JP2021175646A - 車両の乗員保護装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両に設けられる乗員保護装置には、改善の余地がある。【解決手段】車両1の乗員保護装置10は、車両1のシート4についての少なくとも背部6の右側および左側の中の少なくとも一方の側部に沿って延在するように両端がシート4に固定される袋体21,22と、袋体21,22を展開するインフレータ23と、展開した袋体21,22をシート4に着座する乗員の上体の横に位置するようにシート4と袋体21,22とを連結する連結構造31,32と、連結構造31,32によるシート4と袋体21,22との連結を解除する解除装置33と、インフレータ23および解除装置33を車両1の衝突に応じて制御する制御部27と、を有する。制御部27は、車両1が前突する場合、インフレータ23および解除装置33を動作させて、袋体21,22を連結が解除される状態で展開してシート4に着座する乗員の上体の前に展開する。【選択図】図7

Description

本発明は、車両の乗員保護装置に関する。
自動車といった車両では、乗車している乗員を保護するために、シートベルト装置や、エアバッグ装置が使用されている(特許文献1)。
シートベルトは、乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトにより、シートに着座している乗員がシートから変位しないように拘束する。エアバッグ装置は、シートに着座する乗員の周囲で展開し、シートの着座位置から変位した乗員に作用する可能性がある大きな衝撃を吸収する。これらの乗員保護装置を使用することにより、車両は、乗車している乗員を保護することができる。
特開2013−124063号公報
しかしながら、たとえばシートベルトは、乗員を局所的に拘束する。このため、大きな衝撃から乗員を保護することができても、乗員に局所的な負担がかかる可能性がないとは言えない。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるとは限らない。たとえばシートに着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシートの横方向へ倒れる乗員についてのシートの着座位置からの変位について、適切に衝撃を吸収することは難しい。このため、車両では、シートの周りに、それぞれの衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けている。
また、袋体は、様々な乗員の体形に対応するなとのために、シートの着座位置にいる乗員のたとえば上体から少し離れた位置において展開する。展開した袋体は、乗員のたとえば上体が明らかに動いてから、その衝撃を吸収するように機能し始める。この場合、展開した袋体は、既に動き始めている乗員のたとえば上体についての大きな衝撃を吸収する必要がある。
このように車両に設けられる乗員保護装置には、改善の余地がある。
本発明に係る車両の乗員保護装置は、車両のシートについての少なくとも背部の右側および左側の中の少なくとも一方の側部に沿って延在するように両端が前記シートに固定される袋体と、前記袋体を展開するインフレータと、展開した前記袋体を前記シートに着座する乗員の上体の横に位置するように前記シートと前記袋体とを連結する連結構造と、前記連結構造による前記シートと前記袋体との連結を解除する解除装置と、前記インフレータおよび前記解除装置を前記車両の衝突に応じて制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記車両が前突する場合、前記インフレータおよび前記解除装置を動作させて、前記袋体を連結が解除される状態で展開して前記シートに着座する乗員の上体の前に展開する。
好適には、前記制御部は、前記車両が側突する場合、前記インフレータおよび前記解除装置の中の前記インフレータのみを動作させて、前記袋体を連結が解除されていない状態で展開して前記シートに着座する乗員の上体の横に展開する、とよい。
好適には、前記袋体として、前記車両の前記シートについての少なくとも背部の左右両側に沿って延在するように両端が前記シートに固定される右袋体および左袋体、を有する、とよい。
好適には、前記袋体の上端は、前記シートの前記背部の上部についての左右方向の中央よりの位置において前記シートに固定される、とよい。
好適には、前記袋体は、前記シートに着座する乗員の上体の前面に密着できる、とよい。
好適には、前記袋体の下端は、前記シートの前記座部の前部についての前後方向の前よりの位置において前記シートに固定される、とよい。
好適には、前記連結構造は、前記シートの前記背部の側部に沿って設けられる複数の係合部材を有し、複数の前記係合部材により前記シートと前記袋体とを連結する、とよい。
好適には、前記制御部は、前記車両が前突する場合、前記解除装置を動作させてから前記インフレータを動作させる、とよい。
本発明では、車両のシートに両端が固定される袋体が、シートについての少なくとも背部の右側または左側の側部に沿って延在する。そして、インフレータにより展開されることにより、袋体は、シートに着座する乗員の上体に沿うように展開することが可能である。袋体がこのように展開することにより、シートに着座している乗員は、たとえば前突においてもその状態に維持されるように拘束され易くなる。また、展開した袋体が乗員の上体の前面を抑えることにより、シートベルトのみにより乗員を保護しようとする場合とは異なり、乗員を拘束する力が上体の前面についてのシートベルトが当たる部位に局所的に強く作用し難くなる。
そして、本発明では、袋体は、連結構造によりシートと連結される。これにより、展開した袋体は、シートに着座する乗員の上体の横に位置することになる。車両が側突する場合、展開した袋体により、乗員に作用する衝撃を、そのシートに着座している姿勢のまま吸収することが可能である。
また、本発明では、連結構造によるシートと袋体との連結を解除する解除装置、を有する。そして、制御部は、車両が前突する場合、インフレータおよび解除装置を動作させる。解除装置によりシートとの連結が解除される状態で展開する袋体は、車両が前突する場合に、シートに着座する乗員の上体の前に展開できる。展開した袋体により、乗員に作用する衝撃を、そのシートに着座している姿勢のまま吸収することが可能である。
これらの作用により、本発明では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突、斜め衝突やオフセット衝突だけでなく、側突などにおいても、右袋体および左袋体により、乗員がシートの着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体および左袋体により乗員を拘束するので、シートベルトのように局所的に強く力を乗員に対して作用させ難くし得る。また、右袋体および左袋体は、シートの着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて好適には密着するように展開しているので、乗員の上体が明らかに動いてしまう前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。乗員の上体の振れそのものを好適に抑制し得る。
図1は、本発明の実施形態に係る自動車の説明図である。 図2は、図1の自動車に設けることが可能な乗員保護装置の基本的な右袋体および左袋体の展開状態の説明図である。 図3は、図1の自動車に設けられる乗員保護装置の制御系の説明図である。 図4は、本発明の実施形態に係る乗員保護装置の右袋体および左袋体についてのシートでの収容状態の説明図である。 図5は、図3の制御部による乗員保護処理の流れを示すフローチャートである。 図6は、自動車の側突の場合での、右袋体および左袋体の展開方法の説明図である。 図7は、自動車の前突の場合での、右袋体および左袋体の展開方法の説明図である。 図8は、図7に続く引込装置の動作の説明図である。 図9は、自動車の前突の場合での、図8の引込処理後の右袋体および左袋体の展開状態の説明図である。
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1の説明図である。自動車1は、車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、公共交通用のバス、電車、個人用のパーソナルモビリティ、パーソナルモビリティを乗せる架台装置、がある。自動車1は、手動運転または自動運転できるものでもよい。
図1(A)は、自動車1の模式的な側面図である。図1(B)は、図1(A)の自動車1の上面図である。図1には、自動車1とともに、自動車1に乗車している乗員が図示されている。
自動車1は、車体2、を有する。車体2は、複数のシート4が前向きで配置される乗員室3を有する。シート4は、座部5と、座部5の後縁から上へ立設する背部6と、を有する。乗員は、その腰部および腿を座部5に載せ、その上体の背中を背部6に当ててシート4に着座する。
このような自動車1では、乗車している乗員を保護するために、シートベルト装置や、エアバッグ装置が使用される。
シートベルト装置は、シート4に着座している乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトを有する。シートベルトは、衝突の際にシート4に着座している乗員がシート4からずれて変位しないように乗員をシート4に拘束する。
エアバッグ装置は、シート4に着座する乗員の周囲で展開する袋体を有する。袋体は、たとえばシート4の前側において展開する。乗員の上体は、衝突の際にシート4に背をつけている着座位置からたとえば前へ倒れるが、展開している袋体に当たることにより衝撃が吸収される。乗員に作用する衝撃を吸収できる。
これらのシートベルト装置や、エアバッグ装置により、自動車1は、乗車している乗員を保護することができる。
しかしながら、たとえばシートベルトは、乗員の胸部を局所的に拘束する。このため、大きな衝撃が入力された際に、乗員の胸部に局所的な負担がかかる可能性がないとは言えない。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な位置およびタイミングに展開して衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切に衝撃を吸収できるとは限らない。たとえばシート4に着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシート4の横方向へ倒れる乗員についてのシート4の着座位置からの車幅方向への変位について、衝撃を吸収することは難しい。このため、自動車1では、シート4の周りに、複数の衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けることになる。シート4の周りには、衝突形態に対応する数の多数のエアバッグ装置が設けられることになる。この場合、乗員を保護するための装置の構造および制御は、複雑化する。
このように乗員保護装置10には、さらなる改善が求められている。
図2は、図1の自動車1に設けることが可能な乗員保護装置10の基本的な右袋体21および左袋体22の展開状態の説明図である。図2は、右袋体21および左袋体22による乗員保護の基本的な原理を説明するものである。
図2の右袋体21は、インフレータ23からの高圧ガスの流入により、展開する。右袋体21は、シート4の背部6の右上部から前方へ突出し、さらに下方へ突出するように展開する。この場合、右袋体21は、シート4の背部6より前へ展開して、シート4に着座する乗員の上体に沿うように略棒状に展開することになる。
左袋体22は、インフレータ23からの高圧ガスの流入により、展開する。左袋体22は、シート4の背部6の左上部から前方へ突出し、さらに下方へ突出するように展開する。この場合、左袋体22は、シート4の背部6より前へ展開して、シート4に着座する乗員の上体に沿うように略棒状に展開することになる。
このように自動車1のシート4に設けられる右袋体21および左袋体22は、インフレータ23により、シート4の背部6の左右それぞれの上部からシート4に着座する乗員の左右それぞれの肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に別々に展開する。シート4に着座している乗員の上体は、その全面に密着している右袋体21および左袋体22により抑えられ、衝突の際にその状態に維持され得る。展開した右袋体21および左袋体22は、自動車1に対して前方向から衝撃が入力される場合だけでなく、斜前方向から入力される場合でも、乗員をシート4に着座している状態に維持するように拘束できる。また、乗員の上体の前面には、展開した右袋体21および左袋体22により抑えられる。展開した右袋体21および左袋体22は、シートベルトが乗員の上体の前面を拘束する場合と比べて、乗員を拘束する力が上体の前面の一部に局所的に強く作用し難くなる。
本実施形態では、このような効果を実用的に期待することができる乗員保護装置10について説明する。
図3は、図1の自動車1に設けられる乗員保護装置10の制御系の説明図である。
図3の乗員保護装置10は、ステレオカメラ11、赤外線カメラ12、LiDAR13、加速度センサ14、通信装置15、GPS受信機16、および、エアバッグ装置17、を有する。エアバッグ装置17は、右袋体21、左袋体22、インフレータ23、右袋体21および左袋体22に接続されるテザー24を引き込む引込装置26、後述するようにシート4と右袋体21および左袋体22とを連結する連結構造31,32、連結構造31,32による連結を解除する解除装置33、および、これらが接続される制御部27、を有する。これら乗員保護装置10の各センサおよび各装置は、自動車1に設けられる不図示の車ネットワークにより、制御部27に接続されてよい。
ステレオカメラ11は、たとえば乗員室3の前部において前向きに配置される。ステレオカメラ11は、車幅方向に並ぶ複数の撮像デバイスを有する。ステレオカメラ11は、複数の撮像デバイスにより撮像される車外の人などを撮像する。ステレオカメラ11は、撮像した車外の人についての車体2を基準とした方向および距離を演算してよい。ステレオカメラ11は、複数の撮像デバイスの撮像画像における被写体である車外の人の位置に基づいて、たとえば三角法などにより、被写体の方向および距離を演算してよい。ステレオカメラ11は、また、時間をずらして撮像した画像中での位置の変化により、被写体の移動の有無、移動方向、移動速度などを演算してよい。
赤外線カメラ12は、たとえばステレオカメラ11と同様に乗員室3の前部において前向きに配置される。赤外線カメラ12は、車外の人や他の移動体を含む対象物などを撮像した赤外線画像を撮像する。
LiDAR13は、たとえば車体2の前部において前向きに配置される。LiDAR13は、前方へ向かって光を照射し、車体2の前方の車外の人による反射光に基づいて、被写体の方向、距離、速度などを取得する。
加速度センサ14は、車体2に設けられる。加速度センサ14に作用する加速度を検出する。車体2が人などの対象物に当たると、加速度センサ14は、通常の走行では生じないような大きな加速度を検出する。この場合、加速度センサ14は、衝突検出を出力してよい。この場合、加速度センサ14は、車体2と他の対象物との接触を予測または検出する衝突検出部として機能する。
通信装置15は、無線通信により他の移動体、たとえば他の自動車や歩行者の他の通信装置、道路沿いに配置される基地局、などと通信する。通信装置15は、他の通信装置から、他の移動体の現在位置、移動方向、移動速度などを取得してよい。
GPS受信機16は、GPS衛星などから電波を受信し、自車の現在位置、移動速度、などを取得する。
エアバッグ装置17の右袋体21および左袋体22は、たとえばナイロンその他の樹脂繊維により滑らかな表面に形成されてよい。右袋体21および左袋体22は、後述するように折れ曲がった略棒状に展開可能な袋体でよい。
インフレータ23は、右袋体21および左袋体22に接続される。インフレータ23は、点火信号により高圧ガスを発生し、右袋体21および左袋体22へ供給する。
制御部27は、たとえばCPU(Central Processing Unit)、ECU(Electric Control Unit)である。制御部27は、たとえば、エアバッグ装置17に専用のCPUとして自動車1に設けられても、自動車1に設けられる各種の保護装置に共通するCPUとして自動車1に設けられてもよい。CPUは、ROM(Read Only Memory)などのストレージからプログラムを読み込んで実行する。これにより、CPUは、エアバッグ装置17の制御部27として機能する。エアバッグ装置17の制御部27は、ステレオカメラ11、赤外線カメラ12、LiDAR13、加速度センサ14、通信装置15といった衝突検出部からの検出情報に基づいて、自動車1についての衝突の可能性を判断し、衝突を検出する。CPUは、判断または検出した衝突に応じて、インフレータ23へ点火信号を出力し、解除装置33の作動を制御する。これにより、エアバッグ装置17は、展開した右袋体21および左袋体22による乗員保護を実行する。
図4は、本発明の実施形態に係る乗員保護装置10の右袋体21および左袋体22についてのシート4での収容状態の説明図である。
図4(A)は、シート4の前面図である。図4(B)は、シート4の側面図である。図4(C)は、シート4の上面図である。
図4に示すように、本実施形態の右袋体21は、略棒形状に展開可能な長尺形状の袋体である。長尺形状の右袋体21の上端は、シート4の背部6の上部についての左右方向の中央よりの位置に固定される。長尺形状の右袋体21の下端は、シート4の座部5の前部についての前後方向の前よりの位置に固定される。右袋体21は、シート4の座部5の右側部から背部6の右側部に沿って延在するように収容して設けられる。このようにして右袋体21は、シート4についての少なくとも座部5の右側部に沿って延在するように収容して設けられる。
また、左袋体22は、略棒形状に展開可能な長尺形状の袋体である。長尺形状の左袋体22の上端は、シート4の背部6の上部についての左右方向の中央よりの位置に固定される。長尺形状の左袋体22の下端は、シート4の座部5の前部についての前後方向の前よりの位置に固定される。左袋体22は、シート4の座部5の左側部から背部6の左側部に沿って延在するように収容して設けられる。このようにして左袋体22は、シート4についての少なくとも座部5の左側部に沿って延在するように収容して設けられる。
引込装置26は、図4(B)に示すようにシート4の座部5の下側に設けられる。引込装置26と右袋体21の下端とは、テザー24により接続される。引込装置26と左袋体22の下端とは、テザー24により接続される。引込装置26と右袋体21とを接続するテザー24と、引込装置26と左袋体22とを接続するテザー24とは、複数のローラ25により座部5の下で折り返される。
そして、右袋体21および左袋体22は、展開時の圧力によりシート4の表面を形成するシートカバーを破って、シート4の外へ突出する。シート4の外へ突出する右袋体21および左袋体22は、シート4から左右へ展開することができる。シート4から右へ展開した右袋体21は、少なくとも、シート4の背部6の上部とシート4の座部5の前部とが固定されて、それらの間に延在するように展開できる。シート4から左へ展開した左袋体22は、少なくとも、シート4の背部6の上部とシート4の座部5の前部とが固定されて、それらの間に延在するように展開できる。
ただし、このように右袋体21がシート4の背部6から座部5にかけてシート4の右縁部分に沿って埋設されている場合、シートカバーを破ってシート4の外へ突出した後の右袋体21の長さは、右袋体21の両端が固定されているシート4の背部6の右上部から座部5の右前部分までの直線距離より長くなる。右袋体21は、2つの固定点の直線距離より長い長さで展開することになる。このため、右袋体21は、単に展開しただけでは、撓んで展開するようになり、図2のように乗員に密着して拘束するようにはなり難い。
同様に、左袋体22はシート4の背部6から座部5にかけてシート4の左縁部分に沿って埋設されている場合、シートカバーを破ってシート4の外へ突出した後の左袋体22の長さは、左袋体22の両端が固定されているシート4の背部6の左上部から座部5の左前部分までの直線距離より長くなる。左袋体22は、2つの固定点の直線距離より長い長さで展開することになる。このため、左袋体22は、単に展開しただけでは、撓んで展開するようになり、図2のように乗員に密着して拘束するようにはなり難い。
そして、乗員の左右で撓んだままに展開される右袋体21および左袋体22は、シート4に着座している乗員の前面や左右の両肩に対して密着するようには展開し難い。
図5は、図3の制御部27による乗員保護処理の流れを示すフローチャートである。
制御部27としてのCPUは、たとえば自動車1の走行中の場合に、または自動車1に乗員が乗車している場合に、図5の処理を繰返し実行する。
ステップST1において、CPUは、自動車1の前突を判断する。CPUは、他の対象物が車体2の前面に衝突することが予測または検出されている場合、処理をステップST3へ進める。CPUは、他の対象物についての前突が予測または検出されていない場合、処理をステップST2へ進める。
ステップST2において、CPUは、自動車1の側突を判断する。CPUは、他の対象物が車体2の乗員室3の側面に衝突することが予測または検出されている場合、処理をステップST7へ進める。CPUは、他の対象物についての側突が予測または検出されていない場合、処理をステップST1へ戻す。CPUは、ステップST1およびステップST2において、自動車1の衝突を判断する。
なお、ステップST1、ステップST2において、CPUが、他の対象物が車体2に衝突する箇所により自動車1の前突、側突を判断したが、これに限られるものではない。自動車1及び他の対象物が動体の場合はそれぞれの進行方向や、自動車1及び他の対象物との相対接近方向を検出することなどにより衝撃の方向を予測することもできる。また、衝突時のGなどをセンサにより検出することもできる。衝突時に自動車1に発生する衝撃方向を判断することは、適宜実施可能である。この場合、衝撃方向に対し、前突、側突の判断を分ける車体2に対する角度閾値を設けても良い。またその場合の角度の閾値は、自動車1と他の対象物の相対速度や、それぞれの速度に応じて変化させても良く、及びそれぞれの角度と接近方向の角度により、事前にマッピングした閾値を採用しても良い。
ステップST3から、CPUは、前突の場合での乗員保護を実行する。CPUは、まず、シート4と右袋体21および左袋体22との連結を解除する。CPUは、解除装置33を動作させて、連結構造31,32によるシート4と右袋体21および左袋すて体22との連結を解除する。
ステップST4において、CPUは、解除装置33によるシート4と右袋体21および左袋体22との連結の解除状態を判断する。CPUは、たとえば解除装置33を作動させてからの経過時間が、解除に必要とされる閾値時間以上であるか否かに基づいて、連結解除を判断してよい。この他にもたとえば、CPUは、解除装置33による連結構造31,32の解除状態を検出して、連結解除を判断してよい。
ステップST5において、CPUは、エアバッグ装置17を展開する。CPUは、インフレータ23へ点火信号を出力する。これによりエアバッグ装置17の右袋体21および左袋体22は、展開を開始する。
ステップST6において、CPUは、引込装置26を動作させてテザー24を引込む。これにより、右袋体21の下端および左袋体22の下端は、シート4の座部5の下へ引き込まれる。その後、CPUは、本処理を終了する。
ステップST7から、CPUは、側突の場合での乗員保護を実行する。CPUは、エアバッグ装置17を展開する。CPUは、インフレータ23へ点火信号を出力する。これによりエアバッグ装置17の右袋体21および左袋体22は、展開を開始する。この場合、CPUは、解除装置33および引込装置26を動作させることなく、エアバッグ装置17を展開する。その後、CPUは、本処理を終了する。
これにより、制御部27としてのCPUは、自動車1の衝突として前突または側突が検出または予測された場合に、乗員保護装置10の右袋体21および左袋体22を展開する。特に、自動車1が前突する場合、制御部27は、解除装置33を動作させてからインフレータ23を動作させる。
図6は、自動車1の側突の場合での、右袋体21および左袋体22の展開方法の説明図である。図6(A)は、右袋体21および左袋体22が側突のために展開した状態を示す前面図である。図6(B)は、右袋体21および左袋体22が側突のために展開した状態を示す側面図である。
図6には、右袋体21および左袋体22をシート4に連結する構造の例として、左袋体22についての両端の間に連結される係合シート31、複数の係合ピン32、が図示されている。複数の係合ピン32は、シート4の背部6の側面に沿って配列され、係合シート31に止められる。右袋体21についても同様に、係合シート31、係合ピン32が設けられる。係合シート31と複数の係合ピン32とは、係合部材である。このため、側突のために展開した右袋体21および左袋体22は、シート4の背部6から座部5に沿って背部6より前および座部5より上へ突出するように展開する。展開した右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の上体から下肢にかけての左右両側の横に位置する。
このように制御部27は、自動車1が乗員室3の側面に側突する場合、インフレータ23および解除装置33の中のインフレータ23のみを動作させる。略棒形状に展開可能な右袋体21および左袋体22は、シート4との連結が解除されていない状態で展開して、シート4に着座する乗員の上体の左右両側である横に展開できる。
しかも、側突時に図6の状態となることにより、乗員の首の側方近傍に右袋体21と左袋体22とが存在することになり、乗員の上体や首部が左右の側方へ移動してしまうことを効果的に抑制し得る。
図7は、自動車1の前突の場合での、右袋体21および左袋体22の展開方法の説明図である。図7(A)は、右袋体21および左袋体22が前突のために展開した状態を示す前面図である。図7(B)は、右袋体21および左袋体22が前突のために展開した状態を示す側面図である。
図7には、係合シート31と複数の係合ピン32とによる係合部材とともに、解除装置33が図示されている。そして、解除装置33は、係合シート31と複数の係合ピン32との係合を解除する。このように連結が解除された状態で展開することにより、前突のために展開する右袋体21および左袋体22は、展開時の勢いによりシート4の背部6および座部5より前方向へ向かって移動する。
また、右袋体21および左袋体22は、撓んで展開することにより、シート4に着座している乗員の上体などにより前への移動を阻害されることなく、着座している乗員の上体より前へ移動することができる。
このように制御部27は、自動車1が前面に側突する場合、インフレータ23および解除装置33を動作させて、袋体を連結が解除されている状態で展開し、シート4に着座する乗員の上体より前へ展開できる。略棒形状に展開可能な右袋体21および左袋体22は、シート4との連結が解除された状態で撓んだ状態に展開して、シート4に着座する乗員の上体より前へ展開できる。
ただし、右袋体21および左袋体22は、この段階でも撓んだ状態にあるため、シート4に着座している乗員の上体を拘束することは難しい。
図8は、図7に続く引込装置26の動作の説明図である。
図8(A)の右袋体21および左袋体22は、図7のように、着座している乗員の上体より前へ展開している。
引込装置26は、図8(B)に示すように、右袋体21の下端に接続されるテザー24と、左袋体22の下端に接続されるテザー24とを引く。テザー24は、シート4の座部5の下に前後に並べて設けられる複数のローラ25により、シート4の座部5の座面の下において折り返される。右袋体21の下端および左袋体22の下端は、シート4の座部5の下へ引き込まれる。右袋体21および左袋体22の撓みは、引込装置26により引き込まれて解消される。右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の左右両肩の上側を通って乗員の前面へ至る位置へ引き寄せられるように移動する。そして、展開した右袋体21と左袋体22とは、シート4に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着する状態となる。
図9は、自動車1の前突の場合での、図8の引込処理後の右袋体21および左袋体22の展開状態の説明図である。
図9(A)は、前面図である。図9(B)は、側面図である。図9では、展開した右袋体21と左袋体22とは、図8(B)と同様にシート4に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着している。両端の2つの固定点の直線距離より長い長さで展開を開始することに起因して撓んだ状態で展開を開始する右袋体21と左袋体22とは、図7に示すように撓んだままにシート4の着座する乗員の前側へ移動でき、最終的には図8および図9に示すようにシート4に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着するように展開できる。右袋体21と左袋体22とは、最終的にはそれらの撓みを残さないように展開して、シート4に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着するように展開できる。
図9の状態において、右袋体21は、シート4の背部6の右上部からシート4に着座する乗員の右肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開する。左袋体22は、シート4の背部6の左上部からシート4に着座する乗員の左肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開する。シート4に着座している乗員の上体は、それに密着するように展開している右袋体21と左袋体22により抑えられ、前後上下左右へずれたり移動したりし難くなる。右袋体21と左袋体22とにより拘束される乗員の上体は、中央寄せされた右袋体21と左袋体22とによりしっかりとホールドされて、それらの間からたとえば前へ抜け出し難くなる。
以上のように、本実施形態では、自動車1のシート4に両端が固定されて略棒形状に展開可能な右袋体21および左袋体22が、シート4についての少なくとも背部6の右側または左側の側部に沿って延在するように収容される。そして、インフレータ23により展開されることにより、右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の上体に沿うように展開することが可能である。袋体がこのように展開することにより、シート4に着座している乗員は、たとえば前突においてもその状態に維持されるように拘束され易くなる。また、展開した右袋体21および左袋体22が乗員の上体の前面を抑えることにより、シートベルトのみにより乗員を保護しようとする場合とは異なり、乗員を拘束する力が上体の前面についてのシートベルトが当たる部位に局所的に強く作用し難くなる。
しかも、本実施形態では、右袋体21の両端の間および左袋体22の両端の間は、連結構造31,32によりシート4と連結される。そして、制御部27は、インフレータ23および解除装置33の中のインフレータ23のみを動作させて、袋体を連結が解除されていない状態で展開する。これにより、展開した右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の上体の横に位置することになる。自動車1が側突する場合、展開した右袋体21および左袋体22により、乗員に作用する衝撃を、そのシート4に着座している姿勢のまま吸収することが可能である。
また、本実施形態では、連結構造31,32によるシート4と袋体との連結を解除する解除装置33、を有し、制御部27は、自動車1が前突する場合、インフレータ23および解除装置33を動作させる。自動車1が前突する場合、シート4との連結が解除される状態で展開する右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の上体の前に展開できる。展開した右袋体21および左袋体22により、乗員に作用する衝撃を、そのシート4に着座している姿勢のまま吸収することが可能である。
これらの作用により、本実施形態では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突、斜め衝突やオフセット衝突だけでなく、側面衝突などにおいても、右袋体21および左袋体22により、乗員がシート4の着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体21および左袋体22により乗員を拘束するので、シートベルトのように局所的に強く力を乗員に対して作用させ難くし得る。また、右袋体21および左袋体22は、シート4の着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて好適には密着するように展開しているので、乗員の上体が明らかに動いてしまう前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。乗員の上体の振れそのものを好適に抑制し得る。
本実施形態では、右袋体21の上端および左袋体22の上端は、シート4の背部6の上部についての左右方向の中央よりの位置においてシート4に固定される。これにより、前突において展開した右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の首部および頭部の近くに展開できる。乗員の首部および頭部の振れを抑制し得る。しかも、背部6の上部についての左右方向の中央よりの位置から展開することにより、右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の左右両肩の上を通って、シート4に着座する乗員の上体の前へ展開できる。右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の上体の中央の近くにおいて好適に展開できる。乗員による大きな荷重が作用しても、右袋体21および左袋体22は、乗員の上体の前から逃げ難くなる。特に、右袋体21および左袋体22が、シート4に着座する乗員の上体の前面に密着することにより、乗員の上体の移動を好適に抑えることができる。
本実施形態では、右袋体21の下端および左袋体22の下端は、シート4の座部5の前部についての前後方向の前よりの位置においてシート4に固定される。これにより、前突において展開した右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の上体より前へ展開し易くなる。前突において展開した右袋体21および左袋体22は、全体的にシート4に着座する乗員の上体より前へ移動するように展開することにより、シート4に着座する乗員の上体に引っかかったりすることなくスムースに展開できる。前突において展開した右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の上体の前までスムースに且つ容易に展開することが可能となる。特に、併せて、右袋体21の上端および左袋体22の上端が、シート4の背部6の上部についての左右方向の中央よりの位置においてシート4に固定されることにより、右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の上体の左右両肩の上を通って、乗員の上体の前へ展開することができる。
本実施形態では、右袋体21および左袋体22は、シート4の背部6の側部に沿って設けられる複数の係合ピン32による連結構造31,32により、シート4の左右両側部に連結される。これにより、右袋体21および左袋体22は、それらが強く展開しても、シート4に着座する乗員の上体の左右両側の横に位置することができる。
本実施形態では、制御部27は、自動車1が前突する場合、解除装置33を動作させてからインフレータ23を動作させる。これにより、右袋体21および左袋体22は、連結構造31,32によるシート4と袋体との連結が解除され始めてから展開することができる。右袋体21および左袋体22についての展開する勢いを、連結構造31,32によるシート4の連結構造31,32により損なわないようにして、袋体を勢いよく展開させることができる。勢いよく展開した右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の上体の前まで良好に展開することができる。
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
たとえば上述した実施形態では、シート4についての少なくとも背部6の左右両側に右袋体21および左袋体22を設けている。
この他にもたとえば、シート4には、左右の一方の側に右袋体21または左袋体22を設けてよい。この場合でも、乗員を保護することが可能である。また、右袋体21または左袋体22は、シートベルトとともに用いてよい。この場合でも、シートベルトのみで乗員を拘束して支える必要がなくなるため、シートベルトによる拘束力を弱めることが期待できる。
上述した実施形態では、右袋体21および左袋体22は、それぞれの両端がシート4の背部6の上部とシート4の座部5の左右の側部分とに固定されている。
この他にもたとえば、右袋体21および左袋体22は、それぞれの両端がシート4の背部6の上部とシート4の左右のアームレスト部とに固定されてよい。
上述した実施形態では、右袋体21および左袋体22は、たとえばシート4の左右で独立して展開する。
この他にもたとえば、右袋体21および左袋体22は、たとえばシート4の背部6の上で連結されて、一体化されてもよい。
1…自動車(車両)、2…車体、3…乗員室、4…シート、5…座部、6…背部、10…乗員保護装置、11…ステレオカメラ、12…赤外線カメラ、13…LiDAR、14…加速度センサ、15…通信装置、16…GPS受信機、17…エアバッグ装置、21…右袋体、22…左袋体、23…インフレータ、27…制御部、31…係合シート(連結構造)、32…係合ピン(連結構造)、33…解除装置


Claims (5)

  1. 車両のシートについての少なくとも背部の右側および左側の中の少なくとも一方の側部に沿って延在するように両端が前記シートに固定される袋体と、
    前記袋体を展開するインフレータと、
    展開した前記袋体を前記シートに着座する乗員の上体の横に位置するように前記シートと前記袋体とを連結する連結構造と、
    前記連結構造による前記シートと前記袋体との連結を解除する解除装置と、
    前記インフレータおよび前記解除装置を前記車両の衝突に応じて制御する制御部と、
    を有し、
    前記制御部は、前記車両が前突する場合、前記インフレータおよび前記解除装置を動作させて、前記袋体を連結が解除される状態で展開して前記シートに着座する乗員の上体の前に展開する、
    車両の乗員保護装置。
  2. 前記制御部は、前記車両が側突する場合、前記インフレータおよび前記解除装置の中の前記インフレータのみを動作させて、前記袋体を連結が解除されていない状態で展開して前記シートに着座する乗員の上体の横に展開する、
    請求項1記載の、車両の乗員保護装置。
  3. 前記袋体として、前記車両の前記シートについての少なくとも背部の左右両側に沿って延在するように両端が前記シートに固定される右袋体および左袋体、を有する、
    請求項1または2記載の、車両の乗員保護装置。
  4. 前記袋体の上端は、前記シートの前記背部の上部についての左右方向の中央よりの位置において前記シートに固定される、
    請求項1から3のいずれか一項記載の、車両の乗員保護装置。
  5. 前記制御部は、前記車両が前突する場合、前記解除装置を動作させてから前記インフレータを動作させる、
    請求項1から4のいずれか一項記載の、車両の乗員保護装置。

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