JP2020084334A - シート状物の製造方法 - Google Patents

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浅則 島田
駿一 木村
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駿一 木村
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誠 西村
田辺 昭大
Akihiro Tanabe
昭大 田辺
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Abstract

【課題】本発明は、ポリエステル極細繊維からなる繊維絡合体と高分子弾性体とからなるシート状物の製造方法において、濃色性と高い堅牢性を両立するシート状物を製造することである。【解決手段】本発明のシート状物の製造方法は、次の1〜4の工程を含む。工程(1):カーボンブラックを含むポリエステルからなる芯成分と、カーボンブラックを含まないポリエステルからなる鞘成分と、鞘成分を取り囲むアルカリ易溶解性ポリマーからなる極細繊維発現型繊維製造工程工程(2):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材を製造する、繊維質基材製造工程工程(3):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材から、平均単繊維直径が1.0〜10.0μmの極細繊維を発現させる、極細繊維発現工程工程(4):極細繊維または極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に高分子弾性体を付与する、高分子弾性体付与工程【選択図】 なし

Description

本発明は、シート状物の製造方法に関するものであり、特に濃色性と高い堅牢性を両立するシート状物の製造方法において、有機溶剤を使用せずに極細繊維の発現を行うシート状物の製造方法に関するものである。
主としてポリエステル極細繊維からなる繊維絡合体と高分子弾性体とからなる天然皮革調のシート状物は、耐久性の高さや品質の均一性などの天然皮革対比で優れた特徴を有しており、衣料用素材としてのみならず、車両内装材、インテリアや靴および衣料など様々な分野で使用されるが、シート状物が車両内装材等に使用される際には、しばしば黒色等の濃色の色彩と、実使用に耐えうる高い耐光性が求められる。
しかしながら、ポリエステル繊維は、他の合成繊維であるアセテート繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維などと比較して屈折率が高く発色性に劣るため、濃色への染色が難しいことが知られている。特に極細繊維においては繊維径の低下に伴い増加する表面積の影響によりその傾向が顕著であるが、濃色の色彩を出すために染料の濃度を上げて染色するとシート状物の耐光堅牢度や摩擦堅牢度などの堅牢性が低下してしまうため、ポリエステル極細繊維を使用したシート状物において濃色の色彩と堅牢性を両立するための手法がかねてより求められてきた。
上記の課題に対し、極細繊維を使用したシート状物において濃色の色彩と堅牢性を両立させる手段として、極細繊維にカーボンブラック等の顔料を添加する方法、いわゆる原着繊維を使用する方法が提案されている(特許文献1〜3参照。)。
特開2004−143654号公報 特表2011−523985号公報 特開昭60−224881号公報
しかしながら、特許文献1や2に開示された技術においては、染料に比べ耐光堅牢性に優れる顔料を用いることで、耐光堅牢度の低下を伴わずに濃色化を達成することはある程度可能である。しかしながら、極細繊維の表面に顔料が露出することにより、摩擦堅牢度などの摩擦特性の悪化や、加工中の加工機への汚染などの課題がある。特に、特許文献1に開示されているような、極細繊維発生型繊維を用い、その極細繊維の発現に有機溶剤を用いない製造方法を採る場合においては、極細繊維を発現させる際に用いるアルカリ溶液が極細繊維の表面を溶解してしまうため、極細繊維内に含まれる顔料が露出することで、加工機が汚染されてしまうことが大きな課題となっている。
また、特許文献3に開示された方法は、原着された芯成分を、原着されていない鞘成分で覆った芯鞘型複合繊維を用いることで、繊維からの脱落物による汚染を防ぐことが可能である。しかしながら、芯成分のみに原着することで、原着された部分の比表面積は大きくなり、色彩が明るくなってしまうという課題があった。
そこで本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、極細繊維の発現において、アルカリ溶液を用いる場合においても、加工機への汚染がなく、また濃色の色彩を有しながらも摩擦特性に優れるシート状物の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成すべく本発明者らが検討を重ねた結果、極細繊維の界面に接することなく、あるいはその界面を超えて露出しない範囲において、カーボンブラックを極細繊維内部に広く分散させることで、極細繊維の発現において、アルカリ溶液を用いる場合においても、極細繊維からの顔料の脱落を抑えることができるだけでなく、濃色の色彩を有するシート状物とすることが可能であることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
すなわち本発明のシート状物の製造方法は、次の工程(1)〜(4)を含む。
工程(1):繊維断面においてカーボンブラックを含むポリエステルからなる芯成分と、カーボンブラックを含まないポリエステルからなる鞘成分とが芯鞘型に複合されて島部を形成し、アルカリ易溶解性ポリマーが海部を形成する海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を製造する工程
工程(2):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材を製造する工程
工程(3):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材から、平均単繊維直径が1.0μm以上10.0μm以下の極細繊維を発現させる工程
工程(4):極細繊維、または、極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に高分子弾性体を付与する工程
本発明のシート状物の製造方法の好ましい態様によれば、前記の芯成分と前記鞘成分の質量比が70:30〜99:1の範囲である。
本発明のシート状物の製造方法の好ましい態様によれば、前記の高分子弾性体が水分散型ポリウレタンである。
本発明のシート状物の製造方法の好ましい態様によれば、前記のアルカリ易溶解性ポリマーが5−スルホイソフタル酸ナトリウムが共重合されてなるポリエステルである。
本発明によれば、濃色の色彩と優れた耐久性を両立したシート状物を得ることができる。また、従来の顔料を添加した極細繊維からなるシート状物で課題となっていた極細繊維からの顔料の脱落が改善されたシート状物を得ることができる。さらに、本発明のシート状物は、天然皮革調の柔軟な触感と濃色の色彩、さらに優れた耐久性を有しており、家具、椅子および車両内装材から衣料用途まで幅広く用いることができるが、特にその優れた耐光堅牢度から車両内装材に好適に用いられる。
図1は、本発明のシート状物の製造方法に係る極細繊維発現型繊維を例示する断面概念図である。
本発明のシート状物の製造方法は、次の工程(1)〜(4)を含む。
工程(1):繊維断面においてカーボンブラックを含むポリエステルからなる芯成分と、カーボンブラックを含まないポリエステルからなる鞘成分とが芯鞘型に複合されて島部を形成し、アルカリ易溶解性ポリマーが海部を形成する海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を製造する工程
工程(2):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材を製造する工程
工程(3):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材から、平均単繊維直径が1.0μm以上10.0μm以下の極細繊維を発現させる工程
工程(4):極細繊維、または、極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に高分子弾性体を付与する工程
以下に、これらの各工程について、詳細を説明する。
[工程(1):極細繊維発現型繊維を製造する工程]
本工程では、はじめに図1に例示するような、繊維断面においてカーボンブラックを含むポリエステルからなる芯成分(2)と、カーボンブラックを含まないポリエステルからなる鞘成分(1)とが芯鞘型に複合されて島部(3)を形成し、アルカリ易溶解性ポリマーが海部(4)を形成する海島型複合構造を有する極細繊維発生型繊維を紡糸する。
ここでいうアルカリ易溶解性ポリマーとは、アルカリ水溶液に対する溶解度が、芯成分および鞘成分に対し100倍以上であるポリマーのことをいう。
海島型複合構造を有する極細繊維発生型繊維を紡糸する方法としては、海島型複合用口金を用い、海部と島部を相互配列して紡糸する高分子相互配列体を用いる方式が、均一な単繊維繊度の極細繊維が得られるという観点から好ましい。
海島型複合構造を有する極細繊維発生型繊維の島部としては、カーボンブラックが島部の表面に露出することを防ぐため、カーボンブラックを含む芯成分とカーボンブラックを含まない鞘成分の2成分とすることが重要である。
極細繊維の発色性と、鞘成分によるカーボンブラックの被覆を両立するため、芯成分と鞘成分の質量比は70:30〜99:1の範囲であることが好ましい。
芯成分を構成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、およびポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。中でも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレート、または主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体が好適に使用される。
鞘成分を構成するポリエステルとしては、芯成分と同一のポリエステルを用いても、異なるポリエステルを用いてもよいが、異なるポリエステルを用いる場合には、芯成分との相溶性の観点から、芯成分のポリエステルの固有粘度(IV値)差は0.50以下であることが好ましく、0.30以下であることがより好ましい。
本発明において、固有粘度は以下の方法により算出されるものとする。
(1) オルソクロロフェノール10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かす。
(2) 25℃の温度においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηを下式により算出する。
・η=η/η=(t×d)/(t×d
・固有粘度(IV値)=0.0242η+0.2634
(ここで、ηはポリマー溶液の粘度、ηはオルソクロロフェノールの粘度、tは溶液の落下時間(秒)、dは溶液の密度(g/cm)、tはオルソクロロフェノールの落下時間(秒)、dはオルソクロロフェノールの密度(g/cm)を、それぞれ表す。)。
極細繊維の断面形状としては、加工操業性の観点から、丸断面にすることが好ましいが、楕円、扁平および三角などの多角形、扇形および十字型、中空型、Y型、T型、およびU型などの異形断面の断面形状を採用することもできる。
芯成分にカーボンブラックを含有させる方法としては、予めカーボンブラックを混練したポリエステル系樹脂のチップを用いて紡糸しても、ポリエステル系樹脂にカーボンブラックをポリエステル系樹脂の質量対比、10質量%以上40質量%以下の範囲で混練したマスターバッチとポリエステル系樹脂のチップを混合して紡糸する方法のいずれも採用することができるが、マスターバッチを用いてポリエステル系樹脂のチップと混合する手法は極細繊維に含まれる顔料の量を適宜調整可能であるため好ましい。
マスターバッチを用いてポリエステル系樹脂のチップと混合する場合、使用するマスターバッチに含まれるカーボンブラックの1次粒子径の数平均が0.05μm以上0.10μm以下であり、変動係数(CV)が30%以下のマスターバッチを使用することが好ましい。1次粒子径が上記の範囲内のマスターバッチを使用することで極細繊維中の粒子径(2次粒子径)を適切な範囲とすることができる。
海島型複合繊維の海部としては、有機溶剤を使用せずに分解可能なアルカリ分解性のアルカリ易溶解性ポリマーを用いる。アルカリ易溶解性ポリマーとしては、5−スルホイソフタル酸ナトリウムやポリエチレングリコールなどを共重合させた共重合ポリエステルやポリ乳酸およびポリビニルアルコール(以下、PVAと略することがある)などが好ましく用いられる。その中でも、紡糸性と溶剤溶解性の観点から、好ましくは共重合ポリエステル、より好ましくは5−スルホイソフタル酸ナトリウムが共重合されたポリエステルが用いられる。
アルカリ易溶解性ポリマーとして共重合ポリエステルを用いる場合には、共重合成分が、ポリエステル中に5モル%以上、好ましくは6モル%以上共重合されていることが好ましい。5モル%以上共重合されていることにより、短時間のアルカリ処理においてもアルカリ易溶性ポリマーの残存がない、高いアルカリ減量性を得ることができる。
海島型複合繊維の海部と島部の質量比は、20:80〜80:20の範囲であることが好ましい。島部の質量比を20質量%以上とすることにより、海部の除去率を少なくすることができ、より生産性が向上する。また、島部の質量比を80質量%以下とすることにより、海部が除去された後の島部繊維、すなわち極細繊維の開繊性の向上、および島部の合流を防止することができる。
本発明のシート状物の製造方法においては、海島型複合繊維の島部の強度が、2.5cN/dtex以上であることが好ましく、2.8cN/dtex以上であることがより好ましく、3cN/dtex以上であることがさらに好ましい。島部の強度を2.5cN/dtex以上とすることで、シート状物が耐摩耗性に優れるものなる。
本発明において、海島型複合繊維の島部の強度は以下の方法により算出されるものとする。
(1) 長さ20cmの海島型複合繊維を10本束ねる。
(2) (1)の試料から海部を溶解除去したのちに、風乾する。
(3) JIS L 1013:(2010)「化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.5 引張強さ及び伸び率」の 「8.5.1 (標準時試験)」にて、つかみ長さ5cm、引張速度5cm/分、荷重2Nの条件にて10回試験し(N=10)、その試験結果の算術平均を島部の強度とする。
[工程(2):繊維質基材を製造する工程]
次に、繊維質基材である不織布を製造する。不織布の形態としては、主としてフィラメントから構成される長繊維不織布と、主として100mm以下の繊維から構成される短繊維不織布がある。繊維質基材として長繊維不織布とする場合においては、強度に優れるシート状物を得られるため、好ましい。一方、短繊維不織布とする場合においては、長繊維不織布の場合に比べてシート状物の厚さ方向に配向する繊維を多くすることができ、起毛させた際のシート状物の表面に高い緻密感を有させることができる。
短繊維不織布を用いる場合の極細繊維の繊維長は、好ましくは25mm以上90mm以下である。繊維長を90mm以下、より好ましくは80mm以下、さらに好ましくは70mm以下とすることにより、良好な品位と風合いとなる。他方、繊維長を25mm以上、より好ましくは35mm以上、さらに好ましくは40mm以上とすることにより、耐摩耗性に優れたシート状物とすることができる。
長繊維不織布とする場合には、紡出された極細繊維発現型繊維を開繊したのちにクロスラッパー等により積層して繊維ウェブとし、絡合させることにより不織布を得る。繊維ウェブを絡合させ不織布を得る方法としては、ニードルパンチ処理やウォータージェットパンチ処理等を用いることができる。
一方、不織布として短繊維不織布とする場合には、得られた極細繊維発現型繊維に、好ましくは捲縮加工を施し、所定長にカット加工して原綿を得たのちに、開繊、積層、絡合させることで短繊維不織布を得る。捲縮加工やカット加工は、公知の方法を用いることができる。
ニードルパンチ処理あるいはウォータージェットパンチ処理後の極細繊維発現型繊維からなる不織布の見掛け密度は、0.15g/cm以上0.45g/cm以下であることが好ましい。見掛け密度を好ましくは0.15g/cm以上とすることにより、シート状物が十分な形態安定性と寸法安定性が得られる。一方、見掛け密度を好ましくは0.45g/cm以下とすることにより、高分子弾性体を付与するための十分な空間を維持することができる。
シート状物を構成する不織布の目付は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量(ISO法)」で測定され、50g/m以上400g/m以下の範囲であることが好ましい。前記の不織布の目付を、50g/m以上、より好ましくは80g/m以上とすることで、充実感のある、風合いの優れたシート状物とすることができる。一方、400g/m以下、より好ましくは300g/m以下とすることで成型性に優れた、柔軟なシート状物とすることができる。
[工程(3):極細繊維を発現させる工程]
工程(3)では、得られた繊維質基材をアルカリ水溶液で処理して、単繊維の平均単繊維径が1.0μm以上10.0μm以下の極細繊維を発現させる。
極細繊維の平均単繊維直径は、1.0μm以上10.0μm以下とすることが重要である。平均単繊維直径を、1.0μm以上、好ましくは1.5μm以上とすることにより、染色後の発色性や耐光および摩擦堅牢性、紡糸時の安定性に優れた効果を奏する。一方、10.0μm以下、好ましくは6.0μm以下、より好ましくは4.5μm以下とすることにより、緻密でタッチの柔らかい表面品位に優れたシート状物が得られる。
本発明において極細繊維の平均単繊維直径とは、シート状物断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、円形または円形に近い楕円形の極細繊維をランダムに10本選び、単繊維直径を測定して10本の算術平均値を計算することにより算出されるものとする。ただし、異型断面の極細繊維を採用した場合には、まず単繊維の断面積を測定し、当該断面を円形と見立てた場合の直径を算出することによって単繊維の直径を求めるものとする。
極細繊維を発現させる方法は、海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維からなる繊維質基材をアルカリ水溶液中に浸漬させて、海島型構造を有する極細繊維発現型複合繊維の海部を溶解除去することにより行うことができる。アルカリ水溶液としては、廃液処理を行う際、中和により生成する塩の処理をより容易に行うことができるため、水酸化ナトリウム水溶液が好ましく用いられる。この場合、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、0.05mol/L以上10.0mol/L以下が好ましい。水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.05mol/L以上、好ましくは1.0mol/L以上とすることにより、海部の残存を防ぐことができる。一方、10.0mol/L以下、好ましくは5.0mol/L以下とすることにより、島部の減量を抑制することができる。他のアルカリ水溶液を用いる場合には、その濃度を上記の水酸化ナトリウム水溶液と同等のpHになる濃度とすることが好ましい態様である。
また、海島型構造を有する極細繊維発現型複合繊維の海部を溶解除去させる前または後であって、後述する繊維質基材への高分子弾性体を付与する工程の前に、繊維質基材にPVAを付与することができる。特に、PVAを付与した後に海島型構造を有する極細繊維発現型複合繊維の海部を溶解除去させ、次いで、ポリウレタン樹脂組成物を含浸させた後にPVAを除去する場合、ポリウレタン樹脂と極細繊維の間にポリビニルアルコールPVAを除去したことに起因する空隙と、脱海された海部に起因する空隙の両方が生成するため、極細繊維を直接ポリウレタンが把持する面積が少なくすることができ、シート状物の風合いをより柔軟なものとすることができる。
このような場合において、アルカリ水溶液を用いて海島型構造を有する極細繊維発現型複合繊維の海部を溶解除去させる場合には、PVAとして、JIS K6726:1994「ポリビニルアルコール水溶液の試験方法」の3.5において測定される鹸化度が98%以上であるPVAを用いると、脱海処理する際にPVAが溶出するのを防ぐことができる。
また、PVAは重合度によって水への溶解性、PVA水溶液の粘度が変化し、PVAの重合度は小さい方がPVA水溶液の粘度は低く、繊維質基材への含浸性、取り扱い性に優れたものとなる。一方で、PVAの重合度は大きい方が水への溶解性は低く、水分散型ポリウレタンを付与する際に、水分散型ポリウレタン液へのPVAの溶解をより抑えることができる。PVAの重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは400以上である。PVAの重合度を200以上とすることで、PVAの水への溶解を抑えることができる。また、PVAの重合度は、好ましくは3500以下、より好ましくは2500以下、さらに好ましくは1500以下、特に好ましくは1000以下である。PVAの重合度を3500以下とすることで、PVA水溶液の粘度が高くなり過ぎることを抑え、繊維質基材への含浸性、PVA水溶液を取り扱いやすくすることができる。
[工程(4):高分子弾性体を付与する工程]
工程(4)では、極細繊維または極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に高分子弾性体の溶液を含浸し固化して、高分子弾性体を付与する。高分子弾性体を不織布に固定する方法としては、高分子弾性体の溶液を不織布(繊維絡合体)に含浸させた後、湿式凝固または乾式凝固する方法があり、使用する高分子弾性体の種類により適宜これらの方法を選択することができる。
高分子弾性体としては、ポリウレタン、ポリウレタン、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)およびアクリル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリウレタンを主成分として用いることが好ましい態様である。ポリウレタンを用いることにより、充実感のある触感、皮革様の外観および実使用に耐える物性を備えたシート状物を得ることができる。また、ここでいう主成分とは、高分子弾性体全体の質量に対してポリウレタンの質量が50質量%より多いことをいう。
ポリウレタンとしては、例えば、平均分子量500〜3000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールあるいはポリエステルポリエーテルジオール等のポリマージオール等から選ばれた少なくとも1種類のポリマージオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系、イソホロンジイソシアネート等の脂環族系およびヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系のジイソシアネート等から選ばれた少なくとも1種類のジイソシアネートと、エチレングリコール、ブタンジオール、エチレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の2個以上の活性水素原子を有する少なくとも1種類の低分子化合物を、所定のモル比で反応させて得られたポリウレタンおよびその変性物が挙げられる。
また、高分子弾性体には、ポリエステル系、ポリアミド系およびポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂、およびエチレン−酢酸ビニル樹脂などが含まれていても良い。
また、本発明で用いられる高分子弾性体には、必要に応じてカーボンブラック等の顔料、染料酸化防止剤、酸化防止剤、耐光剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤および防臭剤などの添加剤が配合されていてもよい。
高分子弾性体としてポリウレタンを付与させる際には、N,N’−ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等の有機溶剤を溶媒として用いても、ポリウレタンを水中にエマルジョンとして分散させた水分散型ポリウレタン液を用いることもできるが、環境配慮の観点からは、水分散型ポリウレタン液を用いることが好ましい。
なお、繊維質基材への高分子弾性体の付与は、極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させる前に付与してもよいし、極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させる後に付与してもよい。
[シート状物を半裁し、研磨する工程]
工程(1)〜(4)を終えて高分子弾性体が付与されてなるシート状物は、製造効率の観点から、厚み方向に半裁することが好ましい態様である。
さらに、前記の高分子弾性体が付与されてなるシート状物あるいは半裁されたシート状物の表面に、起毛処理を施すことができる。起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて、研削する方法などにより施すことができる。起毛処理はシート状物の片側表面のみに施しても、両面に施すこともできる。
起毛処理を施す場合には、起毛処理の前にシリコーンエマルジョンなどの滑剤をシート状物の表面へ付与することができる。また、起毛処理の前に帯電防止剤を付与することで、研削によってシート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなる。このようにして、シート状物が形成される。
[シート状物を染色工程]
上記のシート状物は、カーボンブラックの色彩と同色の染料にて染色処理を施すことが好ましい。この染色処理としては、例えば、ジッガー染色機や液流染色機を用いた液流染色処理、連続染色機を用いたサーモゾル染色処理等の浸染処理、あるいはローラー捺染、スクリーン捺染、インクジェット方式捺染、昇華捺染および真空昇華捺染等による立毛面への捺染処理等を用いることができる。中でも、柔軟な風合いが得られること等から、品質や品位面から液流染色機を用いることが好ましい。また、必要に応じて、染色後に各種の樹脂仕上げ加工を施すことができる。
[後加工工程]
また、上記のシート状物には、必要に応じてその表面に意匠性を施すことができる。例えば、パーフォレーション等の穴開け加工、エンボス加工、レーザー加工、ピンソニック加工、およびプリント加工等の後加工処理を施すことができる。
以上に例示された製造方法によって得られる本発明のシート状物は、天然皮革調の柔軟な触感と濃色の色彩、さらに優れた耐久性を有しており、家具、椅子および車両内装材から衣料用途まで幅広く用いることができるが、特にその優れた耐光堅牢度から車両内装材に好適に用いられる。
次に、実施例を用いて本発明のシート状物についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。次に、実施例で用いた評価法とその測定条件について説明する。ただし、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
[測定方法および評価用加工方法]
(1)シート状物の明度(L値):
分光測色系を用いてJIS Z8781−4:2013「測色−第4部:CIE1976L色空間」の3.3で規定されるL値を計測した。計測はコニカミノルタ製「CR−310」によって、10回測定し、その平均をシート状物のL値とした。
(2)シート状物の摩擦堅牢度:
JIS L0849:2013「摩擦に対する染色堅ろう度試験方法」の「9.1 摩擦試験機I型(クロックメータ)法」に準じて摩擦堅牢度を測定した。測定後のサンプルの汚染度合いをJIS L0805:2005「汚染用グレースケール」に規定の汚染用グレースケールで判定し、4号以上(L表色系による色差ΔE abが4.5±0.3以下)を合格とした。
(3)シート状物の耐光堅牢度:
JIS L0843:2006「キセノンアーク灯光に対する染色堅牢度試験方法」に準じて、耐光堅牢度を測定した。照射後サンプルの変退色度合いをJIS L0804:2004「変退色用グレースケール」に規定の変退色用グレースケールを用いて級判定し、4号以上(L表色系による色差ΔE abが1.7±0.3以下)を合格とした。
(4)シート状物の耐摩耗性:
摩耗試験器としてJames H. Heal & Co.製「Model 406」を、標準摩擦布として同社の「Abrastive CLOTH SM25」を用いて耐摩耗試験を行い、摩耗減量が10mg以下であったシート状物を合格とした。
[実施例1]
<極細繊維発現型繊維を製造する工程>
芯成分と鞘成分とが芯鞘型に複合されて島部を形成し、さらに海部からなる海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を、以下の条件で溶融紡糸した。
・芯成分: 以下の成分(a)と(b)が94:6の質量比で混合したもの
(a)固有粘度(IV値)が0.73のポリエチレンテレフタレートA
(b)上記ポリエチレンテレフタレートA中に、カーボンブラック(粒子径の平均:0.10μm)がマスターバッチの質量対比で20質量%含有されている、マスターバッチ
・鞘成分: 上記のポリエチレンテレフタレートA
・海部: 5−スルホイソフタル酸ナトリウムを全酸成分に対し、8mol%共重合したポリエチレンテレフタレート
・口金: 島数が16島/ホールの3成分海島型複合用口金
・紡糸温度: 285℃
・芯成分/鞘成分 質量比率: 80/20
・島部/海部 質量比率: 80/20
・吐出量: 1.2g/(分・ホール)
・紡糸速度: 1100m/分
次いで、90℃とした紡糸用油剤液浴中で2.8倍に延伸した。
<繊維質基材を製造する工程>
得られた極細繊維発現型繊維を押し込み型捲縮機を用いて捲縮加工処理した後、51mmの長さにカットし、単繊維繊度が3.8dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
得られた原綿を、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成した。そして、2500本/cmのパンチ本数でニードルパンチ処理して、目付が550g/mで、厚みが2.5mmの不織布を得た。
<ポリビニルアルコールを付与する工程>
上記のようにして得られた不織布を96℃の熱水で収縮処理させた。その後、濃度が12質量%となるように調製した、鹸化度98%、重合度450のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を熱水で収縮処理させた不織布に含浸させた。さらにこれをロールで絞り、温度140℃の熱風で10分間加熱乾燥後、160℃の温度で5分間加熱処理を行い、不織布の質量に対するPVA質量が25質量%となるようにしたPVA付シートを得た。
<極細繊維を発現させる工程>
このようにして得られたPVA付シートを60℃の温度に加熱した濃度1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理を行い、海島型構造を有する極細繊維発生型複合繊維の海部を除去したPVA付シートを得た。本工程において、加工後に水酸化ナトリウム水溶液を500mLサンプリングし、溶媒を除去後に固形分をSEMにて確認し、溶液中にカーボンブラックの脱落がないことを確認した。
<高分子弾性体を付与する工程>
上記のようにして得られたPVA付シートに、ポリカーボネート系自己乳化型ポリウレタンの固形分100質量部に対して、感熱凝固剤として硫酸マグネシウム1質量部を加え、水に溶解してポリカーボネート系自己乳化型ポリウレタンの固形分の濃度が20質量%となるように調製した水分散型ポリウレタン液を含浸させ、120℃の温度の乾熱雰囲気下で10分間処理、乾燥させ、さらに150℃の温度で2分間乾熱処理を行うことにより、厚みが1.8mmで、繊維質基材の質量に対するポリウレタン質量が30質量%のポリウレタン付シートを得た。
<半裁、起毛する工程>
上記のようにして得られたポリウレタン付シートを厚みがそれぞれ1/2ずつとなるように半裁した。サンドペーパー番手180番のエンドレスサンドペーパーで半裁面の表層部を0.3mm研削して起毛処理を行い、厚み0.6mmの立毛シートを得た。
<染色、仕上げ工程>
上記のようにして得られた立毛シートを、液流染色機を用いて染色した。このとき、120℃で黒色染料を用い、染色後のシート状物のL値が22となるように調整したレサイプを用いた。その後、100℃で7分間、乾燥処理を行って、極細繊維の平均単繊維直径が4.4μmで、目付が230g/m、厚みが0.7mmのシート状物を得た。得られたシート状物は、優れた堅牢性と耐摩耗性を有していた。結果を表1に示す。
[実施例2]
前記の極細繊維発現型繊維を製造する工程において、芯成分と鞘成分とが芯鞘型に複合されて島部を形成し、さらに海部からなる海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を、以下の条件で溶融紡糸した以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
・芯成分: 以下の成分(a)と(b)が93:7の質量比で混合したもの
(a) 固有粘度(IV値)が0.73のポリエチレンテレフタレートA
(b) 上記ポリエチレンテレフタレートA中に、カーボンブラック(粒子径の平均:0.10μm)がマスターバッチの質量対比で20質量%含有されている、マスターバッチ
・鞘成分: 上記のポリエチレンテレフタレートA
・海部: 5−スルホイソフタル酸ナトリウムを全酸成分に対し、8mol%共重合したポリエチレンテレフタレート
・口金: 島数が16島/ホールの3成分海島型複合用口金
・紡糸温度: 285℃
・芯成分/鞘成分 質量比率: 70/30
・島部/海部 質量比率: 80/20
・吐出量: 1.2g/(分・ホール)、
・紡糸速度: 1100m/分
最終的に得られたシート状物は、優れた堅牢性と耐摩耗性を有していた。結果を表1に示す。
[実施例3]
前記の極細繊維発現型繊維を製造する工程において、芯成分と鞘成分とが芯鞘型に複合されて島部を形成し、さらに海部からなる海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を、以下の条件で溶融紡糸した以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
・芯成分ポリマー: 以下の成分(a)と(b)が95:5の質量比で混合したもの
(a) 固有粘度(IV値)が0.73のポリエチレンテレフタレートA
(b) 上記ポリエチレンテレフタレートA中に、カーボンブラック(粒子径の平均:0.1μm)がマスターバッチの質量対比で20質量%含有されている、マスターバッチ
・鞘成分ポリマー: 上記のポリエチレンテレフタレートA
・海部ポリマー: 5−スルホイソフタル酸ナトリウムを全酸成分に対し、8mol%共重合したポリエチレンテレフタレート
・口金: 島数が16島/ホールの3成分海島型複合用口金
・紡糸温度: 285℃
・芯成分/鞘成分 質量比率: 95/5
・島部/海部 質量比率: 80/20
・吐出量: 1.2g/(分・ホール)、
・紡糸速度: 1100m/分
最終的に得られたシート状物は、優れた堅牢性と耐摩耗性を有していた。結果を表1に示す。
[実施例4]
前記の極細繊維発現型繊維を製造する工程において、芯成分と鞘成分とが芯鞘型に複合されて島部を形成し、さらに海部からなる海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を、以下の条件で溶融紡糸した以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
・芯成分ポリマー: 以下の成分(a)と(b)が94:6の質量比で混合したもの
(a) 固有粘度(IV値)が0.73のポリエチレンテレフタレートA
(b) 上記ポリエチレンテレフタレートA中に、カーボンブラック(粒子径の平均:0.1μm)がマスターバッチの質量対比で20質量%含有されている、マスターバッチ
・鞘成分ポリマー: 固有粘度(IV値)が0.79のポリエチレンテレフタレートB
・海部ポリマー: 5−スルホイソフタル酸ナトリウムを全酸成分に対し、8mol%共重合したポリエチレンテレフタレート
・口金: 島数が16島/ホールの3成分海島型複合用口金
・紡糸温度: 285℃
・芯成分/鞘成分 質量比率: 80/20
・島部/海部 質量比率: 80/20
・吐出量: 1.2g/(分・ホール)、
・紡糸速度: 1100m/分
最終的に得られたシート状物は、優れた堅牢性と耐摩耗性を有していた。結果を表1に示す。
[実施例5]
前記の高分子弾性体を付与する工程を以下に替えた以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
前記のPVA付シートに、ポリウレタンを主成分とする固形分の濃度が13%となるように調製した、ポリカーボネート系ポリウレタンのジメチルホルムアミド(DMF)溶液を含浸させた。その後、ポリカーボネート系ポリウレタンのDMF溶液に浸漬させたPVA付シートをロールで絞った。次いで、このPVA付シートを濃度30質量%のDMF水溶液中に浸漬させ、ポリウレタンを凝固させた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の温度の熱風で10分間乾燥させた。これによって、厚みが1.8mmで、繊維質基材の質量に対するポリウレタン質量が30質量%のとなるようにしたポリウレタン付シートを得た。
最終的に得られたシート状物は、優れた堅牢性と耐摩耗性を有していた。結果を表1に示す。
[比較例1]
前記の極細繊維発現型繊維を製造する工程において、島部、海部からなる海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を、以下の条件で溶融紡糸した以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
・島部: 以下の成分(a)と(b)が95:5の質量比で混合したもの
(a) 固有粘度(IV値)が0.73のポリエチレンテレフタレートA
(b) 上記ポリエチレンテレフタレートA中に、カーボンブラック(粒子径の平均:0.1μm)が20質量%含有されている、マスターバッチ
・海部: 5−スルホイソフタル酸ナトリウムを全酸成分に対し、8mol%共重合したポリエチレンテレフタレート
・口金: 島数が16島/ホールの2成分海島型複合用口金
・紡糸温度: 285℃
・島部/海部 質量比率: 80/20
・吐出量: 1.2g/(分・ホール)、
・紡糸速度: 1100m/分
極細繊維を発現させる工程において、海部を除去させた後の水酸化ナトリウム水溶液中を500mLサンプリングし、溶媒を除去後に固形分をSEMにて確認したところ、水溶液中にカーボンブラックの脱落が見られた。
最終的に得られたシート状物は、繊維表面からのカーボンブラックの脱落により摩擦堅牢度に劣るものであった。結果を表1に示す。
表1の実施例1〜5に示すように、シート状物に用いる極細繊維としてカーボンブラックを含むポリエステルからなる芯成分と、カーボンブラックを含まないポリエステルからなる鞘成分とからなる芯鞘型繊維を用いることで、極細繊維表面からのカーボンブラックの脱落を抑制し、シート状物が堅牢性に優れるだけでなく、アルカリ水溶液での脱海時にカーボンブラックが脱落することを抑制し、加工性に優れるものとなる。
一方、比較例1に示すように、極細繊維としてカーボンブラックを含むポリエステルのみからなる島部を用いた場合、極細繊維表面からのカーボンブラックの脱落によりシート状物の摩擦堅牢度が悪化するだけでなく、アルカリ水溶液での脱海時にカーボンブラックが脱落し、加工性に劣るものとなる。

Claims (4)

  1. 次の工程(1)〜(4)を含む、シート状物の製造方法。
    工程(1):繊維断面においてカーボンブラックを含むポリエステルからなる芯成分と、カーボンブラックを含まないポリエステルからなる鞘成分とが芯鞘型に複合されて島部を形成し、アルカリ易溶解性ポリマーが海部を形成する海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を製造する工程
    工程(2):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材を製造する工程
    工程(3):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材から、平均単繊維直径が1.0μm以上10.0μm以下の極細繊維を発現させる工程
    工程(4):極細繊維、または、極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に高分子弾性体を付与する工程
  2. 前記芯成分と前記鞘成分の質量比が70:30〜99:1の範囲である、請求項1に記載のシート状物の製造方法。
  3. 前記高分子弾性体が水分散型ポリウレタンである、請求項1または2に記載のシート状物の製造方法。
  4. 前記アルカリ易溶解性ポリマーが5−スルホイソフタル酸ナトリウムが共重合されてなるポリエステルである、請求項1〜3のいずれかに記載のシート状物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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