JP2021169207A - 不燃木材の加飾物品の製造方法および加飾物品、並びに不燃木材の表面処理済物品の製造方法および表面処理済物品 - Google Patents

不燃木材の加飾物品の製造方法および加飾物品、並びに不燃木材の表面処理済物品の製造方法および表面処理済物品 Download PDF

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安美 中田
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寛峰 山本
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Abstract

【課題】不燃木材の白華現象を抑制することができ、かつ白華現象による印刷画像の劣化を抑制する不燃木材の加飾物品の製造方法および加飾物品、並びに不燃木材の表面処理済物品の製造方法および表面処理済物品を提供する。【解決手段】木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する表面処理液塗布工程と、表面処理液が塗布された不燃木材に対してインクジェット印刷を施す印刷工程とを含み、表面処理液塗布工程において、不燃木材に塗布される表面処理液の量を50g/m2以下とする。【選択図】なし

Description

本発明は、不燃処理を施した不燃木材に対してインクジェット印刷して加飾する不燃木材の加飾物品の製造方法および不燃木材に加飾した加飾物品、並びに不燃木材の表面処理済物品の製造方法および表面処理済物品に関するものである。
従来、ホウ素系(ホウ砂およびホウ酸など)やリン酸系(リン酸アンモニウムなど)等の不燃薬剤を木材に浸透注入して製造される不燃木材が提案されている(たとえば特許文献1参照)。このような不燃木材は、たとえば建築部材として用いることによって火災を防止することができる。
特開2018−103452号公報 特開2018−70758号公報
ここで、上述したように不燃木材をたとえば建築部材として用いる場合、不燃木材に対してインクなどを用いて加飾できればその用途が広がり好ましい。しかしながら、特許文献1には、不燃木材に対して加飾することについては何も触れられていない。
不燃木材の原材料の木材には、水を通す役割を持つ管(導管)が存在する。不燃木材にもこの管は存在し、たとえば水性インクを用いて直接インクジェット印刷した場合、板状に加工された木材表面では、導管の内部が剥き出しになっているため、導管に沿って滲みが生じ、細線再現性が低下する。
一方で、たとえば特許文献2においては、不燃木材ではないが、通常の木材に直接インクジェット印刷を施した際の上記滲みを抑制するため、木材の表面に対して表面処理液を塗布して表面処理層を形成し、その表面処理層上にインクジェット印刷を行う方法が提案されている。
したがって、不燃木材にインクジェット印刷を施す場合においても、インクジェット印刷の前に、不燃木材に対して表面処理液を塗布して表面処理層を形成することが考えられる。
しかしながら、出願人の実験によれば、不燃木材に対して表面処理液を塗布した場合、白華現象が生じることが分かった。
具体的には、上述したようにホウ素系またはリン酸系の不燃薬剤で不燃処理して不燃木材を製造する際、助剤が加えられるが、その助剤として加えた薬剤が高い吸湿性を有するため、表面処理液を塗布した結果、析出した結晶で表面が白くなる白華現象を起こすことが分かった。助剤は、ホウ素またはリン酸系の水への溶解度を高め、不燃木材への不燃薬剤の浸透を促進させるために用いられる薬剤であり、たとえばリン酸2アンモニウムなどのアンモニウム塩が用いられる。このような助剤は水分子との親和性が高く、表面処理液に含まれる水と反応するため、上述した白華現象が発生する。
そして、白華現象が生じたままインクジェット印刷を施したのでは、析出した結晶によって印刷画像の品質が低下してしまう。また、白華現象によって析出した結晶は、不燃木材から容易に取り除くことができず、無理に取り除いた場合、表面に跡が残り加飾物品の品質を低下させてしまう。
本発明は、不燃木材の白華現象を抑制することができ、かつ白華現象による印刷画像の劣化を抑制することができる不燃木材の加飾物品の製造方法および加飾物品、並びに不燃木材の表面処理済物品の製造方法および表面処理済物品を提供することを目的とする。
本発明の不燃木材の加飾物品の製造方法は、木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する表面処理液塗布工程と、表面処理液が塗布された不燃木材に対してインクジェット印刷を施す印刷工程とを含み、表面処理液塗布工程において、不燃木材に塗布される表面処理液の量が50g/m以下である。
本発明の不燃木材の加飾物品の製造方法によれば、木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する表面処理液塗布工程において、不燃木材に塗布される表面処理液の量を50g/m以下としたので、不燃木材の白華現象を抑制することができ、かつ白華現象による印刷画像の劣化を抑制することができる。
不燃部材に対する塗布部材の圧力を計測する方法を説明するための図
以下、図面を参照して本発明の不燃木材の加飾物品の製造方法および加飾物品の一実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の不燃部材の加飾物品の製造方法は、木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する表面処理液塗布工程と、表面処理液が塗布された不燃木材に対してインクジェット印刷を施す印刷工程とを含み、表面処理液塗布工程において、不燃木材に塗布される表面処理液の量を50g/m以下とする。なお、本明細書において、表面処理液の量とは、不燃木材に対して表面処理液を塗布した直後に計測した量である。
これにより、表面処理液に含まれる水が、不燃木材に含まれる助剤と反応することによって生じる白華現象を抑制することができ、かつ白華現象による印刷画像の劣化を抑制することができる。
そして、本実施形態の加飾物品は、上記実施形態の不燃部材の加飾物品の製造方法を実施することによって得られるものであり、具体的には、木材に不燃処理を施した不燃木材と、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を用いて不燃木材の表面に形成された表面処理層と、表面処理層上に形成されたインクジェット印刷層とを備える。そして、本実施形態の加飾物品の表面処理層は、不燃木材に対する表面処理液の塗布量を50g/m以下として形成される。
本実施形態で用いられる不燃木材は、ホウ素系(たとえばホウ砂およびホウ酸など)やリン酸系(たとえばリン酸アンモニウムなど)などの不燃薬剤を木材に浸透注入して製造される部材である。不燃木材は、たとえば建築材料として用いられるが、用途はこれに限定されるものではない。
以下、不燃木材のメカニズムについて説明する。不燃木材は、熱にさらされた場合、まず、吸熱分解反応を起こし周囲の温度を下げる。さらに高温の熱せられた際、注入されている不燃薬剤が発泡してガラスの層を生成する。その発泡ガラスの層が木材を包むことによって、酸素と熱を遮断するため燃えにくくなる。
不燃木材としては、国が定める認定試験を通過したものを用いることが好ましい。不燃木材認定試験においては、一般的に「発熱性試験」と「ガス有毒性試験」という2つの試験を行う。
発熱性試験は、コーンカロリーメータを用いて行われる。コーンカロリーメータは、試験片の酸素の減少量により、どれだけ燃焼したかが分かる仕組みになっている。国土交通省の不燃木材認定の基準は、次の3点である。
1. 加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下である
2. 加熱開始後20分間の発熱速度が10秒以上継続して200Kw/mを超えない事
3. 加熱開始後20分間に裏面に達する割れや防火上有害な変形がない事
さらに、発熱性試験に合格したものについては、ガス有毒性試験が行われている。避難上有害な煙またはガスを発生しないことが求められる。
ガス有害性試験は、試験体(220mm角)を加熱して発熱した燃焼ガスをマウスに暴露した際の行動停止時間によって評価される。
ここで、不燃木材の原材料である木材には水を通す役割を持つ管(導管)が存在する。この導管の分布の仕方によって、木材の表面に木目模様が現れる。
一方で、上述したように板状に加工された木材表面では、導管の内部が剥き出しになっているため、そこに水性インクで印刷を行うと、導管に沿って滲みが生じ、細線再現性が低下することとなる。これに対し、本実施形態の表面処理液による表面処理を行うことにより、表面処理液中の色材定着成分(たとえばカチオン性の水分散性樹脂)が導管内部のインクの濡れ広がりを制御する。これにより滲みにくく細線再現性が良好で、かつ発色性の良い印刷画像を形成することができる。具体的には、インクに含まれるアニオン性成分と、表面処理液に含まれるカチオン性成分が反応し、色材などのインク成分の木材への浸透を制御することができ、色材を木材表面に留めることができる。なお、表面処理液については、後で詳述する。
次に、不燃木材への表面処理液の塗布方法について説明する。
不燃木材は、上述したように不燃薬剤を木材に浸透させることによって形成されるが、この不燃薬剤の浸透によって木材の導管が狭くなるため、不燃処理が施されていない木材と比較すると濡れ性が低下する。
このように濡れ性が低下した場合、上述した表面処理液の接触角が高くなり、不燃木材に対して表面処理液を均一に塗布することが困難となる。表面処理液が均一に塗布されない場合、その表面に形成される印刷画像の劣化を招く。不燃木材に対する表面処理液の接触角は濡れ性の指標であり、液滴法による動的接触角の経時変化測定によって測定できる(測定装置 接触角計 DM−500 協和界面科学社製)。不燃木材に表面処理液(液滴1.0μL)が着弾して1秒後の動的接触角が大きいほど濡れ性が低く、表面処理液が均一に塗布されにくい。具体的には、不燃木材に対する表面処理液の動的接触角が10°以上の場合に、表面処理液を均一に塗布することが困難である。
そこで、本実施形態においては、不燃木材の表面に、接触式の塗布方法によって表面処理液を塗布する。これにより、不燃木材の管の内部に表面処理液が入り込むことができ、不燃木材の表面に対して、表面処理液を均一に塗布することができ、塗布ムラを抑制することができる。そして、これにより加飾物品の印刷画像の品質を向上させることができる。特に、上述したように不燃木材に対する表面処理液の動的接触角が10°以上の場合に、顕著な効果を得ることができる。
表面処理液を接触式の塗布方法によって塗布する際、たとえばスポンジなどのような、表面処理液を吸収し、その後、所定の圧力で不燃木材に押し付けられることによって、不燃木材の表面上に表面処理液を流出して付着させる塗布部材が用いられる。ただし、上述したように濡れ性の低い不燃木材の表面に均一に表面処理液を塗布するためには、ある程度の吸収性を有する必要がある。
具体的には、不燃木材に対して表面処理液を塗布する表面処理液塗布工程において、吸水性が0.44g/cm以上の塗布部材を用いることが好ましい。これにより、塗布部材に対して表面処理液を十分に含ませることができ、不燃木材に対して表面処理液を均一に塗布することができる。なお、吸水性の測定方法については、後で詳述する。
また、塗布部材は変形することにより不燃木材に密着するが、押圧した際の変形量が大きすぎると表面処理液を均一に塗布することが難しい場合がある。したがって、表面処理液塗布工程においては、30kPaの圧力で押圧した場合に、変形量が25mm以下の塗布部材を用いることが好ましい。これにより、塗布部材と不燃木材の密着性を確保することができ、不燃木材に対して表面処理液を均一に塗布することができる。なお、変形量の測定方法については、後で詳述する。
また、塗布部材を不燃木材に押し当てて塗布する際の圧力が低い場合、塗布部材から表面処理液が十分に流出しなかったり、塗布部材と不燃木材の密着性が低下したりして、不燃木材に対して表面処理液を均一に塗布することが難しい場合がある。したがって、表面処理液塗布工程においては、5kPa以上の圧力で塗布部材を不燃木材に押し当てることが好ましい。これにより、塗布部材から表面処理液を十分に流出させることができるともに、塗布部材と不燃木材の密着性を確保することができ、不燃木材に対して表面処理液を均一に塗布することができる。なお、上記圧力の測定方法については、後で詳述する。
すなわち、不燃木材の表面に均一に表面処理液を塗布する条件としては、吸水性が0.44g/cm以上であって、30kPaの圧力で押圧した場合の変形量が25mm以下の塗布部材を用い、5kPa以上の圧力で上記塗布部材を不燃木材に押し当てることがより好ましい。なお、この際、表面処理液の塗布量は、上述したように50g/m以下とすることが好ましい。より好ましくは、35g/m以下であり、これにより、生産性を十分に担保することが可能な乾燥時間とすることができる。
また、不燃木材の塗布する表面処理液の量は、7g/m以上であることが好ましい。より好ましくは10g/m以上である。これにより、不燃木材に表面処理液を塗布した後にインクジェット印刷を行った場合に、印刷画像の画像品位を確保することができる。また、不燃木材に対して表面処理液を均一に塗布することができる。
また、上述した塗布部材を用いて不燃木材に表面処理液を塗布する手段としては、人の手によって塗布部材を不燃木材に押し当てて塗布するようにしてもよいし、所定の機械的な機構によって塗布部材を不燃木材に押し当てて塗布するようにしてもよい。この際、不燃木材の表面上において塗布部材を移動させる速度(塗布速度)としては、たとえば300mm/sとすることが好ましい。
そして、表面処理液を不燃木材に塗布した後、乾燥させてからインクジェット印刷を行うことが好ましい。その際、加熱乾燥を行わず、室温で乾燥させることが好ましい。これにより、加熱による不燃木材の変形を防止することができる。一方、表面処理液を不燃木材に塗布した直後に、すなわち表面処理液を乾燥させずに、続けてインクジェット印刷を行うこともできる。表面処理液を乾燥させる場合には、22℃、湿度50%で一晩放置することが好ましい。
次に、表面処理液が塗布された不燃木材に対してインクジェット印刷を施す印刷工程について説明する。
インクジェット印刷に用いるインクは、特に限定されないが、UV硬化型ではないインクであることが好ましく、さらに、水性インクであることが好ましい。すなわち、水、バインダー樹脂、及び色材を含むインクであることが好ましい。なお、インクについては、後で詳述する。
また、インクジェット印刷は、一般的な記録ヘッドを用いて行うことができ、印刷方式や使用する装置等に特に制限はない。印刷後は、乾燥させることにより、印刷されたインクから水及びその他の揮発性成分が揮発して不燃木材の表面に印刷画像が形成された加飾物品を得ることができる。乾燥条件としては、80℃で10分加熱して印刷面を乾燥させることが好ましい。
本実施形態の表面処理液の塗布方法によれば、上述したように不燃木材に対して表面処理を均一に塗布することができる。これにより、インクの濡れ広がりを制御し、滲みにくく細線再現性が良好で、かつ発色性の良い印刷画像を形成することができる。したがって、たとえば表面処理された不燃木材に木目模様を印刷した場合、木目模様を本物の木材と遜色なく再現することができる。
また、表面処理された不燃木材にフルカラーグラデーション画像を印刷した場合、グラデーションを良好に再現することができる。
また、表面処理された不燃木材にCMYKのベタ画像を印刷した場合、インクジェット専用用紙と同様の発色性を得ることができる。
また、表面処理された不燃木材に0.3mmの細線を印刷した場合、にじみ、かすれ、および切れを防止することができる。
以下、上述した表面処理液について詳細に説明する。
表面処理液は、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含むことが好ましい。また、上記色材定着成分は、カチオン性の水分散性樹脂であることが好ましく、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以上10μm以下の大粒子を含むことが好ましい。さらに、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm未満の小粒子を含むことがより好ましい。
本実施形態の表面処理液は、特には、UV硬化型ではないインク(たとえば水性インク)を用いて印刷画像を形成する前の表面処理液として用いることが好ましい。印刷前に本実施形態の表面処理液を予め用い、その後にインクジェットインクによる印刷画像を形成することにより、上述したようにインクの濡れ広がりを制御し、これにより滲みにくく細線再現性が良好で、かつ発色性の良い印刷画像を形成することができる。
カチオン性の水分散性樹脂粒子は、樹脂粒子の表面がプラスに帯電した、正電荷を帯びた樹脂粒子であり、水に溶解することなく粒子状に分散して、水中油(O/W)型のエマルションを形成できるものである。自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するカチオン性の官能基が粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にカチオン性の分散剤を付着させる等の表面処理されたものでもよい。
カチオン性の官能基は、代表的には第1級、第2級又は第3級アミノ基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ピラゾール基、及びベンゾピラゾール基等であり、カチオン性の分散剤は、1級、2級、3級又は4級アミノ基含有アクリルポリマー、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリビニルアルコール樹脂、及びカチオン性水溶性多分岐ポリエステルアミド樹脂等である。
樹脂粒子の表面電荷量は、粒子電荷計で評価することができる。試料を中和するのに必要なアニオン量またはカチオン量を測定することで、表面電荷量を算出することができる。具体的には、表面電荷量が+300μeq/g以上であることが好ましい。粒子電荷計としては、日本ルフト株式会社製コロイド粒子電荷量計Model CAS等を用いることができる。
水分散性樹脂としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。また、処理液の製造に際しては、水中油型の樹脂エマルションとして配合することができる。
代表的には、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いても良い。後述するが
、これらの樹脂が複合された樹脂エマルションでも良い。上記のとおり、これらの樹脂にカチオン性の官能基を導入するか、又は、カチオン性分散剤等で表面処理して、プラスの表面電荷を与えることができる。
樹脂粒子の粒径は、特に限定されず、複数種の異なる粒径の粒子を任意に組み合わせて用いることができる。ただし、不燃木材の表面に留まりやすいという観点から、動的光散乱法により測定されるメジアン径(平均粒径)が1μm以上のサイズを持つ粒子を含むことが好ましい。また、樹脂粒子の平均粒径は、10μm以下であることが好ましく、これにより不燃木材の木材としての特性を生かしつつ、不燃木材表面の凹部及び空隙にも浸透することができる。
すなわち、不燃木材では、樹脂粒子のメジアン径(平均粒径)を1μm以上10μm以下とすることによって、不燃木材の上述した管の大きさに追随して、効率よく表面処理層を形成することができる。特に、木材では、針葉樹と広葉樹の分類によって管の大きさ(平均直径)が異なる。たとえば広葉樹の環孔材であるタモ材の平均直径は約260μm、散孔材であるメープル材は約60μmである。一方、針葉樹であるヒノキ材は平均直径が約10μmである。このように、木材は樹種によってその空隙の大きさが異なり、さらには天然物であるため基材の空隙の分布が全く同じ状態のものは存在しないのであるが、大粒子の平均粒径を上記とすることにより、木材のような空隙が不揃いな基材に対しても、基材の本来の機能(木材では吸湿性)を低下させることなく、表面処理層を形成することができる。
さらに、表面処理液は、動的光散乱法により測定されるメジアン径(平均粒径)が1μm未満の小粒子も併せて含むことが好ましい。これにより、上記の画像品位に加えて、インク層の耐水性もさらに向上させることができる。
大粒子と小粒子を用いる場合の両者の比率は、小粒子が大粒子に対して少なすぎると定着性が不十分であり、多すぎると処理層が皮膜化し木材の吸湿性を妨げる恐れがあるため、重量比で大粒子1に対し小粒子が0.1〜1.5程度であることが好ましい。なお、本明細書において「重量」と「質量」は同じ意味で用いられる。
樹脂粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の粒径値(メジアン径)である。動的光散乱式粒子径分布測定装置としては、ナノ粒子解析装置nano Partica SZ−100(株式会社堀場製作所)等を用い、水分散性樹脂の濃度が0.5質量%となるように水で希釈し、25℃で測定することができる。
表面処理液中又は後述するインク中において、樹脂粒子は、独立した微粒子の状態で存在する場合と、独立した微粒子が集合した凝集体の状態で存在する場合とが考えられるが、動的光散乱法で測定されるメジアン径を「平均粒径」とする。
なお、上記樹脂粒子の平均粒径は、表面処理液又はインクを調製する前の原料エマルション状態で測定することが、インクの場合であれば色材(顔料粒子)の影響を排除できることから好ましく、その測定値を本実施形態の平均粒径とすることができる。
大粒子の平均粒径は、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。小粒子の平均粒径は、500nm以下であることがさらに好ましい。平均粒径の下限値は、特に限定はされないが、表面処理液の保存安定性の観点からは、5nm以上程度であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。
さらに、大粒子と小粒子は、両者を混合して平均粒径を測定した場合に、その粒度分布において二つのピークが存在する、すなわち各々が異なるピーク値を有するものであることが好ましい。
また、大粒子と小粒子は、平均粒径値の相違に加え、その他の相違点を有していてもよい。例えば、大粒子は、最低造膜温度(MFT)が70℃以上であることが好ましく、一方、小粒子は、MFTが70℃未満以下であることが好ましい。このMFTとは、エマルションがフィルム化(成膜)するために必要な温度であり、JIS K6828−2に従って測定することができる。ここで、70℃においても成膜しない水分散性樹脂は、MFTが70℃以上の水分散性樹脂に含まれるものとする。
より好ましくは、大粒子のMFTは100℃以上であり、小粒子のMFTは50℃以下であり、特に、小粒子は室温で成膜することが好ましいため、40℃以下であることが一層好ましい。
また、大粒子のMFTと小粒子のMFTの差は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。
大粒子と小粒子の樹脂の分子構造は、同一であってもよいが、互いに異なるものを用いてもよい。
大粒子として、例えば、カルボキシ基、スルホ基等に代表されるアニオン性の官能基を有するポリマーと、アミノ基又はアミド基等に代表されるカチオン性の官能基を有するポリマーとが複合して得られるポリマーコンプレックスであって、コア部がアニオン性ポリマー、シェル部がカチオン性ポリマーである、コアシェル構造の複合有機粒子を用いることも好ましい。
複合有機粒子のアニオン性ポリマーとしては、例えば繰り返し単位として(メタ)アクリル酸を含むポリマー、より具体的にはスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。スチレン、(メタ)アクリル酸以外の、これらと共重合可能なビニル化合物を含んでいてもよい。
複合有機粒子のカチオン性ポリマー(塩基性ポリマー)としては、例えば、含窒素モノマーを含むポリマーであり、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルイミダゾール等の窒素複素環化合物を繰り返し単位として含むホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。コポリマーを形成するコモノマーとしては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリルアミド等の一般的なビニル化合物を、1種または2種以上選択して使用できる。
この場合のアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーの使用割合は、粒子表面の電荷をカチオン性とするために、重量比で、アニオン性ポリマー1に対し、カチオン性ポリマーが3〜10であることが好ましい。
このような複合有機粒子の市販品として、「PP−15」、「PP−17」(共に明成化学工業株式会社)を好ましく用いることができる。
また、表面処理液中における水分散性樹脂の量(大粒子と小粒子を用いる場合には両者の合計固形分量)は、処理した際の基材表面におけるインク定着性の観点から2重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましい。一方、処理液の粘度が高すぎる場合、均一な処理が困難になるため、樹脂量は50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。
表面処理液に含まれる水は、表面処理液の溶媒、すなわちビヒクルとして機能するものであり、水道水、イオン交換水、脱イオン水等が使用できる。水は揮発性の高い溶媒であり、基材に吐出された後、容易に蒸発するので、表面処理後の基材の空隙が塞がれるのを防止し、木材の吸湿性等の表面処理後の基材本来の特性の低下を防止する作用を奏する。また、水は、無害で安全性が高く、VOCのような問題が無いので、表面処理された基材を環境にやさしいものとすることができる。
表面処理液中の水の含有量が多いほど、表面処理液の粘度が低く、取り扱いが容易になることから、水は、処理液全量の60重量%以上であることが好ましく、65重量%以上であることがより好ましい。
水の含有量の上限値は、特に限定はされないが、処理液中に水分散性樹脂の大粒子と小粒子を含む一実施形態において、水の含有量は95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。別の一実施形態においては、水の含有量は85重量%〜95重量%であることが好ましい。
表面処理液の溶媒は、ほとんどが水で構成されることが好ましいが、必要に応じて、水以外に、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−2−プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、β−チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
これらの水溶性有機溶剤は、単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。水溶性有機溶剤の含有量は、粘度調整と保湿効果の観点から、処理液中に30重量%以下(あるいは、溶媒中に50重量%以下)であることが好ましい。
また、表面処理液は、その表面張力を低下させて不燃木材の表面に均一に塗布できるようにするために、また、粒径の小さい水分散性樹脂粒子(小粒子)を含む場合にはその凝集を抑制して液の保存安定性を高めるために、表面張力調整剤(界面活性剤)をさらに含むことが好ましい。
界面活性剤は、親水性部分がイオン性(カチオン性・アニオン性・双性)のものと非イオン性(ノニオン性)のものに大別されるが、本実施形態では、表面処理液の泡立ちの観点から、起泡しにくい非イオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。また、低分子系・高分子系(一般には分子量が約2000以上のものを指す。)のどちらでも良いが、高分子系界面活性剤を用いることが好ましい。HLB値については、5〜20程度の界面活性剤であることが好ましい。
非イオン系の界面活性剤としては、たとえば、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンエステル等のエステル型のもの、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型のもの、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型のもの等が挙げられる。
本実施形態では、アセチレングリコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品として、アセチレングリコールであるサーフィノール104E、104H、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造のサーフィノール420、440、465、485等(エアープロダクツアンドケミカルズ社)、アセチレングリコールのオルフィンE−1004、E−1010、E−1020、PD−002W、PD−004、EXP.4001、EXP−4200、EXP−4123、EXP−4300等(日信化学工業株式会社)、アセチレングリコールのアセチレノールE00、E00P、アセチレングリコールのエチレンオキサイドを付加した構造のアセチレノールE40、E100等(川研ファインケミカル株式会社)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤は、非常に高い表面張力低下能と接触角低下能を持つため、不燃木材の表面が親水性でなくてもその表面に表面処理液を速やかに拡散させることができる。その結果、不燃木材の表面に表面処理液の機能発現成分が均一に定着することができるため、印刷した際にインクが処理部分に均一に定着し、高発色で高品位の印刷画像を得ることができる。
シリコーン系界面活性剤のなかでも、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤が好ましい。市販品では「シルフェイスSAGシリーズ」(日信化学工業株式会社)を好ましく使用できる。
界面活性剤は、上記のシリコーン系界面活性剤等を、いずれか単独で用いてもよいし、互いに相溶性が良好な複数の界面活性剤を併用してもよい。
界面活性剤を使用する場合の表面処理液中の含有量は、0.1重量%以上程度であることが好ましく、0.3重量%以上であることがより好ましく、0.5重量%以上であることが一層好ましい、一方、界面活性剤量は、5重量%以下程度であることが好ましく、4重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることが一層好ましい。
表面処理液には、処理液の機能を阻害しない限り、上記の成分以外に、例えば、保湿剤、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等の公知の添加剤を任意に添加できる。これらの添加剤を複数種組み合わせて使用してもよい。
表面処理液は、水、カチオン性の水分散性樹脂、及び表面張力調整剤、並びに任意に添加される添加剤があれば該添加剤を、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。
また、表面処理液が、カチオン性の水分散性樹脂として大粒子と小粒子を含む場合、表面処理液の適用を、2段階に分けて行うこともできる。すなわち、例えば、大粒子または小粒子のどちらか一方を含む表面処理液と、残りの一方を含む表面処理液を準備し、両者をそれぞれ、不燃木材に塗布することもできる。大粒子と小粒子を分けて適用する場合、小粒子の塗布が先であると、不燃木材の空隙への浸透が進み、インクに対するバインダーとしての効果が薄れる可能性があるため、大粒子を先に塗布するほうが好ましい。なお、上述したように2種類の表面処理液を塗布する場合、表面処理液の量とは、2種類の表面処理液の量の合計値である。
次に、インクジェット印刷において用いられるインクについて、詳細に説明する。
インクジェット印刷に用いるインクは、上述したように特に限定されないが、UV硬化型ではないインクであることが好ましく、さらに、水性インクであることが好ましい。すなわち、水、バインダー樹脂、及び色材を含むインクであることが好ましい。
水は、インクの溶媒、すなわちビヒクルとして機能するものであれば特に限定されず、水道水、イオン交換水、脱イオン水等が使用できる。表面処理液について上述したとおり、水は安全であるとともに揮発性が高いため、加飾された不燃木材の本来の性能の低下を防止することができる。
インク中の水の含有量は、インク全量の30重量%以上であることが好ましく、インク全量の60重量%以上であることがより好ましく、65重量%以上であることがさらに好ましい。また、水の含有量は95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。
インクの溶媒は、その大部分が水で構成されることが好ましいが、必要に応じて、水以外に、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤としては、上記表面処理液に使用できるものと同様の溶剤を、1種又は2種以上選択して使用できる。
水溶性有機溶剤のインク中の含有量は、2種以上が用いられる場合はその合計含有量として、5〜50質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましい。
バインダー樹脂としては、水溶性樹脂又は親水性樹脂を用いることができ、特に限定はされない。得られた画像の耐水性を向上させるためには、水分散性樹脂を含むことが好ましく、水分散性樹脂を水溶性樹脂と組み合わせて用いても良い。
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらは、単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。
水分散性樹脂の場合は、粒子表面がマイナスに帯電し、負電荷を帯びたアニオン性の樹脂粒子を用いることが好ましい。これは、水に溶解することなく粒子状に分散して水中油(O/W)型エマルションを形成できるものである。自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するアニオン性の官能基が粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にアニオン性の分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。アニオン性の官能基は、代表的にはカルボキシ基、スルホ基等であり、アニオン性の分散剤は、陰イオン界面活性剤等である。表面がアニオン性であると、上記表面処理液中のカチオン性水分散性樹脂との化学的な相互作用が得られ、その結果、色材の定着を一層強固なものとして画像の耐久性をより高めることができる。
樹脂粒子の表面電荷は、ゼータ電位を測定することで評価できる。具体的には、ゼータ電位の絶対値が30mV以上であることが好ましい。
樹脂の種類としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。また、インクの製造に際し、樹脂エマルションとして配合することができる。
代表的には、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。
上記のとおり、これらの樹脂にアニオン性の官能基を導入するか、又は、アニオン性分散剤等で表面処理して、マイナスの表面電荷を与えることができる。
これらの水分散性樹脂(又はそのエマルション)のうち、インクジェットヘッドからの安定吐出性能の観点、及び基材に対する密着性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が−35〜40℃のウレタン樹脂(エマルション)を用いることが好ましい。かかる樹脂エマルションの具体例としては、第一工業製薬(株)のスーパーフレックス460、420、470、460S(カーボネート系ウレタン樹脂エマルション・いずれも商品名)、150HS(エステル・エーテル系ウレタン樹脂エマルション・商品名)、740、840(芳香族イソシアネート系エステル系ウレタン樹脂エマルション・いずれも商品名)、DSM社のNeoRez R−9660、R−2170(脂肪族ポリエステル系ウレタン樹脂エマルション・いずれも商品名)、NeoRez R−966、R−967、R−650(脂肪族ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルション・いずれも商品名)、R−986、R−9603(脂肪族ポリカーボネート・いずれも商品名)などが挙げられる。
また、インク中での安定性の観点から、(メタ)アクリル樹脂又は(メタ)アクリル樹脂共重合体を用いることも好ましい。具体的には、ジャパンコーティングレジン(株)のモビニール966A、6963、6960(アクリル樹脂エマルション・いずれも商品名)、6969D、RA−033A4(スチレン/アクリル樹脂エマルション・いずれも商品名)や、BASF社のジョンクリル7100、PDX−7370、PDX−7341(スチレン/アクリル樹脂エマルション・いずれも商品名)、DIC(株)のボンコートEC−905EF、5400EF、CG−8400(アクリル/スチレン系エマルション)などが挙げられる。
水分散性樹脂は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の1種単独の樹脂(又はそのエマルション)から構成されてもよいし、又は、複数種の樹脂(又はそれらのエマルション)を組
み合わせて構成されてもよい。
エマルションを形成する水分散性樹脂粒子は、インクジェット印刷に適した粒子径であれば良く、一般的には平均粒径(動的光散乱法により体積基準で測定したメジアン径)で300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましく、さらに好ましい値は200nm以下であり、一層好ましい値は150nm以下である。平均粒径の下限値は、特に限定はされないが、インクの保存安定性の観点からは、5nm以上程度であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。
インク中における水分散性樹脂及び/又は水溶性樹脂の量(固形分量)は、色材と樹脂の比率(色材:樹脂)で1:0.5〜1:7(重量比)が好ましい。樹脂の含有量をこの範囲にすることで、基材の表面に印刷された画像の耐水擦過性と高画質性を十分に確保することができる。色材1に対する樹脂の比率が0.5より小さいと、顔料の定着性が悪くなる可能性があり、7より大きいと、粘度が高くなり、インクを吐出するヘッドからインクを吐出できなくなる可能性がある。
インクの色材としては、顔料及び染料の何れも使用することができ、単独で使用しても両者を併用してもよい。加飾画像の耐候性及び印刷濃度の点から、色材として顔料を使用することが好ましい。
色材の含有量は、インク全量に対して0.01〜20重量%の範囲であることが好ましい。さらには、色材の含有量は0.1重量%以上であることがより好ましく、0.5重量%以上であることがさらに好ましく、1重量%以上であることが一層好ましく、また、15重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましく、8重量%以下であることが一層好ましい。
染料としては、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等が挙げられ、これらのうち、水溶性のもの及び還元等により水溶性となるものが使用できる。より具体的には、アゾ染料、ローダミン染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料、メチレンブルー等が挙げられる。これらの染料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料及び染付レーキ顔料等の有機顔料並びに無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキシサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。無機顔料としては、代表的にはカーボンブラック及び酸化チタン等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
インクには、インク中における顔料の分散を良好にするために、必要に応じて顔料分散剤を添加することができる。使用できる顔料分散剤としては、顔料を溶媒中に安定して分散させるものであれば特に限定されないが、例えば、高分子分散剤や顔料分散能をもった界面活性剤に代表される公知の顔料分散剤を使用することが好ましい。高分子分散剤の具体例としては、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパース(商品名)シリーズ、ジョンソンポリマー社製のジョンクリル(商品名)シリーズ、BYK社のDISPERBYKシリーズ、BYKシリーズなどが挙げられる。界面活性剤の具体例としては、花王(株)製
デモール(商品名)シリーズのような、アニオン性の脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等、非イオン性のポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。
顔料分散剤の含有量は、上記顔料を十分に上記溶媒中に分散可能な量であれば足り、例えば顔料1に対し重量比で0.01〜2の範囲内で、適宜設定できる。
また、インク中にはインクの表面張力を低下させ、インクジェットヘッドに導入した際の吐出安定性を確保し、また印刷対象基材にインクを速やかに浸透させるために、表面張力低下剤(界面活性剤)を添加することができる。表面張力低下剤としては、さらに水分散性樹脂粒子の凝集を抑制する効果も有している界面活性剤、例えば、表面処理液に配合されると同様の界面活性剤を用いることもできる。顔料分散機能と表面張力低下機能の双方を備える界面活性剤を使用してもよい。
インク中の表面張力低下剤の量は、0.1重量%以上程度であることが好ましく、0.3重量%以上であることがより好ましく、0.5重量%以上であることが一層好ましい。一方、表面張力低下剤量は、5重量%以下程度であることが好ましく、4重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることが一層好ましい。
インクには、インクの性状に悪影響を与えない限り、上記の成分以外に、例えば、保湿剤、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等の他の成分を添加できる。
インクの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、ビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。例えば、予め水と色材の全量を均一に混合させた混合液を調製して分散機にて分散させた後、この分散液に残りの成分を添加してろ過機を通すことにより調製することができる。
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
表1に示すとおり、不燃木材に対して、塗布部材1〜塗布部材6を用いて接触式塗布によって水を塗布し、塗布直後の水の塗布量を計測し、白華現象の有無を確認した。
塗布方法としては、まず、各塗布部材1〜6を水に30秒浸漬して取り出した後、水の滴りが無くなる状態とした。次いで、水の滴りが無くなった状態で、2kgの重しを各塗布部材に10秒乗せることによって各塗布部材1〜6を絞った。
その後、図1に示すように、不燃木材Wの塗布面Sが鉛直方向となるように不燃木材を立て、その状態の不燃木材の一方の側の面に各塗布部材1〜6を手で押し当て、塗布速度を300mm/sとして塗布を行った。そして、不燃木材の他方の側面に圧力計P(アイコーエンジニアリング製の「製品名デジタルフォースゲージ CPU GAUGE 9500シリーズ」を使用)を設置することによって圧力を計測した。不燃木材は変形しない硬い材質で形成されているので、上記のように圧力を計測することによって、各塗布部材1〜6が不燃木材の塗布面に押し付けられる圧力を間接的に計測した。
そして、上述した圧力を5kPa、10kPa、20kPaおよび40kPaとすることによって塗布量を制御した。塗布量と白華現象の有無は、表1に示すとおりである。
不燃木材は、(株)ARS製の不燃木材を使用し、そのサイズは、縦幅300mm×横長さ600mm×厚さ50mmとした。
塗布部材は、以下に示す材料を使用し、そのサイズは、縦70mm×横70mm×厚さ30mmとした。縦70mm×横70mmの面を不燃木材の塗布面に押し当てて塗布を行った。
塗布部材1:スポンジクロス(材質:セルロース)
塗布部材2:ウレタンスポンジA
塗布部材3:ウレタンスポンジB
塗布部材4:ウレタンスポンジC
塗布部材5:メラミンスポンジ
塗布部材6:PVA(ポリビニルアルコール)スポンジ
塗布量は、水を塗布した直後の不燃木材の重さから塗布前の不燃木材の重さを減算し、その減算値を塗布面の面積で除算することによって算出した。なお、塗布量が、0.0g/mとは、全く塗布されていない訳ではなく、塗布量が、0.1g/m未満の場合である。
白華現象の有無は目視によって行った。実施例1から実施例6から分かるように、塗布量が50g/mを超える場合に白華現象が生じた。なお、実施例としては示していないが、塗布量が50g/mまでは白華現象が発生しないことを確認した。
Figure 2021169207
なお、表1に示す実施例1〜実施例6においては、不燃木材として、(株)ARS製の不燃木材を使用しているが、その他の不燃木材でも、水の塗布量が50g/mを超える場合に白華現象が生じ、塗布量が50g/mまでは白華現象が発生しないことを確認した。表2にその結果を示す。表2に示すように、不燃木材として、(株)サカワ製の不燃木材(製品名:白華レス不燃木材)および吉田製材(株)製の不燃木材(製品名:ふくふねん)の白華現象について確認した。不燃木材が異なることを除いて、水の塗布方法などの条件は、実施例1と同様である。なお、実施例1の(株)ARS製と吉田製材(株)製の不燃木材の不燃薬剤はホウ酸系薬剤であり、(株)サカワ製の不燃木材の不燃薬剤は、特殊リン酸系薬剤であり、ベースとなる木材は全て杉である。
表2の「水」の欄に示すように、(株)サカワ製の不燃木材および吉田製材(株)製の不燃木材でも、水の塗布量50g/mを超える場合に白華現象が生じ、塗布量が50g/mまでは白華現象が発生しないことが分かった。
さらに、上記実施例1〜6においては、表面処理液の代替として水を用いているが、水を使用した場合の塗布量に応じた白華現象の有無と上述した表面処理液(たとえば水、カチオン性の水分散性樹脂および表面張力調整剤を含み、カチオン性の水分散性樹脂が、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以上10μm以下の大粒子と、1μm未満の小粒子である表面処理液)を使用した場合の塗布量に応じた白華現象の有無は同じであることを確認した。表2の「表面処理液」の欄に、表面処理液の場合の評価結果を示す。ここでは表2に示すように、実施例1の(株)ARSの不燃木材と(株)サカワ製の不燃木材と吉田製材(株)製の不燃木材について、水の塗布量に応じた白華現象の有無と上記表面処理液の塗布量に応じた白華現象の有無とを比較した。なお、水および表面処理液の塗布条件(塗布部材の種類、塗布部材の絞り方法、塗布速度)は、実施例1と同様であり、塗布部材の圧力は10kPaとした。
下表2の評価で用いた表面処理液は、具体的には、下表3に記載された各成分を、下表3に示す割合でプレミックスし、その後、ホモジナイザーで1分間分散して得た。
下表3に記載の原材料の詳細は、以下のとおりである。
「PP−15」:明成化学工業(株)製、カチオン性水分散性複合有機粒子(平均粒径約1.8μm、100℃において成膜しない)
「ポリゾールAE−803」は、昭和電工(株)製、カチオン性水系アクリル樹脂エマル
ション(平均粒径419nm、MFT0℃)
「シルフェイスSAG503A」:日信化学工業(株)製、シリコーン系界面活性剤
「オルフィンE1010」:日信化学工業(株)製、アセチレングリコール系界面活性剤
樹脂の平均粒径は、動的光散乱式粒子径分布測定装置「ナノ粒子解析装置nano Prtica SZ−100」(株式会社堀場製作所製)を用いて、各樹脂分散液を粒子濃度0.5質量%となるように精製水で希釈して、分散媒屈折率:1.333、試料屈折率:1.600、分散形態:「多分散」・「ナロー」に設定し、温度25℃で測定した体積基準のメジアン径である。
Figure 2021169207
Figure 2021169207
上表2に示すように、不燃木材に表面処理液を塗布した場合でも、塗布量が50g/mを超える場合に白華現象が生じ、塗布量が50g/m以下では白華現象が発生しないことが分かった。すなわち、表面処理液の代わりに水を用いた場合と結果は同じであることが分かった。これにより、不燃木材の白華現象は水の影響が大きく、表面処理液中の水以外の成分については、白華現象に影響がないことがわかった。すなわち、水を含む表面処理液であれば、その他の表面処理液でも同様の結果が得られると考えられる。
上記実施例の説明では、不燃木材の白華現象を抑制するためには、表面処理液の塗布量が50g/m以下とする必要があることを確認したが、印刷画像の画像品位を確保するためには、表面処理液の塗布量は、上述したように7g/m以上とすることが好ましく、さらに好ましくは、10g/m以上である。表4は、上述した表面処理液の塗布量の下限値を確認した結果を示す。なお、不燃木材は、(株)ARS製を用い、表面処理液の塗布条件(塗布部材の種類、塗布部材の絞り方法、塗布速度)は、実施例1と同様とし、塗布部材の圧力は10kPaとした。表面処理液を塗布した後、一晩乾燥させ、インクジェット印刷を行って画像品位の評価を行った。表4の評価で用いたインクは、表5に記載の各成分を表5に示す割合(固形分換算)でプレミックスし、得られた分散液を孔径3μmのメンブレンフィルターに通過させて、4色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)からなる水性インクセットを得た。
表5記載の原材料の詳細は、下記のとおりである。
「CAB−O−JET 250C」:キャボット社製、水系自己分散シアン顔料分散体
「CAB−O−JET 260M」:キャボット社製、水系自己分散マゼンタ顔料分散体
「CAB−O−JET 270」:キャボット社製、水系自己分散イエロー顔料分散体
「CAB−O−JET 200」:キャボット社製、水系自己分散ブラック顔料分散体
「タケラック W−5661」:三井化学株式会社製、ウレタン樹脂エマルション
「サーフィノール465」:日信化学工業(株)製、アセチレングリコール系界面活性剤
Figure 2021169207
Figure 2021169207
画像品位としては、木目画像の再現性、グラデーション画像の再現性、発色性、およびにじみの評価を行った。
木目画像の再現性については、不燃木材に対して木目画像を印刷し、木目画像の再現性を目視で確認した。木目模様を本物の木材と遜色なく再現できている場合の評価を「A」とし、「A」には劣るが木目模様を再現できている場合の評価を「B」とし、木目模様を再現できていない場合の評価を「C」とした。
グラデーション画像の再現性については、不燃木材に対してフルカラーグラデーション画像を印刷し、その再現性を目視で確認した。グラデーションをよく再現できている場合の評価を「A」とし、グラデーションを再現できていない場合の評価を「C」とした。
発色性については、不燃木材に対してC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)およびK(ブラック)のベタ画像を印刷し、その発色性を目視で確認した。インクジェット専用用紙と同等の発色性があるか否かを確認した。インクジェット専用用紙と同等の発色性がある場合の評価を「A」とし、「A」には劣るが、インクジェット専用用紙に近い発色性があり、実使用上十分な発色がある場合の評価を「B」とし、インクジェット専用用紙の発色性に及ばず、くすんでいる場合の評価を「C」とした。
にじみについては、不燃木材に対して0.3mmの細線を印刷し、その細線のにじみの程度を目視で確認した。にじみ、かすれおよび切れが全くない場合の評価を「A」とし、にじみ、かすれおよび切れのいずれかがあるが、気にならないレベルの場合の評価を「B」とし、細線が大きくにじんでいて、再現できていない場合の評価を「C」とした。
表4に示す結果より、表面処理液の塗布量は、上述したように7g/m以上とすることが好ましく、さらに好ましくは、10g/m以上であることが分かった。
次に、塗布部材の吸水性、保水量および変形量並びに不燃木材への押し当て圧力と、不燃木材における表面処理液の塗布均一性との関係を評価した。塗布部材としては、上述した実施例1〜実施例6で用いた塗布部材1〜6に加えて、塗布部材7(ウレタンスポンジD)を用いた。表6は、塗布部材1〜7の物性(吸水性、保水量および変形量)を示す。
Figure 2021169207
吸水性とは、塗布部材が吸収して内部に留めることができる表面処理液の単位体積当たりの量を示す指標である。吸水性は、各塗布部材を水に30秒浸漬して取り出した後、水の滴りが無くなった時点における重量を計測し、その計測した重量を各塗布部材の体積で除算することによって算出した。
保水量は、上述した吸水性の評価において水の滴りが無くなった状態で、2kgの重しを各塗布部材に10秒乗せることによって各塗布部材1〜7を絞り、その絞り直後の重量を計測し、その計測した重量を各塗布部材1〜7の体積で除算することによって算出した。
変形量は、各塗布部材1〜7の表面に圧力計(圧力計は、アイコーエンジニアリング製の「製品名デジタルフォースゲージ CPU GAUGE 9500シリーズ」を使用)を押し当て、圧力が30kPaとなって時点において最も変形している箇所の変形前の表面からの深さを計測した。
塗布方法は、上述した塗布量の評価で説明した塗布方法と同様である。なお、均一塗布性についても、塗布量の評価と同様に、水を使用した場合の均一塗布性と上述した表面処理液を使用した場合の均一塗布性は同じであることを確認した。
また、表面処理液(水)の量は、35g/mとし、以下に示す全ての実施例において、白華現象は生じないことを確認した。
表7は、塗布部材1〜6を用いて、不燃木材への押し当て圧力を変化させた場合における表面処理液の塗布均一性の評価結果を示す。各塗布部材1〜6を不燃木材に押し当てた際の圧力は、3kPa、5kPa、10kPa、20kPaおよび40kPaとした。均一塗布性の評価は目視により行い、均一に塗布できている場合の評価を「A」とし、やや塗布ムラが発生している場合の評価を「B」とし、塗布ムラが目立つ場合の評価を「C」とした。各塗布部材1〜6に対する均一塗布性の評価結果は、表7に示すとおりである。
Figure 2021169207
表7に示す実施例7から実施例19の評価結果から、塗布部材を不燃木材に押し当てる圧力については、5kPa以上とすることが好ましいことが分かった。
次に、表8は、塗布部材1〜7の吸水性と表面処理液の塗布均一性との関係を示す。塗布部材1〜7を不燃木材に押し当てる圧力については、表8に示す圧力とした。
Figure 2021169207
表8に示す実施例20から実施例34の評価結果から、塗布部材の吸水性については、0.44g/cm以上であることが好ましいことが分かった。
次に、表9は、塗布部材1〜7の変形量と表面処理液の塗布均一性との関係を示す。塗布部材1〜7を不燃木材に押し当てる圧力については、表9に示す圧力とした。
Figure 2021169207
表9に示す実施例35から実施例47の評価結果から、塗布部材の変形量については、25mm以下であることが好ましいことが分かった。
次に、不燃木材に対して接触式の塗布方法によって表面処理液を塗布した場合における印刷画像の画像品位の評価結果と、非接触式(スプレー式)の塗布方法によって表面処理液を塗布した場合における印刷画像の画像品位の評価結果とを下表10に示す。
実施例48〜実施例50では、接触式の塗布方法によって表面処理液を塗布し、実施例51〜52および比較例1では、スプレー式の塗布方法によって表面処理液を塗布した。
表5における不燃木材1は、上述した実施例1と同様の(株)ARS製の杉材の不燃木材であり、不燃木材2は、(株)ARS製の桧材の不燃木材である。また、実施例7〜実施例11および比較例2における表面処理液の不燃木材に対する動的接触角は、表5に示すとおりである。動的接触角は、不燃木材に対して表面処理液が着弾して1秒後の接触角を計測した。
実施例48および実施例49の塗布部材は、実施例1と同様であり、実施例1と同様の塗布方法によって不燃木材に対して表面処理液を塗布した。また、塗布部材の不燃木材に対する圧力は10kPaとした。実施例50では、塗布部材としてスポンジハケを用いた。そして、実施例50では、スポンジハケの先端を表面処理液に浸して、キムタオル(登録商標)などの吸収材の上で先端を垂直に3回押し当てて滴りが無くなる状態とした。塗布速度は300mm/Sとし、塗布部材の不燃木材に対する圧力は10kPaとした。
実施例51〜実施例52および比較例1では、スプレーを用いて不燃木材に対して表面処理液を塗布した。スプレーとしては、日本ワグナー・スプレーテック株式会社製のWAGNER W550を用いた。不燃木材に対して上記スプレーを約1m/秒で動かしながら表面処理液を塗布した。
表面処理液の塗布量については、実施例48〜実施例51では、10.0g/mとし、実施例52は、35.0g/mとし、比較例1では、70.0g/mとした。
また、表10では、上述した4つの画像品位(木目画像の再現性、グラデーション画像の再現性、発色性、およびにじみ)に評価項目に加えて、表面処理液塗布後の基材表面性についても評価した。基材表面性については、表面処理液を塗布後の不燃木材について、表面処理液を塗布していない不燃木材と同様の風合いで木目模様が残っているかを目視で確認した。木目模様がはっきりと確認でき、かつ不自然な光沢感がない場合の評価を「A」とし、木目模様の鮮明性および光沢感のうちのいずれかに違和感があるか、または不燃木材表面の色がやや変色(白、黄変)している場合の評価を「B」とし、木目模様の鮮明性および光沢感の両方に違和感があるか、または不燃木材表面が明らかに変色している場合の評価を「C」とした。
また、表10では、実施例48〜実施例52および比較例1について、白華現象の有無について確認した結果を示している。
Figure 2021169207
上表10に示すように、接触式の塗布方法で表面処理液を塗布した場合、基材表面性および画像品位の全ての評価が「A」であるが、非接触式(スプレー式)の塗布方法で表面処理液を塗布した場合、画像品位が劣化することが分かった。これは、表面処理液が不燃木材の表面で弾かれて、均一に塗布されていないためと考えられる。一方、接触式の塗布方法で表面処理液を塗布した場合、実施例48および実施例50のように動的接触角が28.3°と高い場合でも、表面処理液を均一に塗布することができ、高い画像品位を確認することができた。また、実施例49で示されるように、不燃木材に対する表面処理液の動的接触角が10°以上である場合に、画像品位を確保することができることを確認した。
本発明の不燃木材の加飾物品の製造方法および加飾物品、並びに不燃木材の表面処理済物品の製造方法および表面処理済物品に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
上記本発明の不燃木材の加飾物品の製造方法においては、表面処理液塗布工程において、表面処理液を接触式の塗布方法によって塗布することができる。
また、上記本発明の不燃木材の加飾物品の製造方法において、表面処理液の不燃木材に対する動的接触角を10°以上とすることができる。
また、上記本発明の不燃木材の加飾物品の製造方法においては、表面処理液塗布工程において、吸水性が0.44g/cm以上の塗布部材を用いて表面処理液を塗布することが好ましい。
また、上記本発明の不燃木材の加飾物品の製造方法においては、表面処理液塗布工程において、30kPaの圧力で押圧した場合に変形量が25mm以下の塗布部材を用いて表面処理液を塗布することが好ましい。
また、上記本発明の不燃木材の加飾物品の製造方法においては、表面処理液塗布工程において、5kPa以上の圧力で塗布部材を不燃木材に押し当てて表面処理液を塗布することが好ましい。
また、上記本発明の不燃木材の加飾物品の製造方法においては、表面処理液塗布工程において、不燃木材に塗布される表面処理液の量を7g/m以上とすることができる。
本発明の加飾物品は、木材に不燃処理を施した不燃木材と、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を用いて不燃木材の表面に形成された表面処理層と、表面処理層上に形成されたインクジェット印刷層とを備え、表面処理層が、不燃木材に対する表面処理液の塗布量を50g/m以下として形成される。
本発明の不燃木材の表面処理済物品の製造方法は、木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する表面処理液塗布工程を含み、表面処理液塗布工程において、不燃木材に塗布される表面処理液の量が50g/m以下である。
本発明の不燃木材の表面処理済物品は、木材に不燃処理を施した不燃木材と、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を用いて不燃木材の表面に形成された表面処理層とを備え、表面処理層が、不燃木材に対する表面処理液の塗布量を50g/m以下として形成される。
W 不燃木材
S 塗布面
P 圧力計

Claims (10)

  1. 木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する表面処理液塗布工程と、前記表面処理液が塗布された不燃木材に対してインクジェット印刷を施す印刷工程とを含み、
    前記表面処理液塗布工程において、前記不燃木材に塗布される表面処理液の量が50g/m以下である不燃木材の加飾物品の製造方法。
  2. 前記表面処理液塗布工程において、前記表面処理液を接触式の塗布方法によって塗布する請求項1記載の不燃木材の加飾物品の製造方法。
  3. 前記表面処理液の前記不燃木材に対する動的接触角が10°以上である請求項2記載の不燃木材の加飾物品の製造方法。
  4. 前記表面処理液塗布工程において、吸水性が0.44g/cm以上の塗布部材を用いて前記表面処理液を塗布する請求項2または3記載の不燃木材の加飾物品の製造方法。
  5. 前記表面処理液塗布工程において、30kPaの圧力で押圧した場合に変形量が25mm以下の塗布部材を用いて前記表面処理液を塗布する請求項2から4いずれか1項記載の不燃木材の加飾物品の製造方法。
  6. 前記表面処理液塗布工程において、5kPa以上の圧力で塗布部材を前記不燃木材に押し当てて前記表面処理液を塗布する請求項2から5いずれか1項記載の不燃木材の加飾物品の製造方法。
  7. 前記表面処理液塗布工程において、前記不燃木材に塗布される表面処理液の量が7g/m以上である請求項1から6いずれか1項記載の不燃木材の加飾物品の製造方法。
  8. 木材に不燃処理を施した不燃木材と、
    少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を用いて前記不燃木材の表面に形成された表面処理層と、
    前記表面処理層上に形成されたインクジェット印刷層とを備え、
    前記表面処理層が、前記不燃木材に対する前記表面処理液の塗布量を50g/m以下として形成された加飾物品。
  9. 木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する表面処理液塗布工程を含み、
    前記表面処理液塗布工程において、前記不燃木材に塗布される表面処理液の量が50g/m以下である不燃木材の表面処理済物品の製造方法。
  10. 木材に不燃処理を施した不燃木材と、
    少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を用いて前記不燃木材の表面に形成された表面処理層とを備え、
    前記表面処理層が、前記不燃木材に対する前記表面処理液の塗布量を50g/m以下として形成された不燃木材の表面処理済物品。
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