JP2022091118A - 中空成形品および中空成形品の製造方法 - Google Patents

中空成形品および中空成形品の製造方法 Download PDF

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Shinichiro Ochiai
翔太 鈴木
Shota Suzuki
拓実 若林
Takumi Wakabayashi
定之 小林
Sadayuki Kobayashi
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Abstract

【課題】高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点が生じず、寸法安定性、ウエルド特性に優れる中空成形品を提供する。【解決手段】ポリアミド樹脂組成物からなる高圧水素に触れる中空成形品であって、前記中空成形品の中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの平均値が0.85~1.15の範囲であり、且つ標準偏差が0.15以下であることを特徴とする高圧水素に触れる中空成形品。【選択図】なし

Description

本発明は、高圧水素に触れる中空成形品に関するものである。更に詳しくは、樹脂の配向を制御した中空成形品であって、中空成形品内の樹脂の配向を制御することで、寸法安定性が良く、且つウエルド特性に優れ、さらに、残留ひずみが小さくなり、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生を抑制できる特性を活かし、高圧水素に触れる中空成形品として有用に使用されるものである。
近年、石油燃料の枯渇や、有害ガス排出量の削減の要請に対応するために、水素と空気中の酸素を電気化学的に反応させて発電する燃料電池を自動車に搭載し、燃料電池が発電した電気をモータに供給して駆動力とする燃料電池電気自動車が注目されてきている。燃料電池電気自動車搭載用の高圧水素用タンクとして、樹脂製のライナーの外側を炭素繊維強化樹脂で補強してなる樹脂製タンクが検討されている。しかしながら、水素は分子サイズが小さいため、比較的分子サイズの大きい天然ガスなどに比べ、樹脂中を透過し易いこと、および高圧水素は常圧の水素に比べ、樹脂中に蓄積される量が多くなることなどから、これまでの樹脂製タンクでは、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、タンクの変形や破壊が起こる課題があった。
ガスバリア性に優れ、低温でも優れた耐衝撃性を有する水素タンクライナー用材料として、例えば、ポリアミド6、共重合ポリアミド、および耐衝撃材を含むポリアミド樹脂組成物からなる水素タンクライナー用材料が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ガスバリア性に優れたガス貯蔵タンク用ライナーとして、例えば、ポリアミド、成核剤および耐衝撃性改良剤を含むポリマー組成物を含有するガス貯蔵タンク用ライナーが検討されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2009-191871号公報 特表2014-501818号公報
しかしながら、特許文献1に記載された水素タンクライナーは、配向が大きいことから、寸法安定性に劣り、さらに、水素ガスの透過や、樹脂中への水素ガスの溶解が生じやすく、残留ひずみが大きく、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、水素タンクライナーの溶着部に亀裂が生じる課題があった。
また、特許文献2に記載されたガス貯蔵タンク用ライナーは、ヘリウムガス耐透過性には優れるものの、配向が大きいことから、寸法安定性に劣り、さらに、水素ガスの透過や、水素の樹脂中への溶解が生じやすく、残留ひずみが大きく、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、水素タンクライナーに欠陥点が生じる課題があった。
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、寸法安定性、ウエルド特性に優れ、かつ、残留ひずみが小さくなり、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生が抑制された中空成形品を提供することを課題とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
ポリアミド樹脂組成物からなる高圧水素に触れる中空成形品であって、前記中空成形品の中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの平均値が0.85~1.15の範囲であり、且つ標準偏差が0.15以下であることを特徴とする高圧水素に触れる中空成形品である。
また、本発明はアクティブ急加熱冷却成形により中空成形品を得る中空成形品の製造方法を含む。
本発明の中空成形品は、樹脂の配向を制御することで、寸法安定性が良く、ウエルド特性に優れ、残留ひずみが小さくなることで、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生を抑制できる特性を活かし、高圧水素に触れる中空成形品として有用に用いることができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の高圧水素に触れる中空成形品(以下、「中空成形品」と記載する場合がある)は、中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの平均値が0.85~1.15の範囲であり、且つこれらの配向パラメーターの標準偏差が0.15以下であることを特徴とする。
本発明の中空成形品は、中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの平均値が0.85~1.15の範囲である。配向パラメーターは、中空成形品におけるポリアミド樹脂の配向を表す指標であり、1の場合は無配向であり、1を下回る場合には成形時の樹脂流れ方向に対し平行方向に配向が進み、1を上回る場合には成形時の樹脂流れ方向に対し垂直方向に配向が進んでいることを示す。
中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの平均値が0.85~1.15の範囲外の中空成形品は、配向が進み、残留ひずみが大きくなるので、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、欠陥点が発生しやすい。また、配向が進むことからウエルド特性に劣る。
また、中空成形品は、より高圧の水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生を抑制でき、且つウエルド特性に優れる点から、中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの平均値が0.90~1.10の範囲であることが好ましく、さらには0.95~1.05の範囲であることが好ましい。
また、本発明の中空成形品は、中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの標準偏差が0.15以下である。標準偏差が0.15より大きい中空成形品は、中空成形品内の配向の大きさがばらつくことになり、寸法安定性に劣り、さらに、後加工を行う必要がある場合には、矯正する必要があり、矯正時にひずみが大きくなることで、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、欠陥点が発生しやすい。
また、中空成形品は、より寸法安定性に優れる点から、中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの標準偏差が0.12以下であることが好ましく、さらには0.10以下であることが好ましい。標準偏差は0が最小値であり、標準偏差が小さいことは、局所的な配向が小さいことであり、小さければ小さいほど好ましい。
ここで、中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターは、レーザーラマン分光法を用いて測定を行う。以下測定例を挙げる。たとえば、ポリアミド樹脂組成物からなる中空成形品から試料を切り出し、切り出した試料は樹脂流れ方向と平行な面が現れるように、ミクロトームを用いて中空成形品断面の面出しを行う。面出しした試料を用いて、RENISHAW社製「in Via」により、中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所の偏光ラマンスペクトルを取得する。具体的には、半導体レーザーから785mmのレーザー光を発振し、20倍対物レンズ(N.A.=0.4)を用いてサンプルに集光する。サンプル位置でのレーザー強度は200mWとする。サンプル表面で散乱された光子は、1200本/mmの回折格子を用いて分光する。分光器前のスリット幅は65mmとする。分光された光子をCCD(ペルチェ冷却、チャンネル数)で検出する。サンプルの樹脂流れ方向を0度と定義し、0度方向と90度方向で偏光ラマンスペクトルを取得する。0度方向は、0度方向に平行な偏光を入射し、得られた散乱光のうち、0度方向に平行な成分のみを検出する。90度方向は、90度方向に平行な偏光を入射し、得られた散乱光のうち、90度方向に平行な成分のみを検出する。得られた偏光ラマンスペクトルについて、解析ソフトWiREを用いて、1440cm-1付近と1635cm-1付近のラマンバンドのピーク強度を算出する。1635cm-1付近のラマンバンドはC=O伸縮振動モードに帰属される。振動方向は分子鎖に対して垂直なモードである。ラマン散乱は分子鎖の振動方向と入射光の偏光方向が一致する場合に強く得られることから、この振動モードの散乱強度は配向度と相関して変化する。各偏光方位での強度の比をとることで、配向度評価のパラメーターとなる。配向に対する異方性が小さいCH変角振動モードに帰属されるラマンバンド(1440cm-1付近)の強度を基準にすることで、以下の式に従って配向パラメーターを算出することができる。
配向パラメーター=(I1635垂直/I1440垂直)/(I1635平行/I1440平行
1635垂直:樹脂流れに垂直な偏光配置での1635cm-1ラマンバンドの強度
1440垂直:樹脂流れに垂直な偏光配置での1440cm-1ラマンバンドの強度
1635平行:樹脂流れに平行な偏光配置での1635cm-1ラマンバンドの強度
1440平行:樹脂流れに平行な偏光配置での1440cm-1ラマンバンドの強度
中空成形品表面から厚み方向に等間隔に測定して得られた配向パラメーター12箇所に関し、平均値をとることで、中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの平均値を得ることができる。
中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの標準偏差は、得られる配向パラメーターの値(各箇所での配向パラメーター)xを用いて、下記式により算出することができる。
式1)x=(1/12)Σx(k=1~12)
式2)V=(1/12)Σ(x-x)(k=1~12)
式3)σ=√V
x:12箇所の配向パラメーターの平均
:各箇所での配向パラメーター
V:配向パラメーターの分散
σ:標準偏差。
中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの平均値が0.85~1.15の範囲であり、且つ標準偏差が0.15以下である中空成形品を得る方法としては、そのような中空成形品が得られる限りにおいて特に制限はないが、中空成形品を成形する際にアクティブ急加熱冷却成形を行う方法が挙げられる。アクティブ急加熱冷却成形とは、射出成形の1種であり、成形過程において金型温度を急昇温、冷却する成形方法である。具体的には、型温を100℃以上に急昇温後に樹脂を射出し、射出後直ちに100℃より低い温度に水冷して成形する方法であり、例えば、加圧蒸気または加圧熱水により型温を急昇温後に樹脂を射出し、射出後直ちに水冷して成形する方法や、シースヒータ加熱で型温を急昇温後に射出し、射出後直ちに水冷して成形する方法や、誘導加熱により型温を急昇温後に射出し、射出後直ちに水冷して成形する方法が挙げられる。金型の昇温速度は加熱方法により変化するが、型温を急昇温させることが可能な上記のいずれの方法も好ましい。
本発明の中空成形品の厚みは特に制限はないが、0.5mm~5mmの範囲が好ましい。厚みを0.5mm以上とすることで成形時に厚みの制御が容易であり、5mm以下とすることで水素タンクとして用いた際に充填水素量を維持することができ、好ましい。
中空成形品の厚みは0.5~4mmが好ましく、0.5~3mmがより好ましく、0.5~2mmがさらに好ましい。
本発明の中空成形品を成形する際に用いるポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、ポリアミド樹脂以外のその他の成分を0~50重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物であることが好ましい。その他の成分が50重量部を超えると樹脂組成物全体におけるポリアミド樹脂の割合が減るため、水素タンクライナーとして用いた場合に、水素透過係数が大きくなるため、高圧水素の充填および放出によって欠陥点が生じることから好ましくない。また、ポリアミド樹脂単体でその他の成分を含まないものであってもよい。
本発明においてポリアミド樹脂は、アミド結合を有する高分子からなる樹脂のことであり、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするものである。その原料の代表例としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを各々単独でまたは混合物の形で用いることができる。かかるポリアミド樹脂を2種以上配合してもよい。
本発明において、特に有用なポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド6/66)、ポリカプロアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ポリアミド6/12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ポリアミド6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ-2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/5T)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
とりわけ好ましいものとしては、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド6/12コポリマーなどの例を挙げることができる。特に好ましいものとしては、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂を挙げることができる。更にこれらのポリアミド樹脂を混合物として用いることも実用上好適である。
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がなく、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5~7.0の範囲であることが好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、成形時のポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が適度に高くなり、成形時の空気の巻き込みを抑制し、成形性をより向上させることができる。相対粘度は1.8以上がより好ましい。一方、相対粘度が7.0以下であれば、ポリアミド樹脂組成物の成形時の溶融粘度が適度に低くなり、成形性をより向上させることができる。
ポリアミド樹脂のアミノ末端基量には特に制限がないが、1.0×10-5~10.0×10-5mol/gの範囲であることが好ましい。アミノ末端基量が1.0×10-5~10.0×10-5mol/gの範囲であれば、十分な重合度が得られ、成形品の機械強度を向上させることができる。ここで、ポリアミド樹脂のアミノ末端基量は、ポリアミド樹脂を、フェノール・エタノール混合溶媒(83.5:16.5(体積比))に溶解し、0.02N塩酸水溶液を用いて滴定することにより求めることができる。
本発明において、ポリアミド樹脂組成物は金属ハロゲン化物(A)を配合することが好ましい。
金属ハロゲン化物(A)の具体例としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物;ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属ハロゲン化物;ヨウ化マンガン(II)、臭化マンガン(II)、塩化マンガン(II)などの第7族金属ハロゲン化物;ヨウ化鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化鉄(II)などの第8族金属ハロゲン化物;ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、塩化コバルト(II)などの第9族金属ハロゲン化物;ヨウ化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)などの第10族金属ハロゲン化物;ヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(I)などの第11族金属ハロゲン化物;ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛などの第12族金属ハロゲン化物;ヨウ化アルミニウム(III)、臭化アルミニウム(III)、塩化アルミニウム(III)などの第13族金属ハロゲン化物;ヨウ化スズ(II)、臭化スズ(II)、塩化スズ(II)などの第14族金属ハロゲン化物;三ヨウ化アンチモン、三臭化アンチモン、三塩化アンチモン、ヨウ化ビスマス(III)、臭化ビスマス(III)、および塩化ビスマス(III)などの第15族金属ハロゲン化物などが挙げられる。これらを2種以上併用することができる。これらの中でも、入手が容易で、ポリアミド樹脂への分散性に優れ、ラジカルとの反応性がより高く、かつ、樹脂劣化をより抑制させるという観点から、アルカリ金属ハロゲン化物および/またはヨウ化銅が好ましい。ガス発生量を低減させるという観点から、アルカリ金属ハロゲン化物の中でもアルカリ金属ヨウ化物がより好ましく用いられる。
本発明で用いられるポリアミド樹脂組成物における金属ハロゲン化物(A)の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.005~1重量部であることが好ましい。成形時の樹脂劣化をより抑制し、ポリアミド樹脂組成物からなる中空成形品の機械物性がより向上する観点から金属ハロゲン化物の配合量は0.02重量部以上が好ましく、0.04重量部以上がより好ましい。一方、金属ハロゲン化物の配合量が1重量部より多いと、金属ハロゲン化物の自己凝集が進行することにより分散径が粗大となり、得られるポリアミド樹脂組成物からなる中空成形品の機械物性が低下する。金属ハロゲン化物の配合量は、0.5重量部以下が好ましく、0.3重量部以下がより好ましい。
本発明において、ポリアミド樹脂組成物は耐衝撃材(B)を配合することが好ましい。耐衝撃材(B)を配合することにより、成形品の耐衝撃性を向上させることができる。
耐衝撃材(B)としては、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ビニル系ゴム、ウレタン系ゴム、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、アイオノマーなどが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
これらの中でも、ポリアミド樹脂との相溶性に優れ、耐衝撃性改良効果が高いことから、オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。オレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン、ペンテンなどのオレフィン単量体を重合して得られる熱可塑性樹脂である。2種以上のオレフィン単量体の共重合体であってもよいし、これらのオレフィン単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。オレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ1-ブテン、ポリ1-ペンテン、ポリメチルペンテンなどの重合体またはこれらの共重合体;エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/α,β-不飽和カルボン酸エステル共重合体、α-オレフィン/α,β-不飽和カルボン酸エステル共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)とビニルアルコールエステルとの共重合体]の少なくとも一部を加水分解して得られるポリオレフィン、(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化して得られるポリオレフィン、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とのブロック共重合体またはその水素化物などが挙げられる。これらの中でも、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/α,β-不飽和カルボン酸エステル共重合体がより好ましく、エチレン/α-オレフィン共重合体がさらに好ましい。
また、前記オレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されていてもよい。ここで、不飽和カルボン酸の誘導体とは、不飽和カルボン酸のカルボキシル基のヒドロキシ基部分を他の置換基で置換した化合物であり、不飽和カルボン酸の金属塩、酸ハロゲン化物、エステル、酸無水物、アミドおよびイミドなどである。このような変性オレフィン系樹脂を用いることにより、ポリアミド樹脂との相溶性が一層向上し、耐衝撃性をより向上させることができる。不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸およびこれらカルボン酸の金属塩;マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸2-エチルヘキシル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸エステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸、エンドビシクロ-(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物などの酸無水物;マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物が好ましく、マレイン酸または無水マレイン酸が特に好ましい。
これらの不飽和カルボン酸またはその誘導体をオレフィン系樹脂に導入する方法としては、例えば、オレフィン単量体と、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を共重合する方法、ラジカル開始剤を用いて、未変性のオレフィン系樹脂に、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をグラフト導入する方法などを挙げることができる。
エチレン/α-オレフィン共重合体としては、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。炭素数3~20のα-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらα-オレフィンの中でも、炭素数3~12のα-オレフィンが、機械強度の向上の観点から好ましい。さらに、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5-ノルボルナジエン、5-エチリデンノルボルネン、5-エチル-2,5-ノルボルナジエン、5-(1’-プロペニル)-2-ノルボルネンなどの非共役ジエンの少なくとも1種が共重合されていてもよい。不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体が、ポリアミド樹脂との相溶性を一層向上させ、耐衝撃性をより向上させることができるので、より好ましい。エチレン/α-オレフィン共重合体中のα-オレフィン含有量は、好ましくは1~30モル%、より好ましくは2~25モル%、さらに好ましくは3~20モル%である。
耐衝撃材(B)の構造は、特に限定されず、例えば、ゴムからなる少なくとも1つの層と、それとは異種の重合体からなる1つ以上の層からなる、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造体であってもよい。多層構造体を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよいが、内部に1層以上のゴム層(コア層)を有することが好ましい。多層構造体のゴム層を構成するゴムの種類は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分、エチレン成分、プロピレン成分、イソブテン成分などを重合させて得られるゴムが挙げられる。多層構造体のゴム層以外の層を構成する異種の重合体の種類は、熱可塑性を有する重合体であれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体が好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位およびその他のビニル単位などを含有する重合体が挙げられる。
ポリアミド樹脂組成物における耐衝撃材(B)の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、1~50重量部が好ましい。耐衝撃材(B)の配合量を1重量部以上とすることにより、耐衝撃性をより向上させることができる。耐衝撃材(B)の配合量は、5重量部以上がより好ましく、10重量部以上がさらに好ましい。一方、耐衝撃材(B)の配合量を50重量部以下とすることにより、剛性をより向上させることができる。耐衝撃材(B)の配合量は、45重量部以下がより好ましく、40重量部以下がさらに好ましく、35重量部以下がさらに好ましい。
本発明の中空成形品を形成するポリアミド樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、前記ポリアミド樹脂、成分(A)、成分(B)以外のその他の成分を配合しても構わない。その他の成分としては、例えば、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂、各種添加剤類、結晶核剤、充填材等が挙げられる。
本発明においてポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂類としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアルキレンオキサイド樹脂等が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂類を2種以上配合することも可能である。
本発明において各種添加剤類としては、例えば、着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステル、アミド系ワックスなどの離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などが挙げられる。
本発明において結晶核剤としては、無機系結晶核剤および有機系結晶核剤が挙げられる。
無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、マイカ、合成マイカ、クレイ、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などが挙げられ、これらは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。これらの無機系結晶核剤は、樹脂組成物中での分散性を向上させるために、有機物で修飾されていることが好ましい。
有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ-ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t-ブチルアミド)などのカルボン酸アミド、エチレン-アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン-無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩および2,2-メチルビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニルナトリウムなどが挙げられる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
本発明において充填材としては、繊維状充填材であっても非繊維状充填材であってもよく、繊維状充填材と非繊維状充填材を組み合わせて用いてもよい。繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などが挙げられる。非繊維状充填材としては、例えば、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩;アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などが挙げられる。これらは中空であってもよい。また、これら繊維状および/または非繊維状充填材を、カップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械特性を得る意味において好ましい。カップリング剤としては、例えば、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
次に、本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明のポリアミド樹脂組成物は溶融状態の製造や溶液状態での製造などが挙げられる。生産性の観点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールによる溶融混練等が使用でき、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく使用できる。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等が挙げられる。これらの押出機を複数組み合わせてもよい。混練性、反応性、および生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく、二軸押出機がより好ましい。
二軸押出機を用いた溶融混練方法としては、たとえば、ポリアミド樹脂と必要に応じて、金属ハロゲン化物(A)、耐衝撃材(B)、および(A)、(B)以外の成分を予備混合して、シリンダー温度がポリアミド樹脂の融点以上に設定された二軸押出機に供給して溶融混練する手法が挙げられる。原料の混合順序に特に制限はなく、全ての原料を上記の方法により溶融混練する方法、一部の原料を上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原料を配合して溶融混練する方法、あるいは一部の原料を溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また押出機途中で真空状態に曝して発生するガスを除去する方法も好ましく使用される。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、回転成形、圧縮成形、真空成形等から選ばれる任意の方法により成形して成形品を得ることが可能である。成形方法としては中空成形品を成形するにあたっては、射出成形が最も好ましい。
射出成形方法としては、配向パラメーターを制御しやすく、寸法安定性に優れ、残留ひずみの小さい中空成形品を得られることから、加圧蒸気または加圧熱水により型温を急昇温後に射出し、射出後直ちに水冷して成形する方法や、シースヒータ加熱で型温を急昇温後に射出し、射出後直ちに水冷して成形する方法や、誘導加熱により型温を急昇温後に射出し、射出後直ちに水冷して成形する方法等のアクティブ急加熱冷却成形が好ましい。
本発明の中空成形品は、複数の成形品を溶着することで形成してもよい。例えば、円筒形状の中空成形品を形成する場合は、中空成形品を円筒の高さに対し垂直方向に半分に縦割りにした形状の成形体2つを溶着により接合することによって中空成形品を形成する方法、中空成形品を円筒の高さに対し水平方向に半分に横割りにした形状の成形体2つを溶着により接合することによって中空成形品を形成する方法、中空成形品の両端部をふさぐ、半円状、楕円状などの形状をしている鏡板2つと、筒状の胴部を溶着により接合することによって中空成形品を形成する方法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
成形品の溶着方法としては、たとえば、熱板溶着、振動溶着、赤外線溶着、レーザー溶着および赤外線にて溶着部を温めた後に振動溶着を行う赤外線/振動溶着により選ばれた溶着方法が好ましく用いられる。
本発明の中空成形品は、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生が抑制される優れた特徴を活かして、高圧水素に触れる中空成形品に用いられる。ここでいう高圧水素に触れる中空成形品とは、常圧以上の圧力の水素に触れる中空成形品である。高圧水素の充填および放圧を繰り返したときの欠陥点の発生を抑制する効果を奏することから、圧力20MPa以上の水素に触れる中空成形品用途に好ましく用いられ、30MPa以上の水素に触れる中空成形品用途により好ましく用いられる。一方、圧力200MPa以下の水素に触れる中空成形品用途に好ましく用いられ、150MPa以下の水素に触れる中空成形品用途により好ましく用いられ、100MPa以下の水素に触れる中空成形品用途にさらに好ましく用いられる。高圧水素に触れる中空成形品としては、例えば、高圧水素用ホース、高圧水素用タンク、高圧水素用タンクライナー、高圧水素用パイプ、高圧水素用チューブ等が挙げられる。中でも、高圧水素用タンク、高圧水素用タンクライナー等の高圧水素容器に好ましく使用することができる。
特に好ましい態様は、樹脂製ライナーの外側を炭素繊維強化樹脂で補強してなる高圧水素用タンクの樹脂製ライナーとして、本発明の高圧水素に触れる中空成形品を使用する態様である。すなわち、本発明の中空成形品は、中空成形品の表層に、炭素繊維強化樹脂(CFRP)補強層が積層されてなる、高圧水素用タンクとして用いることができる。
タンクライナーの表層に、CFRP補強層を積層していることにより、高圧に耐えうる強度や弾性率を発現させることができるので好ましい。CFRP補強層は、炭素繊維とマトリクス樹脂により構成される。炭素繊維としては、曲げ特性および強度の観点から、炭素繊維単体の引張弾性率が50~700GPaのものが好ましく、比剛性の観点をも考慮すると、200~700GPaのものがより好ましく、コストパフォーマンスの観点をも考慮すると200~450GPaのものが最も好ましい。また、炭素繊維単体の引張強さは、1500~7000MPaが好ましく、比強度の観点から、3000~7000MPaが好ましい。また、炭素繊維の密度は、1.60~3.00が好ましく、軽量化の観点から1.70~2.00がより好ましく、コストパフォーマンスの面より1.70~1.90が最も好ましい。さらに、炭素繊維の繊維径は、一本当たり5~30μmが好ましく、取り扱い性の観点から5~20μmがより好ましく、さらに軽量化の観点から、5~10μmが最も好ましい。炭素繊維を単体で用いてもよいし、炭素繊維以外の強化繊維を組み合わせて用いてもよい。炭素繊維以外の強化繊維としては、ガラス繊維やアラミド繊維などが挙げられる。また、炭素繊維とマトリックス樹脂の割合を炭素繊維強化樹脂補強層材料中の炭素繊維の体積分率Vfで規定すると、剛性の観点からVfは20~80%が好ましく、生産性や要求剛性の観点からVfが40~80%であることが好ましい。
CFRP補強層を構成するマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよい。マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、その主材は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを例示することができる。これらの1種類だけを使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。エポキシ樹脂が特に好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、イソシアネート変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂などがあげられる。熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂に採用する場合、熱硬化性樹脂成分に適切な硬化剤や反応促進剤を添加することが可能である。
マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合、その主材は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、PPS樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂などが例示できる。これら熱可塑性樹脂は、単独でも、2種類以上の混合物でも、共重合体でもよい。混合物の場合には相溶化剤を併用してもよい。また、難燃剤として臭素系難燃剤、シリコン系難燃剤、赤燐などを加えてもよい。
CFRP補強層を高圧水素用タンクライナーの表層に積層する方法としては、公知のフィラメントワインディング(以下FW)法、テープワインディング(以下TW)法、シートワインディング(以下SW)法、ハンドレイアップ法、RTM(Resin Transfer Molding)法などを例示することができる。これら成形法のうち、単一の方法のみで成形してもよいし、2種類以上の成形法を組み合わせて成形してもよい。特性の発現性や生産性および成形性の観点から、FW法、TW法およびSW法から選ばれた方法が好ましい。これらFW法、SW法およびTW法は、基本的には、ストランド状の炭素繊維にマトリックス樹脂を付与してライナーに積層するという観点では、同一の成形法であり、炭素繊維をライナーに対して、フィラメント(糸)形態、テープ(糸をある程度束ねたテープ状)形態およびシート(テープをある程度束ねたシート状)形態のいずれの形態で巻き付けるかによって名称が異なる。ここでは、最も基本的なFW法に関して詳細を説明するが、TW法やSW法にも適用できる内容である。
FW法において、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、あらかじめ樹脂を塗布した状態(未硬化)の炭素繊維を直接ライナーに巻き付けることも可能であるし、ライナーに巻き付ける直前に炭素繊維に樹脂を塗布することも可能である。これらの場合、ライナーに炭素繊維および未硬化のマトリックス樹脂を巻き付けた後、樹脂を硬化させるためにバッチ炉(オーブン)や連続硬化炉などで使用樹脂に適した条件での樹脂硬化処理を行う必要がある。
FW法において、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合、あらかじめ樹脂が塗布(含浸)された炭素繊維を直接ライナーに巻き付けて高圧水素用タンク形状とすることが可能である。この場合、ライナーに巻き付ける直前に、樹脂が塗布された炭素繊維を、熱可塑性樹脂の融点以上に昇温することが必要である。また、ライナーに巻き付ける直前に、炭素繊維に溶融させた熱可塑性樹脂を塗布することも可能である。この場合、熱硬化性樹脂に適用したような樹脂硬化工程は不要である。
前記FW法、TW法、SW法などで本発明の高圧水素用タンクを得る場合、最も重要なことは、炭素繊維の繊維配向設計である。FW法、TW法およびSW法では、炭素繊維ストランド(連続繊維)や予め炭素繊維ストランドに樹脂を含浸させたプリプレグなどを、ライナーに巻き付けて成形する。設計時にはライナー胴部における連続繊維方向と積層厚みを設計ファクターとして、要求特性を満足する剛性および強度を満足するように設計することが好ましい。
また、高圧水素用タンクとしては、バルブがインサート成形またはOリングにより固定されたタンクライナーが好ましい。バルブをインサート成形またはOリングにより固定することにより、高圧水素の気密性が高まるので好ましい。ここでバルブは、高圧水素の充填口や放出口の役割を成す。バルブとして使用される金属部品の材質としては、炭素鋼、マンガン鋼、クロムモリブデン鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金等を例示できる。炭素鋼として、圧力配管用炭素鋼鋼管、高圧配管用炭素鋼鋼管、低温配管用鋼管、機械構造用炭素鋼鋼材を例示できる。マンガン鋼では、高圧ガス容器用継目無鋼管、機械構造用マンガン鋼鋼材、マンガンクロム鋼鋼材を例示できる。クロムモリブデン鋼や低合金鋼では、高圧ガス容器用継目無鋼管、機械構造用合金鋼鋼管、ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材、クロムモリブデン鋼材を例示できる。ステンレス鋼では、圧力用ステンレス鋼鍛鋼品、配管用ステンレス鋼管、ステンレス鋼棒、熱間圧延ステンレス鋼板および鋼帯、冷間圧延ステンレス鋼板および鋼帯を例示できる。アルミニウム合金では、アルミニウムおよびアルミニウム合金の板、条、棒、線、継目無管、鍛造品を例示できる。また、炭素鋼に対しては、焼きなまし、焼きならし、マンガン鋼に対しては、焼きならし、焼き入れ焼きもどし、クロムモリブデン鋼や低合金鋼に対しては、焼き入れ焼きもどし、ステンレス鋼に対しては固溶化処理、アルミニウム合金に対しては、焼き入れ焼きもどしを施した材料を適用してもよい。さらに、アルミニウム合金に対しては、溶体化処理およびT6時効処理を施したものを適用してもよい。
本発明の高圧水素用タンクの最も好ましい態様は、本発明のポリアミド樹脂組成物からなるタンクライナーの表層に、CFRP補強層が積層されてなり、かつ該タンクライナーにバルブがインサート成形またはOリングにより固定されてなる、高圧水素用タンクである。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。各実施例および比較例における評価は、次の方法で行った。
(1)中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの平均値(配向パラメーターの平均値)
各実施例および比較例により得られたペレットを、実施例および比較例に示した方法にて射出成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ2mmt、または直径100mm、長さ300mm、厚さ3mmtの円筒状中空成形品を成形した。得られた円筒状中空成形品のストレート部から試料を切り出し、切り出した試料の樹脂流れ方向と平行になる断面が露出するように、ミクロトームを用いて面出しを行った。面出しした試料からRENISHAW社製「in Via」を用いて中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所の偏光ラマンスペクトルを取得した。半導体レーザーから785mmのレーザー光を発振し、20倍対物レンズ(N.A.=0.4)を用いてサンプルに集光した。サンプル位置でのレーザー強度は200mWとする。サンプル表面で散乱された光子は、1200本/mmの回折格子を用いて分光した。分光器前のスリット幅は65mmとした。分光された光子をCCD(ペルチェ冷却、チャンネル数)で検出した。サンプルの樹脂流れ方向を0度と定義し、0度方向と90度方向で偏光ラマンスペクトルを取得した。0度方向は、0度方向に平行な偏光を入射し、得られた散乱光のうち、0度方向に平行な成分のみを検出した。90度方向は、90度方向に平行な偏光を入射し、得られた散乱光のうち、90度方向に平行な成分のみを検出した。得られた偏光ラマンスペクトルについて、解析ソフトWiREを用いて、1440cm-1付近と1635cm-1付近のラマンバンドのピーク強度を算出した。1635cm-1付近のラマンバンドはC=O伸縮振動モードに帰属される。振動方向は分子鎖に対して垂直なモードである。ラマン散乱は分子鎖の振動方向と入射光の偏光方向が一致する場合に強く得られることから、この振動モードの散乱強度は配向度と相関して変化する。各偏光方位での強度の比をとることで、配向度評価のパラメーターとなる。配向に対する異方性が小さいCH変角振動モードに帰属されるラマンバンド(1440cm-1付近)の強度を基準にすることで、以下の式に従って配向パラメーターを算出した。
配向パラメーター=(I1635垂直/I1440垂直)/(I1635平行/I1440平行
1635垂直:樹脂流れに垂直な偏光配置での1635cm-1ラマンバンドの強度
1440垂直:樹脂流れに垂直な偏光配置での1440cm-1ラマンバンドの強度
1635平行:樹脂流れに平行な偏光配置での1635cm-1ラマンバンドの強度
1440平行:樹脂流れに平行な偏光配置での1440cm-1ラマンバンドの強度
中空成形品表面から厚み方向に等間隔に測定して得られた配向パラメーター12箇所に関し、平均値をとることで、中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの平均値を得た。
(2)中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの標準偏差(配向パラメーターの標準偏差)
(1)で得られた配向パラメーターの値(各箇所での配向パラメーター)xを用いて、下記式により標準偏差σを算出した。
式1)x =(1/12)Σx(k=1~12)
式2)V =(1/12)Σ(x-x)(k=1~12)
式3)σ =√V
x:12箇所の配向パラメーターの平均
:各箇所での配向パラメーター
V:配向パラメーターの分散
σ:標準偏差。
(3)高圧水素の充填および放圧繰り返し特性(欠陥点)
各実施例および比較例により得られたペレットを実施例および比較例に示した方法にて射出成形を行い、(1)と同様に、円筒状中空成形品を成形した。得られた円筒状中空成形品のストレート部から長手方向10mm×円周方向30mm×厚さ2mmt、または長手方向10mm×円周方向30mm×厚さ3mmtのサンプルを切り出し、X-CT解析を行い、欠陥点の有無を確認した。欠陥点のないサンプルをオートクレーブに入れた後、オートクレーブ中に水素ガスを圧力30MPaまで3分間かけて注入し、2時間保持した後、1分間かけて常圧になるまで減圧した。これを1サイクルとして700サイクル繰り返した。700サイクル繰り返した後のサンプルについて、同様にX線CT解析を行い、10μm以上の欠陥点の有無を観察した。
(4)寸法安定性(真円度)
各実施例および比較例により得られたペレットを実施例および比較例に示した方法にて射出成形を行い、(1)と同様に、円筒状中空成形品を成形した。得られた円筒状中空成形品の円筒開口部の端面から10mmの部位の内径真円度を測定した。測定はミツトヨ製3次元寸法測定機を使用し、JIS B0621-1984に準拠して行った。
(5)機械特性(低温引張伸度)
各実施例および比較例により得られたペレットを実施例および比較例に示した方法にて射出成形を行い、(1)と同様に、円筒状中空成形品を成形した。得られた円筒中空成形品のストレート部から長さ100mm、幅10mm、厚さ2mmt、または長さ100mm、幅10mm、厚さ3mmtの短冊状試験片を作製した。作製した試験片について、支点間距離80mm、引張速度50mm/min、温度-40℃条件下で引張破断伸度を測定した。
(6)ウエルド特性
各実施例および比較例により得られたペレットを実施例および比較例に示した方法にて射出成形を行い、ダブルゲートのASTM1号ウエルドダンベル成形片(165mm×19mm×2mm)またはダブルゲートのASTM1号ウエルドダンベル成形片(165mm×19mm×3mm)を成形した。ウエルドダンベル成形片とは、その中央部にウエルド部が形成されている成形片のことである。得られたウエルドダンベル成形片5本について、支点間距離114mm、引張速度10mm/分、温度-40℃条件下で引張試験を実施し、そのうち母材破壊した、すなわちウエルド以外の部分で破壊した本数を計数した。母材破壊した本数が多いほど、ウエルド特性(ウエルドの引張特性)に優れていることを意味する。
各実施例および比較例に用いた原料と略号を以下に示す。
PA6:ポリアミド6樹脂(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度2.70)
PA6/PA66共重合体:ポリアミド6/ポリアミド66共重合体(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度4.20)
耐衝撃材1:無水マレイン酸変性エチレン/1―ブテン共重合体「“タフマー”(登録商標)MH7010」
耐衝撃材2:無水マレイン酸変性エチレン/1―ブテン共重合体「“タフマー”(登録商標)MH7020」
金属ハロゲン化物1:ヨウ化銅(I)(和光純薬工業(株)製)
金属ハロゲン化物2:ヨウ化カリウム(和光純薬工業(株)製)。
[実施例1および3~10]
表1に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて樹脂温度270℃に設定した1000トンの射出成形機にて、加圧蒸気により金型温度を180℃に急昇温した金型内に樹脂を射出し、射出後直ちに金型温度を水冷にて80℃まで冷却(冷却時間180秒)するアクティブ急加熱冷却成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ2mmtの円筒状中空成形品を成形した。また、得られたペレットを用いて、樹脂温度270℃に設定した75トンの射出成形機にて、加圧蒸気により金型温度を180℃に急昇温した金型内に樹脂を射出し、射出後直ぐに金型温度を水冷にて80℃まで冷却(冷却時間180秒)するアクティブ急加熱冷却成形を行い、ダブルゲートのASTM1号準拠のウエルドダンベル成形品(165mm×19mm×2mm)を成形した。
[実施例2]
表1に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて樹脂温度270℃に設定した1000トンの射出成形機にて、加圧蒸気により金型温度を180℃に急昇温した金型内に射出し、射出後直ちに金型温度を水冷にて80℃まで冷却(冷却時間180秒)するアクティブ急加熱冷却成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ3mmtの円筒状中空成形品を成形した。また、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の条件でアクティブ急加熱冷却成形を行い、ダブルゲートのASTM1号準拠のウエルドダンベル成形品(165mm×19mm×3mm)を成形した。
[比較例1および3]
表2に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて樹脂温度270℃に設定した1000トンの射出成形機にて、温水により金型温度が80℃に温調された金型内に射出し、直径100mm、長さ300mm、厚さ2mmtの円筒状中空成形品を成形した。また、得られたペレットを用いて、樹脂温度270℃に設定した75トンの射出成形機にて、温水により金型温度が80℃に温調された金型内に樹脂を射出し、ダブルゲートのASTM1号準拠のウエルドダンベル成形品(165mm×19mm×2mm)を成形した。
[比較例2]
表2に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて樹脂温度270℃に設定した1000トンの射出成形機にて、温水により金型温度が80℃に温調された金型内に射出し、直径100mm、長さ300mm、厚さ3mmtの円筒状中空成形品を成形した。また、得られたペレットを用いて、比較例1と同様の条件で成形を行い、ダブルゲートのASTM1号準拠のウエルドダンベル成形品(165mm×19mm×3mm)を成形した。
Figure 2022091118000001
Figure 2022091118000002
以上の結果から、ポリアミド樹脂組成物からなる高圧水素に触れる中空成形品であって、中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの平均値を0.85~1.15の範囲、且つ標準偏差を0.15以下にすることで、寸法安定性に優れ、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生を抑制出来る中空成形品を初めて得ることがわかった。
本発明の中空成形品は中空成形品内の樹脂の配向を制御することで、寸法安定性が良く、且つウエルド特性に優れ、さらに、残留ひずみが小さくなり、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生を抑制できる特性を活かし、高圧水素に触れる中空成形品として極めて有用である。

Claims (4)

  1. ポリアミド樹脂組成物からなる高圧水素に触れる中空成形品であって、前記中空成形品の中空成形品表面から厚み方向に等間隔に12箇所測定した配向パラメーターの平均値が0.85~1.15の範囲であり、且つ標準偏差が0.15以下であることを特徴とする高圧水素に触れる中空成形品。
  2. 前記ポリアミド樹脂組成物が、ポリアミド樹脂100重量部に対し、金属ハロゲン化物(A)を0.005~1重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物であることを特徴とする請求項1記載の高圧水素に触れる中空成形品。
  3. 前記ポリアミド樹脂組成物が、ポリアミド樹脂100重量部に対し、耐衝撃材(B)を1~50重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物であることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧水素に触れる中空成形品。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載の中空成形品の製造方法であって、アクティブ急加熱冷却成形により成形する、中空成形品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024010008A1 (ja) * 2022-07-04 2024-01-11 Ube株式会社 ポリアミド樹脂組成物、それを含むフィルム及びフィルム積層体、並びにペレット混合物

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