JP2018135405A - 筆記具用油性インク組成物 - Google Patents

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広幸 奥山
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Abstract

【課題】インク粘度を上げることなく、油性インクに配合される顔料、樹脂粒子などの不溶性成分の沈降・分離を抑制することができる筆記具用油性インク組成物の提供。
【解決手段】少なくとも、アルコール性水酸基を有する有機溶剤、及びアニオン性官能基の一部又は全てが式(1)で示すポリエーテルアミンを結合している酸化セルロースを0.02〜2質量%含む筆記具用油性インク組成物。
Figure 2018135405

〔R〜Rは、C1〜20の直鎖/分岐のアルキル基、C6〜20のアリール基又はH;n1〜n3は夫々独立に0〜80の整数;10≦(n1+n2+n3)≦240;AOはC2〜4のオキシアルキレン基;0.5≦xの平均値≦1;0≦y、zの平均値≦1〕
【選択図】なし

Description

本発明は、インク粘度を上げることなく、油性インクに配合される顔料、樹脂粒子などの不溶性成分の沈降・分離を抑制することができる筆記具用油性インク組成物に関する。
従来より、アルコール類やグリコールエーテル類を主たる溶剤として用いた、いわゆる筆記具用油性インク組成物は数多く知られている。
筆記具用油性インク組成物に、一般的に使用される溶剤は、比重が小さいものが多い。このような溶剤を主成分とする油性インクに顔料等に代表される不溶性成分を配合すると、その比重差が大きいことから時間の経過と共に不溶性成分の沈降や分離が発生する。
このような課題を解決するために、筆記具用油性インク組成物には、樹脂などによって粘度を付与する手段が用いられている。例えば、1)少なくとも着色剤と、有機溶剤と、剪断減粘性剤とからなるボールペン用油性インクにおいて、有機溶剤が主としてグリコールモノエーテルであり、且つ炭素数が2〜6の多価アルコールをインク全量に対して特定量含み、剪断減粘性剤としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体をインク全体に対し特定量含有することを特徴とするボールペン用油性インク(例えば、特許文献1参照)、2)染料と樹脂と溶剤とから少なくともなる油性マーキングペン用インク組成物において、樹脂としてエチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース樹脂、溶剤として沸点の相違する2種の溶剤を含有する油性マーキングペン用インク組成物(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
しかしながら、上記特許文献1、2に記載される筆記具用油性インク組成物において、上記各種セルロース誘導体の配合により粘度を付与することによって、インクの流出性が制限されるなどの課題が生じる。理想的にはインク粘度を上げることなく、不溶性成分の沈降・分離を抑制することが望まれている。
一方、本願出願人は、キサンタンガムのような従来の増粘・ゲル化剤と比較して低粘度でありながら、粒子の保存安定性、経時筆記性及び描線品位に優れる筆記具用水性インク組成物として、酸化セルロースなどを含有した筆記具用水性インク組成物を開示している(例えば、特許文献3及び4参照)。
上記特許文献3及び4に記載の酸化セルロースは、親水性が高いため筆記具用などの水性インク組成物には好適であるが、疎水性の有機溶剤に分散させることが困難であり、筆記具用油性インク組成物にそのまま使用することが困難であった。
特開2008−13585号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平4−36361号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2015−67722号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2015−101594号公報(特許請求の範囲、実施例等)
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、インク粘度を上げることなく、筆記具用油性インク組成物に配合される顔料、樹脂粒子などの不溶性成分の沈降・分離を抑制することができる筆記具用油性インク組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも、特定の有機溶剤と、特定物性の酸化セルロースを特定量の範囲で含むことなどにより、上記目的の筆記具用油性インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明の筆記具用油性インク性物は、少なくとも、アルコール性水酸基を有する有機溶剤、及び下記要件を満たす酸化セルロースを0.02〜2質量%含むことを特徴とする。
(要件)
酸化セルロースのアニオン性官能基の一部又は全てが下記式(1)で示すポリエーテルアミンを結合している。
Figure 2018135405
〔上記式(1)中、R、R、Rは炭素数1以上20以下の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または水素原子を示し、n1、n2、n3はそれぞれ0以上80以下を示し、(n1+n2+n3)は10以上240以下を示し、AOは炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を示し、xの平均値は0.5以上1以下、y、zの平均値は0以上1以下を示す。〕
本発明の筆記具は、上記筆記具用油性インク組成物を搭載したことを特徴とする。
筆記具は、油性ボールペン又は油性マーキングペンであることが好ましい。
本発明によれば、インク粘度を上げることなく、油性インクに配合される顔料、樹脂粒子などの不溶性成分の沈降・分離を抑制することができる筆記具用油性インク組成物が提供される。
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の筆記具用油性インク組成物は、少なくとも、アルコール性水酸基を有する有機溶剤、及び下記要件を満たす酸化セルロースを0.02〜2質量%含むことを特徴とするものである。
(要件)
酸化セルロースのアニオン性官能基の一部又は全てが下記式(1)で示すポリエーテルアミンを結合している。
Figure 2018135405
〔上記式(1)中、R、R、Rは炭素数1以上20以下の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または水素原子を示し、n1、n2、n3はそれぞれ0以上80以下を示し、(n1+n2+n3)は10以上240以下を示し、AOは炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を示し、xの平均値は0.5以上1以下、y、zの平均値は0以上1以下を示す。〕
〔酸化セルロース〕
本発明において、上記式(1)で示すポリエーテルアミンを結合する前の酸化セルロースは、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース〔(C6105)n:多数のβグルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した天然高分子〕を構成するβグルコースの水酸基(−OH基)の一部がアニオン性官能基に変性したものであれば、特に限定されない。好適には、上記βグルコースの少なくともC6位の水酸基(−OH基)を酸化し、カルボキシル基(−COOH基)に変性したものなどが挙げられる。
この酸化セルロースは、I型結晶構造を有する天然物由来のセルロース固体原料を表面酸化し、ナノサイズにまで微細化した繊維(微細繊維状セルロース)である。一般に、原料となる、天然物由来のセルロースは、ほぼ例外なくミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーが多束化して高次構造を取っているため、そのままでは容易にはナノサイズにまで微細化して分散させることができないものである。上記酸化セルロースでは、セルロース繊維の水酸基の一部を酸化しアルデヒド基およびカルボキシル基を導入し、ミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めて、分散処理し、ナノサイズにまで微細化したものである。
このセルロースナノファイバーを構成するセルロースがI型結晶構造を有することは、例えば、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
用いる酸化セルロースの数平均繊維径は、2nm以上500nm以下とするものであり、好ましくは、2nm以上150nm以下であり、より好ましくは、2nm以上100nm以下であり、特に好ましくは、3nm以上80nm以下であることが望ましい。
上記数平均繊維径が2nm未満であると、酸化セルロースが溶解することにより、溶剤中で微細繊維状セルロースの3次元的ネットワークが形成されなくなり、有機溶剤を増粘化できないおそれがあり、上記数平均繊維径が500nmを超える場合も酸化セルロースが有機溶剤中に沈降するおそれがある。また、最大繊維径は、酸化セルロースの分散性の点で、1000nm以下であることが好ましく、特に好ましくは500nm以下であることが望ましい。
上記酸化セルロースの数平均繊維径及び最大繊維径は、例えば、次のようにして測定することができる。すなわち、固形分率で0.05〜0.1質量%の酸化セルロースの水分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。なお、大きな繊維径の繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。
次いで、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)。このようにして得られた繊維径のデータにより、最大繊維径及び数平均繊維径を算出することができる。
上記酸化セルロースの平均アスペクト比は、10以上1000以下であり、好ましくは100以上、より好ましくは200以上であることが望ましい。
この平均アスペクト比が10未満であると、表面電荷が少なくなり、有機溶剤を高粘度化できないという問題が生じる。
上記酸化セルロースの平均アスペクト比は、例えば、以下の方法で測定することができる。すなわち、先に述べた方法に従い、数平均繊維径、および繊維長を算出し、これらの値を用いて平均アスペクト比を下記式(1)に従い算出した。
平均アスペクト比=繊維長さ(nm)/数平均繊維径(nm) ……(1)
上記酸化セルロース(セルロースナノファイバー)は、アニオン性官能基を有する。
本発明のアニオン性官能基としては、特に制限されないが、具体的には、カルボキシル基、リン酸基、硫酸基が挙げられるが、これらの中で、セルロースへのアニオン性官能基の導入の容易さという理由からカルボキシル基が好ましい。
セルロースにカルボキシルを導入する方法としては、セルロースの水酸基にカルボキシル基を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させる方法、セルロースの水酸基を酸化することによりカルボキル基に変換する方法が挙げられる。
上記カルボキシル基を有する化合物としては、特に限定されないが、具体的にはハロゲン化酢酸が挙げられ、ハロゲン化酢酸としては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸等が挙げられる。
上記カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては、特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
上記カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては、特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。
また、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては、特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては、特に限定されないが、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
上記セルロースの水酸基を酸化する方法としては、特に制限されないが、具体的には、N−オキシル化合物を酸化触媒とし、共酸化剤を作用させる方法が挙げられる。
本発明において、セルロースにカルボキシル基を導入する方法としては、繊維表面の水酸基の選択性に優れており、反応条件も穏やかであることから、セルロースの水酸基を酸化する方法が好ましい。以下、水酸基の酸化によりカルボキシル基が導入されたセルロースを酸化セルロースという。
また、一実施形態としてセルロースにリン酸基を導入する方法としては、以下の方法が挙げられる。すなわち、乾燥した、あるいは湿潤状態のセルロース繊維原料にリン酸またはリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法、セルロース繊維原料の分散液にリン酸またはリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。
これら方法においては、通常、リン酸またはリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合または添加した後に、脱水処理、加熱処理等を行う。ここで、リン酸またはリン酸誘導体としては、リン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸あるいはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。これにより、セルロースを構成するグルコースユニットの水酸基にリン酸基を含む化合物またはその塩が脱水反応してリン酸エステルが形成され、リン酸基又はその塩が導入される。
本発明の酸化セルロースのアニオン性官能基の含量は、酸化セルロースの分散性の点から0.5mmol/g以上2.5mmol/g以下の範囲が好ましく、より好ましくは1.5mmol/g以上2.0mmol/g以下の範囲であることが望ましい。
上記酸化セルロースのアニオン性官能基量は、例えば、アニオン性官能基がカルボキシル基の場合は以下の方法で測定する。すなわち、乾燥重量を精秤したセルロース試料から0.5〜1重量%スラリーを60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行う。測定はpHが約11になるまで続ける。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記の式(2)に従いカルボキシル基量を求めることができる。
カルボキシル基量(mmol/g)=V(ml)×〔0.05/セルロース重量〕 ……(2)
上記酸化セルロースのアニオン性官能基量は、例えば、アニオン性官能基がカルボキシルメチル基の場合は、以下の方法で測定する。すなわち、上記微細繊維状セルロースを0.6質量%スラリーに調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.4とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量からカルボキシル基量を測定し、下式を用いて算出することができる。
カルボキシル基メチル量(mmol/g)=(162×C)/(1−58×C)×1000 ……(3)
C:カルボキシル基量(mmol/g)
本発明に用いる酸化セルロースは、上述のアニオン性官能基を有し、該アニオン性官能基の一部又は全てが下記式(1)で示すポリエーテルアミンを結合している。
このポリエーテルアミンを結合することにより、用いる酸化セルロースはポリエーテルアミンにより表面修飾することで、筆記具用油性インクに配合される顔料、樹脂粒子などの不溶性成分の沈降・分離を長期間抑制することができる効果を発現するものとなる。
Figure 2018135405
上記式(1)中、R、R、Rは炭素数1以上20以下の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または水素原子を示し、n1、n2、n3はそれぞれ0以上80以下を示し、(n1+n2+n3)は10以上240以下を示し、AOは炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を示し、xの平均値は0.5以上1以下、y、zの平均値は0以上1以下を示す。そして、上記R、R、Rは炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル基がより好ましい。また、AOは炭素数2のオキシアルキレン基が好ましく、n1、n2、n3はそれぞれ20以上80以下が好ましく、(n1+n2+n3)は20以上160以下であることが好ましく、20以上80以下であることがより好ましい。xの平均値は0.8以上1以下、y、zの平均値は0以上0.2以下であることが好ましい。
本発明で好適に使用できるポリエーテルアミンとしては、例えば、下記式(i):
Figure 2018135405
〔式中、Rは、炭素数1以上20以下の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または水素原子を示し、EO及びPOはランダム又はブロック状に存在し、aはEOの平均付加モル数を示す正の数、bはPOの平均付加モル数を示す正の数であり、a、bはそれぞれ0以上80以下が好ましく、a+bは10以上80以下であり、好ましくは20以上80以下である〕
市販品で好適に使用できるポリエーテルアミンとしては、例えば、HUNTSMAN社製のJeffamine M−2070(R=CH、a=6、b=35)、Jeffamine M−2005(R=CH、a=6、b=29)、Jeffamine M−1000(R=CH、a=19、b=3)、Jeffamine M−2095、Jeffamine M−3085、XTJ-436、BASF社製のPolyetheramine D 2000等が挙げられる。
また、本発明で好適に使用できるポリエーテルアミンとしては、例えば、下記式(ii)、下記式(iii)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2018135405
〔 式中、R、Rは炭素数1以上20以下の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または水素原子を示し、EO及びPOはランダム又はブロック状に存在し、cおよびeはEOの平均付加モル数を示し、dおよびfはPOの平均付加モル数を示し、c、d、e、fはそれぞれ0以上80以下であり、c+dおよびe+fは10以上160以下であり、好ましくは20以上80以下である〕
Figure 2018135405
〔式中、R、R、Rは、炭素数1以上20以下の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または水素原子を示し、EO及びPOはランダム又はブロック状に存在し、g、iおよびkはEOの平均付加モル数を示し、h、jおよびlはPOの平均付加モル数を示し、g、h、i、j、k、およびlはそれぞれ0以上80以下であり、g+h、i+j、およびk+lはそれぞれ10以上240以下であり、好ましくは20以上160以下であり、より好ましくは20以上80以下である〕
本発明の酸化セルロースは、上記ポリエーテルアミンを1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
また、上記酸化セルロースのカルボキシル基の一部がポリエーテルアミンと結合してなる場合、残りのカルボキシル基に、下記一般式(2)で示されるアミン化合物を結合してもよい。
Figure 2018135405
上記式(2)中、R、R、R6は、炭素数1以上20以下の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1以上20以下の直鎖あるいは分岐のアルキレン基、および/またはアリーレン基、および/または水素原子を示す。
そして、上記R、R、Rは、炭素数2〜18のアルキル基が好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がより好ましい。
上記式(2)で示されるアミン化合物は、特に限定するものではないが、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、エタノールアミン、ベンジルアミンなどの第一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジアリルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、ターシャリーブチルエチルアミン、ジエタノールアミン、ジベンジルアミンなどの第二級アミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジエチルメチルアミン、ジオクタデシルメチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、トリベンジルアミンなどの三級アミン等があげられる。これらの内、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、エタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジアリルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、ターシャリーブチルエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジエチルメチルアミン、ジオクタデシルメチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、が好ましく、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジエチルメチルアミン、ジオクタデシルメチルアミンがより好ましい。
上記ポリエーテルアミンと上記アミンを併用する場合、微細繊維状セルロースの分散性と有機溶媒との相溶性の点から配合比率はモル比でポリエーテルアミン/脂肪族アミン=99/1〜25/75が好ましく、50/50〜25/75がより好ましい。
本発明で用いる酸化セルロースは、酸化セルロースのアニオン性官能基の一部又は全てが上記式(1)で示すポリエーテルアミンを結合しているものであり、更に好ましくは、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、下記(A)〜(C)の要件、すなわち、(A)数平均繊維径が、上述の如く、2nm以上500nm以下とすること、B)平均アスペクト比が、上述の如く、10以上1000以下とすること、C)上述の如く、セルロースI型結晶構造を有することの、少なくとも1つを備えることが望ましい。
〔酸化セルロースの製造方法〕
本発明の酸化セルロース、すなわち、アニオン性官能基の一部又は全てが上記式(1)で示すポリエーテルアミンを結合している酸化セルロースは、下記工程(1)〜(4)を有する製造方法によれば、より効率的に製造できるため好ましい。
工程(1):セルロースI型結晶構造を有するセルロース繊維を水に分散させた後、そのセルロース繊維の水酸基を、カルボキシル基を有する置換基に変換する工程
工程(2):上記セルロース繊維の分散媒である水を有機溶剤に置換する工程
工程(3):上記分散媒置換後のセルロース繊維にポリエーテルアミンを添加する工程
工程(4):上記ポリエーテルアミンが結合したセルロース繊維を上記有機溶媒中でナノ解繊する工程
<工程(1)>
工程(1)は、セルロースI型結晶構造を有するセルロースの水酸基を、酸化等によりカルボキシル基を有する置換基(カルボキシル基、カルボキシル塩基、カルボキシルアルキル基等)に変換させる工程である。
セルロースI型結晶構造を有するセルロースとしては、通常、天然セルロースが用いられる。ここで、天然セルロースとは、植物,動物,バクテリア産生ゲル等のセルロースの生合成系から単離した精製セルロースを意味する。より具体的には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター,コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプ、バクテリアセルロース(BC)、ホヤから単離されるセルロース、海草から単離されるセルロース等があげられる。なかでも、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプが好ましい。上記天然セルロースは、叩解等の表面積を高める処理を施すと、反応効率を高めることができ、生産性を高めることができるため好ましい。
セルロースがI型結晶構造を有することは、例えば、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
上記セルロース繊維表面の水酸基がカルボキシル基を有する置換基に変換されたセルロースとしては、例えば、酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース、多価カルボキシメチルセルロース、あるいは、その塩、等があげられる。なかでも、繊維表面の水酸基の選択性に優れており、反応条件も穏やかである、N−オキシル化合物を酸化剤として用いた酸化セルロースが好ましい。
上記のとおり、本発明のカルボキシル基を有する微細繊維状セルロースの内、より好適に選択できるN−オキシル化合物を酸化剤として用いて酸化セルロースを得る方法について、以下に詳述する。
(酸化処理工程)
上記酸化セルロースは上記天然セルロースと、N−オキシル化合物と、共酸化剤の存在下で酸化処理をして、カルボキシ基を含有するセルロース繊維を得られる。
上記酸化反応におけるセルロースの分散媒体は水であり、反応水溶液中のセルロース濃度は、セルロースの充分な拡散が可能な濃度であれば任意である。通常は、反応水溶液の重量に対して約5%以下であるが、機械的撹拌力の強い装置を使用することにより反応濃度を上げることができる。
上記N−オキシル化合物としては、例えば、一般に酸化触媒として用いられるニトロキシラジカルを有する化合物があげられる。上記N−オキシル化合物は、水溶性の化合物が好ましく、なかでもピペリジンニトロキシオキシラジカルが好ましく、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル、または4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカルが好ましい。上記N−オキシル化合物の添加は、触媒量で充分であり、好ましくは0.1〜4mmol/l、さらに好ましくは0.2〜2mmol/lの範囲で反応水溶液に添加する。
上記共酸化剤とは、直接的にセルロースの水酸基を酸化する物質ではなく、酸化触媒として用いられるN−オキシル化合物を酸化する物質のことである。例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、上記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが、反応速度の点において好ましい。上記臭化アルカリ金属の添加量は、上記N−オキシル化合物に対して約1〜40倍モル量、好ましくは約10〜20倍モル量である。
上記反応水溶液のpHは、約8〜11の範囲で維持されることが好ましい。水溶液の温度は約4〜40℃において任意であるが、反応は室温(25℃)で行うことが可能であり、特に温度の制御は必要としない。
目的とするカルボキシル基量等を得るために、酸化の程度を共酸化剤の添加量と反応時間により制御する。
(還元処理工程)
上記酸化処理後のセルロース繊維は、還元剤により還元させることが好ましい。これにより、アルデヒド基およびケトン基の一部ないし全部が還元され、水酸基に戻る。なお、カルボキシル基は還元されない。そして、上記還元による、上記酸化セルロースの、後述するセミカルバジド法によって算出されるカルボニル基(アルデヒド基とケトン基)の合計含量は、0.3mmol/g以下とすることが好ましく、特に好ましくは0.1mmol/g以下である。これにより、微細繊維状セルロースの分子量低下が抑制され、溶剤中での増粘効果を長期間維持することができる。なお、カルボニル基が0.5mmol/gを超えると、長期保存による凝集物の発生や、粘度が時間経過と共に著しく低下するといったおそれがある。なお、上記還元反応に使用する還元剤としては、一般的なものを使用することが可能であるが、好ましくは、LiBH、NaBHCN、NaBHが挙げられる。中でも、NaBHは、コスト及び利用可能性という観点から特に好ましい。
カルボキシル基を有する置換基に変換されたセルロースを還元剤の量は、基準として、0.1〜20重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは3〜10重量%の範囲内である。
反応条件は室温または室温より若干高い温度で、10分〜10時間、好ましくは30分〜2時間行なわれる。
セミカルバジド法による、カルボニル基(アルデヒド基とケトン基)の合計含量の測定は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、まず、乾燥させた試料に、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうする。ついで、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸を25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌する。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加えて、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記の式に従い、試料中のカルボニル基量を求めることができる。なお、セミカルバジドは、アルデヒド基やケトン基と反応してシッフ塩基(イミン)を形成するが、カルボキシル基とは反応しないことから、上記測定により、カルボニル基量のみを定量できると考えられる。
カルボニル基量〔mmol/g〕=(D−B)×f×(0.125×w) ……(4)
D:サンプルの滴定量〔ml〕
B:空試験の滴定量〔ml〕
f:0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター
w:試料量〔g〕
<工程(2)>
工程(2)は、上記処理後のセルロース繊維を酸で洗浄することで、上記工程(1)で導入したカルボキシル基を酸型にし、適宜、ろ過と水洗とを繰り返して精製し、遠心分離機等により固液分離を行った後、有機溶媒によるセルロースの洗浄を、繰り返し行い、水から有機溶媒へと溶媒置換を行う工程である。
上記酸は、セルロース繊維水分散液を酸性に維持できればよいため、酸の種類は特に限定されず、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、過酸化水素などの無機酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アジピン酸、セバシン酸、セバシン酸ソーダ、ステアリン酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、フマール酸、グルコン酸などの有機酸のいずれであっても用いることができる。酸によるセルロース繊維の変質や損傷を回避でき、廃液処理の容易さなどの観点から、塩酸を用いることが好ましい。
上記有機溶媒は、特に限定するものではない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、1−ペンタノール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2-メチル−1−プロパノールグリセリン等のアルコール類、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン、オレイン酸、リノレン酸、乳酸、安息香酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボン酸類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、流動パラフィン等の炭化水素類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトアニリド等のアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酪酸メチル、アジピン酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル、4-シクロヘキセン-1, 2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸トリクレジル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル類、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリエーテル類、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンオイル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、プロピオニトリル、エステル油、軽油、灯油、原油、サラダ油、大豆油、ヒマシ油、トリグリセライド、ポリイソプレン、フッ素変性油等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。また、有機溶剤の代わりに、反応性の官能基を含む有機性媒体でもよい。例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸n―へキシル、メタクリル酸n―へキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、ノナンジオールジアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレート、ヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、クロロスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、ビニル安息香酸等が挙げられる。
<工程(3)>
工程(3)は、上記分散媒置換後の酸化セルロースに対し、上記式(1)に示されるポリエーテルアミンを添加する工程である。これにより、上記酸化セルロースのカルボキシル基に、上記式(1)に示されるポリエーテルアミンが結合し、セルロースの親油化が行われる。なお、上記反応は、上記有機溶媒中で行われる。
<工程(4)>
工程(4)は、上記親油化後のセルロース繊維を有機溶剤中でナノ解繊する工程である。上記ナノ解繊に使用する分散機としては、例えば、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩解能力のある装置を使用することで、より微細化することが可能となり、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能となる。なお、上記分散機としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー等を用いても差し支えない。
上記工程(1)〜(4)を経ることなどにより、本発明で用いる酸化セルロースのアニオン性官能基の一部又は全てが上記式(1)で示すポリエーテルアミンを結合しているものが製造でき、更に、上記工程(1)〜(4)を好適に行うことなどにより、上述の好ましい(A)〜(C)の各要件を備えたものが得られることとなる。
本発明の筆記具用油性インク組成物において、上記アニオン性官能基の一部又は全てが上記式(1)で示すポリエーテルアミンを結合している酸化セルロースの含有量は、油性インク組成物全量に対して、0.02〜2質量%(以下、単に「質量%」を「%」という)、好ましくは、0.03〜1.2%とすることが望ましい。
この酸化セルロースの含有量が0.02%未満であると、本発明の効果を発揮することができず、一方、2%超過では、インクの粘度が高くなることにより、インク追従性が低下するため、好ましくない。
本発明に用いる有機溶剤は、アルコール性水酸基を有するものであれば、特に限定されず、例えば、アルコール類、グリコールエーテル類などが挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテルルなどのグリコールエーテル類が挙げられる。
これらアルコール類、グリコールエーテル類は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらのアルコール性水酸基を有する有機溶剤の合計含有量は、筆記具種(油性ボールペン、油性マーキングペン等)、インク収容形態(中綿式、直液式)等により変動するものであるが、インク組成物全量に対して、20〜95%程度である。
本発明の筆記具用油性インク組成物では、上述のポリエーテルアミンを結合している酸化セルロース、アルコール性水酸基を有する有機溶剤の他、好ましくは、着色剤を含有することができる。また、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、また、必要に応じて、筆記具用油性インク組成物に用いられている汎用の樹脂や分散剤、可塑剤、増粘剤、固着剤、剥離剤、防錆剤、防腐剤、潤滑剤等を適宜量含有することができる。
用いることができる着色剤としては、例えば、無機顔料、有機顔料等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、アルミナホワイト、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、カドミウムイエロー、朱、ガドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、バライト粉、鉛白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキニトロ顔料、ニトロソ顔料等が挙げられる。
また、酸性染料、反応染料、塩基性染料、分散性染料、直接染料、蛍光染料、C.I.ベーシックイエロー35、C.I.ベーシックイエロー40、C.I.アシッドオレンジ28、C.I.アシッドブルー92、エオシン、フロキシン、ウォーターイエロー#6−C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB、ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットBBローダミン、メチルバイオレット、等の着色剤を用いることもできる。
更に、樹脂や界面活性剤などで表面改質した加工顔料、分散トナー、アクリル系樹脂やベンゾグアナミン樹脂などを顔料や染料で着色して微粒子化した着色剤、熱変色性マイクロカプセル顔料、光変色性マイクロカプセル顔料等も用いることができる。
これらの着色剤の含有量は、筆記具種(油性ボールペン、油性マーキングペン等)、インク収容形態(中綿式、直液式)、分散性、保存安定性等により変動するものであるが、インク組成物全量に対して、0.5〜30%程度である。
本発明の筆記具用油性インク組成物では、本発明の効果を更に発揮せしめる点などから、上記着色剤と上記ポリエーテルアミンを結合している酸化セルロースとの含有量の割合は、質量比で着色剤/ポリエーテルアミンを結合している酸化セルロース=0.1〜1000の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜250の範囲、特に好ましくは0.1〜20の範囲であることが望ましい。
用いることができる樹脂としては、例えば、ケトン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール系樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、尿素アルデヒド系樹脂、マレイン酸系樹脂、シクロヘキサノン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン等に代表される樹脂が挙げられる。
用いることができる分散剤として、上記に挙げたような樹脂の中から着色剤が顔料であれば、顔料を分散できるものを選択して使用することができ、界面活性剤やオリゴマーでも目的に沿うものであれば、含有することができる。
具体的な分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、スチレン−マレイン酸共重合体、ケトン樹脂、ヒドロキシエチルセルロースやその誘導体、スチレン−アクリル酸共重合体等の合成樹脂やPO・EO付加物やポリエステルのアミン系オリゴマー等が挙げることができる。
本発明の筆記具用油性インク組成物において、筆記具種(油性ボールペン、油性マーキングペン等)、インク収容形態(中綿式、直液式)等により変動するものであるが、色材沈降による濃度差の点、インク追従性の点から、せん断速度38.3/s時のインク粘度(25℃)を2.5〜300mPa・sの範囲とすることが好ましく、せん断速度383/s時のインク粘度(25℃)を2〜100mPa・sの範囲とすることが好ましく、更に、粘度S1(せん断速度:38.3S-1)/粘度S2(せん断速度:383S-1)の比(Ti値)が1.2〜10の範囲にあることが好ましい。
このような筆記具用油性インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記ポリエーテルアミンを結合している酸化セルロース、アルコール性水酸基を有する有機溶剤、着色剤の他、上記筆記具種等において好適に組み合わせできる各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
本発明において、上記構成となる筆記具用油性インク組成物を搭載する筆記具としては、例えば、ボールペンチップ、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどのペン先部を備えた油性ボールペン、油性ゲルボールペン、繊維芯、燒結芯、プラスチック芯などのペン先部を備えた油性マーキングペン、筆記板用などのマーキングペン等に搭載される。
油性ボールペンとしては、上記組成の筆記具用油性インク組成物をボールペン用インク収容体(リフィール)に収容するタイプのボールペン、インク収容形態が中綿式のボールペン、コレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式のボールペンなどが挙げられ、油性マーキングペンでは、インク収容形態が中綿式の油性マーキングペン、コレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式の油性マーキングペンなどが挙げられる。
このように構成される本発明の筆記具用油性インク組成物にあっては、用いる上述のポリエーテルアミンを結合している酸化セルロースが筆記具用油性インク組成物中に0.02〜2%の低粘度であっても高い粘性を示し、かつ、親油化した酸化セルロースに固有の高いチキソトロピーインデックスを示すため、筆記具用油性インク組成物の増粘・ゲル化剤として、少量でレオロジーコントロール効果を発揮して、インク粘度を上げることなく、筆記具用油性インクに配合される顔料、樹脂粒子などの不溶性成分の沈降・分離を抑制して、経時的な安定性に優れる筆記具用油性インク組成物が得られることとなる。
次に、製造例、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
まず、実施例及び比較例に先立ち、酸化セルロースA1〜A4を、以下の製造例1−1〜4−2に従って調製した。
〔製造例1−1:セルロース繊維A1の調製〕
針葉樹パルプ2gに、水150ml、臭化ナトリウム0.25g、TEMPO0.025gを加え、充分撹拌して分散させた後、13%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が5.2mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10〜11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応した(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加して中和した後、遠心分離機で固液分離し、純水を加えて固形分濃度4%に調整した。その後、24%NaOH水溶液にてスラリーのpHを10に調整した。スラリーの温度を30℃として水素化ホウ素ナトリウムをセルロース繊維に対して0.2mmol/g加え、2時間反応させることで還元処理した。反応後、0.1N塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、セルロース繊維A1を得た。
〔製造例2−1:セルロース繊維A2の調製〕
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、上記パルプ1.0gに対して12.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1の調製法に準じて、酸化セルロースA2を得た。
〔製造例3−1:セルロース繊維A3の調製〕
針葉樹パルプ100gを、イソプロパノール(IPA)435gと水65gとNaOH9.9gの混合液中にいれ、30℃で1時間撹拌した。このスラリー系に50%モノクロル酢酸のIPA溶液23.0gを加え、70℃に昇温し1.5時間反応させた。得られた反応物を80%メタノールで洗浄し、その後メタノールで置換し乾燥させ、セルロース繊維A3を得た。
〔製造例4−1:セルロース繊維A4の調整〕
尿素20g、リン酸二水素ナトリウム二水和物12g、リン酸水素二ナトリウム8gを20gの水に溶解させてリン酸化剤を調整し、家庭用ミキサーで粉砕した針葉樹パルプ(LBKP)20gをニーダーで攪拌しながらスプレー噴霧し、リン酸化剤含浸パルプを得た。次いで、リン酸化剤含浸パルプを140℃に加熱したダンパー付きの送風乾燥機内で60分間、加熱処理してリン酸化パルプを得た。得られたリン酸化パルプに水を加えて固形分濃度2%とし、攪拌、混合して均一に分散させた後、濾過、脱水の操作を2回繰り返した。次いで、得られた回収パルプに、水を加えて、固形分濃度2%とし、攪拌しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pH12〜13のパルプスラリーを得た。続いて、このパルプスラリーを濾過、脱水し、更に水を加えて濾過、脱水の操作を2回繰り返し、その後メタノールで置換し乾燥させ、酸化セルロースA4を得た。
得られた製造例1−1〜4−1のセルロース繊維A1〜A4を用いて、下記評価方法に従い、各特性の評価を行った。
<結晶構造>
X線回折装置(リガク社製、RINT−Ultima3)を用いて、酸化セルロースの回折プロファイルを測定し、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークが見られる場合は結晶構造(I型結晶構造)が「あり」と評価し、ピークが見られない場合は「なし」と評価した。
<カルボキシル基量の測定>
上記セルロース繊維0.25gを水に分散させたセルロース水分散体60mlを調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行った。測定はpHが11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において、消費された水酸化ナトリウム量(V)から、上記式(2)に従いカルボキシル基量を求めた。
<カルボキシメチル基量の測定>
上記セルロース繊維を0.6質量%スラリーに調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.4とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量からカルボキシル基量を測定し、上記式(3)を用いて算出することができる。
<リン酸基量の測定>
上記セルロース繊維をイオン交換水で固形分濃度0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%微細セルロース繊維含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の微細セルロース繊維水分散体に、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、水分散体が示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、電気伝導度の値が最も小さくなるまでに加えたアルカリ量[mmol]を、滴定対象スラリー中の固形分[g]で除して、リン酸基量[mmol/g]とした。
<カルボニル基量の測定>
上記セルロース繊維を約0.2g精秤し、これに、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうした。つぎに、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌した。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加え、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、上記式(4)に従い、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めた。
上記製造例1−1〜4−1のセルロース繊維A1〜A4では、共にI型結晶構造であること(「あり」)が確認され、セルロース繊維A1のカルボキシル基量が1.2〔mmol/g〕、カルボニル基量が0.14〔mmol/g〕であり、セルロース繊維A2のカルボキシル基量が2〔mmol/g〕、カルボニル基量が0.3〔mmol/g〕であり、セルロース繊維A3のカルボキシル基量が0.6〔mmol/g〕、カルボニル基量が<0.1〔mmol/g〕であり、セルロース繊維A4のリン酸基量が0.7〔mmol/g〕、カルボニル基量が<0.1〔mmol/g〕であった。
〔製造例1−2:ポリエーテルアミンを結合した酸化セルロースA1の調製〕
上記製造例1−1のセルロース繊維A1にメタノールを加えてろ過し、メタノール洗浄を繰り返して、上記酸化セルロースに含まれる水をメタノールに置換した。その後、メタノールと、上記酸化セルロースA1のカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)とを加えて、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。このゲル状組成物のメタノールを蒸発させて、乾燥したポリエーテルアミンを結合の酸化セルロースA1を得た。
〔製造例2−2:ポリエーテルアミンを結合した酸化セルロースA2の調製〕
上記セルロース繊維A2を用いて、上記製造例1−2と同様にして、乾燥したポリエーテルアミンを結合の酸化セルロースA2を得た。
〔製造例3−2:ポリエーテルアミンを結合した酸化セルロースA3の調製〕
上記セルロース繊維A3に水を加え、固形分1%に希釈し、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌しながら、溶液のpHが2になるまで1N塩酸を加えた。その後、濾過を行い、水で十分洗浄し、さらにメタノールで繰り返して洗浄することで、メタノールに溶剤置換した酸型セルロース繊維A3を作製した。上記酸型セルロース繊維A3にメタノールと、上記セルロース繊維A3のカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)とを加えて、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。このゲル状組成物のメタノールを蒸発させて、乾燥したポリエーテルアミンを結合の酸化セルロースA3を得た。
〔製造例4−2:ポリエーテルアミンを結合した酸化セルロースA4の調製〕
上記セルロース繊維A4に水を加え、固形分1%に希釈し、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌しながら、溶液のpHが2になるまで1N塩酸を加えた。その後、濾過を行い、水で十分洗浄し、さらにメタノールで繰り返して洗浄することで、メタノールに溶剤置換した酸型セルロース繊維A4を作製した。上記酸型セルロース繊維A4にメタノールと、上記セルロース繊維A4のリン酸基量と等量のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)とを加えて、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。このゲル状組成物のメタノールを蒸発させて、乾燥したポリエーテルアミンを結合の酸化セルロースA4を得た。
<数平均繊維径、アスペクト比の測定>
上記各ゲル状組成物のセルロース繊維の数平均繊維径、および繊維長を、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製JEM−1400)を用いて観察した。すなわち、各セルロース繊維を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、数平均繊維径、および繊維長を算出した。さらに、これらの値を用いてアスペクト比を上記式(1)に従い、算出した。
上記製造例1−2〜4−2のポリエーテルアミンを結合した酸化セルロースA1では、数平均繊維径は58〔nm〕、アスペクト比は127であり、酸化セルロースA2では、数平均繊維径は4〔nm〕、アスペクト比は280であり、酸化セルロースA3では、数平均繊維径は56〔nm〕、アスペクト比は140であり、酸化セルロースA4では、数平均繊維径は10〔nm〕、アスペクト比は201であった。
〔実施例1〜9及び比較例1〜4〕
上記製造例1−2〜4−2のポリエーテルアミンを結合した酸化セルロースA1〜A4、並びに、比較例では他のセルロース誘導体を用いて、下記表1及び表2に示す配合処方により、筆記具用油性インク組成物を下記調製法により調製した。
(筆記具用油性インク組成物の調製法、各筆記具の作製)
実施例1、5、8及び比較例1では、溶媒に着色剤、分散剤を添加後、ビーズミル(DYNO-MILL、KDL型、ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いて、ガラスビーズにより2000rpmで1時間処理した。次いで増粘剤以外の成分を添加し、撹拌機(東京理化器機株式会社製、マゼラ)を用いて1時間撹拌した。さらに増粘剤を添加し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理することで筆記板用油性インク組成物を調製した。
この各インク組成物を充填した筆記板用マーキングペン(三菱鉛筆社製:ホワイトボードマーカー;PWB−7M、ペン芯:PET繊維、線幅4mm)を作製した。
実施例2及び比較例2では、溶媒に着色剤、分散剤を添加後、ビーズミル(DYNO-MILL、KDL型、ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いて、ガラスビーズにより2000rpmで1時間処理した。次いで増粘剤を添加し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理した。さらに残りの成分を添加し、撹拌機(東京理化器機株式会社製、マゼラ)を用いて1時間撹拌することで油性マーキングペン用インク組成物を調製した。
この各インク組成物を充填したマーキングペン(三菱鉛筆社製:中綿式、PA−152TR)を作製した。
実施例3及び比較例3では、溶媒に着色剤、分散剤を添加後、ビーズミル(DYNO-MILL、KDL型、ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いて、ガラスビーズにより2000rpmで1時間処理した。次いで増粘剤以外の成分を添加し、撹拌機(東京理化器機株式会社製、マゼラ)を用いて1時間撹拌した。さらに増粘剤を添加し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理することでコレクター仕様の油性ボールペン用インク組成物を調製した。
ボールペン〔三菱鉛筆社製:コレクター仕様、直液式、ボール径:0.5mm、UB−200〕に各インク組成物を充填し、油性ボールペンを作製した。
実施例4、6、7、9及び比較例4では、溶媒に着色剤、分散剤を添加後、ビーズミル(DYNO-MILL、KDL型、ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いて、ガラスビーズにより2000rpmで1時間処理した。次いで増粘剤以外の成分を添加し、撹拌機(東京理化器機株式会社製、マゼラ)を用いて1時間撹拌した。さらに増粘剤を添加し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理することで油性ボールペン用ゲルインク組成物を調製した。
ボールペン〔三菱鉛筆社製:リフィール仕様、ボール径:0.5mm、UM−100〕に各インク組成物を充填し、インク後端に鉱油を主成分とするインク追従体を装填し、油性ボールペンを作製した。
上記実施例1〜9及び比較例1〜4で得られた各筆記具用油性インク組成物を用いて、下記測定法、各評価法により、インク粘度、Ti値、描線濃度差(RT上向き保存1ヶ月後)、インク追従性、描線滲みについて評価した。更に、実施例1、5、比較例1の筆記板用マーキングペンでは、下記評価方法により消去性について評価し、実施例2、比較例2の油性マーキングペンでは、下記評価方法により、固着性についても評価した。
これらの結果を下記表1及び表2に示す。
(インク粘度、Ti値の測定方法)
得られた各筆記具用油性インク組成物について、E型粘度計(東機産業社製)を用いて、せん断速度38.3/s時のインク粘度(25℃)、せん断速度383/s時のインク粘度(25℃)を測定し、この各粘度値を用いて、粘度S1(せん断速度:38.3S-1)/粘度S2(せん断速度:383S-1)の比(Ti値)を算出した。
(描線濃度差の評価方法)
得られた各ペン体をペン先上向きで室温(25℃)下において1ヶ月放置後、終筆まで筆記し、書き始めと描き終わりの描線の濃度差を比較し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:濃度差がない。
△:やや濃度差が認められる。
×:濃度差がはっきりと認められる
(インク追従性の評価方法)
得られた各ペン体を筆記試験機にて9.0m/分の速度で筆記して下記評価基準により評価した。
評価基準:
〇:良好な描線である。
△:描線の1/4未満にカスレがみられる。
×:描線の1/4以上にカスレが認められる。
(描線滲みの評価方法)
得られた各ペン体を用いて、筆記用紙に手書きで長さ約25cmの線を描いて、滲み性について下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:滲みは認められない。
△:やや滲みが認められる。
×:滲みが酷い。
(消去性の評価方法:実施例1、5、比較例1の筆記板用に対応)
温度25℃、湿度65%の環境下にて、試験するインキを充填した筆記板用マーキングペン(三菱鉛筆社製:PWB−7M:線幅4mm)により、筆記板〔A板(樹脂板・プラス社製)、B板(ホーロー板・プラス社製)〕に、ら線を描き、1分後にこれをイレーザー(三菱鉛筆社製:ER−100:乾布製)によって消去し、消去性能を下記の評価基準(3段階)で評価した。
評価基準:
○:良好
△:やや劣る
×:劣る
(固着性の評価方法(実施例2、比較例2の油性マーキングペンに対応)
温度25℃、湿度65%の環境下にて、試験するインキを充填したマーキングペン(三菱鉛筆社製:PA−152TR)によりポリエチレンテレフタレートフィルムに筆記した。60分経過後、綿棒にて筆記描線が剥離するまでの擦過回数を測定し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:10回以上でも剥離が認められない。
△:5〜9回で剥離が認められる。
×:4回以下で剥離が認められる。
Figure 2018135405
Figure 2018135405
上記表1及び表2の結果に示すように、本発明となる実施例1〜9の筆記具用油性インク組成物は、本発明の範囲外となる比較例1〜4の筆記具用油性インク組成物に較べ、ペン先上向きで室温(25℃)下において1ヶ月放置後であっても、終筆まで筆記でき、書き始めと描き終わりの描線の濃度差もなく、また、インク追従性においても、良好な描線となるものであり、しかも、滲みはなく、良好な筆記性能であることが確認された。
また、実施例1、5及び比較例1の筆記板用マーキングペンでは、筆記板(A板、B板)においても、消去性能は良好であった。更に、実施例2及び比較例2の油性マーキングペンでは、ポリエチレンテレフタレートフィルムに筆記しても、筆記描線の剥離がなく、良好な固着性を発揮できることが確認された。
各種筆記具(油性ボールペン、油性ゲルボールペン等)に好適な筆記具用油性インク組成物が得られる。

Claims (3)

  1. 少なくとも、アルコール性水酸基を有する有機溶剤、及び下記要件を満たす酸化セルロースを0.02〜2質量%含むことを特徴とする筆記具用油性インク組成物。
    (要件)
    酸化セルロースのアニオン性官能基の一部又は全てが下記式(1)で示すポリエーテルアミンを結合している。
    Figure 2018135405
    〔上記式(1)中、R、R、Rは、炭素数1以上20以下の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または水素原子を示し、n1、n2、n3はそれぞれ0以上80以下を示し、(n1+n2+n3)は10以上240以下を示し、AOは炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を示し、xの平均値は0.5以上1以下、y、zの平均値は0以上1以下を示す。〕
  2. 請求項1に記載の筆記具用油性インク組成物を搭載したことを特徴とする筆記具。
  3. 筆記具が、油性ボールペン又は油性マーキングペンであることを特徴とする請求項2記載の筆記具
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