JP2021169577A - セルロース繊維乾燥体及びその製造方法、並びに樹脂複合体の製造方法 - Google Patents

セルロース繊維乾燥体及びその製造方法、並びに樹脂複合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂との混合時に、黒点等の欠点の原因となる凝集物を形成し難く、成形加工時のスクリーンメッシュ交換頻度を低減することで生産性に優れ、高靭性でかつ外観に優れる樹脂複合体を与えることができるセルロース繊維乾燥体、及び当該セルロース繊維乾燥体と樹脂とを含む樹脂複合体の提供。【解決手段】セルロース繊維を含み、安息角40°〜60°、差角10°以下、ゆるめ嵩密度0.01g/cm3〜0.40g/cm3、あつめ嵩密度0.1g/cm3〜0.55g/cm3、及び圧縮度20%〜40%を有し、粒径710μm以下の粒子成分の含有率が50質量%〜90質量%である、セルロース繊維乾燥体。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース繊維乾燥体及びその製造方法、並びにセルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体の製造方法に関する。
樹脂材料は、軽く、加工特性に優れるため、自動車部材、電気・電子部材、事務機器ハウジング、精密部品等の多方面に広く使用されているが、樹脂単体では、機械特性、寸法安定性等が不十分である場合が多いことから、樹脂と各種フィラーとをコンポジットしたものが一般的に用いられている。近年、このようなフィラーとして、セルロースナノファイバー(CNF)等のナノ繊維を使用することが検討されている。CNFをはじめとしたナノ繊維は、乾燥状態では凝集し易いという性質があるため、安定分散が可能な分散液として製造される。例えば、セルロースナノファイバーを各種用途に適用する際には、上記分散液を一旦乾燥した後、分散媒中に分散し、又は乾燥体のままで、マトリクス樹脂中に再分散させる場合がある。しかしセルロースナノファイバーにおいて、セルロース分子間の水素結合による凝集は極めて強固であることから、従来、乾燥工程におけるセルロースナノファイバーの凝集を抑制するための手法が種々提案されている。
例えば、特許文献1は、(A)粉末状のナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1〜40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90〜200g/Lであることを特徴とする粉末状ナノファイバーを記載する。また、特許文献2は、有機溶媒の存在下、セルロースナノファイバーをホモジナイズ処理した後、有機溶媒を除去し、水分含有量0〜1質量%の乾燥した微小繊維を製造する方法を記載する。また、特許文献3は、セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、真空乾燥装置を用いて乾燥することを含む、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法を記載する。
特開2017−210596号公報 特開2012−224960号公報 国際公開第2019/189318号
特許文献1〜3に記載される技術はいずれも、セルロースナノファイバーの乾燥時の凝集を低減することで、乾燥後のセルロースナノファイバーを分散媒中又はマトリクス樹脂中に良好に再分散させようとするものであるが、これら技術によっても、一旦乾燥されたセルロースナノファイバーの再分散性は十分ではなく、特に、セルロースナノファイバーを乾燥状態のまま樹脂と混合した際にも当該セルロースナノファイバーを樹脂中に良好に分散できるような技術は確立されていなかった。したがって、従来の技術では、セルロースナノファイバーによる樹脂の物性向上効果が満足できるレベルでは発現できず、加えて量産時にはスクリーンメッシュを通過しない凝集塊が存在するために、スクリーンメッシュの交換頻度が非常に多く、量産が困難であるという課題があった。
本発明の一態様は、上記の課題を解決し、樹脂との混合時に、黒点等の欠点の原因となる凝集物を形成し難く、成形加工時のスクリーンメッシュ交換頻度を低減することで生産性に優れ、高靭性でかつ外観に優れる樹脂複合体を与えることができるセルロース繊維乾燥体、及び当該セルロース繊維乾燥体と樹脂とを含む樹脂複合体の提供を目的とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] セルロース繊維を含み、安息角40°〜60°、差角10°以下、ゆるめ嵩密度0.01g/cm3〜0.40g/cm3、あつめ嵩密度0.1g/cm3〜0.55g/cm3、及び圧縮度20%〜40%を有し、粒径710μm以下の粒子成分の含有率が50質量%〜90質量%である、セルロース繊維乾燥体。
[2] 粒径710μm超1000μm以下の粒子成分の含有率が10質量%〜30質量%である、上記態様1に記載のセルロース繊維乾燥体。
[3] 粒径1000μm超の粒子成分の含有率が1質量%〜10質量%である、上記態様1又は2に記載のセルロース繊維乾燥体。
[4] 前記セルロース繊維の数平均繊維径が2nm〜1000nmである、上記態様1〜3のいずれかに記載のセルロース繊維乾燥体。
[5] 前記セルロース繊維の平均繊維長(L)/繊維径(D)比が30〜5000である、上記態様1〜4のいずれかに記載のセルロース繊維乾燥体。
[6] 前記セルロース繊維が、重量平均分子量(Mw)100000以上、及び重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比6以下を有する、上記態様1〜5のいずれかに記載のセルロース繊維乾燥体。
[7] 前記セルロース繊維の結晶化度が60%以上である、上記態様1〜6のいずれかに記載のセルロース繊維乾燥体。
[8] 前記セルロース繊維のアルカリ可溶多糖類含有率が、20質量%以下である、上記態様1〜7のいずれかに記載のセルロース繊維乾燥体。
[9] 前記セルロース繊維が化学修飾されている、上記態様1〜8のいずれかに記載のセルロース繊維乾燥体。
[10] 前記化学修飾が、エステル化である、上記態様9に記載のセルロース繊維乾燥体。
[11] 前記エステル化が、アセチル化である、上記態様10に記載のセルロース繊維乾燥体。
[12] 前記セルロース繊維の平均置換度(DS)が0.1〜1.2である、上記態様9〜11のいずれかに記載のセルロース繊維乾燥体。
[13] 水分率が30質量%以下である、上記態様1〜12のいずれかに記載のセルロース繊維乾燥体。
[14] 分散剤を更に含み、
前記分散剤が、HLB値0.1以上、8.0未満、融点80℃以下、及び数平均分子量1000〜50000を有する化合物である、上記態様1〜13のいずれかに記載のセルロース繊維乾燥体。
[15] 上記態様1〜14のいずれかに記載のセルロース繊維乾燥体の製造方法であって、
セルロース繊維と水性媒体とを含むスラリーを調製するスラリー調製工程、及び
前記スラリーを、乾燥速度10%/分〜10000%/分の条件下で乾燥させてセルロース繊維乾燥体を形成する乾燥工程、
を含む、方法。
[16] 前記乾燥工程を、乾燥温度20℃〜200℃での滞留時間が0.01分間〜10分間である連続プロセスで行う、上記態様15に記載の方法。
[17] セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体の製造方法であって、
上記態様1〜16のいずれかに記載のセルロース繊維乾燥体と、樹脂とを混合することを含み、
前記樹脂複合体の引張破断伸度が、8%以上である、方法。
[18] 前記樹脂が熱可塑性樹脂である、上記態様17に記載の方法。
[19] 前記熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である、上記態様18に記載の方法。
本発明の一態様によれば、樹脂との混合時に、黒点等の欠点の原因となる凝集物を形成し難く、成形加工時のスクリーンメッシュ交換頻度を低減することで生産性に優れ、高靭性でかつ外観に優れる樹脂複合体を与えることができるセルロース繊維乾燥体、及び当該セルロース繊維乾燥体と樹脂とを含む樹脂複合体が提供され得る。
IRインデックス1730及びIRインデックス1030の算出法の説明図である。 熱分解開始温度(TD)及び1%重量減少温度(T1%)の測定法の説明図である。
本発明の例示の態様について以下具体的に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
≪セルロース繊維乾燥体≫
本発明の一態様は、粒子状であってよいセルロース繊維乾燥体を提供する。一態様に係るセルロース繊維乾燥体は、粒子径、安息角、崩潰角、差角、ゆるめ嵩密度、あつめ嵩密度、及び圧縮度が特定範囲に制御されている。このようなセルロース繊維乾燥体は、粒子のサイズ、セルロース分子凝集状態、及び粒子間相互作用が適切に制御されていることで、樹脂中に分散された際に、黒点等の欠点の原因となるセルロース凝集物を形成し難い。したがって、本発明の一態様に係るセルロース繊維乾燥体を用いることで、高靭性であるとともに、セルロース由来の黒点等の欠点が少なく良好な外観を呈する樹脂複合体を形成できる。
一態様において、セルロース繊維乾燥体の安息角は40°〜60°であり、好ましくは、42°以上、又は44°以上、又は46°以上であってよく、好ましくは、58°以下、又は56°以下、又は54°以下であってよい。セルロース繊維乾燥体のサイズは、大き過ぎると樹脂中への分散が困難であるが、小さ過ぎると粒子間での凝集が顕著になり樹脂中での分散性がかえって悪くなる。安息角が上記範囲であるセルロース繊維乾燥体は、粒子サイズが適度な範囲にあることで、セルロース繊維を樹脂中に均一に分散させることができる。なおこの際の分散サイズは必ずしも極めて微細ではないが、凝集物の生成が少ないことによって樹脂複合体の物性(特に靭性)は極めて良好なものとなる。
セルロース繊維乾燥体の崩潰角は、安息角及び差角を本開示の範囲に制御するのに有用である範囲に制御され、一態様において、30°〜50°、又は35°〜48°、又は38°〜46°であってよい。
一態様において、セルロース繊維乾燥体の差角(すなわち、安息角と崩潰角との差)は、10°以下であり、好ましくは、9°以下、又は8°以下、又は7°以下であってよい。差角が上記範囲であるセルロース繊維乾燥体は、粒子間の相互作用(摩擦力等)が比較的大きいことにより取扱い性に優れる。差角は、セルロース繊維乾燥体の製造容易性の観点から、例えば1°以上、又は2°以上、又は3°以上であってよい。
安息角及び崩潰角は、本開示の[実施例]の項に記載した方法で測定される値である。差角は安息角と崩潰角との差として算出される。
一態様において、セルロース繊維乾燥体のゆるめ嵩密度は、セルロース繊維乾燥体が軽質過ぎることによって、粒子が飛散したり、流動状態の樹脂との混合時に樹脂相上部にセルロース繊維乾燥体が浮遊して混合不良となったりする不都合を回避する観点から、0.01g/cm3以上であり、好ましくは、0.05g/cm3以上、又は0.08g/cm3以上、又は0.1g/cm3以上であってよい。また上記ゆるめ嵩密度は、セルロース繊維が樹脂中に良好に分散できる点、及び、セルロース繊維乾燥体が重質過ぎずセルロース繊維乾燥体と樹脂との混合不良を回避できる点で、0.40g/cm3以下であり、好ましくは、0.38g/cm3以下、又は0.36g/cm3以下、又は0.35g/cm3以下であってよい。
セルロース繊維乾燥体のあつめ嵩密度は、ゆるめ嵩蜜度及び圧縮度を本開示の範囲に制御するのに有用である範囲に制御され、一態様において、0.1g/cm3〜0.55g/cm3、又は0.12g/cm3〜0.52g/cm3、又は0.13g/cm3〜0.2g/cm3であってよい。
一態様において、セルロース繊維乾燥体の圧縮度は、20%〜40%である。圧縮度は嵩減りの程度を表す。セルロース繊維乾燥体の流動性が高過ぎず自然流動を抑制する点で、圧縮度は、20%以上であり、好ましくは、23%以上、又は25%以上、又は27%以上であってよい。また、セルロース繊維乾燥体の流動性が良好である点で、圧縮度は、40%以下であり、好ましくは、39%以下、又は38%以下、又は37%以下であってよい。
ゆるめ嵩密度及びあつめ嵩密度は、本開示の[実施例]の項に記載した方法で測定される値である。圧縮度は、圧縮度=(あつめ嵩密度−ゆるめ嵩密度)/あつめ嵩密度、で算出される値である。
セルロース繊維乾燥体の、粒径710μm以下の粒子成分の含有率は、一態様において50〜90質量%であり、好ましくは、55〜85質量%、又は60〜80質量%、又は63〜77質量%であってよい。また、粒径710μm超1000μm以下の粒子の含有率は、好ましくは、10〜30質量%、又は12〜25質量%であってよい。また、粒径1000μm超の粒子の含有率は、好ましくは、1〜22質量%、又は5〜10質量%であってよい。セルロース繊維乾燥体において、粒径710μm以下という小粒子が主成分であることで、樹脂中へのセルロース繊維乾燥体の分散が容易となり、靭性を向上させつつ、スクリーンメッシュの詰まりを抑制することができる。また、粒径710μmより大きい粒子を適度に含むことで、剛性を発現することができるため、物性のバランスに優れた樹脂複合体を得ることができる。セルロース繊維乾燥体の粒度分布は、本開示の[実施例]の項に記載した方法で測定される値である。
一態様において、セルロース繊維乾燥体の平均粒径は、好ましくは、50μm以上、又は100μm以上、又は200μm以上、又は500μm以上であり、好ましくは、5000μm以下、又は4000μm以下、又は3000μm以下、又は2000μm以下である。上記平均粒径は、レーザー回折・散乱法で測定される値である。
一態様において、セルロース繊維乾燥体の水分率は、30質量%以下、又は20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。水分率は、0質量%であってよいが、セルロース繊維乾燥体の製造容易性の観点から、例えば、0.1質量%以上、又は1質量%以上、又は1.5質量%以上であってよい。水分率は、赤外加熱式水分計を用いて測定される値である。
セルロース繊維乾燥体の原料としては、天然セルロース及び再生セルロースを用いることができる。天然セルロースとしては、木材種(広葉樹又は針葉樹)から得られる木材パルプ、非木材種(綿、竹、麻、バガス、ケナフ、コットンリンター、サイザル、ワラ等)から得られる非木材パルプ、動物(例えばホヤ類)や藻類、微生物(例えば酢酸菌)、が産生するセルロース繊維集合体を使用できる。再生セルロースとしては、再生セルロース繊維(ビスコース、キュプラ、テンセル等)、セルロース誘導体繊維、エレクトロスピニング法により得られた再生セルロース又はセルロース誘導体の極細糸等を使用できる。
一態様において、セルロース繊維はセルロースナノファイバーである。セルロースナノファイバーとは、パルプ等を100℃以上の熱水等で処理し、ヘミセルロースを加水分解して脆弱化したのち、高圧ホモジナイザー、マイクロフリュイダイザー、ボールミル、ディスクミル、ミキサー(例えばホモミキサー)等の粉砕法により解繊した微細なセルロース繊維を指す。一態様において、セルロースナノファイバーは数平均繊維径1nm以上1000nm以下である。セルロース繊維は後述のように化学修飾されたものであってもよい。
スラリーは、セルロース繊維(例えば上記解繊を経て得たセルロースナノファイバー)を液体媒体中に分散させることによって調製でき、分散は、高圧ホモジナイザー、マイクロフリュイダイザー、ボールミル、ディスクミル、ミキサー(例えばホモミキサー)等を用いて行ってよく、例えば上記解繊の生成物を本開示のスラリー調製工程の生成物として得てもよい。スラリー中の液体媒体は、水に加えて、任意に1種単独又は2種以上の組合せで他の液体媒体(例えば有機溶媒)を更に含み得る。有機溶媒としては、一般的に用いられる水混和性有機溶媒、例えば:沸点が50℃〜170℃のアルコール(例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール等);エーテル(例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等);カルボン酸(例えばギ酸、酢酸、乳酸等);エステル(例えば酢酸エチル、酢酸ビニル等);ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等);含窒素溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル等)、等を使用できる。典型的な態様においては、スラリー中の液体媒体は実質的に水のみである。スラリーは、セルロース繊維と液体媒体とに加えて、後述の追加の成分(分散剤、バインダー、酸化防止剤、防腐剤、増粘剤等)を含んでもよい。
セルロース繊維原料は、アルカリ可溶分、及び硫酸不溶成分(リグニン等)を含有するため、蒸解処理による脱リグニン等の精製工程及び漂白工程を経て、アルカリ可溶分及び硫酸不溶成分を減らしても良い。他方、蒸解処理による脱リグニン等の精製工程及び漂白工程はセルロースの分子鎖を切断し、重量平均分子量、及び数平均分子量を変化させてしまうため、セルロース繊維原料の精製工程及び漂白工程は、セルロースの重量平均分子量、及び重量平均分子量と数平均分子量との比が、適切な範囲から逸脱しない程度にコントロールされていることが望ましい。
また、蒸解処理による脱リグニン等の精製工程及び漂白工程はセルロース分子の分子量を低下させるため、これらの工程によって、セルロースが低分子量化すること、及びセルロース繊維原料が変質してアルカリ可溶分の存在比率が増加することが懸念される。アルカリ可溶分は耐熱性に劣るため、セルロース繊維原料の精製工程及び漂白工程は、セルロース繊維原料に含有されるアルカリ可溶分の量が一定の値以下の範囲となるようにコントロールされていることが望ましい。
一態様において、セルロース繊維の数平均繊維径は、セルロース繊維による物性向上効果を良好に得る観点から、好ましくは2〜1000nmである。セルロース繊維の数平均繊維径は、より好ましくは4nm以上、又は5nm以上、又は10nm以上、又は15nm以上、又は20nm以上であり、より好ましくは500nm以下、又は450nm以下、又は400nm以下、又は350nm以下、又は300nm以下、又は250nm以下である。
セルロース繊維の平均L/Dは、セルロース繊維を含む樹脂複合体の機械的特性を少量のセルロース繊維で良好に向上させる観点から、好ましくは、50以上、又は80以上、又は100以上、又は120以上、又は150以上である。上限は特に限定されないが、取扱い性の観点から好ましくは5000以下である。
本開示で、セルロース繊維の各々の長さ、径、及びL/D比は、セルロース繊維の水分散液を、高剪断ホモジナイザー(例えば日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」)を用い、処理条件:回転数15,000rpm×5分間で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとし、高分解能走査型顕微鏡(SEM)又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測して求める。具体的には、少なくとも100本のセルロース繊維が観測されるように倍率が調整された観察視野にて、無作為に選んだ100本のセルロース繊維の長さ(L)及び径(D)を計測し、比(L/D)を算出する。セルロース繊維について、長さ(L)の数平均値、径(D)の数平均値、及び比(L/D)の数平均値を算出する。
又は、樹脂複合体中のセルロース繊維の長さ、径、及びL/D比は、固体である樹脂複合体を測定サンプルとして、上述の測定方法により測定することで確認することができる。
又は、樹脂複合体中のセルロース繊維の長さ、径、及びL/D比は、樹脂複合体の樹脂成分を溶解できる有機又は無機の溶媒に樹脂複合体中の樹脂成分を溶解させ、セルロース繊維を分離し、前記溶媒で充分に洗浄した後、溶媒を純水に置換した水分散液を調製し、セルロース繊維濃度を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとして上述の測定方法により測定することで確認することができる。この際、測定するセルロース繊維は無作為に選んだ100本以上での測定を行う。
セルロース繊維の結晶化度は、好ましくは55%以上である。結晶化度がこの範囲にあると、セルロース繊維自体の力学物性(強度、寸法安定性)が高いため、セルロース繊維を樹脂に分散した際に、樹脂複合体の強度、寸法安定性が高い傾向にある。より好ましい結晶化度の下限は、60%であり、さらにより好ましくは70%であり、最も好ましくは80%である。セルロース繊維の結晶化度について上限は特に限定されず、高い方が好ましいが、生産上の観点から好ましい上限は99%である。
植物由来のセルロースのミクロフィブリル同士の間、及びミクロフィブリル束同士の間には、ヘミセルロース等のアルカリ可溶多糖類、及びリグニン等の酸不溶成分が存在する。ヘミセルロースはマンナン、キシラン等の糖で構成される多糖類であり、セルロースと水素結合して、ミクロフィブリル間を結びつける役割を果たしている。またリグニンは芳香環を有する化合物であり、植物の細胞壁中ではヘミセルロースと共有結合していることが知られている。セルロース繊維中のリグニン等の不純物の残存量が多いと、加工時の熱により変色をきたすことがあるため、押出加工時及び成形加工時の樹脂複合体の変色を抑制する観点からも、セルロース繊維の結晶化度は上述の範囲内にすることが望ましい。
ここでいう結晶化度は、セルロースがセルロースI型結晶(天然セルロース由来)である場合には、サンプルを広角X線回折により測定した際の回折パターン(2θ/deg.が10〜30)からSegal法により、以下の式で求められる。
結晶化度(%)=([2θ/deg.=22.5の(200)面に起因する回折強度]−[2θ/deg.=18の非晶質に起因する回折強度])/[2θ/deg.=22.5の(200)面に起因する回折強度]×100
また結晶化度は、セルロースがセルロースII型結晶(再生セルロース由来)である場合には、広角X線回折において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0 とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 とから、下記式によって求められる。
結晶化度(%) =h1 /h0 ×100
セルロースの結晶形としては、I型、II型、III型、IV型などが知られており、その中でも特にI型及びII型は汎用されており、III型、IV型は実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。本開示のセルロース繊維としては、構造上の可動性が比較的高く、当該セルロース繊維を樹脂に分散させることにより、線膨張係数がより低く、引っ張り、曲げ変形時の強度及び伸びがより優れた樹脂複合体が得られることから、セルロースI型結晶又はセルロースII型結晶を含有するセルロース繊維が好ましく、セルロースI型結晶を含有し、かつ結晶化度が55%以上のセルロース繊維がより好ましい。
また、セルロース繊維の重合度は、好ましくは100以上、より好ましくは150以上であり、より好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは450以上であり、好ましくは3500以下、より好ましく3300以下、より好ましくは3200以下、より好ましくは3100以下、より好ましくは3000以下である。
加工性と機械的特性発現との観点から、セルロース繊維の重合度を上述の範囲内とすることが望ましい。加工性の観点から、重合度は高すぎない方が好ましく、機械的特性発現の観点からは低すぎないことが望まれる。
セルロース繊維の重合度は、「第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)」の確認試験(3)に記載の銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法に従って測定される平均重合度を意味する。
一態様において、セルロース繊維の重量平均分子量(Mw)は100000以上であり、より好ましくは200000以上である。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は6以下であり、好ましくは5.4以下である。重量平均分子量が大きいほどセルロース分子の末端基の数は少ないことを意味する。また、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は分子量分布の幅を表すものであることから、Mw/Mnが小さいほどセルロース分子の末端の数は少ないことを意味する。セルロース分子の末端は熱分解の起点となるため、セルロース繊維のセルロース分子の重量平均分子量が大きいだけでなく、重量平均分子量が大きいと同時に分子量分布の幅が狭い場合に、特に高耐熱性のセルロース繊維、及びセルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体が得られる。セルロース繊維の重量平均分子量(Mw)は、セルロース繊維原料の入手容易性の観点から、例えば600000以下、又は500000以下であってよい。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)はセルロース繊維の製造容易性の観点から、例えば1.5以上、又は2以上であってよい。Mwは、目的に応じたMwを有するセルロース繊維原料を選択すること、セルロース繊維原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、等によって上記範囲に制御できる。Mw/Mnもまた、目的に応じたMw/Mnを有するセルロース繊維原料を選択すること、セルロース繊維原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、等によって上記範囲に制御できる。Mwの制御、及びMw/Mnの制御の両者において、上記物理的処理としては、マイクロフリュイダイザー、ボールミル、ディスクミル等の乾式粉砕若しくは湿式粉砕、擂潰機、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波装置等による衝撃、剪断、ずり、摩擦等の機械的な力を加える物理的処理を例示でき、上記化学的処理としては、蒸解、漂白、酸処理、再生セルロース化等を例示できる。
ここでいうセルロース繊維の重量平均分子量及び数平均分子量とは、セルロース繊維を塩化リチウムが添加されたN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させたうえで、N,N−ジメチルアセトアミドを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィによって求めた値である。
セルロース繊維の重合度(すなわち平均重合度)又は分子量を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースやリグニン等の不純物も取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、アルカリ加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、例えば、繊維性植物からパルプとして得たα−セルロースをセルロース繊維原料とし、これを水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌しながら加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度等により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調製されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分間以上セルロース繊維を処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。なお、加水分解時のセルロース繊維原料の分散液は、水の他、本発明の効果を損なわない範囲において有機溶媒を少量含んでいてもよい。
セルロース繊維が含み得るアルカリ可溶多糖類は、ヘミセルロースのほか、β−セルロース及びγ−セルロースも包含する。アルカリ可溶多糖類とは、植物(例えば木材)を溶媒抽出及び塩素処理して得られるホロセルロースのうちのアルカリ可溶部として得られる成分(すなわちホロセルロースからα−セルロースを除いた成分)として当業者に理解される。アルカリ可溶多糖類は、水酸基を含む多糖であり耐熱性が悪く、熱がかかった場合に分解すること、熱エージング時に黄変を引き起こすこと、セルロース繊維の強度低下の原因になること等の不都合を招来し得ることから、セルロース繊維中のアルカリ可溶多糖類含有量は少ない方が好ましい。
一態様において、セルロース繊維中のアルカリ可溶多糖類平均含有率は、セルロース繊維の良好な分散性を得る観点から、セルロース繊維100質量%に対して、好ましくは、20質量%以下、又は18質量%以下、又は15質量%以下、又は12質量%以下である。上記含有率は、セルロース繊維の製造容易性の観点から、1質量%以上、又は2質量%以上、又は3質量%以上であってもよい。
アルカリ可溶多糖類平均含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92〜97頁、2000年)に記載の手法より求めることができ、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求められる。なおこの方法は当業界においてヘミセルロース量の測定方法として理解されている。1つのサンプルにつき3回アルカリ可溶多糖類含有率を算出し、算出したアルカリ可溶多糖類含有率の数平均をアルカリ可溶多糖類平均含有率とする。
一態様において、セルロース繊維中の酸不溶成分平均含有率は、セルロース繊維の耐熱性低下及びそれに伴う変色を回避する観点から、セルロース繊維100質量%に対して、好ましくは、10質量%以下、又は5質量%以下、又は3質量%以下である。上記含有率は、セルロース繊維の製造容易性の観点から、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってもよい。
酸不溶成分平均含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92〜97頁、2000年)に記載のクラーソン法を用いた酸不溶成分の定量として行う。なおこの方法は当業界においてリグニン量の測定方法として理解されている。硫酸溶液中でサンプルを撹拌してセルロース及びヘミセルロース等を溶解させた後、ガラスファイバーろ紙で濾過し、得られた残渣が酸不溶成分に該当する。この酸不溶成分重量より酸不溶成分含有率を算出し、そして、3サンプルについて算出した酸不溶成分含有率の数平均を酸不溶成分平均含有率とする。
セルロース繊維の熱分解開始温度(TD)は、車載用途等で望まれる耐熱性及び機械強度を発揮できるという観点から、一態様において270℃以上であり、好ましくは275℃以上、より好ましくは280℃以上、さらに好ましくは285℃以上である。熱分解開始温度は高いほど好ましいが、セルロース繊維の製造容易性の観点から、例えば、320℃以下、又は300℃以下であってもよい。
本開示で、TDとは、図2の説明図に示すように、熱重量(TG)分析における、横軸が温度、縦軸が重量残存率%のグラフから求めた値である(尚、図2(B)は図2(A)の拡大図である。)。セルロース繊維の150℃(水分がほぼ除去された状態)での重量(重量減少量0wt%)を起点としてさらに昇温を続け、1wt%重量減少時の温度(T1%)と2wt%重量減少時の温度(T2%)とを通る直線を得る。この直線と、重量減少量0wt%の起点を通る水平線(ベースライン)とが交わる点の温度をTDと定義する。
1%重量減少温度(T1%)は、上記TDの手法で昇温を続けた際の、150℃の重量を起点とした1重量%重量減少時の温度である。
セルロース繊維の250℃重量減少率(T250℃)は、TG分析において、セルロース繊維を250℃、窒素フロー下で2時間保持した時の重量減少率である。
(化学修飾)
セルロース繊維は、化学修飾されたセルロース繊維であってよい。セルロース繊維は、例えば原料パルプ又はリンターの段階、解繊処理中、又は解繊処理後に予め化学修飾されたものであっても良いし、スラリー調製工程中又はその後、或いは乾燥(造粒)工程中又はその後に化学修飾されてもよい。
セルロース繊維の修飾化剤としては、セルロースの水酸基と反応する化合物を使用でき、エステル化剤、エーテル化剤、及びシリル化剤が挙げられる。好ましい態様において、化学修飾は、エステル化剤を用いたアシル化である。エステル化剤としては、酸ハロゲン化物、酸無水物、及びカルボン酸ビニルエステル、カルボン酸が好ましい。
酸ハロゲン化物は、下記式(1)で表される化合物からなる群より選択された少なくとも1種であってよい。
1−C(=O)−X (1)
(式中、R1は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数3〜24のシクロアルキル基、又は炭素数6〜24のアリール基を表し、XはCl、Br又はIである。)
酸ハロゲン化物の具体例としては、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、塩化プロピオニル、臭化プロピオニル、ヨウ化プロピオニル、塩化ブチリル、臭化ブチリル、ヨウ化ブチリル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ヨウ化ベンゾイル等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、酸塩化物は反応性と取り扱い性の点から好適に採用できる。尚、酸ハロゲン化物の反応においては、触媒として働くと同時に副生物である酸性物質を中和する目的で、アルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。アルカリ性化合物としては、具体的には:トリエチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン化合物;及びピリジン、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族化合物;が挙げられるが、これに限定されない。
酸無水物としては、任意の適切な酸無水物類を用いることができる。例えば、
酢酸、プロピオン酸、(イソ)酪酸、吉草酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸、オレイン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;
シクロヘキサンカルボン酸、テトラヒドロ安息香酸等の脂環族モノカルボン酸無水物;
安息香酸、4−メチル安息香酸等の芳香族モノカルボン酸無水物;
二塩基カルボン酸無水物として、例えば、無水コハク酸、アジピン酸等の無水飽和脂肪族ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の無水不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、無水1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸等の無水脂環族ジカルボン酸、及び、無水フタル酸、無水ナフタル酸等の無水芳香族ジカルボン酸無水物等;
3塩基以上の多塩基カルボン酸無水物類として、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の(無水)ポリカルボン酸等が挙げられる。
尚、酸無水物の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、燐酸等の酸性化合物、又はルイス酸、(例えば、MYnで表されるルイス酸化合物であって、MはB、As,Ge等の半金属元素、又はAl、Bi、In等の卑金属元素、又はTi、Zn、Cu等の遷移金属元素、又はランタノイド元素を表し、nはMの原子価に相当する整数であり、2又は3を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF3、ClO4、SbF6、PF6又はOSO2CF3(OTf)を表す。)、又はトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。
カルボン酸ビニルエステルとしては、下記式(1):
R−COO−CH=CH2 …式(1)
{式中、Rは、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数3〜16のシクロアルキル基、又は炭素数6〜24のアリール基のいずれかである。}で表されるカルボン酸ビニルエステルが好ましい。カルボン酸ビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルアジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、及び桂皮酸ビニルからなる群より選択された少なくとも1種であることがより好ましい。カルボン酸ビニルエステルによるエステル化反応のとき、触媒として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、1〜3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上を添加しても良い。
アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。 アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
1〜3級アミンとは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのことであり、具体例としては、エチレンジアミン、ジエチルアミン、プロリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
イミダゾール及びその誘導体としては、1−メチルイミダゾール、3−アミノプロピルイミダゾール、カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。
ピリジン及びその誘導体としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、ピコリン等が挙げられる。
アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられる。
カルボン酸としては、下記式(1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
R−COOH …(1)
(式中、Rは、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数2〜16のアルケニル基、炭素数3〜16のシクロアルキル基、又は炭素数6〜16のアリール基を表す。)
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、シクロヘキサンカルボン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、メタクリル酸、クロトン酸、ピバリン酸、オクチル酸、安息香酸、及び桂皮酸からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
これらカルボン酸の中でも、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸からなる群から選択される少なくとも一種、特に酢酸が、反応効率の観点から好ましい。
尚、カルボン酸の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、燐酸等の酸性化合物、又はルイス酸、(例えば、MYnで表されるルイス酸化合物であって、MはB、As,Ge等の半金属元素、又はAl、Bi、In等の卑金属元素、又はTi、Zn、Cu等の遷移金属元素、又はランタノイド元素を表し、nはMの原子価に相当する整数であり、2又は3を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF3、ClO4、SbF6、PF6又はOSO2CF3(OTf)を表す。)、又はトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。
これらエステル化反応剤の中でも、特に、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及び酪酸ビニル、酢酸からなる群から選択された少なくとも一種、中でも無水酢酸及び酢酸ビニルが、反応効率の観点から好ましい。
セルロース繊維乾燥体中のセルロース繊維が化学修飾(例えばアシル化等の疎水化によって)されている場合、乾燥体の樹脂中での分散性は良好である傾向があるが、本開示のセルロース繊維乾燥体は、非置換又は低置換度であっても樹脂中で良好な分散性を示すことができる。セルロース繊維乾燥体中のセルロース繊維がエステル化セルロース繊維である場合、アシル置換度(DS)は、熱分解開始温度が高い、エステル化セルロース繊維及びこれを含む樹脂複合体を得ることができる点で、好ましくは、0.1以上、又は0.2以上、又は0.25以上、又は0.3以上、又は0.5以上であり、エステル化セルロース繊維中に未修飾のセルロース骨格が残存するため、セルロース由来の高い引張強度及び寸法安定性と化学修飾由来の高い熱分解開始温度を兼ね備えた、エステル化セルロース繊維及びこれを含む樹脂複合体を得ることができる点で、好ましくは、1.2以下、又は1.0以下、又は0.8以下、又は0.7以下、又は0.6以下、又は0.5以下である。
化学修飾セルロース繊維の修飾基がアシル基の場合、アシル置換度(DS)は、エステル化セルロース繊維の反射型赤外吸収スペクトルから、アシル基由来のピークとセルロース骨格由来のピークとのピーク強度比に基づいて算出することができる。アシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピークは1730cm-1に出現し、セルロース骨格鎖に基づくC−Oの吸収バンドのピークは1030cm-1に出現する(図1参照)。エステル化セルロース繊維のDSは、後述するエステル化セルロース繊維の固体NMR測定から得られるDSと、セルロース骨格鎖C−Oの吸収バンドのピーク強度に対するアシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピーク強度の比率で定義される修飾化率(IRインデックス1030)との相関グラフを作製し、相関グラフから算出された検量線
置換度DS = 4.13 × IRインデックス(1030)
を使用することで求めることができる。
固体NMRによるエステル化セルロース繊維のDSの算出方法は、凍結粉砕したエステル化セルロース繊維について13C固体NMR測定を行い、50ppmから110ppmの範囲に現れるセルロースのピラノース環由来の炭素C1−C6に帰属されるシグナルの合計面積強度(Inp)に対する修飾基由来の1つの炭素原子に帰属されるシグナルの面積強度(Inf)より下記式で求めることができる。
DS=(Inf)×6/(Inp)
たとえば、修飾基がアセチル基の場合、−CH3に帰属される23ppmのシグナルを用いれば良い。
用いる13C固体NMR測定の条件は例えば以下の通りである。
装置 :Bruker Biospin Avance500WB
周波数 :125.77MHz
測定方法 :DD/MAS法
待ち時間 :75sec
NMR試料管 :4mmφ
積算回数 :640回(約14Hr)
MAS :14,500Hz
化学シフト基準:グリシン(外部基準:176.03ppm)
化学修飾セルロース繊維の繊維全体の修飾度(DSt)(これは上記のアシル置換度(DS)と同義である。)に対する繊維表面の修飾度(DSs)の比率で定義されるDS不均一比(DSs/DSt)は、好ましくは1.05以上である。DS不均一比の値が大きいほど、鞘芯構造様の不均一構造(すなわち、繊維表層が高度に化学修飾される一方で繊維中心部が元の未修飾に近いセルロースの構造を保持している構造)が顕著であり、セルロース由来の高い引張強度及び寸法安定性を有しつつ、樹脂との複合化時の樹脂との親和性の向上、及び樹脂複合体の寸法安定性の向上が可能である。DS不均一比は、より好ましくは、1.1以上、又は1.2以上、又は1.3以上、又は1.5以上、又は2.0であり、化学修飾セルロース繊維の製造容易性の観点から、好ましくは、30以下、又は20以下、又は10以下、又は6以下、又は4以下、又は3以下である。
DSsの値は、エステル化セルロース繊維の修飾度に応じて変わるが、一例として、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下、最も好ましくは1.0以下である。DStの好ましい範囲は、アシル置換基(DS)について前述したとおりである。
化学修飾セルロース繊維のDS不均一比の変動係数(CV)は、小さいほど、樹脂複合体の各種物性のバラつきが小さくなるため好ましい。上記変動係数は、好ましくは、50%以下、又は40%以下、又は30%以下、又は20%以下である。上記変動係数は、例えば、セルロース繊維原料を解繊した後に化学修飾を行って化学修飾セルロース繊維を得る方法(すなわち逐次法)ではより低減され得る一方、セルロース繊維原料の解繊と化学修飾とを同時に行う方法(すなわち同時法)では増大され得る。この作用機序は明確になっていないが、同時法では、解繊の初期に生成した細い繊維において化学修飾がより進行しやすく、そして、化学修飾によってセルロースミクロフィブリル間の水素結合が減少すると解繊がさらに進行する結果、DS不均一比の変動係数が増大すると考えられる。
DS不均一比の変動係数(CV)は、化学修飾セルロース繊維の水分散体(固形分率10質量%以上)を100g採取し、10gずつ凍結粉砕したものを測定サンプルとし、10サンプルのDSt及びDSsからDS不均一比を算出した後、得られた10個のサンプル間でのDS不均一比の標準偏差(σ)及び算術平均(μ)から、下記式で算出できる。
DS不均一比=DSs/DSt
変動係数(%)=標準偏差σ/算術平均μ×100
DSsの算出方法は以下のとおりである。すなわち、凍結粉砕により粉末化したエステル化セルロース繊維を2.5mmφの皿状試料台に載せ、表面を抑えて平らにし、X線光電子分光法(XPS)による測定を行う。XPSスペクトルは、サンプルの表層のみ(典型的には数nm程度)の構成元素及び化学結合状態を反映する。得られたC1sスペクトルについてピーク分離を行い、セルロースのピラノース環由来の炭素C2−C6帰属されるピーク(289eV、C−C結合)の面積強度(Ixp)に対する修飾基由来の1つの炭素原子に帰属されるピークの面積強度(Ixf)より下記式で求めることができる。
DSs=(Ixf)×5/(Ixp)
たとえば、修飾基がアセチル基の場合、C1sスペクトルを285eV、286eV,288eV,289eVでピーク分離を行った後、Ixpには289evのピークを、Ixfにはアセチル基のO−C=O結合由来のピーク(286eV)を用いれば良い。
用いるXPS測定の条件は例えば以下の通りである。
使用機器 :アルバックファイVersaProbeII
励起源 :mono.AlKα 15kV×3.33mA
分析サイズ :約200μmφ
光電子取出角 :45°
取込領域
Narrow scan:C 1s、O 1s
Pass Energy:23.5eV
[追加の成分]
セルロース繊維乾燥体は、セルロース繊維に加えて、分散剤、バインダー、酸化防止剤、防腐剤、増粘剤等の追加の成分を更に含んでもよい。
(分散剤)
分散剤は、樹脂中でのセルロース繊維の分散性を向上させることに寄与する。分散剤は、1種の物質でも2種以上の物質の混合物であってもよい。後者の場合、本開示の特性値(例えば融点、分子量、HLB値、SP値)は、当該混合物の値を意味する。
分散剤の融点は、セルロース繊維の周囲を分散剤がより均一にコーティングでき、セルロース繊維を樹脂中でより均一に分散させることができる点で、80℃以下、又は70℃以下であってよく、−100℃以上、又は−50℃以上であってよい。分散剤の数平均分子量は、セルロース繊維の周囲を分散剤がより均一にコーティングでき、セルロース繊維を樹脂中でより均一に分散させることができる点で、、1000以上、又は2000以上であってよく、50000以下、又は20000以下であってよい。分散剤の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用い、標準ポリスチレン換算で求められる値である。
分散剤は、セルロース繊維の凝集を抑制する観点で、水溶性ポリマーであることが好ましい。本開示で、「水溶性」とは、23℃で100gの水に対して0.1g以上溶解することを意味する。更には、分散剤は親水性セグメント及び疎水性セグメントを有する(すなわち両親媒性分子である)ことが、樹脂中にセルロース繊維をより均一に分散させる観点で更に好ましい。両親媒性分子としては、炭素原子を基本骨格とし、炭素、水素、酸素、窒素、塩素、硫黄、及びリンから選ばれる元素から構成される官能基を有するものが挙げられる。分子中に上述の構造を有していれば、無機化合物と上記官能基とが化学結合したものも好ましい。親水性セグメントは、セルロース繊維の表面との親和性が良好であり、疎水性セグメントは、親水性セグメントを介してセルロース繊維同士の凝集を抑制し、更には樹脂と相溶し易い特徴がある。そのため分散剤において親水性セグメントと疎水性セグメントとは同一分子内に存在することが好ましい。
分散剤のHLB値は、好ましくは0.1以上8.0未満である。HLB値とは、界面活性剤の疎水性と親水性とのバランスを示す値であり、1〜20までの値をとり、数値が小さいほど疎水性が強く、数値が大きいほど親水性が強いことを示す。本開示で、HLB値は、以下のグリフィン法による式より求められる値である。なお下記式において、「親水基の式量の総和/分子量」とは、親水基の質量%である。
式1) グリフィン法:HLB値=20×(親水基の式量の総和/分子量)
分散剤のHLB値の下限値は、水への易溶解性の観点から、好ましくは0.1、より好ましくは0.2、最も好ましくは1である。また、当該HLB値の上限値は、セルロース繊維の樹脂への均一分散性の観点から、好ましくは8未満、より好ましくは7.5、最も好ましくは7である。
典型的な態様において、親水性セグメントは、親水性構造(例えば水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホ基等から選ばれる1つ以上の親水性基)を含むことによって、セルロース繊維との良好な親和性を示す部分である。親水性セグメントとしては、ポリエチレングリコールのセグメント(すなわち複数のオキシエチレンユニットのセグメント)(PEGブロック)、4級アンモニウム塩構造を含む繰り返し単位が含まれるセグメント、ポリビニルアルコールのセグメント、ポリビニルピロリドンのセグメント、ポリアクリル酸のセグメント、カルボキシビニルポリマーのセグメント、カチオン化グアガムのセグメント、ヒドロキシエチルセルロースのセグメント、メチルセルロースのセグメント、カルボキシメチルセルロースのセグメント、ポリウレタンのソフトセグメント(具体的にはジオールセグメント)等を例示できる。好ましい態様において、親水性セグメントは、オキシエチレンユニットを含む。
疎水性セグメントとしては、炭素数3以上のアルキレンオキシド単位を有するセグメント(例えば、PPGブロック)、また以下のポリマー構造を含むセグメント等を例示できる:
アクリル系ポリマー、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリヘキサメチレンアジパミド(6,6ナイロン)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(6,9ナイロン)、ポリヘキサメチレンセバカミド(6,10ナイロン)、ポリヘキサメチレンドデカノアミド(6,12ナイロン)、ポリビス(4‐アミノシクロヘキシル)メタンドデカン等の、炭素数4〜12の有機ジカルボン酸と炭素数2〜13の有機ジアミンとの重縮合物、ω−アミノ酸(例えばω−アミノウンデカン酸)の重縮合物(例えば、ポリウンデカンアミド(11ナイロン)等)、ε−アミノカプロラクタムの開環重合物であるポリカプラミド(6ナイロン)、ε−アミノラウロラクタムの開環重合物であるポリラウリックラクタム(12ナイロン)等の、ラクタムの開環重合物を含むアミノ酸ラクタム、ジアミンとジカルボン酸とから構成されるポリマー、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、疎水性シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂。
好ましい態様において、分散剤は、分子内に、親水性基としてPEGブロック、及び疎水性基としてPPGブロックを有する。
分散剤は、グラフト共重合体構造、及び/又はブロック共重合体構造を有することができる。これら構造は1種単独でもよいし、2種以上でもよい。2種以上の場合は、ポリマーアロイでもよい。またこれら共重合体の部分変性体、又は末端変性体(酸変性)でも良い。
分散剤の構造は、特に限定されないが、親水性セグメントをA、疎水性セグメントをBとしたときに、AB型ブロック共重合体、ABA型ブロック共重合体、BAB型ブロック共重合体、ABAB型ブロック共重合体、ABABA型ブロック共重合体、BABAB型共重合体、AとBを含む3分岐型共重合体、AとBを含む4分岐型共重合体、AとBを含む星型共重合体、AとBを含む単環状共重合体、AとBを含む多環状共重合体、AとBを含むかご型共重合体、等が挙げられる。
分散剤の構造は、好ましくはAB型ブロック共重合体、ABA型トリブロック共重合体、AとBを含む3分岐型共重合体、又はAとBを含む4分岐型共重合体であり、より好ましくはABA型トリブロック共重合体、3分岐構造体(すなわちAとBを含む3分岐型共重合体)、又は4分岐構造体(すなわちAとBを含む4分岐型共重合体)である。セルロース繊維との良好な親和性を確保するために、分散剤の構造は上記構造であることが望ましい。
分散剤の好適例としては、親水性セグメントを与える化合物(例えば、ポリエチレングリコール)、疎水性セグメントを与える化合物(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)、ポリブタジエンジオール等)をそれぞれ1種以上用いて得られる共重合体(例えば、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのブロック共重合体、テトラヒドロフランとエチレンオキシドとのブロック共重合体)等が挙げられる。分散剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、ポリマーアロイとして用いてもよい。また、上記した共重合体が変性されたもの(例えば、不飽和カルボン酸、その酸無水物又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物により変性されたもの)も用いることもできる。
これらの中でも、耐熱性(臭気性)及び機械特性の観点から、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体、ポリエチレングリコールとポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)の共重合体、及びこれらの混合物が好ましく挙げられ、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が、取り扱い性・コストの観点からより好ましい。
典型的な態様において、分散剤は曇点を有する。親水性部位としてポリオキシエチレン鎖等のポリエーテル鎖をもつ非イオン性界面活性剤の水溶液の温度を上昇させていくと、透明又は半透明であった水溶液がある温度(この温度を曇点という)で白濁する現象がみられる。すなわち、低温で透明又は半透明である水溶液を加温した際に、ある温度を境に非イオン性界面活性剤の溶解度が急激に低下し、それまで溶けていた界面活性剤同士が凝集・白濁して、水と分離する。これは、高温になると非イオン性界面活性剤が水和力を失う(ポリエーテル鎖と水との水素結合が切れ水への溶解度が急激に下がる)ためと考えられる。曇点はポリエーテル鎖が長いほど低い傾向にある。曇点以下の温度であれば、水に任意の割合で溶解することから、曇点は、分散剤における親水性の尺度となる。
分散剤の曇点は以下の方法で測定する事ができる。音叉型振動式粘度計(例えば株式会社エー・アンド・デイ社製SV−10A)を用いて、分散剤の水溶液を0.5質量%、1.0質量%、5質量%に調整し、温度0〜100℃の範囲で測定を行う。この時、各濃度において変曲点(粘度の上昇変化、又は水溶液が曇化した点)を示した部分を曇点とする。
分散剤の曇点の下限値は、取扱い性の観点から、好ましくは10℃であり、より好ましくは20℃であり、最も好ましくは30℃である。また、当該曇点の上限値は、特に限定されないが、好ましくは120℃であり、より好ましくは110℃であり、さらに好ましくは100℃であり、最も好ましくは60℃である。セルロース繊維との良好な親和性を確保するために、分散剤の曇点は上述の範囲内にあることが望ましい。
分散剤としては、溶解パラメーター(SP値)が7.25以上であるものがより好ましい。分散剤がこの範囲のSP値を有することで、セルロース繊維の樹脂中での分散性が向上する。
SP値は、Fodersの文献(R.F.Foders:Polymer Engineering & SCienCe,vol.12(10),p.2359−2370(1974))によると、物質の凝集エネルギー密度とモル分子量の両方に依存し、またこれらは物質の置換基の種類及び数に依存していると考えられ、上田らの文献(塗料の研究、No.152、OCt.2010)によると、後述する実施例に示す既存の主要な溶剤についてのSP値(Cal/Cm31/2が公開されている。
分散剤のSP値は、実験的には、SP値が既知の種々の溶剤に分散剤を溶解させたときの、可溶と不溶の境目から求めることができる。例えば、SP値が異なる各種溶剤(10mL)に、分散剤1mLを室温においてスターラー撹拌下で1時間溶解させた場合に、全量が溶解するかどうかで判断可能である。例えば、分散剤がジエチルエーテルに可溶であった場合は、その分散剤のSP値は7.25以上となる。
分散剤(特に両親媒性分子)としては、水より高い沸点を有するものが好ましく、樹脂の融点よりも高い沸点を有するものが、樹脂中にセルロース繊維を溶融混練時に均一に分散させる観点でより好ましい。なお、水よりも高い沸点とは、水の蒸気圧曲線における各圧力における沸点(例えば、1気圧下では100℃)よりも高い沸点を指す。
分散剤として水より高い沸点を有するものを選択することにより、例えば、分散剤の存在下で、液体媒体として水を含むスラリーを乾燥させてセルロース繊維乾燥体を得る工程において、水が蒸発する過程で水と分散剤とが置換されてセルロース繊維表面に分散剤が存在するようになるため、セルロース繊維の凝集を大幅に抑制する効果を奏することができる。
なお、分散剤の添加方法は限定されず、
セルロース繊維乾燥体の製造において、乾燥工程後のセルロース繊維に分散剤を混合してセルロース繊維乾燥体を得る方法、
セルロース繊維乾燥体の製造において、セルロース繊維が液体媒体に分散してなるスラリー中に分散剤を添加した後乾燥させてセルロース繊維乾燥体を得る方法、
樹脂複合体の製造において、樹脂、セルロース繊維乾燥体又はこれを液体媒体に分散してなる再分散液、及び分散剤をあらかじめ混合し溶融混練した後、成形加工する方法、
樹脂複合体の製造において、樹脂にあらかじめ分散剤を添加し、必要により予備混練した後、セルロース繊維乾燥体又はこれを液体媒体に分散してなる再分散液を添加して溶融混練し、成形加工する方法、
等が挙げられる。
分散剤の量は、セルロース繊維100質量部に対して、5〜100質量部であることがセルロース繊維を樹脂複合体中に均一に分散させる観点で好ましく、10〜70質量部であることがより好ましく、20〜50質量部であることが最も好ましい。
一態様において、樹脂複合体中の分散剤の含有量は、それぞれ、好ましくは、0.3質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1.0質量%以上であり、好ましくは、10.0質量%以下、又は5.0質量%以下、又は3.0質量%以下である。
樹脂複合体において、分散剤の量は当業者に一般的な方法で容易に確認する事が出来る。確認方法は限定されないが、以下の方法を例示できる。樹脂複合体の破断片を用い、樹脂を溶解させる溶媒に破断片を溶解させたときの、可溶分1(樹脂及び分散剤)と不溶分1(セルロース繊維及び分散剤)を分離する。可溶分1を、樹脂を溶解させないが分散剤を溶解させる溶媒で再沈殿させ、不溶分2(樹脂)と可溶分2(分散剤)に分離する。また、不溶分1を分散剤溶解性溶媒に溶解させ、可溶分3(分散剤)と不溶分3(セルロース繊維)に分離する。可溶分2、可溶分3を濃縮(乾燥・風乾・減圧乾燥等)させることで分散剤の定量が可能である。濃縮後の分散剤について、前述の方法によって同定及び分子量の測定を行うことができる。
≪セルロース繊維乾燥体の製造方法≫
本発明の一態様はまた、本開示のセルロース繊維乾燥体の製造方法を提供する。当該方法は、セルロース繊維及び水性媒体を含むスラリーを調製するスラリー調製工程と、該スラリーを乾燥させてセルロース繊維乾燥体を形成する乾燥工程とを含む。
(スラリー調製工程)
本工程では、セルロース繊維及び液体媒体を含むスラリーを調製する。液体媒体としては、前述の水混和性有機溶媒を好適に使用できる。スラリー中のセルロース繊維の濃度は、後続の乾燥工程におけるプロセス効率の観点から、好ましくは、5質量%以上、又は10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上であり、スラリーの粘度の過度な増大、及び凝集による固化を回避して良好な取扱い性を保持する観点から、好ましくは、60質量%以下、又は55質量%以下、又は50質量%以下、又は45質量%以下である。例えば、セルロースナノファイバーの製造は希薄な分散液中で行われることが多いが、このような希薄分散液を濃縮することで、スラリー中のセルロース繊維濃度を前記好ましい範囲に調整してもよい。濃縮には、吸引ろ過、加圧ろ過、遠心脱液、加熱等の方法を用いることができる。
(乾燥工程)
本工程では、上記スラリーを、制御された乾燥条件で乾燥させることにより、セルロース繊維乾燥体を形成する。セルロース繊維乾燥体が、セルロース繊維と追加の成分とを含む場合には、セルロース繊維スラリーの乾燥前、乾燥中、及び/又は乾燥後に、当該追加の成分を添加してよい。乾燥には、上記乾燥速度を可能にする乾燥装置、例えば、スプレードライヤー、押出機等を使用できる。乾燥装置は市販品であってもよく、例えば、マイクロミストスプレードライヤー(藤崎電機製)、スプレードライヤー(大川原化工機製)、二軸押出機(日本製鋼所製)等を例示できる。乾燥条件の中でも、乾燥速度、乾燥温度、及び/又は圧力(減圧度)、特に乾燥速度を制御することは本開示のセルロース繊維乾燥体の生成に有用である。
スラリー100質量部当たりの液体媒体の1分当たりの脱離量(質量部)である乾燥速度は、スラリーを急速乾燥させることで望ましい粒子サイズのセルロース繊維乾燥体を形成する観点から、例えば、10%/分以上、又は50%/分以上、又は100%/分以上であってよく、セルロース繊維の過度な微粉化を回避することで当該セルロース繊維の凝集を抑制するとともに良好な取扱い性を得る観点から、例えば、10000%/分以下、又は1000%/分以下、又は500%/分以下であってよい。乾燥速度は、下記式:
乾燥速度(%/分)=(乾燥開始時のスラリー水分率(質量%)−乾燥終点の乾燥体の水分率(質量%))/乾燥開始から乾燥終点までに要した時間(分)
に従って求められる値(すなわち、乾燥工程を通じての平均値)である。
ここで、乾燥開始とは、乾燥対象となるスラリーまたはケークを装置に供給して目的の乾燥温度、減圧度、ずり速度で乾燥する工程を始めた時点であり、乾燥温度、減圧度、ずり速度が乾燥工程とは異なる状態で予備混合をする時間は乾燥時間に含めない。
また、乾燥終点とは、乾燥開始から長くとも10分の間隔でサンプリングを行い、水分率が初めて7質量%以下になった時点をいう。
連続式の乾燥装置の場合、乾燥開始から乾燥終点までに要した時間は、滞留時間と解釈することができる。スプレードライヤーの場合、滞留時間は加熱風量と乾燥室の容積によって計算することができる。また、押出機を乾燥装置として用いる場合、滞留時間はスクリュー回転数とスクリューの総ピッチ数から計算することができる。
乾燥温度は、乾燥効率、及びセルロース繊維を適度に凝集させて望ましい粒子サイズのセルロース繊維乾燥体を形成する観点から、例えば20℃以上、又は30℃以上、又は40℃以上、又は50℃以上であってよく、セルロース繊維及び追加の成分の熱劣化を生じ難くする観点、及びセルロース繊維の過度な微粉化を回避する観点から、例えば200℃以下、又は150℃以下、又は140℃以下、又は130℃以下、又は100℃以下であってよい。
乾燥温度は、スラリーに接触する熱源の温度であり、例えば、乾燥装置の温調ジャケットの表面温度や、加熱シリンダーの表面温度、熱風の温度で定義される。
減圧度は、乾燥効率、及びセルロース繊維を適度に凝集させて望ましい粒子サイズのセルロース繊維乾燥体を形成する観点から、−1kPa以下、又は−10kPa以下、又は−20kPa以下、又は−30kPa以下、又は−40kPa以下、又は−50kPa以下であってよく、セルロース繊維の過度な微粉化を回避する観点から、−100kPa以上、又は−95kPa以上、又は−90kPa以上であってよい。
乾燥工程において、スラリーの温度20℃〜200℃での滞留時間は、好ましくは、0.01分間〜10分間、又は0.05分間〜5分間、又は0.1分間〜2分間に設定してよい。このような条件での乾燥により、セルロース繊維が急速乾燥されて、望ましい粒子サイズのセルロース繊維乾燥体が良好に生成する。
例えばスプレードライヤ―を用いる場合には、熱ガスを流通させた乾燥室内に噴霧機構(回転ディスク、加圧ノズル等)でスラリーを噴霧導入して乾燥させる。噴霧導入時のスラリー液滴サイズは、例えば、0.01μm〜500μm、又は0.1μm〜100μm、又は0.5μm〜10μmであってよい。熱ガスは、窒素、アルゴン等の不活性ガス、空気等であってよい。熱ガス温度は、例えば、50℃〜300℃、又は80℃〜250℃、又は100℃〜200℃であってよい。乾燥室内でのスラリーの液滴と熱ガスとの接触は、並流、向流、又は並向流であってよい。液滴の乾燥により生じた粒子状のセルロース繊維乾燥体を、サイクロン、ドラム等で補集する。
また、例えば押出機を用いる場合には、スクリューを備える混練部内にホッパーよりスラリーを投入し、減圧及び/又は加熱下の混練部内でスラリーをスクリューで連続的に輸送することで当該スラリーを乾燥させる。スクリューの態様としては、搬送スクリュー、反時計回りスクリュー、及びニーディングディスクを任意の順番に組み合わせてよい。乾燥温度は、例えば、50℃〜300℃、又は80℃〜250℃、又は100℃〜200℃であってよい。
≪樹脂複合体の製造方法≫
本発明の一態様は、セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体の製造方法を提供する。該方法は、前述したような本開示のセルロース繊維乾燥体と、樹脂とを混合することを含む。
<樹脂>
樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び光硬化性樹脂を用いることができる。樹脂はエラストマーであってもよい。成形性及び生産性の観点から、熱可塑性樹脂がより好ましい。
(熱可塑性樹脂)
樹脂が熱可塑性樹脂である場合の当該熱可塑性樹脂の融点は、樹脂複合体の用途等に応じて適宜選択してよい。熱可塑性樹脂の融点としては、例えば比較的低融点の樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂)について、150℃〜190℃、又は160℃〜180℃、また例えば比較的高融点の樹脂(例えばポリアミド系樹脂)について、220℃〜350℃、又は230℃〜320℃、を例示できる。
熱可塑性樹脂は、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリアセテート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることができる。
熱可塑性樹脂として好ましいポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えばα−オレフィン類)及び/又はアルケン類をモノマー単位として重合して得られる高分子である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(例えば線状低密度ポリエチレン)、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等に例示されるエチレン系(共)重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等に例示されるポリプロピレン系(共)重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等に代表されるエチレンとα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。
ここで最も好ましいポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンが挙げられる。特に、ISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)が、3g/10分以上30g/10分以下であるポリプロピレンが好ましい。MFRの下限値は、より好ましくは5g/10分であり、さらにより好ましくは6g/10分であり、最も好ましくは8g/10分である。また、上限値は、より好ましくは25g/10分であり、さらにより好ましくは20g/10分であり、最も好ましくは18g/10分である。MFRは、樹脂複合体の靱性向上の観点から上記上限値を超えないことが望ましく、樹脂複合体の流動性の観点から上記下限値を超えないことが望ましい。
また、セルロース繊維との親和性を高めるため、酸変性されたポリオレフィン系樹脂も好適に使用可能である。酸変性に用いる酸としては、モノ又はポリカルボン酸を使用でき、例えば、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、フタル酸及びこれらの無水物、並びにクエン酸等を例示できる。変性率の高めやすさから、マレイン酸又はその無水物が特に好ましい。変性方法については特に制限はないが、過酸化物の存在下又は非存在下でポリオレフィン系樹脂を融点以上に加熱して溶融混練する方法が一般的である。酸変性するポリオレフィン樹脂としては前出のポリオレフィン系樹脂をすべて使用可能であるが、ポリプロピレンが特に好適である。酸変性されたポリプロピレン系樹脂は、単独で用いても構わないが、樹脂全体としての変性率を調整するため、変性されていないポリプロピレン系樹脂と混合して使用することがより好ましい。この際のすべてのポリプロピレン系樹脂に対する酸変性されたポリプロピレン系樹脂の割合は、好ましくは0.5質量%〜50質量%である。より好ましい下限は、1質量%、又は2質量%、又は3質量%、又は4質量%、又は5質量%である。また、より好ましい上限は、45質量%、又は40質量%、又は35質量%、又は30質量%、又は20質量%である。樹脂とセルロース繊維との界面強度を維持するためには、下限以上が好ましく、樹脂としての延性を維持するためには、上限以下が好ましい。
酸変性されたポリプロピレン系樹脂の、ISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されるメルトマスフローレイト(MFR)は、樹脂とセルロース繊維との界面における親和性を高める観点から、好ましくは、50g/10分以上、又は100g/10分以上、又は150g/10分以上、又は200g/10分以上である。上限は特に限定されないが、機械的強度の維持から、好ましくは500g/10分である。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアミド系樹脂としては:ラクタム類の重縮合反応により得られるポリアミド(例えばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等);ジアミン類(例えば1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1−6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,7−ヘプタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、m−キシリレンジアミン等)とジカルボン酸類(例えばブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ベンゼン−1,4ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸等)との共重合体として得られるポリアミド(例えばポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド9,T、ポリアミド10,T、ポリアミド2M5,T、ポリアミドMXD,6、ポリアミド6、C、ポリアミド2M5,C等);及びこれらがそれぞれ共重合された共重合体(例えばポリアミド6,T/6,I等)、が挙げられる。
これらポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12等の脂肪族ポリアミド、及び、ポリアミド6,C、ポリアミド2M5,C等の脂環式ポリアミドがより好ましい。
樹脂複合体の耐熱性を良好にする観点から、ポリアミド系樹脂の融点は、好ましくは220℃以上、又は230℃以上、又は240℃以上、又は245℃以上、又は250℃以上であり、樹脂複合体の製造容易性の観点から、上記融点は、好ましくは、350℃以下、又は320℃以下、又は300℃以下である。
ポリアミド系樹脂の末端カルボキシル基濃度に特に制限はないが、好ましくは、20μモル/g以上、又は30μモル/g以上であり、好ましくは、150μモル/g以下、又は100μモル/g以下、又は80μモル/g以下である。
ポリアミド系樹脂において、全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])は、セルロース繊維の樹脂複合体中での分散性の観点から、好ましくは、0.30以上、又は0.35以上、又は0.40以上、又は0.45以上であり、樹脂複合体の色調の観点から、好ましくは、0.95以下、又は0.90以下、又は0.85以下、又は0.80以下である。
ポリアミド系樹脂の末端基濃度は、公知の方法で調整できる。調整方法としては、ポリアミドの重合時に、所定の末端基濃度となるように末端基と反応する末端調整剤(例えば、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコール等)を重合液に添加する方法が挙げられる。
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格等の点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及び安息香酸からなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましく、酢酸が最も好ましい。
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン及びこれらの任意の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格等の点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン及びアニリンからなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましい。
ポリアミド系樹脂のアミノ末端基及びカルボキシル末端基の濃度は、1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めることができる。この方法は、精度及び簡便さの点で好ましい。より具体的には、特開平7−228775号公報に記載された方法を用い、測定溶媒として重トリフルオロ酢酸を用い、積算回数を300スキャン以上とすることが推奨される。
ポリアミド系樹脂の、濃硫酸中30℃の条件下で測定した固有粘度[η]は、樹脂複合体を例えば射出成形する際に、金型内流動性が良好で成形片の外観が良好であるという観点から、好ましくは、0.6〜2.0dL/g、又は0.7〜1.4dL/g、又は0.7〜1.2dL/g、又は0.7〜1.0dL/gである。本開示において、「固有粘度」とは、一般的に極限粘度と呼ばれている粘度と同義である。固有粘度は、96%濃硫酸中、30℃の温度条件下で、濃度の異なるいくつかの測定溶媒のηsp/cを測定し、そのそれぞれのηsp/cと濃度(c)との関係式を導き出し、濃度をゼロに外挿する方法で求められる。このゼロに外挿された値が固有粘度である。上記方法の詳細は、例えば、Polymer Process Engineering(Prentice−Hall,Inc 1994)の291ページ〜294ページ等に記載されている。上記の濃度の異なるいくつかの測定溶媒における濃度は、少なくとも4点(例えば、0.05g/dL、0.1g/dL、0.2g/dL、0.4g/dL)とすることが精度の観点から望ましい。
熱可塑性樹脂として好ましいポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアリレート(PAR)等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。中でも、PET、PBS、PBSA、PBT及びPENがより好ましく、PBS、PBSA、及びPBTが特に好ましい。
ポリエステル系樹脂の末端基は、重合時のモノマー比率、末端安定化剤の添加の有無及び量、等によって任意に変えることができる。ポリエステル系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])は、樹脂複合体中のセルロース繊維の分散性の観点から、好ましくは、0.30以上、又は0.35以上、又は0.40以上、又は0.45以上であり、樹脂複合体の色調の観点から、好ましくは、0.95以下、又は0.90以下、又は0.85以下、又は0.80以下である。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアセタール系樹脂としては、ホルムアルデヒドを原料とするホモポリアセタールと、トリオキサンを主モノマーとし、1,3−ジオキソランをコモノマー成分として含むコポリアセタールとが一般的であり、両者とも使用可能であるが、加工時の熱安定性の観点から、コポリアセタールが好ましい。コモノマー成分(例えば1,3−ジオキソラン)由来構造の量は、押出加工及び成形加工時の熱安定性の観点から、好ましくは、0.01モル%以上、又は0.05モル%以上、又は0.1モル%以上、又は0.2モル%以上であり、機械的強度の観点から、好ましくは、4.0モル%以下、又は3.5モル%以下、又は3.0モル%以下、又は2.5モル%以下、又は2.3モル%以下である。
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、フェノキシ樹脂、尿素(ユリア)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環含有樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ノルボルネン系樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアゾメチン樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
(光硬化性樹脂)
光硬化性樹脂としては、(メタ)アクリレート樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、反応機構により、概ね光により発生したラジカルによりモノマーが反応するラジカル反応型と、モノマーがカチオン重合するカチオン反応型とに分類される。ラジカル反応型のモノマーには、(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物(例えばある種のビニルエーテル)等が該当する。カチオン反応型としては、エポキシ化合物、ある種のビニルエーテル等が該当する。なお、例えば、カチオン反応型として用いることができるエポキシ化合物は、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂の両者のモノマーとなり得る。
(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリレート基を分子内に一つ以上有する化合物である。(メタ)アクリレート化合物としては、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
ビニル化合物としては、ビニルエーテル、スチレン及びスチレン誘導体等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。スチレン誘導体としては、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。その他のビニル化合物としては、トリアリルイソイシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
光硬化性樹脂の原料として、いわゆる反応性オリゴマーを用いてもよい。反応性オリゴマーとしては、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、ウレタン結合、及びエステル結合から選ばれる任意の組合せを同一分子内に併せ持つオリゴマー、例えば、(メタ)アクリレート基とウレタン結合とを同一分子内に併せ持つウレタンアクリレート、(メタ)アクリレート基とエステル結合とを同一分子内に併せ持つポリエステルアクリレート、エポキシ樹脂から誘導され、エポキシ基と(メタ)アクリレート基とを同一分子内に併せ持つエポキシアクリレート、等が挙げられる。
(エラストマー)
エラストマー(すなわちゴム)としては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、改質天然ゴム(エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム、脱タンパク天然ゴム等)、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
樹脂が熱可塑性樹脂である場合、セルロース繊維(本開示の乾燥体、又はこれを分散媒中に分散させてなる再分散液の形態であってよい)を熱可塑性樹脂と溶融混練して樹脂複合体を製造できる。樹脂複合体のより具体的な製造方法としては、
−樹脂モノマーとセルロース繊維とを混合し、重合反応を行い、得られた樹脂複合体をストランド状に押出し、水浴中で冷却固化させ、ペレット状成形体を得る方法、
−単軸又は二軸押出機を用いて、樹脂とセルロース繊維との混合物を溶融混練し、ストランド状に押出し、水浴中で冷却固化させ、ペレット状成形体を得る方法、
−単軸又は二軸押出機を用いて、樹脂とセルロース繊維との混合物を溶融混練し、棒状又は筒状に押出し冷却して押出成形体を得る方法、
−単軸又は二軸押出機を用いて、樹脂とセルロース繊維との混合物を溶融混練し、Tダイより押出しシート、又はフィルム状の成形体を得る方法、
等が挙げられる。好ましい態様においては、単軸又は二軸押出機を用いて、樹脂とセルロース繊維との混合物を溶融混練し、ストランド状に押出し、水浴中で冷却固化させ、ペレット状成形体を得る。
樹脂とセルロース繊維の溶融混練方法の具体例としては、樹脂と、所望の比率で搬送されたセルロース繊維とを混合した後、溶融混練する方法が挙げられる。
溶融混練には、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用できるが、二軸押出機がセルロース繊維の分散性を制御する上で好ましい。押出機のシリンダー長(L)をスクリュー径(D)で除したL/Dは、30以上が好ましく、特に好ましくは40以上である。また、混練時のスクリュー回転数は、50〜800rpmの範囲が好ましく、より好ましくは100〜600rpmの範囲内である。
押出機のシリンダー内の各スクリューは、楕円形の二翼のねじ形状の搬送スクリュー、ニーディングディスクと呼ばれる混練エレメント、等を組み合わせて最適化される。
樹脂が熱可塑性樹脂である場合、熱可塑性樹脂供給業者が推奨する最低加工温度は、ナイロン66では255〜270℃、ナイロン6では225〜240℃、ポリアセタール樹脂では170℃〜190℃、ポリプロピレンでは160〜180℃である。加熱設定温度は、これらの推奨最低加工温度より20℃高い温度の範囲が好ましい。混合温度をこの温度範囲とすることにより、セルロース繊維と樹脂とを均一に混合することができる。
樹脂として熱可塑性樹脂を含む樹脂複合体は、種々の形状での提供が可能である。具体的には、樹脂ペレット状、シート状、繊維状、板状、棒状等が挙げられるが、樹脂ペレット形状が、後加工の容易性や運搬の容易性からより好ましい。この際の好ましいペレット形状としては、丸型、楕円型、円柱型などが挙げられ、これらは押出加工時のカット方式により異なる。アンダーウォーターカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは、丸型になることが多く、ホットカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは丸型又は楕円型になることが多く、ストランドカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは円柱状になることが多い。丸型ペレットの場合、その好ましい大きさは、ペレット直径として1mm以上、3mm以下である。また、円柱状ペレットの場合の好ましい直径は、1mm以上3mm以下であり、好ましい長さは、2mm以上10mm以下である。上記の直径及び長さは、押出時の運転安定性の観点から、下限以上とすることが望ましく、後加工での成形機への噛み込み性の観点から、上限以下とすることが望ましい。
樹脂として熱可塑性樹脂を含む樹脂複合体は、種々の樹脂成形体として利用が可能である。樹脂成形体の製造方法に関しては特に制限はなく、いずれの製造方法でも構わないが、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、インフレーション成形法、発泡成形法などが使用可能である。これらの中では射出成形法がデザイン性とコストの観点より、最も好ましい。
樹脂が熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂である場合、例えば、樹脂溶液又は樹脂粉末分散体中にセルロース繊維を十分に分散させて乾燥する方法、樹脂モノマー液中にセルロース繊維を十分に分散させて熱、UV照射、重合開始剤等によって重合する方法、セルロース繊維乾燥体に樹脂溶液又は樹脂粉末分散体を十分に含浸させて乾燥する方法、セルロース繊維乾燥体に樹脂モノマー液を十分に含浸させて熱、UV照射、重合開始剤等によって重合する方法等によって、樹脂複合体を製造できる。硬化に際し、種々の重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、重合禁止剤等を配合することができる。
樹脂が熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂である場合、未硬化又は半硬化のプリプレグと呼ばれるシートを作製した後、プリプレグを単層又は積層にして、加圧及び加熱によって樹脂を硬化及び成形する方法を用いてよい。加圧及び加熱の方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法等が挙げられる。
樹脂が光硬化性樹脂である場合、活性エネルギー線を用いた各種硬化方法を用いて樹脂複合体を製造できる。
樹脂がエラストマーである場合、セルロース繊維乾燥体と原料ゴムとを乾式で混練する方法、セルロース繊維と原料ゴムとを分散媒中に分散又は溶解させた後、乾燥させて混合する方法等によって、樹脂複合体を製造できる。混合方法としては、高い剪断力と圧力とをかけ、分散を促進できる点で、ホモジナイザーによる混合方法が好ましいが、その他、プロペラ式攪拌装置、ロータリー攪拌装置、電磁攪拌装置、手動による攪拌、等の方法を用いることもできる。エラストマーを含む樹脂複合体を、金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等の所望の成形方法を用いて成形し、シート、ペレット、粉末等の所望の形状の未加硫の成形体を得ることができる。未加硫の成形体を、必要に応じて熱処理等で加硫して、樹脂複合体を得ることができる。
熱可塑性樹脂又はエラストマーを含む樹脂複合体は、その一部(例えば数箇所)を加熱処理して溶融させ、例えば樹脂又は金属の基板に接着して用いても構わない。また、樹脂複合体は、樹脂又は金属の基板に塗布された塗膜であってもよく、基板との積層体を形成してもよい。また、シート状、フィルム状又は繊維状の樹脂複合体には、アニール処理、エッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理、シボ転写、切削、表面研磨等の二次加工を行っても構わない。
樹脂複合体において、樹脂100質量部に対するセルロース繊維の量は、加工性と機械的特性のバランスの観点から、好ましくは、0.001質量部以上、又は0.01質量部以上、又は0.1質量部以上、又は1質量部以上であってよく、好ましくは、100質量部以下、又は80質量部以下、又は70質量部以下、又は50質量部以下であってよい。
樹脂複合体の引張破断伸度は、一態様において、5%以上、又は8%以上、又は10%以上であることができる。引張破断伸度は、樹脂複合体の製造容易性の観点から、一態様において、200%以下、又は100%以下、又は50%以下であってよい。
本発明を実施例に基づいて更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
≪セルロース繊維スラリーの製造≫
[CNF−A]
市販のセリッシュKY100G(ダイセルファインケム製)をCNF−Aケーキとして使用した。
[CNF−B](アセチル化CNF)
コットンリンターパルプを1質量部、一軸撹拌機(アイメックス社製 DKV−1 φ125mmディゾルバー)を用いジメチルスルホキサイド(DMSO)30質量部中で500rpmにて1時間、常温で攪拌した。続いて、ホースポンプでビーズミル(アイメックス社製 NVM−1.5)にフィードし、DMSOのみで180分間循環運転させ、微細セルロース繊維スラリーとして、固形分率3.2質量%のスラリーS1(DMSO溶媒)を得た。
循環運転の際、ビーズミルの回転数は2500rpm、周速12m/sとし、用いたビーズはジルコニア製で、φ2.0mm、充填率70%とした(ビーズミルのスリット隙間は0.6mmとした)。また、循環運転の際は、摩擦による発熱を吸収するためにチラーによりスラリー温度を40℃に温度管理した。
スラリーS1を防爆型ディスパーザータンクに投入した後、酢酸ビニル3.2質量部、炭酸水素ナトリウム0.49質量部を加え、タンク内温度を50℃とし、120分間撹拌を行い、固形分率2.9質量%のスラリー(DMSO溶媒)を得た。
反応を停止するため、純水30質量部を加えて十分に撹拌した後、脱水機に入れて濃縮した。得られたウェットケーキを再度30質量部の純水に分散、撹拌、濃縮する洗浄操作を合計5回繰り返すことで、未反応試薬及び溶媒等を除去し、固形分率10質量%のアセチル化された微細セルロース繊維ケーキ(CNF−Bケーキ)(水溶媒)を10質量部得た。このケーキから多孔質シートを作製してアシル置換度(DS)を求めたところ、DS=1.0であった。
[CNF−C](ディスクリファイナー処理をしたCNF)
コットンリンターパルプ3質量部を水27質量部に浸漬させてオートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行った。得られた膨潤パルプは水洗し、水を含む精製パルプ(30質量部)を得た。つづいて、水を含む精製パルプ30質量部に水を170質量部入れて水中に分散させて(固形分率1.5質量%)、ディスクリファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmで該水分散体を20分間叩解処理した。そして、脱水機により固形分率10質量%まで濃縮し、CNF−Cケーキ(水溶媒)を得た。
[CNF−D](CNF−Cを更に高圧ホモジナイザーで解繊処理したもの)
CNF−Cケーキを、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で徹底的に叩解を行い、叩解水分散体(固形分濃度:1.5質量%)を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NSO15H)を用いて操作圧力100MPa下で15回微細化処理し、セルロース繊維スラリー(固形分濃度:1.5質量%)を得た。そして、脱水機により固形分率10質量%まで濃縮し、CNF−Dケーキ(水溶媒)を得た。
[CNF−E](アセチル化CNF)
反応時間を60分とした以外はCNF−Bと同様にして製造した。このケーキから多孔質シートを作製してアシル置換度(DS)を求めたところ、DS=0.5であった。
<樹脂>
ポリアミド6(宇部興産製:1013B)
<分散剤>
ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体(PEG−PPG)(三洋化成製:GL−3000)
≪セルロース繊維乾燥体の製造≫
セルロース繊維ケーキ(固形分質量10%)に、セルロース固形分100質量部に対して43質量部となる量で分散剤を加え、よく撹拌し、分散剤を配合したセルロース繊維ケーキを得た(後述のMMSD以外について)。又は、セルロース繊維ケーキ(固形分質量10%)を固形分質量1%になるように蒸留水で希釈した後、セルロース固形分100質量部に対して43質量部となる量で分散剤を加え、よく撹拌してセルロース繊維スラリーを得た(後述のMMSDについて)。これらを原料として乾燥装置に投入し、所定のずり速度、減圧度、加熱温度(ジャケット温度又は熱風温度)にて乾燥を実施した。赤外加熱式水分計(MX−50(エー・アンド・デイ製))を用いて水分率を測定し、水分率が7質量%以下(固形分質量93%以上)になった時間を乾燥の終点とした。条件は以下のとおりである。
[レーディゲミキサー(LM)]
装置:中央機工(株)製レーディゲミキサー(型番:VT−20)
条件:ジャケット温度100℃、アジテーター(周速1m/s)、チョッパー(3000rpm)で撹拌しながら、真空ポンプで−90kPaまで減圧した。品温が50℃に達するまで減圧乾燥を実施した。
クリアランスとしては、チョッパー(径100mm)とジャケットとの間の最小距離を測定した。
本条件における乾燥時間は、160分であった。
乾燥温度は、ジャケットの表面温度を3点計測し、その平均値とした。
[ハイスピードバキュームドライヤー(HSVD)]
装置:(株)アーステクニカ製ハイスピードバキュームドライヤー(型番:FS10)
条件:ジャケット温度70℃、アジテーター(周速2m/s)、チョッパー(3500rpm)で撹拌しながら、真空ポンプで−70kPaまで減圧した。品温が60℃に達するまで減圧乾燥を実施した。
クリアランスとしては、チョッパー(径100mm)とアジテーターとの間の最小距離を測定した。
本条件における乾燥時間は、180分であった。
乾燥温度は、ジャケットの表面温度を3点計測し、その平均値とした。
[FMミキサー(HM)]
装置:日本コークス工業(株)製FMミキサー(型番:FM20)
条件:ジャケット温度80℃、撹拌羽根(500rpm)で撹拌しながら、真空ポンプで−70kPaまで減圧した。品温が70℃に達するまで減圧乾燥を実施した。
クリアランスとしては、上段の撹拌羽(径400mm)とジャケットとの間の最小距離を測定した。
本条件における乾燥時間は、180分であった。
乾燥温度は、ジャケットの表面温度を3点計測し、その平均値とした。
[パドルドライヤー(PD)]
装置:(株)奈良機械製作所製パドルドライヤー(型番:NPD−1.6W−12L)
条件:加熱蒸気温度120℃、撹拌羽根(30rpm)で撹拌しながら品温が100℃に達するまで乾燥を実施した。
クリアランスとしては、撹拌羽(径250mm)とジャケットとの間の最小距離を測定した。
本条件における乾燥時間は、50分であった。
乾燥温度は、加熱蒸気を流通させた撹拌羽の表面温度を3点計測し、その平均値とした。
[マイクロミストスプレードライヤー(MMSD)]
装置:藤崎電気(株)製マイクロミストスプレードライヤー(型番:MDL050−M)
条件:セルロース繊維スラリーを、入口温度200℃、給気風量1m3/min、ノズルエア流量80NL/min、スラリー50mL/minで乾燥し、サイクロン式回収器にて乾燥粉を回収した。
本装置におけるずり速度は、撹拌機構等を持たないため、実質的に発生しないものとした。
本条件における乾燥時間及び滞留時間は、1分であった。
乾燥温度は、乾燥処理中に、熱風の入口温度を3回計測し、その平均値とした。
[二軸押出機(Ex−dry)]
装置:株式会社日本製鋼所製二軸押出機(型番:TEX54αIII:L/D=63)
条件:シリンダー温度200℃、66rpmでスクリューを回転させながら、重量式フィーダーを用いて20kg/hで原料を最上段のバレルに供給し、吐出口から乾燥粉を得た。
クリアランスとしては、ニーディングディスク(径54mm)とシリンダーとの間の最小距離を測定した。
本条件における乾燥時間及び滞留時間は、1分であった。
乾燥温度は、最も下流のニーディングディスクが配置されているシリンダーの温度を3回計測し、その平均値とした。
[プラネタリーミキサー(PM)]
装置:株式会社小平製作所製プラネタリーミキサー(型番:ACM−5LVT:フック型)
条件:ジャケット温度60℃、307rpmで撹拌しながら、真空ポンプで−90kPaまで減圧した。品温が50℃に達するまで減圧乾燥を実施した。
クリアランスとしては、フック羽(径100mm)とジャケットとの間の最小距離を測定した。
本条件における乾燥時間は、180分であった。
乾燥温度は、ジャケットの表面温度を3点計測し、その平均値とした。
[実施例1〜12、比較例8]
表1に示すCNFを用い、上記装置を表2に示すように用い、CNF、乾燥温度、及びずり速度を表3及び4に示すとおりとして、セルロース繊維乾燥体を得た。なお、実施例12については、原料の調製において、分散剤を用いずにセルロース繊維スラリーを得た。
≪樹脂複合体の製造≫
上記で製造したセルロース繊維乾燥体と、熱可塑性樹脂(宇部興産株式会社製 UBEナイロン 1013B)とを、セルロース繊維が樹脂複合体中の10質量%となる割合で配合し、下記手順で樹脂複合体を製造した。
[押出機の構成]
シリンダーブロック数が13個ある二軸押出機(STEER社製 OMEGA30H、L/D=60)のシリンダー1を水冷、シリンダー2を80℃、シリンダー3を150℃、シリンダー4〜ダイスを250℃に設定した。
スクリュー構成としては、シリンダー1〜3を搬送スクリューのみで構成される搬送ゾーンとし、シリンダー4に上流側より2個の時計回りニーディングディスク(送りタイプニーディングディスク:以下、単にRKDと呼ぶことがある。)、2個のニュートラルニーディングディスク(無搬送タイプニーディングディスク:以下、単にNKDと呼ぶことがある。)を順に配した。シリンダー5は搬送ゾーンとし、シリンダー6に1個のRKD及び引き続いての2個のNKDを配し、シリンダー7及び8は搬送ゾーンとし、シリンダー9に2個のNKDを配した。続くシリンダー10は搬送ゾーンとし、シリンダー11に2個のNKD、引き続いての1個の反時計回りスクリューを配し、シリンダー12及び13は搬送ゾーンとした。なお、シリンダー12にはシリンダー上部にベントポートを設置し減圧吸引できるようにし、真空吸引を実施した。
セルロース繊維乾燥体と熱可塑性樹脂とを混合し、二軸押出機を用いて250rpmの回転数で溶融混練してストランド状に押出し、水冷・切断しペレットとして得た。得られたペレットを、付属の射出成形機にて260℃で溶融し、JIS K7127規格のダンベル状試験片を作製し、評価に用いた。
≪評価≫
<セルロース繊維の評価>
[多孔質シートの作製]
まず、ウェットケーキをtert−ブタノール中に添加し、さらにミキサー等で凝集物が無い状態まで分散処理を行った。セルロース繊維固形分重量0.5gに対し、濃度が0.5質量%となるように調整した。得られたtert−ブタノール分散液100gをろ紙上で濾過し、150℃にて乾燥させた後、ろ紙を剥離してシートを得た。このシートの透気抵抗度がシート目付10g/m2あたり100sec/100ml以下のものを多孔質シートとし、測定サンプルとして使用した。
23℃、50%RHの環境で1日静置したサンプルの目付W(g/m2)を測定した後、王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)を用いて透気抵抗度R(sec/100ml)を測定した。この時、下記式に従い、10g/m2目付あたりの値を算出した。
目付10g/m2あたり透気抵抗度(sec/100ml)=R/W×10
[アシル置換度(DS)]
多孔質シートの5か所のATR−IR法による赤外分光スペクトルを、フーリエ変換赤外分光光度計(JASCO社製 FT/IR−6200)で測定した。赤外分光スペクトル測定は以下の条件で行った。
積算回数:64回、
波数分解能:4cm-1
測定波数範囲:4000〜600cm-1
ATR結晶:ダイヤモンド、
入射角度:45°
得られたIRスペクトルよりIRインデックスを、下記式(1):
IRインデックス= H1730/H1030・・・(1)
に従って算出した。式中、H1730及びH1030は1730cm-1、1030cm-1(セルロース骨格鎖C−O伸縮振動の吸収バンド)における吸光度である。ただし、それぞれ1900cm-1と1500cm-1を結ぶ線と800cm-1と1500cm-1を結ぶ線をベースラインとして、このベースラインを吸光度0とした時の吸光度を意味する。
そして、各測定場所の平均置換度をIRインデックスより下記式(2)に従って算出し、その平均値をDSとした。
DS=4.13×IRインデックス・・・(2)
[結晶化度]
多孔質シートのX線回折測定を行い、下記式より結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=[I(200)−I(amorphous)]/I(200)×100
(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
(X線回折測定条件)
装置 MiniFlex(株式会社リガク製)
操作軸 2θ/θ
線源 CuKα
測定方法 連続式
電圧 40kV
電流 15mA
開始角度 2θ=5°
終了角度 2θ=30°
サンプリング幅 0.020°
スキャン速度 2.0°/min
サンプル:試料ホルダー上に多孔質シートを貼り付け
[平均繊維径]
セルロース繊維ケーキ又はセルロース繊維スラリーをtert−ブタノールで0.01質量%まで希釈し、高剪断ホモジナイザー(IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い、処理条件:回転数25,000rpm×5分間で分散させ、マイカ上にキャストし、風乾したものを、高分解能走査型電子顕微鏡で測定した。測定は、少なくとも100本のセルロース繊維が観測されるように倍率を調整して行い、無作為に選んだ100本のセルロース繊維の長径(L)を測定し、100本のセルロース繊維の加算平均を算出した。
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びMw/Mn比]
多孔質シートを0.88g秤量し、ハサミで小片に切り刻んだ後、軽く攪拌したうえで、純水20mLを加え1日放置した。次に遠心分離によって水と固形分を分離した。続いてアセトン20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。次に遠心分離によってアセトンと固形分を分離した。続いてN、N−ジメチルアセトアミド20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。再度、遠心分離によってN、N−ジメチルアセトアミドと固形分を分離したのち、N,N−ジメチルアセトアミド20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。遠心分離によってN,N−ジメチルアセトアミドと固形分を分離し、固形分に塩化リチウムが8質量パーセントになるように調液したN,N−ジメチルアセトアミド溶液を19.2g加え、スターラーで攪拌し、目視で溶解するのを確認した。セルロース繊維を溶解させた溶液を0.45μmフィルターでろ過し、ろ液をゲルパーミエーションクロマトグラフィ用の試料として供した。用いた装置と測定条件は下記である。
装置 :東ソー社 HLC−8120
カラム:TSKgel SuperAWM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
検出器:RI検出器
溶離液:N、N−ジメチルアセトアミド(塩化リチウム0.2%)
流速:0.6mL/分
検量線:プルラン換算
[アルカリ可溶多糖類平均含有率]
アルカリ可溶多糖類含有率はセルロース繊維について非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92〜97頁、2000年)に記載の手法より、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求めた。1つのサンプルにつき3回アルカリ可溶多糖類含有率を算出し、算出したアルカリ可溶多糖類含有率の数平均をセルロース繊維のアルカリ可溶多糖類平均含有率とした。
<セルロース繊維乾燥体の評価>
ホソカワミクロン株式会社製パウダーテスター(型番:PT−X)を用いて測定を行った。
[安息角]
水平に設置した直径80mmのステンレス製計測台の中心に、薬さじを用いて、セルロース繊維乾燥体100gを約10g/分にて漏斗(ステンレス製、上側開口径70mm、下側開口径7mm、傾斜角60°)経由で漏斗の下側開口部と計測台の間が110mmとなる高さから静かに落とし、計測台上にセルロース繊維乾燥体を円錐形状に堆積させた。円錐形状を真横から写真撮影し、円錐の母線と水平面との間の角度を測定した。3回の測定の数平均値を安息角とした。
[崩潰角]
安息角を測定した試料に対して、計測台と同じ台座上にある109gの分銅を160mmの高さから2秒の間隔で3回落下させた後、試料の円錐形状を真横から写真撮影し、円錐の母線と水平面との間の角度を測定した。3回の測定の数平均値を崩潰角とした。
[差角]
安息角と崩潰角との差を差角として算出した。
[ゆるめ嵩密度]
ステンレス製100mL(内径50.46mm×深さ50mm)有底円筒容器にセルロース繊維乾燥体を薬さじを用いて10g/分にて溢れる量まで入れ、当該乾燥体をすり切り後、0.01gの位で重量を測定した。当該重量の3回の測定の数平均値を上記有底円筒容器の内容積で除して、ゆるめ嵩密度として算出した。
[あつめ嵩密度]
ゆるめ嵩密度で用いたのと同様の有底円筒容器の上部に、十分な容量の樹脂製アダプター(内径50.46mm×長さ40mm)を密着するように接続し、ゆるめ嵩密度の測定と同様の手順でセルロース繊維乾燥体を溢れる量まで入れた後、アダプターを接続したまま有底円筒容器に、回転軸に偏心錘を取り付けたモーターで振幅1.5mm、50Hzの振動を30秒間与えた。続いて、アダプターを除き、乾燥体をすり切り後、0.01gの位で重量を測定した。当該重量の3回の測定の数平均値を上記有底円筒容器の内容積で除して、あつめ嵩密度として算出した。
[圧縮度]
上記のあつめ嵩密度及びゆるめ嵩密度の値から、下記式:
圧縮度=(あつめ嵩密度−ゆるめ嵩密度)/あつめ嵩密度
に従って圧縮度を算出した。
[水分率]
赤外加熱式水分計(MX−50(エー・アンド・デイ製))を用いて測定を行った。
[粒度分布]
精秤したφ100mmの篩を、精秤したφ100mmの受け器に、目開き710μm、1000μm、1700μmの順に重ね、最上の篩上に1〜20gの範囲で精秤したセルロース繊維乾燥体を入れた後、振幅1.5mm、振幅50Hzの振動を10分間与えた。続いて、分画された試料を篩ごと精秤し、各分画の重量分率を計算して、粒度分布を得た。
[スクリーンメッシュ評価]
ダイアダプターとダイヘッドの間に50メッシュのスクリーンメッシュを取り付けた状態で押出機を吐出量20kg/hで1時間運転し、スクリーンメッシュにて補足された粒子の量を下記の3段階で評価した。
A ・・・ ほとんど補足されなかった
B ・・・ 一部の粒子が補足され、スクリーンメッシュの交換が必要
C ・・・ 運転完了前にダイ圧が上昇し、スクリーンメッシュの交換が必要になった
<樹脂複合体の評価>
[引張破断伸度、曲げ弾性率]
得られたペレットから、射出成形機を用いて、JIS K6920−2に準拠した条件で成形を行い、ISO294−3に準拠した多目的試験片を成形した。
多目的試験片について、ISO527に準拠して引張破断伸度、並びにISO179に準拠して曲げ弾性率を測定した。なお、ポリアミド樹脂は、吸湿による変化が起きるため、成形直後にアルミ防湿袋に保管し、吸湿を抑制した。
結果を表1に示す。
Figure 2021169577
Figure 2021169577
Figure 2021169577
Figure 2021169577
本発明が提供し得る高靭性の樹脂複合体は、種々の樹脂成形体用途に好適に適用され得る。

Claims (19)

  1. セルロース繊維を含み、安息角40°〜60°、差角10°以下、ゆるめ嵩密度0.01g/cm3〜0.40g/cm3、あつめ嵩密度0.1g/cm3〜0.55g/cm3、及び圧縮度20%〜40%を有し、粒径710μm以下の粒子成分の含有率が50質量%〜90質量%である、セルロース繊維乾燥体。
  2. 粒径710μm超1000μm以下の粒子成分の含有率が10質量%〜30質量%である、請求項1に記載のセルロース繊維乾燥体。
  3. 粒径1000μm超の粒子成分の含有率が1質量%〜10質量%である、請求項1又は2に記載のセルロース繊維乾燥体。
  4. 前記セルロース繊維の数平均繊維径が2nm〜1000nmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロース繊維乾燥体。
  5. 前記セルロース繊維の平均繊維長(L)/繊維径(D)比が30〜5000である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロース繊維乾燥体。
  6. 前記セルロース繊維が、重量平均分子量(Mw)100000以上、及び重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比6以下を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロース繊維乾燥体。
  7. 前記セルロース繊維の結晶化度が60%以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセルロース繊維乾燥体。
  8. 前記セルロース繊維のアルカリ可溶多糖類含有率が、20質量%以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセルロース繊維乾燥体。
  9. 前記セルロース繊維が化学修飾されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のセルロース繊維乾燥体。
  10. 前記化学修飾が、エステル化である、請求項9に記載のセルロース繊維乾燥体。
  11. 前記エステル化が、アセチル化である、請求項10に記載のセルロース繊維乾燥体。
  12. 前記セルロース繊維の平均置換度(DS)が0.1〜1.2である、請求項9〜11のいずれか一項に記載のセルロース繊維乾燥体。
  13. 水分率が30質量%以下である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のセルロース繊維乾燥体。
  14. 分散剤を更に含み、
    前記分散剤が、HLB値0.1以上、8.0未満、融点80℃以下、及び数平均分子量1000〜50000を有する化合物である、請求項1〜13のいずれか一項に記載のセルロース繊維乾燥体。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項に記載のセルロース繊維乾燥体の製造方法であって、
    セルロース繊維と水性媒体とを含むスラリーを調製するスラリー調製工程、及び
    前記スラリーを、乾燥速度10%/分〜10000%/分の条件下で乾燥させてセルロース繊維乾燥体を形成する乾燥工程、
    を含む、方法。
  16. 前記乾燥工程を、乾燥温度20℃〜200℃での滞留時間が0.01分間〜10分間である連続プロセスで行う、請求項15に記載の方法。
  17. セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体の製造方法であって、
    請求項1〜16のいずれか一項に記載のセルロース繊維乾燥体と、樹脂とを混合することを含み、
    前記樹脂複合体の引張破断伸度が、8%以上である、方法。
  18. 前記樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項17に記載の方法。
  19. 前記熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である、請求項18に記載の方法。
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