JP2021109911A - インク組成物 - Google Patents

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俊輔 山▲崎▼
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晴男 金野
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Abstract

【課題】セルロースナノファイバーを含有しても、セルロースナノファイバー自体が凝集することを抑制し得る、インク組成物を提供すること。【解決手段】着色剤及び/又は隠蔽剤と、酸型アニオン変性セルロースナノファイバーと、を含むインク組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、インク組成物に関する。
従来より、ボールペン、マーキングペン等の筆記具用インク組成物には、セルロース由来の天然系増粘剤が用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1には、低粘度でありながら粒子の保存安定性、経時筆記性及び描線品位に優れることを特徴とした、酸化セルロースを0.05〜1.5質量%含有し、Cassonの式で導かれる極限粘度値が10mPa・s以下である、筆記具用水性インク組成物が開示されている。
特許文献2には、気温や、着色剤、隠蔽剤の表面状態や粒子径等の特性によらず、長期に渡り分散安定性に優れることを特徴とした、所定のセルロース繊維、着色剤及び隠蔽剤の少なくとも一つ、並びに水を含有する、水性インク組成物が開示されている。
特許文献3には、インク粘度を上げることなく、油性インクに配合される顔料、樹脂粒子等の不溶性成分の沈降・分離を抑制することを特徴とした、少なくとも、アルコール性水酸基を有する有機溶剤、及び所定の酸化セルロースを0.02〜2質量%含む、筆記具用水性インク組成物が開示されている。
特開2015−67722号公報 特開2016−69617号公報 特開2018−135405号公報
特許文献1〜3に開示されたセルロース由来の天然系増粘剤は、その数平均粒子径の数値範囲や実施例中の製造方法に鑑み、セルロースナノファイバーである。
本発明者等が、インク組成物にセルロースナノファイバーを用いてみると、セルロースナノファイバー自体が凝集する場合があった。凝集物が発生すると、ペン先で詰まりが起きるという不具合がある。そのため、セルロースナノファイバー自体の凝集を抑制することが望まれる。
本発明の課題は、セルロースナノファイバーを含有しても、セルロースナノファイバー自体が凝集することを抑制し得る、インク組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、セルロースナノファイバーを酸型に変換した酸型アニオン変性セルロースナノファイバーを用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕〜〔7〕を提供する。
〔1〕着色剤及び/又は隠蔽剤と、酸型アニオン変性セルロースナノファイバーと、を含むインク組成物。
〔2〕前記酸型アニオン変性セルロースナノファイバーが、酸型酸化セルロースナノファイバー、酸型カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、及び酸型エステル化セルロースナノファイバーからなる群から選択される少なくとも1種である、上記〔1〕に記載のインク組成物。
〔3〕前記酸型アニオン変性セルロースナノファイバーが、酸型酸化セルロースナノファイバーを含み、前記酸型酸化セルロースナノファイバーのカルボキシ基量が、0.60〜3.0mmol/gである、上記〔2〕に記載のインク組成物。
〔4〕前記酸型アニオン変性セルロースナノファイバーが、酸型カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含み、前記酸型カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのカルボキシメチル置換度が、0.010〜0.50である、上記〔2〕に記載のインク組成物。
〔5〕前記酸型アニオン変性セルロースナノファイバーの下記式(1)で求められるカルボキシ基の割合が40%以上である、上記〔3〕又は〔4〕に記載のインク組成物。
(1):カルボキシ基の割合(%)=(カルボキシ基量/カルボキシ基量とカルボキシレート基量の合計量)×100
〔6〕水性インク用である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のインク組成物。
〔7〕下記工程1〜3を有するインク組成物の製造方法。
工程1:アニオン変性セルロースナノファイバーを準備する工程。
工程2:アニオン変性セルロースナノファイバーを陽イオン交換樹脂により脱塩し、酸型アニオン変性セルロースナノファイバーを調製する工程。
工程3:工程2で調製した酸型アニオン変性セルロースナノファイバーと、着色剤及び/又は隠蔽剤を水系媒体中で混合して分散し、インク組成物を得る工程。
本発明によれば、セルロースナノファイバーを含有しても、セルロースナノファイバー自体が凝集することを抑制し得る、インク組成物を提供することができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書中、「AA〜BB」との表記は、AA以上BB以下を示すものとする。また、「酸型」とは、アニオン変性セルロースナノファイバーを脱塩処理して、プロトンに置換した状態をいう。
[1.インク組成物]
本発明のインク組成物は、着色剤及び/又は隠蔽剤と、酸型アニオン変性セルロースナノファイバーと、を含む。
本発明のインク組成物は、酸型アニオン変性セルロースナノファイバーを含むので、セルロースナノファイバー自体が凝集することを抑制し得る。アニオン変性セルロースナノファイバーは、通常、塩基性条件下でアニオン変性反応を行うため、生成物は塩型アニオン変性セルロースナノファイバーとして得られる。塩型セルロースナノファイバーは、浸透圧効果により、凝集が抑制されると考えられる。一方、塩型アニオン変性セルロースナノファイバーを脱塩処理した酸型セルロースナノファイバーは、カルボキシ基(COOH)に変換されており、浸透圧が弱まるため、凝集しやすいと考えられる。しかしながら、インク組成物に含有させた場合、酸型セルロースナノファイバーは塩型セルロースナノファイバーよりも凝集が抑制された。この結果は、インク組成物に含まれる他の成分との何らかの相互作用等に由来すると推測されるが、当業者であっても予期し得ない知見である。本発明は、この予期し得ない知見に基づき完成されたものである。
[1−1.着色剤及び/又は隠蔽剤]
着色剤としては、例えば、無機顔料、有機顔料が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、アルミナホワイト、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、カドミウムイエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、バライト粉、鉛白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキニトロ顔料、ニトロソ顔料が挙げられる。
また、着色剤として、酸性染料、反応染料、塩基性染料、分散性染料、直接染料、蛍光染料、C.I.ベーシックイエロー35、C.I.ベーシックイエロー40、C.I.アシッドオレンジ28、C.I.アシッドブルー92、エオシン、フロキシン、ウォーターイエロー#6−C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB、ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットBBローダミン、メチルバイオレット等を用いることもできる。
さらに、着色剤として、樹脂や界面活性剤等で表面改質した加工顔料、分散トナー、アクリル系樹脂やベンゾグアナミン樹脂等を顔料や染料で着色して微粒子化した着色剤、熱変色性マイクロカプセル顔料、光変色性マイクロカプセル顔料等も用いることができる。
隠蔽剤として、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、マイカ、シリカ、シリカ/酸化チタン複合粒子、硫酸バリウム/硫化亜鉛複合粒子、ポリプロピレン/酸化チタン複合粒子、メラミン粒子、ナイロン粒子、アクリル粒子、ベンゾグアナミン粒子が挙げられる。これらは筆跡に、隠蔽性又は不透明性を与える効果がある。
着色剤及び/又は隠蔽剤の含有量は、筆記具種(水性若しくは油性のボールペン又はマーキングペン等)、インク収容形態(中綿式、直液式)、分散性、保存安定性等により変動するものであるが、インク組成物全量に対して、通常、0.5〜30質量%程度である。
[1−2.酸型アニオン変性セルロースナノファイバー]
酸型アニオン変性セルロースナノファイバーは、アニオン変性セルロースナノファイバーを脱塩処理して、プロトンに置換したものである。
後述するように、塩基性条件下でアニオン変性反応を行うため、生成物は、通常、塩型アニオン変性セルロースナノファイバーとして得られる。本発明のインク組成物では、塩型アニオン変性セルロースナノファイバーを陽イオン交換樹脂により脱塩処理して、プロトンに置換した酸型アニオン変性セルロースナノファイバーを用いる。
酸型アニオン変性セルロースナノファイバーの下記式(1)で求められるカルボキシ基の割合は40%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
(1):カルボキシ基の割合(%)=(カルボキシ基量/カルボキシ基量とカルボキシレート基量の合計量)×100
カルボキシ基の割合の算出方法をより詳細には説明する。
先ず、アニオン変性セルロースナノファイバーの0.1質量%スラリーを250mL調製する。調製したスラリーに、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とする。その後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHが11になるまで電気電導度を測定する。電気電導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下記式(2)を用いて、カルボキシ基量とカルボキシレート基量の合計量を算出する。
(2):カルボキシ基量とカルボキシレート基量の合計量(mmol/gアニオン変性セルロースナノファイバー)=a(ml)×0.05/アニオン変性セルロースナノファイバーの質量(g)
次に、測定対象のアニオン変性セルロースナノファイバーの0.1質量%スラリーを250mL調製する。調製したスラリーに、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHが11になるまで電気電導度を測定する。電気電導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(b)から、下記式(3)を用いて、カルボキシ基量を算出する。
(3):カルボキシ基量(mmol/gアニオン変性セルロースナノファイバー)=b(ml)×0.05/アニオン変性セルロースナノファイバーの質量(g)
そして、算出したカルボキシ基量とカルボキシレート基量の合計量及びカルボキシ基量から、下記式(1)を用いてカルボキシ基の割合を算出することができる。
(1):カルボキシ基の割合(%)=(カルボキシ基量/カルボキシ基量とカルボキシレート基量の合計量)×100
固形分濃度1質量%の酸型アニオン変性セルロースナノファイバーの水分散体における、B型粘度(20℃、60rpm)は、500〜9000mPa・sが好ましく、1000〜8000mPa・sがより好ましく、1500〜7000mPa・sがさらに好ましい。
なお、B型粘度は、東機産業社のVISCOMETER TV−10粘度計を用いて公知の手法により測定することができる。
固形分濃度1質量%の酸型アニオン変性セルロースナノファイバーの水分散体の透明度(660nm光の透過率)は、40%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。これにより、インク組成物の所望の色彩に悪影響を与えることを抑制し得る。下限は100%以下でよく、特に限定されない。
(アニオン変性セルロースナノファイバー)
アニオン変性セルロースナノファイバーである。「アニオン変性セルロースナノファイバー」とは、セルロース分子鎖にアニオン性基を導入したアニオン変性セルロース繊維を、ナノスケールの繊維径となるまで解繊して得た微細繊維である。以下、「セルロースナノファイバー」を「CNF」と略すことがある。
アニオン変性セルロース繊維としては、例えば、カルボキシ化(酸化)セルロース繊維、カルボキシメチル化セルロース繊維、リン酸エステル化セルロース繊維、亜リン酸エステル化セルロース繊維が挙げられる。これらを解繊することで、それぞれ酸化セルロースナノファイバー、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、リン酸エステル化セルロースナノファイバー、亜リン酸エステル化セルロースナノファイバーが得られる。中でも、カルボキシ化(酸化)セルロースナノファイバー、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーが好ましい。
本明細書中、「CNF」は、セルロース原料であるパルプ等がナノメートルレベルまで微細化されたものであり、繊維径が2〜500nm程度の微細繊維をいう。セルロースナノファイバーの平均繊維径及び平均繊維長は、原子間力顕微鏡(AFM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察した結果から得られる繊維径及び繊維長を平均することによって得ることができる。セルロースナノファイバーは、パルプに機械的な力を加えて微細化することで得られ、あるいは、カルボキシ化セルロース繊維(以下、「酸化セルロース繊維」ともいう)、カルボキシメチル化セルロース繊維、リン酸エステル化セルロース繊維、亜リン酸エステル化セルロース繊維のようなアニオン変性セルロース繊維を解繊することによって得ることができる。微細繊維の平均繊維長と平均繊維径は、酸化処理、解繊処理により調整することができる。
セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は、通常50以上である。上限は特に限定されないが、通常は1000以下である。平均アスペクト比は、下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
アニオン変性CNFの原料となるセルロース(以下、「セルロース原料」ともいう)の種類は特に限定されず、例えば、植物(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするセルロースを使用することができる。好ましくは、植物又は微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは、植物由来のセルロース繊維である。
セルロース原料の数平均繊維径は特に制限されない。一般的なパルプである針葉樹クラフトパルプの場合は30〜60μm程度、広葉樹クラフトパルプの場合は10〜30μm程度である。その他のパルプの場合、一般的な精製を経たものは50μm程度である。例えばチップ等の数cm大のものを精製したものである場合、リファイナー、ビーター等の離解機で機械的処理を行い、50μm程度に調整することが好ましい。
(アニオン変性)
上述のセルロース原料に対し、アニオン性基を導入することで、アニオン変性セルロース繊維とする。アニオン性基の導入方法は特に限定されないが、例えば、酸化又は置換反応によってセルロースのピラノース環にアニオン性基を導入する方法が挙げられる。具体的には、ピラノース環の水酸基を酸化してカルボキシ基へと変換する反応や、ピラノース環に対して置換反応により、カルボキシメチル基やリン酸エステル基、亜リン酸のエステル基を導入する反応を挙げることができる。
(カルボキシメチル化)
前述の通りアニオン変性の一例として、カルボキシメチル化を挙げることができる。アニオン変性セルロース繊維の一例であるカルボキシメチル化セルロース繊維は、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシメチル化することにより得てもよく、また、市販品であってもよい。いずれの場合も、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50となるものが好ましく、0.02〜0.40がさらに好ましく、0.10〜0.30がさらに好ましい。
なお、カルボキシメチル置換度が0.50を超えると、水などの媒体に溶解するようになり、繊維状の形状を維持することができなくなる場合がある。
カルボキシメチル化セルロース繊維のカルボキシメチル置換度は、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのカルボキシメチル置換度と同値である。
カルボキシメチル化セルロース繊維のカルボキシメチル置換度は、以下の方法で測定することができる:
カルボキシメチル化セルロース繊維(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。硝酸メタノール(メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液)100mLを加え、3時間振とうして、塩の形態のカルボキシメチル化セルロース繊維(以下、「CM化セルロース繊維」ともいう)を酸型CM化セルロース繊維に変換する。酸型CM化セルロース繊維(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。80質量%メタノール15mLで酸型CM化セルロース繊維を湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定する。カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F−(0.1NのHSO)(mL)×F’)×0.1]/(酸型CM化セルロース繊維の絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:酸型CM化セルロース繊維1gを中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのHSOのファクター
F:0.1NのNaOHのファクター。
カルボキシメチル化セルロース繊維を製造する方法の一例として次のような方法を挙げることができる:
i)原料パルプと、溶媒と、マーセル化剤と、を混合し、反応温度0〜70℃、好ましくは10〜60℃、かつ反応時間15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間でマーセル化処理を行う。
ii)次いで、カルボキシメチル化剤(以下、「CM化剤」ともいう)を、モル換算で、グルコース残基当たり0.05〜10.0倍添加し、反応温度30〜90℃、好ましくは40〜80℃、かつ反応時間30分〜10時間、好ましくは1〜4時間でエーテル化処理を行う。
溶媒としては、質量換算で、3〜20倍の水又は低級アルコール、具体的には、水、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第3級ブチルアルコール等を1種単独で、または2種以上の混合媒体として使用できる。マーセル化剤としては、原料パルプの無水グルコース残基当たり、モル換算で、0.5〜20倍のアルカリ金属の水酸化物、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用することが好ましい。
カルボキシメチル化セルロースの製造としては、マーセル化処理とエーテル化処理の両方を、水を溶媒として行う方法(水媒法)と、マーセル化処理とエーテル化処理の両方を有機溶媒又は有機溶媒と水との混合溶媒を用いて行う方法(溶媒法)が一般に用いられ、本発明ではこれらのいずれも用いることができる。また、マーセル化処理を水を主とする溶媒下で行い、次いでエーテル化処理を水と有機溶媒との混合溶媒下で行う方法(「水媒−溶媒法」と呼ぶ。)を用いると、分散体とした際により高い透明度と低い粘度とを呈するCNF分散体が得られるため、好ましい。
上述の水媒−溶媒法において、「マーセル化処理を水を主とする溶媒下で行う」とは、水を50質量%より高い割合で含む溶媒下でマーセル化処理を行うことをいう。水を主とする溶媒中の水の割合は、好ましくは55質量%以上あり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、さらにより好ましくは80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上である。水を主とする溶媒は、特に好ましくは水が100質量%(すなわち、水)である。マーセル化処理時の水の割合が多いほど、CNF分散体の透明度が高まる傾向がある。水を主とする溶媒中の水以外の(水と混合して用いられる)溶媒としては、上述のメタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第3級ブチルアルコール等の低級アルコール;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン;ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、ジクロロメタンなどを挙げることができ、これらの1種単独で又は2種以上の混合物を水に50質量%未満の量で添加して用いることができる。これらの中では、水との相溶性が優れることから、炭素数1〜4の一価アルコールが好ましく、炭素数1〜3の一価アルコールがさらに好ましい。水を主とする溶媒中の有機溶媒の量は、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、さらにより好ましくは20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下であり、特に好ましくは0質量%である。
水媒−溶媒法において、上述のマーセル化処理を行った後、CM化剤(エーテル化剤ともいう)を添加してエーテル化処理を行う。エーテル化処理の際には、水と有機溶媒との混合溶媒を用いる。マーセル化処理に水を主とする溶媒を用い、エーテル化処理に水と有機溶媒との混合溶媒を用いることにより、解繊した際に高い透明度と低い粘度を呈するCNF分散体を得ることができる。また、こうした水媒−溶媒法は、CM化剤の有効利用率が高いという利点がある。CM化剤の有効利用率とは、CM化剤におけるカルボキシメチル基のうち、セルロースに導入されたカルボキシメチル基の割合を指す。CM化剤の有効利用率は15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましく、30%以上がさらにより好ましい。CM化剤の有効利用率の上限は特に限定されないが、現実的には80%程度が上限となる。なお、CM化剤の有効利用率は、AMと略すことがある。
CM化剤の有効利用率の算出方法は以下の通りである:
AM=(DS×セルロースのモル数)/カルボキシメチル化剤のモル数
DS:カルボキシメチルエーテル置換度
セルロースのモル数:パルプ質量(100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量)/162(162はセルロースのグルコース単位当たりの分子量)。
エーテル化処理の際の混合溶媒中の有機溶媒の割合は、水と有機溶媒との総和に対して有機溶媒が20〜99質量%であることが好ましく、30〜99質量%であることがより好ましく、40〜99質量%であることがさらに好ましく、45〜99質量%であることがさらにより好ましい。また、エーテル化処理の際の反応媒(セルロースを含まない、水と有機溶媒等との混合溶媒)は、マーセル化処理の際の反応媒よりも、水の割合が少ない(言い換えれば、有機溶媒の割合が多い)ことが好ましい。本範囲を満たすことで、セルロースの結晶化度を維持しながらカルボキシメチルエーテル置換度を高くしやすくなり、解繊した際に透明度の高い分散体となるCNFをより効率的に得ることができるようになる。また、エーテル化処理の際の反応媒が、マーセル化処理の際の反応媒よりも水の割合が少ない(有機溶媒の割合が多い)場合、マーセル化処理からエーテル化処理に移行する際に、マーセル化処理終了後の反応系に所望の量の有機溶媒を添加するという簡便な手段でエーテル化処理用の混合溶媒を形成させることができるという利点も得られる。
エーテル化処理の際に用いる有機溶媒としては、上述のマーセル化処理時に水と混合して用いることができる有機溶媒と同様のものを使用することができる。
エーテル化処理の終了後は、残存するアルカリ金属塩を鉱酸又は有機酸で中和してもよい。また、必要に応じて、副生する無機塩、有機酸塩等を含水メタノールで洗浄して除去しもよい。また、乾燥、粉砕、分級等を行ってもよい。
アニオン変性CNFの調製に用いるアニオン変性セルロースの一種である「カルボキシメチル化セルロース繊維」は、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものをいう。したがって、水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロースとは区別される。「カルボキシメチル化セルロース繊維」の水分散液を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができる。一方、水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロースの水分散液を観察しても、繊維状の物質は観察されない。また、「カルボキシメチル化セルロース繊維」はX線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができるが、水溶性高分子のカルボキシメチルセルロースではセルロースI型結晶はみられない。
(カルボキシ化(酸化))
アニオン変性の一例としてカルボキシ化(酸化とも呼ぶ。)を挙げることができる。カルボキシ化とは、セルロースのピラノース環の水酸基を酸化してカルボキシ基(−COOH(酸型)又は−COOM(金属塩型)をいう(Mは金属イオンである。))に変換する反応をいう。本明細書において、カルボキシ化により得られるアニオン変性セルロース繊維を、カルボキシ化セルロース繊維又は酸化セルロース繊維とも呼ぶ。
カルボキシ化セルロース繊維は、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシ化(酸化)することにより得ることができる。
カルボキシ化セルロース繊維におけるカルボキシ基量は、特に限定されるものではないが、カルボキシ化セルロース繊維の絶乾質量に対して、0.6〜3.0mmol/gとなるように調整することが好ましく、1.0〜2.0mmol/gになるように調整することがさらに好ましい。カルボキシ基量は、酸化剤の種類や量、酸化反応の際の温度や時間などを制御することで、調整することができる。
カルボキシ化セルロース繊維のカルボキシ基量は、カルボキシ化セルロースナノファイバーのカルボキシ基量と同値である。
カルボキシ化セルロース繊維のカルボキシ基量は、以下の方法で測定することができる:
カルボキシ化セルロース繊維の0.5質量%スラリー(媒体:水)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とする。0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出する:
カルボキシ基量〔mmol/gカルボキシ化セルロース繊維〕=a〔ml〕×0.05/カルボキシ化セルロース繊維の質量〔g〕。
カルボキシ化(酸化)方法の一例として、セルロース原料を、N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物と、の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシ基(−COOH)又はカルボキシレート基(−COO)とを有するセルロース繊維を得ることができる。反応時のセルロース原料の水中での濃度は特に限定されないが、5質量%以下とすることが好ましい。
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシラジカル(TEMPO)及びその誘導体(例えば、4−ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。N−オキシル化合物の使用量は、セルロース原料を酸化できる触媒量であればよく、特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.01〜10mmolが好ましく、0.01〜1mmolがより好ましく、0.05〜0.5mmolがさらに好ましい。また、反応液全体に対し、0.1〜4mmol/L程度がよい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能なアルカリ金属の臭化物が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、アルカリ金属のヨウ化物が含まれる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物及びヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物を使用できる。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。酸化剤の適切な使用量は、例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.5〜500mmolが好ましく、0.5〜50mmolがより好ましく、1〜25mmolがさらに好ましく、3〜10mmolがさらにより好ましい。また、例えば、N−オキシル化合物1molに対して、1〜40molが好ましい。
セルロース原料の酸化は、比較的温和な条件下であっても反応が効率よく進行しやすい。よって、反応温度は4〜40℃であってもよく、また、15〜30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース鎖にカルボキシ基が生成するため、反応液のpHの低下が認められる。酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを8〜12、好ましくは10〜11程度に維持することが好ましい。反応液における媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5〜6時間、例えば、0.5〜4時間程度である。
酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロース繊維を、再度、同一又は異なる反応条件で酸化することにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化を進行させることができる。
カルボキシ化(酸化)の方法の別の例として、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、グルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基がカルボキシ基へと酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50〜250g/mが好ましく、50〜220g/mがより好ましい。セルロース原料に対するオゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100質量部とした際に、0.1〜30質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。オゾン処理温度は、0〜50℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、1〜360分程度であり、30〜360分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロース繊維の収率が良好となる。
オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸等が挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作製し、溶液中にセルロース原料を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
(エステル化)
アニオン変性の一例として、エステル化を挙げることができる。エステル化の一例として、セルロース原料へのリン酸基又は亜リン酸基の導入を挙げることができる。本明細書において、リン酸基の導入により得られるアニオン変性セルロース繊維をリン酸エステル化セルロース繊維、亜リン酸基の導入により得られるアニオン変性セルロース繊維を亜リン酸エステル化セルロース繊維と呼び、両者を総称してエステル化セルロース繊維と呼ぶ。
リン酸エステル化セルロース繊維の製造方法としては、セルロース原料又はそのスラリーに、リン酸基を有する化合物の粉末や水溶液を混合する方法を挙げることができる。リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等を挙げることができ、これらを単独で、或いは2種以上混合して用いてもよい。
セルロース原料に対するリン酸基を有する化合物の添加割合は、セルロース原料の固形分100質量部に対して、リン元素に換算した添加量で、0.1〜500質量部が好ましく、1〜400質量部がより好ましく、2〜200質量部がさらに好ましい。反応温度は0〜95℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、1〜600分程度であり、30〜480分がより好ましい。得られたリン酸エステル化セルロース繊維の懸濁液は、セルロースの加水分解を抑える観点から、脱水した後、100〜170℃で加熱処理することが好ましい。リン酸エステル化セルロース繊維のグルコース単位当たりのリン酸基置換度は、0.001以上0.40未満が好ましい。
亜リン酸エステル化セルロース繊維の製造方法としては、セルロース原料又はそのスラリーに、アルカリ金属イオン含有物並びに亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)と、を添加(好ましくは、亜リン酸水素ナトリウム)し、加熱してセルロース繊維に無機物からなる陽イオンを含む亜リン酸のエステル基を導入する方法を挙げることができる。なお、尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)を添加し、加熱してセルロース繊維に無機物からなる陽イオンを含む亜リン酸のエステル基及びカルバメート基を導入することがより好ましい。
アルカリ金属イオン含有物としては、例えば、水酸化物、硫酸金属塩類、硝酸金属塩類、塩化金属塩類、リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類、炭酸金属塩類を使用することができる。ただし、添加物(A)をも兼ねる亜リン酸金属塩類が好ましく、亜リン酸水素ナトリウムがより好ましい。
添加物(A)は、亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる。添加物(A)としては、例えば、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素アンモニウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物を使用することができる。これらの亜リン酸類又は亜リン酸金属塩類は、それぞれを単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。ただし、アルカリ金属イオン含有物をも兼ねる亜リン酸水素ナトリウムが好ましい。
添加物(A)の添加量は、セルロース原料1kgに対して、好ましくは1〜10,000gであり、より好ましくは100〜5,000gであり、さらに好ましくは300〜1,500gである。
添加物(B)は、尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる。添加物(B)としては、例えば、尿素、チオ尿素、ビウレット、フェニル尿素、ベンジル尿素、ジメチル尿素、ジエチル尿素、テトラメチル尿素を使用することができる。これらの尿素又は尿素誘導体は、それぞれを単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。ただし、尿素を使用するのが好ましい。
添加物(B)の添加量は、添加物(A)1molに対して、好ましくは0.01〜100molであり、より好ましくは0.2〜20molであり、さらに好ましくは0.5〜10molである。
反応温度は100〜200℃が好ましく、100〜180℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、10〜180分程度であり、30〜120分がより好ましい。
亜リン酸のエステル基等を導入したセルロース繊維は、解繊するに先立って、洗浄することが好ましい。亜リン酸エステル化セルロース繊維のグルコース単位当たりの亜リン酸基の置換度は、0.01以上0.23未満が好ましい。
(解繊)
アニオン変性セルロース繊維を解繊する装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式、キャビテーション噴流装置、精製装置(例えば、ディスク型、コニカル型、シリンダー型等のリファイナー)、高速解繊機、せん断型撹拌機、コロイドミル、高圧噴射分散機、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー、高速離解機(トップファイナー)、高圧または超高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、振動ミル、ビーズミル、1軸、2軸又は多軸の混錬機・押出機、高速回転下でのホモミキサー、デフィブレーター(defibrator)、摩擦グラインダー、高せん断デフィブレーター(defibrator)、ディスパージャー(disperger)、ホモゲナイザー(例えば、微細流動化機(microfluidizer))、ホモミックラインミル、ヘンシェルミキサーなどの装置を用いて、アニオン変性セルロース繊維の分散体に強力なせん断力を印加することが好ましい。効率よく解繊するには、アニオン変性セルロース繊維の分散体に、50MPa以上の圧力を印加でき、かつ強力なせん断力を印加できる、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。圧力は、100MPa以上がより好ましく、140MPa以上がさらに好ましい。
解繊装置での処理(パス)回数は、1回でもよいし2回以上でもよく、2回以上が好ましい。
分散処理においては通常、溶媒にアニオン変性セルロース繊維を分散する。溶媒は、アニオン変性セルロース繊維を分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等の親水性の有機溶媒)、それらの混合溶媒が挙げられる。アニオン変性セルロース繊維が親水性であることから、溶媒は水であることが好ましい。
分散体中のアニオン変性セルロース繊維の固形分濃度は、通常は0.1重量%以上であり、0.2重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましい。これにより、アニオン変性セルロース繊維の量に対する液量が適量となり効率的である。上限は、通常10重量%以下であり、6重量%以下が好ましい。これにより、流動性を保持することができる。
また、高圧ホモジナイザーでの解繊・分散処理に先立って、必要に応じて、アニオン変性セルロース繊維に予備処理を施すことも可能である。予備処理は、高速せん断ミキサーなどの混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて行えばよい。
アニオン変性セルロース繊維は、製造後に得られる水分散体の状態であってもよく、必要に応じて後処理を経てもよい。後処理としては、例えば、乾燥(例、凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、ガラス板等に薄く伸展し乾燥する方法、流動床乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、起熱ファン式減圧乾燥法)、水への再分散(分散装置は限定されない)、粉砕(例えば、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の機器を使用した粉砕)が挙げられるが、特に限定されない。
(脱塩処理)
上記のようにして調製したアニオン変性セルロース繊維を脱塩処理することで、解繊処理したアニオン変性セルロース繊維のカチオン塩がプロトンに置換されて酸型アニオン変性セルロースナノファイバーを得ることができる。
脱塩処理は、陽イオン交換樹脂と塩型アニオン変性セルロースナノファイバーを接触させて行う。陽イオン交換樹脂での脱塩処理は、脱塩処理後、ろ過するだけで簡便に陽イオン交換樹脂と酸型アニオン変性セルロースナノファイバーを分離し得る。
また、陽イオン交換樹脂での脱塩処理は、局所的な極端なpHの低下を抑制することができるため、酸型アニオン変性セルロースナノファイバーの過度な凝集を抑制し得る。また、陽イオン交換樹脂と塩型アニオン変性セルロースナノファイバーを接触させて脱塩処理した酸型アニオン変性セルロースナノファイバーは、塩型アニオン変性セルロースナノファイバーよりもインク組成物中での凝集を抑制し得る。
塩酸等の酸性溶媒中で脱塩処理した場合、局所的に極端なpHの低下が起き、酸型セルロースナノファイバーが過度に凝集し得る。
陽イオン交換樹脂を用いるので、塩化ナトリウム等の副生成物が生成しない。そのため、脱塩処理した後は、陽イオン交換樹脂を金属メッシュ等により濾過して除去するだけで、濾液としてプロトン置換された酸型アニオン変性セルロースナノファイバーの水分散体が得られる。金属メッシュ等により濾物として除去する対象は陽イオン交換樹脂であり、アニオン変性セルロースナノファイバーは、金属メッシュ等の径では除去され難く、ほぼ全量が濾液中に含まれる。そのため、収率の低下が極めて少なくなる。
陽イオン交換樹脂としては、対イオンがHである限り、強酸性イオン交換樹脂及び弱酸性イオン交換樹脂のいずれも用いることができる。中でも、強酸性イオン交換樹脂を用いることが好ましい。強酸性イオン交換樹脂及び弱酸性イオン交換樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂或いはアクリル系樹脂にスルホン酸基或いはカルボキシ基を導入したものが挙げられる。
陽イオン交換樹脂の形状は、特に限定されず、細粒(粒状)、膜状、繊維等、種々の形状のものを用いることができる。中でも、アニオン変性セルロースナノファイバー塩を効率よく脱塩処理し、脱塩処理後の分離が容易であるとの観点から、粒状が好ましい。このような陽イオン交換樹脂としては市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、アンバージェット1020、同1024、同1060、同1220(以上、オルガノ社製)、アンバーライトIR−200C、同IR−120B(以上、東京有機化学社製)、レバチットSP 112、同S100(以上、バイエル社製)、GEL CK08P(三菱化学社製)、Dowex 50W−X8(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
脱塩処理は、例えば、粒状の陽イオン交換樹脂と、アニオン変性セルロースナノファイバー塩の水分散液と、を混合し、必要に応じ攪拌・振とうしながら、アニオン変性セルロースナノファイバー塩と陽イオン交換樹脂を一定時間接触させた後、陽イオン交換樹脂と水分散液とを分離することによって行うことができる。
アニオン変性セルロースナノファイバー塩は、解繊工程で得られた水分散液を脱塩工程にそのまま供することができる。なお、必要に応じて水を添加して濃度を低くすることもできる。
水分散液の濃度や陽イオン交換樹脂との比率は、特に限定されず、当業者であれば、プロトン置換を効率的に行うとの観点から適宜設定し得る。一例として、水分散液の濃度は、0.05〜10質量%が好ましい。水分散液の濃度が0.05質量%未満であると、プロトン置換に要する時間がかかりすぎる場合がある。水分散液の濃度が10質量%超であると、十分なプロトン置換の効果が得られない場合がある。
接触時間も特に限定されず、当業者であれば、プロトン置換を効率的に行うとの観点から適宜設定し得る。例えば、0.2〜4時間接触させて行うことができる。
この際、適切な量の陽イオン交換樹脂を用いてカルボキシ化セルロースナノファイバー塩又は酸化セルロースを十分な時間接触させた後、陽イオン交換樹脂を金属メッシュ等により濾物として除去することで、脱塩処理を行うことができる。
酸型アニオン変性セルロースナノファイバーの含有量は、筆記具種(水性若しくは油性のボールペン又はマーキングペン等)、インク収容形態(中綿式、直液式)、分散性、保存安定性等により変動するものであるが、インク組成物全量に対して、通常、0.02〜2質量%程度であり、0.03〜1質量%程度が好ましく、0.1〜0.8質量%程度がより好ましい。
[1−3.溶剤]
本発明のインク組成物は、水性のインク組成物又は油性のインク組成物として使用することができ、水性のインク組成物として使用することが好ましい。
水性のインク組成物に用いる場合、主溶剤は水である。水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水等を用いることができる。
油性のインク組成物の場合に用いる溶剤としては、アルコール類やグリコールエーテル類を用いることができる。より詳細には、メチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、ベンジルアルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテルが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
溶剤の含有量は、筆記具種(水性若しくは油性のボールペン又はマーキングペン等)、インク収容形態(中綿式、直液式)、分散性、保存安定性等により変動するものであるが、インク組成物全量に対して、通常、20〜95質量%程度である。
[1−4.任意成分]
本発明のインク組成物は、必要に応じて、インク組成物に用いられている汎用の樹脂や分散剤、可塑剤、増粘剤、固着剤、剥離剤、防錆剤、防腐剤、潤滑剤等を適宜量含有することができる。
用いることができる樹脂としては、例えば、ケトン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール系樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、尿素アルデヒド系樹脂、マレイン酸系樹脂、シクロヘキサノン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン等に代表される樹脂が挙げられる。
用いることができる分散剤として、上記に挙げたような樹脂の中から着色剤が顔料であれば、顔料を分散できるものを選択して使用することができ、界面活性剤やオリゴマーでも目的に沿うものであれば、含有することができる。より詳細には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、スチレン−マレイン酸共重合体、ケトン樹脂、ヒドロキシエチルセルロースやその誘導体、スチレン−アクリル酸共重合体等の合成樹脂やPO・EO付加物やポリエステルのアミン系オリゴマー等が挙げることができる。
[1−5.その他]
本発明のインク組成物において、筆記具種(水性若しくは油性のボールペン又はマーキングペン等)、インク収容形態(中綿式、直液式)等により変動するものであるが、色材沈降による濃度差の点、インク追従性の点から、B型粘度(20℃、60rpm)は、5〜1500mPa・sが好ましく、10〜1000mPa・sがより好ましく、30〜800mPa・sがさらに好ましい。
なお、B型粘度は、東機産業社のVISCOMETER TV−10粘度計を用いて公知の手法により測定することができる。
[2.インク組成物の製造方法]
本発明のインク組成物の製造方法は、下記工程1〜3を有する。
工程1:アニオン変性セルロースナノファイバーを準備する工程。
工程2:アニオン変性セルロースナノファイバーを陽イオン交換樹脂により脱塩し、酸型アニオン変性セルロースナノファイバーを調製する工程。
工程3:工程2で調製した酸型アニオン変性セルロースナノファイバーと、着色剤及び/又は隠蔽剤を水系媒体中で混合して分散し、インク組成物を得る工程。
なお、工程1及び工程2についての詳細は、上記の酸型アニオン変性セルロースナノファイバーで記載した内容が挙げられる。
インク組成物を得る工程には、従来から知られている方法が採用可能である。例えば、酸型アニオン変性セルロースナノファイバー、アルコール溶剤、着色剤及び/又は隠蔽剤の他、上記筆記具種等において好適に組み合わせできる各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機、ビーズミル、アトライター、ボールミル、サンドグラインダー等で混合分散することで調製される。更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
本発明のインク組成物を搭載する筆記具としては、例えば、ボールペンチップ、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどのペン先部を備えた水性又は油性ボールペン、水性又は油性ゲルボールペン、繊維芯、燒結芯、プラスチック芯などのペン先部を備えた水性又は油性マーキングペン、筆記板用などのマーキングペン等に搭載される。
水性又は油性ボールペンとしては、上記組成のインク組成物をボールペン用インク収容体(リフィール)に収容するタイプのボールペン、インク収容形態が中綿式のボールペン、コレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式のボールペンなどが挙げられ、水性又は油性マーキングペンでは、インク収容形態が中綿式の水性又は油性マーキングペン、コレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式の水性又は油性マーキングペンなどが挙げられる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、物性値等の測定方法は、別途記載がない限り、上記に記載した測定方法である。また、「部」とは、特に断りがない限り、質量部を意味する。
[B型粘度(mPa・s)]:TV−10型粘度計(東機産業社)を用いて、1質量%の酸型アニオン変性セルロースナノファイバーの水分散液又はインク組成物のB型粘度を、20℃、60rpmの条件で測定した。
[カルボキシメチル置換度]:以下の方法により測定した。
試料約2.0gを精秤して、300ml共栓三角フラスコに入れた。硝酸メタノール(無水メタノール1Lに特級濃硝酸100mlを加えた液)100mlを加え、3時間振盪して、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩(以下、「Na−CMC」ともいう)をカルボキシメチル化セルロース(以下、「H−CMC」ともいう)にした。絶乾したH−CMCを1.5〜2.0g精秤し、300ml共栓三角フラスコに入れた。80%メタノール15mlでH−CMCを湿潤し、0.1NのNaOH100mlを加えて室温で3時間振盪した。指示薬としてフェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定し、下記式を用いてカルボキシメチル置換度を算出した。
[{100×F−(0.1NのHSO(ml))×F’}/(H−CMCの絶乾質量(g))]×0.1=A
カルボキシメチル置換度=0.162A/(1−0.058A)
A:1gのH−CMCを中和するのに必要な1NのNaOHの量(ml)
F’:0.1NのHSOのファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
[カルボキシ基量]:カルボキシ基量は以下のようにして測定した。カルボキシ化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定した。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いてカルボキシル基量を算出した:
カルボキシ基量〔mmol/gカルボキシ化セルロース〕=a〔ml〕×0.05/カルボキシ化セルロース質量〔g〕
[カルボキシ基の割合(%)]:以下の方法により測定した。
アニオン変性セルロースナノファイバーの0.1質量%スラリーを250mL調製した。調製したスラリーに、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした。その後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHが11になるまで電気電導度を測定した。電気電導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下記式(2)を用いて、カルボキシ基量とカルボキシレート基量の合計量を算出した。
(2):カルボキシ基量とカルボキシレート基量の合計量(mmol/gアニオン変性セルロースナノファイバー)=a(ml)×0.05/アニオン変性セルロースナノファイバーの質量(g)
次に、測定対象のアニオン変性セルロースナノファイバーの0.1質量%スラリーを250mL調製した。調製したスラリーに、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHが11になるまで電気電導度を測定した。電気電導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(b)から、下記式(3)を用いて、カルボキシ基量を算出した。
(3):カルボキシ基量(mmol/gアニオン変性セルロースナノファイバー)=b(ml)×0.05/アニオン変性セルロースナノファイバーの質量(g)
そして、算出したカルボキシ基量とカルボキシレート基量の合計量及びカルボキシ基量から、下記式(1)を用いてカルボキシ基の割合を算出した。
(1):カルボキシ基の割合(%)=(カルボキシ基量/カルボキシ基量とカルボキシレート基量の合計量)×100
[透明度(%)]:酸型アニオン変性セルロースナノファイバーの水分散体(固形分約1%(w/v))の660nm光の透過率を、UV−VIS分光光度計UV−265FS(島津製作所社製)を用いて測定し、透明度とした。
[凝集物の評価]:調製直後のインキ組成物を光学顕微鏡にて観察し、下記の評価基準で評価した。
A:顕微鏡観察において、凝集物がほとんど確認されないもの
B:顕微鏡観察において、微細な凝集物が広く分布しており、一様に白濁しているもの
C:顕微鏡観察において、粗大な凝集物が局所的に分布しており、独立した島を多数形成しているもの
(製造例1:酸型カルボキシ化(酸化)セルロースナノファイバーの調製)
漂白済み針葉樹未叩解パルプ(日本製紙社製)5g(絶乾)を、TEMPO(Sigma Aldrich社製)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム754mg(7.4mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液14ml添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するので、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に維持した。2時間反応させた後、ガラスフィルターで濾過し、十分に水洗することでカルボキシル基量1.42mmol/gの酸化セルロースを得た。
次いで、得られた酸化セルロースのスラリーを水で1%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)で3回処理し、透明なゲル状のカルボキシ化セルロースナノファイバー塩の分散液(1%(w/v))を得た。
得られたカルボキシ化セルロースナノファイバー塩の分散液に陽イオン交換樹脂(オルガノ社製、「アンバージェット1024」)を添加し、20℃で0.5時間撹拌して接触させた。その後、金属メッシュ(目開き100メッシュ)で陽イオン交換樹脂と水分散液を分離して、酸型カルボキシ化セルロースナノファイバーを得た。
得られた酸型カルボキシ化セルロースナノファイバーの1.00質量%の水分散液のB型粘度は、5189mPa・sであり、透明度は87%であり、カルボキシ基の割合は、93%であった。
また、得られた酸型カルボキシ化セルロースナノファイバーの平均繊維長は560nmであり、平均繊維径は3nmであった。
(製造例2:酸型カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの調製)
回転数を150rpmに調節した二軸ニーダーに、水130部と、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解した水酸化ナトリウム水溶液120部と、を加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃、60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。35℃で80分間撹拌、混合してマーセル化処理を行った。さらに撹拌しつつイソプロピルアルコール230部と、モノクロロ酢酸ナトリウム40部とを添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間エーテル化処理を行った。反応終了後、pH7になるまで酢酸で中和、含水メタノールで洗浄、脱液、乾燥、粉砕して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.24のカルボキシメチル化されたパルプ(以下、「カルボキシメチル化セルロース」ともいう)を得た。カルボキシメチル化セルロースを水で1.053%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー塩の分散液を得た。
得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバー塩の分散液に陽イオン交換樹脂(オルガノ社製、「アンバージェット1024」)を添加し、20℃で0.5時間撹拌して接触させた。その後、金属メッシュ(目開き100メッシュ)で陽イオン交換樹脂と水分散液を分離して、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを得た。
得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの1質量%の水分散液のB型粘度は4607mPa・sであり、透明度は78%であり、カルボキシ基の割合は、82%であった。
また、得られた酸型カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの平均繊維長は346nmであり、平均繊維径は3nmであった。
(製造例3:インキ原料の調製)
イオン交換水37.5部に、黒色染料(オリエント化学工業社製、商品名「ウォーターブラック191L」)40.0部、ジエチレングリコール20.0部、トリエタノールアミン1.0部、防黴剤(アーチ・ケミカルズ・ジャパン社製、商品名「プロキセルXL−2」)0.5部、メチルアシッドホスフェイト(堺化学工業社製、商品名「Phosle」)1.0部を添加して混合攪拌した後、20℃でディスパーにて400rpm、1時間攪拌し、濾過することでインキ原料を調製した。
(実施例1)
製造例3で調製したインキ原料50部に対して、製造例1で製造した濃度1質量%の酸型カルボキシ化セルロースナノファイバーの水分散液25部とイオン交換水25部を添加し、20℃でディスパーにて3000rpm、10分間攪拌した。その後、遠心脱泡機で2000rpm、5分間攪拌した後、2200rpm、10分間脱泡することにより、インク組成物を調製した。
(実施例2〜3)
実施例2では、酸型カルボキシ化セルロースナノファイバーの水分散液37.5部とイオン交換水12.5部を添加したこと、実施例3では、酸型カルボキシ化セルロースナノファイバーの水分散液50部を添加し、イオン交換水を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてインク組成物を調製した。
(比較例1)
製造例1で酸型に変化しなかった濃度1質量%のカルボキシ化セルロースナノファイバー塩の水分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてインク組成物を調製した。
(比較例2〜3)
比較例2では、カルボキシ化セルロースナノファイバー塩の水分散液37.5部とイオン交換水12.5部を添加したこと、比較例3では、カルボキシ化セルロースナノファイバー塩の水分散液50部を添加し、イオン交換水を添加しなかったこと以外は、比較例1と同様にしてインク組成物を調製した。
(実施例4)
製造例1で製造した酸型カルボキシ化セルロースナノファイバーを製造例2で製造した酸型カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの調製に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてインク組成物を調製した。
(比較例4)
製造例2で酸型に変化しなかった濃度1質量%のカルボキメチル化セルロースナノファイバー塩の水分散液を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてインク組成物を調製した。
調製したインク組成物について、B型粘度(20℃、60rpm)を測定し、凝集物の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
Figure 2021109911
上記した通り、酸型アニオン変性セルロースナノファイバーを含有するインク組成物では、粘度によらず、凝集物はほとんど確認されないものであった(実施例1〜4)。一方、酸型に変換しなかった酸化セルロースナノファイバーを含有するインク組成物では、粗大な凝集物は確認されなかったけれども、微細な凝集物が広く分布しており、一様に白濁していた(比較例1〜3)。また、酸型に変換しなかったカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含有するインク組成物では、粗大な凝集物が局所的に分布しており、独立した島を多数形成していた(比較例4)。
以上のことから、陽イオン交換樹脂を用いて脱塩した酸型アニオン変性セルロースナノファイバーは、塩型アニオン変性セルロースナノファイバーとは異なり、凝集物がほとんど確認されなかったため、インクに用いた場合に詰まりの発生を防止できると考えられる。

Claims (7)

  1. 着色剤及び/又は隠蔽剤と、
    酸型アニオン変性セルロースナノファイバーと、を含むインク組成物。
  2. 前記酸型アニオン変性セルロースナノファイバーが、酸型酸化セルロースナノファイバー、酸型カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、及び酸型エステル化セルロースナノファイバーからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のインク組成物。
  3. 前記酸型アニオン変性セルロースナノファイバーが、酸型酸化セルロースナノファイバーを含み、
    前記酸型酸化セルロースナノファイバーのカルボキシ基量が、0.60〜3.0mmol/gである、請求項2に記載のインク組成物。
  4. 前記酸型アニオン変性セルロースナノファイバーが、酸型カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含み、
    前記酸型カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのカルボキシメチル置換度が、0.010〜0.50である、請求項2に記載のインク組成物。
  5. 前記酸型アニオン変性セルロースナノファイバーの下記式(1)で求められるカルボキシ基の割合が40%以上である、請求項3又は4に記載のインク組成物。
    (1):カルボキシ基の割合(%)=(カルボキシ基量/カルボキシ基量とカルボキシレート基量の合計量)×100
  6. 水性インク用である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインク組成物。
  7. 下記工程1〜3を有するインク組成物の製造方法。
    工程1:アニオン変性セルロースナノファイバーを準備する工程。
    工程2:アニオン変性セルロースナノファイバーを陽イオン交換樹脂により脱塩し、酸型アニオン変性セルロースナノファイバーを調製する工程。
    工程3:工程2で調製した酸型アニオン変性セルロースナノファイバーと、着色剤及び/又は隠蔽剤を水系媒体中で混合して分散し、インク組成物を得る工程。
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