JP2021155885A - 人工皮革およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 熱可塑性樹脂からなる繊維絡合体と高分子弾性体からなる人工皮革の製造段階において、良好な脱海性であり、かつ、極細繊維が高分子弾性体を把持しやすくすることで、得られる人工皮革が高強力で優れた耐摩耗性を有し、良好な風合いを併せ持つものとすることおよびその人工皮革の製法を提供すること。【解決手段】 平均単繊維直径が1μm以上10μm以下であり、熱可塑性樹脂組成物からなる極細繊維で構成されてなる繊維絡合体と、高分子弾性体とを構成要素として含む人工皮革であって、前記の極細繊維の少なくとも一部が前記極細繊維の表面において、繊維方向10μmあたり1本以上20本以下の溝が配されてなる極細繊維Aである、人工皮革。【選択図】 図1

Description

本発明は、熱可塑性樹脂からなる繊維絡合体と高分子弾性体とからなり、高強力で優れた耐摩耗性を有し、良好な風合いを併せ持つ人工皮革およびその製法に関するものである。
主として熱可塑性樹脂からなる繊維絡合体と高分子弾性体とからなる天然皮革調の人工皮革は、耐久性の高さや品質の均一性などの天然皮革対比で優れた特徴を有している。そのため、衣料用素材としてのみならず、車両内装材、インテリアや靴および衣料など様々な分野で使用される。中でも、人工皮革が車両内装材等に使用される際には、実使用に耐えうる高い強力や耐摩耗性が求められる。
人工皮革の強力や摩耗特性のような物性は、上記繊維絡合体の繊維密度が高いほど、また、繊維絡合体を構成する極細繊維が高分子弾性体を把持し、極細繊維−高分子弾性体間の接着部分が多いほど、良好となる傾向がある。そのため、繊維絡合体としては高絡合で高密度のシートとすること、人工皮革としては極細繊維と高分子弾性体の接着部分を増やし、高強力かつ優れた耐摩耗性を有することが一般的に求められる。
このような背景と、近年の環境意識の高まりから、人工皮革の製造には、有機溶剤不使用の製造プロセスが注目されるようになり、極細繊維発現の際にアルカリ処理により溶解が容易な、共重合ポリエステル系の海成分を用いた試みとして、種々の検討がなされてきた(例えば、特許文献1、特許文献2を参照。)。
特開2014−231650号公報 特開2008−007870号公報
特許文献1に開示された技術においては、共重合ポリエステル系の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる海島型複合繊維の溶融紡糸時に、前記海成分ポリマーにポリアルキレングリコールを添加して紡糸した海島型複合繊維を絡合処理することで、高絡合で高密度の繊維絡合体を製造することができ、一定の耐摩耗性を達成可能である。しかしながら、特許文献1ではポリアルキレングリコールをメルトブレンドしていることから、海成分ポリマー中におけるポリアルキレングリコールの分散性が十分なものとならない傾向にある。このため、繊維絡合体形成後の複合繊維に存在する海割れは少なく、さらに不均一に発生する。したがって、上記繊維絡合体をアルカリ処理して極細繊維を発現させた際、海割れが少なく不均一であるが故に十分な脱海効果を得られず、結果として得られる人工皮革の品位や風合いは低下傾向にある。
特許文献2に開示された技術においては、海成分ポリマーにポリアルキレングリコールを共重合した海島型複合繊維であるものの平均単繊維直径が小さいことから、前記の海島型複合繊維を人工皮革に適用しても極細繊維の脱落や強力低下の懸念があり、耐摩耗性の向上は難しい。
そこで本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、熱可塑性樹脂からなる繊維絡合体と高分子弾性体からなる人工皮革の製造段階において、良好な脱海性であり、かつ、極細繊維が高分子弾性体を把持しやすくすることで、得られる人工皮革が高強力で優れた耐摩耗性を有し、良好な風合いを併せ持つものとすることおよびその人工皮革の製法を提供することにある。
上記の目的を達成すべく本発明者らが検討を重ねた結果、海成分ポリマーに数平均分子量の低いポリアルキレングリコールを共重合させることで、海成分ポリマー中におけるポリアルキレングリコールの分散性が向上し、繊維絡合体形成後の海島型複合繊維に存在する海割れを均一かつ数多く発生させることができることが判明した。さらに検討を進めることで、上記の繊維絡合体をアルカリ処理して極細繊維を発現させた際、十分な脱海効果を得ることができ、また、極細繊維表面に細かい溝が発現できるため、この極細繊維を含む繊維絡合体に高分子弾性体を付与することで、極細繊維が高分子弾性体を把持しやすくなり、高強力で優れた耐摩耗性を有し、良好な風合いを併せ持つ人工皮革を得ることが可能であることも見出した。
本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
すなわち、本発明の人工皮革は、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下であり、熱可塑性樹脂組成物からなる極細繊維で構成されてなる繊維絡合体と、高分子弾性体とを構成要素として含む人工皮革であって、前記の極細繊維の少なくとも一部が前記極細繊維の表面において、繊維方向10μmあたり1本以上20本以下の溝が配されてなる極細繊維Aである。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記人工皮革の質量に対する高分子弾性体の質量の比が15質量%以上50質量%以下である。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、JIS L1096:2010の「8.19.5 E法(マーチンデール法)」で測定される耐摩耗試験において、押圧荷重を12.0kPaとし、20000回の回数を摩耗した後の摩耗減量が4.0mg以下である。
本発明の人工皮革の製造方法は、数平均分子量が500以上3500以下であるポリアルキレングリコールが共重合された共重合ポリエステルを海成分ポリマーとした海島型複合繊維を主構成成分とした繊維絡合体から、前記海成分ポリマーを除去し、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下である極細繊維を発現させる工程と、高分子弾性体を付与する工程を含み、前記極細繊維の少なくとも一部が該表面において、繊維方向10μmあたり1本以上20本以下の溝が配されてなる極細繊維Aである。
本発明の人工皮革によれば、繊維表面に細かい溝を有する極細繊維を含む繊維絡合体に高分子弾性体を付与することで、極細繊維が高分子弾性体を把持しやすくなり、高強力で優れた耐摩耗性を有し、良好な風合いを併せ持つ人工皮革を得ることが可能である。本発明の人工皮革は、家具、椅子および車両内装材から衣料用途まで幅広く用いることができるが、上記のとおり高強力かつ耐摩耗性に優れることから、特に車両内装材に好適に用いることができる。
図1は、本発明の人工皮革に含まれる極細繊維Aの表面に存在する溝について例示・説明する図である。
本発明の人工皮革は、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下であり、熱可塑性樹脂組成物からなる極細繊維で構成されてなる繊維絡合体と、高分子弾性体とを構成要素として含む人工皮革であって、前記極細繊維の少なくとも一部が前記極細繊維の表面において、繊維方向10μmあたり1本以上20本以下の溝が配されてなる極細繊維Aである。以下に、その構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
[繊維絡合体]
まず、本発明の人工皮革は、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下であり、熱可塑性樹脂組成物からなる極細繊維で構成されてなる繊維絡合体を構成要素の一つとして含む。
本発明の極細繊維は、その平均単繊維直径が1μm以上10μm以下である。極細繊維の平均単繊維直径を、1.0μm以上、好ましくは1.5μm以上とすることにより、染色後の発色性や耐光および摩擦堅牢性、紡糸時の安定性に優れた効果を奏する。一方、10.0μm以下、好ましくは5.0μm以下とすることにより、緻密でタッチの柔らかい表面品位に優れた人工皮革が得られる。
本発明において、極細繊維の平均単繊維直径は以下の方法により算出されるものとする。
(1)人工皮革断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、円形または円形に近い楕円形の極細繊維をランダムに10本選ぶ。
(2)単繊維直径を測定して10本の算術平均値を計算して、小数点以下第二位で四捨五入する。
(ただし、異型断面の極細繊維を採用した場合には、まず単繊維の断面積を測定し、当該断面を円形と見立てた場合の直径(円相当径)を算出することによって単繊維の直径を求めるものとする。)
また、本発明の極細繊維は、熱可塑性樹脂組成物からなる。この極細繊維に用いられる熱可塑性樹脂組成物とは、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、およびポリフェニレンスルフィド等のポリマーを挙げることができる。中でも、強度や寸法安定性、耐熱性の観点から、ポリエステルやポリアミドを用いることが好ましい。
ポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは、融点が高いものが多く、人工皮革とした場合に、良好な性能を示すことから、本発明で好ましく用いられる。ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポチトリメチレンテレフタレートなどを挙げることができる。また、ポリアミドの具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12などを挙げることができる。
前記の極細繊維に用いられる熱可塑性樹脂組成物には、種々の目的に応じ、本発明の目的を阻害しない範囲で、酸化チタン粒子等の無機粒子、潤滑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱剤および抗菌剤等を添加することができる。
さらに、本発明の人工皮革は、前記極細繊維の少なくとも一部がその極細繊維の表面において、繊維方向10μmあたり1本以上20本以下の溝が配されてなる極細繊維Aである。
ここで、本発明における「溝」とは、後述する手順によって得られる極細繊維の2値化画像において、極細繊維の単繊維直径をD(μm)とした際、長さが0.15D以上、幅が0.01D以上0.1D以下であって、極細繊維の繊維軸に対する傾きが20°以上である黒色部分のことを指すものとする。例えば、図1に例示されるように、図1Aの走査型電子顕微鏡画像を後述する手順によって2値化画像としたものが図1Bであり、これにおいて、黒色部分の長さ、幅はそれぞれ(1)、(2)で表される長さであり、繊維軸に対する溝部の傾き(°)は、(3)で表される。
なお、「溝」の長さ方向における延長線上に、同一方向に配されている他の「溝」が存在する場合には、それぞれの「溝」の間の距離が2つの溝部を繋げた合計長さの20%以下ならば、その2つの「溝」は1つの「溝」であるものと判断する。つまり、極細繊維の表面において、2μmの長さに相当する溝Xが観察され、その長さ方向における延長線上に0.3μm離れて同一方向に配されている1μmの長さに相当する溝Yが観察されたならば、溝Xと溝Yを繋げた合計長さは3.3μmであって、溝間の距離は0.3μm(合計長さの9%)であるから、溝Xと溝Yとは別の溝としてカウントするのではなく、一つの溝XYとしてカウントされるものであると判断する。
また、前記の溝の長さは黒色部分の長手方向における端から他方の端を結んだ距離にて算出され、前記の溝の幅は、以下のように測定・算出されるものとする。
(1) 溝の長手方向において等間隔に10分割した線を引き、分割した線と重なる黒色部分の距離をそれぞれ計測する。
(2) 計測した黒色部分の距離について算出平均値を計算し、小数点以下第二位で四捨五入した値を溝の幅とする。
さらに、本発明に係る上記の極細繊維の2値化画像は、以下の手順によって得ることとする。
(1) 人工皮革から極細繊維を単離する。極細繊維を単離する方法としては、例えば、ジメチルホルムアミドに浸漬して高分子弾性体を除去する等の公知の方法が挙げられる。
(2) (1)で得た極細繊維の表面または断面を走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略することがある)にて観察し、溝部を有する極細繊維について、SEMの視野範囲において繊維本数が3本以上10本以下となる倍率にてSEM画像を撮像する。なお、SEM画像に関して、2値化における分解能の観点から1μmあたり30ピクセル以上存在することが好ましい。
(3) 撮像したSEM画像の中から、極細繊維表面の色相むらが少なく、かつ溝部が明瞭な1本の極細繊維を選び、前記極細繊維のみをトリミングする。
(4) トリミングした画像を白黒8bit画像に変換したのち、さらに、繊維表面の90%以上が白色となる明度値を閾値として前記白黒8bit画像を2値化する。
本発明の極細繊維Aは前記のとおり、その極細繊維Aの表面において、繊維方向10μmあたり1本以上20本以下の溝が配されてなるものであるが、繊維方向10μmあたりの溝数を1本以上、好ましくは5本以上、より好ましくは7本以上とすることにより、極細繊維が高分子弾性を把持しやすくなり、人工皮革の耐摩耗性や風合いが向上する。また、繊維方向10μmあたりの溝数を20本以下、好ましくは15本以下とすることにより、人工皮革の強力低下や品位低下を防ぐことができる。
なお、前記の溝数は、以下の方法によって測定・算出される。
(1) 前記の極細繊維の2値化画像を得る手順の(1)を行う。
(2) 前記の極細繊維の2値化画像を得る手順の(2)〜(4)を行う。
(3) 得られた極細繊維の2値化画像から、繊維方向10μmあたりの溝数を算出する。
(4) (2)〜(3)を10回繰り返し、得られた10回の溝数の算出結果の算術平均値(本)を求め、小数点以下第1位で四捨五入して整数値にする。
極細繊維の断面形状としては、加工操業性の観点から、丸断面にすることが好ましいが、楕円、扁平および三角などの多角形、扇形および十字型、中空型、Y型、T型、およびU型などの異形断面の断面形状を採用することもできる。
また、繊維絡合体に占める極細繊維Aの含有比率は5%以上95%以下とすることが好ましい。繊維絡合体に占める極細繊維Aの含有比率を5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上とすることにより、極細繊維が高分子弾性を把持しやすくなり、人工皮革の耐摩耗性や風合いが向上する。一方、95%以下、好ましくは90%以下、さらに好ましくは85%以下とすることにより、人工皮革の強力低下や品位低下を防ぐことができる。
なお、繊維絡合体に占める極細繊維Aの含有比率は、以下の手順によって得ることができる。
(1) 人工皮革から極細繊維を単離する。極細繊維を単離する方法としては、例えば、ジメチルホルムアミドに浸漬して高分子弾性体を除去する等の公知の方法が挙げられる。
(2) (1)で得た極細繊維の表面をSEMにて観察し、SEMの視野範囲において繊維本数が3本以上10本以下となる倍率にてSEM画像を撮像する。これを、撮像した繊維本数が50本以上となるまで複数回行う。
(3) 撮像した50本以上の極細繊維のうち、極細繊維表面に前記の溝を有する極細繊維Aの本数を数えることで、繊維絡合体に占める極細繊維Aの含有比率を算出する。
本発明の人工皮革は、前記の極細繊維Aを含む繊維絡合体を構成要素の一つとして含むものであるが、このようにすることにより、表面を起毛した際に均一で優美な外観や風合いを得ることができる。
繊維絡合体の形態としては、短繊維をカードやクロスラッパーを用いて積層繊維ウェブを形成させた後に、ニードルパンチやウォータージェットパンチを施して得られる短繊維絡合体、スパンボンド法やメルトブロー法などから得られる長繊維絡合体、および抄紙法で得られる絡合体などがある。中でも、短繊維絡合体とする場合においては、長繊維絡合体や抄造法で得られる絡合体の場合に比べて人工皮革の厚さ方向に配向する繊維を多くすることができ、起毛させた際の人工皮革の表面に高い緻密感を有させることができる。さらに、厚み均一性等が良好なものが得られるため、好ましく用いられる。
[高分子弾性体]
本発明の人工皮革を構成する高分子弾性体は、人工皮革を構成する極細繊維を把持するバインダーであるため、本発明の人工皮革の柔軟な風合いを考慮すると、用いられる高分子弾性体としては、ポリウレタン、ポリウレタン、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)およびアクリル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリウレタンを主成分として用いることが好ましい態様である。ポリウレタンを用いることにより、充実感のある触感、皮革様の外観および実使用に耐える物性を備えた人工皮革を得ることができる。なお、本発明でいう「主成分である」とは、高分子弾性体全体の質量に対してポリウレタンの質量が50質量%より多いことをいう。
ポリウレタンとしては、例えば、平均分子量500以上3000以下のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールあるいはポリエステルポリエーテルジオール等のポリマージオール等から選ばれた少なくとも1種類のポリマージオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系、イソホロンジイソシアネート等の脂環族系およびヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系のジイソシアネート等から選ばれた少なくとも1種類のジイソシアネートと、エチレングリコール、ブタンジオール、エチレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の2個以上の活性水素原子を有する少なくとも1種類の低分子化合物を、所定のモル比で反応させて得られたポリウレタンおよびその変性物が挙げられる。
また、高分子弾性体には、ポリエステル系、ポリアミド系およびポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂、およびエチレン−酢酸ビニル樹脂などが含まれていても良い。
また、高分子弾性体には、目的に応じて各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、「リン系、ハロゲン系および無機系」などの難燃剤、「フェノール系、イオウ系およびリン系」などの酸化防止剤、「ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系およびオキザリックアシッドアニリド系」などの紫外線吸収剤、「ヒンダードアミン系やベンゾエート系」などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、凝固調整剤、分散剤、柔軟剤、抗菌剤、防臭剤および染料などを含有させることができる。
本発明においてポリウレタンを用いる場合には、有機溶剤に溶解した状態で使用する有機溶剤系ポリウレタンと、水に分散した状態で使用する水分散型ポリウレタンのどちらも採用することができる。また、ポリウレタンとしては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタンが好ましく用いられる。
一般に、人工皮革における高分子弾性体の含有量は、使用する高分子弾性体の種類、高分子弾性体の製造方法および風合や物性を考慮して、適宜調整することができるが、本発明においては、高分子弾性体の含有量は、人工皮革の質量に対して15質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。前記の高分子弾性体の含有量を15質量%以上、より好ましくは20質量%以上とすることで、繊維間の高分子弾性体による結合を強めることができ、人工皮革の耐摩耗性を向上させることができる。一方、前記の高分子弾性体の含有量を50質量%以下、より好ましくは45質量%以下とすることで、人工皮革をより柔軟性の高いものとすることができる。
[人工皮革]
本発明の人工皮革においては、表面に立毛を有することが好ましい態様である。立毛は人工皮革の表面のみに有していてもよく、両面に有することも許容される。表面に立毛を有する場合の立毛形態は、意匠効果の観点から指でなぞったときに立毛の方向が変わることで跡が残る、いわゆるフィンガーマークが発する程度の立毛長と方向柔軟性を備えていることが好ましい。より具体的には、表面の立毛長は100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。一方、立毛長が長すぎると人工皮革の摩擦に対する耐久性が低下するため、400μm以下であることが好ましく、350μm以下であることがより好ましい態様である。表面の立毛長は、リントブラシ等を用いて人工皮革の立毛を逆立てた状態で人工皮革の断面を倍率50倍でSEM撮影し、立毛部(極細繊維のみからなる層)の高さを10点測定して平均値を計算することにより算出する。
本発明の人工皮革の目付は、100g/m以上500g/m以下であることが好ましい。目付が100g/m以上、より好ましくは150g/m以上とすることにより、十分な形態安定性と寸法安定性が得られる。一方、目付を500g/m以下、より好ましくは300g/m以下とすることにより、十分な柔軟性と風合いが得られる。
本発明の人工皮革の厚さは、0.1mm以上10.0mm以下であることが好ましい。厚さを0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上とすることにより、十分な形態安定性と寸法安定性が得られる。一方、厚さを10.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下とすることにより、十分な柔軟性と風合いが得られる。
また、本発明の人工皮革はJIS L1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の「8.19 摩耗強さ及び摩擦変色性」の「8.19.5 E法(マーチンデール法)」で測定される耐摩耗試験において、押圧荷重を12.0kPaとし、20000回の回数を摩耗した後の人工皮革の重量減が4.0mg以下であることが好ましく、2.0mg以下であることがより好ましい。重量減が4.0mg以下であることで、実使用時の毛羽落ちによる汚染を防ぐことができる。
[人工皮革の製造方法]
本発明の人工皮革の製造方法は、数平均分子量が500以上3500以下であるポリアルキレングリコールが共重合された共重合ポリエステルを海成分ポリマーとした海島型複合繊維を主構成成分とした繊維絡合体から、前記の海成分ポリマーを除去し、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下である極細繊維を発現させる工程と、高分子弾性体を付与する工程を含み、前記の極細繊維の少なくとも一部が該表面において、繊維方向10μmあたり1本以上20本以下の溝が配されてなる極細繊維Aである。以下に、詳細について説明する。
<繊維絡合体の形成>
本発明の人工皮革の製造方法において、まず、数平均分子量が500以上3500以下であるポリアルキレングリコールが共重合された共重合ポリエステルを海成分ポリマーとした海島型複合繊維を主構成成分とした繊維絡合体を形成する。この海島型複合繊維が、後の工程によって極細繊維となり、その中の少なくとも一部が極細繊維Aとなる。
海島型複合繊維の海成分ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステル、およびポリ乳酸などを用いることができるが、製糸性やアルカリ易溶出性の観点から、共重合ポリエステルが好ましく用いられる。
共重合ポリエステルとしては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を3モル%以上15モル%以下共重合してなる共重合ポリエステルが好ましい。5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を3モル%以上共重合させることにより、十分なアルカリ溶出性が得られ、複合繊維に脆さを付与することができる。これにより、後述するポリアルキレングリコールを共重合することにより、開繊および絡合処理した際に複合繊維を割れやすくする(海割れを発生させる)ことが可能となる。また、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分の共重合量が15モル%以下であると、ポリエステルの増粘が抑えられ、複合繊維紡糸時の糸切れが発生しにくいという効果を奏する。より好ましくは7モル%以上13モル%以下の範囲である。
また、前記共重合ポリエステルは、数平均分子量が500以上3500以下のポリアルキレングリコールが共重合されていることが好ましい。より好ましくは1000以上3000以下の範囲である。ポリアルキレングリコールの数平均分子量を上記範囲とすることにより、海成分ポリマー中におけるポリアルキレングリコールの分散性が良くなり、アルカリ溶出性が良好となる。また、複合繊維を開繊および絡合処理した際に複合繊維表面に海割れを数多く生じやすくなるため、繊維絡合体にアルカリ処理を施し極細繊維を発現させた際、海割れ部から島成分ポリマーが浸食されることで極細繊維表面に細かい溝を発現することができる。
海成分ポリマーにおけるポリアルキレングリコールの共重合量は、0.1質量%以上15質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは1.5質量%以上10質量%以下である。ポリアルキレングリコールの共重合量を0.1質量%以上とすることにより、複合繊維を絡合処理した際に、複合繊維表面に海割れを生じやすくなる。また、ポリアルキレングリコールの共重合量を15質量%以下とすることにより、複合繊維紡糸時の糸切れが発生しにくいという効果を奏する。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコール等が挙げられるが、使用の容易性やアルカリ水溶液への減量性等からポリエチレングリコールが好ましく用いられる。
また、極細繊維の前駆体となる海島型複合繊維を構成する海成分ポリマーとしては、一成分にエチレンテレフタレート単位を主とした繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを含んでいることが好ましく、テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置き換えたポリエステルであってもよい。また、同様にしてエチレングリコール成分の一部を他のポリオール成分で置き換えたポリエステルであってもよい。
本発明で使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の芳香族、脂肪族、および脂環族の二官能性カルボン酸が好ましく用いられる。また、エチレングリコール以外のポリオール化合物としては、例えば、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の脂肪族、脂環族、および芳香族のポリオール化合物が好ましく用いられる。
島成分ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンおよびポリフェニレンスルフィド等を挙げることができる。ポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは、融点が高いものが多く、例えば、人工皮革等とした場合に、良好な性能を示すことから、本発明で好ましく用いられる。ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポチトリメチレンテレフタレート等を挙げることができる。また、ポリアミドの具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド66およびポリアミド12等を挙げることができる。
海島型複合繊維の海成分ポリマーと島成分ポリマーの質量比は、20:80〜80:20の範囲であることが好ましい。島成分ポリマーの質量比を20質量%以上とすることにより、海成分ポリマーの除去率を少なくすることができ、より生産性が向上する。また、島成分ポリマーの質量比を80質量%以下とすることにより、海成分ポリマーが除去された後の島成分ポリマー繊維、すなわち極細繊維の開繊性の向上、および島成分の合流を防止することができる。
また、海島型複合繊維を構成する海成分ポリマーと島成分ポリマーには、種々の目的に応じ、本発明の目的を阻害しない範囲で、酸化チタン粒子等の無機粒子、潤滑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱剤および抗菌剤等を添加することができる。
本発明の人工皮革の製造方法において、海島型複合繊維の島部の強度が、2.5cN/dtex以上であることが好ましい。より好ましくは2.8cN/dtex以上であり、さらに好ましくは3cN/dtex以上である。島部の強度を2.5cN/dtex以上とすることで、人工皮革の耐摩耗性を向上させることができる。
本発明において、海島型複合繊維の島部の強度は以下の方法により算出されるものとする。
(1) 長さ20cmの海島型複合繊維を10本束ねる。
(2) (1)の試料から易溶解性ポリマーを溶解除去したのちに、風乾する。
(3) JIS L1013:2010「化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.5 引張強さ及び伸び率」の「8.5.1 標準時試験」にて、つかみ長さ5cm、引張速度5cm/分、荷重2Nの条件にて10回試験する(N=10)。
(4) (3)で得られた試験結果の算術平均値(cN/dtex)を小数点以下第二位で四捨五入して得られる値を、海島型複合繊維を構成する島成分ポリマーの強度とする。
次に、紡出された海島型複合繊維を開繊したのちにクロスラッパー等により繊維ウェブとし、絡合させることにより繊維絡合体を得る。繊維ウェブを絡合させ繊維絡合体を得る方法としては、ニードルパンチ処理やウォータージェットパンチ処理等を用いることができる。
繊維絡合体の形態としては、前述のように短繊維絡合体でも長繊維絡合体でも用いることができるが、短繊維絡合体であると、人工皮革の厚さ方向に配向する繊維が長繊維絡合体に比べて多くなり、起毛した際の人工皮革の表面に高い緻密感を得ることができる。
短繊維絡合体とする場合には、得られた海島型複合繊維に、好ましくは捲縮加工を施し、所定長にカット加工して原綿を得たのちに、開繊、積層、絡合させることで短繊維絡合体を得る。捲縮加工やカット加工は、公知の方法を用いることができる。
ニードルパンチ処理あるいはウォータージェットパンチ処理後の海島型複合繊維からなる繊維絡合体は、その繊維表面に海割れが存在することが好ましい。繊維表面に海割れが存在することで、繊維絡合体にアルカリ処理を施し極細繊維を発現させた際、海割れ部から島成分ポリマーが浸食されることで極細繊維表面に細かい溝を発現することができる。
また、繊維絡合体の見掛け密度は、0.15g/cm以上0.45g/cm以下であることが好ましい。見掛け密度を好ましくは0.15g/cm以上とすることにより、人工皮革が十分な形態安定性と寸法安定性が得られる。一方、見掛け密度を好ましくは0.45g/cm以下とすることにより、高分子弾性体を付与するための十分な空間を維持することができる。
前記の繊維絡合体には、繊維の緻密感向上のために、温水やスチームによる熱収縮処理を施すことも好ましい態様である。
なお、実質的に同じ成分を用いた場合であっても、繊維表面に前記の溝が配されてなる極細繊維Aと、そうでない極細繊維とに分かれる要因としては、絡合処理後の海島型複合繊維に存在する海割れの有無(あるいは距離)に起因する。つまり、海割れが存在する海島型複合繊維についてアルカリ処理を施した際、海割れ部近傍では海割れ部から島成分ポリマーが浸食されることで繊維表面に溝を有する極細繊維Aとなり、海割れ部遠方や複合繊維束内部では島成分ポリマーが浸食されず、繊維表面に溝を含まない極細繊維となる。
<極細繊維の発現>
続いて、前記の海成分ポリマーを除去し、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下である極細繊維を発現させる。
極細繊維を発現させる方法は、海成分ポリマーがポリ乳酸や共重合ポリエステルであれば、海島型複合繊維からなる繊維絡合体をアルカリ水溶液中に浸漬させて、海島型複合繊維の海部を溶解除去することにより行うことができる。アルカリ水溶液としては、廃液処理を行う際、中和により生成する塩の処理をより容易に行うことができるため、水酸化ナトリウム水溶液が好ましく用いられる。
この極細繊維を発現させる際、前記のとおり、絡合処理後の海島型複合繊維に存在する海割れの有無(あるいは距離)に起因して、前記の極細繊維の少なくとも一部がその表面において、繊維方向10μmあたり1本以上20本以下の溝が配されてなる極細繊維Aとなる。
また、海島型複合繊維の海成分ポリマーを溶解除去させる前または後であって、後述する繊維絡合体へ高分子弾性体を付与する工程の前に、寸法安定性向上のため繊維絡合体に水溶性樹脂であるポリビニルアルコール(以下、PVAと略することがある)を付与することができる。PVAは重合度によって水への溶解性、PVA水溶液の粘度が変化し、PVAの重合度は小さい方がPVA水溶液の粘度は低く、繊維絡合体への含浸性、取り扱い性に優れたものとなる。一方で、PVAの重合度は大きい方が水への溶解性は低く、高分子弾性体を付与する際に、高分子弾性体溶液へのPVAの溶解をより抑えることができる。PVAの重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは400以上である。PVAの重合度を200以上とすることで、PVAの水への溶解を抑えることができる。また、PVAの重合度は、好ましくは3500以下、より好ましくは2500以下、さらに好ましくは1500以下、特に好ましくは1000以下である。PVAの重合度を3500以下とすることで、PVA水溶液の粘度が高くなり過ぎることを抑え、繊維絡合体への含浸性、PVA水溶液を取り扱いやすくすることができる。
<高分子弾性体の付与>
さらに、本発明の人工皮革の製造方法においては、前記の人工皮革に前記の高分子弾性体を付与する。高分子弾性体を繊維絡合体に付与する方法としては、高分子弾性体の溶液を繊維絡合体に含浸させた後、凝固浴中に浸漬させて固定する湿式凝固法、または、乾燥させて固定する乾式凝固法があり、付与する高分子弾性体の種類により適宜これらの方法を選択することができる。
高分子弾性体としてポリウレタンを付与させる際に用いられる溶媒としては、N,N’−ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等が好ましく用いられる。また、ポリウレタンを水中にエマルジョンとして分散させた水分散型ポリウレタン液を用いてもよい。
<その他の工程>
上記の工程を終えたシート状物は、製造効率を向上させる観点から、厚み方向に半裁して2枚のシート状物となるようにすることも好ましい態様である。
さらに、前記の高分子弾性体が付与されてなるシート状物あるいは半裁された高分子弾性体が付与されてなるシート状物の表面に、起毛処理を施すこともできる。起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて、研削する方法などにより施すことができる。起毛処理は、シート状物の片側表面のみに施しても、両面に施すこともできる。
前記の起毛処理を施す場合には、起毛処理の前にシリコーンエマルジョンなどの滑剤をシート状物の表面へ付与することができる。また、起毛処理の前に帯電防止剤を付与することで、研削によってシート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなる。
さらに、シート状物に対し、染色処理を施すことも好ましい。この染色処理としては、例えば、ジッガー染色機や液流染色機を用いた液流染色処理、連続染色機を用いたサーモゾル染色処理等の浸染処理、あるいはローラー捺染、スクリーン捺染、インクジェット方式捺染、昇華捺染および真空昇華捺染等による立毛面への捺染処理等を用いることができる。中でも、柔軟な風合いが得られるとともに、品質や品位面の観点から液流染色機を用いることが好ましい。また、必要に応じて、染色後に各種の樹脂仕上げ加工を施すことができる。
加えて、シート状物に対して、所望の人工皮革の態様に応じてその表面に意匠性を施すこともできる。例えば、パーフォレーション等の穴開け加工、エンボス加工、レーザー加工、ピンソニック加工、およびプリント加工等の後加工処理を施すことができる。
以上に例示された製造方法によって得られる本発明の人工皮革は、高強力で優れた耐摩耗性を有し、良好な風合いを併せ持つことから、家具、椅子および車両内装材から衣料用途まで幅広く用いることができるが、特にその優れた耐摩耗性から車両内装材に好適に用いられる。
次に、実施例を用いて本発明の人工皮革についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。次に、実施例で用いた評価法とその測定条件について説明する。ただし、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
[測定方法および評価用加工方法]
A.極細繊維の平均単繊維直径:
極細繊維の平均単繊維直径は、株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープ「VHX−950F」を用いて撮像した。
B.極細繊維表面に存在する溝部:
繊維絡合体の表面画像は、株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープ「VHX−950F」を用いて撮像した。次いで撮像した表面画像の二値化処理については、画像解析ソフト「ImageJ」を使用した。
C.人工皮革の耐摩耗性:
摩耗試験器としてJames H. Heal & Co.社製「Model 406」を、標準摩擦布として同社の「Abrastive CLOTH SM25」を用いて前記の手順によって耐摩耗試験を行い、人工皮革の摩耗減量が4.0mg以下であった人工皮革を合格とした。
D.人工皮革の風合い:
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、官能評価によって、下記のように評価し、最も多かった評価を人工皮革の風合いとした。なお、評価が同数となった場合は、より高い評価をその人工皮革の風合いとすることとした。本発明において良好なレベルは、「AまたはB」である。
・A:柔軟で良好な風合いである
・B:わずかに柔軟で良好な風合いである
・C:わずかに強硬で不良な風合いである
・D:強硬で不良な風合いである。
[実施例1]
まず、以下の条件にて海島型複合繊維を溶融紡糸した。
・島成分ポリマー: 固有粘度(IV値)が0.72のポリエチレンテレフタレート(PET)
・海成分ポリマー: 5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8モル%、および数平均分子量1000のポリエチレングリコールを9質量%共重合した共重合PET
・口金: 島数が16島/ホールの海島型複合用口金
・紡糸温度: 275℃
・島部/海部 質量比率: 57/43
・吐出量: 1.4g/(分・ホール)
・紡糸速度: 1500m/分。
次いで、75℃とした紡糸用油剤液浴中で2.5倍に延伸した。
得られた海島複合繊維を、押し込み型捲縮機を用いて捲縮加工処理した後、51mmの長さにカットし、単繊維繊度が4.3dtexの海島複合繊維の原綿を得た。この海島複合繊維から得られる極細繊維の平均単繊維直径は3.7μmであった。
上記のようにして得られた原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成した。そして、2500本/cmのパンチ本数でニードルパンチ処理して、目付が550g/mで、厚みが2.5mmの繊維絡合体を得た。
上記のようにして得られた繊維絡合体を96℃の熱水で収縮処理させた。その後、濃度が12質量%となるように調製した、鹸化度98%、重合度450のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を熱水で収縮処理させた繊維絡合体に含浸させた。さらにこれをロールで絞り、温度140℃の熱風で10分間加熱乾燥後、160℃の温度で5分間加熱処理を行い、不織布の質量に対するPVA質量が25質量%となるようにしたPVA付シートを得た。
このようにして得られたPVA付シートを60℃の温度に加熱したアルカリ濃度8%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理を行い、海島型複合繊維の海部を除去したPVA付シートを得た。
上記のようにして得られたPVA付シートに、ポリカーボネート系自己乳化型ポリウレタンの固形分100質量部に対して、感熱凝固剤として硫酸マグネシウム1質量部を加え、水に溶解してポリカーボネート系自己乳化型ポリウレタンの固形分の濃度が20質量%となるように調製した水分散型ポリウレタン液を含浸させ、120℃の温度の乾熱雰囲気下で10分間処理、乾燥させ、さらに150℃の温度で2分間乾熱処理を行うことにより、厚みが1.8mmで、人工皮革に占めるポリウレタンの質量比が30質量%であるポリウレタン付きシートを得た。
上記各工程を経て得られたポリウレタン付シートを、厚みがそれぞれ1/2ずつとなるように半裁した。サンドペーパー番手180番のエンドレスサンドペーパーで半裁面の表層部を0.3mm研削して起毛処理を行い、厚み0.6mmの立毛シートを得た。
上記のようにして得られた立毛シートを、液流染色機を用いて染色することで人工皮革を得た。
得られた人工皮革には、繊維方向10μmあたりの溝数が10である極細繊維Aが含まれており、また、摩耗減量は2.0mgであり、良好な風合いを有していた。結果を表1に示す。
[実施例2]
人工皮革に占めるポリウレタンの質量比が45質量%である以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革には、繊維方向10μmあたりの溝数が10である極細繊維Aが含まれており、また、摩耗減量は1.8mgであり、良好な風合いを有していた。結果を表1に示す。
[実施例3]
PVA付シートを水酸化ナトリウム水溶液に60分浸漬した以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革には、繊維方向10μmあたりの溝数が15である極細繊維Aが含まれており、また、摩耗減量は1.9mgであり、良好な風合いを有していた。結果を表1に示す。
[実施例4]
海成分ポリマーに共重合するポリエチレングリコールの分子量が3000である以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革には、繊維方向10μmあたりの溝数が7である極細繊維Aが含まれており、また、摩耗減量は2.0mgであり、良好な風合いを有していた。結果を表1に示す。
[実施例5]
人工皮革に占めるポリウレタンの質量比が10質量%である以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革には、繊維方向10μmあたりの溝数が8である極細繊維Aが含まれており、また、風合いがわずかに劣るもの摩耗減量は3.9mgであった。結果を表1に示す。
[実施例6]
海成分ポリマーに共重合するポリエチレングリコールの共重合量が15質量%である以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革には、繊維方向10μmあたりの溝数が19である極細繊維Aが含まれており、また、摩耗減量は2.1mgであり、良好な風合いを有していた。結果を表1に示す。
[実施例7]
海成分ポリマーに共重合するポリエチレングリコールの共重合量が0.1質量%である以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革には、繊維方向10μmあたりの溝数が5である極細繊維Aが含まれており、また、摩耗減量は3.5mgであり、良好な風合いを有していた。結果を表1に示す。
[比較例1]
海成分ポリマーにポリエチレングリコールを共重合しないこと以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革には極細繊維Aは含まれておらず(繊維方向10μmあたりの溝数0)、良好な風合いを有するものの、摩耗減量は5.0mgであり、実施例1対比耐摩耗性に劣るものであった。結果を表2に示す。
[比較例2]
海成分ポリマーに共重合するポリエチレングリコールの分子量が4000である以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革には極細繊維Aは含まれておらず(繊維方向10μmあたりの溝数0)、良好な風合いを有するものの摩耗減量は4.7mgであり、実施例1対比耐摩耗性に劣るものであった。結果を表2に示す。
[比較例3]
PVA付シートを水酸化ナトリウム水溶液に180分浸漬した以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革には極細繊維Aは含まれておらず(繊維方向10μmあたりの溝数30)、また、摩耗減量は5.3mgであり、実施例1対比耐摩耗性および風合いに劣るものであった。結果を表2に示す。
Figure 2021155885
Figure 2021155885
表1、表2に示すように、実施例1〜7の人工皮革は、繊維表面に細かい溝を有する極細繊維Aを含む繊維絡合体に高分子弾性体を付与することで極細繊維が高分子弾性体を把持しやすくなり、得られる人工皮革は高強力で優れた耐摩耗性を有し、良好な風合いを併せ持つものとなる。
一方、比較例1に示すように、海成分ポリマーにポリエチレングリコールを共重合しない場合、アルカリ処理後の極細繊維表面に細かい溝が発現せず、極細繊維が高分子弾性体を把持しにくいため、得られる人工皮革は耐摩耗性に劣るものとなる。
また、比較例2に示すように、海成分ポリマーに共重合するポリエチレングリコールの分子量が大きい場合、海成分ポリマー中におけるポリアルキレングリコールの分散性が悪く、アルカリ処理後の極細繊維表面に細かい溝が発現しにくく、極細繊維が高分子弾性体を把持しにくいため、得られる人工皮革は耐摩耗性に劣るものとなる。
また、比較例3に示すように、繊維表面に存在する溝数が多い場合、極細繊維が高分子弾性体を把持しやすくなる一方で繊維自体の強度が大きく低下するため、得られる人工皮革は耐摩耗性および風合いに劣るものとなる。
1:繊維表面に存在する溝部の長さ
2:繊維表面に存在する溝部の幅
3:繊維軸に対する溝部の傾き

Claims (4)

  1. 平均単繊維直径が1μm以上10μm以下であり、熱可塑性樹脂組成物からなる極細繊維で構成されてなる繊維絡合体と、高分子弾性体とを構成要素として含む人工皮革であって、前記極細繊維の少なくとも一部が前記極細繊維の表面において、繊維方向10μmあたり1本以上20本以下の溝が配されてなる極細繊維Aである、人工皮革。
  2. 前記人工皮革の質量に対する高分子弾性体の質量の比が15質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の人工皮革。
  3. JIS L1096:2010の「8.19.5 E法(マーチンデール法)」で測定される耐摩耗試験において、押圧荷重を12.0kPaとし、20000回の回数を摩耗した後の摩耗減量が4.0mg以下である、請求項1または2に記載の人工皮革。
  4. 数平均分子量が500以上3500以下であるポリアルキレングリコールが共重合された共重合ポリエステルを海成分ポリマーとした海島型複合繊維を主構成成分とした繊維絡合体から、前記海成分ポリマーを除去し、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下である極細繊維を発現させる工程と、高分子弾性体を付与する工程を含み、前記極細繊維の少なくとも一部が該表面において、繊維方向10μmあたり1本以上20本以下の溝が配されてなる極細繊維Aである、請求項1〜3のいずれかに記載の人工皮革の製造方法。
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