JP2021172018A - 高圧水素に触れる中空成形品の製造方法 - Google Patents

高圧水素に触れる中空成形品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点や割れの発生が抑制されるポリアミド樹脂組成物からなる高圧水素に触れる中空成形品の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】中空成形品の製造方法であって、ポリアミド樹脂組成物を用いてインジェクションブロー成形法により中空成形品を形成する工程を含み、前記ポリアミド樹脂組成物がポリアミド6樹脂(A)70〜99重量部および耐衝撃材(B)1〜30重量部の合計100重量部に対し、金属ハロゲン化物(C)0.005〜1重量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂組成物の260℃で測定したときの溶融張力が20mN以上であり、かつ260℃で測定したときの破断時引き取り速度が50m/min以上であることを特徴とする、高圧水素に触れる中空成形品の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物からなる高圧水素に触れる中空成形品の製造方法に関するものである。更に詳しくは、ポリアミド6樹脂、耐衝撃材、および金属ハロゲン化物を特定量配合し、特定の溶融張力、破断時引き取り速度に制御してなるポリアミド樹脂組成物を用い、インジェクションブロー成形法により中空成形品を形成する、中空成形品の製造方法に関するものである。
近年、石油燃料の枯渇や、有害ガス排出量の削減の要請に対応するために、水素と空気中の酸素を電気化学的に反応させて発電する燃料電池を自動車に搭載し、燃料電池が発電した電気をモータに供給して駆動力とする燃料電池電気自動車が注目されてきている。燃料電池電気自動車搭載用の高圧水素用タンクとして、樹脂製のライナーの外側を炭素繊維強化樹脂で補強してなる樹脂製タンクが検討されている。しかしながら、水素は分子サイズが小さいため、比較的分子サイズの大きい天然ガスなどに比べ、樹脂中を透過し易いこと、および高圧水素は常圧の水素に比べ、樹脂中に蓄積される量が多くなることなどから、これまでの樹脂製タンクでは、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、タンクの変形や破壊が起こる課題があった。
ガスバリア性に優れ、低温でも優れた耐衝撃性を有する水素タンクライナー用材料として、例えば、ポリアミド6、共重合ポリアミド、および耐衝撃材を含むポリアミド樹脂組成物からなる水素タンクライナー用材料が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ガスバリア性に優れたガス貯蔵タンク用ライナーとして、例えば、ポリアミド、成核剤および耐衝撃性改良剤を含むポリマー組成物を含有するガス貯蔵タンク用ライナーが検討されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2009−191871号公報 特表2014−501818号公報
樹脂組成物からなる高圧水素に触れる成形品の製造方法は、射出成形、押出成形、ブロー成形等が挙げられる。中でも、大型の成形品を成形する際は、ブロー成形で成形することがあるが、ブロー成形時にドローダウンが発生し、成形品を得ることができない場合や、エアー吹き込み時に破れて成形品を得ることができない場合がある。そのため、大型の成形品をブロー成形するためには耐ドローダウン性やエアー吹き込み時に破れない等のブロー成形性に優れている材料が求められる。
また、ブロー成形は、射出成形と比較して、パリソンに空気を吹き込む時間を要することから成形時における樹脂組成物の加熱時間が長くなる傾向があり、加熱時に樹脂が分解し、靭性が低下する場合がある。そのため、ブロー成形用の樹脂組成物には、加熱時に分解しにくい材料が求められている。さらには、一般的なブロー成形法であるダイレクトブロー成形法では、例えば高圧水素用タンクを形成する際に、口金との結合部の2次加工が必要となることから工程数が増える課題がある。さらに成形時の厚みの制御が難しく、厚みのばらつきが大きくなってしまう課題がある。得られた中空成形品の厚みのばらつきが大きくなると、高圧水素の充填および放圧を繰り返した際に、厚みの薄い箇所から欠陥点や割れが発生する場合がある。そのため、口金との結合部の2次加工が必要無く、中空成形品の厚みのばらつきを抑制できる製造方法が求められている。
しかしながら、特許文献1に記載された水素タンクライナーは、水素ガスの透過や、水素の樹脂中への溶解が生じやすく、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、水素タンクライナーに欠陥点が生じる課題があった。また、ポリアミド樹脂組成物の溶融張力が低く、耐ドローダウン性に劣り、ブロー成形法により中空成形品を得られない課題があった。
また、特許文献2に記載されたガス貯蔵タンク用ライナーは、ヘリウムガス耐透過性には優れるものの、水素ガスの透過や、水素の樹脂中への溶解が生じやすく、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、水素タンクライナーに欠陥点が生じる課題があった。また、ポリアミド樹脂組成物の溶融張力が低く、耐ドローダウン性に劣り、ブロー成形法により中空成形品を得られない課題があった。
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、ブロー成形性、熱安定性に優れ、かつ、厚みのばらつきが小さく、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点や割れの発生が抑制された中空成形品の製造方法を提供することを課題とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
中空成形品の製造方法であって、ポリアミド樹脂組成物を用いてインジェクションブロー成形法により中空成形品を形成する工程を含み、前記ポリアミド樹脂組成物がポリアミド6樹脂(A)70〜99重量部および耐衝撃材(B)を1〜30重量部の合計100重量部に対し、金属ハロゲン化物(C)0.005〜1重量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂組成物の260℃で測定したときの溶融張力が20mN以上であり、かつ260℃で測定したときの破断時引き取り速度が50m/min以上であることを特徴とする、高圧水素に触れる中空成形品の製造方法。
本発明のポリアミド樹脂組成物からなる高圧水素に触れる中空成形品の製造方法によれば、ブロー成形性、熱安定性に優れ、かつ、厚みのばらつきが小さく、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点や割れの発生が抑制された中空成形品を提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、中空成形品の製造方法であって、ポリアミド樹脂組成物を用いてインジェクションブロー成形法により中空成形品を形成する工程を含み、前記ポリアミド樹脂組成物がポリアミド6樹脂(A)70〜99重量部および耐衝撃材(B)1〜30重量部の合計100重量部に対し、金属ハロゲン化物(C)0.005〜1重量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂組成物の260℃で測定したときの溶融張力が20mN以上であり、かつ260℃で測定したときの破断時引き取り速度が50m/min以上であることを特徴とする、高圧水素に触れる中空成形品の製造方法である。
本発明のインジェクションブロー成形法について説明する。インジェクションブロー成形法は、射出成形により形成した試験管状のパリソンを金型にセットし、パリソンに空気を吹き込み、樹脂を延伸させ、中空成形品を得る成形法である。
インジェクションブロー成形法には、ホットパリソン式とコールドパリソン式があり、ホットパリソン式は、射出成形機でパリソンを成形し、そのパリソンが冷却する前に金型にセットし、空気を吹き込んで樹脂を延伸させ、中空成形品を得る方法である。一方、コールドパリソン式は、射出成形機でパリソンを予め成形し、冷却したパリソンを金型にセットして再加熱し、その状態で空気を吹き込んで樹脂を延伸させ、中空成形品を得る方法である。
インジェクションブロー成形法は、射出成形機でパリソンを成形することで、口部の2次加工が必要無く、また、厚みのばらつきを制御することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド6樹脂(A)70〜99重量部および耐衝撃材(B)1〜30重量部の合計100重量部に対し、金属ハロゲン化物(C)0.005〜1重量部を配合してなる。ポリアミド6樹脂(A)は、成形性、ガスバリア性、剛性および靱性のバランスに優れる。ポリアミド6樹脂(A)は、速い引き取り速度まで耐えることができるが、溶融張力を高くするために相対粘度を高くし過ぎると、混練不良が発生しやすい。さらに、結晶化度が高く、水素ガスの透過や、水素の樹脂中への溶解を抑制することができるため、高圧水素の充填、放圧を繰り返しても欠陥点が発生しにくい中空成形品を得ることができる。耐衝撃材(B)は、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性が良く、ポリアミド6樹脂(A)と混練した際に、耐衝撃材(B)の分散径が小さくなることが望ましいが、鋭意検討の結果、ポリアミド樹脂組成物の高温での溶融張力がブロー成形時における成形性の指標となりうることを見出した。本発明において、ポリアミド(A)と耐衝撃材(B)を含むポリアミド樹脂組成物は、溶融張力が高くなり、その結果、耐ドローダウン性に優れる。また、かかるポリアミド6樹脂(A)に、耐衝撃材(B)を特定量配合することにより、靭性を向上させることができる。高圧水素に触れる用途に用いられる中空成形品は、高圧水素の充填、放圧により、収縮、膨張を繰り返すので、割れが発生しやすい。耐衝撃材(B)を特定量配合することにより、このような高圧水素の充填、放圧による収縮、膨張を繰り返しても割れを抑制することができる。さらに、金属ハロゲン化物(C)を特定量配合することにより、熱安定性を向上させることができる。高圧水素に触れる用途に用いられる中空成形品は、ブロー成形時に樹脂組成物の加熱時間が長くなり、靭性が低下しやすい。金属ハロゲン化物(C)を特定量配合することにより、このようなブロー成形時に加熱時間が長くなっても靭性の低下を抑制することができる。
本発明に用いられるポリアミド6樹脂(A)とは、6−アミノカプロン酸および/またはε−カプロラクタムを主たる原料とするポリアミド樹脂である。本発明の目的を損なわない範囲で、他の単量体が共重合されたものでもよい。ここで、「主たる原料とする」とは、ポリアミド樹脂を構成する単量体単位の合計100モル%中、6−アミノカプロン酸由来の単位またはε−カプロラクタム由来の単位を合計50モル%以上含むことを意味する。6−アミノカプロン酸由来の単位またはε−カプロラクタム由来の単位を70モル%以上含むことがより好ましく、90モル%以上含むことがさらに好ましい。
共重合される他の単量体としては、例えば、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ω−ラウロラクタムなどのラクタム;テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン;アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられる。これらを2種以上共重合してもよい。
ポリアミド6樹脂(A)の重合度には特に制限がないが、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液を、25℃で測定した相対粘度(ηr)が、3.3〜7.0の範囲であることが好ましい。相対粘度が3.3以上であれば、ブロー成形時のポリアミド樹脂組成物の溶融張力が適度に高くなり、ドローダウン性をより向上させることができる。一方、相対粘度が7.0以下であれば、ポリアミド樹脂組成物のブロー成形時の溶融粘度が適度に低くなり、ブロー成形性をより向上させることができる。よりブロー成形性を向上できる観点から、相対粘度が4.0〜7.0の範囲がより好ましく、相対粘度が4.0〜6.5の範囲がさらに好ましい。
ポリアミド6樹脂(A)のアミノ末端基量には特に制限がないが、1.0×10−5〜10.0×10−5mol/gの範囲であることが好ましい。アミノ末端基量が1.0×10−5〜10.0×10−5mol/gの範囲であれば、十分な重合度が得られ、中空成形品の機械強度を向上させることができる。ここで、ポリアミド6樹脂(A)のアミノ末端基量は、ポリアミド6樹脂(A)を、フェノール・エタノール混合溶媒(83.5:16.5(体積比))に溶解し、0.02N塩酸水溶液を用いて滴定することにより求めることができる。
本発明に用いられる耐衝撃材(B)としては、ガラス転移温度が0℃以下のポリマーを指す。ここでガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)にて、測定開始温度を−70℃として、20℃/minの昇温速度で昇温時に生じる変曲点から求めることができる。例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ビニル系ゴム、ウレタン系ゴム、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、アイオノマーなどが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
これらの中でも、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性に優れ、靭性改良効果が高いことから、オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。オレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン、ペンテンなどのオレフィン単量体を重合して得られる熱可塑性樹脂である。2種以上のオレフィン単量体の共重合体であってもよいし、これらのオレフィン単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。オレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ1−ブテン、ポリ1−ペンテン、ポリメチルペンテンなどの重合体またはこれらの共重合体;エチレン/α−オレフィン共重合体、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、α−オレフィン/α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)とビニルアルコールエステルとの共重合体]の少なくとも一部を加水分解して得られるポリオレフィン、(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化して得られるポリオレフィン、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とのブロック共重合体またはその水素化物などが挙げられる。これらの中でも、エチレン/α−オレフィン共重合体、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体がより好ましく、エチレン/α−オレフィン共重合体がさらに好ましい。
また、前記オレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されることが望ましい。前述のとおり、耐衝撃材(B)は、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性が良く、ポリアミド6樹脂(A)と混錬した際、耐衝撃材(B)の分散径が小さいことが望ましいが、分散径を小さくするには、ポリアミド6樹脂(A)との混合量と、耐衝撃材(B)のエラストマーの種類がポイントになる。たとえば、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性された耐衝撃材は、ポリアミド6樹脂(A)との反応性が良好であり、ポリアミド6樹脂との相溶性が高まる。
ここで、不飽和カルボン酸の誘導体とは、不飽和カルボン酸のカルボキシル基のヒドロキシ基部分を他の置換基で置換した化合物であり、不飽和カルボン酸の金属塩、酸ハロゲン化物、エステル、酸無水物、アミドおよびイミドなどである。このような変性オレフィン系樹脂を用いることにより、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性が一層向上し、ブロー成形性をより向上させることができる。不飽和カルボン酸およびその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸およびこれらカルボン酸の金属塩;マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸エステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物などの酸無水物;マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物が好ましく、マレイン酸または無水マレイン酸が特に好ましい。
これらの不飽和カルボン酸またはその誘導体をオレフィン系樹脂に導入する方法としては、例えば、オレフィン単量体と、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を共重合する方法、ラジカル開始剤を用いて、未変性オレフィン系樹脂に、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をグラフト導入する方法などを挙げることができる。
一部の不飽和カルボン酸および/またはその誘導体成分の導入されたオレフィン系樹脂は、耐衝撃性の改善の他に、ポリアミド6樹脂中のオレフィン系樹脂の分散にも寄与しており、その樹脂組成物を成形品としたときの局所的な残留歪みを低減する作用も併せ持つ。
不飽和カルボン酸および/またはその誘導体成分の導入量は、例えば、オレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を0.1重量部〜2.5重量部である。具体的には、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体によって不飽和カルボン酸および/またはその誘導体が導入され、その不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変成された変性エチレン/α−オレフィン共重合体の重量が100重量部であるとき、導入された不飽和カルボン酸および/またはその誘導体変性部の重量が0.1〜2.5重量部であることが好ましい。さらに、より好ましくは、導入された不飽和カルボン酸および/またはその誘導体変性部の重量が0.3重量部〜2.3重量部である。
上記の不飽和カルボン酸変性部の重量部範囲においては、ポリアミド6樹脂(A)と耐衝撃材(B)を混練したとき、耐衝撃材(B)の粒子分散径が小さくなる。分散径については後述する。
効果としては、0.1重量部以上とすることで、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性が向上し、耐衝撃材(B)の分散径が小さく、溶融張力が高くなり、ブロー成形時にドローダウンする問題が起こりにくくなる。さらに、破断時引き取り速度が高くなり、ブロー成形時にエアーを吹き込んだ際に破れが発生する問題が起こりにくくなり、好ましい。2.5重量部以下とすることで、ポリアミド6樹脂(A)との異常な反応が生じてゲル化することを抑制し、溶融流動性が低下することで、ブロー成形時に負荷が大きくなり機械が停止する問題が起こりにくくなる。さらに、破断時引き取り速度が高くなり、ブロー成形時にエアーを吹き込んだ際に破れが発生する問題が起こりにくくなり、好ましい。
エチレン/α−オレフィン共重合体としては、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体が好ましい。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらα−オレフィンの中でも、炭素数3〜12のα−オレフィンが、機械強度の向上の観点から好ましい。さらに、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1’−プロペニル)−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンの少なくとも1種が共重合されていてもよい。不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体が、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性を一層向上させ、ブロー成形性や靭性をより向上させることができるので、より好ましい。また、より高圧の水素で充填および放圧を繰り返しても、欠陥点の発生を抑制することができる。エチレン/α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は、好ましくは1〜30モル%、より好ましくは2〜25モル%、さらに好ましくは3〜20モル%である。
耐衝撃材(B)の微粒子の構成および構造は、特に限定されず、例えば、ゴムからなる少なくとも1つの層と、それとは異種の重合体からなる1つ以上の層からなる、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造体であってもよい。多層構造体を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよいが、内部に1層以上のゴム層(コア層)を有することが好ましい。多層構造体のゴム層を構成するゴムの種類は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分、エチレン成分、プロピレン成分、イソブテン成分などを重合させて得られるゴムが挙げられる。多層構造体のゴム層以外の層を構成する異種の重合体の種類は、熱可塑性を有する重合体であれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体が好ましい。なお、耐衝撃材として用いられる共重合組成や変性量、構造において、ガラス転移温度が0℃以下であるものであればよい。熱可塑性を有する重合体としては、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位およびその他のビニル単位などを含有する重合体が挙げられる。
本発明に用いられる金属ハロゲン化物(C)としては、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属ハロゲン化物;ヨウ化マンガン(II)、臭化マンガン(II)、塩化マンガン(II)などの第7族金属ハロゲン化物;ヨウ化鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化鉄(II)などの第8族金属ハロゲン化物;ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、塩化コバルト(II)などの第9族金属ハロゲン化物;ヨウ化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)などの第10族金属ハロゲン化物;ヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(I)などの第11族金属ハロゲン化物;ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛などの第12族金属ハロゲン化物;ヨウ化アルミニウム(III)、臭化アルミニウム(III)、塩化アルミニウム(III)などの第13族金属ハロゲン化物;ヨウ化スズ(II)、臭化スズ(II)、塩化スズ(II)などの第14族金属ハロゲン化物;三ヨウ化アンチモン、三臭化アンチモン、三塩化アンチモン、ヨウ化ビスマス(III)、臭化ビスマス(III)、および塩化ビスマス(III)などの第15族金属ハロゲン化物などが挙げられる。これらを2種以上併用することができる。
これらの中でも、入手が容易で、ポリアミド6樹脂(A)への分散性に優れ、ラジカルとの反応性がより高く、かつ、熱安定性をより向上させるという観点から、アルカリ金属ハロゲン化物および/またはヨウ化銅が好ましい。ガス発生量を低減させるという観点から、アルカリ金属ハロゲン化物中でもアルカリ金属ヨウ化物がより好ましく用いられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド6樹脂(A)70〜99重量部と耐衝撃材(B)1〜30重量部の合計100重量部に対し、金属ハロゲン化物(C)0.005〜1重量部を配合してなる。
ポリアミド6樹脂(A)の配合量が70重量部より少ないと、得られるポリアミド樹脂組成物からなる中空成形品のガスバリア性が低下し、高圧の水素で充填および放圧を繰り返すと欠陥点が発生する。ポリアミド6樹脂(A)の配合量は75重量部以上が好ましく、80重量部以上がより好ましい。一方、ポリアミド6樹脂(A)の配合量が99重量部より多いと、得られるポリアミド樹脂組成物からなる中空成形品の靭性が低下し、高圧の水素で充填および放圧を繰り返すと割れが発生する。ポリアミド6樹脂(A)の配合量は97重量部以下が好ましく、95重量部以下がより好ましい。
耐衝撃材(B)の配合量は1〜30重量部であり、3重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましい。また、25重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましい。耐衝撃材(B)の配合量が1重量部より少ないと、得られるポリアミド樹脂組成物からなる中空成形品の靭性が低下し、高圧の水素で充填および放圧を繰り返すと割れが発生する。一方、耐衝撃材(B)の配合量が30重量部より多いと、得られるポリアミド樹脂組成物からなる中空成形品のガスバリア性が低下し、高圧の水素で充填および放圧を繰り返すと欠陥点が発生する。
ポリアミド6樹脂(A)と耐衝撃材(B)の合計100重量部に対し、金属ハロゲン化物(C)の配合量は0.005〜1重量部であり、金属ハロゲン化物(C)の配合量が0.005重量部より少ないと、得られるポリアミド樹脂組成物のブロー成形時の熱安定性が低下し、中空成形品の靭性が低下する。金属ハロゲン化物(C)の配合量は、熱安定性をより向上させるという観点からは、0.02重量部以上が好ましく、0.04重量部以上がより好ましい。一方、金属ハロゲン化物(C)の配合量が1重量部より多いと、金属ハロゲン化物(C)の自己凝集が進行することにより分散径が粗大となり、得られるポリアミド樹脂組成物からなる中空成形品の機械物性が低下する。また、粗大分散となることにより表面積が低下し、金属ハロゲン化物(C)とラジカルの反応が低下するため、得られるポリアミド樹脂組成物のブロー成形時の熱安定性が低下し、中空成形品の靭性が低下する。金属ハロゲン化物(C)の配合量は、0.5重量部以下が好ましく、0.3重量部以下がより好ましい。
さらに、高い溶融張力と高い破断時引き取り速度を有したポリアミド樹脂組成物を得る方法としては、耐衝撃材(B)の分散径が小さいことが望ましい。耐衝撃材(B)の分散径を小さくする方法としては、例えば、樹脂温度としては、比較的高温の235℃〜330℃の範囲に温度制御し混練することが好ましい。なお、ここで言う樹脂温度とは、ダイス穴に接触型の樹脂温度計を直接挿入して測定を行った値である。ポリアミド樹脂組成物中に分散した耐衝撃材(B)の分散径を微細に制御でき、ポリアミド6樹脂(A)と耐衝撃材(B)の界面が増え、溶融張力が高くなり、且つ均一に引き延ばされやすくなるため、速い破断時引き取り速度まで耐えることができ、好ましい。ここで、ポリアミド樹脂組成物中に分散した耐衝撃材(B)の平均分散径は0.01μm以上0.5μm以下が好ましく、0.02μm以上0.3μm以下がより好ましく、0.05μm以上0.2μm以下がさらに好ましい。
耐衝撃材(B)の平均分散径は、例えば、ポリアミド樹脂組成物ペレットから、超薄の切片を切り出し、その切片断面について、耐衝撃材(B)の染色を行い、透過型電子顕微鏡を用いて、観察し、画像解析にて分散した粒子径を算出することができる。なお、粒子が真円でない場合は長径および短径の平均値を算出し、長径と短径の平均値として平均分散径を算出する。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、前記成分(A)、(B)および(C)以外のその他の成分を配合しても構わない。その他の成分としては、例えば、充填材、前記(A)以外の熱可塑性樹脂、各種添加剤を挙げることができる。
例えば、充填材を配合することにより、成形品の強度および寸法安定性等を向上させることができる。充填材の形状は、繊維状であっても非繊維状であってもよく、繊維状充填材と非繊維状充填材を組み合わせて用いてもよい。繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などが挙げられる。非繊維状充填材としては、例えば、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などが挙げられ、これらは中空であってもよい。また、これら繊維状および/または非繊維状充填材を、カップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械特性を得る意味において好ましい。カップリング剤としては、例えば、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、前記ポリアミド6樹脂(A)以外のポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアルキレンオキサイド樹脂等が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂を2種以上配合することも可能である。なお、前記ポリアミド6樹脂(A)以外のポリアミド樹脂を配合する場合、ポリアミド6樹脂(A)100重量部に対し、4重量部以下が好ましい。
各種添加剤としては、例えば、着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどの離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などが挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、260℃で測定したときの溶融張力が、20mN以上であり、かつ260℃で測定したときの破断時引き取り速度が50m/min以上である。ポリアミド樹脂組成物の260℃で測定したときの溶融張力が20mN以上であり、かつ260℃で測定したときの破断時引き取り速度が50m/min以上であれば、ブロー成形時に均一に引き延ばされやすく、高圧水素の充填および放圧を繰り返した際に欠陥点や割れの発生を抑制することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、好ましくは、溶融張力が20〜500mNであり、より好ましくは、25〜500mNであり、さらに好ましくは、30〜300mNである。ポリアミド樹脂組成物の260℃で測定したときの溶融張力が20mN以上であれば、ブロー成形時のドローダウンを抑制でき、中空成形品を得ることができ、高圧水素の充填および放圧を繰り返した際に欠陥点や割れの発生を抑制することができる。また、ポリアミド樹脂組成物の260℃で測定したときの溶融張力が500mN以下であれば、延伸性の低下を抑制することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、好ましくは、破断時引き取り速度が50m/min以上であり、より好ましくは、60m/min以上であり、さらに好ましくは、80m/min以上である。ポリアミド樹脂組成物の260℃で測定したときの破断時引き取り速度が50m/min以上であれば、ブロー成形時のエアー吹き込み時に破れず、中空成形品を得ることができることから、どれだけ高い値でもよい。
なお、本発明において、ポリアミド樹脂組成物の溶融張力は、以下のようにして測定するものである。東洋精機製作所製キャピログラフ1C(シリンダー内径9.55mm、オリフィスの長さ10.0mm、内径1.0mm)を用い、試験温度を260℃に設定する。シリンダー中にポリアミド樹脂組成物を充填し、圧密して20分間保持することによって溶融させてから、ピストン速度を10mm/minとして260℃の溶融樹脂をオリフィスからストランド状に押出する。このストランドを、下方の張力検出用プーリーの円形ガイドを通過させて10m/minの引き取り速度で巻き取り、検出される張力をポリアミド樹脂組成物の溶融張力とする。
ポリアミド樹脂組成物の溶融張力を上記範囲にする手段としては、そのようなポリアミド樹脂組成物が得られる限りにおいて特に制限はないが、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、3.3〜7.0の範囲のポリアミド6樹脂(A)を用いる方法や、耐衝撃材(B)として、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体変性エチレン/α−オレフィン共重合体を用いる方法が好ましく用いられる。そして、エチレン/α−オレフィン共重合体100重量部に対して、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体0.1〜2.5重量部で変性された、変性エチレン/α−オレフィン共重合を用いる方法が好ましく用いられる。具体的には、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体変性エチレン/α−オレフィン共重合体100重量部に対して、変性に由来して導入された不飽和カルボン酸および/またはその誘導体部分が0.1〜2.5重量部である、耐衝撃材(B)が好ましく用いられる。
本発明において、ポリアミド樹脂組成物の破断時引き取り速度は、以下のようにして測定するものである。東洋精機製作所製キャピログラフ1C(シリンダー内径9.55mm、オリフィスの長さ10.0mm、内径1.0mm)を用い、試験温度を260℃に設定する。シリンダー中にポリアミド樹脂組成物を充填し、圧密して20分間保持することによって溶融させてから、ピストン速度を10mm/minとして260℃の溶融樹脂をオリフィスからストランド状に押出する。このストランドを、下方の張力検出用プーリーの円形ガイドを通過させて10m/minの引き取り速度で巻き取り、検出される張力を安定させる。安定した後に、400m/minの加速度で引き取り速度を加速させながら巻き取り、ストランドが破断した時点での引き取り速度をポリアミド樹脂組成物の破断時引き取り速度とする。なお、上記の測定方法におけるポリアミド樹脂組成物の破断時引き取り速度の測定の限界値は200m/minであるが、他の装置仕様を用いれば200m/min以上となる場合がある。本発明においては、50m/min以上であれば、ブロー成形時のエアー吹き込み時に破れず、中空成形品を得ることができる。
ポリアミド樹脂組成物の破断時引き取り速度を上記範囲にする手段としては、そのようなポリアミド樹脂組成物が得られる限りにおいて特に制限はないが、耐衝撃材(B)として、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変成された変性エチレン/α−オレフィン共重合体を用いる方法が好ましく用いられる。そして、エチレン/α−オレフィン共重合体100重量部に対して、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体0.1〜2.5重量部で変性された、変性エチレン/α−オレフィン共重合を用いる方法が好ましく用いられる。具体的には、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体変性エチレン/α−オレフィン共重合体100重量部に対して、変性に由来して導入された不飽和カルボン酸および/またはその誘導体0.1〜2.5重量部である、耐衝撃材(B)を用いる方法が好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が挙げられる。生産性の観点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールによる溶融混練等が使用でき、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく使用できる。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等が挙げられる。これらの押出機を複数組み合わせてもよい。混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく、二軸押出機がより好ましい。
二軸押出機を用いた溶融混練方法としては、例えば、ポリアミド6樹脂(A)、耐衝撃材(B)、金属ハロゲン化物(C)および必要に応じて(A)(B)(C)以外の成分を予備混合して、シリンダー温度がポリアミド6樹脂(A)の融点以上に設定された二軸押出機に供給して溶融混練する手法が挙げられる。原料の混合順序に特に制限はなく、全ての原料を上記の方法により溶融混練する方法、一部の原料を上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原料を配合して溶融混練する方法、あるいは一部の原料を溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また押出機途中で真空状態に曝して発生するガスを除去する方法も好ましく使用される。
二軸押出機を用いた溶融混練時の樹脂温度としては、235℃〜330℃の範囲に制御することが好ましい。溶融混練時の樹脂温度を235℃以上に制御することで、ポリアミド樹脂組成物中に分散した耐衝撃材(B)の分散径を微細に制御でき、ポリアミド6樹脂(A)と耐衝撃材(B)の界面が増え、溶融張力が高くなり、且つ均一に引き延ばされやすくなるため、速い破断時引き取り速度まで耐えることができ、好ましい。また、溶融混練時の樹脂温度を330℃以下に制御することで、ポリアミド6樹脂(A)および耐衝撃材(B)の分解を抑制し、より溶融張力が高くなり、且つ均一に引き延ばされやすくなるため、速い破断時引き取り速度まで耐えることができ好ましい。なお、ここで言う樹脂温度とは、ダイス穴に接触型の樹脂温度計を直接挿入して測定を行った値である。
本発明において得られる中空成形品は、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生が抑制される優れた特徴を活かして、高圧水素に触れる中空成形品に用いられる。ここでいう高圧水素に触れる中空成形品とは、常圧以上の圧力の水素に触れる中空成形品である。高圧水素の充填および放圧を繰り返したときの欠陥点の発生を抑制する効果を奏することから、圧力20MPa以上の水素に触れる中空成形品用途に好ましく用いられ、30MPa以上の水素に触れる中空成形品用途により好ましく用いられる。一方、圧力200MPa以下の水素に触れる中空成形品用途に好ましく用いられ、150MPa以下の水素に触れる中空成形品用途により好ましく用いられ、100MPa以下の水素に触れる中空成形品用途にさらに好ましく用いられる。高圧水素に触れる中空成形品としては、例えば、高圧水素用タンク、高圧水素用タンクライナー、高圧水素用パイプ、高圧水素用ポンプ、高圧水素用チューブ等が挙げられる。中でも、高圧水素用タンク、高圧水素用タンクライナー等の高圧水素容器に好ましく使用することができる。
前記高圧水素用タンクライナーは、胴部を長手方向に6カ所、等間隔に測定した厚みの標準偏差σが0.3以下であることが好ましい、高圧水素用タンクライナーの胴部を長手方向に6カ所、等間隔に測定した厚みの標準偏差σが0.3より大きいと、高圧水素用タンクライナーの肉厚が不均一なため、高圧水素の充填および放圧を繰り返した際の応力集中が大きくなることから、欠陥点や割れが発生しやすい。
ここで、高圧水素タンクライナーの胴部の厚みは、それぞれの弧の中心を、ポイントマイクロメーターを用いて測定する。厚みの標準偏差σは、得られた厚みxを用いて、下記式により算出することができる。
式1)x =(1/6)Σx (k=1〜6)
式2)V =(1/6)Σ(x−x) (k=1〜6)
式3)σ =√V
x:6箇所の厚みの平均
:各箇所での厚み(mm)
V:厚みの分散
σ:厚みの標準偏差。
高圧水素タンクライナーの胴部を長手方向に6カ所、等間隔に測定した厚みの標準偏差σが0.3以下である中空成形品の厚みは特に制限はないが、0.5mm〜5mmの範囲が好ましい。
かかる高圧水素タンクライナーの胴部を長手方向に6カ所、等間隔に測定した厚みの標準偏差σを0.3以下とするには、例えば、前述のインジェクションブロー成形法で成形する方法が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。各実施例および比較例における評価は、次の方法で行った。
(1)高圧水素の充填および放圧繰り返し特性(欠陥点)
実施例1〜6および比較例5〜8により得られた中空成形品について、X線CT解析を行い、欠陥点の有無を観察した。欠陥点のない中空成形品をオートクレーブに入れた後、オートクレーブ中に水素ガスを20MPaまで5分間かけて注入し、1時間保持した後、5分間かけて常圧になるまで減圧した。これを1サイクルとして100サイクル繰り返した。100サイクル繰り返した後の試験片について、ヤマト科学(株)製TDM1000−ISを用いてX線CT解析を行い、10μm以上の欠陥点の有無を観察し、欠陥点が存在しないものを「無」、欠陥点が存在するものを「有」とした。
(2)引張伸度(靭性)
実施例1〜6および比較例5〜8により得られた中空成形品(厚み約2mm)の胴部から、高さ100mm、幅3mmで、長手方向がタンクの長さ方向になるよう切り出した試験片5本について、温度23℃、湿度50%の条件で30分間調湿後、チャック間距離50mm、10mm/分の速度で引張試験を実施し、引張伸度を評価した。5本測定した平均の値を引張伸度とした。なお、中空成形品の引張伸度が50%以上であることは、ブロー成形時にかかる熱を受けた後でも靱性が維持され、熱安定性が高いことを示す。
(3)溶融張力
各実施例および比較例により得られたペレットを、東洋精機製作所製キャピログラフ1C(シリンダー内径9.55mm、オリフィスの長さ10.0mm、内径1.0mm)を用い、試験温度を260℃に設定したシリンダー中にポリアミド樹脂組成物を充填し、圧密して20分間保持することによって溶融させてから、ピストン速度を10mm/minとして260℃の溶融樹脂をオリフィスからストランド状に押出する。このストランドを、下方の張力検出用プーリーの円形ガイドを通過させて10m/minの引き取り速度で巻き取り、検出される張力を溶融張力とした。
(4)破断時引き取り速度
各実施例および比較例により得られたペレットを、東洋精機製作所製キャピログラフ1C(シリンダー内径9.55mm、オリフィスの長さ10.0mm、内径1.0mm)を用い、試験温度を260℃に設定したシリンダー中にポリアミド樹脂組成物を充填し、圧密して20分間保持することによって溶融させてから、ピストン速度を10mm/minとして260℃の溶融樹脂をオリフィスからストランド状に押出する。このストランドを、下方の張力検出用プーリーの円形ガイドを通過させて10m/minの引き取り速度で巻き取り、検出される張力を安定させた。安定した後に、400m/minの加速度で引き取り速度を加速させながら巻き取り、ストランドが破断した時点での引き取り速度を破断時引き取り速度した。
(5)中空成形品の胴部を長手方向に6箇所、等間隔に測定した厚みの標準偏差(厚みの標準偏差)
実施例1〜6および比較例5〜8により得られた中空成形品について、胴部を長手方向に6カ所、等間隔に弧の中心を、ポイントマイクロメーターを用いて測定し、得られる厚みxから、式1により平均厚みを算出した。また、下記式3により厚みの標準偏差σを算出した。
式1)x =(1/6)Σx (k=1〜6)
式2)V =(1/6)Σ(x−x) (k=1〜6)
式3)σ =√V
x:6箇所の厚みの平均
:各箇所での厚み(mm)
V:厚みの分散
σ:厚みの標準偏差。
各実施例および比較例に用いた原料と略号を以下に示す。
(ポリアミド6樹脂(A)の原料と略号)
PA6(ηr2.7):ポリアミド6樹脂(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度2.70)
PA6(ηr3.0):ポリアミド6樹脂(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度3.00)
PA6(ηr3.4):ポリアミド6樹脂(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度3.40)
PA6(ηr4.4):ポリアミド6樹脂(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度4.40)
PA6(ηr6.3):ポリアミド6樹脂(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度6.30)
PA6/PA66共重合体:ポリアミド6/ポリアミド66共重合体(融点190℃、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度4.20)。
(耐衝撃材(B)の原料と略号)
耐衝撃材1:エチレン/1−ブテン共重合体(MFR(190℃、2160g荷重)0.5g/10分、密度0.862g/cm)。
耐衝撃材2:MFR(190℃、2160g荷重)0.5g/10分、密度0.862g/cm、であるエチレン/1−ブテン共重合体100重量部に対し、無水マレイン酸1.05重量部、過酸化物(日油(株)製、商品名パーヘキシン25B)0.04重量部を混合し、二軸押出機を用いてシリンダー温度230℃で溶融押出して耐衝撃材2を得た。得られた耐衝撃材2は、無水マレイン酸で変性されたエチレン/1−ブテン共重合体であり、エチレン/1−ブテン共重合体100重量部に対する変性量は1.0重量部である。具体的には、側鎖の一部分が無水マレイン酸に変性され、不飽和カルボン酸が導入されたエチレン/1−ブテン共重合体の重量が100重量部であるとき、導入された不飽和カルボン酸変性部の重量が1.0重量部である。
各重量部の測定については、エチレン/1−ブテン共重合体100重量部と無水マレイン酸1.05重量部を溶融混錬し、得られた不飽和カルボン酸が導入されたエチレン/1−ブテン共重合体のペレットの重量を測定する。不飽和カルボン酸変性部の重量は、不飽和カルボン酸をキシレンにより130℃で溶解し、滴定液には水酸化カリウムの0.02mol/Lエタノール溶液(アルドリッチ社製)滴定液を、指示薬にはフェノールフタレイン1%エタノール溶液を調整し、滴定で得られた不飽和カルボン酸のモル濃度を質量に換算する。そして、不飽和カルボン酸変性エチレン/1−ブテン共重合体の重量を100重量部あたりに換算し、「導入された不飽和カルボン酸変性部の重量」とした。
耐衝撃材3:MFR(190℃、2160g荷重)0.5g/10分、密度0.862g/cm、であるエチレン/1−ブテン共重合体100重量部に対し、無水マレイン酸2.1重量部、過酸化物(日油(株)製、商品名パーヘキシン25B)0.1重量部を混合し、二軸押出機を用いてシリンダー温度230℃で溶融押出して耐衝撃材3を得た。得られた耐衝撃材3は、無水マレイン酸で変性されたエチレン/1−ブテン共重合体であり、エチレン/1−ブテン共重合体100重量部に対する変性量は2.0重量部である。具体的には、側鎖の一部分が無水マレイン酸で変性され、不飽和カルボン酸が導入されたエチレン/1−ブテン共重合体の重量が100重量部であるとき、導入された不飽和カルボン酸変性部の重量が2.0重量部である。
耐衝撃材4:MFR(190℃、2160g荷重)0.5g/10分、密度0.862g/cm、であるエチレン/1−ブテン共重合体100重量部に対し、無水マレイン酸3.32重量部、過酸化物(日油(株)製、商品名パーヘキシン25B)0.25重量部を混合し、二軸押出機を用いてシリンダー温度230℃で溶融押出して耐衝撃材4を得た。得られた耐衝撃材4は、無水マレイン酸変性エチレン/1−ブテン共重合体であり、エチレン/1−ブテン共重合体100重量部に対する変性量は3.2重量部である。具体的には、側鎖の一部分が無水マレイン酸で変性され、不飽和カルボン酸が導入されたエチレン/1−ブテン共重合体の重量が100重量部であるとき、導入された不飽和カルボン酸変性部の重量が3.2重量部である。
(金属ハロゲン化物(C)の原料と略号)
金属ハロゲン化物1:ヨウ化銅(I)(和光純薬工業(株)製)
金属ハロゲン化物2:ヨウ化カリウム(和光純薬工業(株)製)。
[実施例1〜6、比較例5、6]
表1、2記載の各原料を、シリンダー温度を240℃に設定し、ニーディングゾーンを1つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数を150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α−35BW−7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である。))に供給して溶融混練した。20kg/hの速度でダイから吐出されたガットを、10℃に温調した水を満たした冷却バス中を10秒間かけて通過させることにより急冷した後、ストランドカッターでペレタイズし、ペレットを得た。得られたペレットを、真空乾燥機で、温度80℃、12時間真空乾燥し、乾燥後ペレットを得た。得られたペレットから、インジェクションブロー成形機を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の成形条件で、射出成形を行うことでパリソンを得た。得られたパリソンを温調後、ブロー成形を行うことで、ブロー成形長さ200mm、直径φ100mmの中空成形品を得た。中空成形品を用いて、前述の方法により評価した結果を表1、2に記載した。
実施例1は、ポリアミド6樹脂(A)として、PA6(ηr=3.4)を85重量部と、耐衝撃材2を15重量部と金属ハロゲン化物1を0.1重量部の組成で混錬した。溶融混練時の樹脂温度は260℃であった。得られたペレットの溶融張力は40mN、破断時引き取り速度は>200m/minと良好であった。中空成形品は、欠陥点もなく、厚みの標準偏差は0.197と問題のない範囲であった。
実施例2は、実施例1のポリアミド6樹脂(A)を、PA6(ηr=4.4)に変更した以外は実施例1と同様とした。溶融混練時の樹脂温度は265℃であった。得られたペレットの耐衝撃材2の平均分散径は0.13μmと微細に分散していた。また、得られたペレットの溶融張力は70mN、破断時引き取り速度は150m/minと良好であった。中空成形品は、欠陥点もなく、厚みの標準偏差は0.073と良好であった。
実施例3は、実施例1のポリアミド6樹脂(A)を、PA6(ηr=6.3)に変更した以外は実施例1と同様とした。溶融混練時の樹脂温度は287℃であった。得られたペレットの溶融張力は115mN、破断時引き取り速度は130m/minと良好であった。中空成形品は、欠陥点もなく、厚みの標準偏差は0.099と良好であった。
実施例4は、実施例2の耐衝撃材2を、耐衝撃材3に変更した以外は実施例2と同様とした。溶融混練時の樹脂温度は272℃であった。得られたペレットの溶融張力は85mN、破断時引き取り速度は107m/minと良好であった。中空成形品は、欠陥点もなく、厚みの標準偏差は0.065と良好であった。
実施例5は、金属ハロゲン化物を変更した以外は実施例2と同様とした。溶融混練時の樹脂温度は267℃であった。得られたペレットの溶融張力は73mN、破断時引き取り速度は165m/minと良好であった。中空成形品は、欠陥点もなく、厚みの標準偏差は0.053と良好であった。
実施例6は、PA6と耐衝撃材2の比率を変更した以外は、実施例2と同様とした。溶融混練時の樹脂温度は258℃であった。得られたペレットの溶融張力は31mN、破断時引き取り速度は200m/minを超え、良好であった。中空成形品は、欠陥点もなく、厚みの標準偏差は0.167と問題のない範囲であった。
一方、比較例5は、金属ハロゲン化物(C)がなく、中空成形品には欠陥点はないものの、焼けが発生した。比較例6は、PA6(ηr=3.0)とPA6/PA66共重合体(ηr=4.2)、耐衝撃材2を用い、それぞれの比率を変更した。得られたペレットの溶融張力は18mNと小さく、破断時引き取り速度は180m/minであった。中空成形品には欠陥点が発生し、厚みの標準偏差は0.353であった。
[比較例1〜3]
表2記載の各原料を、シリンダー温度を240℃に設定し、ニーディングゾーンを1つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数を150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α−35BW−7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である。))に供給して溶融混練した。20kg/hの速度でダイから吐出されたガットを、10℃に温調した水を満たした冷却バス中を10秒間かけて通過させることにより急冷した後、ストランドカッターでペレタイズし、ペレットを得た。得られたペレットを、真空乾燥機で、温度80℃、12時間真空乾燥し、乾燥後ペレットを得た。得られたペレットから、インジェクションブロー成形機を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の成形条件で、射出成形を行うことでパリソンを得た。得られたパリソンを温調後、ブロー成形を行ったが、ドローダウンが起こり、中空成形品を得ることが出来なかった。
なお、比較例1と2において、PA6(ηr=2.7)を用いた。得られたペレットの溶融張力は、比較例1では9mN、比較例2では14mNと小さく、破断時引き取り速度は200m/minを超えた。比較例3は、耐衝撃材1(不飽和カルボン酸変性なし)を用いた。得られたペレットの溶融張力は18mNと小さく、破断時引き取り速度も25m/minと低かった。
[比較例4]
表2記載の各原料を、シリンダー温度を240℃に設定し、ニーディングゾーンを1つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数を150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α−35BW−7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である。))に供給して溶融混練した。20kg/hの速度でダイから吐出されたガットを、10℃に温調した水を満たした冷却バス中を10秒間かけて通過させることにより急冷した後、ストランドカッターでペレタイズし、ペレットを得た。得られたペレットを、真空乾燥機で、温度80℃、12時間真空乾燥し、乾燥後ペレットを得た。得られたペレットから、インジェクションブロー成形機を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の成形条件で、射出成形を行うことでパリソンを得た。得られたパリソンを温調後、ブロー成形を行ったが、エアーを吹き込んだ際に、パリソンが破れ、中空成形品を得ることが出来なかった。
なお、比較例4は、耐衝撃材4(不飽和カルボン酸変性量が3.2重量部)を用いた。得られたペレットの溶融張力は92mNであったが、破断時引き取り速度が38m/minと低かった。
[比較例7]
表2記載の各原料を、シリンダー温度を225℃に設定し、ニーディングゾーンを1つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数を100rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α−35BW−7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である。))に供給して溶融混練した。20kg/hの速度でダイから吐出されたガットを、10℃に温調した水を満たした冷却バス中を10秒間かけて通過させることにより急冷した後、ストランドカッターでペレタイズし、ペレットを得た。得られたペレットを、真空乾燥機で、温度80℃、12時間真空乾燥し、乾燥後ペレットを得た。得られたペレットから、インジェクションブロー成形機を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の成形条件で、射出成形を行うことでパリソンを得た。得られたパリソンを温調後、ブロー成形を行うことで、ブロー成形長さ200mm、直径φ100mmの中空成形品を得た。中空成形品を用いて、前述の方法により評価した結果を表2に記載した。
比較例7は、樹脂組成は実施例2と同様であったが、溶融時の樹脂温度は232℃と低かった。得られたペレットの耐衝撃材2の平均分散径は0.62μmと粗大に分散しており、得られたペレットの溶融張力は19mNと低く、破断時引き取り速度は65m/minであった。中空成形品には、欠陥点が発生し、厚みの標準偏差は0.317とばらつきが大きかった。
[比較例8]
表2記載の各原料を、シリンダー温度を300℃に設定し、ニーディングゾーンを3つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数を300rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α−35BW−7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である。))に供給して溶融混練した。20kg/hの速度でダイから吐出されたガットを、10℃に温調した水を満たした冷却バス中を10秒間かけて通過させることにより急冷した後、ストランドカッターでペレタイズし、ペレットを得た。得られたペレットを、真空乾燥機で、温度80℃、12時間真空乾燥し、乾燥後ペレットを得た。得られたペレットから、インジェクションブロー成形機を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の成形条件で、射出成形を行うことでパリソンを得た。得られたパリソンを温調後、ブロー成形を行うことで、ブロー成形長さ200mm、直径φ100mmの中空成形品を得た。中空成形品を用いて、前述の方法により評価した結果を表2に記載した。
比較例8は、樹脂組成は実施例2と同様であったが、溶融時の樹脂温度は340℃と高かった。得られたペレットの溶融張力は19mNと低く、破断時引き取り速度は72m/minであった。中空成形品には、欠陥点が発生し、厚みの標準偏差は0.306とばらつきが大きかった。
Figure 2021172018
Figure 2021172018
以上の結果から、ポリアミド6樹脂(A)、耐衝撃材(B)と金属ハロゲン化物(C)を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、ポリアミド樹脂組成物の260℃で測定したときの溶融張力が20mNであり、かつ260℃で測定したときの破断時引き取り速度が50m/minであるポリアミド樹脂組成物を用いてインジェクションブロー成形法により中空成形品を形成することで、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点や割れの発生が抑制されており、かつ熱安定性にも優れる中空成形品を初めて得ることができることがわかった。
本発明の製造方法は、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点や割れの発生を抑制できる、高圧水素に触れる中空成形品を得られることから極めて有用である。

Claims (5)

  1. 中空成形品の製造方法であって、ポリアミド樹脂組成物を用いてインジェクションブロー成形法により中空成形品を形成する工程を含み、前記ポリアミド樹脂組成物がポリアミド6樹脂(A)70〜99重量部および耐衝撃材(B)1〜30重量部の合計100重量部に対し、金属ハロゲン化物(C)0.005〜1重量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂組成物の260℃で測定したときの溶融張力が20mN以上であり、かつ260℃で測定したときの破断時引き取り速度が50m/min以上であることを特徴とする、高圧水素に触れる中空成形品の製造方法。
  2. 前記ポリアミド6樹脂(A)は、樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃の温度における相対粘度(ηr)が、3.3〜7.0であることを特徴とする請求項1記載の高圧水素に触れる中空成形品の製造方法。
  3. 前記耐衝撃材(B)が、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレン/α−オレフィン共重合体を含む、請求項1または2に記載の高圧水素に触れる中空成形品の製造方法。
  4. 前記不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレン/α−オレフィン共重合体が、エチレン/α−オレフィン共重合体100重量部に対して、変性に由来して導入された不飽和カルボン酸および/またはその誘導体部分が、0.1〜2.5重量部であることを特徴とする請求項3に記載の高圧水素に触れる中空成形品の製造方法。
  5. 前記金属ハロゲン化物(C)がアルカリ金属ハロゲン化物および/またはヨウ化銅を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高圧水素に触れる中空成形品の製造方法。
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