JP2021167092A - 高圧水素に触れる中空成形品の製造方法 - Google Patents

高圧水素に触れる中空成形品の製造方法 Download PDF

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翔太 鈴木
Shota Suzuki
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Abstract

【課題】高圧水素の充填および放圧を繰り返しても接合部での亀裂の発生が抑制されるポリアミド樹脂組成物からなる高圧水素に触れる中空成形品の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】中空成形品の製造方法であって、ダイスライドインジェクション加熱融着成形法により金型内で中空成形品を形成する工程を含み、前記中空成形品は、ポリアミド樹脂組成物からなり、中空成形品の表面から500μm内側の部分における平均球晶サイズが20μm以下であって、前記中空成形品の接合箇所を含む試験片の引張強度が、前記中空成形品の接合箇所を含まない試験片の引張強度に対して80%以上であることを特徴とする、高圧水素に触れる中空成形品の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物からなる高圧水素に触れる中空成形品の製造方法に関するものである。更に詳しくは、ダイスライドインジェクション加熱融着成形法により金型内で中空成形品を形成する工程を含み、接合部での引張強度に優れることで高圧水素の充填および放圧を繰り返しても接合部での亀裂の発生を抑制できる、中空成形品の製造方法に関するものである。
近年、石油燃料の枯渇や、有害ガス排出量の削減の要請に対応するために、水素と空気中の酸素を電気化学的に反応させて発電する燃料電池を自動車に搭載し、燃料電池が発電した電気をモータに供給して駆動力とする燃料電池電気自動車が注目されてきている。そして、自動車搭載用の高圧水素用タンクとして、樹脂製のライナーの外側を炭素繊維強化樹脂で補強してなる樹脂製タンクが検討されている。この樹脂製のライナーは、例えば2つ以上の分割体を接合することにより形成することができる。
水素タンクライナーとして、成形品を構成する2つ以上の分割体を単層射出成形によって形成し、これらを相互に接合することによって形成する水素タンクライナーが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
また、2つ以上の分割体を熱板溶着、赤外線溶着、および赤外線にて溶着部を温めた後に振動溶着を行う赤外線/振動溶着より選ばれたいずれかの溶着方法により接合する高圧水素に触れる中空成形品の製造方法が検討されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2009−191871号公報 国際公開第2018/051733号
しかしながら、特許文献1に記載された水素タンクライナーは、ポリアミド樹脂組成物の平均球晶サイズが20μmより大きく、また、溶着部での引張強度が低いことから、溶着部での水素ガスの透過や樹脂中への水素ガスの溶解が生じやすく、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、水素タンクライナーの溶着部に亀裂が生じる課題があった。
一方、特許文献2の方法による中空成形品の製造方法では、ポリアミド樹脂組成物の平均球晶サイズが20μmより小さく、2つ以上の分割体を熱板溶着、赤外線溶着、および赤外線にて溶着部を温めた後に振動溶着を行う赤外線/振動溶着より選ばれたいずれかの溶着方法により接合することで、溶着部での引張強度が高く、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても溶着部での亀裂の発生を抑制できているが、金型から分割体を取り出し、後工程にて、熱板溶着、赤外線溶着、および赤外線にて溶着部を温めた後に振動溶着を行う赤外線/振動溶着する方法では、熱収縮による寸法変化により接合面を正確に合わせることが難しく、接合面がズレやすい課題があった。また、溶着工程まで分割体が吸湿しないよう管理することが難しく、吸湿した分割体を用いて溶着を行った場合、溶着部の強度が不十分となり、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと溶着部での亀裂が発生しやい状態であった。
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、接合部の引張強度に優れ、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても接合部の亀裂の発生が抑制される中空成形品の製造方法を提供することを課題とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
中空成形品の製造方法であって、ダイスライドインジェクション加熱融着成形法により金型内で中空成形品を形成する工程を含み、前記中空成形品は、ポリアミド樹脂組成物からなり、中空成形品の表面から500μm内側の部分における平均球晶サイズが20μm以下であって、前記中空成形品の接合箇所を含む試験片の引張強度が、前記中空成形品の接合箇所を含まない試験片の引張強度に対して80%以上であることを特徴とする、高圧水素に触れる中空成形品の製造方法。
本発明のポリアミド樹脂からなる高圧水素に触れる中空成形品の製造方法によれば、接合部での引張強度に優れ、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても接合部での亀裂の発生が抑制されるポリアミド樹脂組成物からなる高圧水素に触れる中空成形品を提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、中空成形品の製造方法であって、ダイスライドインジェクション加熱融着成形法により金型内で中空成形品を形成する工程を含み、前記中空成形品は、ポリアミド樹脂組成物からなり、中空成形品の表面から500μm内側の部分における平均球晶サイズが20μm以下であって、前記中空成形品の接合箇所を含む試験片の引張強度が、前記中空成形品の接合箇所を含まない試験片の引張強度に対して80%以上であることを特徴とする、高圧水素に触れる中空成形品の製造方法である。
本発明のダイスライドインジェクション加熱融着成形法について説明する。一方の金型に、中空成形品を2つ割りした分割体を成形する雄型と雌型とが設けられ、他方の金型に、それら雄型および雌型にそれぞれ対向する雌型と雄型とが設けられた、一組の金型を用いる。それら互いに対向する雄型と雌型との間に形成される一対のキャビティ内に溶融樹脂を注入して、各分割体を成形する。次いで、2つの金型の各雌型に各分割体が保持されるように型開きを行った後、2つの金型のうち一方の金型を型開閉方向と直交する方向にスライド移動させて、各雌型に保持された各分割体を互いに対向させる。対向する分割体の接合面をヒータで加熱した後、金型を型合わせすることにより分割体を接合し、成形品を得る成形法である。
ダイスライドインジェクション加熱融着成形法は、分割体を工程途中で金型から取り出すことなく、中空成形品を形成することができる。「金型内で中空成形品を形成する」とは、中空成形品を形成する分割体の成形工程から中空成形品を得る工程までの間、賦形された分割体を金型から取り出すことなく中空成形品を形成することを意味する。中空成形品を構成する分割体の熱収縮による寸法変化の影響や、吸湿の影響を抑制することができ、中空成形品の接合部の引張強度が向上し、接合部からの水素ガスの透過や樹脂中への水素ガスの溶解を抑制し、高圧の水素の充填および放圧を繰り返しても接合部の亀裂を抑制できる。
ダイスライドインジェクション加熱融着成形法において、分割体の接合面を加熱するためのヒータは、カーボンヒータ、シーズヒータ、ハロゲンヒータ等が挙げられる。中でも、瞬時に昇温が可能であり、接合面以外の軟化を抑制することができ、中空成形品の接合部の引張強度を向上し、接合部からの水素ガスの透過や樹脂中への水素ガスの溶解を抑制することができる点から、カーボンヒータが好ましい。
本発明の中空成形品の表面から500μm内側の部分における平均球晶サイズは20μm以下である。中空成形品表面から500μm内側の部分における平均球晶サイズが20μmより大きい中空成形品は、水素ガスの透過や、水素の樹脂中への溶解を抑制することができず、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと欠陥点が発生しやすい。
また中空成形品は、より高圧の水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生を抑制できる点から、中空成形品表面から500μm内側の部分における平均球晶サイズは15μm以下とすることが好ましく、さらには10μm以下とすることが好ましい。平均球晶サイズの下限には制限は無いが、通常は0.01μm程度である。ここで、平均球晶サイズは中空成形品の表面から500μm内部の箇所から超薄切片を切り出し、その切片を偏光顕微鏡または透過型電子顕微鏡で観察し、球晶の写真を撮影した後、画像解析装置などで球晶の直径の数平均を算出して得られる値である。
かかる平均球晶サイズを20μm以下に制御する方法としては、そのような中空成形品が得られる限りにおいて特に制限はないが、分割体を成形する際に振動エネルギーを付与しながら成形を行う方法や、分割体を成形する際に金型表面を冷却した状態で樹脂を賦形し、次いで金型を加熱するサイクル冷却加熱法で成形を行う方法や、ポリアミド樹脂に有機結晶核剤を添加する方法等が挙げられる。
本発明の中空成形品は、接合箇所を含む試験片の引張強度(以下、接合箇所の引張強度と呼ぶ場合がある)が、接合箇所を含まない試験片の引張強度(以下、接合箇所以外の引張強度と呼ぶ場合がある)に対して80%以上である。接合した箇所の引張強度が、接合した箇所以外の引張強度に対して80%より低いと、接合部からの水素ガスの透過や溶解が生じやすく、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、接合部で亀裂が発生しやすい。
また中空成形品は、接合部からの水素ガスの透過や樹脂中への水素ガスの溶解をより抑制し、高圧の水素の充填および放圧を繰り返しても接合部の亀裂の発生を抑制できる点から、接合箇所を含む試験片の引張強度が、接合箇所を含まない試験片の引張強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。ここで、接合箇所の引張強度および接合箇所以外の引張強度の測定方法について説明する。接合箇所の引張強度の測定のため、中空成形品より長方形の試験片を切り出す。接合箇所が試験片の長辺方向の中心に、長辺方向に垂直となるように位置し、かつ短辺が10mmとなるように切り出した試験片を作成する。接合箇所以外の引張強度の測定のため、接合した箇所を含まず、かつ中空成形品に対する引張試験の引張方向が接合箇所を含む試験片の中空成形品に対する引張試験の引張方向と同一の方向で引張試験を実施することができるよう、短辺が10mmとなるように長方形に切り出した試験片を作成する。これらの試験片を23℃/50%RHの条件で30分間調湿後、引張速度10mm/minで引張強度の測定を行うことで確認することができる。
本発明の中空成形品の厚みは特に制限はないが、1mm〜5mmの範囲が好ましい。また、前記接合箇所の引張強度および前記接合箇所以外の引張強度は、中空成形品の厚みが1mm〜5mmの範囲であれば当該厚みの中空成形品から切り出した試験片を用いて測定した値である。
かかる接合箇所の引張強度を接合箇所以外の引張強度に対して80%以上とする方法は、ポリアミド樹脂組成物をダイスライドインジェクション加熱融着成形法により成形し、中空成形品の表面から500μm内側の部分における平均球晶サイズを20μm以下に制御することで得ることができる。
本発明における中空成形品を構成するポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、その他の成分を0〜50重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物であることが好ましい。中でも、平均球晶サイズを微細化する観点から、ポリアミド樹脂に有機結晶核剤を配合してなるポリアミド樹脂組成物が好ましい。また、接合面をヒータで加熱して接合する際、接合面の樹脂劣化を抑制し、接合部の引張強度がより向上する観点から、ポリアミド樹脂に金属ハロゲン化物を配合してなるポリアミド樹脂組成物が好ましい。また、ポリアミド樹脂単体でその他の成分を含まないものであってもよい。
本発明においてポリアミド樹脂は、アミド結合を有する高分子からなる樹脂のことであり、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするものである。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを各々単独でまたは混合物の形で用いることができる。 かかるポリアミド樹脂を2種以上配合してもよい。
本発明において、特に有用なポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ポリアミド6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/5T)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
とりわけ好ましいものとしては、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド6/66コポリマー、ポリアミド6/12コポリマーなどの例を挙げることができる。特に好ましいものとしては、ポリアミド6樹脂、ポリアミド610樹脂を挙げることができる。更にこれらのポリアミド樹脂を混合物として用いることも実用上好適である。
本発明において、ポリアミド樹脂組成物は有機結晶核剤を含むことが好ましい。
有機結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)などのカルボン酸アミド、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩および2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、アミド系ワックス、などが挙げられる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。中でも、平均球晶サイズをより微細化しやすい観点からアミド系ワックスが好ましい。
前記アミド系ワックスとは、モノカルボン酸とジアミンを反応せしめてなるアミド化合物、モノアミンと多塩基酸を反応せしめてなるアミド化合物、モノカルボン酸と多塩基酸とジアミンを反応せしめてなるアミド化合物などが挙げられる。これらは相当するアミンとカルボン酸の脱水反応等により得ることができる。
前記モノアミンとしては炭素数5以上のモノアミンが好ましく、その具体例としては、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミンなどが例示でき、これらは2種以上を併用してもよい。中でも炭素数10以上20以下の高級脂肪族モノアミンが特に好ましい。炭素数が20より大きくなると、ポリアミド樹脂との相溶性が低下し、析出する恐れがある。
前記モノカルボン酸は炭素数5以上の脂肪族モノカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸が好ましく、その具体例としては、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、モンタン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、安息香酸などが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。中でも炭素数10以上30以下の高級脂肪族モノカルボン酸が特に好ましい。炭素数が30より大きくなると、ポリアミド樹脂との相溶性が低下し、析出する恐れがある。
前記ジアミンの具体例としてはエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノプロパン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、トリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミンなどが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。なかでもエチレンジアミンが特に好適である。
前記多塩基酸とは、二塩基酸以上のカルボン酸であり、その具体例としてはマロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ピメリン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロへキサンジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
中でも高級脂肪族モノカルボン酸、多塩基酸およびジアミンを反応せしめたアミド化合物が特に好適であり、例えば、ステアリン酸、セバシン酸およびエチレンジアミンを反応せしめてなるアミド化合物が好ましく挙げられる。その際の各成分の混合割合は、高級脂肪族モノカルボン酸2モルに対し、多塩基酸0.18モル〜1.0モル、ジアミン1.0モル〜2.2モルの範囲が好適であり、高級脂肪族モノカルボン酸2モルに対し、多塩基酸0.5モル〜1.0モル、ジアミン1.5モル〜2.0モルの範囲が更に好適である。
本発明の中空成形品を形成するポリアミド樹脂組成物における有機結晶核剤の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましい。有機結晶核剤としてアミド系ワックスを用いる場合も、ポリアミド樹脂100重量部に対してアミド系ワックスを0.01〜10重量部配合してなることが好ましい。
本発明において、ポリアミド樹脂組成物は金属ハロゲン化物を含むことが好ましい。
金属ハロゲン化物の具体例としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物;ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属ハロゲン化物;ヨウ化マンガン(II)、臭化マンガン(II)、塩化マンガン(II)などの第7族金属ハロゲン化物;ヨウ化鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化鉄(II)などの第8族金属ハロゲン化物;ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、塩化コバルト(II)などの第9族金属ハロゲン化物;ヨウ化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)などの第10族金属ハロゲン化物;ヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(I)などの第11族金属ハロゲン化物;ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛などの第12族金属ハロゲン化物;ヨウ化アルミニウム(III)、臭化アルミニウム(III)、塩化アルミニウム(III)などの第13族金属ハロゲン化物;ヨウ化スズ(II)、臭化スズ(II)、塩化スズ(II)などの第14族金属ハロゲン化物;三ヨウ化アンチモン、三臭化アンチモン、三塩化アンチモン、ヨウ化ビスマス(III)、臭化ビスマス(III)、および塩化ビスマス(III)などの第15族金属ハロゲン化物などが挙げられる。これらを2種以上併用することができる。これらの中でも、入手が容易で、ポリアミド樹脂への分散性に優れ、ラジカルとの反応性がより高く、かつ、樹脂劣化をより抑制させるという観点から、アルカリ金属ハロゲン化物および/またはヨウ化銅が好ましい。ガス発生量を低減させるという観点から、アルカリ金属ハロゲン化物の中でもアルカリ金属ヨウ化物がより好ましく用いられる。
本発明で用いられるポリアミド樹脂組成物における金属ハロゲン化物の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.005〜1重量部であることが好ましい。分割体の接合面をヒータで加熱して接合する際、接合部の樹脂劣化をより抑制し、ポリアミド樹脂組成物からなる中空成形品の接合部の引張強度がより向上する観点から金属ハロゲン化物の配合量は0.02重量部以上が好ましく、0.04重量部以上がより好ましい。一方、金属ハロゲン化物の配合量が1重量部より多いと、金属ハロゲン化物の自己凝集が進行することにより分散径が粗大となり、得られるポリアミド樹脂組成物からなる中空成形品の機械物性が低下する。金属ハロゲン化物の配合量は、0.5重量部以下が好ましく、0.3重量部以下がより好ましい。
本発明で用いられるポリアミド樹脂組成物に含まれるその他の成分としては、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂、各種添加剤、耐衝撃材等が挙げられる。
ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアルキレンオキサイド樹脂等が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂を2種以上配合することも可能である。
各種添加剤としては、例えば、着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどの離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤、などが挙げられる。
耐衝撃材としては、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ビニル系ゴム、ウレタン系ゴム、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、アイオノマーなどが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
これらの中でも、耐衝撃性に優れることから、オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。オレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン、ペンテンなどのオレフィン単量体を重合して得られる熱可塑性樹脂である。2種以上のオレフィン単量体の共重合体であってもよいし、これらのオレフィン単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。オレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ1−ブテン、ポリ1−ペンテン、ポリメチルペンテンなどの重合体またはこれらの共重合体;エチレン/α−オレフィン共重合体、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、α−オレフィン/α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)とビニルアルコールエステルとの共重合体]の少なくとも一部を加水分解して得られるポリオレフィン、(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化して得られるポリオレフィン、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とのブロック共重合体またはその水素化物などが挙げられる。これらの中でも、エチレン/α−オレフィン共重合体、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体がより好ましく、エチレン/α−オレフィン共重合体がさらに好ましい。
また、前記オレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されていてもよい。ここで、不飽和カルボン酸の誘導体とは、不飽和カルボン酸のカルボキシル基のヒドロキシ基部分を他の置換基で置換した化合物であり、不飽和カルボン酸の金属塩、酸ハロゲン化物、エステル、酸無水物、アミドおよびイミドなどである。不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸およびこれらカルボン酸の金属塩;マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸エステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物などの酸無水物;マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物が好ましく、マレイン酸または無水マレイン酸が特に好ましい。
本発明において得られる中空成形品は、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても接合部での亀裂の発生が抑制される優れた特徴を活かして、接合部を有する高圧水素に触れる中空成形品として用いることができる。ここでいう接合部を有する高圧水素に触れる中空成形品とは、常圧以上の圧力の水素に触れる接合部を有する中空成形品である。本発明において得られる中空成形品は、高圧水素の充填および放圧を繰り返したときの接合部の亀裂の発生を抑制する効果を奏することから、圧力20MPa以上の水素に触れる中空成形品用途に好ましく用いられ、30MPa以上の水素に触れる中空成形品用途により好ましく用いられる。使用圧力の上限については、圧力200MPa以下の水素に触れる中空成形品用途に好ましく用いられ、150MPa以下の水素に触れる中空成形品用途により好ましく用いられ、100MPa以下の水素に触れる中空成形品用途にさらに好ましく用いられる。高圧水素に触れる中空成形品としては、例えば、高圧水素用タンク、高圧水素用タンクライナー等が挙げられる。中でも、高圧水素用タンクライナーに好ましく使用することができる。
特に好ましい態様は、樹脂製ライナーの外側を炭素繊維強化樹脂で補強してなる高圧水素用タンクの樹脂製ライナーとして、本発明の高圧水素に触れる中空成形品を使用する態様である。すなわち、本発明において得られる中空成形品であるタンクライナーの表層に、炭素繊維強化樹脂(CFRP)補強層が積層されてなる、高圧水素用タンクである。
タンクライナーの表層に、CFRP補強層を積層していることにより、高圧に耐えうる強度や弾性率を発現させることができるので好ましい。CFRP補強層は、炭素繊維とマトリクス樹脂により構成される。炭素繊維としては、曲げ特性および強度の観点から、炭素繊維単体の引張弾性率が50〜700GPaのものが好ましく、比剛性の観点をも考慮すると、200〜700GPaのものがより好ましく、コストパフォーマンスの観点をも考慮すると200〜450GPaのものが最も好ましい。また、炭素繊維単体の引張強さは、1500〜7000MPaが好ましく、比強度の観点から、3000〜7000MPaが好ましい。また、炭素繊維の密度は、1.60〜3.00g/cmが好ましく、軽量化の観点から1.70〜2.00g/cmがより好ましく、コストパフォーマンスの面より1.70〜1.90g/cmが最も好ましい。さらに、炭素繊維の繊維径は、一本当たり5〜30μmが好ましく、取り扱い性の観点から5〜20μmがより好ましく、さらに軽量化の観点から、5〜10μmが最も好ましい。炭素繊維を単体で用いてもよいし、炭素繊維以外の強化繊維を組み合わせて用いてもよい。炭素繊維以外の強化繊維としては、ガラス繊維やアラミド繊維などが挙げられる。また、炭素繊維とマトリックス樹脂の割合を炭素繊維強化樹脂補強層材料中の炭素繊維の体積分率Vfで規定すると、剛性の観点からVfは20〜80%が好ましく、生産性や要求剛性の観点からVfが40〜80%であることが好ましい。
CFRP補強層を構成するマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよい。マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、その主材は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを例示することができる。これらの1種類だけを使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。エポキシ樹脂が特に好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、イソシアネート変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂などがあげられる。熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂に採用する場合、熱硬化性樹脂成分に適切な硬化剤や反応促進剤を添加することが可能である。
マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合、その主材は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、PPS樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂などが例示できる。これら熱可塑性樹脂は、単独でも、2種類以上の混合物でも、共重合体でもよい。混合物の場合には相溶化剤を併用してもよい。また、難燃剤として臭素系難燃剤、シリコン系難燃剤、赤燐などを加えてもよい。
CFRP補強層を高圧水素用タンクライナーの表層に積層する方法としては、公知のフィラメントワインディング(以下FW)法、テープワインディング(以下TW)法、シートワインディング(以下SW)法、ハンドレイアップ法、RTM(Resin Transfer Molding)法などを例示することができる。これら成形法のうち、単一の方法のみで成形してもよいし、2種類以上の成形法を組み合わせて成形してもよい。特性の発現性や生産性および成形性の観点から、FW法、TW法およびSW法から選ばれた方法が好ましい。これらFW法、SW法およびTW法は、基本的には、ストランド状の炭素繊維にマトリックス樹脂を付与してライナーに積層するという観点では、同一の成形法であり、炭素繊維をライナーに対して、フィラメント(糸)形態、テープ(糸をある程度束ねたテープ状)形態およびシート(テープをある程度束ねたシート状)形態のいずれの形態で巻き付けるかによって名称が異なる。ここでは、最も基本的なFW法に関して詳細を説明するが、TW法やSW法にも適用できる内容である。
FW法において、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、あらかじめ樹脂を塗布した状態(未硬化)の炭素繊維を直接ライナーに巻き付けることも可能であるし、ライナーに巻き付ける直前に炭素繊維に樹脂を塗布することも可能である。これらの場合、ライナーに炭素繊維および未硬化のマトリックス樹脂を巻き付けた後、樹脂を硬化させるためにバッチ炉(オーブン)や連続硬化炉などで使用樹脂に適した条件での樹脂硬化処理を行う必要がある。
FW法において、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合、あらかじめ樹脂が塗布(含浸)された炭素繊維を直接ライナーに巻き付けて高圧水素用タンク形状とすることが可能である。この場合、ライナーに巻き付ける直前に、樹脂が塗布された炭素繊維を、熱可塑性樹脂の融点以上に昇温することが必要である。また、ライナーに巻き付ける直前に、炭素繊維に溶融させた熱可塑性樹脂を塗布することも可能である。この場合、熱硬化性樹脂に適用したような樹脂硬化工程は不要である。
前記FW法、TW法、SW法などで本発明の高圧水素用タンクを得る場合、最も重要なことは、炭素繊維の繊維配向設計である。FW法、TW法およびSW法では、炭素繊維ストランド(連続繊維)や予め炭素繊維ストランドに樹脂を含浸させたプリプレグなどを、ライナーに巻き付けて成形する。設計時にはライナー胴部における連続繊維方向と積層厚みを設計ファクターとして、要求特性を満足する剛性および強度を満足するように設計することが好ましい。
また、高圧水素用タンクとしては、バルブがインサート成形またはOリングにより固定されたタンクライナーが好ましい。バルブをインサート成形またはOリングにより固定することにより、高圧水素の気密性が高まるので好ましい。ここでバルブは、高圧水素の充填口や放出口の役割を成す。バルブとして使用される金属部品の材質としては、炭素鋼、マンガン鋼、クロムモリブデン鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金等を例示できる。炭素鋼として、圧力配管用炭素鋼鋼管、高圧配管用炭素鋼鋼管、低温配管用鋼管、機械構造用炭素鋼鋼材を例示できる。マンガン鋼では、高圧ガス容器用継目無鋼管、機械構造用マンガン鋼鋼材、マンガンクロム鋼鋼材を例示できる。クロムモリブデン鋼や低合金鋼では、高圧ガス容器用継目無鋼管、機械構造用合金鋼鋼管、ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材、クロムモリブデン鋼材を例示できる。ステンレス鋼では、圧力用ステンレス鋼鍛鋼品、配管用ステンレス鋼管、ステンレス鋼棒、熱間圧延ステンレス鋼板および鋼帯、冷間圧延ステンレス鋼板および鋼帯を例示できる。アルミニウム合金では、アルミニウムおよびアルミニウム合金の板、条、棒、線、継目無管、鍛造品を例示できる。また、炭素鋼に対しては、焼きなまし、焼きならし、マンガン鋼に対しては、焼きならし、焼き入れ焼きもどし、クロムモリブデン鋼や低合金鋼に対しては、焼き入れ焼きもどし、ステンレス鋼に対しては固溶化処理、アルミニウム合金に対しては、焼き入れ焼きもどしを施した材料を適用してもよい。さらに、アルミニウム合金に対しては、溶体化処理およびT6時効処理を施したものを適用してもよい。
本発明の製造方法により得られる中空成形品を用いた高圧水素用タンクの最も好ましい態様は、本発明の溶着部を有する樹脂からなるタンクライナーの表層に、CFRP補強層が積層されてなり、かつ該タンクライナーにバルブがインサート成形またはOリングにより固定されてなる、高圧水素用タンクである。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。各実施例および比較例における評価は、次の方法で行った。
(1)高圧水素の充填および放圧繰り返し特性(溶着部の亀裂)
各実施例および比較例により得られた中空成形品について、X線CT解析を行い、溶着部の亀裂の有無を観察した。亀裂のない中空成形品をオートクレーブに入れた後、オートクレーブ中に水素ガスを圧力30MPaまで3分間かけて注入し、2時間保持した後、1分間かけて常圧になるまで減圧した。これを1サイクルとして700サイクル繰り返した。700サイクル繰り返し後の中空成形品について、X線CT解析を行い、溶着部の1mm以上の亀裂の有無を観察した。
(2)溶着部引張強度保持率
各実施例および比較例により得られた中空成形品(厚み3mm)から、高さ100mm、幅10mmで、溶着により接合した箇所が高さ方向の中心に、高さ方向に垂直となるよう切り出した試験片と、溶着により接合した箇所を含まず、かつ溶着により接合した箇所を含む試験片と同一方向に引張試験を実施できるように切り出した試験片各5本について、温度23℃、湿度50%の条件で30分間調湿後、10mm/分の速度で引張試験を実施し、引張強度を評価した。各5本測定した平均の値を引張強度とし、得られた引張強度結果から以下の式により溶着部引張強度保持率を算出した。
溶着部引張強度保持率=(溶着により接合した箇所を含む試験片の引張強度)/(溶着により接合した箇所を含まない試験片の引張強度)×100
(3)成形品表面から500μm内側の部分における平均球晶サイズ(平均球晶サイズ)
各実施例および比較例により得られた中空成形品表面の500μm内側の部分から、ウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出し、その超薄切片について、偏光顕微鏡で球晶の写真を撮影し、その写真から画像解析装置を用い、50個以上の球晶の直径を測定し、その数平均値として平均球晶サイズを算出した。
PA6:ポリアミド6樹脂(融点223℃、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度2.70)
PA610:ポリアミド610樹脂(融点226℃、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度3.50)
PA6/PA66共重合体:ポリアミド6/ポリアミド66共重合体(融点190℃、降温結晶化温度:122℃、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度4.20)
アミド系ワックス:エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物「“ライトアマイド ”WH−255」(共栄社化学(株)製、融点255℃)
金属ハロゲン化物1:ヨウ化銅(I)(和光純薬工業(株)製)
金属ハロゲン化物2:ヨウ化カリウム(和光純薬工業(株)製)。
耐衝撃材:無水マレイン酸変性エチレン/1−ブテン共重合体「“タフマー”(登録商標)MH7020」(三井化学(株)製)。
[実施例1〜3]
表1の各原料を、シリンダー温度を240℃に設定し、ニーディングゾーンを1つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数を150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α−35BW−7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である。))に供給して溶融混練した。20kg/hの速度でダイから吐出されたガットを、10℃に温調した水を満たした冷却バス中を10秒間かけて通過させることにより急冷した後、ストランドカッターでペレタイズし、ペレットを得た。得られたペレットを、真空乾燥機で、温度80℃、12時間真空乾燥し、乾燥後ペレットを得た。得られたペレットから、ダイスライドインジェクション加熱融着成形法により中空成形品を得た。詳細条件は、型締め力1000tの射出成形機を用いて、シリンダー温度:250℃、射出速度60mm/秒、冷却時間150秒、保圧20MPa、保圧時間10秒、金型は30℃の冷媒を流して金型表面を冷却し、樹脂を賦形した10秒後に80℃の熱媒を流して金型を加熱する(金型冷却加熱:有)条件で行った。直径300mm、高さ200mm、厚み3mmの円筒状成形品をそれぞれ成形する雄型と雌型とが設けられ、他方の金型に、それら雄型および雌型にそれぞれ対向する雌型と雄型とが設けられた、一組の金型を用いて、中空成形品を得た。それら互いに対向する雄型と雌型との間に形成される一対のキャビティ内に溶融樹脂を注入して、各円筒状成形品(分割体)を成形し、次いで、2つの金型の各雌型に各円筒状成形品が保持されるように型開きを行った後、2つの金型のうち可動側の金型を型開閉方向と直交する方向にスライド移動させて、各雌型に保持された各分割体を互いに対向させ、対向した接合面をカーボンヒータで10秒間加熱した後、金型を型合わせすることにより中空成形品を得た。得られた中空成形品を用いて、前述の方法により評価した結果を表1に記載した。
[実施例4〜9、比較例1、2]
表1および表2記載の各原料を用いて、実施例1と同様の方法によりペレットを得た。得られたペレットを、真空乾燥機で、温度80℃、12時間真空乾燥し、乾燥後ペレットを得た。得られたペレットから、ダイスライドインジェクション加熱融着成形法により中空成形品を得た。詳細条件は、型締め力1000tの射出成形機を用いて、シリンダー温度:250℃、金型温度:80℃、射出速度60mm/秒、冷却時間150秒、保圧20MPa、保圧時間10秒の成形条件(金型冷却加熱:無)で行った以外は、実施例1〜3と同様の工程を経ることにより中空成形品を得た。得られた中空成形品を用いて、前述の方法により評価した結果を表1および表2に記載した。
Figure 2021167092
Figure 2021167092
以上の結果から、ポリアミド樹脂組成物を用いてダイスライドインジェクション加熱融着成形法により金型内で中空成形品を形成し、中空成形品表面から500μm内側の部分における平均球晶サイズを20μm以下に制御し、接合箇所の引張強度を接合箇所以外の引張強度の80%以上にすることで、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても接合部での亀裂の発生を抑制できる中空成形品を初めて得ることができることがわかった。
本発明の製造方法は、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても接合部での亀裂の発生を抑制できる、高圧水素に触れる中空成形品を得られることから極めて有用である。

Claims (3)

  1. 中空成形品の製造方法であって、ダイスライドインジェクション加熱融着成形法により金型内で中空成形品を形成する工程を含み、前記中空成形品は、ポリアミド樹脂組成物からなり、中空成形品の表面から500μm内側の部分における平均球晶サイズが20μm以下であって、前記中空成形品の接合箇所を含む試験片の引張強度が、前記中空成形品の接合箇所を含まない試験片の引張強度に対して80%以上であることを特徴とする、高圧水素に触れる中空成形品の製造方法。
  2. 前記ポリアミド樹脂組成物が、ポリアミド樹脂100重量部に対し、金属ハロゲン化物を0.005〜1重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の中空成形品の製造方法。
  3. 前記金属ハロゲン化物がアルカリ金属ハロゲン化物および/またはヨウ化銅を含む、請求項2に記載の中空成形品の製造方法。
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