JP2021195470A - ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用 - Google Patents

ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用 Download PDF

Info

Publication number
JP2021195470A
JP2021195470A JP2020103712A JP2020103712A JP2021195470A JP 2021195470 A JP2021195470 A JP 2021195470A JP 2020103712 A JP2020103712 A JP 2020103712A JP 2020103712 A JP2020103712 A JP 2020103712A JP 2021195470 A JP2021195470 A JP 2021195470A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pha
polyhydroxyalkanoic acid
powder
aqueous suspension
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020103712A
Other languages
English (en)
Inventor
博昭 杉山
Hiroaki Sugiyama
優 平野
Yu Hirano
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kaneka Corp
Original Assignee
Kaneka Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kaneka Corp filed Critical Kaneka Corp
Priority to JP2020103712A priority Critical patent/JP2021195470A/ja
Publication of JP2021195470A publication Critical patent/JP2021195470A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)

Abstract

【課題】流動性に優れるPHA(例えば、PHA粉体)を得ることができる製造方法を提供する。【解決手段】(a)ポリヒドロキシアルカン酸を含み、かつ、pHが7以下である水性懸濁液を調製する工程、(b)前記工程(a)で調製された水性懸濁液を噴霧乾燥し、ポリヒドロキシアルカン酸粉体を得る工程、および(c)前記工程(b)で得られたポリヒドロキシアルカン酸粉体に、平均粒子径が2μm以下の外添剤を含有させる工程、を含む、ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。【選択図】図2

Description

本発明は、ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用に関する。
ポリヒドロキシアルカン酸(以後、「PHA」と称する場合がある。)は、生分解性を有することが知られている。
微生物が生成するPHAは、微生物の菌体内に蓄積されるため、PHAをプラスチックとして利用するためには、微生物の菌体内からPHAを分離・精製する工程が必要となる。PHAを分離・精製する工程では、PHA含有微生物の菌体を破砕もしくはPHA以外の生物由来成分を可溶化した後、得られた水性懸濁液からPHAを取り出す。このとき、例えば、遠心分離、ろ過、乾燥等の分離操作を行う。乾燥操作には、噴霧乾燥機、流動層乾燥機、ドラムドライヤー等が用いられるが、操作が簡便であることから、好ましくは噴霧乾燥機が用いられる。
これまで、本発明者は、pH7以下の水性懸濁液中でのPHAの凝集を防止するために、水性懸濁液のpHを7以下に調整する前にポリビニルアルコール(PVA)を分散剤として添加し、その後、得られたpH7以下の水性懸濁液を噴霧乾燥する技術を開発している(特許文献1)。また、アルキレンオキサイド系分散剤を用いると、得られたPHA粉体を加工する際に、押し出し機内の軸へのPHA粉体付着を抑制できることを見出している。
国際公開第2018/070492号
上述した技術はいずれも優れたものであるが、さらなる改善の余地もある。
そこで、本発明の目的は、流動性に優れるPHA(例えば、PHA粉体)を得ることができる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、噴霧乾燥後のPHA粉体に特定の平均粒子径の外添剤(例えば、カオリナイト等)を添加することにより、流動性が改善されたPHA(例えば、PHA粉体)が得られるとの新規知見を見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明の一態様は、(a)ポリヒドロキシアルカン酸を含み、かつ、pHが7以下である水性懸濁液を調製する工程、(b)前記工程(a)で調製された水性懸濁液を噴霧乾燥し、ポリヒドロキシアルカン酸粉体を得る工程、および(c)前記工程(b)で得られたポリヒドロキシアルカン酸粉体に、平均粒子径が2.0μm以下の外添剤を含有させる工程、を含む、ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法である。
本発明の一態様によれば、流動性に優れるPHA(例えば、PHA粉体)を得ることができる。
実施例および比較例における粉体流動性を測定するための、ICIフローカップを示す図である。 実施例および比較例におけるPHA粉体のSEM画像を示す図である。図中、(a)が実施例に対応し、(b)が比較例に対応する。
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
〔1.本発明の概要〕
本発明の一実施形態に係るポリヒドロキシアルカン酸の製造方法(以下、「本製造方法」と称する。)は、(a)ポリヒドロキシアルカン酸を含み、かつ、pHが7以下である水性懸濁液を調製する工程、(b)前記工程(a)で調製された水性懸濁液を噴霧乾燥し、ポリヒドロキシアルカン酸粉体を得る工程、および(c)前記工程(b)で得られたポリヒドロキシアルカン酸粉体に、平均粒子径が2.0μm以下の外添剤を含有させる工程、を含む。
本発明者は、PHAの製造について研究を進めるうちに、上述した特許文献1の方法では、得られたPHA粉体を加工する際にPHA粉体が押し出し機内の軸に付着するという問題が生じる場合があることを見出した。この問題に対して検討した結果、本発明者は、アルキレンオキサイド系分散剤を用いることにより、上記問題を解決できることを以前に示した。
しかし、さらに研究を進めるうちに、分散剤を用いると、噴霧乾燥後のPHA粉体の流動性について、さらに改善し得る余地があることが分かった。
そこで、本発明者は、噴霧乾燥後のPHA粉体の流動性を改善する方法について鋭意検討を行った結果、噴霧乾燥後のPHA粉体に特定の平均粒子径の外添剤(例えば、カオリナイト等)を添加することにより、流動性が改善されたPHA(例えば、PHA粉体)が得られることを見出した。
PHA粉体の流動性は、通常、PHA粉体のメジアン粒子径に依拠することが知られているところ、外添剤を用いた場合にはPHA粉体のメジアン粒子径に変化はないことから、本発明者は、外添剤がPHA粉体粒子の表面に付着することにより、PHA粉体の流動性が改善されるとの作用機序であると推測した(図2参照)。このような知見は、これまでにない新規なものであり、驚くべきことである。なお、本発明はかかる作用機序に限定されるものではないことを念のため付言しておく。
したがって、本製造方法によれば、流動性に優れるPHA(例えば、PHA粉体)を得ることができる。以下、本製造方法の構成について詳説する。
〔2.PHAの製造方法〕
本製造方法は、下記の工程(a)〜工程(c)を必須の工程として含む方法である。
・工程(a):ポリヒドロキシアルカン酸を含み、かつ、pHが7以下である水性懸濁液を調製する工程
・工程(b):前記工程(a)で調製された水性懸濁液を噴霧乾燥し、ポリヒドロキシアルカン酸粉体を得る工程
・工程(c):前記工程(b)で得られたポリヒドロキシアルカン酸粉体に、平均粒子径が2.0μm以下の外添剤を含有させる工程
(工程(a))
本製造方法における工程(a)では、ポリヒドロキシアルカン酸を含み、かつ、pHが7以下である水性懸濁液を調製する。当該水性懸濁液において、PHAは水性媒体中に分散した状態で存在している。本明細書では、少なくともPHAを含む水性懸濁液を、「PHA水性懸濁液」と略して表記する場合がある。
<PHA>
本明細書において、「PHA」とは、ヒドロキシアルカン酸をモノマーユニットとする重合体の総称である。PHAを構成するヒドロキシアルカン酸としては、特に限定されないが、例えば、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸等が挙げられる。これらの重合体は、単独重合体でも、2種以上のモノマーユニットを含む共重合体でもよい。
より詳しくは、PHAとしては、例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバリレート)(P3HB3HV)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタノエート)(P3HB3HO)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタデカノエート)(P3HB3HOD)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシデカノエート)(P3HB3HD)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバリレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HV3HH)等が挙げられる。中でも、工業的に生産が容易であることから、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB4HBが好ましい。
また、繰り返し単位の組成比を変えることで、融点、結晶化度を変化させ、結果として、ヤング率、耐熱性等の物性を変化させることができ、かつ、ポリプロピレンとポリエチレンとの間の物性を付与することが可能であること、および上記したように工業的に生産が容易であり、物性的に有用なプラスチックであるという観点から、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の共重合体であるP3HB3HHがより好ましい。
本発明の一実施形態において、P3HB3HHの繰り返し単位の組成比は、柔軟性および強度のバランスの観点から、3−ヒドロキシブチレート単位/3−ヒドロキシヘキサノエート単位の組成比が、80/20〜99/1(mol/mol)であることが好ましく、83/17〜97/3(mo1/mo1)であることがより好ましい。3−ヒドロキシブチレート単位/3−ヒドロキシヘキサノエート単位の組成比が、99/1(mol/mol)以下であると、十分な柔軟性が得られ、80/20(mol/mol)以上であると、十分な硬度が得られる。
工程(a)は、下記の工程(a1)および工程(a2)を含むことが好ましい。
・工程(a1):PHA水性懸濁液に分散剤を添加する工程
・工程(a2):PHA水性懸濁液のpHを7以下に調整する工程
工程(a1)と工程(a2)とを実施する順番は、特に限定されないが、工程(a2)におけるPHAの凝集が抑制され、よりPHAの分散安定性に優れた水性懸濁液が得られる観点で、工程(a1)の後に工程(a2)を実施することが好ましい。
工程(a)において、出発原料として用いるPHA水性懸濁液(分散剤が添加されていないPHA水性懸濁液)は、特に限定されないが、例えば、細胞内にPHAを生成する能力を有する微生物を培養する培養工程、および当該培養工程の後、PHA以外の物質を分解および/または除去する精製工程、を含む方法により得ることができる。
本製造方法は、工程(a)の前に、PHA水性懸濁液(分散剤が添加されていないPHA水性懸濁液)を得る工程(例えば、上述の培養工程および精製工程を含む工程)を含んでいてもよい。当該工程において用いられる微生物は、細胞内にPHAを生成し得る微生物である限り、特に限定されない。例えば、天然から単離された微生物や菌株の寄託機関(例えば、IFO、ATCC等)に寄託されている微生物、またはそれらから調製し得る変異体や形質転換体等を使用できる。より詳しくは、例えば、カプリアビダス(Cupriavidus)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、ラルストニア(Ralstonia)属、シュウドモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、ノカルディア(Nocardia)属、アエロモナス(Aeromonas)属の菌等が挙げられる。中でも、アエロモナス属、アルカリゲネス属、ラルストニア属、またはカプリアビダス属に属する微生物が好ましい。特に、アルカリゲネス・リポリティカ(A.lipolytica)、アルカリゲネス・ラトゥス(A.latus)、アエロモナス・キャビエ(A.caviae)、アエロモナス・ハイドロフィラ(A.hydrophila)、カプリアビダス・ネケータ(C.necator)等の菌株がより好ましく、カプリアビダス・ネケータが最も好ましい。
また、微生物が、本来PHAの生産能力を有しないものである場合、またはPHAの生産量が低いものである場合には、当該微生物に目的とするPHAの合成酵素遺伝子および/またはその変異体を導入して得られる形質転換体を用いることもできる。このような形質転換体の作製に用いるPHAの合成酵素遺伝子としては特に限定されないが、アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素の遺伝子が好ましい。これらの微生物を適切な条件で培養することで、菌体内にPHAを蓄積した微生物菌体を得ることができる。当該微生物菌体の培養方法は特に限定されないが、例えば、特開平05−93049号公報等に記載された方法が用いられる。
上記の微生物を培養することにより作製されたPHA含有微生物には、不純物である菌体由来成分が多量に含まれているため、通常、PHA以外の不純物を分解および/または除去するための精製工程を実施され得る。この精製工程においては、特に限定されず、当業者が考え得る物理学的処理、化学的処理、生物学的処理等を適用することができ、例えば、国際公開第2010/067543号に記載の精製方法が好ましく適用できる。
上記の精製工程により、最終製品に残留する不純物量が概ね決定されるため、これらの不純物は、できる限り低減させた方が好ましい。当然に、用途によっては、最終製品の物性を損なわない限り不純物が混入しても構わないが、医療用用途等、高純度のPHAが必要とされる場合は、できる限り不純物を低減させることが好ましい。その際の精製度の指標としては、例えば、PHA水性懸濁液中のタンパク質量が挙げられる。当該タンパク質量は、好ましくは、PHA重量当たり30000ppm以下、より好ましくは、15000ppm以下、さらに好ましくは、10000ppm以下、最も好ましくは、7500ppm以下である。精製手段は、特に限定されず、例えば、上記した公知の方法を適用可能である。
なお、本製造方法におけるPHA水性懸濁液を構成する溶媒(「溶媒」は、「水性媒体」とも称する。)は、水、または水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。また、当該混合溶媒において、水と相溶性のある有機溶媒の濃度としては、使用する有機溶媒の水への溶解度以下であれば特に限定されない。また、水と相溶性のある有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、アセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピペリジン等が挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリル等が、除去しやすい点から好ましい。また、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、アセトン等が、入手容易であることからより好ましい。さらに、メタノール、エタノール、アセトンが、特に好ましい。なお、PHA水性懸濁液を構成する水性媒体は、本発明の本質を損なわない限り、他の溶媒、菌体由来の成分、精製時に発生する化合物等を含んでいても構わない。
本製造方法におけるPHA水性懸濁液を構成する水性媒体には、水が含まれていることが好ましい。水性媒体中の水の含有量は、5重量%以上が好ましく、より好ましくは、10重量%以上であり、さらに好ましくは、30重量%以上であり、特に好ましくは、50重量%以上である。
<分散剤>
本発明の一実施形態における前記水性懸濁液は、分散剤を含有していてもよい。すなわち、本発明の一実施形態における前記工程(a)は、前記ポリヒドロキシ酪酸共重合体(A)および前記ポリヒドロキシ酪酸共重合体(B)に加えて、分散剤をさらに含む水性懸濁液を調製する工程であってもよい。本発明の一実施形態において、前記分散剤を使用する場合は、前記工程(a1)において、前記分散剤を前記PHA水性懸濁液に添加することが好ましい。本発明の一実施形態における前記PHA水性懸濁液が、分散剤を含有することによって、PHAの生産性および熱安定性を好適に向上させることができる。
前記分散剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキレンオキサイド系分散剤、ポリビニルアルコール等が挙げられる。前記分散剤は、1種であってもよく、2種類以上であってもよい。
本発明の一実施形態において、前記分散剤は、PHA水性懸濁液のpHを7以下に調整する際に、PHAの凝集を好適に防ぐことができ、かつ、粉体加工の際の押出機の軸への付着を好適に抑制することができる面において、アルキレンオキサイド系分散剤であることが好ましい。
本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤は、上記の効果を奏する限り特に限定されないが、ポリ(エチレンオキサイド)(PEO)のブロックと、ポリ(プロピレンオキサイド)(PPO)のブロックとから構成され、PEO−PPO−PEOの形態であることが好ましい。
本明細書において、「ポリ(エチレンオキサイド)(PEO)のブロック」とは、アルキレンオキサイド系分散剤の構造中、エチレンオキサイド(EO)が重合して形成された重合体部分を意味する。
本明細書において、「ポリ(プロピレンオキサイド)(PPO)のブロック」とは、アルキレンオキサイド系分散剤の構造中、プロピレンオキサイド(PO)が重合して形成された重合体部分を意味する。
本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤中のPEO分子量およびPEO分子量/PPO分子量を特定の範囲とすることにより、水性懸濁液の粘度を低く保ち、高い生産性でPHA(例えば、PHA粉体)を製造することができる。
本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤中のPEO分子量およびPEO分子量/PPO分子量の範囲は、以下の組み合わせであることが好ましい。
なお、本明細書において、「PEO分子量」を「EO量」と称し、「PPO分子量」を「PO量」と称することもある。
すなわち、本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤中のPEO分子量は、1500以上であればよく、好ましくは、1750以上であり、より好ましくは、2000以上である。また、本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤中のPEO分子量の上限は、例えば、30000以下であり、好ましくは、25000以下であり、より好ましくは、20000以下である。
本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤中のPEO分子量/PPO分子量は、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましい。PEO分子量/PPO分子量の上限は、5.0以下であることが好ましく、4.8以下であることがより好ましく、4.5以下であることがさらに好ましい。
本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤中のPEO分子量およびPEO分子量/PPO分子量が上記の範囲内であれば、アルキレンオキサイド系分散剤が親水性を有し、かつ、アルキレンオキサイド系分散剤添加重量に対する分子数が多くなるため、水性懸濁液の分散性を保ちやすい。
本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤は、PEO分子量が1500以上であり、かつ、PEO分子量/PPO分子量が0.5〜5.0である。
本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤は、分子量が750以上であるPEOブロックを、少なくとも1つ以上有することが好ましく、少なくとも2つ以上有することがより好ましい。また、その上限は特に限定されないが、例えば、4以下であり、好ましくは、3以下である。PEOブロックの数が上記の範囲内であれば、アルキレンオキサイド系分散剤が親水性を有する。
本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤中のPPO分子量は、特に限定されないが、例えば、500以上であり、好ましくは、1500以上である。また、本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤中のPPO分子量の上限は、例えば、6700以下であり、好ましくは、6250以下である。アルキレンオキサイド系分散剤中のPPO分子量が上記の範囲内であれば、アルキレンオキサイド系分散剤が疎水性を有する。
本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤中のPPOブロックの数は、上記の効果を奏する限り特に限定されず、1つであってもよいし、複数(例えば、2、3、4)であってもよい。
本発明の一実施形態において、アルキレンオキサイド系分散剤は、例えば、下記の式(1)で示される化合物である。
Figure 2021195470
上記の式(1)において、Xは、例えば、17〜340であり、好ましくは、20〜285であり、より好ましくは、22〜226である。Xが、340以下であると、アルキレンオキサイド系分散剤添加重量に対する分子数が多くなるため、水性懸濁液の分散性を保ちやすく、Xが、17以上あると、親水性を有する。Yは、例えば、8〜115であり、好ましくは、10〜110であり、より好ましくは、24〜107である。Yが、115以下であると、水への溶解が容易であり、Yが、8以上あると、疎水性を有する。Zは、例えば、17〜340であり、好ましくは、20〜285であり、より好ましくは、22〜226である。Zが、340以下であると、アルキレンオキサイド系分散剤添加重量に対する分子数が多くなるため、水性懸濁液の分散性を保ちやすく、Zが、17以上あると、親水性を有する。
また、上記の式(1)において、XとZとの和(以下、「X+Z」と称する場合がある。)は、例えば、34〜680であり、好ましくは、40〜570であり、より好ましくは、44〜452である。X+Zが、680以下であると、アルキレンオキサイド系分散剤添加重量に対する分子数が多くなるため、水性懸濁液の分散性を保ちやすく、Xが、34以上あると、親水性を有する。
本製造方法の工程(a)(特に、工程(a1))において使用されるアルキレンオキサイド系分散剤は、特に限定されず、例えば、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、Pluronic 10400(BASF社製)、Pluronic 10500(BASF社製)、Genapol PF80(Clariant社製)、ユニルーブDP60−600B(日油社製)、ユニルーブDP60−950B(日油社製)、プロノン208(日油社製)、エパンU105(第一工業製薬社製)、エパンU108(第一工業製薬社製)、エパン750(第一工業製薬社製)等が使用され得る。
本製造方法の工程(a)(特に、工程(a1))における水性懸濁液に対する前記分散剤の添加量は、特に限定されないが、水性懸濁液に含まれるPHA100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましく、0.75〜5重量部がさらに好ましい。分散剤の添加量を上記の範囲とすることにより、PHA水性懸濁液におけるPHAの分散安定性がより向上し、一層噴霧乾燥を効率的に実施できる傾向がある。
<その他>
本製造方法の工程(a)に付される前のPHA水性懸濁液は、通常、上記の精製工程を経ることにより、7を超えるpHを有する。よって、本製造方法の工程(a1)にて得られるPHA水性懸濁液は、7を超えるpHを有する。そこで、本製造方法の工程(a)(特に、工程(a2))により、上記PHA水性懸濁液のpHを7以下に調整する。その調整方法は、特に限定されず、例えば、酸を添加する方法等が挙げられる。酸は、特に限定されず、有機酸、無機酸のいずれでもよく、揮発性の有無は問わない。より具体的には、酸としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸等が使用できる。
上記調整工程において調整するPHA水性懸濁液のpHの上限については、PHAを加熱溶融した時の着色を低減する観点、並びに、加熱時および/または乾燥時の分子量の安定性を確保する観点から、7以下であり、好ましくは、5以下であり、より好ましくは、4以下である。また、pHの下限については、容器の耐酸性の観点より、好ましくは、1以上であり、より好ましくは、2以上であり、さらに好ましくは、3以上である。PHA水性懸濁液のpHを7以下とすることによって、加熱溶融時の着色が低減され、加熱時および/または乾燥時の分子量低下が抑制されたPHAが得られる。
本製造方法の工程(a)により得られるPHA水性懸濁液におけるPHAの濃度は、乾燥ユーティリティーの面から経済的に有利であり、生産性が向上するため、30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。また、PHAの濃度の上限は、最密充填となり、十分な流動性が確保できない可能性があるため、65重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。PHAの濃度を調整する方法は、特に限定されず、水性媒体を添加する、および、水性媒体の一部を除去する(例えば、遠心分離した後、上清を取り除く等による)等の方法が挙げられる。PHAの濃度の調整は、工程(a)のいずれの段階で実施してもよいし、工程(a)の前の段階で実施してもよい。
本発明の一実施形態において、本製造方法は、工程(a)で調製する水性懸濁液におけるポリヒドロキシアルカン酸の濃度が、30〜65重量%である。
本製造方法の工程(a)により得られるPHA水性懸濁液におけるPHAの体積メジアン径(以下、単に「PHAの体積メジアン径」と称する。)は、当該PHAの一次粒子の体積メジアン径(以下、「一次粒子径」と称する。)の50倍以下が好ましく、20倍以下がより好ましく、10倍以下がさらに好ましい。PHAの体積メジアン径が一次粒子径の50倍以下であることにより、PHA水性懸濁液がより優れた流動性を示すため、その後の工程(b)を高効率で実施することができ、PHAの生産性が一層向上する傾向がある。
本発明の一実施形態において、PHAの体積メジアン径は、例えば、優れた流動性が達成されるという観点から、0.5〜5.0μmが好ましく、1.0〜4.5μmがより好ましく、1.0〜4.0μmがさらに好ましい。PHAの体積メジアン径は、例えば、HORIBA製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950を用いて測定される。
なお、上記のPHAの体積メジアン径は、PHA水性懸濁液におけるPHAの分散状態の指標とすることができる。上記のPHAの体積メジアン径を調整する方法は、特に限定されず、公知の手段(攪拌等)を適用できる。例えば、酸性条件下に曝される等して分散状態が崩れてしまったPHA水性懸濁液(例えば、工程(a1)の前に工程(a2)を実施する場合等)に対して、当業者が考え得る物理的処理、化学的処理、生物学的処理等を施し、PHA水性懸濁液におけるPHAを再度分散状態(例えば、上記のPHAの体積メジアン径を有する状態)に復帰させることもできる。
(工程(b))
本製造方法における工程(b)では、工程(a)で調製された水性懸濁液を噴霧乾燥し、ポリヒドロキシアルカン酸粉体を得る。噴霧乾燥の方法としては、例えば、PHA水性懸濁液を微細な液滴の状態として乾燥機内に供給し、当該乾燥機内で熱風と接触させながら乾燥する方法等が挙げられる。PHA水性懸濁液を微細な液滴の状態で乾燥機内に供給する方法(アトマイザー)は、特に限定されず、回転ディスクを用いる方法、ノズルを用いる方法等の公知の方法が挙げられる。乾燥機内における液滴と熱風の接触方式は、特に限定されず、並流式、向流式、これらを併用する方式等が挙げられる。
工程(b)における噴霧乾燥の際の乾燥温度は、PHA水性懸濁液の液滴から水性媒体の大半を除去できる温度であればよく、目的とする含水率まで乾燥させることができ、かつ、品質悪化(分子量低下、色調低下等)、溶融等を極力生じさせないような条件で、適宜設定できる。例えば、噴霧乾燥機に吹き込む熱風の温度は、100〜300℃の範囲で、適宜選択できる。また、乾燥機内の熱風の風量についても、例えば、乾燥機のサイズ等に応じて、適宜設定できる。
(工程(c))
本製造方法における工程(c)では、工程(b)で得られたポリヒドロキシアルカン酸粉体に、平均粒子径が2.0μm以下の外添剤を含有させる。ポリヒドロキシアルカン酸粉体に平均粒子径が2.0μm以下の外添剤を含有させることにより、流動性に優れるPHA(例えば、PHA粉体)が得られる。
工程(c)における外添剤の平均粒子径は、2.0μm以下であり、好ましくは、1.8μm以下であり、より好ましくは、1.6μm以下である。また、工程(c)における外添剤の平均粒子径の下限値は、例えば、0.05μm以上であり、好ましくは、0.1μm以上であり、より好ましくは、0.15μm以上である。外添剤の平均粒子径を上記範囲とすることにより、流動性に優れるPHA(例えば、PHA粉体)が得られる。
工程(c)における外添剤としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、カオリナイト(ケイ酸アルミニウム)、タルク、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト等が挙げられる。カオリナイトは、焼成したカオリナイト、焼成していないカオリナイトのいずれであってもよいが、PHA粉体により高い流動性を付与する観点から、焼成していないカオリナイトであることが好ましい。
工程(c)における外添剤としてカオリナイトを用いる場合、入手先は特に限定されないが、例えば、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、イメリスミネラルズ・ジャパン製の、TS−90、HydriteR、HydriteRS、HydriteSB60、HydriteSB100、Polestar400、Polestar450、BASF SE製の、ASPG90、ASPG92等が挙げられる。
工程(c)において、外添剤を含有させる方法としては、特に限定されないが、例えば、工程(b)で得られたポリヒドロキシアルカン酸粉体に、一定量の外添剤を添加する方法が挙げられる。
工程(c)における外添剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、0.1〜12phrであり、好ましくは、0.15〜11phrであり、より好ましくは、0.2〜10phrである。外添剤の添加量を上記範囲とすることにより、流動性に優れるPHA(例えば、PHA粉体)が得られる。
〔3.ポリヒドロキシアルカン酸粉体〕
本発明の一実施形態に係るポリヒドロキシアルカン酸粉体(以下、「本PHA粉体」と称する。)は、ポリヒドロキシアルカン酸、アルキレンオキサイド系分散剤および外添剤を含む。
本実施形態において、「ポリヒドロキシアルカン酸」、「アルキレンオキサイド系分散剤」および「外添剤」については、上記したものが援用される。
本PHA粉体のメジアン粒子径は、特に限定されないが、粉塵爆発防止や粉体流動性の観点から、60〜1000μmが好ましく、100〜500μmがより好ましい。本PHA粉体のメジアン粒子径は、HORIBA製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950を用いて測定される。
本発明の一実施形態において、本PHA粉体は、開口径15mmのICIフローカップを用いてICIフローを測定した際の流出時間が、例えば、7秒以内であり、好ましくは6.5秒以内であり、より好ましくは6秒以内である。また、開口径10.5mmのICIフローカップを用いてICIフローを測定した際の流出時間が、例えば、15秒以内であり、好ましくは13秒以内であり、より好ましくは11秒以内である。また、開口径5mmのICIフローカップを用いてICIフローを測定した際の流出時間が、例えば、60秒以内であり、好ましくは55秒以内であり、より好ましくは50秒以内である。ここで、前記流出時間は、PHA粉体の流動性の指標であり、流出時間が短いほど、流動性が高いことを示す。前記流出時間の測定は、後述する実施例に記載の方法で行われる。
本発明の一実施形態において、本PHA粉体は、外添剤がその表面に付着していることが好ましい。外添剤が本PHA粉体粒子の表面に付着している状態は、例えば、図2のように、SEM等の顕微鏡観察により判断し得る。
また、本PHA粉体は、本発明の効果を奏する限り、本製造方法の過程で生じた、または除去されなかった種々の成分を含んでいてもよい。
本PHA粉体は、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器(例えば、ボトル容器等)、袋、部品等、種々の用途に利用できる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
すなわち、本発明の一実施形態は、以下である。
<1>(a)ポリヒドロキシアルカン酸を含み、かつ、pHが7以下である水性懸濁液を調製する工程、
(b)前記工程(a)で調製された水性懸濁液を噴霧乾燥し、ポリヒドロキシアルカン酸粉体を得る工程、および
(c)前記工程(b)で得られたポリヒドロキシアルカン酸粉体に、平均粒子径が2.0μm以下の外添剤を含有させる工程、を含む、ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
<2>前記外添剤の添加量が、0.1〜12phrである、<1>に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
<3>前記外添剤が、カオリナイト、タルク、ベントナイト、モンモリロナイトおよびヘクトライトからなる群より選択される少なくとも一つである、<1>または<2>に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
<4>前記水性懸濁液が、分散剤を含む、<1>〜<3>のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
<5>前記分散剤が、アルキレンオキサイド系分散剤である、<4>に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
<6>前記アルキレンオキサイド系分散剤が、ポリ(エチレンオキサイド)(PEO)のブロックと、ポリ(プロピレンオキサイド)(PPO)のブロックとから構成され、PEO−PPO−PEOの形態である、<5>に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
<7>前記アルキレンオキサイド系分散剤は、PEO分子量が1500以上であり、かつ、PEO分子量/PPO分子量が0.5〜5.0である、<6>に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
<8>前記アルキレンオキサイド系分散剤が、下記の式(1)で示される化合物である、<5>〜<7>のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
Figure 2021195470
(式中、Xは、17〜340であり、Yは、8〜115であり、Zは、17〜340である。)
<9>前記工程(a)で調製する水性懸濁液におけるポリヒドロキシアルカン酸の濃度が、30〜65重量%である、<1>〜<8>のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
<10>ポリヒドロキシアルカン酸、アルキレンオキサイド系分散剤および外添剤を含む、ポリヒドロキシアルカン酸粉体。
<11>開口径15mmのICIフローカップを用いてICIフローを測定した際の流出時間が、7秒以内である、<10>に記載のポリヒドロキシアルカン粉体。
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔測定および評価方法〕
実施例および比較例における測定および評価を、以下の方法で行った。
(粉体流動性)
粉体流動性は、ICIフローで確認を行った。ICIフローとは、粉体粒子の動的状態での粉体粒子の流れやすさを表す指標であり、本実施例では、φ5mmの穴があいたロート状の金属性容器であるICIフローカップを用いた。使用したICIフローカップを図1に示す。室温で、充填部2からカップにPHA粉体を充填し、その後、底蓋(流出部3)を開けてPHA粉体がすべて流出するかどうかを確認した。なお、図1中、充填部2の長さは55mmであり、流出部3の長さは5mmであり、充填部2から流出部3までの最短距離は60mmである。PHA粉体がブリッジして流動性がなくなった場合には、付属のハンマーで振動を与えた。充填したPHA粉体がすべて流出した場合を○、それ以外の場合を×とした。なお、○の場合、表1では、PHA粉体の流出時間(秒)を示す。
(SEM)
SEM試料台の上にカーボンテープを貼り、その上から外添剤を含有したPHA粉体、または比較例となるPHA粉体を振りかけた後、過剰な粉体をブロアーで除去した。前処理はオスミウム・プラズマコーターにて20nmの厚みでコーティングを実施した。本PHA粉体の前処理は、フィルジェン製 OPC60A−Gオスミウム・プラズマコーターを用いて実施した。SEM観察は、日立ハイテク製 S−4800にて実施した。
〔実施例1〕
(菌体培養液の調製)
国際公開第2019/142717号に記載のラルストニア・ユートロファを、同文献の段落〔0041〕〜〔0048〕に記載の方法で培養し、PHAを含有する菌体を含む菌体培養液を得た。なお、ラルストニア・ユートロファは、現在では、カプリアビダス・ネケータに分類されている。PHAの繰り返し単位の組成比(3−ヒドロキシブチレート単位/3−ヒドロキシヘキサノエート単位の組成比)は80/20〜99/1(mol/mol)であった。
(滅菌処理)
上記で得られた菌体培養液を内温60〜80℃で20分間加熱・攪拌処理し、滅菌処理を行った。
(高圧破砕処理)
上記で得られた滅菌済みの菌体培養液に、0.2重量%のドデシル硫酸ナトリウムを添加した。さらに、pHが11.0になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加した後、50℃で1時間保温した。その後、高圧破砕機(ニロソアビ社製高圧ホモジナイザーモデルPA2K型)を用いて、450〜550kgf/cmの圧力で高圧破砕を行った。
(精製処理)
上記で得られた高圧破砕後の破砕液に対して、等量の蒸留水を添加した。これを遠心分離した後、上清を除去して2倍濃縮した。この濃縮したPHAの水性懸濁液に、除去した上清と同量の水酸化ナトリウム水溶液(pH11)を添加して遠心分離し、上清を除去した。そこに再度水を添加して懸濁させ、0.2重量%のドデシル硫酸ナトリウムと、PHAの1/100重量のプロテアーゼ(ノボザイム社、エスペラーゼ)を添加し、pH10で50℃に保持したまま、2時間攪拌した。その後、遠心分離により上清を除去して4倍濃縮した。さらに水を添加して、PHA濃度が52.8重量%になるように調整した。
(造粒)
上記で得られたPHA水性懸濁液に水を添加して濃度を調整し(固形分濃度(PHAの濃度)32.8重量%)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体非イオン性分散剤(ポリエチレンオキサイド分子量8000、ポリプロピレンオキサイド分子量2000、商品名プロノン208)を1.0phr(水性懸濁液中に存在するPHA100重量部に対して1重量部)添加し、次いで、メチルセルロース(商品名MCE−4000)を1.0phr添加し、混合した。その後、前記混合物の固形分濃度を30質量%に調整した。この液を120分間撹拌した後、PHA水性懸濁液100gあたりに対して、10重量%硫酸を0.4ml添加し、PHA水性懸濁液を得た。このPHA水性懸濁液中の体積メジアン径をHORIBA製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950を用いて測定したところ、3.0μmであった。さらに、前記PHA水性懸濁液のせん断粘度をTA Instrument製AR−G2を用いて測定したところ、20℃におけるせん断速度100 1/sでのせん断粘度は0.0129Pa・sであった。得られたPHA水性懸濁液を、GEA製のロータリーアトマイザー型噴霧乾燥機(Mobile Minor)にて噴霧乾燥を実施し(熱風温度:140℃、排風温度:85℃、ロータリーアトマイザー回転速度:10000rpm)、PHA粉体を得た。得られたPHA粉体の圧縮度は、21.3%であった。
(外添剤の添加)
PHA粉体を計量してポリエチレン製袋に充填し、計量したカオリナイトを添加した。袋を閉じた後、5分間振とうし、十分に混合させた。得られたPHA粉体のSEM画像を図2(a)に示す。
なお、表1において、カオリナイトの「平均粒子径」は、製造者カタログに記載の平均粒子径を示す。
〔実施例2〕
カオリナイトの添加量を2phrとした以外は、実施例1と同様の方法で、PHA粉体を得た。
〔実施例3〕
平均粒子径が0.8μmの異なる種類のカオリナイトを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、PHA粉体を得た。
〔実施例4〕
カオリナイトの種類を変更した以外は、実施例3と同様の方法で、PHA粉体を得た。
〔実施例5〕
平均粒子径が0.4μmの異なる種類のカオリナイトを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、PHA粉体を得た。
〔実施例6〕
平均粒子径が1.1μmの異なる種類のカオリナイトを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、PHA粉体を得た。
〔実施例7〕
平均粒子径が0.6μmの異なる種類の焼成カオリナイトを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、PHA粉体を得た。
〔実施例8〕
平均粒子径が1.5μmの異なる種類の焼成カオリナイトを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、PHA粉体を得た。
〔比較例1〕
(外添剤の添加)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、PHA粉体を得た。得られたPHA粉体のSEM画像を図2(b)に示す。
Figure 2021195470
[結果]
結果を、表1および図2に示す。
表1より、実施例1〜8と比較例1との比較から、噴霧乾燥後のPHA粉体に外添剤を添加することにより、流動性に優れるPHA粉体が得られることが分かった。
また、図2より、外添剤はPHA粉体の表面に偏在しており、PHA粉体の粒子径分布は変化していないことが分かった。
以上より、本製造方法により、流動性に優れるPHA(例えば、PHA粉体)を得ることができることが示された。
本製造方法は、流動性に優れるPHA(例えば、PHA粉体)を製造することができることから、PHAの製造において有利に使用できる。また、本製造方法により得られたPHA粉体等は、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に利用することができる。
1 ICIフローカップ
2 充填部
3 流出部

Claims (11)

  1. (a)ポリヒドロキシアルカン酸を含み、かつ、pHが7以下である水性懸濁液を調製する工程、
    (b)前記工程(a)で調製された水性懸濁液を噴霧乾燥し、ポリヒドロキシアルカン酸粉体を得る工程、および
    (c)前記工程(b)で得られたポリヒドロキシアルカン酸粉体に、平均粒子径が2.0μm以下の外添剤を含有させる工程、を含む、ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  2. 前記外添剤の添加量が、0.1〜12phrである、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  3. 前記外添剤が、カオリナイト、タルク、ベントナイト、モンモリロナイトおよびヘクトライトからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  4. 前記水性懸濁液が、分散剤を含む、請求項1〜3に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  5. 前記分散剤が、アルキレンオキサイド系分散剤である、請求項4に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  6. 前記アルキレンオキサイド系分散剤が、ポリ(エチレンオキサイド)(PEO)のブロックと、ポリ(プロピレンオキサイド)(PPO)のブロックとから構成され、PEO−PPO−PEOの形態である、請求項5に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  7. 前記アルキレンオキサイド系分散剤は、PEO分子量が1500以上であり、かつ、PEO分子量/PPO分子量が0.5〜5.0である、請求項6に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  8. 前記アルキレンオキサイド系分散剤が、下記の式(1)で示される化合物である、請求項5〜7のいずれか1項に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
    Figure 2021195470
    (式中、Xは、17〜340であり、Yは、8〜115であり、Zは、17〜340である。)
  9. 前記工程(a)で調製する水性懸濁液におけるポリヒドロキシアルカン酸の濃度が、30〜65重量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  10. ポリヒドロキシアルカン酸、アルキレンオキサイド系分散剤および外添剤を含む、ポリヒドロキシアルカン酸粉体。
  11. 開口径15mmのICIフローカップを用いてICIフローを測定した際の流出時間が、7秒以内である、請求項10に記載のポリヒドロキシアルカン粉体。
JP2020103712A 2020-06-16 2020-06-16 ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用 Pending JP2021195470A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020103712A JP2021195470A (ja) 2020-06-16 2020-06-16 ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020103712A JP2021195470A (ja) 2020-06-16 2020-06-16 ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021195470A true JP2021195470A (ja) 2021-12-27

Family

ID=79197254

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020103712A Pending JP2021195470A (ja) 2020-06-16 2020-06-16 ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021195470A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023149511A1 (ja) * 2022-02-07 2023-08-10 株式会社カネカ ポリヒドロキシアルカン酸粉体およびその利用

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023149511A1 (ja) * 2022-02-07 2023-08-10 株式会社カネカ ポリヒドロキシアルカン酸粉体およびその利用

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2021085534A1 (ja) ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用
JP6993980B2 (ja) ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法
WO2021085120A1 (ja) ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用
WO2021251049A1 (ja) ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用
WO2018186278A1 (ja) ポリヒドロキシアルカノエート粒子及びその水分散液
JP6666328B2 (ja) ポリエステル樹脂組成物及び成形体の製造方法、並びにポリエステル樹脂組成物及び成形体
TW201412814A (zh) 用於製造聚(羥基烷酸酯)之水性分散體的方法
WO2004041936A1 (ja) 生分解性ポリエステル水性分散液およびその製造方法
WO2014112008A1 (ja) 樹脂組成物、樹脂成形体、およびこれらの製造方法
JP7379126B2 (ja) ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用
JP2021195470A (ja) ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用
WO2022091685A1 (ja) ポリヒドロキシ酪酸共重合体の製造方法およびその利用
WO2024029514A1 (ja) ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法およびその利用
WO2022113530A1 (ja) ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)の製造方法
WO2021176941A1 (ja) ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用
WO2021161732A1 (ja) ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用
JP2023086317A (ja) ポリヒドロキシアルカン酸粒子およびその製造方法
JP2023178063A (ja) ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用
JP2024028034A (ja) ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法およびその利用
WO2023120193A1 (ja) ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法およびその利用
CN118632885A (zh) 聚羟基烷酸酯粉体及其利用
WO2023120310A1 (ja) ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法およびその利用
JP2023108910A (ja) ポリヒドロキシアルカノエートケーキの製造方法およびその利用
WO2023181762A1 (ja) ポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液及びその製造方法
CN117881717A (zh) 聚羟基烷酸酯的制造方法及其利用