JP7409876B2 - 水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物及び水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナー - Google Patents

水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物及び水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナー Download PDF

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Description

本発明は、水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物及び水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーに関する。
従来、水素自動車で使用される水素タンクは、樽のような外形をした高圧水素貯蔵容器であり、水素ガスに直接接触する金属製又は樹脂製の長尺内層(長尺ライナー)とその外周面に積層された繊維強化樹脂層とから成り立っている。
水素タンク中の水素は、高圧で-40℃以下の極低温となっている。そのため、水素ガスに直接接触する長尺ライナーには、高圧に耐えうる強度と、極低温下でも強度が維持できることが求められている。
また、燃料電池車の拡大の為にハイサイクル化が求められており、ブロー成形を用いた継ぎ目のない(継ぎ目レス)ライナーが求められている。
さらには、水素タンクの使用時においてライナーの応力集中に起因する破損を防ぐという理由から、長尺ライナーの表面平滑性が求められている。
このようなライナー用材料として、ガスバリア性に優れ、かつ-40℃以下の極低温でも優れた機械的特性を有するポリアミド樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ポリアミド樹脂、繊維状粘土鉱物、及びカップリング剤を特定の比率で含み、ダイスウェル指数及びドローダウン指数が特定の値以下のポリアミド樹脂組成物が、ブロー成形性や表面平滑性に優れることが記載されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2009-191871号公報 特開2013-71994号公報
特許文献1には、金型で射出成型し、レーザー溶着に適したポリアミド樹脂組成物が開示されているに過ぎず、継ぎ目レスライナーへの適用については何ら記載されていなかった。
特許文献2では、ポリアミド樹脂組成物がブロー成形されているものの、成形品の低温での機械的特性に関する記述が一切なかった。
そこで、本発明は、ポリアミド樹脂組成物のブロー成形性が良好であり、成形品として極低温下での機械的特性に優れるとともに、表面平滑性に優れる水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーの提供に資することを目的とする。
本発明は、例えば以下の[1]~[6]が挙げられる。
[1]水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、ポリアミド樹脂(A)50~80質量%、オレフィン系アイオノマー(B)5~10質量%、及び耐衝撃材(C)15~20質量%を含むポリアミド樹脂組成物であり、
当該組成物が温度250℃、剪断速度12秒-1における溶融粘度が17000Pa・s以上であり、同温度における0.1秒時の緩和応力が30kPa以上であるポリアミド樹脂組成物。
[2]前記ポリアミド樹脂(A)が脂肪族ホモポリアミド(A-1)、脂肪族共重合ポリアミド(A-2)及び芳香族共重合ポリアミド(A-3)からなるポリアミド樹脂である、[1]の水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物。
[3][1]または[2]の水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物のブロー成形品である水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナー。
[4]表面の長手方向の最大高さ粗さ(測定長さ:20mm)が100μm以下である、[3]の水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナー。
[5]ISO527-2/1BA/25に準ずる引張破壊呼びひずみが18%以上である、[3]または[4]の水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナー。
[6][1]または[2]の水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物を、アキュムレータ式ブロー成形機を用いて、シリンダ温度220~235℃において、成形時間25分以下、アキューム時間2~20分で成形することを特徴とする、水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーの製造方法。
本発明により、ポリアミド樹脂組成物のブロー成形性が良好であり、及び成形品として極低温下での優れた機械的特性を有し、更には表面平滑性に優れる、水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーの提供に資することができる。
なお、本明細書において、ブロー成形性とは、ブロー成形時におけるパリソン射出時のドローダウン量で表され、ブロー成形性は、ドローダウン量が少ないほど良好である。機械的特性とは、引張試験における引張破壊呼びひずみで表され、機械特性は引張破壊呼びひずみの値が高いほど良好である。
実施例におけるドローダウン量の測定方法を示す図である。 実施例における表面の長手方向の最大粗さ測定サンプルのライナーからの切り出し位置を示す図である。 アキュームレータ式ブロー成形機を用いた水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーの製造方法のフローチャート図である。 アキュームレータ式ブロー成形機における溶融・混練した樹脂組成物を押出機からアキュームに押し出す一例を示す図である。 アキュームレータ式ブロー成形機を用いてパリソンを形成する一例を示す図である。 アキュームレータ式ブロー成形機を用いて得られた成形品を取り出す際の一例を示す図である。
[水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物]
本発明の水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物(以下、「ポリアミド樹脂組成物」ともいう)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、ポリアミド樹脂(A)50~80質量%、オレフィン系アイオノマー(B)5~10質量%、及び耐衝撃材(C)15~20質量%を含むポリアミド樹脂組成物であり、
当該組成物が温度250℃、剪断速度12秒-1における溶融粘度が17000Pa・s以上であり、同温度における0.1秒時の緩和応力が30kPa以上であるポリアミド樹脂組成物である。
(ポリアミド樹脂(A))
本発明のポリアミド樹脂(A)は、脂肪族ホモポリアミド(A-1)、脂肪族共重合ポリアミド(A-2)及び芳香族共重合ポリアミド(A-3)からなるポリアミド樹脂が好適に使用される。
(脂肪族ホモポリアミド(A-1))
脂肪族ホモポリアミド(A-1)は、脂肪族モノマー由来の1種類の構成単位からなるポリアミド樹脂である。脂肪族ホモポリアミド(A-1)は、1種類のラクタム及び当該ラクタムの加水分解物であるアミノカルボン酸の少なくとも一方からなるものであってもよく、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸との組合せからなるものであってもよい。ここで、ジアミンとジカルボン酸の組み合わせは、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸の組合せで1種類のモノマーとみなす。
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム及びドデカンラクタムからなる群から選択される1種が好ましい。
また、アミノカルボン酸としては6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸からなる群から選択される1種が好ましい。
ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3-/1,4-シクロヘキシルジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3-/1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンジアミン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、脂肪族ジアミンが好ましく、ヘキサメチレンジアミンがより好ましい。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3-/1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン-4,4’-ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸及びドデカンジオン酸からなる群から選択される1種がより好ましく、セバシン酸又はドデカンジオン酸が更に好ましい。
脂肪族ホモポリアミド(A-1)として具体的には、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリエナントラクタム(ポリアミド7)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリアミド122等が挙げられる。脂肪族ホモポリアミド(A-1)は1種単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
中でも脂肪族ホモポリアミド(A-1)は、重合生産性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610及びポリアミド612からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610及びポリアミド612ら選択される少なくとも1種がより好ましく、ポリアミド6が更に好ましい。
脂肪族ホモポリアミド(A-1)の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
脂肪族ホモポリアミド(A-1)の相対粘度は、JIS K-6920に準拠し、ポリアミド樹脂1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される。脂肪族ホモポリアミド樹脂の相対粘度は、2.7以上であることが好ましく、2.7以上5.0以下であることがより好ましい。更に本発明の効果を向上させる観点から、2.7以上4.5未満がさらに好ましい。2.7以上であると、ポリアミド組成物の溶融粘度が低すぎることがないため、押出成形時の成形品形状保持及び特にブロー成形時のパリソン形状保持が良好であり、5.0以下であるとポリアミド組成物の溶融粘度が高すぎることがなく、ブロー成形時、溶融樹脂の均一な肉厚が得られる。
脂肪族ホモポリアミド(A-1)の末端アミノ基濃度は、フェノールとメタノールの混合溶媒に溶解させ、中和滴定で求められる。脂肪族ホモポリアミド(A-1)の末端アミノ基濃度は、30μmol/g以上であることが好ましく、30μmol/g以上50μmol/g以下がより好ましい。
ポリアミド樹脂(A)中の脂肪族ホモポリアミド(A-1)の含有率は、成形加工性の観点から、例えば35質量%以上75質量%以下であり、40質量%以上70質量%以下が好ましく、45質量%以上70質量%以下がより好ましい。
(脂肪族共重合ポリアミド(A-2))
脂肪族共重合ポリアミド(A-2)は、脂肪族モノマー由来の2種以上の構成単位からなるポリアミド樹脂である。脂肪族共重合ポリアミド(A-2)は、ジアミンとジカルボン酸の組合せ、およびラクタム又はアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上の共重合体である。ここで、ジアミンとジカルボン酸の組み合わせは、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸の組合せで1種類のモノマーとみなす。
ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3-/1,4-シクロヘキシルジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3-/1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンアミン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。ジアミンはこれらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、重合生産性の観点から、脂肪族ジアミンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、直鎖状脂肪族ジアミンからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、ヘキサメチレンジアミンが更に好ましい。
これらのジアミンは1種類で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3-/1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン-4,4’-ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。ジカルボン酸はこれらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
これらのジカルボン酸は1種類で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム及びドデカンラクタムからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、アミノカルボン酸としては6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
脂肪族共重合ポリアミド(A-2)として具体的には、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/66/612)等の脂肪族共重合ポリアミドが挙げられる。
これらの中でも、生産性の観点から、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12及びポリアミド6/66/12からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリアミド6/66及びポリアミド6/66/12がより好ましく、ポリアミド6/66が特に好ましい。
これらの脂肪族共重合ポリアミド(A-2)は、1種単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
脂肪族共重合ポリアミド(A-2)の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
脂肪族共重合ポリアミド(A-2)の相対粘度は特に制限されないが、本発明の効果を向上させる観点から、JIS K-6920に準拠し、ポリアミド樹脂1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定した相対粘度が1.8以上5.0以下であることが好ましい。
脂肪族共重合ポリアミド(A-2)の末端アミノ基濃度は、フェノールとメタノールの混合溶媒に溶解させ、中和滴定で求められる。脂肪族共重合ポリアミド(A-1-2)の末端アミノ基濃度は、30μmol/g以上であることが好ましく、30μmol/g以上50μmol/g以下がより好ましい。
ポリアミド樹脂(A)中の脂肪族共重合ポリアミド(A-2)の含有率は、成形加工性の観点から、例えば20質量%以上40質量%以下であり、20質量%以上35質量%以下が好ましく、25質量%以上35質量%以下がより好ましい。
(芳香族共重合ポリアミド(A-3))
芳香族共重合ポリアミド樹脂とは、芳香族系モノマー成分由来の構成単位を少なくとも1種類含み、2種以上の構成単位からなるポリアミド樹脂であり、例えば、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸を原料とした構成単位を少なくとも1種類含む、2種以上の構成単位からなるポリアミド樹脂である。ここで、ジアミンとジカルボン酸の組み合わせは、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸の組合せで1種類のモノマーとみなす。
本発明においては、芳香族共重合ポリアミド(A-3)は、溶融粘度の上昇効果と結晶化速度を抑制する効果とを有する。
原料の脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸としては、前記の脂肪族ポリアミド樹脂と同様のものが挙げられ、脂環式ジアミン及び脂環式ジカルボン酸として例示したものも含まれる。
芳香族ジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸としては、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられる。
具体的な例としては、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド6I/6)、ポリドデカミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド12/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド)コポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、およびこれらの混合物ないし共重合樹脂などが挙げられる。これらの芳香族共重合ポリアミド(A-3)は、1種単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中でも、ポリアミド6T/6Iが好ましい。
本発明で使用する芳香族共重合ポリアミド(A-3)として、特に有用なものとしては、芳香族系モノマー成分を少なくとも2成分含む非晶性部分芳香族共重合ポリアミド樹脂が挙げられる。非晶性部分芳香族共重合ポリアミド樹脂としては、動的粘弾性の測定によって得られた絶乾時の損失弾性率のピーク温度によって求められたガラス転移温度が100℃ 以上の非晶性ポリアミドが好ましい。
ここで、非晶性とは、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融解熱量が1cal/g以下であることをいう。
前記非晶性部分芳香族共重合ポリアミド樹脂としては、テレフタル酸成分単位40~95モル%およびイソフタル酸成分単位5~60モル%からなる芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとからなるものが好ましい。好ましい組み合わせとしては、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩とヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の等モル塩が挙げられる。
また、脂肪族ジアミン並びにイソフタル酸およびテレフタル酸からなる芳香族ジカルボン酸からなるポリアミド形成性成分99~60重量%と脂肪族ポリアミド成分1~40重量%とであるものが好ましい。芳香族共重合ポリアミド(A-3)の製造装置としては、脂肪族ホモポリアミド(A-1)、脂肪族共重合ポリアミド(A-2)の製造装置と同様のものが挙げられる。
本発明における芳香族共重合ポリアミド樹脂(A-3)の重合度には特に制限はないが、JIS K 6810に従って98% 硫酸中濃度1 %、芳香族共重合ポリアミド樹脂温度25℃で測定した相対粘度が、1.5~4.0であることが好ましく、より好ましくは1.8~3.0である。
芳香族共重合ポリアミド樹脂(A-3)の末端アミノ基濃度は、フェノールとメタノールの混合溶媒に溶解させ、中和滴定で求められる。芳香族共重合ポリアミド樹脂(A-3)の末端アミノ基濃度は、30μmol/g以上であることが好ましく、30μmol/g以上50μmol/g以下がより好ましい。
ポリアミド樹脂(A)中の芳香族共重合ポリアミド(A-3)の含有率は、成形加工性の観点から、例えば5質量%以上30質量%以下であり、5質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上10質量%以下がより好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の具体的な例としては、脂肪族ホモポリアミド(A-1)としてポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610及びポリアミド612からなる群から選択される少なくとも1種と、脂肪族共重合ポリアミド(A-2)として、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12及びポリアミド6/66/12からなる群から選択される少なくとも1種と、芳香族共重合ポリアミド(A-3)として、ポリアミド6T/6Iとの組み合わせが好ましく挙げられる。
ポリアミド樹脂(A)は、脂肪族ホモポリアミド(A-1)、脂肪族共重合ポリアミド(A-2)及び芳香族共重合ポリアミド(A-3)以外のポリアミドを含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。
(ポリアミド樹脂の相対粘度)
ポリアミド樹脂(A)は、JIS K-6920に準拠し、ポリアミド樹脂1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される相対粘度が2.7以上であり、2.7以上5.0以下であることが好ましい。更に本発明の効果を向上させる観点から、2.7以上4.5未満がより好ましい。2.7以上では、ポリアミド組成物の溶融粘度が低すぎることがないため、押出成形でも特にブロー成形時のパリソン形状保持が良好である。また5.0以下では、ポリアミド組成物の溶融粘度が高すぎることなく、ブロー成形時、溶融樹脂の均一な肉厚が得られる。
ポリアミド樹脂(A)が、相対粘度が異なる2種以上のポリアミド樹脂含むため、ポリアミド樹脂(A)における相対粘度は、上記内容で測定されるのが好ましいが、それぞれのポリアミド樹脂の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、ポリアミド樹脂(A)の相対粘度としてもよい。
耐衝撃材(C)との反応性から、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度は、フェノールとメタノールの混合溶媒に溶解させ中和滴定で求められる末端アミノ基濃度として、30μmol/g以上であり、30μmol/g以上110μmol/g以下の範囲が好ましく、30μmol/g以上70μmol/g以下の範囲がより好ましい。30μmol/g以上であれば、耐衝撃材(C)との反応性が良く、溶融粘度や優れた機械的特性を十分に得ることができる。また110μmol/g以下では、溶融粘度が高すぎず、成形加工性が良好である。
ポリアミド樹脂(A)が、末端アミノ基濃度の異なる2種以上のポリアミド樹脂を含むため、ポリアミド樹脂(A)における末端アミノ基濃度は、上記中和摘定で測定されるのが好ましいが、それぞれのポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度とその混合比が判明している場合、それぞれの末端アミノ基濃度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度としてもよい。
ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、50~80質量%、好ましくは50~75質量%、より好ましくは55~75質量%、さらに好ましくは60~75質量%、特に好ましくは65~75質量%含まれる。ポリアミド樹脂(A)の含有割合が上記下限以上であるとガスバリア性が良好であり、上記上限以下であると低温下で脆弱とならないため、機械的物性及びブロー成形性が良好である。
(オレフィン系アイオノマー(B))
ポリアミド樹脂組成物は、オレフィン系アイオノマー(B)を含む。オレフィン系アイオノマー(B)は、成形改良材として用いられる。オレフィン系アイオノマー(B)の樹脂としては、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体が挙げられる。(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体である。α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これら不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。アイオノマーに用いられる金属イオンとしてはNa 、K 、Cu 、Mg 、Ca 、Ba、Zn 、Cd 、Al 、Fe 、Co 、Ni などが挙げられる。これらの中でも、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマーが好ましく、金属イオンとしては、Znが好ましい。
オレフィン系アイオノマー(B)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、5~10質量%、好ましくは6~9質量%、より好ましくは7~8質量%含まれる。オレフィン系アイオノマー(B)の含有割合が上記範囲にあると、表面平滑性及びブロー成形性が良好になる。
(耐衝撃材(C))
ポリアミド樹脂組成物は、少なくとも1種の耐衝撃材(C)を含む。耐衝撃材としてはゴム状重合体が挙げられる。耐衝撃材は、ASTM D-790に準拠して測定した曲げ弾性率が500MPa以下であることが好ましい。
耐衝撃材(C)として具体的には、(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。耐衝撃材(C)として好ましくは、エチレン/α-オレフィン系共重合体である。
(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと炭素数3以上又は4以上のα-オレフィンとを共重合した重合体である。
炭素数3以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、 4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
また共重合体は、非共役ジエン等のポリエンを共重合したものであってもよい。非共役ジエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体である。α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これらα,β-不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
また、耐衝撃材(C)として用いられる(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、並びに(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、カルボン酸及び/又はその誘導体で変性された重合体であり、不飽和カルボン酸又はその酸無水物等により酸変性された重合体であることが好ましい。このような成分により変性することにより、ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基をその分子中に含むこととなる。
ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基としては、カルボキシ基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基等が挙げられる。
これらの官能基を含む化合物、すなわちカルボン酸及びその誘導体の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いることができる。これらの中では無水マレイン酸が好ましい。
耐衝撃材(C)における酸無水物基の含有量は、25μmol/g超過100μmol/g未満であり、35μmol/g以上95μmol/g未満が好ましく、40μmol/g以上90μmol/g以下がより好ましい。含有量が25μmol/g超過では高い溶融粘度の組成物を得ることができ、ブロー成形において目標の肉厚寸法を得ることができる。また含有量が100μmol/g未満であると溶融粘度が高すぎず、押出機に負荷を抑えて良好に成形加工できる。耐衝撃材(C)が有する酸無水物基の含有量は、トルエン、エタノールを用いて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1規定のKOHエタノール溶液による中和滴定で測定される。
耐衝撃材(C)として、酸無水物基の含有量が異なる2種以上の耐衝撃材を用いる場合、耐衝撃材(C)における酸無水物基の含有量は、トルエン、エタノールを用いて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1規定のKOHエタノール溶液による中和滴定で測定されるのが好ましいが、それぞれの耐衝撃材の酸無水物基の含有量とその混合比が判明している場合、それぞれの酸無水物基の含有量にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、耐衝撃材(C)の酸無水物量としてもよい。
耐衝撃材(C)は、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2160gで測定したMFRが0.1g/10分以上10.0g/10分以下であることが好ましい。MFRが0.1g/10分以上であると、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎず、例えば押出成形におけるブロー成形時にパリソンの形状が不安定になることが抑制され、成形体の厚みがより均一になる傾向がある。また、MFRが10.0g/10分以下であると、パリソンのドローダウンが大きくなりすぎず、良好なブロー成形性が得られる傾向がある。
耐衝撃材(C)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、15~20質量%、好ましくは16~19質量%、より好ましくは17~18質量%含まれる。耐衝撃材(C)の含有割合が上記範囲にあるとガスバリア性が良好かつ、低温物性及びブロー成形性が良好である。
(溶融粘度、緩和応力)
ポリアミド樹脂組成物は、温度250℃、剪断速度12秒-1における溶融粘度が17000Pa・s以上であり、同温度における0.1秒時の緩和応力が30kPa以上である。溶融粘度は、17000~25000Pa・sが好ましく、17000~20000Pa・sがより好ましい。緩和応力は、高いほど望ましいため、特に上限はない。
溶融粘度が前記範囲にあるとブロー成形性および成形時間の観点が良好であり、緩和応力が前記範囲にあるとブロー成形性の観点が良好である。
(溶融粘度、緩和応力の測定方法)
前記溶融粘度と緩和応力の測定は、以下の方法で行なった。
溶融粘度は、東洋精機製キャピログラフ1D 式P-Cを用いて、溶融粘度を測定した。測定温度は250℃でオリフィスは穴径1.0mm、長さ10mm(L/D=10)を使用して測定した。
緩和応力は、TA Instruments製溶融粘弾性測定装置ARES―G2を使用し、試料を測定セルに挟み、下記条件で試料を溶融させながらひずみを負荷し停止させた後、経過時間0.1sの応力を測定した。
測定セル:パラレルプレート(φ25mm)
パラレルプレート間距離:1.5mm
溶融温度条件:250℃
負荷ひずみ:100%
溶融粘度が前記範囲にあるとブロー成形性および成形時間の観点から良好であり、緩和応力が前記範囲にあるとブロー成形性の観点から良好である。
(D)耐熱剤
ポリアミド樹脂組成物は、耐熱剤(D)を含むことも好ましい。耐熱剤(D)は、ポリアミド樹脂の耐熱性を向上できるものが使用でき、有機系、無機系の耐熱剤をその目的に応じて使用できる。
(無機系耐熱剤)
ポリアミド樹脂組成物は、熱溶着特性と耐熱特性の観点から、耐熱剤として無機系耐熱剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。無機系耐熱剤の種類としては、第I族遷移系列元素に属する金属化合物(塩)であり、例えば、この金属のハロゲン化物、硫酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、ニコチン酸塩又はステアリン酸塩が挙げられる。
また、アルカリ金属のハロゲン化塩を単独又は上記第I族遷移系列元素に属する金属化合物(塩)と併用してもよい。
その具体例としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム又は臭化カリウムである。
更に、メラミン、ベングアナミン、ジメチロール尿素又はシアヌール酸などの含窒素化合物を併用するとより効果的である。
これら無機系耐熱剤は1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
(有機系耐熱剤)
ポリアミド樹脂組成物は、熱溶着特性と耐熱特性の観点から、耐熱剤として有機系耐熱剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。有機系耐熱剤を含むことで、ブロー成形時においてインターバルタイムが長くなった場合でも通常の熱老化性、物性、溶融粘度等を維持しながら、熱溶着性をより向上させることができる。これは例えば、有機系耐熱剤の添加によって、耐衝撃材の熱劣化によるゲル化が抑制され、それにより造核作用が抑制されるためと考えられる。
有機系耐熱剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等を挙げることができる。
フェノール系酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールがより好ましい。O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールは、具体的には、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
リン系酸化防止剤としてはヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物、ヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物が好ましく、O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物、O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物がより好ましく、O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物がさらに好ましい。O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物は、具体的には、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエルスリトールジフォスファイト、を挙げることができる。O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物は、具体的には、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-4,4-ビフィニルジホスフィンを主成分とするビフィニル、三塩化リン及び2,4-ジ-tert-ブチルフェノールの反応生成物、を挙げることができる。これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
イオウ系酸化防止剤としては、ジステアリル-3,3-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ジドデシル(3,3’-チオジプロピオネート)、を挙げることができる。これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
これら有機系耐熱剤は1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
ポリアミド樹脂組成物は、熱溶着性の観点から、少なくとも1種のフェノール系酸化防止剤を含有することが好ましく、少なくとも1種のフェノール系酸化防止剤と少なくとも1種のリン系酸化防止剤とを含有することがより好ましく、O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノール及びO位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことがさらに好ましく、O位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノール及びO位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物を含むことが特に好ましい。
耐熱剤(D)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.05~2質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%含まれる。耐熱剤(D)の含有割合が上記範囲にあると、耐熱性及び初期物性が良好である。
(その他、添加剤)
ポリアミド樹脂組成物は目的等に応じて、任意成分として、染料、顔料、繊維状補強物、粒子状補強物、可塑剤、酸化防止剤((D)成分を除く)、耐熱剤、発泡剤、耐候剤、結晶核剤(有機核剤、タルクなどの無機核剤)、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤等の機能性付与剤等を適宜含有していてもよい。本発明の効果向上の為、ポリアミド樹脂組成物は、酸化防止剤を含有するのが好ましい。
任意の添加剤は、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%である。
(ポリアミド樹脂組成物の製造方法)
ポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば次の方法を適用することができる。
ポリアミド樹脂(A)と、オレフィン系アイオノマー(B)と、耐衝撃材(C)とを必須とし、任意に耐熱剤(D)と、その他添加物との混合には、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機が用いられる。例えば、2軸押出機を使用して、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
(ポリアミド樹脂組成物の用途)
ポリアミド樹脂組成物は、ブロー成形によりライナー全体が一体成形された繋ぎ目のないライナーである、水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーとして好適に使用することができる。
(水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナー)
本発明の水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーとは、ブロー成形によりライナー全体が一体成形された繋ぎ目のないライナーであり、例えば射出工法でライナーを分割で成形した後に、溶着して接合した繋ぎ目のあるライナーと比較して、ライナーの寸法精度、強度、水素ガスバリア性に優れる利点がある。
水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーは、前記水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物のブロー成形品である。
(水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーの製造方法)
本発明の水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーの製造方法は、前記水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物を、アキュムレータ式ブロー成形機を用いて、シリンダ温度220~235℃において、成形時間25分以下、アキューム時間2~20分で成形する。
本明細書において、「シリンダ温度」とは、アキュームレータ式ブロー成型機10におけるシリンダ13の温度をいい、「アキューム時間」とは、アキュームレータ式ブロー成型機10において溶融・混練した樹脂組成物14をアキューム15に押出を開始してから、アキューム15に既定容量(1ショット分容量)まで蓄える時間をいい、「成形時間」とは、アキュームレータ式ブロー成型機10において溶融・混練した樹脂組成物14をアキューム15に押出を開始してから、成形品19を取り出すまでの時間をいう。「成形時間」には、通常、アキューム時間、パリソン押出時間、型閉動作時間、ブローアップ時間、エアー循環時間、排気時間、型開動作時間、成形品取り出し時間が含まれる。なお、ブローアップ時間、エアー循環時間及び排気時間の合計を本明細書では、冷却時間ともいう。
本発明の水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーは、前記水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物をアキュームレータ式ブロー成形機を用いて、水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーに成形する。アキュームレータ式ブロー成形機を用いた水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーの製造方法を図3のフローチャート及び図4~6を用いて説明する。
アキュームレータ式ブロー成形機10は、スクリュー12及びシリンダ13を備えた押出機11、押出シリンダ16を備えたアキューム15を有する。
アキュームレータ式ブロー成形機10を用いて、その押出機11のシリンダ13内で、ポリアミド樹脂組成物を溶融及び混練し、溶融・混練した樹脂組成物14とする(図3のステップ1(S1))。
図4に示すように、押出機11のスクリュー12にて、溶融・混練した樹脂組成物14をアキューム15に押出し、既定容量(1ショット分容量)まで蓄える(図3のステップ2(S2))。その際、スクリュー回転数は、特に制限はないが、10~45rpmが好ましく、15~30rpmがさらに好ましい。アキューム時間は、2~20分であり、2~15分が好ましく、2~10分がより好ましい。アキューム時間が前記範囲にあると、ハイサイクルな成形が可能である。
図5に示すように、溶融・混練した樹脂組成物14がアキューム15内に既定容量まで到達直後に、押出シリンダ16にてアキューム15内の溶融・混練した樹脂組成物14を押出し、円筒形状のパリソン17を形成する(図3のステップ3(S3))。その際のシリンダ13のシリンダ温度は、220~235℃であり、220~230℃が好ましく、225~230℃がより好ましく。シリンダ温度が前記範囲にあると、表面平滑性及び機械的特性が良好である。また、パリソン押出時間(溶融・混練した樹脂組成物14をパリソン17として押出開始から終了までの時間)は、特に制限はないが、3~15秒が好ましい。
その後、パリソン17を金型18で挟み込みパリソン内部へエアーを吹き込むことで金型内部でパリソン17を賦形し、目的の形状に成形する(図3のステップ4(S4))。その際の金型温度は、特に制限はないが、20~80℃が好ましい。
連続的にエアーを吹き込み続けることで成形された樹脂組成物を十分に冷却する(図3のステップ5(S5))。冷却時間は、特に制限がないが、30~300秒が好ましい。
図6に示すように、最後に、金型を開き成形品19を取り出す(図3のステップ6(S6))。
ポリアミド樹脂を用いることから樹脂の固化時間が短いため、溶融樹脂をパリソン17として押出し始めてから、金型が閉じるまでの時間(以下、「型閉時間」ともいう)を設定管理する必要があり、この型閉時間は、25秒以下であることが好ましく、2~20秒がより好ましい。型閉時間をこの範囲に設定することでライナーの寸法精度、強度に有利な成形が可能である。
成形時間は、25分以下であり、2~20分が好ましい。成形時間がこの範囲であると、ハイサイクルな成形が可能である。
前記成形方法で成形された本発明の成形品は、成形品の寸法精度、表面平滑性、機械的特性、水素ガスバリア性に優れる。
(最大高さ粗さ)
当該成形品の表面の長手方向の最大高さ粗さ(測定長さ:20mm)は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、最大高さ粗さとは、JIS B0601に定義されるものである。最大高さ粗さが前記範囲にあると、成形品が表面平滑性に優れ、応力集中を起こさないため機械的特性の保持に有効である。
最大高さ粗さは、JIS B0601に準じて、小坂研究所製SE500Aを用いて、小さく切出したライナーの内表面を長手方向に20mmの測定長で測定した。
前記最大高さ粗さとするためには、アキュームレータ式ブロー成形という製造方法を採用して、前記水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物を用いてシリンダ温度220~235℃、アキューム時間2~20分、成形時間25分以下で成形することが好ましい。
(引張破壊呼びひずみ)
また、ISO527-2/1BA/25に準ずる引張破壊呼びひずみが18%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。引張破壊呼びひずみが前記範囲にあると、高圧水素ガスのような極低温の気体に接触しても、十分な強度を保つことができる。
引張破壊呼びひずみは、ISO規格Type-1BA形状の試験片を、ライナーの長手方向に切削加工にて切削面の算術平均粗さRaが6.3a以下になるように切出し、ISO527-2/1BA/25に準じて、インストロン製引張試験機型式5967を使用して試験温度-60℃で測定した。
前記引張破壊呼びひずみとするためには、アキュームレータ式ブロー成形という製造方法を採用して、前記水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物を用いてシリンダ温度220~235℃、アキューム時間2~20分、成形時間25分以下で成形することが好ましい。
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例及び参考例において使用した樹脂及び成形品の物性評価方法を以下に示す。
[実施例1、比較例1、参考例1及び2]
表1に記載した各成分を二軸混練機TEX44HCT、シリンダー径44mm、L/D35で、シリンダー温度250℃、スクリュー回転120rpm、吐出量40kg/hにて溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作製した。
なお、表中の組成の単位は質量%であり、樹脂組成物全体を100質量%とする。
参考例1及び2は、前記水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーの製造方法を充足しない例である。
得られたペレットおよび下記成形条件で成形されたライナーを下記特性評価に使用し、得られた結果を表1に示す。
表1に記載した各成分は、以下の通りである。
(ポリアミド樹脂(A))
下記の3成分を10:4:1の割合で混合したものである。
ポリアミド6、製品名「1030B」宇部興産株式会社製
ポリアミド6/66、製品名「5034B」、宇部興産株式会社製
ポリアミド6T/6I、製品名「Grivory G21」EMS-CHEMIE(Japan)株式会社製
(オレフィン系アイオノマー(B))
エチレン-メタクリル酸共重合体、金属イオン:亜鉛、製品名「ハイミラン(登録商標)1706」三井・ダウポリケミカル株式会社製
(耐衝撃材(C))
無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体、製品名「タフマー(登録商標)MH5020」三井化学株式会社製
(ポリアミド樹脂組成物の物性評価方法)
(1)溶融粘度
ISO11443に準じて、東洋精機製キャピログラフ1D 式P-Cを用いて、溶融粘度を測定した。測定温度は250℃でオリフィスは穴径1.0mm、長さ10mm(L/D=10)を使用して、剪断速度12秒-1の時の溶融粘度を測定した。溶融粘度が低すぎると、ドローダウン量が大きくなり、ブロー成形性の点で好ましくない。
(2)緩和応力
TA Instruments製溶融粘弾性測定装置ARES―G2を使用し、試料を測定セルに挟み、下記条件で試料を溶融させながらひずみを負荷し停止させた後、経過時間0.1sの応力を測定した。緩和応力が低すぎると、ブロー成形性が悪くなる。
測定セル:パラレルプレート(φ25mm)
パラレルプレート間距離:1.5mm
溶融温度条件:250℃
負荷ひずみ:100%
(3)ドローダウン量
単層アキュームレータ式ブロー成形機を用いて、ドローダウン量を下記方法で測定した。溶融樹脂がアキューム内で既定量へ達した直後にパリソンを押出した。図1に示すように、押出し完了時点を0秒として、5秒毎のドローダウン量を長尺スケールで測定し、30秒後の値をドローダウン量とした。ドローダウン量が少ないほど、パリソン保持率が高く、ブロー成形性に優れる。
(i)ブロー成形機(成形機の型名:JB105/P50/AC1L)
成形機仕様:単層アキュームレータ式ブロー成形機
アキューム容量:1リットル
スクリュー径:φ50mm
ダイコア径:φ70/φ68mm
(ii)成形条件
押出機&ダイコア温度:250℃
スクリュー回転数:30rpm
アキューム容量:100%
(1.2mライナーの評価方法)
実施例1及び比較例1、並びに参考例1及び2におけるライナー評価は、下記条件でφ265mm×L1200mmの継ぎ目レスライナーを製造し、下記の成形評価を実施した結果である。
(1)ライナー製造条件
(i)ブロー成形機(成形機の型名:NB60SII/P90/AC15S)
成形機仕様:単層アキュームレータ式ブロー成形機
アキューム容量:15リットル
スクリュー径:φ90mm
ダイコア径:φ80/φ75mm
(ii)成形条件
押出機&ダイコア温度:225~240℃
スクリュー回転数:15~30rpm
アキューム容量:50%
金型温度:25~30℃
パリソン押出時間:8~15秒
型閉時間:2~3秒
冷却時間:4分
シリンダ温度、アキューム時間及び成形時間は表1に示す。
(2)特性評価
(i)表面の長手方向の最大粗さ
JIS B0601に準じ、小坂研究所製SE500Aを用いて、小さく切出したライナーの内表面を長手方向に20mmの測定長で最大高さ粗さを測定した。
最大高さ粗さが低いほど、成形品の表面平滑性に優れるため、応力集中を起こさないため機械的特性の保持に有効である。
(3)引張破壊呼びひずみ
ISO規格Type-1BA形状の試験片を、図2に示すように、ライナーの長手方向に切削加工にて切削面の算術平均粗さRaが6.3a以下になるように切出し、ISO527-2/1BA/25に準じて、インストロン製引張試験機型式5967を使用して試験温度-60℃で測定した。引張破壊呼びひずみの値が大きいほど極低温下において、ライナー破損による水素漏れに対して有利である。
Figure 0007409876000001

ポリアミド樹脂組成物の実施例1は、ブロー成形性に優れるとともに、表面平滑性に優れ、さらには機械的特性にも優れることがわかる。
実施例1と比較例1とを比較すると、ポリアミド樹脂組成物が、オレフィン系アイオノマーを含まないと、パリソンを保持できず、ブロー成形性が劣ることがわかる。
実施例1と参考例1及び2とを比較すると、シリンダー温度が高温であると、成形品の表面平滑性が劣るとともに、機械的特性も劣ることがわかる。
本発明により、ブロー成形性、機械的特性及び表面平滑性に優れた水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーを提供することができる。
(1):パリソン押出完了時
(2):パリソン押出完了から30秒後
(3):表面の長手方向の最大粗さ測定サンプル切り出し位置(胴体部中央)
L1:パリソン初期長さ
L2:ドローダウン量
1:ダイコア
10:アキュームレータ式ブロー成型機
11:押出機
12:スクリュー
13:シリンダ
14:溶融・混練した樹脂組成物
15:アキューム
16:押出シリンダ
17:パリソン
18:金型
19:成形品

Claims (5)

  1. 水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物のブロー成形品である水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーであって、
    ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、ポリアミド樹脂(A)50~80質量%、オレフィン系アイオノマー(B)5~10質量%、及び耐衝撃材(C)15~20質量%を含み、
    当該組成物が温度250℃、剪断速度12秒-1における溶融粘度が17000Pa・s以上であり、同温度における0.1秒時の緩和応力が30kPa以上であり、
    表面の長手方向の最大高さ粗さ(測定長さ:20mm)が100μm以下である、
    水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナー
  2. 前記ポリアミド樹脂(A)が脂肪族ホモポリアミド(A-1)、脂肪族共重合ポリアミド(A-2)及び芳香族共重合ポリアミド(A-3)からなるポリアミド樹脂である、請求項1に記載の水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナ
  3. ISO527-2/1BA/25に準ずる引張破壊呼びひずみが18%以上である、請求項またはに記載の水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナー。
  4. ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、ポリアミド樹脂(A)50~80質量%、オレフィン系アイオノマー(B)5~10質量%、及び耐衝撃材(C)15~20質量%を含み、
    当該組成物が温度250℃、剪断速度12秒 -1 における溶融粘度が17000Pa・s以上であり、同温度における0.1秒時の緩和応力が30kPa以上である水素タンクの継ぎ目レス長尺ライナーのブロー成形用ポリアミド樹脂組成物を、アキュムレータ式ブロー成形機を用いて、シリンダ温度220~235℃において、成形時間25分以下、アキューム時間2~20分で成形することを特徴とする、水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーの製造方法。
  5. 前記ポリアミド樹脂(A)が脂肪族ホモポリアミド(A-1)、脂肪族共重合ポリアミド(A-2)及び芳香族共重合ポリアミド(A-3)からなるポリアミド樹脂である、請求項4に記載の水素タンク用継ぎ目レス長尺ライナーの製造方法。
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