特許文献1に記載の車両用ドアフレーム構造は、サッシュ部を構成するフレームリインフォースメントにおいて部分的に大きな厚みを有するため、車両用サイドドアの重量が増加して、車両の重量が増加するという問題がある。
また、サッシュ部の内部に補強材を設けることにより、車両の重量が増加する。一方、当該補強材は、必要な隙間を空けて前記中空断面構造の中立軸に近い位置に配置されることから曲げ剛性の向上にはあまり効果的ではないという問題がある。
本発明の目的は、車両重量の著しい増加を伴うことなく高い曲げ剛性を有することが可能な車両用サイドドアのサッシュ部、これを備えた車両用サイドドア、車両用サイドドアのサッシュ部の製造方法及び車両用サイドドアの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するための手段として、本発明者らは、車両用サイドドアを構成するドア本体部及びサッシュ部を共にアルミニウムで形成することに想到した。これにより、車両用サイドドアの軽量化を実現することができる。なお、本明細書において、「アルミニウム」とは、アルミニウム合金を含み、アルミニウムを主成分とする金属材料のことである。
しかし、サッシュ部をアルミニウムのみで形成することとすると、アルミニウムはヤング率が小さいことから、サッシュ部として必要な曲げ剛性を達成することができない。
そこで、本発明者らは、サッシュ部の少なくとも一部を、アルミニウムとアルミニウムよりも大きなヤング率を有する金属材料とにより構成される積層構造を有するクラッド材により形成することに想到した。
具体的には、次のとおりである。
想到された車両用サイドドアのサッシュ部は、サッシュインナと、前記サッシュインナよりも車幅方向外側に配置され、前記サッシュインナとの間で内部空間を囲む中空断面を形成するように前記サッシュインナに接合されるサッシュアウタと、を備え、前記サッシュインナ及び前記サッシュアウタの少なくとも一方は、それぞれが金属材料からなる複数の金属層が互いに積層された積層構造を有するクラッド材により形成され、前記複数の金属層は、アルミニウムからなる第1金属層と、前記アルミニウムよりも大きなヤング率を有する金属材料からなる第2金属層と、を含み、前記第2金属層は前記第1金属層より前記内部空間に近い側である積層構造内側に配置されている。
前記車両用サイドドアのサッシュ部によれば、前記サッシュインナ及び前記サッシュアウタの少なくとも一方が前記クラッド材により形成されるものであるので、サッシュ部の軽量化を実現することができる。
さらに、前記車両用サイドドアのサッシュ部によれば、前記クラッド材が前記アルミニウムよりも大きなヤング率を有する金属材料からなる第2金属層を含むことにより、アルミニウムのみからなるサッシュ部に比べて、サッシュ部の曲げ剛性を向上させることができる。
さらに、前記車両用サイドドアのサッシュ部によれば、前記第2金属層が前記第1金属層より前記内部空間に近い側である積層構造内側に配置されているので、アルミニウムからなるサッシュ部において必要な隙間を空けて前記中空断面の中立軸に近い位置に前記第2金属層の前記金属材料と同じ金属材料からなる補強材が配置される場合に比べて、サッシュ部の断面二次モーメントを向上させることができ、これにより、サッシュ部の曲げ剛性を向上させることができる。
前記車両用サイドドアのサッシュ部の好ましい態様として、前記サッシュインナは、前記内部空間から離れた側の面である外側面を有し、前記サッシュインナの前記外側面を形成する材料は、アルミニウムであってもよい。
この態様に係る前記サッシュ部によれば、アルミニウムからなるドア本体部と前記サッシュ部とを備える車両用サイドドアにおいて、前記ドア本体部のアルミニウムからなるドアインナパネルと前記サッシュインナの前記外側面とが接合されることとなるが、それらが接合されたときに、前記ドアインナパネルと前記サッシュインナの前記外側面とが同種の金属材料であるアルミニウムにより形成されているので、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。なお、本明細書において、「同種の金属材料」とは、「同じ主成分の金属材料」を意味するものとする。
前記車両用サイドドアのサッシュ部の好ましい態様として、前記サッシュインナは、前記クラッド材により形成されており、前記第1金属層は、前記サッシュインナの前記外側面を形成してもよい。
この態様に係る前記サッシュ部によれば、ドア本体部と接合されることとなる前記サッシュインナの曲げ剛性が向上するので、車両用サイドドア全体の曲げ剛性が向上する。さらに、アルミニウムからなる前記第1金属層が前記サッシュインナの前記外側面を形成するので、アルミニウムからなるドアインナパネルと前記サッシュインナの前記外側面とが接合されたときに、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。
前記車両用サイドドアのサッシュ部の好ましい態様として、前記サッシュインナは、前記内部空間に近い側の面である内側面であって前記サッシュアウタと接合されるためのサッシュインナ接合面を有し、前記サッシュアウタは、前記内部空間に近い側の面である内側面であって前記サッシュインナ接合面と接合されるサッシュアウタ接合面を有し、前記サッシュインナ接合面を形成する材料と前記サッシュアウタ接合面を形成する材料は、互いに同種の金属材料であってもよい。
この態様に係る前記サッシュ部によれば、前記サッシュインナ接合面を形成する材料と前記サッシュアウタ接合面を形成する材料が互いに同種の金属材料であるので、互いに接合される前記サッシュインナ接合面と前記サッシュアウタ接合面との間で異種金属接触腐食の発生が抑制される。
前記車両用サイドドアのサッシュ部の好ましい態様として、前記サッシュインナ及び前記サッシュアウタのそれぞれが前記クラッド材により形成されてもよい。
この態様に係る前記サッシュ部によれば、前記サッシュインナ及び前記サッシュアウタのうちの一方のみならず両方が前記クラッド材で形成されていることにより、より効果的にサッシュ部の軽量化を実現しながら曲げ剛性を向上させることができる。
前記車両用サイドドアのサッシュ部の好ましい態様として、前記サッシュインナは、前記内部空間から離れた側の面である外側面を有し積層構造最外側に配置される金属層であるサッシュインナ最外側金属層と、前記内部空間に近い側の面である内側面を有し積層構造最内側に配置される金属層であるサッシュインナ最内側金属層と、を有し、前記サッシュアウタは、前記内部空間に近い側の面である内側面を有し積層構造最内側に配置される金属層であるサッシュアウタ最内側金属層を有し、前記サッシュインナ最外側金属層は、前記第1金属層であり、前記サッシュインナ最内側金属層を形成する材料と前記サッシュアウタ最内側金属層を形成する材料は、互いに同種の金属材料であり、前記サッシュインナ最内側金属層と前記サッシュアウタ最内側金属層が突き合せられるように接触しながら、前記サッシュインナと前記サッシュアウタとが、接合されていてもよい。
この態様に係る前記サッシュ部によれば、アルミニウムからなるドア本体部と前記サッシュ部とを備える車両用サイドドアにおいて、前記サッシュインナ最外側金属層がアルミニウムからなる前記第1金属層であり前記外側面を有するので、アルミニウムからなるドアインナパネルと前記サッシュインナの前記外側面とが接合されたときに、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。
さらに、前記サッシュ部によれば、前記内側面を有する前記サッシュインナ最内側金属層を形成する材料と前記内側面を有する前記サッシュアウタ最内側金属層を形成する材料は、互いに同種の金属材料であるので、互いに接合される前記サッシュインナ及び前記サッシュアウタのそれぞれの内側面の間で異種金属接触腐食の発生が抑制される。
さらに、前記サッシュ部によれば、前記サッシュインナ最内側金属層と前記サッシュアウタ最内側金属層が突き合せられるように接触しながら、前記サッシュインナと前記サッシュアウタとが接合されているので、前記サッシュインナと前記サッシュアウタとの間で内部空間を囲む中空断面を形成するようにして、曲げ剛性の高い前記サッシュ部を形成することができる。
前記車両用サイドドアのサッシュ部の好ましい態様として、前記第2金属層を構成する金属材料は、鋼であってもよい。
この態様に係る前記サッシュ部によれば、鋼はアルミニウムに比べて著しく大きなヤング率を有する材料であるので、サッシュ部の曲げ剛性をより効果的に向上させることができる。
前記車両用サイドドアのサッシュ部の好ましい態様として、前記第1金属層及び前記第2金属層のみにより構成されていてもよい。
この態様に係る前記サッシュ部によれば、積層構造として最も簡素である2層構造の前記クラッド材により前記サッシュ部を形成することができるので、クラッド材を用いながらもコストを抑制することができる。
想到された車両用サイドドアは、ドア本体部と、前記サッシュ部と、を備え、前記ドア本体部は、アルミニウム製のドアインナパネルと、前記ドアインナパネルよりも車幅方向外側に配置されるアルミニウム製のドアアウタパネルと、を有し、前記サッシュ部の前記サッシュインナは、前記内部空間から離れた側の面である外側面を有し、前記サッシュインナの前記外側面を形成する材料は、アルミニウムであり、前記サッシュインナの前記外側面は、前記ドアインナパネルと接合される。
前記車両用サイドドアによれば、前記ドアインナパネルと前記サッシュインナの前記外側面とが接合されたときに、前記ドアインナパネルと前記サッシュインナの前記外側面とが同種の金属材料であるアルミニウムにより形成されているので、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。
前記車両用サイドドアの好ましい態様として、前記サッシュインナは、前記クラッド材により形成され、前記第1金属層は、前記サッシュインナの前記外側面を形成してもよい。
この態様に係る前記車両用サイドドアによれば、前記ドア本体部と接合されることとなる前記サッシュインナの曲げ剛性が向上するので、車両用サイドドア全体の曲げ剛性が向上する。さらに、アルミニウムからなる前記第1金属層が前記サッシュインナの前記外側面を形成するので、アルミニウム製のドアインナパネルと前記サッシュインナの前記外側面とが接合されたときに、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。
想到された車両用サイドドアのサッシュ部の製造方法は、少なくとも一方がそれぞれが金属材料からなる複数の金属層が互いに積層された積層構造を有するクラッド材により形成され、前記複数の金属層がアルミニウムからなる第1金属層と前記アルミニウムよりも大きなヤング率を有する金属材料からなる第2金属層とを含み、前記第2金属層が前記第1金属層より前記内部空間に近い側である積層構造内側に配置されている、サッシュインナ及びサッシュアウタを準備する工程と、前記サッシュインナと前記サッシュアウタとの間で内部空間を囲む中空断面を形成するように前記サッシュインナと前記サッシュアウタとを接合する工程と、を含む。
前記車両用サイドドアのサッシュ部の製造方法によれば、少なくとも一方が前記クラッド材により形成され、前記複数の金属層がアルミニウムからなる第1金属層と前記アルミニウムよりも大きなヤング率を有する金属材料からなる第2金属層とを含む、前記サッシュインナ及び前記サッシュアウタが準備されて製造されるので、サッシュ部の軽量化を実現することができるとともに、アルミニウムのみからなるサッシュ部に比べてサッシュ部の曲げ剛性を向上させることができる。
さらに、前記車両用サイドドアのサッシュ部の製造方法によれば、前記第2金属層が前記第1金属層より前記内部空間に近い側である積層構造内側に配置されている前記サッシュインナ及び前記サッシュアウタが準備されて製造されるので、アルミニウムからなるサッシュ部において必要な隙間を空けて前記中空断面の中立軸に近い位置に前記第2金属層の前記金属材料と同じ金属材料からなる補強材が配置される場合に比べて、サッシュ部の断面二次モーメントを向上させることができ、これにより、サッシュ部の曲げ剛性を向上させることができる。
前記車両用サイドドアのサッシュ部の製造方法の好ましい態様として、前記サッシュインナ及びサッシュアウタを準備する工程は、前記内部空間から離れた側の面である外側面を有し、前記外側面を形成する材料がアルミニウムである前記サッシュインナを準備する工程を含んでもよい。
この態様に係る前記車両用サイドドアのサッシュ部の製造方法によれば、アルミニウムからなるドア本体部と前記サッシュ部とを備える車両用サイドドアを製造する場合において、前記ドア本体部のアルミニウムからなるドアインナパネルと前記サッシュインナの前記外側面とが接合されることとなるが、それらが接合されたときに、前記ドアインナパネルと前記サッシュインナの前記外側面とが同種の金属材料であるアルミニウムにより形成されているので、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。
前記車両用サイドドアのサッシュ部の製造方法の好ましい態様として、前記サッシュインナを準備する工程は、前記サッシュインナを形成する材料が前記クラッド材となるように、前記第1金属層を構成するアルミニウムと前記第2金属層を構成する金属材料とを積層させて前記積層構造とし、かつ、前記第1金属層が前記サッシュインナの前記外側面を形成するように前記第1金属層を配置して、前記サッシュインナを成形する工程を含んでもよい。
この態様に係る前記車両用サイドドアのサッシュ部の製造方法によれば、前記サッシュインナに第1金属層と第2金属層とが積層された積層構造を有するクラッド材を用いることができ、前記サッシュインナ、前記サッシュインナを備えるサッシュ部および前記サッシュ部を備える車両用サイドドアの剛性が向上することができる。さらに、前記第1金属層が前記サッシュインナの前記外側面を形成するように前記第1金属層を配置しているので、アルミニウム製のドアインナパネルと前記サッシュインナの前記外側面とが接合されたときに、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。
前記車両用サイドドアのサッシュ部の製造方法の好ましい態様として、前記サッシュインナ及びサッシュアウタを準備する工程は、前記内部空間に近い側の面である内側面であって前記サッシュアウタと接合されるためのサッシュインナ接合面を有する前記サッシュインナと、前記内部空間に近い側の面である内側面であって前記サッシュインナ接合面と接合されるサッシュアウタ接合面を有する前記サッシュアウタと、を準備する工程を含み、前記サッシュインナ接合面を形成する材料と前記サッシュアウタ接合面とを形成する材料は、互いに同種の金属材料であり、前記サッシュインナと前記サッシュアウタとを接合する工程は、前記サッシュインナ接合面と前記サッシュアウタ接合面とを突き合せるように接触させて接合する工程を含んでもよい。
この態様に係る前記車両用サイドドアのサッシュ部の製造方法によれば、前記サッシュインナ接合面を形成する材料と前記サッシュアウタ接合面を形成する材料が互いに同種の金属材料であり、前記サッシュインナと前記サッシュアウタとを接合する工程が前記サッシュインナ接合面と前記サッシュアウタ接合面とを突き合せるように接触させて接合する工程を含むので、互いに接合される前記サッシュインナ接合面と前記サッシュアウタ接合面との間で異種金属接触腐食の発生が抑制されるとともに、前記サッシュインナと前記サッシュアウタとの間で内部空間を囲む中空断面を形成するようにして、前記サッシュ部を製造することができる。
想到された車両用サイドドアの製造方法は、前記車両用サイドドアのサッシュ部の製造方法により、前記サッシュインナの前記外側面を形成する材料がアルミニウムであるサッシュ部を製造する工程と、アルミニウム製のドアインナパネルと前記ドアインナパネルよりも車幅方向外側に配置されるアルミニウム製のドアアウタパネルとを有するドア本体部を準備する工程と、前記サッシュインナの前記外側面を前記ドアインナパネルに接合する工程と、を備える。
前記車両用サイドドアの製造方法によれば、前記サッシュインナの前記外側面を形成する材料がアルミニウムであるサッシュ部が製造され、アルミニウム製の前記ドア本体部が準備されて、車両用サイドドアが製造されるので、車両用サイドドア全体で軽量化を実現することができる。
さらに、前記車両用サイドドアの製造方法によれば、前記サッシュインナの前記外側面を形成する材料がアルミニウムであるサッシュ部が製造され、アルミニウム製のドアインナパネルを有するドア本体部が準備された後、前記サッシュインナの前記外側面を前記ドアインナパネルに接合する工程が行われることとなるが、前記ドアインナパネルと前記サッシュインナの前記外側面とが同種の金属材料であるアルミニウムにより形成されているので、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。
さらに、前記車両用サイドドアの製造方法によれば、前記クラッド材により形成されることにより曲げ剛性が向上した前記サッシュ部と前記ドア本体部とが接合されることにより、車両用サイドドア全体で曲げ剛性が向上することができる。
したがって、本発明に係る車両用サイドドアのサッシュ部、これを備えた車両用サイドドア、車両用サイドドアのサッシュ部の製造方法及び車両用サイドドアの製造方法によれば、車両重量の著しい増加を伴うことなく高い曲げ剛性を有することができる。
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、方向については次のように定義するものとする。すなわち、本明細書において、内側又は外側という用語が示す方向については、サッシュ部の内部空間を基準として、内部空間に近い側を内側と定義し、内部空間から離れた側を外側と定義する。また、方向について、車両全体を基準として方向を述べる場合には、車幅方向、車両前後方向又は車両上下方向という用語を用いることとする。また、各図において、接合箇所を明示していないが、接触している箇所は、接合箇所又は接合可能箇所である。
車両用サイドドア10は、図示されていない車両の車体の側部を構成するものである。図1に示すように、車両用サイドドア10は、ドア本体部30と、ドア本体部30に接合されドア本体部30の上側に位置するサッシュ部20と、を備える。ドア本体部30とサッシュ部20との境目にあたる部分は、ウエストラインWLと言われる。なお、図1では、III−III線は、ウエストラインWLに重なる。
ドア本体部30は、車両用サイドドア10の本体をなす部分であり、車両用サイドドア10において昇降するウインドウガラスを収容可能であるとともに、各種モジュールが収容され取り付けられている。ドア本体部30は、アルミニウム製のドアインナパネル32と、アルミニウム製のドアアウタパネル34と、を備える。ドア本体部30は、ドアインナパネル32及びドアアウタパネル34のそれぞれの外周部を例えば接着剤を介在させてヘミング接合されて、形成されている。そして、ドア本体部30は、ウインドウガラスや各種モジュールを収容するための収容空間SKを有している。
ドアアウタパネル34は、ドア本体部30の車幅方向外側部分を形成する板状の部材である。ドアアウタパネル34は、図4及び図5等に示すように、ドアインナパネル32より車幅方向外側に配置されている。この実施の形態において、ドアアウタパネル34は、図3等に示すように、車両前後方向に直線状に延びる平板状をなす。ドアアウタパネル34は、車両前後方向の両側にそれぞれ位置する端部34eと、両方の端部34eの間に位置する中央部34fと、を有している。また、ドアアウタパネル34は、端部34eにおける車幅方向内側の面であって、ドアインナパネル32と接合されるための面であるドアアウタパネル接合面34sを有している。
ドアインナパネル32は、ドア本体部30の車幅方向内側部分を形成する板状の部材である。ドアインナパネル32は、車両前後方向の両側にそれぞれ位置する端部32eと、両方の端部32eの間に位置する中央部32fと、を有している。また、ドアインナパネル32は、端部32eにおける車幅方向外側の面であって、ドアアウタパネル34と接合されるための面であるドアインナパネル接合面32sを有している。
ドアインナパネル32とドアアウタパネル34とは、それぞれの端部32e、34eにおいて、ドアインナパネル接合面32sとドアアウタパネル接合面34sとが接触しながら、例えば接着剤を介在させてヘミング接合されている。具体的には、ドアアウタパネル34の端部34eが、図3等に示すように、ドアインナパネル32の端部32eを挟み込むようにして、車幅方向内側に折り返されている。そして、ドアインナパネル接合面32sとドアアウタパネル接合面34sとの間、及び、ドアインナパネル32の端部32eと端部32eを挟み込むドアアウタパネル34の端部34eとの間において、例えば接着材によって両者が接合されている。
そして、ドアインナパネル32は、ドア本体部30における収容空間SKを形成するために、図3等に示すように、端部32eから中央部32fにかけて、車幅方向内方に、すなわちドアアウタパネル34から離れる方向に膨出する形状を有する。これにより、ドアインナパネル32の中央部32fとドアアウタパネル34の中央部34fとの間で、収容空間SKが形成される。
さらに、ドアインナパネル32は、サッシュ部20の後述するサッシュインナ22の前端部及び後端部(符号なし)と溶接接合されている。具体的には、ドアインナパネル32は、図3、図4、図5、図7及び図8に示されるように、ドアインナパネル接合面32sと後述するサッシュインナ22の外側面22оsとが面接触しながら、溶接接合されている。
サッシュ部20は、車両用サイドドア10において、ウインドウガラスのフレームとして機能する部分である。サッシュ部20は、車両用サイドドア10において、ウエストラインWLよりも上側の部分を主とするが、サッシュ部20の前端部及び後端部がウエストラインWLよりも車両上下方向の下方に延びていて、この前端部及び後端部でドア本体部30のドアインナパネル32と溶接接合されている。これにより、ドア本体部30とサッシュ部20とが接合されて、一体の車両用サイドドア10が形成される。
サッシュ部20は、サッシュインナ22と、サッシュアウタ24と、を備える。サッシュ部20は、図2等に示すように、内部空間NKを有している。
サッシュインナ22は、サッシュ部20の車幅方向内側部分を形成する板状の部材である。サッシュインナ22を形成する板材は、クラッド材である。サッシュインナ22は、ウインドウガラスから離れている側の端部22e1と、ウインドウガラスに近い側の端部22e2と、端部22e1と端部22e2との間の中央部22fと、を有している。サッシュインナ22は、プレス成形されることにより、端部22e1、22e2がそれぞれサッシュアウタ24の後述する端部24e1、24e2と突き合せ可能な形状であるように、形成されている。同時に、サッシュインナ22は、中央部22fにおいてサッシュアウタ24との間で内部空間NKを形成することが可能な形状であるように、形成されている。具体的には、サッシュインナ22は、図2及び図6に示すように、ウエストラインWLより上側では、中央部22fにおいて車幅方向内方に膨出するような形状を有する。一方、サッシュインナ22は、ウエストラインWLより下側では、図4、図5、図7及び図8に示すように、ドアインナパネル32の形状に沿うような形状を有する。さらに、サッシュインナ22は、ウエストラインWL上では、図3に示すように、上述した中央部22fにおいて車幅方向内方に膨出するような形状であり、かつ、ドアインナパネル32の形状に沿うような形状を有する。さらに、サッシュインナ22は、前端部において、図5からわかるように、車両上下方向のV−V線の位置よりも下側にまで延びている。サッシュインナ22は、後端部において、図8からわかるように、車両上下方向のVIII−VIII線の位置よりも下側にまで延びている。
サッシュインナ22は、図2等に示すように、内部空間NKから離れた側の面である外側面22оsと、内部空間NKに近い側の面である内側面と、を有する。サッシュインナ22の前記内側面は、サッシュアウタ24と接合されるためのサッシュインナ接合面22isである。上述するように、サッシュインナ22がドアインナパネル32の形状に沿うような形状を有するので、サッシュインナ22の外側面22оsは、図3、図4、図5、図7及び図8に示すように、ウエストラインWL上及びウエストラインWLよりも車両上下方向の下側で、アルミニウム製のドアインナパネル32の中央部32fの収容空間SK側の面と面接触しながら溶接接合されている。
サッシュアウタ24は、サッシュ部20の車幅方向外側部分を形成する板状の部材であり、サッシュインナ22よりも車幅方向外側に配置されている。本実施の形態において、サッシュアウタ24を形成する板材は、サッシュインナ22に用いられているクラッド材と同じクラッド材である。サッシュアウタ24は、ウインドウガラスから離れている側の端部24e1と、ウインドウガラスに近い側の端部24e2と、端部24e1と端部24e2との間の中央部24fと、を有している。サッシュアウタ24は、ウエストラインWLより上側では、サッシュインナ22と同様に、端部24e1、24e2がそれぞれサッシュインナ22の端部22e1、22e2と突き合せ可能な形状であるように、形成されている。同時に、サッシュアウタ24は、中央部24fにおいてサッシュインナ22の中央部22fとの間で内部空間NKを形成することが可能な形状であるように、プレス成形により形成されている。具体的には、サッシュアウタ24は、図2及び図6に示すように、ウエストラインWLより上側では、中央部24fにおいて車幅方向外方に膨出するような形状を有する。一方、サッシュアウタ24は、ウエストラインWLより下側では、図4に示すように、端部24e1近傍においてドアインナパネル32の形状に沿うような形状を有するものの、中央部24fにおいて、収容空間SKに向かって延びるような形状を有し、ドアインナパネル32及びドアアウタパネル34のいずれとも離間している。サッシュアウタ24がドアインナパネル32及びドアアウタパネル34のいずれとも離間している状態は、図4で示すIV−IV線の位置のみならずいずれの位置においても同じである。さらに、サッシュアウタ24は、ウエストラインWL上では、図3に示すように、上述した中央部24fにおいて車幅方向外方に膨出するような形状であり、かつ、端部24e1、24e2がサッシュインナ22の端部22e1、22e2と突き合せ可能な形状を有する。さらに、サッシュアウタ24は、前端部において、図4及び図5からわかるように、車両上下方向のIV−IV線の位置とV−V線の位置との間の位置にまで延びている。サッシュアウタ24は、後端部において、図7及び図8からわかるように、車両上下方向のVII−VII線の位置とVIII−VIII線の位置との間の位置にまで延びている。
サッシュアウタ24は、図2に示すように、内部空間NKに近い側の面である内側面を有する。そして、サッシュアウタ24の前記内側面は、サッシュインナ接合面22isと接合されるサッシュアウタ接合面24isである。
サッシュ部20は、サッシュインナ22の端部22e1、22e2とサッシュアウタ24の端部24e1、24e2とがそれぞれ突き合せるようにして溶接接合されている。具体的には、サッシュ部20は、図2、図3及び図6に示すように、サッシュインナ22の端部22e1及びその近傍におけるサッシュインナ接合面22isと、サッシュアウタ24の端部24e1及びその近傍におけるサッシュアウタ接合面24isと、が突き合せるように接触しながら溶接接合されて、形成されている。同様に、サッシュ部20は、サッシュインナ22の端部22e2及びその近傍におけるサッシュインナ接合面22isと、サッシュアウタ24の端部24e2及びその近傍におけるサッシュアウタ接合面24isと、が突き合せるように接触しながら溶接接合されて、形成されている。これにより、サッシュ部20は、サッシュインナ22の中央部22fとサッシュアウタ24の中央部24fとの間に位置する内部空間NKを囲む中空断面を形成する。
クラッド材は、それぞれが金属材料からなる複数の金属層が互いに積層された積層構造を有する板材である。クラッド材は、複数枚のそれぞれ特性の異なる金属材料からなる板材が積層された状態で圧延され熱処理されて面接合されて一枚の板材に形成されており、当該面接合が原子間結合すなわち強い結合となっているので、複数の異なる金属材料の特性を有している一枚の板材である。
本実施の形態に係るクラッド材の複数の金属層は、2層の金属層で構成されており、アルミニウムからなる第1金属層M1と、鋼からなる第2金属層M2と、を含む。すなわち、本実施の形態に係るクラッド材は、第1金属層M1及び第2金属層M2のみにより構成されている。鋼は、アルミニウムよりも大きなヤング率を有する金属材料である。そして、本実施の形態に係るクラッド材において、第2金属層M2は、第1金属層M1よりも内部空間NKに近い側である積層構造内側に配置されている。具体的には、図2に示すように、サッシュインナ22及びサッシュアウタ24のそれぞれにおいて、内部空間NKに近い側の内側であって積層構造の内側である位置に第2金属層M2が配置されており、内部空間NKから離れた側の外側であって積層構造の外側である位置に第1金属層M1が配置されている。
そして、図2に示すように、サッシュインナ22の第1金属層M1が、サッシュインナ22の外側面22оsを形成している。すなわち、サッシュインナ22の外側面22оsを形成する材料は、アルミニウムである。
さらに、図2に示すように、サッシュインナ22の第2金属層M2が、サッシュインナ接合面22isを形成している。同様に、サッシュアウタ24の第2金属層M2が、サッシュアウタ接合面24isを形成している。
すなわち、サッシュインナ接合面22isを形成する材料とサッシュアウタ接合面24isを形成する材料は、それぞれ第2金属層M2を形成する鋼であり、互いに同種の金属材料である。
そして、サッシュインナ22とサッシュアウタ24とは、それぞれの端部22e1及び端部24e1、端部22e2及び端部24e2並びにその近傍において、サッシュインナ接合面22isとサッシュアウタ接合面24isとが突き合せられて接触した状態で、溶接接合されている。
さらに、サッシュインナ22の積層構造を言い換えると、次のとおりである。サッシュインナ22は、積層構造において内部空間NKから離れた積層構造最外側に配置される金属層であるサッシュインナ最外側金属層(符号なし)と、積層構造において内部空間NKに近い積層構造最内側に配置される金属層であるサッシュインナ最内側金属層(符号なし)と、を有している。そして、本実施の形態において、サッシュインナ最外側金属層は、第1金属層M1であり、サッシュインナ最内側金属層は、第2金属層M2である。そして、本実施の形態に係るサッシュインナ22において、サッシュインナ最外側金属層は、サッシュインナ22の外側面22оsを有しており、サッシュインナ最内側金属層は、内部空間NKに近い側の面である内側面すなわちサッシュインナ接合面22isを有している。サッシュインナ22の外側面22оsを有するサッシュインナ最外側金属層は、ウエストラインWLよりも下側で、アルミニウム製のドアインナパネル32と溶接接合されている。
同様に、サッシュアウタ24の積層構造を言い換えると、次のとおりである。サッシュアウタ24は、積層構造において内部空間NKから離れた積層構造最外側に配置される金属層であるサッシュアウタ最外側金属層(符号なし)と、積層構造において内部空間NKに近い積層構造最内側に配置される金属層であるサッシュアウタ最内側金属層(符号なし)と、を有している。そして、本実施の形態において、サッシュアウタ最外側金属層は、第1金属層M1であり、サッシュアウタ最内側金属層は、第2金属層M2である。そして、本実施の形態に係るサッシュアウタ24において、サッシュアウタ最内側金属層は、内部空間NKに近い側の面である内側面すなわちサッシュアウタ接合面24isを有している。
そして、前記サッシュインナ最内側金属層を形成する材料と前記サッシュアウタ最内側金属層を形成する材料は、それぞれ第2金属層M2を形成する鋼であり、互いに同種の金属材料である。
そして、サッシュインナ22とサッシュアウタ24とは、それぞれの端部22e1及び端部24e1、端部22e2及び端部24e2並びにその近傍において、前記サッシュインナ最内側金属層と前記サッシュアウタ最内側金属層が突き合せられるように接触しながら、溶接接合されている。
次に、本実施の形態に係る車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20の作用効果を説明するためにシミュレーションが行われたシミュレーションモデル及びシミュレーション結果を説明する。
図9は、本発明の実施の形態に係る車両用サイドドアのサッシュ部のシミュレーションモデル及び比較モデルを示す図である。具体的には、図9のシミュレーションモデルは、仮想的なサッシュ部20vを想定したものであり、車幅方向の荷重に対して、サッシュインナ22v及びサッシュアウタ24vのうちの中立面CAから一番離れているそれぞれの部分のみを取り出して曲げ剛性値を計算するためのモデルである。図9において、二点鎖線で示されている補強材RIは比較モデルを示しており、比較モデルとは、第1金属層M1のみからなる(第2金属層M2を有していない)サッシュインナ22v及びサッシュアウタ24vに2mmの間隔をおいて内側に補強材RIが設けられ場合のサッシュ部20vの曲げ剛性値を計算するためのモデルである。図10は、図9のシミュレーションモデル及び比較モデルでシミュレーションした結果を表すグラフであって、シミュレーションモデル及び比較モデルの質量が一定(第2金属層M2及び補強材RIがなく第1金属層M1の厚みが3mmであるサッシュ部の質量値)であるとする条件で、横軸に示す第2金属層M2又は補強材RIのヤング率と縦軸に示すサッシュ部20vの曲げ剛性値との関係を表すグラフである。図10において、5つの線種は、第1金属層M1の厚みを2.0mm、1mm、0.5mmもしくは3mm(第2金属層M2なし)とするシミュレーションモデル、又は、第1金属層M1の厚みを1mmとし第1金属層M1から内側に2mmの間隔をあけて補強材RIを設けた比較モデルをそれぞれ示している。図11は、図9のシミュレーションモデルでシミュレーションした結果を表すグラフであって、シミュレーションモデルの第1金属層M1の厚みが1mmであり且つシミュレーションモデル全体の曲げ剛性値が一定(第2金属層M2及び補強材RIがなく第1金属層M1の厚みが3mmであるものの曲げ剛性値)であるとする条件で、横軸に示す第2金属層M2のヤング率と縦軸に示す第2金属層M2の厚みとの関係を表すグラフである。
図10の縦軸に示される曲げ剛性値は、次の計算式で求められたものである。第1金属層M1のヤング率をE1、第1金属層M1の断面二次モーメントをI1、第2金属層M2又は補強材RIのヤング率をE2、第2金属層M2又は補強材RIの断面二次モーメントをI2とすると、曲げ剛性値=E1I1+E2I2により計算することができる。
図10のグラフから、次の結果が理解される。
二点鎖線で示され円のマークが施されている線種のグラフ及び点線のグラフを除いて、全ての線種のグラフにおいて、第2金属層M2のヤング率が7×104MPaを超えると、第1金属層M1のみからなるもののグラフ(点線で示されているM1単層のグラフ)の曲げ剛性値よりも、第1金属層M1及び第2金属層M2により構成されるシミュレーションモデルの曲げ剛性値は大きくなっている。すなわち、7×104MPaはアルミニウムのヤング率に等しいので、第2金属層M2のヤング率がアルミニウムからなる第1金属層のヤング率よりも大きくなると、シミュレーションモデルの曲げ剛性値は、第1金属層のみからなる、すなわちアルミニウムのみからなるものよりも、大きくなる。
さらに、図10のうちの第2金属層M2のヤング率が7×104MPaを超える領域において、円のマークが施されている線種のグラフ及び点線のグラフを除いて、第1金属層M1の厚みが薄い線種のグラフほど、シミュレーションモデルの曲げ剛性値は向上している。すなわち、第1金属層M1よりもヤング率が大きい第2金属層の厚みが厚いほど、シミュレーションモデルの曲げ剛性値は向上している。
さらに、図10において二点鎖線で示され円のマークが施されている線種のグラフ、すなわち第1金属層M1のみからなるサッシュインナ22v及びサッシュアウタ24vに間隔をあけて内側に補強材RIが設けられている比較モデルの結果を示すグラフが示す曲げ剛性値は、補強材RIのヤング率がどの値であっても、その値に対応する第2金属層M2のヤング率における他のどのシミュレーションモデルのグラフが示す曲げ剛性値よりも小さい。特に、補強材RIが設けられている比較モデルのグラフは、四角形のマークが施されている線種のグラフ、すなわち第2金属層M2を有し第1金属層M1の厚みが1mmであるシミュレーションモデルのグラフと、ほぼ同じ間隔を保ちながら、曲げ剛性値が小さい側に曲線を描いている。
すなわち、上記の結果から、補強材RIが設けられている比較モデルよりも、第1金属層M1と第2金属層M2とにより構成されるクラッド材からなるシミュレーションモデルの方が曲げ剛性が大きいことがわかる。この理由は、次のとおりである。第1金属層M1から一定の間隔をあけて内側すなわち中立面CAに近い位置に補強材RIが設けられる比較モデルと、第1金属層M1に沿って内側に第2金属層M2が設けられているシミュレーションモデルとの比較において、第2金属層M2が補強材RIよりも中立面CAから離れた位置に設けられているので、第2金属層M2の断面二次モーメントは補強材RIの断面二次モーメントよりも大きい。したがって、シミュレーションモデルの方が比較モデルよりも曲げ剛性が大きくなる。
次に、図11のグラフから、次の結果が理解される。
シミュレーションモデルの第1金属層M1の厚みが1mmであり且つシミュレーションモデル全体の曲げ剛性値が一定であるとする条件において、第2金属層M2のヤング率が大きいほど、第2金属層M2の厚みが小さくなっている。特に、アルミニウムのヤング率7×104MPaよりも第2金属層M2のヤング率が大きくなることで、第2金属層M2の厚みが2mmよりも小さくなり、これにより、サッシュインナ22v又はサッシュアウタ24vの厚みが3mmより小さくなることがわかる。このことは、第2金属層M2を構成する金属材料のヤング率をアルミニウムのヤング率よりも大きくすることで、サッシュ部として必要な曲げ剛性を達成しながら、第2金属層M2の厚みが小さくなることにより全体の厚みが小さくなるので、アルミニウムからなる第1金属層M1と相まって、サッシュ部の重量を軽量化することができ、ひいては車両用サイドドアの重量を軽量化することができることを示している。
上記のシミュレーション結果に基づいて、本実施の形態に係る車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20の作用効果を説明する。
車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20によれば、サッシュインナ22及びサッシュアウタ24のそれぞれが、アルミニウムからなる第1金属層M1と前記アルミニウムよりも大きなヤング率を有する金属材料からなる第2金属層とを含むクラッド材により形成されるものであるので、サッシュ部の軽量化を実現することができる。この点は、上述した図11が示す結果のとおりである。
さらに、車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20によれば、サッシュ部の曲げ剛性を向上させることができる。具体的には、次の2点のとおりである。
1点目として、車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20によれば、前記クラッド材がアルミニウムよりも大きなヤング率を有する鋼からなる第2金属層M2を含むことにより、アルミニウムのみからなるサッシュ部に比べて、サッシュ部の曲げ剛性を向上させることができる。この点は、上述した図10が示す結果のとおりである。
2点目として、車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20によれば、第2金属層M2が第1金属層M1より内部空間NKに近い側である積層構造内側に配置されているので、アルミニウムからなるサッシュ部において必要な隙間を空けて内部空間NKを囲む中空断面の中立軸に近い位置に第2金属層M2の金属材料である鋼と同じ鋼からなる補強材が配置される場合に比べて、サッシュ部の断面二次モーメントを向上させることができ、これにより、サッシュ部の曲げ剛性を向上させることができる。この点は、上述した図10が示す比較モデルのグラフとシミュレーションモデルとの比較結果のとおりである。
また、車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20によれば、接合されるサッシュインナ22とドアインナパネル32との間で異種金属接触腐食の発生を抑制することができる。具体的には、アルミニウムからなるドア本体部30とサッシュ部20とを備える車両用サイドドア10において、互いに溶接接合されるドアインナパネル32とサッシュインナ22の外側面22оsとが同種の金属材料であるアルミニウムにより形成されているので、それらの間での異種金属接触腐食の発生を抑制することができる。
すなわち、サッシュインナ最外側金属層がアルミニウムからなる第1金属層M1であり外側面22оsを有するので、アルミニウムからなるドアインナパネル32とサッシュインナ22の外側面22оsとが接合されたときに、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。
さらに、車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20によれば、サッシュインナ22が上記の通りクラッド材で形成されていることから、ドア本体部30と接合されることとなるサッシュインナ22の曲げ剛性が向上し、車両用サイドドア10全体の曲げ剛性が向上する。
さらに、車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20によれば、サッシュインナ接合面22isを形成する材料とサッシュアウタ接合面24isを形成する材料が互いに同種の金属材料である鋼であるので、互いに接合されるサッシュインナ接合面22isとサッシュアウタ接合面24isとの間で異種金属接触腐食の発生が抑制される。
すなわち、サッシュインナ接合面22isを有するサッシュインナ最内側金属層を形成する材料とサッシュアウタ接合面24isを有するサッシュアウタ最内側金属層を形成する材料は、互いに同種の金属材料である鋼であるので、互いに接合されるサッシュインナ接合面22isとサッシュアウタ接合面24isとの間で異種金属接触腐食の発生が抑制される。
さらに、車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20によれば、サッシュ部20を形成するサッシュインナ22及びサッシュアウタ24が、鋼同士の突合せ溶接によって互いに接合されているので、接合強度が高い。
さらに、車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20によれば、サッシュインナ接合面22isとサッシュアウタ接合面24isが、すなわちサッシュインナ最内側金属層とサッシュアウタ最内側金属層が、突き合せられるように接触しながら溶接接合されているので、サッシュインナ22とサッシュアウタ24との間で内部空間NKを囲む中空断面を形成するようにして、曲げ剛性の高いサッシュ部を形成することができる。
さらに、車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20によれば、第2金属層M2を構成する金属材料が鋼であり、鋼は200GPa程度の大きなヤング率を有する材料であるので、サッシュ部の曲げ剛性をより効果的に向上させることができる。
さらに、車両用サイドドア10及び車両用サイドドア10のサッシュ部20によれば、
積層構造として最も簡素である2層構造のクラッド材によりサッシュ部20を形成することができるので、クラッド材を用いながらもコストを抑制することができる。
次に、上記実施の形態に係る車両用サイドドア10のサッシュ部20の製造方法を説明する。
車両用サイドドア10のサッシュ部20の製造方法は、クラッド材形成工程と、クラッド材プレス成形工程と、サッシュインナ−サッシュアウタ接合工程と、を備える。
クラッド材形成工程は、アルミニウムからなる板材と鋼からなる板材とを重ね合わせ、重ね合った状態でそれらを圧延機で圧延し、熱処理を行う工程である。すなわち、クラッド材形成工程は、アルミニウムからなる第1金属層M1と鋼からなる第2金属層M2とが積層された積層構造を有する一枚の板材を形成する工程である。クラッド材形成工程によって、サッシュインナ22及びサッシュアウタ24になるべき2枚のクラッド材が形成される。
クラッド材プレス成形工程は、クラッド材形成工程によって形成された2枚のクラッド材をそれぞれ、プレス成形機によって、サッシュインナ22の形状とサッシュアウタ24の形状とに成形する工程である。
前記クラッド材形成工程及び前記クラッド材プレス成形工程は、サッシュインナ22及びサッシュアウタ24を準備する工程である。
すなわち、サッシュインナ22及びサッシュアウタ24を準備する工程は、それぞれが金属材料からなる複数の金属層が互いに積層された積層構造を有するクラッド材により共に形成され、前記複数の金属層がアルミニウムからなる第1金属層M1とアルミニウムよりも大きなヤング率を有する鋼からなる第2金属層M2とを含み、第2金属層M2が第1金属層M1より内部空間NKに近い側である積層構造内側に配置されている、サッシュインナ22及びサッシュアウタ24を準備する工程である。
さらに、サッシュインナ22及びサッシュアウタ24を準備する工程は、内部空間NKから離れた側の面である外側面22оsを有し、外側面22оsを形成する材料がアルミニウムであるサッシュインナ22を準備する工程を含む。
さらに、サッシュインナ22及びサッシュアウタ24を準備する工程は、内部空間NKに近い側の面である内側面であってサッシュアウタ24と接合されるためのサッシュインナ接合面22isを有するサッシュインナ22と、内部空間NKに近い側の面である内側面であってサッシュインナ接合面22isと接合されるサッシュアウタ接合面24isを有するサッシュアウタ24と、を準備する工程を含む。なお、上述した通り、サッシュインナ接合面22isを形成する材料とサッシュアウタ接合面24isを形成する材料とは、鋼であり、互いに同種の金属材料である。
さらに、サッシュインナ22を準備する工程は、サッシュインナを形成する材料が前記クラッド材となるように、第1金属層M1を構成するアルミニウムと第2金属層M2を構成する鋼とを積層させて積層構造とし、かつ、第1金属層M1がサッシュインナの外側面22оsを形成するように第1金属層M1を配置して、サッシュインナ22を成形する工程を含む。
サッシュインナ22を成形する工程は、第1金属層M1と第2金属層M2とが積層されたクラッド材をプレス成形する工程であるサッシュインナのクラッド材プレス成形工程を含む。
サッシュアウタ24を準備する工程は、サッシュインナ22を準備する工程の説明と同様の説明の繰り返しとなるが、第1金属層M1を構成するアルミニウムと第2金属層M2を構成する鋼とを積層させて積層構造とし、かつ、第1金属層M1がサッシュアウタの外側面を形成するように第1金属層M1を配置して、サッシュアウタ24を成形する工程を含む。
サッシュアウタ24を成形する工程は、第1金属層M1と第2金属層M2とが積層されたクラッド材をプレス成形する工程であるサッシュアウタのクラッド材プレス成形工程を含む。
続いて、サッシュインナ−サッシュアウタ接合工程は、サッシュインナ22とサッシュアウタ24との間で内部空間NKを囲む中空断面を形成するようにサッシュインナ22の端部とサッシュアウタ24の端部とを接合する工程である。
具体的には、次のとおりである。サッシュインナ−サッシュアウタ接合工程は、サッシュインナ22の端部22e1及びその近傍におけるサッシュインナ接合面22isと、サッシュアウタ24の端部24e1及びその近傍におけるサッシュアウタ接合面24isと、が突き合せるように接触しながら、サッシュインナ22とサッシュアウタ24とを溶接接合する第1の接合工程を含む。さらに、サッシュインナ−サッシュアウタ接合工程は、サッシュインナ22の端部22e2及びその近傍におけるサッシュインナ接合面22isと、サッシュアウタ24の端部24e2及びその近傍におけるサッシュアウタ接合面24isと、が突き合せるように接触しながら、サッシュインナ22とサッシュアウタ24とを溶接接合する第2の接合工程を含む。サッシュインナ−サッシュアウタ接合工程により、サッシュインナ22の中央部22fとサッシュアウタ24の中央部24fとの間に内部空間NKが形成され、サッシュ部20において内部空間NKを囲む中空断面が形成される。サッシュインナ−サッシュアウタ接合工程は、サッシュインナ接合面22isを形成する材料とサッシュアウタ接合面24isを形成する材料とが互いに同種の金属材料である鋼であるので、サッシュインナ22とサッシュアウタ24とを容易に溶接接合することを可能とする。
さらに、サッシュインナ−サッシュアウタ接合工程は、サッシュインナ22及びサッシュアウタ24のそれぞれの端部22e1、22e2、24e1、24e2及びその近傍において、サッシュインナ接合面22isとサッシュアウタ接合面24isとを突き合せるように接触させて、サッシュインナ22とサッシュアウタ24とを溶接接合する工程を含む。
次に、上記実施の形態に係る車両用サイドドア10の製造方法を説明する。
車両用サイドドア10の製造方法は、サッシュ部を製造する工程と、ドア本体部を準備する工程と、サッシュ部とドア本体部とを接合する工程と、を備える。
サッシュ部を製造する工程は、上記の車両用サイドドア10のサッシュ部20の製造方法により、サッシュインナ22の外側面22оsを形成する材料がアルミニウムであるサッシュ部20を製造する工程である。
ドア本体部を準備する工程は、アルミニウム製のドアインナパネル32とドアインナパネル32よりも車幅方向外側に配置されるアルミニウム製のドアアウタパネル34とを有するドア本体部30を準備する工程である。
サッシュ部とドア本体部とを接合する工程は、サッシュ部20におけるサッシュインナ22の外側面22оsをドアインナパネル32に接合し、サッシュインナ22が接合されたドアインナパネル32にドアアウタパネル34を接合する工程である。
次に、本実施の形態に係る車両用サイドドア10のサッシュ部20の製造方法及び車両用サイドドア10の製造方法の作用効果を説明する。
前記車両用サイドドア10のサッシュ部20の製造方法によれば、前記クラッド材により形成され、前記複数の金属層がアルミニウムからなる第1金属層M1と前記アルミニウムよりも大きなヤング率を有する鋼からなる第2金属層とを含む、サッシュインナ22及びサッシュアウタ24が準備されて製造されるので、サッシュ部の軽量化を実現することができるとともに、アルミニウムのみからなるサッシュ部に比べてサッシュ部の曲げ剛性を向上させることができる。
さらに、前記車両用サイドドア10のサッシュ部20の製造方法によれば、第2金属層M2が第1金属層M1より内部空間NKに近い側である積層構造内側に配置されているサッシュインナ22及びサッシュアウタ24が準備されて製造されるので、アルミニウムからなるサッシュ部において必要な隙間を空けて前記中空断面の中立軸に近い位置に鋼からなる補強材が配置される場合に比べて、サッシュ部の断面二次モーメントを向上させることができ、これにより、サッシュ部の曲げ剛性を向上させることができる。
さらに、前記車両用サイドドア10のサッシュ部20の製造方法によれば、サッシュ部20の内部空間NKに補強材RIを組み付ける工程を必要としないため、補強材RIを組み付ける工程を備えるサッシュ部の製造方法に比べて、工程数を削減することができる。
さらに、前記車両用サイドドア10のサッシュ部20の製造方法によれば、アルミニウムからなるドア本体部30とサッシュ部20とを備える車両用サイドドア10を製造する場合において、ドア本体部30のアルミニウムからなるドアインナパネル32とサッシュインナ22の外側面22оsとが接合されることとなるが、それらが接合されたときに、ドアインナパネル32とサッシュインナ22の外側面22оsとが同種の金属材料であるアルミニウムにより形成されているので、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。
さらに、前記車両用サイドドア10のサッシュ部20の製造方法によれば、サッシュインナ22に第1金属層M1と第2金属層M2とが積層された積層構造を有するクラッド材を用いることができ、サッシュインナ22、サッシュインナ22を備えるサッシュ部20およびサッシュ部20を備える車両用サイドドア10の剛性が向上することができる。さらに、第1金属層M1がサッシュインナ22の外側面22оsを形成するように第1金属層M1を配置しているので、アルミニウム製のドアインナパネル32とサッシュインナ22の外側面22оsとが接合されたときに、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。
さらに、前記車両用サイドドア10のサッシュ部20の製造方法によれば、サッシュインナ接合面22isを形成する材料とサッシュアウタ接合面24isを形成する材料が互いに同種の金属材料である鋼であり、サッシュインナ22とサッシュアウタ24とを接合する工程がサッシュインナ接合面22isとサッシュアウタ接合面24isとを突き合せるように接触させて接合する工程を含むので、互いに接合されるサッシュインナ接合面22isとサッシュアウタ接合面24isとの間で異種金属接触腐食の発生が抑制されるとともに、サッシュインナ22とサッシュアウタ24との間で内部空間NKを囲む中空断面を形成するようにして、サッシュ部20を製造することができる。
続いて、車両用サイドドア10の製造方法によれば、サッシュインナ22の外側面22оsを形成する材料がアルミニウムであるサッシュ部20が製造され、アルミニウム製のドア本体部30が準備されて、車両用サイドドア10が製造されるので、車両用サイドドア全体で軽量化を実現することができる。
さらに、車両用サイドドア10の製造方法によれば、サッシュインナ22の外側面22оsを形成する材料がアルミニウムであるサッシュ部20が製造され、アルミニウム製のドアインナパネル32を有するドア本体部30が準備された後、サッシュインナ22の外側面22оsをドアインナパネル32に接合する工程が行われることとなるが、ドアインナパネル32とサッシュインナ22の外側面22оsとが同種の金属材料であるアルミニウムにより形成されているので、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。加えて、それらを溶接接合で接合する場合には、接合が容易となる。
さらに、車両用サイドドア10の製造方法によれば、前記クラッド材により形成されることにより曲げ剛性が向上したサッシュ部20とドア本体部30とが接合されることにより、車両用サイドドア全体で曲げ剛性が向上することができる。
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。例えば次のような変形が可能である。
本発明は、サッシュ部が備えるサッシュインナ及びサッシュアウタのそれぞれがクラッド材により形成されているものに限定されず、サッシュインナ及びサッシュアウタのいずれか一方のみがクラッド材により形成されているものであってもよい。
また、本発明において、クラッド材を構成する金属層の層数は限定されない。例えば、3層以上の金属層によりクラッド材が構成されていてもよい。
図12は、その変形の例であるサッシュ部20Aを示す。このサッシュ部20Aは、3層の積層構造を有するサッシュインナ22Aと、単層のサッシュアウタ24Aと、を備える。
サッシュインナ22Aは、3層の金属層が互いに積層された積層構造を有するクラッド材により形成されている。サッシュインナ22Aのクラッド材について、3層の金属層を内部空間NKから離れた外側から1層目L1、2層目L2、3層目L3とすると、1層目L1は、アルミニウムからなる第1金属層M1であり、2層目L2は、鋼からなる第2金属層M2であり、3層目L3は、1層目と同じくアルミニウムからなる第1金属層M1である。サッシュインナ22Aにおいても、第2金属層M2は、1層目L1の第1金属層M1より内部空間NKに近い側である積層構造内側に配置されている。
サッシュインナ22Aにおいて、サッシュインナ最外側金属層である1層目は、内部空間NKから離れた側の面である外側面22Aоsを有している。このため、本変形例においても、外側面22Aоsを形成する材料は、アルミニウムである。
サッシュインナ22Aにおいて、サッシュインナ最内側金属層である3層目は、内部空間NKに近い側の面である内側面であってサッシュアウタ24Aと接合されるためのサッシュインナ接合面22Aisを有している。このため、本変形例において、サッシュインナ接合面22Aisを形成する材料は、アルミニウムである。
一方、サッシュアウタ24Aは、クラッド材ではなく、第1金属層M1のみからなる単層の板材により形成されている。すなわち、サッシュアウタ24Aは、アルミニウム製の板状の部材である。
サッシュアウタ24Aは、内部空間NKに近い側の面である内側面であってサッシュインナ接合面22Aisと接合されるサッシュアウタ接合面24Aisを有している。このため、本変形例において、サッシュアウタ接合面24Aisを形成する材料は、アルミニウムである。
このため、サッシュインナ接合面22Aisを形成する材料とサッシュアウタ接合面24Aisを形成する材料は、それぞれアルミニウムであり、互いに同種の金属材料である。
そして、サッシュインナ22Aとサッシュアウタ24Aとは、それぞれの端部及びその近傍において、サッシュインナ接合面22Aisとサッシュアウタ接合面24Aisとが突き合せられて接触した状態で、溶接接合されている。
このサッシュ部20Aにおいても、サッシュインナ22Aを構成するクラッド材がアルミニウムからなる第1金属層M1と第1金属層M1よりもヤング率の高い鋼からなる第2金属層M2とを含むため、アルミニウムからなる第1金属層M1のみにより構成されているサッシュ部又は厚みを大きくしたり内部に補強材を設けたりする従来のサッシュ部と比べて、サッシュ部の軽量化を図りながら曲げ剛性の向上を実現することができる。
すなわち、サッシュ部20Aにおいて、サッシュインナ22Aを構成するクラッド材の1層目L1と3層目L3とがアルミニウムからなる第1金属層M1により構成されており、さらに、サッシュアウタ24Aがアルミニウムからなる第1金属層M1のみにより構成されているので、サッシュインナ又はサッシュアウタの厚みを大きくする場合やサッシュ部の内部に補強材を設ける場合に比べて、サッシュ部の軽量化を実現することができる。
さらに、このサッシュ部20Aにおいても、2層目L2の第2金属層M2が1層面L1の第1金属層M1より内部空間NKに近い側である積層構造内側に配置されているので、サッシュ部の曲げ剛性を向上させることができる。すなわち、サッシュ部20Aによれば、アルミニウムのみからなるサッシュ部に比べてサッシュ部の曲げ剛性を向上させることができるとともに、アルミニウムからなるサッシュ部において必要な隙間を空けて前記中空断面の中立軸に近い位置に鋼からなる補強材が配置される場合に比べてサッシュ部の曲げ剛性を向上させることができる。
さらに、前記車両用サイドドアのサッシュ部20Aによれば、サッシュインナ最外側金属層である1層目L1がアルミニウムからなる第1金属層M1であり外側面22Aоsを有するので、ドア本体部30のアルミニウムからなるドアインナパネル32とサッシュインナ22Aの外側面22Aоsとが接合されたときに、それらの間での異種金属接触腐食の発生が抑制される。
さらに、サッシュ部20Aによれば、サッシュインナ接合面22Aisを有する3層目L3(サッシュインナ最内側金属層)である第1金属層M1を形成する材料とサッシュアウタ接合面24Aisを形成する材料は、互いに同種の金属材料であるアルミニウムであるので、互いに接合されるサッシュインナ接合面22Aisとサッシュアウタ接合面24Aisとの間で異種金属接触腐食の発生が抑制される。
次に、本発明の変形例に係る車両サイドドアのサッシュ部20Aの製造方法について、上記実施の形態に係る車両用サイドドアのサッシュ部20の製造方法と異なる点を、説明する。
車両用サイドドアのサッシュ部20Aの製造方法は、3層クラッド材形成工程を備える。
前記3層クラッド材形成工程は、アルミニウムからなる板材と鋼からなる板材とアルミニウムからなる板材とを重ね合わせ、重ね合わされたものに圧延及び熱処理を行って、3層の積層構造を有する一枚の板材を形成する工程である。
次に、本発明に含まれる変形例であって、上記に説明された変形例とは異なる変形例を説明する。
本発明は、クラッド材で形成されるのがサッシュインナであるもののみに限定されず、サッシュアウタがクラッド材で形成されるものであってもよい。すなわち、上記の変形例の1つに係るサッシュ部20Aの説明では、サッシュインナがクラッド材で形成され、サッシュアウタがアルミニウムのみからなる単層の板材で形成されているものとして説明を行ったが、本発明は、サッシュインナ及びサッシュアウタの少なくとも一方がクラッド材により形成されているものであればよいので、サッシュインナがアルミニウムのみからなる単層の板材で形成され、サッシュアウタがクラッド材で形成されているものであってもよい。
また、本発明は、クラッド材が有する積層構造が2層又は3層であるもののみに限定されず、4層以上のものであってもよい。また、本発明は、サッシュインナとサッシュアウタとがそれぞれ異なるクラッド材で形成されるものであってもよい。すなわち、上記の実施の形態に係るサッシュ部20の説明ではサッシュインナ22及びサッシュアウタ24がそれぞれ2層の積層構造を有する同じクラッド材により形成されているものとして説明を行い、変形例に係るサッシュ部20Aの説明ではサッシュインナ22Aが3層の積層構造を有するクラッド材により形成されているものとして説明を行ったが、本発明は、サッシュインナ及びサッシュアウタの少なくとも一方が4層以上の積層構造を有するクラッド材により形成されているものであってもよく、サッシュインナ22及びサッシュアウタ24がそれぞれ層数の異なる積層構造を有するクラッド材や異なる金属材料により構成されるクラッド材により形成されているものであってもよい。
また、本発明は、クラッド材が3層以上の積層構造を有する場合に、クラッド材の構成が全て異なる金属材料により構成されているものであってもよいし、同じ金属材料がヤング率の大きな異なる金属材料を挟むように構成されているものであってもよい。すなわち、上記の変形例に係るサッシュ部20Aの説明では、1層目L1と3層目L3とが同じ第1金属層M1すなわちアルミニウムにより形成されているものとして説明を行ったが、3層目L3がアルミニウムとは異なる金属材料により形成される金属層であってもよい。なお、この場合において、3層目L3を形成する金属材料と、向かい合うサッシュインナ又はサッシュアウタの接合面を形成する金属材料とは、互いに同種の金属材料であることが好ましい。また、サッシュインナの外側面を形成する材料は、アルミニウムであることが好ましい。
また、本発明は、第2金属層が鋼からなるものに限定されない。すなわち、本発明は、第2金属層が第1金属層を形成するアルミニウムよりも大きなヤング率を有する金属材料からなるものであればよく、例えば、第1金属層が6000系のアルミニウムで形成されている場合、第2金属層が7000系のアルミニウムで形成されていてもよい。
本発明は、第2金属層が鋼からなる場合において、鋼が軟鋼である場合に限定されず、例えば、中炭素鋼、高張力鋼、ステンレス鋼などの軟鋼以外の鋼であってもよい。
上記の説明では接合が溶接接合であるとして説明を行ったが、本発明における接合は、溶接接合に限定されず、機械的接合であってもよい。
また、本発明における接合が溶接接合である場合において、溶接接合は、例えば、アーク溶接、ガス溶接、スポット溶接及びレーザ溶接などの任意の溶接接合であってもよい。