JP2021143241A - 導電性高分子水系分散液、並びに導電性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

導電性高分子水系分散液、並びに導電性フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水溶性ポリマーを含みながらも耐水性が向上された導電層を備えた導電性フィルムと、これを容易に製造できる製造方法、並びに、その製造方法において使用する導電性高分子水系分散液を提供する。【解決手段】π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、ホウ酸と、ヒドロキシ基を有する水溶性ポリマーと、水と、を含有する、導電性高分子水系分散液。前記水溶性ポリマーはポリビニルアルコールを含むことが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性高分子水系分散液、並びに導電性フィルム及びその製造方法に関する。
主鎖がπ共役系で構成されているπ共役系導電性高分子は、アニオン基を有するポリアニオンがドープすることによって導電性複合体を形成し、水に対する分散性が生じる。導電性複合体を含有する導電性高分子水系分散液をフィルム基材等に塗工することにより、導電層を備えた導電性フィルムを製造することができる。
特許文献1には、導電性フィルムの導電層にポリビニルアルコールを添加し、その延伸性を向上させる方法が開示されている。
特開2016−047501号公報
しかし、ポリビニルアルコール等のヒドロキシ基を有する水溶性ポリマーを含む導電層には、耐水性が不十分であるという問題がある。
本発明は、水溶性ポリマーを含みながらも耐水性が向上された導電層を備えた導電性フィルムと、これを容易に製造できる製造方法、並びに、その製造方法において使用する導電性高分子水系分散液を提供する。
[1] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、ホウ酸と、ヒドロキシ基を有する水溶性ポリマーと、水と、を含有する、導電性高分子水系分散液。
[2] 前記水溶性ポリマーはポリビニルアルコールを含む、[1]に記載の導電性高分子水系分散液。
[3] 前記ポリビニルアルコールは、けん化度が80%以上であり、重合度が300以上である、[2]に記載の導電性高分子水系分散液。
[4] 前記ポリビニルアルコールの100質量部に対して、前記ホウ酸が1質量部以上500質量部以下で含まれる、[2]又は[3]に記載の導電性高分子水系分散液。
[5] 前記ポリビニルアルコールの100質量部に対して、前記導電性複合体が1質量部以上300質量部以下で含まれる、[2]〜[4]の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
[6] 前記水溶性ポリマーの含有量が、前記導電性高分子水系分散液の総質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、[1]〜[5]の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
[7] フェノール系酸化防止剤をさらに含む、[1]〜[6]の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
[8] 前記フェノール系酸化防止剤が、ガリック酸、ガリック酸メチル、ガリック酸エチル又はガリック酸プロピルを含む、[7]に記載の導電性高分子水系分散液。
[9] アルコール系溶剤をさらに含む、[1]〜[8]の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
[10] 1気圧における沸点が150℃以上である高沸点溶剤をさらに含む、[1]〜[8]の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
[11] 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、[1]〜[10]の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
[12] 前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、[1]〜[11]の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
[13] フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]〜[12]の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液を塗工し、導電層を形成することを含む、導電性フィルムの製造方法。
[14] 非晶性フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]〜[12]の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液を塗工した塗工フィルムを得る塗工工程と、前記塗工フィルムを加熱して乾燥させると共に延伸させて延伸フィルムを得る延伸工程と、前記延伸フィルムを加熱した後に冷却して非晶性フィルム基材を結晶化させる強度向上化工程と、を有する、導電性フィルムの製造方法。
[15] フィルム基材の少なくとも一方の面に、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体、並びに、ホウ酸とヒドロキシ基を有する水溶性ポリマーとの反応物を含む導電層が備えられた、導電性フィルム。
本発明の導電性高分子水系分散液及びこれを用いた導電性フィルムの製造方法によれば、水溶性ポリマーを含みながらも耐水性が向上された導電層を備えた導電性フィルムを容易に製造できる。
≪導電性高分子水系分散液≫
本発明の第一態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、ホウ酸と、ヒドロキシ基を有する水溶性ポリマーと、水と、を含有する、導電性高分子水系分散液である。
[導電性複合体]
本態様における導電性複合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含む。導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィを用いて測定し、プルラン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるから、充分な導電性を確保できる。
導電性複合体中のポリアニオンにおいては、アニオン基の全てがπ共役系導電性高分子にドープしてはおらず、ドープに関与しない余剰のアニオン基がある。この余剰のアニオン基は親水基であり、アニオン基が修飾されていない導電性複合体の分散性は、水系分散媒においては高く、有機溶剤においては低い。
(導電性複合体の含有量)
導電性高分子水系分散液の総質量に対する、導電性複合体の含有量は、分散性を高める観点から、例えば、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
[ホウ酸]
本態様で用いるホウ酸は、B(OH)の化学式で表されるホウ素のオキソ酸である。
導電性高分子水系分散液中にホウ酸が水溶性ポリマーと共存すると、加熱又は乾燥によりホウ酸が水溶性ポリマーのヒドロキシ基に反応し、水溶性ポリマー同士を架橋することにより、形成する導電層の耐水性を高めることができる。
導電性高分子水系分散液におけるホウ酸の含有量は、水溶性ポリマーの100質量部に対して、1質量部以上500質量部以下が好ましく、10質量部以上300質量部以下がより好ましく、30質量部以上200質量部以下がさらに好ましく、30質量部以上150質量部以下が特に好ましく、30質量部以上50質量部以下が最も好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、形成する導電層の耐水性をより高めることができる。上記範囲の上限値以下であると、形成する導電層の導電性の低下を抑制することができる。
導電性高分子水系分散液の総質量に対する、ホウ酸の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.2質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上2.0質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以上1.5質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以上0.5質量%以下が最も好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、形成する導電層の耐水性をより高めることができる。上記範囲の上限値以下であると、形成する導電層の導電性の低下を抑制することができる。
[水溶性ポリマー]
本態様で用いる水溶性ポリマーはヒドロキシ基を有するポリマーである。
本明細書および特許請求の範囲において、ヒドロキシ基はカルボキシ基及びその塩を含む。また、水溶性とは、25℃の蒸留水に、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上溶解することである。
本態様で用いる水溶性ポリマーは、導電性複合体を構成する前記ポリアニオンとは異なる別のポリマーである。
水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコールの他、ヒドロキシ基を有する公知の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が適用され、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン等にヒドロキシ基が導入された樹脂が挙げられる。
なかでも、導電性フィルムの延伸性を高める観点から、ポリビニルアルコールが好ましい。
ポリビニルアルコール(PVA)のけん化度は、酢酸基とヒドロキシ基の合計数に対するヒドロキシ基の百分率である。ホウ酸による架橋効率を高める観点から、そのけん化度は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。その上限値は100%であるが、ポリビニルアルコールの溶解度を高める観点から、100%未満であることが好ましい。
ポリビニルアルコールの重合度は、原料である酢酸ビニルモノマーが重合により結合した数を表す。形成する導電層の膜強度、延伸性、基材に対する密着性、及び耐水性を高める観点から、その重合度は300以上が好ましく、1000以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましく、2000以上が特に好ましい。重合度の上限値は特に制限されず、粘度や塗工性を勘案して、例えば8000程度が目安として挙げられる。ポリビニルアルコールには、酢酸ビニルモノマーと共重合可能なその他のモノマーに由来するモノマー単位が含まれていてもよい。その他のモノマー単位も上記の重合度にカウントされる。
ここで例示した物性のポリビニルアルコールは市販品として購入可能である。
導電性高分子水系分散液の総質量に対する、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーの含有量は、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.1質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、形成する導電層の膜強度、延伸性、基材に対する密着性、及び耐水性を高めることができる。上記範囲の上限値以下であると、形成する導電層の導電性の低下を抑制することができる。
[シリケート]
本態様の導電性高分子水系分散液にあっては、前述の水溶性ポリマーの代わりに又は水溶性ポリマーとともに、シリケートが含まれていてもよい。シリケートは、ケイ酸エステルである。導電性高分子水系分散液中に含まれるシリケートは、加熱または乾燥により加水分解し、ヒドロキシ基(シラノール基)を有するケイ酸化合物を生成し、さらに脱水縮合により最終的にはシリカを形成する。ケイ酸化合物の脱水縮合物はヒドロキシ基を有し、これらをホウ酸が架橋することにより、形成する導電層の耐水性を高めることができる。
好ましいシリケートとして、下記化学式(I)で表される化合物が挙げられる。
下記化学式(I)で表されるシリケートとしては、例えば、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラメチル、並びにメチル基及びエチル基の少なくとも一方を有するケイ酸オリゴマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
Figure 2021143241
前記式(I)中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基であり、sは、1〜100の整数である。
炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状でもよいし又は分岐鎖状でもよく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
sは1〜50が好ましく、1〜25がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。
ケイ酸オリゴマーとしては、安定性の点から、下記化学式(II)で示される化合物及び下記化学式(III)で示される化合物の少なくとも一方がより好ましい。
Sin−1(OCH2n+2 ・・・(II)
前記式(II)中、nは2以上100以下の整数である。
Sim−1(OCHCH2m+2 ・・・(III)
前記式(III)中、mは2以上100以下の整数である。
本態様において使用されるシリケートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ケイ酸オリゴマーとしては、本態様の導電性高分子水系分散液から形成される導電層の耐水性がより高くなることから、ケイ素原子を1分子内に2つ以上有するケイ酸エステルであることが好ましい。ケイ酸オリゴマーにおける1分子内のケイ素原子の数は、3つ以上であることがより好ましく、4つ以上であることがさらに好ましい。ケイ酸オリゴマーにおける1分子内のケイ素原子の数は、30以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
ケイ酸オリゴマーのSiO単位の含有量はシリケートの総質量に対して40質量%以上70質量%以下であることが好ましく、50質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。ケイ酸オリゴマーのSiO単位の含有量が前記下限値以上であれば、導電性高分子水系分散液から形成される導電層の耐水性がより高くなり、前記上限値以下であれば、導電性高分子水系分散液から形成される導電層の導電性低下を防ぐことができる。
ここで、シリケートのSiO単位の含有量は、シリケートの分子量100質量%に対する、シリケートに含まれるSiO単位(−O−Si−O−単位)の質量の割合のことであり、元素分析により測定できる。シリケートを2種以上使用する場合のSiO単位の含有量は各シリケートのSiO単位含有量の平均値である。
本態様の導電性高分子水系分散液におけるシリケートの好ましい含有量は、シリケートのSiO単位の含有量に応じて適宜選択される。シリケートのSiO単位の含有量が前記好ましい範囲である場合には、シリケートの含有量は、導電性複合体100質量部に対し、SiO単位含有量に換算して1質量部以上100000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上10000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上1000質量部以下であることがさらに好ましい。シリケートの含有量が前記下限値以上であれば、導電性高分子水系分散液から形成される導電層の耐水性を充分に高くでき、前記上限値以下であれば、導電性高分子水系分散液から形成される導電層の導電性低下を防ぐことができる。
本態様の導電性高分子水系分散液の総質量に対する、シリケート成分の合計の固形分濃度は0.25質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下であることがさらに好ましい。ここで、「固形分」とは、水系分散媒を留去した後に残る残留分(不揮発分)のことである。
導電性高分子水系分散液における各成分の合計の固形分濃度が上記範囲であれば、導電性高分子水系分散液を塗工する際に、基材に対して均一に塗工することが容易になり、外観及び導電性が良好な導電層をより容易に形成することができる。
(水系分散媒)
本態様の導電性高分子水系分散液は、水系分散媒を含む。
水系分散媒は、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合液である。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水系分散媒の総質量に対する水の含有量は、50質量%超であり、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。
(水溶性有機溶剤)
水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤である。
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロパノール)、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性高分子水系分散液のフィルム基材に対する塗工性が良好になることから、水溶性有機溶剤としてはアルコール系溶剤又はケトン系溶剤が好ましい。
(高沸点溶剤)
フィルム基材に塗工した導電性高分子水系分散液の塗膜の乾燥が比較的緩やかに進み、ホウ酸による架橋反応が充分に進み、均一な導電層の形成が容易になる観点から、前記水系分散媒は、1気圧(101325パスカル)における沸点が150℃以上である高沸点溶剤を含むことが好ましい。
高沸点溶剤の具体例と、その1気圧における沸点を以下に示す。なお、沸点は小数点以下を四捨五入して示す。
高沸点のアルコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール(沸点198℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、1,3−プロパンジオール(沸点214℃)、1,4−ブタンジオール(沸点230℃)等の多価アルコールが挙げられる。
高沸点のエーテル系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールジメチルエーテル(沸点175℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点188℃)等が挙げられる。
高沸点のケトン系溶剤としては、例えば、メチルアミルケトン(沸点151℃)、ジアセトンアルコール(沸点168℃)等が挙げられる。
高沸点の窒素原子含有溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン(沸点202℃)、ジメチルアセトアミド(沸点165℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(沸点153℃)等が挙げられる。
高沸点の硫黄原子含有溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)等が挙げられる。
以上で例示した高沸点溶剤の中でも、前記塗膜の基材に対する優れた接着性と導電性が得られることから、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、エチレングリコール(沸点198℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、1,3−プロパンジオール(沸点214℃)、又は1,4−ブタンジオール(沸点230℃)が好ましく、プロピレングリコールがより好ましい。
高沸点溶剤の含有量は、導電性複合体100質量部に対して、10質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、100質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、1000質量部以上3000質量部以下であることがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であれば、高沸点溶剤の添加による上記効果が充分に発揮され、上記範囲の上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
高沸点溶剤の含有量は、導電性高分子水系分散液の総質量に対して、1質量%以上25質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましく、10質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であれば、高沸点溶剤の添加による上記効果が充分に発揮され、上記範囲の上限値以下であれば、導電性高分子水系分散液の粘度が過剰に高くなることを防止できる。
(酸化防止剤)
本態様の導電性高分子水系分散液から形成される導電層の酸化劣化を防ぐために、導電性高分子水系分散液には酸化防止剤が含まれていてもよい。
酸化防止剤のなかでも、導電層の酸化防止性が高いことから、フェノール系酸化防止剤が好ましい。フェノール系酸化防止剤のなかでは、ガリック酸(没食子酸)及びガリック酸のエステルのうち少なくとも一方が好ましい。ガリック酸及びガリック酸のエステルは、高い酸化防止性能を発揮すると共に導電性を向上させる効果も有する。
ガリック酸のエステルとしては、例えば、ガリック酸メチル、ガリック酸エチル、ガリック酸プロピルが挙げられる。
酸化防止剤の含有量は、導電性複合体100質量部に対して10質量部以上1000質量部以下が好ましく、20質量部以上100質量部以下がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であれば、導電層の酸化をより防止することができる。
上記範囲の上限値以下であれば、導電層の導電性の低下を防ぐことができる。
酸化防止剤の含有量は、導電性高分子水系分散液の総質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であれば、導電層の酸化をより防止することができる。
上記範囲の上限値以下であれば、導電層の導電性の低下を防ぐことができる。
(その他の添加剤)
導電性高分子水系分散液には、その他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、ホウ酸、水溶性有機溶剤、高沸点溶剤、及びフェノール系酸化防止剤以外のものである。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
導電性高分子水系分散液が前記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
[導電性高分子水系分散液の製造方法]
第一態様の導電性高分子水系分散液は、各成分を常法により混合して得られる。ホウ酸は水溶性ポリマーを架橋させる成分であるので、架橋が不意に進行しないように、ホウ酸以外の各成分を先に混合し、よく分散した後で、ホウ酸を最後に添加することが好ましい。
<導電性フィルムの製造方法>
本発明の第二態様の導電性フィルムの製造方法は、フィルム基材の少なくとも一方の面に、第一態様の導電性高分子水系分散液を塗工し、塗膜を備えた塗工フィルムを得て、塗膜を乾燥し、導電層を形成することを含む。
塗工フィルムを延伸せずに塗膜を乾燥して導電性フィルムを得てもよいし、塗工フィルムを延伸しながら塗膜を乾燥して導電性フィルムを得てもよいし、塗工フィルムを乾燥してから延伸して導電性フィルムを得てもよい。
(フィルム基材)
フィルム基材としては、例えば、プラスチックフィルムが挙げられる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂のなかでも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
フィルム基材用の樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。後段で延伸する場合には非晶性フィルムが好ましい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、形成する導電層の密着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
フィルム基材の厚さは、5μm以上1000μm以下が好ましく、10μm以上500μm以下がより好ましく、20μm以上200μm以下がさらに好ましい。フィルム基材の厚さが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の厚さは、任意の10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
[塗工工程]
塗工工程は、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に、第一態様の導電性高分子水系分散液を塗工した塗工フィルムを得る工程である。
導電性高分子含有液をフィルム基材に塗工(塗布)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
導電性高分子水系分散液のフィルム基材への塗布量は特に制限されないが、導電性と膜強度を勘案して、固形分として、0.01g/m以上10.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
塗工した導電性高分子水系分散液からなる塗膜に含まれる水系分散媒を加熱して乾燥させるとともに、塗膜に含まれる水溶性ポリマー同士をホウ酸により架橋し、硬化させることにより、目的の導電層が形成された導電性フィルムを得ることができる。この際、塗膜に高沸点溶剤が含まれていると、塗膜の乾燥が比較的遅くなるので、架橋反応がより進行し易くなる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
[延伸工程]
延伸工程は、前記塗工フィルムを加熱して乾燥させると共に延伸させて延伸フィルムを得る工程である。
塗工フィルムを加熱して乾燥させると共に延伸させることにより、塗工面積を小さくしても大面積の導電性フィルムを得ることができ、導電性フィルムの生産性が向上する。
延伸工程では、塗工フィルムを乾燥させると同時に延伸させてもよいし、乾燥の後に延伸させてもよい。
延伸は一軸延伸でもよいし、二軸延伸でもよいが、非晶性フィルム基材として一軸延伸フィルムを用いた場合には、延伸されている方向とは垂直な方向に延伸することが好ましい。例えば、長手方向に沿って延伸された一軸延伸フィルムを非晶性フィルム基材として用いた場合には、幅方向に沿って延伸することが好ましい。
塗工フィルムの延伸倍率は2倍以上20倍以下にすることが好ましく、3倍以上15倍以下にすることがより好ましく、4倍以上10倍以下にすることがさらに好ましい。
加熱法としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。
延伸工程における加熱温度は、非晶性フィルム基材の結晶化温度未満にし、50℃以上120℃以下の範囲内であることが好ましい。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。延伸工程における加熱温度を、非晶性フィルム基材の結晶化温度より高くすると、フィルムが軟化しすぎて延伸が困難になることがある。
[強度向上化工程]
強度向上化工程は、前記延伸フィルムを加熱した後に冷却して非晶性フィルム基材を結晶化させる工程である。
強度向上化工程における延伸フィルムの加熱温度は、非晶性フィルム基材の結晶化温度以上であり、200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることがさらに好ましい。延伸フィルムの加熱温度が前記下限値以上であれば、非晶性フィルム基材を充分に結晶化できる。一方、フィルム基材の溶融を防ぐ観点から、延伸フィルムの加熱温度は300℃以下であることが好ましい。
200℃以上の加熱で結晶化しやすいことから、非晶性フィルム基材は非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
200℃以上に加熱すると、フィルム基材を構成する非晶性ポリエチレンテレフタレートの少なくとも一部が融解し始める。その融解後、ポリエチレンテレフタレートの結晶化温度未満の温度まで冷却した際には、融解した一部の非晶性ポリエチレンテレフタレートが結晶化すると共に固化する。これにより、フィルム基材を結晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムにすることができる。結晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムからなるフィルム基材は、引張強度等の機械的物性に優れる。
強度向上化工程においては、延伸フィルムの加熱時に、その熱を利用して、塗膜に含まれる水溶性ポリマー同士を架橋させてもよい。
加熱後の冷却方法としては特に制限はなく、室温の空気を送風してもよいし、放冷でもよい。非晶性フィルム基材が結晶化しやすいことから、冷却の際の降温速度は遅い方が好ましく、具体的には、200℃/分以下であることが好ましい。
(作用効果)
本態様の導電性フィルムの製造方法では、塗膜にポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーが含まれるので、延伸性が高い。また、形成した導電層に含まれる水溶性ポリマーは、ホウ酸によって架橋されているので、導電層の耐水性が向上している。
したがって、本態様の導電性フィルムの製造方法によれば、導電層の耐水性が高く、機械的強度も向上した導電性フィルムが得られる。
<導電性フィルム>
本発明の第三態様は、フィルム基材の少なくとも一方の面に、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体、並びに、ホウ酸とヒドロキシ基を有する水溶性ポリマーとの反応物を含む導電層が備えられた、導電性フィルムである。
本態様の導電性フィルムは、第二態様の製造方法によって製造することができる。
本態様の導電性フィルムのフィルム基材の説明は、第二態様のフィルム基材の説明と同じである。
(導電層)
導電層の厚さとしては、10nm以上50000nm以下であることが好ましく、50nm以上25000nm以下であることがより好ましく、100nm以上10000nm以下であることがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、上限値以下であれば、フィルム基材に対する密着性がより優れる。
導電層の厚さは、任意の10箇所について断面を測定し、その測定値を平均した値である。
本態様の導電性フィルムの導電層は、良好な導電性と耐光性を有する目安として、例えば、1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下の表面抵抗値を有することが好ましい。
(作用効果)
本態様の導電性フィルムの導電層には、ホウ酸によって架橋された水溶性ポリマーが含まれており、導電層の耐水性が向上している。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000mlの溶媒を除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
その重量平均分子量を測定した結果、分子量は30万であった。重量平均分子量の測定は、GPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)システムを用いて、昭和電工株式会社製プルランを標準物質として実施した。
(製造例2)PEDOT−PSS水系分散液の製造
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た44.0gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。得られた混合溶液を20℃に保ち、攪拌しながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。次に、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を5回繰り返し、固形分濃度1.2質量%、PEDOT:PSS=1:3(質量比)の青色のPEDOT−PSS水系分散液を得た。
(製造例3)
製造例2で得たPEDOT−PSS水系分散液41.4g(固形分0.497g)に、プロピレングリコールを13.7g、ガリック酸メチルを0.3g、ポリビニルアルコールとしてクラレポバールPVA217(クラレ株式会社製、けん化度88%、重合度1700)を1.0g、及びイオン交換水を43.6g添加し、導電性複合体を含む予備分散液Aを得た。
[実施例1]
予備分散液A100gにホウ酸を添加し、ホウ酸濃度0.3質量%の導電性高分子水系分散液を得た。これをバーコーター(No.4)で非晶性PETフィルムに塗工し、70℃で1分間乾燥した後、二軸延伸装置を用いて100℃、1500mm/分の条件で4倍に延伸した。続いて200℃で1分間加熱した後、ゆっくりと冷却して導電性フィルムを得た。
[実施例2]
予備分散液A100gにホウ酸を添加し、ホウ酸濃度0.6質量%の導電性高分子水系分散液を得た。これを用いた以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
[実施例3]
予備分散液A100gにホウ酸を添加し、ホウ酸濃度1.0質量%の導電性高分子水系分散液を得た。これを用いた以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
[実施例4]
予備分散液A100gにホウ酸を添加し、ホウ酸濃度2.0質量%の導電性高分子水系分散液を得た。これを用いた以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
[実施例5]
製造例3におけるポリビニルアルコールについてクラレポバールPVA217から、JポバールJP-03(日本酢ビポバール株式会社製、けん化度88%、重合度300)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
[実施例6]
製造例3におけるポリビニルアルコールについてクラレポバールPVA217から、JポバールJF-03(日本酢ビポバール株式会社製、けん化度99%、重合度300)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
[実施例7]
製造例3におけるポリビニルアルコールについてクラレポバールPVA217から、JポバールJP-45(日本酢ビポバール株式会社製、けん化度88%、重合度4500)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
[実施例8]
製造例3におけるポリビニルアルコールについてクラレポバールPVA217から、JポバールJC-33(日本酢ビポバール株式会社製、けん化度99%、重合度3300)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
[比較例1]
製造例2で得たPEDOT−PSS水系分散液にホウ酸を添加せず、そのまま用いた以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
<評価>
[導電層の外観評価]
各例の導電性フィルムの導電層を目視により観察して評価した。評価結果を表1に示す。導電層に割れがなかったものは延伸性が高いものである。
[耐水試験]
各例の導電性フィルムの導電層の表面を、水を含ませたガーゼで約10kPaの荷重をかけながら10往復擦った。その後、導電層の表面抵抗値を測定した。測定結果と、水を含ませたガーゼで擦る処理の前と後の表面抵抗値の変化率を表1に示す。変化倍率が小さいほど、耐水性に優れる。
[表面抵抗値の測定方法]
抵抗率計(三菱化学アナリテック社製ハイレスタ)を用い、印加電圧10V、印加時間10秒の条件で測定した。なお、表中の表面抵抗の単位は(Ω/sq.)であり、「1.5E+05」は「1.5×10」を意味し、他も同様である。表中の「OVER」は抵抗率計の測定上限値を超えたことを意味する。
Figure 2021143241
表1の結果から、ホウ酸を含む導電性高分子水系分散液を用いて形成した導電層は優れた耐水性を示すことが明らかである。
PVAのけんか度が同じである実施例1、5、7を比較すると、PVAの分子量が高い方が、耐水性に優れていることが分かる。
PVAの分子量が同じである実施例5、6を比較すると、PVAのけんか度が高い方が、耐水性に優れていることが分かる。
PVAの含有量が同じである実施例1〜4を比較すると、ホウ酸の含有量が過多であると、耐水性が低下することが分かる。実施例2,3の変化倍率は、3桁のオーダーであることから概ね同等といえる。

Claims (15)

  1. π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、ホウ酸と、ヒドロキシ基を有する水溶性ポリマーと、水と、を含有する、導電性高分子水系分散液。
  2. 前記水溶性ポリマーはポリビニルアルコールを含む、請求項1に記載の導電性高分子水系分散液。
  3. 前記ポリビニルアルコールは、けん化度が80%以上であり、重合度が300以上である、請求項2に記載の導電性高分子水系分散液。
  4. 前記ポリビニルアルコールの100質量部に対して、前記ホウ酸が1質量部以上500質量部以下で含まれる、請求項2又は3に記載の導電性高分子水系分散液。
  5. 前記ポリビニルアルコールの100質量部に対して、前記導電性複合体が1質量部以上500質量部以下で含まれる、請求項2〜4の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
  6. 前記水溶性ポリマーの含有量が、前記導電性高分子水系分散液の総質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項1〜5の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
  7. フェノール系酸化防止剤をさらに含む、請求項1〜6の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
  8. 前記フェノール系酸化防止剤が、ガリック酸、ガリック酸メチル、ガリック酸エチル又はガリック酸プロピルを含む、請求項7に記載の導電性高分子水系分散液。
  9. アルコール系溶剤をさらに含む、請求項1〜8の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
  10. 1気圧における沸点が150℃以上である高沸点溶剤をさらに含む、請求項1〜8の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
  11. 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1〜10の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
  12. 前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項1〜11の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液。
  13. フィルム基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜12の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液を塗工し、導電層を形成することを含む、導電性フィルムの製造方法。
  14. 非晶性フィルム基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜12の何れか一項に記載の導電性高分子水系分散液を塗工した塗工フィルムを得る塗工工程と、
    前記塗工フィルムを加熱して乾燥させると共に延伸させて延伸フィルムを得る延伸工程と、
    前記延伸フィルムを加熱した後に冷却して非晶性フィルム基材を結晶化させる強度向上化工程と、を有する、導電性フィルムの製造方法。
  15. フィルム基材の少なくとも一方の面に、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体、並びに、ホウ酸とヒドロキシ基を有する水溶性ポリマーとの反応物を含む導電層が備えられた、導電性フィルム。
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