JP2021178911A - 水系塗料組成物、水系塗料組成物の製造方法、樹脂膜、及び樹脂膜の製造方法 - Google Patents

水系塗料組成物、水系塗料組成物の製造方法、樹脂膜、及び樹脂膜の製造方法 Download PDF

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倫春 吉沼
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Abstract

【課題】80℃程度の低温での硬化性、並びに、塗膜としたときの外観及び耐溶剤性に優れる水系塗料組成物を提供する。【解決手段】水系塗料組成物は、ブロックポリイソシアネート(A)と、アクリルポリオールのディスパージョン(B1)と、アクリルポリオールのエマルション(B2)と、を含有し、前記アクリルポリオールのディスパージョン(B1)の水酸基のモル数をb1、前記アクリルポリオールのエマルション(B2)の水酸基のモル数をb2とした場合に、[(b1)/{(b1)+(b2)}]が0.05以上0.5以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、水系塗料組成物、水系塗料組成物の製造方法、樹脂膜、及び樹脂膜の製造方法に関する。
従来、ポリウレタン樹脂塗料は非常に優れた耐摩耗性、耐薬品性及び耐汚染性を有している。特に、脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートから得られたポリイソシアネートを用いたポリウレタン樹脂塗料はさらに耐候性が優れ、その需要は増加する傾向にある。また、自動車塗装ライン、特に、中塗り層、ベース層においては、作製した塗料の貯蔵安定性を発現するため、ブロックポリイソシアネートを用いることが提案されている。このブロックポリイソシアネートは、常温ではポリオールと反応しない。しかしながら、加熱することによりブロック剤が解離し、活性なイソシアネート基が再生されてポリオールと反応し架橋反応が起こるので、上述の課題を改善することができる。従って、数多くのブロック剤の検討がなされおり、例えばフェノール、メチルエチルケトオキシム等が代表的なブロック剤として挙げられる。
しかしながら、これらのブロック剤を用いたブロックポリイソシアネートを用いた場合には、一般に140℃以上の高い焼付け温度が必要である。高温での焼付けを必要とすることは、エネルギー的に不利であるばかりでなく、基材の耐熱性を必要とし、その用途が限定される要因となる。
一方、低温焼付け型のブロックポリイソシアネートとして、活性メチレン系化合物を用いたブロックポリイソシアネートと水系アクリルポリオールを使用した技術が開示されている。例えば、特許文献1では、水性ブロックポリイソシアネートと水溶性アクリルポリオールが使用した水系塗料組成物が提案されている。特許文献2では、ブロックポリイソシアネートとアクリルポリオールのエマルションを使用した水系塗料組成物が提案されている。
特許第3947260号公報 特許第5725655号公報
上記文献等の記載の、ブロックポリイソシアネート及びアクリルポリオールを用いた水系塗料組成物では、塗布後、80℃程度の焼付温度で乾燥させた場合、塗膜の外観不良(凹凸、濁り)が発生したり、或いは、塗膜の耐溶剤性が不足する場合があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、80℃程度の低温での硬化性、並びに、塗膜としたときの外観及び耐溶剤性に優れる水系塗料組成物及びその製造方法、並びに、前記水系塗料組成物を用いた樹脂膜及びその製造方法を提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) ブロックポリイソシアネート(A)と、
アクリルポリオールのディスパージョン(B1)と、
アクリルポリオールのエマルション(B2)と、
を含有し、
前記アクリルポリオールのディスパージョン(B1)の水酸基のモル数をb1、前記アクリルポリオールのエマルション(B2)の水酸基のモル数をb2とした場合に、[(b1)/{(b1)+(b2)}]が0.05以上0.5以下である、水系塗料組成物。
(2) 前記ブロックポリイソシアネート(A)の少なくとも一部が、親水性化合物から誘導される構成単位を有する、(1)に記載の水系塗料組成物。
(3) 前記親水性化合物がノニオン性化合物であり、
前記ブロックポリイソシアネートの総質量に対する前記ノニオン性化合物から誘導される構成単位の含有量が1質量%以上30質量%以下である、(2)に記載の水系塗料組成物。
(4) (1)〜(3)のいずれか一つに記載の水系塗料組成物の製造方法であって、
前記ブロックポリイソシアネート(A)、前記アクリルポリオールのディスパージョン(B1)、及び前記アクリルポリオールのエマルション(B2)のうち、前記アクリルポリオールのエマルション(B2)を最後に配合することを含む、水系塗料組成物の製造方法。
(5) (1)〜(3)のいずれか一つに記載の水系塗料組成物を硬化させてなる、樹脂膜。
(6) (5)に記載の樹脂膜の製造方法であって、
前記水系塗料組成物を80℃で30分間加熱して硬化させることを含む、樹脂膜の製造方法。
上記態様の水系塗料組成物及びその製造方法によれば、80℃程度の低温での硬化性、並びに、塗膜としたときの外観及び耐溶剤性に優れる水系塗料組成物を提供することができる。上記態様の樹脂膜及びその製造方法は、前記水系塗料組成物を用いており、外観及び耐溶剤性に優れる樹脂膜が得られる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変更して実施できる。
なお、本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(−OH)を有する化合物を意味する。
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(−NCO)を有する単量体化合物が複数結合した反応物を意味する。
本明細書において「(メタ)アクリル」とはアクリルとメタクリルとの両方を意味するものとする。
本明細書において、「構成単位」とは、ポリイソシアネートやブロックポリイソシアネートを構成する構造において、一分子の単量体に起因する構造を意味する。例えば、親水性化合物に由来する構成単位とは、ブロックポリイソシアネート中の一分子の親水性化合物に起因する構造を示す。構成単位は、単量体の(共)重合反応によって直接形成された単位であってもよく、(共)重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
≪水系塗料組成物≫
本実施形態の水系塗料組成物は、ブロックポリイソシアネート(A)と、アクリルポリオールのディスパージョン(B1)と、アクリルポリオールのエマルション(B2)と、を含有する。
アクリルポリオールのディスパージョン(B1)の水酸基のモル数をb1、アクリルポリオールのエマルション(B2)の水酸基のモル数をb2とした場合に、[(b1)/{(b1)+(b2)}]が0.05以上0.5以下であり、0.06以上0.45以下が好ましく、0.08以上0.40以下がより好ましく、0.10以上0.35以下がさらに好ましい。
[(b1)/{(b1)+(b2)}]が上記下限値以上であることで、塗膜としたときの外観を良好なものとすることができる。[(b1)/{(b1)+(b2)}]が上記上限値以下であることで、塗膜としたときの耐溶剤性を良好なものとすることができる。
[(b1)/{(b1)+(b2)}]において、モル数b1及びb2はそれぞれ、アクリルポリオールのディスパージョン(B1)中の水酸基の質量(g)又はアクリルポリオールのエマルション(B2)中の水酸基の質量(g)を、水酸基の分子量(17g/mol)で除することで算出することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
以下、本実施形態の水系塗料組成物に含まれる各構成成分について、詳細に説明する。
<ブロックポリイソシアネート(A)>
ブロックポリイソシアネート(A)は、ポリイソシアネートとブロック剤との反応物である。すなわち、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート中の少なくとも一部のイソシアネート基がブロック剤でブロック化されている。
[ポリイソシアネート]
ブロックポリイソシアネートの製造に用いられるポリイソシアネートは、1つ以上のイソシアネート基(−NCO)を有する単量体化合物(以下、「イソシアネートモノマー」と称する場合がある)を複数反応させて得られる反応物である。
イソシアネートモノマーとしては、炭素数4以上30以下のものが好ましい。イソシアネートモノマーとして具体的には、例えば、以下のものが例示される。これらイソシアネートモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(1)ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート。
(2)1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と称する場合がある)、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソイシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート(MPDI)、リジンジイソシアネート(以下、「LDI」と称する場合がある)等の脂肪族ジイソシアネート。
(3)イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と称する場合がある)、1,3−ビス(ジイソシアネートメチル) シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアネートノルボルナン、ジ(イソシアネートメチル)ノルボルナン等の脂環族ジイソシアネート。
(4)4−イソシアネートメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある)、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、「HTI」と称する場合がある)、ビス(2−イソシアナトエチル)2−イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する場合がある)、リジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する場合がある)等のトリイソシアネート。
ポリイソシアネートの製造に用いられるイソシアネートモノマーとしては、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートである。また、上述した脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネート以外のジイソシアネートモノマーを更に用いてもよい。また、イソシアネートモノマーとしては、工業的入手の容易さから、HDI又はIPDIであることがより好ましい。また、イソシアネートモノマーとしては、ブロックポリイソシアネート成分を低粘度にする観点から、HDIであることがさらに好ましい。
ポリイソシアネートは、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基及びビウレット基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有することができる。中でも、耐候性が優れることから、イソシアヌレート基を含むことが好ましい。
(ポリイソシアネートの製造方法)
ポリイソシアネートの製造方法について、以下に詳細を説明する。
ポリイソシアネートは、例えば、アロファネート基を形成するアロファネート化反応、ウレトジオン基を形成するウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン基を形成するイミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート基を形成するイソシアヌレート化反応、ウレタン基を形成するウレタン化反応、及び、ビウレット基を形成するビウレット化反応を、過剰のイソシアネートモノマー存在下で一度に製造して、反応終了後に、未反応のイソシアネートモノマーを除去して得ることができる。すなわち、上記反応により得られるポリイソシアネートは、上述のイソシアネートモノマーが複数結合したものであり、且つ、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基及びビウレット基からなる群より選択される1種類以上を有する反応物である。
また、上記の反応を別々に行ない、それぞれ得たポリイソシアネートを特定比率で混合してもよい。
製造の簡便さからは、上記反応を一度に行いポリイソシアネートを得ることが好ましく、各官能基のモル比を自由に調整する観点からは、別々に製造した後に混合することが好ましい。
(1)アロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法
アロファネート基含有ポリイソシアネートは、イソシアネートモノマーにアルコールを添加し、アロファネート化反応触媒を用いることにより得られる。
アロファネート基の形成に用いられるアルコールは、炭素、水素及び酸素のみで形成されるアルコールが好ましい。
前記アルコールとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、モノアルコール、ジアルコール等が挙げられる。これらアルコールは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール等が挙げられる。
ジアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチルヘキサンジオール等が挙げられる。
中でも、アルコールとしては、モノアルコールが好ましく、分子量200以下のモノアルコールがより好ましい。
アロファネート化反応触媒としては、以下に限定されないが、例えば、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニル等のアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
錫のアルキルカルボン酸塩(有機錫化合物)としては、例えば、2−エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
鉛のアルキルカルボン酸塩(有機鉛化合物)としては、例えば、2−エチルヘキサン酸鉛等が挙げられる。
亜鉛のアルキルカルボン酸塩(有機亜鉛化合物)としては、例えば、2−エチルヘキサン酸亜鉛等が挙げられる。
ビスマスのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2−エチルヘキサン酸ビスマス等が挙げられる。
ジルコニウムのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム等が挙げられる。
ジルコニルのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2−エチルヘキサン酸ジルコニル等が挙げられる。これら触媒は、1種を単独又は2種以上を併用することができる。
また、後述するイソシアヌレート化反応触媒もアロファネート化反応触媒となり得る。後述するイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応を行なう場合は、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(以下、「イソシアヌレート型ポリイソシアネート」と称する場合がある)も当然のことながら生成する。
中でも、アロファネート化反応触媒として、後述するイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応とイソシアヌレート化反応とを行うことが経済的生産上、好ましい。
上述したアロファネート化反応触媒の使用量の下限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、10質量ppmであることが好ましく、20質量ppmであることがより好ましく、40質量ppmであることがさらに好ましく、80質量ppmであることが特に好ましい。
上述したアロファネート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、800質量ppmであることがより好ましく、600質量ppmであることがさらに好ましく、500質量ppmであることが特に好ましい。
すなわち、上述したアロファネート化反応触媒の使用量は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、10質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましく、20質量ppm以上800質量ppm以下であることがより好ましく、40質量ppm以上600質量ppm以下であることがさらに好ましく、80質量ppm以上500質量ppm以下であることが特に好ましい。
また、アロファネート化反応温度の下限値としては、40℃であることが好ましく、60℃であることがより好ましく、80℃であることがさらに好ましく、100℃であることが特に好ましい。
また、アロファネート化反応温度の上限値としては、180℃であることが好ましく、160℃であることがより好ましく、140℃であることがさらに好ましい。
すなわち、アロファネート化反応温度としては、40℃以上180℃以下であることが好ましく、60℃以上160℃以下であることがより好ましく、80℃以上140℃以下であることがさらに好ましく、100℃以上140℃以下であることが特に好ましい。
アロファネート化反応温度が上記下限値以上であることによって、反応速度をより向上させることが可能である。アロファネート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
(2)ウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからウレトジオン基を有するポリイソシアネートを誘導する場合は、例えば、イソシアネートモノマーを、ウレトジオン化反応触媒を用いて、又は、熱により、多量化することによって製造することができる。
ウレトジオン化反応触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリアルキルホスフィン、トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン、シクロアルキルホスフィン等の第3ホスフィン、ルイス酸等が挙げられる。
トリアルキルホスフィンとしては、例えば、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン等が挙げられる。
トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィンとしては、例えば、トリス−(ジメチルアミノ)ホスフィン等が挙げられる。
シクロアルキルホスフィンとしては、例えば、シクロヘキシル−ジ−n−ヘキシルホスフィン等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、三フッ化ホウ素、酸塩化亜鉛等が挙げられる。
ウレトジオン化反応触媒の多くは、同時にイソシアヌレート化反応も促進しうる。
ウレトジオン化反応触媒を用いる場合には、所望の収率となった時点で、リン酸、パラトルエンスルホン酸メチル等のウレトジオン化反応触媒の失活剤を添加してウレトジオン化反応を停止することが好ましい。
また、ウレトジオン化反応触媒を用いることなく、上記脂肪族ジイソシアネート及び上記脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートを加熱してウレトジオン基を有するポリイソシアネートを得る場合、その加熱温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上170℃以下がより好ましい。また、加熱時間は1時間以上4時間以下が好ましい。
(3)イミノオキサジアジンジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからイミノオキサジアジンジオン基含有ポリイソシアネートを誘導する場合は、通常、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒を用いる。
イミノオキサジアジンジオン化触媒としては、例えば、以下の1)又は2)に示すもの等が挙げられる。
1)一般式M[F]、又は、一般式M[F(HF)]で表される(ポリ)フッ化水素
(式中、m及びnは、m/n>0の関係を満たす整数である。Mはn荷電カチオン(混合物)又は合計でn価の1個以上のラジカルである。)
2)一般式R−CR’−C(O)O−、又は、一般式R=CR’−C(O)O−で表される化合物と、第4級アンモニウムカチオン、又は、第4級ホスホニウムカチオンとからなる化合物。
(式中、R及びRはそれぞれ独立に、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、飽和又は不飽和の炭素数1以上30以下のパーフルオロアルキル基である。複数あるR’はそれぞれ独立に水素原子、又は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1以上20以下のアルキル基若しくはアリール基である。)
1)の化合物((ポリ)フッ化水素)として具体的には、例えば、テトラメチルアンモニウムフルオリド水和物、テトラエチルアンモニウムフルオリド等が挙げられる。
2)の化合物として具体的には、例えば、3,3,3−トリフルオロカルボン酸、4,4,4,3,3−ペンタフルオロブタン酸、5,5,5,4,4,3,3−ヘプタフルオロペンタン酸、3,3−ジフルオロプロパ−2−エン酸等が挙げられる。
中でも、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒としては、入手容易性の観点からは、1)が好ましく、安全性の観点からは、2)が好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量の下限値は、特に限定されないが、反応性の観点から、原料であるHDI等のイソシアネートモノマーに対して、質量比で、5ppmが好ましく、10ppmがより好ましく、20ppmがさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量の上限値は、生成物の着色及び変色の抑制や反応制御の観点から、原料であるHDI等のイソシアネートモノマーに対して、質量比で、5000ppmが好ましく、2000ppmがより好ましく、500ppmがさらに好ましい。
すなわち、イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量は、原料であるHDI等のイソシアネートモノマーに対して、質量比で、5ppm以上5000ppm以下であることが好ましく、10ppm以上2000ppm以下がより好ましく、20ppm以上500ppm以下がさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化の反応温度の下限値は、特に限定されないが、反応速度の観点から、40℃が好ましく、50℃がより好ましく、60℃がさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化の反応温度の上限値は、生成物の着色及び変色の抑制の観点から、150℃が好ましく、120℃がより好ましく、110℃がさらに好ましい。
すなわち、イミノオキサジアジンジオン化の反応温度は、40℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上120℃以下がより好ましく、60℃以上110℃以下がさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化反応が所望のイミノオキサジアジンジオン基含有量に達した時点で、イミノオキサジアジンジオン化反応を停止させることができる。イミノオキサジアジンジオン化反応は、例えば、酸性化合物を反応液に添加することで、停止することができる。酸性化合物としては、例えば、リン酸、酸性リン酸エステル、硫酸、塩酸、スルホン酸化合物等が挙げられる。これにより、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒を中和させる、又は、熱分解若しくは化学分解等により不活性化させる。反応停止後、必要があれば、ろ過を行う。
(4)イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、一般的に使用されるイソシアヌレート化反応触媒が挙げられる。
イソシアヌレート化反応触媒としては、特に限定されないが、一般に塩基性を有するものであることが好ましい。イソシアヌレート化反応触媒として具体的には、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記テトラアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
2)ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等のアリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記アリールトリアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
3)トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記ヒドロキシアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
4)酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、オクチル酸、カプリン酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等の金属塩。
5)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート。
6)ヘキサメチレンジシラザン等のアミノシリル基含有化合物。
7)マンニッヒ塩基類。
8)第3級アミン類とエポキシ化合物との混合物。
9)トリブチルホスフィン等の燐系化合物。
中でも、不要な副生成物を生じさせにくい観点からは、イソシアヌレート化反応触媒としては、4級アンモニウムのハイドロオキサイド又は4級アンモニウムの有機弱酸塩であることが好ましく、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩、アリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、又は、アリールトリアルキルアンモニウムの有機弱酸塩であることがより好ましい。
上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、500質量ppmであることがより好ましく、100質量ppmであることがさらに好ましい。
一方、上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の下限値は、特別な限定はないが、例えば、10質量ppmであってもよい。
イソシアヌレート化反応温度としては、50℃以上120℃以下であることが好ましく、55℃以上90℃以下であることがより好ましい。イソシアヌレート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
所望の転化率(仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対する、イソシアヌレート化反応で生成したポリイソシアネートの質量の割合)になった時点で、イソシアヌレート化反応を、酸性化合物(例えば、リン酸、酸性リン酸エステル等)の添加によって停止する。
なお、ポリイソシアネートを得るためには、反応の進行を初期で停止する必要がある。しかしながら、イソシアヌレート化反応は、初期の反応速度が非常に速いため、反応の進行を初期で停止することに困難が伴い、反応条件、特に触媒の添加量及び添加方法は慎重に選択する必要がある。例えば、触媒の一定時間毎の分割添加方法等が好適なものとして推奨される。
したがって、ポリイソシアネートを得るためのイソシアヌレート化反応の転化率は、10%以上60%以下であることが好ましく、15%以上55%以下であることがより好ましく、20%以上50%以下であることがさらに好ましい。
イソシアヌレート化反応の転化率が上記上限値以下であることによって、ブロックポリイソシアネート成分をより低粘度とすることができる。また、イソシアヌレート化反応の転化率が上記下限値以上であることによって、反応停止操作をより容易に行うことができる。
また、イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導する際に、上記イソシアネートモノマー以外に1価以上6価以下のアルコールを用いることができる。
使用することのできる1価以上6価以下のアルコールとしては、例えば、非重合性アルコール、重合性アルコールが挙げられる。ここでいう「非重合性アルコール」とは、重合性基を有さないアルコールを意味する。一方、「重合性アルコール」とは、重合性基及び水酸基を有する単量体を重合して得られるアルコールを意味する。
非重合性アルコールとしては、例えば、モノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等の多価アルコールが挙げられる。
モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−ノナノール、2−エチルブタノール、2,2−ジメチルヘキサノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−エチル−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
トリオール類としては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
テトラオール類としては、例えば、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
重合性アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、アクリルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、二塩基酸の単独又は混合物と、多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られる生成物が挙げられる。
二塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の二塩基酸が挙げられる。
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、及び、グリセロールからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールが挙げられる。
また、ポリエステルポリオール類としては、例えば、上記多価アルコールを用いて、ε−カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
ポリエーテルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物、又は、強塩基性触媒を使用して、多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、ポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類、上記ポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られるいわゆるポリマーポリオール類が挙げられる。
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。
多価アルコールとしては、上記ポリエステルポリオール類において例示されたものと同様のものが挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
アクリルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合したものが挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和アミド、ビニル系単量体、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
不飽和アミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等が挙げられる。
ビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ポリオレフィンポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエン及びその水素添加物等が挙げられる。
(5)ウレタン基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからウレタン基を含有するポリイソシアネートを誘導する場合は、例えば、過剰のイソシアネートモノマーと、アルコールと、を混合し、必要に応じてウレタン化反応触媒を添加することで製造することができる。
前記アルコールとしては、上記「イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートの製造方法」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
ウレタン化反応触媒としては、特に限定されないが、例えば、スズ系化合物、亜鉛系化合物、アミン系化合物等が挙げられる。
ウレタン化反応温度としては、50℃以上160℃以下であることが好ましく、60℃以上120℃以下であることがより好ましい。
ウレタン化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
また、ウレタン化反応時間としては、30分以上4時間以下であることが好ましく、1時間以上3時間以下であることがより好ましく、1時間以上2時間以下であることがさらに好ましい。
アルコールの水酸基のモル量に対するイソシアネートモノマーのイソシアネート基のモル量の比は、2/1以上50/1以下が好ましい。当該モル比が上記下限値以上であることによって、ポリイソシアネートをより低粘度とすることができる。当該モル比が上記上限値以下であることによって、ウレタン基含有ポリイソシアネートの収率をより高められる。
(6)ビウレット基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからビウレット基を含有するポリイソシアネートを誘導するためのビウレット化剤としては、特に限定されないが、例えば、水、1価の第3級アルコール、蟻酸、有機第1モノアミン、有機第1ジアミン等が挙げられる。
ビウレット化剤1モルに対して、イソシアネート基を6モル以上とすることが好ましく、10モル以上とすることがより好ましく、10モル以上80モル以下とすることがさらに好ましい。ビウレット化剤1モルに対するイソシアネート基のモル量が上記下限値以上であれば、ポリイソシアネートが十分に低粘度になり、上記上限値以下であれば、樹脂膜としたときの低温硬化性がより向上する。
また、ビウレット化反応の際に溶剤を用いてもよい。溶剤は、イソシアネートモノマーと水等のビウレット化剤を溶解し、反応条件下で均一相を形成させるものであればよい。
前記溶剤として具体的には、例えば、エチレングリコール系溶剤、リン酸系溶剤等が挙げられる。
エチレングリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールメチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、エチレングリコールエチル−n−プロピルエーテル、エチレングリコールエチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールエチル−n−ブチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピル−n−ブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールエチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−プロピル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピル−n−ブチルエーテル等が挙げられる。
リン酸系溶剤としては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル等が挙げられる。
これらの溶剤は単独又は2種以上を混合して使用してもよい。
中でも、エチレングリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート又はジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
また、リン酸系溶剤としては、リン酸トリメチル又はリン酸トリエチルが好ましい。
ビウレット化反応温度としては、70℃以上200℃以下が好ましく、90℃以上180℃以下がより好ましい。上記上限値以下であることで、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に防止できる傾向にある。
上述したアロファネート化反応、ウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート化反応、ウレタン化反応、及び、ビウレット化反応は、それぞれ逐次行ってもよく、そのいくつかを並行して行ってもよい。
反応終了後の反応液から、未反応イソシアネートモノマーを薄膜蒸留、抽出等により除去し、ポリイソシアネートを得ることができる。
また、得られたポリイソシアネートに対して、例えば、貯蔵時の着色を抑制する目的で、酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のヒンダードフェノール等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら酸化防止剤や紫外線吸収剤は、1種を単独又は2種以上を併用してもよい。これらの添加量は、ポリイソシアネートの質量に対して、10質量ppm以上500質量ppm以下であることが好ましい。
(ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数)
ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数は、樹脂膜としたときの低温硬化性を高める点で、2.0以上であることが好ましく、樹脂膜としたときの低温硬化性、及び、アクリルポリオールのディスパージョン(B1)及びエマルション(B2)との相溶性の両立の観点から、3.0以上であることがより好ましく、4.6以上20以下であることがさらに好ましく、5以上10以下であることが特に好ましい。
ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
[ブロック剤]
ブロックポリイソシアネートの製造に用いられるブロック剤は、特に限定されず、樹脂膜としたときの低温硬化性を阻害しない範囲内で、各種ブロック剤が使用可能である。
ブロック剤としては、例えば、1)アルコール系化合物、2)アルキルフェノール系化合物、3)フェノール系化合物、4)活性メチレン系化合物、5)メルカプタン系化合物、6)酸アミド系化合物、7)酸イミド系化合物、8)イミダゾール系化合物、9)尿素系化合物、10)オキシム系化合物、11)アミン系化合物、12)イミド系化合物、13)重亜硫酸塩、14)ピラゾール系化合物、15)トリアゾール系化合物等が挙げられる。ブロック剤としてより具体的には、以下に示すもの等が挙げられる。
1)アルコール系化合物:メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトカシエタノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール類。
2)アルキルフェノール系化合物:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類。アルキルフェノール系化合物として具体的には、例えば、n−プロピルフェノール、iso−プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類;ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−tert−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類。
3)フェノール系化合物:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等。
4)活性メチレン系化合物:マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジ−tert−ブチル等。
5)メルカプタン系化合物:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等。
6)酸アミド系化合物:アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等。
7)酸イミド系化合物:コハク酸イミド、マレイン酸イミド等。
8)イミダゾール系化合物:イミダゾール、2−メチルイミダゾール等。
9)尿素系化合物:尿素、チオ尿素、エチレン尿素等。
10)オキシム系化合物:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等。
11)アミン系化合物:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等。
12)イミン系化合物:エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
13)重亜硫酸塩化合物:重亜硫酸ソーダ等。
14)ピラゾール系化合物:ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等。
15)トリアゾール系化合物:3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール等。
中でも、低温硬化性の観点から、4)活性メチレン系化合物、8)イミダゾール系化合物、10)オキシム系化合物、11)アミン化合物、14)ピラゾール系化合物、又は15)トリアゾール系化合物が好ましく、4)活性メチレン系化合物、又は14)ピラゾール系化合物がより好ましく、4)活性メチレン系化合物がさらに好ましい。
また、活性メチレン系化合物の中でも、低温硬化性の観点から、マロン酸ジ−tert−ブチル又はマロン酸ジイソプロピルが好ましく、マロン酸ジ−tert−ブチルがより好ましい。
[親水性化合物]
ブロックポリイソシアネートの少なくとも一部は、親水性化合物から誘導される構成単位、すなわち、親水性基を有していてもよい。
親水性化合物は、親水性基を有する化合物である。親水性化合物は、親水性基に加えて、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の少なくとも1つと反応するための活性水素基を、親水性化合物1分子に対して、1つ以上有することが好ましい。活性水素基として、具体的には、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基が挙げられる。
親水性化合物としては、ノニオン性化合物、カチオン性化合物、アニオン性化合物が挙げられる。これら親水性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、親水性化合物としては、入手容易性及び配合物との電気的な相互作用を受けにくいという観点で、ノニオン性化合物が好ましく、得られる樹脂膜の硬度の低下を抑制する観点で、アニオン性化合物が好ましい。
(ノニオン性化合物)
ノニオン性化合物として、具体的には、モノアルコール、アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物が挙げられる。モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらノニオン性化合物は、イソシアネート基と反応する活性水素基も有する。
中でも、ノニオン性化合物としては、少ない使用量でブロックポリイソシアネート組成物の水分散性を向上できることから、モノアルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
エチレンオキサイドを付加した化合物のエチレンオキサイドの付加数としては、4以上30以下が好ましく、4以上25以下がより好ましい。エチレンオキサイドの付加数が上記下限値以上であることで、ブロックポリイソシアネート組成物に水分散性をより効果的に付与できる傾向にあり、エチレンオキサイドの付加数が上記上限値以下であることで、低温貯蔵時にブロックポリイソシアネート組成物の析出物がより発生しにくい傾向にある。
ブロックポリイソシアネートに付加されるノニオン性親水性基の量(以下、「ノニオン性親水性基の含有量」と称する場合がある)の下限値は、ブロックポリイソシアネート組成物の水分散安定性の観点から、親水性ポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましく、4質量%が特に好ましい。
また、ノニオン性親水性基の含有量の上限値は、得られる樹脂膜の耐水性の観点から、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、18質量%がさらに好ましく、15質量%が特に好ましい。
すなわち、ノニオン性親水性基の含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、2質量%以上20質量%以下がより好ましく、3質量%以上18質量%以下がさらに好ましく、4質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
ノニオン性親水性基の含有量が上記下限値以上であることで、ブロックポリイソシアネートがより水に分散し、より均質な膜が得られる傾向にある。一方で、上記下限値以下であることで、塗膜としたときの耐溶剤性及び耐水性をより良好なものとすることができる。
(カチオン性化合物)
カチオン性化合物として、具体的には、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられる。また、グリシジル基等の活性水素基を有する化合物と、スルフィド、ホスフィン等のカチオン性親水性基を有する化合物を併せて、親水性化合物としてもよい。この場合は、予め、イソシアネート基を有する化合物と活性水素基を有する化合物を反応させ、グリシジル基等の官能基を付加し、その後、スルフィド、ホスフィン等の化合物を反応させる。製造の容易性の観点からは、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が好ましい。
カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物として、具体的には、例えば、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が挙げられる。また、これらの化合物を用いて付加された三級アミノ基は、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルで四級化することもできる。
カチオン性化合物と脂環族ポリイソシアネートとの反応は、溶剤の存在下で反応させることができる。この場合の溶剤は、活性水素基を含まないものが好ましく、具体的には、例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
ブロックポリイソシアネートに付加されたカチオン性親水性基は、アニオン性基を有する化合物で中和されることが好ましい。このアニオン性基として、具体的には、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物として、具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、エタンスルホン酸等が挙げられる。
燐酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、燐酸、酸性燐酸エステル等が挙げられる。
ハロゲン基を有する化合物として、具体的には、例えば、塩酸等が挙げられる。
硫酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、硫酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基を有する化合物としては、カルボキシ基を有する化合物が好ましく、酢酸、プロピオン酸又は酪酸がより好ましい。
(アニオン性化合物)
アニオン性親水性基として、具体的には、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基が挙げられる。
アニオン性化合物として、具体的には、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、モノヒドロキシカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物が挙げられる。
モノヒドロキシカルボン酸としては、例えば、1−ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシプロパン酸、12−ヒドロキシ−9−オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸(ヒドロキシピバリン酸)、乳酸等が挙げられる。
ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物としては、例えば、ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等が挙げられる。
また、スルホン酸基と活性水素基とを併せて有する化合物も挙げられ、より具体的には、例えば、イセチオン酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物としては、ヒドロキシピバル酸又はジメチロールプロピオン酸が好ましい。
ブロックポリイソシアネートに付加されたアニオン性親水性基は、塩基性物質であるアミン系化合物で中和することが好ましい。
アミン系化合物として、具体的には、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物等が挙げられる。
水溶性アミノ化合物として、具体的には、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンも挙げられ、これらを用いることもできる。これらのアミン系化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[ブロックポリイソシアネートの製造方法]
ブロックポリイソシアネートは、特に限定されないが、例えば、上記ポリイソシアネートと上記ブロック剤とを反応させて得られる。
ポリイソシアネートとブロック剤とのブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができ、ブロックポリイソシアネートが得られる。
なお、ブロック剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ブロック剤の添加量は、通常は、イソシアネート基のモル総量に対して80モル%以上200モル%以下であってよく、90モル%以上150モル%以下であることが好ましく、93モル%以上130モル%以下であることがより好ましい。
また、溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いればよい。
溶剤を用いる場合、ブロックポリイソシアネート組成物100質量部に対するポリイソシアネート及びブロック剤に由来する不揮発分の含有量は、通常は、10質量部以上95質量部以下であってよく、15質量部以上80質量部以下であることが好ましく、20質量部以上75質量部以下であることがより好ましい。
溶剤としては、例えば、1−メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso−プロパノール、1−プロパノール、iso−ブタノール、1−ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso−ペンタン、ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等が挙げられる。これら溶剤を、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。水への分散性の観点から、溶剤としては、水への溶解度が5質量%以上のものが好ましく、具体的には、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
ブロック化反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、3級アミン系化合物及びナトリウム等のアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
触媒の添加量は、ブロック化反応の温度等により変動するが、通常は、ポリイソシアネート100質量部に対して0.05質量部以上1.5質量部以下であってよく、0.1質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。
ブロック化反応は、一般に−20℃以上150℃以下で行うことができ、0℃以上100℃以下で行うことが好ましく、10℃以上70℃以下で行うことがより好ましい。ブロック化反応の温度が上記下限値以上であることにより、反応速度をより高めることができ、上記上限値以下であることにより、副反応をより抑制することができる。
ブロック化反応後には、酸性化合物等の添加で中和処理してもよい。
前記酸性化合物としては、無機酸を用いてもよく、有機酸を用いてもよい。無機酸としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
また、親水性化合物とブロック剤とを用いてブロックポリイソシアネートを製造する場合には、例えば、上記ポリイソシアネートと上記親水性化合物と上記ブロック剤とを反応させて得られる。
ポリイソシアネートのイソシアネート基と親水性化合物との反応、及び、ポリイソシアネートとブロック剤との反応を同時に行うこともでき、又は、あらかじめどちらかの反応を行った後に、2つ目の反応を行うこともできる。中でも、イソシアネート基と親水性化合物との反応を先に行い、親水性化合物により変性されたポリイソシアネート(以下、「変性ポリイソシアネート」と称する場合がある)を得た後、得られた変性ポリイソシアネートとブロック剤との反応を行うことが好ましい。
ポリイソシアネートと親水性化合物との反応は、有機金属塩、3級アミン系化合物、アルカリ金属のアルコラートを触媒として用いてもよい。前記有機金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。前記アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
ポリイソシアネートと親水性化合物との反応温度は、−20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上130℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応性をより高くできる傾向にある。また、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより効果的に抑制できる傾向にある。
親水性化合物が未反応状態で残存しないよう、完全にポリイソシアネートと反応させることが好ましい。未反応状態で残存しないことにより、ブロックポリイソシアネートの水分散安定性、及び、樹脂膜としたときの低温硬化性の低下をより効果的に抑制する傾向にある。
変性ポリイソシアネートとブロック剤とのブロック化反応は、上述のブロック化反応として記載された方法を用いることができる。
<アクリルポリオール(B)>
本実施形態の水系塗料組成物は、アクリルポリオールのディスパージョン(B1)と、アクリルポリオールのエマルション(B2)と、を主剤成分として含有する。以下、アクリルポリオールのディスパージョン(B1)及びアクリルポリオールのエマルション(B2)を総じて「アクリルポリオール(B)」と称する場合がある。
アクリルポリオール(B)は、水酸基を有し、かつ、分散、乳化等の状態で水系塗料組成物中に安定的に存在する。
アクリルポリオール(B)は、例えば、水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマー及びカルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーを含むモノマーを、適当な混合比でアクリル共重合することによって得られる。
上記水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アリルアルコール、メタクリルアルコール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、又は(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物が好ましい。
カルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。中でも、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
アクリルポリオール(B)の製造時において、水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマー及びカルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーに加えて、その他のα,β−エチレン性不飽和モノマーを用いることができる。上記その他のα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、重合性アミド化合物等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル等が挙げられる。重合性アミド化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
[アクリルポリオールのディスパージョン(B1)]
アクリルポリオールのディスパージョン(B1)は、溶液重合を行ってアクリルポリオールを得た後に、水性化することによって得られる。
アクリルポリオールのディスパージョン(B1)は、加熱条件下において、原料として使用するα,β−エチレン性不飽和モノマーを混合したものを重合開始剤と共に溶媒中へ滴下しながら撹拌する方法が一般的である。溶液重合する際の条件は、例えば、重合温度が60℃以上160℃以下程度、滴下時間が0.5時間以上10時間以下程度である。上記原料として使用するα,β−エチレン性不飽和モノマーは、2段階に分けて重合することも可能である。
上記重合開始剤は、通常の重合に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、アゾ系化合物や過酸化物が挙げられる。一般に、モノマー混合物100質量部に対する重合開始剤の量は0.1質量部以上18質量部以下であり、0.3質量部以上12質量部以下が好ましい。
また、ここで用い得る溶媒は反応に悪影響を与えないものであれば特に限定されず、例えば、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素系溶媒等が挙げられる。さらに、分子量を調節するために、ラウリルメルカプタン等のメルカプタン、及び、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を必要に応じて用いることができる。
このように溶液重合で得られるアクリルポリオールの数平均分子量は、4,000以上20,000以下であることが好ましい。溶液重合で得られるアクリルポリオールの数平均分子量は、例えば、ポリスチレン標準サンプル基準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定することができる。
また、アクリルポリオールのガラス転移点(Tg)は−20℃以上80℃以下の範囲内であることが好ましい。アクリルポリオールのガラス転移点は、例えば、アクリルポリオールの調製に用いたモノマーの種類及び量から計算によって求めることができる。また、アクリルポリオールのガラス転移点は、示差走査型熱量計(DSC)によって測定してもよい。
上記溶液重合で得られたアクリルポリオールは、必要に応じて溶剤を除去した後、塩基性化合物を加えて水性化することにより、アクリルポリオールのディスパージョン(B1)が得られる。上記塩基性化合物としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。上記塩基性化合物を加える量は、上記溶液重合で得られたアクリルポリオールが有するカルボキシ基に対して中和率が60モル%以上100モル%以下であることが好ましい。中和率が上記下限値以上であることで、水性化をより十分なものとすることができ、貯蔵安定性をより良好なものとすることができる。このようにして得られるアクリルポリオールのディスパージョン(B1)の樹脂固形分は、25質量%以上55質量%以下程度とすることが一般的である。
アクリルポリオールのディスパージョン(B1)の体積平均粒子径は0.01μm以上1μm以下の範囲内であることが好ましい。体積平均粒子径が上記範囲内であることによって、水分散体の安定性がより良好となり、さらに、得られる塗膜の外観がより良好となる。また、体積平均粒子径の調節は、モノマー組成を調整することにより可能である。
代表的なアクリルポリオールのディスパージョン(B1)としては、例えば、Setaqua(登録商標)6160、Setaqua(登録商標)6515、Setaqua(登録商標)6514、Setaqua(登録商標)6516、Setaqua(登録商標)6510、Setaqua(登録商標)6511、Setaqua(登録商標)6513(Allex社製)等が例示される。
[アクリルポリオールのエマルション(B2)]
アクリルポリオールのエマルション(B2)は、水性媒体中で乳化重合することにより得られる。
水性媒体中での乳化重合を行う場合は、例えば、水、又は必要に応じてアルコール等の有機溶剤を含む水性媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下、原料として使用するα,β−エチレン性不飽和モノマーを混合したもの及び重合開始剤を滴下することにより行うことができる。原料として使用するα,β−エチレン性不飽和モノマーを混合したものは、乳化剤と水とを用いて予め乳化しておいてもよい。
乳化重合に好適に用いることができる重合開始剤としては、アゾ系の油性化合物及び水性化合物、レドックス系の油性過酸化物、水性過酸化物等が挙げられる。アゾ系の油性化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。アゾ系の水性化合物としては、例えば、アニオン系の4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、及び2,2−アゾビス(N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン、カチオン系の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)等が挙げられる。レドックス系の油性過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーベンゾエー等が挙げられる。水性過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
乳化剤は、当業者が通常用いる一般的な乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、例えば、アントックス(Antox)MS−60(日本乳化剤社製)、エレミノールJS−2(三洋化成工業社製)、アデカリアソープNE−20(旭電化社製)、アクアロンGS−10(第一工業製薬社製)、ラテムルPD−104(花王社製)等の反応性乳化剤が特に好ましい。また、分子量を調節するために、ラウリルメルカプタン等のメルカプタン及びα−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を必要に応じて用いることができる。
反応温度は開始剤により決定され、例えば、アゾ系開始剤や過酸化物では60℃以上90℃以下程度であり、レドックス系では30℃以上70℃以下程度で行うことが好ましい。一般に、反応時間は1時間以上8時間以下程度である。
一般に、モノマー混合物100質量部に対する開始剤の量は、0.1質量%以上5質量%以下である。上記乳化重合は多段階で行うことができ、例えば、二段階で行うことができる。すなわち、まず上記原料として使用するα,β−エチレン性不飽和モノマーを混合したもののうちの一部を乳化重合し、ここに上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物の残りをさらに加えて乳化重合を行うものである。
アクリルポリオールのエマルション(B2)は、貯蔵安定性の観点から、塩基性化合物で中和することにより、pH5以上10以下で用いることができる。上記塩基性化合物としては、上記「アクリルポリオールのディスパージョン(B1)」において溶液重合で得られるアクリルポリオールの水性化の際に使用するものと同様の物が挙げられる。上記中和は、乳化重合の前又は後に、上記塩基性化合物を系に添加することによって行うことが好ましい。
アクリルポリオールのエマルション(B2)は、数平均分子量が10,000以上80,000以下であるものが好ましい。アクリルポリオールのエマルション(B2)の水酸基価が80mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、酸価が10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であり、酸価の値に対する水酸基価の値の比が3以上15以下であり、且つ、数平均分子量が10,000以上80,000以下の範囲であることによって、塗料安定性を良好に確保しつつ、得られる塗膜における架橋密度がより良好な範囲となる。
なお、アクリルポリオールのエマルション(B2)の数平均分子量は、水分を減圧乾燥等により除去した後、ポリスチレン標準サンプル基準を用いGPCによって測定することができる。
代表的なアクリルポリオールのエマルション(B2)としては、例えば、Setaqua(登録商標)6520、Setaqua(登録商標)6522(Allex社製)等が例示される。
アクリルポリオールのディスパージョン(B1)及びアクリルポリオールのエマルション(B2)の含有量比(B1)/(B2)は、特に限定されることはないが、1/99以上99/1以下が好ましく、2/98以上80/20以下がより好ましく、4/96以上65/35以下がさらに好ましく、6/94以上50/50以下が特に好ましい。
(B1)/(B2)が上記範囲内であることにより、塗膜としたときの外観及び耐溶剤性をより良好なものとすることができる。
<その他主剤成分>
本実施形態の水系塗料組成物は、アクリルポリオール(B)(アクリルポリオールのディスパージョン(B1)及びアクリルポリオールのエマルション(B2))に加えて、その他のポリオールを主剤成分として含んでいてもよい。その他のポリオールとしては、例えば、脂肪族炭化水素ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、エポキシ樹脂類、含フッ素ポリオール類等が挙げられる。
中でも、その他のポリオールとしては、ポリエステルポリオール類又は含フッ素ポリオール類が好ましい。
[脂肪族炭化水素ポリオール類]
前記脂肪族炭化水素ポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエンやその水素添加物等が挙げられる。
[ポリエーテルポリオール類]
前記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、以下(1)〜(3)のいずれかの方法等を用いて得られるものが挙げられる。
(1)多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類又はポリテトラメチレングリコール類。
(2)アルキレンオキサイドに多官能化合物を反応させて得られるポリエーテルポリオール類。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセロールやプロピレングリコール等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
前記多官能化合物としては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン類等が挙げられる。
[ポリエステルポリオール類]
前記ポリエステルポリオール類としては、例えば、以下の(1)又は(2)のいずれかのポリエステルポリオール類等が挙げられる。
(1)二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール樹脂類。
(2)ε−カプロラクトンを多価アルコールで開環重合して得られるポリカプロラクトン類。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
[エポキシ樹脂類]
前記エポキシ樹脂類としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、β−メチルエピクロ型エポキシ樹脂、環状オキシラン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ型脂肪族不飽和化合物、エポキシ化脂肪酸エステル、エステル型多価カルボン酸、アミノグリシジル型エポキシ樹脂、ハロゲン化型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類、及びこれらエポキシ樹脂をアミノ化合物、ポリアミド化合物等で変性した樹脂類等が挙げられる。
[含フッ素ポリオール類]
前記含フッ素ポリオール類としては、例えば、参考文献1(特開昭57−34107号公報)、参考文献2(特開昭61−275311号公報)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
[NCO/OH]
本実施形態の水系塗料組成物に含まれるポリオールの水酸基に対するブロックポリイソシアネートのイソシアネート基のモル当量比(NCO/OH)は、必要とする樹脂膜の物性により決定されるが、通常、0.01以上10以下であり、0.1以上5以下であることが好ましく、0.15以上3以下であることがより好ましく、0.2以上1.5以下であることがさらに好ましい。
<その他添加剤>
本実施形態の水系塗料組成物は、その他添加剤を更に含んでもよい。
その他添加剤としては、例えば、ポリオール中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。
前記硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
前記硬化触媒としては、塩基性化合物であってもよく、ルイス酸性化合物であってもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、オニウム塩のハロゲン化物、活性メチレン系化合物の金属塩、活性メチレン系化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等が挙げられる。前記オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はスルホニウム塩が好適である。
前記ルイス酸性化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
前記溶剤としては、上記「ブロックポリイソシアネートの製造方法」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
また、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤及び造膜助剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。
<水系塗料組成物の製造方法>
本実施形態の水系塗料組成物を製造する場合において、各種成分の配合の順番は限定されないが、ブロックポリイソシアネート(A)、並びに、アクリルポリオール(B)(アクリルポリオールのディスパージョン(B1)及びアクリルポリオールのエマルション(B2))のうち、アクリルポリオールのエマルション(B2)を最後に配合することが好ましい。
アクリルポリオールのエマルション(B2)を最後に配合することで、ブロックポリイソシアネート(A)の水系塗料組成物中の分散性をより良好な状態とすることができ、それにより、80℃程度の低温での硬化性、並びに、塗膜としたときの外観、耐溶剤性及び耐水性をより良好なものとすることができる。
また、上記3成分、並びに、必要に応じて、その他主剤成分及びその他添加剤を混合後、必要に応じて、水や溶剤を更に添加して、粘度を調整することで水系塗料組成物を得ることができる。
≪樹脂膜≫
本実施形態の樹脂膜は、上記水系塗料組成物を硬化させてなる。本実施形態の樹脂膜は、外観及び耐溶剤性に優れる。
本実施形態の樹脂膜は、上記水系塗料組成物を、基材にロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて塗装し、加熱することで硬化させることで得られる。
加熱温度は、省エネルギー及び基材の耐熱性の観点から、約60℃以上約120℃以下が好ましく、約65℃以上約110℃以下がより好ましく、約70℃以上約100℃以下がさらに好ましい。
加熱時間は、省エネルギー及び基材の耐熱性の観点から、約1分間以上約60分間以下が好ましく、約2分間以上約40分間以下がより好ましい。
具体的には、例えば、本実施形態の樹脂膜は、80℃で30分間加熱して硬化させることで製造することができる。
基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部;各種フィルム等が挙げられ、中でも、自動車車体の外板部又は自動車部品が好ましい。
基材の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等が挙げられ、中でも、金属材料又はプラスチック材料が好ましい。
基材は、上記金属材料の表面、又は、上記金属材料から成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。塗膜が形成された基材としては、必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの、例えば、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体であってもよい。基材は、上記プラスチック材料の表面、又は、上記金属材料から成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望による表面処理を行ったものであってもよい。また、基材は、プラスチック材料と金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
本実施形態の樹脂膜は、後述する実施例に示すように、上記樹脂組成物を80℃で30分間加熱して硬化させてなる膜厚40μmの樹脂膜を、23℃で1週間保存後にアセトン中に23℃で24時間浸漬した際のゲル分率が80質量%以上であることが好ましく、84質量%以上がより好ましく、86質量%以上がさらに好ましい。ゲル分率が上記下限値以上であることで、低温硬化性がより良好なものとすることができる。一方、ゲル分率の上限値は特に限定されないが、例えば100質量%とすることができる。ゲル分率の具体的な測定方法は、例えば、後述する実施例に示す方法を用いることができる。
本実施形態の樹脂膜は低温硬化性に優れることから、省エネルギー化が求められる種々の分野の製品や、耐熱性の低い材料の塗膜として好適に用いられる。
以下、本実施形態を実施例及び比較例に基づいて更に詳しく説明するが、本実施形態は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
以下に示す方法に従い、各物性の測定及び各評価を行った。
[物性1]
(イソシアネート基(NCO)含有率)
ポリイソシアネートのNCO含有率を測定するために、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートを測定試料として用いた。
まず、フラスコに測定試料2g以上3g以下を精秤した(Wg)。次いで、トルエン20mLを添加し、測定試料を溶解した。次いで、2規定のジ−n−ブチルアミンのトルエン溶液20mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。次いで、同様の操作をポリイソシアネート試料無しで行い、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)含有率(イソシアネート基(NCO)含有率)(質量%)を算出した。
イソシアネート基(NCO)含有率(質量%) = (V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
[物性2]
(数平均分子量)
ブロックポリイソシアネートの数平均分子量は、下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、「GPC」という)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量で求めた。
(測定条件)
装置:東ソー社製「HLC−8120GPC」(商品名)
カラム:東ソー社製「TSKgel SuperH1000」(商品名)×1本
「TSKgel SuperH2000」(商品名)×1本
「TSKgel SuperH3000」(商品名)×1本
キャリア:テトラハイドロフラン(THF)
検出方法:示差屈折計
試料濃度:5wt/vol%
検出方法:視差屈折計
流出量:0.6mL/分
カラム温度:30℃
[物性3]
(平均イソシアネート官能基数)
ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数(平均NCO数)は、下記式により、平均イソシアネート官能基数を求めた。なお、式中、「Mn」は、ブロックポリイソシアネート組成物について、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートの数平均分子量であり、上記「物性2」において測定された値を用いた。「NCO含有率」は、ブロックポリイソシアネート組成物について、ブロック剤によるブロック化前に測定したポリイソシアネートのイソシアネート基含有率であり、上記「物性1」において算出された値を用いた。
平均イソシアネート官能基数 = (Mn×NCO含有率×0.01)/42
[物性4]
(親水性化合物に由来する構成単位の含有量)
ブロックポリイソシアネート成分の総質量に対する親水性化合物に由来する構成単位の含有量(以下、「MPEG変性量」と略記する場合がある)は、以下の方法を用いて算出した。
MPEG変性量(質量%)
= 仕込みMPEG質量/得られたブロックポリイソシアネート成分の固形分の質量×100
なお、上記式において、ブロックポリイソシアネート成分の固形分の質量は、得られたブロックポリイソシアネート成分の総質量に固形分の含有量(質量%)を乗ずることで算出した。また、ブロックポリイソシアネート成分の固形分の含有量(質量%)は、以下の方法を用いて算出した。
まず、ブロックポリイソシアネート成分を試料として、溶剤希釈をした場合には、アルミニウム製カップの質量を精秤した(W0g)。試料約1gを入れて、加熱乾燥前のカップ質量を精秤した(W1g)。上記試料を入れたカップを105℃の乾燥機中で1時間加熱した。上記加熱後のカップを室温まで冷却した後、再度カップの質量を精秤した(W2g)。精秤した各質量を用いて、下記式から試料中の乾燥残分の質量%をブロックポリイソシアネート成分の固形分の含有量(質量%)として算出した。
固形分の含有量(質量%)=(W2-W0)/(W1-W0)×100
[物性5]
(ブロックポリイソシアネート成分の有効イソシアネート基(NCO)含有率)
ブロックポリイソシアネート成分の有効イソシアネート基(NCO)含有率は、次のように求めた。
なお、ここでいう「有効イソシアネート基(NCO)含有率」とは、ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート成分中に存在する架橋反応に関与しうるブロックイソシアネート基量を定量化したものであって、イソシアネート基の質量%で表したものである。
有効NCO含有率は、下記式により算出した。下記式において、「NCO%」及び「ブロックポリイソシアネート成分の固形分の含有量」は、それぞれ上述の物性1及び物性4に記載の方法を用いて算出された値を用いた。なお、試料が溶剤等で希釈されている場合は、希釈された状態での値を算出した。
有効NCO含有率(質量%)
=[(ブロックポリイソシアネート組成物の固形分の含有量(質量%))×{(ブロック化反応に使用したポリイソシアネートの質量)×NCO%}]/(ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート組成物の質量)
[物性6]
(水酸基に対するイソシアネート基のモル比)
水酸基に対するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、以下の方法を用いて算出した。
まず、ブロックポリイソシアネート成分の添加量をYとした場合のNCO基モル数yについて、以下の式で算出した。
y = [Y×{(有効NCO含有率(質量%))/100}]/42(g/mol)
別途、アクリルポリオールの添加量をZとした場合のOH基モル数zについて、以下の式で算出した。
z = [Z×{(固形分の含有量(質量%))/100}×{(アクリルポリオール樹脂100質量%に対する水酸基の含有量(質量%))/100}]/17(g/mol)
次いで、NCO/OHモル比は、以下の式で算出した。
NCO/OH = y/z
[物性7]
((b1)/{(b1)+(b2)})
アクリルポリオールのディスパージョン(B1)の水酸基のモル数をb1、アクリルポリオールのエマルション(B2)の水酸基のモル数をb2とした場合における、[(b1)/{(b1)+(b2)}]について、b1及びb2はそれぞれ以下の式を用いて算出した。なお、アクリルポリオールのディスパージョン(Allnex社製、商品名「Setaqua(登録商標)6515」、固形分:45質量%)における水酸基の含有量が、アクリルポリオール樹脂100質量%に対して3.3質量%であることから、以下の式を用いてモル数b1を算出した。また、アクリルポリオールのエマルション(Allnex社製、商品名「Setaqua(登録商標)6522」、固形分:42質量%)における水酸基の含有量が、アクリルポリオール樹脂100質量%に対して2.4質量%であることから、以下の式を用いてモル数b2を算出した。また、以下の式中、X1は、アクリルポリオールのディスパージョンの添加量、X2はアクリルポリオールのエマルションの添加量である。「45」は、アクリルポリオールのディスパージョンの固形分の含有量(質量%)である。「42」は、アクリルポリオールのエマルションの固形分の含有量(質量%)である。「3.3」はアクリルポリオールのディスパージョンにおけるアクリルポリオール樹脂100質量%に対する水酸基の含有量(質量%)である。「2.4」はアクリルポリオールのエマルションにおけるアクリルポリオール樹脂100質量%に対する水酸基の含有量(質量%)である。「17(g/mol)」は、水酸基(OH)の分子量である。
(b1) = {X1×(45/100)×(3.3/100)}/17(g/mol)
(b2) = {X2×(42/100)×(2.4/100)}/17(g/mol)
[評価1]
(低温硬化性)
得られた水系塗料組成物をポリプロピレン(PP)板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、80℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜を常温(23℃)で1週間保管し、ゲル分率の測定を行なった。ゲル分率は、樹脂膜をアセトン中に23℃で24時間浸漬した際の未溶解部分質量を浸漬前質量で除した値の百分率(質量%)として求めた。評価基準は以下に示すとおりである。
(評価基準)
○:ゲル分率が80質量%以上
△:ゲル分率が60質量%以上80%未満
×:ゲル分率が60質量%未満
[評価2]
(塗膜外観)
得られた水系塗料組成物をガラス板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、80℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜を常温(23℃)で1日間保管し、塗膜外観を目視で以下に示す評価基準に従い、評価した。
(評価基準)
○:平滑で、かつ、濁りが見られないもの
△:平滑だが、全体的に濁りが見られるもの
×:凹凸が見られ、かつ、全体的に濁りが見られるもの
[評価3]
(耐溶剤性(エタノールラビング試験))
得られた水系塗料組成物をガラス板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、80℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜を常温(23℃)で1日間保管した樹脂膜を、23℃でエタノールを染み込ませた綿棒で3cmの長さを20往復回擦り、樹脂膜の状態を目視で観察し、耐溶剤性を以下に示す評価基準に従い、評価した。
(評価基準)
○:ほぼ劣化が見られないもの
△:傷又はラビング部で薄膜化が見られたもの
×:ラビング部の樹脂膜が全て溶解した箇所が存在したもの
[評価4]
(耐水性)
得られた水系塗料組成物をガラス板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、80℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜を常温(23℃)で1日間保管した樹脂膜を、35℃の水に4時間浸漬し、4時間後の塗膜外観を目視で観察し、耐水性を以下に示す評価基準に従い、評価した。
(評価基準)
○:白化及びプリスターがほぼ見られないもの
△:白化が見られたもの
×:白化が見られ、一部膜の剥離が見られたもの
<ポリイソシアネートの合成>
[合成例1]
(ポリイソシアネートP−1の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部、及び、3価アルコールとε−カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール(ダイセル化学社製、「プラクセル303」(商品名)):5.2質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を90℃に1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を60℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が51質量%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去して、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(以下、「ポリイソシアネートP−1」と称する場合がある)を得た。得られたポリイソシアネートP−1のNCO含有率は18.8質量%、数平均分子量は1130、平均イソシアネート基数は5.1であった。
<ブロックポリイソシアネート成分の合成>
[合成例2]
(ブロックポリイソシアネート成分BP−1の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例1で得られたポリイソシアネートP−1:100質量部、メトキシポリエチレングリコール(MPG−081、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):18質量部(イソシアネート基100モル%に対して6モル%)、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP−508T、城北化学工業株式会社製):0.01質量部、及び、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM):67質量部を混合し、115℃で2時間反応を行った。反応液を40℃まで冷却し、ブロック剤としてマロン酸ジ−tert−ブチルを反応物中のイソシアネート基のモル量に対して1.1モル当量となるように添加し、さらにナトリウムメチラート(28質量%)含有メタノール溶液:溶液として1.0質量部添加し、撹拌した。50℃に内浴を維持して6時間以上攪拌し、赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、DPDMを固形分60質量%になるように加えて攪拌し、ブロックポリイソシアネート成分BP−1を得た。ブロックポリイソシアネート成分BP−1の有効NCO含有率は、5.0質量%であった。
[合成例3]
(ブロックポリイソシアネート成分BP−2の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例1で得られたポリイソシアネートP−1:100質量部、メトキシポリエチレングリコール(MPG−081、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):90質量部(イソシアネート基100モル%に対して30モル%)、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP−508T、城北化学工業株式会社製):0.01質量部、及び、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM):67質量部を混合し、115℃で2時間反応を行った。反応液を40℃まで冷却し、ブロック剤としてマロン酸ジ−tert−ブチルを反応物中のイソシアネート基のモル量に対して1.1モル当量となるように添加し、さらにナトリウムメチラート(28質量%)含有メタノール溶液:溶液として1.0質量部添加し、撹拌した。50℃に内浴を維持して6時間以上攪拌し、赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、DPDMを固形分60質量%になるように加えて攪拌し、ブロックポリイソシアネート成分BP−2を得た。ブロックポリイソシアネート成分BP−2の有効NCO含有率は、3.0質量%であった。
[合成例4]
(ブロックポリイソシアネート成分BP−3の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例1で得られたポリイソシアネートP−1:100質量部、メトキシポリエチレングリコール(MPG−081、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):36質量部(イソシアネート基100モル%に対して12モル%)、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP−508T、城北化学工業株式会社製):0.01質量部、及び、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM):67質量部を混合し、115℃で2時間反応を行った。反応液を40℃まで冷却し、ブロック剤としてマロン酸ジ−tert−ブチルを反応物中のイソシアネート基のモル量に対して1.1モル当量となるように添加し、さらにナトリウムメチラート(28質量%)含有メタノール溶液:溶液として1.0質量部添加し、撹拌した。50℃に内浴を維持して6時間以上攪拌し、赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、DPDMを固形分60質量%になるように加えて攪拌し、ブロックポリイソシアネート成分BP−3を得た。ブロックポリイソシアネート成分BP−3の有効NCO含有率は、4.4質量%であった。
<水系塗料組成物の製造>
[実施例1]
(水系塗料組成物T−a1の製造)
ポリカップにブロックポリイソシアネート成分BP−1:33質量部を添加し、そこにブロックポリイソシアネート成分BP−1の固形分が45質量%となるように、3.3質量部の水を添加し、ディスパー羽根を用いて600rpmで5分間攪拌した。その後、600rpmで攪拌した状態で、アクリルポリオールのディスパージョン(Allnex社製、商品名「Setaqua(登録商標)6515」):15質量部を5分間かけて滴下し、滴下後、5分間攪拌した。その後、600rpmで攪拌した状態で、アクリルポリオールのエマルション(Allnex社製、商品名「Setaqua(登録商標)6522」):85質量部を5分間かけて滴下し、滴下後、5分間攪拌した。最後に、固形分が40質量%となるように、イオン交換水を添加し、600rpmで5分間攪拌し、水系塗料組成物T−a1を得た。
[実施例2〜4、6〜7及び比較例1〜3]
(水系塗料組成物T−a2〜4、T−a6〜7及びT−b1〜T−b3の製造)
表1〜2に記載のブロックポリイソシアネート成分の種類及び配合量、並びに、アクリルポリオールのディスパージョン及びエマルションの配合量とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、各水系塗料組成物を得た。
[実施例5]
(水系塗料組成物T−a5の製造)
ポリカップにブロックポリイソシアネート成分BP−1:33質量部を添加し、そこにブロックポリイソシアネート成分BP−1の固形分が45質量%となるように、3.3質量部の水を添加し、ディスパー羽根で600rpmで5分間攪拌した。その後、600rpmで攪拌した状態で、アクリルポリオールのエマルション(Allnex社製、商品名「Setaqua(登録商標)6522」):85質量部を5分間かけて滴下し、滴下後、5分間攪拌した。その後、600rpmで攪拌した状態で、アクリルポリオールのディスパージョン(Allnex社製、商品名「Setaqua(登録商標)6515」):15質量部を5分間かけて滴下し、滴下後、5分間攪拌した。最後に、固形分が40質量%となるように、イオン交換水を添加し、600rpmで5分間攪拌し、水系塗料組成物T−a5を得た。
Figure 2021178911
Figure 2021178911
表1〜表2から、水系塗料組成物T−a1〜T−a7(実施例1〜7)では、80℃程度の低温での硬化性、並びに、塗膜としたときの外観及び耐溶剤性に優れていた。
また、(b1)/{(b1)+(b2)}が異なる水系塗料組成物T−a1〜T−a4(実施例1〜4)の比較において、(b1)/{(b1)+(b2)}が大きくなるほど塗膜外観がより良好になる傾向がみられ、(b1)/{(b1)+(b2)}が0.21以上0.39以下である場合に、耐溶剤性がより良好になる傾向がみられ、(b1)/{(b1)+(b2)}が0.21である場合に80℃程度の低温での硬化性がより良好になる傾向がみられた。
また、製造時におけるアクリルポリオールのディスパージョン(B1)及びアクリルポリオールのエマルション(B2)の添加する順番が異なる水系塗料組成物T−a4及びT−a5(実施例4及び5)の比較において、アクリルポリオールのエマルション(B2)を最後に添加した水系塗料組成物T−a4では、アクリルポリオールのディスパージョン(B1)を最後に添加した水系塗料組成物T−a5と比較して、80℃程度の低温での硬化性、並びに、塗膜としたときの外観、耐溶剤性及び耐水性の全てがより良好になる傾向がみられた。
また、MPEG変性量が異なるブロックポリイソシアネート成分を用いた水系塗料組成物T−a4、T−a6及びT−a7(実施例4、6及び7)において、MPEG変性量が小さくなるほど、塗膜としたときの耐溶剤性及び耐水性がより良好なる傾向がみられた。
一方、(b1)/{(b1)+(b2)}が1.0である水系塗料組成物T−b1では、塗膜としたときの外観は良好であったが、80℃程度の低温での硬化性、並びに、塗膜としたときの耐溶剤性及び耐水性が劣っていた。
また、(b1)/{(b1)+(b2)}が0である水系塗料組成物T−b2では、塗膜としたときの耐溶剤性及び耐水性が良好であったが、80℃程度の低温での硬化性及び塗膜としたときの外観が劣っていた。
また、(b1)/{(b1)+(b2)}が0.69である水系塗料組成物T−b3では、80℃程度の低温での硬化性、並びに、塗膜としたときの外観及び耐水性は良好であったが、耐溶剤性が劣っていた。
本実施形態の水系塗料組成物及びその製造方法によれば、80℃程度の低温での硬化性、並びに、塗膜としたときの外観及び耐溶剤性に優れる水系塗料組成物を提供することができる。本実施形態の樹脂膜及びその製造方法は、前記水系塗料組成物を用いており、外観及び耐溶剤性に優れる樹脂膜が得られる。本実施形態の樹脂膜は、耐熱性の低い材料の塗膜として好適に用いられる。

Claims (6)

  1. ブロックポリイソシアネート(A)と、
    アクリルポリオールのディスパージョン(B1)と、
    アクリルポリオールのエマルション(B2)と、
    を含有し、
    前記アクリルポリオールのディスパージョン(B1)の水酸基のモル数をb1、前記アクリルポリオールのエマルション(B2)の水酸基のモル数をb2とした場合に、[(b1)/{(b1)+(b2)}]が0.05以上0.5以下である、水系塗料組成物。
  2. 前記ブロックポリイソシアネート(A)の少なくとも一部が、親水性化合物から誘導される構成単位を有する、請求項1に記載の水系塗料組成物。
  3. 前記親水性化合物がノニオン性化合物であり、
    前記ブロックポリイソシアネートの総質量に対する前記ノニオン性化合物から誘導される構成単位の含有量が1質量%以上30質量%以下である、請求項2に記載の水系塗料組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の水系塗料組成物の製造方法であって、
    前記ブロックポリイソシアネート(A)、前記アクリルポリオールのディスパージョン(B1)、及び前記アクリルポリオールのエマルション(B2)のうち、前記アクリルポリオールのエマルション(B2)を最後に配合することを含む、水系塗料組成物の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の水系塗料組成物を硬化させてなる、樹脂膜。
  6. 請求項5に記載の樹脂膜の製造方法であって、
    前記水系塗料組成物を80℃で30分間加熱して硬化させることを含む、樹脂膜の製造方法。
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