JP2022140326A - 人工皮革 - Google Patents
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Abstract
【課題】 極細繊維で構成されてなる繊維絡合体と高分子弾性体とを構成要素として含む人工皮革において、発色性かつ耐光性に優れた人工皮革を提供すること。【解決手段】 極細繊維で構成されてなる繊維絡合体と高分子弾性体とを構成要素として含む人工皮革であって、前記極細繊維の可動非晶量が17%以上40%未満である、人工皮革。【選択図】 なし
Description
本発明は、発色性かつ耐光性に優れた人工皮革に関するものである。
主として極細繊維からなる繊維絡合体と高分子弾性体とからなる天然皮革調の人工皮革は、耐久性の高さや品質の均一性などの天然皮革対比で優れた特徴を有している。このため、自動車内装材やインテリア、コンシューマーエレクトロニクス、衣料など幅広い用途に用いられる。中でも、人工皮革が自動車内装材用途で使用される際には、優れた機械特性の他に、優れた風合いや表面品位、高耐光性が求められる。
人工皮革の風合いや表面品位は、上記繊維絡合体の繊維密度が高いほど、また、繊維絡合体を構成する極細繊維が高分子弾性体を把持し、極細繊維-高分子弾性体間の接着部分が多いほど、良好となる傾向がある。このため、繊維絡合体としては高絡合で緻密性の高いシートとすること、人工皮革としては極細繊維と高分子弾性体の接着部分を増やし、柔軟な風合いや優れた表面品位を有することが一般的に求められる。
また、人工皮革の特性制御に関しては、人工皮革を構成する極細繊維の繊維構造を制御することで、耐摩耗性に優れる人工皮革が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
特許文献1に開示された技術においては、人工皮革を構成する極細繊維の結晶化度を高く、かつ、可動非晶量を少なくすることで、剛直性の高い極細繊維を得ることができ、ニードルパンチ時の繊維絡合工程において繊維絡合体が厚み方向につぶれにくくなるために絡合を促進することが可能となるほか、高い耐摩耗性を有する人工皮革とすることが可能である。
しかしながら、特許文献1が開示するような繊維構造では極細繊維の剛直性が高いことから分子鎖の拘束力が強く、染色工程において染料が極細繊維中に入りにくくなる傾向にある。分子鎖の拘束力が強いと分子鎖切断による染料劣化はしにくいものの染料が極細繊維中に入りにくくなるため、結果として良好な発色性が得られないといった課題がある。
そこで本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、極細繊維で構成されてなる繊維絡合体と高分子弾性体とを構成要素として含む人工皮革において、発色性かつ耐光性に優れた人工皮革を提供することにある。
上記の目的を達成すべく本発明者らが検討を重ねた結果、人工皮革を構成する極細繊維の可動非晶量を特定の範囲で制御することで、極細繊維の分子鎖が適度な柔軟性および拘束力を有することから、前記極細繊維からなる人工皮革を染色した際、極細繊維中に染料が入りやすく、また、分子鎖切断による染料劣化がしにくくなり、結果として発色性や耐光性に優れるとともに、優美な表面品位を有する人工皮革を得ることが可能であることを見出した。
本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
すなわち、本発明の人工皮革は、極細繊維で構成されてなる繊維絡合体と高分子弾性体とを構成要素として含む人工皮革であって、前記極細繊維の可動非晶量が17%以上40%未満である。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記極細繊維の結晶化度が20%以上40%以下である。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記極細繊維を構成する熱可塑性樹脂の重量平均分子量Mwの数平均分子量Mnに対する比(Mw/Mn)が1.5以上2.5以下である。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記人工皮革に占める高分子弾性体の質量比が15質量%以上50質量%以下である。
本発明における人工皮革の製造方法は、海成分が、メルトフローレートが1.0g/10分以上90.0g/10分以下である熱可塑性樹脂であって、島成分が、固有粘度が0.7以上1.2以下である熱可塑性樹脂である海島型複合繊維を主構成成分とする繊維絡合体を製造する工程と、前記繊維絡合体から海成分を除去し、平均単繊維直径が0.1μm以上10μm以下である極細繊維を発現させる工程と、高分子弾性体を付与する工程を含む。
本発明の人工皮革によれば、染色時に染料が入りやすく、また、染料劣化を抑制することが可能であり、結果として発色性や耐光性に優れるとともに、優美な表面品位を有する人工皮革を得ることが可能である。本発明の人工皮革は、家具、椅子および自動車内装材から衣料用途まで幅広く用いることができるが、上記のとおり発色性や耐光性に優れるとともに、優美な表面品位を併せ持つことから、特に自動車内装材に好適に用いることができる。
本発明の人工皮革は、極細繊維で構成されてなる繊維絡合体と高分子弾性体とを構成要素として含む人工皮革であって、前記極細繊維の可動非晶量が17%以上40%未満である。以下に、その構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
[繊維絡合体]
本発明の人工皮革は、極細繊維からなる繊維絡合体を構成要素として含む。前記極細繊維は熱可塑性樹脂からなり、熱可塑性樹脂とは、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、ポリフェニレンスルフィド等を挙げることができる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポチトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等を挙げることができる。また、ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド12等を挙げることができる。さらに、ポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等を挙げることができる。中でも、強度や寸法安定性、耐熱性の観点から、ポリエステルが好ましく用いられる。
本発明の人工皮革は、極細繊維からなる繊維絡合体を構成要素として含む。前記極細繊維は熱可塑性樹脂からなり、熱可塑性樹脂とは、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、ポリフェニレンスルフィド等を挙げることができる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポチトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等を挙げることができる。また、ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド12等を挙げることができる。さらに、ポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等を挙げることができる。中でも、強度や寸法安定性、耐熱性の観点から、ポリエステルが好ましく用いられる。
本発明において、ポリエステルで用いられるジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。本発明でいうエステル形成性誘導体とは、これらジカルボン酸の低級アルキルエステル、酸無水物、アシル塩化物などであり、具体的にメチルエステル、エチルエステル、ヒドロキシエチルエステルなどが好ましく用いられる。本発明で用いられるジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体としてより好ましい態様は、テレフタル酸および/またはそのジメチルエステルである。
本発明において、ポリエステルで用いられるジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられ、中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。
前記極細繊維に用いられる熱可塑性樹脂には、種々の目的に応じ、本発明の目的を阻害しない範囲で、酸化チタン粒子などの無機粒子、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱剤、抗菌剤等を含有することができる。
また、前記極細繊維を構成する熱可塑性樹脂の重量平均分子量Mwの数平均分子量Mnに対する比(Mw/Mn)が1.1以上2.5以下であることが好ましい。より好ましくは1.2以上2.3以下である。分子量分布を上記範囲とすることにより、製造時においては紡糸時の曳糸性および安定性に優れた効果を奏するほか、下述するような繊維構造の極細繊維を有する人工皮革を得ることが可能である。
本発明の極細繊維は、可動非晶量が17%以上40%未満である。極細繊維の可動非晶量を17%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上とすることにより、分子鎖が適度な柔軟性を有することから良好な発色性を有する人工皮革が得られる。一方、極細繊維の可動非晶量を40%未満とすることにより、分子鎖切断による染料劣化を抑制できることから耐光性に優れた人工皮革が得られる。
極細繊維の可動非晶量は、例えば、熱可塑性樹脂の固有粘度やMw/Mn、紡糸速度や延伸倍率等を調整することなどによって、上記の範囲とすることができる。
本発明において、極細繊維の可動非晶量は、温度変調DSC法(TMDSC)による、温度-熱流速可逆曲線上のガラス転移前後での比熱変化(ΔCp)から算出する。ここでのΔCpは、ガラス転移前後の温度-熱流速可逆曲線に接線を外挿して算出したガラス転移前後の比熱ギャップを用いて、次の式1によって算出する。ここで、ΔCp0は完全非晶体における熱可塑性樹脂のTg前後での比熱差であり、熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートであれば、その値は、0.4052J/(g・℃)である
可動非晶量(%)=(ΔCp/ΔCp0)×100 ・・・(1)
なお、上記の温度変調DSC法の詳細は、例えば、次の[文献1]などに記載されている。
[文献1]: B.Wunderlich,Thermal Analysis of Polymeric Materials,Springer(2005)
そして、極細繊維の可動非晶量の測定には、例えば、TA Instruments社製熱分析装置「Q1000」などを用いることができる。
可動非晶量(%)=(ΔCp/ΔCp0)×100 ・・・(1)
なお、上記の温度変調DSC法の詳細は、例えば、次の[文献1]などに記載されている。
[文献1]: B.Wunderlich,Thermal Analysis of Polymeric Materials,Springer(2005)
そして、極細繊維の可動非晶量の測定には、例えば、TA Instruments社製熱分析装置「Q1000」などを用いることができる。
本発明の極細繊維は、結晶化度が20%以上40%以下であることが好ましい。極細繊維の結晶化度を好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上とすることにより、ニードルパンチ時の繊維絡合工程において繊維絡合体が厚み方向につぶれにくくなるために絡合を促進することが可能となる。一方、極細繊維の結晶化度を好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下とすることにより、良好な風合いを有する人工皮革が得られる。
極細繊維の結晶化度は、例えば、熱可塑性樹脂の固有粘度、紡糸速度や延伸倍率、および乾燥温度等を調整することなどによって、上記の範囲とすることができる。
本発明において、極細繊維の結晶化度は、DSC法により、融解熱量と冷結晶化熱量の差(ΔHm-ΔHc)を計算し、次の式2によって算出する。ここで、ΔHm0は完全非晶体における熱可塑性樹脂の融解熱量であり、熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートであれば、その値は、140.10J/gである。測定方法の詳細は、上述の[文献1]に記載されている
結晶化度(%)=(ΔHm-ΔHc)/ΔHm0×100 ・・・(2)
そして、極細繊維の結晶化度の測定には、例えば、TA Instruments社製熱分析装置「Q1000」などを用いることができる。
結晶化度(%)=(ΔHm-ΔHc)/ΔHm0×100 ・・・(2)
そして、極細繊維の結晶化度の測定には、例えば、TA Instruments社製熱分析装置「Q1000」などを用いることができる。
本発明において、極細繊維の平均単繊維直径は0.1μm以上10.0μm以下であることが好ましい。極細繊維の平均単繊維直径を好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上とすることにより、染色後の発色性や耐光性および摩擦堅牢性、紡糸時の安定性に優れた効果を奏する。一方、極細繊維の平均単繊維直径を好ましくは10.0μm以下、より好ましくは7.0μm以下、さらに好ましくは5.0μm以下とすることにより、緻密でタッチの柔らかい表面品位に優れた人工皮革が得られる。
なお、極細繊維の平均単繊維直径は以下の方法により算出されるものとする。
(1)人工皮革断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、円形または円形に近い楕円形の極細繊維をランダムに10本選ぶ。
(2)単繊維直径を測定して10本の算術平均値を計算して、小数点以下第二位で四捨五入する。
(ただし、異型断面の極細繊維を採用した場合には、まず単繊維の断面積を測定し、当該断面を円形と見立てた場合の直径を算出することによって単繊維の直径を求めるものとする。)
また、極細繊維の断面形状としては、加工操業性の観点から、丸断面にすることが好ましいが、楕円、扁平および三角などの多角形、扇形および十字型、中空型、Y型、T型、およびU型などの異形断面の断面形状を採用することもできる。
(1)人工皮革断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、円形または円形に近い楕円形の極細繊維をランダムに10本選ぶ。
(2)単繊維直径を測定して10本の算術平均値を計算して、小数点以下第二位で四捨五入する。
(ただし、異型断面の極細繊維を採用した場合には、まず単繊維の断面積を測定し、当該断面を円形と見立てた場合の直径を算出することによって単繊維の直径を求めるものとする。)
また、極細繊維の断面形状としては、加工操業性の観点から、丸断面にすることが好ましいが、楕円、扁平および三角などの多角形、扇形および十字型、中空型、Y型、T型、およびU型などの異形断面の断面形状を採用することもできる。
本発明の人工皮革は、前記の極細繊維からなる繊維絡合体の形態をなしていることにより、後述する方法によって表面を起毛した際に、均一で優美な外観や風合いを得ることができる。
繊維絡合体の形態としては、短繊維をカードやクロスラッパーを用いて積層繊維ウェブを形成させた後に、ニードルパンチやウォータージェットパンチを施して得られる短繊維絡合体、スパンボンド法やメルトブロー法などから得られる長繊維絡合体、および抄紙法で得られる絡合体などがある。人工皮革を構成する繊維層の基材を長繊維絡合体とする場合においては、強度に優れる人工皮革を得られるため好ましい。一方、短繊維絡合体とする場合においては、長繊維絡合体や抄造法で得られる絡合体の場合に比べて人工皮革の厚さ方向に配向する繊維を多くすることができ、起毛させた際の人工皮革の表面に高い緻密感を有させることができる。さらに、厚み均一性等が良好なものが得られるため、好ましく用いられる。
短繊維絡合体を用いる場合の極細繊維の繊維長は、25mm以上90mm以下であることが好ましい。極細繊維の繊維長を好ましくは25mm以上、より好ましくは35mm以上、さらに好ましくは40mm以上とすることにより、耐摩耗性に優れた人工皮革とすることができる。また、極細繊維の繊維長を好ましくは90mm以下、より好ましくは80mm以下、さらに好ましくは70mm以下とすることにより、良好な表面品位と風合いを有する人工皮革となる。
本発明に係る人工皮革を構成する繊維絡合体の目付は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量(ISO法)」で測定され、50g/m2以上800g/m2以下であることが好ましい。繊維絡合体の目付を好ましくは50g/m2以上、より好ましくは80g/m2以上とすることで、充実感のある、風合いの優れた人工皮革とすることができる。また、繊維絡合体の目付を好ましくは800g/m2以下、より好ましくは700g/m2以下とすることで成型性に優れた、柔軟な人工皮革とすることができる。
[高分子弾性体]
本発明の人工皮革を構成する高分子弾性体は、常温でゴム弾性を有する高分子化合物のことを示す。高分子弾性体のバインダー効果により、極細繊維が人工皮革から抜け落ちることを防止することができるだけでなく、適度なクッション性を付与することが可能となる。
本発明の人工皮革を構成する高分子弾性体は、常温でゴム弾性を有する高分子化合物のことを示す。高分子弾性体のバインダー効果により、極細繊維が人工皮革から抜け落ちることを防止することができるだけでなく、適度なクッション性を付与することが可能となる。
高分子弾性体としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアクリル酸、エチレン・酢酸ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン、スチレン・ブタジエン、ポリビニルアルコール、およびポリエチレングリコール等が挙げられ、耐久性と圧縮特性の観点からは、ポリウレタンが好ましく用いられる。なお、高分子弾性体には、複数の高分子弾性体を含有せしめることができる。
本発明において、高分子弾性体にポリウレタンを用いる場合には、有機溶剤に溶解した状態で使用する有機溶剤系ポリウレタンと、水に分散した状態で使用する水分散型ポリウレタンのどちらも採用することができる。
有機溶剤系ポリウレタンを用いる場合、その重量平均分子量は、50000以上500000以下であることが好ましい。質量平均分子量を好ましくは50000以上、より好ましくは100000以上、さらに好ましくは150000以上とすることにより、人工皮革の強度を保持し、また複合繊維の脱落を防ぐことができる。また、重量平均分子量を好ましくは500000以下、より好ましくは400000以下、さらに好ましくは300000以下、特に好ましくは250000以下とすることにより、ポリウレタン溶液の粘度増大を抑えて繊維絡合体への含浸を容易にすることができる。
水分散型ポリウレタンを用いる場合、その数平均分子量は20000以上500000以下であることが好ましい。数平均分子量を好ましくは20000以上、より好ましくは30000以上とすることにより、ポリウレタンの強度を高くできる。また、数平均分子量を好ましくは500000以下、より好ましくは300000以下とすることにより、ポリウレタン溶液の粘度安定性を高め、作業性を向上させることができる。
上記のようなポリウレタンとしては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタンが好ましく用いられる。
高分子弾性体としてポリウレタンを用いる場合のポリマージオールとしては、例えば、ポリカーボネート系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、シリコーン系ジオールおよびフッ素系ジオールを採用することができ、これらを組み合わせた共重合体を用いることもできる。中でも、耐加水分解性の観点からは、ポリカーボネート系ジオールおよびポリエーテル系ジオールを用いることが好ましい。
前記のポリカーボネート系ジオールは、例えば、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、あるいはホスゲンまたはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。
また、アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールなどの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールおよび2-メチル-1,8-オクタンジオールなどの分岐アルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールなどが挙げられる。本発明では、それぞれ単独のアルキレングリコールから得られるポリカーボネート系ジオールでも、2種類以上のアルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネート系ジオールのいずれも採用することができる。
前記のポリエステル系ジオールとしては、各種低分子量ポリオールと多塩基酸とを縮合させて得られるポリエステルジオールを挙げることができる。
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、およびシクロヘキサン-1,4-ジメタノールから選ばれる1種または2種以上を使用することができる。また、ビスフェノールAに各種アルキレンオキサイドを付加させた付加物も使用可能である。
また、多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびヘキサヒドロイソフタル酸から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
前記のポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびそれらを組み合わせた共重合ジオールを挙げることができる。
なお、本発明で用いられるポリマージオールの数平均分子量は、500以上5000以下であることが好ましい。数平均分子量を好ましくは500以上、より好ましくは1500以上とすることにより、人工皮革の硬化を防ぐことができる。また、数平均分子量を好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、さらに好ましくは3000以下とすることにより、ポリウレタンとしての強度を維持することができる。
高分子弾性体としてポリウレタンを用いる場合の有機ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートや、ジフェニルメタンジイソシアネート、およびトリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートが挙げられ、またこれらを組み合わせて用いることもできる。中でも、耐久性や耐熱性を重視する場合には、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートが好ましく、耐光性を重視する場合には、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートが好ましく用いられる。
高分子弾性体としてポリウレタンを用いる場合の鎖伸長剤としては、例えば、水や、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどの低分子ジオール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ジオール、1,4-ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼンなどの芳香族ジオール、エチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン、4,4-ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ジアミン、キシレンジアミンなどの芳香脂肪族ジアミン、エタノールアミンなどのアルカノールアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジドなどのジヒドラジドが挙げられ、また、これらを組み合わせて用いることもできる。中でも、より好ましい鎖伸長剤は、水、低分子ジオール、芳香族ジアミンであり、さらに好ましくは水、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、4,4’-ジアミノジフェニルメタンおよびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
本発明において水分散型ポリウレタンを使用する場合には、ポリウレタンを水に分散させるため、内部乳化剤を使用することが好ましい。内部乳化剤としては、例えば、4級アミン塩等のカチオン系の内部乳化剤、スルホン酸塩やカルボン酸塩等のアニオン系の内部乳化剤およびポリエチレングリコール等のノニオン系の内部乳化剤が挙げられ、さらにカチオン系とノニオン系の内部乳化剤の組み合わせ、およびアニオン系とノニオン系の内部乳化剤の組み合わせのいずれも採用することができる。中でも、ノニオン系の内部乳化剤が、カチオン系の内部乳化剤に比べて耐光性に優れ、またアニオン系の内部乳化剤に比べて中和剤による弊害もない点で好ましく用いられる。
本発明で用いられる高分子弾性体は、耐水性、耐摩耗性および耐加水分解性等を向上させる目的で架橋剤を併用することができる。架橋剤は、高分子弾性体に対し、第3成分として添加する外部架橋剤でもよく、また高分子弾性体の分子構造内に予め架橋構造となる反応点を導入する内部架橋剤も用いることができる。高分子弾性体の分子構造内により均一に架橋点を形成することができ、柔軟性の減少を軽減できるという観点から、内部架橋剤を用いることが好ましい。
前記の架橋剤としては、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基、メラミン樹脂、およびシラノール基などを有する化合物を用いることができる。
また、高分子弾性体には、目的に応じて各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系および無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系およびリン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系およびオキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、耐電防止剤、界面活性剤、凝固調整剤および染料などを含有させることができる。
一般に、人工皮革における高分子弾性体の含有量は、使用する高分子弾性体の種類、高分子弾性体の製造方法および風合や物性を考慮して、適宜調整することができるが、本発明においては、高分子弾性体の含有量は、人工皮革の質量に対して15質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。高分子弾性体の含有量を15質量%以上、より好ましくは20質量%以上とすることで、繊維間の高分子弾性体による結合を強めることができ、人工皮革の耐摩耗性を向上させることができる。一方、高分子弾性体の含有量を50質量%以下、より好ましくは45質量%以下とすることで、人工皮革をより柔軟性の高いものとすることができる。
[人工皮革]
本発明の人工皮革においては、表面に立毛を有することが好ましい態様である。立毛は人工皮革の表面のみに有していてもよく、両面に有することも許容される。表面に立毛を有する場合の立毛形態は、意匠効果の観点から指でなぞったときに立毛の方向が変わることで跡が残る、いわゆるフィンガーマークが発する程度の立毛長と方向柔軟性を備えていることが好ましい。
本発明の人工皮革においては、表面に立毛を有することが好ましい態様である。立毛は人工皮革の表面のみに有していてもよく、両面に有することも許容される。表面に立毛を有する場合の立毛形態は、意匠効果の観点から指でなぞったときに立毛の方向が変わることで跡が残る、いわゆるフィンガーマークが発する程度の立毛長と方向柔軟性を備えていることが好ましい。
より具体的には、表面の立毛長は100μm以上500μm以下であることが好ましい。立毛長を好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上とすることで、ボリューム感や意匠効果を得られる。また、立毛長を好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下とすることで、優れた耐摩耗性を有する人工皮革が得られ、また、極細繊維同士の絡まりに伴う表面品位の低下を抑制できる。
本発明において、人工皮革の立毛長は以下の方法により算出されるものとする。
(1)リントブラシ等を用いて人工皮革の立毛を逆立てた状態で、人工皮革の長手方向に垂直な面の断面方向に厚さ1mmの薄切片を作製する。
(2)人工皮革断面のSEM写真を撮影し、断面幅方向に200μm間隔で立毛部(極細繊維のみからなる層)の高さを10点測定する。
(3)測定した10点の立毛部の高さについて、算術平均値を算出する。
(1)リントブラシ等を用いて人工皮革の立毛を逆立てた状態で、人工皮革の長手方向に垂直な面の断面方向に厚さ1mmの薄切片を作製する。
(2)人工皮革断面のSEM写真を撮影し、断面幅方向に200μm間隔で立毛部(極細繊維のみからなる層)の高さを10点測定する。
(3)測定した10点の立毛部の高さについて、算術平均値を算出する。
本発明の人工皮革は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の6.2「単位面積当たりの質量(ISO法)」により測定される目付が100g/m2以上500g/m2以下であることが好ましい。人工皮革の目付を好ましくは100g/m2以上、より好ましくは150g/m2以上とすることで、人工皮革に十分な形態安定性と寸法安定性が得られやすくなる。また、人工皮革の目付を好ましくは500g/m2以下、より好ましくは400g/m2以下とすることにより、十分な柔軟性と風合いが得られる。
本発明の人工皮革は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.1 厚さ(ISO法)」の「6.1.1 A法」で測定される厚みが0.2mm以上1.2mm以下であることが好ましい。人工皮革の厚みを好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.4mm以上とすることで、製造時の加工性に優れるだけでなく、充実感のある、風合いに優れたものとなる。また、人工皮革の厚みを好ましくは1.2mm以下、より好ましくは1.1mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下とすることで、成型性に優れた柔軟な人工皮革とすることができる。
また、本発明の人工皮革は、JIS L1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の「8.19 摩耗強さ及び摩擦変色性」の「8.19.5 E法(マーチンデール法)」で測定される耐摩耗試験において、押圧荷重を12.0kPaとし、20000回の回数を摩耗した後の人工皮革の質量減が10mg以下であることが好ましく、8mg以下であることがより好ましく、6mg以下であることがさらに好ましい。質量減が10mg以下であることで、実使用時の毛羽落ちによる汚染を防ぐことができる。
さらに、本発明の人工皮革は、JIS L0849:2013「摩擦に対する染色堅ろう度試験方法」の「9.1 摩擦試験機I型(クロックメータ)法」で測定される摩擦堅牢度およびJIS L0843:2006「キセノンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法」の「7.2 露光方法 a) 第1露光法」で測定される耐光堅牢度がそれぞれ4級以上であることが好ましい。摩擦堅牢度および耐光堅牢度が4級以上であることで、実使用時に色落ちや衣服等への汚染を防ぐことができる。
[人工皮革の製造方法]
本発明の人工皮革の製造方法は、海成分が、メルトフローレート(以下、MFRと略記することがある。)が1.0g/10分以上90.0g/10分以下である熱可塑性樹脂であって、島成分が、固有粘度が0.7以上1.2以下である熱可塑性樹脂である海島型複合繊維を主構成成分とする繊維絡合体を製造する工程と、前記繊維絡合体から海成分を除去し、平均単繊維直径が0.1μm以上10.0μm以下である極細繊維を発現させる工程と、高分子弾性体を付与する工程を含む。以下に、詳細について説明する。
本発明の人工皮革の製造方法は、海成分が、メルトフローレート(以下、MFRと略記することがある。)が1.0g/10分以上90.0g/10分以下である熱可塑性樹脂であって、島成分が、固有粘度が0.7以上1.2以下である熱可塑性樹脂である海島型複合繊維を主構成成分とする繊維絡合体を製造する工程と、前記繊維絡合体から海成分を除去し、平均単繊維直径が0.1μm以上10.0μm以下である極細繊維を発現させる工程と、高分子弾性体を付与する工程を含む。以下に、詳細について説明する。
<繊維絡合体の形成>
本発明に係る人工皮革の製造方法では、海島型複合繊維を主構成成分とする繊維絡合体を製造する工程を含むことが好ましい態様である。
本発明に係る人工皮革の製造方法では、海島型複合繊維を主構成成分とする繊維絡合体を製造する工程を含むことが好ましい態様である。
海島型複合繊維には、海島型複合用口金を用い、海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体を用いる方式と、海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などがあるが、均一な単繊維繊度の極細繊維が得られるという観点から、高分子相互配列体を用いる方式による海島型複合繊維が好ましい。
海島型複合繊維の海成分と島成分の比率は、島成分の海島型複合繊維に対する質量比で20%以上90%以下であることが好ましい。島成分の質量比を好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上とすることで、海成分の除去率を少なくすることができ、より生産性が向上する。また、島成分の質量比を好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下とすることで、島成分の合流を防ぐことができ、表面品位の低下を抑制することができる。
海島型複合繊維の海成分として用いられる熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステル、およびポリ乳酸などを用いることができるが、製糸性や易溶出性の観点から、ポリスチレンや共重合ポリエステルが好ましく用いられる。
共重合ポリエステルを用いる場合、5-スルホイソフタル酸ナトリウムを3モル%以上15モル%以下共重合してなる共重合ポリエステルが好ましい。5-スルホイソフタル酸ナトリウム成分を3モル%以上共重合させることにより、十分なアルカリ溶出性を得られる。また、5-スルホイソフタル酸ナトリウム成分の共重合量が15モル%以下であると、ポリエステルの増粘が抑えられ、複合繊維紡糸時の糸切れが発生しにくいという効果を奏する。より好ましくは5モル%以上13モル%以下の範囲である。
本発明に係る海島型複合繊維は、海成分が、メルトフローレート(MFR)が1.0g/10分以上90.0g/10分以下の熱可塑性樹脂であることが好ましい。海成分のMFRを好ましくは1.0g/10分以上、より好ましくは5.0g/10分以上、さらに好ましくは10.0g/10分以上、あるいは好ましくは90.0g/10分以下、より好ましくは80.0g/10分以下とすることで、紡糸時の曳糸性および断面形成性に優れた効果を奏するほか、下述の島成分と組み合わせることで、本発明の特徴である繊維構造を有する極細繊維を容易に得ることが可能である。
海島型複合繊維の島成分として用いられる熱可塑性樹脂は、上述の極細繊維を構成する熱可塑性樹脂として挙げた、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、ポリフェニレンスルフィド等を挙げることができる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポチトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等を挙げることができる。また、ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド12等を挙げることができる。さらに、ポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等を挙げることができる。中でも、強度や寸法安定性、耐熱性の観点から、ポリエステルが好ましく用いられる。
本発明に係る海島型複合繊維は、島成分が、固有粘度が0.7以上1.2以下である熱可塑性樹脂であることが好ましい。島成分の固有粘度を好ましくは0.7以上、あるいは好ましくは1.2以下、好ましくは1.1以下、さらに好ましくは1.0以下とすることで、紡糸時の曳糸性および安定性に優れた効果を奏するほか、上述の海成分と組み合わせることで、本発明の特徴である繊維構造を有する極細繊維を得ることが可能である。
また、海島型複合繊維を構成する海成分および島成分には、種々の目的に応じ、本発明の目的を阻害しない範囲で、酸化チタン粒子などの無機粒子、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱剤、抗菌剤等を含有することができる。
本発明の人工皮革の製造方法において、海島型複合繊維を用いる場合には、その島成分の強度が2.5cN/dtex以上であることが好ましい。島成分の強度を好ましくは2.5cN/dtex以上、より好ましくは2.8cN/dtex以上、さらに好ましくは3.0cN/dtex以上とすることで、人工皮革の耐摩耗性を向上させることができる。
本発明において、海島型複合繊維の島成分の強度は以下の方法により算出されるものとする。
(1)長さ20cmの海島型複合繊維を10本束ねる。
(2)(1)の試料から海成分を溶解除去したのちに、風乾する。
(3)JIS L1013:2010「化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.5 引張強さ及び伸び率」の「8.5.1 標準時試験」にて、つかみ長さ5cm、引張速度5cm/分、荷重2Nの条件にて10回試験する。
(4)(3)で得られた試験結果の算術平均値(cN/dtex)を小数点以下第二位で四捨五入して得られる値を、海島型複合繊維を構成する島成分の強度とする。
(1)長さ20cmの海島型複合繊維を10本束ねる。
(2)(1)の試料から海成分を溶解除去したのちに、風乾する。
(3)JIS L1013:2010「化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.5 引張強さ及び伸び率」の「8.5.1 標準時試験」にて、つかみ長さ5cm、引張速度5cm/分、荷重2Nの条件にて10回試験する。
(4)(3)で得られた試験結果の算術平均値(cN/dtex)を小数点以下第二位で四捨五入して得られる値を、海島型複合繊維を構成する島成分の強度とする。
また、前記海島型複合繊維は公知の方法を用いて延伸加工を実施することができるが、その延伸倍率は2.1倍以上4.0倍以下であることが好ましい。延伸倍率を好ましくは2.1倍以上、より好ましくは2.3倍以上、さらに好ましくは2.5倍以上とすることで、十分な強度を有する海島型複合繊維を得ることができる。また、延伸倍率を好ましくは4.0倍以下、より好ましくは3.8倍以下、さらに好ましくは3.5倍以下とすることで、延伸時の安定性に優れた効果を奏するほか、本発明の特徴である繊維構造を有する極細繊維を得ることが可能である。
さらに、前記海島型複合繊維の延伸加工後に乾燥処理を施すことも好ましい態様である。その際の乾燥温度は50℃以上100℃以下であることが好ましい。乾燥温度を好ましくは50℃以上とすることで、効率的な海島型複合繊維の乾燥が可能となる。また、乾燥温度を好ましくは100℃以下とすることで、乾燥処理による繊維構造変化を抑えることができる。
本発明の人工皮革を構成する繊維絡合体は、紡出された前記海島型複合繊維を開繊したのちにクロスラッパー等により繊維ウェブとし、その繊維ウェブを絡合させることで得ることができる。繊維ウェブを絡合させ繊維絡合体を得る方法としては、ニードルパンチ処理やウォータージェットパンチ処理等を用いることができる。
繊維絡合体の形態としては、前述のように短繊維絡合体でも長繊維絡合体でも用いることができるが、短繊維絡合体であると、人工皮革の厚さ方向に配向する繊維が長繊維絡合体に比べて多くなり、起毛した際の人工皮革の表面に高い緻密感を得ることができる。
短繊維絡合体とする場合には、得られた海島型複合繊維に、好ましくは捲縮加工を施し、所定長にカット加工して原綿を得たのちに、開繊、積層、絡合させることで短繊維絡合体を得る。捲縮加工やカット加工は、公知の方法を用いることができる。
上記ニードルパンチ処理に用いられるニードルにおいては、ニードルバーブ(切りかき)の数は好ましくは1本以上9本以下である。ニードルバーブを好ましくは1本以上とすることで、効率的な繊維の絡合が可能となる。また、ニードルバーブを好ましくは9本以下とすることで、繊維損傷を抑えることができる。
バーブに引っかかる海島型複合繊維の本数は、バーブの形状と海島型複合繊維の直径によって決定される。そのため、ニードルパンチ工程で用いられる針のバーブ形状は、キックアップが0μm以上50μm以下であり、アンダーカットアングルが0°以上40°以下であり、スロートデプスが40μm以上80μm以下であり、そしてスロートレングスが0.5mm以上1.0mm以下のものが好ましく用いられる。
パンチング本数は、1000本/cm2以上8000本/cm2以下であることが好ましい。パンチング本数を好ましくは1000本/cm2以上とすることで、緻密な繊維絡合体を得られる。また、パンチング本数を好ましくは8000本/cm2以下とすることで、加工性の悪化、繊維損傷および強度低下を防ぐことができる。
また、ウォータージェットパンチ処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。具体的には、直径0.05mm以上1.0mm以下のノズルから圧力2MPa以上60MPa以下で水を噴出させることが好ましい。
ニードルパンチ処理あるいはウォータージェットパンチ処理後の海島型複合繊維からなる繊維絡合体の見掛け密度は、0.15g/cm3以上0.45g/cm3以下であることが好ましい。見掛け密度を好ましくは0.15g/cm3以上とすることで、人工皮革が十分な形態安定性と寸法安定性を得られる。また、見掛け密度を好ましくは0.45g/cm3以下とすることで、高分子弾性体を付与するための十分な空間を維持することができる。
前記の繊維絡合体には、繊維の緻密感向上のために、温水やスチームによる熱収縮処理を施すことも好ましい態様である。
次に、前記の繊維絡合体に水溶性樹脂の水溶液を含浸し、乾燥することにより水溶性樹脂を付与することもできる。繊維絡合体に水溶性樹脂を付与することにより、繊維が固定されて寸法安定性が向上される。
<極細繊維の発現>
そして、本発明の人工皮革の製造方法は、前記の繊維絡合体から海成分を除去し、平均単繊維直径が0.1μm以上10.0μm以下である極細繊維を発現させる工程を含むことが好ましい。
そして、本発明の人工皮革の製造方法は、前記の繊維絡合体から海成分を除去し、平均単繊維直径が0.1μm以上10.0μm以下である極細繊維を発現させる工程を含むことが好ましい。
極細繊維から発現させる処理は、溶剤中に海島型複合繊維からなる繊維絡合体を浸漬させて、海島型複合繊維の海成分を溶解させて除去することにより行うことができる。
海成分を溶解させ、除去する溶剤としては、海成分がポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンの場合には、トルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶剤を用いることができる。また、海成分が共重合ポリエステルやポリ乳酸の場合には、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いることができる。また、海成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂の場合には、熱水を用いることができる。
<高分子弾性体の付与>
さらに、本発明の人工皮革の製造方法は、前記の海島型複合繊維からなる繊維絡合体または海島型複合繊維の海成分が溶解除去された極細繊維からなる繊維絡合体に、高分子弾性体の溶液を含浸し固化して高分子弾性体を付与する工程を含むことが好ましい。
さらに、本発明の人工皮革の製造方法は、前記の海島型複合繊維からなる繊維絡合体または海島型複合繊維の海成分が溶解除去された極細繊維からなる繊維絡合体に、高分子弾性体の溶液を含浸し固化して高分子弾性体を付与する工程を含むことが好ましい。
高分子弾性体を繊維絡合体に固定する方法としては、高分子弾性体の溶液を繊維絡合体に含浸させた後、凝固浴中に浸漬させて固定する湿式凝固法、または、乾燥させて固定する乾式凝固法があり、付与する高分子弾性体の種類により適宜これらの方法を選択することができる。
高分子弾性体としてポリウレタンを付与させる際に用いられる溶媒としては、N,N’-ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等が好ましく用いられる。また、ポリウレタンを水中にエマルジョンとして分散させた水分散型ポリウレタン液を用いてもよい。
<その他の工程>
上記の工程を終えたシート状物は、そのまま人工皮革としてもよいが、製造効率を向上させる観点から、厚み方向に半裁して2枚のシート状物とし、人工皮革とすることも好ましい態様である。
上記の工程を終えたシート状物は、そのまま人工皮革としてもよいが、製造効率を向上させる観点から、厚み方向に半裁して2枚のシート状物とし、人工皮革とすることも好ましい態様である。
さらに、前記の高分子弾性体が付与されてなるシート状物あるいは半裁された高分子弾性体が付与されてなるシート状物の表面に、起毛処理を施して人工皮革とすることもできる。起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて、研削する方法などにより施すことができる。起毛処理は、シート状物の片側表面のみに施しても、両面に施すこともできる。
前記の起毛処理を施す場合には、起毛処理の前にシリコーンエマルジョンなどの滑剤をシート状物の表面へ付与することができる。また、起毛処理の前に帯電防止剤を付与することで、研削によってシート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなる。
さらに、前記のシート状物に対し、染色処理を施して人工皮革とすることも好ましい。この染色処理としては、例えば、ジッガー染色機や液流染色機を用いた液流染色処理、連続染色機を用いたサーモゾル染色処理等の浸染処理、あるいはローラー捺染、スクリーン捺染、インクジェット方式捺染、昇華捺染および真空昇華捺染等による立毛面への捺染処理等を用いることができる。中でも、柔軟な風合いが得られるとともに、品質や品位面の観点から液流染色機を用いることが好ましい。また、必要に応じて、染色後に各種の樹脂仕上げ加工を施すことができる。
加えて、前記のシート状物に対して、所望の態様に応じてその表面に意匠性を施して人工皮革とすることもできる。例えば、パーフォレーション等の穴開け加工、エンボス加工、レーザー加工、ピンソニック加工、およびプリント加工等の後加工処理を施すことができる。
以上に例示された製造方法によって得られる本発明の人工皮革は、発色性や耐光性に優れるとともに、優美な表面品位を併せ持つことから、例えば、家具、椅子および自動車内装材から衣料用途まで幅広く用いることができる。
次に、実施例を用いて本発明の人工皮革についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。まず、実施例で用いた評価法とその測定条件について説明する。ただし、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
[測定方法および評価用加工方法]
A.極細繊維の可動非晶量および結晶化度
極細繊維の可動非晶量および結晶化度は、TA Instruments社製熱分析装置「Q1000」を用いて分析し、データ処理にはTA Instruments社製「Universal Analysis 2000」を用いることで算出した。
A.極細繊維の可動非晶量および結晶化度
極細繊維の可動非晶量および結晶化度は、TA Instruments社製熱分析装置「Q1000」を用いて分析し、データ処理にはTA Instruments社製「Universal Analysis 2000」を用いることで算出した。
B.分子量分布:
極細繊維を構成する熱可塑性ポリマーの分子量分布は、株式会社東ソー社製ゲル浸透クロマトグラフィー「HLC-8220」を用いて算出した。
極細繊維を構成する熱可塑性ポリマーの分子量分布は、株式会社東ソー社製ゲル浸透クロマトグラフィー「HLC-8220」を用いて算出した。
C.極細繊維の平均単繊維直径:
極細繊維の平均単繊維直径の測定においては、株式会社キーエンス社製デジタルマイクロスコープ「VHX-D510」を用いて極細繊維を観察し、平均単繊維直径を算出した。
極細繊維の平均単繊維直径の測定においては、株式会社キーエンス社製デジタルマイクロスコープ「VHX-D510」を用いて極細繊維を観察し、平均単繊維直径を算出した。
D.人工皮革の摩擦堅牢度:
測定後のサンプルの汚染度合いをJIS L0805:2005「汚染用グレースケール」に規定の汚染用グレースケールを用いて級判定し、4級以上(L*a*b*表色系による色差ΔE* abが4.5±0.3以下)を合格とした。
測定後のサンプルの汚染度合いをJIS L0805:2005「汚染用グレースケール」に規定の汚染用グレースケールを用いて級判定し、4級以上(L*a*b*表色系による色差ΔE* abが4.5±0.3以下)を合格とした。
E.人工皮革の耐光堅牢度:
照射後サンプルの変退色度合いをJIS L0804:2004「変退色用グレースケール」に規定の変退色用グレースケールを用いて級判定し、4級以上(L*a*b*表色系による色差ΔE* abが1.7±0.3以下)を合格とした。
照射後サンプルの変退色度合いをJIS L0804:2004「変退色用グレースケール」に規定の変退色用グレースケールを用いて級判定し、4級以上(L*a*b*表色系による色差ΔE* abが1.7±0.3以下)を合格とした。
F.人工皮革の発色性:
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、下記の評価を視覚で判別を行い、最も多かった評価を人工皮革の発色性とした。なお、評価が同数となった場合は、より高い評価をその人工皮革の発色性とすることとした。本発明において良好なレベルは、「AまたはB」である。
・A:非常に良好な発色性である。
・B:良好な発色性である。
・C:不良な発色性である。
・D:非常に不良な発色性である。
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、下記の評価を視覚で判別を行い、最も多かった評価を人工皮革の発色性とした。なお、評価が同数となった場合は、より高い評価をその人工皮革の発色性とすることとした。本発明において良好なレベルは、「AまたはB」である。
・A:非常に良好な発色性である。
・B:良好な発色性である。
・C:不良な発色性である。
・D:非常に不良な発色性である。
G.人工皮革の表面品位:
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、官能評価によって、下記のように評価し、最も多かった評価を人工皮革の表面品位とした。なお、評価が同数となった場合は、より高い評価をその人工皮革の表面品位とすることとした。本発明において良好なレベルは、「AまたはB」である。
・A:非常に良好な表面品位である
・B:良好な表面品位である
・C:不良な表面品位である
・D:非常に不良な表面品位である。
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、官能評価によって、下記のように評価し、最も多かった評価を人工皮革の表面品位とした。なお、評価が同数となった場合は、より高い評価をその人工皮革の表面品位とすることとした。本発明において良好なレベルは、「AまたはB」である。
・A:非常に良好な表面品位である
・B:良好な表面品位である
・C:不良な表面品位である
・D:非常に不良な表面品位である。
[実施例1]
まず、以下の条件にて海島型複合繊維を溶融紡糸した。
・島成分: 固有粘度(IV値)が0.73のポリエチレンテレフタレート(表1・表2において、「PET」と表記した)
・海成分: MFR(ISO 1133:1997に規定の試験方法で測定)が65g/10分のポリスチレン(表1・表2において、「PS」と表記した)
・口金: 島数が16島/ホールの海島型複合用口金
・紡糸温度: 285℃
・島部/海部 質量比率: 55/45
・吐出量: 1.9g/(分・ホール)
・紡糸速度: 1100m/分
次いで、得られた海島型複合繊維を3.4倍で延伸し、押し込み型捲縮機を用いて捲縮加工処理した後に60℃にて乾燥処理したのち、51mmの長さにカットし、単繊維繊度が6.1dtexの海島複合繊維の原綿を得た。この海島複合繊維から得られる極細繊維の平均単繊維直径は4.4μmであった。
まず、以下の条件にて海島型複合繊維を溶融紡糸した。
・島成分: 固有粘度(IV値)が0.73のポリエチレンテレフタレート(表1・表2において、「PET」と表記した)
・海成分: MFR(ISO 1133:1997に規定の試験方法で測定)が65g/10分のポリスチレン(表1・表2において、「PS」と表記した)
・口金: 島数が16島/ホールの海島型複合用口金
・紡糸温度: 285℃
・島部/海部 質量比率: 55/45
・吐出量: 1.9g/(分・ホール)
・紡糸速度: 1100m/分
次いで、得られた海島型複合繊維を3.4倍で延伸し、押し込み型捲縮機を用いて捲縮加工処理した後に60℃にて乾燥処理したのち、51mmの長さにカットし、単繊維繊度が6.1dtexの海島複合繊維の原綿を得た。この海島複合繊維から得られる極細繊維の平均単繊維直径は4.4μmであった。
上記のようにして得られた原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成した。そして、2500本/cm2のパンチ本数でニードルパンチ処理して、目付が540g/m2で、厚みが2.4mmの繊維絡合体を得た。
上記のようにして得られた繊維絡合体を96℃の熱水で収縮処理させた。その後、濃度が12質量%となるように調製した、鹸化度88%のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある)水溶液を熱水で収縮処理させた繊維絡合体に含浸させた。さらにこれをロールで絞り、温度120℃の熱風で10分間PVAをマイグレーションさせながら乾燥させ、シート基体の質量に対するPVA質量が25質量%となるようにしたPVA付シートを得た。このようにして得られたPVA付シートをトリクロロエチレンに浸漬させて、マングルによる搾液と圧縮を10回行った。これによって、海部の溶解除去とPVA付シートの圧縮処理を行い、PVAが付与された極細繊維束が絡合してなるPVA付シートを得た。
上記のようにして得られたPVA付シートに、ポリウレタンを主成分とする固形分の濃度が13%となるように調製した、ポリウレタンのジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記することがある)溶液を浸漬させた。その後、ポリウレタンのDMF溶液に浸漬させた脱海PVA付シートをロールで絞った。次いで、このシートを濃度30質量%のDMF水溶液中に浸漬させ、ポリウレタンを凝固させた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の温度の熱風で10分間乾燥させた。これによって、厚みが1.8mmで、人工皮革の質量に対するポリウレタン質量が30質量%となるようにしたポリウレタン付シートを得た。
上記各工程を経て得られたポリウレタン付シートを、厚みがそれぞれ1/2ずつとなるように半裁した。サンドペーパー番手180番のエンドレスサンドペーパーで半裁面の表層部を0.3mm研削して起毛処理を行い、厚み0.6mmの立毛シートを得た。
上記のようにして得られた立毛シートを、液流染色機にて120℃の条件下で染色を行ったのちに乾燥機にて乾燥を行い、極細繊維の平均単繊維直径が4.4μm、可動非晶量が35%、結晶化度が30%である人工皮革を得た。得られた人工皮革は、耐摩擦性や耐光性、発色性に優れるとともに、優美な表面品位を有していた。結果を表1に示す。
[実施例2]
海成分のMFRを10g/10分とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は38%、結晶化度は25%であり、前記人工皮革は、耐摩擦性や耐光性、発色性に優れるとともに、優美な表面品位を有していた。結果を表1に示す。
海成分のMFRを10g/10分とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は38%、結晶化度は25%であり、前記人工皮革は、耐摩擦性や耐光性、発色性に優れるとともに、優美な表面品位を有していた。結果を表1に示す。
[実施例3]
島成分の固有粘度を1.10とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は21%、結晶化度は35%であり、前記人工皮革は、耐摩擦性や耐光性、発色性に優れるとともに、優美な表面品位を有していた。結果を表1に示す。
島成分の固有粘度を1.10とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は21%、結晶化度は35%であり、前記人工皮革は、耐摩擦性や耐光性、発色性に優れるとともに、優美な表面品位を有していた。結果を表1に示す。
[実施例4]
海成分のMFRを10g/10分、島成分の固有粘度を1.10とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は32%、結晶化度は28%であり、前記人工皮革は、耐摩擦性や耐光性、発色性に優れるとともに、優美な表面品位を有していた。結果を表1に示す。
海成分のMFRを10g/10分、島成分の固有粘度を1.10とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は32%、結晶化度は28%であり、前記人工皮革は、耐摩擦性や耐光性、発色性に優れるとともに、優美な表面品位を有していた。結果を表1に示す。
[実施例5]
吐出量を1.2g/(分・ホール)、延伸倍率を2.1倍とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は39%、結晶化度は17%であり、前記人工皮革は、実施例1の人工皮革と比較すると耐摩擦性や表面品位はわずかに劣るものの、耐光性や発色性に優れていた。結果を表1に示す。
吐出量を1.2g/(分・ホール)、延伸倍率を2.1倍とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は39%、結晶化度は17%であり、前記人工皮革は、実施例1の人工皮革と比較すると耐摩擦性や表面品位はわずかに劣るものの、耐光性や発色性に優れていた。結果を表1に示す。
[実施例6]
島成分のMw/Mnを2.6とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は30%、結晶化度は25%であり、前記人工皮革は、実施例1の人工皮革と比較すると耐摩擦性や発色性はわずかに劣るものの、耐光性に優れるとともに、優美な表面品位を有していた。結果を表1に示す。
島成分のMw/Mnを2.6とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は30%、結晶化度は25%であり、前記人工皮革は、実施例1の人工皮革と比較すると耐摩擦性や発色性はわずかに劣るものの、耐光性に優れるとともに、優美な表面品位を有していた。結果を表1に示す。
[実施例7]
人工皮革に占める高分子弾性体の質量比を55%とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革は、実施例1の人工皮革と比較すると表面品位がわずかに劣るものの、耐摩擦性や耐光性、発色性に優れていた。結果を表1に示す。
人工皮革に占める高分子弾性体の質量比を55%とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革は、実施例1の人工皮革と比較すると表面品位がわずかに劣るものの、耐摩擦性や耐光性、発色性に優れていた。結果を表1に示す。
[実施例8]
以下の条件にて海島型複合繊維を溶融紡糸した。
・島成分ポリマー: 実施例1と同様
・海成分ポリマー: MFRが80g/10分である、5-スルホイソフタル酸ナトリウムを8モル%共重合した共重合PET(表1において、共重合PETと表記した)
・口金: 島数が16島/ホールの海島型複合用口金
・紡糸温度: 285℃
・島部/海部 質量比率: 80/20
・吐出量: 1.6g/(分・ホール)
・紡糸速度: 1100m/分
次いで、得られた海島型複合繊維を3.8倍で延伸し、押し込み型捲縮機を用いて捲縮加工処理した後、51mmの長さにカットし、単繊維繊度が4.4dtexの海島複合繊維の原綿を得た。この海島複合繊維から得られる極細繊維の平均単繊維直径は4.4μmであった。
以下の条件にて海島型複合繊維を溶融紡糸した。
・島成分ポリマー: 実施例1と同様
・海成分ポリマー: MFRが80g/10分である、5-スルホイソフタル酸ナトリウムを8モル%共重合した共重合PET(表1において、共重合PETと表記した)
・口金: 島数が16島/ホールの海島型複合用口金
・紡糸温度: 285℃
・島部/海部 質量比率: 80/20
・吐出量: 1.6g/(分・ホール)
・紡糸速度: 1100m/分
次いで、得られた海島型複合繊維を3.8倍で延伸し、押し込み型捲縮機を用いて捲縮加工処理した後、51mmの長さにカットし、単繊維繊度が4.4dtexの海島複合繊維の原綿を得た。この海島複合繊維から得られる極細繊維の平均単繊維直径は4.4μmであった。
上記のようにして得られた原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成した。そして、3500本/cm2のパンチ本数でニードルパンチ処理して、目付が700g/m2で、厚みが3.0mmの繊維絡合体を得た。
上記のようにして得られた繊維絡合体を98℃の熱水で収縮処理させた後、ポリウレタンの固形分100質量%に対して、感熱凝固剤として硫酸ナトリウムを20質量%添加し、カルボジイミド系架橋剤3質量%加え、水によって全体を固形分12%に調製した水分散型ポリウレタン液を含浸させ、160℃の熱風で20分間乾燥することにより、厚みが2.1mmのポリウレタン付きシートを得た。
上記のようにして得られたポリウレタン付シートを95℃の温度に加熱した濃度8g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して5分間処理を行い、海島型複合繊維の海成分を除去した。その後、水に浸漬して30分間洗浄し、160℃の乾燥機で30分間乾燥させ、極細繊維からなるシート(ポリウレタン付シート)を得た。
上記各工程を経て得られたポリウレタン付シートを、厚みがそれぞれ1/2ずつとなるように半裁し、サンドペーパー番手180番のエンドレスサンドペーパーで研削して起毛処理を行い、厚み0.75mmの立毛シートを得た。
上記のようにして得られた立毛シートを、液流染色機にて120℃の条件下で染色を行った後に乾燥機にて乾燥を行い、極細繊維の平均単繊維直径が4.4μm、可動非晶量が17%、結晶化度が34%である人工皮革を得た。得られた人工皮革は、耐摩擦性や耐光性、発色性に優れるとともに、優美な表面品位を有していた。結果を表1に示す。
[実施例9]
海成分のMFRを50g/10分とした以外は実施例8と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は25%、結晶化度は33%であり、前記人工皮革は、耐摩擦性や耐光性、発色性に優れるとともに、優美な表面品位を有していた。結果を表1に示す。
海成分のMFRを50g/10分とした以外は実施例8と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は25%、結晶化度は33%であり、前記人工皮革は、耐摩擦性や耐光性、発色性に優れるとともに、優美な表面品位を有していた。結果を表1に示す。
[比較例1]
海成分のMFRを100g/10分とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は15%、結晶化度は32%であり、前記人工皮革は、優れた耐摩擦性や耐光性、優美な表面品位を有するものの発色性に乏しく、実施例1対比で劣るものであった。結果を表2に示す。
海成分のMFRを100g/10分とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は15%、結晶化度は32%であり、前記人工皮革は、優れた耐摩擦性や耐光性、優美な表面品位を有するものの発色性に乏しく、実施例1対比で劣るものであった。結果を表2に示す。
[比較例2]
島成分の固有粘度を0.60とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は50%、結晶化度は17%であり、前記人工皮革は、優れた発色性および優美な表面品位を有するものの耐摩擦性や耐光性に乏しく、実施例1対比で劣るものであった。結果を表2に示す。
島成分の固有粘度を0.60とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は50%、結晶化度は17%であり、前記人工皮革は、優れた発色性および優美な表面品位を有するものの耐摩擦性や耐光性に乏しく、実施例1対比で劣るものであった。結果を表2に示す。
[比較例3]
島成分の固有粘度を1.30とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は14%、結晶化度は35%であり、前記人工皮革は、優れた耐摩擦性や耐光性、優美な表面品位を有するものの発色性に乏しく、実施例1対比で劣るものであった。結果を表2に示す。
島成分の固有粘度を1.30とした以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革における極細繊維の可動非晶量は14%、結晶化度は35%であり、前記人工皮革は、優れた耐摩擦性や耐光性、優美な表面品位を有するものの発色性に乏しく、実施例1対比で劣るものであった。結果を表2に示す。
表1、表2に示すように、実施例1~9の人工皮革は、人工皮革を構成する極細繊維の可動非晶量を特定の範囲で制御することで、極細繊維の分子鎖が適度な柔軟性および拘束力を有することから、前記極細繊維からなる人工皮革を染色した際、極細繊維中に染料が入りやすく、また、分子鎖切断による染料劣化がしにくくなり、結果として、得られる人工皮革は発色性や耐光性に優れるとともに、優美な表面品位を有するものとなる。
一方、比較例1や比較例3に示すように、人工皮革を構成する極細繊維の可動非晶量を少なくした場合、極細繊維の剛直性が高いことから分子鎖の拘束力が強く、染色工程において染料が極細繊維中に入りにくくなるため、得られる人工皮革は発色性が劣るものとなる。
また、比較例2に示すように、人工皮革を構成する極細繊維の可動非晶量を多くした場合、極細繊維の分子鎖拘束力が弱く、分子鎖切断による染料劣化がしやすくなるため、得られる人工皮革は耐光性に劣るものとなる。
Claims (5)
- 極細繊維で構成されてなる繊維絡合体と高分子弾性体とを構成要素として含む人工皮革であって、前記極細繊維の可動非晶量が17%以上40%未満である、人工皮革。
- 前記極細繊維の結晶化度が20%以上40%以下である、請求項1に記載の人工皮革。
- 前記極細繊維を構成する熱可塑性樹脂の重量平均分子量Mwの数平均分子量Mnに対する比(Mw/Mn)が1.1以上2.5以下である、請求項1または2に記載の人工皮革。
- 前記人工皮革に占める高分子弾性体の質量比が15質量%以上50質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の人工皮革。
- 海成分が、メルトフローレートが1.0g/10分以上90.0g/10分以下である熱可塑性樹脂であって、島成分が、固有粘度が0.7以上1.2以下である熱可塑性樹脂である海島型複合繊維を主構成成分とする繊維絡合体を製造する工程と、前記繊維絡合体から海成分を除去し、平均単繊維直径が0.1μm以上10.0μm以下である極細繊維を発現させる工程と、高分子弾性体を付与する工程を含む、請求項1~4のいずれかに記載の人工皮革の製造方法。
Applications Claiming Priority (2)
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JP2021038015 | 2021-03-10 | ||
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