JP2020015891A - 筆記具用油性インキ組成物 - Google Patents
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また、本発明は、前記筆記具用油性インキ組成物を充填したインキ収容管を有することを特徴とする筆記具を提供する。
本発明に係る、使用時の軽い筆記感と先漏れを抑えた、筆記具用油性インキ組成物は、疎水化セルロースナノファイバーを含有することを特徴とする。
高速撹拌処理は、疎水化セルロースナノファイバーの透明分散液が得られるまで、通常、例えば、4000rpm〜8000rpmで30分〜60分間行うことが好ましい。高速撹拌処理時におけるセルロースナノファイバーの固形分濃度は、セルロースナノファイバー種類や処理条件によって異なるが、0.3〜3質量%とすることが好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。前記濃度範囲内であれば、セルロースナノファイバーが芳香族アルコールになじみやすく、また、高速撹拌処理によりセルロースナノファイバーが微細化して分散液が増粘した場合でも、分散液が流動性を失うことがない。セルロースナノファイバーの固形分濃度が3質量%を超える場合は、高速撹拌処理条件によっては分散液が流動性を失い透明分散液を得られなくなる恐れがある。尚、セルロースナノファイバーの固形分濃度は、セルロースナノファイバー分散液から溶媒を除去した残渣を105℃で2時間乾燥した後のセルロースナノファイバー量より、求めることができる。
セルロースナノファイバーのミクロフィブリル間への浸透性を高める観点からは、芳香族アルコールが、セルロースナノファイバーに対して親和性を有することも重要な要素である。かかる観点より、芳香族アルコールの水への溶解度は、0.5〜5g/100ml(20℃)の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜5g/100ml(20℃)である。
芳香族アルコールとしては、例えば、2−フェニルエチルアルコール、2−フェノキシエタノール(別名;フェニルグリコール)、シンナミルアルコール、ベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール(別名;アニシルアルコール)、2−(ベンジルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル及びトリエチレングリコールモノフェニルエーテルを挙げることができ、これらの芳香族アルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。これら芳香族アルコールは、1種を単独で用いても、2種以上を併用しても良い。これら芳香族アルコールの中でも、筆記具用油性インキ組成物中の着色剤及び樹脂の溶解力の観点より、2−フェノキシエタノール及びベンジルアルコールがより好ましく、両親媒性溶媒に対する初期溶解力の観点より、ベンジルアルコールが特に好ましい。これらの芳香族アルコールをセルロースナノファイバー高速撹拌処理時の分散溶媒として用いることで、分散溶媒のセルロースナノファイバーのミクロフィブリル間への浸透性、及び油性インキ組成物に配合する有機溶剤に対する分散性が良好となる。
上記の繊維は、脱リグニン等により精製されたセルロース繊維であることが、セルロースナノファイバーの微細化効率及びインキ組成物の分散安定性向上の観点より好ましい。
本発明では、疎水化セルロースナノファイバーを調製する際に、セルロースナノファイバーの替わりに、セルロースの官能基を疎水変性した疎水変性セルロースナノファイバーを、適宜な方法で、2−フェノキシエタノールやベンジルアルコール等の芳香族アルコールに分散させて用いても良い。また、セルロースナノファイバーと疎水変性セルロースナノファイバーを高速撹拌処理等の適宜な方法で混合分散させたものを用いることもできる。
アミノ変性セルロースナノファイバーは、上記2)の方法で得られたセルロースナノファイバーの有機溶媒分散液に、末端にアミノ基を有する平均分子量300以上の直鎖状あるいは分岐状分子(例えば、カチオン変性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド−ポリエチレングリコール共重合体、末端にアミノ基を有するポリプロピレンポリエチレングリコール共重合体)を混合し、機械的な解繊処理を施すことにより得られる(例えば、WO2013/077354号公報、特開2017−19896号公報参照)。
アニオン変性セルロースナノファイバーは、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド等と反応させてカチオン性基が導入されたセルロースナノファイバー(カチオン化度は通常0.01〜0.5)を、アニオン性スチレン樹脂、アニオン性ポリオレフィン樹脂等のアニオン性添加剤で中和する方法等により得られる(例えば、WO2012/124652号公報参照)。
エステル変性及びエーテル変性セルロースナノファイバーは、セルロース中の水酸基の少なくとも一部をエステル化又はエーテル化し疎水変性したものである。例えば、脂環式炭化水素基を有するエステル基によって置換した疎水化セルロースナノファイバー(例えば、特開2014−148629号公報参照)、カルボン酸無水物等でエステル化した疎水化セルロースナノファイバー(例えば、特開2017−171698号公報参照)、有機酸ビニルでエステル交換した疎水化セルロースナノファイバー(例えば、WO2016/010016)、ハロゲン化アルキル等のアルキルエーテルやアルコキシシラン等のシリルエーテルでエーテル化した疎水化セルロースナノファイバー(例えば、特開2017−171698号公報参照)等が開示されている。
グラフト化セルロースナノファイバーは、例えば、セルロースナノファイバーの水酸基の少なくとも一部に、メタクリル酸メチル、ブチルアクリレート等の疎水性モノマーをグラフトした疎水化セルロースナノファイバー(例えば、特開2018−16896号公報参照)等が開示されている。
疎水化セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、好ましくは1nm〜20μm、より好ましくは1nm〜10μm、さらに好ましくは1nm〜5μm、特に好ましくは1nm〜2μm、最も好ましくは30nm〜200nmである。疎水化セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、1nm以上であれば本発明による効果が発現し、20μm以下であればインキ中での分散安定性が著しく低下することがない。
例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル(別名;2−フェノキシエタノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール等のグリコールエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール類;ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパルギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オールやその他の高級アルコール等のアルコール類;フェニルセロソルブ等のセロソルブ類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアセテート類など、油性ボールペン用インキ組成物に一般的に用いられる有機溶剤が例示でき、これらを1種又は2種以上を併用することができる。
また、疎水化セルロースナノファイバーがペースト状あるいは高濃度の分散液で提供される場合は、上記の有機溶剤を添加した後、高速撹拌する等の方法で疎水化セルロースナノファイバーを解繊しできるだけ均一な分散液を調製し、得られた分散液を、インキ組成物に配合することが好ましい。これにより、疎水化セルロースナノファイバーの特性をより発揮させることができる。このような観点より、アルコール類は、有機溶剤全量に対して50%以上用いることが好ましい。
樹脂としては、インキ組成物に曳糸性、チクソトロピー性あるいはインク固着性等を付与するものであれば特に限定はない。例えば、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ケトン樹脂等のインキ組成物に添加される公知の樹脂の中から、1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。樹脂としては、疎水化セルロースナノファイバーとの相乗効果が発揮される樹脂が望ましい。また、樹脂は、配合する着色剤の種類に応じて、適宜選択することが望ましい。
樹脂の含有量は、種類によって最適含有量が異なるが、インキ組成物全量に対して、総量で0.3〜30%の範囲とすることが好ましい。樹脂含有量が0.3%以上であれば、先漏れを抑制する効果が得られ、30%以下であれば、インキから経時で析出して溶解不良となる、あるいは、凝集や沈降を起こして分散不良となるおそれがない。より好ましくは、1〜25%、さらに好ましくは、1〜20%の範囲である。
ポリビニルブチラール樹脂は、重合度や水酸基量が異なる各種タイプのものを用いることができる。例えば、エスレックBL−1(計算分子量1.9×104、水酸基36mol%)、BL−2(計算分子量2.7×104、水酸基36mol%)、BM−1(計算分子量4.0×104、水酸基34mol%)、BM−2(計算分子量5.2×104、水酸基31mol%)、BM−S(計算分子量5.3×104、水酸基22mol%)、BM−SZ(計算分子量5.3×104、水酸基22mol%)、BH−3(計算分子量11.0×104、水酸基34mol%)、BH−6(計算分子量9.2×104、水酸基30mol%)(以上、積水化学工業(株)製)等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。ポリビニルブチラール樹脂の中でも、分子量が大きい(重合度が高い)樹脂が好ましい。
本発明の筆記具用油性インキ組成物をインキ収容筒に充填した油性ボールペンは、公知のボール、チップ、構造を採用することができる。チップ内のボールの後方には、インキ漏れを防止するためのコイルスプリングを配設する必要がないため、筆感の低下が生じにくく、部品点数を減らせることにより製造工程が容易になる。
a)調製例1(参照例); 白色ペースト状のセルロースナノファイバー(原料;パルプ)5%分散液(分散媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、品名「セルフィルムC−100(PM)」、モリマシナリー(株)製)を使用した。
b)調製例2; 調製例1で用いたセルロースナノファイバー5%分散液をベンジルアルコール(BzOH)に分散させ、ホモジナイザー(メーカー:シルバーソン、タイプ:L4RT、ヘッド:各穴ハイシアスクリーン)を使用して、8000rpmで60分間分散処理を行い、HCNF1%分散液を調製した。得られた分散液は乳白色透明であった。
c)調製例3; 調製例1で用いたセルロースナノファイバー5%分散液を2−フェノキシエタノール(Phg)に分散させた以外は、調製例2と同様の高速撹拌処理条件で、HCNF1%分散液を調製した。得られた分散液は乳白色透明であった。
d)調製例4; セルロースナノファイバー(原料;パルプ)5%分散液(分散媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、品名「セルフィルムC−25(PM)」、モリマシナリー(株)製)をベンジルアルコールに分散させ、調製例2と同様の高速撹拌処理条件で、HCNF0.54%分散液を調製した。得られた分散液は乳白色透明であった。
e)調製例5; 調製例4で用いたセルロースナノファイバー5%分散液をベンジルアルコールに分散させ、調製例2と同様の高速撹拌処理条件で、HCNF0.75%分散液を調製した。得られた分散液は乳白色透明であった。
疎水化セルロースナノファイバー分散液を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上へキャストした後、これを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られた画像から10個について、数平均繊維長及び数平均繊維径を算出した。数平均繊維長については倍率150倍で観察を行った画像、数平均繊維径については倍率1000倍で観察を行った画像から算出した。その結果、上記の分散液a)〜c)は、数平均繊維長は約100μm、数平均繊維径は約1μmであり、上記の分散液d)は、数平均繊維長は約25μm、数平均繊維径は約0.8μmであった。
上記で得られた疎水化セルロースナノファイバー分散液b)〜e)を用いて、表1に示す配合組成に従い、油性ボールペン用インキ組成物を調製した。
グリコールエーテル系溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル、SP値:23.4)、疎水性シリカ微粒子(アエロジルR974)をビーズミルに入れ、20〜25℃、5000rpmで2時間運転させて疎水性シリカ微粒子の分散体を得た。更に変性シリコーン化合物を上記分散体中に添加し、ホモミキサーで8000rpm×15分間運転させ、変性シリコーン化合物と疎水性シリカ微粒子のピッカリングエマルション分散体を得た。その後、ベンジルアルコール(SP値:23.7)、疎水化セルロースナノファイバー分散液、染料、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、リン酸エステル界面活性剤、その他成分を添加し、溶解、混合させて、油性ボールペン用インキ組成物を得た。尚、その他成分として、更にグリセリンを、実施例7は1部、実施例8は2部添加した。
疎水化セルロースナノファイバー分散液を用いずに、表1に示す配合組成に従い、油性ボールペン用インキ組成物を調製した。
疎水化セルロースナノファイバー分散液に代えて、有機化合成スメクタイトを用いて、表1に示す配合組成に従い、油性ボールペン用インキ組成物を調製した。
疎水化セルロースナノファイバー分散液に代えて、調製例1に示す、a)疎水化前のセルロースナノファイバー(原料;パルプ)5%分散液(分散媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、品名「セルフィルムC−100(PM)」、モリマシナリー(株)製)を用いて、表1に示す配合組成に従い、油性ボールペン用インキ組成物を調製した。
(*2)エスレックB BM-SZ(積水化学工業(株))
(*3)TEGO VARIPLUS SK(エボニック社)
(*4)AisenSpilon Black GMH special(保土ヶ谷化学工業(株))
(*5)VALIFAST VIOLET 1705(オリエント化学工業(株))
(*6)AisenSpilon Yellow C-GNH new(保土ヶ谷化学工業(株))
次に、上記の実施例1〜9、比較例1〜3及び参照例1〜3で得られた油性ボールペン用インキ組成物について、ポリプロピレン製パイプにインク組成物を充填し、これに内部にスプリングを挿入しないステンレス製チップを装着し、ボールペンの中芯とした。チップ先端のボールは直径0.7mmの超鋼素材ボールを使用した。この中芯を組み込んだノック式の油性ボールペンを作製し、下記評価方法により、書き味及びインキ先漏れ性、カスレ度合いの評価を行った。
これらの結果を表1及び表2に示す。
油性ボールペン用インキ組成物の粘度特性は、レオメータDHR−ETC(TA−インスツルメント社)を用いて測定した。測定冶具:φ40mm パラレルプレート、測定Gap:100μm、測定温度:20℃。
JIS P 3201−1995 に規定される筆記用紙Aを用いて、手書きによる官能試験を行い、その時の書き味の重さ、軽さを評価した。
×;重い、○;軽い、◎;非常に軽い
上記方法で作製した油性ボールペンの形態で、ペン先を下向きとし、40℃60%RH環境下に2週間静置した後のチップ先端からのインキの漏れ出しが有るか、無いかを評価した。
×;あり、○;ややあり、◎;なし
上記方法で作製した油性ボールペンの形態で、螺旋画線機を用いて速度4m/minの条件で、インクが無くなるまでか、筆記ができなくなるまで自動筆記を行い、筆記線の濃さの変化やカスレが無いかを評価した。
×;最後まで筆記できない、○;筆記線の濃度の変化が大きい、◎;筆記線の濃度の変化も無い
一方、疎水化セルロースナノファイバーを配合しない比較例1及び有機化合成スメクタイトを配合した比較例3の組成では、先漏れが発生した。疎水化しないセルロースナノファイバーを配合した参照例1〜3の組成では、最後まで筆記できなかった。
Claims (10)
- 疎水化セルロースナノファイバーを含有することを特徴とする筆記具用油性インキ組成物。
- 前記疎水化セルロースナノファイバーの数平均繊維長が0.1〜100μmである、請求項1に記載の筆記具用油性インキ組成物。
- 前記疎水化セルロースナノファイバーが、セルロースナノファイバーのミクロフィブリル間に、沸点が200〜300℃(760mmHg)である芳香族アルコールを浸透させたものである、請求項1又は2に記載の筆記具用油性インキ組成物。
- 前記芳香族アルコールが、2−フェノキシエタノール又はベンジルアルコールである、請求項3に記載の筆記具用油性インキ組成物。
- 前記疎水化セルロースナノファイバーの含有量が、筆記具用油性インキ組成物全量に対して0.01〜5質量%(固形分)である、請求項1〜4のいずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物。
- さらに、着色剤、有機溶剤及び樹脂を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物。
- 前記有機溶剤が、溶解性パラメータ(SP値)が8〜24(cal/cm3)1/2である、請求項6に記載の筆記具用油性インキ組成物。
- 前記有機溶剤が、少なくともアルコール類及びグリコールエーテル類を含有し、前記アルコール類の有機溶剤全量に対する比率が50質量%以上であり、かつ、該アルコール類がベンジルアルコールで、該グリコールエーテル類がエチレングリコールモノフェニルエーテルである、請求項6又は7に記載の筆記具用油性インキ組成物。
- 前記樹脂が、筆記具用インキ組成物全量に対して0.3〜30質量%である、請求項6〜8のいずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物を充填したインキ収容管を有することを特徴とする筆記具。
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