JP2021167625A - 緩衝器 - Google Patents

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【課題】位置決めブラケットをアウターシェルへ溶接してもブラケット取付部の高い真円度を実現できる緩衝器の提供である。【解決手段】本発明における緩衝器Dは、筒状であって下端側外周に車両のナックルに接続されるブラケット3が嵌合されるブラケット取付部1aを有するアウターシェル1と、アウターシェル1の外周に溶接によって接合されてブラケット3に当接してブラケット3のアウターシェル1に対する軸方向の位置を位置決めする位置決めブラケット11とを備え、位置決めブラケット11は、アウターシェル1の外周であってブラケット取付部1aから離間した位置に溶接される取付片11aと、取付片11aからブラケット取付部1a側へ延びてアウターシェル1の外周から離間するとともにブラケット3の上端面3fに当接する当接片11bとを備えている。【選択図】図2

Description

本発明は、緩衝器に関する。
緩衝器は、アウターシェルと、アウターシェル内に移動自在に挿入されるピストンロッドとを備え、たとえば、車両におけるサスペンションに組み込まれて使用され、アウターシェルに対してピストンロッドが軸方向に移動する伸縮時に減衰力を発揮して車体と車輪の振動を抑制する。このようにサスペンションに組み込まれる緩衝器は、たとえば、車両の車体にピストンロッドを連結するマウントと、車輪を保持するナックルにアウターシェルを連結するためのブラケットとによって、車体と車輪との間に介装される。
緩衝器がストラットとして利用される場合、車輪を回転可能に支持するハブが装着されるナックルから延長されるナックルキャリアと称されるブラケットで緩衝器が保持されることがある。また、サスペンションがダブルウイッシュボーンである場合、緩衝器は、二股のフォークブラケットを介してナックルを揺動自在に車体に連結するロアアームに連結されることがある。
いずれのケースでも、ブラケットは、割りを有して断面C型に形成される抱持部を備えており、抱持部内に嵌合される緩衝器におけるアウターシェルの下端を抱持してアウターシェルとナックルに連結する。また、抱持部の両端には、ボルト孔を備えて互いに対向するボルト受片が設けられており、ボルト受片にはボルトが挿通され、ボルトにはナットが螺着される。そして、ボルトとナットとでボルト受片同士を引き寄せるように締め付けて、抱持部にアウターシェルを強く緊迫する緊迫力を与えると、ブラケットは、アウターシェルに固定される。
このようにアウターシェルの外周の緊迫によってブラケットが固定されるが、緩衝器は、アウターシェルに対してブラケットを所定の位置に取り付けできるようにアウターシェルの外周に溶接によって接合される位置決めブラケットを備えている。
位置決めブラケットは、アウターシェルの外周に溶接される円弧状の取付部と、取付片の中央から延びる係止突起とを備えている。そして、位置決めブラケットは、取付部をブラケットの端面に当接させてブラケットのアウターシェルに対する軸方向の位置決めをし、さらに、抱持部の割り内に挿入される係止突起でブラケットのアウターシェルに対する周方向の回転を規制している(たとえば、特許文献1参照)。
特開2006−82492号公報
このように構成された緩衝器では、ブラケットの抱持部と抱持部が嵌合されるアウターシェルの外周との間にガタがあると、車両の車体に対する車輪の位置にずれが生じてしまうため、アウターシェルのブラケットが嵌合される部位に対して高い真円度が要求される。
ところが、位置決めブラケットがアウターシェルの外周であってブラケットが嵌合される部位の至近で溶接されるため、当該部位が位置決め部材の溶接によって歪んでしまう場合があった。
そこで、本発明は、位置決めブラケットをアウターシェルへ溶接してもアウターシェルのブラケット取付部の高い真円度を実現できる緩衝器の提供を目的としている。
前記した課題を解決するために、本発明の緩衝器は、筒状であって下端側外周に車両のナックルに接続されるブラケットが嵌合されるブラケット取付部を有するアウターシェルと、アウターシェルの外周に溶接によって接合されてブラケットに当接してブラケットのアウターシェルに対する軸方向の位置を位置決めする位置決めブラケットとを備え、位置決めブラケットは、アウターシェルの外周であってブラケット取付部から離間した位置に溶接される取付片と、取付片からブラケット取付部側へ延びてアウターシェルの外周から離間するとともにブラケットの上端面に当接する当接片とを備えている。
このように構成された緩衝器では、位置決めブラケットがアウターシェルに溶接される取付片と取付片から延びてアウターシェルから離間する当接片とを備えているので、アウターシェルに溶接により接合される取付片とブラケット取付部とを離間させるとともにブラケットをブラケット取付部に配置させ得る。
また、緩衝器における位置決めブラケットは、当接片からブラケット側へ突出し、ブラケットのブラケット取付部に嵌合される割入り断面C型の抱持部の割内に挿入されてブラケットのアウターシェルに対する周方向への回転を規制する回転防止片を備えていてもよい。このように構成された緩衝器によれば、ブラケットを軸方向だけでなく周方向にも位置決めできるとともにブラケットの周方向の回転を規制できるので、ブラケットのアウターシェルへの取付け時の位置合わせ作業が容易となるだけでなく、ブラケット或いはアウターシェルにトルクが作用してもブラケットとアウターシェルとの位置ずれを阻止できる。
さらに、緩衝器における取付片は、アウターシェルに対してプロジェクション溶接によって接合されてもよい。このように構成された緩衝器によれば、プロジェクション溶接時に電流が分流されるのを回避でき溶接不良の発生を阻止できるとともに、プロジェクション溶接時の荷重の作用によってブラケット取付部の真円度を損なうことがない。
本発明の緩衝器によれば、位置決めブラケットをアウターシェルへ溶接してもアウターシェルのブラケット取付部の高い真円度を実現できる。
一実施の形態における緩衝器の側面図である。 一実施の形態における緩衝器の下端部の拡大断面図である。
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、緩衝器Dは、筒状であって下端1b側外周にブラケット3が嵌合されるブラケット取付部1aを有するアウターシェル1と、アウターシェル1の外周に溶接によって接合されてブラケット3に当接してブラケット3のアウターシェル1に対する軸方向の位置を位置決めする位置決めブラケット11とを備えて構成されており、ブラケット3を利用して図示しない車両の車輪を支持するナックルに連結される。
緩衝器Dは、下端がロアキャップ2によって閉塞される筒状のアウターシェル1と、アウターシェル1内に挿入されたシリンダ4と、シリンダ内に移動自在に挿入されるピストンロッド5と、ピストンロッド5に連結されるとともにシリンダ4内に挿入されてシリンダ4内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン6とを備えている。
伸側室R1と圧側室R2は、作動油が充填されている。また、緩衝器Dに使用される液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体でもよい。アウターシェル1とシリンダ4との間の環状隙間は、リザーバ8として利用され、液体として作動油とガスが充填されている。
ピストン6は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側ポート6aと圧側ポート6bを備えており、ピストン6の上面と下面にはそれぞれ圧側のリーフバルブVcと伸側のリーフバルブVeが積層される。伸側のリーフバルブVeは、ピストン6の下面に積層されて伸側ポート6aの下端を閉塞しており、伸側室R1の圧力によって撓むことで伸側ポート6aを開放して伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える。圧側のリーフバルブVcは、ピストン6の上面に積層されて圧側ポート6bの上端を閉塞しており、圧側室R2の圧力によって撓むことで圧側ポート6bを開放して圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与える。
なお、図示はしないが、アウターシェル1の上端には、ピストンロッド5の外周に摺接するロッドガイドが装着されている。また、シリンダ4の下端には、図2に示すように、バルブケース7が嵌合されており、アウターシェル1の下端1b側の内周に溶接されたロアキャップ2とロッドガイドとでシリンダ4とバルブケース7が挟持されてアウターシェル1に対して固定される。なお、アウターシェル1は、下端部の内径をそれより上方側よりも大径に形成して設けた内径大径部1cと、内径大径部1cを設けることで内周に形成される段部1dとを備えている。そして、円盤状のロアキャップ2は、段部1dに当接するまでアウターシェル1内に挿入された状態でアウターシェル1の内周に溶接によって接合されている。アウターシェル1におけるブラケット取付部1aは、図1に示したところでは、ブラケット3が嵌合されている部位、つまり、アウターシェル1のブラケット3の図1中上端から下端までに対向する範囲となっている。また、アウターシェル1のブラケット取付部1aから下端1bまでの外周の外径は一定して変化せず、アウターシェル1のブラケット取付部1aから下端1bまで外周形状は、ストレートな円筒形状となっている。なお、段部1dは、ロアキャップ2の溶接によってブラケット取付部1aに歪が生じないように、アウターシェル1のブラケット取付部1aが設けられる位置から軸方向で下端1b側に離間した位置に設けられている。
また、バルブケース7は、リザーバ8と圧側室R2とを連通する吸込ポート7aと排出ポート7bと、下端外周に切欠7dが形成される環状の脚部7cとを備えている。吸込ポート7aの上端は、環状のチェックバルブ9によって閉塞されている。チェックバルブ9は、リザーバ8の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなると撓んで吸込ポート7aを開放してリザーバ8から圧側室R2へ向かう液体の流れを許容するが、圧側室R2からリザーバ8へ向かう液体の流れを阻止する。排出ポート7bの下端は、環状のベースバルブ10によって閉塞されている。ベースバルブ10は、圧側室R2の圧力によって撓むことで排出ポート7bを開放して圧側室R2からリザーバ8へ向かう液体の流れに抵抗を与える。
緩衝器Dは、アウターシェル1に対してピストンロッド5が上方へ移動する伸長時には、ピストン6によって圧縮される伸側室R1から拡大する圧側室R2へ移動する液体の流れに対して伸側のリーフバルブVeが抵抗を与えて伸長を妨げる減衰力を発生する。緩衝器Dの伸長時には、チェックバルブ9が開いて作動油が吸込ポート7aを介してリザーバ8から圧側室R2へ供給され、ピストンロッド5がシリンダ4内から退出する体積が補償される。他方、緩衝器Dは、アウターシェル1に対してピストンロッド5が下方へ移動する収縮時には、ピストン6によって圧縮される圧側室R2から拡大する伸側室へ移動する液体の流れに対して圧側のリーフバルブVcが抵抗を与える。また、緩衝器Dの収縮時には、ベースバルブ10が開いて作動油が排出ポート7bを介して圧側室R2からリザーバ8へ排出され、ピストンロッド5がシリンダ4内へ侵入する体積が補償される。よって、緩衝器Dは、収縮時には、圧側のリーフバルブVcとベースバルブ10とにより収縮を妨げる減衰力を発生する。なお、ピストン6に積層される圧側のリーフバルブVcをチェックバルブへ変更してもよく、その場合には圧側の減衰力はベースバルブ10のみによって発生される。
また、前述した緩衝器Dは、いわゆる複筒型の緩衝器とされているが、アウターシェル1の内周にピストンを摺接させてアウターシェル1内をピストンで伸側室と圧側室とに区画するいわゆる単筒型の緩衝器とされてもよい。
ロアキャップ2は、図2に示すように、円盤状であって、平らな円形の鏡部2aと、鏡部2aの外周からアウターシェル1の上端側へ向けて傾斜する円錐形状のテーパ部2bと、テーパ部2bの外周から水平に外方へ向けて突出する環状のフランジ部2cとを備えている。
このように構成されたロアキャップ2は、フランジ部2cがアウターシェル1の下端1b側の内径大径部1cに嵌合されて段部1dに当接するまでアウターシェル1内に挿入される。このように、ロアキャップ2をアウターシェル1の下端1bの内周に挿入すると、アウターシェル1の内径大径部1cとロアキャップ2の外周側であってフランジ部2cとテーパ部2bとで囲まれる環状の空隙Gがアウターシェル1の下端内方に形成される。
そして、ロアキャップ2をアウターシェル1に固定するには、前述のようにロアキャップ2をアウターシェル1の下端1b側の内径大径部1cに嵌合した状態として、ロアキャップ2のフランジ部2cとアウターシェル1の内径大径部1cとをアーク溶接する。このように、ロアキャップ2とアウターシェル1とを溶接すると、溶接棒と、ロアキャップ2およびアウターシェル1の母材が溶接時に発生する熱で溶融して、ロアキャップ2とアウターシェル1との接合部に溶接ビードBが生じる。
溶接ビードBは、ロアキャップ2とアウターシェル1との接合部に盛り上がるようにして形成される。ところが、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロアキャップ2がアウターシェル1の内周であって下端1bから上方側にずれた位置で溶接されため、ロアキャップ2とアウターシェル1の内周との間に空隙Gが形成され、溶接ビードBがこの空隙Gに貯留されてアウターシェル1の外周側へはみ出ない。
ロアキャップ2の外周のテーパ部2bは、バルブケース7の下端の脚部7cの下端面に当接している。バルブケース7の下端の脚部7cの下端面は、テーパ部2bに沿うテーパ面とされている。このように、ロアキャップ2の外周のテーパ部2bを設けると、バルブケース7は、ロッドガイドから軸力が付加され、ロアキャップ2によってアウターシェル1およびシリンダ4と同軸となる位置に調心されて固定される。
また、アウターシェル1の下端外周には、図1および図2に示すように、ブラケット3をアウターシェル1に対して軸方向と周方向で位置決めするための位置決めブラケット11が溶接によって取り付けられている。そして、アウターシェル1の外周であって位置決めブラケット11より下方にブラケット3が装着されるブラケット取付部1aが設けられている。位置決めブラケット11は、アウターシェル1の外周に沿って湾曲されてアウターシェル1の外周にプロジェクション溶接される矩形の取付片11aと、取付片11aの下端から下方へ延びてアウターシェル1から離間するともにブラケット3の上端面3fに当接する当接片11bと、当接片11bの水平方向の中央からブラケット3側へ向けて突出する回転防止片11cとを備えている。
取付片11aは、本実施の形態では、緩衝器Dを側方から見る視点で矩形であって、周方向の中央部はアウターシェル1の外周面に沿うようにアウターシェル1の周方向に沿って湾曲しており、周方向の両端はアウターシェル1から離間するようになだらかに折れ曲がった形状となっている。また、取付片11aは、湾曲している中央部に周方向の中央を挟んで対称となる2点に小突起11a1,11a1を備えている。そして、取付片11aにおける小突起11a1,11a1がアウターシェル1の外周にプロジェクション溶接によって接合され、位置決めブラケット11はアウターシェル1に装着される。小突起11a1,11a1の設置位置は、位置決めブラケット11をアウターシェル1に溶接できブラケット3から入力される荷重に対して耐えうる限りにおいて他所に変更してもよく、その設置数についても変更可能である。なお、プロジェクション溶接に代えてアーク溶接によって取付片11aをアウターシェル1に溶接する場合には、小突起11a1,11a1を設けなくてよい。
当接片11bは、取付片11aの周方向幅全体から下方のブラケット取付部1a側へ傾斜して延びる傾斜部11b1と、傾斜部11b1の幅全体からアウターシェル1の軸線方向に沿って下方へ向けて延びる延長部11b2とを備えている。そして、当接片11bは、全体がアウターシェル1の外周面から離間している。また、当接片11bは、緩衝器Dを側方から見る視点で矩形であって、取付片11aと同様に周方向の中央部がアウターシェル1の外周に倣って湾曲した形状とされているが、周方向の両端はアウターシェル1から離間する方向へなだらかに折れ曲がった形状となっている。なお、当接片11bの延長部11b2の図1中下端は、ブラケット3の上端面3f(抱持部3cの上面)に対向して当接し、ブラケット3が図1中で上方側へ移動するのを規制する。なお、位置決めブラケット11の取付片11aおよび当接片11bの全体的な形状は、中央部がアウターシェル1の外周に倣って湾曲しており、周方向の両端がアウターシェル1から遠ざかる方向へ折れ曲がった形状とされており曲げに対する位置決めブラケット11の強度の向上が図られているが、取付片11aがアウターシェル1に溶接可能であって、当接片11bが取付片11aから延びてアウターシェル1の外周から離間していれば、位置決めブラケット11の形状については任意に設計変更できる。
また、当接片11bの下端、つまり、延長部11b2の下端は、アウターシェル1に対してブラケット取付部1aの上端と水平方向で同一高さに位置している。このように、位置決めブラケット11は、当接片11bを備えているので、ブラケット3がアウターシェル1に嵌合するブラケット取付部1aとアウターシェル1の外周であって取付片11aが溶接される部位とは、少なくとも当接片11bの軸方向の長さ分と同じか、それ以上に離間する。
回転防止片11cは、当接片11bの幅方向の中央から下方へ向けて突出して先端が緩衝器Dを側方から見る視点で半円形となっており、全体がアウターシェル1の外周面から離間している。なお、当接片11bの下端であって回転防止片11cの付け根の幅方向の両側には半円形の切欠11d,11dが設けられている。
ブラケット3は、本実施の形態では、車両の車輪を保持するナックル3aから延長されるアーム部3bと、アーム部3bの上端に設けられてアウターシェル1のブラケット取付部1aの外周に嵌合されてアウターシェル1を包み持つ割り入りのC型の抱持部3cと、抱持部3cの両端に設けられて互いに対向するとともにボルト13の挿通を許容する孔hを備えたボルト装着片3d,3eとを備えており、ナックル3aと一体となった所謂ナックルキャリアとされている。
このように構成されたブラケット3は、以下のようにしてアウターシェル1に装着される。まず、アウターシェル1の下端1b側からアウターシェル1の下端を抱持部3c内に挿入して、ブラケット3の上端面3fとなる抱持部3cの上面を位置決めブラケット11の当接片11bの下端面に当接させるとともに、回転防止片11cを抱持部3cの割内に挿入する。回転防止片11cの先端は半円形となっているので、抱持部3cの割内に侵入しやすくなっている。
すると、ブラケット3は、上端面3fが位置決めブラケット11の当接片11bに当接すると、アウターシェル1に対して軸方向でそれ以上の上方側への移動が規制されて、軸方向でアウターシェル1のブラケット取付部1aに対向する位置に位置決めされる。なお、当接片11bがブラケット3の抱持部に当接する周方向の幅については、ブラケット3をガタつかせることなくブラケット取付部1aに対向する位置に位置決めできるようになっていれば任意に設定できる。
また、ブラケット3は、抱持部3cの割に入り込む回転防止片11cによって周方向への回転が規制されるとともに、アーム部3bをアウターシェル1に対して所定方向へ向くように周方向に位置決めされる。
このように位置決めブラケット11は、当接片11bによってブラケット3をアウターシェル1に対して軸方向の位置を位置決めできるとともに、回転防止片11cを備えることでブラケット3をアウターシェル1に対して周方向に位置決めするとともにブラケット3のアウターシェル1に対する周方向への回転を防止する回転止めとしても機能する。
ここで、当接片11bに切欠11d,11dを設けずに当接片11bから回転防止片11cが連なる構造の場合、当接片11bと回転防止片11cとの境を直角に加工するのは難しく、当該境に湾曲面やテーパ面が形成されてしまう。こうなると、当接片11bと回転防止片11cとの境にブラケット3が乗り上げてしまいブラケット3の上端面3fと当接片11bとが面当たりせず、ブラケット3がブラケット取付部1aに対してずれたり、傾いたりしてしまう。これに対して、当接片11bの回転防止片11cの両側に切欠11d,11dを設けると、ブラケット3の上端面3fと当接片11bの端面と面接触するようになるので、位置決めブラケット11は、精度よくブラケット3を位置決めできる。なお、位置決めブラケット11の外縁の形状は、母材を打ち抜き加工によって成型できるので特別な加工も必要もない。
戻って、前述したように、位置決めブラケット11によって、ブラケット3をアウターシェル1に軸方向および周方向にて位置決めした後、ボルト13をボルト装着片3d,3eの孔hに挿入してからボルト13にナット14を螺合させる。そして、ボルト13に対してナット14をねじ込んでいくと、ボルト装着片3d,3eが互いに引き寄せられて抱持部3cが縮径してアウターシェル1のブラケット取付部1aを強く緊迫して把持し、ブラケット3がアウターシェル1のブラケット取付部1aに強固に固定される。なお、ボルト装着片3d,3eのいずれか一方のボルト孔を雌螺子としてナット14を省略してもよい。
なお、ブラケット3のアウターシェル1の下端1b側からの挿入の際、溶接ビードBが空隙Gに貯留されてアウターシェル1の外周側にはみ出ることがないのでブラケット3内へのアウターシェル1の挿入を妨げない。本実施の形態の緩衝器Dのように、アウターシェル1の内周の下端1bより上方へずれた位置にロアキャップ2を溶接し、溶接ビードBをアウターシェル1内からはみ出さないようにすれば、アウターシェル1のブラケット取付部1aより下端の外径を縮径せずストレートにしていても、ブラケット3内にアウターシェル1を挿入できる。これに対して、ロアキャップ2をアウターシェル1の下端に溶接しても溶接ビードがブラケット3内へのアウターシェル1の挿入の邪魔にならないようアウターシェル1の下端1bを絞り加工によって縮径させておいてもよい。
以上、本実施の形態の緩衝器Dは、筒状であって下端側外周に車両のナックルに接続されるブラケット3が嵌合されるブラケット取付部1aを有するアウターシェル1と、アウターシェル1の外周に溶接によって接合されてブラケット3に当接してブラケット3のアウターシェル1に対する軸方向の位置を位置決めする位置決めブラケット11とを備え、位置決めブラケット11は、アウターシェル1の外周であってブラケット取付部1aから離間した位置に溶接される取付片11aと、取付片11aからブラケット取付部1a側へ延びてアウターシェル1の外周から離間するとともにブラケット3の上端面3fに当接する当接片11bとを備えている。
このように構成された緩衝器Dでは、位置決めブラケット11がアウターシェル1に溶接される取付片11aと取付片11aから延びてアウターシェル1から離間する当接片11bとを備えているので、アウターシェル1に溶接接合される取付片11aとブラケット取付部1aとを離間させるとともにブラケット3をブラケット取付部1aに配置させ得る。すると、取付片11aがブラケット取付部1aから離間した位置でアウターシェル1に溶接されるので、ブラケット取付部1aは溶接による歪みの影響を受けずに済みブラケット取付部1aの真円度を損なわずに済む。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、位置決めブラケット11をアウターシェル1へ溶接してもアウターシェル1のブラケット取付部1aの高い真円度を実現できる。なお、当接片11bのアウターシェル1の軸線にそう長さである軸方向長さの設定によって取付片11aとブラケット取付部1aとの間の距離を制御でき、当接片11bの軸方向長さは、アウターシェル1の肉厚や取付片11aの溶接の種類によってブラケット取付部1aに溶接歪みの影響を与えない長さに設定されればよい。
また、当接片11bは、アウターシェル1から離間しており、アウターシェル1から浮いた状態でブラケット3の抱持部3cの上端面3fに当接しており、当接片11bの肉厚の中央を抱持部3cの肉厚の中央に正対させて当接させることができる。これにより、ブラケット3から軸方向の荷重を位置決めブラケット11で受けやすくなるので強度面で有利となる。
さらに、本実施の形態の緩衝器Dにおける位置決めブラケット11は、当接片11bからブラケット3側へ突出し、ブラケット3のブラケット取付部1aに嵌合される割入り断面C型の抱持部3cの割内に挿入されてブラケット3のアウターシェル1に対する周方向への回転を規制する回転防止片11cを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、ブラケット3を軸方向だけでなく周方向にも位置決めできるとともにブラケット3の周方向の回転を規制できるので、ブラケット3のアウターシェル1への取付け時の位置合わせ作業が容易となるだけでなく、ブラケット3或いはアウターシェル1にトルクが作用してもブラケット3とアウターシェル1との位置ずれを阻止できる。
さらに、本実施の緩衝器Dにおける取付片11aは、アウターシェル1に対してアーク溶接されてもよいが、プロジェクション溶接による接合に向いている。取付片11aをアウターシェル1にプロジェクション溶接するには、取付片11aとアウターシェル1とに径方向で押圧する荷重をかけて両者に電流を流して、両者を抵抗発熱させて溶融させるようにする。このようにプロジェクション溶接では、取付片11aとアウターシェル1との溶接接合部位に径方向で大きな荷重を作用させる必要があるが、アウターシェル1に対して作用する荷重は、ブラケット取付部1aから軸方向へ少なくとも当接片11bの長さ以上離間した取付片11aと対向する部位に作用する。したがって、プロジェクション溶接時にアウターシェル1に荷重をかけた際に、荷重が作用する部位が歪んでしまっても、荷重が作用する部位とブラケット取付部11bとがアウターシェル1の軸方向で離間しているため、当該部位の歪みはブラケット取付部1aに影響を与えずに済む。また、位置決めブラケット11は、当接片11bおよび回転防止片11cはアウターシェル1から離間しており、取付片11aのみがアウターシェル1に接するので、プロジェクション溶接時に電流を流した際に電流が取付片11a以外を流れてしまう分流を防止でき、溶接不良の発生を防止できる。以上、本実施の形態の緩衝器Dは、位置決めブラケット11における取付片11aがプロジェクション溶接によってアウターシェル1に接合されても、ブラケット取付部1aの高い真円度を実現できるとともに、溶接不良の発生を阻止できる。したがって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、プロジェクション溶接による位置決めブラケット11の接合に適する。
また、本実施の形態の緩衝器Dは、アウターシェル1の下端1bの内側にアウターシェル1とロアキャップ2との接合部に生じる溶接ビードBを貯留する空隙Gが形成されている。このように構成された緩衝器Dによれば、アウターシェル1とロアキャップ2との接合部に生じる溶接ビードBが空隙Gに貯留されてアウターシェル1の外周側にはみ出ないので、アウターシェル1の下端1bを縮径せずともブラケット3の抱持部3c内にアウターシェル1を挿入できる。このように本実施の形態の緩衝器Dによれば、アウターシェル1の下端1bの縮径させる絞り加工が不要となるため、アウターシェル1のブラケット取付部1aとブラケット取付部1aより下方側の外径を同一径とでき、ブラケット取付部1aの真円度を損なうことがない。
なお、ブラケット3は、図示したところでは、ナックルキャリアとされているが、緩衝器Dをダブルウイッシュボーン形式のサスペンションに組み込む場合には、特開2003−104020号公報の図1から図5に開示されているようなナックルを揺動自在に車体に連結するロアアームに緩衝器Dを連結する二股のフォークブラケットとされてもよい。このように、ブラケット3は、ナックルに対して直接或いは他部品を介して間接に接続されるものでもよいし、ナックルに一体となって接続されるものでもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
1・・・アウターシェル、1a・・・ブラケット取付部、3・・・ブラケット、3c・・・抱持部、3f・・・上端面、11・・・位置決めブラケット、11a・・・取付片、11b・・・当接片、11c・・・回転防止片

Claims (3)

  1. 筒状であって下端側外周に車両のナックルに接続されるブラケットが嵌合されるブラケット取付部を有するアウターシェルと、
    前記アウターシェルの外周に溶接によって接合されて前記ブラケットに当接して前記ブラケットの前記アウターシェルに対する軸方向の位置を位置決めする位置決めブラケットとを備え、
    前記位置決めブラケットは、
    前記アウターシェルの外周であって前記ブラケット取付部から離間した位置に溶接される取付片と、
    前記取付片から前記ブラケット取付部側へ延びて前記アウターシェルの外周から離間するとともに前記ブラケットの上端面に当接する当接片とを有する
    ことを特徴とする緩衝器。
  2. 前記位置決めブラケットは、
    前記当接片から前記ブラケット側へ突出し、前記ブラケットの前記ブラケット取付部に嵌合される割入り断面C型の抱持部の割内に挿入されて前記ブラケットの前記アウターシェルに対する周方向への回転を規制する回転防止片を有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
  3. 前記取付片は、前記アウターシェルに対してプロジェクション溶接によって接合されている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
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