JP2021171772A - 銅線製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋳造バーの割れを発生しにくくすることが可能な銅線製造装置を提供する。【解決手段】回転軸6を中心に回転する鋳造リング1を用いて鋳造バー120を鋳造する鋳造部を備えた銅線製造装置であって、鋳造リング1は、その外周に沿って環状に形成された、鋳造バー120を鋳造するための溝を有し、鋳造リング1の直径aは、2900mm以上で、かつ鋳造リング1で鋳造する鋳造バー120の断面積と同じ面積を有する円の直径bに対して33倍以上、56倍以下の大きさを有する銅線製造装置を提供する。【選択図】図4

Description

本発明は、鋳造リングを備えた銅線製造装置に関するものである。
銅線の製造方法の1つとして、溶融した銅材(溶銅)を、水平方向を回転軸とする鋳造リングの外周面に設けられた溝とベルトとの間に設けられた空間内に流したあと、溶銅を冷却することによって銅材から成る鋳造バーを鋳造する方法が知られている。その後の工程で鋳造バーを圧延することで、銅線(銅荒引線)を製造することができる。
特許文献1(国際公開第2012/096238号)には、銅合金線材の製造方法として、銅または銅合金をベルト&ホイール法で連続鋳造する方法が記載されている。
国際公開第2012/096238号
鋳造リングの溝内に注がれた溶銅は、当該鋳造リングの外周面の曲面に沿って曲線状に凝固して鋳造バーになり、その後、鋳造リングから離脱した鋳造バーは直線状にされる。このため、鋳造バーが曲線状から直線状にされた際に、鋳造バー内において、鋳造リングの底面側に配置されていた部分(下面部分)には引張応力が生じ、鋳造リングの底面側と対向するベルト側に配置されていた部分(上面部分)には圧縮応力が生じる。例えば、鋳造リングの直径が2500mm程度である場合、曲線状に鋳造される鋳造バーの曲率が小さくなるため、直線状にされた鋳造バー内の上面部分と下面部分とのそれぞれに生じる上記応力が大きくなる。このため、上記のような直径を有する鋳造リングを用いて鋳造バーを鋳造しようとすると、当該応力によって鋳造バーに割れが生じる虞がある。
本発明の目的は、鋳造バーの割れを生じにくくすることが可能な銅線製造装置を提供することにある。
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
一実施の形態である銅線製造装置は、回転軸を中心に回転する鋳造リングを用いて鋳造バーを鋳造する鋳造部を備えた銅線製造装置であって、前記鋳造リングは、その外周に沿って環状に形成された、前記鋳造バーを鋳造するための溝を有し、前記鋳造リングの直径aは、2900mm以上で、かつ前記鋳造リングで鋳造する前記鋳造バーの断面積と同じ面積を有する円の直径bに対して33倍以上、56倍以下の大きさを有するものである。
本願において開示される一実施の形態によれば、鋳造バーの割れを発生しにくくすることが可能な銅線製造装置を提供することができる。
本発明の実施の形態である銅線製造装置の概略図である。 図1のA−A線における断面図である。 図1に示す鋳造リング近傍を拡大して示す概略図である。 図1に示す鋳造リング近傍を拡大して示す概略図である。 比較例の鋳造リングの近傍を拡大して示す概略図である。
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
本実施の形態の銅線製造装置は、外周面に沿う溝を有する鋳造リングを、比較的大きい直径で形成するものである。以下では、直径の大きい鋳造リングを用いることで、酸素濃度が低い鋳造バーを、割れの発生を防ぎつつ鋳造する銅線製造装置について説明する。
<銅線製造装置の構造および銅線の製造方法>
以下に、図1〜図3を用いて、本実施の形態の銅線製造装置の構造および銅線の製造方法について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る銅線製造装置10は、銅線(銅荒引線)を連続鋳造圧延するための、所謂連続鋳造圧延装置であり、例えば、溶解炉210と、上樋220と、保持炉230と、添加部240と、下樋260と、タンディッシュ300と、注湯ノズル320と、連続鋳造機500と、熱間圧延装置620と、巻取機(コイラー)640とを有している。
溶解炉210は、銅原料を加熱して溶融し、溶銅110を生成するものであり、例えば、炉本体と、炉本体の下部に設けられるバーナーとを有している。銅原料が炉本体に投入され、バーナーで加熱されることで、溶銅110が連続的に生成される。銅材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。溶銅は酸素(O)を含有している。
上樋220は、溶解炉210の下流側に設けられ、溶解炉210と保持炉230との間を連結し、溶解炉210で生成された溶銅110を下流側の保持炉230に移送するものである。
保持炉230は、上樋220の下流側に設けられ、上樋220から移送される溶銅110を所定の温度で加熱して一時的に貯留するものである。また、保持炉230は、溶銅110を所定の温度に保持したまま、所定量の溶銅110を下樋260に移送するものである。添加部240は、下樋260内の溶銅110に、所定の金属元素を連続的に添加するものである。溶銅110に添加される金属元素としては、例えば、錫(Sn)、インジウム(In)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)またはマンガン(Mn)などが挙げられる。つまり、好ましくは、これらの金属元素のうち少なくとも1つが、溶銅110に添加される。
下樋260は、保持炉230の下流側に設けられ、保持炉230から移送される溶銅110を下流側のタンディッシュ300に移送するものである。下樋260には、添加部240が接続されている。なお、添加部240は、下樋260に接続される態様に限定されず、例えば保持炉230またはタンディッシュ300に接続される態様であってもよい。
タンディッシュ300は、下樋260の下流側に設けられ、下樋260から移送される溶銅110を一時的に貯留し、連続鋳造機500に対して所定量の溶銅110を連続的に供給するものである。このようにして、連続鋳造機500に対して供給するための溶銅110を用意する。
タンディッシュ300の下流側には、貯留する溶銅110を流出させるための注湯ノズル320が接続されている。タンディッシュ300に溜まった溶銅110は、注湯ノズル320を介して、連続鋳造機500へと供給される。
連続鋳造機500は、所謂ベルトホイール式の連続鋳造を行う装置であり、例えば、鋳造リング(鋳造ホイール)1と、ベルト3とを有している。円筒状の鋳造リング1は、外周に溝2(図2参照)を有している。鋳造リング1は銅線の製造工程において回転し、その回転軸6は水平面に沿っている。円筒状の鋳造リング1の内側には、鋳造リング1を保持する円柱状の保持部5が配置されている。鋳造リング1は保持部5に固定されており、保持部5と共に回転する。なお、鋳造リング1は円柱状または円盤状であってもよい。
また、ベルト3は、鋳造リング1の外周面の一部に接触しながら周回移動するよう構成されている。鋳造リング1の溝2とベルト3との間の空間に、タンディッシュ300から流出される溶銅110が注入される。つまり、タンディッシュ300および注湯ノズル320は、鋳造リング1の溝2内に溶銅110を供給する供給部330である。また、鋳造リング1およびベルト3は、例えば冷却水により冷却されている。これにより、溶銅110が冷却・固化(凝固)されて、棒状の鋳造バー(鋳造材)120が連続的に鋳造される。すなわち、鋳造リング1を備えた連続鋳造機500は、溶銅110を凝固させて鋳造バー120を鋳造する鋳造部である。
熱間圧延装置620は、連続鋳造機500の下流側(鋳造バー排出側)に設けられ、連続鋳造機500から移送される鋳造バー120を連続的に圧延して圧延材を形成する圧延部である。すなわち、熱間圧延装置620を用いて鋳造バー120を鋳造リング1の溝2内から引き出し、連続鋳造機500外へ移送する。鋳造バー120が熱間圧延装置620によって圧延されて形成された圧延材を、熱間圧延装置620と巻取機640との間において表面清浄化処理することで、銅線(銅荒引線)130が鋳造加工される。
巻取機(コイラー)640は、熱間圧延装置620の下流側(銅合金材排出側)に設けられ、熱間圧延装置620から表面清浄化処理装置を経て移送される銅線130を巻き取るものである。以上の工程により、銅線(銅荒引線)130を形成することができる。
ここで、図1に示す鋳造リング1から取り出され、熱間圧延装置620で圧延される前の鋳造バー120は、酸素を含有している。また、同様に銅線130も酸素を含有している。鋳造バー120および銅線130のそれぞれの銅中の酸素含有量(酸素含有濃度)は、450mass ppm以下である。製造する銅線の硬さを高める観点において、酸素含有量のより好ましい値は120mass ppm以下である。
続いて、図2を用いて、鋳造リングの外周部の具体的な構造について説明する。図2は、鋳造リング1の回転軸(以下、単に回転軸と呼ぶ)6に沿う断面図であり、図2には鋳造リング1と、鋳造リング1の外周を覆うベルト3と、保持部5とを示している。図2は、図1のA−A線における断面図である。図2では、溶銅および鋳造バーはいずれも図示していない。
鋳造リング1の径方向(以下、単に径方向と呼ぶ)における外側の側面、つまり外周面には、回転軸6側に向かって凹んだ溝(凹部)2が鋳造バーの外周に沿って環状に形成されている。溝2は、鋳造リング1の外周(周方向)に沿って延在し、回転軸6の周囲を囲むように環状に形成されている。回転軸6に沿う方向(回転軸方向ともいう)における溝2の幅は、鋳造リング1の外周側から回転軸側6に向かって徐々に小さくなっている。つまり、溝2の断面形状は逆向きの台形である。溝2の断面形状が逆向きの台形であることで、溝2内で凝固した鋳造バー120(図1参照)を溝2内から取り出し易くすることができる。
ここでは図示していないが、溝2の表面は、スートと呼ばれる煤から成る耐火物膜により連続的に覆われている。また、ベルト3の表面のうち、鋳造リング1の底面と対向する面は、スートと呼ばれる煤から成る耐火物膜により覆われている。
鋳造リング1は、例えば主に銅(Cu)から成る。鋳造リング1は、銅にクロム(Cr)またはジルコニウム(Zr)などを混ぜたものにより構成されていてもよい。ベルト3と鋳造リング1の外周面との間の空間内(溝2内)に注入された溶銅110は、熱伝導率が比較的高い銅を主に含む鋳造リング1に熱を奪われ、これにより冷却されることで、鋳造リング1の周囲を1周する前に凝固する。
図1および図2に示すように、鋳造リング1の直径aは、鋳造リング1の径方向の最大幅である。つまり、鋳造リング1の直径aは、鋳造リング1の回転軸方向に垂直な面の直径である。本実施の形態の主な特徴の1つは、鋳造リング1の直径aが2900mm以上、3500mm以下であり、比較的大きい点にある。より好ましくは、鋳造リング1の直径aは、2900mmより大きく、3200mm以下である。
また、本実施の形態の鋳造バー120の断面積は、3000mm以上、6000mm以下である。より好ましくは、鋳造バー120の断面積は、3000mmより大きく、4000mm以下である。このとき、本実施の形態の銅線製造装置10を用いて銅線を製造した場合、鋳造能力は、例えば、1時間当たり20t以上30t以下となる。本願でいう鋳造バーの断面積とは、鋳造バーの長手方向に垂直となる断面の面積である。
ここで、本実施の形態の鋳造バー120の断面積が、3000mm以上、6000mm以下であるとすると、当該断面積を有する円を想定した場合、その円の直径bは、約62〜87.4mmである。したがって、鋳造リング1の直径aが2900mm以上、3500mm以下であるとすると、直径bに対する直径aの比の範囲は、33〜56で表される。
つまり、本実施の形態の銅線製造装置において、鋳造バー120の断面積と同じ面積を有する円の直径bに対する、鋳造リング1の直径aの比の範囲は、33〜56である。言い換えれば、直径aは、直径bに対して33倍以上、56倍以下の大きさを有する。
図3に、銅線の製造工程中の銅線製造装置10を構成する鋳造リング1およびその近傍を示す。図3に示すように、溶銅110は鋳造リング1の外周の溝とベルト3との間の空間内に注湯ノズル320から注がれる。つまり、図3では、鋳造リング1の断面を示しており、鋳造リング1の面のうち、鋳造リング1と溶銅110とが耐火物膜(図示しない)を介して接している面は、図2に示す溝2の底面である。本願でいう鋳造リング1の底面とは、溝2の底面、つまり、溝2を構成する面のうち、回転軸6側の面を指す。
鋳造リング1は矢印の方向に溶銅110および鋳造バー120と共に回転している。また、ベルト3も鋳造リング1の外周面と同じ速度で移動している。鋳造バー120は鋳造リング1から曲線状の形状で取り出された後に直線状の形状にされ、続いて、図1を用いて説明したように、熱間圧延装置620により圧延される。
鋳造リング1に接し、鋳造リング1と共に回転している鋳造バー120の内部では、鋳造リング1の底面側に配置されている下面部分の近傍において圧縮応力が生じ、鋳造リング1の底面側とは反対側(ベルト3側)に配置されている上面部分の近傍において引張応力が生じているものと考えらえる。これに対し、鋳造リング1から取り出され、曲線状から直線状に変形された鋳造バー120は、当該変形により、内部に逆向きの応力を有している。つまり、鋳造リング1から取り出された後に直線状にされた鋳造バー120の内部では、鋳造リング1の底面側に配置されていた下面部分の近傍において引張応力が生じ、鋳造リング1側と反対側(ベルト3側)に配置されていた上面部分の近傍において圧縮応力が生じている。ここでは、直線状にされた鋳造バー120の下面部分に生じる引張応力は、上面部分に生じる圧縮応力よりも小さい。
上記のように、本実施の形態の銅線製造装置は、回転軸6を中心に回転する鋳造リング1(図4参照)を用いて鋳造バー120を鋳造する鋳造部を備えた銅線製造装置である。この銅線製造装置は、鋳造リング1の外周に沿って環状に形成された溝を有する。鋳造リング1の径方向の最大幅である直径(第1直径)aは、2900mm以上で、かつ鋳造リング1で鋳造する鋳造バー120の断面積と同じ面積を有する円の直径(第2直径)bに対して33倍以上、56倍以下の大きさを有する。
<本実施の形態の効果>
比較例として、図5に、比較的小さい直径を有する鋳造リングにより鋳造バーを鋳造する場合について説明する。図5は、比較例の鋳造リングの近傍を拡大して示す概略図である。比較例の銅線製造装置の構成は、鋳造リングの直径が比較的小さい点を除き、図1に示す銅線製造装置10の構成と同様である。比較例においても、鋳造リングを用いて鋳造する鋳造バー120の断面積は、本実施の形態と同様に3000mm以上、6000mm以下であるものとする。
図5に示す比較例の鋳造リング4の直径cは、2900mm未満である。直径cは、例えば2500mm程度であり、比較的小さい。このような鋳造リング4で鋳造した鋳造バー120は直線状にされる際、図4を用いて説明したように、下面部分で引張応力が生じ、上面部分で圧縮応力が生じる。このとき、鋳造リング4の直径cが2500mm程度と比較的小さいため、このような鋳造リング4を用いて鋳造バー120を鋳造すると、直線状にされた鋳造バー120内において、上面部分と下面部分とのそれぞれに生じる上記応力が大きくなる。具体的には、直線状にされた鋳造バー120内の下面部分に生じる引張応力が上面部分に生じる圧縮応力よりも大きくなる。そのため、直線状にされた鋳造バー120の下面部分に割れが生じる虞がある。
また、銅線の硬さを高めることなどを目的として、酸素含有量が低い銅から成る鋳造バーを鋳造することが考えられる。しかし、鋳造バーの酸素含有量が低くなる程、鋳造バーは固くなる反面、脆くなる性質がある。例えば、鋳造バーの酸素含有量が450mass ppm以下になると、鋳造バーは、その内部に生じる応力により割れ易くなる。特に、鋳造バーの酸素含有量が50〜120mass ppmになると、鋳造バーは非常に脆くなり、鋳造バーの内部に生じる応力により割れ易くなる。
したがって、酸素含有量が低い鋳造バーを、比較例のように直径cが小さい鋳造リング4で鋳造すると、鋳造バー120を直線状にした際に鋳造バー120に割れが生じる虞がある。このような割れは、鋳造バー120の圧延後も欠陥として線材に内在する。また、鋳造バー120の割れが大きい場合(特に、鋳造バー120を目視観察することによって検出される割れが鋳造バー120の表面から鋳造バー120の中心部分にかけて1cm以上である場合)には、圧延の際に鋳造バー120の破断に至ることもある。
鋳造バー120の表面に上述した割れを残したまま製造された銅線130では、その表面に傷が多く発生する。そのため、表面に傷が多い銅線(その表面を市販の渦流探傷器によって探傷したときに検出される1.5V以上の傷の個数が50個以上の銅線)130を次工程で伸線しようとすると、鋳造時の割れに起因する欠陥を起点にして伸線材に割れまたは破断が生じ、歩留まりが低下する。また、鋳造バー120の割れに起因して鋳造バー120が破断する場合は、設備故障の原因となる。よって、鋳造バー120の割れによって破断が生じると、銅線製造装置の操業を停止し、銅線の製造作業をやり直す必要が生じる。このため、銅線製造装置を用いた銅線の製造に要する時間が増大し、製造コストが増大する。すなわち、このような鋳造バー120の割れおよびそれに起因する破断が起き易い銅線製造装置は、銅線の製造能力が低く、信頼性が低いという問題がある。
また、銅以外の金属を含有する鋳造バー120は、そのような金属を含まず銅の純度が高い鋳造バー120に比べ、割れ易いことが考えられる。鋳造バー120に添加される金属元素は、例えば、錫(Sn)、インジウム(In)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)またはマンガン(Mn)などである。このような金属を含む鋳造バー120は、上記のような割れによる問題が起き易い。
これに対し、本実施の形態の銅線製造装置10では、図4に示すように、酸素含有量が450mass ppm以下の鋳造バー120を鋳造するために、2900mm以上、3500mm以下という比較的大きい直径aを有する鋳造リング1を用いている。このように直径aが大きい鋳造リング1は、図5に示した比較例に比べて外周面の曲率が大きい。このため、鋳造リング1から取り出した鋳造バー120を曲線状から直線状にした際に、鋳造バー120の内部における下面部分の引張応力が、上面部分の圧縮応力より大きくなることを防ぐことができる。したがって、例えば、酸素含有量が450mass ppm以下の鋳造バー120であっても、曲線状から直線状にした際に、鋳造バー120に割れ(鋳造バー120を目視観察することによって検出される割れが鋳造バー120の表面から鋳造バー120の中心部分にかけて1cm以上であるもの)または破断が生じにくくなる。そして、このようにして得られた鋳造バー120を熱間圧延装置620で圧延することにより、表面に割れが少ない銅線130を得ることができる。なお、表面に割れが少ない銅線130とは、銅線130の表面を市販の渦流探傷器によって探傷したときに検出される1.5V以上の傷の個数が10個以下である銅線である。また、本実施の形態の銅線製造装置10では、酸素含有量が120mass ppm以下の鋳造バー120であっても、鋳造バー120の割れまたは破断の発生を防ぐことができる。また、本実施の形態の銅線製造装置10では、鋳造する鋳造バー120が銅以外の金属元素を含有する場合であっても、割れおよび破断の発生を防ぐことができる。
比較例の銅線製造装置を用いて、断面積が3000mm以上、6000mm以下である鋳造バーを鋳造しようとすると鋳造バーが割れる虞があるが、本実施の形態の銅線製造装置を用いれば、同様の断面積を有する鋳造バーを鋳造しても、鋳造バーの割れを発生しにくくすることができる。
ここで、本実施の形態の鋳造バー120の断面積が、3000mm以上、6000mm以下であるとすると、当該断面積を有する円を想定した場合、その円の直径bは、約62〜87.4mmである。したがって、鋳造リング1の直径aが2900mm以上、3500mm以下であるとすると、直径bに対する直径aの比の範囲は、33〜56で表される。
つまり、鋳造リング1の直径aが2900mm以上で、かつ鋳造バー120の断面積と同じ面積を有する円の直径bに対する、鋳造リング1の直径aの比の範囲が、33〜56である銅線製造装置を用いれば、本実施の形態の効果を得ることができる。
すなわち、鋳造バーの割れを発生しにくくして鋳造バーの破断を防ぐことで、伸線時の割れまたは破断の発生による歩留まり悪化を防ぎ、銅線製造装置を停止させることなく操業させることができる。つまり、銅線製造装置による銅線の製造能力を向上させ、さらに、銅線製造装置の信頼性を向上させることができる。また、銅線の製造コストを低減することができる。特に、酸素含有量が低く、硬度が高い銅線を製造する際、および、銅以外の金属を含有する銅線を製造する際に、上記効果を得ることができる。
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
1、4 鋳造リング
2 溝
3 ベルト
5 保持部
6 回転軸
10 銅線製造装置
110 溶銅
120 鋳造バー
130 銅線
300 タンディッシュ
330 供給部
500 連続鋳造機(鋳造部)
620 熱間圧延装置(圧延部)
a 直径(第1直径)

Claims (4)

  1. 回転軸を中心に回転する鋳造リングを用いて銅材から成る鋳造バーを鋳造する鋳造部と、前記鋳造バーを圧延して圧延材を形成する圧延部と、を備えた銅線製造装置であって、
    前記鋳造リングは、その外周に沿って環状に形成された、前記鋳造バーを鋳造するための溝を有し、
    前記鋳造リングの直径aは、2900mm以上で、かつ前記鋳造リングで鋳造する前記鋳造バーの断面積と同じ面積を有する円の直径bに対して33倍以上、56倍以下の大きさを有する、銅線製造装置。
  2. 請求項1記載の銅線製造装置において、
    前記鋳造リングの前記直径aは、2900mm以上、3500mm以下である、銅線製造装置。
  3. 請求項1または2に記載の銅線製造装置において、
    前記鋳造バーの酸素含有量は、450mass ppm以下である、銅線製造装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅線製造装置において、
    前記鋳造バーは、錫、インジウム、チタン、マグネシウム、銀、アルミニウム、カルシウムまたはマンガンを含有している、銅線製造装置。
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