JP2020015891A - 筆記具用油性インキ組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】筆記具用油性インキでありながら、水性インキのように筆記時のタッチが軽く、先漏れを抑えた筆記具用油性インキ組成物、及びそれを充填したインキ収容管を搭載した筆記具を提供する。【解決手段】数平均繊維長が0.1〜100μmである疎水化セルロースナノファイバーを含有することを特徴とする筆記具用油性インキ組成物、及び該インキ組成物を充填したインキ収容管を有することを特徴とする筆記具である。【選択図】なし

Description

本発明は、筆記具用油性インキ組成物に関し、詳細には、ボールペンやマーキングペンに搭載した際に筆記時のタッチが軽く、ペン先を下向きに長期保管した際の先漏れ(ペン先からのインキの漏れ出し)を抑えることのできる筆記具用油性インキ組成物に関する。
従来、油性ボールペン用インキは、インキの粘性が高いために筆記時のタッチが重いという欠点がある。しかし、粘度を低くすると筆記時のタッチは軽くなるが、インキ収容管にインキを詰めた場合に、チップから先漏れが発生するという問題がある。上記問題を解決するために水性のゲルインキボールペンが開発されており、筆記時のタッチは軽いが、それらは水性であるために、筆記線の滲みや筆記後のインクの裏移り等の問題を抱えている。かかる事情から、粘度を低くして水性ボールペン並の軽い書き味を有する油性ボールペンが要望されている。
先漏れを抑えるために、油性ボールペン用インキ組成物にチクソトロピー性を付与する方法がある。チクソトロピー性付与剤としては、一般的には、天然系、天然物を化学修飾した半合成系、合成系の高分子等がある。
セルロース由来のチクソトロピー性付与剤を用いたインキ組成物としては、天然物由来のセルロース原料を表面酸化し、ナノサイズにまで微細化した酸化セルロースを、0.05〜1.5質量%含有する水性インキ組成物が知られている(特許文献1参照)。この酸化セルロースは、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロースを構成するβ−グルコースのC6位の水酸基を酸化し、アルデヒド基及びカルボキシル基に変性したものをナノサイズにまで微細化した繊維で、数平均繊維径が2〜150nmである。酸化セルロースを増粘剤として使用し、顔料、顔料分散剤等を水に分散させることにより、低粘度でありながら粒子の保存安定性、経時筆記性、描線品位に優れる組成物が得られている。しかし、この酸化セルロースは、一般的な油性インキ用有機溶剤には分散困難であるため油性インキには適用できない。
セルロース由来の増粘剤を用いた油性ボールペン用インキ組成物も知られている。例えば、エチルセルロースを用いた、インキ漏れがなく、軽い書き味が得られ、筆跡のカスレがない組成物(特許文献2)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースに少量の疎水基(長鎖アルキル基)を導入した疎水化ヒドロキシエチルセルロースを用いた、軽くて滑らかな書き味で、筆跡の滲み、裏抜けの少ない組成物(特許文献3)等がある。これらのセルロース誘導体は、セルロースのOH基をエーテル化したものであり、ナノファイバーではない。
疎水化セルロースナノファイバーを用いた筆記具用油性インキ組成物は、これまでのところ知られていない。
特許第6202965号公報 特開2013−203875号公報 特開2008−274144号公報
本発明は、筆記具用油性インキでありながら、水性インキのように筆記時のタッチが軽く、先漏れを抑えた筆記具用油性インキ組成物、及びそれを充填したインキ収容管を搭載した筆記具を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、筆記具用油性インキ組成物に疎水化セルロースナノファイバーを添加することにより、水性ボールペンのような軽いタッチの筆記感があり、先漏れを抑えた組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、疎水化セルロースナノファイバーを含有することを特徴とする筆記具用油性インキ組成物を提供する。
また、本発明は、前記筆記具用油性インキ組成物を充填したインキ収容管を有することを特徴とする筆記具を提供する。
本発明によれば、油性ボールペンに用いた際に水性ボールペンのような使用時の軽い筆記感と先漏れを抑えた、筆記具用油性インキ組成物を提供することができる。筆記時にインキの粘度が減少するため、書き出し時の筆記線のカスレも抑えることができる。
疎水化セルロースナノファイバー分散液の外観写真図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る、使用時の軽い筆記感と先漏れを抑えた、筆記具用油性インキ組成物は、疎水化セルロースナノファイバーを含有することを特徴とする。
本発明で用いる疎水化セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーを疎水化する方法、あるいは、セルロースの疎水化とナノファイバー化を同時に行う方法等により得られるものである。その中でも、セルロースナノファイバーを疎水化する方法が好ましい。セルロースナノファイバーは、リグニンを除去したパルプや木粉等を、水等の水性溶媒中にて、ディスクミル等の湿式粉砕装置を用いて解繊処理した後、高圧ホモジナイザーを用いて解繊処理する方法等により得られることが知られている。セルロースナノファイバーの疎水化は、詳細を後述するが、例えば、セルロースナノファイバー製造時に用いた分散溶媒である水を、両親媒性溶媒で置換した後、両親媒性溶媒に分散させたセルロースナノファイバー分散液に芳香族アルコールを添加し、これらを高速で撹拌処理することにより行うことができる。また、筆記具用油性インキ組成物の調製に際しては、高速撹拌処理された疎水化セルロースナノファイバー分散液を配合するのが良い。これにより、疎水化セルロースナノファイバーが有する優れた効果(油性インキ組成物へのチクソトロピー性付与効果、低ずり状態における増粘効果)が発揮され易い。
本発明の疎水化セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーのミクロフィブリル間に、沸点が200〜300℃(760mmHg)である芳香族アルコールを浸透させたものであり、セルロースナノファイバーを芳香族アルコールに分散させた、無色ないし乳白色の透明分散液として得られる。
高速撹拌処理は、疎水化セルロースナノファイバーの透明分散液が得られるまで、通常、例えば、4000rpm〜8000rpmで30分〜60分間行うことが好ましい。高速撹拌処理時におけるセルロースナノファイバーの固形分濃度は、セルロースナノファイバー種類や処理条件によって異なるが、0.3〜3質量%とすることが好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。前記濃度範囲内であれば、セルロースナノファイバーが芳香族アルコールになじみやすく、また、高速撹拌処理によりセルロースナノファイバーが微細化して分散液が増粘した場合でも、分散液が流動性を失うことがない。セルロースナノファイバーの固形分濃度が3質量%を超える場合は、高速撹拌処理条件によっては分散液が流動性を失い透明分散液を得られなくなる恐れがある。尚、セルロースナノファイバーの固形分濃度は、セルロースナノファイバー分散液から溶媒を除去した残渣を105℃で2時間乾燥した後のセルロースナノファイバー量より、求めることができる。
セルロースナノファイバーの透明分散液を調製する場合、セルロースナノファイバーの粉末、塊、あるいは、ペースト状もしくは液状の分散液(セルロースナノファイバーをあらかじめ、5〜10質量%濃度で両親媒性溶媒に分散させたもの)に、該セルロースナノファイバーに対して、質量比で、30〜200倍の芳香族アルコールを添加するのが良い。より好ましくは50〜100倍である。芳香族アルコールの添加量が少な過ぎると、セルロースナノファイバーの高速撹拌処理が難しくなり、芳香族アルコールの添加量が多過ぎると、溶媒量が増える(即ち、セルロースナノファイバー濃度が低くなる)ことで油性インキ組成物の調製が難しくなる。
両親媒性溶媒は、1つの分子内に親水性部分と疎水性部分を有する溶媒であり、後記の筆記具用油性インキ組成物で用いる有機溶剤の中から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることが好ましく、油性インキ組成物を調製し易いという点からは、グリコールエーテル類、グリコール類、アルコール類がより好ましく、グリコールエーテル類がさらに好ましい。グリコールエーテル類の中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルが特に好ましい。
本発明の疎水化セルロースナノファイバーは、芳香族アルコールとセルロースナノファイバー分散液を配合し、両者を緩やかに均一撹拌した後、高速撹拌処理することが好ましい。これにより、セルロースナノファイバーのミクロフィブリル間に芳香族アルコールが侵入しやすくなることで、安定な透明分散液を得ることができる。撹拌装置としては、インキ調製に通常用いられている撹拌機を使用することができる。例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、ディスパー、プラネタリーミキサー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明では、疎水化セルロースナノファイバーの透明分散液を配合することで、筆記具用油性インキ組成物のチクソトロピー性付与効果、分散安定性向上効果及びカスレ抑制効果がある。インキ組成物に対して前記効果が発現する理由は明らかでないが、次のように推察する。即ち、芳香族アルコール中で高速撹拌処理することにより、セルロースナノファイバーのミクロフィブリル間の凝集力が弱まり、該ミクロフィブリル間に芳香族アルコールが浸透し、セルロースナノファイバーの芳香族アルコールに対する分散性が向上することで、粘稠な透明分散液となる。それを、着色剤、有機溶剤及び樹脂等と配合することで、有機溶剤中に着色剤や樹脂等を安定的に分散あるいは溶解させることができる。
芳香族アルコールは、760mmHgにおける沸点が200〜300℃であると、セルロースナノファイバーを疎水化する際に溶媒が揮発しにくいため、インキ組成物の調製が容易である。該沸点は200〜250℃の範囲であることがより好ましい。また、芳香族アルコールは、水への溶解度が5g/100ml(20℃)以下の水微溶性ないし水難溶性の疎水性溶媒であると、セルロースナノファイバーに対する濡れ性及び浸透性に優れたものとなる。
セルロースナノファイバーのミクロフィブリル間への浸透性を高める観点からは、芳香族アルコールが、セルロースナノファイバーに対して親和性を有することも重要な要素である。かかる観点より、芳香族アルコールの水への溶解度は、0.5〜5g/100ml(20℃)の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜5g/100ml(20℃)である。
芳香族アルコールとしては、例えば、2−フェニルエチルアルコール、2−フェノキシエタノール(別名;フェニルグリコール)、シンナミルアルコール、ベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール(別名;アニシルアルコール)、2−(ベンジルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル及びトリエチレングリコールモノフェニルエーテルを挙げることができ、これらの芳香族アルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。これら芳香族アルコールは、1種を単独で用いても、2種以上を併用しても良い。これら芳香族アルコールの中でも、筆記具用油性インキ組成物中の着色剤及び樹脂の溶解力の観点より、2−フェノキシエタノール及びベンジルアルコールがより好ましく、両親媒性溶媒に対する初期溶解力の観点より、ベンジルアルコールが特に好ましい。これらの芳香族アルコールをセルロースナノファイバー高速撹拌処理時の分散溶媒として用いることで、分散溶媒のセルロースナノファイバーのミクロフィブリル間への浸透性、及び油性インキ組成物に配合する有機溶剤に対する分散性が良好となる。
セルロースナノファイバーを構成する繊維は、木材繊維、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維、葉繊維等の天然植物を含む多糖由来のセルロース繊維のいずれでも良い。
上記の繊維は、脱リグニン等により精製されたセルロース繊維であることが、セルロースナノファイバーの微細化効率及びインキ組成物の分散安定性向上の観点より好ましい。
セルロースナノファイバーは種々の方法で製造できることが知られている。例えば、1)セルロース原料を高圧ホモジナイザーや媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー等により摩砕及び/又は叩解する方法、2)セルロース原料を2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)等のN−オキシル化合物等を触媒として、次亜塩素酸、亜塩素酸あるいはこれらの塩等の酸化剤で酸化しながら機械的に解繊する方法、3)微生物を利用する方法等が挙げられる。1)の方法では、セルロース鎖が物理的に解きほぐされているが、セルロースの化学的変化は生じていない。2)の方法では、セルロースのC6位水酸基がカルボキシル基に酸化されている。本発明の疎水化セルロースナノファイバーは、上記1)〜3)の方法で得られるセルロースナノファイバーを、前記方法で疎水化することにより得ることができる。特に、上記1)の方法で得られるセルロースナノファイバーを原料として用いることが、疎水性(即ち、インキ調製溶剤に対する分散性)の安定保持、及び経済性の点で好ましい。
疎水変性セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーを各種方法で疎水変性することで得られる。例えば、アミノ変性セルロースナノファイバー、アニオン変性セルロースナノファイバー、エステル変性セルロースナノファイバー、エーテル変性セルロースナノファイバー、疎水性モノマーをグラフトしたグラフト化セルロースナノファイバー等が挙げられる。
本発明では、疎水化セルロースナノファイバーを調製する際に、セルロースナノファイバーの替わりに、セルロースの官能基を疎水変性した疎水変性セルロースナノファイバーを、適宜な方法で、2−フェノキシエタノールやベンジルアルコール等の芳香族アルコールに分散させて用いても良い。また、セルロースナノファイバーと疎水変性セルロースナノファイバーを高速撹拌処理等の適宜な方法で混合分散させたものを用いることもできる。
アミノ変性セルロースナノファイバーは、上記2)の方法で得られたセルロースナノファイバーの有機溶媒分散液に、末端にアミノ基を有する平均分子量300以上の直鎖状あるいは分岐状分子(例えば、カチオン変性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド−ポリエチレングリコール共重合体、末端にアミノ基を有するポリプロピレンポリエチレングリコール共重合体)を混合し、機械的な解繊処理を施すことにより得られる(例えば、WO2013/077354号公報、特開2017−19896号公報参照)。
アニオン変性セルロースナノファイバーは、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド等と反応させてカチオン性基が導入されたセルロースナノファイバー(カチオン化度は通常0.01〜0.5)を、アニオン性スチレン樹脂、アニオン性ポリオレフィン樹脂等のアニオン性添加剤で中和する方法等により得られる(例えば、WO2012/124652号公報参照)。
エステル変性及びエーテル変性セルロースナノファイバーは、セルロース中の水酸基の少なくとも一部をエステル化又はエーテル化し疎水変性したものである。例えば、脂環式炭化水素基を有するエステル基によって置換した疎水化セルロースナノファイバー(例えば、特開2014−148629号公報参照)、カルボン酸無水物等でエステル化した疎水化セルロースナノファイバー(例えば、特開2017−171698号公報参照)、有機酸ビニルでエステル交換した疎水化セルロースナノファイバー(例えば、WO2016/010016)、ハロゲン化アルキル等のアルキルエーテルやアルコキシシラン等のシリルエーテルでエーテル化した疎水化セルロースナノファイバー(例えば、特開2017−171698号公報参照)等が開示されている。
グラフト化セルロースナノファイバーは、例えば、セルロースナノファイバーの水酸基の少なくとも一部に、メタクリル酸メチル、ブチルアクリレート等の疎水性モノマーをグラフトした疎水化セルロースナノファイバー(例えば、特開2018−16896号公報参照)等が開示されている。
本発明で用いる疎水化セルロースナノファイバーは、数平均繊維長が0.1〜100μmであり、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜80μm、さらに好ましくは2〜60μm、特に好ましくは3〜50μmである。数平均繊維長が0.1μm以上であれば、インキの増粘効果が得られるようになり、100μm以下であれば、疎水化セルロースナノファイバーがインキ中で沈降するおそれがなく、疎水化セルロースナノファイバーを配合することによる滑らかな書き味を発現することができる。
疎水化セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、好ましくは1nm〜20μm、より好ましくは1nm〜10μm、さらに好ましくは1nm〜5μm、特に好ましくは1nm〜2μm、最も好ましくは30nm〜200nmである。疎水化セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、1nm以上であれば本発明による効果が発現し、20μm以下であればインキ中での分散安定性が著しく低下することがない。
疎水化セルロースナノファイバーは、基本特性として、筆記具用油性インキ組成物に用いられる有機溶剤に均一に分散するものが望ましい。その中から、1種又は2種以上が選択される。分散性の良否は、例えば、視覚による観察(分散液の透明感、ままこ・だまがないこと)、顕微鏡による観察(繊維塊の存否)等で判断することができる。性状や原料のセルロースの種類等が異なる疎水化セルロースを2種以上併用する場合、併用比は任意である。筆記具用油性インキは、低ずり状態(即ち、筆記具不使用時)にあるときはインキ粘度が高く、高ずり状態(即ち、筆記具使用時)にあるときはインキ粘度が低いことが好ましいが、疎水化セルロースナノファイバーを用いることにより、従来のチクソトロピー付与剤を用いた場合に比べて、低添加量で目標とするチクソトロピー特性を得ることができる。
疎水化セルロースナノファイバーは、インキ組成物全量に対して、固形分換算で、0.01〜5質量%(以下、「%」と略記する。)配合することが好ましく、より好ましくは0.02〜3%、さらに好ましくは0.03〜1%である。0.01%以上であれば、インキの増粘効果及びチクソトロピー性付与効果が得られ、5%以下であれば、インキ粘度が著しく増粘することによりインキの吐出不良が発生することがない。
本発明の筆記具用油性インキ組成物は、さらに、着色剤、有機溶剤及び樹脂を含有するものである。前記着色剤が顔料である場合には、さらに分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、公知の顔料分散剤を用いることができ、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。分散剤の含有量は、一般的な量範囲、例えば、インキ組成物全量に対して、1〜20%であって良い。
前記着色剤としては、公知の顔料及び染料を、制限なく用いることができる。顔料としては、無機顔料、有機顔料、加工顔料等を用いることができ、具体的には、カーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。これらの顔料の中でも、本発明のインキ組成物を得るためには、カーボンブラックのような溶媒に分散させ易い顔料が好ましい。
染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料や、それらの各種造塩タイプの染料等を用いることができる。具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストバイオレット1705、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1621、バリファーストレッド1308、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB−B、BASE OF BASIC DYES RO6G−B、BASE OF BASIC DYES VPB−B、BASE OF BASIC DYES VB−B、BASE OF BASIC DYES MVB−3(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンブラックGMH−スペシャル、アイゼンスピロンバイオレットC−RH、アイゼンスピロンブルーGNH、アイゼンスピロンブルー2BNH、アイゼンスピロンブルーC−RH、アイゼンスピロンレッドC−GH、アイゼンスピロンレッドC−BH、アイゼンスピロンイエローC−GNH、アイゼンスピロンイエローC−2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH−スペシャル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー510、S.B.N.イエロー530、S.R.C−BH(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの染料の中でも、本発明のインキ組成物では、発色性に優れている点で造塩染料が好ましく、有機溶剤に溶解させ易い点で油溶性染料が好ましい。
上記の着色剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。着色剤の含有量は、特に制限はなく、着色剤の溶解度や分散性に応じた量、又は、色相や濃度に適した量であれば良い。含有量が多すぎると筆記性能が悪くなり、少なすぎると筆記線の発色が悪くなるので、筆記具用油性インキ組成物全量に対し、1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜40%、特に好ましくは5〜30%である。
本発明の筆記具用油性インキ組成物で用いる有機溶剤としては、疎水化セルロースナノファイバーが均一分散できるものであれば、特に限定はない。
例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル(別名;2−フェノキシエタノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール等のグリコールエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール類;ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパルギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オールやその他の高級アルコール等のアルコール類;フェニルセロソルブ等のセロソルブ類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアセテート類など、油性ボールペン用インキ組成物に一般的に用いられる有機溶剤が例示でき、これらを1種又は2種以上を併用することができる。
有機溶剤は、溶解性パラメータ(SP値)が8〜24(cal/cm1/2 の範囲で選択することが好ましい。SP値はSmall法により求められる値である。溶解性パラメータが8(cal/cm1/2 未満であると、着色剤及び樹脂の溶解不良が発生する。一方、溶解性パラメータが24(cal/cm1/2 より大きいと、疎水化セルロースナノファイバーの分散不良につながる。
本発明のインキ組成物を得るためには、ベンジルアルコールのような疎水化セルロースナノファイバーを分散させ易い有機溶剤(即ち、アルコール類)、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルのような顔料を分散させ易い有機溶剤(即ち、グリコールエーテル類)を用いることが好ましい。あるいは、染料を溶解させ易い有機溶剤を用いることが好ましい。疎水化セルロースナノファイバーの分散安定性をより向上させることができる観点より、アルコール類としてはベンジルアルコールがより好ましく、グリコールエーテル類としてはエチレングリコールモノフェニルエーテルがより好ましい。
また、疎水化セルロースナノファイバーがペースト状あるいは高濃度の分散液で提供される場合は、上記の有機溶剤を添加した後、高速撹拌する等の方法で疎水化セルロースナノファイバーを解繊しできるだけ均一な分散液を調製し、得られた分散液を、インキ組成物に配合することが好ましい。これにより、疎水化セルロースナノファイバーの特性をより発揮させることができる。このような観点より、アルコール類は、有機溶剤全量に対して50%以上用いることが好ましい。
有機溶剤は、疎水化セルロースナノファイバーの分散安定性、着色剤の溶解性、インキの粘度及び筆記線の濃さ等を考慮すると、インキ組成物全量に対し、30〜80%の範囲が好ましく、より好ましくは35〜70%、さらに好ましくは40〜60%の範囲である。有機溶剤は油性インキとしての基本性能を確保するために必要なものであり、着色剤を溶解もしくは分散させるために必要なものである。なお、前記の有機溶剤量には、疎水化セルロースナノファイバーの分散液調製用の有機溶剤(両親媒性溶媒、芳香族アルコール)も含まれる。
本発明の筆記具用油性インキ組成物で用いる樹脂は、それを含有するインキ組成物に、主に低粘性(軽いタッチの書き味)と先漏れ防止効果を付与するために添加される。
樹脂としては、インキ組成物に曳糸性、チクソトロピー性あるいはインク固着性等を付与するものであれば特に限定はない。例えば、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ケトン樹脂等のインキ組成物に添加される公知の樹脂の中から、1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。樹脂としては、疎水化セルロースナノファイバーとの相乗効果が発揮される樹脂が望ましい。また、樹脂は、配合する着色剤の種類に応じて、適宜選択することが望ましい。
樹脂の含有量は、種類によって最適含有量が異なるが、インキ組成物全量に対して、総量で0.3〜30%の範囲とすることが好ましい。樹脂含有量が0.3%以上であれば、先漏れを抑制する効果が得られ、30%以下であれば、インキから経時で析出して溶解不良となる、あるいは、凝集や沈降を起こして分散不良となるおそれがない。より好ましくは、1〜25%、さらに好ましくは、1〜20%の範囲である。
樹脂の中でも、曳糸性に優れている点及び軽い書き味が得られる点では、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコールにブチルアルデヒドを反応させることにより得られる、ビニルブチラール、酢酸ビニル、ビニルアルコールの共重合体である。
ポリビニルブチラール樹脂は、重合度や水酸基量が異なる各種タイプのものを用いることができる。例えば、エスレックBL−1(計算分子量1.9×10、水酸基36mol%)、BL−2(計算分子量2.7×10、水酸基36mol%)、BM−1(計算分子量4.0×10、水酸基34mol%)、BM−2(計算分子量5.2×10、水酸基31mol%)、BM−S(計算分子量5.3×10、水酸基22mol%)、BM−SZ(計算分子量5.3×10、水酸基22mol%)、BH−3(計算分子量11.0×10、水酸基34mol%)、BH−6(計算分子量9.2×10、水酸基30mol%)(以上、積水化学工業(株)製)等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。ポリビニルブチラール樹脂の中でも、分子量が大きい(重合度が高い)樹脂が好ましい。
また、先漏れ防止効果及びインク固着性に優れている点からは、ケトン樹脂、水添ケトン樹脂(ケトン樹脂を後水添した樹脂)が好ましい。これらのケトン樹脂は、各種タイプのものを用いることができる。例えば、TEGO VARIPLUS SK(水添アセトフェノン系ケトン樹脂、水酸基価325mgKOH/g)、TEGO VARIPLUS AP(アセトフェノン系ケトン樹脂、水酸基価5mgKOH/g)(以上、エボニック社製)、ハイラック110H(アセトフェノン系ケトン樹脂、水酸基価275mgKOH/g)、ハイラック111(シクロヘキサノン系ケトン樹脂)、ハイラック222(シクロヘキサノン系ケトン樹脂)、ハイラック901(シクロヘキサノン系ケトン樹脂)(以上、日立化成(株)製)、ハロン80(アセトフェノン系ケトン樹脂)、ハロン110H(水添アセトフェノン系ケトン樹脂)(以上、本州化学工業(株)製)、K−90(シクロヘキサノン系ケトン樹脂)(以上、荒川化学工業(株)製)等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。これらのケトン樹脂の中でも、水酸基価200mgKOH/g以上の樹脂が好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂及び(水添)ケトン樹脂は、其々単独で用いても良いが、それらを併用することにより、書き味、先漏れ防止性において、優れた効果が得られる。ポリビニルブチラール樹脂は、インキ組成物全量に対して、0.5〜5%が好ましく、筆記時のタッチの軽さを考慮すれば、1〜3%がより好ましい。(水添)ケトン樹脂は、インキ組成物全量に対して、3〜25%が好ましく、筆記時のタッチの軽さを考慮すれば、5〜20%がより好ましい。
本発明の筆記具用油性インキ組成物では、その他のチクソトロピー性付与剤として、例えば、長鎖脂肪酸エステル重合体、水添ヒマシ油、高級脂肪酸アマイド及びその誘導体、硫酸エステル系アニオン活性剤等の有機化合物;有機ベントナイト、シリカ等の無機化合物;酸化ポリエチレン、アクリル系ポリマー、ビニルアセトアミドポリマー等の高分子化合物を、本発明による効果を阻害しない限度で含有することができ、1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
本発明の筆記具用油性インキ組成物においては、着色剤の経時安定性や潤滑性を向上させるために、有機酸、有機アミンなどのpH調整剤;オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、リシノール酸、ラウリン酸、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤などの界面活性剤;着色剤安定剤;可塑剤;キレート剤などを適宜配合してもよい。これらの添加剤は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。これらの添加剤は、インキ組成物全量に対し、それぞれ0.05〜3%の範囲とすることが好ましい。
本発明の筆記具用油性インキ組成物は、疎水化セルロースナノファイバー、着色剤、有機溶剤、樹脂及びその他の添加剤を、公知の方法・装置により均一に混合することにより調製できる。望ましい調製方法は、疎水化セルロースナノファイバー、着色剤、有機溶剤及び樹脂を混合撹拌する工程を含み、該疎水化セルロースナノファイバーとして、セルロースナノファイバーを沸点が200〜300℃(760mmHg)である芳香族アルコール中で高速撹拌処理することにより、該芳香族アルコールをセルロースナノファイバーのミクロフィブリル間に浸透させた状態にある分散液を用いる方法である。疎水化セルロースナノファイバーを有機溶剤中に分散させた分散液を配合すること、及び、顔料及び分散剤を用いる場合は顔料を分散剤で分散させた分散液を配合することが好ましく、これにより、安定性に優れる組成物を得ることができる。
本発明の筆記具用油性インキ組成物は、水性ボールペンのような使用時の軽い筆記感を得るとともに、先漏れのないインキ組成物にするための好ましいインキ粘度は、20℃、せん断速度5sec−1において1200〜8000mPa・sであり、かつ20℃、せん断速度10000sec−1において100〜1500mPa・sである。20℃、せん断速度5sec−1においてインキ粘度が1200mPa・sよりも低い場合は、耐先漏れ性が劣る傾向があり、インキ粘度が8000mPa・sよりも高い場合は、書き出し時のカスレが発生しやすくなる。20℃、せん断速度10000sec−1においてインキ粘度が100mPa・sよりも低い場合は、インクがにじみやすくなる傾向があり、インキ粘度が1500mPa・sよりも高い場合は、軽い書き味が得られ難くなる。より好ましいインキ粘度は、20℃、せん断速度5sec−1において2000〜5000mPa・sであり、かつ20℃、せん断速度10000sec−1において300〜1200mPa・sである。
本発明の筆記具用油性インキ組成物は、ボールペンやマーキングペンのインキ収容筒(リフィル)に特に制限なく充填することができる。ボールペンやマーキングペンの構造は特に限定されず、軸筒自体をインク収容筒として該軸筒内に、当該筆記具用インキ組成物を充填した構造を備えた直液式のボールペンやマーキングペンであっても良い。
本発明の筆記具用油性インキ組成物をインキ収容筒に充填した油性ボールペンは、公知のボール、チップ、構造を採用することができる。チップ内のボールの後方には、インキ漏れを防止するためのコイルスプリングを配設する必要がないため、筆感の低下が生じにくく、部品点数を減らせることにより製造工程が容易になる。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[疎水化セルロースナノファイバー(HCNF)の調製]
a)調製例1(参照例); 白色ペースト状のセルロースナノファイバー(原料;パルプ)5%分散液(分散媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、品名「セルフィルムC−100(PM)」、モリマシナリー(株)製)を使用した。
b)調製例2; 調製例1で用いたセルロースナノファイバー5%分散液をベンジルアルコール(BzOH)に分散させ、ホモジナイザー(メーカー:シルバーソン、タイプ:L4RT、ヘッド:各穴ハイシアスクリーン)を使用して、8000rpmで60分間分散処理を行い、HCNF1%分散液を調製した。得られた分散液は乳白色透明であった。
c)調製例3; 調製例1で用いたセルロースナノファイバー5%分散液を2−フェノキシエタノール(Phg)に分散させた以外は、調製例2と同様の高速撹拌処理条件で、HCNF1%分散液を調製した。得られた分散液は乳白色透明であった。
d)調製例4; セルロースナノファイバー(原料;パルプ)5%分散液(分散媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、品名「セルフィルムC−25(PM)」、モリマシナリー(株)製)をベンジルアルコールに分散させ、調製例2と同様の高速撹拌処理条件で、HCNF0.54%分散液を調製した。得られた分散液は乳白色透明であった。
e)調製例5; 調製例4で用いたセルロースナノファイバー5%分散液をベンジルアルコールに分散させ、調製例2と同様の高速撹拌処理条件で、HCNF0.75%分散液を調製した。得られた分散液は乳白色透明であった。
調製例4で調製した疎水化セルロースナノファイバー分散液の外観写真図を、白色ペースト状の調製例1(参照例)と対比して図1に示す。
[疎水化セルロースナノファイバー(HCNF)の数平均繊維径及び数平均繊維長]
疎水化セルロースナノファイバー分散液を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上へキャストした後、これを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られた画像から10個について、数平均繊維長及び数平均繊維径を算出した。数平均繊維長については倍率150倍で観察を行った画像、数平均繊維径については倍率1000倍で観察を行った画像から算出した。その結果、上記の分散液a)〜c)は、数平均繊維長は約100μm、数平均繊維径は約1μmであり、上記の分散液d)は、数平均繊維長は約25μm、数平均繊維径は約0.8μmであった。
(実施例1〜9)
上記で得られた疎水化セルロースナノファイバー分散液b)〜e)を用いて、表1に示す配合組成に従い、油性ボールペン用インキ組成物を調製した。
グリコールエーテル系溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル、SP値:23.4)、疎水性シリカ微粒子(アエロジルR974)をビーズミルに入れ、20〜25℃、5000rpmで2時間運転させて疎水性シリカ微粒子の分散体を得た。更に変性シリコーン化合物を上記分散体中に添加し、ホモミキサーで8000rpm×15分間運転させ、変性シリコーン化合物と疎水性シリカ微粒子のピッカリングエマルション分散体を得た。その後、ベンジルアルコール(SP値:23.7)、疎水化セルロースナノファイバー分散液、染料、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、リン酸エステル界面活性剤、その他成分を添加し、溶解、混合させて、油性ボールペン用インキ組成物を得た。尚、その他成分として、更にグリセリンを、実施例7は1部、実施例8は2部添加した。
(比較例1)
疎水化セルロースナノファイバー分散液を用いずに、表1に示す配合組成に従い、油性ボールペン用インキ組成物を調製した。
(比較例2、3)
疎水化セルロースナノファイバー分散液に代えて、有機化合成スメクタイトを用いて、表1に示す配合組成に従い、油性ボールペン用インキ組成物を調製した。
(参照例1、2、3)
疎水化セルロースナノファイバー分散液に代えて、調製例1に示す、a)疎水化前のセルロースナノファイバー(原料;パルプ)5%分散液(分散媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、品名「セルフィルムC−100(PM)」、モリマシナリー(株)製)を用いて、表1に示す配合組成に従い、油性ボールペン用インキ組成物を調製した。
(*1)アエロジルR974(日本アエロジル(株))
(*2)エスレックB BM-SZ(積水化学工業(株))
(*3)TEGO VARIPLUS SK(エボニック社)

(*4)AisenSpilon Black GMH special(保土ヶ谷化学工業(株))
(*5)VALIFAST VIOLET 1705(オリエント化学工業(株))
(*6)AisenSpilon Yellow C-GNH new(保土ヶ谷化学工業(株))
上記の実施例1〜9、比較例1〜3及び参照例1〜3で得られた油性ボールペン用インキ組成物について、下記方法で粘度特性を評価した。
次に、上記の実施例1〜9、比較例1〜3及び参照例1〜3で得られた油性ボールペン用インキ組成物について、ポリプロピレン製パイプにインク組成物を充填し、これに内部にスプリングを挿入しないステンレス製チップを装着し、ボールペンの中芯とした。チップ先端のボールは直径0.7mmの超鋼素材ボールを使用した。この中芯を組み込んだノック式の油性ボールペンを作製し、下記評価方法により、書き味及びインキ先漏れ性、カスレ度合いの評価を行った。
これらの結果を表1及び表2に示す。
[粘度特性]
油性ボールペン用インキ組成物の粘度特性は、レオメータDHR−ETC(TA−インスツルメント社)を用いて測定した。測定冶具:φ40mm パラレルプレート、測定Gap:100μm、測定温度:20℃。
[書き味試験]
JIS P 3201−1995 に規定される筆記用紙Aを用いて、手書きによる官能試験を行い、その時の書き味の重さ、軽さを評価した。
×;重い、○;軽い、◎;非常に軽い
[先漏れ試験]
上記方法で作製した油性ボールペンの形態で、ペン先を下向きとし、40℃60%RH環境下に2週間静置した後のチップ先端からのインキの漏れ出しが有るか、無いかを評価した。
×;あり、○;ややあり、◎;なし
[筆記線のカスレ度合い試験]
上記方法で作製した油性ボールペンの形態で、螺旋画線機を用いて速度4m/minの条件で、インクが無くなるまでか、筆記ができなくなるまで自動筆記を行い、筆記線の濃さの変化やカスレが無いかを評価した。
×;最後まで筆記できない、○;筆記線の濃度の変化が大きい、◎;筆記線の濃度の変化も無い
表1及び表2より、疎水化セルロースナノファイバー(HCNF)を配合した実施例の筆記具用油性インキ組成物は、書き味及び耐先漏れ性が良好であった。中でもHCNF/ベンジルアルコール分散液を添加したインキ組成物が良好であった。数平均繊維長が短いHCNFの添加により、インキ組成物のチクソトロピー性、主に低ずり状態における増粘効果が向上することが分かる。
一方、疎水化セルロースナノファイバーを配合しない比較例1及び有機化合成スメクタイトを配合した比較例3の組成では、先漏れが発生した。疎水化しないセルロースナノファイバーを配合した参照例1〜3の組成では、最後まで筆記できなかった。
本発明の筆記具用油性インキ組成物を、キャップ式やノック式のボールペン、マーキングペン(特に直液式マーキングペン)に用いることにより、水性ペンのような使用時の軽い筆記感を有するとともに、先漏れのない筆記具を提供することができる。

Claims (10)

  1. 疎水化セルロースナノファイバーを含有することを特徴とする筆記具用油性インキ組成物。
  2. 前記疎水化セルロースナノファイバーの数平均繊維長が0.1〜100μmである、請求項1に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  3. 前記疎水化セルロースナノファイバーが、セルロースナノファイバーのミクロフィブリル間に、沸点が200〜300℃(760mmHg)である芳香族アルコールを浸透させたものである、請求項1又は2に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  4. 前記芳香族アルコールが、2−フェノキシエタノール又はベンジルアルコールである、請求項3に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  5. 前記疎水化セルロースナノファイバーの含有量が、筆記具用油性インキ組成物全量に対して0.01〜5質量%(固形分)である、請求項1〜4のいずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物。
  6. さらに、着色剤、有機溶剤及び樹脂を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物。
  7. 前記有機溶剤が、溶解性パラメータ(SP値)が8〜24(cal/cm1/2である、請求項6に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  8. 前記有機溶剤が、少なくともアルコール類及びグリコールエーテル類を含有し、前記アルコール類の有機溶剤全量に対する比率が50質量%以上であり、かつ、該アルコール類がベンジルアルコールで、該グリコールエーテル類がエチレングリコールモノフェニルエーテルである、請求項6又は7に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  9. 前記樹脂が、筆記具用インキ組成物全量に対して0.3〜30質量%である、請求項6〜8のいずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物を充填したインキ収容管を有することを特徴とする筆記具。
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