JP2021178410A - 成形用シート及び該成形用シートを用いた成形体 - Google Patents

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【課題】ポリプロピレンを主体とした被着体を用いた場合でも、優れた耐チッピング性及び成形加工性を備える、成形用シート及び成形体を提供する。【解決手段】透明樹脂層2、バッカー層3及び粘着層4をこの順で含み、粘着層4を介しポリプロピレン基材10へ貼り合わせた時、JIS Z 0237:2009に規定される25℃における粘着層4とポリプロピレン基材10との界面の180°剥離強度が、10N/25mm以上30N/25mm未満である成形用シート1。【選択図】図2

Description

本発明は、耐チッピング性及び成形加工性を備えた、成形用シート及び成形体に関する。
従来より、自動車、電車、バス、飛行機等の一般車両体の外装用パーツに、金属調、又は絵柄調等の意匠性を付与する加飾技術の確立が望まれていた。このような中、自動車等の外装用の樹脂成形体表面を、意匠層を有するフィルムを用いて加飾する手段が提案されている。
一方、近年、自動車等の外装用パーツ用の被着体として、走行時の燃費向上等を目的とした軽量化のため、従来のABSに代わり、より軽量なポリプロピレンが使用される傾向にある。さらに、ポリプロピレンは、ABS等と比較してリサイクル性に優れることから、環境負荷をより低減させることができるため、自動車等の外装用パーツとして、近年、ますます需要が高まっている。
意匠性を有する加飾成形体において、意匠層と被着体とを接着するために、接着剤層が使用されることがある。しかし、従来の接着剤層では、被着体との密着強度が十分でないことから、これらの加飾成形体を自動車等の車両体の外装用パーツとして使用した際、該車両体の走行中の飛び石等に由来する加飾層の剥がれ(チッピング)が生じるという問題があった。特に、ポリプロピレンを被着体に用いた場合、ABSを被着体として用いた場合と比較して、チッピングの発生が顕著になる傾向があった。
耐チッピング性について、特許文献1には、被着体、密着層、意匠層及び表面保護層をこの順に有した加飾成形体で、前記被着体と密着層との剥離強度を規定した加飾成形体を用いることが提案されている。
特開2018−171837号公報
しかしながら、特許文献1では、被着体がABSの場合における、密着層との剥離強度を規定しているに過ぎず、被着体がポリプロピレンを主体とした場合の密着層と被着体との密着性については、何ら検討がされていなかった。そのため、特許文献1において、被着体をポリプロピレンに変更した際、密着層と被着体との密着性をコントロールすることが困難であり、例えば、密着層と被着体との密着性が、想定よりも低くなることで、十分な耐チッピング性を発揮できない問題や、想定よりも高くなることで仕立て直し性が損なわれてしまう問題が生じる場合があった。
特に、被着体と密着層との密着性が高すぎると、加飾成形体の成形時に、加飾シートの貼り合わせに失敗した場合、意図した状態とは異なる状態で被着体に貼りついてしまった加飾シートを、被着体から剥離し除去することが困難であり、再度、加飾成形体を仕立て直すことが困難である問題があった。さらに、加飾成形体を成形時、トリミングした不要部分の加飾シートが、完成した加飾成形体の加飾シート側に意図せず貼りついてしまった場合、貼り付いた不要部分の加飾シートを無理に剥がすと、密着性が高すぎるため、完成した加飾成形体の加飾シートに傷がつき、完成した加飾成形体を毀損する恐れもあった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ポリプロピレンを主体とした被着体でも、優れた耐チッピング性を有し、仕立て直しの容易な成形用シート及び成形体を提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供する。
[1]透明樹脂層、バッカー層及び粘着層をこの順で含む成形用シートであって、前記粘着層を介しポリプロピレン基材へ貼り合わせた時、JIS Z 0237:2009に規定される25℃における前記粘着層と前記ポリプロピレン基材との界面の180°剥離強度が、10N/25mm以上30N/25mm未満である、成形用シート。
[2]前記バッカー層が、ABS系樹脂又はポリ塩化ビニル系樹脂を含む、[1]に記載の成形用シート。
[3]前記バッカー層の厚みが50μm以上である、[1]又は[2]に記載の成形用シート。
[4]前記透明樹脂層の厚みが50μm以上である、[1]〜[3]の何れかに記載の成形用シート。
[5]前記透明樹脂層と前記バッカー層の間に、意匠層を有する、[1]〜[4]の何れかに記載の成形用シート。
[6]被着体と成形用シートとが密着してなる成形体であって、前記被着体はポリプロピレンを含み、前記成形用シートは[1]〜[5]の何れかに記載の成形用シートであり、前記被着体と前記成形用シートの前記粘着層側の面とが密着してなる、成形体。
[7]車両体外装用に用いられる、[6]に記載の成形体。
本発明によれば、ポリプロピレンを主体とした被着体でも、優れた耐チッピング性を有し、仕立て直しの容易な成形用シート及び成形体を提供することができる。
本発明の成形用シートの実施形態を示す断面図である。 本発明の成形用シートを用いて得た成形体の一実施形態を示す断面図である。 本発明の成形体の製造方法の一実施形態を示す工程図である。 実施例及び比較例で得られた加飾成形体の耐チッピング性を評価するグラベロ試験装置の模式図である。
[成形用シート]
本発明の成形用シートは、透明樹脂層、バッカー層及び粘着層をこの順で含み、前記粘着層を介しポリプロピレン基材へ貼り合わせた時、JIS Z 0237:2009に規定される25℃における前記粘着層と前記ポリプロピレン基材との界面の180°剥離強度が、10N/25mm以上30N/25mm未満であることを特徴とする成形用シートである。
本明細書における、粘着層とポリプロピレン基材との界面の180°剥離強度の測定で用いるポリプロピレン基材は、厚み2mmの板状のポリプロピレン基材である。また、該ポリプロピレン基材に含まれるポリプロピレンは、ホモポリマーであり、アイソタクチックポリプロピレンである。このようなポリプロピレンを含むポリプロピレン基材としては、例えば、日立化成社製のコウベポリシート PP−008が挙げられる。
図1は、本発明の成形用シートの実施形態を示す断面図である。図1の成形用シート1は、透明樹脂層2、バッカー層3、粘着層4をこの順に有し、透明樹脂層2とバッカー層3の間に、さらに意匠層5を有している。意匠層5は、図1のようにパターン化されたものでもよく、一様な層を形成するものでもよい。図示はしないが、図1の成形用シート1は、保護層及びアンカー層等を、有してもよい。
本発明の成形用シートは、透明樹脂層、バッカー層及び粘着層をこの順に有していればよく、これらの層の間や表面等に、保護層、意匠層、アンカー層等の他の層を有していてもよい。
<成形用シートの構成の例>
成形用シートの具体例としては、例えば、下記(1)〜(5)の構成が挙げられる。なお、「/」は各層の境界を意味する。
(1)粘着層/バッカー層/透明樹脂層
(2)粘着層/バッカー層/意匠層/透明樹脂層
(3)粘着層/バッカー層/アンカー層/意匠層/透明樹脂層
(4)粘着層/バッカー層/意匠層/アンカー層/透明樹脂層
(5)粘着層/バッカー層/アンカー層/意匠層/アンカー層/透明樹脂層
さらに、成形用シートの具体例としては、上記(1)〜(5)の透明樹脂層のバッカー層側とは反対側の面に、さらに保護層を形成した構成が挙げられる。
なお、本発明の成形用シートは、粘着層のバッカー層側とは反対側の面にセパレータを有していてもよい。セパレータは、成形体成形時に剥離除去できるものであればよく、紙セパレータであってもよいし、フィルムセパレータであってもよい。
以下、本発明の成形用シート及び成形体を構成する各層について説明する。
(バッカー層)
本発明の成形用シートは、透明樹脂層と粘着層の間に、バッカー層を有する。バッカー層は、例えば、成形用シート及び成形体に耐チッピング性を付与したり、成形用シートにコシを与え、成形体成形時のハンドリングを向上させたりする役割を有する。
バッカー層は、次に挙げる樹脂から構成されることが好ましい。バッカー層を構成する樹脂としては、例えばABS系樹脂(アクリロニトリル―ブタジエン―スチレン系共重合体)、PVC(ポリ塩化ビニル)系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。これらの中でも、ABS系樹脂、PVC系樹脂が好ましく、さらに耐衝撃性の観点から、ABS系樹脂が特に好ましい。
本発明のバッカー層に用いる樹脂は、JIS K 7110:1999に規定される、アイゾット衝撃強さの下限が、3kJ/m以上が好ましく、9kJ/m以上がより好ましく、15kJ/m以上がさらに好ましい。アイゾット衝撃強さが3kJ/m以上であることで、バッカー層が飛び石等の衝撃をより効率的に吸収することができ、成形体の耐チッピング性をより向上させやすくすることができる。
また、バッカー層に用いられる樹脂のアイゾット衝撃強さの上限は、通常は特に制限はされないが、成形用シートのトリミング性をより向上させる観点から、50kJ/m以下が好ましく、45kJ/m以下がより好ましく、40kJ/m以下がさらに好ましい。
バッカー層の厚みは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましく、200μm以上であることが特に好ましい。バッカー層の厚みが50μm以上であることで、バッカー層が飛び石等の衝撃を十分に吸収することができるため、成形用シート及び成形体の、耐チッピング性をより向上しやすくなる。さらに、成形用シートに十分なコシを付与することができるため、成形体成形時の、ハンドリング性をより向上することができる。また、バッカー層の厚みは、450μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、350μm以下であることがさらに好ましく、300μm以下であることが特に好ましい。バッカー層の厚みが450μm以下であることで、成形体成形時、成形用シートの不要分をカッターで除去しやすくできるため、成形用シートのトリミング性をより向上させることができる。
(粘着層)
粘着層は、成形用シートを構成する層において、被着体と接する層であり、例えば、被着体との密着性を向上するために成形される。
粘着層は、後述する成形体の被着体がポリプロピレンを含むことから、ポリプロピレン系樹脂に密着する樹脂であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、その化学構造にヘテロ原子を含む極性基を持たないことから、極性が弱いため、従来の粘着剤との密着性が低く、他素材と粘着剤を介して貼り合わせた際の密着性が高くなりにくいことに課題があった。
本発明の粘着層に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂及びビニル系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、耐熱性及び耐候性が良好なアクリル系樹脂を用いることが好ましい。なお、アクリル系樹脂は極性が高い傾向があり、極性の低いポリプロピレン基材に密着しにくい傾向がある。このため、粘着層にアクリル系樹脂を用いる場合、後述のタッキファイヤーを添加することが好ましい。アクリル系樹脂にタッキファイヤーを添加することにより、ポリプロピレン基材との密着性を良好にしやすくでき、成形体の耐チッピング性をより向上しやすくできる。
また、粘着層は、必要に応じて硬化剤を含むことが好ましい。粘着層に用いる硬化剤としては、イソシアネート系硬化剤及びアミン系硬化剤等が挙げられる。
粘着層に用いる樹脂は、20℃における貯蔵弾性率の上限が、3.0×10Pa以下であることが好ましく、2.0×10Pa以下であることがより好ましく、1.5×10Pa以下であることが特に好ましい。貯蔵弾性率が3.0×10Pa以下であることで、特に被着体がポリプロピレンを含む場合、粘着層と被着体との密着性を向上させやすくなり、成形体の耐チッピング性をより向上させやすくできる。
また、粘着層に用いる樹脂の20℃における貯蔵弾性率の下限は、1.0×10Pa以上であることが好ましく、5.0×10以上であることがより好ましく、1.0×10Pa以上であることが特に好ましい。貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であることで、粘着層と被着体との密着性が必要以上に高くなりすぎることを抑制しやすくなり、成形用シートの仕立て直し性を向上させやすくできる。
なお、本明細書において、粘着層の貯蔵弾性率は、JIS L 7224−1:1998に準拠した測定方法によって、測定された値である。具体的には、−50℃〜150℃において、昇温速度3.0℃/分、周波数1.0Hzのせん断モードで粘弾性測定を行った際の、指定した温度における貯蔵弾性率を意味する。
また、本発明の粘着層は、ポリプロピレンを含む被着体との密着性を高くし、耐チッピング性を向上させる観点から、さらにタッキファイヤーを含有した樹脂を用いることが好ましく、タッキファイヤーを含有したアクリル系樹脂を用いることがより好ましい。樹脂にタッキファイヤーを含有させることで、ポリプロピレンを含む被着体との密着性をより向上させることができる。
タッキファイヤーとしては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、クマロン系樹脂、これらの変性樹脂、及びこれらの水素化樹脂等から選択される、1種以上を含むことが好ましい。また、これらのタッキファイヤーは、単独で用いてもよく、異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。タッキファイヤーは、ポリプロピレンとの密着性を向上させる観点から、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂が好ましく、ロジン系樹脂が特に好ましい。
タッキファイヤーに用いる樹脂の重量平均分子量の上限は、通常10000以下であり、8000以下が好ましく、5000以下がより好ましい。タッキファイヤーの重量平均分子量が10000以下であることにより、前述の貯蔵弾性率を好適な範囲にし易くでき、成形用シートと被着体の密着性をより向上させやすくできる。また、タッキファイヤーに用いる樹脂の重量平均分子量の下限は、通常は特に制限はされないが、粘着層とポリプロピレンを含む被着体との密着性をより向上させる観点から、通常400以上であり、500以上がより好ましい。
なお、本明細書における重量平均分子量とは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
タッキファイヤーの含有量は、粘着層に含まれるアクリル樹脂100質量部に対し、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。タッキファイヤーの含有量が5質量部以上であることにより、粘着層とポリプロピレンを含む被着体との密着性を、より向上しやすくでき、積層体の耐チッピング性を向上させやすくできる。また、タッキファイヤーの含有量は、粘着層に含まれるアクリル樹脂100質量部に対し、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。タッキファイヤーの含有量が100質量部以下であることにより、粘着層とポリプロピレンを含む被着体との密着性が高くなりすぎることを抑制することができ、成形用シートの仕立て直し性をより向上させやすくできる。
本発明の粘着層の厚みは、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。粘着層の厚みが10μm以上であることで、被着体と成形用シートの密着性を高くしやすくなり、成形用シート及び成形体の耐チッピング性をより向上しやすくなる。また、粘着層の厚みは、100μm未満であることが好ましく、95μm以下がより好ましく、85μm以下がさらに好ましく、75μm以下が特にさらに好ましい。粘着層の厚みを100μm未満にすることで、成形体成形時のトリミングの際、カッター粘着層を容易に切りやすくすることができ、また、カッターに粘着層の粘着剤が残留することを防ぎやすくすることができるため、成形用シートのトリミング性が向上しやすくなる。
本発明の粘着層は、該粘着層と前述のポリプロピレン基材が直接密着し、それらの界面におけるJIS Z 0237:2009に規定される25℃における180°剥離強度が、10N/25mm以上30N/25mm未満であることを要する。
該180°剥離強度が10N/25mm未満であると、粘着層と後述する被着体との密着性が低くなり、成形体に耐チッピング性を付与することができない。また、該180°剥離強度が30N/25mmを超えると、成形用シートと被着体との貼り合わせに失敗した際、被着体から成形用シートを剥離することが困難となることから、成形用シートの仕立て直し性が劣り、成形体を仕立て直すことができない。該180°剥離強度の下限は15N/25mm以上であることが好ましく、17N/25mm以上であることがより好ましく、20N/25mm以上であることがさらに好ましい。また、該180°剥離強度の上限は、28N/25mm以下であることがより好ましく、25N/25mm以下であることがさらに好ましい。
本発明のような成形品をリサイクルする場合は、一般的には、機械式により、被着体から成形用シートを剥離除去する工程を経て、被着体をリサイクルできるように加工する。
本発明の成形用シートは、該180°剥離強度の上限が上述の範囲であることで、被着体から成形用シートを、機械式で効率的に剥離除去しやすくすることができ、被着体をリサイクルしやすくできる。また、作業効率の向上を図ることができる。
(透明樹脂層)
透明樹脂層は、例えば成形用シート又は成形体の支持体としての役割や、後述する意匠層を保護する役割を有する。
透明樹脂層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ) アクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド系樹脂などの樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。
これらの中でも、耐光性、成形性に優れるとともに、屈折率が低いため透明性に優れ、かつ傷が目立ちにくい、アクリル系樹脂フィルムが好適である。
透明樹脂層は、JIS K 7136:2000のヘイズが5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
また、透明樹脂層は、JIS K 7361−1:1997の全光線透過率が85%以上であることが好ましく90% 以上であることがより好ましい。
透明樹脂層の厚みの範囲は、成形性及び意匠層の保護のバランスの観点から、50μm以上200μm以下が好ましく、60μm以上150μm以下であることがより好ましく、75μm以上125μm以下であることがさらに好ましい。
透明樹脂層中には、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有されていてもよい。
(意匠層)
意匠層は、成形用シートに意匠性を付与する目的で設けられる層である。意匠層は、透明樹脂層とバッカー層の間に形成されるのが好ましい。意匠層によって形成される意匠は、特に制限はされないが、金属光沢により意匠性を与えるもの、絵柄層(全面ベタ着色層含む)により意匠性を与えられるもの等が挙げられる。
<金属光沢層>
金属光沢により金属調の意匠性を与える場合は、意匠層として、金属光沢層を用いることができる。金属光沢層としては、金属膜、又は光輝性顔料を含む塗膜等を使用することができる。
これらの中でも、成形用シート及び成形体に、金属光沢により金属調の意匠性を付与する観点から、金属膜を用いることが好ましい。
金属光沢層を金属膜により形成する場合、金属膜を構成する金属としては、インジウム、スズ、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、真鍮、クロム及び亜鉛等の金属、並びに、これらの合金等が挙げられる。これらの中でも、インジウム、スズ、アルミニウム、亜鉛及びこれらの合金から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。また、インジウムは、耐候性、白化抑制、金属光沢のバランスに優れる観点で最も好ましい。
金属膜の厚みは、用いる金属によって適宜調整する必要があるが、金属光沢性の観点から10nm以上300nm以下であることが好ましく、30nm以上150nm以下であることがより好ましく、30nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。
金属膜の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。これらの中でも、あらゆる素材に処理可能である蒸着法が好ましい。
金属光沢層を塗膜により形成する場合、該塗膜は、光揮性顔料を含む塗膜であることが好ましい。光揮性顔料を含む塗膜に用いるインキは、バインダー及び光揮性顔料が含まれることが好ましい。バインダーとしては、例えば後述の絵柄層で例示したバインダーを好適に用いることができる。
光揮性顔料としては、金属顔料及びパール顔料等を挙げることができる。 金属顔料としては、例えば、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、錫、亜鉛、銅、ニッケル、金及び銀等の金属、これらの金属の合金などの鱗片状粒子からなる顔料等が挙げられる。
また、パール顔料としては、例えば、二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、二酸化チタン及び酸化鉄で被覆した雲母等などが挙げられる。
金属光沢層を形成する塗膜には、上記の金属顔料及びパール顔料を、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光揮性顔料を含む塗膜の厚みは、成形用シート及び成形体に金属調の意匠性を付与する観点から、0.1μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがより好ましい。
なお、金属光沢層は、金属膜及び光輝性顔料を含む塗膜等を1層で形成されてよく、2層以上から形成されてもよい。
<絵柄層>
絵柄層(全面ベタ着色層含む)としては、特に制限されないが、例えば、赤単色、黄単色、カーボン調、木目模様、大理石模様等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等が挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様であってもよい。これらは、通常の赤色、黄色、青色、及び黒色のプロセスカラーの重ね合わせによる多色印刷によって形成してもよく、個々の色の版を用意して行う特色による印刷等によって形成してもよい。特に高彩度な意匠を表現する観点からは、プロセスカラーの重ね合わせによる多色印刷とすることが好ましい。
絵柄層の厚みとしては、特に制限されないが、通常、0.1μm以上30μm以下である。好ましくは1μm以上20μm以下である。
絵柄層は、1層により形成されていてもよいし、2層以上の複数層により形成されていてもよい。絵柄層を形成するための印刷方法については、特に制限されないが、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写による印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
絵柄層に用いるインキとしては、バインダーに顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂(アクリルウレタン共重合樹脂等)、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂等の中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
なお、意匠層は、金属光沢層又は絵柄層を1層単独で形成されてもよく、金属光沢層及び絵柄層を2層以上組み合わせて形成されてもよい。
また、成形用シートの透明樹脂層とバッカー層の間に意匠層を有する場合(特に、意匠層が金属膜の場合)、バッカー層と意匠層との間にはアンカー層を有することが好ましい。
(保護層)
透明樹脂層の、バッカー層側の面とは反対側の面上には、例えば、耐擦傷性を向上するために保護層を形成してもよい。
保護層は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。硬化性樹脂組成物の硬化物は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられ、これらの中でも電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましい。
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましい。また、金属調加飾成形体を製造する過程で樹脂層が傷つくことを抑制する観点からは、電離放射線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
保護層の厚みは、0.5μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがより好ましく、3μm以上10μm未満であることがさらに好ましい。保護層の厚みが0.5μm以上であることで、成形用シート及び成形体に、耐擦傷性を付与しやすくできる。また、保護層の厚みが30μm以下であることで、成形用シートの厚みが必要以上に厚くなることを防ぎ、成形体成形時のハンドリング性及びトリミング性を向上しやすくできる。
(アンカー層)
成形用シートを構成する各層の間には、各層間の密着性を高めるためにアンカー層を有することが好ましい。
アンカー層は、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂及びウレタン系樹脂等の各種の樹脂から構成することができる。
アンカー層を構成する樹脂は、透明樹脂層と金属光沢層との密着性を高める樹脂を選択することが好ましい。例えば、透明樹脂層がアクリル系樹脂フィルムの場合、アンカー層はアクリル系樹脂から構成することが好ましい。また、アンカー層のアクリル系樹脂は、主剤としてのアクリルポリオール、及び硬化剤としてのイソシアネート化合物との反応生成物であることが好ましい。
アンカー層の成形前の厚みは特に限定されず、通常、0.1μm以上10μm以下である。
アンカー層中には、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有されていてもよい。
<総厚み>
成形用シートの厚みは110μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましく、175μm以上がさらに好ましい。成形用シートの厚みが110μ以上であると、成形性シートの耐チッピング性を向上しやすくなり、さらに成形用シートのコシが強くなることから、ハンドリング性が向上しやすくなる。
また、成形用シートの厚みは、700μm以下が好ましく、650μm以下がより好ましく、600μm以下がさらに好ましい。成形用シートの厚みが700μm以下であると、成形体成形時のトリミング性を良好にしやすくなる。
[成形体]
本発明の成形体は、被着体と上記成形用シートとが密着してなる成形体であって、前記被着体はポリプロピレンを含み、前記被着体と前記成形用シートの前記粘着層側の面とが密着してなることを特徴としている。
図2は、本発明の成形用シートを用いて得た成形体の一実施形態を示す断面図である。図2の成形体100は、被着体6と成形用シート1の粘着層6が密着した構造を有している。
(被着体)
本発明の成形体は、粘着層の、バッカー層側の面とは、反対側の面に被着体を有する。また、前述したように、被着体とバッカー層の間に粘着層が介在し、粘着層が被着体と直接密着する構成となっている。
本発明における被着体は、ポリプロピレンを含む。また、被着体を構成する樹脂は、ポリプロピレン系樹脂である。被着体のポリプロピレンの含有量は、50質量%以上であり、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。
被着体に含まれるポリプロピレンとしては、ホモポリマー(例えば、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン等)、ランダムコポリマー(例えば、エチレン―プロピレンランダムコポリマー、プロピレン―1−ブテンランダムコポリマー等)、ブロックコポリマー(エチレン―プロピレンブロックコポリマー等)等から選択した1種以上を用いることができる。被着体に含まれるポリプロピレンは、成形性の観点からホモポリマーが好ましく、アイソタクチックポリプロピレンが特に好ましい。
被着体は、平板のまま成形用シートと貼り合わせて用いてもよいし、あらかじめ成形体の形状に成形されたものを用いてもよいし、樹脂を型に流し込むなどして成形時に成形体の形状としてもよい。
被着体は、着色されていてもよい。着色は白を除く無彩色(灰色、黒色)が好ましく、黒色がより好ましい。
また、成形時の被着体の成形前の厚みは、0.1mm以上5.0mm以下が好ましく、0.5mm以上3.5mm以下がより好ましい。
本発明の成形体は、優れた耐チッピング性を有することから、車両体の外装用に用いられることが好ましい。ここで、車両体とは、耐チッピング性が求められるものであれば、特に制限されないが、道路、空路等において移動を伴う、自動車、自転車、電車、トラック、バス、飛行機などが挙げられる。
<成形用シートの製造方法>
本発明の成形用シートの製造方法は、透明樹脂層にバッカー層を形成する工程、該バッカー層上に粘着層を形成する工程を少なくとも含む。
(バッカー層形成工程)
バッカー層形成工程は、前記透明樹脂層上にバッカー層を形成する工程である。バッカー層の形成方法としては、例えば公知のラミネート法で形成することができる。
(粘着層形成工程)
粘着層形成工程は、前記バッカー層上に粘着層を形成する工程である。粘着層の形成方法としては、例えば、前記バッカー層上に直接粘着層を形成してもよく、事前にセパレータ等に形成された粘着層を、バッカー層に貼り合わせて形成してもよい。
バッカー層上に粘着層を直接形成する場合、粘着層は、バッカー層上に粘着層形成用塗布液を塗布することによって形成することができる。バッカー層上に粘着層形成用塗布液を塗布する方法としては、例えばグラビアコート等の公知の塗布方法で形成することができる。
なお、上記の方法により粘着層を形成する場合、形成した粘着層を保護するために、粘着層上に、さらにセパレータを貼り合わせてもよい。セパレータは、成形体成形前に、粘着層から好適に剥離することができれば特に制限されることなく、紙セパレータ又はフィルムセパレータ等、公知のセパレータを用いることができる。
また、事前にセパレータ等に形成された粘着層をバッカー層に貼り合わせて粘着層を形成する場合、まず、粘着層は、セパレータ等上に粘着剤形成用塗布液を塗布することによって形成される。セパレータ等上に粘着層形成用塗布液を塗布する方法としては、例えばグラビアコート等の公知の塗布方法で形成することができる。次いで、セパレータ等上に形成された粘着層は、バッカー層上に、ラミネート等公知の方法に貼り合わせることで、バッカー層上に粘着層を形成することが可能である。
なお、上記の方法により粘着層を形成する場合、セパレータは、粘着層を好適な状態で形成することができ、かつ粘着層から好適に剥離することができれば特に制限されることなく、紙セパレータ又はフィルムセパレータ等、公知のセパレータを用いることができる。
(意匠層形成工程)
本発明の成形用シートの製造方法には、さらに意匠層の形成工程を含んでもよい。意匠層の形成工程は、透明樹脂層とバッカー層間に意匠層を設ける工程である。意匠層の形成方法としては、前述したとおりである。
(保護層形成工程)
本発明の成形用シートの製造方法には、さらに保護層の形成工程を含んでもよい。保護層の成形工程は、透明樹脂層上に保護層を設ける工程である。保護層の形成方法としては、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方法が挙げられる。
(アンカー層形成工程)
本発明の成形用シートの製造方法には、さらにアンカー層形成工程を含んでもよい。アンカー層形成工程は、成形用シートを構成する層と層に間にアンカー層を設ける工程である。アンカー層の形成方法としては、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方法が挙げられる。
<成形体の製造方法>
本発明の成形体は、本発明の成形用シートと前述した被着体とを用いて成形することにより製造することができる。
例えば、成形用シートの粘着層と成形体の構成部材となる被着体を貼り合わせることにより成形体を製造することができる。すなわち、該粘着層を介し成形用シートと被着体とを貼り合わせる工程である。貼り合わせ方法は、公知の方法で形成することができる。ロール転写装置等による加熱加圧を併用したラミネート法が簡易にできるため好ましい
また、例えば、下記(y1)〜(y2)の工程を有する真空成形により、成形体を製造することができる。
(y1)成形用シートの粘着層側の面と、被着体とを密着させた積層体を作製する。
(y2)上記積層体の被着体側の面を型に向けて配置して真空成形する。
さらに、例えば、下記(v1)〜(v5)の工程を有するTOM成形により、成形体を製造することができる。
(v1)上側真空室及び下側真空室を有するTOM成形機の下側真空室内に、予め製品形状に成形された被着体を配置する工程。
(v2)上側真空室と下側真空室との間に、前述の成形用シートを粘着層が、下側を向くように配置する工程。
(v3)上側真空室及び下側真空室を真空引きする工程。
(v4)成形用シートを加熱しつつ、被着体を上側真空室まで押し上げて、加熱された成形用シートに被着体を押し当てる工程。
(v5)成形用シートが加熱された状態で上側真空室を加圧し、被着体の露出面に成形用シートを密着させる工程。
図3(a)のように、汎用のTOM成形機20は、上側真空室22及び下側真空室21の上下2つの真空室を有している。また、汎用のTOM成形機20の下側真空室21には、上下に昇降可能な台23が設置されている。工程(v1)において、被着体10は、台23上に配置される。
工程(v2)は、上側真空室22と下側真空室21との間に、成形用シート1を粘着層が下側を向くように配置する工程である(図3(a)参照)。
汎用のTOM成形機20は、上下の真空室の間に被着体を被覆する成形用シート1をセットする治具が備えられている。工程(v2)において、成形用シート1は、例えば、当該治具によって、粘着層が下側を向くように配置される。
工程(v1)及び(v2)では、上下の真空室は大気圧に開放した状態である。
工程(v3)は、上側真空室22及び下側真空室21を真空引きする工程である(図3(b)参照)。
真空引きの際は、上下の真空室をそれぞれ閉鎖し、上下の真空室をそれぞれ真空引きし、上下の真空室の内部を真空にする(例えば、真空圧100〜1000Pa)。
工程(v4)は、成形用シート1を加熱しつつ、被着体10を上側真空室まで押し上げて、加熱された成形用シート1に被着体10を押し当てる工程である(図3(c)参照)。
工程(v4)において、被着体を上側真空室まで押し上げる手段は、例えば、下側真空室の台23を上昇させる手段が挙げられる。
工程(v4)及び工程(v5)において、成形用シートの透明樹脂層側の表面温度が、成形用シートを構成する各層の軟化点を超えるように成形用シートが加熱されてなることが好ましい。
かかる温度条件とすることにより、成形性がより良好となり、被着体の側面を成形用シートで覆いやすくすることができる。
なお、工程(v4)及び工程(v5)において、成形用シートの透明樹脂層側の表面温度は、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。また、150℃以下が好ましく、140℃以下が好ましく、130℃以下がさらに好ましい。
工程(v4)及び工程(v5)において、加熱処理は、例えば、上側真空室の天井部に組み込まれたランプヒータで行うことができる。
また、工程(v4)及び工程(v5)において、上下の真空室は、仕切り板24等で仕切られている。
工程(v5)は、成形用フィルムが加熱された状態で上側真空室を加圧し、被着体の露出面に成形用フィルムを密着させる工程である(図3(d)参照)。
工程(v5)において、上側真空室は、例えば、大気圧〜2MPaに加圧する。
工程(v5)において、成形用フィルムは被着体の露出面に密着し、さらに、被着体の露出面の形状に追従して伸長し、被着体の露出面が成形用シートで被覆された成形体を得ることができる。
工程(v5)の後は、さらに、下記の工程(v6)及び(v7)を行うことが好ましい(図3(e)参照)。
(v6)上側真空室及び下側真空室を開放し、大気圧に戻して、成形体を取り出す工程。
(v7)被着体10の表面に密着した成形用シートの不要部分をトリミングする工程。
工程(v7)は、取り出された成形体から、成形用シートの不要部分を、被着体の形状に合わせて切り取り、除去する工程である。
工程(v7)のトリミングの工程は、通常はカッターを用いて、成形用シートの不要部分を切り取る方法で実施されるが、場合によっては、レーザーを用いて、成形用シートの不要部分を焼き切る方法で実施されてもよい。
また、成形用シートが、粘着層上にセパレータを有する場合、工程(v2)の前に、工程(v2a)を有することが好ましい。
(v2a)成形用シートの粘着層から、セパレータを剥離し除去する工程。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、実施例に記載の形態に限定されるものではない。
1.評価及び測定
1−1.耐チッピング性
耐チッピング性試験は、規格番号SAE J−400、規格名称Test for Chip Resistance of Surface Coatings準拠、グラベロ試験にて実施した。図4は、実施例及び比較例で得られた成形体の耐チッピング性を評価するグラベロ試験装置の模式図である。グラベロ試験装置30を用いて、−20℃で、試験用支持体32(材質:セラミック)上の実施例及び比較例で得られた成形体100に7号砕石31(100g)を、成形体100の垂直方向、距離350mmの位置から、射出圧0.4MPaにて1秒間照射した後、成形体100のフィルムの剥がれ具合を確認した。評価基準は以下のとおりである。また、評価結果は表1にまとめた。
<評価基準>
a:目視で観察し、フィルムの剥がれがない。
b:目視で観察し、フィルムの剥がれがほとんどない。
c:目視で観察し、フィルムの剥がれがある。
1−2.剥離強度
180°剥離強度は、JIS Z 0237:2009に規定の試験方法に従い、試験機に材料試験機インストロン5565型(インストロン社製)を用い、測定幅25mm、試験機のチャック間距離100mm、剥離速度300mm/min、室温25℃、湿度40〜65%RHの条件下で測定した。測定結果は表1にまとめた。
試験片は、実施例及び比較例で得られた成形体を、幅5cm×長さ10cmの大きさに切り出した後、長さ方向に延びる2本の切れ込みを、切れ込みの間隔が25mmで、かつ刃先が透明樹脂層からポリプロピレン基材まで到達するように、施した。次いで、該2本の切れ込みを施した部分の、長さ方向の一方の端をめくり、セロハンテープで延長し、試験機にチャックできるようにした。なお、該2本の切れ込みは、試験片の幅方向において、中心から等間隔になるようにした。
1−3.仕立て直し性の評価
仕立て直し性の目安として、成形用シートが意図せずに被着体に貼りついた際、仕立て直すために、被着体から成形用シートを剥離することを想定し、下記の要領で、プロピレン基材から成形用シートを剥離した場合の、剥離のし易さを評価した。
試験サンプルは、被着体として厚み2mmのポリプロピレン板(日立化成社製、商品名:コウベポリシート PP−008)に、成形用シートを、その粘着層側が被着体のポリプロピレン板と接するように貼り合わせ、その後成形用シート側から、重さ2kgのローラーを乗せ一往復させ、プロピレン基材と成形用シートを密着させ、作製した。試験サンプルの大きさは、幅25mm×長さ100mmの矩形状とした。さらに、試験サンプルの端から長さ方向に1cmまで、成形用シートを剥離し、評価時の剥離きっかけ部とした。
評価は、剥離きっかけ部のプロピレン基材と成形用シートをつまみ、成形用シートを引っ張ることで剥離し、剥離のし易さを評価した。
容易に剥離できた場合は3点、剥離できたが強い抵抗を感じた場合は2点、剥離後ポリプロピレン基材に糊残りした、又は成形性シートの破れ等が生じ完全に剥離できなかった場合は1点とし、20人の被験者が評価をし、平均点を算出した。算出した平均点に基づき、下記評価基準でランク付けした。評価結果は表1にまとめた。
<評価基準>
a:2.5点以上
b:1.5点以上、2.5点未満
c:1.5点未満
1−4.トリミング性
実施例及び比較例で得られた成形用シートと、スーパーカー形状の黒色ABSの被着体(布施真空社製)とを、加熱温度:120℃、真空圧力:−0.1MPa(ゲージ圧)、圧空圧力:0.2MPa(ゲージ圧)の条件下でTOM成形した後、成形用シートの不要部分をカッターでトリミングし評価した。評価基準は下記の通りである。評価結果は表1にまとめた。
<評価基準>
a:カッターで成形用シートの不要部分をトリミングした際、カッターへの根着材の付着が目立たず、かつ意図した形状にトリミングすることができた。
c:カッターで成形用シートの不要部分をトリミングした際、カッターへの根着材の付着が目立った。又は、意図した形状にトリミングすることができなかった。
2.成形用シート及び成形体の作製
[実施例1]
<成形用シートの作製>
厚み125μmのアクリル系樹脂フィルム(住化アクリル販売社製、商品名:テクノロイS001G)からなる透明樹脂層上に、下記処方のアンカー層形成用液1を塗布、乾燥し、厚み2μmのアンカー層1を形成した。
<アンカー層形成用塗布液1>
・アクリルポリオール(荒川化学工業社製、商品名アラコートDA105)
3.0質量部
・イソシアネート系化合物(荒川化学工業社製、商品名アラコートCL1)
1.0質量部
・溶剤 適量
次いで、アンカー層1上に、真空蒸着法により、意匠層として、インジウムからなる厚み70nmの金属膜を形成した。
次いで、意匠層上に、下記処方のアンカー層形成用液2を塗布、乾燥し、厚み2μmのアンカー層2を形成した。
<アンカー層形成用塗布液2>
・ポリエステル系樹脂(昭和インク工業社製、商品名:SIVM用HS)
5・0質量部
・イソシアネート系化合物(荒川化学工業社製、商品名:アラコートCL1) 1.0質量部
・溶剤 適量
次いで、アンカー層2上に厚み400μmのABS系樹脂フィルムをロール転写機(ナビタス社製、型番:RH−300)により設定温度200℃、速度10mm/sec、1パスで貼り合わせ、バッカー層を形成した。
次いで、バッカー層上に、アクリル系粘着剤(日榮新化社製、商品名:S−925、アクリル系樹脂にタッキファイヤーを含む粘着剤)を、乾燥後の厚みが50μmになるようにアプリケーターで塗工し乾燥させ、粘着層として粘着層Aを形成し、実施例1で用いる成形用シートを得た。
<成形体の作製>
上側真空室及び下側真空室を有するTOM成形機の下側真空室内の台上に、被着体として厚み2mmのポリプロピレン板(大きさ:A4サイズ、日立化成社製、商品名:コウベポリシート PP−008)を配置した。
次いで、上側真空室と下側真空室との間に、実施例1の成形用シートを、その粘着層が下側(前述の台上のポリプロピレン基材側)を向くようにして配置し、治具で固定した。
次いで、上側真空室及び下側真空室を閉じて密閉し、各真空室を真空引きした(真空圧力:−0.1MPa(ゲージ圧))。
次いで、成形用シートを上側(透明樹脂層側)から加熱(加熱温度:120℃)しつつ、台を操作してポリプロピレン基材を上側真空室まで押し上げ、加熱された成形用シートにポリプロピレン基材を押し当てた。
次いで、成形用シートが加熱された状態で、上側真空室を加圧(圧空圧力:0.2MPa(ゲージ圧))し、ポリプロピレン基材の表面に成形用シートを密着させた。
次いで、上側真空室及び下側真空室を開放し、室温まで空冷後、成形体を取り出した。その後、取り出した成形体から、ポリプロピレン基材のエッジに合わせて、不要の成形用シートをカッターによりトリミングし、実施例1の成形体を得た。
[実施例2]
バッカー層の厚みを100μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の成形用シート及び成形体を得た。
[実施例3]
バッカー層を、厚み100μmのPVCに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の成形用シート及び成形体を得た。
[実施例4]
粘着層の厚みを75μmに変更した以外は、実施例2と同様にして、実施例4の成形用シート及び成形体を得た。
[実施例5]
バッカー層の厚みを500μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の成形用シート及び成形体を得た。
[実施例6]
バッカー層の厚みを50μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の成形用シート及び成形体を得た。
[比較例1]
粘着層の厚みを100μmに変更した以外は、実施例2と同様にして、比較例1の成形用シート及び成形体を得た。
[比較例2]
粘着層の厚みを150μmに変更した以外は、実施例2と同様にして、比較例2の成形用シート及び成形体を得た。
[比較例3]
粘着層の厚みを25μmに変更した以外は、実施例2と同様にして、比較例3の成形用シート及び成形体を得た。
[比較例4]
バッカー層形成後に、粘着層として粘着層Bを下記の通り形成した以外は、実施例2と同様にして、比較例4の成形用シート及び成形体を得た。
(比較例4の粘着層の形成)
厚み50μmのアクリル系粘着剤シート(KISCO社製、商品名:T−13)から、片側の面のセパレータを剥離し、該粘着剤シートを露出させた。次いで、バッカー層上に、露出させた粘着剤シートをラミネートし貼り合わせ、粘着層として粘着層Bを形成した。粘着層B上のバッカー層側とは反対側の面に残存するセパレータは、成形体の作製前に剥離し除去した。
[比較例5]
実施例1において、バッカー層及びアンカー層2を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例5の成形用シート及び成形体を得た。
Figure 2021178410
表1の結果から、剥離強度が10N/25mm以上30N/25mm未満である実施例1〜6の成形用シート及び成形体が、優れた耐チッピング性及び仕立て直し性を有していることが確認できる。
比較例1及び2は、剥離強度30N/25mm以上と大きいため、実施例1〜6と比較して、仕立て直し性が劣る結果となった。
また、比較例3及び4は、剥離強度が10N/25mm未満と小さいため、実施例1〜6と比較して、耐チッピング性が劣る結果となった。
比較例5は、構成内にバッカー層を含まないため、クラベロ試験の砕石の衝突の衝撃を受けきることができず、他の実施例と比較して、耐チッピング性が著しく劣る結果となった。
本発明の成形用シート及び成形体は、優れた耐チッピング性を有することから、例えば、自動車等の車両体の外装用に好適に用いることができる。
1:成形用シート
2:透明樹脂層
3:バッカー層
4:粘着層
5:意匠層
10:被着体
20:TOM成形機
21、22:真空室
23:台
24:仕切り板
30:クラベロ試験装置
31:7号砕石
32:試験用支持体
100:成形体

Claims (7)

  1. 透明樹脂層、バッカー層及び粘着層をこの順で含む成形用シートであって、
    前記粘着層を介しポリプロピレン基材へ貼り合わせた時、JIS Z 0237:2009に規定される25℃における前記粘着層と前記ポリプロピレン基材との界面の180°剥離強度が、10N/25mm以上30N/25mm未満である、成形用シート。
  2. 前記バッカー層が、ABS系樹脂又はポリ塩化ビニル系樹脂を含む、請求項1に記載の成形用シート。
  3. 前記バッカー層の厚みが50μm以上である、請求項1又は2に記載の成形用シート。
  4. 前記透明樹脂層の厚みが50μm以上である、請求項1〜3の何れかに記載の成形用シート。
  5. 前記透明樹脂層と前記バッカー層の間に、意匠層を有する、請求項1〜4の何れかに記載の成形用シート。
  6. 被着体と成形用シートとが密着してなる成形体であって、
    前記被着体はポリプロピレンを含み、
    前記成形用シートは請求項1〜5の何れかに記載の成形用シートであり、
    前記被着体と前記成形用シートの前記粘着層側の面とが密着してなる、成形体。
  7. 車両体外装用に用いられる、請求項6に記載の成形体。
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