JP2021187642A - ウェブの搬送装置、ローラーの振動モード特定方法、および搬送系の固有振動数変更方法。 - Google Patents

ウェブの搬送装置、ローラーの振動モード特定方法、および搬送系の固有振動数変更方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】高調波共振を早期に発見し、多角形化現象の発生を未然に防ぐことができる、ウェブの搬送装置およびローラーの振動モード特定方法を提供する。【解決手段】本発明のウェブの搬送装置は、ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーと、2本のローラーのそれぞれの表面の長手方向中央の位置を、それぞれ測定する振動測定器と、振動測定器が測定する振動データから、2本のローラーの振動モードを特定する演算器と、を有する。【選択図】図24

Description

本発明はウェブの搬送装置、ローラーの振動モード特定方法、および搬送系の固有振動数変更方法に関する。
紙やプラスチックフィルムなどのウェブを搬送する装置の中には、上流側と下流側の張力を分断するテンションカットや、ウェブの厚み制御や、ウェブに表面処理を施す際の随伴流の遮断などを目的として、2本のローラーを用いてウェブを挟持しつつウェブを搬送する装置が多数存在する。製紙業界では抄紙機のプレスローラー、鉄鋼業界では圧延ローラー、フィルム製膜業界ではコロナ処理装置のニップローラーなどがある。
上記のような2本のローラーを用いてウェブを挟持しながら搬送するウェブの搬送装置では、特定の条件下にてローラーの回転周波数と、装置を構成する搬送系の固有振動数が一致、もしくは近づいた際に共振が発生し、装置を構成するローラーが振動することが知られている。共振により振動が増大すると、ウェブの加工不良や機械の故障につながる。
このような問題に対し、特許文献1では、ローラーの振れ速度を連続的に測定し、予め定めている基準値と比較して共振の発生有無を判断し、共振の検知後にローラーに被覆されている被覆の温度を変化させることで搬送装置の固有振動数を制御し、振動を抑制する技術が提案されている。
特開平9−176982号公報
しかしながら、長尺のローラーを有する搬送装置において特殊な共振現象が発生し、その影響で多角形化現象と呼ばれるローラーの表面が周期的に変形や摩耗する現象が生じており、この課題に対しては特許文献1の技術を適用しても解決できないことが分かった。
長尺のローラーが回転すると、自身のアンバランスによって高調波と呼ばれる回転周波数の整数倍の振動成分が発生することが知られており、高調波が搬送系の固有振動数と共振する現象を高調波共振という。
高調波共振が発生すると、上記の通りローラーが1回転する間に複数回の振動が発生し、対面するもう一方のローラーと打ち付け合うことで、多角形化現象を引き起こす。ひとたび多角形化現象が発生するとローラーの表面起伏はより顕著化し、振動は増加の一途を辿る。従って多角形化現象を防止するためには高調波共振を早期発見し、回避することが重要となる。さらに、高調波共振の発生を検出するためには、振動モードと呼ばれるローラーの振動状態を特定する必要がある。
しかしながら、特許文献1の技術は単にローラーの振れ速度を測定するのみであり、多角形化現象につながる振動モードの特定はできない。
そこで本発明は、上記課題を解決し、高調波共振を早期に発見し、多角形化現象の発生を未然に防ぐことができる、ウェブの搬送装置およびローラーの振動モード特定方法を提供する。
[1]上記課題を解決する本発明のウェブの搬送装置は、
ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーと、
上記2本のローラーのそれぞれの表面の長手方向中央の位置を、それぞれ測定する振動測定器と、
上記振動測定器が測定する振動データから、上記2本のローラーの振動モードを特定する演算器と、を有する。
[2]上記課題を解決する本発明の別態様のウェブの搬送装置は、ウェブを搬送する搬送装置であって、
ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーと、
上記2本のローラーのそれぞれ表面の、ローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2および3/4の位置を、それぞれ測定する振動測定器と、
上記振動測定器が測定する振動データから、上記2本のローラーの振動モードを特定する演算器と、を有する。
[3]上記課題を解決する本発明の別態様のウェブの搬送装置は、ウェブを搬送する搬送装置であって、ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラー、ならびにこれら2本のローラーのうちの一方のローラーとウェブの搬送中にウェブを挟持せずに接触するローラーと、
上記ウェブを挟持せずに接触する2本のローラーのそれぞれの表面の、長手方向中央の位置の振動を、それぞれ測定する振動測定器と、
上記振動測定器が測定する振動データから、上記ウェブを挟持せずに接触する2本のローラーの振動モードを特定する演算器と、を有する。
[4]上記課題を解決する本発明の別態様のウェブの搬送装置は、ウェブを搬送する搬送装置であって、
ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラー、ならびにこれら2本のローラーのうちの一方のローラーとウェブの搬送中にウェブを挟持せずに接触するローラーと、
上記ウェブを挟持せずに接触する2本のローラーのそれぞれの表面の、ローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2および3/4の位置の振動を、それぞれ測定する振動測定器と、
上記振動測定器が測定する振動データから、上記ウェブを挟持せずに接触する2本のローラーの振動モードを特定する演算器と、を有する。
[5]本発明のウェブの搬送装置は、上記ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーと、これら2本のローラーを回転可能に支持する支持体とで少なくとも構成された構成単位を搬送系とし、上記搬送系全体の固有振動数を変更できる固有振動可変手段を有することが好ましい。
[6]上記課題を解決する本発明のローラーの振動モードを特定する方法は、ウェブを挟持しながら搬送している2本のローラーのそれぞれの表面の、長手方向中央の位置の振動を測定したそれぞれの振動データから、これら2本のローラーの振動モードを特定する。
[7]上記課題を解決する本発明のローラーの振動モードを特定する別の方法は、ウェブを挟持しながら搬送している2本のローラーのそれぞれの表面の、ローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2および3/4の位置の振動を測定したそれぞれの振動データから、これら2本のローラーの振動モードを特定する。
[8]上記課題を解決する本発明のローラーの振動モードを特定する別の方法は、ウェブを挟持しながら搬送している2本のローラーのうちの一方のローラー、およびこの一方のローラーとウェブを挟持せずに接触しているローラーのそれぞれ表面の、長手方向中央の位置の振動を測定したそれぞれの振動データから、これらウェブを挟持せずに接触している2本のローラーの振動モードを特定する。
[9]上記課題を解決する本発明のローラーの振動モードを特定する別の方法は、ウェブを挟持しながら搬送している2本のローラーのうちの一方のローラー、およびこの一方のローラーとウェブを挟持せずに接触しているローラーのそれぞれ表面の、ローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2および3/4の位置の振動を測定したそれぞれの振動データから、これらウェブを挟持せずに接触している2本のローラーの振動モードを特定する。
[10]上記課題を解決する本発明の搬送系の固有振動数変更方法は、上記ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーと、これら2本のローラーを回転可能に支持する支持体とで少なくとも構成された構成単位を搬送系とし、本発明のローラーの振動モード特定方法によりローラーが振動していることが判明した際に、上記搬送系の全体の固有振動数を変更する。
[11]本発明の搬送系の固有振動数変更方法は、上記搬送系の固有振動数をω/2[Hz]分変更することが好ましい。
ただし、
ω=V/(D・π)
ω:振動データを取得したいずれか1つのローラーの回転周波数[Hz]
V:ウェブの搬送速度[m/sec]
D:振動データを取得したいずれか1つのローラーの直径[m]。
[用語の説明]
次に、本発明における各用語の意味を説明する。
「ウェブ」とは、紙、布、プラスチックフィルム、金属箔、薄鋼板など、長尺な薄肉部材をいう。特に材質は問わない。
「搬送装置」とは、ウェブを長手方向の上流から下流へと送る装置をいう。本明細書では、特にウェブを挟持する少なくとも2本のローラーと、それらに接するローラー群までを1つの搬送装置とする。
「振動測定器」とは、本明細書では特にローラー表面のローラー半径方向の変位を測定する機器をいう。一般的にはレーザー変位計などをいう。
「振動モード」とは、振動の状態、形態であり、本明細書では特に、特定の周波数にて発生するローラーや搬送系の振動状態のことをいう。
「演算器」とは、振動の変位データを解析し、共振の発生有無や、振動モードを特定する機器をいう。
「搬送系」とは、ウェブを挟持する2本のローラーと、これら2本のローラーを回転可能に支持する支持体とで少なくとも構成された構成単位をいう。
「固有振動数」とは、物質や系に固有に存在する共振周波数をいう。固有振動数は物質や系に複数存在し、各固有振動数にて共振が発生し、振動する状態や形態を振動モードという。
本発明によれば、ウェブを挟持する2本のローラーのそれぞれの振動を測定し、またはウェブを挟持せずに接触する2本のローラーのそれぞれの振動を測定し、測定した振動データを演算し振動モードを特定することで、多角形化現象につながる高調波共振の発生を早期に検出することができる。
本発明のウェブの搬送装置の一実施形態を示す概略側面図である。 本発明のウェブの搬送装置の一実施形態で、ニップが開いている状態を示す概略側面図である。 一般的なウェブの搬送装置に発生する高調波の概念図である。 一般的なウェブの搬送装置にてニップローラー単体1次の振動モードで共振が発生した概念図である。 一般的なウェブの搬送装置にて受けローラー単体の1次の振動モードで共振が発生した概念図である。 一般的なウェブの搬送装置にてニップ系同位相1次の振動モードで共振が発生した概念図である。 一般的なウェブの搬送装置にてニップ系逆位相1次の振動モードで共振が発生した概念図である。 一般的なウェブの搬送装置にてニップローラー単体2次の振動モードで共振が発生した概念図である。 一般的なウェブの搬送装置にてニップローラー単体3次の振動モードで共振が発生した概念図である。 一般的なウェブの搬送装置に発生する加振源とウェブの搬送装置の固有振動数の関係を示す概念図である。 本発明のローラーの振動モードの特定方法の一実施形態を示すフローチャートである。 一般的なウェブの搬送装置の振動を測定した結果の概念図である。 図12に示したウェブの搬送装置のニップローラーの振動データを周波数解析した概念図である。 図12に示したウェブの搬送装置の受けローラーの振動データを周波数解析した概念図である。 図13と図14の周波数解析結果を合わせて示した概念図である。 図15に示す周波数成分の内、同一または近傍の周波数成分を抽出して示した概念図である。 図16にて抽出した周波数成分に対して逆フーリエ変換を行った概念図の一例である。 図16にて抽出した周波数成分に対して逆フーリエ変換を行った概念図の別の一例である。 従来技術のウェブの搬送装置の一実施形態を示す概略側面図である。 従来技術のウェブの搬送装置に発生する回転周波数と高調波を、速度と周波数との関係で示す概念図である。 従来技術のウェブの搬送装置に発生する回転周波数と高調波を、速度と周波数との関係で示す概念図の別の形態である。 一般的なウェブの搬送装置に発生する高調波の概念図の別の形態である。 本発明のウェブの搬送装置の一実施形態を示す概略側面図である。 本発明のウェブの搬送装置の一実施形態を示す概略俯瞰図である。 一般的なウェブの搬送装置にてニップ系逆位相2次の振動モードで共振が発生した概念図である。 本発明のウェブの搬送装置の別の一実施形態を示す概略俯瞰図である。 本発明のウェブの搬送装置に発生する回転周波数と高調波を、速度と周波数との関係で示す概念図である。 本発明のウェブの搬送装置に発生する回転周波数と高調波を、速度と周波数との関係で示す概念図の別の形態である。 本発明のウェブの搬送装置の別の一実施形態を示す概略側面図である。 本発明のウェブの搬送装置の別の一実施形態を示す概略側面図である。 本発明のウェブの搬送装置の別の一実施形態を示す概略側面図である。 一般的なウェブの搬送装置に発生する回転周波数と高調波を、速度と周波数との関係で示す概念図である。 実施例1のウェブの搬送装置を示す概略側面図である。 比較例1のウェブの搬送装置に発生する回転周波数と高調波を、速度と周波数との関係で示す概念図である。 実施例1のウェブの搬送装置に発生する回転周波数と高調波を、速度と周波数との関係で示す概念図である。 比較例2のウェブの搬送装置に発生する回転周波数と高調波を、速度と周波数との関係で示す概念図である 実施例2のウェブの搬送装置に発生する回転周波数と高調波を、速度と周波数との関係で示す概念図である
以下、本発明のウェブの搬送装置、ローラーの振動モード特定方法、ならびに搬送系の固有振動数変更方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
図1に本発明のウェブの搬送装置の一実施形態の概略側面図を示す。なお、図1では主要部のみを示し、ローラーやシリンダー4などを固定するフレームは省略している。
図1のウェブの搬送装置はニップローラー1と受けローラー2から構成されている。受けローラー2は軸受け7がフレームに回転可能な状態で固定されており、ニップローラー1は軸部が回転可能なアーム5で支持されている。また、振動測定器13が両ローラーの長手方向中央に設置されており、測定データを演算し、振動モードを特定する演算器20が設置されている。また、図2に示すようにニップローラー1のアーム5に取り付けられているシリンダー4の切り替えによってニップの開閉が可能となっている。
ニップローラー1や受けローラー2の芯金の材質は特に限定されないが、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの金属材料や、強化材に炭素繊維、母材に樹脂を用いた炭素繊維複合材料などを適宜用いることができる。
ニップローラー1や受けローラー2の被覆の材質も特に限定されないが、ウェブ6の厚みムラやローラー表面の製作精度の影響を抑制するため、ゴム3で被覆されていても良い。ゴム3の種類は特に限定されないが、例えば天然ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、およびこれらの混合物より使用目的、使用環境により適宜用いることが出来る。さらに、ローラー同士のたわみの差の影響を低減するため、ゴム3の外径を中央部から端部に向かって漸減させる、いわゆるクラウン形状としても良い。また、単層であっても、2層や3層といった多層であってもよい。
ニップローラー1や受けローラー2の構造も特に限定されないが、中実の円柱形や、中空の円筒形の芯金を有する単軸構造、また、外側に円筒形の芯金、内側に中実の円柱形や中空の円筒形の芯金を有する二重管構造などを適宜用いることができる。また、芯金は一体成型でできていても良いし、複数の芯金を繋げた、いわゆるつなぎ構造であってもよい。また、内部に熱媒を流通させる流路を有し、表面温度を制御することができる構造のものを用いてもよい。
ニップローラー1の作動機構は特に限定されないが、例えば作動流体に空気を用いるエアーシリンダーや、油を用いるオイルシリンダー、1次側と2次側にそれぞれ空気と油を用いるエアハイドロシリンダー、電磁石を用いたリニアモーターシステムなどを適宜用いることができる。この内、空気圧の簡便性と、油圧の減衰能力を利用するエアハイドロシリンダーを好ましく用いることができる。
搬送するウェブ6の種類は特に限定されないが、例えば、紙、布、プラスチックフィルム、金属箔、薄鋼板などが対象となる。特にプラスチックフィルムでは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ナイロン、アラミド、ポリエチレンなどに用いることができる。また、これらの共重合体やポリマーアロイにも用いることができる。ここでいうポリマーアロイとは高分子多成分系のことで、共重合によるブロックコポリマーや、混合などによるポリマーブレンドである。
振動の測定方法は特に限定されないが、変位を直接測定する方法では、接触式ではトランス方式、スケール方式の振動測定器などを適宜用いることができ、非接触式では光学式、渦電流式、超音波式、レーザーフォーカス式の振動測定器などを適宜用いることができる。また、圧電式の加速度センサを用いて測定した加速度から変位を演算する方法も適宜用いることができる。この内、ローラーやウェブへの傷の発生の無い非接触式であり、かつ焦点距離が長く、精度の高いレーザーフォーカス式の変位計を好ましく用いることができる。
ここで、ローラーが回転した際に発生する高調波について説明する。長尺のローラーが回転すると、ローラーを構成する芯金、被覆、軸などの加工精度や組立精度からなるアンバランス成分や、軸受け、アーム、シリンダーなどのローラーを支持する部品やモーター、べルト、カップリングなどのローラーを駆動する機器から伝達される振動によって、ローラーが1回転する間にその整数倍の周波数の振動が発生することが知られており、この整数倍の振動成分を高調波と呼ぶ。図3に一般的なウェブの搬送装置に発生する高調波の概念図を示す。図3に示すように、振動成分は回転周波数の強度が最も強く、高調波は次数が上がるほど強度が弱まる特徴がある。
ここで、多角形化現象について説明する。搬送系に高調波共振が発生することで、ゴムローラーや金属ローラー、糸玉などの回転体の表面に正弦的に一定周期で変形や摩耗が発生する多角形化現象が発生することが知られている。製紙業界では抄紙工程のプレスローラー、製鉄業界では圧延工程のプレートの形状不良を矯正するホットレベラローラー、製糸業界では巻取工程で巻き取った糸玉、フィルム製膜業界ではコロナ処理工程のニップローラーなどが知られている。多角形化現象で発生する表面起伏の数を本発明では便宜上角数と呼ぶ。また、多角形化現象の角数は搬送系によって異なり、例えば、製紙業界の抄紙工程のプレスローラーは6〜9角形、製鉄業界の圧延工程のホットレベラローラーは35〜60角形、製糸業界の糸玉では2〜3角形、フィルム製膜業界のニップローラーは6〜13角形化が報告されている。これら多角形化現象の角数は、加振源となった回転体の高調波の次数と一致する。
ここで、一般的な2本のローラーからなるウェブの搬送装置に発生する振動モードと次数について説明する。ニップローラーと受けローラーからなるウェブの搬送装置では大きく4つの振動モードが発現する。
1つ目は、図4に示すように、ニップローラー単体に振動が発生する振動モードである。
2つ目は、図5に示すように、受けローラー単体に振動が発生する振動モードである。
3つ目は、図6に示すように、2本のローラー両方が同時に振動し、かつ同じ方向に振動する、ニップ系同位相の振動モードである。
4つ目は、図7に示すように、2本のローラー両方が同時に振動し、かつ互いに反対方向に振動する、ニップ系逆位相の振動モードである。
さらに、各振動モードには次数が存在する。振動モードの次数とは、両端固定端の場合は両端を節とした振動を1次とし、節が1つ増える毎に1つずつ上昇する振動の状態を示す。なお、図4〜図7の次数は1次に該当する。また、参考として図8、図9にニップローラー1単体に2次、3次の振動モードが発生した際の概念図をそれぞれ示す。
ここで、一般的なウェブの搬送装置に発生し得る共振について説明する。一般に共振とは、振動の発生源である加振源と、物体の固有振動数が一致、もしくは近づいた際に振動が増大する現象のことをいう。ニップローラーと受けローラーを有するウェブの搬送系の場合、図10に示すように、加振源はニップローラーの回転周波数とその高調波や、受けローラーの回転周波数とその高調波が該当する。また固有振動数は、ニップローラー単体の各次数の振動モードの固有振動数、受けローラー単体の各次数の振動モードの固有振動数、ニップ系同位相の各次数の振動モードの固有振動数、ニップ系逆位相の各次数の振動モードの固有振動数が該当する。これら各加振源と各固有振動数のいずれかが一致、もしくは近づいた際に共振現象が発生する。従って、複数のローラーを有するウェブの搬送装置では加振源、固有振動数がそれぞれ複数存在するため共振が発生する可能性が高い。
振動モードの判定方法は特に限定されないが、例えばニップローラーと受けローラーの2本のローラーからなる搬送系の場合、各測定位置でのローラーの振れの測定結果の情報を用い、図11に示すフローチャートを用いて判定することができる。なお、図11では4種類の振動モードについてそれぞれ2次の次数までの振動モードの判定フローを示す。
ニップ系同位相の振動モードとニップ系逆位相の振動モードの判定方法は特に限定されないが、例えば以下の方法を用いることができる。まず、図12のように測定した各ローラーの振動データを図13、図14に示すようにフーリエ変換を行い、周波数解析を行う。次に、図15に示すように得られた周波数解析結果を比較し、各解析結果にて同一または近傍の周波数成分の存在有無を確認する。同一または近傍の周波数成分が無ければニップ系同位相もしくはニップ系逆位相の振動モードの共振の発生は無いと判断する。また、同一または近傍の周波数成分が存在した場合はニップ系同位相もしくはニップ系逆位相の振動モードの共振が発生したと判断し、図16に示すように同一または近傍の各周波数成分のみ抽出し、逆フーリエ変換により振動データに再変換する。この時、ニップローラーと受けローラー両方に同一または近傍の周波数成分が複数存在した場合は、ニップローラーと受けローラーの周波数成分の差が最も小さいものを解析対象とする。得られた各ローラーの波形を比較し、図17に示すようにニップローラーと受けローラーの波形の位相が同じであればニップ系同位相の振動モード、図18に示すようにニップローラーと受けローラーの波形の位相が反対であればニップ系逆位相の振動モードと判定する。
振動モードを特定する演算器20は特に限定されないが、前述した通り測定した振動データに対して周波数解析を行い、得られた解析データを比較し、予め設定していた判定フローを基に振動モードを特定する機能を有する物を好ましく用いることができる。演算器20のハードウェアは特に限定されないが、例えば、CPU、RAM、ROM、および各種のインターフェースを備える情報処理装置、または専用のハードウェアを用いることにより実現される。また、ローラーに設置した振動測定器13から振動データの伝達ライン21の通信の形態は、有線通信であっても無線通信であってもよい。
ここで、特許文献1の技術を想定し、従来技術の振動検出技術で分かることを説明する。図19に、従来技術の一実施形態として、ニップローラー1と受けローラー2を有するウェブの搬送装置に対してニップローラー1の長手方向中央に振動測定器13を設置した概略側面図を示す。図19では、振動の測定箇所であるニップローラー1の中央が振れる奇数次の振動モードでの共振を検出可能である。具体的には、ニップローラー1単体1次、3次、受けニップ系同位相1次、3次、ニップ系逆位相1次、3次などの振動モードである。また、受けローラー2単体1次や3次の振動モードにて共振が発生した際も、受けローラー2の振動がニップローラー1へ伝わり、ニップローラー1に設置した変位計にて共振を検出可能な場合もある。
一方で図19の場合、ニップローラー1の長手方向中央に変位が生じない偶数次の振動モードの共振は検出できない場合がある。具体的には、ニップローラー1単体2次、4次、受けローラー2単体2次、4次、ニップ系同位相2次、4次、ニップ系逆位相2次、4次などの振動モードである。これら偶数次の振動モードで共振が発生した際も多角形化現象は発生するため、奇数次の振動モードと同様に検出することが好ましい。
ここで、図20に、従来技術の一実施形態として図19のウェブの搬送装置にてウェブの搬送速度がAm/分の際にニップローラーの6倍高調波を加振源とし、いずれか1つの振動モードの固有振動数と共振し、その後ウェブの搬送速度をAm/分からBm/分へ変更することで共振の回避を図った概念図を示す。図20に示すように、ニップローラーと受けローラーの回転周波数とその高調波はウェブの搬送速度に比例して大きくなるが、固有振動数はウェブの搬送速度に依存性が無く一定値である。ニップローラーのみ長手方向中央の変位を測定した場合、共振101にて奇数次の振動モードで共振が発生したことは分かるが、どの振動モードで共振が発生したかは判別不能である。また、共振を検知し、ウェブの搬送速度をAm/分からBm/分へ変更することで共振101の回避を行う場合、回避先のBm/分の条件でも共振102を回避する必要がある。仮にウェブの搬送速度がBm/分にてニップ系逆位相2次の振動モードの共振が発生した場合、変位の測定箇所であるローラーの中央部は振れないため、共振の発生を検出できず、多角形化現象の発生へつながってしまう。
また、図21では、従来技術の別の一実施形態として図19のウェブの搬送装置にてウェブの搬送速度がAm/分の際にニップローラーの6倍高調波を加振源とし、いずれか1つの振動モードの固有振動数と共振し、その後搬送系の固有振動数を制御することで共振101を回避しようとした概念図を示す。こちらの場合も共振101の回避先の条件でも再度共振が発生する可能性がある。ここで、固有振動数を制御後、ニップローラーの8倍高調波を加振源とし、奇数次の振動モードの共振103を検知したとする。この場合、仮に共振103がニップ系同位相の振動モードであった場合は振動が増大してもローラーの多角形化現象には至らないため、共振103を回避する必要は無い。一方で、従来技術のようにニップローラーのみ長手方向中央の変位を測定した場合、振動モードの判別が不能であり、回避すべきか否かの判断ができない。さらに、固有振動数や速度の変更で共振103を回避した場合も回避先の条件にて新たに共振が発生する可能性がある。
また、従来技術のように単にローラー中央部の振動を測定するだけで振動モードを特定しない場合、特にローラーの表層や被覆の研磨、巻き替え直後などで使用日数が浅い場合、奇数次の振動モードで共振が発生したとしても振動が小さく、共振を検知できない可能性がある。図22に巻き替え直後のゴムが被覆されたニップローラーを有する一般的なウェブの搬送装置において、ニップローラーの6倍高調波を加振源とし、ニップ系逆位相1次の振動モードの高調波共振が発生している状態で、ニップローラーの長手方向中央の振動を測定し周波数解析を行った概念図を示す。図22に示すように、ニップ系逆位相の振動モードの共振が発生していたとしても、使用日数が浅い場合は加振源の高調波の周波数の強度は他の高調波の強度と比較して突出していなく、高調波共振の発生を検知できない場合がある。
高調波共振が長期間に渡り発生し、ローラーの多角形化現象が発生した後は振動が増大するため共振の検知が容易となるが、ひとたびローラーの多角形化現象が発生した後は、ローラー表層の表面起伏が不可逆に顕著化の一途を辿るため、多角形化現象の発生につながる振動モードでの共振現象の発生を早期に発見する必要がある。
本発明者らは、前述した4種の振動モード、各次数の内、ニップ系逆位相1次の振動モードにて高調波共振が発生した際、最も早期に多角形化現象が発生することを見出した。
ニップ系逆位相1次の振動モードは、図7に示すように2本のローラーが軸の支持位置を変位の無い節として、ローラーの面長部が互いに反対方向に弓なりに振動する振動モードである。4種の振動モード、各次数の振動モードからニップ系逆位相1次の振動モードを特定するためには、最も変位の大きくなる、各ローラーの長手方向中央の振動を少なくとも測定すれば良い。
上記知見を基に鋭意検討した結果、図23や図24に示すように、ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーのそれぞれ表面の長手方向中央の位置を測定する振動測定器13を備え、測定した振動データを演算することでニップ系逆位相1次の振動モードの早期発見が可能となることが判明した。
また、2本のローラーのそれぞれ長手方向中央の位置にのみ振動測定器13を備える場合、ニップ系逆位相3次の振動モード、ニップ系逆位相5次の振動モードなど、ニップ系逆位相の奇数次の振動モードの共振も区別なく検出してしまうが、最も多角形化現象に影響するニップ系逆位相1次の振動モードを漏らすことなく検出できるため大きな効果が期待できる。また、振動測定器13の設置数には特に制限はないため、ローラーの長手方向に振動測定器13を別途追加することで3次以上の振動モードも正確に特定可能となる。
また、本発明者らは、ニップ系逆位相2次の振動モードでの高調波共振が2番目に発生しやすいことも見出した。
ニップ系逆位相2次の振動モードは、図25に示すように2本のローラーが軸の支持位置と各ローラーの長手方向中央を変位の無い節として、ローラーが互いに反対方向に振動する振動モードである。ニップ系逆位相2次の振動モードは、ローラーの端部から長手方向の長さに対して1/4、3/4の位置近傍の変位が最大となり、かつ長手方向中央は変位しないことから、各ローラーにおいて少なくとも一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2、3/4の位置を測定すれば良い。
上記知見を基に鋭意検討した結果、図26に示すように、ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーの、それぞれ表面の、ローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2、3/4の位置を測定する振動測定器13を備え、測定した振動データを演算することでニップ系逆位相2次の振動モードの早期発見も可能となることが判明した。なお、図26に示すように、本願において「ローラーの端部」とは、ローラー軸の端部のことである。
また、ニップ系逆位相2次の振動モードの以降に高調波共振の発生しやすい振動モードはニップ系逆位相3次、ニップ系逆位相4次、ニップ系逆位相5次と順番に続く。前述のとおり、振動測定器13の設置数に制限は無く、ニップ系逆位相3次以上の振動モードを検出するために、より多くの振動測定器13を備えていてもよい。
ここで、図26に示すニップローラー1と受けローラー2を有するウェブの搬送装置に対して本発明の技術を適用した場合を考える。図27に、本発明の一実施形態として、図26のウェブの搬送装置にてウェブの搬送速度がAm/分の際にニップローラー1の6倍高調波を加振源としてニップ系逆位相1次の振動モードの共振が発生し、その後ウェブの搬送速度をAm/分からBm/分へ変更することで共振101の回避を図った概念図を示す。本技術を適用することで共振発生時の振動モードの特定が可能となり、ウェブの搬送速度Am/分にて多角形化現象へつながるニップ系逆位相1次の振動モードの共振101が発生したことが分かる。また、共振101の回避先である、ウェブの搬送速度Bm/分にて新たにニップ系逆位相2次の振動モードの共振102が発生することも検出可能となり、共振102も回避する必要があると判断することができる。
また、図28に、本発明の一実施形態として、図26のウェブの搬送装置にてウェブの搬送速度がAm/分の際にニップローラー1の6倍高調波を加振源とし、いずれか1つの振動モードの固有振動数と共振し、その後搬送系の固有振動数を制御することで共振101の回避を図った概念図を示す。本技術を適用することで、固有振動数の制御前はニップ系逆位相1次の振動モードの共振101が発生したことが分かる。また、固有振動数の制御後は、共振103は発生しているものの、振動モードはニップ系同位相1次であり、多角形化につながらない振動モードであることが分かるようになる。
さらに、振動モードを特定することで、ローラーの表面や被覆が、新品状態や研磨、巻き替え直後など使用日数が浅く、加振源となるローラーの高調波の振動成分が微弱な場合でも高調波共振の検出が可能となる。
また、図29に示すように、1本の受けローラー2に対して2本以上のニップローラー1を用いてウェブを挟持し搬送するウェブの搬送装置の場合は、受けローラー2とニップローラー1、受けローラー1と2本目のニップローラー15との間でそれぞれ高調波共振が発生する。従って、2本以上のニップローラー1を用いてウェブを挟持し搬送するウェブの搬送装置の場合も同様に、ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーのそれぞれ表面の長手方向中央の位置を測定する振動測定器13を備え、測定した振動データを演算することでニップ系逆位相1次の振動モードの早期発見が可能となる。また、ニップ系逆位相3次の振動モード、ニップ系逆位相5次の振動モードなど、ニップ系逆位相の奇数次の振動モードの共振も区別なく検出してしまうが、最も多角形化現象に影響するニップ系逆位相1次の振動モードを漏らすことなく検出できるため大きな効果が期待できる。また、振動測定器13の設置数には特に制限はないため、ローラーの長手方向に振動測定器13を別途追加することで3次以上の振動モードも正確に特定可能となる。
また、2本以上のニップローラーを用いる場合、ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーのそれぞれ表面の、ローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2、3/4の位置を測定する振動測定器13を備え、測定した振動データを演算することでニップ系逆位相2次の振動モードの早期発見も可能となる。なお、ニップ系逆位相2次の振動モードの以降に高調波共振の発生しやすい振動モードはニップ系逆位相3次、ニップ系逆位相4次、ニップ系逆位相5次と順番に続く。前述のとおり、振動測定器13の設置数に制限は無く、ニップ系逆位相3次以上の振動モードを検出するために、より多くの振動測定器13を備えていてもよい。
また、図30のようにニップローラー1の後方からニップローラー1を支持するバックアップローラー16を用いてウェブを挟持し搬送するウェブの搬送装置の場合は、ニップローラー1とバックアップローラー16との間でも高調波共振が発生する。従って、ウェブを挟持せずに接触する2本のローラーの、それぞれの表面の、長手方向中央の位置を測定する振動測定器13を備え、測定した振動データを演算することでニップ系逆位相1次の振動モードの早期発見が可能となる。また、ニップ系逆位相3次の振動モード、ニップ系逆位相5次の振動モードなど、ニップ系逆位相の奇数次の振動モードの共振も区別なく検出してしまうが、いずれの次数においても多角形化現象は発生するため検出による不都合は特にない。また、振動測定器13の設置数には特に制限はないため、ローラーの長手方向に振動測定器13を別途追加することで3次以上の振動モードも正確に特定可能となる。
また、バックアップローラーを用いる場合、ウェブを挟持せずに接触する2本のローラーのそれぞれの表面の、ローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2、3/4の位置を測定する振動測定器13を備え、測定した振動データを演算することでニップ系逆位相2次の振動モードの早期発見が可能となる。なお、ニップ系逆位相2次の振動モードの以降に高調波共振の発生しやすい振動モードはニップ系逆位相3次、ニップ系逆位相4次、ニップ系逆位相5次と順番に続く。前述のとおり、振動測定器13の設置数に制限は無く、ニップ系逆位相3次以上の振動モードを検出するために、より多くの振動測定器13を備えていてもよい。
また、図31のようにニップローラー1やバックアップローラーが組み合わされている場合も、上記手法を用いてウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーや、ウェブを挟持せずに接触する2本のローラーの、ニップ系逆位相1次、ニップ系逆位相2次の振動モードの早期発見が可能である。
また、上記手法を用いて振動モードを特定した後、搬送系の固有振動数を変化させることで高調波共振の回避が可能となり、さらに好ましい。搬送系の固有振動数の変化手段としては、ローラーを通水構造として液体の供給量を変えてローラーの重量を変化させる方法、ローラーの温度を変える方法、ローラーの軸部へ錘の取り付け、取り外しをすることでローラーの重量を変える方法、アームやフレームの剛性を調整可能な機構にして支持剛性を変える方法、ローラーの支持位置を変更して支点間距離を変える方法、ニップローラーの押圧力を調整しゴムのつぶれ量を制御する方法などを好ましく用いることができる。この内、大がかりな設備変更が無く、かつ運転中に容易に調整可能である、ニップローラーの押圧力の調整でゴムのつぶれ量を制御する方法を好ましく用いることができる。さらに、面圧の調整による面圧分布の悪化を防ぐため、二重管構造を有し中央で押圧する構造のローラーを好ましく用いることができる。
また、搬送系の固有振動数の変化量には少し注意が必要となる。図32に一般的なウェブの搬送装置に発生する回転周波数と高調波を速度と周波数との関係で示す概念図を示す。 図32に示すように、ウェブの搬送速度が一定である場合、搬送装置を構成するいずれか1本のローラーの高調波は一定の間隔で存在する。仮に搬送系の固有振動数をωEQHz、搬送装置を構成するいずれか1本のローラーの回転周波数をωHzとすると、ωEQ/ω=N(Nは自然数)となる条件で高調波共振現象が発生する。高調波共振の発生後、搬送系の固有振動数を変化させて共振を回避する場合、ローラーの回転周波数ωHzと同じ周波数だけ上昇させると(ωEQ+ω)/ω=N+1=自然数となり、回避先でも高調波共振が発生してしまう。また同様に、高調波共振の発生後、搬送系の固有振動数をローラーの回転周波数ωHz下げても(ωEQ−ω)/ω=N−1=自然数となり、やはり高調波共振が発生する。そこで、搬送系の固有振動数を制御し共振を回避するためには、搬送系の固有振動数を、高調波の間隔ωに一致しない回転周波数の分だけずらす必要がある。その際、搬送系の固有振動数がωEQ−ω、ωEQ、ωEQ+ωからできるだけ離れた値になることが好ましいので、ωの半分の値であるω/2Hzずらすことが好ましい。この時、搬送系の固有振動数をω/2Hz上げても良いし、ω/2Hz下げても良い。
以下、実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。また、各測定方法、評価方法を以下に示す。
[振動の測定方法]
株式会社キーエンスのマルチカラーレーザ同軸変位計CL−3050を用い、ローラー表面の振動を常時測定した。サンプリング周波数は1msecとした。測定データの内、最新1分間分のデータを解析対象とし、波形の最大値から最小値を引いたものを振幅とした。
[共振の発生有無、同位相、逆位相の判定方法]
受けローラーとニップローラーの2本のローラーからなる搬送系を例に説明する。まず、図12のように測定した各ローラーの振動データを図13、図14に示すように周波数解析を行う。次に、図15に示すように得られた周波数解析結果を比較し、各解析結果にて0.5Hz以内の周波数成分の存在有無を確認する。ここで、0.5Hz以内の周波数成分が無ければ共振の発生は無いと判断した。また、0.5Hz以内の周波数成分が存在した場合は共振が発生したと判断し、図16に示すように0.5Hz以内の各周波数成分のみ抽出し、逆フーリエ変換により振動データに再変換する。ここで、得られた各ローラーの波形を比較し、図17に示すようにニップローラーと受けローラーの波形の位相が同じであれば同位相の振動モード、図18ニップローラーと受けローラーの波形の位相が反対であれば逆位相の振動モードと判定した。
[振動モードの判定方法]
図11に示すフローチャートを基に振動モードを判定した。
[テスト終了の判断]
上記振動の振幅の測定にて、いずれかのレーザー変位計の振幅が200μm以上となるか、365日経過するまで搬送テストを行った。
[表面形状測定方法]
まず、株式会社キーエンスのレーザー変位計LK−500を用い、ローラーを1m/分の速度にて回転させた状態でローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2および3/4の位置の表面形状を測定した。
[多角形化の角数の特定方法]
表面形状測定にて得られたデータを周波数解析し、ローラーの回転周波数を除いて存在するピークの周波数を、ローラーの回転周波数で割った値に対して最も近い自然数を多角形化の角数とした。
[実施例1]
図33に示すようなニップローラー、受けローラーを有する搬送装置を用いた。ニップローラーは二重管構造であり、直径はφ330mm、面長は7000mmである。また、ニップローラーは表層に硬度50HsJIS A(JIS K 6301−1995)のEPDMのゴム層を有する。また、受けローラーの直径はφ400mm、面長は7000mmである。受けローラーは表層に硬度70HsJIS A(JIS K 6301−1995)のEPDMのゴム層を有する。上記ウェブの搬送装置を用いて、平均厚み5μm、幅6000mmのポリプロピレンフィルムを挟持し、抱き角180度にて200m/分の速度で搬送した。フィルムを挟持する面圧は400N/mとした。また、ニップ系逆位相1次、2次の振動モード検出用に、各ローラーのそれぞれ表面の、ローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2および3/4の位置に振動測定器を配置した。
[実施例2]
二重管構造であり、直径φ345mm、面長7000mmのニップローラーを用いた以外は、実施例1と同様にしてウェブを搬送した。ローラーが変わることにより、搬送系の各固有振動数が実施例1から変化する。
[比較例1]
ニップローラーの長手方向長さに対して1/2の位置にのみ振動測定器を配置した以外は、実施例1と同様にしてウェブを搬送した。
[比較例2]
ニップローラーの長手方向長さに対して1/2の位置にのみ振動測定器を配置した以外は、実施例2と同様にしてウェブを搬送した。
実施例、比較例の結果を表1に示す。
Figure 2021187642
比較例1の速度と周波数の関係図を図34に示す。比較例1では、テスト開始から180日後にニップローラー長手方向中央の振幅が100μmを超え、振動モードは不明であるが、ニップローラーの6倍高調波を加振源とする共振104の発生が示唆された。そこで、共振104を回避すべく、ウェブの搬送速度を200m/分から250m/分へと変更した。しかし、条件変更後も振動は低減されず、テスト開始から200日後にニップローラー長手方向中央の振幅は200μmを超え、テストを中断した。ニップローラーの表面形状を測定した結果、6角形化していた。
実施例1の速度と周波数の関係図を図35に示す。実施例1では、テスト開始直後から、搬送系がニップローラーの6倍高調波を加振源とし、ニップ系逆位相1次の振動モードで共振104が発生していることが分かった。そこで、共振104を回避すべく、ウェブの搬送速度を200m/分から250m/分へと変更した。しかし、ウェブの搬送速度250m/分では新たにニップローラーの7倍高調波を加振源とし、ニップ系逆位相2次の振動モードで共振105が発生したことが分かった。そこで、共振105も回避すべく、ウェブの搬送速度を250m/分から270m/分へと変更した。ウェブの搬送速度270m/分では共振が観測されず、テスト開始から365日経過してもどの振動測定器の振幅も200μmを超えなかった。テスト終了後、ニップローラーの表面形状を測定したが、多角形化現象は発生していなかった。
比較例2の速度と周波数の関係図を図36に示す。比較例2では、テスト開始から250日を経過してもニップローラー長手方向中央の振幅が100μmを超えなかったが、搬送装置から異音が発生し、テストを急遽停止した。ニップローラーの表面形状を測定した結果7角形化しており、共振していたことが発覚した。
実施例2の速度と周波数の関係図を図37に示す。実施例2では、テスト開始直後から、搬送系がニップローラーの7倍高調波を加振源とし、ニップ系逆位相2次の振動モードで共振106が発生していることが分かった。そこで、共振106を回避すべく、フィルムを挟持する面圧を400N/mから450N/mへと変更した。条件変更後は新たにニップ系同位相1次の振動モードで共振107が発生していることが分かったが、多角形化現象へ発展しない振動モードであり、そのまま運転を続けた。テスト開始から365日経過してもどの振動測定器の振幅も200μmを超えなかった。テスト終了後、ニップローラーの表面形状を測定したが、多角形化現象は発生していなかった。
本発明は、フィルム製膜装置のニップローラーに限らず、製紙装置のプレスローラーや製鉄装置の圧延ローラーなどにも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
1 :ニップローラー
2 :受けローラー
3 :ローラーのゴム層
4 :シリンダー
5 :アーム
6 :ウェブ
7 :軸受け
10 :ウェブやゴム層などの弾性体をバネと見立て、ローラー同士を接続するバネ
11 :ニップローラー1の変位
11´:ニップローラー1の変位11に対して半周期後の変位
12 :受けローラー2の変位
12´:受けローラー2の変位12に対して半周期後の変位
13 :振動測定器
14 :レーザー光
15 :2つ目のニップローラー
16 :バックアップローラー
20 :演算器
21 :振動データの伝達ライン
101:ニップローラーの6倍高調波を加振源とし、ニップ系逆位相1次の振動モードで振動する共振
102:受けローラーの10倍高調波を加振源とし、ニップ系逆位相2次の振動モードで振動する共振
103:ニップローラーの8倍高調波を加振源とし、ニップ系同位相1次の振動モードで振動する共振
104:ニップローラーの6倍高調波を加振源とし、ニップ系逆位相1次の振動モードで振動する共振
105:ニップローラーの7倍高調波を加振源とし、ニップ系逆位相2次の振動モードで振動する共振
106:ニップローラーの7倍高調波を加振源とし、ニップ系逆位相2次の振動モードで振動する共振
107:ニップローラーの9倍高調波を加振源とし、ニップ系同位相1次の振動モードで振動する共振

Claims (11)

  1. ウェブを搬送する搬送装置であって、
    ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーと、
    前記2本のローラーのそれぞれの表面の長手方向中央の位置を、それぞれ測定する振動測定器と、
    前記振動測定器が測定する振動データから、前記2本のローラーの振動モードを特定する演算器と、
    を有するウェブの搬送装置。
  2. ウェブを搬送する搬送装置であって、
    ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーと、
    前記2本のローラーのそれぞれ表面の、ローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2および3/4の位置を、それぞれ測定する振動測定器と、
    前記振動測定器が測定する振動データから、前記2本のローラーの振動モードを特定する演算器と、
    を有するウェブの搬送装置。
  3. ウェブを搬送する搬送装置であって、
    ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラー、ならびにこれら2本のローラーのうちの一方のローラーとウェブの搬送中にウェブを挟持せずに接触するローラーと、
    前記ウェブを挟持せずに接触する2本のローラーのそれぞれの表面の、長手方向中央の位置の振動を、それぞれ測定する振動測定器と、
    前記振動測定器が測定する振動データから、前記ウェブを挟持せずに接触する2本のローラーの振動モードを特定する演算器と、
    を有するウェブの搬送装置。
  4. ウェブを搬送する搬送装置であって、
    ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラー、ならびにこれら2本のローラーのうちの一方のローラーとウェブの搬送中にウェブを挟持せずに接触するローラーと、
    前記ウェブを挟持せずに接触する2本のローラーのそれぞれの表面の、ローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2および3/4の位置の振動を、それぞれ測定する振動測定器と、
    前記振動測定器が測定する振動データから、前記ウェブを挟持せずに接触する2本のローラーの振動モードを特定する演算器と、
    を有するウェブの搬送装置。
  5. 前記ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーと、これら2本のローラーを回転可能に支持する支持体とで少なくとも構成された構成単位を搬送系とし、
    前記搬送系の全体の固有振動数を変更できる固有振動可変手段を有する、請求項1〜4のいずれかのウェブの搬送装置。
  6. ローラーの振動モードを特定する方法であって、
    ウェブを挟持しながら搬送している2本のローラーのそれぞれの表面の、長手方向中央の位置の振動を測定したそれぞれの振動データから、これら2本のローラーの振動モードを特定する、ローラーの振動モード特定方法。
  7. ローラーの振動モードを特定する方法であって、
    ウェブを挟持しながら搬送している2本のローラーのそれぞれの表面の、ローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2および3/4の位置の振動を測定したそれぞれの振動データから、これら2本のローラーの振動モードを特定する、ローラーの振動モード特定方法。
  8. ローラーの振動モードを特定する方法であって、
    ウェブを挟持しながら搬送している2本のローラーのうちの一方のローラー、およびこの一方のローラーとウェブを挟持せずに接触しているローラーのそれぞれ表面の、長手方向中央の位置の振動を測定したそれぞれの振動データから、これらウェブを挟持せずに接触している2本のローラーの振動モードを特定する、ローラーの振動モード特定方法。
  9. ローラーの振動モードを特定する方法であって、
    ウェブを挟持しながら搬送している2本のローラーのうちの一方のローラー、およびこの一方のローラーとウェブを挟持せずに接触しているローラーのそれぞれ表面の、ローラーの一方の端部から長手方向長さに対して1/4、1/2および3/4の位置の振動を測定したそれぞれの振動データから、これらウェブを挟持せずに接触している2本のローラーの振動モードを特定する、ローラーの振動モード特定方法。
  10. 前記ウェブを挟持しながら搬送する2本のローラーと、これら2本のローラーを回転可能に支持する支持体とで少なくとも構成された構成単位を搬送系とし、
    請求項6〜9のいずれかのローラーの振動モード特定方法によりローラーが振動していることが判明した際に、前記搬送系の全体の固有振動数を変更する、搬送系の固有振動数変更方法。
  11. 前記搬送系の固有振動数をω/2[Hz]分変更する、請求項10の搬送系の固有振動数変更方法。
    ただし、
    ω=V/(D・π)
    ω:振動データを取得したいずれか1つのローラーの回転周波数[Hz]
    V:ウェブの搬送速度[m/sec]
    D:振動データを取得したいずれか1つのローラーの直径[m]
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