JP2021195350A - 複合粒子及び化粧料組成物 - Google Patents

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【課題】本発明では、化粧料に含有させたときに、分散しやすく、伸ばしやすい、無機微粒子を有する複合粒子及び化粧料組成物を提供する。【解決手段】この課題は、平均繊維径が100nm以下であるセルロースナノファイバーが相互に凝集した凝集粒子と、当該凝集粒子に付着する複数の無機微粒子を有し、平均粒子径が10μm以下、かつ比表面積が2m2/g以上である、ことを特徴とする複合粒子、及び当該複合粒子と増粘剤を有し、前記増粘剤は、多価アルコール、多糖類、水溶性高分子からなる群から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする化粧料組成物によって解決される。【選択図】図1

Description

本発明は、複合粒子及び化粧料組成物に関するものである。
従来から、化粧料には金属粉末等に代表される無機粉末が含有されたものがある。この無機粉末は、太陽光を乱反射する性質を有する。具体的には太陽光に含まれる紫外線は、無機粉末に入射すると、乱反射され透過が遮られる。この無機粉末を化粧料に含有させることで、化粧料は紫外線カット効果を備えたものとなる。そのため、日焼け止めを目的とする化粧料には無機粉末が含有されたものが多い。
特許文献1は、無機粉末である微粒子酸化チタン等を用いて、無機紫外線散乱剤を配合しながらも、塗布時のべたつきや白浮き等の使用感を改善し、また、無機紫外線散乱剤の沈殿や凝集を抑えて紫外線防御能を向上した水中油型日焼け止め化粧料の提供を課題としている。そして、この課題を解決するために無機紫外線散乱剤、平均繊維径が2〜500nmのアニオン変性セルロースナノファイバー、界面活性剤、油性成分を含有する水中油型日焼け止め化粧料に関する技術を開示している。
しかしながら、一般的に、無機粉末は、放置しておくと凝集する性質を有し、界面活性剤を添加させて分散させたとしても、次第に凝集してしまう。このことは上記、特許文献1においても当てはまり、当該技術もまた、無機粉末の分散性が不十分なものである。結果、当該技術の化粧料は、肌に塗布する際に伸びが良くなく、複数回重ね塗りをする等の手間がかかるものであった。
WO2018/230228号公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、化粧料に含有させたときに、分散しやすく、伸ばしやすい、無機微粒子を有する複合粒子及び化粧料組成物を提供することを課題とする。
前記課題は、次記に示す態様により解決される。
(第1の態様)
平均繊維径が100nm以下であるセルロースナノファイバーが相互に凝集した凝集粒子と、当該凝集粒子に付着する複数の無機微粒子を有し、
平均粒子径が10μm以下、かつ比表面積が2m2/g以上である、
ことを特徴とする複合粒子。
セルロースナノファイバーは、水素結合点を多量に有するので、複合粒子を分散媒に混ぜて化粧料としたときに、相互に水素結合を形成して分散媒中で分散した状態になり易い。また、セルロースナノファイバーが分散した化粧料は、チキソトロピー性を備え、伸ばしやすいとの効果を奏する。
また、セルロースナノファイバーは、分散液中では、三次元ネットワークを形成して相互に分散するが、セルロースナノファイバー分散液を濃縮させる等して乾燥させると、セルロースナノファイバーが相互に凝集する。特にセルロースナノファイバーの平均繊維径が小さいものは、相互に絡み合い、凝集して凝集粒子となる。仮に、セルロースナノファイバーの平均繊維径が大きいと、相互に絡み合いが少ないので、凝集粒子が形成されにくい。本態様のセルロースナノファイバーは、平均繊維径が100nm以下なので、凝集化が促進され、凝集粒子が形成されやすいものとなる。また、当該凝集粒子に付着する無機微粒子は、太陽光、例えば紫外線を乱反射したり散乱させたりするので、紫外線の透過を抑制する効果を有する。微粒子は、一般的に分子間力等の作用により凝集する性質を有し、当該無機微粒子も凝集し易い。しかしながら、当該無機微粒子は、凝集粒子に付着しているので、自由な移動が制限され相互に凝集し難い形態になっている。
本態様の無機微粒子の一部は、凝集粒子を形成するセルロースナノファイバーに抱き込まれるようにして付着していると推測される。ある一つの無機微粒子は、一つのセルロースナノファイバーに抱き込まれている場合や、複数のセルロースナノファイバーに抱き込まれている場合がある。そして、無機微粒子を抱き込むようにして形成された複合粒子は、セルロースナノファイバーが相互に水素結合で強く凝集されたものとなっているので、液体等の媒体に混合しても容易にその凝集がほどけない。また、複合粒子は、当該媒体内で膨潤し難く、溶解したり、個々のセルロースナノファイバーに分解したりし難い。
複合粒子の平均粒子径が大きいと、この複合粒子を塗布した肌は、ざらつきを感じやすくなる。本形態の複合粒子の平均粒子径が10μm以下なので、当該複合粒子を塗布した肌は、ざらつき難く滑らかである。
また、複合粒子の比表面積は、複合粒子に備わる無機微粒子の数が多いほど、無機微粒子の表面積が加算され大きくなる。一般的には無機微粒子が多量に担持された化粧料を製造する場合には、無機微粒子を担持する担体として大きいサイズのものを用いて、この大きいサイズの担体に無機微粒子を担持させる。しかしながら、この場合、当該担体を備えた化粧料を肌に塗布すると、ざらつきが感じられ不快感を抱かせることになる。
この点において、本態様の複合粒子は、担体にセルロースナノファイバーを用いることで、小サイズでありながら担体自体の表面積を稼ぐことができ、さらに担体、すなわちセルロースナノファイバーに無機微粒子を付着させることで一層、複合粒子としての比表面積を大きくすることを可能とした。また、セルロースナノファイバーの凝集粒子は表面積が相対的に大きいので、無機微粒子を多量に付着でき、複合粒子としての比表面積を大きくでき、結果、太陽光の透過抑制効果に優れたものとなっている。さらに、本態様の複合粒子は、化粧料等の媒体に含有させた場合、相互に分散され、伸ばし易いものになっている。これについては、理由は定かではないが、セルロースナノファイバーの水素結合点の作用及びチキソトロピー性の作用によるものと推測される。
(第2の態様)
前記無機微粒子は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウムからなる群から選択される1種又は2種以上である、
第1の態様の複合粒子。
無機微粒子の中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウムは紫外線を遮る効果に優れる。
(第3の態様)
前記セルロースナノファイバーは、セルロース繊維のヒドロキシ基が置換されてリンオキソ酸エステル基が導入された変性セルロースナノファイバーと、セルロース繊維のヒドロキシ基が置換されていない未変性セルロースナノファイバーとのうちの、少なくともいずれか1つ以上からなるものである、
第1の態様又は第2の態様の複合粒子。
複合粒子を形成するセルロースナノファイバーは、変性されたものであっても、未変性のものであってもよい。
(第4の態様)
前記無機微粒子の一次粒子径が1μm以下である、
第1の態様〜第3の態様のいずれかの態様の複合粒子
当該態様であれば、無機微粒子が所定のサイズ以下なので、セルロースナノファイバーが無機微粒子を抱き込みやすい。また、セルロースナノファイバーに付着した無機微粒子が、剥離しにくい。
また、無機微粒子は、小さいほど、凝集粒子に多量に付着するし、凝集粒子に多量に付着するほど、複合粒子は、太陽光の透過を抑制することができる。さらに、無機微粒子の多量の付着により、複合粒子としての表面積が大きくなるので好ましい。
(第5の態様)
前記無機微粒子が50質量%以下含まれる、
第1の態様〜第4の態様のいずれかの態様の複合粒子
複合粒子に含まれる無機微粒子の量が多過ぎると、無機微粒子の一部が凝集粒子から剥離し易くなる。この剥離現象は、無機微粒子相互の凝集を招くため好ましくない。本態様であれば、凝集粒子からの無機微粒子の剥離が起こり難い。
また、無機微粒子が当該量含まれていれば、太陽光の透過を十分に抑制できる。
(第6の態様)
前記無機微粒子が親水処理されたものである、
第1の態様〜第5の態様のいずれかの態様の複合粒子
セルロースナノファイバーは、水酸基を有し親水性に富む。無機微粒子は、親水処理されているので、セルロースナノファイバーと親和し、凝集粒子から剥離し難くなる。
(第7の態様)
前記無機微粒子の一部が前記凝集粒子に内包されている、
第1の態様〜第6の態様のいずれかの態様の複合粒子。
無機微粒子が凝集粒子に内包されていることで、凝集粒子に付着する無機微粒子の量が相対的に多くなり、太陽光の透過がより抑制される。また、無機微粒子が凝集粒子から剥離し難くなる。
(第8の態様)
第1の態様〜第7の態様のいずれかの態様の複合粒子と、増粘剤を有し、
前記増粘剤は、多価アルコール、多糖類、水溶性高分子からなる群から選択される1種又は2種以上である、
ことを特徴とする化粧料組成物。
増粘剤とセルロースナノファイバーは、共に親水性であるので、セルロースナノファイバーが当該増粘剤中で凝集し難いものとなる。
特に無機微粒子を親水処理した場合は、本態様では当該増粘剤は親水性を有するので、当該無機微粒子が当該増粘剤に親和し、凝集粒子と共に分散が促進される。
本発明によると、化粧料に含有させたときに、分散しやすく、伸ばしやすい、無機微粒子を有する複合粒子及び化粧料組成物となる。
複合粒子のSEM画像である。 無機微粒子のSEM画像である。 界面沈降度試験の結果を示す図である。 界面沈降度試験の結果を示す図である。
本発明を実施するための形態を次記に説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
従来の化粧料では、無機紫外線散乱剤としての金属粉体を、例えば、主成分としての水系媒体や界面活性剤、油分と混ぜ合わせて水中油型化粧料としていた(特許文献1)。金属粉体は、疎水処理され油分でミセルを形成して、水中に分散させていた。一方で、本形態では、セルロースナノファイバー自体が分散性を有するので、無機微粒子を分散させるために水系媒体と油分を同時に用いなくてもよく、例えば、親水性の成分を主な組成とする化粧料組成物とすることができる。
本形態における複合粒子及び化粧料組成物は、セルロースナノファイバーが相互に凝集した凝集粒子と、当該凝集粒子に付着する無機微粒子を有する。複合粒子の画像を図1に示す。図1には、凝集したセルロースナノファイバー30に無機微粒子20が付着した複合粒子10が示されている。以下、セルロースナノファイバーと無機微粒子について説明する。
(セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバーは、セルロース繊維の水素結合点を多数有し、セルロースナノファイバーと親和性のある媒体(例えば、水や有機溶剤等)に混ぜると、分散して分散液になる。分散したセルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバー自身に備わる極性を有する基が、他のセルロースナノファイバーと相互に水素結合等により結合して、自由度が奪われ、粘度を有したものとなる。セルロースナノファイバーは、当該媒体を十分に含有する場合は、膨潤して伸長した形態になるが、媒体の含有量が少ない場合は、図1に示すように収縮した形態になる。
セルロースナノファイバーは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができ、化学処理、機械処理等公知の処理手法で製造することができる。
セルロースナノファイバーの原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、茶古紙、封筒古紙、雑誌古紙、チラシ古紙、段ボール古紙、上白古紙、模造古紙、更上古紙、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物の状態等であってもよい。近年のオーガニック成分含有の整髪料組成物の需要が増加傾向にあるため、特に、古紙以外の植物由来の広葉樹や針葉樹を原料とする木材パルプが好適である。
木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ等(DP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。特に、セルロース成分を高める木材パルプである、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプが好ましく、晒パルプ(BKP)が好適である。
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
100nm以下のセルロースナノファイバーを製造する観点からは、解繊が容易であり、高い分散性を備えたクラフトパルプを使用するのが好ましい。特に、化粧料組成物は白系統が好まれる傾向にあり、白色性の高さを向上させる観点からLBKP及びNBKPを使用するのがより好ましい。
セルロースナノファイバーは、解繊するに先立って、前処理を施してもよい。例えば、前処理として、原料パルプを機械的に予備叩解したり、原料パルプを化学的に変性処理したりしてもよい。予備叩解の手法は特に限定されず、公知の手法を用いることができる。
化学的手法による原料パルプの前処理としては、例えば、酸(例えば、硫酸等)による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤(例えば、オゾン等)による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)、TEMPO触媒による酸化(酸化処理)、リン酸エステル化やカルバメート化等によるアニオン化(アニオン処理)、カチオン化(カチオン処理)等を例示することができる。
アルカリ処理に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の有機アルカリ等を例示できる。製造コストの観点からは、水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。
酵素処理や酸処理、酸化処理を施すと、セルロースナノファイバーの保水度を低く、結晶化度を高くすることができ、かつ均質性を高くすることができる。セルロースナノファイバーの保水度が低いと脱水し易くなり、乾燥させやすくなるので好ましい。
原料パルプを酵素処理や酸処理、酸化処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解され、結果、微細化処理のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。セルロース繊維の分散性は、例えば、成形体の均質性向上に資する。ただし、前処理は、セルロースナノファイバーのアスペクト比を低下させるため、過度の前処理は避けるのが好ましい。
アニオン化により、アニオン性官能基が導入されて変性されたセルロースナノファイバーとしては、リンオキソ酸によりエステル化されたセルロースナノファイバーやカルバメート化されたセルロースナノファイバー、ピラノース環の水酸基が直接カルボキシル基に酸化されたセルロースナノファイバー等を例示できる。
アニオン性官能基が導入されて変性されたセルロースナノファイバーは、 相対的に高い分散性を有する。これは、アニオン性官能基により電荷の偏りが局所的に発生し、このアニオン性官能基が分散液中の水や有機溶剤と水素結合を容易に形成することによるものと推測される。
アニオン化の一例である、リンオキソ酸によるエステル化をセルロース繊維に施すと、繊維原料を微細化でき、製造されるセルロースナノファイバーは、アスペクト比が大きく強度に優れ、光透過度及び粘度が高いものとなる。リンオキソ酸によるエステル化は、特許文献2(特開2019−199671号公報)に掲げる手法で行うことができる。セルロース繊維のヒドロキシ基がリンオキソ酸でエステル化されたセルロースナノファイバー(A)の一例を次記に示す。セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されてリンオキソ酸でエステル化されており、構造式(1)に示す官能基の導入量が、セルロース繊維1gあたり2mmоlを超えるセルロースナノファイバーを例示できる。
〔構造式(1)〕
Figure 2021195350
構造式(1)において、a,b,m,nは自然数である。
A1,A2,・・・,AnおよびA’のうちの少なくとも1つはOであり、残りはR、OR、NHR、及び、なしのいずれかである。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。αは有機物又は無機物からなる陽イオンである。このセルロースナノファイバーは光透過度及び粘度が極めて高いものである。
リンオキソ酸によるエステル化の反応は、セルロース繊維に、リンオキソ酸類及びリンオキソ酸金属塩類の少なくともいずれか一方を含む添加物からなるpH3.0未満の溶液を添加し、加熱し、解繊することで進行する。
添加物としては、例えば、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸二水素リチウム、リン酸三リチウム、リン酸水素二リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素アンモニウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等を使用することができる。これらの添加物は、それぞれを単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
セルロース繊維の解繊は、以下に示す解繊装置・方法により行うことができる。当該解繊は、例えば、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、コニカルリファイナー、ディスクリファイナー等のリファイナー、各種バクテリア等の中から1種又は2種以上の手段を選択使用して行うことができる。ただし、セルロース繊維の解繊は、水流、特に高圧水流で微細化する装置・方法を使用して行うのが好ましい。この装置・方法によると、得られるセルロースナノファイバーの寸法均一性、分散均一性が非常に高いものとなる。これに対し、例えば、回転する砥石間で磨砕するグラインダーを使用すると、セルロース繊維を均一に微細化するのが難しく、場合によっては、一部に解れない繊維塊が残ってしまうおそれがある。
セルロース繊維の解繊に使用するグラインダーとしては、例えば、増幸産業株式会社のマスコロイダー等が存在する。また、高圧水流で微細化する装置としては、例えば、株式会社スギノマシンのスターバースト(登録商標)や、吉田機械興業株式会社のナノヴェイタ\Nanovater(登録商標)等が存在する。また、セルロース繊維の解繊に使用する高速回転式ホモジナイザーとしては、エムテクニック社製のクレアミックス−11S等が存在する。
本発明者等は、回転する砥石間で磨砕する方法と、高圧水流で微細化する方法とで、それぞれセルロース繊維を解繊し、得られた各繊維を顕微鏡観察した場合に、高圧水流で微細化する方法で得られた繊維の方が、繊維幅が均一であることを知見している。
高圧水流による解繊は、セルロース繊維の分散液を増圧機で、例えば30MPa以上、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150MPa以上、特に好ましくは220MPa以上に加圧し(高圧条件)、細孔直径50μm以上のノズルから噴出させ、圧力差が、例えば30MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは90MPa以上となるように減圧する(減圧条件)方式で行うと好適である。この圧力差で生じるへき開現象によって、パルプ繊維が解繊される。高圧条件の圧力が低い場合や、高圧条件から減圧条件への圧力差が小さい場合には、解繊効率が下がり、所望の繊維幅とするために繰り返し解繊(ノズルから噴出)する必要が生じる。
高圧水流によって解繊する装置としては、高圧ホモジナイザーを使用するのが好ましい。高圧ホモジナイザーとは、例えば10MPa以上、好ましくは100MPa以上の圧力でセルロース繊維のスラリーを噴出する能力を有するホモジナイザーをいう。セルロース繊維を高圧ホモジナイザーで処理すると、セルロース繊維同士の衝突、圧力差、マイクロキャビテーションなどが作用し、セルロース繊維の解繊が効果的に生じる。したがって、解繊の処理回数を減らすことができ、セルロースナノファイバーの製造効率を高めることができる。
高圧ホモジナイザーとしては、セルロース繊維のスラリーを一直線上で対向衝突させるものを使用するのが好ましい。具体的には、例えば、対向衝突型高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー/MICROFLUIDIZER(登録商標)、湿式ジェットミル)である。この装置においては、加圧されたセルロース繊維のスラリーが合流部で対向衝突するように2本の上流側流路が形成されている。また、セルロース繊維のスラリーは合流部で衝突し、衝突したセルロース繊維のスラリーは下流側流路から流出する。上流側流路に対して下流側流路は垂直に設けられており、上流側流路と下流側流路とでT字型の流路が形成されている。このような対向衝突型の高圧ホモジナイザーを用いると高圧ホモジナイザーから与えられるエネルギーが衝突エネルギーに最大限に変換されるため、より効率的にセルロース繊維を解繊することができる。
解繊して得られたセルロースナノファイバーは、無機微粒子と混合するのに先立って水系媒体中に分散して分散液としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
本形態の前記セルロースナノファイバーは、セルロース繊維のヒドロキシ基が置換されてリンオキソ酸エステル基が導入された変性セルロースナノファイバー(以下、「変性CNF」ともいう。)と、セルロース繊維のヒドロキシ基が置換されていない未変性セルロースナノファイバー(以下、「未変性CNF」ともいう。)とのうちの、少なくともいずれか1つ以上からなるものである、とすることができる。
また、本形態では、凝集粒子に未変性CNFが含有されたものであるのが好ましい。具体的には、凝集粒子が、未変性CNFのみからなるものや、未変性CNFと変性CNFとからなるものが好ましい。特に、凝集粒子が未変性CNFと変性CNFとからなるものである場合は、変性CNF量に対する未変性CNF量の比(未変性CNF量:変性CNF量)が99:1〜1:99、好ましくは80:20〜50:50であるのが好ましい。凝集粒子としたときに、未変性CNFは変性CNFよりも相互に強固に凝集して粒子化し、かつ凝集がほどけにくいことを発明者等は知見している。
原料パルプの解繊は、得られるセルロースナノファイバーの物性等が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
<平均繊維径>
セルロースナノファイバーの平均繊維径の上限は100nm以下、好ましくは90nm以下、より好ましくは80nm以下、特に好ましくは70nm以下である。セルロースナノファイバーの平均繊維径が100nmを超えると複合粒子にしたときの、複合粒子の平均粒子径が大きく、化粧料として使用する際にざらつき感がでてしまう。一方でセルロースナノファイバーの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、下限は特に制限されないが、例えば1nm以上、好ましくは2nm以上、より好ましくは3nm以上であると、相対的にアスペクト比が大きく、無機粒子を容易に抱え込む構造になり易い。
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
特に、前述のリンオキソ酸によるエステル化を施して解繊したセルロースナノファイバーの平均繊維径が上記範囲だと、製造されるセルロースナノファイバーは透明性が高いものとなる。化粧料として使用する場合は、白浮きを抑制する観点からは、リンオキソ酸によるエステル化を施して解繊したセルロースナノファイバーを用いるのが好ましい。
セルロースナノファイバーの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍〜30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
<平均繊維長>
セルロースナノファイバーの平均繊維長(単繊維の長さの平均)は、例えば、好ましくは0.01〜500μm、より好ましくは0.5〜400μmとするとよい。平均繊維長が0.01μm未満であると、濾水性や乾燥性が低下し、またセルロースナノファイバー相互の三次元ネットワーク構造が形成されにくくなる。平均繊維長が500μmを上回ると、セルロース繊維相互の絡み合いが多くなり、凝集粒子が相対的に大きくなり過ぎ、化粧料組成物に不向きである。
平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
セルロースナノファイバーの平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
<軸比>
セルロースナノファイバーの軸比(平均繊維長/平均繊維幅)は、好ましくは10〜500000、より好ましくは15〜400000、特に好ましくは20〜300000である。セルロースナノファイバーの軸比が10未満であるとセルロース分はほぼ粒子形状であり、凝集粒子を形成しがたくなる。他方、軸比が500000を超えると繊維相互の絡まり度合いが大きく、凝集粒子が所望の平均粒子径になりにくくなる。
<結晶化度>
セルロースナノファイバーの結晶化度は50〜100、より好ましくは60〜90、特に好ましくは65〜85である。同結晶化度が50未満であると、凝集粒子を形成し難い。同結晶化度が100超であると、セルロースナノファイバーは解繊が不十分であり、凝集化が起こり難く、凝集粒子を形成し難いものとなる。
結晶化度は、JIS−K0131(1996)の「X線回折分析通則」に準拠して、X線回折法により測定した値である。なお、セルロースナノファイバーは、非晶質部分と結晶質部分とを有しており、結晶化度はセルロースナノファイバー全体における結晶質部分の割合を意味する。
<光透過率>
セルロースナノファイバーの光透過率(固形分基準0.2質量%水分散液)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、特に好ましくは20%以上である。光透過率が5%未満であると、化粧料の組成物とした場合に、化粧料が黄色っぽくなり、肌に塗布したときに黄色が目立ち、好まれない。
光透過率は、0.2%(w/v)のセルロースナノファイバー水分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)をSpectrophotometer U−2910(日立製作所)を用いて測定した値である。なお、分散媒は精製水である。
<疑似粒度分布>
セルロースナノファイバーの擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、セルロースナノファイバーは、繊維長及び繊維径の均一性が高く、無機微粒子が分散し易くなる。セルロースナノファイバーの繊維長及び繊維径の均一性が高いと、均一性の高いセルロースナノファイバーが相互に凝集して、均一性の高い凝集粒子を形成し易くなる。凝集粒子は無機微粒子が付着して複合粒子の形態として、化粧料中において十分に分散された状態になる。複合粒子の分散により無機微粒子も分散することになるので、複合粒子を含有する化粧料は、太陽光の透過抑制効果に優れたものとなる。
セルロースナノファイバーのピーク値はISO−13320(2009)に準拠して測定する。より詳細には、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を使用してセルロースナノファイバーの水分散液における体積基準粒度分布を調べる。そして、この分布からセルロースナノファイバーの最頻径を測定する。この最頻径をピーク値とする。セルロースナノファイバーは、水分散状態でレーザー回折法により測定される擬似粒度分布曲線において単一のピークを有することが好ましい。このように、一つのピークを有するセルロースナノファイバーは、十分な微細化が進行しており、セルロースナノファイバーとしての良好な物性を発揮することができ、好ましい。なお、上記単一のピークとなるセルロースナノファイバーの粒径の擬似粒度分布のピーク値は、例えば100μm以下であるのが好ましく、50μm以下であるのがより好ましく、30μm以下であるのが特に好ましい。ピーク値が100μmを超えると、繊維が大きくなり、チキソトロピー性が増大し、複合粒子の形状が不均一になりやすい
セルロースナノファイバーの粒径におけるピーク値、及び擬似粒度分布の中位径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
<粘度>
セルロースナノファイバーは、分散液中では、分散した状態で水素結合等により相互に結合して粘度を有する。この分散液にせん断力が加わると、水素結合が弱まり粘度が低下するものと推測されている。すなわち、セルロースナノファイバーはチキソトロピー性を備える。また、分散液中に含まれるセルロースナノファイバー濃度やセルロースナノファイバーの原料により粘度が変化する。本形態に用いられるセルロースナノファイバーは、濃度を1質量%(w/w)とした場合における分散液のB型粘度が、10〜300000cP、より好ましくは100〜100000cPとするとよい。B型粘度が10cP未満となるセルロースナノファイバーは、繊維のアスペクト比も小さくなっていると想定でき、結果的に凝集力の低下を招き、複合粒子の形成が困難になる可能性がある。
セルロースナノファイバーのB型粘度は、JIS−Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。測定は、25℃で行った。
<保水度>
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば、好ましくは500%以下、より好ましくは300〜480%、である。同保水度が500%を上回ると、セルロースナノファイバー自体の保水力が高くなり、セルロースナノファイバーの脱水性が悪化し、水分率の高い複合粒子になり、凝集力が低下するおそれがある。セルロースナノファイバーの保水度の下限は特に限定されないが、300%以上だと、セルロースナノファイバーの分散性が向上するので好ましい。
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
セルロースナノファイバーの保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
<パルプ粘度>
解繊したセルロースナノファイバーのパルプ粘度は、1〜10cps、より好ましくは2〜9cps、特に好ましくは3〜8cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示しており、繊維そのものの強さにも影響する。
(無機微粒子)
次に、無機微粒子について説明する。無機微粒子は、紫外線を含む太陽光の透過を抑制する目的で、複合粒子に備わる。複合粒子に占める無機微粒子の含有率は、上限が、50質量%以下、好ましくは40質量%以下にするとよく、下限が0質量%を超え、好ましくは10質量%以上含まれていればよい、同含率量が50質量%を超えると、凝集粒子に対して無機微粒子の割合が大きく、凝集粒子に無機微粒子が付着しきれないこととなる。同含有率が10質量%以上であれば、太陽光の透過抑制効果が十分に発揮される。
無機微粒子の一次粒子径は、上限が1μm以下、好ましくは0.9μm以下、さらに好ましくは0.8μm以下であればよい。無機微粒子の一次粒子径が1μmを上回ると、無機微粒子がセルロースナノファイバーの凝集粒子に付着し難い、又は付着しても脱落し易い。また、複合粒子としての表面積が十分に大きいものとならない。無機微粒子は、下限については特に限定されないが、1nm以上、好ましくは3nm以上、さらに好ましくは5nm以上であればよい。無機微粒子の一次粒子径が1nm以上だと、無機微粒子を媒体に入れて無機微粒子のスラリーにしたときに、無機微粒子の分散性が良好になる。無機微粒子20は、一次粒子の径がナノサイズであるが、分子間力等の相互作用により、相互に密着して通常、塊状物40を形成する(図2参照)。なお、一次粒子は、次のように定義される。二次粒子とは、一次粒子が凝集して見かけ上、1個の粒子として振る舞うものをいい、一次粒子とは、その物質の基本構成粒子をいう。
無機微粒子の一次粒子径の測定方法は、電子顕微鏡観察による粒子径の平均値を算出したものである。
無機微粒子は、そのままでももちろん用いることができるが、親水処理すると、セルロースナノファイバーや水系媒体と親和するので好ましい。親水処理に用いる表面処理剤は、無機微粒子の表面活性を抑制させ、無機微粒子の分散性を向上させ、化粧料に含ませたときの透明性やきしみを向上させる効果を有する。同表面処理剤は、無機微粒子100質量部に対して、例えば、下限が0質量部を超え、好ましくは10質量部以上含まれていればよく、上限が50質量部以下、好ましくは40質量部以下であればよい。
無機微粒子の表面処理剤としては、水系媒体に分散可能な処理剤であれば特に限定されないが、無水ケイ酸、含水ケイ酸を含むものが好ましい。
無機微粒子の形状としては、特に限定されないが、球状、板状、紡錘状、針状等を例示できる。特に酸化チタンは、ルチル型だと化粧料組成物における太陽光の透過抑制が向上し、好ましい。
無機微粒子は、特に限定されず公知の無機微粒子を用いることができるが、太陽光の透過を抑制するとの観点からは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウムからなる群から選択される1種又は2種以上を用いることができる。
複合粒子に用いる無機微粒子の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、棒状、針状、紡錘状、板状、多角形状等とすることができる。
(複合粒子)
本形態の複合粒子は、平均繊維径が100nm以下であるセルロースナノファイバーが相互に凝集した凝集粒子と、当該凝集粒子に付着する複数の無機微粒子を有し、平均粒子径が10μm以下、かつ比表面積が2m2/g以上である、ことを特徴とする。
複合粒子については、無機微粒子が、凝集粒子の表面に付着されていてもよいし、凝集粒子に内包されていてもよい。無機微粒子が凝集粒子に内包されていると、複合粒子は無機微粒子を表面だけでなく内部にも備えることができ、無機微粒子を多く含むことになるので太陽光の透過抑制の効果に優れたものとなる。ここで、内包とは、無機微粒子の表面の一部がセルロースナノファイバーで覆われている状態や、外方から複合粒子を観察したときに、無機微粒子がセルロースナノファイバーによって覆われて観察できない状態、ということができる。
<平均粒子径>
複合粒子の平均粒子径は、上限が20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下とするとよい。複合粒子の平均粒子径の下限は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上、好ましくは1μm以上とすると無機微粒子が付着する表面積が大きくなり好ましい。同平均粒子径が20μmを上回ると、複合粒子を化粧料組成物に用いたときに、ざらつき感を生じやすくなる。
複合粒子の平均粒子径は、ISO−13320(2009)に準拠して測定した。具体的には2質量%分散液となるように分散させた複合粒子を、湿式状態で粒度分布計により測定した。
<比表面積>
複合粒子の比表面積は、2m2/g以上、好ましくは3m2/g以上、より好ましくは4m2/g以上にするとよい。同比表面積が2m2/gを下回ると、複合粒子に付着する無機微粒子の数が少なく、太陽光の透過抑制が十分になされないおそれがある。
複合粒子の比表面積は、BET法により測定した。具体的には、測定器にカンタクローム・インスツルメンツ社製NOVA4200eを用い、窒素ガスによる吸着法により測定した。
複合粒子の比表面積は、JISZ8830:2013に準拠して測定した。
複合粒子は、後述する製造方法により、乾燥させて製造することができるが、含水率を20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下にするとよい。同含水率が20質量%を上回ると、セルロースナノファイバー相互の凝集が不十分であり、複合粒子が変形したり、相互に吸着して塊状化したりしてしまうおそれがある。
(増粘剤)
化粧料の粘度を高め、複合粒子の分散性を向上させる、及び改質目的で、増粘剤を加えることができる。増粘剤として、多価アルコール、多糖類、水溶性高分子からなる群から1種又は2種以上選択したものを用いることができる。増粘剤の配合比(増粘剤:セルロースナノファイバー)は、固形分基準で2:1、好ましくは3:1にするとよい。セルロースナノファイバーに対する増粘剤の配合比が大き過ぎると、乾燥に長時間を要し、経済的ではない。同配合比が少なすぎると、改質効果が期待できない。
多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール等を用いることができるが、これらに限るものではない。特にグリセリンが増粘性、複合粒子の分散性の観点で好ましい。
多糖類としては、クインスシード、ビーガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸塩等を用いることができるが、これらに限るものではない。特にヒアルロン酸塩等が増粘性、複合粒子の分散性の観点で好ましい。
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコールを例示できるが、これらに限るものではない。特にポリビニルピロリドンが増粘性、複合粒子の分散性の観点で好ましい。
(製造方法)
次に複合粒子の製造方法を説明する。以下に掲げる製造方法は一例であって、当該製造方法に限定されるものではない。複合粒子の製造方法は、スラリー化工程、混合攪拌工程、乾燥工程を有する。以下に記載する媒体とは、水や有機溶剤等である。
<第1形態>
スラリー化工程は、無機微粒子を媒体に分散させ、無機微粒子スラリーを得る工程である。
混合攪拌工程は、次に示す工程である。まず、セルロースナノファイバーを媒体に入れて分散させセルロースナノファイバー分散液とする。このセルロースナノファイバー分散液と無機微粒子スラリーを混ぜ合わせ攪拌して混合液を得る工程である。なお、混合攪拌工程で用いる媒体は、スラリー化工程で用いる媒体と同じ物質でもよいし異なる物質でもよい。
混合攪拌工程では、このセルロースナノファイバー分散液と無機微粒子スラリーの他に、増粘剤を加えて混ぜ合わせ攪拌して混合液を得てもよい。
乾燥工程は、混合攪拌工程で得られた混合液、乾燥装置で乾燥して複合粒子を得る工程である。乾燥装置は特に限定されず、適宜公知のものを用いることができる。例えば、熱風乾燥、スプレードライ、風乾、及び真空乾燥を挙げることができる。乾燥装置の例としては、気流乾燥装置、トンネル乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、バンド乾燥装置、縦型乾燥装置、通気乾燥装置、回転乾燥装置、噴霧乾燥装置、ドラム乾燥装置、振動輸送乾燥装置等、通気乾燥装置、真空箱型乾燥装置、スプレードライ乾燥装置、及び撹拌乾燥装置等を挙げることができ、これらのうち1つ又は2つ以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、スプレードライ乾燥装置や噴霧乾燥装置を用いると、被乾燥物に対して熱エネルギーを均一に供給でき、また、省エネルギーで乾燥でき好ましい。
また、得られた複合粒子は、そのまま製品とすることもできるし、粉砕、分級して所望のサイズにしたものを製品とすることもできる。所望のサイズに粉砕、分級すると、より微細化されるため好ましい。粉砕に用いる装置としては、例えばハンマーミル等の衝撃式ミル、ジェットミル、ボールミル等の媒体ミル等や、ホモジナイザー、パールミル等の装置を挙げることができる。
<第2形態>
製造方法の第2形態は、スラリー化工程、混合攪拌工程、乾燥工程の3工程のうち、スラリー化工程と、混合攪拌工程を一つの工程、すなわちスラリー混合攪拌工程で行うものである。
スラリー化工程は、無機微粒子を媒体に分散させ、無機微粒子スラリーを得る工程である。
スラリー混合攪拌工程は、次に示す工程である。まず、セルロースナノファイバーを媒体に入れて分散させセルロースナノファイバー分散液とする。このセルロースナノファイバー分散液に無機微粒子を注ぎ入れて、混ぜ合わせ攪拌して混合液を得る工程である。
スラリー混合攪拌工程は、一つの工程で混合液を得ることができる。しかしながら、無機微粒子が凝集性の強いものである場合、混合液中で無機微粒子が部分的に凝集化してしまうことがある。無機微粒子の優れた分散性を有する混合液を得る場合は、第1形態の製造方法がより好ましい。
スラリー混合攪拌工程で得られた混合液は、次の乾燥工程で乾燥させて複合粒子とする。第2形態の乾燥工程は、第1形態の乾燥工程と同じ手順で行う。
実施例を以下に示す。以下において未変性セルロースナノファイバーは、大王製紙株式会社の製品「ELLEX(登録商標)−S」を、変性セルロースナノファイバーは、大王製紙株式会社の製品「ELLEX(登録商標)−☆(スター)」をそれぞれ示す。
<試験例1>
(1)無機微粒子(酸化亜鉛 FINEX−50 堺化学)100gを水900gに分散させて、固形分濃度が10質量%である無機微粒子スラリーを得た。ここで、固形分濃度とは、微粒子スラリー中に含まれる、無機微粒子の濃度である。
(2)未変性セルロースナノファイバーを水に分散させて2質量%未変性セルロースナノファイバー分散液を得た。この2質量%未変性セルロースナノファイバー分散液を12000gと、増粘剤(30質量%グリセリン溶液)を333gと、上記(1)の微粒子スラリーを800gとを混ぜ合わせて、30分間攪拌し、混合液を得た。
(3)上記、得られた混合液について乾燥工程にて乾燥処理をした。乾燥工程は、次に示すとおりである。混合液をスプレードライ装置(プリス社製「TR160」)で乾燥させて複合粒子(試験例1)を得た。噴霧方式は、二流体ノズル方式で、90型ノズルを2本使用した。噴霧乾燥の条件は、原料の供給量が20kg/h、乾燥空気の入口温度が200℃、出口温度が100℃、噴霧空気圧が0.6MPaとした。
<試験例2>
(1)無機微粒子(酸化亜鉛 FINEX−50 堺化学)100gを水800gに分散させて無機微粒子分散液を得た。これとは別に変性セルロースナノファイバーを水に分散させて1質量%変性セルロースナノファイバー分散液を得た。得られた無機微粒子分散液の全量(900g)に1質量%未変性セルロースナノファイバー分散液を100g混ぜ合わせ、固形分濃度が10.1質量%である微粒子スラリーを得た。ここで、固形分濃度とは、微粒子スラリー中に含まれる、無機微粒子と変性セルロースナノファイバー、未変性セルロースナノファイバーの合計の濃度である。
(2)未変性セルロースナノファイバーを水に分散させて2質量%未変性セルロースナノファイバー分散液を得た。この2質量%未変性セルロースナノファイバー分散液を11500gと、増粘剤(30質量%グリセリン溶液)を333gと、上記(1)の微粒子スラリーを800gとを混ぜ合わせて、30分間攪拌し、混合液を得た。
(3)乾燥工程は、上記、<試験例1>(3)の乾燥工程と同様の工程である。乾燥工程により複合粒子(試験例2)が得られた。
<試験例3>
(1)無機微粒子(酸化亜鉛 FINEX−50 堺化学)100gを水800gに分散させて無機微粒子分散液を得た。これとは別に未変性セルロースナノファイバーを水に分散させて2質量%未変性セルロースナノファイバー分散液を得た。得られた無機微粒子分散液の全量(900g)に2質量%未変性セルロースナノファイバー分散液を100g混ぜ合わせ、固形分濃度が10.2質量%である微粒子スラリーを得た。ここで、固形分濃度とは、微粒子スラリー中に含まれる、無機微粒子と未変性セルロースナノファイバーの合計の濃度である。
(2)未変性セルロースナノファイバーを水に分散させて2質量%未変性セルロースナノファイバー分散液を得た。この2質量%セルロースナノファイバー分散液を11500gと、増粘剤(30質量%グリセリン溶液)を333gと、上記(1)の微粒子スラリーを800gとを混ぜ合わせて、30分間攪拌し、混合液を得た。
(3)乾燥工程は、上記、<試験例1>(3)の乾燥工程と同様の工程である。乾燥工程により複合粒子(試験例3)が得られた。
<試験例4>
(1)無機微粒子(酸化チタン STR−100N 堺化学)100gを水900gに分散させて、固形分濃度が10.2質量%である微粒子スラリーを得た。ここで、固形分濃度とは、微粒子スラリー中に含まれる、無機微粒子の濃度である。
(2)未変性セルロースナノファイバーを水に分散させて2質量%未変性セルロースナノファイバー分散液を得た。この2質量%未変性セルロースナノファイバー分散液を12000gと、増粘剤(30質量%グリセリン溶液)を333gと、上記(1)の微粒子スラリーを800gとを混ぜ合わせて、30分間攪拌し、混合液を得た。
(3)乾燥工程は、上記、<試験例1>(3)の乾燥工程と同様の工程である。乾燥工程により複合粒子(試験例4)が得られた。
<試験例5>
(1)未変性セルロースナノファイバーを水に分散させて2質量%未変性セルロースナノファイバー分散液を得た。この2質量%未変性セルロースナノファイバー分散液を12000gと、増粘剤(30質量%グリセリン溶液)333gを30分間攪拌し、混合液を得た。
(2)乾燥工程は、上記、<試験例1>(3)の乾燥工程と同様の工程である。乾燥工程により複合粒子(試験例5)が得られた。
<参考例6>
参考例6は酸化亜鉛の微粒子である。表1に示す値は、酸化亜鉛の微粒子の塊状物についての測定値である。
<参考例7>
参考例7は酸化チタンの微粒子である。表1に示す値は、酸化チタンの微粒子の塊状物についての測定値である。
試験例1〜試験例5、参考例6、参考例7の比表面積、平均粒子径、メディアン径、累積10%径、累積90%径、粒子アスペクト比を表1に示す。なお、粒子アスペクト比とは、粒子の短軸径を粒子の長軸径で除した値である。
Figure 2021195350
(界面沈降度試験)
試料を以下のとおりに調整した。
(1)試験例1について、複合粒子2gを精製水38gに混ぜて、5質量%分散液(試験例1a)を調整した。
(2)試験例2について、複合粒子2gを精製水38gに混ぜて、5質量%分散液(試験例2a)を調整した。
(3)試験例3について、複合粒子2gを精製水38gに混ぜて、5質量%分散液(試験例3a)を調整した。
(4)試験例4について、複合粒子2gを精製水38gに混ぜて、5質量%分散液(試験例4a)を調整した。
(5)試験例5について、複合粒子2gを精製水38gに混ぜて、5質量%分散液(試験例5a)を調整した。
(6)参考例6について、酸化亜鉛2gを精製水38gに混ぜて、5質量%分散液(参考例6a)を調整した。
(7)参考例7について、酸化亜鉛2gを精製水38gに混ぜて、5質量%分散液(参考例7a)を調整した。
試験例1a〜試験例5a、及び参考例6a、参考例7aそれぞれについて、40mLを、スクリュー管瓶(アズワン社、容量50mL、口内径×胴径×全長:φ20.3mm×φ35mm×78mm)に入れた。これらをマグネチックスターラーで5分間、1200rpmで均一になるように攪拌した後、室温で静置して5分後、2.5時間後における、水面から複合粒子の界面までの距離(「沈降距離」、「上澄み液の深さ」ともいう。)を測定した。また、分散液の着色を評価した。結果を表2、図3、図4に示す。図中、(1a)は試験例1aを、(2a)は試験例2aを、(3a)は試験例3aを、(4a)は試験例4aを、(5a)は試験例5aを、(6a)は参考例6aを、(7a)は参考例7aをそれぞれ示す。
Figure 2021195350
(考察)
沈降距離について、5分静置後で各サンプル(試験例1a〜5a、参考例6a、7a)を比較すると、試験例1a〜5aは、参考例6a、7aよりも沈降距離が短く、分散された状態にある。一例に、試験例1では、静置後、界面70が沈降して、サンプルが上澄み液50と高濃度化した複合粒子分散液60に分離し、沈降距離が5mmとなった。他のサンプルについても表2に示すとおりの沈降距離となった。以上より、試験例1a〜5aは参考例6a、7aよりも分散した状態になっており、初期分散性に優れる。初期分散性に優れない化粧料は、肌(又は体毛)に塗布する際に、入念に練る等の作業をすることになり、手間がかかる。
2時間30分静置後で各サンプルを比較すると、試験例1a〜5a、参考例6aは、参考例7aよりも沈降距離が短く、分散された状態にある。一例に、試験例1では、静置後、界面70が沈降して、サンプルが上澄み液50と高濃度化した複合粒子分散液60に分離し、沈降距離が18mmとなった。他のサンプルについても表2に示すとおりの沈降距離となった。なお、2時間30分静置後の試験例4aについて、スクリュー管瓶の内面に複合粒子が付着したことにより、図4では界面を確認し難いが、表2のとおりに沈降していることを発明者等は確認している。2時間30分静置後の試験例4aについて、曲線を図中に付して界面70を明確化した。界面70とは、静置させたことにより濃縮化したサンプルと上澄み液との境界面をいう。
分散液の着色について、試験例5aは濃い黄色を呈し、その他のサンプルは白色、又はやや黄色を呈した。化粧料として使用する際、複合粒子が白色、又はやや黄色であれば肌への塗布前後で、肌の色に大きな差はないと評価できる。しかしながら、複合粒子が濃い黄色であれば肌(又は体毛)への塗布前後で、肌の色に大きな差が生じると評価できる。肌(又は体毛)において濃い黄色の複合粒子が塗布された部分は外観上目立ち、そのような複合粒子が含まれる化粧料は敬遠されるおそれがある。
また、試験例1a〜5aはセルロースナノファイバーが含有されているので、セルロースナノファイバーの性質であるチキソトロピー性が備わり、肌(又は体毛)に塗布する際に伸ばしやすいものであった。一方で参考例6a、7aはセルロースナノファイバーが含有されていないので伸ばしやすさに乏しいものであった。
平均粒子径について、試験例1a〜4aは、10μm以下の複合粒子を有しており、これら試験例が塗布された肌(体毛)は、ざらつきが感じられず、滑らかであった。
(その他)
・上記明細書中に示すJISやTAPPIその他の試験、測定方法は特段断りがない場合は、室温、特に25℃、大気圧中、特に1atmで行っている。
本発明の複合粒子は、公知の状態で提供できるが、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、泡状、ミルク状、ジェル状、ローション状、ワックス状、グリース状、化粧水、美容液等にして提供できる。また、複合粒子を化粧料に添加して、スキンケア化粧料、日焼け止め用サンケア化粧料、BBクリーム、メイクアップ化粧料その他、として提供できる。
10 複合粒子
20 無機微粒子
30 セルロースナノファイバー
40 無機微粒子の塊状物
50 上澄み液
60 高濃度化した複合粒子分散液
70 界面

Claims (8)

  1. 平均繊維径が100nm以下であるセルロースナノファイバーが相互に凝集した凝集粒子と、当該凝集粒子に付着する複数の無機微粒子を有し、
    平均粒子径が10μm以下、かつ比表面積が2m2/g以上である、
    ことを特徴とする複合粒子。
  2. 前記無機微粒子は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウムからなる群から選択される1種又は2種以上である、
    請求項1に記載の複合粒子。
  3. 前記セルロースナノファイバーは、セルロース繊維のヒドロキシ基が置換されてリンオキソ酸エステル基が導入された変性セルロースナノファイバーと、セルロース繊維のヒドロキシ基が置換されていない未変性セルロースナノファイバーとのうちの、少なくともいずれか1つ以上からなるものである、
    請求項1又は請求項2に記載の複合粒子。
  4. 前記無機微粒子の一次粒子径が1μm以下である、
    請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の複合粒子
  5. 前記無機微粒子が50質量%以下含まれる、
    請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の複合粒子。
  6. 前記無機微粒子が親水処理されたものである、
    請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の複合粒子。
  7. 前記無機微粒子の一部が前記凝集粒子に内包されている、
    請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の複合粒子。
  8. 前記請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の複合粒子と、増粘剤を有し、
    前記増粘剤は、多価アルコール、多糖類、水溶性高分子からなる群から選択される1種又は2種以上である、
    ことを特徴とする化粧料組成物。
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