、間葉性起源の腫瘍;および小細胞および大脳様細胞型を含むT−前リンパ性白血病(T−PLL)のようなT細胞障害を含むが、これに限定されない、黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞性癌および奇形癌、リンパ系造血性腫瘍、例えばT細胞およびB細胞腫瘍を含む、他の腫瘍;好ましくはT細胞型の大顆粒リンパ球白血病(LGL);a/d T−NHL肝脾リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性および免疫芽球性サブタイプ);血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫;頭頚部癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌;急性骨髄リンパ腫、ならびに該癌のあらゆる組み合わせを含む。本明細書に記載の方法は、転移癌、難治性癌(例えば、遮断CTLA−4またはPD−1抗体での先の免疫療法に難治性の癌)および再発性癌の処置にも用いられ得る。
上記にかかわらず、本発明のアゴニスト抗huCD40抗体は、CD40アゴニストでの処置によって悪化する可能性のある、CD40発現を伴う血液性癌の処置における使用は見出されない。特定の癌は、CD40を発現することが知られており、従って、そのような悪化の対象となり得て、故に、分類的に除外され得る。他の態様において、特定の腫瘍サンプルがCD40の発現について試験され、その試験結果に基づいて本発明のアゴニスト抗huCD40抗体での処置から除外される。
抗huCD40抗体は、単剤療法として投与され得るか、または唯一の免疫刺激療法として投与され得るか、または癌ワクチン戦略において、癌性細胞、精製腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞および免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子をトランスフェクトされた細胞のような免疫原性薬剤と組み合わせてもよい(He et al (2004) J. Immunol. 173:4919-28)。使用できる腫瘍ワクチンの非限定的例は、gp100、MAGE抗原、Trp−2、MART1および/またはチロシナーゼのペプチドのような黒色腫抗原のペプチド、あるいはサイトカインGM−CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞を含む。腫瘍に対するワクチン接種のための多くの実験的戦略が考案されている(Rosenberg、S., 2000, Development of Cancer Vaccines、ASCO Educational Book Spring: 60-62; Logothetis, C., 2000, ASCO Educational Book Spring: 300-302; Khayat, D. 2000, ASCO Educational Book Spring: 414-428; Foon, K. 2000, ASCO Educational Book Spring: 730-738参照;また、Restifo, N. and Sznol, M., Cancer Vaccines, Ch. 61, pp. 3023-3043(DeVitaら)(eds.), 1997、Cancer: Principles and Practice of Oncology、Fifth Editionも参照)。これらの戦略の一つにおいて、ワクチンは、自己または同種腫瘍細胞を用いて調製されている。これらの細胞ワクチンは、腫瘍細胞がGM−CSFを発現するように形質導入されたとき、最も有効であることが示されている。GM−CSFは、腫瘍ワクチン接種のための抗原提示の強力なアクティベーターであることが示されている。Dranoff et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 3539-43。
多くの腫瘍における遺伝子発現および大規模遺伝子発現パターンの研究により、いわゆる腫瘍特異的抗原の定義がもたらされている(Rosenberg, S A (1999) Immunity 10: 281-7)。多くの場合、これらの腫瘍特異的抗原は、腫瘍内および腫瘍が発生した細胞内で発現される分化抗原、例えばメラノサイト抗原gp100、MAGE抗原およびTrp−2である。より重要なことに、これらの抗原の多くは、宿主に見出される腫瘍特異的T細胞の標的であることが示されている。CD40アゴニストを、腫瘍において発現される組換えタンパク質および/またはペプチドの集合体と共に、これらのタンパク質に対する免疫応答を産生するために使用してよい。これらのタンパク質は、通常免疫系により自己抗原と見なされ、それゆえにそれらに対して耐容性である。腫瘍抗原は、染色体のテロメアの合成に必要であり、85%を超えるヒト癌で発現され、限られた数の体細胞組織でしか発現されない、タンパク質テロメラーゼを含み得る(Kim et al., (1994) Science 266: 2011-2013)。腫瘍抗原はまた、タンパク質配列を変化させるか、または2つの無関係な配列の融合タンパク質(すなわち、フィラデルフィア染色体におけるbcr−abl)を創出する体細胞性変異のため、癌細胞において発現される“ネオ抗原”またはB細胞腫瘍からのイディオタイプでもあり得る。
他の腫瘍ワクチンは、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBVおよびHCV)およびカポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV)のようなヒト癌と関与するウイルスからのタンパク質を含み得る。CD40阻害と組み合わせて用い得る腫瘍特異的抗原の別の形態は、腫瘍組織自体から単離された精製ヒートショックタンパク質(HSP)である。これらのヒートショックタンパク質は、腫瘍細胞からのタンパク質のフラグメントを含み、これらのHSPは、腫瘍免疫の惹起のための抗原提示細胞の送達に極めて有効である(Suot & Srivastava (1995) Science 269:1585-1588; Tamura et al., (1997) Science 278:117-120)。
樹状細胞(DC)は、抗原特異的応答の誘発に使用できる強力な抗原提示細胞である。DCは、エクスビボで産生され、多様なタンパク質およびペプチド抗原ならびに腫瘍細胞抽出物を負荷することができる(Nestle et al., (1998) Nature Medicine 4: 328-332)。DCはまた同様にこれらの腫瘍抗原を発現する遺伝的手段により形質導入することもできる。DCはまた免疫化の目的で腫瘍細胞に直接的に融合されている(Kugler et al., (2000) Nature Medicine 6:332-336)。ワクチン接種の方法として、DC免疫化を、CD40アゴニズムと効率的に組み合わせて、より強力な抗腫瘍応答を活性化(誘発(unleash))できる。
CD40のアゴニズムはまた、標準的な癌療法(例えば、外科手術、放射線および化学療法)と組み合わせ得る。CD40のアゴニズムを、化学療法レジメと効率的に組合せることができる。これらの例において、投与される化学療法剤の用量を低減することが可能であり得る(Mokyr et al., (1998) Cancer Research 58: 5301-5304)。このような組合せの例は、黒色腫の処置のためのダカルバジンと組み合わせた抗huCD40抗体である。このような組み合わせの他の例は、黒色腫の処置のためのインターロイキン−2(IL−2)と組み合わせた抗huCD40抗体である。CD40アゴニストと化学療法の組み合わせの背後にある科学的根拠は、ほとんどの化学療法化合物の細胞毒性作用の結果として生じる細胞死が、抗原提示経路における腫瘍抗原レベルを増加させることにある。細胞死によりCD40アゴニズムとの相乗性をもたらし得る他の併用療法は、放射線、外科手術およびホルモン遮断である。これらのプロトコールの各々は、宿主における腫瘍抗原の源を創出する。血管形成阻害剤も、CD7340アゴニストと組み合わせ得る。血管形成の阻害は、腫瘍細胞死をもたらし、これが宿主抗原提示経路に腫瘍抗原を供給し得る。
本明細書に記載の抗huCD40抗体はまた、FcαまたはFcγ受容体発現エフェクター細胞を腫瘍細胞に標的化させる二重特異性抗体と組み合わせても使用し得る(例えば、米国特許第5,922,845号および同第5,837,243号参照)。二重特異性抗体を用いて、2個の別々の抗原を標的化することができる。例えば抗Fc受容体/抗腫瘍抗原(例えば、Her−2/neu)二重特異性抗体は、マクロファージを腫瘍部位に標的化するために用いられている。この標的化は、腫瘍特異的応答をより効率的に活性化し得る。これらの応答のT細胞アームは、CD40のアゴニズムによって増強され得る。あるいは、抗原を、腫瘍抗原および樹状細胞特異的細胞表面マーカーに結合する二重特異性抗体の使用により、DCに直接的に送達させ得る。
腫瘍は、様々な機序により宿主の免疫監視を逃れる。これらの機序の多くが、腫瘍により発現される免疫抑制性タンパク質の不活性化により克服され得る。これらは、とりわけTGF−β(Kehrl et al., (1986) J. Exp. Med. 163: 1037-1050)、IL−10(Howard & O'Garra (1992) Immunology Today 13: 198-200)およびFasリガンド(Hahne et al., (1996) Science 274: 1363-1365)が含まれる。これらの各々に対する抗体を、抗huCD40抗体と組み合わせて用いて、免疫抑制剤の作用を逆転し、宿主による腫瘍免疫応答を有利にし得る。
抗CD40抗体は、T細胞ヘルパー活性を効果的に代用し得る(Ridge et al., (1998) Nature 393: 474-478)。CTLA−4(例えば、米国特許第5,811,097号)、OX−40(Weinberg et al. (2000) Immunol. 164: 2160-2169)、CD137/4−1BB(Melero et al. (1997) Nature Medicine 3: 682-685 (1997))、およびICOS(Hutloff et al. (1999) Nature 397: 262-266)などのT細胞共刺激性分子に対する活性化抗体も、T細胞活性化の増加レベルを提供し得る。PD1またはPD−L1の阻害剤も抗huCD40抗体と組み合わせて用いられ得る。
また、腫瘍に対する抗原特異的T細胞を刺激するために、抗原特異的T細胞のエクスビボ活性化および増殖ならびにこれらの細胞の受容者への養子移植を含むいくつかの実験的処置プロトコールもある(Greenberg & Riddell (1999) Science 285: 546-51)。これらの方法は、CMVのような感染因子に対するT細胞応答を活性化するためにも用いられ得る。抗CD40抗体の存在下でのエクスビボ活性化により、養子移植T細胞の頻度および活性を増加させ得る。
慢性のウイルス感染症
別の面において、本明細書に記載の発明は、対象が感染症の処置を受けるように、該対象に抗huCD40抗体またはその抗原結合フラグメントを投与することを含む、対象における感染症の処置法を提供する。
上記のような腫瘍への適用と同様に、抗体介在性CD40アゴニズムは、病原体、毒素および自己抗原に対する免疫応答を増強するために、単独で用いられ得るか、またはアジュバントとしてワクチンと組み合わせて用いられ得る。この治療アプローチが特に有用であり得る病原体の例としては、現在有効なワクチンが存在しない病原体、または従来のワクチンが完全に有効ではない病原体が挙げられる。これらには、HIV、肝炎(A、BおよびC)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、黄色ブドウ球菌、緑膿菌などが含まれるが、これらに限定されない。CD40アゴニズムは、感染の過程で変化した抗原を提示するHIVなどの病原体による確立された感染に対して特に有用である。これらの新規エピトープは、抗ヒトCD40抗体投与時に異物と認識され、強力なT細胞応答を誘発する。
本明細書に記載の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性ウイルスの例としては、HIV、肝炎(A、BまたはC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV−1、HAV−6、HSV−IIおよびCMV、エプスタインバーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器多核体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟体動物ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルスおよびアルボウイルス脳炎ウイルスが挙げられる。
本明細書に記載の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性細菌の例としては、クラミジア、リケッチア細菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌および淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風、ボツリヌス菌、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ症、ライムス病菌が挙げられる。
本明細書に記載の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性真菌の例としては、カンジダ(アルビカンス、クルセイ、グラブラタ、トロピカリス等)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、アスペルギルス(フミガーツス、ニガー等)、ムコラレス属(ムコール、アブシディア、リゾプス属)、スポロトリックス・シェンキイ、ブラストマイセス・デルマチチジス、ブラジルパラコクシジオイデス、クシジオイデス・イミチスおよびヒストプラズマ・カプスラーツムが挙げられる。
本明細書に記載の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性寄生虫の例としては、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、大腸バランジウム(Balantidium coli)、フォーラーネグレリア(Naegleriafowleri)、アカントアメーバ属、ジアルジア・ランビア、クリプトスポリジウム属、ニューモシスティス・カリニ、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、バベシア・ミクロチ、ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、リーシュマニア・ドノバン、トキソプラズマ・ゴンディイ、ブラジル鉤虫(Nippostrongylus brasiliensis)が挙げられる。
上記の全ての方法において、CD40アゴニズムは、サイトカイン処置(例えば、インターフェロン、GM−CSF、G−CSF、IL−2)、または腫瘍抗原の増強された提示を提供する二重特異性抗体療法などの他の免疫療法と組み合わせることができる。例えば、Holliger (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak (1994) Structure 2:1121-1123参照。
ワクチンアジュバント
本明細書に記載の抗huCD40抗体を用いて、抗huCD40抗体と目的の抗原、例えばワクチンとの共投与により、抗原特異的免疫応答を増強することができる。従って、本発明は、対象において抗原に対する免疫応答が増強されるように、該対象に(i)抗原;および、(ii)抗huCD40抗体またはその抗原結合フラグメントを投与することを含む、対象における免疫応答の増強方法を提供する。抗原は、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原または病原体由来の抗原であり得る。かかる抗原の非限定的例は、上記の腫瘍抗原(または腫瘍ワクチン)、または上記のウイルス、細菌もしくは他の病原体由来の抗原などの、上に記載のものを含む。
本明細書に記載の抗体組成物(例えば、ヒトモノクローナル 抗体、多重特異性および二重特異性分子ならびに免疫複合体)をインビボおよびインビトロで投与するのに好適な経路は、当技術分野で周知であり、当業者であれば選択できる。例えば、抗体組成物は、注射(例えば、静脈内または皮下)に投与され得る。用いる分子の好適な投与量は、対象の年齢および体重ならびに抗体組成物の濃度および/または剤形化によって変わる。
上記のように、本明細書に記載の抗huCD40抗体は、1以上の他の療法剤と、例えば、細胞傷害性薬剤、放射毒性剤または免疫抑制剤と同時投与することができる。抗体は、(免疫複合体として)薬剤に連結されてよいか、または薬剤とは別に投与されてよい。後者の場合(別個に投与する場合)、抗体は、薬剤投与の前、後または同時に投与されてよいか、あるいは他の公知の療法剤と、例えば抗癌剤、例えば放射線と共投与されてよい。かかる療法剤としては、とりわけ、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン、硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、ダカルバジンおよびシクロホスファミド・ヒドロキシウレアなどの抗新生物剤が挙げられ、これらはそれ自体が、患者に対して毒性または準毒性であるので、あるレベルでのみ有効である。シスプラチンは、4週に1回、100mg/ml用量で静脈内投与され、アドリアマイシンは、21日毎に1回、60−75mg/ml用量で静脈内投与される。本明細書に記載の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの化学療法剤との共投与は、異なる機序により作動する2つの抗癌剤を提供し、ヒト腫瘍細胞に対する細胞毒性効果をもたらす。このような共投与は、薬剤に対する耐性の発生または抗体と反応しないようにする腫瘍細胞の抗原性の変化に起因する問題を解決することができる。
本明細書に記載の範囲内には、本明細書に記載の抗体組成物(例えば、ヒト抗体、二重特異性または多重特異性分子あるいは免疫複合体)および使用説明書を含むキットも含まれる。キットは、少なくとも1つの追加の反応剤、または本明細書に記載の1以上の追加のヒト抗体(例えば、第1のヒト抗体とは異なるCD40抗原中のエピトープに結合する相補的活性を有するヒト抗体)をさらに含み得る。キットは、一般的に、キットの内容物の用途を示すラベルを含む。用語ラベルは、キットに添付されたまたはキットと共に提供された、あるいはキットに付随する、何らかの文書または記録された材料を含む。
併用療法
上記の併用療法に加えて、本明細書に記載の抗CD40抗体は、以下に記載のように、例えば癌の処置のための、併用療法においても用いられ得る。
本発明は、抗huCD40抗体を、免疫応答の刺激に有効であり、それゆえに対象における免疫応答をさらに増強、刺激または上方制御する1以上のさらなる薬剤、例えば抗体と共投与する、併用治療の方法を提供する。
一般に、本明細書に記載の抗huCD40抗体を、(i)共刺激性受容体のアゴニストおよび/または(ii)T細胞上の阻害性シグナルのアンタゴニストと組み合わせることができ、この両者とも、抗原特異的T細胞応答(免疫チェックポイント調節因子)の増強をもたらす。共刺激性および共阻害性分子の大部分は、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーであり、本明細書に記載の抗CD40抗体を、免疫応答増加のために、IgSFファミリーのメンバーを標的とする薬剤と共に投与してよい。共刺激性または共阻害性受容体に結合する膜結合リガンドの一つの重要なファミリーは、B7−1、B7−2、B7−H1(PD−L1)、B7−DC(PD−L2)、B7−H2(ICOS−L)、B7−H3、B7−H4、B7−H5(VISTA)およびB7−H6を含むB7ファミリーである。共刺激性または共阻害性受容体に結合する膜結合リガンドの他のファミリーは、同族TNF受容体ファミリーメンバーに結合する分子のTNFファミリーであり、これは、CD40およびCD40L、OX−40、OX−40L、CD70、CD27L、CD30、CD30L、4−1BBL、CD137/4−1BB、TRAIL/Apo2−L、TRAILR1/DR4、TRAILR2/DR5、TRAILR3、TRAILR4、OPG、RANK、RANKL、TWEAKR/Fn14、TWEAK、BAFFR、EDAR、XEDAR、TACI、APRIL、BCMA、LTβR、LIGHT、DcR3、HVEM、VEGI/TL1A、TRAMP/DR3、EDAR、EDA1、XEDAR、EDA2、TNFR1、リンホトキシンα/TNFβ、TNFR2、TNFα、LTβR、リンホトキシンα 1β2、FAS、FASL、RELT、DR6、TROY、NGFRを含む(例えば、Tansey (2009) Drug Discovery Today 00:1参照)。
別の面において、抗huCD40抗体は、免疫応答刺激のために、例えば癌のような増殖性疾患の処置のために、T細胞活性化を阻害するサイトカイン(例えば、IL−6、IL−10、TGF−β、VEGF;他の“免疫抑制性サイトカイン”)のアンタゴニストあるいはT細胞活性化を刺激するサイトカインのアゴニストと組み合わせて用いられ得る。
一面において、T細胞応答は、本発明の抗huCD40 mAbおよび以下の薬剤の1以上の組合せにより刺激され得る:(i) CTLA−4、PD−1、PD−L1、PD−L2、LAG−3、TIM−3、ガレクチン−9、CEACAM−1、BTLA、CD69、ガレクチン−1、TIGIT、CD113、GPR56、VISTA、2B4、CD48、GARP、PD1H、LAIR1、TIM−1およびTIM−4のような、T細胞活性化を阻害するタンパク質(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)のアンタゴニスト、(ii) B7−1、B7−2、CD28、4−1BB(CD137)、4−1BBL、ICOS、ICOS−L、OX40、OX40L、GITR、GITRL、CD70、CD27、CD40、DR3およびCD28HのようなT細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニスト。
上記タンパク質の1つを調節し、癌の処置のために、アンタゴニスト抗CD40抗体、例えば、本明細書に記載のものと組み合わせ得る薬剤の例としては、ヤーボイ(登録商標)/イピリムマブまたはトレメリムマブ(CTLA−4に対する)、ガリキシマブ(B7.1に対する)、BMS−936558(PD−1に対する)、ピディリズマブ/CT−011(PD−1に対する)、KEYTRUDA(登録商標)/ペムブロリズマブ/MK−3475(PD−1に対する)、AMP224(B7−DC/PD−L2に対する)、BMS−936559(B7−H1に対する)、MPDL3280A(B7−H1に対する)、MEDI−570(ICOSに対する)、AMG557(B7H2に対する)、MGA271(B7H3に対する−WO11/109400)、IMP321(LAG−3に対する)、ウレルマブ/BMS−663513およびPF−05082566(CD137/4−1BBに対する)、バルリルマブ(varlilumab)/CDX−1127(CD27に対する)、MEDI−6383およびMEDI−6469(OX40に対する)、RG−7888(OX40Lに対する−WO06/029879)、アタシセプト(TACIに対する)、ムロモナブ−CD3(CD3に対する)、イピリムマブ(CTLA−4に対する)が挙げられる。
癌の処置のために、アンタゴニスト抗huCD40抗体と組み合わせ得る他の分子は、NK細胞上の阻害性受容体のアンタゴニストまたはNK細胞上の活性化受容体のアゴニストを含む。例えば、抗huCD40アンタゴニスト抗体を、KIRのアンタゴニスト(例えば、リリルマブ)と組み合わせ得る。
併用療法のためのさらに他の薬剤は、RG7155(WO11/70024、WO11/107553、WO11/131407、WO13/87699、WO13/119716、WO13/132044)またはFPA−008(WO11/140249;WO13/169264;WO14/036357)を含むCSF−1Rアンタゴニスト抗体のようなCSF−1Rアンタゴニストを含むが、これらに限定されない、マクロフージまたは単球を阻害または枯渇する薬剤が含まれる。
一般的に、本明細書に記載のアゴニスト抗huCD40抗体を、正の共刺激性受容体を連結するアゴニスト薬剤、阻害性受容体を介するシグナル伝達を減弱する遮断剤、および抗腫瘍T細胞の頻度を全身性に高める1以上の薬剤、腫瘍微小環境内の多様な免疫抑制経路に打ち勝つ薬剤(例えば、阻害性受容体結合遮断(例えば、PD−L1/PD−1相互作用)、Treg枯渇または阻害(例えば、抗CD25モノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ)またはエクスビボ抗CD25ビーズ枯渇の使用)、IDOのような代謝酵素阻害またはT細胞アネルギーまたは消耗の回復/予防)および腫瘍部位で自然免疫活性化および/または炎症を誘発する薬剤の1以上と共に用いられ得る。
本発明は、例えば、腫瘍増殖阻害または抗ウイルス応答刺激のために、対象における免疫応答が刺激されるように、該対象にCD40アゴニスト、例えば、抗体および1以上の追加の免疫刺激性抗体、例えば、PD−1アンタゴニスト、例えば、アンタゴニスト抗体、PD−L1アンタゴニスト、例えば、アンタゴニスト抗体、CTLA−4アンタゴニスト、例えば、アンタゴニスト抗体および/またはLAG3アンタゴニスト、例えば、アンタゴニスト抗体を投与することを含む、対象における免疫応答を刺激する方法を提供する。ある態様において、対象に、アンタゴニスト抗huCD40抗体およびアンタゴニスト抗PD−1抗体を投与する。ある態様において、対象に、アンタゴニスト抗huCD40抗体およびアンタゴニスト抗PD−L1抗体を投与する。ある態様において、対象に、アンタゴニスト抗huCD40抗体およびアンタゴニスト抗CTLA−4抗体を投与する。ある態様において、少なくとも1つの追加の免疫刺激性抗体(例えば、アンタゴニスト抗PD−1、アンタゴニスト抗PD−L1、アンタゴニスト抗CTLA−4および/またはアンタゴニスト抗LAG3抗体)はヒト抗体である。あるいは、少なくとも1つの追加の免疫刺激性抗体は、例えば、キメラまたはヒト化抗体(例えば、マウス抗PD−1、抗PD−L1、抗CTLA−4および/または抗LAG3抗体から製造される)であり得る。
本発明は、対象にアゴニスト抗huCD40抗体およびアンタゴニストPD−1抗体を投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置する方法を提供する。特定の態様において、アゴニスト抗huCD40抗体は治療量以下の用量で投与され、抗PD−1抗体は治療量以下の用量で投与され、または両者は治療量以下の用量で投与され、ここで、治療量以下の用量とは、当該薬剤での単剤療法を参照している。また、本発明は、対象に抗huCD40抗体および治療量以下の用量の抗PD−1抗体を投与することを含む、過増殖性疾患の免疫刺激剤での処置に関連する有害事象を変える方法も提供する。特定の態様において、対象はヒトである。特定の態様において、抗PD−1抗体は、ヒト配列モノクローナル抗体であり、アゴニスト抗huCD40抗体は、本明細書に記載の抗体のCDRまたは可変領域を含む抗体のような、ヒト化モノクローナル抗体である。
本明細書に記載の方法における使用に好適なPD−1アンタゴニストとしては、リガンド、抗体(例えば、モノクローナル抗体および二重特異性抗体)、多価薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。ある態様において、PD−1アンタゴニストは、融合タンパク質、例えば、AMP−244のようなFc融合タンパク質である。ある態様において、PD−1アンタゴニストは、抗PD−1または抗PD−L1抗体である。
抗PD−1抗体の例は、OPDIVO(登録商標)/ニボルマブ(BMS−936558)またはWO2006/121168に記載の抗体17D8、2D3、4H1、5C4、7D3、5F4および4A11のうち1つのCDRまたは可変領域を含む抗体である。特定の態様において、抗PD−1抗体は、WO2012/145493に記載のMK−3475(KEYTRUDA(登録商標)/ペムブロリズマブ/以前はランブロリズマブ);WO2012/145493に記載のAMP−514/MEDI−0680;およびCT−011(ピディリズマブ;以前は、CT−AcTibodyまたはBAT;例えば、Rosenblatt et al. (2011) J. Immunotherapy 34:409参照)である。さらに既知のPD−1抗体および他のPD−1阻害剤は、WO2009/014708、WO03/099196、WO2009/114335、WO2011/066389、WO2011/161699、WO2012/145493、米国特許第7,635,757号および同第8,217,149号および米国特許公報2009/0317368に記載のものを含む。WO2013/173223に開示される抗PD−1抗体のいずれも用い得る。これらの抗体のうち1つと、PD−1との結合について競合するおよび/またはPD−1と同じエピトープに結合する抗PD−1抗体もまた、併用療法に用い得る。
特定の態様において、抗PD−1抗体は、ヒトPD−1に5×10-8M以下のKDで結合する、ヒトPD−1に1×10-8M以下のKDで結合する、ヒトPD−1に5×10-9M以下のKDで結合するまたはヒトPD−1に1×10-8M〜1×10-10M以下のKDで結合する。
本発明は、対象にアゴニスト抗huCD40抗体およびアンタゴニストPD−L1抗体を投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置する方法を提供する。特定の態様において、抗huCD40抗体は治療量以下の用量で投与され、抗PD−L1抗体は治療量以下の用量で投与されまたは両者は治療量以下の用量で投与される。本発明は、対象にアゴニスト抗huCD40抗体および治療量以下の用量の抗PD−L1抗体を投与することを含む、過増殖性疾患の免疫刺激剤での処置と関連する有害事象を変える方法を提供する。特定の態様において、対象はヒトである。特定の態様において、抗PD−L1抗体は、ヒト配列モノクローナル抗体であり、アゴニスト抗huCD40抗体は、本明細書に記載の抗体のCDRまたは可変領域を含む抗体のような、ヒト化モノクローナル抗体である。
一態様において、抗PD−L1抗体は、BMS−936559(WO2007/005874および米国特許第7,943,743号で12A4と称される)またはPCT公開WO07/005874および米国特許第7,943,743号に記載される、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4のCDRまたは可変領域を含む抗体である。特定の態様において、抗PD−L1抗体は、MEDI4736(抗B7−H1としても公知)またはMPDL3280A(RG7446としても公知)である。WO2013/173223、WO2011/066389、WO2012/145493、米国特許第7,635,757号および同第8,217,149号および米国特許公報2009/145493に開示の抗PD−L1抗体のいずれも用いられ得る。これらの抗体のいずれかと競合するおよび/または同じエピトープに結合する抗PD−L1抗体もまた、併用療法に使用し得る。
さらなる態様において、本発明のアゴニスト抗huCD40抗体を、第3の免疫療法剤と組合せて、PD−1アンタゴニストまたはPD−L1アンタゴニストのような、PD−1/PD−L1シグナル伝達のアンタゴニストと併用する。一態様において、該第3の免疫療法剤は、GITRアンタゴニストまたはOX−40アンタゴニスト、例えば本明細書に記載の抗GITR抗体または抗OX40抗体である。
別の面において、免疫腫瘍学製剤は、GITRアゴニスト、例えばアゴニスト性GITR抗体である。好適なGITR抗体としては、例えばBMS−986153、BMS−986156、TRX−518(WO06/105021、WO09/009116)およびMK−4166(WO11/028683)が挙げられる。
別の面において、免疫腫瘍学製剤は、IDOアンタゴニストである。好適なIDOアンタゴニストとしては、例えば、INCB−024360(WO2006/122150、WO07/75598、WO08/36653、WO08/36642)、インドキシモド、またはNLG−919(WO09/73620、WO09/1156652、WO11/56652、WO12/142237)が挙げられる。
本発明は、本明細書に記載のアゴニスト抗huCD40抗体およびCTLA−4アンタゴニスト抗体を対象に投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置する方法を提供する。特定の態様において、アゴニスト抗huCD40抗体は、治療量以下の用量で投与され、抗CTLA−4抗体は治療量以下の用量で投与され、または両者は治療量以下の用量で投与され、ここで、治療量以下の用量とは、当該薬剤での単剤療法を参照している。本発明は、対象にアゴニスト抗huCD40抗体および治療量以下の用量の抗CTLA−4抗体を投与することを含む、過増殖性疾患の免疫刺激剤での処置に関連する有害事象を変える方法を提供する。特定の態様において、対象はヒトである。特定の態様において、抗CTLA−4抗体は、ヤーボイ(登録商標)(イピリムマブまたはPCT公開WO01/14424に記載の抗体10D1)、トレメリムマブ(以前はチシリムマブ、CP−675,206)、以下の文献:WO98/42752;WO00/37504;米国特許第6,207,156号;Hurwitz et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(17):10067-10071; Camacho et al. (2004) J. Clin. Oncology 22(145): Abstract No. 2505(抗体CP−675206);およびMokyr et al. (1998) Cancer Res. 58:5301-5304に記載の抗CTLA−4抗体からなる群より選択される抗体である。WO2013/173223に開示の抗CTLA−4抗体のいずれも使用し得る。
本発明は、対象にアゴニスト抗huCD40抗体および抗LAG−3抗体を投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置する方法を提供する。さらなる態様において、アゴニスト抗huCD40抗体は治療量以下の用量で投与され、抗LAG−3抗体は治療量以下の用量で投与されまたは両者は治療量以下の用量で投与される。ここに提供するのは、対象に抗CD73抗体および治療量以下の抗LAG−3抗体を投与することを含む、過増殖性疾患の免疫刺激剤での処置と関連する有害事象を変える方法である。本発明は、アゴニスト抗huCD40抗体および治療量以下の用量の抗LAG−3抗体を対象に投与することを含む、過増殖性疾患の免疫刺激剤での処置に関連する有害事象を変える方法を提供する。特定の態様において、対象はヒトである。特定の態様において、抗LAG−3抗体は、ヒト配列モノクローナル抗体であり、アゴニスト抗huCD40抗体は、本明細書に記載の抗体のCDRまたは可変領域を含む抗体のような、ヒト化モノクローナル抗体である。抗LAG3抗体の例は、米国特許公報US2011/0150892およびWO2014/008218に開示される、抗体25F7、26H10、25E3、8B7、11F2または17E5のCDRまたは可変領域を含む抗体を含む。ある態様において、抗LAG−3抗体はBMS−986016である。用いられ得る他の当技術分野で認識される抗LAG−3抗体は、US2011/007023に記載のIMP731を含む。IMP−321も使用し得る。これらの抗体のいずれかと競合するおよび/または同じエピトープに結合する抗LAG−3抗体もまた、併用療法で用いられ得る。
特定の態様において、抗LAG−3抗体は、ヒトLAG−3に5×10-8M以下のKDで結合する、ヒトLAG−3に1×10-8M以下のKDで結合する、ヒトLAG−3に5×10-9M以下のKDで結合するまたはヒトLAG−3に1×10-8M〜1×10-10M以下のKDで結合する。
本明細書に記載のアゴニスト抗huCD40抗体、ならびにLAG−3および/またはCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1などの第二の標的抗体の1以上に対するアンタゴニスト、例えばアンタゴニスト抗体の投与は、患者における癌性細胞に対する免疫応答を増強できる。本発明の抗体を用いて増殖を阻害し得る癌は、一般に免疫療法に応答する癌を含む。本発明の併用療法で処置する癌の代表例は、アゴニスト抗huCD40抗体での単剤療法の部分で具体的に上記した癌を含む。
特定の態様において、本明細書に記載の治療抗体の組合せを、薬学的に許容される担体中の単一組成物として同時に、または薬学的に許容される担体中の各抗体を用いる別個の組成物として逐次的に、投与してよい。別の態様において、治療抗体の組合せを逐次的に投与し得る。例えば、抗CTLA−4抗体を最初に投与し、アゴニスト抗huCD40抗体を次に投与するか、またはアゴニスト抗huCD40抗体を最初に投与し、抗CTLA−4抗体を次に投与するように、抗CTLA−4抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体を逐次的に投与し得る。これに加えてまたはこれとは別に、抗PD−1抗体を最初に投与し、アゴニスト抗huCD40抗体を次に投与するか、またはアゴニスト抗huCD40抗体を最初に投与し、抗PD−1抗体を次に投与するように、抗PD−1抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体を逐次的に投与し得る。これに加えてまたはこれとは別に、抗PD−L1抗体を最初に投与し、アゴニスト抗huCD40抗体を次に投与するか、またはアゴニスト抗huCD40抗体を最初に投与し、抗PD−L1抗体を次に投与するように、抗PD−L1抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体を逐次的に投与し得る。これに加えてまたはこれとは別に、抗LAG−3抗体を最初に投与し、アゴニスト抗huCD40抗体を次に投与するか、またはアゴニスト抗huCD40抗体を最初に投与し、抗LAG−3抗体を次に投与するように、抗LAG−3抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体を逐次的に投与し得る。
さらに、併用療法の2以上の用量を逐次的に投与する場合、逐次投与の順は、各投与時に逆になっても同じ順のままでもよく、逐次投与を、同時投与または何れかのこれらの組合せと組み合わせ得る。例えば、組合せ抗CTLA−4抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体の最初の投与は同時であってよく、二回目の投与は、抗CTLA−4抗体が先で、アゴニスト抗huCD40抗体がその次、三回目の投与は、アゴニスト抗huCD40抗体が先で、抗CTLA−4抗体がその次などであり得る。これに加えてまたはこれとは別に、組合せ抗PD−1抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体の最初の投与は同時であってよく、二回目の投与は、抗PD−1抗体が先で、アゴニスト抗huCD40抗体がその次、三回目の投与は、アゴニスト抗huCD40抗体が先で、抗PD−1抗体がその次などであり得る。これに加えてまたはこれとは別に、組合せ抗PD−L1抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体の最初の投与は同時であってよく、二回目の投与は、抗PD−L1抗体が先で、アゴニスト抗huCD40抗体がその次、三回目の投与は、アゴニスト抗huCD40抗体が先で、抗PD−L1抗体がその次などであり得る。これに加えてまたはこれとは別に、組合せ抗LAG−3抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体の最初の投与は同時であってよく、二回目の投与は、抗LAG−3抗体が先で、アゴニスト抗huCD40抗体がその次、三回目の投与は、アゴニスト抗huCD40抗体が先で、抗LAG−3抗体がその次などであり得る。他の代表的投薬スキームは、先ずアゴニスト抗huCD40を投与し、次いで抗CTLA−4抗体(および/または抗PD−1抗体および/または抗PD−L1抗体および/または抗LAG−3抗体)の投与を含み、その後の投与は同時であり得る。
所望により、唯一の免疫治療剤としてのアゴニスト抗huCD40抗体またはアゴニスト抗huCD40抗体と1以上の追加の免疫治療抗体(例えば、抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3)の組合せを、さらに癌性細胞、精製腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞および免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子をトランスフェクトされた細胞のような免疫原性剤と組み合わせ得る(He et al. (2004) J. Immunol. 173:4919-28)。使用できる腫瘍ワクチンの非限定的例は、gp100、MAGE抗原、Trp−2、MART1および/またはチロシナーゼのペプチドのような黒色腫抗原のペプチド、またはサイトカインGM−CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞(以下にさらに記載)を含む。CD40アゴニストおよび1以上の追加の抗体(例えば、CTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断剤)を、さらに標準的癌療法剤と組み合わせてもよい。例えば、CD40アゴニストおよび1以上のさらなる抗体(例えば、CTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断剤)を、化学療法レジメと効率的に組み合わせ得る。これらの例において、本開示の組合せと共に投与する他の化学療法剤の用量を低減することが可能である(Mokyr et al. (1998) Cancer Research 58: 5301-5304)。このような組合せ剤の例は、CD40アゴニストと、抗CTLA−4抗体および/または抗PD−1抗体および/または抗PD−L1抗体および/または抗LAG−3抗体のような追加の抗体を伴うかまたは伴わず、さらに黒色腫の処置のためのダカルバジンとの組合せを含む組み合わせである。他の例は、アゴニスト抗huCD40抗体と、抗CTLA−4抗体および/または抗PD−1抗体および/または抗PD−L1抗体および/または抗LAG−3抗体のような追加の抗体を伴うかまたは伴わず、さらに黒色腫の処置のためのインターロイキン−2(IL−2)との組合せの組み合わせである。CD40アゴニズムおよびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断剤と化学療法剤の併用の背後の科学的根拠は、ほとんどの化学療法化合物の細胞毒性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路における腫瘍抗原レベルの増加をもたらすはずであることである。細胞死によりCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断剤を伴いまたは伴わない組合せCD40アゴニズムとの相乗性をもたらし得る他の併用療法は、放射線、外科手術またはホルモン遮断を含む。これらのプロトコールの各々は、宿主における腫瘍抗原の起源を創出する。血管形成阻害剤も、組合せCD40アゴニズムおよびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断剤と組み合わせ得る。血管形成の阻害は、腫瘍細胞死をもたらし、これが宿主抗原提示経路に腫瘍抗原を供給し得る。
唯一の免疫治療剤としてのアゴニスト抗huCD40抗体またはCD40アンタゴニストとCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断抗体との組合せはまた、FcαまたはFcγ受容体発現エフェクター細胞を腫瘍細胞に標的化させる二重特異性抗体と組み合わせても使用し得る(例えば、米国特許第5,922,845号および同第5,837,243号参照)。二重特異性抗体を、2個の別個の抗原を標的化するために用い得る。これらの応答のT細胞アームは、組合せCD40アゴニズムおよびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断剤の使用により増強され得る。
別の例において、唯一の免疫治療剤としてのアゴニスト抗CD40抗体あるいは抗CD40抗体および追加の免疫刺激剤、例えば、抗CTLA−4抗体および/または抗PD−1抗体および/または抗PD−L1抗体および/またはLAG−3剤、例えば、抗体の組合せを、リツキサン(登録商標)(リツキシマブ)、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、ベキサール(登録商標) (トシツモマブ)、ゼヴァリン(登録商標) (イブリツモマブ)、キャンパス(登録商標) (アレムツズマブ)、LYMPHOCIDE(登録商標) (エプラツズマブ)、アバスチン(登録商標) (ベバシズマブ)およびタルセバ(登録商標) (エルロチニブ)などのような抗新生物抗体と組み合わせて使用できる。例として、理論は別として、抗癌抗体または毒素にコンジュゲートした抗癌抗体での処置は、癌細胞死(例えば、腫瘍細胞死)を引き起こすことができ、これが、免疫刺激剤、例えば、CD40、TIGIT、CTLA−4、PD−1、PD−L1またはLAG−3剤、例えば、抗体が介在する免疫応答を増強する。例示的態様において、過増殖性疾患(例えば、癌腫瘍)の処置は、同時または逐次的または任意のこれらの組み合わせでの、抗癌剤、例えば、抗体とアゴニスト抗huCD40抗体および所望により追加の免疫刺激剤、例えば、抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3剤、例えば、抗体との組合せを含んでよく、これは、宿主による抗腫瘍免疫応答を増強し得る。
本発明は、対象に、アゴニスト抗huCD40抗体を治療量以下の用量の抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3剤、例えば抗体を伴いまたは伴わずに投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)の免疫刺激剤での処置に関連する有害事象を変える方法を提供する。例えば、本明細書に記載の方法は、患者への非吸収性ステロイドの投与による、免疫刺激性治療抗体誘発大腸炎または下痢の発生を低減する方法を提供する。本明細書で用いる“非吸収性ステロイド”は、肝臓で代謝後、バイオアベイラビリティが低いステロイド、すなわち、約20%未満であるような、強い初回通過代謝効果(pass metabolism)を示すグルココルチコイドである。本明細書に記載の一態様において、非吸収性ステロイドはブデソニドである。ブデソニドは、局所作用性グルココルチコステロイドであり、これは、経口投与後、主に肝臓で強く代謝される。エントコートEC(登録商標)(Astra-Zeneca)は、回腸へのおよび結腸中の薬物送達を最適化するために開発された、ブデソニドのpHおよび時間依存的経口製剤である。エントコートEC(登録商標)は、回腸および/または上行結腸が関与する軽度〜中程度クローン病の処置について米国で承認されている。クローン病の処置のためのエントコートEC(登録商標)の通常の経口投与量は6〜9mg/日である。エントコートEC(登録商標)は、吸収される前に腸で放出され、腸粘膜に保持される。腸粘膜標的組織を通過すると、エントコートEC(登録商標)は肝臓のシトクロムP450系で強く代謝されて、無視できるほど低いグルココルチコイド活性の代謝物となる。それゆえに、バイオアベイラビリティは低い(約10%)。ブデソニドの低バイオアベイラビリティは、初回通過代謝効果があまり強くない他のグルココルチコイドと比較して、治療率を改善させる。ブデソニドは、全身作用性コルチコステロイドより、低視床下部視床下部−下垂体抑制を含む、有害作用が少ない。しかしながら、エントコートEC(登録商標)の慢性投与は、副腎皮質機能亢進および副腎抑制のような全身性グルココルチコイド作用をもたらし得る。PDR 58th ed. 2004; 608-610参照。
なおさらなる態様において、非吸収性ステロイドと組み合わせた、CTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断を伴うまたは伴わないCD40アゴニスト(すなわち、CD40に対する免疫刺激性治療抗体および所望により抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3抗体)を、サリチレートとさらに組み合わせ得る。サリチレートは、例えば:スルファサラジン(アザルフィジン(登録商標)、Pharmacia & UpJohn);オルサラジン(DIPENTUM(登録商標)、Pharmacia & UpJohn);バルサラジド(COLAZAL(登録商標)、Salix Pharmaceuticals, Inc.);およびメサラミン(アサコール(登録商標)、Procter & Gamble Pharmaceuticals;ペンタサ(登録商標)、Shire US;CANASA(登録商標)、Axcan Scandipharm, Inc.;ROWASA(登録商標)、Solvay)のような5−ASA剤を含む。
本明細書に記載の方法により、抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/またはLAG−3抗体および非吸収性ステロイドを伴うまたは伴わないアゴニスト抗huCD40抗体と組み合わせて投与されるサリチレートは、免疫刺激性抗体により誘発される大腸炎の発生を減少させる目的で、サリチレートおよび非吸収性ステロイドのあらゆる重複または逐次投与を含み得る。従って、例えば、本明細書に記載の免疫刺激性抗体により誘発される大腸炎の発生を減少させる方法は、サリチレートおよび非吸収性ステロイドを同時にまたは逐次的に(例えば、サリチレートを非吸収性ステロイドの6時間後に投与する)またはこれらの何れかの組合せで投与することを包含する。さらに、サリチレートおよび非吸収性ステロイドを、同一の経路(例えば、両者とも経口投与)または異なる経路(例えば、サリチレートを経口投与および非吸収性ステロイドを直腸内投与)で投与してよく、これは、抗huCD40および抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3抗体の投与に用いる経路と異なってよい。
本明細書に記載のアゴニスト抗huCD40抗体および組合せ抗体療法を、処置すべき適応症(例えば、癌)に対する特定の有用性について選択される他の周知治療と組み合わせても使用できる。本明細書に記載のアゴニスト抗huCD40抗体の組合せを、既知の薬学的に許容される薬剤と逐次的に用いることができる。
例えば、本明細書に記載のアゴニスト抗huCD40抗体および組合せ抗体療法を、放射線照射、化学療法(例えば、カンプトテシン(CPT−11)、5−フルオロウラシル(5−FU)、シスプラチン、ドキソルビシン、イリノテカン、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、パクリタキセル、カルボプラチン−パクリタキセル(タキソール)、ドキソルビシン、5−fuまたはカンプトテシン+apo2l/TRAIL(6Xコンボ)を使用)、1以上のプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブまたはMG132)、1以上のBcl−2阻害剤(例えば、BH3I−2’(bcl−xl阻害剤)、インドールアミンジオキシゲナーゼ−1(IDO1)阻害剤(例えば、INCB24360)、AT−101(R−(−)−ゴシポール誘導体)、ABT−263(小分子)、GX−15−070(オバトクラックス)またはMCL−1(骨髄白血病細胞分化タンパク質−1)アンタゴニスト)、iAP(アポトーシスタンパク質阻害因子)アンタゴニスト(例えば、smac7、smac4、小分子smac模倣剤、合成smacペプチド(Fulda et al., Nat Med 2002;8:808-15参照)、ISIS23722(LY2181308)またはAEG−35156(GEM−640))、HDAC(ヒストンデアセチラーゼ)阻害剤、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)、血管形成阻害剤(例えば、ベバシズマブ)、抗血管形成因子ターゲティングVEGFおよびVEGFR(例えば、アバスチン(登録商標))、合成トリテルペノイド(Hyer et al., Cancer Research 2005;65:4799-808参照)、c−FLIP(細胞FLICE−阻害性タンパク質)モジュレーター(例えば、PPARγ(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ)の天然および合成リガンド、5809354または5569100)、キナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ)、トラスツズマブ、セツキシマブ、テムシロリムス、ラパマイシンおよびテムシロリムスのようなmTOR阻害剤、ボルテゾミブ、JAK2阻害剤、HSP90阻害剤、PI3K−AKT阻害剤、レナリドミド、GSK3β阻害剤、IAP阻害剤および/または遺伝毒性薬物のようなさらなる処置と組み合わせて(例えば、同時にまたは別個に)用い得る。
本明細書に記載のアゴニスト抗huCD40抗体および組合せ抗体療法を、さらに1以上の抗増殖性細胞毒性薬剤と組み合わせて使用できる。抗増殖性細胞毒性薬剤として使用し得る化合群は、以下の物を含むが、これらに限定されない:
アルキル化剤(窒素マスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレア類およびトリアゼンを含むが、これらに限定されない):ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(シトキサン(商標))、フォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホrアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジンおよびテモゾロミド。
代謝拮抗剤(葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類縁体、プリン類縁体およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない):メトトレキサート、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビンホスフェート、ペントスタチンおよびゲムシタビン。
アゴニスト抗huCD40抗体との組み合わせに適当な抗増殖性薬剤は、タキサン類、パクリタキセル(パクリタキセルはタキソール(商標)として市販)、ドセタキセル、ディスコデルモライド(DDM)、ジクチオスタチン(DCT)、ペロルシドA、エポチロン類、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE、エポチロンF、フラノエポチロンD、デスオキシエポチロンBl、[17]−デヒドロデスオキシエポチロンB、[18]デヒドロデスオキシエポチロンB、C12,13−シクロプロピル−エポチロンA、C6−C8架橋エポチロンA、trans−9,10−デヒドロエポチロンD、cis−9,10−デヒドロエポチロンD、16−デスメチルエポチロンB、エポチロンB10、ディスコデルモライド、パツピロン(EPO−906)、KOS−862、KOS−1584、ZK−EPO、ABJ−789、XAA296A(ディスコデルモライド)、TZT−1027(ソブリドチン)、ILX−651(塩酸タシドチン)、ハリコンドリンB、メシル酸エリブリン(E−7389)、ヘミアステリン(HTI−286)、E−7974、クリプトフィシン、LY−355703、マイタンシノイド免疫複合体(DM−1)、MKC−1、ABT−751、T1−38067、T−900607、SB−715992(イスピネシブ)、SB−743921、MK−0731、STA−5312、エリュテロビン、17ベータ−アセトキシ−2−エトキシ−6−オキソ−B−ホモ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール、シクロストレプチン、イソラウリマライド、ラウリマライド、4−エピ−7−デヒドロキシ−14,16−ジデメチル−(+)−ディスコデルモライドおよびクリプトチロン1と、さらに当技術分野で知られる他の微小管安定化剤であり、これらに限定されない。
本明細書に記載のアゴニスト抗huCD40抗体の処置と組み合わせてまたはその前に異常に増殖性の細胞を静止状態にすることが望ましい場合、17a−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチル−テストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、リュープロリド、フルタミド、トレミフェン、ゾラデックス(商標)のようなホルモンおよびステロイド(合成類縁体を含む)も患者に投与し得る。本明細書に記載の方法または組成物を使用するとき、抗模倣藥(antimimetics)のような臨床治験で腫瘍増殖または転移の制御に用いられる他の薬剤も、所望により投与してよい。
化学療法剤の安全かつ有効な投与の方法は当業者に知られている。さらに、それらの投与は、標準的文献に記載されている。例えば、多くの化学療法剤の投与は、Physicians' Desk Reference(PDR)、例えば、1996年版(Medical Economics Company, Montvale, N.J. 07645-1742, USA)に記載され、その開示内容を引用により本明細書に包含させる。
化学療法剤および/または放射線治療を、当技術分野で周知の治療プロトコールにより適用できる。化学療法剤および/または放射線治療の投与が、処置すべき疾患および該疾患に対する化学療法剤および/または放射線治療の既知効果により変わり得ることは当業者には明らかである。また、熟練した臨床医の知識により、治療プロトコール(例えば、投与用量および投与回数)は、患者における投与治療剤で観察される効果によりおよび投与治療剤に対する疾患の観察される応答により変わり得る。
X.特異的アゴニスト抗CD40抗体
本発明の改良されたヒト化重鎖および軽鎖可変領域配列を有するアゴニスト抗CD40抗体は、WO2017/004006に記載の抗CD40抗体に由来した。WO2017/004006に記載の例示的な抗体の可変ドメインおよびCDR配列領域は、配列表に提供されており、表2にまとめられている。本発明の改善された抗CD40抗体の可変ドメインおよびCDR領域の番号付けは、同じ元のクローンに由来するすべての抗体について同じであり、すなわち、本明細書に記載のヒト化変異体は、改善改変型mAb 12D6の配列番号47〜51に提供される軽鎖可変領域配列および配列番号52〜54に提供される重鎖可変領域配列を除いて、いなかる挿入も削除も含まない。
本発明を、さらなる限定として解釈してはならない、次の実施例によりさらに説明する。本明細書において引用している全ての図および全ての引用文献、Genbank配列、特許および公開特許出願は、引用により明示的に本明細書に包含させる。
実施例
実施例1
ヒトCD40に対するヒト化モノクローナル抗体の特性化
本発明のアゴニスト抗CD40抗体、例えば抗体12D6−24を、HEK293細胞における一過性トランスフェクションにより作製した。治療用タンパク質への開発のための実現可能性を評価するために、単量体の収量および割合を決定した。Expi293発現システム(商標)タンパク質発現系(Thermo Fisher Scientific、Waltham Mass., USA)での5日後の抗体12D6−24(それぞれ、配列番号11の残基1−119および配列番号8の残基1−112からなる重鎖および軽鎖可変領域を含む)の力価は、18mg/Lであり、材料の67%のみが単量体型であった。他の同様の抗体は、通常50〜100mg/Lで発現し、95%を超えて単量体あった。低生産性および凝集傾向は、治療用抗体にとって望ましくない特性であった。
軽鎖の不十分な発現が鎖の不均衡を生じ、重鎖二量体および高分子量種の形成を引き起こすと仮設立てされた。さらなる試験により、重鎖をコードするDNAに対する軽鎖をコードするDNAの比率を増すことで、収量および単量体率の両方が向上することが分かった。表3を参照。
これらの結果は、mAb 12D6−24の合理的な収量および単量体の高比率(低減した凝集)を得るためには、鎖の適当なバランスをとることが重要であるという仮説を確認した。
実施例2
ヒト化抗huCD40抗体12D6−24のための改変型重鎖および軽鎖可変領域
低発現レベルおよび凝集傾向を含む、実施例1で同定された臨床用製造特性の低さに鑑み、アゴニスト抗huCD40 mAb 12D6−24の重鎖および軽鎖可変ドメインの両方を再設計し、その結果、新規の軽鎖可変領域配列L2(配列番号47)、L3(配列番号48)、L4(配列番号49)およびL5(配列番号50)ならびに新規の重鎖可変領域配列H2(配列番号52)およびH3(配列番号53)を得た。
ヒトIgG軽鎖のための発現ベクターを作製するために、軽鎖可変ドメインをコードするDNAを、CMVプロモーターおよびヒトIgG分泌リーダー配列の制御下で発現ベクター中、ヒトカッパ一定常領域をコードするDNAに遺伝的に融合させた。同様に、ヒトIgG重鎖のための発現ベクターを作製するために、重鎖可変ドメインをコードするDNAを、CMVプロモーターおよびヒトIgG分泌リーダー配列の制御下で、発現ベクター中、ヒトCH1、ヒンジおよびヒトIgG1FcをコードするDNAに遺伝的に融合させた。
ユニークな抗体を調製するために、ユニークな軽鎖の各々のための発現ベクターを、HEK293細胞にユニークな重鎖の各々と同時トランスフェクトした。インキュベーション5日後に、培地中の各抗体の濃度を測定し、該ユニークな抗体を、MAB選択クロマトグラフィーにより精製した。精製後、抗体を、サイズ排除クロマトグラフィーにより凝集性を、そしてELISAにより結合親和性をそれぞれ評価した。表4を参照。
追加の重(H4)鎖および軽(L6)鎖可可変領域を、それぞれ配列番号54および51に示されるように、フレームワーク配列の一部を生殖細胞に戻すことにより設計した。発現ベクターを調製し、発現、凝集能および抗原結合性を評価した。表5を参照。
L2またはL3をH1、H2、またはH3と組み合わせることにより、発現および精製収率が増加したが、結果として得られる抗体は、ヒトCD40への検出可能な結合を失った。L5をH1、H2またはH3と組み合わせることで、結果として得られる抗体の発現および結合の両方が減少した。H1、H2またはH4をL6と組み合わせることにより、発現が顕著に低下し、精製収率も低かったため、これらの抗体を用いたそれ以上の分析は行われなかった。対照的に、H4をL1またはL4のいずれかと組み合わせると、プロテインA精製後の発現が高くなり、モノマーの割合が高くなった。
全てのデータを考慮して、L4は、H1、H2またはH4と組み合わせたとき、抗体の生産性が向上した。加えて、重鎖の寄与度を比較したとき、重鎖4はロバストな発現をもたらし、親抗体よりも顕著に高く、凝集傾向を有意に低下させることが見いだされた。
さらに本発明の改変型重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗体のうち最も有望なものについて、さらに試験を行った。表6を参照。L4H1は、それぞれ、配列番号49の軽鎖および重鎖可変領域ならびに配列番号11の残基1〜119を含む。L4H2は、それぞれ配列番号49および配列番号52の軽鎖および重鎖可変領域を含む。L4H4は、それぞれ配列番号49および配列番号54の軽鎖および重鎖可変領域を含む。抗体(未修飾mAb 12D6−24を含む)は、その他の点では同一であった。
抗体12D6の改良された形態、特にL4H1およびL4H4は、改善された収率を示し、顕著に改善された単量体率(凝集の減少)を示したことが明らかであった。
改良された抗体がCD40に対する親和性を保持していることをELISAで確認した。表6を参照。これらの改良された抗CD40抗体はすべて、元のmAb 12D6−24と同様の結合性を保持した(Kd=0.24μM)。
実施例3
改良された重鎖および軽鎖可変領域を有する抗CD40抗体の生物学的活性
本発明の改良された抗CD40(mAb 12D6)抗体の生物学的活性を評価するために、さらに試験した。最初の試験では、ヒト単球(CD14+)を、プラスチック付着またはヒトCD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて健常ドナーから単離した。単球を、100ng/mL GM−CSF(Miltenyi Biotec)および100ng/mL IL−4(Miltenyi Biotec)で培養した。2日目および5日目に、培地の半分を除去して補充した。6−7日目に、未成熟樹状細胞を回収した。DCを、37℃にて一晩、示された抗体濃度でインキュベートした。細胞培養上清を集め、ヒトTNF−α産生についてアッセイした。図1を参照。
増殖培地単独(AIMV)および対照ヒトIgG1抗体は、TNF−α産生を誘発しない。修飾されていないmAb 12D6−24および改変型L4H4は中央の曲線で表されているが、一方、改変型L4H1(2つのドナー−6P1および6P2由来のDCを用いて実施された)は上側の曲線で表されている。本発明の改良型重鎖および/または軽鎖可変領域を有する抗CD40抗体が、未修飾mAb 12D6−24と同様に、このアッセイにおいて生物学的活性を保持することは明らかである。
細胞表面マーカーCD83およびCD86の誘導によって測定されるように、本発明の改良型アゴニスト抗CD40抗体の樹状細胞を活性化する能力を測定するために第二の試験を行った。活性化を、(前段に記載のように単離された)未成熟樹状細胞を96ウェルプレートに播種し、示された抗体を添加し、37℃にて一晩インキュベートして、インビトロにて測定した。その後、細胞を回収し、蛍光抗CD83抗体および蛍光抗CD86抗体で染色し、これらはそれぞれ、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって検出された。結果は、平均蛍光強度(MFI)として表される。FACSに用いた蛍光抗CD83抗体は、励起波長647nmのAlexa Fluor(登録商標) 647抗ヒトCD83抗体であり、蛍光抗CD86抗体は、励起波長488nmのAlexa Fluor(登録商標) 488抗ヒトCD86抗体であった(両方とも、BioLegend、San Diego Calif.、USAからのもの)。図2Aは、647nMでの励起で得られたデータを提供し、したがって主にCD83の染色(薄い灰色の棒グラフ)を示し、図2Bは、647nMでの励起で得られたデータを提供し、したがって主にCD86の染色(暗い灰色の棒グラフ)を示す。対照試験(黒い棒グラフ)は、染色抗体を用いずに行った。
データは、本発明のアゴニスト抗CD40 mAb 12D6の改良形態(L4H1およびL4H4)が、未成熟樹状細胞の表面上のCD83およびCD86の発現を、少なくとも未修飾mAb 12D6−24と同程度に強力に誘導することを示している。抗体L4H1およびL4H4は、CD40結合親和性および生物学的活性を保持しながら、収量および純度の向上を示すため、臨床開発の優れた候補となっている。
配列表は、成熟重鎖および軽鎖の配列を提供する(すなわち、配列はシグナルペプチドを含まない)。例えば、ヒト細胞において、本発明の抗体の産生のためのシグナル配列は、配列番号46に提供される。本明細書で用いる“配列番号54の残基1−119”は、配列番号54が119残基からなるため、“配列番号54”と同義である。残基の番号付けは、同じ用語および特許請求の範囲の要素の可変領域配列および全長重鎖配列または軽鎖配列への参照を容易にするためだけに、配列番号54に包含されることがある。
均等物:
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の態様の多くの均等物を認識するか、または常套の実験を用いて確認することができる。そのような均等物は、特許請求の範囲に包含されることが意図される。