JP2021138402A - 缶の製造方法、及び缶 - Google Patents

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Abstract

【課題】サイズ塗料による塗膜を有しない場合であっても、加工性に優れ、且つ高温時の開栓性が改善された缶、及び前記缶の製造方法を提供する。【解決手段】一方が開口した有底筒状の缶体を成形する工程と、前記缶体の表面に、塗料組成物の硬化物である塗膜層を形成する工程と、前記塗膜層形成後の缶体の開口端部に加工を施す工程と、を含み、前記塗料組成物が、ポリエステル樹脂と、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂と、架橋剤とを含有する、缶の製造方法。また、ポリエステル樹脂と、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂と、架橋剤とを含有する塗料組成物の硬化物である塗膜層を有する、缶。【選択図】なし

Description

本発明は、缶の製造方法、及び缶に関するものである。
近年、飲料などの販売用として、ボトル缶などのネジ付缶の需要が高まっている。ネジ付缶では、キャップが着脱自在に装着されているため、一度開栓した後も、キャップを閉めることにより、ボトル缶内の内容物を密閉状態で保持することができる。そのため、自動販売機用の飲料等を中心に、ボトル缶が利用されている。
ボトル缶の製造工程では、金属板材から筒状の缶体が成形された後、缶体の外面塗装及び内面塗装が行われる。外面塗装では、通常、サイズ塗料による下地塗装が行われ、下地塗装の焼付・乾燥の後、印刷、外面仕上げ塗装、及びボトムリム塗装が行われる。ボトムリム塗装後は、印刷、外面仕上げ塗装、及びボトムリム塗装の焼付・乾燥が、同時に行われる。外面塗装後は、内面塗装と内面塗装の乾燥・焼付が行われる。ボトル缶は、外周にネジ部を備えた口金部を有するが、口金部の成形は、塗装工程の後に行われる。口金部成形後は、ボトル缶の洗浄が行われた後、異物、汚れ、キズ、しわ等の有無が検査され、不良と判定されたものは除去される。
従来、ネジ付缶では、加工性や開栓性の要求を満たすために、サイズ塗料による下地塗装が必須となっている。サイズ塗料とは、金属の表面に薄く有機膜を設けることにより、金属と上塗り塗料との間に強固な密着性を付与して、塗装工程後の加工における加工性を向上させる役割を有する下地塗料である。
一方、下地塗装を省略した場合、製造コストの低減化、生産性の向上、及び作業環境の向上等が見込まれることから、下地塗装を必要としない塗料組成物が検討されている。例えば、特許文献1には、下地塗装が不要な塗料組成物として、特定の数平均分子量及びガラス転移温度(Tg)を有する2種類のポリエステル樹脂と、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂とを含有する塗料組成物が記載されている。
特開2019−123861号公報
しかしながら、特許文献1に記載の塗料組成物は、高分子量のポリエステル樹脂(数平均分子量10,000〜20,000のポリエステル樹脂(A)、及び数平均分子量5,000〜10,000のポリエステル樹脂(B))を配合しているため、粘度が高く、塗装性に問題があると考えられる。特許文献1の実施例では、塗装性を確保するために、溶剤で希釈して不揮発分(固形分)50%の塗料組成物を調製しているが、可燃性溶剤を40%以上含む場合には危険物に分類されるため、取り扱いに注意を要する。また、高温(例えば、60℃)での開栓性については、検討されていない。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、サイズ塗料による塗膜を有しない場合であっても、加工性に優れ、且つ高温時の開栓性が改善された缶、及び前記缶の製造方法を提供することを目的としている。
本発明の第1の態様は、一方が開口した有底筒状の缶体を成形する工程と、前記缶体の表面に、塗料組成物の硬化塗膜層を形成する工程と、前記硬化塗膜層形成後の前記缶体の開口端部に加工を施す工程と、を含み、前記塗料組成物が、ポリエステル樹脂と、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂と、架橋剤とを含有する、缶の製造方法である。
第1の態様の製造方法では、ポリエステル樹脂と、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂と、架橋剤とを含有する塗料組成物の硬化塗膜層を形成する。前記硬化塗膜層の形成の際に、アミノ樹脂及び架橋剤によりポリエステル樹脂が架橋されることにより、ガラス転移温度(Tg)の高い塗膜層を形成することができる。これにより、サイズ塗料による下地塗装を行わない場合であっても、高温時の開栓性が担保される。また、架橋部に形成される官能基により、缶体に対する塗膜層の密着性が向上し、加工性が担保される。
第1の態様の製造方法において、架橋剤は、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、及びアジリジン系架橋剤からなる群より選択されることが好ましい。
第1の態様の製造方法において、ポリエステル樹脂の数平均分子量は、2000〜8000であることが好ましい。
第1の態様の製造方法において、塗料組成物の固形分濃度は、60〜65質量%であることが好ましい。
第1の態様の製造方法において、缶体の開口端部に施される加工は、外周にネジ部を備えた口金部を成形する加工であることが好ましい。
第1の態様の製造方法において、サイズ塗料による塗装工程を含まないことが好ましい。
本発明の第2の態様は、ポリエステル樹脂と、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂と、架橋剤とを含有する塗料組成物の硬化塗膜層を有する、缶である。
第2の態様の缶が有する塗膜層は、従来の缶の塗膜層よりもTgが高く、缶体に対する密着性が高い。これにより、サイズ塗料からなる塗膜層を有しない場合であっても、加工性及び高温時の開栓性が担保される。
第2の態様の缶において、架橋剤は、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、及びアジリジン系架橋剤からなる群より選択されることが好ましい。
第2の態様の缶において、硬化塗膜層のガラス転移温度は、48℃〜55℃であることが好ましい。
第2の態様の缶において、60℃における開栓トルクは、150N・cm未満であることが好ましい。
第2の態様の缶において、60℃における開栓トルクと5℃における開栓トルクとの差は、70N・cm未満であるであることが好ましい。
第2の態様の缶は、サイズ塗料からなる塗膜層を有しないことが好ましい。
第2の態様の缶は、ネジ付缶であることが好ましい。
本発明によれば、サイズ塗料による塗膜を有しない場合であっても、加工性に優れ、且つ高温時の開栓性が改善された缶、及び前記缶の製造方法が提供される。
本発明の1実施形態にかかる缶について、品温と開栓トルクとの関係を調べた結果を示すグラフである。
数平均分子量は、GPC法により測定されたポリスチレン換算の値である。より具体的には、東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で測定した値とする。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
水酸基価とは、試料1g中の水酸基に相当する水酸化カリウム(KOH)のmg数をいう。
[缶の製造方法]
本発明の第1の態様は、一方が開口した有底筒状の缶体を成形する工程(以下、「工程(a)」という。)と、前記缶体の表面に、塗料組成物の硬化塗膜層を形成する工程(以下、「工程(b)」という。)と、前記塗膜層形成後の缶体の開口端部に加工を施す工程(以下、「工程(c)」という。)と、を含み、前記塗料組成物が、ポリエステル樹脂と、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂と、架橋剤とを含有する、缶の製造方法である。
缶の一般的な製造工程においては、まずアルミニウム等の金属板材を打ち抜いて絞り加工し、比較的大径で浅いカップを成形する。その後、このカップに再絞り加工及びしごき加工を加えて、一方が開口した有底筒状の缶体を成形する。次に、缶体の外表面に、サイズ塗料による下地塗装を行い、下地の焼き付け・乾燥を行う。その後、インキによる印刷、外面上塗り塗料による外面仕上げ塗装、及びボトムリム塗装を施し、塗膜の焼き付け・乾燥を行う。次いで、缶体の内面塗装を行い、塗膜の焼き付けを行う。その後、缶体の開口端部に加工を施し、所望の形状に成形する。例えば、ネジ付缶を製造する場合には、外周にネジ部を備えた口金部を成形するための加工を行う。さらに、洗浄工程を経た後に、内面及び外面の検査が行われて、最終的な製品となる。
以下、本態様の製造方法の各工程について説明する。
<工程(a)>
工程(a)は、一方が開口した有底筒状の缶体を成形する工程である。
本工程においては、アルミニウム等の金属板材から、一方が開口した有底筒状の缶体を成形する。缶体の成形方法は、特に限定されず、缶の製造に一般的に用いられる方法で行えばよい。以下に一例を示すが、缶体成形方法はこれに限定されない。
まず、金属板材から所定の大きさの円形状板を打ち抜き、円形状の金属円板を形成する。次に、金属円板に絞り加工を施し、比較的大径の浅いカップを成形する。さらに、再絞り加工、しごき加工等により、所定の高さの有底筒状体を形成する。当該有底筒状体の筒底をボトム成形により所定形状に成形し、トリミング加工により所定の高さにトリミングして、有底筒状の缶体を成形する。なお、成形された缶体の表面を、内面塗装及び外面塗装に適した状態にするために、缶体表面の洗浄を行ってもよい。缶体の洗浄は、缶体表面に付着した油脂成分、スマット、アルミ粉、汚れ成分等を除去する脱脂処理工程、缶体表面に化成皮膜を形成させる化成処理工程、形成させた化成皮膜を硬化させ、缶体を乾燥させる乾燥処理工程等の工程を含むことができる。
<工程(b)>
工程(b)は、前記缶体の表面に、塗料組成物の硬化塗膜層を形成する工程である。
本工程においては、前記工程(a)で得た缶体の表面に、塗料組成物の塗膜層を形成する。「硬化塗膜層」とは、塗料組成物が硬化して形成される塗膜層を意味する。本工程において、硬化塗膜層は、後述の塗料組成物を缶体の表面に塗布し、加熱して硬化させることにより形成することができる。硬化塗膜層の形成は、缶体の外面塗装及び内面塗装のいずれで行ってもよいが、外面塗装において行うことが好ましい。好ましくは、硬化塗膜層は、缶体の外表面にインキによる印刷を行った後、前記印刷が行われた外表面上に形成することが好ましい。
硬化塗膜層の形成方法は、特に限定されない。例えば、塗料組成物を缶体に塗布した後、180〜240℃で、1〜5分程度加熱することにより、硬化塗膜層を形成することができる。
塗料組成物の缶体への塗布方法は、特に限定されず、一般的に用いられる方法で行えばよい。例えば、外面仕上げ塗装であれば、ロール塗装を用いることができ、内面塗装であれば、スプレー塗装を用いることができる。
塗料組成物を缶体に塗布した後は、ピンオーブン等を用いて加熱する。加熱温度としては、好ましくは180〜260℃、より好ましくは200〜240℃を挙げることができる。また、加熱時間としては、好ましくは30〜120秒、より好ましくは40〜100秒を挙げることができる。乾燥中の、缶体表面温度のピーク値が、190〜230℃程度となるようにすることが好ましく、当該ピーク温度の持続時間が20〜90秒程度となるようにすることが好ましい。
また、前記のような条件で一次加熱を行った後、二次加熱を行うようにしてもよい。二次加熱の加熱温度としては、好ましくは180〜250℃、より好ましくは200〜240℃を挙げることができる。また加熱時間としては、好ましくは40〜350秒、より好ましくは50〜300秒を挙げることができる。二次加熱中の、缶体表面温度のピーク値が、200〜240℃程度となるようにすることが好ましく、当該ピーク温度の持続期間が60〜100秒程度となるようにすることが好ましい。
塗料組成物を外面塗料として用いた場合、二次加熱は、内面塗装の乾燥及び焼き付けと同時に行うようにしてもよい。この場合、二次加熱には、例えば、インサイドベークオーブン等を使用することができる。
本工程で形成する硬化塗膜層の厚さは、特に限定されない。硬化塗膜層が外面塗膜層として存在する場合には、硬化塗膜層の厚さとしては、例えば、3〜10μm程度が挙げられ、4〜8μmが好ましく、5〜7μmがより好ましい。
本工程で形成する硬化塗膜層のTgは、48℃以上であることが好ましく、49℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。硬化塗膜層のTgの範囲としては、例えば、48〜65℃が挙げられ、48〜60℃が好ましく、48〜55℃がより好ましく、50〜55℃がさらに好ましい。硬化塗膜層のTgが前記範囲であると、自動販売機で通常「ホット」として販売される温度(約60℃)においても開栓性が良好である。
前記硬化塗膜層のTgは、熱機械分析法(TMA法)等により測定することができる。TMA法は、物質の温度を一定のプログラムに従って変化させながら、圧縮、引張などの非振動的な荷重を加えてその物質の変形を温度又は時間の関数として測定する方法である。TMA法によるTgの測定は、市販の熱機械分析装置を用いて行うことができ、例えば、日立ハイテクサイエンス社製の熱機械分析装置 TMA7100等を用いることができる。
なお、一般的な缶の製造工程においては、印刷及び外面仕上げ塗装の前に、サイズ塗料による下地塗装が行われる。下地塗装は、インクや上塗り外面塗料の缶体に対する密着性を高め、後加工における加工性を向上させるために行われるものである。
本態様の製造方法では、サイズ塗料による下地塗装は、行ってもよいし、行わなくてもよい。本態様の製造方法では、後述する塗料組成物を用いることにより、サイズ塗料による下地塗装がなくても加工性及び開栓性が損なわれることがない。したがって、サイズ塗料による塗装工程は、含まないことが好ましい。
なお、サイズ塗料による下地塗装を行う場合には、硬化塗膜層の形成の前に、サイズ塗料による下地塗装を行う。この場合、サイズ塗料には、缶の下地塗装に一般的に用いられるサイズ塗料を使用すればよく、一般的に用いられる方法で下地塗装を行えばよい。
本工程は、好ましくは、缶体の外表面にインキによる印刷を行い、前記印刷を行った外表面に塗料組成物の硬化塗膜層を形成する工程であることができる。また、缶体の外表面に塗料組成物の硬化塗膜層を形成した後、内面塗装を行う工程を有していてもよい。
<工程(c)>
工程(c)は、硬化塗膜層形成後の缶体の開口端部に加工を施す工程である。
本工程においては、硬化塗膜層が形成された後の缶体に対して、開口端部に加工を施す。加工は、缶体の開口端部を所定形状とするために行われ、加工方法は特に限定されない。例えば、加工は、ダイネック加工、スピンフローネック加工、ネック加工、スカート加工、ネジ加工、カール/スロットル加工等を含むことができる。一例として、ネジ付缶を製造する場合には、缶体の開口端部に対して、外周にネジ部を備えた口金部を形成する加工を行う。口金部の成形加工の方法は、特に限定されないが、ネック加工、スカート加工、ネジ加工、カール/スロットル加工等を含むことができる。これらの加工方法は、ネジ付缶の製造において、一般的に用いられる方法を用いればよい。
工程(c)の後は、必要に応じて、洗浄工程、及び検査工程等を有していてもよい。洗浄工程では、缶体の洗浄が行われる。洗浄の方法は、特に限定されないが、例えば、缶体をバスケット等に入れ、35〜100℃程度の温水をシャワー等により缶体にかけて洗浄した後、35〜180℃程度で乾燥する方法等を例示することができる。
洗浄工程後は、通常、缶体の内面及び外面の検査が行われる(検査工程)。検査工程において、異物、汚れ、キズ、印刷不良等が検出され、不良と判定されたものは排除される。
<塗料組成物>
本態様の製造方法で用いる塗料組成物は、ポリエステル樹脂と、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂と、架橋剤とを含有することを特徴とする。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、塗料用に一般的に用いられるものを特に制限なく使用することができる。ポリエステル樹脂は、市販のものを用いてもよいし、任意の多価カルボン酸と多価アルコールを選択して重縮合反応を行うことにより合成してもよい。
ポリエステル樹脂の原料として使用する多価カルボン酸及び多価アルコールは、特に限定されず、分岐鎖状のものでも直鎖状のものでもよいが、直鎖状のものであることが好ましい。多価カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、及び脂肪族ジカルボン酸を例示することができる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸等を挙げることができる。脂環式ジカルボン酸としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、(無水)コハク酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ハイミック酸等を挙げることができる。また、3価以上の多価カルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸等を挙げることができる。
ポリエステル樹脂の原料として使用する多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAもしくはビスフェノールFにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加したもの、キシレングリコール、水添ビスフェノールA等の脂肪族二価アルコールを挙げることができる。また、3価以上の多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。
ポリエステル樹脂の数平均分子量は、2000〜8000であることが好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量が、前記範囲であると、硬化塗膜層のTgが前記好ましい範囲になりやすくなる。また、固形分濃度を60%以上とした場合であっても、塗料組成物の粘度が高くなりすぎず、塗料組成物の塗布性が良好となる。ポリエステル樹脂の数平均分子量は、2500〜6500が好ましく、3000〜6000がより好ましい。
ポリエステル樹脂のTgは、15〜80℃であることが好ましい。ポリエステル樹脂のTgが、前記範囲であると、硬化塗膜層のTgが前記好ましい範囲になりやすくなる。ポリエステル樹脂のTgは、20〜75℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。ポリエステル樹脂のTgは、示差雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲−80〜450℃、昇温温度10℃/分の条件下、DMA法で測定した値である。
ポリエステル樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、2種以上を併用することが好ましい。2種以上のポリエステル樹脂を併用する場合、数平均分子量が互いに異なる2種以上のポリエステル樹脂を用いることができる。例えば、数平均分子量2000以上8000以下のポリエステル樹脂(以下、「ポリエステル樹脂A」という場合がある。)と、数平均分子量2000以上6000以下のポリエステル樹脂(以下、「ポリエステル樹脂B」という場合がある。)と、を併用することができる。ポリエステル樹脂Aの数平均分子量は、3000〜8000であることが好ましく、4000〜8000であることがより好ましく、5000〜8000であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂Bの数平均分子量は、2000〜5000であることが好ましく、2000〜4000であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂Aとしては、数平均分子量2000〜8000、ガラス転移温度(Tg)が20〜70℃であり、且つ水酸基価が10〜30KOHmg/gのものが好ましく、数平均分子量3000〜8000、ガラス転移温度(Tg)が30〜60℃、水酸基価が12〜25KOHmg/gのものがより好ましい。数平均分子量、Tg、及び水酸基価を前記好ましい範囲内とすることにより、塗装時の塗装性が維持され、且つ加工性及び開栓性が良好な硬化塗膜層を得やすくなる。
ポリエステル樹脂Aとして使用可能な市販品としては、例えば、東洋紡(株)社製のバイロン(VYLON)226、同660、同885、同GK130、同810、ユニチカ(株)社製のエリーテルUE−3350、同3370、同3380、同3300、同3980、SKケミカル社製スカイボン(SKYBON)ES−750、同812、同850、同900などが挙げられる。
ポリエステル樹脂Bとしては、数平均分子量2000〜6000であり、且つ水酸基価が35〜55KOHmg/gの範囲のものが好ましく、数平均分子量2000〜4000、水酸基価が40〜50KOHmg/gであればより好ましい。数平均分子量、及び水酸基価を前記好ましい範囲内とすることにより、塗装時の塗装性が維持され、且つ加工性及び開栓性が良好な硬化塗膜層を得やすくなる。また、ポリエステル樹脂BのTgは、30〜60℃が好ましく、40〜60℃がより好ましく、50〜55℃がさらに好ましい。
ポリエステル樹脂(B)として使用可能な市販品としては、例えば、東洋紡(株)社製のバイロン(VYLON)220、同802、同GK680、同GK810、ユニチカ(株)社製のエリーテルUE−3320、同9820などが挙げられる。
ポリエステル樹脂A及びポリエステル樹脂Bの2種類のポリエステル樹脂を併用することにより、硬化塗膜層に、加工に耐え得る柔軟性と、開栓性及び傷つき耐性の良好な高い硬度とを両立させることができる。ポリエステル樹脂Aは、数平均分子量が比較的高いことで骨格に柔軟性を有し、水酸基価も低めであることから、架橋剤と適度に反応し、硬化塗膜層の柔軟性が保持できる。一方、ポリエステル樹脂Bは、数平均分子量が比較的低く、水酸基価が高いことから、架橋剤との反応性に優れ、硬化塗膜層に高い硬度を付与し得る。
ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂A及びポリエステル樹脂Bを併用する場合、ポリエステル樹脂A100質量部(固形分換算)に対して、ポリエステル樹脂Bを15〜80質量部とすることが好ましく、20〜60質量部とすることがより好ましく、20〜50質量部とすることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂Aに対するポリエステル樹脂Bの割合を前記好ましい範囲内とすることにより、架橋剤との反応性を適度な範囲に維持しやすくなる。また、塗料組成物の塗布性及び硬化塗膜層のTgを、適度な範囲に調整しやすくなる。
ポリエステル樹脂を1種単独で用いる場合には、ポリエステル樹脂Aを用いることが好ましい。この場合、ポリエステル樹脂Aは、数平均分子量2000〜6000のものが好ましく、数平均分子量3000〜6000のものがより好ましい。
(アミノ樹脂)
アミノ樹脂は、塗料用に一般的に用いられるものを特に制限なく使用することができる。アミノ樹脂としては、例えば、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等のアルデヒド成分との反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂を挙げることができる。これらのメチロール化アミノ樹脂のうち、塗膜の加工性、耐水性、光沢等の観点から、メラミン樹脂又はベンゾグアナミン樹脂が好ましく、ベンゾグアナミン樹脂がより好ましい。加工性及びポリエステル樹脂との反応性の観点から、アミノ樹脂の数平均分子量は、300〜1000の範囲が好ましい。
アミノ樹脂は市販のものを用いることもできる。使用可能なアミノ樹脂の市販品としては、DIC株式会社のアミディアシリーズ等が挙げられる。
アミノ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂は、塗料用に一般的に用いられるものを特に制限なく使用することができる。エポキシ樹脂としては、例えば、一般的に市販されているエピ−ビス型、ノボラック型、β−メチルエピクロ型、環状オキシラン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、ポリグリコールエーテル型、グリコールエーテル型、エポキシ化脂肪酸エステル型、多価カルボン酸エステル型、アミノグリシジル型、レゾルシン型等の各種エポキシ樹脂が挙げられる。この中でも金属下地との密着性が良好なことから、エピ−ビス型のエポキシ樹脂が好適に使用される。
エポキシ樹脂は市販のものを用いることもできる。ビスフェノールA(BPA)タイプのものとしては、エピコート(EPIKOAT)1001、エピコート(EPIKOAT)1004、EPICLON N−865、EPICLON N−870、EPICLON 1055−60S等が挙げられる。ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂の例としては、DIC(株)社製のEPICLON N−730、EPICLON N−740、EPICLON N−770等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、EPICLON N−660、EPICLON N−665、EPICLON N−670、EPICLON N−673、EPICLON N−680、EPICLON N−690、EPICLON N−695、旭化成エポキシ(株)社製のAER ECN−1273、同社製AER ECN−1299等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(架橋剤)
架橋剤は、ポリエステル樹脂の末端ヒドロキシ基(−OH)又は末端カルボキシ基(−COOH)と反応し、ポリエステル樹脂どうしを直鎖状に連結できるものであれば、特に限定されない。ポリエステル樹脂どうしが架橋剤により連結されることで、より高分子のポリマーが生成される。これにより塗料組成物が硬化して、適度なTgを有する硬化塗膜層を形成することができる。
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、及びアジリジン系架橋剤等が挙げられる。
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基(−NCO)又はブロックされたイソシアネート基を2個以上有する化合物からなる架橋剤である。イソシアネート系架橋剤としては、イソシアネート基を2個以上含むポリイソシアネート、及びブロック化されたイソシアネート基を2個以上含むブロックイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族若しくは脂環族ポリイソシアネート、又はこれらの変性体が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロへキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、又はこれらのイソシアネートの3量体等が挙げられる。ポリイソシアネートの変性体としては、例えばトリメチロールプロパンアダクト型変性体、イソシアヌレート型変性体、ビューレット型変性体、アロファネート型変性体等が挙げられる。
ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ブロックイソシアネートとしては、前記のようなポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化剤でブロックしたものが挙げられる。イソシアネートブロック化剤としては、例えば、フェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類;t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第3級アルコール類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類等が挙げられる。また、イソシアネートブロック化剤としては、芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類、重亜硫酸ソーダ等も挙げられる。ブロックポリイソシアネートは、上記のようなポリイソシアネートと、イソシアネートブロック化剤とを、公知の方法より付加反応させることにより得ることができる。
ブロックイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
イソシアネート系架橋剤は、保存性の観点から、ブロックイソシアネートが好ましく、ブロック化されたイソシアネート基を2個含むブロック化ジイソシアネートがより好ましい。中でも、ブロックイソシアネートとしては、解離温度が110〜150℃であるものが好ましい。解離温度とは、ブロック化剤がイソシアネート基から脱離する温度のことをいう。解離温度が前記好ましい範囲内であると、塗装前及び塗装時のポリエステル樹脂とブロックイソシアネートとの反応を抑制することができ、且つ塗装後の焼き付けでブロック化剤を解離させ、ポリエステル樹脂と架橋剤との反応を良好に進行させることができる。イソシアネート基がブロック化されていないポリイソシアネートを用いる場合、該イソシアネートは、使用直前に、塗料組成物に配合することが好ましい。
イソシアネート系架橋剤として使用可能な市販品のブロックイソシアネートとしては、例えば、日本ポリウレタン株式会社製コロネートAP−M、同MS−50、同2503、同2507、同2513、同2515、住化バイエルウレタン社製デスモジュールBL1100、同1265MPA/X、BL3272、同BL3575、同BL3475、同BL3370、同BL4265、同BL5375、同PL350、同PL340、同VPLS2253、同VPLS2257、同VPLS2078/2、スミジュールBL3175、旭化成ケミカルズ社製デュラネートMF−K60B、同SBN−70D、同MF−B60B、同17B−60P、同TPA−B80E、同E402−B80B、三井化学社製タケネートB−830、同B−815N、同B−820NSU、同B−842N、同B−846N、同B870N、同B874Nなどが挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を含む化合物からなる架橋剤である。カルボジイミド系架橋剤は、カルボジイミド基を2個以上有するものが好ましい。
カルボジイミド系架橋剤としては、例えば、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニルカルボジイミド)等の芳香族ポリカルボジイミド;ポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂環族ポリカルボジイミド;ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド等が挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤は、市販のものを用いてもよい。カルボジイミド系架橋剤の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル株式会社製の「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」等が挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オキサゾリン系架橋剤は、オキサゾリン基を2個以上含む化合物からなる架橋剤である。
オキサゾリン系架橋剤としては、例えば、2,2'−ビス(2−オキサゾリン)、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)エタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,8−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)シクロヘキサンなどの脂肪族ビスオキサゾリン化合物;1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼンなどの芳香族ビスオキサゾリン化合物;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどの付加重合性オキサゾリンの1種若しくは2種以上の重合物等が挙げられる。
オキサゾリン系架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アジリジン系架橋剤は、アジリジン基を含む化合物からなる架橋剤である。アジリジン系架橋剤は、アジリジン基を2個以上有するものが好ましい。
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
アジリジン系架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いた場合、ポリエステル樹脂のカルボキシ基又はヒドロキシ基と、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基が反応し、ウレタン結合が形成される。そのため、塗料組成物の硬化塗膜層には、ポリエステル樹脂とイソシアネート系架橋剤とが、ウレタン結合を介して架橋した高分子化合物が含まれる。前記高分子化合物は、アミノ樹脂及び/又はエポキシ樹脂によりさらに架橋されていてもよい。
架橋剤としてカルボジイミド系架橋剤を用いた場合、ポリエステル樹脂のカルボキシ基と、カルボジイミド系架橋剤のカルボジイミド基が反応し、アミド結合が形成される。そのため、塗料組成物の硬化塗膜層には、ポリエステル樹脂とカルボジイミド系架橋剤とが、アミド結合を介して架橋した高分子化合物が含まれる。前記高分子化合物は、アミノ樹脂及び/又はエポキシ樹脂によりさらに架橋されていてもよい。
架橋剤としてオキサゾリン系架橋剤を用いた場合、ポリエステル樹脂のカルボキシ基と、オキサゾリン系架橋剤のオキサゾリン基が反応し、−CO−O−C−NH−CO−で表される結合が形成される。そのため、塗料組成物の硬化塗膜層には、ポリエステル樹脂とオキサゾリン系架橋剤とが、前記結合を介して架橋した高分子化合物が含まれる。前記高分子化合物は、アミノ樹脂及び/又はエポキシ樹脂によりさらに架橋されていてもよい。
架橋剤としてアジリジン系架橋剤を用いた場合、ポリエステル樹脂のカルボキシ基と、アジリジン系架橋剤のアジリジン基が反応し、−CO−O−C−NH−で表される結合が形成される。そのため、塗料組成物の硬化塗膜層には、ポリエステル樹脂とアジリジン系架橋剤とが、前記結合を介して架橋した高分子化合物が含まれる。前記高分子化合物は、アミノ樹脂及び/又はエポキシ樹脂によりさらに架橋されていてもよい。
架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の中でも、架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤が好ましく、ブロックイソシアネートがより好ましい。
本態様の製造方法に用いる塗料組成物において、上記ポリエステル樹脂の含有量は、塗料組成物中の全樹脂成分(ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、及び架橋剤)の合計質量を100質量%としたとき、45〜80質量%程度とすることができる。この範囲であると、硬化塗膜層に適度な硬度を付与することができる。また、塗料組成物の塗布性が良好となる。ポリエステル樹脂の含有量は、全固形成分の合計質量に対して、50〜70質量%程度であることが好ましく、50〜65質量%程度であることがより好ましく、50〜60質量%程度であることがさらに好ましい。なお、ポリエステル樹脂を2種以上含む場合、前記ポリエステル樹脂の含有量は、ポリエステル樹脂の合計含有量を意味する。他の成分についても同様である。
本態様の製造方法に用いる塗料組成物において、アミノ樹脂の含有量は、特に限定されないが、塗料組成物中の全樹脂成分の合計質量を100質量%としたとき、20〜50質量%程度とすることができ、25〜50質量%程度が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。
本態様の製造方法に用いる塗料組成物において、エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、塗料組成物中の全樹脂成分の合計質量を100質量%としたとき、1〜30質量%程度とすることができ、2〜10質量%程度が好ましく、3〜8質量%がより好ましい。
本態様の製造方法に用いる塗料組成物において、架橋剤の含有量は、特に限定されないが、塗料組成物中の全樹脂成分の合計質量を100質量%としたとき、1〜20質量%程度とすることができ、3〜15質量%程度が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
ポリエステル樹脂100質量部に対する架橋剤の割合としては、1〜30質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましく、10〜20質量部がさらに好ましい。
(任意成分)
本態様の製造方法に用いる塗料組成物は、上記ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、及び架橋剤に加えて、希釈溶剤や各種添加剤等を含有していてもよい。
≪溶剤≫
溶剤は、前記成分を溶解可能なものであれば、特に制限なく使用することができる。溶剤は、例えば、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、セロソルブ系溶剤等であってよい。芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等を挙げることができる。脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等を挙げることができる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル、セロソルブアセテート等を挙げることができる。エーテル系溶剤としては、例えば、ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール等を挙げることができる。ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。セロソルブ系溶剤としては、例えば、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等を挙げることができる。
溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶剤の好ましい具体例としては、例えば、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、及びこれらの2種以上を混合した混合溶剤等を挙げることができる。より具体的には、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、ソルベッソ100、ソルベッソ150、及びノルマルブタノールの混合溶剤を例示することができる。
≪添加剤≫
添加剤は、塗料用に一般的に用いられる添加剤を特に制限なく使用することができる。添加剤としては、例えば、潤滑性付与剤や硬化促進剤等を挙げることができる。
潤滑性付与剤は、ワックス系のものであってもよく、シリコーン系のものであってもよく、ワックス系のものとシリコーン系のものとを併用してもよい。ワックス系の潤滑性付与剤は、天然ワックスと合成ワックスのいずれであってもよい。天然ワックスとしては、例えば、ラノリン、ミツロウ、鯨ロウ等の動物系ワックス、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等の植物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス等を挙げることができる。また、合成ワックスとしては、ポリオレフィン系ワックス、シリコーン系ワックス、フッ素系ワックス、及びポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物等を挙げることができる。
また、シリコーン系の潤滑性付与剤としては、ジメチルポリシロキサン及びその変性物等を例示することができる。ジメチルポリシロキサンの変性物を用いる場合、変性剤としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エポキシ、アミン等を用いることができる。
好ましい潤滑付与剤としては、シリコーン系潤滑付与剤、ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックス、フッ素系ワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ラノリンワックス等を例示できる。フッ素系ワックスとしては、四フッ化エチレンワックスが好ましい。これらの潤滑付与剤の添加量は特に限定されず、任意の添加量とすることができる。
硬化促進剤としては、例えば、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸ジイソプロピル、リン酸モノオクチル、リン酸モノデシル、リン酸ジデシル、メタリン酸、オルトリン酸、オルトリン酸エステル等の酸触媒を挙げることができる。
本態様の製造方法に用いる塗料組成物は、上記ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、及び架橋剤を溶剤に溶解し、適宜各種添加剤を添加して混合することにより、調製することができる。
前記塗料組成物において、固形分濃度は、60%以上であることが好ましい。固形分濃度を60%以上とすることにより、適度な厚さの硬化塗膜層を得られるとともに、引火性が低減することができる。固形分濃度は、60〜75質量%であることが好ましく、60〜70質量%であることがより好ましく、60〜65質量%であることがさらに好ましい。固形分濃度が前記好ましい範囲の上限値以下であると、塗料組成物の塗布性が良好となる。なお、塗料組成物の「固形分濃度」とは、JIS K5600−1−2に準拠して測定される加熱残分の、塗料組成物全体の合計質量(100質量%)に対する割合を意味する。加熱残分は、例えば、乾燥機を用いて、200℃で10分間加熱することにより、求めることができる。
本態様の製造方法は、加工を伴う缶の塗装に製造に適している。「加工を伴う缶」とは、筒状の缶体が成形された後、缶体に対してダイネック加工、スピンフローネック加工、ネック加工、スカート加工、ネジ加工、カール/スロットル加工等の何等かの加工が行われる缶をいう。好ましい態様において、前記加工は、ネジ加工を含む。本態様の製造方法は、ネジ付缶の製造に適しており、特にボトル缶の製造に適している。
また、本態様の缶の製造方法では、塗膜層の形成に上記で説明した特定の塗料組成物を用いる。前記塗料組成物は、ポリエステル樹脂を架橋する架橋剤を含有するため、硬化塗膜層の形成の過程でポリエステル樹脂が架橋される。架橋剤で架橋されたポリエステル樹脂は、さらにアミノ樹脂及び/又はエポキシ樹脂により架橋されて硬化することにより、缶体表面への密着性が高く、且つ高いTgを有する硬化塗膜層を得ることができる。これにより、ネジ加工等の負荷の高い加工を行った場合でも、塗膜の割れや剥離等が生じにくく、高い加工性を達成することができる。また、高温(例えば、60℃)であっても、キャップ開栓時の開栓トルクを低い状態に維持することができる。
一方、塗料組成物には、例えば、10,000以上の超高分子量のポリエステル樹脂を含有させる必要がないため、固形分濃度を高くしたとしても(例えば60%以上)、塗料組成物の粘度が高くなりすぎず、良好な塗布性を維持することができる。
[缶]
本発明の第2の態様は、ポリエステル樹脂と、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂と、架橋剤とを含有する塗料組成物の硬化塗膜層を有する、缶である。
本態様の缶が有する硬化塗膜層を形成する塗料組成物は、第1の態様の製造方法で用いる塗料組成物と同様である。本態様の缶は、第1の態様の製造方法により製造することができる。
本態様の缶において、前記塗料組成物の硬化塗膜層は、缶の外面と内面のいずれに存在してもよく、外面と内面の両方に存在してもよい。好ましくは、硬化塗膜層は、缶体の外面に存在する。より好ましくは、硬化塗膜層は、缶体外表面におけるインキ層の外層の、上塗り外面塗膜層として存在する。本態様の缶がネジ付缶である場合、硬化塗膜層は、少なくともネジ部を備えた口金部の外表面に存在することが好ましい。
本態様の缶において、硬化塗膜層の膜厚は、特に限定されず、缶表面の塗膜として通常用いられる膜厚とすることができる。例えば、硬化塗膜層が、上塗り外面塗膜層として存在する場合には、膜厚を1〜10μm程度、好ましくは2〜7μm程度、より好ましくは3〜6μm程度とすることができる。
硬化塗膜層のTgは、48℃以上であることが好ましく、49℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。硬化塗膜層のTgの範囲としては、例えば、48〜65℃が挙げられ、48〜60℃が好ましく、48〜55℃がより好ましく、50〜55℃がさらに好ましい。
本態様の缶は、60℃における開栓トルクが150N・cm未満であることが好ましい。開栓トルクが150N・cm未満であると、開栓性が良好である。60℃における開栓トルクは、140N・cm未満がより好ましく、130N・cm未満がさらに好ましく、100N・cm未満が特に好ましい。「開栓トルク」は、デジタル開栓トルク計を用いて測定することができる。デジタル開栓トルク計としては、例えば、日本電産シンポ株式会社製のTNKシリーズなどが挙げられる。
また、本態様の缶は、60℃における開栓トルクと5℃における開栓トルクとの差が、70N・cm未満であることが好ましい。開栓トルクの差が70N・cm未満であると、「コールド」(約5℃)での販売時と、「ホット」(約60℃)での販売時とで、開栓性の差を感じにくい。60℃における開栓トルクと5℃における開栓トルクとの差は、60N・cm未満がより好ましく、50N・cm未満がさらに好ましい。
また、本態様の缶は、5℃における開栓トルクが100N・cm未満であることが好ましい。5℃における開栓トルクは、90N・cm未満がより好ましく、80N・cm未満がさらに好ましく、60N・cm未満が特に好ましい。
本態様の缶は、サイズ塗料からなる塗膜層を有しないものとすることができる。すなわち、本態様の缶は、1実施形態として、前記硬化塗膜層よりも下層に、サイズ塗料からなる塗膜層を有しない。たとえば、前記硬化塗膜層が上塗り外面塗膜層である場合、缶体円筒部の金属外面に接触してインキ層が存在し、当該インキ層の外層に前記硬化塗膜層を有する缶を、本態様の缶の一例として挙げることができる。すなわち、本態様の缶は、缶体と、前記缶体の外表面上に積層されたインキ層と、前記インキ層上に積層された硬化塗膜層と、を含む缶であることが好ましい。
なお、本態様の缶は、サイズ塗料からなる塗膜層を有するものであってもよい。その場合、サイズ塗料からなる塗膜層は、前記硬化塗膜層よりも下層に存在することが好ましく、たとえば、缶体円筒部の金属外面とインキ層との間に存在する。本態様の缶は、サイズ塗料からなる塗膜層を有しなくても、高温時(例えば60℃)での開栓トルクを低く維持することができる。そのため、本態様の缶は、サイズ塗料からなる塗膜層を有しないことが好ましい。
なお、本態様の缶の缶本体は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属で構成されている。アルミニウム合金としては、例えば、Si:0.1〜0.5質量%、Fe:0.3〜0.7質量%、Cu:0.05〜0.5質量%、Mn:0.5〜1.5質量%、Mg:0.4〜2.0質量%、Cr:0〜0.1質量%、Zn:0〜0.5質量%、Ti:0〜0.15質量%を含有し残部が不可避的不純物を含むアルミニウムからなるアルミニウム合金等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
本態様の缶は、加工を伴う缶であることが好ましい。加工を伴う缶は、缶体円筒部の少なくとも一方の端部に、塗装工程後の加工によって成形された構造を有する。そのような構造としては、例えば、フランジ部や、外周にネジ部を備えた口金部等を挙げることができる。本態様の缶は、外周にネジ部を備えた口金部を有する、ネジ付缶であることが好ましく、ボトル缶であることがより好ましい。
本態様の缶は、前記塗料組成物の硬化塗膜層を有するため、ホット飲料等を充填した場合であっても、キャップ開栓時の開栓トルクを低い状態に維持することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(比較例1〜5、実施例1〜5)
[塗料組成物の調製]
表1に示す成分を溶剤に溶解して、各例の塗料組成物を調製した。表1中、[]内は、ポリエステル樹脂のガラス転移温度を表す。各成分における数値は、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、及び架橋剤については、前記成分の合計量を100質量%としたときの割合(質量%)を示す。シリコン及びワックスについては、塗料組成物全体を100質量%としたときの割合(質量%)を示す。各例の塗料組成物は固形分濃度62質量%、粘度(FC#4)160秒で作製した。固形分濃度は、JIS K5600−1−2に準拠し、VOLATI−S12A(島津製作所)を用いて、200℃で10分間加熱し、加熱残分を固形分として算出した。
Figure 2021138402
表1に示す各成分は、以下の通りである。
ポリエステル樹脂A1:「バイロンGK810」東洋紡株式会社製
数平均分子量6000、水酸基価19mgKOH/g、ガラス転移温度46℃
ポリエステル樹脂A2:「バイロンGK660」東洋紡株式会社製
数平均分子量8000、水酸基価14mgKOH/g、ガラス転移温度55℃
ポリエステル樹脂B:「バイロン220」東洋紡株式会社製
数平均分子量3000、水酸基価50mgKOH/g、ガラス転移温度53℃
アミノ樹脂:「アミディア TD−126−60S」DIC社製 ベンゾグアナミン樹脂
エポキシ樹脂:「EPICLON 1055−60S」DIC社製
架橋剤:ブロックイソシアネート「VESTANAT B1370」ダイセルヒュルス社製 ブロック剤の解離温度140℃
シリコン:「シリコントーレSH−28P.A.」東レ・ダウコーニングシリコーン社製
ワックス:四フッ化エチレンワックス「SST−3H」SHAMROCK社製又は
四フッ化エチレン・ポリエチレン共重合ワックス「ハイディスパーQT57」岐阜セラック社製
[粘度の測定]
各例の塗料組成物の粘度は、JIS K 5600−2−2に準じたフローカップ法(オリフィス径4mm)にて測定した。
[塗膜層の形成]
上記のように調製した塗料組成物を、アルミ合金板から成形されたボトル缶用缶体の外面に塗布した。塗装は、ロールコート塗装にて行った。塗装後、ピンチェーン(アルミ缶塗装印刷オーブン)を用いて加熱することにより、塗膜層又は硬化塗膜層を形成した。加熱条件は、230℃、1〜3分に設定した。外面塗装後、内面塗料を用いて内面塗装を行った。内面塗装での二次加熱は、240℃4〜6分に設定した。
[塗膜性能の評価]
塗膜性能の評価は、以下の評価項目により行った。
<硬化塗膜層のTgの測定>
硬化塗膜層のTgは、TMA法により測定した。
測定結果を「Tg」として表2に示した。
<加工性の評価>
加工性は、ボトル缶用缶体の外面に硬化塗膜層を形成したものを用いて、ネジ成形加工における加工性を評価した。ボトル缶用缶体の外面に塗膜を形成した後、ネジ成形を行った。その後、塗膜の割れを目視により評価した。評価基準は下記の通りとし、評価結果を「加工性」として表2に示した。
評価基準
〇:塗膜の割れなし
△:一部に塗膜の割れあり
×:全体的に塗膜の割れあり
<開栓トルクの測定>
硬化塗膜層を形成したボトル缶を用いて、開栓に要したトルク値を測定した。開栓トルク値の測定は、デジタル開栓トルク計(TNKシリーズ、日本電産シンポ株式会社製)を用いて行った。
開栓トルクの測定には、ユニアクロスキャップ(ユニバーサル製缶株式会社の登録商標)のレトルト専用キャップを使用した。ボトル缶飲料を加温した場合を想定し、5℃、及び60℃の2通りの温度条件で、開栓トルクを測定した。結果を「開栓トルク」として表2に示した。
<開栓性の評価>
硬化塗膜層を形成したボトル缶を用いて、60℃における開栓性を評価した。開栓性は、サイズ塗料による下地塗装を行った従来品を基準として、下記基準により評価した。評価結果を「開栓性」として表2に示した。なお、従来品の60℃における開栓トルクは、130N・cmである。
評価基準
◎:従来品よりも開栓しやすい。
〇:従来品と同等程度。
△:従来品よりも開栓しにくい。
×:開栓できない。
−:成形不能のため評価不可。
Figure 2021138402
表2に示すとおり、架橋剤を添加した実施例1〜5の塗料組成物を用いた場合、比較例1〜5の塗料組成物を用いた場合と比較して加工性がよく、また硬化塗膜層のTgが高く、開栓トルクが低く維持されており、開栓性が良好であった。実施例1〜5の塗料組成物を用いた場合、60℃での開栓トルクも低く維持されており、5℃の開栓トルクとの差は60N・cm以内であった。
(比較例6〜7)
[塗料組成物の調製]
温度による開栓トルクの変化を従来品と比較するため、従来品として表3に示す成分を溶剤に溶解して、比較例6〜7の塗料組成物を調製した。各成分における数値は、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、及びエポキシ樹脂については、前記成分の合計量を100質量%としたときの割合(質量%)を示す。シリコン及びワックスについては、塗料組成物全体を100質量%としたときの割合(質量%)を示す。
Figure 2021138402
表3に示す各成分は、以下の通りである。
ポリエステル樹脂:多価カルボン酸として、テレフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸、多価アルコールとして、エチレングリコール及びプロピレングリコールを用いて合成したポリエステル樹脂。
アミノ樹脂:メランシリーズ(日立化成株式会社製)
エポキシ樹脂:jER(登録商標) グレード1001(三菱化学株式会社製)
シリコン:変性シリコーン(信越化学工業株式会社製、東レ・ダウコーニング株式会社製)
ワックス:市販のラノリン、ポリエチレン、フッ素、マイクロクリスタリン、シリコーン系ワックスを併用
溶剤:ブチルカルビトール(1〜3質量%)、ブチルセロソルブ(15〜50質量%)、ソルベッソ100(5〜50質量%)、ソルベッソ150(15〜60質量%)、及びノルマルブタノール(2〜10質量%)の混合溶媒。前記括弧内は、溶剤全体を100質量%としたときの各溶媒の質量%を示す。
[硬化塗膜層の形成]
(実施例3、比較例6)
実施例3、比較例6の各例の塗料組成物を用いて、上記と同様に、ボトル缶用缶体の外面に硬化塗膜層を形成した。
(比較例7)
アルミ合金板から成形されたボトル缶用缶体の外面に、サイズ塗料による下地塗装を施した後、比較例7の塗料組成物を塗布した。塗装は、ロールコート塗装にて行った。塗装後、ピンチェーン(アルミ缶塗装印刷オーブン)を用いて乾燥及び焼き付けを行った。乾燥及び焼き付けの温度条件は、下地塗装および外面塗装での一次加熱を230℃、1〜3分に設定し、内面塗装での二次加熱を240℃、4〜6分に設定した。
[塗膜性能の評価]
塗膜性能の評価は、以下の評価項目により行った。
<開栓トルクの測定>
硬化塗膜層を形成したボトル缶を用いて、上記と同様に、開栓トルクを測定した。その結果を図1に示す。
<剥離性の評価>
硬化塗膜層を形成したボトル缶を用いて、JIS 0200:2013 レベル2準拠の振動試験(電気サーボモーター式3軸振動試験機 VTS−015ES−3/100−100−25/25、国際計測器株式会社)を行った。各例につき、24個のボトル缶で試験を行い、塗膜の剥離の有無を肉眼により評価した。その結果を表4に示す。表4には、剥離が確認されたボトル缶の個数を記載した。
Figure 2021138402
図1に示すように、実施例3の塗料組成物を用いて塗膜を形成したボトル缶では、比較例6又は7の塗料組成物を用いて塗膜を形成したボトル缶と比較して、品温の上昇に伴う開栓トルクの上昇が抑制された。
また、表4に示すように、実施例3の塗料組成物を用いて塗膜を形成したボトル缶では、剥離性試験で塗膜が剥離したものはなく、加工性も良好であった。

Claims (13)

  1. 一方が開口した有底筒状の缶体を成形する工程と、
    前記缶体の表面に、塗料組成物の硬化塗膜層を形成する工程と、
    前記硬化塗膜層形成後の前記缶体の開口端部に加工を施す工程と、を含み、
    前記塗料組成物が、ポリエステル樹脂と、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂と、架橋剤とを含有する、
    缶の製造方法。
  2. 前記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、及びアジリジン系架橋剤からなる群より選択される、請求項1に記載の缶の製造方法。
  3. 前記ポリエステル樹脂の数平均分子量は、2000〜8000である、請求項1又は2に記載の缶の製造方法。
  4. 前記塗料組成物の固形分濃度が60〜65質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の缶の製造方法。
  5. 前記加工が、前記缶体の開口端部に対して、外周にネジ部を備えた口金部を成形する加工である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の缶の製造方法。
  6. サイズ塗料による塗装工程を含まない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の缶の製造方法。
  7. ポリエステル樹脂と、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂と、架橋剤とを含有する塗料組成物の硬化塗膜層を有する、缶。
  8. 前記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、及びアジリジン系架橋剤からなる群より選択される、請求項7に記載の缶。
  9. 前記硬化塗膜層のガラス転移温度が、48℃〜55℃である、請求項7又は8に記載の缶。
  10. 60℃における開栓トルクが150N・cm未満である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の缶。
  11. 60℃における開栓トルクと5℃における開栓トルクとの差が70N・cm未満である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の缶。
  12. サイズ塗料からなる塗膜層を有しない、請求項7〜11のいずれか一項に記載の缶。
  13. ネジ付缶である、請求項7〜12のいずれか一項に記載の缶。
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