JP2023012422A - 高圧水素に触れる射出成形品用のポリアミド樹脂組成物、ならびにそれを用いた射出成形品、高圧水素用タンクライナー、および高圧水素用タンク - Google Patents

高圧水素に触れる射出成形品用のポリアミド樹脂組成物、ならびにそれを用いた射出成形品、高圧水素用タンクライナー、および高圧水素用タンク Download PDF

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Abstract

【課題】高圧水素の充填および放圧を繰り返したときの欠陥点の発生を抑制し、また、耐ヒートサイクル性、および流動性に優れ、高圧水素の充填、放圧の繰り返しにより、-40℃以下から90℃以上の温度変化(ヒートサイクル)が繰り返されたときの、収縮、膨張の繰り返しによる割れの発生が抑制された射出成形品を得ることのできるポリアミド樹脂組成物を提供する。【解決手段】樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃の温度における相対粘度(ηr)が3.4~4.2であるポリアミド6樹脂(A)100重量部に対して、耐衝撃材(B)1~30重量部を配合してなる、高圧水素に触れる射出成形品用のポリアミド樹脂組成物を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、特定のポリアミド6樹脂に耐衝撃材を特定量配合してなる、高圧水素に触れる射出成形品用のポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる射出成形品に関するものである。
近年、石油燃料の枯渇や、有害ガス排出量の削減の要請に対応するために、水素と空気中の酸素を電気化学的に反応させて発電する燃料電池を自動車に搭載し、燃料電池が発電した電気をモータに供給して駆動力とする燃料電池電気自動車が注目されてきている。自動車搭載用の高圧水素用タンクとして、樹脂製のライナーの外側を炭素繊維強化樹脂で補強してなる樹脂製タンクが検討されている。しかしながら、水素は分子サイズが小さいため、比較的分子サイズの大きい天然ガスなどに比べ、樹脂中を透過し易いこと、および、高圧水素は常圧の水素に比べ、樹脂中に蓄積される量が多くなることなどから、これまでの樹脂製タンクでは、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、タンクの変形や破壊が起こる課題があった。
ガスバリア性に優れ、低温でも優れた耐衝撃性を有する水素タンクライナー用材料として、例えば、ポリアミド6、共重合ポリアミド、および耐衝撃材を含むポリアミド樹脂組成物からなる水素タンクライナー用材料が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2009-191871号公報
しかしながら、特許文献1に記載された水素タンクライナーは、水素ガスの透過や、水素の樹脂中への溶解が生じやすく、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、水素タンクライナーに欠陥点が生じる課題があった。また、高圧水素の充填、放圧の繰り返しにより、-40℃以下から90℃以上の温度変化(ヒートサイクル)を繰り返し受けると、樹脂部と金属部との結合部において割れが発生し、耐ヒートサイクル性の改善が望まれていた。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
(1)樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃の温度における相対粘度(ηr)が3.4~4.2であるポリアミド6樹脂(A)100重量部に対して、耐衝撃材(B)1~30重量部を配合してなる、高圧水素に触れる射出成形品用のポリアミド樹脂組成物。
(2)前記耐衝撃材(B)が、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレン/α-オレフィン共重合体である、(1)記載のポリアミド樹脂組成物。
(3)前記不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレン/α-オレフィン共重合体において、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレン/α-オレフィン共重合体100重量部に対して、変性に由来して導入された不飽和カルボン酸および/またはその誘導体部分が0.1~3重量部である、(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(4)さらにポリアミド6樹脂100重量部に対して、金属ハロゲン化物(C)を0.005~1重量部配合してなる、(1)~(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(5)前記金属ハロゲン化物(C)がアルカリ金属ハロゲン化物および/またはヨウ化銅を含む、(4)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(6)キャピログラフ測定において、測定温度240℃で剪断速度60.8sec-1における溶融粘度が1000~4000Pa・sである(1)~(5)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(7)(1)~(6)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を射出成形してなる、高圧水素に触れる射出成形品。
(8)(1)~(6)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる、高圧水素用タンクライナー。
(9)(1)~(6)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなるタンクライナーの表層に、炭素繊維強化樹脂補強層が積層されてなる、高圧水素用タンク。
(10)前記タンクライナーにバルブがインサートされてなる、(9)記載の高圧水素用タンク。
本発明の高圧水素に触れる射出成形品用のポリアミド樹脂組成物は、高圧水素の充填および放圧を繰り返したときの欠陥点の発生を抑制し、また、耐ヒートサイクル性、流動性に優れ、高圧水素の充填、放圧の繰り返しにより、-40℃以下から90℃以上の温度変化(ヒートサイクル)が繰り返されたときの、収縮、膨張の繰り返しによる割れの発生が抑制された成形品を提供することができる。
本発明の射出成形品は、高圧水素の充填および放圧を繰り返したときの欠陥点の発生を抑制し、また、耐ヒートサイクル性、流動性に優れ、高圧水素の充填、放圧の繰り返しにより、-40℃以下から90℃以上の温度変化(ヒートサイクル)が繰り返されたときの、収縮、膨張の繰り返しによる割れの発生を抑制する優れた特長を活かして、高圧水素に触れる用途に用いられる射出成形品として有用に展開することが可能となる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の高圧水素に触れる射出成形品用のポリアミド樹脂組成物(以下、「ポリアミド樹脂組成物」と記載する場合がある)は、樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃の温度における相対粘度(ηr)が3.4~4.2であるポリアミド6樹脂(A)100重量部に対して、耐衝撃材(B)1~30重量部配合してなる、高圧水素に触れる射出成形品用のポリアミド樹脂組成物である。
ポリアミド6樹脂(A)は、成形性、ガスバリア性、剛性および靭性のバランスに優れる。ポリアミド6樹脂(A)は、相対粘度が低いと耐ヒートサイクル性が低下し、高圧水素の充填、放圧の繰り返しにより、-40℃以下から90℃以上の温度変化(ヒートサイクル)が繰り返されたときの、収縮、膨張の繰り返しによる割れが発生しやすい。一方、相対粘度が高いと流動性が低下し、成形時の残留応力が大きくなることで、高圧水素の充填および放圧を繰り返した際に欠陥点が発生しやすく、また、高圧水素の充填、放圧の繰り返しにより、-40℃以下から90℃以上の温度変化(ヒートサイクル)が繰り返されたときの、収縮、膨張の繰り返しによる割れが発生しやすい。
耐衝撃材(B)は、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性が良く、ポリアミド6樹脂(A)と混練した際、耐衝撃材(B)の分散径が小さいことが望ましく、耐衝撃材(B)を特定量配合することで、残留応力を緩和し、高圧水素の充填、放圧の繰り返しにより、-40℃以下から90℃以上の温度変化(ヒートサイクル)が繰り返されたときの、収縮、膨張の繰り返しによる割れを抑制することができる。
高圧水素に触れる用途に用いられる成形品は、高圧水素の充填、放圧により、-40℃以下から90℃以上の温度変化(ヒートサイクル)を繰り返し受けるため、例えば、樹脂部と金属部とを有する複合品の場合、樹脂部と金属部との結合部において割れが発生しやすいが、かかる特定の相対粘度であるポリアミド6樹脂(A)と耐衝撃材(B)を組み合わせることにより、高圧水素の充填、放圧を繰り返しても欠陥点が発生しにくく、-40℃以下から90℃以上の温度変化(ヒートサイクル)を繰り返し受けても、樹脂部と金属部との結合部における割れを抑制することができる。
本発明に用いられるポリアミド6樹脂(A)とは、6-アミノカプロン酸および/またはε-カプロラクタムを主たる原料とするポリアミド樹脂である。本発明の目的を損なわない範囲で、他の単量体が共重合されたものでもよい。ここで、「主たる原料とする」とは、ポリアミド樹脂を構成する単量体単位の合計100モル%中、6-アミノカプロン酸由来の単位またはε-カプロラクタム由来の単位を合計50モル%以上含むことを意味する。6-アミノカプロン酸由来の単位またはε-カプロラクタム由来の単位を70モル%以上含むことがより好ましく、90モル%以上含むことがさらに好ましい。
共重合される他の単量体としては、例えば、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ω-ラウロラクタムなどのラクタム;テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン;アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられる。これらを2種以上共重合してもよい。
ポリアミド6樹脂(A)の重合度は、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、3.4~4.2の範囲である。相対粘度が3.4より低いと靭性が低下し、耐ヒートサイクル性に劣る。一方、相対粘度が4.2より高いと流動性が低下し、成形時の残留応力が大きくなることで、高圧水素の充填および放圧を繰り返した際に欠陥点が発生しやすく、また、収縮、膨張を繰り返した際に、割れが発生しやすい。ポリアミド6樹脂の相対粘度は、より耐ヒートサイクル性に優れ、より高圧の水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点が抑制できる点で、3.6~4.1の範囲が好ましい。また、本発明に使用するポリアミド6樹脂(A)全体として、相対粘度が上記の範囲内にあれば、複数種類のポリアミド6樹脂を用いても構わない。
ポリアミド6樹脂(A)のアミノ末端基量には特に制限がないが、1.0×10-5~10.0×10-5mol/gの範囲であることが好ましい。アミノ末端基量が1.0×10-5~10.0×10-5mol/gの範囲であれば、十分な重合度が得られ、押出成形品の機械強度を向上させることができる。ここで、ポリアミド6樹脂(A)のアミノ末端基量は、ポリアミド6樹脂(A)を、フェノール・エタノール混合溶媒(83.5:16.5(体積比))に溶解し、0.02N塩酸水溶液を用いて滴定することにより求めることができる。
本発明に用いられる耐衝撃材(B)としては、ガラス転移温度が0℃以下のポリマーを指す。ここでガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)にて、測定開始温度を-70℃として、20℃/minの昇温速度で昇温時に生じる変曲点から求めることができる。例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ビニル系ゴム、ウレタン系ゴム、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、アイオノマーなどが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
これらの中でも、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性に優れ、耐ヒートサイクル性改良効果が高いことから、オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。オレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン、ペンテンなどのオレフィン単量体を重合して得られる熱可塑性樹脂である。2種以上のオレフィン単量体の共重合体であってもよいし、これらのオレフィン単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。オレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ1-ブテン、ポリ1-ペンテン、ポリメチルペンテンなどの重合体またはこれらの共重合体;エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/α,β-不飽和カルボン酸エステル共重合体、α-オレフィン/α,β-不飽和カルボン酸エステル共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)とビニルアルコールエステルとの共重合体]の少なくとも一部を加水分解して得られるポリオレフィン、(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化して得られるポリオレフィン、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とのブロック共重合体またはその水素化物などが挙げられる。これらの中でも、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/α,β-不飽和カルボン酸エステル共重合体がより好ましく、エチレン/α-オレフィン共重合体がさらに好ましい。
また、前記オレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されることが望ましい。前述のとおり、耐衝撃材(B)は、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性が良く、ポリアミド6樹脂(A)と混練した際、耐衝撃材(B)の分散径が小さいことが望ましいが、分散径を小さくするには、ポリアミド6樹脂(A)との混合量と、耐衝撃材(B)のエラストマーの種類がポイントになる。たとえば、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性された耐衝撃材は、ポリアミド6樹脂との反応性が良好であり、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性が高まる。
ここで、不飽和カルボン酸の誘導体とは、不飽和カルボン酸のカルボキシル基のヒドロキシ基部分を他の置換基で置換した化合物であり、不飽和カルボン酸の金属塩、酸ハロゲン化物、エステル、酸無水物、アミドおよびイミドなどである。このような変性オレフィン系樹脂を用いることにより、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性が一層向上し、押出成形性をより向上させることができる。不飽和カルボン酸およびその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸およびこれらカルボン酸の金属塩;マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸2-エチルヘキシル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸エステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸、エンドビシクロ-(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物などの酸無水物;マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物が好ましく、マレイン酸または無水マレイン酸が特に好ましい。
これらの不飽和カルボン酸またはその誘導体をオレフィン系樹脂に導入する方法としては、例えば、オレフィン単量体と、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を共重合する方法、ラジカル開始剤を用いて、未変性オレフィン系樹脂に、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をグラフト導入する方法などを挙げることができる。
不飽和カルボン酸および/またはその誘導体成分の導入量は、例えば、オレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を0.1~3重量部である。具体的には、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体によって不飽和カルボン酸および/またはその誘導体が導入され、その不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレン/α-オレフィン共重合体の重量が100重量部であるとき、導入された不飽和カルボン酸および/またはその誘導体変性部の重量が0.1重量~3.0重量部であることが好ましい。さらに、より好ましくは、不飽和カルボン酸およびまたはその誘導体変性部の重量が0.3重量部~2.5重量部である。さらに好ましくは、不飽和カルボン酸およびまたはその誘導体変性部の重量が0.3重量部~1.5重量部である。
上記の不飽和カルボン酸および/またはその誘導体変性部の重量部範囲においては、ポリアミド6樹脂(A)と耐衝撃材(B)を混練したとき、耐衝撃材(B)の粒子分散径が小さくなる。分散径については後述する。
効果としては、0.1重量部以上とすることで、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性が向上し、耐衝撃材(B)の分散径が小さく、より残留応力を緩和し、より高圧の水素の充填および放圧を繰り返し、収縮、膨張を繰り返した際の割れを抑制することができるため好ましい。
3重量部以下とすることで、ポリアミド6樹脂(A)との異常な反応が生じてゲル化することを抑制し、溶融流動性が低下することで、大型の射出成形品を成形時にショートショットとなる問題が起こりにくく、より大型の射出成形品を得られるため好ましい。
エチレン/α-オレフィン共重合体としては、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。炭素数3~20のα-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらα-オレフィンの中でも、炭素数3~12のα-オレフィンが、機械強度の向上の観点から好ましい。さらに、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5-ノルボルナジエン、5-エチリデンノルボルネン、5-エチル-2,5-ノルボルナジエン、5-(1’-プロペニル)-2-ノルボルネンなどの非共役ジエンの少なくとも1種が共重合されていてもよい。不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体が、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性を一層向上させ、耐ヒートサイクル性をより向上させることができるので、より好ましい。また、より高圧の水素で充填および放圧を繰り返しても、欠陥点の発生を抑制することができる。エチレン/α-オレフィン共重合体中のα-オレフィン含有量は、好ましくは1~30モル%、より好ましくは2~25モル%、さらに好ましくは3~20モル%である。
耐衝撃材(B)の微粒子の構成および構造は、特に限定されず、例えば、ゴムからなる少なくとも1つの層と、それとは異種の重合体からなる1つ以上の層からなる、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造体であってもよい。多層構造体を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよいが、内部に1層以上のゴム層(コア層)を有することが好ましい。多層構造体のゴム層を構成するゴムの種類は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分、エチレン成分、プロピレン成分、イソブテン成分などを重合させて得られるゴムが挙げられる。多層構造体のゴム層以外の層を構成する異種の重合体の種類は、熱可塑性を有する重合体であれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体が好ましい。なお、耐衝撃材として用いられる共重合組成や変性量、構造において、ガラス転移温度が0℃以下であるものであればよい。熱可塑性を有する重合体としては、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位およびその他のビニル単位などを含有する重合体が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド6樹脂(A)100重量部に対して、耐衝撃材(B)を1~30重量部配合してなる。3重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましい。また、25重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましい。耐衝撃材(B)の配合量が1重量部より少ないと、得られるポリアミド樹脂組成物からなる射出成形品の耐ヒートサイクル性が低下し、高圧水素の充填および放圧繰り返し時に、収縮、膨張が繰り返されると割れが発生する。一方、耐衝撃材(B)の配合量が30重量部より多いと、得られるポリアミド樹脂組成物からなる射出成形品のガスバリア性が低下し、高圧の水素で充填および放圧を繰り返すと欠陥点が発生する。
さらに、より耐ヒートサイクル性に優れたポリアミド樹脂組成物を得る方法として、ポリアミド樹脂組成物中における耐衝撃材(B)の分散径が小さいことが望ましい。耐衝撃材(B)の分散径を小さくする方法としては、例えば、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性された耐衝撃材(B)を用い、樹脂温度としては、比較的高温の235℃~330℃の範囲に温度制御し混練することが好ましい。なお、ここで言う樹脂温度とは、ダイス穴に接触型の樹脂温度計を直接挿入して測定を行った値である。上記の方法により、ポリアミド樹脂組成物中に分散した耐衝撃材(B)の分散径を微細に制御でき、ポリアミド6樹脂(A)と耐衝撃材(B)の界面が増え、より残留応力を緩和することができ、好ましい。ここで、ポリアミド樹脂組成物中に分散した耐衝撃材(B)の平均分散径は0.01μm以上0.5μm以下が好ましく、0.02μm以上0.3μm以下がより好ましく、0.05μm以上0.2μm以下がさらに好ましい。
耐衝撃材(B)の平均分散径は、例えば、ポリアミド樹脂組成物ペレットから、超薄の切片を切り出し、その断面切片について、耐衝撃材(B)の染色を行い、透過型電子顕微鏡を用いて、観察し、画像解析にて分散した粒子の径を算出することができる。なお、粒子が真円でない場合は長径および短径の平均値を算出し、長径と短径の平均値として平均分散径を算出する。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、前記成分(A)、成分(B)以外のその他の成分を配合しても構わない。その他の成分としては、例えば、充填材、前記(A)以外の熱可塑性樹脂、各種添加剤を挙げることができる。
例えば、充填材を配合することにより、成形品の強度および寸法安定性等を向上させることができる。充填材の形状は、繊維状であっても非繊維状であってもよく、繊維状充填材と非繊維状充填材を組み合わせて用いてもよい。繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などが挙げられる。非繊維状充填材としては、例えば、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などが挙げられ、これらは中空であってもよい。また、これら繊維状および/または非繊維状充填材を、カップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械特性を得る意味において好ましい。カップリング剤としては、例えば、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
熱可塑性樹脂類としては、例えば、前記ポリアミド6樹脂(A)以外のポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアルキレンオキサイド樹脂等が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂類を2種以上配合することも可能である。なお、前記ポリアミド6樹脂(A)以外のポリアミド樹脂を配合する場合、ポリアミド6樹脂(A)100重量部に対し、4重量部以下が好ましい。
各種添加剤類としては、例えば、着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどの離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などが挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、金属ハロゲン化物(C)を配合することが好ましく、長期耐熱性を向上させることができる。金属ハロゲン化物(C)としては、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属ハロゲン化物;ヨウ化マンガン(II)、臭化マンガン(II)、塩化マンガン(II)などの第7族金属ハロゲン化物;ヨウ化鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化鉄(II)などの第8族金属ハロゲン化物;ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、塩化コバルト(II)などの第9族金属ハロゲン化物;ヨウ化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)などの第10族金属ハロゲン化物;ヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(I)などの第11族金属ハロゲン化物;ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛などの第12族金属ハロゲン化物;ヨウ化アルミニウム(III)、臭化アルミニウム(III)、塩化アルミニウム(III)などの第13族金属ハロゲン化物;ヨウ化スズ(II)、臭化スズ(II)、塩化スズ(II)などの第14族金属ハロゲン化物;三ヨウ化アンチモン、三臭化アンチモン、三塩化アンチモン、ヨウ化ビスマス(III)、臭化ビスマス(III)、および塩化ビスマス(III)などの第15族金属ハロゲン化物などが挙げられる。これらを2種以上併用することができる。
これらの中でも、入手が容易で、ポリアミド6樹脂(A)への分散性に優れ、ラジカルとの反応性がより高く、かつ、長期耐熱性をより向上させるという観点から、アルカリ金属ハロゲン化物および/またはヨウ化銅が好ましい。ガス発生量を低減させるという観点から、アルカリ金属ハロゲン化物中でもアルカリ金属ヨウ化物がより好ましく用いられる。金属ハロゲン化物(C)の配合量は、ポリアミド6樹脂(A)100重量部に対して0.005~1重量部が好ましい。金属ハロゲン化物(C)の配合量が0.005重量部より少ないと、長期耐熱性が低下する。金属ハロゲン化物(C)の配合量は、長期耐熱性をより向上させるという観点からは、0.02重量部以上が好ましく、0.04重量部以上がより好ましい。一方、金属ハロゲン化物(C)の配合量が1重量部より多いと、金属ハロゲン化物(C)の自己凝集が進行することにより分散径が粗大となり、得られるポリアミド樹脂組成物からなる射出成形品の機械物性が低下する。また、粗大分散となることにより表面積が低下し、金属ハロゲン化物(C)とラジカルの反応が低下するため、長期耐熱性が低下する。金属ハロゲン化物(C)の配合量は、0.5重量部以下が好ましく、0.3重量部以下がより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、好ましくは、キャピログラフ測定において、測定温度240℃で剪断速度60.8sec-1における溶融粘度が1000~4000Pa・sであり、より好ましくは1500~3500Pa・sである。ポリアミド樹脂組成物の測定温度240℃で剪断速度60.8sec-1における溶融粘度が1000Pa・s以上であれば、耐衝撃性に優れた射出成形品を得ることができる。また、ポリアミド樹脂組成物の測定温度240℃で剪断速度60.8sec-1における溶融粘度が4000Pa・s以下であれば、得られるポリアミド樹脂組成物からなる射出成形品の残留応力を緩和し、より高圧水素の充填および放圧を繰り返し、収縮、膨張を繰り返した際の割れを抑制することができる。
なお、本発明において、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度は、以下のようにして測定するものである。東洋精機製作所製キャピログラフ1C(シリンダー内径9.55mm、オリフィスの長さ10.0mm、内径1.0mm)を用い、試験温度を240℃に設定する。シリンダー中にポリアミド樹脂組成物を充填し、圧密して20分間保持することによって溶融させてから、剪断速度60.8sec-1の条件で測定した溶融粘度を、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度とする。
ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度を上記範囲にする手段としては、そのようなポリアミド樹脂組成物が得られる限りにおいて特に制限はないが、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、3.4~4.2の範囲のポリアミド6樹脂(A)を用いる方法や、耐衝撃材(B)として、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレン/α-オレフィン共重合体を用いる方法が好ましく用いられる。そして、エチレン/α-オレフィン共重合体100重量部に対して、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体0.1~3重量部で変性されたエチレン/α-オレフィン共重合を用いる方法が好ましく用いられる。具体的には、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレン/α-オレフィン共重合体100重量部に対して、変性に由来して導入された不飽和カルボン酸および/またはその誘導体部分が0.1~3重量部である、耐衝撃材(B)が好ましく用いられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が挙げられる。生産性の観点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールによる溶融混練等が使用でき、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく使用できる。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等が挙げられる。これらの押出機を複数組み合わせてもよい。混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく、二軸押出機がより好ましい。
二軸押出機を用いた溶融混練方法としては、例えば、ポリアミド6樹脂(A)、耐衝撃材(B)および必要に応じて(A)(B)以外の成分を予備混合して、シリンダー温度がポリアミド6樹脂(A)の融点以上に設定された二軸押出機に供給して溶融混練する手法が挙げられる。原料の混合順序に特に制限はなく、全ての原料を上記の方法により溶融混練する方法、一部の原料を上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原料を配合して溶融混練する方法、あるいは一部の原料を溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また押出機途中で真空状態に曝して発生するガスを除去する方法も好ましく使用される。
二軸押出機を用いた溶融混練時の樹脂温度としては、235℃~330℃の範囲に制御することが好ましい。溶融混練時の樹脂温度を235℃以上に制御することで、ポリアミド樹脂組成物中に分散した耐衝撃材(B)の分散径を微細に制御でき、ポリアミド6樹脂(A)と耐衝撃材(B)の界面が増え、より残留応力を緩和することができ、好ましい。また、溶融混練時の樹脂温度を330℃以下に制御することで、ポリアミド6樹脂(A)および耐衝撃材(B)の分解を抑制し、耐衝撃性に優れる点で好ましい。なお、ここで言う樹脂温度とは、ダイス穴に接触型の樹脂温度計を直接挿入して測定を行った値である。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形して射出成形品を得ることが可能である。
本発明の射出成形品は、耐ヒートサイクル性、流動性に優れ、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生が抑制される優れた特徴を活かして、高圧水素に触れる射出成形品に用いられる。ここでいう高圧水素に触れる射出成形品とは、常圧以上の圧力の水素に触れる射出成形品である。高圧水素の充填および放圧を繰り返したときの欠陥点の発生を抑制し、また、収縮、膨張を繰り返した際の割れの発生を抑制する効果を奏することから、圧力20MPa以上の水素に触れる射出成形品用途に好ましく用いられ、30MPa以上の水素に触れる射出成形品用途により好ましく用いられる。一方、圧力200MPa以下の水素に触れる射出成形品用途に好ましく用いられ、150MPa以下の水素に触れる射出成形品用途により好ましく用いられ、100MPa以下の水素に触れる射出成形品用途にさらに好ましく用いられる。高圧水素に触れる射出成形品としては、例えば、高圧水素用開閉バルブ、高圧水素用逆止弁、高圧水素用減圧弁、高圧水素用圧力調整弁、高圧水素用シール、高圧水素用ホース、高圧水素用タンク、高圧水素用タンクライナー、高圧水素用パイプ、高圧水素用パッキン、高圧水素用圧力センサ、高圧水素用ポンプ、高圧水素用チューブ、高圧水素用レギュレーター、高圧水素用フィルム、高圧水素用シート、高圧水素用繊維、高圧水素用継ぎ手等が挙げられる。中でも、高圧水素用開閉バルブ、高圧水素用逆止弁、高圧水素用減圧弁、高圧水素用圧力調整弁、高圧水素用タンク、高圧水素用タンクライナー、高圧水素用パッキン、高圧水素用圧力センサ、高圧水素用ポンプ、高圧水素用レギュレーター、高圧水素用継ぎ手等の高圧水素容器およびその周辺部品に好ましく使用することができる。これらの中でも、高圧水素用タンクに特に好ましく用いることができる。
高圧水素用タンクライナーは、前述のとおり、射出成形して得ることが可能である。
また、高圧水素用タンクライナーを形成する方法として、高圧水素用タンクライナーを構成する2つ以上の分割体を射出成形によって形成し、これらを溶着により接合することによって形成する方法を挙げることができる。例えば、高圧水素用タンクライナーを半分に縦割りにした形状の成形体2つを溶着により接合することによって高圧水素用タンクライナーを形成する方法、高圧水素用タンクライナーを半分に横割りにした形状の成形体2つを溶着により接合することによって高圧水素用タンクライナーを形成する方法、高圧水素タンクライナーの両端部をふさぐ、半円状・楕円状などの形状をしている鏡板2つと、胴部を溶着により接合することによって高圧水素用タンクライナーを形成する方法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
溶着としては、熱板溶着、超音波溶着、振動溶着、レーザー溶着、赤外線溶着、赤外線にて溶着部を温めた後に振動溶着を行う赤外線/振動溶着等が挙げられる。中でも赤外線溶着、赤外線/振動溶着が好ましい。
特に好ましい態様は、樹脂製ライナーの外側を炭素繊維強化樹脂で補強してなる高圧水素用タンクの樹脂製ライナーとして、本発明のポリアミド樹脂組成物からなるタンクライナーを使用する態様である。すなわち、本発明の高圧水素用タンクは、本発明のポリアミド樹脂組成物からなるタンクライナーの表層に、炭素繊維強化樹脂(CFRP)補強層が積層されてなる、高圧水素用タンクである。
タンクライナーの表層に、CFRP補強層を積層していることにより、高圧に耐えうる強度や弾性率を発現させることができるので好ましい。CFRP補強層は、炭素繊維とマトリクス樹脂により構成される。炭素繊維としては、曲げ特性および強度の観点から、炭素繊維単体の引張弾性率が50~700GPaのものが好ましく、比剛性の観点をも考慮すると、200~700GPaのものがより好ましく、コストパフォーマンスの観点をも考慮すると200~450GPaのものが最も好ましい。また、炭素繊維単体の引張強さは、1500~7000MPaが好ましく、比強度の観点から、3000~7000MPaが好ましい。また、炭素繊維の密度は、1.60~3.00が好ましく、軽量化の観点から1.70~2.00がより好ましく、コストパフォーマンスの面より1.70~1.90が最も好ましい。さらに、炭素繊維の繊維径は、一本当たり5~30μmが好ましく、取り扱い性の観点から5~20μmがより好ましく、さらに軽量化の観点から、5~10μmが最も好ましい。炭素繊維を単体で用いても良いし、炭素繊維以外の強化繊維を組み合わせて用いてもよい。炭素繊維以外の強化繊維としては、ガラス繊維やアラミド繊維などが挙げられる。また、炭素繊維とマトリックス樹脂の割合を炭素繊維強化樹脂補強層材料中の炭素繊維の体積分率Vfで規定すると、剛性の観点からVfは20~90%が好ましく、生産性や要求剛性の観点からVfが40~80%であることが好ましい。
CFRP補強層を構成するマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよい。マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、その主材は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを例示することができる。これらの1種類だけを使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。エポキシ樹脂が特に好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、イソシアネート変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂などがあげられる。熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂に採用する場合、熱硬化性樹脂成分に適切な硬化剤や反応促進剤を添加することが可能である。
マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合、その主材は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、PPS樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂などが例示できる。これら熱可塑性樹脂は、単独でも、2種類以上の混合物でも、共重合体でもよい。混合物の場合には相溶化剤を併用してもよい。また、難燃剤として臭素系難燃剤、シリコン系難燃剤、赤燐などを加えてもよい。
CFRP補強層を高圧水素用タンクライナーの表層に積層する方法としては、公知のフィラメントワインディング(以下FW)法、テープワインディング(以下TW)法、シートワインディング(以下SW)法、ハンドレイアップ法、RTM(Resin Transfer Molding)法などを例示することができる。これら成形法のうち、単一の方法のみで成形してもよいし、2種類以上の成形法を組み合わせて成形しても良い。特性の発現性や生産性および成形性の観点から、FW法、TW法およびSW法から選ばれた方法が好ましい。これらFW法、SW法およびTW法は、基本的には、ストランド状の炭素繊維にマトリックス樹脂を付与してライナーに積層するという観点では、同一の成形法であり、炭素繊維をライナーに対して、フィラメント(糸)形態、テープ(糸をある程度束ねたテープ状)形態およびシート(テープをある程度束ねたシート状)形態のいずれの形態で巻き付けるかによって名称が異なる。ここでは、最も基本的なFW法に関して詳細を説明するが、TW法やSW法にも適用できる内容である。
FW法において、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、あらかじめ樹脂を塗布した状態(未硬化)の炭素繊維を直接ライナーに巻き付けることも可能であるし、ライナーに巻き付ける直前に炭素繊維に樹脂を塗布することも可能である。これらの場合、ライナーに炭素繊維および未硬化のマトリックス樹脂を巻き付けた後、樹脂を硬化させるためにバッチ炉(オーブン)や連続硬化炉などで使用樹脂に適した条件での樹脂硬化処理を行う必要がある。
FW法において、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合、あらかじめ樹脂が塗布(含浸)された炭素繊維を直接ライナーに巻き付けて高圧水素用タンク形状とすることが可能である。この場合、ライナーに巻き付ける直前に、樹脂が塗布された炭素繊維を、熱可塑性樹脂の融点以上に昇温することが必要である。また、ライナーに巻き付ける直前に、炭素繊維に溶融させた熱可塑性樹脂を塗布することも可能である。この場合、熱硬化性樹脂に適用したような樹脂硬化工程は不要である。
前記FW法、TW法、SW法などで本発明の高圧水素用タンクを得る場合、最も重要なことは、炭素繊維の繊維配向設計である。FW法、TW法およびSW法では、炭素繊維ストランド(連続繊維)や予め炭素繊維ストランドに樹脂を含浸させたプリプレグなどを、ライナーに巻き付けて成形する。設計時にはライナー胴部における連続繊維方向と積層厚みを設計ファクターとして、要求特性を満足する剛性および強度を満足するように設計することが好ましい。
また、高圧水素用タンクとしては、バルブがインサート成形によりタンクライナーにインサートされていることが好ましい。インサート成形によりバルブをタンクライナーと一体化することにより、高圧水素の気密性が高まるので好ましい。ここでバルブは、高圧水素の充填口や放出口の役割を成す。バルブとして使用される金属部品の材質としては、炭素鋼、マンガン鋼、クロムモリブデン鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金等を例示できる。炭素鋼として、圧力配管用炭素鋼鋼管、高圧配管用炭素鋼鋼管、低温配管用鋼管、機械構造用炭素鋼鋼材を例示できる。マンガン鋼では、高圧ガス容器用継目無鋼管、機械構造用マンガン鋼鋼材、マンガンクロム鋼鋼材を例示できる。クロムモリブデン鋼や低合金鋼では、高圧ガス容器用継目無鋼管、機械構造用合金鋼鋼管、ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材、クロムモリブデン鋼材を例示できる。ステンレス鋼では、圧力用ステンレス鋼鍛鋼品、配管用ステンレス鋼管、ステンレス鋼棒、熱間圧延ステンレス鋼板および鋼帯、冷間圧延ステンレス鋼板および鋼帯を例示できる。アルミニウム合金では、アルミニウムおよびアルミニウム合金の板、条、棒、線、継目無管、鍛造品を例示できる。また、炭素鋼に対しては、焼きなまし、焼きならし、マンガン鋼に対しては、焼きならし、焼き入れ焼きもどし、クロムモリブデン鋼や低合金鋼に対しては、焼き入れ焼きもどし、ステンレス鋼に対しては固溶化処理、アルミニウム合金に対しては、焼き入れ焼きもどしを施した材料を適用しても良よい。さらに、アルミニウム合金に対しては、溶体化処理およびT6時効処理を施したものを適用してもよい。
本発明の高圧水素用タンクの最も好ましい態様は、本発明のポリアミド樹脂組成物からなるタンクライナーの表層に、CFRP補強層が積層されてなり、かつ該タンクライナーにバルブがインサートされてなる、高圧水素用タンクである。インサート成形によりバルブをタンクライナーと一体化することにより、高圧水素の気密性が高まるので好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。各実施例および比較例における評価は、次の方法で行った。
(1)高圧水素の充填および放圧繰り返し特性:欠陥点
各実施例および比較例により得られたペレットから、住友重機械工業(株)製射出成形機「SU75DUZ-C250」を用いて、シリンダー温度:240℃、金型温度:80℃、射出速度10mm/秒、保圧15MPa、保圧時間15秒、冷却時間15秒の成形条件で、直径29mm、高さ12.6mmの円柱状試験片を射出成形した。
得られた射出成形品について、X線CT解析を行い、欠陥点の有無を観察した。欠陥点のない押出成形品をオートクレーブに入れた後、オートクレーブ中に水素ガスを20MPaまで5分間かけて注入し、1時間保持した後、5分間かけて常圧になるまで減圧した。これを1サイクルとして100サイクル繰り返した。100サイクル繰り返し後の試験片について、ヤマト科学(株)製TDM1000-ISを用いてX線CT解析を行い、10μm以上の欠陥点の有無を観察し、欠陥点が存在しないものを「無」、欠陥点が存在するものを「有」とした。
(2)溶融粘度
各実施例および比較例により得られたペレットを、東洋精機製作所製キャピログラフ1C(シリンダー内径9.55mm、オリフィスの長さ10.0mm、内径1.0mm)を用い、試験温度を240℃に設定したシリンダー中にポリアミド樹脂組成物を充填し、圧密して20分間保持することによって溶融させてから、剪断速度60.8sec-1の条件で溶融粘度の測定を行った。
(3)低温、高温の温度変化繰り返し特性:耐ヒートサイクル性
各実施例および比較例により得られたペレットを、日精樹脂工業(株)製射出成形機「NEX1000」を用いて、シリンダー温度:240℃、金型温度:80℃、射出速度100mm/秒、冷却時間20秒の成形条件で、47mm×47mm×27mmの金属コアに厚み1.5mmでオーバーモールドした。
得られた金属/樹脂複合成形品3個を、-50℃で1時間静置した後、90℃で1時間静置し、複合成形品を目視観察して割れの有無を判断した。この操作を繰り返し、3個の複合成形品が全て割れるサイクル数が1000回以上のものをA、999回以下、500回以上のものをB、499回以下のものをCとした。
各実施例および比較例に用いた原料と略号を以下に示す。
PA6(ηr2.7):ポリアミド6樹脂(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度2.7)
PA6(ηr3.0):ポリアミド6樹脂(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度3.0)
PA6(ηr3.5):ポリアミド6樹脂(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度3.5)
PA6(ηr3.7):ポリアミド6樹脂(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度3.7)
PA6(ηr4.1):ポリアミド6樹脂(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度4.1)
PA6(ηr4.5):ポリアミド6樹脂(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度4.5)
PA6/PA66共重合体:ポリアミド6/ポリアミド66共重合体(融点190℃、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度4.2)
耐衝撃材1:アイオノマー「“ハイミラン”(登録商標)1706」(デュポン(株)製)
耐衝撃材2:MFR(190℃、2160g荷重)0.5g/10分、密度0.862g/cmであるエチレン/1-ブテン共重合体100重量部に対し、無水マレイン酸1.05重量部、過酸化物(日油(株)製、商品名パーヘキシン25B)0.04重量部を混合し、二軸押出機を用いてシリンダー温度230℃で溶融押出して耐衝撃材2を得た。得られた耐衝撃材2は、無水マレイン酸で変性されたエチレン/1-ブテン共重合体であり、エチレン/1-ブテン共重合体100重量部に対する変性量は1.0重量部である。具体的には、側鎖の一部分が無水マレイン酸に変性され、不飽和カルボン酸が導入されたエチレン/1-ブテン共重合体の重量が100重量部であるとき、導入された不飽和カルボン酸変性部の重量が1.0重量部である。
各重量部の測定については、エチレン/1-ブテン共重合体100重量部と無水マレイン酸1.05重量部を溶融混練し、得られた不飽和カルボン酸が導入されたエチレン/1-ブテン共重合体のペレットの重量を測定する。不飽和カルボン酸変性部の重量は、不飽和カルボン酸をキシレンにより130℃で溶解し、滴定液には水酸化カリウムの0.02mol/Lエタノール溶液(アルドリッチ社製)滴定液を、指示薬にはフェノールフタレイン1%エタノール溶液を調整し、滴定で得られた不飽和カルボン酸のモル濃度を質量に換算する。そして、不飽和カルボン酸変性エチレン/1-ブテン共重合体の重量を100重量部あたりに換算し、「導入された不飽和カルボン酸変性部の重量」とした。
耐衝撃材3:MFR(190℃、2160g荷重)0.5g/10分、密度0.862g/cm、であるエチレン/1-ブテン共重合体100重量部に対し、無水マレイン酸2.1重量部、過酸化物(日油(株)製、商品名パーヘキシン25B)0.1重量部を混合し、二軸押出機を用いてシリンダー温度230℃で溶融押出して耐衝撃材3を得た。得られた耐衝撃材3は、無水マレイン酸で変性されたエチレン/1-ブテン共重合体であり、エチレン/1-ブテン共重合体100重量部に対する変性量は2.0重量部である。具体的には、側鎖の一部分が無水マレイン酸で変性され、不飽和カルボン酸が導入されたエチレン/1-ブテン共重合体の重量が100重量部であるとき、導入された不飽和カルボン酸変性部の重量が2.0重量部である。
耐衝撃材4:MFR(190℃、2160g荷重)0.5g/10分、密度0.862g/cm、であるエチレン/1-ブテン共重合体100重量部に対し、無水マレイン酸3.68重量部、過酸化物(日油(株)製、商品名パーヘキシン25B)0.3重量部を混合し、二軸押出機を用いてシリンダー温度230℃で溶融押出して耐衝撃材4を得た。得られた耐衝撃材4は、無水マレイン酸で変性されたエチレン/1-ブテン共重合体であり、エチレン/1-ブテン共重合体100重量部に対する変性量は3.5重量部である。具体的には、側鎖の一部分が無水マレイン酸で変性され、不飽和カルボン酸が導入されたエチレン/1-ブテン共重合体の重量が100重量部であるとき、導入された不飽和カルボン酸変性部の重量が3.5重量部である。
耐衝撃材5:MFR(190℃、2160g荷重)0.5g/10分、密度0.862g/cmであるエチレン/1-ブテン共重合体100重量部に対し、無水マレイン酸0.52重量部、過酸化物(日油(株)製、商品名パーヘキシン25B)0.03重量部を混合し、二軸押出機を用いてシリンダー温度230℃で溶融押出して耐衝撃材5を得た。得られた耐衝撃材5は、無水マレイン酸で変性されたエチレン/1-ブテン共重合体であり、エチレン/1-ブテン共重合体100重量部に対する変性量は0.5重量部である。具体的には、側鎖の一部分が無水マレイン酸に変性され、不飽和カルボン酸が導入されたエチレン/1-ブテン共重合体の重量が100重量部であるとき、導入された不飽和カルボン酸変性部の重量が0.5重量部である。
金属ハロゲン化物1:ヨウ化銅(I)(和光純薬工業(株)製)
金属ハロゲン化物2:ヨウ化カリウム(和光純薬工業(株)製)。
[実施例1~11、比較例1~3]
表1および表2記載の各原料を、シリンダー温度を240℃に設定し、ニーディングゾーンを1つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数を150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である。))に供給して溶融混練した。20kg/hの速度でダイから吐出されたガットを、10℃に温調した水を満たした冷却バス中を10秒間かけて通過させることにより急冷した後、ストランドカッターでペレタイズし、ペレットを得た。得られたペレットを、真空乾燥機で、温度80℃、12時間真空乾燥し、乾燥後ペレットを用いて、前述の方法により評価した結果を表1および表2に記載した。
Figure 2023012422000001
Figure 2023012422000002
以上の結果から、樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃の温度における相対粘度(ηr)が3.4~4.2であるポリアミド6樹脂(A)と耐衝撃材(B)を配合して得られたポリアミド樹脂組成物は、高圧水素の充填および放圧を繰り返したときの欠陥点の発生が抑制されており、かつ、耐ヒートサイクル性、流動性に優れることがわかった。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生が抑制され、さらに、耐ヒートサイクル性、流動性に優れ、高圧水素の充填、放圧の繰り返しにより、-40℃以下から90℃以上の温度変化(ヒートサイクル)が繰り返されたときの、収縮、膨張の繰り返しによる割れの発生を抑制した射出成形品を得ることができる。本発明のポリアミド樹脂組成物を射出成形してなる射出成形品は、これらの特性を活かして高圧水素に触れる射出成形品に広く用いることができる。

Claims (10)

  1. 樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃の温度における相対粘度(ηr)が3.4~4.2であるポリアミド6樹脂(A)100重量部に対して、耐衝撃材(B)1~30重量部を配合してなる、高圧水素に触れる射出成形品用のポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記耐衝撃材(B)が、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレン/α-オレフィン共重合体である、請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. 前記不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレン/α-オレフィン共重合体において、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレン/α-オレフィン共重合体100重量部に対して、変性に由来して導入された不飽和カルボン酸および/またはその誘導体部分が0.1~3重量部である、請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. さらにポリアミド6樹脂100重量部に対して、金属ハロゲン化物(C)を0.005~1重量部配合してなる、請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記金属ハロゲン化物(C)がアルカリ金属ハロゲン化物および/またはヨウ化銅を含む、請求項4に記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. キャピログラフ測定において、測定温度240℃で剪断速度60.8sec-1における溶融粘度が1000~4000Pa・sである請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. 請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を射出成形してなる、高圧水素に触れる射出成形品。
  8. 請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる、高圧水素用タンクライナー。
  9. 請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなるタンクライナーの表層に、炭素繊維強化樹脂補強層が積層されてなる、高圧水素用タンク。
  10. 前記タンクライナーにバルブがインサートされてなる、請求項9記載の高圧水素用タンク。
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