JP2021175646A - 車両の乗員保護装置 - Google Patents
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Abstract
Description
シートベルトは、乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトにより、シートに着座している乗員がシートから変位しないように拘束する。エアバッグ装置は、シートに着座する乗員の周囲で展開し、シートの着座位置から変位した乗員に作用する可能性がある大きな衝撃を吸収する。これらの乗員保護装置を使用することにより、車両は、乗車している乗員を保護することができる。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるとは限らない。たとえばシートに着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシートの横方向へ倒れる乗員についてのシートの着座位置からの変位について、適切に衝撃を吸収することは難しい。このため、車両では、シートの周りに、それぞれの衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けている。
また、袋体は、様々な乗員の体形に対応するなとのために、シートの着座位置にいる乗員のたとえば上体から少し離れた位置において展開する。展開した袋体は、乗員のたとえば上体が明らかに動いてから、その衝撃を吸収するように機能し始める。この場合、展開した袋体は、既に動き始めている乗員のたとえば上体についての大きな衝撃を吸収する必要がある。
そして、本発明では、袋体は、連結構造によりシートと連結される。これにより、展開した袋体は、シートに着座する乗員の上体の横に位置することになる。車両が側突する場合、展開した袋体により、乗員に作用する衝撃を、そのシートに着座している姿勢のまま吸収することが可能である。
また、本発明では、連結構造によるシートと袋体との連結を解除する解除装置、を有する。そして、制御部は、車両が前突する場合、インフレータおよび解除装置を動作させる。解除装置によりシートとの連結が解除される状態で展開する袋体は、車両が前突する場合に、シートに着座する乗員の上体の前に展開できる。展開した袋体により、乗員に作用する衝撃を、そのシートに着座している姿勢のまま吸収することが可能である。
これらの作用により、本発明では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突、斜め衝突やオフセット衝突だけでなく、側突などにおいても、右袋体および左袋体により、乗員がシートの着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体および左袋体により乗員を拘束するので、シートベルトのように局所的に強く力を乗員に対して作用させ難くし得る。また、右袋体および左袋体は、シートの着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて好適には密着するように展開しているので、乗員の上体が明らかに動いてしまう前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。乗員の上体の振れそのものを好適に抑制し得る。
図1(A)は、自動車1の模式的な側面図である。図1(B)は、図1(A)の自動車1の上面図である。図1には、自動車1とともに、自動車1に乗車している乗員が図示されている。
自動車1は、車体2、を有する。車体2は、複数のシート4が前向きで配置される乗員室3を有する。シート4は、座部5と、座部5の後縁から上へ立設する背部6と、を有する。乗員は、その腰部および腿を座部5に載せ、その上体の背中を背部6に当ててシート4に着座する。
シートベルト装置は、シート4に着座している乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトを有する。シートベルトは、衝突の際にシート4に着座している乗員がシート4からずれて変位しないように乗員をシート4に拘束する。
エアバッグ装置は、シート4に着座する乗員の周囲で展開する袋体を有する。袋体は、たとえばシート4の前側において展開する。乗員の上体は、衝突の際にシート4に背をつけている着座位置からたとえば前へ倒れるが、展開している袋体に当たることにより衝撃が吸収される。乗員に作用する衝撃を吸収できる。
これらのシートベルト装置や、エアバッグ装置により、自動車1は、乗車している乗員を保護することができる。
しかしながら、たとえばシートベルトは、乗員の胸部を局所的に拘束する。このため、大きな衝撃が入力された際に、乗員の胸部に局所的な負担がかかる可能性がないとは言えない。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な位置およびタイミングに展開して衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切に衝撃を吸収できるとは限らない。たとえばシート4に着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシート4の横方向へ倒れる乗員についてのシート4の着座位置からの車幅方向への変位について、衝撃を吸収することは難しい。このため、自動車1では、シート4の周りに、複数の衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けることになる。シート4の周りには、衝突形態に対応する数の多数のエアバッグ装置が設けられることになる。この場合、乗員を保護するための装置の構造および制御は、複雑化する。
このように乗員保護装置10には、さらなる改善が求められている。
本実施形態では、このような効果を実用的に期待することができる乗員保護装置10について説明する。
図3の乗員保護装置10は、ステレオカメラ11、赤外線カメラ12、LiDAR13、加速度センサ14、通信装置15、GPS受信機16、および、エアバッグ装置17、を有する。エアバッグ装置17は、右袋体21、左袋体22、インフレータ23、右袋体21および左袋体22に接続されるテザー24を引き込む引込装置26、後述するようにシート4と右袋体21および左袋体22とを連結する連結構造31,32、連結構造31,32による連結を解除する解除装置33、および、これらが接続される制御部27、を有する。これら乗員保護装置10の各センサおよび各装置は、自動車1に設けられる不図示の車ネットワークにより、制御部27に接続されてよい。
赤外線カメラ12は、たとえばステレオカメラ11と同様に乗員室3の前部において前向きに配置される。赤外線カメラ12は、車外の人や他の移動体を含む対象物などを撮像した赤外線画像を撮像する。
LiDAR13は、たとえば車体2の前部において前向きに配置される。LiDAR13は、前方へ向かって光を照射し、車体2の前方の車外の人による反射光に基づいて、被写体の方向、距離、速度などを取得する。
加速度センサ14は、車体2に設けられる。加速度センサ14に作用する加速度を検出する。車体2が人などの対象物に当たると、加速度センサ14は、通常の走行では生じないような大きな加速度を検出する。この場合、加速度センサ14は、衝突検出を出力してよい。この場合、加速度センサ14は、車体2と他の対象物との接触を予測または検出する衝突検出部として機能する。
通信装置15は、無線通信により他の移動体、たとえば他の自動車や歩行者の他の通信装置、道路沿いに配置される基地局、などと通信する。通信装置15は、他の通信装置から、他の移動体の現在位置、移動方向、移動速度などを取得してよい。
GPS受信機16は、GPS衛星などから電波を受信し、自車の現在位置、移動速度、などを取得する。
図4(A)は、シート4の前面図である。図4(B)は、シート4の側面図である。図4(C)は、シート4の上面図である。
同様に、左袋体22はシート4の背部6から座部5にかけてシート4の左縁部分に沿って埋設されている場合、シートカバーを破ってシート4の外へ突出した後の左袋体22の長さは、左袋体22の両端が固定されているシート4の背部6の左上部から座部5の左前部分までの直線距離より長くなる。左袋体22は、2つの固定点の直線距離より長い長さで展開することになる。このため、左袋体22は、単に展開しただけでは、撓んで展開するようになり、図2のように乗員に密着して拘束するようにはなり難い。
そして、乗員の左右で撓んだままに展開される右袋体21および左袋体22は、シート4に着座している乗員の前面や左右の両肩に対して密着するようには展開し難い。
制御部27としてのCPUは、たとえば自動車1の走行中の場合に、または自動車1に乗員が乗車している場合に、図5の処理を繰返し実行する。
なお、ステップST1、ステップST2において、CPUが、他の対象物が車体2に衝突する箇所により自動車1の前突、側突を判断したが、これに限られるものではない。自動車1及び他の対象物が動体の場合はそれぞれの進行方向や、自動車1及び他の対象物との相対接近方向を検出することなどにより衝撃の方向を予測することもできる。また、衝突時のGなどをセンサにより検出することもできる。衝突時に自動車1に発生する衝撃方向を判断することは、適宜実施可能である。この場合、衝撃方向に対し、前突、側突の判断を分ける車体2に対する角度閾値を設けても良い。またその場合の角度の閾値は、自動車1と他の対象物の相対速度や、それぞれの速度に応じて変化させても良く、及びそれぞれの角度と接近方向の角度により、事前にマッピングした閾値を採用しても良い。
このように制御部27は、自動車1が乗員室3の側面に側突する場合、インフレータ23および解除装置33の中のインフレータ23のみを動作させる。略棒形状に展開可能な右袋体21および左袋体22は、シート4との連結が解除されていない状態で展開して、シート4に着座する乗員の上体の左右両側である横に展開できる。
しかも、側突時に図6の状態となることにより、乗員の首の側方近傍に右袋体21と左袋体22とが存在することになり、乗員の上体や首部が左右の側方へ移動してしまうことを効果的に抑制し得る。
また、右袋体21および左袋体22は、撓んで展開することにより、シート4に着座している乗員の上体などにより前への移動を阻害されることなく、着座している乗員の上体より前へ移動することができる。
このように制御部27は、自動車1が前面に側突する場合、インフレータ23および解除装置33を動作させて、袋体を連結が解除されている状態で展開し、シート4に着座する乗員の上体より前へ展開できる。略棒形状に展開可能な右袋体21および左袋体22は、シート4との連結が解除された状態で撓んだ状態に展開して、シート4に着座する乗員の上体より前へ展開できる。
ただし、右袋体21および左袋体22は、この段階でも撓んだ状態にあるため、シート4に着座している乗員の上体を拘束することは難しい。
図9(A)は、前面図である。図9(B)は、側面図である。図9では、展開した右袋体21と左袋体22とは、図8(B)と同様にシート4に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着している。両端の2つの固定点の直線距離より長い長さで展開を開始することに起因して撓んだ状態で展開を開始する右袋体21と左袋体22とは、図7に示すように撓んだままにシート4の着座する乗員の前側へ移動でき、最終的には図8および図9に示すようにシート4に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着するように展開できる。右袋体21と左袋体22とは、最終的にはそれらの撓みを残さないように展開して、シート4に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着するように展開できる。
図9の状態において、右袋体21は、シート4の背部6の右上部からシート4に着座する乗員の右肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開する。左袋体22は、シート4の背部6の左上部からシート4に着座する乗員の左肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開する。シート4に着座している乗員の上体は、それに密着するように展開している右袋体21と左袋体22により抑えられ、前後上下左右へずれたり移動したりし難くなる。右袋体21と左袋体22とにより拘束される乗員の上体は、中央寄せされた右袋体21と左袋体22とによりしっかりとホールドされて、それらの間からたとえば前へ抜け出し難くなる。
しかも、本実施形態では、右袋体21の両端の間および左袋体22の両端の間は、連結構造31,32によりシート4と連結される。そして、制御部27は、インフレータ23および解除装置33の中のインフレータ23のみを動作させて、袋体を連結が解除されていない状態で展開する。これにより、展開した右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の上体の横に位置することになる。自動車1が側突する場合、展開した右袋体21および左袋体22により、乗員に作用する衝撃を、そのシート4に着座している姿勢のまま吸収することが可能である。
また、本実施形態では、連結構造31,32によるシート4と袋体との連結を解除する解除装置33、を有し、制御部27は、自動車1が前突する場合、インフレータ23および解除装置33を動作させる。自動車1が前突する場合、シート4との連結が解除される状態で展開する右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の上体の前に展開できる。展開した右袋体21および左袋体22により、乗員に作用する衝撃を、そのシート4に着座している姿勢のまま吸収することが可能である。
これらの作用により、本実施形態では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突、斜め衝突やオフセット衝突だけでなく、側面衝突などにおいても、右袋体21および左袋体22により、乗員がシート4の着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体21および左袋体22により乗員を拘束するので、シートベルトのように局所的に強く力を乗員に対して作用させ難くし得る。また、右袋体21および左袋体22は、シート4の着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて好適には密着するように展開しているので、乗員の上体が明らかに動いてしまう前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。乗員の上体の振れそのものを好適に抑制し得る。
この他にもたとえば、シート4には、左右の一方の側に右袋体21または左袋体22を設けてよい。この場合でも、乗員を保護することが可能である。また、右袋体21または左袋体22は、シートベルトとともに用いてよい。この場合でも、シートベルトのみで乗員を拘束して支える必要がなくなるため、シートベルトによる拘束力を弱めることが期待できる。
この他にもたとえば、右袋体21および左袋体22は、それぞれの両端がシート4の背部6の上部とシート4の左右のアームレスト部とに固定されてよい。
この他にもたとえば、右袋体21および左袋体22は、たとえばシート4の背部6の上で連結されて、一体化されてもよい。
Claims (5)
- 車両のシートについての少なくとも背部の右側および左側の中の少なくとも一方の側部に沿って延在するように両端が前記シートに固定される袋体と、
前記袋体を展開するインフレータと、
展開した前記袋体を前記シートに着座する乗員の上体の横に位置するように前記シートと前記袋体とを連結する連結構造と、
前記連結構造による前記シートと前記袋体との連結を解除する解除装置と、
前記インフレータおよび前記解除装置を前記車両の衝突に応じて制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記車両が前突する場合、前記インフレータおよび前記解除装置を動作させて、前記袋体を連結が解除される状態で展開して前記シートに着座する乗員の上体の前に展開する、
車両の乗員保護装置。
- 前記制御部は、前記車両が側突する場合、前記インフレータおよび前記解除装置の中の前記インフレータのみを動作させて、前記袋体を連結が解除されていない状態で展開して前記シートに着座する乗員の上体の横に展開する、
請求項1記載の、車両の乗員保護装置。
- 前記袋体として、前記車両の前記シートについての少なくとも背部の左右両側に沿って延在するように両端が前記シートに固定される右袋体および左袋体、を有する、
請求項1または2記載の、車両の乗員保護装置。
- 前記袋体の上端は、前記シートの前記背部の上部についての左右方向の中央よりの位置において前記シートに固定される、
請求項1から3のいずれか一項記載の、車両の乗員保護装置。
- 前記制御部は、前記車両が前突する場合、前記解除装置を動作させてから前記インフレータを動作させる、
請求項1から4のいずれか一項記載の、車両の乗員保護装置。
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