JP2023076858A - ブロックポリイソシアネート組成物、樹脂組成物、樹脂膜及び積層体 - Google Patents

ブロックポリイソシアネート組成物、樹脂組成物、樹脂膜及び積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】100℃で焼付した際の硬化性に優れ、且つ、樹脂膜としたときの硬度及び耐薬品性に優れるブロックポリイソシアネート組成物を提供する。【解決手段】ブロックポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されたブロックポリイソシアネートであって、一般式(I)で表される構成単位を含む、ブロックポリイソシアネート(B)と、メラミン樹脂(M)と、を含む。[化1]TIFF2023076858000011.tif31170【選択図】なし

Description

本発明は、ブロックポリイソシアネート組成物、樹脂組成物、樹脂膜及び積層体に関する。
従来、ポリウレタン樹脂塗料は非常に優れた耐摩耗性、耐薬品性及び耐汚染性を有している。特に、脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートから得られたポリイソシアネートを用いたポリウレタン樹脂塗料はさらに耐候性が優れ、その需要は増加する傾向にある。しかしながら、一般にポリウレタン樹脂塗料は二液性であるため、その使用には極めて不便である。即ち、通常のポリウレタン樹脂塗料はポリオール及びポリイソシアネートの二成分からなり、ポリオール及びポリイソシアネートを別々に貯蔵し、塗装時に両者を混合する必要がある。また、一旦両者を混合すると塗料は短時間でゲル化し使用できなくなるという課題を有する。ポリウレタン樹脂塗料はこのような課題を有するため、自動車塗装又は弱電気塗装のようなライン塗装を行う分野において、自動塗装に用いることを極めて困難にしている。また、イソシアネートは水と容易に反応するため、電着塗料のような水系塗料での使用は不可能である。更に、イソシアネートを含む塗料を用いた場合には、作業終了時の塗装機及び塗装槽の洗浄等を充分に行う必要があるため、作業能率は著しく低下する。
上述の課題を改善するために、従来から、活性なイソシアネート基をすべてブロック剤で封鎖したブロックポリイソシアネートを用いることが提案されている。このブロックポリイソシアネートは、常温ではポリオールと反応しない。しかしながら、加熱することによりブロック剤が解離し、活性なイソシアネート基が再生されてポリオールと反応し架橋反応が起こるので、上述の課題を改善することができる。従って、数多くのブロック剤の検討がなされおり、例えばフェノール、メチルエチルケトオキシム等が代表的なブロック剤として挙げられる。
しかしながら、これらのブロック剤を用いたブロックポリイソシアネートを用いた場合には、一般に140℃以上の高い焼付け温度が必要である。高温での焼付けを必要とすることは、エネルギー的に不利であるばかりでなく、基材の耐熱性を必要とし、その用途が限定される要因となる。
一方、低温焼付け型のブロックポリイソシアネートとして、アセト酢酸エステル、マロン酸ジエステル等の活性メチレン系化合物を用いたブロックポリイソシアネートの研究がなされている(例えば、特許文献1等参照)。その中でも、さらに低温硬化する技術が継続検討されている。例えば、特許文献2及び特許文献3では、低温で硬化するブロックポリイソシアネート組成物が提案されている。
また、一般的に、塗膜硬度を発現させるには、メラミン系化合物を硬化剤として用いることが知られている(例えば、特許文献4等参照)。
特許第3547197号公報 国際公開第2019/065890号 特許第5855091号公報 特開平11-228904号公報
しかし、一般的には、活性メチレン系化合物を用いたブロックポリイソシアネートを用いた塗膜では、塗膜硬度が低い傾向があり、課題となっている。
また、メラミン系化合物の場合、100℃以下の低温では硬化が進行せず、耐薬品性等の塗膜物性が不足する場合がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、100℃で焼付した際の硬化性に優れ、且つ、樹脂膜としたときの硬度及び耐薬品性に優れるブロックポリイソシアネート組成物、並びに、前記ブロックポリイソシアネート組成物を用いた樹脂組成物、樹脂膜及び積層体を提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されたブロックポリイソシアネートであって、下記一般式(I)で表される構成単位を含む、ブロックポリイソシアネート(B)と、
メラミン樹脂(M)と、
を含む、ブロックポリイソシアネート組成物。
Figure 2023076858000001
(一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。前記R11、前記R12及び前記R13の合計炭素数は、3以上20以下である。R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。波線は結合手を表す。)
(2) 前記ブロックポリイソシアネート(B)は、前記一般式(I)で表される構造として、下記一般式(I-1)で表される構造を含む、(1)に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
Figure 2023076858000002
(一般式(I-1)中、R111、R112及びR113は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。前記R111、前記R112及び前記R113の合計炭素数は、3以上20以下である。R114及びR115は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。波線は結合手を表す。)
(3) 前記R11、前記R12及び前記R13は、それぞれ独立に、無置換のアルキル基であり、且つ、
前記R14、前記R15及び前記R16は、それぞれ独立に、水素原子、又は無置換のアルキル基である、(1)又は(2)に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(4) 前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種以上のジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートである、(1)~(3)のいずれか一つに記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(5) 前記ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数が3.5以上である、(1)~(4)のいずれか一つに記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(6) (1)~(5)のいずれか一つに記載のブロックポリイソシアネート組成物と、多価ヒドロキシ化合物と、を含む、樹脂組成物。
(7) (6)に記載の樹脂組成物を硬化させてなる、樹脂膜。
(8) 基材上に、(7)に記載の樹脂膜を1層以上積層してなる積層体であって、
前記樹脂膜の1層当たりの厚さが1μm以上50μm以下である、積層体。
上記態様のブロックポリイソシアネート組成物によれば、100℃で焼付した際の硬化性に優れ、且つ、樹脂膜としたときの硬度及び耐薬品性に優れるブロックポリイソシアネート組成物を提供することができる。上記態様の樹脂組成物は、前記ブロックポリイソシアネート組成物を含み、100℃で焼付した際の硬化性に優れ、且つ、樹脂膜としたときの硬度及び耐薬品性に優れる。上記態様の樹脂膜は、前記樹脂組成物を硬化させてなり、硬度及び耐薬品性に優れる。上記態様の積層体は、前記樹脂膜を備え、硬度及び耐薬品性に優れる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変更して実施できる。
なお、本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物が複数結合した反応物を意味する。
本明細書において、「構成単位」とは、ポリイソシアネートやブロックポリイソシアネートを構成する構造において、一分子の単量体に起因する構造を意味する。例えば、マロン酸エステルに由来する構成単位とは、ブロックポリイソシアネート中の一分子のマロン酸エステルに起因する構造を示す。構成単位は、単量体の(共)重合反応によって直接形成された単位であってもよく、(共)重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
≪ブロックポリイソシアネート組成物≫
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、ブロックポリイソシアネート(B)と、メラミン樹脂(M)と、を含む。
ブロックポリイソシアネート(B)は、ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されたブロックポリイソシアネートであって、下記一般式(I)で表される構成単位(以下、単に「構成単位(I)」と称する場合がある)を含む。
Figure 2023076858000003
(一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。前記R11、前記R12及び前記R13の合計炭素数は、3以上20以下である。R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。波線は結合手を表す。)
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、上記構成を有することで、100℃で焼付した際の硬化性に優れ、且つ、樹脂膜としたときの硬度及び耐薬品性に優れる。
次いで、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物の各構成成分について、以下に詳細を説明する。
<ブロックポリイソシアネート(B)>
ブロックポリイソシアネート(B)は、ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤との反応物である。すなわち、ブロックポリイソシアネート(B)は、ポリイソシアネート中の少なくとも一部、好ましくは全部のイソシアネート基が、マロン酸エステルを含むブロック剤でブロック化されている。
[構成単位(I)]
ブロックポリイソシアネート(B)は、分子内に構成単位(I)を含む。構成単位(I)は、ポリイソシアネートのイソシアネート基がマロン酸エステルによってブロック化されて形成される構造である。
Figure 2023076858000004
(一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。前記R11、前記R12及び前記R13の合計炭素数は、3以上20以下である。R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。波線は結合手を表す。)
(R11、R12、R13、R14、R15及びR16
11、R12、R13、R14、R15及びR16におけるアルキル基としては、炭素数は1以上20以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。
置換基を有しないアルキル基として、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
11、R12、R13、R14、R15及びR16が、置換基を有するアルキル基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアルキル基としては、例えば、ヒドロキシアミノメチル基、ヒドロキシアミノエチル基、ヒドロキシアミノプロピル基等が挙げられる。
11、R12及びR13の合計炭素数は、3以上20以下であり、4以上20以下であることが好ましく、4以上12以下であることがより好ましく、4以上9以下であることがさらに好ましく、4以上6以下であることが特に好ましい。
11、R12及びR13の合計炭素数が上記下限値以上であることにより、樹脂膜としたときの硬度を発現することができる。一方で、上記上限値以下であることにより、100℃以下の低温での硬化性を発現させることができる。
また、塗膜とした時の耐薬品性の観点から、R11、R12及びR13の合計炭素数は4であることが最も好ましい。
中でも、R11、R12、R13、R14、R15及びR16におけるアルキル基としては、無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上4以下の無置換のアルキル基であることがより好ましい。
11、R12及びR13としては、100℃以下の低温での硬化性がより向上することから、それぞれ独立に、無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上4以下の無置換のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましい。
11、R12及びR13のうち少なくとも1つがエチル基であることが好ましい。
14、R15及びR16としては、それぞれ独立に、水素原子又は無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1以上4以下の無置換のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましい。
14、R15及びR16のうち、少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、1つのみが水素原子であることがより好ましい。R14、R15及びR16のうち、少なくとも1つが水素原子であることで、100℃以下の低温での硬化性を維持しつつ、樹脂膜としたときの硬度をより向上させることができる。
つまり、構成単位(I)として、下記一般式(I-1)に示す構成単位(以下、「構成単位(I-1)」と称する場合がある)を含むことが好ましい。
Figure 2023076858000005
(一般式(I-1)中、R111、R112及びR113は、それぞれ上記R11、R12及びR13と同じである。R114及びR115は、それぞれ上記R15及びR16と同じである。波線は結合手を表し、ポリイソシアネートのイソシアネート基を除いた残基との結合部位を表す。)
111、R112及びR113の合計炭素数は、3以上20以下であり、4以上20以下であることが好ましく、4以上12以下であることがより好ましく、4以上9以下であることがさらに好ましく、4以上6以下であることが特に好ましい。
111、R112及びR113の合計炭素数が上記下限値以上であることにより、樹脂膜としたときの硬度を発現することができる。一方で、上記上限値以下であることにより、100℃以下の低温での硬化性を発現させることができる。
また、塗膜とした時の耐溶剤性の観点から、R111、R112及びR113の合計炭素数は4であることが最も好ましい。
中でも、R111、R112及びR113、R114及びR115におけるアルキル基としては、無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上4以下の無置換のアルキル基であることがより好ましい。
111、R112及びR113としては、樹脂膜としたときの硬度及び100℃以下の低温での硬化性がより向上することから、それぞれ独立に、無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上4以下の無置換のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましい。
111、R112及びR113のうち少なくとも1つがエチル基であることが好ましい。
114及びR115としては、それぞれ独立に、水素原子又は無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1以上4以下の無置換のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましい。
構成単位(I)の総モル量に対する、構成単位(I-1)の含有量(構成単位(I-1)/構成単位(I))は、10モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることがよりさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。構成単位(I-1)の含有量が上記下限値以上であることで、100℃以下の低温での硬化性がより良好なものとなる。
一方、構成単位(I-1)の含有量の上限値は、例えば、構造(I)の総モル量に対して、100モル%、すなわち、構成単位(I)を全て構成単位(I-1)とすることができ、構成単位(I)の総モル量に対して、95モル%とすることができ、90モル%とすることができる。
構成単位(I)の総モル量に対する、構成単位(I-1)の含有量(構成単位(I-1)/構成単位(I))は、例えば、ブロックポリイソシアネート組成物を、13C-NMRによって、構成単位(I)に対する構成単位(I-1)の組成比を測定することで、構成単位(I)に対する構成単位(I-1)のモル比を算出することができる。
[構成単位(II)]
ブロックポリイソシアネート(B)は、その分子内に、上記構成単位(I)に加えて、下記一般式(II)で表される構成単位(以下、「構成単位(II)と称する場合がある」を更に含むことが好ましい。
Figure 2023076858000006
(一般式(II)中、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ上記R15及びR16と同じである。波線は結合手を表、ポリイソシアネートのイソシアネート基を除いた残基との結合部位を表す。)
(R21、R22、R23及びR24
21、R22、R23及びR24としては、樹脂膜としたときの硬度に優れることから、水素原子、又は、炭素数1以上4以下の置換基を有しないアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、又は、エチル基がより好ましく、100℃以下の低温での硬化性に優れることから、メチル基、又は、エチル基がさらに好ましい。
21、R22、R23及びR24が全てメチル基である場合には、構成単位(II)のマロン酸エステルの2つのエステル部位は、ともに、イソプロピル基となる。また、R21及びR22のいずれか一方が水素原子であり、他方がメチル基であり、且つ、R23及びR24のいずれか一方が水素原子であり、他方がメチル基である場合には、構成単位(II)のマロン酸エステルの2つのエステル部位は、ともに、エチル基となる。
中でも、R21、R22、R23及びR24が全てメチル基である、すなわち、構成単位(II)のマロン酸エステルの2つのエステル部位がともにイソプロピル基であることが特に好ましい。
構成単位(I)に対する構成単位(II)のモル比(構成単位(II)/構成単位(I))は、4/96以上96/4以下であることが好ましく、5/95以上95/5以下がより好ましく、7/93以上93/7以下がさらにより好ましく、10/90以上90/10以下がさらに好ましく、20/80以上85/15以下がよりさらに好ましく、30/70以上85/15以下が特に好ましく、35/65以上85/15以下がより特に好ましく、50/50以上70/30以下が最も好ましい。構成単位(II)/構成単位(I)が上記下限値以上であることで、樹脂膜としたときの硬度をより良好なものとすることができ、上記上限値以下であることで、100℃以下の低温での硬化性をより良好なものとすることができる。
モル比は、例えば、ブロックポリイソシアネート組成物を、H-NMR及び13C-NMRにより、構成単位(I)に対する構成単位(II)の組成比を測定することで、構成単位(I)に対する構成単位(II)のモル比を算出することができる。
[ポリイソシアネート]
ポリイソシアネートは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物(以下、「イソシアネートモノマー」と称する場合がある)を複数反応させて得られる反応物である。
ポリイソシアネートは、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基及びビウレット基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有することができる。中でも、耐候性が優れることから、イソシアヌレート基を有することが好ましい。
イソシアネートモノマーとしては、炭素数4以上30以下のものが好ましい。イソシアネートモノマーとして具体的には、例えば、以下のものが例示される。これらイソシアネートモノマーは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(1)ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート。
(2)1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と称する場合がある)、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソイシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート(MPDI)、リジンジイソシアネート(以下、「LDI」と称する場合がある)等の脂肪族ジイソシアネート。
(3)イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と称する場合がある)、1,3-ビス(ジイソシアネートメチル) シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアネートノルボルナン、ジ(イソシアネートメチル)ノルボルナン等の脂環族ジイソシアネート。
(4)4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、「HTI」と称する場合がある)、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する場合がある)、リジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する場合がある)等のトリイソシアネート。
中でも、耐候性が優れることから、イソシアネートモノマーとしては、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートであることが好ましい。また、イソシアネートモノマーとしては、工業的入手の容易さから、HDI又はIPDIであることがより好ましい。また、イソシアネートモノマーとしては、ブロックポリイソシアネート成分を低粘度にする観点から、HDIであることがさらに好ましい。
また、ポリイソシアネートの製造に用いられるイソシアネートモノマーとしては、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートのいずれかを単独で用いてもよく、或いはそれらを組み合わせて用いてもよいが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを組み合わせて用いることが好ましく、HDI及びIPDIを用いることが特に好ましい。脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを用いることで、塗膜としたときの強靭性及び硬度をより向上させることができる。
ポリイソシアネートにおいて、塗膜硬度、強度向上の観点において、脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量比(脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位/脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位)は、50/50以上95/5以下が好ましく、55/45以上93/7以下がより好ましく、60/40以上91/9以下がさらに好ましく、65/35以上90/10以下がさらに好ましい。
脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量比が上記下限値以上であることで、塗膜としたときの可とう性が低下することをより効果的に抑制することができる。一方で、上記上限値以下であることで、塗膜としたときの硬度をより向上させることができる。
脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量比は、例えば、以下の方法を用いて算出することができる。まず、反応後の未反応ジイソシアネート質量とガスクロマトグラフ測定により得られたこの未反応ジイソシアネート中の脂肪族ジイソシアネート濃度及び脂環族ジイソシアネート濃度とから、未反応脂肪族ジイソシアネートの質量及び未反応脂環族ジイソシアネートの質量を算出する。次いで、仕込んだ脂肪族ジイソシアネートの質量及び脂環族ジイソシアネートの質量から、上記算出した未反応脂肪族ジイソシアネートの質量及び未反応脂環族ジイソシアネートの質量をそれぞれ差し引いた後、得られた差をそれぞれ脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量、脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量とする。次いで、脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量を脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量で除することで、脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量比が得られる。
(ポリオール)
ポリイソシアネートは、上述したジイソシアネートモノマーと平均水酸基官能基数が3.0以上8.0以下であるポリオールとから誘導されたものであることが好ましい。これにより、得られるポリイソシアネートの平均イソシアネート基数をより大きくすることができる。当該ポリイソシアネートでは、ポリオールの水酸基と、ジイソシアネートモノマーのイソシアネート基との反応により、ウレタン基が形成されている。
ポリオールの平均水酸基官能基数は3.0以上8.0以下が好ましく、3以上6以下がより好ましく、3以上5以下がさらに好ましく、3又は4が特に好ましい。なお、ここでいうポリオールの平均水酸基官能基数はポリオール1分子内に存在する水酸基の数である。
ポリオールの数平均分子量としては、塗膜硬度、強度向上の観点において、100以上1000以下が好ましく、100以上900以下が好ましく、100以上600以下がより好ましく、100以上570以下がより好ましく、100以上500以下がさらに好ましく、100以上400以下がよりさらに好ましく、100以上350以下が特に好ましく、100以上250以下が最も好ましい。
ポリオールの数平均分子量が上記範囲内であることで、ブロックポリイソシアネート組成物は、塗膜としたときの低温硬化性により優れ、且つ、特に硬度や強度により優れる。ポリオールの数平均分子量Mnは、例えば、GPC測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
このようなポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、3価以上の多価アルコールとε-カプロラクトンとから誘導されるポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
ポリカプロラクトンポリオールの市販品としては、例えば、ダイセル社の「プラクセル303」(数平均分子量300)、「プラクセル305」(数平均分子量550)、「プラクセル308」(数平均分子量850)、「プラクセル309」(数平均分子量900)等が挙げられる。
(ポリイソシアネートの製造方法)
ポリイソシアネートの製造方法について、以下に詳細を説明する。
ポリイソシアネートは、例えば、アロファネート基を形成するアロファネート化反応、ウレトジオン基を形成するウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン基を形成するイミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート基を形成するイソシアヌレート化反応、ウレタン基を形成するウレタン化反応、及び、ビウレット基を形成するビウレット化反応を、過剰のイソシアネートモノマー存在下で一度に製造して、反応終了後に、未反応のイソシアネートモノマーを除去して得ることができる。すなわち、上記反応により得られるポリイソシアネートは、上述のイソシアネートモノマーが複数結合したものであり、且つ、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基及びビウレット基からなる群より選択される1種類以上を有する反応物である。
また、上記の反応を別々に行ない、それぞれ得たポリイソシアネートを特定比率で混合してもよい。
製造の簡便さからは、上記反応を一度に行いポリイソシアネートを得ることが好ましく、各官能基のモル比を自由に調整する観点からは、別々に製造した後に混合することが好ましい。
(1)アロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法
アロファネート基含有ポリイソシアネートは、イソシアネートモノマーにアルコールを添加し、アロファネート化反応触媒を用いることにより得られる。
アロファネート基の形成に用いられるアルコールは、炭素、水素及び酸素のみで形成されるアルコールが好ましい。
前記アルコールとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、モノアルコール、ジアルコール等が挙げられる。これらアルコールは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール等が挙げられる。
ジアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチルヘキサンジオール等が挙げられる。
中でも、アルコールとしては、モノアルコールが好ましく、分子量200以下のモノアルコールがより好ましい。
アロファネート化反応触媒としては、以下に限定されないが、例えば、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニル等のアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
錫のアルキルカルボン酸塩(有機錫化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
鉛のアルキルカルボン酸塩(有機鉛化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸鉛等が挙げられる。
亜鉛のアルキルカルボン酸塩(有機亜鉛化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸亜鉛等が挙げられる。
ビスマスのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ビスマス等が挙げられる。
ジルコニウムのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム等が挙げられる。
ジルコニルのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ジルコニル等が挙げられる。これら触媒は、1種を単独又は2種以上を併用することができる。
また、後述するイソシアヌレート化反応触媒もアロファネート化反応触媒となり得る。後述するイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応を行なう場合は、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(以下、「イソシアヌレート型ポリイソシアネート」と称する場合がある)も当然のことながら生成する。
中でも、アロファネート化反応触媒として、後述するイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応とイソシアヌレート化反応とを行うことが経済的生産上、好ましい。
上述したアロファネート化反応触媒の使用量の下限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、10質量ppmであることが好ましく、20質量ppmであることがより好ましく、40質量ppmであることがさらに好ましく、80質量ppmであることが特に好ましい。
上述したアロファネート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、800質量ppmであることがより好ましく、600質量ppmであることがさらに好ましく、500質量ppmであることが特に好ましい。
すなわち、上述したアロファネート化反応触媒の使用量は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、10質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましく、20質量ppm以上800質量ppm以下であることがより好ましく、40質量ppm以上600質量ppm以下であることがさらに好ましく、80質量ppm以上500質量ppm以下であることが特に好ましい。
また、アロファネート化反応温度の下限値としては、40℃であることが好ましく、60℃であることがより好ましく、80℃であることがさらに好ましく、100℃であることが特に好ましい。
また、アロファネート化反応温度の上限値としては、180℃であることが好ましく、160℃であることがより好ましく、140℃であることがさらに好ましい。
すなわち、アロファネート化反応温度としては、40℃以上180℃以下であることが好ましく、60℃以上160℃以下であることがより好ましく、80℃以上140℃以下であることがさらに好ましく、100℃以上140℃以下であることが特に好ましい。
アロファネート化反応温度が上記下限値以上であることによって、反応速度をより向上させることが可能である。アロファネート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
(2)ウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからウレトジオン基を有するポリイソシアネートを誘導する場合は、例えば、イソシアネートモノマーを、ウレトジオン化反応触媒を用いて、又は、熱により、多量化することによって製造することができる。
ウレトジオン化反応触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリアルキルホスフィン、トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン、シクロアルキルホスフィン等の第3ホスフィン、ルイス酸等が挙げられる。
トリアルキルホスフィンとしては、例えば、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン等が挙げられる。
トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィンとしては、例えば、トリス-(ジメチルアミノ)ホスフィン等が挙げられる。
シクロアルキルホスフィンとしては、例えば、シクロヘキシル-ジ-n-ヘキシルホスフィン等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、三フッ化ホウ素、酸塩化亜鉛等が挙げられる。
ウレトジオン化反応触媒の多くは、同時にイソシアヌレート化反応も促進しうる。
ウレトジオン化反応触媒を用いる場合には、所望の収率となった時点で、リン酸、パラトルエンスルホン酸メチル等のウレトジオン化反応触媒の失活剤を添加してウレトジオン化反応を停止することが好ましい。
また、ウレトジオン化反応触媒を用いることなく、上記脂肪族ジイソシアネート及び上記脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートを加熱してウレトジオン基を有するポリイソシアネートを得る場合、その加熱温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上170℃以下がより好ましい。また、加熱時間は1時間以上4時間以下が好ましい。
(3)イミノオキサジアジンジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからイミノオキサジアジンジオン基含有ポリイソシアネートを誘導する場合は、通常、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒を用いる。
イミノオキサジアジンジオン化触媒としては、例えば、以下の1)又は2)に示すもの等が挙げられる。
1)一般式M[Fn]、又は、一般式M[Fn(HF)m]で表される(ポリ)フッ化水素
(式中、m及びnは、m/n>0の関係を満たす整数である。Mはn荷電カチオン(混合物)又は合計でn価の1個以上のラジカルである。)
2)一般式R1-CR’2-C(O)O-、又は、一般式R2=CR’-C(O)O-で表される化合物と、第4級アンモニウムカチオン、又は、第4級ホスホニウムカチオンとからなる化合物。
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、飽和又は不飽和の炭素数1以上30以下のパーフルオロアルキル基である。複数あるR’はそれぞれ独立に水素原子、又は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1以上20以下のアルキル基若しくはアリール基である。)
1)の化合物((ポリ)フッ化水素)として具体的には、例えば、テトラメチルアンモニウムフルオリド水和物、テトラエチルアンモニウムフルオリド等が挙げられる。
2)の化合物として具体的には、例えば、3,3,3-トリフルオロカルボン酸、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブタン酸、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンタン酸、3,3-ジフルオロプロパ-2-エン酸等が挙げられる。
中でも、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒としては、入手容易性の観点からは、1)が好ましく、安全性の観点からは、2)が好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量の下限値は、特に限定されないが、反応性の観点から、原料であるHDI等のイソシアネートモノマーに対して、質量比で、5ppmが好ましく、10ppmがより好ましく、20ppmがさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量の上限値は、生成物の着色及び変色の抑制や反応制御の観点から、原料であるHDI等のイソシアネートモノマーに対して、質量比で、5000ppmが好ましく、2000ppmがより好ましく、500ppmがさらに好ましい。
すなわち、イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量は、原料であるHDI等のイソシアネートモノマーに対して、質量比で、5ppm以上5000ppm以下であることが好ましく、10ppm以上2000ppm以下がより好ましく、20ppm以上500ppm以下がさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化の反応温度の下限値は、特に限定されないが、反応速度の観点から、40℃が好ましく、50℃がより好ましく、60℃がさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化の反応温度の上限値は、生成物の着色及び変色の抑制の観点から、150℃が好ましく、120℃がより好ましく、110℃がさらに好ましい。
すなわち、イミノオキサジアジンジオン化の反応温度は、40℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上120℃以下がより好ましく、60℃以上110℃以下がさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化反応が所望のイミノオキサジアジンジオン基含有量に達した時点で、イミノオキサジアジンジオン化反応を停止させることができる。イミノオキサジアジンジオン化反応は、例えば、酸性化合物を反応液に添加することで、停止することができる。酸性化合物としては、例えば、リン酸、酸性リン酸エステル、硫酸、塩酸、スルホン酸化合物等が挙げられる。これにより、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒を中和させる、又は、熱分解若しくは化学分解等により不活性化させる。反応停止後、必要があれば、ろ過を行う。
(4)イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、一般的に使用されるイソシアヌレート化反応触媒が挙げられる。
イソシアヌレート化反応触媒としては、特に限定されないが、一般に塩基性を有するものであることが好ましい。イソシアヌレート化反応触媒として具体的には、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記テトラアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
2)ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等のアリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記アリールトリアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
3)トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記ヒドロキシアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
4)酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、オクチル酸、カプリン酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等の金属塩。
5)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート。
6)ヘキサメチレンジシラザン等のアミノシリル基含有化合物。
7)マンニッヒ塩基類。
8)第3級アミン類とエポキシ化合物との混合物。
9)トリブチルホスフィン等の燐系化合物。
中でも、不要な副生成物を生じさせにくい観点からは、イソシアヌレート化反応触媒としては、4級アンモニウムのハイドロオキサイド又は4級アンモニウムの有機弱酸塩であることが好ましく、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩、アリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、又は、アリールトリアルキルアンモニウムの有機弱酸塩であることがより好ましい。
上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、500質量ppmであることがより好ましく、100質量ppmであることがさらに好ましい。
一方、上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の下限値は、特別な限定はないが、例えば、10質量ppmであってもよい。
イソシアヌレート化反応温度としては、50℃以上120℃以下であることが好ましく、60℃以上90℃以下であることがより好ましい。イソシアヌレート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
所望の転化率(仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対する、イソシアヌレート化反応で生成したポリイソシアネートの質量の割合)になった時点で、イソシアヌレート化反応を、酸性化合物(例えば、リン酸、酸性リン酸エステル等)の添加によって停止する。
なお、ポリイソシアネートを得るためには、反応の進行を初期で停止する必要がある。しかしながら、イソシアヌレート化反応は、初期の反応速度が非常に速いため、反応の進行を初期で停止することに困難が伴い、反応条件、特に触媒の添加量及び添加方法は慎重に選択する必要がある。例えば、触媒の一定時間毎の分割添加方法等が好適なものとして推奨される。
したがって、ポリイソシアネートを得るためのイソシアヌレート化反応の転化率は、10%以上60%以下であることが好ましく、15%以上55%以下であることがより好ましく、20%以上50%以下であることがさらに好ましい。
イソシアヌレート化反応の転化率が上記上限値以下であることによって、ブロックポリイソシアネート成分をより低粘度とすることができる。また、イソシアヌレート化反応の転化率が上記下限値以上であることによって、反応停止操作をより容易に行うことができる。
また、イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導する際に、上記イソシアネートモノマー以外に1価以上6価以下のアルコールを用いることができる。
使用することのできる1価以上6価以下のアルコールとしては、例えば、非重合性アルコール、重合性アルコールが挙げられる。ここでいう「非重合性アルコール」とは、重合性基を有さないアルコールを意味する。一方、「重合性アルコール」とは、重合性基及び水酸基を有する単量体を重合して得られるアルコールを意味する。
非重合性アルコールとしては、例えば、モノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等の多価アルコールが挙げられる。
モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-ノナノール、2-エチルブタノール、2,2-ジメチルヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-エチル-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
トリオール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
テトラオール類としては、例えば、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
重合性アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、アクリルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、二塩基酸の単独又は混合物と、多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られる生成物が挙げられる。
二塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の二塩基酸が挙げられる。
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、及び、グリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールが挙げられる。
また、ポリエステルポリオール類としては、例えば、上記多価アルコールを用いて、ε-カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
ポリエーテルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物、又は、強塩基性触媒を使用して、多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、ポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類、上記ポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られるいわゆるポリマーポリオール類が挙げられる。
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。
多価アルコールとしては、上記ポリエステルポリオール類において例示されたものと同様のものが挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
アクリルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合したものが挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和アミド、ビニル系単量体、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
不飽和アミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等が挙げられる。
ビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ポリオレフィンポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエン及びその水素添加物等が挙げられる。
(5)ウレタン基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからウレタン基を含有するポリイソシアネートを誘導する場合は、例えば、過剰のイソシアネートモノマーと、上記ポリオールと、必要に応じて上記ポリオール以外のアルコールと、を混合し、必要に応じてウレタン化反応触媒を添加することで製造することができる。
前記ポリオールとしては、上記「ポリオール」において例示されたものと同様ものが挙げられる。
前記ポリオール以外のアルコールとしては、上記「イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートの製造方法」において例示されたもののうち、上記「ポリオール」において例示されたものを除くものが挙げられる。
ウレタン化反応触媒としては、特に限定されないが、例えば、スズ系化合物、亜鉛系化合物、アミン系化合物等が挙げられる。
ウレタン化反応温度としては、50℃以上160℃以下であることが好ましく、60℃以上120℃以下であることがより好ましい。
ウレタン化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
また、ウレタン化反応時間としては、30分以上4時間以下であることが好ましく、1時間以上3時間以下であることがより好ましく、1時間以上2時間以下であることがさらに好ましい。
ポリオール(及び、必要に応じてポリオール以外のアルコール)の水酸基のモル量に対するイソシアネートモノマーのイソシアネート基のモル量の比は、2/1以上50/1以下が好ましい。当該モル比が上記下限値以上であることによって、ポリイソシアネートをより低粘度とすることができる。当該モル比が上記上限値以下であることによって、ウレタン基含有ポリイソシアネートの収率をより高められる。
(6)ビウレット基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからビウレット基を含有するポリイソシアネートを誘導するためのビウレット化剤としては、特に限定されないが、例えば、水、1価の第3級アルコール、蟻酸、有機第1モノアミン、有機第1ジアミン等が挙げられる。
ビウレット化剤1モルに対して、イソシアネート基を6モル以上とすることが好ましく、10モル以上とすることがより好ましく、10モル以上80モル以下とすることがさらに好ましい。ビウレット化剤1モルに対するイソシアネート基のモル量が上記下限値以上であれば、ポリイソシアネートが十分に低粘度になり、上記上限値以下であれば、樹脂膜としたときの低温硬化性がより向上する。
また、ビウレット化反応の際に溶剤を用いてもよい。溶剤は、イソシアネートモノマーと水等のビウレット化剤を溶解し、反応条件下で均一相を形成させるものであればよい。
前記溶剤として具体的には、例えば、エチレングリコール系溶剤、リン酸系溶剤等が挙げられる。
エチレングリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールメチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、エチレングリコールエチル-n-プロピルエーテル、エチレングリコールエチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールエチル-n-ブチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピル-n-ブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチル-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールエチル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール-n-プロピル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピル-n-ブチルエーテル等が挙げられる。
リン酸系溶剤としては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル等が挙げられる。
これらの溶剤は単独又は2種以上を混合して使用してもよい。
中でも、エチレングリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート又はジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
また、リン酸系溶剤としては、リン酸トリメチル又はリン酸トリエチルが好ましい。
ビウレット化反応温度としては、70℃以上200℃以下が好ましく、90℃以上180℃以下がより好ましい。上記上限値以下であることで、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に防止できる傾向にある。
上述したアロファネート化反応、ウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート化反応、ウレタン化反応、及び、ビウレット化反応は、それぞれ逐次行ってもよく、そのいくつかを並行して行ってもよい。
反応終了後の反応液から、未反応イソシアネートモノマーを薄膜蒸留、抽出等により除去し、ポリイソシアネートを得ることができる。
また、得られたポリイソシアネートに対して、例えば、貯蔵時の着色を抑制する目的で、酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール等のヒンダードフェノール等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら酸化防止剤や紫外線吸収剤は、1種を単独又は2種以上を併用してもよい。これらの添加量は、ポリイソシアネートの質量に対して、10質量ppm以上500質量ppm以下であることが好ましい。
(ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数)
ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数は、100℃以下の低温での硬化性を高める点で、2以上が好ましく、100℃以下の低温での硬化性、及び、多価ヒドロキシ化合物との相溶性の両立の観点から、3.0以上20.0以下がより好ましく、3.2以上10.0以下がさらに好ましく、3.4以上8.0以下が特に好ましく、3.5以上6.0以下が最も好ましい。
ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
(親水性化合物)
ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートの一部を親水性化合物で変性した、親水性化合物変性ポリイソシアネートを使用してもよい。
親水性化合物としては、ノニオン親水性化合物、アニオン親水性化合物、カチオン親水性化合物が挙げられる。これら親水性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ノニオン親水性化合物として、具体的には、モノアルコール、アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物が挙げられる。モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらノニオン親水性化合物は、イソシアネート基と反応する活性水素基も有する。
中でも、ノニオン親水性化合物としては、少ない使用量でブロックポリイソシアネート組成物の水分散性を向上できることから、モノアルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
エチレンオキサイドを付加した化合物のエチレンオキサイドの付加数としては、4以上30以下が好ましく、4以上25以下がより好ましい。エチレンオキサイドの付加数が上記下限値以上であることで、ブロックポリイソシアネート組成物に水分散性をより効果的に付与できる傾向にあり、エチレンオキサイドの付加数が上記上限値以下であることで、低温貯蔵時にブロックポリイソシアネート組成物の析出物がより発生しにくい傾向にある。
カチオン親水性化合物として、具体的には、カチオン親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられる。また、グリシジル基等の活性水素基を有する化合物と、スルフィド、ホスフィン等のカチオン親水性基を有する化合物を併せて、親水性化合物としてもよい。この場合は、予め、イソシアネート基を有する化合物と活性水素基を有する化合物を反応させ、グリシジル基等の官能基を付加し、その後、スルフィド、ホスフィン等の化合物を反応させる。製造の容易性の観点からは、カチオン親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が好ましい。
カチオン親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物として、具体的には、例えば、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が挙げられる。また、これらの化合物を用いて付加された三級アミノ基は、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルで四級化することもできる。
カチオン親水性化合物と脂環族ポリイソシアネートとの反応は、溶剤の存在下で反応させることができる。この場合の溶剤は、活性水素基を含まないものが好ましく、具体的には、例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
ブロックポリイソシアネートに付加されたカチオン親水性基は、アニオン性基を有する化合物で中和されることが好ましい。このアニオン性基として、具体的には、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物として、具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、エタンスルホン酸等が挙げられる。
燐酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、燐酸、酸性燐酸エステル等が挙げられる。
ハロゲン基を有する化合物として、具体的には、例えば、塩酸等が挙げられる。
硫酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、硫酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基を有する化合物としては、カルボキシ基を有する化合物が好ましく、酢酸、プロピオン酸又は酪酸がより好ましい。
アニオン親水性基として、具体的には、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基が挙げられる。
アニオン親水性化合物として、具体的には、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、モノヒドロキシカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物が挙げられる。
モノヒドロキシカルボン酸としては、例えば、1-ヒドロキシ酢酸、3-ヒドロキシプロパン酸、12-ヒドロキシ-9-オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸(ヒドロキシピバリン酸)、乳酸等が挙げられる。
ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物としては、例えば、ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等が挙げられる。
また、スルホン酸基と活性水素基とを併せて有する化合物も挙げられ、より具体的には、例えば、イセチオン酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物としては、ヒドロキシピバル酸又はジメチロールプロピオン酸が好ましい。
ブロックポリイソシアネートに付加されたアニオン親水性基は、塩基性物質であるアミン系化合物で中和することが好ましい。
アミン系化合物として、具体的には、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物等が挙げられる。
水溶性アミノ化合物として、具体的には、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンも挙げられ、これらを用いることもできる。これらのアミン系化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[ブロック剤]
ブロック剤は、マロン酸エステルを含む。マロン酸エステルとしては、特に限定はないが、1級アルキル基を有するマロン酸エステル、2級アルキル基を有するマロン酸エステル、又は3級アルキル基を有するマロン酸エステルを含むことが好ましく、2級アルキル基を有するマロン酸エステル又は3級アルキル基を有するマロン酸エステルを含むことがより好ましい。ブロック剤は、2級アルキル基を有するマロン酸エステル、1級アルキル基を有するマロン酸エステル、及び3級アルキル基を有するマロン酸エステルをそれぞれ1種類含んでもよく、2種以上組み合わせて含んでもよい。
1級アルキル基を有するマロン酸エステルとしては、特別な限定はないが、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジシクロヘキシル、マロン酸ジフェニル等が挙げられる。中でも、1級アルキル基を有するマロン酸エステルとしては、マロン酸ジエチルが好ましい。
2級アルキル基を有するマロン酸エステルとしては、特別な限定はないが、例えば、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸イソプロピルエチル等が挙げられる。中でも、2級アルキル基を有するマロン酸エステルとしては、マロン酸ジイソプロピルが好ましい。
3級アルキル基を有するマロン酸エステルとしては、特別な限定はないが、例えば、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ(2-メチル-2-ブチル)、マロン酸ジ(2-メチル-2-ペンチル)、マロン酸(tert-ブチル)エチル、マロン酸(2-メチル-2-ブチル)エチル、マロン酸(2-メチル-2-ブチル)イソプロピル、マロン酸(2-メチル-2-ペンチル)エチル、マロン酸(2-メチル-2-ペンチル)イソプロピル、マロン酸(2-メチル-2-ペンチル)へキシルイソプロピル等が挙げられる。中でも、マロン酸ジ(2-メチル-2-ブチル)、マロン酸ジ(2-メチル-2-ペンチル)、マロン酸(2-メチル-2-ブチル)イソプロピル、マロン酸(2-メチル-2-ペンチル)エチル、又はマロン酸(2-メチル-2-ペンチル)イソプロピルが好ましく、マロン酸(2-メチルー2-ブチル)エチル、マロン酸(2-メチル-2-ブチル)イソプロピル、マロン酸(2-メチル-2-ペンチル)エチル、又はマロン酸(2-メチル-2-ペンチル)へキシルイソプロピルがより好ましく、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸(2-メチル-2-ブチル)イソプロピル、又はマロン酸(2-メチルー2-ペンチル)イソプロピルがさらに好ましい。
3級アルキル基を有するマロン酸エステルは、市販のものを使用してもよく、或いは、参考文献1(特開平11-130728号)の方法を用いて、合成したものを使用してもよい。
ブロックポリイソシアネート(B)の製造に用いられる全ブロック剤のモル総量に対して、上記2級アルキル基を有するマロン酸エステル及び3級アルキル基を有するマロン酸エステルの含有量が、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、95モル%以上であることが特に好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
2級アルキル基を有するマロン酸エステル及び3級アルキル基を有するマロン酸エステルの含有量が上記範囲内であることにより、100℃以下の低温での硬化性をより向上させることができる。
(その他ブロック剤)
ブロックポリイソシアネート(B)の製造に用いられるブロック剤は、マロン酸エステル以外に、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物が奏する効果を阻害しない範囲内で、さらに、他のブロック剤を含んでもよい。
他のブロック剤としては、例えば、1)アルコール系化合物、2)アルキルフェノール系化合物、3)フェノール系化合物、4)マロン酸エステル以外の活性メチレン系化合物、5)メルカプタン系化合物、6)酸アミド系化合物、7)酸イミド系化合物、8)イミダゾール系化合物、9)尿素系化合物、10)オキシム系化合物、11)アミン系化合物、12)イミド系化合物、13)重亜硫酸塩、14)ピラゾール系化合物、15)トリアゾール系化合物等が挙げられる。ブロック剤としてより具体的には、以下に示すもの等が挙げられる。
1)アルコール系化合物:メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトカシエタノール、2-ブトキシエタノール等のアルコール類。
2)アルキルフェノール系化合物:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類。アルキルフェノール系化合物として具体的には、例えば、n-プロピルフェノール、iso-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類;ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類。
3)フェノール系化合物:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等。
4)活性メチレン系化合物:アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、イソブタノイル酢酸メチル、イソブタノイル酢酸エチル、アセチルアセトン等。
5)メルカプタン系化合物:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等。
6)酸アミド系化合物:アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等。
7)酸イミド系化合物:コハク酸イミド、マレイン酸イミド等。
8)イミダゾール系化合物:イミダゾール、2-メチルイミダゾール等。
9)尿素系化合物:尿素、チオ尿素、エチレン尿素等。
10)オキシム系化合物:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等。
11)アミン系化合物:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジーn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等。
12)イミン系化合物:エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
13)重亜硫酸塩化合物:重亜硫酸ソーダ等。
14)ピラゾール系化合物:ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等。
15)トリアゾール系化合物:3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール等。
[ブロックポリイソシアネート(B)の製造方法]
ブロックポリイソシアネート(B)は、上記ポリイソシアネート(又は親水基化合物変性ポリイソシアネート)と上記ブロック剤とを反応させて得られる。
ポリイソシアネートとして親水性化合物変性ポリイソシアネートを使用する場合は、ポリイソシアネートと親水性化合物との反応、及び、ポリイソシアネートとブロック剤との反応を同時に行うこともでき、又は、予めいずれの反応を行った後に、2つ目以降の反応を行うこともできる。中でも、ポリイソシアネートと親水性化合物との反応を先に行い、親水性化合物により変性された親水性化合物変性ポリイソシアネートを得た後、得られた親水性化合物変性ポリイソシアネートとブロック剤との反応を行うことが好ましい。
ポリイソシアネートと親水性化合物との反応は、有機金属塩、3級アミン系化合物、アルカリ金属のアルコラートを触媒として用いてもよい。前記有機金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。前記アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
ポリイソシアネートと親水性化合物との反応温度は、-20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上130℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応性をより高くできる傾向にある。また、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより効果的に抑制できる傾向にある。
親水性化合物が未反応状態で残存しないよう、完全にポリイソシアネートと反応させることが好ましい。未反応状態で残存しないことにより、ブロックポリイソシアネート組成物の水分散安定性、及び、100℃以下の低温での硬化性の低下をより効果的に抑制する傾向にある。
ポリイソシアネート(又は親水基化合物変性ポリイソシアネート)とブロック剤とのブロック化反応は、特に限定されないが、例えば、以下に示す2つの方法が挙げられる。
1)上記ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、を反応させる方法。
2)上記ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、を反応させて、得られた反応物に鎖状アルキル基を有するアルコールを添加して、前記反応物の末端エステル部位のエステル交換により、前記アルコールに由来するアルキル基を導入する方法。
上記2つの方法のうち、工程の容易さ及び構成単位(II)/構成単位(I)のモル比の制御のしやすさを考慮して、2)の方法が好ましい。
ポリイソシアネートとブロック剤とのブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができ、ブロックポリイソシアネートが得られる。
なお、ブロック剤は、マロン酸エステルをそれぞれ1種類用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
ブロック剤の添加量は、通常は、イソシアネート基のモル総量に対して80モル%以上200モル%以下であってよく、90モル%以上150モル%以下であることが好ましい。
また、添加するブロック剤中において、2級アルキル基を有するマロン酸エステル及び3級アルキル基を有するマロン酸エステルを用いる場合には、3級アルキル基を有するマロン酸エステルに対する2級アルキル基を有するマロン酸エステルのモル比(2級アルキルを有するマロン酸エステル/3級アルキルを有するマロン酸エステル)は、5/95超95/5未満であることが好ましく、7/93以上93/7以下がより好ましく、10/90以上93/7以下がより更に好ましく、20/80以上93/7以下がよりさらに好ましく、30/70以上93/7以下が特に好ましい。モル比が上記下限値以上であることで、樹脂膜としたときの硬度を良好なものとすることができ、上記上限値以下であることで、100℃以下の低温での硬化性を良好なものとすることができる。
ブロック化反応時に、溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いればよい。
溶剤を用いる場合、ブロックポリイソシアネート組成物100質量部に対する不揮発分の含有量は、通常は、10質量部以上95質量部以下であってよく、20質量部以上80質量部以下であることが好ましく、30質量部以上75質量部以下であることがより好ましい。
ブロック化反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、3級アミン系化合物及びナトリウム等のアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
触媒の添加量は、ブロック化反応の温度等により変動するが、通常は、ポリイソシアネート100質量部に対して0.05質量部以上1.5質量部以下であってよく、0.1質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。
ブロック化反応は、一般に-20℃以上150℃以下で行うことができ、0℃以上100℃以下で行うことが好ましく、10℃以上80℃以下で行うことがより好ましい。ブロック化反応の温度が上記下限値以上であることにより、反応速度をより高めることができ、上記上限値以下であることにより、副反応をより抑制することができる。
ブロック化反応後には、酸性化合物等の添加で中和処理してもよい。
前記酸性化合物としては、無機酸を用いてもよく、有機酸を用いてもよい。無機酸としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
前記2)の方法で製造する場合には、上記ブロック化反応に続き、エステル交換反応を実施する。
2)の方法のエステル交換反応に用いられる鎖状アルキル基を有するアルコールとしては、モノアルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール等の1級モノアルコール;イソプロパノール、2-ブタノール、2-ペンタノール、2-ヘキサノール等の2級モノアルコール;tert-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、2―メチル-2-ペンタノール、2-メチル-2-ヘキサノール、2-メチル-2-ヘプタノール、2-メチル-2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、3-エチル-3-ヘキサノール、3-エチル-3-オクタノール等の3級モノアルコール等が挙げられる。
また、アルコールが有する鎖状アルキル基は、前記マロン酸エステルと同じ鎖状アルキル基を有するものであってもよく、異なる鎖状アルキル基を有するものであってもよい。前記マロン酸エステルと異なる鎖状アルキル基を有するアルコールである場合には、前記マロン酸エステルとアルキル置換の数が異なる鎖状アルキル基を有するモノアルコールを用いることが好ましい。具体的には、例えば、ブロック剤として、2級アルキル基を有するマロン酸エステルを単独で用いた場合には、3級アルキル基を有するモノアルコールを用いることができる。
2)の方法で製造する場合には、エステル交換反応中又はエステル交換反応後に、生成したアルコール又は添加したアルコールの残留分を、常圧又は減圧下における蒸留等により、除去することが好ましい。
その中でも、エステル交換反応を効率よく進行させるため、エステル交換反応時に、蒸留等の作業を実施することにより、発生したアルコールを除去することが好ましい。この場合、交換反応により発生したアルコール成分を効率よく除去するために、添加するアルコール成分は、発生したアルコール成分の沸点よりも高いことがより好ましい。
エステル交換反応は、一般に0℃以上150℃以下で行うことができ、30℃以上120℃以下で行うことが好ましく、50℃以上100℃以下で行うことがより好ましい。エステル交換反応の温度が上記下限値以上であることにより、反応速度をより高めることができ、上記上限値以下であることにより、副反応をより抑制することができる。
ブロックポリイソシアネート組成物中のアルコールの含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分100質量部に対して、0.05質量部以上41質量部以下が好ましく、0.1質量部以上30質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。アルコールの含有量が上記下限値以上であることにより、塗料の貯蔵安定性が良好となり、上記上限値以下であることにより、塗料配合時の増粘を抑制することができる。なお、ここでいう「ブロックポリイソシアネート組成物中のアルコールの含有量」とは、ブロックポリイソシアネート組成物中に化合物単体として残存するアルコールの量を意味する。
<メラミン樹脂(M)>
メラミン樹脂(M)とは、一般的に、メラミンとアルデヒドから合成される熱硬化性の樹脂を意味し、トリアジン核1分子中に3つの反応性官能基-NXを有する。
メラミン樹脂(M)としては、反応性官能基として-N-(CHOR)〔Rはアルキル基、以下同じ〕を含む完全アルキル型;反応性官能基として-N-(CHOR)(CHOH)を含むメチロール基型;反応性官能基として-N-(CHOR)(H)を含むイミノ基型;反応性官能基として、-N-(CHOR)(CHOH)と-N-(CHOR)(H)とを含む、又は、-N-(CHOH)(H)を含むメチロール/イミノ基型の4種類を例示することができる。
メラミン樹脂(M)としては、メラミン成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化メラミン樹脂又は完全メチロール化メラミン樹脂を使用することができる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等を挙げることができる。
また、上記メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、2-エチル-1-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール等が挙げられる。
メラミン樹脂(M)としては、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に若しくは完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分若しくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に若しくは完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、又は、部分若しくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に若しくは完全にエーテル化したメチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
メラミン樹脂の重量平均分子量は、400以上6,000以下が好ましく、500以上4,000以下がより好ましく、600以上3,000以下がさらに好ましい。
メラミン樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の重量平均分子量である。
メラミン樹脂は、市販品を使用することができる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル204」、「サイメル211」、「サイメル212」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル253」、「サイメル254」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル380」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、オルネクスジャパン株式会社製);「レジミン735」、「レジミン740」、「レジミン741」、「レジミン745」、「レジミン746」、「レジミン747」(以上、モンサント社製);「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28-60」(以上、三井化学株式会社製);「スミマールM55」、「スミマールM30W」、「スミマールM50W」(以上、住友化学株式会社製)等が挙げられる。
ブロックポリイソシアネート組成物の固形分100質量%に対する、メラミン樹脂(M)の固形分の含有量は、特に制限されないが、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。
メラミン樹脂(M)の固形分の含有量が上記下限値以上であることにより、得られた樹脂膜の硬度がより高くなる傾向にあり、一方、上記上限値以下であることにより、得られた樹脂膜の耐薬品性がより向上する傾向にある。
<その他構成成分>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、上記ブロックポリイソシアネート(B)及び上記メラミン樹脂(M)に加えて、溶剤等の添加剤を更に含むことができる。
溶剤としては、例えば、1-メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)、プロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso-プロパノール、1-プロパノール、iso-ブタノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等が挙げられる。これら溶剤を、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。水への分散性の観点から、溶剤としては、水への溶解度が5質量%以上のものが好ましく、具体的には、DPDMが好ましい。
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造方法>
ブロックポリイソシアネート組成物は、特に限定されないが、例えば、上記ブロックイソシアネート(B)とメラミン樹脂(M)を混合して得られる。
メラミン樹脂(M)は、ブロック化反応時、或いは、ブロック化反応後に添加してもよい。
上記ブロックイソシアネート(B)とメラミン樹脂(M)を混合する際の温度は、特に限定されないが、20℃以上100℃以下が好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、硬度をより高くできる傾向にある。また、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより効果的に抑制できる傾向にある。
≪樹脂組成物≫
本実施形態の樹脂組成物は、上述したブロックポリイソシアネート組成物と、多価ヒドロキシ化合物とを含む。本実施形態の樹脂組成物は、硬化剤成分と、主剤成分とを含む一液型樹脂組成物ということもできる。
本実施形態の樹脂組成物は、上述したブロックポリイソシアネート組成物を含むことで、100℃以下の低温で焼付した際の硬化性に優れ、且つ、樹脂膜としたときの硬度及び耐薬品性に優れる。
本実施形態の樹脂組成物の構成成分について、以下に詳細を説明する。
<多価ヒドロキシ化合物>
本明細書において、「多価ヒドロキシ化合物」とは、一分子中に少なくとも2個のヒドロキシ基(水酸基)を有する化合物を意味し、「ポリオール」とも呼ばれる。
前記多価ヒドロキシ化合物として具体的には、例えば、脂肪族炭化水素ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、エポキシ樹脂類、含フッ素ポリオール類、アクリルポリオール類等が挙げられる。
中でも、多価ヒドロキシ化合物としては、ポリエステルポリオール類、含フッ素ポリオール類又はアクリルポリオール類であることが好ましい。
[脂肪族炭化水素ポリオール類]
前記脂肪族炭化水素ポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエンやその水素添加物等が挙げられる。
[ポリエーテルポリオール類]
前記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、以下(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得られるものが挙げられる。
(1)多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類又はポリテトラメチレングリコール類。
(2)アルキレンオキサイドに多官能化合物を反応させて得られるポリエーテルポリオール類。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセロールやプロピレングリコール等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
前記多官能化合物としては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン類等が挙げられる。
[ポリエステルポリオール類]
前記ポリエステルポリオール類としては、例えば、以下の(1)又は(2)のいずれかのポリエステルポリオール類等が挙げられる。
(1)二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール樹脂類。
(2)ε-カプロラクトンを多価アルコールで開環重合して得られるポリカプロラクトン類。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
[エポキシ樹脂類]
前記エポキシ樹脂類としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、β-メチルエピクロ型エポキシ樹脂、環状オキシラン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ型脂肪族不飽和化合物、エポキシ化脂肪酸エステル、エステル型多価カルボン酸、アミノグリシジル型エポキシ樹脂、ハロゲン化型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類、及びこれらエポキシ樹脂をアミノ化合物、ポリアミド化合物等で変性した樹脂類等が挙げられる。
[含フッ素ポリオール類]
前記含フッ素ポリオール類としては、例えば、参考文献2(特開昭57-34107号公報)、参考文献3(特開昭61-275311号公報)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
[アクリルポリオール類]
前記アクリルポリオール類は、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーを重合させる、又は、一分子中に1個以上の活性水素を持つ重合性モノマーと、必要に応じて、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得られる。
前記一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーとしては、例えば、以下(i)~(iii)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル類。
(iii)グリセロールのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
前記重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、以下の(i)~(v)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル類。
(iii)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
(iv)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド。
(v)スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等。
また、参考文献4(特開平1-261409号公報)及び参考文献5(特開平3-006273号公報)等で開示されている重合性紫外線安定性単量体を共重合して得られるアクリルポリオール類等が挙げられる。
前記重合性紫外線安定性単量体として具体的には、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得ることができる。
水系ベースアクリルポリオールを得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合等の公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性又は水分散性を付与することができる。
[多価ヒドロキシ化合物の水酸基価及び酸価]
本実施形態の樹脂組成物に含まれる多価ヒドロキシ化合物の水酸基価は、5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以上280mgKOH/g以下がより好ましく、30mgKOH/g以上250mgKOH/g以下がさらに好ましい。多価ヒドロキシ化合物の水酸基価が上記範囲内であることで、引張強度等の各種物性により優れる樹脂膜が得られる。具体的には、多価ヒドロキシ化合物の水酸基が上記下限値以上であることにより、ポリイソシアネートとの反応によるウレタンの架橋密度をより増やし、ウレタン結合の機能をより発揮しやすくなる。一方、多価ヒドロキシ化合物の水酸基が上記上限値以下であることにより、架橋密度が増えすぎず、樹脂膜の機械的物性がより良好となる。多価ヒドロキシ化合物の水酸基価は、例えば、電位差滴定法により測定し、多価ヒドロキシ化合物中の固形分に対する値として算出される。
[多価ヒドロキシ化合物のガラス転移温度Tg]
本実施形態の樹脂組成物に含まれる多価ヒドロキシ化合物のガラス転移温度Tgは0℃以上100℃以下が好ましく、0℃以上90℃以下がより好ましく、0℃以上80℃以下がさらに好ましく、5℃以上70℃以下が特に好ましい。多価ヒドロキシ化合物のガラス転移温度が上記範囲内であることで、引張強度により優れる樹脂膜が得られる。多価ヒドロキシ化合物のガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて、測定することができる。
[多価ヒドロキシ化合物の重量平均分子量Mw]
多価ヒドロキシ化合物の重量平均分子量Mwは、5.0×10以上2.0×10以下であることが好ましく、5.0×10以上1.5×10以下であることがより好ましく、5.0×10以上1.0×10以下であることがさらに好ましい。多価ヒドロキシ化合物の重量平均分子量Mwが上記範囲内であることで、引張強度等の各種物性により優れる樹脂膜が得られる。多価ヒドロキシ化合物の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の重量平均分子量である。
[NCO/OH]
本実施形態の樹脂組成物に含まれる多価ヒドロキシ化合物の水酸基に対するブロックポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル当量比(NCO/OH)は、必要とする樹脂膜の物性により決定されるが、通常、0.01以上10.00以下であり、0.10以上5.00以下が好ましく、0.20以上3.00以下がより好ましく、0.25以上2.00以下がさらに好ましい。
[ブロックポリイソシアネート組成物の含有量]
本実施形態の樹脂組成物において、ブロックポリイソシアネート(B)の含有量は、多価ヒドロキシ化合物の水酸基に対するブロックポリイソシアネート(B)のイソシアネート基のモル当量比が上記範囲内となる量であればよく、例えば、多価ヒドロキシ化合物100質量部に対して、1質量部以上200質量部以下であることが好ましましく、5質量部以上180質量部以下がより好ましく、10質量部以上150質量部以下がさらに好ましい。ブロックポリイソシアネート(B)の含有量が上記範囲内であることで、引張強度等の各種物性により優れる樹脂膜が得られる。ブロックポリイソシアネート(B)の含有量は、例えば、配合量から算出することもでき、或いは、核磁気共鳴(NMR)法及びガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS法)を用いて、同定及び定量して算出することもできる。
<その他添加剤>
本実施形態の樹脂組成物は、その他添加剤を更に含んでもよい。
その他添加剤としては、例えば、多価ヒドロキシ化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。
前記硬化剤としては、例えば、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
前記硬化触媒としては、塩基性化合物であってもよく、ルイス酸性化合物であってもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、オニウム塩のハロゲン化物、活性メチレン系化合物の金属塩、活性メチレン系化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等が挙げられる。前記オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はスルホニウム塩が好適である。
前記ルイス酸性化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
前記溶剤としては、上記ブロックポリイソシアネート組成物において例示されたものと同様のものが挙げられる。
また、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤及び造膜助剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤ベース、水系ベースどちらにも使用可能である。
水系ベースの樹脂組成物(水系樹脂組成物)を製造する場合には、まず、多価ヒドロキシ化合物又はその水分散体若しくは水溶物に、必要に応じて、多価ヒドロキシ化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上記ブロックポリイソシアネート組成物又はその水分散体を硬化剤として添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、攪拌機器により強制攪拌することによって、水系ベースの樹脂組成物(水系樹脂組成物)を得ることができる。
溶剤ベースの樹脂組成物を製造する場合には、まず、多価ヒドロキシ化合物又はその溶剤希釈物に、必要に応じて、多価ヒドロキシ化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上記ブロックポリイソシアネート組成物を硬化剤として添加し、必要に応じて、溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、手攪拌又はマゼラー等の攪拌機器を用いて攪拌することによって、溶剤ベースの樹脂組成物を得ることができる。
≪樹脂膜≫
本実施形態の樹脂膜は、上記樹脂組成物を硬化させてなる。本実施形態の樹脂膜は、硬度及び耐薬品性に優れる。
本実施形態の樹脂膜は、上記樹脂組成物を、基材にロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて塗装し、加熱することで硬化させることで得られる。
加熱温度は、省エネルギー及び基材の耐熱性の観点から、70℃以上120℃以下が好ましく、70℃以上110℃以下がより好ましく、75℃以上100℃以下がさらに好ましい。
加熱時間は、省エネルギー及び基材の耐熱性の観点から、1分間以上60分間以下が好ましく、2分間以上40分間以下がより好ましい。
基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部;各種フィルム等は挙げられ、中でも、自動車車体の外板部又は自動車部品が好ましい。
基材の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等が挙げられ、中でも、金属材料又はプラスチック材料が好ましい。
基材は、上記金属材料の表面、又は、上記金属材料から成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。塗膜が形成された基材としては、必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの、例えば、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体であってもよい。基材は、上記プラスチック材料の表面、又は、上記金属材料から成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望による表面処理を行ったものであってもよい。また、基材は、プラスチック材料と金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
本実施形態の樹脂膜は100℃以下の低温での硬化性に優れることから、省エネルギー化が求められる種々の分野の製品や、耐熱性の低い材料の塗膜として好適に用いられる。
≪積層体≫
本実施形態の積層体は、基材上に、上記樹脂膜を1層以上積層してなる。
樹脂膜の1層当たりの厚さは、1μm以上50μm以下である。
本実施形態の積層体は、上記樹脂膜を含むことで、硬度及び耐薬品性に優れる。
本実施形態の積層体は、同じ組成の上記樹脂膜を2層以上含んでもよく、異なる組成の上記樹脂膜を2層以上含んでもよい。
また、基材としては、上記「樹脂膜」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
本実施形態の積層体は、上記樹脂組成物を、基材にロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて、それぞれ、塗装、加熱して硬化させる、或いは、全ての層を塗装後にまとめて加熱して硬化させることで得られる。
本実施形態の積層体は、上記基材及び上記樹脂膜に加えて、例えば、プライマー層、接着剤層、加飾層等、その他公知の成分からなる層を含むことができる。
以下、本実施形態を実施例及び比較例に基づいて更に詳しく説明するが、本実施形態は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
<試験項目>
合成例で得られたポリイソシアネート及びブロックポリイソシアネート(B)、並びに、実施例及び比較例で得られたブロックポリイソシアネート組成物について、以下に示す方法に従い、各物性の測定を行い、また、各評価を行った。
[物性1]
(イソシアネート基(NCO)含有率)
ポリイソシアネートのNCO含有率を測定するために、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートを測定試料として用いた。
まず、フラスコに測定試料2g以上3g以下を精秤した(Wg)。次いで、トルエン20mLを添加し、測定試料を溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液20mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。次いで、ポリイソシアネート試料無しで、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)含有率(質量%)を算出した。
イソシアネート基(NCO)含有率(質量%)=(V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
また、ブロックイソシアネート(B)の有効NCO含有率は、下記式により算出した。
有効NCO含有率[質量%]
={100×(ブロック化反応に使用したポリイソシアネートの固形分中のイソシアネート基の質量)}/(ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート(B)の質量)
[物性2]
(数平均分子量及び重量平均分子量)
数平均分子量及び重量平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量及び重量平均分子量である。
ポリイソシアネートの数平均分子量を測定するために、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートを測定試料として用いた。
重量平均分子量については、ブロックポリイソシアネート(B)をそのまま測定試料として用いた。測定条件を以下に示す。
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
[物性3]
(イソシアネート基平均数)
ポリイソシアネートのイソシアネート基平均数(NCO基平均数)は、下記式により求めた。なお、式中、「Mn」は、ポリイソシアネートの数平均分子量であり、上記「物性2」において測定された値を用いた。「NCO含有率」は、ブロック剤によるブロック化前に測定したポリイソシアネートのイソシアネート基含有率であり、上記「物性1」において算出された値を用いた。
イソシアネート基平均数=(Mn×NCO含有率×0.01)/42
[物性4]
(ブロックポリイソシアネート(B)の固形分量)
ブロックポリイソシアネート(B)の固形分量は、次のように求めた。
まず、底直径38mmのアルミ皿を精秤した。次いで、アルミ皿上に実施例及び比較例で製造されたブロックポリイソシアネート(B)約1gを乗せた状態で精秤した(W1)。次いで、ブロックポリイソシアネート(B)を均一厚さに調整した。次いで、アルミ皿に乗せた状態のブロックポリイソシアネート(B)を105℃のオーブンで1時間保持した。次いで、アルミ皿が室温になった後、アルミ皿に残存したブロックポリイソシアネート(B)を精秤した(W2)。次いで、下記式からブロックポリイソシアネート(B)の固形分量(質量%)を算出した。
ブロックポリイソシアネート(B)の固形分量(質量%)=W2/W1×100
[物性5]
(構成単位(I)の含有量(モル))
ブロックポリイソシアネート(B)中の構成単位(I)の含有量は、以下の条件にて、13C-NMRにより算出した。
(測定条件)
装置:日本電子製「JEOL-ECZ500(SC)」(商品名)
溶剤:重クロロホルム
積算回数:5120回
試料濃度:50wt/vol%
ケミカルシフト基準:重クロロホルムを77.0ppmとした。
[物性6]
(構成単位(I)にの総モル量に対する構成単位(I-1)の含有量)
ブロックポリイソシアネート(B)中の構成単位(I)の総モル量に対する構成単位(I-1)の含有量(モル%)は、以下に示す方法を用いて算出した。
具体的には、日本電子製「JEOL-ECZ500(SC)」(商品名)を用いた、13C-NMRの測定により、構成単位(I)(構成単位(I-1)を含む)の総モル量と構成単位(I-1)のモル量を算出し、そのモル比率を求めた。
(測定条件)
装置:日本電子製「JEOL-ECZ500(SC)」(商品名)
溶剤:重クロロホルム
積算回数:5120回
試料濃度:50wt/vol%
ケミカルシフト基準:重クロロホルムを77.0ppmとした。
[物性7]
(構成単位(II)/構成単位(I)のモル比)
構成単位(I)に対する、構成単位(II)のモル比(構成単位(II)/構成単位(I))は、ブロックポリイソシアネート(B)をエバポレーターにより50℃以下で溶媒及びその他の成分を飛ばし、減圧乾燥した後、13C-NMRにより、構成単位(I)に対する構成単位(II)の組成比を測定することで、構成単位(I)に対する構成単位(II)のモル比を算出した。
(測定条件)
装置:日本電子製「JEOL-ECZ500(SC)」(商品名)
溶剤:重クロロホルム
積算回数:5120回
試料濃度:50wt/vol%
ケミカルシフト基準:重クロロホルムを77.0ppmとした。
[樹脂組成物の作製]
アクリルポリオール(allnex社製、「Setalux(登録商標)1767」(商品名)、水酸基価150mgKOH/樹脂g、固形分65質量%)と、各ブロックポリイソシアネート組成物を、固形分あたりの質量比が60:40になるように配合した。さらに酢酸ブチルを配合して、固形分40質量%になるように調整し、樹脂組成物を得た。
[評価1]
(低温硬化性)
上記「樹脂組成物の作製」で得られた樹脂組成物をポリプロピレン(PP)板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、100℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜をアセトン中に23℃で24時間浸漬した際の未溶解部分質量を浸漬前質量で除した値の百分率(質量%)を、ゲル分率として求めた。算出されたゲル分率を用いて、以下の評価基準に従って、低温硬化性を評価した。
(評価基準)
A:ゲル分率が85質量%以上であったもの
B:ゲル分率が70%以上85質量%未満であったもの
C:ゲル分率が70質量%未満であったもの
[評価2]
(塗膜の硬度(ケーニッヒ硬度))
上記「樹脂組成物の作製」で得られた樹脂組成物をガラス板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、100℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜について、ケーニッヒ硬度計(BYK Gardner社のPendulum hardness tester)を用いて、23℃環境下でケーニッヒ硬度(回)を測定した。測定されたケーニッヒ硬度(回)について、以下の評価基準に従って、硬度を評価した。
(評価基準)
A:60回以上
B:30回以上60回未満
C:30回未満
[評価3]
(耐薬品性(耐酸性))
調製してから5分後の樹脂組成物をガラス板にアプリケーターで乾燥膜厚が40μmになるように塗布した後、100℃で30分間焼付させることで樹脂膜を得た。得られた樹脂膜に、0.1mmol/L硫酸水溶液を0.5mLに垂らし、40℃の温度で30分間加熱した。その後、ガラス板を冷却後、水で軽く洗い流し、ネル布でふき取った後の塗膜の状態を確認し、以下の評価基準に従って、耐薬品性(耐酸性)を評価した。
(評価基準)
A:塗膜の外観変化なし
B:塗膜の滴下部周囲に線状の跡あり
C:塗膜の滴下部の一部に光沢損失あり
D:塗膜の滴下部の全面に光沢損失あり
<ポリイソシアネートの合成>
[合成例1]
(ポリイソシアネートP-1の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部、及び、3価アルコールとε-カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール(ポリカプロラクトントリオール)(ダイセル化学社製、「プラクセル303」(商品名)、平均官能基数:3、数平均分子量300):5.3質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を89℃に1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を63℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が52質量%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去して、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(以下、「ポリイソシアネートP-1」と称する場合がある)を得た。
得られたポリイソシアネートP-1のNCO含有率は18.6質量%、数平均分子量は1220、イソシアネート基平均数は5.4であった。また、得られたポリイソシアネートP-1についてH-NMR分析を行い、イソシアヌレート基が存在することを確認した。
<ブロックポリイソシアネート(B)の製造>
[合成例2-1]
(ブロックポリイソシアネートB-1の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例1で得られたポリイソシアネートP-1:100質量部、マロン酸ジ-tert-ブチル100モル%に対して102モル%になるように仕込み、さらに、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)を加えて、固形分が60質量%となるように調製した。次いで、攪拌しながら、ナトリウムメチラート(溶液の総質量に対して28質量%)含有メタノール溶液:0.8質量部を滴下した後、溶液温度が55℃になるように外浴を調整し、55℃で5時間ブロック化反応させ、固形分60質量%の、ブロックポリイソシアネートB-1含有液を得た。
[合成例2-2]
(ブロックポリイソシアネートB-2の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例1で得られたポリイソシアネートP-1:100質量部、マロン酸ジイソプロピルをNCO基100モル%に対して70モル%、及び、マロン酸(2-メチルー2-ブチル)イソプロピルをNCO基100モル%に対して30モル%になるように仕込み、さらに、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)を加えて、固形分が60質量%となるように調製した。次いで、攪拌しながら、ナトリウムメチラート(溶液の総質量に対して28質量%)含有メタノール溶液:0.8質量部を滴下した後、溶液温度が55℃になるように外浴を調整し、55℃で5時間ブロック化反応させ、固形分60質量%の、ブロックポリイソシアネートB-2含有液を得た。
[合成例2-3]
(ブロックポリイソシアネートB-3の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例1で得られたポリイソシアネートP-1:100質量部、マロン酸ジイソプロピルをNCO基100モル%に対して102モル%になるように仕込み、さらに、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)を加えて、固形分が60質量%となるように調製した。次いで、攪拌しながら、ナトリウムメチラート(溶液の総質量に対して28質量%)含有メタノール溶液:0.8質量部を滴下した後、溶液温度が55℃になるように外浴を調整し、55℃で5時間ブロック化反応させ、固形分60質量%の、ブロックポリイソシアネート中間体を得た。その後、2-メチル-2-ブタノールをブロックイソシアネート基に対して100モル%になるように添加し、発生したイソプロピルアルコールを常圧下蒸留により、取り除きながら、80℃で3時間反応させた。その後、さらに、60℃で減圧下(50kPa)、イソプロパノール、及び2-メチル-2-ブタノールを留去し、最後に、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)を添加することで、固形分を60質量%に調整し、ブロックポリイソシアネートB-3含有液を得た。
[合成例2-4]
(ブロックポリイソシアネートB-4の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例1で得られたポリイソシアネートP-1:100質量部、マロン酸ジイソプロピルをNCO基100モル%に対して102モル%になるように仕込み、さらに、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)を加えて、固形分が60質量%となるように調製した。次いで、攪拌しながら、ナトリウムメチラート(溶液の総質量に対して28質量%)含有メタノール溶液:0.8質量部を滴下した後、溶液温度が55℃になるように外浴を調整し、55℃で5時間ブロック化反応させ、固形分60質量%の、ブロックポリイソシアネートB-4含有液を得た。
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例1]
(ブロックポリイソシアネート組成物BP-a1の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例2-1で得られたブロックポリイソシアネートB-1含有液:125質量部、及びメラミン樹脂(商品名「サイメル(登録商標)327」、Allnex社製、固形分90質量%):27.8質量部を仕込み、30℃で1時間混合し、ブロックポリイソシアネート組成物BP-a1を得た。
[実施例5]
(ブロックポリイソシアネート組成物BP-a5の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例2-1で得られたブロックポリイソシアネートB-3含有液:125質量部、及びメラミン樹脂(商品名「サイメル(登録商標)350」、Allnex社製、固形分80質量%):31.3質量部を仕込み、30℃で1時間混合し、ブロックポリイソシアネート組成物BP-a5を得た。
[実施例2~4、6~7及び比較例1]
(ブロックポリイソシアネート組成物BP-a2~BP-a4、BP-a6~BP-a7及びBP-b1の製造)
配合するブロックポリイソシアネート(B)及びメラミン樹脂(M)の組み合わせ及び混合比を、以下の表に示すとおりとした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、各ブロックポリイソシアネート組成物を製造した。
[比較例2]
(ブロックポリイソシアネート組成物BP-b2の製造)
ブロックポリイソシアネートB-3含有液をそのままブロックポリイソシアネート組成物BP-b2として使用した。
[比較例3]
(組成物X-1の製造)
メラミン樹脂(商品名「サイメル327」、Allnex社製、固形分90質量%)をそのまま組成物X-1として使用した。
各ブロックポリイソシアネート組成物の物性及び評価結果を以下の表に示す。なお、表において、「H」は水素原子を表す。
Figure 2023076858000007
Figure 2023076858000008
上記表に示すように、構成単位(I)を有するブロックポリイソシアネート(B)と、メラミン樹脂(M)と、を含む、ブロックポリイソシアネート組成物BP-a1~BP-a7(実施例1~7)では、樹脂組成物としたときの低温硬化性、並びに、樹脂膜としたときの硬度及び耐薬品性がいずれも良好であった。
また、メラミン樹脂(M)の含有量が異なるブロックポリイソシアネート組成物BP-a3及びBP-a4(実施例3及び4)の比較、並びに、ブロックポリイソシアネート組成物BP-a2、BP-a6及びBP-a7(実施例2、6、及び7)の比較において、メラミン樹脂(M)の含有量が5質量%以上25質量%以下である場合に、低温硬化性が特に優れる傾向がみられ、メラミン樹脂(M)の含有量が25質量%以上40質量%以下である場合に、樹脂膜としたときの硬度が特に優れる傾向がみられ、メラミン樹脂(M)の含有量が25質量%である場合に、樹脂膜としたときの耐薬品性が特に優れる傾向がみられた。
メラミン樹脂(M)の種類が異なるブロックポリイソシアネート組成物BP-a3及びBP-a5(実施例3及び5)の比較において、サイメル327を用いたほうが低温硬化性が特に優れる傾向がみられた。
一方、構成単位(I)を有さないブロックポリイソシアネートと、メラミン樹脂(M)と、を含むブロックポリイソシアネート組成物BP-b1(比較例1)、構成単位(I)を有するブロックポリイソシアネート(B)を含み、メラミン樹脂(M)を含まないブロックポリイソシアネート組成物BP-b2(比較例2)、及び、構成単位(I)を有するブロックポリイソシアネート(B)を含まず、メラミン樹脂(M)を含む組成物X-1(比較例3)では、樹脂組成物としたときの低温硬化性、並びに、樹脂膜としたときの硬度及び耐薬品性の全てが良好なものは得られなかった。
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物によれば、100℃で焼付した際の硬化性に優れ、且つ、樹脂膜としたときの硬度及び耐薬品性に優れるブロックポリイソシアネート組成物を提供することができる。本実施形態の樹脂組成物は、前記ブロックポリイソシアネート組成物を含み、100℃で焼付した際の硬化性に優れ、且つ、樹脂膜としたときの硬度及び耐薬品性に優れる。本実施形態の樹脂膜は、前記樹脂組成物を硬化させてなり、硬度及び耐薬品性に優れる。本実施形態の積層体は、前記樹脂膜を備え、硬度及び耐薬品性に優れる。

Claims (8)

  1. ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されたブロックポリイソシアネートであって、下記一般式(I)で表される構成単位を含む、ブロックポリイソシアネート(B)と、
    メラミン樹脂(M)と、
    を含む、ブロックポリイソシアネート組成物。
    Figure 2023076858000009
    (一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。前記R11、前記R12及び前記R13の合計炭素数は、3以上20以下である。R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。波線は結合手を表す。)
  2. 前記ブロックポリイソシアネート(B)は、前記一般式(I)で表される構造として、下記一般式(I-1)で表される構造を含む、請求項1に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
    Figure 2023076858000010
    (一般式(I-1)中、R111、R112及びR113は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。前記R111、前記R112及び前記R113の合計炭素数は、3以上20以下である。R114及びR115は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基である。波線は結合手を表す。)
  3. 前記R11、前記R12及び前記R13は、それぞれ独立に、無置換のアルキル基であり、且つ、
    前記R14、前記R15及び前記R16は、それぞれ独立に、水素原子、又は無置換のアルキル基である、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
  4. 前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種以上のジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートである、請求項1~3のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
  5. 前記ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数が3.5以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物と、多価ヒドロキシ化合物と、を含む、樹脂組成物。
  7. 請求項6に記載の樹脂組成物を硬化させてなる、樹脂膜。
  8. 基材上に、請求項7に記載の樹脂膜を1層以上積層してなる積層体であって、
    前記樹脂膜の1層当たりの厚さが1μm以上50μm以下である、積層体。
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