JP2021185870A - 核果類香味向上剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、飲食品の有する核果類の香味を向上させる香料素材を提供することである。【解決手段】3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを有効成分とする核果類香味向上剤。当該核果類香味向上剤は、使用対象の飲食品の香味に悪影響を及ぼすことなく、当該飲食品の有する核果類香味を向上することができる。【選択図】なし

Description

本発明は核果類香味向上剤に関する。
モモやウメ、サクランボをはじめとする核果類は嗜好性が非常に高く、丁寧に栽培された上質な生果は高値で取引されることが多いことから、旬の時期の本物らしい果肉感や果汁感を持つこれらの香気の再現は産業上非常に重要である。
核果類の香料はジュース、菓子等に使用されており、周知技術集によると、共通する香料の主要香気成分はベンズアルデヒドやラクトン類等であるが、実際の生果の香りはより複雑である。本物らしい香気の再現には香気分析技術が必須だが、核果類は果皮が薄くて傷みやすく、熟成が早いことから、他のフルーツに比べて良質な香気回収が難しい。これらの理由から、核果類の香気を再現する場合、ベンズアルデヒドやラクトン類に頼らざるを得ないことが多かった。
一方、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートはホップやコーヒーから見出され、香気は黒ゴマ調のロースト感がある香りであり、干しブドウ、焼き肉、コーヒーの香気として推奨されている(特許文献1)。3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートはフルーツではカラタチから見出されているが(非特許文献1)、カラタチ自体の香りはジャスミン花や過熟して腐敗したマンゴーの香りであり、核果類の香りからは程遠い。3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート単体は、トマトの葉、グレープフルーツ、マンゴーを想起させる香りを有することも公知であるが(非特許文献1)、核果類香味を向上させるという報告は無い。
また、エチル 3−メルカプトプロピオネートはコンコードグレープから見出されており(非特許文献2)、アニマル、フォクシー、スカンク、フルーティー、グレープ様の香気を有することが知られているが(非特許文献3)、核果類はベンズアルデヒドやラクトン類が香気形成に重要な役割をしており、グレープ等の他の果物とは香味の性質が明確に異なり、こちらも核果類香味を向上させるという報告は無い。
特開昭49−007207号公報
J Agric Food Chem 55, 4411-4417 (2007) https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/jf00119a052 http://www.thegoodscentscompany.com/data/rw1037391
従前、核果類の香気の再現に主に使用されていたベンズアルデヒドやラクトン類は特有のケミカル臭を有し、そのケミカル臭が嗜好性を下げてしまうという欠点があった。
そこで、本発明の課題は、嗜好性を下げずに核果類香味を向上させる香料素材を提供することにある。
鋭意研究の結果、本発明者らは核果類香味を有する飲食品に3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを添加することで、当該核果類香味の果汁感、果肉感や本物らしさを向上させ、嗜好性を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを有効成分とする、核果類香味向上剤。
[2]3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを以下(a)〜(c)に記載のいずれかの濃度で含有する[1]に記載の核果類香味向上剤。
(a)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:100ppt以上
(b)エチル 3−メルカプトプロピオネート:100ppt以上
(c)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:100ppt以上、エチル 3−メルカプトプロピオネート:100ppt以上
[3][1]〜[2]に記載の核果類香味向上剤を添加してなる香料組成物。
[4][1]〜[2]に記載の核果類香味向上剤を添加することにより、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを以下(a)〜(c)に記載のいずれかの濃度で含有する[3]に記載の香料組成物。
(a)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:100ppt〜1ppm
(b)エチル 3−メルカプトプロピオネート:100ppt〜10ppb
(c)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:100ppt〜1ppm、エチル 3−メルカプトプロピオネート:100ppt〜1ppb
[5][1]〜[2]に記載の核果類香味向上剤又は[3]〜[4]に記載の香料組成物を添加してなる飲食品。
[6][1]〜[2]に記載の核果類香味向上剤又は[3]〜[4]に記載の香料組成物を添加することにより、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを以下(a)〜(c)に記載のいずれかの濃度で含有する[5]に記載の飲食品。
(a)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:1ppt〜10ppb
(b)エチル 3−メルカプトプロピオネート:1ppt〜100ppt
(c)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:1ppt〜10ppb、エチル 3−メルカプトプロピオネート:1ppt〜10ppt
[7][1]〜[2]に記載の核果類香味向上剤又は[3]〜[4]に記載の香料組成物を添加する、飲食品の核果類香味向上方法。
[8]3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを以下(a)〜(c)に記載のいずれかの濃度で添加する、[7]に記載の核果類香味向上方法。
(a)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:1ppt〜10ppb
(b)エチル 3−メルカプトプロピオネート:1ppt〜100ppt
(c)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:1ppt〜10ppb、エチル 3−メルカプトプロピオネート:1ppt〜10ppt
本発明の3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを有効成分とする核果類香味向上剤は、使用対象の飲食品の香味に悪影響を及ぼすことなく、当該飲食品の有する核果類の香味を向上することができる。
本発明は、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを有効成分とする核果類香味向上剤、当該核果類香味向上剤を含有する香料組成物、当該核果類香味向上剤を含有する飲食品、当該核果類香味向上剤を使用することによる飲食品の核果類香味向上方法である。
本発明の核果類香味向上剤に用いられる3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートは公知の方法で製造できる他、市販品を購入して使用することができる。
核果類とは落葉果樹の1種で、果実の中心部に1個の硬い核をもつことを特徴とする果実のことであり、本発明においては農林水産省品種登録基準に記載のあるバラ科サクラ属に属する果実であって果肉を生食するもののことを指す。本発明における核果類としては、例えば、モモ、ネクタリン、スモモ(プルーン)、オウトウ、アンズ、ウメ、サクランボ等が挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明の核果類香味向上剤は、核果類の香味を有する飲食品に添加することで、当該飲食品の有する核果類の香味を向上することができる。本発明における香味とは、香気及び/又は呈味のことを指す。また、本発明における核果類香味向上とは、核果類の香味を有する飲食品に対し、本物の核果類が有するような果汁感、果肉感等の要素を付与又は増強することにより、当該飲食品の核果類の香味の総合的な嗜好性を向上させることを指す。
本発明の核果類香味向上剤の有効成分である3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートは、単独では核果類の香味を有さないため、本発明の核果類香味向上剤を使用する場合、使用対象の飲食品自体が核果類の香味を有している必要がある。
本発明の核果類香味向上剤の好適な添加量は添加対象の飲食品によって異なるため目的に応じて適宜調整すればよいが、核果類香味向上剤効果が得られ、かつ、有効成分である3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネート自体の香気が飲食品の香味に悪影響を与えないよう、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートのみ使用する場合は、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートが飲食品に対する質量比で1ppt〜10ppb含まれるのが好ましい。エチル 3−メルカプトプロピオネートのみ使用する場合は、エチル 3−メルカプトプロピオネートが飲食品に対する質量比で1ppt〜100ppt含まれるのが好ましい。なお、本発明においてppt、ppb、ppmとは、特に記載の無い限り質量比のことを示す。
本発明の核果類香味向上剤は3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートのみ、又はエチル 3−メルカプトプロピオネートのみでも効果を発揮するが、両者を併用することにより、より好ましい核果類香味向上効果をもたらす。3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートとエチル 3−メルカプトプロピオネートを併用する場合は、飲食品に対する質量比で3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートが1ppt〜10ppb、エチル 3−メルカプトプロピオネートが1ppt〜10ppt含まれるのが好ましい。
本発明の核果類香味向上剤が適用される飲食品は、核果類の香味を有する飲食品であれば何でもよく、例えば、飲食品としては、果実飲料、果汁入り飲料、野菜ジュース、発泡性飲料、濃縮ジュース、凍結ジュース、スポーツドリンク、栄養ドリンク、その他の機能性ドリンク、フレーバードティー、乳飲料、乳酸菌飲料、豆乳類などの飲料一般、ヨーグルト、ゼリー、ムース、デザート類、アイスクリーム、ラクトアイス、アイスミルク、シャーベットなどの冷菓並びに氷菓、ケーキ、クッキー、ビスケット、パイ、煎餅、その他の米菓などといった洋菓子及び和菓子を含む焼菓子や蒸菓子などの菓子類、パン、スナック類、チューインガム、ハードキャンディ、ソフトキャンディー、ゼリービーンズ、グミ、錠菓などを含む糖菓一般、クリーム、果実フレーバーソース、ジャムやマーマレード、甘味料、シロップ、缶詰、冷凍食品などが挙げられ、口腔衛生製品としては、口内清涼剤、うがい剤、歯磨きなどの医薬品部外品、シロップ剤などの医薬品を挙げることができるが、これらに限定はされない。
本発明の核果類香味向上剤は、単独で使用してもよいが、使用時の利便性のため適宜溶剤などで希釈されてもよい。希釈に用いる溶剤などは香料組成物に常用されるものであれば特に制限はない。また、あらかじめ香料組成物とすることもでき、香味に悪影響のない範囲であれば、香料以外の成分として常用される他の添加物や添加剤を加えた組成物としてもよい。さらに、本発明においては香料一般に適用される製剤化技術の適用も可能であり、粉末化、カプセル化など、状況により所望の形態に調製することもできる。核果類香味向上効果が得られるよう、いずれの形態でも、有効成分である3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを100ppt以上含有するよう調製するのが好ましく、両者を併用する場合、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートを100ppt以上、エチル 3−メルカプトプロピオネートを100ppt以上含有するよう調整するのが好ましい。
本発明の核果類香味向上剤は、飲食品や香粧品中に均等に混合することができれば、製造工程のどの時点で添加しても構わない。
(実施例1)
グラニュー糖10質量%、クエン酸0.05質量%となるよう調製した糖酸液に、一般的な処方で調製したピーチフレーバーを0.1質量%添加し、ピーチ風味飲料ベースを調製した。この飲料ベースに3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート(表中ではMMBAと表記)又はエチル 3−メルカプトプロピオネート(表中ではEMPと表記)を表1に記載の濃度となるよう添加して評価用サンプルを調製し、無添加の飲料ベースと比較した官能評価を行った。官能評価は、評価項目として果汁感、果肉感、本物感の3項目を設定し、無添加の飲料ベースと同等のものを4点とした1〜7点の7段階評価(評点の値が高いほど高評価)とし、訓練された社内パネル5名で行った。結果を表1に示した。官能評価の結果、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート又はエチル 3−メルカプトプロピオネートの添加により果汁感、果肉感、本物感の向上効果が認められ、総合的な嗜好性が向上した。
Figure 2021185870
(比較例)
実施例1と同じ飲料ベースに3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを表2に記載の濃度となるよう添加して評価用サンプルを調製し、訓練された社内パネル3名で実施例1と同様に官能評価を行った。結果を表2に示した。官能評価の結果、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート又はエチル 3−メルカプトプロピオネートの添加濃度が高くなると、核果類香味向上効果は認められなかった。
Figure 2021185870
(実施例2)
実施例1と同じ飲料ベースに3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及びエチル 3−メルカプトプロピオネートを表3に記載の濃度となるよう添加して評価用サンプルを調製し、実施例1と同様に官能評価を行った。結果を表3に示した。官能評価の結果、添加量を調整して3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートとエチル 3−メルカプトプロピオネートを併用することにより、それぞれを単独で添加した場合と比較し、果汁感、果肉感、本物感が際立ち、より好ましい嗜好性向上効果をもたらした。
Figure 2021185870
(実施例3)
グラニュー糖10質量%、クエン酸0.1質量%となるよう調製した糖酸液に、一般的な処方で調製したウメフレーバーを0.1質量%添加し、ウメ風味飲料ベースを調製した。この飲料ベースに3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを表4に記載の濃度となるよう添加して評価用サンプルを調製し、実施例1と同様に官能評価を行った。結果を表4に示した。官能評価の結果、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート又はエチル 3−メルカプトプロピオネートの添加により果汁感、果肉感、本物感の向上効果が認められ、総合的な嗜好性が向上した。
Figure 2021185870
(実施例4)
実施例3と同じ飲料ベースに3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及びエチル 3−メルカプトプロピオネートを表5に記載の濃度となるよう添加して評価用サンプルを調製し、実施例1と同様に官能評価を行った。結果を表5に示した。官能評価の結果、添加量を調整して3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートとエチル 3−メルカプトプロピオネートを併用することにより、それぞれを単独で添加した場合と比較し、果汁感、果肉感、本物感が際立ち、より好ましい嗜好性向上効果をもたらした。
Figure 2021185870

Claims (8)

  1. 3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを有効成分とする、核果類香味向上剤。
  2. 3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを以下(a)〜(c)に記載のいずれかの濃度で含有する請求項1に記載の核果類香味向上剤。
    (a)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:100ppt以上
    (b)エチル 3−メルカプトプロピオネート:100ppt以上
    (c)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:100ppt以上、エチル 3−メルカプトプロピオネート:100ppt以上
  3. 請求項1〜2に記載の核果類香味向上剤を添加してなる香料組成物。
  4. 請求項1〜2に記載の核果類香味向上剤を添加することにより、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを以下(a)〜(c)に記載のいずれかの濃度で含有する請求項3に記載の香料組成物。
    (a)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:100ppt〜1ppm
    (b)エチル 3−メルカプトプロピオネート:100ppt〜10ppb
    (c)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:100ppt〜1ppm、エチル 3−メルカプトプロピオネート:100ppt〜1ppb
  5. 請求項1〜2に記載の核果類香味向上剤又は請求項3〜4に記載の香料組成物を添加してなる飲食品。
  6. 請求項1〜2に記載の核果類香味向上剤又は請求項3〜4に記載の香料組成物を添加することにより、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを以下(a)〜(c)に記載のいずれかの濃度で含有する請求項5に記載の飲食品。
    (a)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:1ppt〜10ppb
    (b)エチル 3−メルカプトプロピオネート:1ppt〜100ppt
    (c)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:1ppt〜10ppb、エチル 3−メルカプトプロピオネート:1ppt〜10ppt
  7. 請求項1〜2に記載の核果類香味向上剤又は請求項3〜4に記載の香料組成物を添加する、飲食品の核果類香味向上方法。
  8. 3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート及び/又はエチル 3−メルカプトプロピオネートを以下(a)〜(c)に記載のいずれかの濃度で添加する、請求項7に記載の核果類香味向上方法。
    (a)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:1ppt〜10ppb
    (b)エチル 3−メルカプトプロピオネート:1ppt〜100ppt
    (c)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート:1ppt〜10ppb、エチル 3−メルカプトプロピオネート:1ppt〜10ppt
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