JP2021153039A - 電池、電池パック、車両、及び定置用電源 - Google Patents

電池、電池パック、車両、及び定置用電源 Download PDF

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康之 堀田
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Abstract

【課題】貯蔵性能とサイクル効率の優れた電池を提供することである。【解決手段】 実施形態の電池は、正極と、正極に保持される第1水系電解質と、負極と、負極に保持される第2水系電解質と、正極と負極との間に介在する少なくとも1枚のセパレータと、セパレータに保持される第3水系電解質と、を具備し、第3水系電解質が備える塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧のうち、少なくとも1つが第1水系電解質及び第2水系電解質と異なる。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、電池、電池パック、車両、及び定置用電源に関する。
負極活物質として炭素材料やリチウムチタン酸化物を、正極活物質としてニッケル、コバルト、マンガン等を含有する層状酸化物用いた非水電解質電池、特に二次電池が幅広い分野における電源として既に実用化されている。なお、このような非水電解質電池の形態は、各種電子機器用のといった小型の物から、電気自動車用など大型の物まで多岐にわたる。これらの二次電池の電解質には、ニッケル水素電池や鉛蓄電池と異なり、エチレンカーボネートやメチルエチルカーボネートなどが混合された非水系の有機溶媒が用いられている。これらの溶媒を用いた電解質は、水溶液電解質よりも耐酸化性および耐還元性が高く、溶媒の電気分解が起こりにくい。そのため、非水系の二次電池では、2V〜4.5Vの高い起電力を実現することができる。正極活物質にリチウムマンガン酸化物、負極活物質としてLiTi、LiTi12などといったリチウムチタン酸化物を用いると、理論的には2.6〜2.7V程度の起電力が得られ、エネルギー密度の観点からも魅力的な電池になりうる。このような正負極材料の組み合わせを採用した非水系のリチウムイオン電池では優れた寿命性能が得られ、このような電池は既に実用化されている。一方で、有機溶媒の多くは可燃性物質であり、電池の安全性は、水溶液を用いた電池に比べて原理的に劣りやすい。有機溶媒系の電解質を用いた電池の安全性を向上させるために種々の対策がなされているものの、必ずしも十分といえない。また、非水系の電池は、製造工程において、ドライ環境が必要になるため、製造コストが必然的に高くなる。そのほか、有機溶媒系の電解質は導電性が劣るので、非水系の電池の内部抵抗が高くなりやすい。このような課題は、電池安全性や電池コストが重要視される電気自動車やハイブリッド電気自動車、さらには電力貯蔵向けの大型蓄電池用途においては、大きな課題となっている。
非水系電池の課題を解決させるために、水溶液電解質を用いた電池が提案されている。しかしながら、水溶液電解質においては、リチウムチタン酸化物のリチウム挿入脱離の電位は、リチウム電位基準にて約1.5V(vs.Li/Li)であるため、水溶液電解質の電気分解が起こりやすい。特に負極においても、負極集電体、或いは負極と電気的に接続されている金属製の外装缶の表面での電気分解による水素発生が激しく、その影響で集電体から活物質が容易に剥離し得る。そのため、このような電池の動作が安定せず、満足な充放電を行うには課題があった。
特開2018−160342号公報
本発明が解決しようとする課題は、水系電解質を用いた電池における貯蔵性能及びサイクル特性に優れた電池を提供することである。
実施形態の電池は、正極と、正極に保持される第1水系電解質と、負極と、負極に保持される第2水系電解質と、正極と負極との間に介在する少なくとも1枚のセパレータと、セパレータに保持される第3水系電解質と、を具備し、第3水系電解質が備える塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧のうち、少なくとも1つが第1水系電解質及び第2水系電解質と異なる。
第1の実施形態における電池の構成模式図。 第1の実施形態における電池の備えるセパレータ構成模式図。 第1の実施形態に係る電池を二次電池として用いた場合の部分切欠断面図。 図3の電池についての側面図。 第1の実施形態に係る電池を二次電池として用いた場合を示す部分切欠斜視図。 図5のA部の拡大断面図。 第2の実施形態に係る組電池の一例を示す斜視図。 第3の実施形態に係る電池パックの一例を示す斜視図。 第3の実施形態に係る電池パックの他の例の分解斜視図。 図9の電池パックの電気回路を示すブロック図。 第4の実施形態に係る一例の車両を概略的に示す断面図。 第4の実施形態に係る他の例の車両を概略的に示した図。 第5実施形態に係る定置用電源を含むシステムの一例を示すブロック図。
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る電池を、図1を用いて説明する。図1は第1の実施形態における電池の構成模式図である。第1の実施形態に係る電池は正極3と、正極3に保持される第1水系電解質AE1と、負極4と、負極4に保持される第2水系電解質AE2と、正極3と負極4との間に介在する少なくとも1枚のセパレータ5と、セパレータ5に保持される第3水系電解質AE3と、を具備し、第3水系電解質AE3が備える塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧のうち、少なくとも1つが第1水系電解質AE1及び第2水系電解質AE2と異なる。本実施形態に係る電池は、二次電池としても用いることができる。そのため、以下では本実施形態に係る電池を二次電池に用いた場合として具体的に説明する。
二次電池に水系電解質が用いられる場合は、水の電気分解が、水系電解質の副反応として起こり得る。水の電気分解では、負極において式(1)に示す化学反応が起こり、正極において式(2)で示す化学反応が起こる。
2H + 2e ⇒ H (1)
2HO⇒ O + 4H+ + 4e (2)
また、水の電気分解等の水系電解質の酸化還元反応では、酸化反応による分解が発生しない電位窓、及び、還元反応による分解が発生しない電位窓が、存在する。例えば、水の電気分解では、ネルンストの式から、負極の電位E1に関して式(3)で示す関係が成立すると、還元反応によって負極において水素が発生し易くなる。そして、正極の電位E2に関して式(4)で示す関係が成立すると、酸化反応によって正極において酸素が発生し易くなる。ここで、式(3)及び式(4)においてpHは、水系電解質のpHを示す。
E1 < −0.059 × pH (3)
E2 > 1.23 − 0.059 × pH (4)
式(3)及び式(4)から、水系電解質が安定して存在する熱力学的な電位窓はpHに依存せず一定(1.23V)だが、正極と負極の水系電解質を分け、正極には酸化に強い水系電解質、即ち酸性の水系電解質、負極には還元に強い水系電解質即ち塩基性の水系電解質をそれぞれ用いることで、電池の水系電解質の全体としての熱力学的な電位窓を1.23V以上を実現することが可能である。そのため、二次電池として正極側の水系電解質と負極側の水系電解質で異なるpHを持つ水系電解質を用いる場合がある。しかし、正極側の水系電解質と負極側の水系電解質が異なるだけの場合は、セパレータ内部で正極側の水系電解質と負極側の水系電解質の移動を留めることが難しい。これは水系電解質のそれぞれに浸透圧が生じるため、セパレータを通して水分子が移動する可能性があるためである。水分子が移動すると、それに伴いカチオンやアニオンといったイオンは、エントロピー増大の法則により次第に混合する可能性がある。
さらに高い電池電圧を実現するために、正極に電解質塩の濃度の高い水系電解質、負極に電解質塩の濃度の低い水系電解質を使用する場合がある。二次電池では正極、負極での反応電位はそれぞれの水系電解質中の電解質塩の濃度によって決定される。具体的には電解質塩の濃度が高いと反応電位は貴に、電解質塩の濃度が低いと卑な電位で反応が進む。このように正極、負極側の水系電解質の濃度差が大きい場合でも、浸透圧をし、正極側水系電解質の浸透圧と負極側水系電解質の浸透圧をほぼ等しくすることは可能である。しかし、等しくするということは、電解質塩の濃度の低い水系電解質に対して、浸透圧を調整するための剤を多く加えることになり、リチウムイオン伝導性が低下してしまい、電池として改良の余地がある。
そこで、本実施形態に係る電池のように、塩の種類、塩の濃度、pH、浸透圧のうち、少なくとも1つが第1水系電解質及び第2水系電解質と異なる第3水系電解質を用いることにより、必ず塩の種類、塩の濃度、pH、浸透圧のいずれかが第1水系電解質及び第2水系電解質と、第3水系電解質とが異なることになる。
第1水系電解質と第2水系電解質の塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧のいずれかが異なると、これら塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧は第1水系電解質と第2水系電解質の間で平衡状態、つまり互いに等しく、近くなろうとする。具体的には、塩の種類、塩の濃度、pH(H+の濃度)のいずれかが異なる際は、エントロピー増大の法則により、それに対応したイオンが移動し、対応したイオンの濃度が等しくなろうとする。また、浸透圧が異なる際は、浸透圧が等しくなるように電解質中の水分子が移動する。そのため、塩の種類、塩の濃度、pH及び異なる浸透圧を持つ第1水系電解質と第2水系電解質の間で、塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧が平衡状態になろうとし、水分子または対応するイオンが移動しやすくなる。このような状態では第1水系電解質と第2水系電解質の混合は生じやすくなる。そのため、正極側の第1水系電解質と負極側の第2水系電解質との間に存在する第3水系電解質の塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧いずれかが、第1水系電解質及び第2水系電解質と異なることで、第1水系電解質と第3水系電解質との浸透圧を近く及び第2水系電解質と第3水系電解質との浸透圧を近くすることができるため、第1水系電解質と第2水系電解質の混合を防ぐ役割を持つ。
つまり、セパレータ内部では、第3水系電解質は第1、第2それぞれの水系電解質と混合することで疑似的に第1水系電解質の浸透圧≒第3水系電解質の浸透圧≒第2水系電解質の浸透圧という状態を作ることができる。またカチオン、アニオンのイオン濃度も、疑似的に第1水系電解質のイオン濃度≒第3水系電解質のイオン濃度≒第2水系電解質のイオン濃度という状態を作ることができる。
詳しく述べると、第3水系電解質が第1、第2それぞれの水系電解質に浸透圧が近しいことで、浸透圧差による水分子の移動を抑制することができる。浸透圧差が小さいほど水分子の移動はしにくくなるため、例えば、第2水系電解質から第3水系電解質への水分子の移動度は、第2水系電解質から第1水系電解質への物質の移動度より低い。同様に、第1水系電解質から第3水系電解質への水分子の移動度は、第1水系電解質から第2水系電解質への水分子の移動度より低い。こうすることで、第1水系電解質及び第2水系電解質に含まれるプロトン濃度や、イオン濃度の変動を抑制することができ、第1水系電解質及び第2水系電解質を電池の作動に適した状態に保つことができる。
また、第3水系電解質はセパレータに含浸しているため、毛細管現象により通常電池を組み立てたときにセパレータへ入り込む電解質よりも強固にセパレータ内に存在している。そのため、第1、第2水系電解質のみの場合と比較して、本実施形態に係る電池の備える第1水系電解質と第2水系電解質の混合は進行しにくい。そのため時間経過による第1と第2水系電解質が混合を防ぐことで、サイクル劣化やクーロン効率の低下を防ぐことができる。クーロン効率は自己放電の傾きを表しているため、クーロン効率が低下すれば、貯蔵性能も低下していることを示す。
本実施形態に係る電池の作製方法を簡単に説明する。
本実施形態に係る電池を作製するには、絶縁板(例えばプラスチック)上に、集電用の未塗工部を持つ正極を固定し、第1電解質を適下し、その上に予め第3電解質を含浸させたセパレータを置き密着させる。セパレータの上に第2電解質を滴下し、その上に負極をおいて密着させその上に、プラスチック板を置いてネジで固定する。スタック構造にする際は、正極、第1水系電解質、第3電解質を含浸されたセパレータ、第2水系電解質、負極第3電解質を含浸させたセパレータ、正極、第1水系電解質…と繰り返すことによりスタック構造とし、最後はプラスチック板を置いてネジで固定する。このとき第3水系電解質は塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧のうち、少なくとも1つが正極側水系電解質及び負極側水系電解質と異なる。セパレータに正極側の電解質(第1水系電解質)及び負極側電解質(第2水系電解質)のそれぞれの電解質の浸透圧に近い電解質(第3水系電解質)を実現することができる。セパレータに第3電解質を含浸する際、例えば25℃で10-1 Pa程度まで真空引きし、24時間以上静置させて行う。
第1の実施形態に係る電池において用いることができる各部材の材料について詳しく説明する。
1)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体上に配置されている負極活物質層とを含む。負極活物質層は、負極集電体の少なくとも1つの面上に配置されている。例えば、負極集電体上の1つの面に負極活物質層が配置されていてもよく、または負極集電体上の1つの面とその裏面とに負極活物質層が配置されていてもよい。
負極活物質層は、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、およびリチウムチタン複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む負極活物質を含む。これら酸化物は1種類で用いることもできるし、複数種類を用いても良い。これらの酸化物では、リチウム電位基準にて1V以上2V以下(vs.Li/Li)の範囲内でLi挿入脱離反応が起こる。そのため、二次電池の負極活物質としてこれらの酸化物を用いた場合には、充放電に伴う体積膨張収縮変化が小さいことから長寿命を実現することができる。
負極集電体には、Zn、Ga、In、Bi、Tl、Sn、Pb、Ti、Alから選ばれる少なくとも1種の元素を集電体内に含むことが好ましい。これらの元素は以後、元素Aとも称する。これらの元素は、これらの1種類で用いることもできるし、複数種類の元素を用いても良く、金属または金属合金として含むことができる。このような金属および金属合金は、単独で含まれていてもよく、或いは2種以上を混合して含んでいてもよい。これらの元素を集電体内に含んだ場合、集電体の機械的強度が高められ、加工性能が向上する。さらに、水系溶媒の電気分解を抑制し、水素発生を抑制させる効果が増加する。上記元素のなかでも、Zn、Pb、Ti、Alがより好ましい。
集電体は、例えばこれらの金属からなる金属箔である。また、集電体は、例えばこれらの金属を含んだ合金からなる箔である。このような箔は、元素A以外に例えば後述する元素を1種または2種以上含み得る。金属体の形状としては、箔以外にも、例えばメッシュや多孔体などが挙げられる。エネルギー密度や出力向上のためには、体積が小さく、表面積が大きい箔の形状が望ましい。
また、負極集電体は、元素Aとは異なる金属を含んだ基板を含むことができる。このような場合、この基板の表面の少なくとも一部に元素Aを含む化合物が存在することで、水素発生を抑制できる。表面に存在する元素Aを含む化合物は、負極活物質層と接するように配置されていることが望ましい。例えば基板に元素Aのメッキを施して、基板の表面に元素Aを含む化合物を存在させることができる。または、基板の表面に元素Aを含む合金を用いたメッキ処理を施すことができる。
集電体は、元素Aからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。これら元素Aの酸化物、および/または元素Aの水酸化物、および/または元素Aの塩基性炭酸化合物、および/または元素Aの硫酸化合物は、集電体の表面領域の少なくとも一部において、表面から深さ方向へ5nm以上1μm以下までの深さ領域において含まれていることが好ましい。なお、元素Aの酸化物の例としてはZnO、元素Aの水酸化物の例としてはZn(OH)、元素Aの塩基性炭酸化合物の例としては2ZnCO・3Zn(OH)、元素Aの硫酸化合物の例としては、ZnSO・7HOなどが挙げられる。
集電体の表層部分に元素Aの酸化物、元素Aの水酸化物、元素Aの塩基性炭酸化合物、および元素Aの硫酸化合物の何れかが少なくとも1種存在すると、水素発生を抑制することができる。また、これらの化合物が集電体の表層部分に存在すると、集電体、活物質、導電助剤、バインダーそれぞれとの密着性が向上し、電子伝導のパスを増やすことができることからサイクル特性の向上と、低抵抗化が可能である。
基板は、Al、Fe、Cu、Ni、Tiから選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。これらの金属は、合金として含むこともできる。また、基板は、このような金属および金属合金を単独で含むことができ、或いは2種以上を混合して含むことができる。軽量化の観点から、基板がAl、Ti、またはこれらの合金を含むことが好ましい。
集電体に元素Aからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含んでいるかどうかは、先述したように電池を分解し、その後、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;ICP)発光分析を行うことで、調べることができる。
負極活物質は、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、およびリチウムチタン複合酸化物からなる群より選択される1種類又は2種類以上の化合物を含む。リチウムチタン複合酸化物の例に、ニオブチタン酸化物およびナトリウムニオブチタン酸化物が含まれる。これらの化合物のLi吸蔵電位は、1V(vs.Li/Li)以上3V(vs.Li/Li)以下の範囲であることが望ましい。
チタン酸化物の例に、単斜晶構造のチタン酸化物、ルチル構造のチタン酸化物、アナターゼ構造のチタン酸化物が含まれる。各結晶構造のチタン酸化物は、充電前の組成がTiO、充電後の組成がLiTiO(xは0≦x)で表すことができる。また、単斜晶構造のチタン酸化物の充電前構造をTiO(B)と表すことができる。
リチウムチタン酸化物の例に、スピネル構造リチウムチタン酸化物(例えば一般式Li4+xTi12(xは−1≦x≦3))、ラムスデライト構造のリチウムチタン酸化物(例えば、Li2+xTi(−1≦x≦3))、Li1+xTi(0≦x≦1)、Li1.1+xTi1.8(0≦x≦1)、Li1.07+xTi1.86(0≦x≦1)、LiTiO(0<x)などが含まれる。
ニオブチタン酸化物の例に、LiTiMNb2±β7±σ(0≦a≦5、0≦b≦0.3、0≦β≦0.3、0≦σ≦0.3、MはFe、V、Mo及びTaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素)で表されるものが含まれる。
ナトリウムニオブチタン酸化物の例に、一般式Li2+vNa2−wM1Ti6−y−zNbM214+δ(0≦v≦4、0<w<2、0≦x<2、0<y<6、0≦z<3、y+z<6、−0.5≦δ≦0.5、M1はCs、K、Sr、Ba、Caより選択される少なくとも1つを含み、M2はZr、Sn、V、Ta、Mo、W、Fe、Co、Mn、Alより選択される少なくとも1つを含む)で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物が含まれる。
負極活物質として好ましい化合物に、アナターゼ構造のチタン酸化物、単斜晶構造のチタン酸化物、スピネル構造のリチウムチタン酸化物が含まれる。各化合物は、Li吸蔵電位が1.4V(vs.Li/Li)以上2V(vs.Li/Li)以下の範囲であるため、例えば正極活物質としてのリチウムマンガン酸化物と組み合わせることで、高い起電力を得ることができる。これらの中でも、スピネル構造のリチウムチタン酸化物は、充放電反応による体積変化が極めて少ないため、より好ましい。
負極活物質は、粒子の形態で負極活物質層に含有され得る。負極活物質粒子は、単独の一次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、あるいは、単独の一次粒子と二次粒子の混合物であり得る。粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、楕円形状、扁平形状、繊維状等にすることができる。
負極活物質の二次粒子の平均粒子径(直径)が、3μm以上であることが好ましい。より好ましくは5μm以上20μm以下である。この範囲であると、活物質の表面積が小さいため、水素発生を抑制する効果を高めることができる。
二次粒子の平均粒子径が3μm以上の負極活物質は、例えば、次の方法で得られる。先ず、活物質原料を反応合成して平均粒子径1μm以下の活物質前駆体を作製する。その後、活物質前駆体に対し焼成処理を行い、ボールミルやジェトミルなどの粉砕機を用いて粉砕処理を施す。次いで焼成処理において、活物質前駆体を凝集して粒子径の大きい二次粒子に成長させる。
負極活物質の一次粒子の平均粒子径は1μm以下とすることが望ましい。これにより、活物質内部でのLiイオンの拡散距離が短くなり、比表面積が大きくなる。そのため、優れた高入力性能(急速充電性能)が得られる。一方、平均粒子径が小さいと、粒子の凝集が起こりやすくなり、電解質の分布が負極に偏って正極での電解質の枯渇を招く恐れがあることから、下限値は0.001μmにすることが望ましい。さらに好ましい平均粒子径は、0.1μm以上0.8μm以下である。
負極活物質粒子は、N析出によるBET法での比表面積が3m/g以上200m/g以下の範囲であることが望ましい。これにより、負極と電解質との親和性をさらに高くすることができる。
負極活物質層(集電体を除く)の比表面積は、3m/g以上50m/g以下の範囲であることが望ましい。比表面積のより好ましい範囲は、5m/g以上50m/g以下である。負極活物質層は、集電体上に担持された負極活物質、導電剤及び結着剤を含む多孔質の層であり得る。
負極の多孔度(集電体を除く)は、20〜50%の範囲にすることが望ましい。これにより、負極と電解質との親和性に優れ、かつ高密度な負極を得ることができる。多孔度のさらに好ましい範囲は、25〜40%である。
導電剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛などの炭素材料やニッケル、亜鉛などの金属粉末を挙げることができる。導電剤の種類は1種類または2種類以上にすることができる。炭素材料は、それ自身から水素が発生するため、導電剤には金属粉末を使用することが望ましい。
結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン−ブタジエンゴム、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアクリルイミド(PAI)などが挙げられる。結着剤の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
負極活物質、導電剤及び結着剤の負極活物質層における配合比については、負極活物質は70重量%以上95重量%以下、導電剤は3重量%以上20重量%以下、結着剤は2重量%以上10重量%以下の範囲にすることが好ましい。導電剤の配合比が3重量%以上であれば負極の導電性を良好にすることができ、20重量%以下であれば導電剤表面での電解質の分解を低減することができる。結着剤の配合比が2重量%以上であれば十分な電極強度が得られ、10重量%以下であれば電極の絶縁部を減少させることが出来る。
負極は、例えば次のようにして作製することができる。先ず、負極活物質、導電剤及び結着剤を適切な溶媒に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを集電体に塗布し、塗膜を乾燥させることで集電体上に負極活物質層を形成する。ここで、例えばスラリーを集電体上の1つの面に塗布してもよく、またはスラリーを集電体上の1つの面とその裏面とに塗布してもよい。次いで、集電体と負極活物質層とに対し、例えば加熱プレスなどのプレスを施すことにより負極を作製することができる。
2)正極
この正極は、正極集電体と、正極集電体の片面もしくは両面に担持され、活物質、導電剤および結着剤を含む正極層とを有することができる。
正極集電体としてはステンレス、Al、Tiなどの金属からなる箔、多孔体、メッシュを用いることが好ましい。集電体と電解質との反応による集電体の腐食を防止するため、集電体表面を異種元素で被覆してもよい。
正極活物質には、リチウムやナトリウムを吸蔵放出可能なものが使用され得る。正極は、1種類の正極活物質を含んでも良く、或いは2種類以上の正極活物質を含むことができる。正極活物質の例には、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルトアルミニウム複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウム鉄酸化物、リチウムフッ素化硫酸鉄、オリビン結晶構造のリン酸化合物(例えば、LiFePO(0≦x≦1)、LiMnPO(0≦x≦1))などが含まれる。オリビン結晶構造のリン酸化合物は、熱安定性に優れている。
高い正極電位の得られる正極活物質の例を以下に記載する。例えばスピネル構造のLiMn(0<x≦1)、LiMnO(0<x≦1)などのリチウムマンガン複合酸化物、例えばLiNi1−yAl(0<x≦1、0<y≦1)などのリチウムニッケルアルミニウム複合酸化物、例えばLiCoO(0<x≦1)などのリチウムコバルト複合酸化物、例えばLiNi1−y−zCoMn(0<x≦1、0<y≦1、0≦z≦1)などのリチウムニッケルコバルト複合酸化物、例えばLiMnCo1−y(0<x≦1、0<y≦1)などのリチウムマンガンコバルト複合酸化物、例えばLiMn2−yNi(0<x≦1、0<y<2)などのスピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、例えばLiFePO(0<x≦1)、LiFe1−yMnPO(0<x≦1、0≦y≦1)、LiCoPO(0<x≦1)などのオリビン構造を有するリチウムリン酸化物、フッ素化硫酸鉄(例えばLiFeSOF(0<x≦1))が挙げられる。
また、ナトリウムマンガン複合酸化物、ナトリウムニッケル複合酸化物、ナトリムコバルト複合酸化物、ナトリムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、ナトリウム鉄複合酸化物、ナトリウムリン酸化物(例えば、ナトリウムリン酸鉄、ナトリウムリン酸バナジウム)、ナトリウム鉄マンガン複合酸化物、ナトリウムニッケルチタン複合酸化物、ナトリウムニッケル鉄複合酸化物、ナトリウムニッケルマンガン複合酸化物などが含まれる。
好ましい正極活物質の例に、鉄複合酸化物(例えばNaFeO、0≦y≦1)、鉄マンガン複合酸化物(例えばNaFe1−xMn、0<x<1、0≦y≦1)、ニッケルチタン複合酸化物(例えばNaNi1−xTi、0<x<1、0≦y≦1)、ニッケル鉄複合酸化物(例えばNaNi1−xFe、0<x<1、0≦y≦1)、ニッケルマンガン複合酸化物(例えばNaNi1−xMn、0<x<1、0≦y≦1)、ニッケルマンガン鉄複合酸化物(例えばNaNi1−x−zMnFe、0<x<1、0≦y≦1、0<z<1、0<1−x−z<1)、リン酸鉄(例えばNaFePO、0≦y≦1)が含まれる。
正極活物質の粒子は、単独の一次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、または単独の一次粒子と二次粒子の双方を含むものであり得る。正極活物質の一次粒子の平均粒子径(直径)は10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜5μmである。正極活物質の二次粒子の平均粒子径(直径)は100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm〜50μmである。
正極活物質の粒子表面の少なくとも一部が炭素材料で被覆されていることが好ましい。炭素材料は、層構造、粒子構造、あるいは粒子の集合体の形態をとり得る。
正極層の電子伝導性を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、平均繊維径1μm以下の炭素繊維等を挙げることができる。導電剤の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。
活物質と導電剤とを結着させるための結着剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアクリルイミド(PAI)を含む。結着剤の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。
正極活物質、導電剤及び結着剤の正極層における配合比については、正極活物質は70重量%以上95重量%以下、導電剤は3重量%以上20重量%以下、結着剤は2重量%以上10重量%以下の範囲にすることが好ましい。導電剤の配合比が3重量%以上であれば正極の導電性を良好にすることができ、20重量%以下であれば導電剤表面での電解質の分解を低減することができる。結着剤の配合比が2重量%以上であれば十分な電極強度が得られ、10重量%以下であれば電極の絶縁部を減少させることが出来る。
正極は、例えば次のようにして作製することができる。先ず、正極活物質、導電剤及び結着剤を適切な溶媒に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを集電体に塗布し、塗膜を乾燥させることで集電体上に正極層を形成する。ここで、例えばスラリーを集電体上の1つの面に塗布してもよく、またはスラリーを集電体上の1つの面とその裏面とに塗布してもよい。次いで、集電体と正極層とに対し、例えば加熱プレスなどのプレスを施すことにより正極を作製することができる。
3)セパレータ
正極と負極との間にはセパレータを配置することができる。セパレータは少なくとも1つが正極と負極の間に存在すればよい。そのため、複数のセパレータを直接重ねたものや、セパレータと他の部材とを積層させて正極と負極の間に存在させてもよい。セパレータを絶縁材料で構成することで、正極と負極とが電気的に接触することを防止することができる。また、正極と負極との間を電解質が移動可能な形状のものを使用することが望ましい。セパレータの例に、不織布、フィルム、紙などが含まれる。セパレータの構成材料の例に、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、セルロースが含まれる。好ましいセパレータの例に、セルロース繊維を含む不織布、ポリオレフィン繊維を含む多孔質フィルムを挙げることができる。
セパレータの気孔率は60%以上にすることが好ましい。また、繊維径は10μm以下が好ましい。繊維径を10μm以下にすることで、電解質に対するセパレータの親和性が向上するので電池抵抗を小さくすることができる。繊維径のより好ましい範囲は3μm以下である。気孔率が60%以上のセルロース繊維含有不織布は、電解質の含浸性が良く、低温から高温まで高い出力性能を出すことができる。また、長期充電保存、フロート充電、過充電においても負極と反応せず、リチウム金属のデンドライト析出による負極と正極の短絡が発生しない。より好ましい範囲は62%〜80%である。
セパレータは、厚さが20μm以上100μm以下、密度が0.2g/cm以上0.9g/cm以下であることが好ましい。この範囲であると、機械的強度と電池抵抗の軽減のバランスを取ることができ、高出力で内部短絡が抑制された二次電池を提供することができる。また、高温環境下でのセパレータの熱収縮が少なく、良好な高温貯蔵性能を出すことが出来る。
セパレータの透気係数は1×10−14以下であることが好ましい。1×10−14より大きいと、正極側水系電解質と負極側水系電解質が混合してしまい、浸透圧の小さいほうの水系電解質が液枯れを起こしやすくなるため好ましくない。透気係数が1×10−15以下であることがより好ましく、1×10−16以下であることがさらにより好ましい。このような透気係数を有するセパレータであることで、正極側水系電解質と負極側水系電解質の混合を速度論的に十分抑制することができるためにクーロン効率が良くなるため好ましい。セパレータに水系電解質が十分に染み込み、セパレータの抵抗は低くイオン電導性が高くなることにより、レート特性がよくなるためである。水系電解質はセパレータによく染み込むが、水系電解質が正極側と負極側で混ざるほどではない。
透気係数(m)は、以下のようにして算出する。透気係数KTの算出では、例えば、厚さL(m)のセパレータを測定対象とする場合、測定面積A(m)の範囲に、粘性係数σ(Pa・s)の気体を透過させる。この際、投入される気体の圧力p(Pa)が互いに対して異なる複数の条件で、気体を透過させ、複数の条件のそれぞれにおいて、セパレータを透過した気体量Q(m/s)を測定する。そして、測定結果から、圧力pに対する気体量Qをプロットし、傾きであるdQ/dpを求める。そして、厚さL、測定面積A、粘性係数σ及び傾きdQ/dpから、式(5)のようにして、透気係数KTが算出される。
Figure 2021153039
透気係数KTの算出方法の一例では、それぞれに直径10mmの孔が開いた一対のステンレス板でセパレータを挟み込む。そして、一方のステンレス板の孔から空気を圧力pで送り込む。そして、他方のステンレス板の孔から漏れる空気の気体量Qを測定する。したがって、孔の面積(25πmm)が測定面積Aとして用いられ、粘性係数σとしては0.000018Pa・sが用いられる。また、気体量Qは、100秒の間に孔から漏れる量δ(m)を測定し、測定された量δを100で割ることにより算出する。
そして、圧力pが互いに対して少なくとも1000Pa離れる4点で、前述のようにして圧力pに対する気体量Qを測定する。例えば、圧力pが1000Pa、2500Pa、4000Pa及び6000Paとなる4点のそれぞれで、圧力pに対する気体量Qを測定する。そして、測定した4点について圧力pに対する気体量Qをプロットし、直線フィッティング(最小二乗法)によって圧力pに対する気体量Qの傾き(dQ/dp)を算出する。そして、算出した傾き(dQ/dp)に(σ・L)/Aを乗算することにより、透気係数KTを算出する。
なお、セパレータの透気係数の測定においては、電池から分解し、セパレータを電池の他の部品から分離する。セパレータは、純水で両面を洗い流した後、純水に浸漬させて48時間以上放置する。その後、さらに純水で両面を洗い流し、100℃の真空乾燥炉にて48時間以上乾燥させた後に、透気係数の測定を行う。また、セパレータにおいて任意の複数箇所で、透気係数を測定する。そして、任意の複数箇所の中で透気係数が最も低い値になる箇所での値を、セパレータの透気係数とする。
また、セパレータとして、無機固体粒子を使用することもできる。
無機固体粒子は、無機固体粒子と高分子材料とを含む固体電解質膜としてセパレータとして用いることができる。固体電解質膜を多孔質自立膜、例えば上述した不織布や紙などの少なくとも片方の主面に塗布した複合固体電解質膜をセパレータとして用いることもできる。固体電解質膜と多孔質自立膜のそれぞれが第3水系電解質を含むことができる。
セパレータは、多孔質自立膜であってもよく、固体電解質膜であってもよく、多孔質自立膜の少なくとも一方の主面上に固体電解質膜を具備する複合固体電解質膜であってもよい。セパレータは、多孔質自立膜、固体電解質膜及び複合固体電解質膜から選択される2種以上が積層されてなっていてもよい。複合固体電解質膜の全体に第3水系電解質が保持されうる。
固体電解質膜は、無機固体粒子と、高分子材料とを含み得る。固体電解質膜は、可塑剤及び/又は電解質塩を更に含んでいてもよい。
多孔質自立膜の例に、不織布、有機繊維を含む多孔質フィルム、及び、紙などが含まれる。
セパレータは上述したものを複数組み合わせて用いることもできる。ここでは固体電解質膜と複合固体電解質膜をセパレータに用いた場合を、具体的に図2を用いて説明する。図2は第1の実施形態における電池の備えるセパレータ構成模式図である。図2Aは固体電解質膜のみをセパレータとして用いた場合。図2Bは固体電解質膜を多孔質自立膜の片方の主面に形成した複合固体電解質膜Aをセパレータとして用いた場合、図2Cは多孔質膜の両方の主面に固体電解質膜を形成した複合固体電解質膜Bをセパレータとして用いた場合、図2Dは複合固体電解質膜Aを複数積層したものをセパレータとして用いた場合を示す。セパレータとしては、他にも複合固体電解質膜Aと複合固体電解質膜Bを積層したセパレータ、複合電解質膜Bを積層したセパレータ、固体電解質膜と複合固体電解質膜A及び/又は複合固体電解質膜Bを積層したセパレータが挙げられる。つまり、固体電解質膜、複合固体電解質膜A及び複合固体電解質膜Bは適宜組み合わせて用いることができる。固体電解質膜は負極側、第2水系電解質側に存在するほうが好ましい。
複合固体電解質膜について、複合固体電解質膜Aと複合固体電解質膜Bは、便宜上A、Bと記載したのみである。
上記したセパレータを組み合わせることにより、正極電解質と負極電解質が混合するための拡散距離が延びるだけでなく、マイクロショートの可能性を低減できることから、サイクル特性と貯蔵性能の改善ができる。特に好ましいのは、多孔質自立膜の両方の主面に固体電解質を塗布し、多孔質自立膜の両面に固体電解質膜を形成した図2Dのようなセパレータを用いる場合である。このセパレータを用いることで中央の基材(多孔質膜)部分に十分な量の第3水系電解質を含浸させることができ、正極、負極それぞれの電解質との接触を極力避けることができるため、高いサイクル特性を実現できる。
ここで、固体電解質膜が備える無機固体粒子と高分子材料について具体的に説明する。
無機固体粒子としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、イットリア、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、などの酸化物系セラミックス、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ランタン、炭酸セリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、石膏、硫酸バリウムなどの炭酸塩および硫酸塩、水酸燐灰石、リチウムリン酸塩、リン酸ジルコニウム、リン酸チタニウムなどのリン酸塩、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックスなどが例として挙げられる。以上に挙げた無機粒子は水和物の形態をとっていてもよい。
無機固体粒子は、アルカリ金属イオンのイオン伝導性を有することが好ましい。リチウムイオン伝導性を有する無機固体粒子としては、例えば、酸化物系固体電解質、又は硫化物系固体電解質を挙げることができる。酸化物系固体電解質としては、NASICON(Sodium (Na) Super Ionic Conductor)型構造を有し、一般式LiM2(PO4)3で表されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中のMは、例えば、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、及びカルシウム(Ca)からなる群より選ばれる少なくとも一種類以上の元素である。一般式LiM2(PO4)3で表されるリチウムリン酸固体電解質のイオン伝導度は、例えば、1×10-7S/cm以上1×10-3S/cm以下である。
NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の具体例としては、LATP(Li1+x+yAlx(Ti及びGeの少なくとも一方)2-xSiyP3-yO12;0<x≦2、0≦y<3)、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3;0≦x≦2、及び、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3;0≦x≦2、Li1+2xZr1-xCax(PO4)3;0≦x<1を挙げることができる。Li1+2xZr1-xCax(PO4)3は、耐水性が高く、還元性及びコストが低いことから、無機固体電解質粒子として用いることが好ましい。
また、酸化物系固体電解質としては、上記リチウムリン酸固体電解質の他にも、アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.3N0.46)、ガーネット型構造のLa5+xAxLa3-xM2O12(AはCa,Sr,及びBaからなる群より選ばれる少なくとも1種,MはNb及びTaの少なくとも一方)、Li3M2-xL2O12(MはTa及びNbの少なくとも一方、LはZr)、Li7-3xAlxLa3Zr3O12、及びLLZ(Li7La3Zr2O12)が挙げられる。固体電解質は、1種類であってもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。LIPONのイオン伝導度は、例えば、1×10-7S/cm以上5×10-6S/cm以下である。LLZのイオン伝導度は、例えば、1×10-7S/cm以上5×10-4S/cm以下である。
また、ナトリウムイオンのイオン伝導性を有する無機固体粒子としては、ナトリウム含有固体電解質を用いてもよい。ナトリウム含有固体電解質は、ナトリウムイオンのイオン伝導性に優れている。ナトリウム含有固体電解質としては、β−アルミナ、ナトリウムリン硫化物、及びナトリウムリン酸化物などを挙げることができる。ナトリウムイオン含有固体電解質は、ガラスセラミックスの形態にあることが好ましい。
無機固体粒子は、25℃において1×10-7S/cm以上のリチウムイオン伝導度を有する固体電解質であることが好ましい。リチウムイオン伝導度は、例えば、交流インピーダンス法により測定できる。具体的には、先ず、錠剤成形器を用いて無機固体粒子を成形して、圧粉体を得る。この圧粉体の両面に金(Au)を蒸着して、測定試料を得る。インピーダンス測定装置を用いて、測定試料の交流インピーダンスを測定する。測定装置としては、例えば、ソーラトロン社製周波数応答アナライザ1260型を用いることができる。測定に際しては、測定周波数を5Hz乃至32MHzとし、測定温度を25℃とし、アルゴン雰囲気下で行う。
次いで、測定された交流インピーダンスに基づいて、複素インピーダンスプロットを作成する。複素インピーダンスプロットは、横軸を実数成分として、縦軸に虚数成分をプロットしたものである。以下の式により、無機固体粒子のイオン伝導度σLiを算出する。なお、下記式において、ZLiは複素インピーダンスプロットの円弧の直径から算出される抵抗値であり、Sは面積であり、dは厚みである。
Figure 2021153039
無機固体粒子の形状は特に限定されないが、例えば、球状、楕円形状、扁平形状、又は繊維状などにすることができる。
無機固体粒子の平均粒径は、15μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましい。無機固体粒子の平均粒径が小さいと、固体電解質膜の緻密性を高めることができる。
無機固体粒子の平均粒径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。無機固体粒子の平均粒径が大きいと、粒子同士の凝集が抑制される傾向にある。
なお、無機固体粒子の平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布測定装置により求めた粒度分布において、体積積算値が50%となる粒径を意味している。この粒度分布測定を行う際の試料としては、無機固体粒子の濃度が0.01質量%乃至5質量%となるようにエタノールで希釈した分散液を用いる。
無機固体粒子は、単一の種類のものを用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
固体電解質膜において、無機固体粒子は主成分であることが好ましい。固体電解質膜における無機固体粒子の割合は、固体電解質膜のイオン伝導性を高めるという観点からは、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。
固体電解質膜における無機固体粒子の割合は、固体電解質膜の膜強度を高めるという観点からは、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。固体電解質膜における無機固体粒子の割合は、熱重量(TG)分析により算出できる。
固体電解質膜に含まれる高分子材料は、無機固体粒子同士の結着性を高める。高分子材料の重量平均分子量は、例えば、3000以上である。高分子材料の重量平均分子量が3000以上であると、無機固体粒子の結着性をより高められる。高分子材料の重量平均分子量は、3000以上5000000以下であることが好ましく、5000以上2000000以下であることがより好ましく、10000以上1000000以下であることが更に好ましい。高分子材料の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)により求めることができる。
高分子材料は、単一のモノマーユニットからなる重合体(ポリマー)、複数のモノマーユニットからなる共重合体(コポリマー)、又はこれらの混合物であり得る。高分子材料は、酸素(O)、硫黄(S)、窒素(N)、及びフッ素(F)からなる群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を有する炭化水素で構成されるモノマーユニットを含んでいることが好ましい。高分子材料において、モノマーユニットで構成された部分が占める割合は70モル%以上であることが好ましい。以下、このモノマーユニットを、第1モノマーユニットと称する。また、共重合体において、第1モノマーユニット以外のものを、第2モノマーユニットと称する。第1モノマーユニットと第2モノマーユニットとの共重合体は、交互共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、又は、ブロック共重合体であってもよい。
高分子材料において、第1モノマーユニットで構成された部分が占める割合が70モル%より低いと、固体電解質膜の遮水性が低下するおそれがある。高分子材料において、第1モノマーユニットで構成された部分の割合は、90モル%以上であることが好ましい。高分子材料は、第1モノマーユニットで構成された部分の割合が100モル%、すなわち、第1モノマーユニットのみからなる重合体であることが最も好ましい。
第1モノマーユニットは、酸素(O)、硫黄(S)、窒素(N)、及びフッ素(F)からなる群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を側鎖に有し、主鎖が炭素−炭素結合により構成された化合物であってもよい。炭化水素は、酸素(O)、硫黄(S)、窒素(N)、及びフッ素(F)からなる群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を、1種類又は2種類以上有していてもよい。第1モノマーユニットにおける上記官能基は、固体電解質膜を通過するアルカリ金属イオンの伝導性を高める。
第1モノマーユニットを構成する炭化水素は、酸素(O)、硫黄(S)、及び窒素(N)からなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を含む官能基を有することが好ましい。第1モノマーユニットが、このような官能基を有すると、固体電解質膜におけるアルカリ金属イオンの伝導性がより高まり、内部抵抗が低まる傾向にある。
第1モノマーユニットに含まれる官能基としては、ホルマール基、ブチラール基、カルボキシメチルエステル基、アセチル基、カルボニル基、水酸基及びフルオロ基からなる群より選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。また、第1モノマーユニットは、カルボニル基及び水酸基の少なくとも一方を官能基に含むことがより好ましく、両方を含むことが更に好ましい。
第1モノマーユニットは、下記式により表すことができる。
Figure 2021153039
上記式において、R1は、水素(H)、アルキル基、及びアミノ基からなる群より選ばれることが好ましい。また、R2は、水酸基(−OH)、−OR1、−COOR1、−OCOR1、−OCH(R1)O−、−CN、−N(R1)3、及び−SO2R1からなる群より選ばれることが好ましい。
第1モノマーユニットとしては、例えば、ビニルホルマール、ビニルアルコール、酢酸ビニル、ビニルアセタール、ビニルブチラール、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、アクリロニトリル、アクリルアミド及びその誘導体、スチレンスルホン酸、ポリフッ化ビニリデン、及びテトラフルオロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上を挙げることができる。
高分子材料は、ポリビニルホルマール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン、及びポリテトラフルオロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましい。
以下に、高分子材料として用いることができる化合物の構造式の一例を記載する。
ポリビニルホルマールの構造式は、以下の通りである。下記式において、aは、50以上80以下であり、bは0以上5以下であり、cは15以上50以下であることが好ましい。
Figure 2021153039
ポリビニルブチラールの構造式は、以下の通りである。下記式において、lは、50以上80以下であり、mは0以上10以下であり、nは10以上50以下であることが好ましい。
Figure 2021153039
ポリビニルアルコールの構造式は、以下の通りである。下記式において、nは、70以上20000以下であることが好ましい。
Figure 2021153039
ポリメタクリル酸メチルの構造式は、以下の通りである。下記式において、nは、30以上10000以下であることが好ましい。
Figure 2021153039
第2モノマーユニットとは、第1モノマーユニット以外の化合物、すなわち、酸素(O)、硫黄(S)、窒素(N)、及びフッ素(F)からなる群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を有さないか、又は、この官能基を有していても炭化水素ではないものである。第2モノマーユニットとしては、例えば、エチレンオキシド及びスチレンを挙げることができる。第2モノマーユニットからなる重合体としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリスチレン(PS)を挙げることができる。
第1モノマーユニット及び第2モノマーユニットに含まれる官能基の種類は、赤外線分光分析法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy;FT−IR)により同定できる。また、第1モノマーユニットが炭化水素からなることは、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance;NMR)により判断できる。また、第1モノマーユニットと第2モノマーユニットとの共重合体において、第1モノマーユニットで構成された部分が占める割合は、NMRにより算出できる。
高分子材料は、水系電解質を含有し得る。高分子材料が含有し得る水系電解質の割合は、その吸水率により把握できる。ここで、高分子材料の吸水率とは、23℃の温度の水中に24時間にわたって浸漬した後の高分子材料の質量M1から、浸漬する前の高分子材料の質量Mを減じて得られた値を、浸漬する前の高分子材料の質量Mで除した値([M1−M]/M×100)である。高分子材料の吸水率は、高分子材料の極性と関連していると考えられる。
吸水率の高い高分子材料を用いると、固体電解質膜のアルカリ金属イオン伝導性が高まる傾向にある。また、吸水率が高い高分子材料を用いると、無機固体粒子と、高分子材料との結着力が高まるため、固体電解質膜の可撓性を高めることができる。高分子材料の吸水率は、0.01%以上であることが好ましく、0.5%以上であることより好ましく、2%以上であることが更に好ましい。
吸水率の低い高分子材料を用いると、固体電解質膜の強度を高められる。すなわち、高分子材料の吸水率が高すぎると、固体電解質膜が水系電解質により膨潤することがある。また、高分子材料の吸水率が高すぎると、固体電解質膜中の高分子材料が、水系電解質内に流出することがある。高分子材料の吸水率は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、7%以下であることが更に好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
固体電解質膜における高分子材料の割合は、固体電解質膜の可撓性を高めるという観点からは、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。
また、固体電解質膜における高分子材料の割合は、固体電解質膜のリチウムイオン伝導性を高めるという観点からは、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。固体電解質膜における高分子材料の割合は、熱重量(TG)分析により算出することができる。
固体電解質膜において、無機固体粒子に対する高分子材料の割合を高めることにより、セパレータの透気係数を低下させることができる。或いは、多孔質自立膜に塗布される、固体電解質膜形成用スラリーの塗布量を増大させることにより、得られるセパレータの透気係数を低下させることができる。
固体電解質膜に含まれる高分子材料は、高分子材料は、単一の種類のものを用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
固体電解質膜は、無機固体粒子及び高分子材料の他に、可塑剤や電解質塩を含んでも良い。例えば、固体電解質膜が電解質塩を含むと、セパレータのアルカリ金属イオン伝導性をより高めることができる。
4)水系電解質
水系電解質には、水系溶媒と電解質Aとを含む液状水系電解質と、この水系電解質に高分子材料を複合化したゲル状水系電解質が挙げられる。第1、第2及び第3水系電解質を総称して水系電解質と記載する場合もある。前述の高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。ここでは、水系電解質について説明する。水系電解質は、NO 、Cl、LiSO 、SO 2−、およびOHからなる群より選択される少なくとも1種のアニオンを含む。水系電解質中に含まれるこれらのアニオンは、1種でもよく、或いは、2種以上のアニオンが含まれていてもよい。そのため、電解質Aとしては、水系溶媒に溶解したときに解離して上記アニオンを生じさせるものを用いることができる。特に、Liイオン、Naイオンと上記アニオンとに解離する塩が好ましい。このような塩として、例えばリチウム塩としては、例えばLiNO、LiCl、LiSO、LiOH、LiTFSI(Lithium bis(trifluoro methanesulfonyl)imide)などを挙げることができる。
なお、液状水系電解質とゲル状水系電解質を総称するために用いた水系電解質と、溶質としての電解質(塩)を区別するために、便宜上溶質としての電解質を電解質Aと称している。
水系溶媒としては、水を含む溶液を用いることができる。ここで、水を含む溶液とは、純水であってもよく、或いは水と水以外の物質との混合溶液や混合溶媒であってもよい。水系溶媒が含む水の割合は、例えば、50体積%以上の割合であり、好ましくは90体積%以上の割合である。
上記水系電解質は、溶質となる塩1molに対し、水溶媒量(例えば水系溶媒中の水量)が1mol以上であることが好ましい。さらに好ましい形態は、溶質となる塩1molに対する水溶媒量が3.5mol以上である。
Liイオンと上記アニオンへと解離するリチウム塩は、水系溶媒における溶解度が比較的高い。そのため、アニオンの濃度が1−10Mと高く、Liイオン拡散性が良好である水系電解質を得ることができる。
NO 及び/又はClを含む水系電解質は、0.1−10M程度の幅広いアニオン濃度の範囲で用いることができる。イオン伝導度と、リチウム平衡電位の両立の観点から、これらのアニオンの濃度が3−12Mと高いことが好ましい。NO3−またはClを含む水系電解質のアニオン濃度が8−12Mであることがより好ましい。
LiSO 及び/又はSO 2−を含む電解質は、0.05−2.5M程度のアニオン濃度の範囲で用いることができる。イオン伝導度の観点から、これらのアニオンの濃度が1.5−2.5Mと高いことが好ましい。
水系電解質中のOH濃度は、10−10−0.1Mであることが望ましい。水系電解質のpHは、1以上14以下であることが好ましい。
また、水系電解質はリチウムイオンとナトリウムイオンとの両方を含むことができる。
第1水系電解質、第2水系電解質及び第3水系電解質に用いる電解質Aは、上述した電解質Aから適宜選択して用いることができる。
水系電解質には添加剤を添加することもできる。たとえば、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤は、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、チオ尿素、3、3‘−ジチオビス(1−プロパンホス酸) 2ナトリウム、ジメルカプトチアジアゾール、ホウ酸、シュウ酸、マロン酸、サッカリン、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ゼラチン、硝酸カリウム、芳香族アルデヒド、複素環アルデヒドなどの非イオン性界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。また、添加金属は水系電解質中にイオンでも固体でも存在することができる。添加剤は、正極側電解質、負極側電解質、セパレータに含まれる水系電解質でそれぞれ異なるものを用いたほうが好ましい。負極側水系電解質に含まれる添加剤は、負極への亜鉛などの被覆に用いることができるものが好ましく、セパレータに含まれる水系電解質に含まれる添加剤は、セパレータ表面の表面張力を低下させ、セパレータへの水系電解質の染み込みやすさを向上させるものが好ましい。
界面活性剤が水系電解質中に含まれているかは、先述したGC−MSを用いて調べることができる。例えば、水系電解質をヘキサンで抽出し、水系電解質中の有機溶媒を取り分ける。この取り分けた有機溶媒に対してGC−MSと核磁気共鳴測定(NMR)を行うことにより特定することができる。また、添加金属はICPにより調べることができる。
水系電解質の界面張力は80mN/m以下であることが好ましい。この範囲であることで、セパレータの内部に染み込むことができる。より好ましくは50mN/m以下であり、さらにより好ましくは40mN/m以下である。
界面張力の測定方法は下記の通りである。
<水系電解質の界面張力の測定方法>
水系電解質の界面張力は、例えば、懸滴法を用いて求めることができる。測定装置としては、例えば、協和界面科学社製、自動接触角計Dme−201を用いることができる。測定条件としては、例えば、下記表1に示す条件を用いる。
Figure 2021153039
界面張力の算出には懸滴法を用い、下記式(7)から水系電解質の界面張力を算出する。
界面張力(mN/M)=Δρgde2(1/H)・・・(7)
式(6)における各記号は、次の通りである:
Δρ:密度差、g:重力加速度、de:懸滴の最大径、1/H:補正係数。
例えば、測定を5回行い、その平均値を界面張力とみなす。
<水系電解質の接触角の測定方法>
水系電解質の接触角は、例えば、液滴法により求めることができる。測定装置としては、例えば、協和界面科学社製、自動接触角計Dme−201を用いることができる。測定条件としては、例えば、下記表2に示す条件を用いる。
Figure 2021153039
先述したように、第3水系電解質の浸透圧は、第1水系電解質と第2水系電解質の浸透圧と異なることで第1、第2水系電解質が混合することを防ぐことができる。
そのため、第1水系電解質の浸透圧<第3水系電解質の浸透圧<第2水系電解質の浸透圧または、第1水系電解質の浸透圧>第3水系電解質の浸透圧>第2水系電解質の浸透圧のいずれかとなることが好ましい。
第3水系電解質と、第1水系電解質及び第2水系電解質の浸透圧の差の絶対値が2以下であることがより好ましい。これは第3水系電解質が第1水系電解質及び第2水系電解質のそれぞれと近しいことで、よりプロトンとイオンの移動を防ぐことができるためである。
ここで、浸透圧Π(N/m)は、以下のようにして算出される。すなわち、水系電解質における溶媒の体積をV(m)、水系電解質での溶質の物質量(全モル数)をn(mol)、気体定数をR(m・kg/(s・K・mol))、水系電解質の絶対温度をT(K)とすると、浸透圧Πは、以下の式(8)のようにして算出される。
Π = (n・R・T)/ V (8)
先述したように、水系電解質のpHは1以上14以下が好ましい。ここで、第1水系電解質、第2水系電解質及び第3水系電解質に適したpHを具体的に説明すると、第1水系電解質は、LiClをpHは1以上7以下であることが好ましい。正極側の水系電解質である第1水系電解質のpHが8以上となると水の電気分解に起因する酸素発生反応が有利に進み、pH1未満だと活物質の分解が進行する他、正極活物質内のリチウムと溶存プロトンがイオン交換し、失活するため、好ましくない。
第2水系電解質としては、pH7以上、14以下であることが好ましい。負極の水系電解質である第2水系電解質のpHが7未満では水の電気分解に起因する水素発生反応が有利に進むため、好ましくない。
第3水系電解質は、先述したように第3水系電解質のpHは、第1水系電解質と第2水系電解質のpHと異なることで第1、第2水系電解質が混合することを防ぐことができる。そのため、第1水系電解質のpH<第3水系電解質のpH<第2水系電解質のpHとなるか、又は第2水系電解質のpH<第3水系電解質のpH<第1水系電解質のpHことが好ましい。
第3水系電解質は緩衝剤を含むことができる。緩衝剤とは、第1水系電解質から第2水系電解質へ及び第2水系電解質から第1水系電解質へのイオンの移動を抑制できるものであれば特に問わない。緩衝剤は、例えば弱酸である。具体的に記載すると、グリシン、リン酸、フタル酸、クエン酸、バルビツール酸、コハク酸、酢酸、炭酸、ホウ酸、N-2-hydroxyethylpiperazine-N’-2-ethanesufonic acid、酢酸緩衝液(酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝液(リン酸+リン酸ナトリウム)、クエン酸緩衝液(クエン酸+リン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液、リン酸干渉生理食塩水、マッキルベイン緩衝液、HEPES(4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid)などを挙げることができる。
使用する弱酸である緩衝剤の酸解離定数をpKa([HA]⇔[H]+[A])とするとpHはpH=pKa+log([A]/[HA])と表すことができる。ほとんどが電離している強酸とは異なり、弱酸はおおよそ半分が電離している場合が多く、[A]=[HA]=0.5、すなわちlog([A]/[HA])=0とみなすことができるため、pH=pKaと考えることができる。
使用する弱酸の酸解離定数(pKa)±1程度のpHで緩衝剤は有効に機能するため、正極または負極の水系電解質pHに対して、第3水系電解質の備える緩衝剤はpKa(またはpKa2、pKa3)が±1程度となる緩衝材を選ぶことがより好ましい。つまり、(第1水系電解質のpH又は第2水系電解質のpH)−1<緩衝剤のpKa1(またはpKa2、pKa3)<(第1水系電解質のpH又は第2水系電解質のpH)+1となる。緩衝剤のpKa1、pKa2及びpKa3のいずれを用いるかは第1水系電解質のpH及び第2水系電解質のpHとの大小関係により適宜決定する。また、緩衝剤の酸解離定数pKaは、第1水系電解質に含まれる電解質のpH<緩衝剤のpKa1(またはpKa2、pKa3)<第2水系電解質のpHとなっても好ましい。このようになることで、第1水系電解質から第2水系電解質へ及び第2水系電解質から第1水系電解質へのイオンの移動を抑制しつつ、貯蔵性能の向上及びサイクル特性の向上を行うことができる。
本願明細書及び特許請求の範囲において、水系電解質のpH及びpKaの値は、25℃におけるpH及びpKaの値を意味する。
水系電解質に含まれる電解質Aと緩衝剤の特定は次の方法で行うことができる。
<水系電解質の特定方法>
完全放電した電池から、正極側の水系電解質(第1水系電解質)、負極側の水系電解質(第2水系電解質)及びセパレータを取り出す。セパレータを遠心分離機でセパレータに含まれる水系電解質(第3水系電解質)を得ることができる。
このようにして得た第1から第3水系電解質それぞれをヘキサンで抽出し、水系電解質中の有機溶媒を取り分ける。こうして、有機溶媒に溶出した有機化合物の緩衝剤と、水系電解質中にとどまった無機化合物の緩衝剤を取り分けることができる。この取り分けた有機溶媒に対してガスクロマトグラフィー質量分析(Gas Chromatography − Mass Spectrometry;GC−MS)と核磁気共鳴測定(Nuclear Magnetic Resonance;NMR)を行うことにより水系電解質に含まれている有機化合物の緩衝剤を特定することができる。
無機化合物の緩衝剤は、水系電解質を、ICPを用いて測定する。
セパレータに第3水系電解質が含まれているかは、セパレータに含まれている水系電解質のうち、最も多い電解質Aを、第3水系電解質の電解質Aとすることで特定することができる。
同様に遠心分離機を用いて得たセパレータに含まれる水系電解質を用いて、塩の濃度、pH及び浸透圧を特定することができる。
第1から第3水系電解質中の溶質、即ち電解質Aは、例えばイオンクロマトグラフ法により定性および定量することができる。イオンクロマトグラフ法は、感度が高いため、分析手法として特に好ましい。
第1水系電解質及び第2水系電解質を測定する際、電極に保持されている水系電解質と電極の周囲に存在する水系電解質は構成が同一であるため、どちらを用いてもよい。
イオンクロマトグラフ法による水系電解質に含まれる溶質の定性定量分析の具体的な測定条件の例を以下に示す:
システム: Prominence HIC−SP
分析カラム: Shim−pack IC−SA3
ガードカラム: Shim−pack IC−SA3(G)
溶離液: 3.6 mmol/L 炭酸ナトリウム水溶液
流量: 0.8 mL/min
カラム温度: 45℃
注入量: 50μL
検出: 電気伝導度
水系電解質中に水が含まれているかは、GC−MS測定により確認できる。また、水系電解質中の水含有量の算出は、例えばICPの発光分析などで測定することができる。また電解質の比重を測定することで、溶媒のモル数を算出できる。水系電解質は正極側と負極側で同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。
また、水系電解質に含まれている添加金属はICPにより調べることができる。
なお、電池作製前の水系電解質と、作製後の電池から得た水系電解質とでは、塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧は、多少は変化するが、貯蔵性能及びサイクル特性に影響を与えるほどではない。
5)容器
正極、負極及び電解質が収容される容器には、金属製容器や、ラミネートフィルム製容器、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂容器を使用することができる。
金属製容器としては、ニッケル、鉄、ステンレス、元素Aなどからなる金属缶で角形、円筒形の形状のものが使用できる。
樹脂製容器、金属製容器それぞれの板厚は、1mm以下にすることが望ましく、さらに好ましい範囲は0.5mm以下である。さらに好ましい範囲は0.3mm以下である。また、板厚の下限値は、0.05mmにすることが望ましい。
ラミネートフィルムとしては、例えば、金属層を樹脂層で被覆した多層フィルムなどを挙げることができる。金属層の例に、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔が含まれる。樹脂層には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子を用いることができる。ラミネートフィルムの厚さの好ましい範囲は、0.5mm以下である。より好ましい範囲は0.2mm以下である。また、ラミネートフィルムの厚さの下限値は、0.01mmにすることが望ましい。
実施形態に係る電池は、角形、円筒形、扁平型、薄型、コイン型等の様々な形態の電池に適用することが可能である。さらにバイポーラ構造を有する電池であることが好ましい。これにより複数直列のセルを1個のセルで作製できる利点がある。
実施形態に係る電池を二次電池として用いた場合の一例を図3〜図6を参照して説明する。
図3及び図4に、金属製容器を用いた二次電池の一例を示す。
電極群1は、矩形筒状の金属製容器2内に収納されている。電極群1は、正極3及び負極4をその間にセパレータ5を介在させて偏平形状となるように渦巻き状に捲回した構造を有する。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。図4に示すように、電極群1の端面に位置する正極3の端部の複数個所それぞれに帯状の正極リード6が電気的に接続されている。また、この端面に位置する負極4の端部の複数個所それぞれに帯状の負極リード7が電気的に接続されている。この複数ある正極リード6は、一つに束ねられた状態で正極導電タブ8と電気的に接続されている。正極リード6と正極導電タブ8から正極端子が構成されている。また、負極リード7は、一つに束ねられた状態で負極導電タブ9と接続されている。負極リード7と負極導電タブ9から負極端子が構成されている。金属製の封口板10は、金属製容器2の開口部に溶接等により固定されている。正極導電タブ8及び負極導電タブ9は、それぞれ、封口板10に設けられた取出穴から外部に引き出されている。封口板10の各取出穴の内周面は、正極導電タブ8及び負極導電タブ9との接触による短絡を回避するために、絶縁部材11で被覆されている。
図5及び図6に、ラミネートフィルム製外装部材を用いた二次電池の一例を示す。
積層型電極群1は、2枚の樹脂フィルムの間に金属層を介在したラミネートフィルムからなる袋状容器2内に収納されている。積層型電極群1は、図6に示すように正極3と負極4とをその間にセパレータ5を介在させながら交互に積層した構造を有する。正極3は複数枚存在し、それぞれが集電体3aと、集電体3aの両面に形成された正極活物質含有層3bとを備える。負極4は複数枚存在し、それぞれが集電体4aと、集電体4aの両面に形成された負極活物質含有層4bとを備える。各負極4の集電体4aは、一辺が正極3から突出している。突出した集電体4aは、帯状の負極端子12に電気的に接続されている。帯状の負極端子12の先端は、容器2から外部に引き出されている。また、図示しないが、正極3の集電体3aは、集電体4aの突出辺と反対側に位置する辺が負極4から突出している。負極4から突出した集電体3aは、帯状の正極端子13に電気的に接続されている。帯状の正極端子13の先端は、負極端子12とは反対側に位置し、容器2の辺から外部に引き出されている。
図3〜図6に示す二次電池には、容器内に発生した水素ガスを外部に放出させるための安全弁を設けることができる。安全弁は、内圧が設定値よりも高くなった場合に作動し、内圧が低下すると封止栓として機能する復帰式、一度作動すると封止栓としての機能が回復しない非復帰式のいずれでも使用可能である。また、図3〜図6に示す二次電池は、密閉式であるが、水素ガスを水に戻す循環システムを備える場合には開放系とすることが可能である。
以上に説明した実施形態によれば、実施形態の電池は、正極と、正極に保持される第1水系電解質と、負極と、負極に保持される第2水系電解質と、正極と負極との間に介在する少なくとも1枚のセパレータと、セパレータに保持される第3水系電解質と、を具備し、第3水系電解質が備える塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧のうち、少なくとも1つが第1水系電解質及び第2水系電解質と異なる。このような電池の構成であることで、二次電池として用いた場合貯蔵性能及びサイクル特性に優れた二次電池を提供することができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態によれば、二次電池を単位セルとする組電池を提供することができる。二次電池には、第1の実施形態の電池を用いることができる。
組電池の例には、電気的に直列又は並列に接続された複数の単位セルを構成単位として含むもの、電気的に直列接続された複数の単位セルからなるユニットまたは電気的に並列接続された複数の単位セルからなるユニットを含むもの等を挙げることができる。
組電池は、筐体に収容されていても良い。筐体は、アルミニウム合金、鉄、ステンレスなどからなる金属缶、プラスチック容器等が使用できる。また、容器の板厚は、0.5mm以上にすることが望ましい。
二次電池の複数個を電気的に直列又は並列接続する形態の例には、それぞれが容器を備えた複数の二次電池を電気的に直列又は並列接続するもの、共通の筐体内に収容された複数の電極群を電気的に直列又は並列接続するものが含まれる。前者の具体例は、複数個の二次電池の正極端子と負極端子を金属製のバスバー(例えば、アルミニウム、ニッケル、銅)で接続するものである。後者の具体例は、1個の筐体内に複数個の電極群を隔壁により電気化学的に絶縁した状態で収容し、これら電極群を電気的に直列接続するものである。電気的に直列接続する電池個数を5〜7の範囲にすることにより、鉛蓄電池との電圧互換性が良好になる。鉛蓄電池との電圧互換性をより高くするには、単位セルを5個または6個直列接続した構成が好ましい。
組電池の一例を、図7を参照して説明する。図7に示す組電池31は、第1の実施形態に係る角型の二次電池(例えば図3、図4)32〜32を単位セルとして複数備える。電池32の正極導電タブ8と、その隣に位置する電池32の負極導電タブ9とが、リード33によって電気的に接続されている。さらに、この電池322の正極導電タブ8とその隣に位置する電池32の負極導電タブ9とが、リード33によって電気的に接続されている。このように電池32〜32間が直列に接続されている。
第2の実施形態の組電池によれば、第1の実施形態に係る二次電池含んでいるため、貯蔵性能及びサイクル特性に優れた組電池を提供することができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態によれば、電池パックが提供される。この電池パックは、第1の実施形態に係る二次電池具備している。
第3の実施形態に係る電池パックは、先に説明した第1の実施形態に係る二次電池(単位セル)を1個または複数個具備することができる。第3の実施形態に係る電池パックに含まれ得る複数の二次電池は、電気的に直列、並列、又は直列および並列を組み合わせて接続されることができる。また、複数の二次電池は、電気的に接続された組電池を構成することもできる。複数の二次電池から組電池を構成する場合、第2の実施形態の組電池を使用することができる。
第3の実施形態に係る電池パックは、保護回路をさらに具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御するものである。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用することができる。
また、第3の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子をさらに具備することもできる。通電用の外部端子は、二次電池からの電流を外部に出力するため、及び/又は単位セル51に電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子59を通して電池パックに供給される。
第3の実施形態に係る電池パックの例を、図8を参照して説明する。図8は、電池パックの一例を示す模式的な斜視図である。
電池パック40は、図3、4に示す二次電池からなる組電池を備える。電池パック40は、筐体41と、筐体41内に収容された組電池42とを含む。組電池42は、複数(例えば5個)の二次電池43〜43が電気的に直列に接続されたものである。二次電池43〜43は、厚さ方向に積層されている。筐体41は、上部及び4つの側面それぞれに開口部44を有している。二次電池43〜43の正負極端子12、13が突出している側面が、筐体41の開口部44に露出している。組電池42の出力用正極端子45は、帯状をなし、一端が二次電池43〜43のいずれかの正極端子13と電気的に接続され、かつ他端が筐体41の開口部44から突出して筐体41の上部から突き出ている。一方、組電池42の出力用負極端子46は、帯状をなし、一端が二次電池43〜43のいずれかの負極端子12と電気的に接続され、かつ他端が筐体41の開口部44から突出して筐体41の上部から突き出ている。
第3の実施形態に係る電池パックの別の例を図9および図10を参照して詳細に説明する。図9は、第3の実施形態に係る他の例の電池パックの分解斜視図である。図10は、図9の電池パックの電気回路を示すブロック図である。
扁平型の二次電池から構成される複数の単位セル51は、外部に延出した負極端子52および正極端子53が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ54で締結することにより組電池55を構成している。これらの単位セル51は、図10に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板56は、負極端子52および正極端子53が延出する単位セル51側面と対向して配置されている。プリント配線基板56には、図10に示すようにサーミスタ57、保護回路58及び通電用の外部端子59が搭載されている。なお、組電池55と対向するプリント配線基板56の面には組電池55の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
正極リード60は、組電池55の最下層に位置する正極端子53に接続され、その先端はプリント配線基板56の正極コネクタ61に挿入されて電気的に接続されている。負極リード62は、組電池55の最上層に位置する負極端子52に接続され、その先端はプリント配線基板56の負極側コネクタ63に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ61、63は、プリント配線基板56に形成された配線64、65を通して保護回路58に接続されている。
サーミスタ57は、単位セル51の温度を検出し、その検出信号は保護回路58に送信される。保護回路58は、所定の条件で保護回路58と通電用の外部端子59との間のプラス配線66aおよびマイナス配線66bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ57の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単位セル51の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単位セル51もしくは組電池55について行われる。個々の単位セル51を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単位セル51中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図9および図10の場合、単位セル51それぞれに電圧検出のための配線67を接続し、これら配線67を通して検出信号が保護回路58に送信される。
正極端子53および負極端子52が突出する側面を除く組電池55の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート68がそれぞれ配置されている。
組電池55は、各保護シート68およびプリント配線基板56と共に収納容器69内に収納される。すなわち、収納容器69の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート68が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板56が配置される。組電池55は、保護シート68およびプリント配線基板56で囲まれた空間内に位置する。蓋70は、収納容器69の上面に取り付けられている。
なお、組電池55の固定には粘着テープ54に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
図9、図10では単位セル51を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続してもよい。或いは、直列接続と並列接続とを組み合わせてもよい。さらに、組み上がった電池パックを直列および/または並列に接続することもできる。
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途としては、大電流での充放電が望まれるものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、鉄道用車両等の車両の車載用、並びに定置用電池としての用途が挙げられる。特に、車載用が好適である。
第3の実施形態に係る電池パックを搭載した自動車等の車両において、電池パックは、例えば車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
以上説明した第3の実施形態の電池パックによれば、第1の実施形態の電池を含むため、貯蔵性能及びサイクル特性に優れた電池パックを提供することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第4の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
第4の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
第4の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
次に、第4の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図11は、第4の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図である。
図11に示す車両200は、車両本体201と、電池パック202とを含んでいる。電池パック202は、第3の実施形態に係る電池パックであり得る。
図11に示す車両200は、四輪の自動車である。車両200としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両を用いることができる。
この車両200は、複数の電池パック202を搭載してもよい。この場合、電池パック202は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
電池パック202は、車両本体201の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている。電池パック202の搭載位置は、特に限定されない。電池パック202は、車両本体201の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック202は、車両200の電源として用いることができる。また、この電池パック202は、車両200の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図12を参照しながら、第4の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図12は、第4の実施形態に係る車両の他の例を概略的に示した図である。図12に示す車両300は、電気自動車である。
図12に示す車両300は、車両本体301と、車両用電源302と、車両用電源302の上位制御手段である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)380と、外部端子(外部電源に接続するための端子)370と、インバータ340と、駆動モータ345とを備えている。
車両300は、車両用電源302を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図12に示す、車両300では、車両用電源302の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源302は、複数(例えば3つ)の電池パック312a、312b及び312cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)311と、通信バス310と、を備えている。
3つの電池パック312a、312b及び312cは、電気的に直列に接続されている。電池パック312aは、組電池314aと組電池監視装置(VTM:Voltage Temperature Monitoring)313aと、を備えている。電池パック312bは、組電池314bと組電池監視装置313bと、を備えている。電池パック312cは、組電池314cと組電池監視装置313cと、を備えている。電池パック312a、312b、及び312cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック312と交換することができる。
組電池314a〜314cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第1の実施形態に係る二次電池である。組電池314a〜314cは、それぞれ、正極端子316及び負極端子317を通じて充放電を行う。
電池管理装置311は、車両用電源302の保全に関する情報を集めるために、組電池監視装置313a〜313cとの間で通信を行い、車両用電源302に含まれる組電池314a〜314cに含まれる単電池の電圧、及び温度などに関する情報を収集する。
電池管理装置311と組電池監視装置313a〜313cとの間には、通信バス310が接続されている。通信バス310は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス310は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置313a〜313cは、電池管理装置311からの通信による指令に基づいて、組電池314a〜314cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源302は、正極端子316と負極端子317との接続を入り切りするための電磁接触器(例えば図12に示すスイッチ装置333)を有することもできる。スイッチ装置333は、組電池314a〜314cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図示せず)、及び電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフされるリレー回路(図示せず)を備えている。
インバータ340は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ340の3相の出力端子は、駆動モータ345の各3相の入力端子に接続されている。インバータ340は、電池管理装置311あるいは車両全体動作を制御するための車両ECU380からの制御信号に基づいて、出力電圧を制御する。
駆動モータ345は、インバータ340から供給される電力により回転する。この回転は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両300は、回生ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構は、車両300を制動した際に駆動モータ345を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ340に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、車両用電源302に入力される。
車両用電源302の負極端子317には、接続ラインL1の一方の端子が、電池管理装置311内の電流検出部(図示せず)を介して接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ340の負極入力端子に接続されている。
車両用電源302の正極端子316には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装置333を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ340の正極入力端子に接続されている。
外部端子370は、電池管理装置311に接続されている。外部端子370は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU380は、運転者などの操作入力に応答して他の装置とともに電池管理装置311を協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置311と車両ECU380との間では、通信線により、車両用電源302の残容量など、車両用電源302の保全に関するデータ転送が行われる。
第4の実施形態に係る車両は、第3の実施形態に係る電池パックを具備している。即ち、貯蔵性能及びサイクル特性に優れた電池パックを備えているため、第4の実施形態に係る車両は貯蔵性能及びサイクル特性に優れており、且つ電池パックが寿命性能に優れているため、信頼性が高い車両を提供することができる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態によると、定置用電源が提供される。この定置用電源は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。なお、この定置用電源は、第3の実施形態に係る電池パックの代わりに、第2の実施形態に係る組電池又は第1の実施形態に係る電池を搭載していてもよい。
第5の実施形態に係る定置用電源は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、第5の実施形態に係る定置用電源は、長寿命を実現することができる。
図13は、第5実施形態に係る定置用電源を含むシステムの一例を示すブロック図である。図13は、第3の実施形態に係る電池パック40A、40Bの使用例として、定置用電源112、123への適用例を示す図である。図13に示す一例では、定置用電源112,123が用いられるシステム110が示される。システム110は、発電所111、定置用電源112、需要家側電力系統113及びエネルギー管理システム(EMS)115を備える。また、システム110には、電力網116及び通信網117が形成され、発電所111、定置用電源112、需要家側電力系統113及びEMS115は、電力網116及び通信網117を介して、接続される。EMS115は、電力網116及び通信網117を活用して、システム110全体を安定化させる制御を行う。
発電所111は、火力及び原子力等の燃料源によって、大容量の電力を生成する。発電所111からは、電力網116等を通して電力が供給される。また、定置用電源112には、電池パック40Aが搭載される。電池パック40Aは、発電所111から供給される電力等を蓄電できる。また、定置用電源112は、電池パック40Aに蓄電された電力を、電力網116等を通して供給できる。システム110には、電力変換装置118が設けられる。電力変換装置118は、コンバータ、インバータ及び変圧器等を含む。したがって、電力変換装置118は、直流と交流との間の変換、互いに対して周波数が異なる交流の間の変換、及び、変圧(昇圧及び降圧)等を行うことができる。このため、電力変換装置118は、発電所111からの電力を、電池パック40Aへ蓄電可能な電力に変換できる。
需要家側電力系統113には、工場用の電力系統、ビル用の電力系統、及び、家庭用の電力系統等が、含まれる。需要家側電力系統113は、需要家側EMS121、電力変換装置122及び定置用電源123を備える。定置用電源123には、電池パック40Bが搭載される。需要家側EMS121は、需要家側電力系統113を安定化させる制御を行う。
需要家側電力系統113には、発電所111からの電力、及び、電池パック40Aからの電力が、電力網116を通して供給される。電池パック40Bは、需要家側電力系統113に供給された電力を蓄電できる。また、電力変換装置121は、電力変換装置118と同様に、コンバータ、インバータ及び変圧器等を含む。したがって、電力変換装置121は、直流と交流との間の変換、互いに対して周波数が異なる交流の間の変換、及び、変圧(昇圧及び降圧)等を行うことができる。このため、電力変換装置121は、需要家側電力系統113に供給された電力を、電池パック40Bへ蓄電可能な電力に変換できる。
なお、電池パック40Bに蓄電された電力は、例えば、電気自動車等の車両の充電等に用いることができる。また、システム110には、自然エネルギー源が設けられてもよい。この場合、自然エネルギー源は、風力及び太陽光等の自然エネルギーによって、電力を生成する。そして、発電所111に加えて自然エネルギー源からも、電力網116を通して、電力が供給される。
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に掲載される実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下の手順で電池を作製した。
<正極の作製>
以下のようにして正極を作製した。
正極活物質としてLiMn(5g)、導電剤としてアセチレンブラック(0.25g)、及び、結着剤(バインダー樹脂)としてPVDF分散液(固形分率8%のNMP溶液, 6.25g)を混練機を用いて3分間混合して、粘稠性スラリーを得た。このスラリーを、Ti箔の片面上に塗布した。その後、120℃で溶媒を留去して積層体を得た。次いで、この積層体を、ロールプレスを用いて、圧延した。その後、この積層体を乾燥させた後、直径10mmの円形に打ち抜いた。得られた正極の目付は、116g/mであった。
<負極の作製>
負極活物質としてLiTi12(10g)、導電剤としてグラファイト(1g)、結着剤(バインダー樹脂)としてPTFE分散液(固形分40重量%, 1g)、及び、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)8gを混練機を用いて3分間混合して、スラリーを得た。このスラリーを、Zn箔の片面上に塗布した。その後、120℃で溶媒を留去して積層体を得た。次いで、この積層体を、ロールプレスを用いて、圧延した。その後、この積層体を乾燥させた後、直径10mmの円形に打ち抜いた。得られた負極の目付は、35g/mであった。
<水系電解質の調整>
正極側水系電解質(第1水系電解質)及び負極側水系電解質(第2水系電解質)、セパレータに含浸させる水系電解質(第3水系電解質)を表1記載の第1、第2及び第3水系電解質の塩濃度、緩衝剤を用いて調整した。
<セパレータの作製>
無機固体粒子としてのLATP(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43)と、高分子としてのポリビニルブチラール(PVB)とを、溶媒としてのNMPに分散させて固体電解質膜形成用スラリーを調製した。LATPとPVBとの混合比(質量比)は、9:1であった。調製したスラリーを、多孔質自立膜としての不織布(厚さ15μm)の両面上に塗布、乾燥して積層体を得た。この積層体を、130℃での熱プレスに供してセパレータを作製した。
<試験用電池の作製>
プラスチック板上に、アルミニウム板を固定し、その上に負極を固定した。別のプラスチック板上にTi板を固定し、その上に正極を固定した。負極の上に、作製した負極側水系電解質を滴下し、その上にあらかじめ第3水系電解質を含浸させたセパレータを置き、密着させた。セパレータの逆側に、正極側水系電解質を滴下し、その上から正極を置いて密着させ、さらにねじで固定した。
このように作製した電池に対して以下の測定を行った。
<浸透圧測定>
定電流充放電試験を終えた電池の浸透圧を測定した。水系電解質の溶媒の体積V(m)、水系電解質での溶質の物質量(全モル数)をn(mol)、気体定数をR(m・kg/(s・K・mol))、水系電解質の絶対温度をT(K)とし、浸透圧(N/m)を算出した。その結果は表8に示した。
<透気係数測定>
電池から分解し、セパレータを電池の他の部品から分離した。セパレータは、純水で両面を洗い流した後、純水に浸漬させて48時間以上放置した。その後、さらに純水で両面を洗い流し、100℃の真空乾燥炉にて48時間以上乾燥させた後に、透気係数の測定を行った。このように取り出したセパレータの4箇所で、セパレータの厚さ(m)を測定した。測定個所4点それぞれで、直径10mmの孔が開いた一対のステンレス板でセパレータを挟み込み、一方のステンレス板の孔から空気を圧力pで送り込む。圧力pは1000Pa、2500Pa、4000Pa及び6000Paを用いた。そして、他方のステンレス板の孔から漏れる空気の気体量Qを測定した。孔の面積(25πmm)が測定面積Aとし、粘性係数σとして0.000018Pa・sを用いた。気体量Qは、100秒の間に孔から漏れる量δ(m)を測定し、測定された量δを100で割ることにより算出した。
測定した4箇所について圧力pに対する気体量Qをプロットし、直線フィッティング(最小二乗法)によって圧力pに対する気体量Qの傾き(dQ/dp)を算出した。そして、算出した傾き(dQ/dp)に(σ・L)/Aを乗算し、透気係数KTを算出した。そして、4箇所の中で透気係数が最も低い値になる箇所での値を、セパレータの透気係数とし、表8に記載した。
<定電流充放電試験>
各実施例および各比較例について、試験用電池作製後、待機時間無しで速やかに試験を開始した。充電及び放電のいずれも0.5Cレートで行った。また、充電時は、電流値が0.25Cになるまで、充電時間が130分間になるまで、充電容量が170mAh/gになるまで、のいずれか早いものを終止条件とした。放電時は130分後を終止条件とした。
上記充電を1回行い、上記放電を1回行うことを充放電の1サイクルとし、50サイクル目の放電容量を100%とし、サイクルを繰り返して放電容量が50サイクルに対して80%となるサイクル数をサイクル特性とした。また、50サイクル目の充電容量と放電容量から以下の方法でクーロン効率を算出した。
クーロン効率(%)=100×(放電容量/充電容量)
実施例2−87は、表3−表7に記載の通りにそれぞれ正極側水系電解質、負極側水系電解質及び第3水系電解質の塩の種類、濃度及びpH、第3水系電解質に含める緩衝剤の種類及びpKaに調整し、実施例1と同様に電池を作製し、浸透圧、透気係数、サイクル特性、クーロン効率の評価を行った。評価の結果は表8に記載した。評価結果は表8−12に記載した。表8−12には正極側水系電解質、負極側水系電解質及び第3水系電解質の浸透圧(N/m)、セパレータの透気係数(m)、クーロン効率(%)、サイクル特性(回)を記載した。表中の「‐」は加えていないことを示している。
実施例53にて用いたセパレータは、LATPとPVBとの混合比(質量比)が、8:2であることを除いて、実施例1のセパレータと同様に作製したものであった。
実施例54にて用いたセパレータは、LATPとPVBとの混合比(質量比)が、9.25:0.75であることを除いて、実施例1のセパレータと同様に作製したものであった。
実施例55にて用いたセパレータは、LATPとPVBとの混合比(質量比)が、9.5:0.5であることを除いて、実施例1のセパレータと同様に作製したものであった。
実施例84及び85にて用いたセパレータは、いずれも、LATPとPVBとの混合比(質量比)が、8.5:1.5であることを除いて、実施例1のセパレータと同様に作製したものであった。
実施例86及び87にて用いたセパレータは、いずれも、LATPとPVBとの混合比(質量比)が、9.25:0.75であることを除いて、実施例1のセパレータと同様に作製したものであった。
実施例2−52、56−83、並びに、比較例1及び2にて用いたセパレータは、それぞれ、実施例1で作製したものと同一のセパレータであった。
Figure 2021153039
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実施例1-87に比べると、第1水系電解質と、第2水系電解質、第3水系電解質の塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧が同じ比較例1、2は、クーロン効率及びサイクル特性が低下したことが分かる。これら塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧が全て同じ場合、第1、第2水系電解質は同じものを使っていることを意味し、正極の酸化耐性及び負極の還元耐性どちらも同時に満たす水系電解質を用いる必要があるが、これは困難である。そのため、副反応による酸化及び還元によりクーロン効率及びサイクル特性は低下する。特にpHについては、プルーベ図に知られているように、水の酸化還元の熱力学的な安定領域はpHに依存せず一定で1.23 Vであることが知られている。第1、第2水系電解質pHが同じ場合は、熱力学的な水の安定領域を1.23 V以上にすることができないため、クーロン効率及びサイクル特性が低下する。
実施例1及び2では、第3水系電解質は第1と第2水系電解質と異なる塩濃度である。塩濃度は、第1水系電解質<第3水系電解質<第2水系電解質である。実施例3−12では、第3水系電解質は第1と第2水系電解質とは異なるpHである。pHは第1水系電解質<第3水系電解質<第2水系電解質である。このようになっていることで、第1水系電解質と第3水系電解質との浸透圧を近く及び第2水系電解質と第3水系電解質との浸透圧を近くすることができるため、第1水系電解質と第2水系電解質の混合を防ぐことができ、クーロン効率及びサイクル特性させることができた。
実施例13-15では、第3水系電解質は、第1と第2水系電解質と異なる塩を用いている。これにより塩のアニオンが酸化または還元しにくい組み合わせを実現できることで副反応を抑制できるため、比較例よりもクーロン効率及びサイクル特性が向上する。
実施例16-19においては、第1、第2及び第3の電解質のpHがそれぞれ異なっており、第1水系電解質にpHの低い水系電解質を用いることで電解質の水の電気分解による酸素発生を抑制し、第2水系電解質にpHの高い水系電解質を用いることで、水系電解質の水の電気分解による水素発生を抑制できる。これらの第1、第2水系電解質の混合を抑制するために第3水系電解質を用いており、第1電解質と第2電解質のpHの間に調整することで緩衝溶液的な役割を果たすことができる。こうして比較例よりもクーロン効率及びサイクル特性が向上した。
実施例21-29、31,32,34、35については、浸透圧を変えることで比較例よりもクーロン効率及びサイクル特性が向上している。これは同じ塩を用いた場合、正極及び負極での酸化、還元反応の少ないものを選ぶ必要があり、副反応を抑制する添加剤の量は、正極と負極で異なる反応が起こるため、異なる濃度と種類で用いることになる。そのため、浸透圧差が生じ、その浸透圧差を緩和するために、浸透圧は第1>第3>第2または第1<第3<第2の関係にすることで、塩の種類が異なっていても、クーロン効率及びサイクル特性が向上させることができた。
実施例30、33のように、浸透圧が同じであったとしても、第1、第2、第3のうち一つの塩の種類を変えることで、正極及び負極での酸化、還元に強いアニオン種を選択できるため、比較例よりもクーロン効率及びサイクル特性が向上する。
実施例36-52のように、緩衝液を用いることで更に水系電解質同士の混合を防ぎ、クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。これは緩衝液によりpHの変動が吸収できるため、液混合によるpHの変動を抑制できるためである。
実施例53-55のようにセパレータの透気係数が1.0×10−15以下の範囲においては正極と負極の水系電解質を分けることができ、クーロン効率及びサイクル特性の向上がみられる。透気係数が1×10−14より大きいと、正極と負極の水系電解質が混合するため、性能向上の効果を得ることができず、透気係数が低いほど正極と負極の電解質の混合を防ぐことでき、クーロン効率及びサイクル特性は向上する。
実施例55-87は第3水系電解質の塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧が第1水系電解質及び第2水系電解質と少なくとも1つ異なる。そのため、クーロン効率、つまり貯蔵性能の向上及びサイクル特性の向上がみられる。
以上に説明した少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、電池が提供される。この電池は、実施形態の電池は、正極と、正極に保持される第1水系電解質と、負極と、負極に保持される第2水系電解質と、正極と負極との間に介在する少なくとも1枚のセパレータと、セパレータに保持される第3水系電解質と、を具備し、第3水系電解質が備える塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧のうち、少なくとも1つが第1水系電解質及び第2水系電解質と異なる。このような構成を持つことにより、貯蔵性能及びサイクル特性に優れた電池を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…電極群、2…容器(外装部材)、3…正極、3a…正極集電体、3b…正極層、4…負極、4a…負極集電体、4b…負極層、5…セパレータ、51…固体電解質層、52…多孔質自立膜、53…複合固体電解質膜、6…正極リード、7…負極リード、8…正極導電タブ、9…負極導電タブ、10…封口板、11…絶縁部材、12…負極端子、13…正極端子、31…組電池、32〜32、43〜43…二次電池、33…リード、40、40A、40B…電池パック、41…筐体、42…組電池、44…開口部、45…出力用正極端子、46…出力用負極端子、51…単位セル、55…組電池、56…プリント配線基板、57…サーミスタ、58…保護回路、59…通電用の外部端子、110…システム、111…発電所、112…定置用電源、113…需要家側電力系統、116…電力網、117…通信網、118…電力変換装置、121…電力変換装置、122…電力変換装置、123…定置用電源、200…車両、201…車両本体、202…電池パック、300…車両、301…車両本体、302…車両用電源、310…通信バス、311…電池管理装置、312a〜312c…電池パック、313a〜313c…組電池監視装置、314a〜314c…組電池、316…正極端子、317…負極端子、333…スイッチ装置、340…インバータ、345…駆動モータ、370…外部端子、380…車両ECU、L1、L2…接続ライン、W…駆動輪、AE…水系電解質。

Claims (13)

  1. 正極と、前記正極に保持される第1水系電解質と、
    負極と、前記負極に保持される第2水系電解質と、
    前記正極と前記負極との間に介在する少なくとも1層のセパレータと、
    前記セパレータのうち少なくとも1枚に保持される第3水系電解質と、
    を具備し、
    前記第3水系電解質が備える塩の種類、塩の濃度、pH及び浸透圧のうち、少なくとも1つが第1水系電解質及び第2水系電解質と異なる電池。
  2. 前記第1水系電解質のpHと、前記第2水系電解質のpHと、前記第3水系電解質のpHの関係は、
    前記第1水系電解質pH<前記第3水系電解質pH<前記第2水系電解質pHとなる請求項1記載の電池。
  3. 前記第1水系電解質の浸透圧と、前記第2水系電解質の浸透圧と、前記第3水系電解質の浸透圧の関係は、
    前記第1水系電解質の浸透圧<前記第3水系電解質の浸透圧<前記第2水系電解質の浸透圧または、前記第1水系電解質の浸透圧>前記第3水系電解質の浸透圧>前記第2水系電解質の浸透圧のいずれかとなる請求項1又は2に記載の電池。
  4. 前記第3水系電解質は、緩衝剤をさらに含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電池。
  5. 前記緩衝剤の酸解離定数pKaと、前記第1水系電解質のpHと、前記第2水系電解質のpHとの関係は、
    前記第1水系電解質に含まれる電解質のpH<前記緩衝剤のpKa<前記第2水系電解質のpHとなる請求項4に記載の電池。
  6. 前記セパレータは透気係数が1×10−14以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電池。
  7. 前記負極が備える負極活物質は、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、およびリチウムチタン複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電池。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電池を具備する電池パック。
  9. 通電用の外部端子と、
    保護回路とをさらに含む請求項8に記載の電池パック。
  10. 複数の前記電池を具備し、前記電池が直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている請求項8又は9に記載の電池パック。
  11. 請求項8ないし10のいずれか1項に記載の電池パックを搭載した車両。
  12. 前記電池パックは、前記車両の動力の回生エネルギーを回収するものである請求項11に記載の車両。
  13. 請求項8ないし10のいずれか1項に記載の電池パックを具備した定置用電源。
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