JP2021138003A - クリヤ塗装ステンレス鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】コイルの状態で搬送する際に巻きズレを防止できるクリヤ塗装ステンレス鋼板を提供する。【解決手段】本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板10は、ステンレス鋼板11と、該ステンレス鋼板11の一方の面11aに形成された第一のクリヤ樹脂層12と、該ステンレス鋼板11の他方の面11bに形成された第二のクリヤ樹脂層13とを具備し、前記第二のクリヤ樹脂層13は、熱硬化性樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物と、潤滑剤とを含み、前記第一のクリヤ樹脂層12の静止摩擦係数をμ1とし、前記第二のクリヤ樹脂層13の静止摩擦係数をμ2としたときに、μ1−μ2が0.010以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、クリヤ塗装ステンレス鋼板に関する。
ステンレス鋼板はステンレス特有の美麗な金属光沢を活かした高級感のある外観が得られることから、家庭用や業務用の電化製品の筐体や内装材、外装材に広く使われている。
電化製品に使用されるステンレス鋼板は、非塗装で使用されるものと、表面に塗装を施して使用されるものとに大別される。特に、電化製品の外装材として使用されるステンレス鋼板は、意匠性を付与したり、耐食性や耐汚染性等を高めたりする目的からステンレス鋼板の表面(品質保証面)を塗装して使用される場合が多い。
ステンレス鋼板の表面に塗装が施されてクリヤ樹脂層が形成されたクリヤ塗装ステンレス鋼板は、電化製品等の筐体などに加工された後の製品搬送時に、ダンボール等との擦れによりアブレーションが発生する場合がある。
そこで、鋼板の表面に、ポリオレフィンワックス、フッ素樹脂微粒子、金属石けん等の潤滑剤と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含む上層皮膜を設けることで、耐アブレージョン性を改善する方法が提案されている(特許文献1)。
特開2008−248356号公報
ところで、クリヤ塗装ステンレス鋼板は、通常、コイルの状態で加工現場に搬送された後に製品サイズに切断されるが、搬送時の振動で巻きズレが起こることがある。巻きズレが起こると、コイル展開時に摩擦によりクリヤ塗装ステンレス鋼板の表面にスリップ傷が発生してしまう。
特許文献1に記載のように、鋼板の表面に潤滑剤を含む上層皮膜を設けることでダンボールに対する耐アブレージョン性は改善されるものの、クリヤ塗装ステンレス鋼板をコイルの状態で搬送する際の巻きズレ防止については検討されていない。
本発明の課題は、コイルの状態で搬送する際に巻きズレを防止できるクリヤ塗装ステンレス鋼板を提供することにある。
巻きズレを防止しようとする場合、クリヤ塗装ステンレス鋼板の表面と、コイルの状態のときに前記表面と接するクリヤ塗装ステンレス鋼板の裏面の静止摩擦係数の差、具体的は表面に対する裏面の静止摩擦係数を大きくして滑りにくくするのが一般的である。
しかしながら、本発明者等が鋭意検討した結果、クリヤ塗装ステンレス鋼板の表面と裏面の摩擦係数の差、すなわち第一のクリヤ樹脂層の静止摩擦係数(μ1)と第二のクリヤ樹脂層の静止摩擦係数(μ2)との差(μ1−μ2)が大きくなるほど、逆に巻きズレが生じやすくなることが分かった。
そこで、差(μ1−μ2)を0.010以下に規定することで、巻きズレを防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1] ステンレス鋼板と、該ステンレス鋼板の一方の面に形成された第一のクリヤ樹脂層と、該ステンレス鋼板の他方の面に形成された第二のクリヤ樹脂層とを具備し、前記第二のクリヤ樹脂層は、熱硬化性樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物と、潤滑剤とを含み、前記第一のクリヤ樹脂層の静止摩擦係数をμ1とし、前記第二のクリヤ樹脂層の静止摩擦係数をμ2としたときに、μ1−μ2が0.010以下である、クリヤ塗装ステンレス鋼板。
本発明によれば、コイルの状態で搬送する際に巻きズレを防止できるクリヤ塗装ステンレス鋼板を提供できる。
本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板の一実施形態例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板の一実施形態例について説明する。
図1は、本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板の一実施形態例を模式的に示す断面図である。
本実施形態例のクリヤ塗装ステンレス鋼板10は、ステンレス鋼板11と、該ステンレス鋼板11の一方の面11aに形成された第一のクリヤ樹脂層12と、該ステンレス鋼板11の他方の面11bに形成された第二のクリヤ樹脂層13を具備して構成されている。
なお、図1においては、説明の便宜上、寸法比は実際のものと異なったものである。
また、以下の説明において、ステンレス鋼板11の一方の面11aを「ステンレス鋼板の表面」とし、ステンレス鋼板11の一方の面(表面)11aとは反対側の面、すなわちステンレス鋼板11の他方の面11bを「ステンレス鋼板の裏面」とする。ステンレス鋼板11の表面11aは、ステンレス鋼板の品質保証面である。ここで、「品質保証面」とは、例えば製品の外板に本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板を用いたときに、製品の外面となる面のことである。
また、本発明において、「クリヤ」とは、可視光領域の光線透過率が30%以上のことである。可視光領域の光線透過率は、分光光度計を用いて、380nm〜750nmの波長範囲で測定した光線透過率である。
第一のクリヤ樹脂層12、第二のクリヤ樹脂層13の可視光領域の光線透過率が30%未満であると、可視光は僅かに透過しているものの、目視ではステンレス鋼板11を殆ど見ることはできない。そのため、ステンレスの持つ美麗な外観を活かした意匠は得られない。
特に、第一のクリヤ樹脂層12の可視光透過率は40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
また、本発明において、静止摩擦係数とは、物体が第一のクリヤ樹脂層12または第二のクリヤ樹脂層13の表面に静止した状態から動き始める瞬間の摩擦力(最大静止摩擦力)を決定する比例定数である。静止摩擦係数は、JIS P 8147:2010「紙及び板紙−静及び動摩擦係数の測定方法」に記載の方法、またはそれに準じた方法で測定することができる。
「ステンレス鋼板」
ステンレス鋼板11としては、フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト系、オーステナイト・フェライト系(二相系)など、一般に使用される公知のステンレス鋼板を用いることができる。
ステンレス鋼板11の表面11aは、第一のクリヤ樹脂層12が形成される前に研磨処理が施されていてもよい。
研磨処理としては、No.4研磨、ヘアライン(HL)研磨、2B研磨など、一般に使用される研磨方法が挙げられる。
また、ステンレス鋼板11の表面11aは、第一のクリヤ樹脂層12が形成される前に化成処理が施されていてもよい。ステンレス鋼板11の表面11aを化成処理することで、化成処理塗膜(図示略)が形成される。
化成処理塗膜としては、アミノシラン系シランカップリング剤およびエポキシシラン系シランカップリング剤の一方または両方を含有する塗膜が好ましい。ステンレス鋼板11と第一のクリヤ樹脂層12との間に、これらシランカップリング剤を含有する化成処理塗膜を有していれば、無公害なクロメートフリーにでき、さらにステンレス鋼板11と第一のクリヤ樹脂層12との密着性を高くできる。
ここで、アミノシラン系カップリング剤としては、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
エポキシ系シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
化成処理塗膜には、耐食性をさらに向上させるために、リン酸塩類、縮合リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ピロリン酸等のリン酸またはその塩類;アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、アルキド樹脂等の樹脂などが含まれてもよい。
化成処理塗膜の付着量は2〜50mg/mが好ましい。化成処理塗膜の付着量が2mg/m未満であると、光沢および耐食性が低下しやすくなる。一方、付着量が50mg/mを超えると、沸騰水試験後の塗膜表面にブリスターを生じることがある。化成処理塗膜の付着量の好ましい上限は30mg/mであり、より好ましくは10mg/mである。
化成処理塗膜の付着量は、蛍光X線分析にてSiO量を測定することによって求めることができる。
なお、ステンレス鋼板11の裏面11bにも、第二のクリヤ樹脂層13が形成される前に、研磨処理および化成処理の少なくとも一方が施されていてもよい。
「第一のクリヤ樹脂層」
第一のクリヤ樹脂層12は、ステンレス鋼板11の表面11a上に形成された塗膜である。
第一のクリヤ樹脂層12は、熱硬化性樹脂組成物(A)を含むことが好ましく、必要に応じて、潤滑剤、その他の成分を含んでいてもよい。
<熱硬化性樹脂組成物(A)>
熱硬化性樹脂組成物(A)は、熱硬化性樹脂(a)を含む。
熱硬化性樹脂組成物(A)は、熱硬化性樹脂(a)を硬化させる架橋樹脂をさらに含むことが好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物(A)は、硬化触媒をさらに含んでいてもよい。
(熱硬化性樹脂(a))
熱硬化性樹脂(a)としては特に制限されないが、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂などが挙げられる。例えば、第一のクリヤ樹脂層12に高硬度および透明性を付与する目的ではアクリル樹脂が好ましく、加工性を付与する目的ではポリエステル樹脂が好ましい。
アクリル樹脂としては、架橋性官能基を有するアクリル樹脂が好ましい。
架橋性官能基を有するアクリル樹脂はステンレス鋼板11に対する密着性に優れるので、第一のクリヤ樹脂層12が該アクリル樹脂を含むことで、ステンレス鋼板11と第一のクリヤ樹脂層12とが良好に密着する。
ここで、「架橋性官能基」とは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシシラン基などから選ばれる1種または2種以上の官能基である。アクリル樹脂は架橋性官能基を1分子あたり、2つ以上有することが好ましい。
架橋性官能基を有するアクリル樹脂は、例えば非官能性アクリル単量体と架橋性官能基を有する重合性単量体とを反応させることで得られる。このようにして得られるアクリル樹脂は、非官能性アクリル単量体単位と架橋性官能基を有する重合性単量体単位とを含む。
非官能性アクリル単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ラウリル等の脂肪族または環式アクリートなどが挙げられる。
これら非官能性アクリル単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋性官能基を有する重合性単量体としては、ヒドロキシ基を有する単量体、カルボキシ基を有する単量体、アルコキシシラン基を有する単量体等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する単量体は、1分子中にヒドロキシ基と重合性不飽和二重結合をそれぞれ1つ以上含有する単量体である。このような単量体としては、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキルエステル;ラクトン変性水酸基含有ビニル重合モノマー(例えば、プラクセルFM1、2、3、4、5、FA−1、2、3、4、5(以上、株式会社ダイセル製)等)などが挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体は、1分子中にカルボキシ基と重合性不飽和二重結合をそれぞれ1つ以上含有する単量体である。このような単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
アルコキシシラン基を有する単量体は、1分子中にアルコキシシラン基と重合性不飽和二重結合をそれぞれ1つ以上含有する単量体である。このような単量体としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これら架橋性官能基を有する重合性単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋性官能基を有するアクリル樹脂は、非官能性アクリル単量体単位および架橋性官能基を有する重合性単量体単位以外の他の単量体単位を含んでいてもよい。
他の単量体としては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミドなどが挙げられる。
これら他の単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂のガラス転移温度は30〜90℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。アクリル樹脂のガラス転移温度が30℃以上であれば、第一のクリヤ樹脂層12の表面硬度が高まる。また、クリヤ塗装ステンレス鋼板10を連続プレスした際に摩擦し、加工発熱して、表面の温度が80〜100℃に上昇するため、アクリル樹脂のガラス転移温度が30℃未満であると、第一のクリヤ樹脂層12が軟化して、金型に付着することがある。また、アクリル樹脂のガラス転移温度が90℃を超えると、ピンホール、レベリング不足等が生じる傾向にある。
アクリル樹脂のガラス転移温度を前記範囲にするためには、アクリル樹脂の組成を適宜選択すればよい。
アクリル樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)の測定により求めた値である。
アクリル樹脂の数平均分子量は3000〜50000が好ましく、4000〜10000がより好ましい。アクリル樹脂の数平均分子量が3000以上であれば、顔料分散性が高まり、光沢性および着色性に優れた第一のクリヤ樹脂層12が得られる。また、熱硬化性樹脂組成物が後述のイソシアネート樹脂を含む場合、アクリル樹脂の数平均分子量が3000未満であると、イソシアネート樹脂との反応性が低くなり、第一のクリヤ樹脂層12が形成されにくくなることがある。アクリル樹脂の数平均分子量が50000を超えると、溶媒溶解性が低くなるため、後述する塗料(A)や塗料(B)が得られにくくなる。
アクリル樹脂の数平均分子量は、アクリル樹脂を製造する際の条件(例えば、重合温度、重合開始剤の種類や量等)によって調整することができる。
アクリル樹脂の数平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の値である。
ポリエステル樹脂としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の架橋性官能基を有する樹脂が挙げられ、多価アルコールと多価カルボン酸とを反応させることで得られる。
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,8−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,3−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)ジメチルヒダントイン、ポリエトフメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、グリセリン、ソルビトール、アンニトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−(ヒドロキシエチル)イソシアナートなどが挙げられる。
多価カルボン酸としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、無水コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、無水エンド酸などが挙げられる。
これら多価アルコールや多価カルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(架橋樹脂)
架橋樹脂は、熱硬化性樹脂(a)を硬化させる樹脂である。
熱硬化性樹脂組成物(A)が架橋樹脂を含むことで、熱硬化性樹脂(a)が架橋構造となる。すなわち、熱硬化性樹脂組成物(A)は、架橋樹脂で架橋された熱硬化性樹脂(a)を含む。熱硬化性樹脂(a)が架橋樹脂で架橋されることで、第一のクリヤ樹脂層12の強度が高まるとともに、ステンレス鋼板11に対する第一のクリヤ樹脂層12の密着性が向上する。
架橋樹脂は、熱硬化性樹脂組成物(A)に含まれる熱硬化性樹脂(a)の種類に応じて決定される。例えば、熱硬化性樹脂組成物(A)が熱硬化性樹脂(a)としてアクリル樹脂を含有する場合、架橋樹脂としてはイソシアネート樹脂が好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物(A)が熱硬化性樹脂としてポリエステル樹脂を含有する場合、架橋樹脂としてはアミノ樹脂やイソシアネート樹脂が好ましい。
イソシアネート樹脂は、主にアクリル樹脂やポリエステル樹脂を硬化させる架橋樹脂である。熱硬化性樹脂組成物(A)がイソシアネート樹脂を含有することで、加工性に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られる。加えて、アクリル樹脂やポリエステル樹脂が架橋構造となり、第一のクリヤ樹脂層12の強度が高まるとともに、ステンレス鋼板11に対する第一のクリヤ樹脂層12の密着性がより向上する。
イソシアネート樹脂には、常温下でも硬化反応が進行するノンブロックタイプと、イソシアネート基をフェノール類、オキシム類、活性メチレン類、ε−カプロラクタム類、トリアゾール類、ピラゾール類等のブロック剤によって封鎖することで、常温下では反応が進まないが、加熱することによって硬化反応が進行するブロックタイプとがある。
イソシアネート樹脂としては、ノンブロックタイプおよびブロックタイプのいずれも使用可能であるが、プレコート型塗装による生産を行う場合は、連続生産時の作業性に優れる点で、ブロックタイプが好ましい。
ブロックタイプのイソシアネート樹脂は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。このような化合物としては、具体的に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;これらイソシアネートのビューレットタイプの付加物やイソシアヌル環タイプの付加物などが挙げられる。
ブロックタイプのイソシアネート樹脂の市販品としては、例えば、デスモジュールBL1100、BL1265MPA/X、BL3575/1 MPA/SN、BL3475BS/SN、BL3272MPA、BL3370MPA、BL4265SN、デスモーサム2170、スミジュール3175(以上、住化コベストロウレタン株式会社製)、デュラネート17B−60PX、TPA−B80X、MF−B60X、MF−K60X(以上、旭化成株式会社製)、バーノックDB−980K、D−550、B3−867、B7−887−60(以上、DIC株式会社製)、コロネート2515、2507、2513(以上、東ソー株式会社製)などが挙げられる。
これらブロックタイプのイソシアネート樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂(a)として架橋性官能基を有するアクリル樹脂またはポリエステル樹脂を用いる場合、熱硬化性樹脂(a)とイソシアネート樹脂との割合は、熱硬化性樹脂(a)の架橋性官能基(例えば、OH基やCOOH基等)とイソシアネート樹脂のイソシアネート基(NCO基)との比が当量比で、架橋性官能基/NCO基=1.0/0.1〜1.0/2.0となる範囲が好ましく、1.0/0.2〜1.0/1.5となる範囲がより好ましく、1.0/0.5〜1.0/1.2となる範囲がさらに好ましい。当量比が1.0/0.1以上であれば、熱硬化性樹脂組成物(A)の架橋が十分となるため、ステンレス鋼板11に対する第一のクリヤ樹脂層12の密着性が向上するとともに、耐水性や耐薬品性も良好となる。当量比が1.0/2.0以下であれば、イソシアネート基が適量となるため未反応のイソシアネート樹脂が残りにくくなり、熱硬化性樹脂組成物(A)の硬化性を良好に維持できる。熱硬化性樹脂組成物(A)の硬化性が良好であれば、熱硬化性樹脂組成物(A)の硬度が低下するのを抑制できるので、第一のクリヤ樹脂層12に加圧による圧痕が発生するのを抑制できる。
アミノ樹脂は、主にポリエステル樹脂を硬化させる架橋樹脂である。熱硬化性樹脂組成物(A)がアミノ樹脂を含有することで、ポリエステル樹脂が架橋構造となり、第一のクリヤ樹脂層12の強度が高まるとともに、ステンレス鋼板11に対する第一のクリヤ樹脂層12の密着性がより向上する。
なお、熱硬化性樹脂(a)としてアクリル樹脂を用いる場合、架橋樹脂として上述したイソシアネート樹脂とアミノ樹脂とを併用してもよい。
アミノ樹脂は、アミノ化合物(メラミン、グアナミン、尿素)とホルムアルデヒド(ホルマリン)を付加反応させ、アルコールで変性した樹脂の総称である。アミノ樹脂の具体例としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化尿素メラミン樹脂、グリコールウリル樹脂、アセトグアナミン樹脂、シクロヘキシルグアナミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐指紋汚染性、耐疵付き性、耐薬品性という面からメラミン樹脂が好ましい。
メラミン樹脂は、変性するアルコールの種類によってメチル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、混合アルキル化メラミン樹脂などに分類される。これらの中でも、反応性に優れ、かつ可とう性とのバランスに優れる点で、メチル化メラミン樹脂が特に好ましい。
具体的には、メチル化メラミン樹脂としては、サイメル300、301、303、350、370、771、325、327、703、712、715、701(以上、三井化学株式会社製)、LUWIPAL 063、066、068、069、072、073(以上 BASFジャパン株式会社製)、アミディアL−105(以上、DIC株式会社製)、メラン522、523、620、622、623(以上、日立化成株式会社製)等が挙げられる。
n−ブチル化メラミン樹脂としては、マイコート506、508、ユーバン20SB、20SE、21R、22R、122、125、128、220、225、228、28−60、20HS、2020、2021、2028、120(以上、三井化学株式会社製)、PLASTOPAL EBS 100A、100B、400B、600B、CB(以上、BASFジャパン株式会社製)、アミディアJ−820、L−109、L−117、L−127、L−164(以上、DIC株式会社製)、メラン21A、22、220、2000、8000(以上、日立化成株式会社製)等が挙げられる。
イソブチル化メラミン樹脂としては、ユーバン60R、62、62E、360、361、165、166−60、169、2061(以上、三井化学株式会社製)、アミディアG−821、L−145、L−110、L−125(以上、DIC株式会社製)、PLASTOPAL EBS 4001、FIB、H731B、LR8824(以上、BASFジャパン株式会社製)、メラン27、28、28D、245、265、269、289(以上、日立化成株式会社製)等が挙げられる。
混合アルキル化メラミン樹脂としては、サイメル267、285、232、235、236、238、211、254、204、212、202、207(以上、三井化学株式会社製)等が挙げられる。
これらアミノ樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミノ樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂(a)の固形分100質量部に対して、5〜40質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましく、15〜30質量部がさらに好ましい。アミノ樹脂の含有量が5質量部以上であれば、第一のクリヤ樹脂層12の架橋密度が上がるので、ステンレス鋼板11に対する密着性がより向上する。また、第一のクリヤ樹脂層12の表面硬度が十分なものとなるので、耐疵付き性が高まる。一方、アミノ樹脂の含有量が40質量部以下であれば、第一のクリヤ樹脂層12を容易に形成できる。
(硬化触媒)
硬化触媒は、熱硬化性樹脂(a)と架橋樹脂との架橋反応を促進させるものである。
硬化触媒は、熱硬化性樹脂組成物(A)に含まれる架橋樹脂の種類に応じて決定される。例えば、熱硬化性樹脂組成物(A)が架橋樹脂としてイソシアネート樹脂を含有する場合、硬化触媒としては有機錫触媒が好ましい。
有機錫触媒としては、例えばジ−n−ブチル錫オキサイド、n−ジブチル錫クロライド、ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジアセテート、ジ−n−オクチル錫オキサイド、ジ−n−オクチル錫ジラウリレート、テトラ−n−ブチル錫などが挙げられる。
これら有機錫触媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
イソシアネート樹脂の硬化触媒の含有量は、熱硬化性樹脂(a)と架橋樹脂の固形分の合計100質量部に対して、0.005〜0.08質量部が好ましく、0.01〜0.06質量部がより好ましい。硬化触媒の含有量が0.005質量部以上であれば、硬化触媒の効果が十分に得られ、硬化時間を短縮できる。硬化触媒の含有量が0.08質量部を超えると、単に硬化触媒の効果が頭打ちするだけでなく、反応性が過剰に高くなることによってイソシアネート基(NCO基)が空気中の水分等と反応するなど、熱硬化性樹脂(a)の架橋性官能基(例えば、OH基やCOOH基等)との1:1反応をかえって阻害する場合がある。その結果、耐侯性が低下するなど本来の性能を発揮できなくなる恐れがある。また、イソシアネート樹脂としてノンブロックタイプを用いた場合、後述する塗料(A)や塗料(B)の反応性が極端に速くなるために、熱硬化性樹脂(a)とイソシアネート樹脂とを混合した後、直ちに塗装する必要性が生じ、塗装作業性が著しく低下する。
熱硬化性樹脂組成物(A)が架橋樹脂としてアミノ樹脂を含有する場合、硬化触媒としてはスルホン酸系やアミン系の硬化触媒が好ましい。特に、第一のクリヤ樹脂層12の表面硬度をより高める目的で、より反応性の高いスルホン酸系の硬化触媒である、p−トルエンスルホン酸やドデシルベンゼンスルホン酸を用いることが好ましい。
アミノ樹脂の硬化触媒の含有量は、熱硬化性樹脂(a)と架橋樹脂の固形分の合計100質量部に対して、0.5〜5質量部が好ましく、1〜2質量部がより好ましい。硬化触媒の含有量が0.5質量部以上であれば、硬化触媒の効果が十分に得られ、硬化時間を短縮できる。硬化触媒の含有量が5質量部を超えても、硬化触媒の効果が頭打ちとなるだけでなく、クリヤ塗装ステンレス鋼板10の加工性が低下する場合がある。
<潤滑剤>
潤滑剤としては、オレフィン系潤滑剤、フッ素樹脂、フッ素樹脂以外の非ポリオレフィン系ワックス(以下、「他の非ポリオレフィン系ワックス」ともいう。)などが挙げられる。
潤滑剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
オレフィン系潤滑剤としては、ポリオレフィン系ワックス、ポリオレフィンパウダー(粉体状のポリオレフィン)などが挙げられる。これらの中でも、加工性がより向上する観点から、ポリオレフィン系ワックスが好ましい。
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば、パラフィン、マイクロクリスタリン、ポリエチレン、ポリエチレン−フッ素等の炭化水素系ワックスなどが挙げられる。
ポリオレフィン系ワックスは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
クリヤ塗装ステンレス鋼板10を加工する際には、加工発熱および摩擦熱により塗膜温度が上昇するため、ポリオレフィン系ワックスの融点は70〜160℃が好ましい。ポリオレフィン系ワックスの融点が70℃以上であれば、加工時に軟化溶融しにくく、固形潤滑添加物としての優れた特性を十分に発揮できる。ポリオレフィン系ワックスの融点が160℃以下であれば、硬い粒子が表面に存在しにくくなるため摩擦特性が低下しにくく、高い加工性を良好に維持できる。
ポリオレフィン系ワックスの酸価は、0〜30mgKOH/gが好ましい。ポリオレフィン系ワックスの酸価が30mgKOH/g以下であれば、熱硬化性樹脂組成物との相溶性が高くなりすぎず、ポリオレフィン系ワックスが均一に塗膜表面に浮き上がりやすくなるため、クリヤ塗装ステンレス鋼板10の加工性が向上する傾向にある。
ポリオレフィン系ワックスの平均粒子径は0.1〜7μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。ポリオレフィン系ワックスの平均粒子径が0.1μm以上であれば、得られるクリヤ塗装ステンレス鋼板10の加工性を良好に維持できる。ポリオレフィン系ワックスの平均粒子径が7μmを超えると、第一のクリヤ樹脂層12中でのポリオレフィン系ワックスの分散性が低くなる傾向にある。
ポリオレフィンパウダーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ブテンコポリマー等のパウダーなどが挙げられる。
ポリオレフィンパウダーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィンパウダーの平均粒子径は1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜20μmであることがさらに好ましい。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などが挙げられる。
フッ素樹脂の市販品としては、例えばFLUON PTFE L150J、L169J、L170J、L172J、L−173J(以上、旭硝子株式会社製);DYNEON PTFE マイクロパウダー TF9201Z、TF9205、TF9207Z(以上、住友スリーエム株式会社製);ルブロンL−2、L−5、L−5F(以上、ダイキン工業株式会社製);KTL−1N、2N、4N、8N、8HM、8F、10N、20N、500F(以上、株式会社喜多村製)などが挙げられる。
フッ素樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素樹脂は粉体状でもよいし、液状でもよいが、第一のクリヤ樹脂層12の厚さ方向にも均一に分散しやすい観点から、粉体状が好ましい。
フッ素樹脂が粉体状の場合、フッ素樹脂の平均粒子径は1〜100μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましい。
他の非ポリオレフィン系ワックスとしては、カルナバワックス、ラノリン、ポリアマイド、シリコーン変性添加剤などが挙げられる。
他の非ポリオレフィン系ワックスは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
第一のクリヤ樹脂層12中の潤滑剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(A)の固形分100質量部に対して0.25〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。潤滑剤の含有量が0.25質量部以上であれば、十分な潤滑性向上効果が得られ、クリヤ塗装ステンレス鋼板10の加工性が向上する。潤滑剤の含有量が10質量部以下であれば第一のクリヤ樹脂層12の表面にムラが発生しにくく、クリヤ度を良好に維持できる。
<他の成分>
他の成分としては、例えば顔料、艶消し剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
他の成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
顔料としては、例えば無機顔料、有機顔料、パール顔料等が挙げられる。
無機顔料としては、例えば弁柄、透明弁柄、黄色酸化鉄、クロムバーミリオン、酸化クロム、カーボンブラック、チタンホワイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミニウム、アルミナ、シリカ等が挙げられる。
有機顔料としては、例えばキナクリドン、イソインドリノン、インダンスレンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ペリレンレッド等が挙げられる。
顔料は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
第一のクリヤ樹脂層12中の顔料の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(A)の固形分100質量部に対して6質量部以下が好ましく、1〜6質量部がより好ましい。顔料の含有量が1質量部以上であれば、第一のクリヤ樹脂層12を十分に着色できる。顔料の含有量が6質量部以下であれば、クリヤ塗装ステンレス鋼板10の加工性が向上する。
艶消し剤としては、例えばシリカ、樹脂ビーズ等が挙げられる。
シリカとしては、例えば結晶性シリカ等が挙げられる。結晶性シリカには乾湿法で製造されるもの、湿式法で製造されるものがあるが、どちらも特に限定されることはない。
樹脂ビーズとしては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾクアナミン樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等のビーズが挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂ビーズが好ましい。
艶消し剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<膜厚>
第一のクリヤ樹脂層12の膜厚は1〜20μmが好ましく、2〜10μmがより好ましい。第一のクリヤ樹脂層12の膜厚が1μm以上であれば、加工性を良好に維持できる。第一のクリヤ樹脂層12の膜厚が20μm以下であれば、透明性を良好に維持できるので、ステンレス鋼板11の素地が見えやすく、意匠性に優れる。
<静止摩擦係数>
第一のクリヤ樹脂層12の静止摩擦係数(μ1)は、0.100〜0.350が好ましく、0.150〜0.300がより好ましい。静止摩擦係数(μ1)が0.100以上であれば、第一のクリヤ樹脂層12が潤滑剤を含む場合、潤滑剤のムラが起きにくく、クリヤ度を良好に維持できる。静止摩擦係数(μ1)が0.350以下であれば、クリヤ塗装ステンレス鋼板10をプレス加工する際に、十分な潤滑性を示す。
静止摩擦係数(μ1)は、第一のクリヤ樹脂層12に含まれる成分により調節できる。特に、第一のクリヤ樹脂層12が潤滑剤を含む場合、潤滑剤の種類や含有量によって静止摩擦係数(μ1)を容易に調節できる。例えば、潤滑剤の含有量が多くなるほど、静止摩擦係数(μ1)は小さくなる傾向にある。
「第二のクリヤ樹脂層」
第二のクリヤ樹脂層13は、ステンレス鋼板11の裏面11b上に形成された塗膜である。
第二のクリヤ樹脂層13は、熱硬化性樹脂組成物(B)と、潤滑剤とを含み、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。
<熱硬化性樹脂組成物(B)>
熱硬化性樹脂組成物(B)は、熱硬化性樹脂(b)を含む。
熱硬化性樹脂組成物(B)は、熱硬化性樹脂(b)を硬化させる架橋樹脂をさらに含むことが好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物(B)は、硬化触媒をさらに含んでいてもよい。
(熱硬化性樹脂(b))
熱硬化性樹脂(b)としては特に制限されないが、熱硬化性樹脂組成物(A)の説明において先に例示した熱硬化性樹脂(a)が挙げられる。これらの中でも、第二のクリヤ樹脂層13の硬度が高まる観点から、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が好ましい。第二のクリヤ樹脂層13はステンレス鋼板11の裏面に位置していることから、家電製品の断熱材と接する場合があるが、熱硬化性樹脂(b)がエポキシ樹脂であれば断熱材との接着性が高まる。
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、汎用性、選択性、コストを考慮すると、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(架橋樹脂)
架橋樹脂は、熱硬化性樹脂(b)を硬化させる樹脂である。
熱硬化性樹脂組成物(B)が架橋樹脂を含むことで、熱硬化性樹脂(b)が架橋構造となる。すなわち、熱硬化性樹脂組成物(B)は、架橋樹脂で架橋された熱硬化性樹脂(b)を含む。熱硬化性樹脂(b)が架橋樹脂で架橋されることで、第二のクリヤ樹脂層13の強度が高まるとともに、ステンレス鋼板11に対する第二のクリヤ樹脂層13の密着性が向上する。
架橋樹脂は、熱硬化性樹脂組成物(B)に含まれる熱硬化性樹脂(b)の種類に応じて決定される。例えば、熱硬化性樹脂組成物(B)が熱硬化性樹脂(b)としてエポキシ樹脂を含有する場合、架橋樹脂としてはアミノ樹脂が好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物(B)が熱硬化性樹脂(b)としてアクリル樹脂を含有する場合、架橋樹脂としてはイソシアネート樹脂が好ましい。
これら、アミノ樹脂およびイソシアネート樹脂としては、熱硬化性樹脂組成物(A)の説明において先に例示したアミノ樹脂およびイソシアネート樹脂が挙げられる。また、架橋樹脂の含有量についても、熱硬化性樹脂組成物(A)と同様である。
(硬化触媒)
硬化触媒は、熱硬化性樹脂(b)と架橋樹脂との架橋反応を促進させるものである。
硬化触媒は、熱硬化性樹脂組成物(B)に含まれる架橋樹脂の種類に応じて決定される。例えば、熱硬化性樹脂組成物(B)が架橋樹脂としてアミノ樹脂を含有する場合、硬化触媒としてはスルホン酸系やアミン系の硬化触媒が好ましい。熱硬化性樹脂組成物(B)が架橋樹脂としてイソシアネート樹脂を含有する場合、硬化触媒としては有機錫触媒が好ましい。
これら、スルホン酸系やアミン系の硬化触媒および有機錫触媒としては、熱硬化性樹脂組成物(A)の説明において先に例示したスルホン酸系やアミン系の硬化触媒および有機錫触媒が挙げられる。また、硬化触媒の含有量についても、熱硬化性樹脂組成物(A)と同様である。
<潤滑剤>
潤滑剤としては、熱硬化性樹脂組成物(A)の説明において先に例示した潤滑剤が挙げられる。
潤滑剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
第二のクリヤ樹脂層13中の潤滑剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(B)の固形分100質量部に対して0.25〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。潤滑剤の含有量が0.25質量部以上であれば、十分な潤滑性向上効果が得られ、クリヤ塗装ステンレス鋼板10の加工性が向上する。潤滑剤の含有量が10質量部以下であれば第二のクリヤ樹脂層13の表面にムラが発生しにくく、クリヤ度を良好に維持できる。
<他の成分>
他の成分としては、熱硬化性樹脂組成物(A)の説明において先に例示した他の成分が挙げられる。
他の成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<膜厚>
第二のクリヤ樹脂層13の膜厚は1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。第二のクリヤ樹脂層13の膜厚が1μm以上であれば、加工性を良好に維持できる。第二のクリヤ樹脂層13の厚さの上限値は特に限定されないが、第二のクリヤ樹脂層13にも意匠性が求められる場合には、20μm以下が好ましい。
<静止摩擦係数>
第二のクリヤ樹脂層13の静止摩擦係数(μ2)は、0.100〜0.350が好ましく、0.150〜0.300がより好ましい。静止摩擦係数(μ2)が0.100以上であれば、シート材で積層したときに荷崩れを起こしにくい。静止摩擦係数(μ2)が0.350以下であれば、クリヤ塗装ステンレス鋼板10をプレス加工する際に、プレス加工で十分な潤滑性を示す。
静止摩擦係数(μ2)は、第二のクリヤ樹脂層13に含まれる潤滑剤の種類や含有量により調節できる。例えば、潤滑剤の含有量が多くなるほど、静止摩擦係数(μ2)は小さくなる傾向にある。
また、第一のクリヤ樹脂層12の静止摩擦係数(μ1)と第二のクリヤ樹脂層13の静止摩擦係数(μ2)との差(μ1−μ2)は、0.010以下であり、0.005以下が好ましい。差(μ1−μ2)が0.010以下であれば、クリヤ塗装ステンレス鋼板10をコイルの状態で搬送しても巻きズレが生じにくい。巻きズレ防止の観点では、差(μ1−μ2)の値は小さいほど好ましい。ただし、差(μ1−μ2)の値が小さすぎると、すなわち、第二のクリヤ樹脂層13の静止摩擦係数(μ2)が第一のクリヤ樹脂層12の静止摩擦係数(μ1)に対して大きすぎると、クリヤ塗装ステンレス鋼板10をプレス加工する場合に、割れが生じることがある。よって、プレス加工時の割れ防止の観点から、差(μ1−μ2)は−0.200以上が好ましく、−0.150以上がより好ましい。
「クリヤ塗装ステンレス鋼板の製造方法」
次に、上述したクリヤ塗装ステンレス鋼板10の製造方法の一例について説明する。なお、クリヤ塗装ステンレス鋼板10の製造方法は以下の例に限定されるものではない。
クリヤ塗装ステンレス鋼板10は、ステンレス鋼板11の表面11aに第一のクリヤ樹脂層12を形成し、ステンレス鋼板11の裏面11bに第二のクリヤ樹脂層13を形成すること(クリヤ樹脂層形成工程)で得られる。
なお、クリヤ樹脂層形成工程に先立ち、上述したようにステンレス鋼板11を化成処理することが好ましい(化成処理膜形成工程)。
(化成処理膜形成工程)
化成処理膜形成工程は、ステンレス鋼板11の表面11aおよび裏面11bの少なくとも一方に、化成処理液を塗布し、乾燥して、化成処理塗膜(図示略)を形成する工程である。
前記化成処理液としては、例えば上述したアミノシラン系カップリング剤およびエポキシシラン系カップリング剤の一方または両方を含むものが好ましい。また、化成処理液としては、市販品を用いることができる。市販の化成処理液としては、例えばパルコートE305、3750、3751、3753、3756、3757、3970(日本パーカライジング株式会社製)、アルサーフ440(日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社製)などが挙げられる。
化成処理液の塗布方法としては、例えば、スプレー、ロールコート、バーコート、カーテンフローコート、静電塗布等を採用できる。
化成処理液の乾燥温度(表面温度)は60〜140℃とすることが好ましい。
なお、化成処理を行うに際し、必要に応じてアルカリ脱脂や酸、アルカリによるエッチング等の公知の前処理をステンレス鋼板11の表面11aおよび裏面11bの少なくとも一方に施してもよい。
(クリヤ樹脂層形成工程)
クリヤ樹脂層形成工程は、第一のクリヤ樹脂層形成工程と、第二のクリヤ樹脂層形成工程とを有する。
第一のクリヤ樹脂層形成工程は、ステンレス鋼板11の表面11aまたはステンレス鋼板11の表面11aに形成された化成処理膜上に、第一のクリヤ樹脂層形成用塗料(以下、「塗料(A)」ともいう。)を塗布し、硬化させて第一のクリヤ樹脂層12を形成する工程である。
塗料(A)は、例えば熱硬化性樹脂組成物(A)と、溶媒と、必要に応じて潤滑剤およびその他の成分の1つ以上とを含む。
塗料(A)に用いられる溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン、ヘキサン等の炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;ジエチルエーテル等のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒などが挙げられる。これら有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
塗料(A)の塗布方法としては、化成処理液の塗布方法と同じ方法が適用される。
塗料(A)を塗装した後の硬化条件(乾燥温度)は、ステンレス鋼板11の素材最高到達温度(PMT)にして200〜270℃となるように加熱することが好ましく、より好ましくは210〜250℃である。素材最高到達温度が200℃未満であると、硬化反応が十分に進まず、第一のクリヤ樹脂層12の表面硬度が低下するだけでなく、ステンレス鋼板11と第一のクリヤ樹脂層12との密着性が低下することがある。一方、素材最高到達温度が270℃を超えると、第一のクリヤ樹脂層12の柔軟性が低下しやすくなる。加えて、クリヤ塗装ステンレス鋼板10が黄変して意匠性を低下させることがある。
第二のクリヤ樹脂層形成工程は、ステンレス鋼板11の裏面11bまたはステンレス鋼板11の裏面11bに形成された化成処理膜上に、第二のクリヤ樹脂層形成用塗料(以下、「塗料(B)」ともいう。)を塗装し、硬化させて第二のクリヤ樹脂層13を形成する工程である。
塗料(B)は、熱硬化性樹脂組成物(B)と、潤滑剤と、溶剤と、必要に応じてその他の成分とを含む。
塗料(B)に用いられる溶媒は、塗料(A)に用いられる溶媒と同様である。
塗料(B)の塗布方法、および塗料(B)の塗装した後の硬化条件は、塗料(A)と同様である。
「作用効果」
以上説明したクリヤ塗装ステンレス鋼板は、第一のクリヤ樹脂層の静止摩擦係数(μ1)と第二のクリヤ樹脂層の静止摩擦係数(μ2)との差(μ1−μ2)が0.010以下であるため、コイルの状態で搬送しても巻きズレが生じにくい。
ところで、ステンレス鋼板の裏面に第二のクリヤ樹脂層を設けなくても、静止摩擦係数(μ1)とステンレス鋼板の裏面の静止摩擦係数(μ3)との差(μ1−μ3)が0.010以下であれば、巻きズレを防止できる。しかし、この場合、静止摩擦係数(μ3)は変更できないため、差(μ1−μ3)が0.010以下となるように、静止摩擦係数(μ1)を調節する必要があるが、ステンレス鋼板の表面は、ステンレス鋼板の品質保証面である。そのため、第一のクリヤ樹脂層はユーザー仕様に設計される場合が多く、静止摩擦係数(μ1)を所望の値となるように調節するのが困難となることがある。
しかし、本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板は、ステンレス鋼板の裏面に第二のクリヤ樹脂層が設けられているので、静止摩擦係数(μ1)に対する静止摩擦係数(μ2)を調節すればよい。第二のクリヤ樹脂層はステンレス鋼板の裏面に設けられるため、第一のクリヤ樹脂層に比べて配合組成を変更しやすく、静止摩擦係数(μ2)の調節の自由度が高い。
しかも、本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板は、ステンレス鋼板の表面に加えて裏面にもクリヤ樹脂層が形成されているので、錆防止性に優れる。特に、家電製品の断熱材と接する場合には、断熱材との接着性にも優れる。
「用途」
本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板は、家庭用や業務用の電化製品、電子機器製品の筐体や内装材、表装材として好適に使用される。
「他の実施形態」
本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板は、上述したものに限定されない。図1に示すクリヤ塗装ステンレス鋼板10は、単層構造の第一のクリヤ樹脂層12および第二のクリヤ樹脂層13を備えているが、第一のクリヤ樹脂層12や第二のクリヤ樹脂層13は2層以上の多層構造であってもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
「アクリル樹脂の製造」
アクリル樹脂として、以下のようにして製造したアクリル樹脂の溶液を用いた。
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート、窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、表1に示す配合量で、トルエン、酢酸ブチルを入れ、110℃まで昇温し、窒素ガスを吹き込みながら攪拌し、メタクリル酸メチル、スチレン、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸メチル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらにAIBNを追加して同温度でさらに3時間反応させて、不揮発分50%のアクリル樹脂の溶液を得た。
得られたアクリル樹脂のガラス転移温度および数平均分子量を表1に示す。
Figure 2021138003
「熱可塑性樹脂組成物の調製」
<熱可塑性樹脂組成物(A−1)の調製>
アクリル樹脂の溶液200質量部(固形分換算で100質量部)に、イソシアネート樹脂としてブロックイソシアネート(住化コベストロウレタン株式会社製、商品名「デスモジュールBL3575/1 MPA/SN」、NCO含有率10.5質量%)20質量部を配合し、熱硬化性樹脂組成物(A−1)を得た。なお、アクリル樹脂のヒドロキシル基(OH基)1モルに対する、イソシアネート樹脂のイソシアネート基(NCO基)の割合(NCO/OH)は1モルであった。
<熱可塑性樹脂組成物(A−2)の調製>
ポリエステル樹脂溶液(三井化学株式会社製、商品名「アルマテックスP−646」)100質量部と、メチル化メラミン樹脂溶液(三井サイテック株式会社製、「サイメル303」)15質量部とを混合し、熱硬化性樹脂組成物(A−2)を得た。
<熱可塑性樹脂組成物(A−3)の調製>
ポリエステル樹脂溶液(東洋紡株式会社製、商品名「バイロンGK−36」)100質量部と、メチル化メラミン樹脂溶液(三井サイテック株式会社製、「サイメル303」)30質量部とを混合し、熱硬化性樹脂組成物(A−3)を得た。
<熱可塑性樹脂組成物(B−1)の調製>
エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液(三井化学株式会社製、「エポキー803」)100質量部と、メチル化メラミン樹脂溶液(三井サイテック株式会社製、「サイメル703」)20質量部とを混合し、熱硬化性樹脂組成物(B−1)を得た。
「潤滑剤」
潤滑剤として、以下に示す化合物を用いた。
・PEWax:ポリエチレンワックス(株式会社岐阜セラツク製造所製、商品名「ハイフラットX15P−2」、平均粒子径3.5μm)。
・PTFE:粉体状のポリテトラフルオロエチレン(スリーエム ジャパン株式会社製、商品名「DYNEON PTFE マイクロパウダー TF9201Z」、平均粒子径6μm)。
「顔料」
顔料として、以下に示す化合物を用いた。
・アルミニウム(東洋アルミニウム株式会社製、商品名「アルペースト6390」)。
・フタロシアニングリーン(大日精化工業株式会社製、商品名「シアニングリーン2G550D」)。
・ペリレンレッド(BASF社製、商品名「パリオゲンレッドL3885」)。
・カーボンブラック(コロンビアインダストリー社製、商品名「Raven5000」)。
・パール:パール顔料(メルクパフォーマンスマテリアルズ株式会社製、商品名「イリオジン111WNT」)。
・透明弁柄(BASF社製、商品名「Sicotrans RedL2817」)。
・フタロシアニンブルー(東洋インキ株式会社製、商品名「リオノールブルーESP」)。
「艶消し剤」
艶消し剤として、以下に示す化合物を用いた。
・シリカ:結晶性シリカ(富士シリシア化学株式会社製、商品名「サイリシア446」)。
・アクリル樹脂ビーズ:架橋型のアクリル樹脂ビーズ(綜研化学株式会社製、「MX−1000」)。
「測定・評価」
<静止摩擦係数の測定>
JIS P 8147:2010「紙及び板紙−静及び動摩擦係数の測定方法」に記載の方法で、第一のクリヤ樹脂層と、第二のクリヤ樹脂層またはステンレス鋼板の裏面の静止摩擦係数をそれぞれ測定した。
<巻きズレ防止の評価>
コイルの状態でコイルセンターに搬送されたクリヤ塗装ステンレス鋼板を引き出しながらスリット加工する際に、クリヤ塗装ステンレス鋼板の全長・全幅について検査員による目視検査を行い、以下の評価基準にて巻きズレ防止を評価した。評価結果が「5」または「4」の場合、巻きズレを防止できたと判断する。
5:全く傷がない。
4:加工の序盤で傷がなくなる。
3:加工の中盤で傷がなくなる。
2:全長について傷が見られる。
1:全長全幅について多くの傷が見られる。
「実施例1」
<塗料の調製>
熱硬化性樹脂組成物(A−1)を固形分換算で100質量部と、潤滑剤としてPEWax1.5質量部と、顔料としてアルミニウム5.0質量部と、艶消し剤としてシリカ0.6質量部およびアクリル樹脂ビーズ0.2質量部とを混合し、第一のクリヤ樹脂層形成用塗料(塗料(A))を調製した。
別途、熱硬化性樹脂組成物(B−1)を固形分換算で100質量部と、潤滑剤としてポリエチレンワックス1.0質量部と、顔料としてフタロシアニングリーン2.0質量部とを混合し、第二のクリヤ樹脂層形成用塗料(塗料(B))を調製した。
<クリヤ塗装ステンレス鋼板の製造>
(化成処理膜形成工程)
ステンレス鋼板としては、全長1300m、幅1mのSUS430/No.4研磨仕上げ材を用いた。
このステンレス鋼板の両面にノンクロメートの化成処理液をロールコーターにて蛍光X線にてSiOが2〜10mg/mになるように塗装し、素材最高到達温度(PMT)が100℃になるよう乾燥させ、ステンレス鋼板の表面および裏面に化成処理膜を形成した。
(クリヤ樹脂層形成工程)
ステンレス鋼板の表面に形成された化成処理膜上に、塗料(A)を乾燥後の厚さが4μmとなるようにロールコーターにて塗装し、素材最高到達温度(PMT)が224℃になるように乾燥させて、第一のクリヤ樹脂層を形成した。
同時に、ステンレス鋼板の裏面に形成された化成処理膜上に、塗料(B)を乾燥後の厚さが2μmとなるようにロールコーターにて塗装し、素材最高到達温度(PMT)が224℃になるように乾燥させて、第二のクリヤ樹脂層を形成した。
このようにして、ステンレス鋼板の一方の面(表面)に第一のクリヤ樹脂層が形成され、ステンレス鋼板の他方の面(裏面)に第二のクリヤ樹脂層が形成されたクリヤ塗装ステンレス鋼板を得た。得られたクリヤ塗装ステンレス鋼板を紙管に巻き付けてコイルの状態とした。
コイルの状態にする前のクリヤ塗装ステンレス鋼板の第一のクリヤ樹脂層と第二のクリヤ樹脂層の静止摩擦係数を測定し、その差(μ1−μ2)を求めた。結果を表2に示す。
また、コイルの状態のクリヤ塗装ステンレス鋼板について、巻きズレ防止を評価した。結果を表2に示す。
「実施例2〜6、比較例1〜3」
表2〜4に示す構成および膜厚の第一のクリヤ樹脂層および第二のクリヤ樹脂層となるように、塗料(A)および塗料(B)を調製し、得られた塗料(A)および塗料(B)を用いた以外は、実施例1と同様にしてクリヤ塗装ステンレス鋼板を製造し、各種測定・評価を行った。結果を表2〜4に示す。
なお、表2〜4中の各成分の量は固形分量(質量部)である。
「参考例A、C、D」
表5に示す構成の第一のクリヤ樹脂層となるように塗料(A)を調製し、得られた塗料(A)を用いた以外は、実施例1と同様にしてステンレス鋼板の一方の面(表面)に第一のクリヤ樹脂層を形成し、これをクリヤ塗装ステンレス鋼板とした。なお、参考例A、C、Dでは、ステンレス鋼板の裏面に第二のクリヤ樹脂層を形成しなかった。
第一のクリヤ樹脂層とステンレス鋼板の裏面の静止摩擦係数を実施例1と同様にして測定した。参考例A、C、Dでは、ステンレス鋼板の裏面の静止摩擦係数をμ3として、第一のクリヤ樹脂層の静止摩擦係数(μ1)との差(μ1−μ3)を求めた。結果を表5に示す。
また、得られたクリヤ塗装ステンレス鋼板について、巻きズレ防止を評価した。結果を表5に示す。
なお、表5中の各成分の量は固形分量(質量部)である。
「参考例B」
<塗料の調製>
熱硬化性樹脂組成物(A−3)を1つ目(下地用)の第一のクリヤ樹脂層形成用塗料(塗料(A−1))とした。
別途、熱硬化性樹脂組成物(A−2)を固形分換算で100質量部と、潤滑剤としてPEWax1.0質量部と、顔料としてフタロシアニンブルー0.1質量部と、艶消し剤としてシリカ0.3質量部とを混合し、2つ目(トップ用)の第一のクリヤ樹脂層形成用塗料(塗料(A−2))を調製した。
<クリヤ塗装ステンレス鋼板の製造>
(化成処理膜形成工程)
ステンレス鋼板としては、SUS430/No.4研磨仕上げ材を用い、実施例1と同様にして、このステンレス鋼板の表面および裏面に化成処理膜を形成した。
(クリヤ樹脂層形成工程)
ステンレス鋼板の表面に形成された化成処理膜上に、塗料(A−1)を乾燥後の厚さが3μmとなるようにロールコーターにて塗装し、素材最高到達温度(PMT)が232℃になるように乾燥させた。その上に、塗料(A−2)を乾燥後の厚さが3μmとなるようにロールコーターにて塗装し、素材最高到達温度(PMT)が232℃になるように乾燥させて、ステンレス鋼板の一方の面(表面)に2層構造の第一のクリヤ樹脂層を形成し、これをクリヤ塗装ステンレス鋼板とした。なお、参考例Bでは、ステンレス鋼板の裏面に第二のクリヤ樹脂層を形成しなかった。得られたクリヤ塗装ステンレス鋼板を紙管に巻き付けてコイルの状態とした。
コイルの状態にする前のクリヤ塗装ステンレス鋼板の第一のクリヤ樹脂層とステンレス鋼板の裏面の静止摩擦係数を実施例1と同様にして測定した。参考例Bでは、ステンレス鋼板の裏面の静止摩擦係数をμ3として、第一のクリヤ樹脂層の静止摩擦係数(μ1)との差(μ1−μ3)を求めた。結果を表5に示す。
また、コイルの状態のクリヤ塗装ステンレス鋼板について、巻きズレ防止を評価した。結果を表5に示す。
Figure 2021138003
Figure 2021138003
Figure 2021138003
Figure 2021138003
各実施例で得られたクリヤ塗装ステンレス鋼板は、巻きズレを防止できた。
一方、第一のクリヤ樹脂層と第二のクリヤ樹脂層の静止摩擦係数の差(μ1−μ2)が0.010超である各比較例のクリヤ塗装ステンレス鋼板は、コイルの状態で搬送すると巻きズレが生じやすかった。
10 クリヤ塗装ステンレス鋼板
11 ステンレス鋼板
11a 一方の面(表面)
11b 他方の面(裏面)
12 第一のクリヤ樹脂層
13 第二のクリヤ樹脂層

Claims (1)

  1. ステンレス鋼板と、該ステンレス鋼板の一方の面に形成された第一のクリヤ樹脂層と、該ステンレス鋼板の他方の面に形成された第二のクリヤ樹脂層とを具備し、
    前記第二のクリヤ樹脂層は、熱硬化性樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物と、潤滑剤とを含み、
    前記第一のクリヤ樹脂層の静止摩擦係数をμ1とし、前記第二のクリヤ樹脂層の静止摩擦係数をμ2としたときに、μ1−μ2が0.010以下である、クリヤ塗装ステンレス鋼板。
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