JP2021167649A - 転がり軸受 - Google Patents

Abstract

【課題】転がり軸受が回転することによる遠心力によって、保持器が変形するのをできるだけ抑える。
【解決手段】保持器１４は、環状体３１と、複数の第一のつの３２と、第一のつの３２の径方向内方に位置する第二のつの３２とを有する。第一のつの３２の径方向外側部は、軸方向他方に向かうにしたがって径方向内方に向かう傾斜形状を有すると共に、軸方向他方及び径方向外方に開口する窪み部３７を有する。窪み部３７は、周方向一方側に設けられ周方向他方に向く第一側壁面７１と、周方向他方側に設けられ周方向一方に向く第二側壁面７２と、第一側壁面７１と第二側壁面７２との間に設けられている底壁面７４と、底壁面７４の軸方向一方側から径方向外方に立ち上がるようにして設けられ軸方向他方に向く第三側壁面７３と、に囲まれる領域によって構成されている。
【選択図】 図２

Description

本発明は、転がり軸受に関する。

転がり軸受は、内輪と、外輪と、これら内輪と外輪との間に設けられている複数の転動体と、環状の保持器とを備える。転動体が玉である玉軸受の場合、いわゆる冠型と呼ばれる樹脂製の保持器が用いられることがある。冠型の保持器は、転動体の軸方向一方に位置する環状体と、複数のつのとを有する。つのは、環状体から軸方向他方に延びて設けられている。特許文献１に、冠型の保持器を備える転がり軸受が開示されている。

特開２０１７−１６６５３２号公報

冠型の保持器が有するつのは、前記のとおり、環状体から軸方向他方に延びて設けられていて、片持梁状となっている。このため、特に高速で転がり軸受が回転し、それに応じて保持器が回転すると、つのは遠心力の影響を受けて径方向外方に弾性変形する。つのが大きく変形すると、その一部が、例えば外輪の内周面に接触したり、転動体に局部的に接触したりする。すると、保持器が偏摩耗したり、転がり軸受の温度が過度に上昇してしまい、潤滑剤にも悪影響を与える。

そこで、本開示は、転がり軸受が回転することによる遠心力によって、保持器が変形するのをできるだけ抑えることが可能となる転がり軸受を提供することを目的とする。

本開示の転がり軸受は、内輪軌道を外周側に有する内輪と、外輪軌道を内周側に有する外輪と、前記内輪軌道と前記外輪軌道との間に設けられている複数の玉と、前記複数の玉を周方向に間隔をあけて保持する環状の保持器と、を備え、
前記保持器は、前記玉の軸方向一方に位置する環状体と、前記環状体の径方向外側の部分から軸方向他方に延びて設けられている複数の第一のつのと、前記第一のつのの径方向内方に位置しかつ前記環状体の径方向内側の部分から軸方向他方に延びて設けられている複数の第二のつのと、を有し、
周方向で隣り合う前記第一のつのの間が前記玉を収容するポケットであり、
前記第一のつのの径方向外側部は、軸方向他方に向かうにしたがって径方向内方に向かう傾斜形状を有すると共に、軸方向他方及び径方向外方に開口する窪み部を有し、
前記窪み部は、周方向一方側に設けられ周方向他方に向く第一側壁面と、周方向他方側に設けられ周方向一方に向く第二側壁面と、前記第一側壁面と前記第二側壁面との間に設けられている底壁面と、前記底壁面の軸方向一方側から径方向外方に立ち上がるようにして設けられ軸方向他方に向く第三側壁面と、に囲まれる領域によって構成されている。

前記転がり軸受によれば、保持器が有する第一のつのの径方向外側部は、傾斜形状を有すると共に、窪み部が形成されていることで、第一のつのは軽量化される。このため、保持器が回転した際、第一のつのに作用する遠心力を小さくすることができ、保持器が遠心力の影響で変形するのをできるだけ抑えることが可能となる。

また、好ましくは、前記環状体は、円環形状を有し、当該環状体の外周面は、前記底壁面よりも径方向外方に位置すると共に、保持器中心線を中心とする円筒形状を有し、前記第三側壁面は、前記底壁面と前記環状体の外周面との間を結ぶ面である。
前記構成によれば、環状体に、第一のつののように窪み部が無いため、環状体は剛性が高く、保持器の変形が抑制される。

また、好ましくは、前記第二のつのは、前記環状体の径方向内側の部分から軸方向に延びて設けられている本体部と、前記本体部の軸方向他方側の部分から前記内輪軌道側に突出して設けられていて当該内輪軌道に接触することで前記保持器の位置決めを行う突出部と、を有する。
この構成により、第二のつのは、保持器の位置決めを行うガイド部としての機能も有する。

更に、好ましくは、前記環状体の径方向内側の部分は、軸方向一方側に、当該径方向内側の部分の肉厚を薄くする傾斜状の側面を有し、前記突出部の径方向内側の端は、前記内輪の軸方向一方側の肩部の外周面よりも、径方向内方に位置していて、前記第二のつのが有する径方向外側の面を、軸方向一方に延長した仮想面は、前記傾斜状の側面の途中位置と交差する。
転がり軸受の組み立ての際、内輪軌道と外輪軌道との間に複数の玉を配置し、その玉に対して保持器を軸方向一方側から接近させ、保持器を玉に組み付ける。この組み付けの際、前記構成によれば、第二のつのは、内輪の軸方向一方の肩部を乗り越える必要があり、環状体の径方向内側の部分を起点として、径方向外方へ向かって弾性変形する。このように第二のつのが弾性変形しても、前記仮想面が前記傾斜状の側面の途中位置と交差することから、環状体の径方向内側の部分に局部応力が発生するのを防ぐことが可能となる。

本開示の発明によれば、保持器が遠心力の影響で変形するのをできるだけ抑えることが可能となる。

転がり軸受の断面図である。 保持器の斜視図である。 保持器及びその周囲を示す断面図である。 保持器の一部を軸方向他方側から見た拡大図である。 図４におけるＶ矢視の断面図である。 保持器の一部を径方向外側から見た拡大図である。 保持器を軸方向一方側から見た斜視図である。 グリースの流れを説明する図である。

図１は、転がり軸受の断面図である。図１に示す転がり軸受１０は、内輪１１と、外輪１２と、これら内輪１１と外輪１２との間に設けられている複数の転動体と、環状の保持器１４とを備える。本開示の前記転動体は、玉１３であり、転がり軸受１０は玉軸受（深溝玉軸受）である。転がり軸受１０は潤滑剤により潤滑される。本開示では、潤滑剤としてオイルが用いられてもよいが、グリースが用いられる。グリースとしては、チャーニング性のグリースであってもよいが、チャンネリング性のグリースが好ましい。図１は、転がり軸受１０の中心線Ｃ（「軸受中心線Ｃ」とも言う。）を含む断面を示す。

本開示において、内輪１１、外輪１２、保持器１４の各説明における「軸方向」「径方向」「周方向」について定義する。「軸方向」とは、内輪１１、外輪１２、保持器１４それぞれの中心線に沿った方向である。なお、その軸方向には、前記中心線に平行な方向も含まれる。「径方向」とは、内輪１１、外輪１２、保持器１４それぞれの中心線に直交する方向である。「周方向」とは、内輪１１、外輪１２、保持器１４それぞれの中心線を中心とした円に沿う方向である。各図において、内輪１１、外輪１２、保持器１４それぞれの中心線が一致した状態でのその中心線の符号を「Ｃ」としている。保持器１４の中心線を「保持器中心線」と称する。

図１に示す転がり軸受１０は、更に、軸方向両側にシール１５を備える。シール１５は、内輪１１と外輪１２との間に形成される環状空間１６（「軸受内部」とも言う。）のグリースが外部（軸受外部）へ漏れるのを防ぐ。また、シール１５は、軸受外部の異物が軸受内部へ侵入するのを防止する機能も備える。

内輪１１は環状の部材であり、その外周側に、玉１３が転がり接触する内輪軌道２１が形成されている。図１に示す断面において、内輪軌道２１は、玉１３の半径よりも僅かに大きな半径の凹円弧形状を有する溝により構成されている。内輪１１が有する軸方向両側の肩部２５，２５それぞれの外周側に、凹溝２３が形成されている。凹溝２３とシール１５の内周部とが隙間を有して対向している。この隙間によりラビリンス隙間が構成される。

外輪１２は環状の部材であり、その内周側に、玉１３が転がり接触する外輪軌道２２が形成されている。図１に示す断面において、外輪軌道２２は、玉１３の半径よりも僅かに大きな半径の凹円弧形状を有する溝により構成されている。外輪１２が有する軸方向両側の肩部２６，２６それぞれの内周側に、シール溝２４が形成されている。シール溝２４にシール１５の外周部が取り付けられている。

玉１３は、内輪軌道２１と外輪軌道２２との間に複数設けられている。転がり軸受１０（内輪１１）が回転すると、玉１３は内輪軌道２１及び外輪軌道２２を転動する。

図２は、保持器１４の斜視図である。図３は、保持器１４及びその周囲を示す断面図である。保持器１４は、環状体（環状部）３１と、複数の第一のつの（第一の柱部）３２と、複数の第二のつの（第二の柱部）３３とを有する。環状体３１は、円環形状の部分であり、玉１３の軸方向一方に位置する。第一のつの３２はすべて同じ形状である。第二のつの３３はすべて同形状である。

第一のつの３２は、環状体３１の径方向外側の部分３１ａ（図３参照）から軸方向他方に延びて設けられている。環状体３１の軸方向他方側であって、周方向で隣り合う一対の第一のつの３２，３２の間が、玉１３を収容するポケット３０となる。ポケット３０は周方向に沿って複数形成されている。

第二のつの３３は、第一のつの３２の径方向内方に隙間を有して位置して設けられている。第二のつの３３は、環状体３１の径方向内側の部分３１ｂから軸方向他方に延びて設けられている。第一のつの３２と第二のつの３３との間に径方向の隙間が設けられている。この隙間は、周方向で隣り合う一対のポケット３０，３０間を繋ぐ溝１７となる。

以上より、保持器１４は、複数の玉１３を周方向に間隔をあけて保持することができる。第一のつの３２は、周方向に臨む面２８を有する。その面２８は、中心線Ｃとポケット３０の中心を含む仮想平面に対して平行であり、ポケット３０において向かい合う二つの面２８，２８は前記仮想平面との距離が同一である。その面２８に玉１３が接触可能である。環状体３１は軸方向他方側に臨む面２９を有する。面２９は、軸受中心線Ｃに垂直な面に沿った平面である。その面２９に玉１３が接触可能である。保持器１４は、例えばポリアミド等の樹脂製（合成樹脂製）であり、射出成形によって製造される。環状体３１と第一のつの３２と第二のつの３３とは一体成形されており、保持器１４は単一部材からなる。

第二のつの３３について更に説明する。第二のつの３３は、環状体３１の径方向内側の部分３１ｂ（図３参照）から軸方向他方に延びて設けられている。第二のつの３３は、本体部６１と、突出部３５とを有する。本体部６１は、環状体３１の径方向内側の部分３１ｂから軸方向他方に延びて設けられている。突出部３５は、本体部６１の軸方向他方側の部分６１ａから内輪軌道２１側に突出して設けられている。

突出部３５が内輪軌道２１に接触可能である。突出部３５が内輪軌道２１に接触することで、保持器１４の位置決めが行われる。保持器１４の位置決めについて更に説明する。保持器１４の中心線が、内輪１１の中心線と一致する状態で（図３の状態で）、突出部３５と内輪軌道２１との間に隙間が形成される。この状態から、保持器１４が径方向に変位すると、突出部３５が内輪軌道２１に径方向から接触する。これにより、保持器１４の径方向の変位が制限される。図３の状態から、保持器１４が軸方向一方に変位すると、突出部３５が内輪軌道２１に軸方向から接触する。これにより、保持器１４の軸方向一方の変位が制限される。なお、図３の状態から、保持器１４が軸方向他方に変位すると、環状体３１の前記面２９が玉１３に接触する。これにより、保持器１４の軸方向他方の変位が制限される。

このように、第二のつの３３は、保持器１４の径方向及び軸方向の移動を制限する機能を有する。つまり、第二のつの３３は、内輪軌道２１に接触することで保持器１４の位置決めを行うガイド部としての機能を有する。第二のつの３３が内輪軌道２１に接触（滑り接触）することによって保持器１４の回転が案内される。すなわち、本開示の保持器１４は、軌道ガイド（内輪軌道ガイド）の保持器となる。

転がり軸受１０（図１参照）を組み立てるためには、内輪軌道２１と外輪軌道２２との間に複数の玉１３を配置し、その玉１３に対して保持器１４を軸方向一方側から接近させ、保持器１４を玉１３に組み付ける。図３に示すように、突出部３５の径方向内側の端３５ａは、内輪１１の軸方向一方側の肩部２５の外周面２５ａよりも、径方向内方に位置している。このため、前記組み付けの際、第二のつの３３は、肩部２５を乗り越える必要がある。その際、環状体３１の径方向内側の部分３１ｂを起点として、第二のつの３３は、径方向外方へ向かって弾性変形する。第二のつの３３は、肩部２５を乗り越えると、弾性復元力により元の状態に戻り、突出部３５が内輪軌道２１に接触可能な状態となる。

図４は、保持器１４の一部を軸方向他方側から見た拡大図である。図５は、図４におけるＶ矢視の断面図である。なお、図３は、図４におけるＩＩＩ矢視の断面図である。図６は、保持器１４の一部を径方向外側から見た拡大図である。
図５に示すように、第一のつの３２の径方向外側部は、全体として、軸方向他方に向かうにしたがって径方向内方に向かう傾斜形状を有する。更に、図４、図５及び図６に示すように、第一のつの３２は、径方向外側部に窪み部３７を有する。窪み部３７は、第一のつの３２の径方向外側部において、軸方向の一方側から他方側にわたって設けられていて、軸方向他方及び径方向外方に開口している。窪み部３７が前記のように開口していることで、保持器１４は樹脂製であり分割金型で製造することから、その分割金型が無理抜きにならずに成型可能となる。

窪み部３７により、第一のつの３２は、その窪み部３７の周方向についての両側に一対のつの本体３８，３８と、一対のつの本体３８，３８の間に設けられているリブ４０とを有する。リブ４０は、つの本体３８よりも径方向の寸法が小さい板状である。図４及び図６に示すように、リブ４０は、環状体３１と一対のつの本体３８，３８とを繋ぐ。リブ４０は、一対のつの本体３８，３８の間のうちの径方向内側寄りの位置に設けられている（図４、図５参照）。図６に示すように、リブ４０の軸方向他方側の側面４０ａと、つの本体３８の軸方向他方側の側面３８ａとは、共通する平面上に存在する。その平面は、軸受中心線Ｃに直交する面である。リブ４０は溝１７を径方向外側から覆っていて、溝１７のグリースが径方向外方に逃げにくくなっている。

図５及び図６において、第一のつの３２が有する周方向一方側のつの本体３８は、第一側壁面７１を有する。第一側壁面７１は、第一のつの３２において、周方向一方側に設けられていて、周方向他方に向く面である。第一のつの３２が有する周方向他方側のつの本体３８は、第二側壁面７２を有する。第二側壁面７２は、第一のつの３２のうち、周方向他方側に設けられていて、周方向一方に向く面である。リブ４０は、径方向外方に向く面として底壁面７４を有する。底壁面７４は、第一側壁面７１と第二側壁面７２との間に設けられている面である。環状体３１の径方向外側の部分３１ａは、第三側壁面７３を有する。第三側壁面７３は、底壁面７４の軸方向一方側から径方向外方に立ち上がるようにして設けられていて、軸方向他方に向く面である。

環状体３１の外周面３１ｃは、底壁面７４よりも径方向外方に位置する。第三側壁面７３は、底壁面７４と環状体３１の外周面３１ｃとの間を結ぶ面である。
第一側壁面７１と、第二側壁面７２と、底壁面７４と、第三側壁面７３とに囲まれる領域によって、窪み部３７は構成されている。

図７は、保持器１４を軸方向一方側から見た斜視図である。図２と図７とに示すように、環状体３１は、円環形状を有する。環状体３１の外周面３１ｃは、中心線Ｃ（保持器中心線）を中心とする凹凸の無い円筒形状を有する。
図３、図５及び図７に示すように、環状体３１の軸方向一方側の側面４５は、周方向に連続する円環状の側面４６と、周方向に連続する傾斜状の側面４７とを有する。傾斜状の側面４７は、軸方向他方に向かうにしたがって内径が小さくなるテーパ面である。これら円環状の側面４６及び傾斜状の側面４７には凹部が形成されていない。つまり、環状体３１は、その一部に凹部が設けられおらず（部分的に中空となっておらず）中実構造を有する。

図４に示すように、溝１７は、周方向で隣り合う一対のポケット３０，３０間を繋ぐ。溝１７は、グリース（潤滑剤）を存在可能とする凹溝である。溝１７は、第一のつの３２と第二のつの３３とにより径方向に囲まれた空間により構成されている。溝１７は軸方向他方側で開口すると共に、軸方向一方側で環状体３１により塞がれている。第一のつの３２が、溝１７の径方向外側における壁を構成する。第二のつの３３が、溝１７の径方向内側における壁を構成する。

本開示では、溝１７は、周方向の中央で溝幅が径方向に拡大している。図４では、溝１７の周方向の中央における溝幅の寸法が「Ｗａ」であり、溝１７の周方向の両側それぞれにおける溝幅の寸法が「Ｗｂ」である。溝幅に関してＷａ＞Ｗｂとなっている。このように、第一のつの３２の径方向内側面３４は、周方向の中央で凹んだ形状を有していて、溝１７は、周方向の中央で溝幅が径方向に拡大した形状を有する。

図２において、玉１３が収容されている一つのポケット３０を挟んで、周方向両側の第一のつの３２，３２に着目する。これら第一のつの３２，３２のうち、一方を第一の第一のつの３２−１とし、他方を第二の第一のつの３２−２とする。周方向で隣り合う一対の第一のつの３２−１，３２−２それぞれの軸方向他方側の先端の間隔Ｑは、玉１３の直径よりも大きい。

このため、保持器１４が軸方向一方に変位しようとすると、その保持器１４の変位は玉１３によって制限されない。そこで、前記のとおり保持器１４の第二のつの３３が内輪軌道２１に軸方向から接触可能である（図１参照）。このため、保持器１４は、内輪１１と外輪１２との間から脱落しない。

なお、一般的な深溝玉軸受の場合、いわゆる冠型の保持器が採用される。その冠型の保持器は、つのの先端側に爪部を有し、周方向で隣り合う一対のつのの爪部の間隔は、玉の直径よりも小さい。この構成により、冠型の保持器は、玉によって軸方向の移動が規制され、これにより、その保持器は、内輪と外輪との間から脱落しない。
このような冠型の保持器に対して、本開示の保持器１４では、一般的な冠型の保持器のような玉の直径よりも間隔が小さくなる一対の前記爪部が存在しない。このような爪部が設けられないことで、本開示の保持器１４は第一のつの３２を短くでき軽量化される。

以上のように、本開示の転がり軸受１０が備える保持器１４は、環状体３１と、複数の第一のつの３２と、複数の第二のつの３３とを有する。第一のつの３２は、環状体３１の径方向外側の部分３１ａから軸方向他方に延びて設けられている。第二のつの３３は、環状体３１の径方向内側の部分３１ａから軸方向他方に延びて設けられている。第一のつの３２の径方向外側部は、軸方向他方に向かうにしたがって径方向内方に向かう傾斜形状を有すると共に、窪み部３７を有する。

このように、第一のつの３２の径方向外側部は、傾斜形状を有すると共に、窪み部３７が形成されていることで、第一のつの３２は軽量化される。このため、保持器１４が回転した際、第一のつの３２に作用する遠心力を小さくすることができ、保持器１４が遠心力の影響で変形するのをできるだけ抑えることが可能となる。
したがって、第一のつの３２の一部が、外輪１２の内周面の一部に接触したり、玉１３に局部的に接触したりするのを防ぐことができる。その結果、保持器１４が偏摩耗したり、転がり軸受１０の温度が過度に上昇したりするのを防止することが可能となる。

更に、本開示の転がり軸受１０では、保持器１４の環状体３１は、円環形状を有し、環状体３１の外周面３１ｃは、中心線Ｃを中心とする凹凸の無い円筒形状を有する。つまり、環状体３１に、第一のつの３２のように窪み部３７が無いため、環状体３１は剛性が高く、保持器１４の変形が抑制される。更に、前記のとおり（図７参照）、環状体３１の軸方向一方側の側面４５（円環状の側面４６及び傾斜状の側面４７）には、凹部が形成されていない。つまり、環状体３１は中実構造を有する。このため、環状体３１は剛性が高く、保持器１４の変形がより一層抑制される。

保持器１４の回転は内輪１１によってガイドされる構成であるため、保持器１４が内輪１１寄りに位置する。このため、保持器１４の外径を小さくすることが可能となる。遠心力は、質量、角速度、回転中心からの距離（半径）のいずれかを小さくすれば、小さくなる。よって、本開示の保持器１４によれば、保持器１４が内輪１１寄りに位置するため、保持器１４に働く遠心力をより一層小さくすることが可能である。

転がり軸受１０（内輪１１）が高速で回転した場合、内輪軌道２１に存在するグリースは遠心力で外輪１２側に移動しようとする。しかし、本開示では、そのグリースが第一のつの３２によって受け止められ、第一のつの３２と第二のつの３３との間の溝１７にグリースが溜められる。特に、本開示では、潤滑剤としてチャンネリング性のグリースが用いられることから、溝１７にそのグリースが溜まりやすい。

図８は、グリース（グリースの基油）の流れを説明する図である。外輪１２が静止状態にあり、内輪１１が時計回り（周方向他方）に回転すると、玉１３は自転しながら内輪軌道２１及び外輪軌道２２に沿って公転する。これにより、周方向の一方側（図８では左側）の玉１３及びポケット３０から、内輪１１側に存在していたグリースが溝１７に侵入する。そのグリースの移動を矢印Ｇ１で示す。

溝１７に侵入したグリースは溝１７に滞留する。そのグリースの基油が、溝１７を周方向の例えば他方側（図８では右側）へ供給され、周方向他方側の玉１３の表面に付着する。その玉１３の自転により、その表面に付着した基油が、内輪軌道２１側へ移動する。その基油の移動を矢印Ｇ２で示す。このように、グリースの基油が溝１７から玉１３を通じて内輪１１側に供給されることで、内輪１１側で潤滑剤が不足するのを抑えることが可能となる。この結果、転がり軸受１０の長寿命化を実現することが可能となる。特に、本開示の転がり軸受１０（保持器１４）は、高速回転に好適である。

前記のとおり（図１参照）、転がり軸受１０の組み立ての際、内輪軌道２１と外輪軌道２２との間に配置した複数の玉１３に対して、保持器１４を軸方向一方側から接近させ、保持器１４を玉１３に組み付ける。この組み付けの際、第二のつの３３は、肩部２５を乗り越えるために、環状体３１の径方向内側の部分３１ｂを起点として、径方向外方へ向かって弾性変形する。
図３及び図５に示すように、環状体３１の径方向内側の部分３１ｂは、軸方向一方側に傾斜状の側面４７を有する。この傾斜状の側面４７により、径方向内側の部分３１ｂの肉厚が薄くなる。このため、径方向内側の部分３１ｂから延びて設けられている第二のつの３３は弾性変形しやすく、玉１３に対する保持器１４の組み付けが容易となる。

更に、本開示では、第二のつの３３が有する径方向外側の面５１を、軸方向一方に延長した仮想面４８は、傾斜状の側面４７の途中位置Ｐで交差する。転がり軸受１０の組み立ての際、第二のつの３３が径方向外方へ向かって弾性変形しても、前記仮想面４８が傾斜状の側面４７の途中位置Ｐと交差することから、環状体３１の径方向内側の部分３１ｂに局部応力が発生するのを防ぐことが可能となる。
なお、環状体３１の径方向内側の部分３１ｂに局部応力が作用すると、樹脂製である保持器１４の一部（径方向内側の部分３１ｂ）に白化が生じたり、塑性変形したりする等の不具合が生じてしまう。しかし、本開示の保持器１４によれば、このような不具合を防ぐことが可能となる。

今回開示した実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲に記載された構成と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。
前記実施形態では、転がり軸受が深溝玉軸受である場合について説明したが、アンギュラ玉軸受であってもよい。

１０：転がり軸受 １１：内輪 １２：外輪
１３：玉 １４：保持器 ２１：内輪軌道
２２：外輪軌道 ２５：肩部 ２５ａ：外周面
３０：ポケット ３１：環状体 ３１ａ：径方向外側の部分
３１ｂ：径方向内側の部分 ３１ｃ：外周面 ３２：第一のつの
３３：第二のつの ３５：突出部 ３５ａ：端
３７：窪み部 ４５：側面 ４６：円環状の側面
４７：傾斜状の側面 ４８：仮想面 ５１：径方向外側の面
６１：本体部 ７１：第一側壁面 ７２：第二側壁面
７３：第三側壁面 ７４：底壁面 Ｐ：途中位置

Claims (4)

1. 内輪軌道を外周側に有する内輪と、外輪軌道を内周側に有する外輪と、前記内輪軌道と前記外輪軌道との間に設けられている複数の玉と、前記複数の玉を周方向に間隔をあけて保持する環状の保持器と、を備え、
   前記保持器は、前記玉の軸方向一方に位置する環状体と、前記環状体の径方向外側の部分から軸方向他方に延びて設けられている複数の第一のつのと、前記第一のつのの径方向内方に位置しかつ前記環状体の径方向内側の部分から軸方向他方に延びて設けられている複数の第二のつのと、を有し、
   周方向で隣り合う前記第一のつのの間が前記玉を収容するポケットであり、
   前記第一のつのの径方向外側部は、軸方向他方に向かうにしたがって径方向内方に向かう傾斜形状を有すると共に、軸方向他方及び径方向外方に開口する窪み部を有し、
   前記窪み部は、周方向一方側に設けられ周方向他方に向く第一側壁面と、周方向他方側に設けられ周方向一方に向く第二側壁面と、前記第一側壁面と前記第二側壁面との間に設けられている底壁面と、前記底壁面の軸方向一方側から径方向外方に立ち上がるようにして設けられ軸方向他方に向く第三側壁面と、に囲まれる領域によって構成されている、転がり軸受。
2. 前記環状体は、円環形状を有し、当該環状体の外周面は、前記底壁面よりも径方向外方に位置すると共に、保持器中心線を中心とする円筒形状を有し、
   前記第三側壁面は、前記底壁面と前記環状体の外周面との間を結ぶ面である、
   請求項１に記載の転がり軸受。
3. 前記第二のつのは、
   前記環状体の径方向内側の部分から軸方向に延びて設けられている本体部と、
   前記本体部の軸方向他方側の部分から前記内輪軌道側に突出して設けられていて当該内輪軌道に接触することで前記保持器の位置決めを行う突出部と、
   を有する、請求項１又は２に記載の転がり軸受。
4. 前記環状体の径方向内側の部分は、軸方向一方側に、当該径方向内側の部分の肉厚を薄くする傾斜状の側面を有し、
   前記突出部の径方向内側の端は、前記内輪の軸方向一方側の肩部の外周面よりも、径方向内方に位置していて、
   前記第二のつのが有する径方向外側の面を、軸方向一方に延長した仮想面は、前記傾斜状の側面の途中位置と交差する、請求項３に記載の転がり軸受。

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