JP2021127504A - 軸受軌道用鋼材、および軸受軌道 - Google Patents

軸受軌道用鋼材、および軸受軌道 Download PDF

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Abstract

【課題】剥離損傷の要因となる白色組織の発生および成長を抑制すると共に、剥離損傷が抑制され、優れた転動疲労寿命を示す軸受軌道、およびその素材となる軸受軌道用鋼材の提供。【解決手段】成分組成が、質量%で、C:0.15〜0.50%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.05〜1.50%、Cr:0.57〜2.00%、P:0.025%以下、S:0.025%以下、Al:0.005〜0.100%、N:0.003〜0.030%、O:0.0015%以下、Ni:0.65〜1.98%、及びCu:0.03〜0.20%、を含有し、残部がFe及び不純物からなり、NiおよびCuの含有量が式(1)を満たす、軸受軌道用鋼材。Ni<27×Cu・・・(1)式(1)中、元素記号は、質量%での各元素の含有量を示す。【選択図】なし

Description

本発明は,軸受軌道用鋼材、および軸受軌道に関するものである。
軸受軌道は、自動車、風車および産業機械などに広く用いられる。軸受軌道は優れた転動疲労寿命が要求される部品であり、軸受軌道を製造するための鋼材には、例えば、JIS-SUJ2、SUJ3などが用いられる。
軸受軌道の転動疲労寿命を向上させるためには、早期剥離を抑制することが重要となる。早期剥離の原因の一つに、鋼材に侵入した水素を起因とした白色組織変化が挙げられる。
ここで、白色組織とは、マルテンサイトから数十nm程度の微細なフェライトに変化した組織である。この白色組織は、剥離損傷の原因になることが知られている。
白色組織変化を抑制するためには、潤滑油側での水素の発生および浸入の防止などの方策が採られている。
しかしながら、このような方策では不十分な場合や適用が困難な場合が多い。そこで白色組織変化による早期剥離に対して、鋼材側においても対策が求められている。
例えば、特許文献1には、炭化物中のCr濃度を6%以上、およびMn濃度を5%とすることで、炭化物中に固溶したCrおよびMnが白色組織が領域拡大していく過程で、白色組織が取り込んだ炭化物が素地に固溶するのを抑制する効果が得られることが開示されている。そして、特許文献1によれば、それにより、白色組織の形成を遅延させることができ、水素侵入量が増加した環境における転動疲労特性に優れた軸受軌道鋼が得られると開示されている。
また、特許文献2には、NiとCuの両方を同時に添加することで、白色組織を抑制する方法が開示されている。
特開2017−179544号公報 特開2013−112834号公報
しかしながら、昨今では、さらに、剥離損傷の要因となる白色組織の発生および成長を抑制すると共に、剥離損傷を抑制し、転動疲労寿命を改善することが求められているのが現状である。
そこで、本発明の課題は、剥離損傷の要因となる白色組織の発生および成長を抑制すると共に、剥離損傷が抑制され、優れた転動疲労寿命を示す軸受軌道、およびその素材となる軸受軌道用鋼材を提供することにある。
上記課題は、以下の手段により解決される。
[1]
成分組成が、質量%で、
C :0.15〜0.50%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.05〜1.50%、
Cr:0.57〜2.00%、
P :0.025%以下、
S :0.025%以下、
Al:0.005〜0.100%、
N :0.003〜0.030%、
O :0.0015%以下、
Ni:0.65〜1.98%、及び
Cu:0.03〜0.20%、
を含有し、
残部がFe及び不純物からなり、
NiおよびCuの含有量が式(1)を満たす、
軸受軌道用鋼材。
Ni<27×Cu・・・(1)
式(1)中、元素記号は、質量%での各元素の含有量を示す。
[2]
質量%で、
Mo:2.00%以下、
V :2.00%以下、および
B :0.0050%以下、
よりなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する[1]に記載の軸受軌道用鋼材。
[3]
質量%で、
Nb:0.100%以下、
Ti:0.100%以下、および
REM:0.020%以下、
よりなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する[1]または[2]に記載の軸受軌道用鋼材。
[4]
[1]〜[3]のいずれか1項に記載の軸受軌道用鋼材を用いた軸受軌道であって、
軌道輪または軌道盤の軌道面となる部位の表面から深さ0.10〜0.50mmの領域において、
C量が、質量%で0.60〜1.20%、
組織が、面積率で、円相当径300nm以上の炭化物:1〜15%、残留オーステナイト:5〜40%を含み、残部が焼戻しマルテンサイトからなる軸受軌道。
[5]
軌道輪または軌道盤の軌道面となる部位の表面から深さ0.10〜0.50mmの領域における、ビッカース硬さが720HV以上である[4]に記載の軸受軌道。
本発明によれば、剥離損傷の要因となる白色組織の発生および成長を抑制する共に、剥離損傷が抑制され、優れた転動疲労寿命を示す軸受軌道、およびその素材となる軸受軌道用鋼材を提供できる。
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
なお、本明細書中において、化学組成の各元素の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。
化学組成の各元素の含有量を「元素量」と表記することがある。例えば、Cの含有量は、C量と表記することがある。
「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
「〜」の前後に記載される数値に「超」または「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値または上限値として含まない範囲を意味する。
「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
<軸受軌道用鋼>
本実施形態に係る軸受軌道用鋼材は、
成分組成が、質量%で、
C :0.15〜0.50%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.05〜1.50%、
Cr:0.57〜2.00%、
P :0.025%以下、
S :0.025%以下、
Al:0.005〜0.100%、
N :0.003〜0.030%、
O :0.0015%以下、
Ni:0.65〜1.98%、及び
Cu:0.03〜0.20%、
を含有し、
残部がFe及び不純物からなり、
NiおよびCuの含有量が式(1)を満たす、
軸受軌道用鋼材。
Ni<27×Cu・・・(1)
式(1)中、元素記号は、質量%での各元素の含有量を示す。
そして、発明者らは、軸受軌道の素材として、NiおよびCuを上記所定の含有量で含有する軸受軌道用鋼材を採用することで、軸受軌道転動部の転動負荷を受ける領域に生じる白色組織の発生と共に、剥離損傷の要因となる白色組織の成長が抑制されることを見出した。また、所定の化学組成を有する軸受軌道用鋼材を採用することで、剥離損傷自体を抑制できることを見出した。その結果、発明者らは、軸受軌道の転動疲労寿命が向上することを見出した。
以下、本実施形態に係る軸受軌道用鋼材の詳細について説明する。
[化学組成]
本実施形態に係る軸受軌道用鋼材の化学組成は、以下のとおりである。
(必須元素)
C :0.15〜0.50%
Cは、軸受軌道として必要な硬度を得るための元素である。C量が0.15%未満であると、浸炭後のC量も低くなり、軸受軌道として必要な硬度が得られない。一方、C量が0.50%よりも多いと、軸受軌道の表層部の組織において、残留オーステナイト量の増加により、マルテンサイトの面積率が低下する。従って、C量は0.15〜0.50%とする。なお、好ましいC量は0.20〜0.45%である。
Si:0.05〜0.50%
Siは、脱酸剤として機能する元素である。Si量が0.05%未満であると、脱酸剤としての効果を得ることができない。一方、Si量が0.50%よりも多いと、鋼材中にSiO系介在物が生じて、この介在物を起点とする剥離損傷が発生する。その結果、軸受軌道の転動疲労寿命が低下する。従って、Si量は0.05〜0.50%とする。なお、好ましいSi量は0.10〜0.45%である。
Mn:0.05〜1.50%
Mnは、脱酸剤及び脱硫剤として機能する元素である。また、Mnは、鋼材の焼入れ性を確保するために有用な元素である。Mn量が0.05%未満では、脱酸が不十分となり、酸化物が生成して、この酸化物を起点とする剥離損傷が発生する。また、焼入れ性が不十分となり、軸受軌道として必要な硬度が得られない。その結果、軸受軌道の転動疲労寿命が低下する。一方、Mn量が1.50%を超えると、靭性が低下したり、焼入れ時に焼割れが発生したりする。従って、Mn量は0.05〜1.50%とする。なお、好ましいMn量は0.10〜1.30%である。
Cr:0.57〜2.00%
Crは、鋼の焼入れ性を確保するために有効な元素である。また、Crは、セメンタイト中に濃化してオーステナイト中でセメンタイトを安定化させるため、炭化物の球状化および炭化物量の増加に有効な元素である。Cr量が0.57%未満であると、焼入れ性向上の効果が得られず、軸受軌道として必要な硬度が得られない。一方、Cr量が2.00%を超えると、焼入れ時に焼割れが発生する。また、鋼の鍛造性および被削性を低下する。さらに、粗大な炭化物が生成する。従って、Cr量は0.57〜2.00%とする。なお、好ましいCr量は0.70〜1.50%である。
P:0.025%以下
Pは、不純物である。Pは、オーステナイト粒界に偏析して、旧オーステナイト粒界を脆化させることによって、粒界割れによる剥離損傷の原因となるので、できるだけ低減することが望ましい。このため、P量を0.025%以下の範囲に制限する必要がある。好ましいP含有量の上限は0.015%である。
なお、脱Pコストの増加を抑制する点から、P量の下限は、例えば、0.003%とすることがよい。
S:0.025%以下
Sは、鋼材中で硫化物を生成して、この硫化物を起点とする剥離損傷を発生させ、軸受軌道の転動疲労特性を低下させる。S量を0.025%以下の範囲に制限する必要がある。好ましいS含有量の上限は0.015%である。
なお、脱Sコストの増加を抑制する点から、S量の下限は、例えば、0.002%とすることがよい。
Al:0.005〜0.100%
Alは、鋼材を脱酸する元素である。Al量が低すぎれば、脱酸が不十分となり、酸化物が生成して、この酸化物を起点とする剥離損傷が発生する。一方、Al量が高すぎれば、粗大な酸化物が鋼中に残存して、この酸化物を起点とする剥離損傷が発生し、軸受軌道の転動疲労特性が低下する。従って、Al量は0.005〜0.100%とする。なお、好ましいAl量は0.008〜0.050%である。
N:0.003〜0.030%
Nは、Alと結合してAlNを形成し、剥離損傷の要因となる、オーステナイト領域での結晶の粒粗大化を抑制する元素である。結晶粒の粗大化を抑制するには、N量を0.003%以上とする必要がある。一方、Nを過剰に含有すると、粗大AlNや粗大BNが生成して、この粗大AlNや粗大BNを起点とする剥離損傷が発生し、軸受軌道の転動疲労特性が低下する。従って、N量は0.003〜0.030%とする。なお、好ましいN量は0.005〜0.020%である。
O :0.0015%以下
Oは、AlやSiO等の酸化物を生成し、これらの酸化物が疲労亀裂の伝播経路となることに起因して、剥離損傷が発生し、軸受軌道の転動疲労特性を低下させる。O量はできるだけ低減することが望ましい。このため、O量を0.0015%以下の範囲に制限する必要がある。好ましいO量の上限は0.0012%である。
なお、脱Oコストの増加を抑制する点から、O量の下限は、例えば、0.0001%とすることがよい。
Ni:0.65〜1.98%
Niは、軸受軌道への水素侵入を抑制することにより、転動負荷を受ける転動面直下の領域において白色組織の発生及び成長を抑制することができる。また、Niは、鋼の靱性を高める。さらに、Niは、鋼の焼入れ性を確保するために有効な元素である。Ni量が0.65%未満であると、上記の効果を得ることができない。一方、Ni量が1.98%を超えると、製造コストが高くなる。従って、Ni量は0.65〜1.98%とする。なお、好ましいNi量は0.70〜1.70%である。
Cu:0.03〜0.20%
Cuは、鋼への水素侵入を抑制することにより、転動負荷を受ける転動面直下の領域において白色組織の発生及び成長を抑制することができる。また、耐食性を高める。水素侵入抑制効果および耐食性向上効果を得るためには、Cu量が0.03%未満であると、上記の効果を得ることができない。一方、Cuの含有量が0.20%を超えると、圧延時の熱間延性が低下する。また、鋼の靱性が低下する。従って、Cu量は0.03〜0.20%とする。なお、好ましいCu量は、0.05〜0.15%である。
(式(1):Ni<27×Cu)
さらに効果的に、軸受軌道への水素侵入を抑制することにより、転動負荷を受ける転動面直下の領域において白色組織の発生及び成長を抑制するには、NiおよびCuの含有量の関係が重要である。
Ni量が、Cu量の27倍以下であると、鋼への水素侵入により、転動負荷を受ける転動面直下の領域において白色組織の発生及び成長が生じる。
よって、NiおよびCuの含有量は、式(1):Ni<27×Cu(ただし、式(1)中、元素記号は、質量%での各元素の含有量を示す。)の関係とする。
(残部)
残部は、Fe及び不純物である。不純物とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ又は製造環境などから混入するものを指す。また、不純物としては、P、S及びO以外の不純物としては、Mg、Co、As、Zr、Sb、W、REM(原子番号57から71までの元素)、Hf、Ta、La、Ce、Ca、In、Sn、Pb、Bi、Te、及びZn等が挙げられ、それぞれ、Mg:0.02%以下、(Co、As):0.1%以下、(Sb、W、REM、Hf、Ta、La及びCe):0.01%以下、(Ca、In、Zr、Te、Bi、Pb、Sn及びZn):0.01%以下に規制することが望ましい。
(任意元素)
本実施形態に係る軸受軌道用鋼材は、次の任意元素を含有してもよい。
(1)質量%で、Mo:2.00%以下、V :2.00%以下、およびB :0.0050%以下よりなる群から選ばれた1種または2種以上
(2)質量%で、Nb:0.100%以下、Ti:0.100%以下、およびREM:0.020%以下よりなる群から選ばれた1種または2種以上
Mo:2.00%以下
Moは、鋼材の焼入れ性を確保するために有効な元素である。また、Moは、炭化物の生成を促進し、鋼の硬さを高めることができる。硬さ向上の効果を得るためには、Moを2.00%以下含有させてもよい。一方、Moを、2.00%を超えて含有させると、鋼の熱間加工性及び切削性が低下し、さらに製造コストが高くなる。従って、Mo含有量は2.00%以下とすることが好ましく、0.20〜1.50%がより好ましい。
V :2.00%以下
Vは、鋼材の焼入れ性を確保するために有効な元素である。また、Vは、鋼材の硬さを高めることができる。硬さ向上の効果を得るためには、Vを2.00%以下含有させてもよい。一方、Vを、2.00%を超えて含有させると、Cと結合してMC炭化物を生成し、鋼の熱間加工性及び切削性も低下する。従って、V含有量は2.00%以下とすることが好ましく、0.10〜1.00%がより好ましい。
B:0.0050%以下
Bは、オーステナイト中に僅かに固溶させただけで鋼の焼入れ性を高めるため、浸炭焼入れ時にマルテンサイトを効率的に得るために鋼材に含有させてもよい。一方、Bを、0.0050%を超えて添加すると、多量のBNを形成してNを消費するため、オーステナイト粒の粗大化を招来する。従って、B含有量は0.0050%以下とすることが好ましく、0.0007〜0.0030%がより好ましい。
Nb:0.100%以下
Nbは、鋼材中でN、Cと結合して炭窒化物を形成する元素である。この炭窒化物はオーステナイト結晶粒界をピンニングし、ひいては粒成長を抑制して組織の粗大化を防止する。この組織の粗大化の防止効果を得るためには、Nbを0.100%以下含有させてもよい。一方、Nbを、0.100%を超えて含有させると、素材硬さの上昇に起因して切削・鍛造等の加工性が顕著に劣化するだけでなく、鋼の靱性が劣化する。従って、Nb含有量は0.100%以下とすることが好ましく、0.005〜0.05%がより好ましい。
Ti:0.100%以下
Tiは、鋼材中でN、Cと結合して炭窒化物を形成する元素である。この炭窒化物はオーステナイト結晶粒界をピンニングし、ひいては粒成長を抑制して組織の粗大化を防止する。この組織の粗大化の防止効果を得るためには、Tiを0.100%以下含有させてもよい。一方、Tiを、0.100%を超えて含有させると、素材硬さの上昇に起因して切削・鍛造等の加工性が顕著に劣化するだけでなく、鋼の靱性が劣化する。従って、Ti含有量は0.100%以下とすることが好ましく、0.005〜0.05%がより好ましい。
REM:0.020%以下
REM(希土類元素)とは、原子番号57のランタンから原子番号71ルテシウムまでの15元素と、原子番号21のスカンジウム及び原子番号39のイットリウムと、の合計17元素の総称である。鋼材にREMが含有されると、圧延時及び熱間鍛造時にMnS粒子の伸延が抑制される。但し、REM含有量が0.020%を超えると、REMを含む硫化物が大量に生成され、鋼の被削性が劣化する。従って、REM含有量は0.020%以下とすることが好ましく、0.005%〜0.015%がより好ましい。
なお、REM量は、17元素の合計量である。
<軸受軌道>
本実施形態に係る軸受軌道とは、玉軸受軌道、コロ軸受軌道の軌道輪またはスラスト軸受軌道の軌道盤を指す。本実施形態に係る軸受軌道は、上記本実施形態に係る軸受軌道用鋼材の化学組成を有し、軌道輪または軌道盤の軌道面となる部位の表面から深さ0.10〜0.50mmの領域において、C量が、質量%で0.60〜1.20%、組織が、炭化物、残留オーステナイトおよび焼戻しマルテンサイトからなる。前記組織は、面積率で、円相当径300nm以上の炭化物:1〜15%、残留オーステナイト:5〜40%、残部が焼戻しマルテンサイトからなる。
また、本実施形態に係る軸受軌道は、軌道輪または軌道盤の軌道面となる部位の表面から深さ0.10〜0.50mmの領域における、ビッカース硬さが720HV以上であることが好ましい。
以下、本実施形態に係る軸受軌道の組織及び硬さについて詳述する。なお、「軌道輪または軌道盤の軌道面となる部位の表面から深さ0.10〜0.50mmの領域」を「表層部」と称することがある。
(表層部におけるC量)
本実施形態に係る軸受軌道において、表層部におけるC量は、質量%で0.60〜1.20%である。これにより、高硬度が得られ、剥離損傷を抑制することができる。なお、好ましいC量は、質量%で0.70〜1.10%である。
(表層部における組織)
本実施形態に係る軸受軌道において、表層部における組織は、面積率で、円相当径300nm以上の炭化物:1〜15%、残留オーステナイト:5〜40%を含み、残部が焼戻しマルテンサイトからなる。
なお、その他に、不可避的に生成する組織にはベイナイト、パーライト、フェライトの少なくとも1種が例示できるが、これらは、面積比で3%未満であれば、軸受軌道の機械的特性には影響しない。
軸受軌道の表層部の組織において、面積率で、円相当径300nm以上の炭化物:1〜15%、残留オーステナイト:5〜40%を含み、残部が焼戻しマルテンサイトからなるとすることで、耐摩耗性と共に高靱性を得ることができ、ひいては転動疲労寿命を高めることができる。なお、焼戻しマルテンサイトの面積率は、60%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましい。
ここで、残部が焼戻しマルテンサイトからなる組織とは、焼戻しマルテンサイト以外に、ベイナイト、パーライトおよびフェライトを合計の面積率で0〜3%以下含む組織も包含する。
円相当径300nm以上の炭化物の面積率は1〜15%以下である。
炭化物の面積率が1%未満であると、転動疲労寿命が低下する。一方、炭化物の面積率が15%を超えると、鋼の鍛造性および被削性が低下する。また、炭化物中に合金元素が濃化することにより、局所的な領域において焼入れ性の低下が生じ、パーライト、フェライト等の組織が生成する危険性が高まる。従って、表層部における炭化物の面積率は、15%以下とする。
炭化物の面積率は12%以下であることが好ましい。
ここで、炭化物は、例えば、セメンタイト、M、M23、MC、MCなどが該当する。
残留オーステナイトの面積率は5〜40%である。
残留オーステナイトの面積率が5%未満であると、転動疲労寿命が低下する。一方、残留オーステナイトの面積率が40%を超えると、マルテンサイトと比較し硬さの低い残留オーステナイトが多量に存在することで、残留オーステナイトを、起点とする剥離損傷が発生し、軸受軌道の転動疲労特性が低下する。従って、表層部における残留オーステナイトの面積率は、40%以下とする。
残留オーステナイト面積率は30%以下であることが好ましい。
軸受軌道の表層部における金属組織は、以下のように観察および測定する。具体的には、次の通りである。
−炭化物−
軌道輪または軌道盤を軌道面と垂直に切断した断面であって、軌道面となる表面から深さ0.10〜0.50mmの領域に位置する面を観察面とする試料を採取する。
当該試料の観察面に対し、鏡面研磨を施し、ピクラール溶液(ピクリン酸4gをエタノール100mlで溶解した溶液)を用いて、10秒腐食した後、水洗する。
その後、観察面上の軸受軌道の表面から深さ方向に、0.10mmから始めて0.10mm間隔で0.50mmまで、走査型電子顕微鏡により5視野観察する。観察時の倍率は5000倍とする。
走査型電子顕微鏡で撮影した組織写真を用い、通常の画像解析装置を用いて、円相当径300nm以上の炭化物の面積率を計測する。具体的には、観察視野の面積に対する前記炭化物の面積率を計測する。画像解析ソフトは、例えばImageJ(National Institutes of Health製)を用いる。炭化物の面積率は、5視野の平均の値とする。
ここで、炭化物は、電子線後方散乱分析、およびエネルギー分散型X線分析により同定する。
−残留オーステナイト−
軌道輪または軌道盤を軌道面と垂直に切断した断面であって、軌道面となる表面から深さ0.10〜0.50mmの領域に位置する面を観察面とする試料を採取する。
当該試料の観察面に対し、通常の鏡面研磨をし、さらに電解研磨で0.02mm研磨して歪みのない観察面を得る。
その後、試料の観察面における、この試料の観察面上の表面から深さ0.50mmまで、表面の深さ方向に0.10mm間隔で、残留オーステナイト量を5点測定する。
残留オーステナイト量測定は、X線回折法にて行う。X線回折条件は、例えば、以下が望ましい。すなわち、X線管球はCr管球を用い、γ−Fe(220)の回折ピーク強度から残留オーステナイト量を求めた。残留オーステナイト量は5点平均の値とする。
X線回折法では、残留オーステナイト量は、体積率として測定されるが、この体積率は面積率と等しいものとして扱う。
−焼戻しマルテンサイト−
軌道輪または軌道盤を、軌道面と垂直に切断した断面であって、軌道面となる表面から深さ0.10〜0.50mmの領域に位置する面を観察面とする試料を採取する。
当該試料の観察面に対し、鏡面研磨を施し、ナイタール溶液(硝酸3gをエタノール100mlで溶解し、必要に応じて界面活性剤を加えた溶液)を用いて、10秒腐食した後、水洗する。
その後、この試料の観察面上の軸受軌道の表面から深さ0.50mmまで、表面の深さ方向に0.10mm間隔で、走査型電子顕微鏡により5視野観察した。観察時の倍率は5000倍とする。
走査型電子顕微鏡で撮影した組織写真を用い、ベイナイト、パーライト、フェライトをマーキングして、通常の画像解析装置を用いて計測する。具体的には、観察視野の面積に対するベイナイト、パーライトおよびフェライトの合計の面積率を計測する。画像解析ソフトは、例えばImageJ(National Institutes of Health製)を用いる。焼戻しマルテンサイトの面積率は、5視野の平均の値とする。
焼戻しマルテンサイトの面積率は、100%−残留オーステナイトの面積率(%)−炭化物の面積率(%)−(ベイナイト、パーライトおよびフェライトの合計の面積率(%))とする。
(表層部におけるビッカース硬さ)
本実施形態に係る軸受軌道において、表層部におけるビッカース硬さが720HV以上である。
表層部におけるビッカース硬さHVが720HV未満であると、優れた耐摩耗性が得られず、さらに、転動疲労寿命も低下する。従って、表層部におけるビッカース硬さHVは、720HV以上とする。
ただし、表層部におけるビッカース硬さHVが1000HVを超えると、微小な亀裂が

発生した場合の進展感受性が高まり、表面起点剥離性がかえって低下することが懸念される。そのため、表層部におけるビッカース硬さHVは、1000HV以下が好ましい。
表層部におけるビッカース硬さHVの好ましい下限値は、735HVである。
一方、表層部におけるビッカース硬さHVの好ましい上限値は、950HVである。
表層部におけるビッカース硬さは、JIS Z 2244 (2009)に準じた方法で測定する。具体的には、次の通りである。
軌道輪または軌道盤を、軌道面と垂直に切断した断面を測定面とする試料を採取する。
この試料の測定面のうち、軸受軌道の表面から深さ0.10〜0.50mm領域において、深さ0.10mm間隔の5か所の位置のビッカース硬さを測定力(荷重)2.94Nにて各々5点(計25点)測定する。
そして、計25点のビッカース硬さの算出平均値を、表層部におけるビッカース硬さとする。
以上に示すとおり、本実施形態に係る軸受軌道は、化学組成とともに、表層部の硬さ及び組織の好適化を図ることで、剥離損傷の要因となる白色組織の発生および成長を抑制すると共に、剥離損傷が抑制され、優れた転動疲労寿命を実現することができる。
<軸受軌道の製造方法>
以下、本実施形態に係る軸受軌道用鋼材を用いて、本実施形態に係る軸受軌道の製造方法の一例について詳述する。
本実施形態に係る軸受軌道の製造方法は、例えば、軸受軌道用鋼材(本実施形態に係る軸受軌道用鋼材)を製造する工程、軸受軌道形状にする工程、浸炭焼入れ・焼戻しを行う工程、仕上げ加工を行う工程を有する方法が挙げられる。
(軸受軌道用鋼材を製造する工程)
軸受軌道用鋼材を製造する工程では、まず、本実施形態に係る軸受軌道用鋼材の化学組成を有する溶鋼を連続鋳造法により鋳片にする。又は、上記溶鋼を造塊法によりインゴット(鋼塊)にしてもよい。
次に、鋳片又はインゴットを熱間加工して、鋼片(ビレット)を製造する。例えば、分塊圧延により鋳片又はインゴットを鋼片にすることができる。
次に、鋼片又は鋳片を熱間加工した後、棒鋼又は線材等の軸受軌道用鋼材を製造する。熱間加工は、熱間圧延でもよいし、熱間鍛造(熱間鍛伸等)でもよい。必要に応じて、熱間圧延前の鋼片又は鋳片に対して球状化焼鈍処理や均熱拡散処理を施してもよい。また、必要に応じて、製造された軸受軌道用鋼材に対して、焼準処理を施してもよい。以上の工程により、軸受軌道用鋼材を得ることができる。
(軸受軌道形状にする工程)
軸受軌道形状にする工程では、軸受軌道用鋼材を、所定の軸受軌道形状に加工して、中間品(軸受軌道形状とした鋼材)を製造する。加工方法としては、例えば、熱間鍛造、冷間鍛造、機械加工(切削加工等)等が挙げられる。しかしながら、これらの加工方法に限られず、所定の軸受軌道形状の中間品が得られる方法であれば、いかなる加工方法を採用することもできる。
(浸炭焼入れ・焼戻しを行う工程)
浸炭焼入れ・焼戻しを行う工程では、中間品に対して、浸炭焼入れ、及び焼戻しを施す。
浸炭処理は、850〜1100℃の温度範囲で施す。浸炭温度が850℃未満では、鋼中に十分な炭素を拡散させるために長時間の加熱処理を要し、コストが嵩む。一方、浸炭温度が1100℃を超えると、著しい粗粒化や混粒化が生じる。
そのため、浸炭は850〜1100℃の温度域で行う。コストの低廉化、粗粒化の抑制及び混粒化の抑制をさらに高いレベルで実現させるためには、浸炭は900〜1050℃の温度域で行うことが好ましい。浸炭方法には、ガス浸炭や真空浸炭を採用することが出来る。
焼入れは、所定の温度で一定時間保持後に行ってもよい。一定時間保持する目的は、焼入れ時の焼き割れ、ひずみ低減である。保定温度は、800℃以上で10分以上とする。一方、900℃超で60分超保定しても、焼入れ時の焼き割れ防止、ひずみ低減の効果は飽和する。
焼戻し処理における、焼戻し温度は、靭性の確保や硬さ調整のために、150℃以上が好ましい。焼戻し温度が150℃未満であると、軸受軌道の靱性が確保できない場合がある。一方、焼戻し温度が200℃を超えると、軸受軌道製品の硬さが低下し、耐摩耗性が低下するおそれがある。そのため、焼戻し温度は150℃〜200℃とすることが好ましい。
(仕上げ加工を行う工程)
仕上げ加工を行う工程では、浸炭焼入れ・焼戻した中間品に対して、仕上げ加工を行う。仕上げ加工は、研削や研磨である。
以上の工程により、本実施形態に係る軸受軌道が製造される。
次に、本発明の実施例について説明するが、以下に示す各条件は、本発
明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一例にすぎず、本発明の条件はこの一例に限定されるものではない。本発明の実施においては、その要旨を逸脱せず、その目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用することができる。
<各種試験片の成形>
(棒鋼の準備)
表1に示す化学組成を有する鋼(鋼No.A〜AV)をそれぞれ溶製し、熱間鍛造により、φ40mmの棒鋼を準備した。なお、表1において下線を付した数値は当該数値が本発明の範囲外であることを示す。製造された棒鋼に対して、球状化焼鈍処理を実施した。具体的には、棒鋼を、780℃で5時間保持した。その後、10℃/hで650℃まで徐冷した後、室温まで空冷した。これら工程を経て、軸受軌道用鋼材としての棒鋼を得た。
Figure 2021127504
(小ローラー試験片の成形)
φ40mmの棒鋼から、機械加工により、φ26mm×130mmの小ローラー試験片を成形した。
(丸棒試験片の成形)
φ40mmの棒鋼から、機械加工により、硬さ、C濃度、及び組織を測定するための測定用のφ26mm×50mmの丸棒試験片を成形した。
(大ローラー試験片の成形)
JIS G4805(2008)に規定された高炭素クロム鋼材SUJ2相当を用い、直径150mmの円板状の大ローラー試験片を成形した。
<浸炭焼入れ、焼き戻しの実施>
次に、小ローラー試験片及び丸棒試験片に対して、浸炭焼入れ、焼戻しを行った。
製造No.1〜18、21〜42は、ガス浸炭焼入れ、焼戻しを行った。ガス浸炭の条件は、930℃×160分とした。
製造No.19〜20は、真空浸炭焼入れ、焼戻しを行った。真空浸炭の条件は、930℃×160分とした。
製造No.43は、真空浸炭焼入れ、焼戻しを行った。真空浸炭の条件は、1110℃×60分とした。
その後、830℃×30分保定し、油焼入れを行った。次に、180℃×120分の条件で焼戻しを行った。焼戻し後の冷却方法は空冷とした。
ただし、製造No.42では、浸炭焼入れと焼戻しの間でサブゼロ処理を行った。
浸炭焼入れ、焼戻し後、試験精度を向上するために、小ローラー試験片のつかみ部および試験部に、仕上げ加工を施した。以上のようにして、製造No.1〜43の小ローラー試験片、及び製造No.1〜43の丸棒試験片を、それぞれ得た。
<各試験片の性能評価>
(ビッカース硬さ)
各丸棒試験片を、長さ方向と垂直に切断した断面において、転動面に相当する試験片の表面から深さ0.10〜0.50mmの領域において、深さ0.10mm間隔の5か所について各5点のマイクロビッカース硬さを測定した。硬さ測定は、JIS Z 2244(2009)に準拠し、試験力2.94Nで行った。
そして、計25点のビッカース硬さの算出平均値を求めた。この結果を表2に表記する。
(C含有量)
C含有量は、切粉を用いて測定する。具体的には、丸棒試験片から、旋削加工で表面から深さ0.10mm〜0.50mm(400μm分)の切粉を採取し、高周波誘導加熱炉燃焼法で求めた炭素濃度を表面から深さ0.10〜0.50mmの領域のC濃度とする。この結果を表2に表記する。
(組織)
前記の組織観察方法に従い、円相当径300nm以上の炭化物、残留オーステナイト(表中、残留γと表記)、焼戻しマルテンサイト(表中、焼戻しMAと表記)の各面積率を測定した。その結果を表2に併記する。
なお、全ての試験片において、円相当径300nm以上の炭化物、残留オーステナイト、焼戻しマルテンサイト以外の残部は、ベイナイト、パーライト、及びフェライトであった。ベイナイト、パーライト、及びフェライトの合計の面積率(表中、Ba+Pa+αFe面積率と表記する)
(ローラーピッティング(RP)試験(剥離の有無、白色組織の有無))
軸受軌道の剥離損傷を評価する試験として、ローラーピッティング試験(2円筒転がり疲労試験)を実施した。大ローラー試験片の円周面を小ローラー試験片の表面に回転数1500rpm、面圧2500MPaで接触させ、最大2000万回の条件で試験を行い、剥離の有無を調査した。
試験後の小ローラーについて、大ローラー試験片と接触した面の組織を観察できるように、小ローラーから、観察面が小ローラー長さ方向と垂直面となるように試料片を切り出した。
試料片の観察面を鏡面研磨後、ナイタール溶液(硝酸3gをエタノール100mlで溶解し、界面活性剤を加えた溶液)を用いて、10秒腐食し、水洗した。
次に、試料片の観察面、光学顕微鏡によって観察し、白色組織の有無を調べた。白色組織の有無は、小ローラーの転動面直下1.0mm深さまでの範囲において、1000倍で観察した時、長さ5μm以上の白色組織が観察された場合、白色組織の発生有りと判断した。また、白色組織の長さ(最も大きな白色組織の長さ)も求めた。白色組織の発生無しと判断した場合でも、長さ5μm未満の白色組織が観察された場合、その白色組織の長さ(最も大きな白色組織の長さ)も求めた。
その結果を表2に記載する。なお、表2中の下線を付した数値は当該数値が本発明の範囲外であることを示す。
Figure 2021127504
表1〜表2から明らかなように、化学組成、並びに、軸受軌道の表層部における硬さ及び組織について好適化を図った製造例1〜20については、いずれも、剥離が生じず、また、白色組織の生成も確認されなかったことから、優れた白色組織抑制効果、並びに転動疲労特性が得られていることが判る。
一方、製造例21は、鋼材のC量が低く、軸受軌道の表層部のC量も低くなり、軸受軌道に必要な硬度が得られなかった。そのため、ローラーピッティング試験は実施しなかった。
製造例22は、鋼材のC量が高く、残留オーステナイトが多量に存在したため、残留オーステナイト面積率が未達であった。そのため、ローラーピッティング試験は実施しなかった。
製造例23は、Si量が高く、介在物が生成し、介在物を起点とした剥離損傷が生じた。
製造例24は、Mn量が低く、焼入れ性が不十分で、軸受軌道に必要な硬度が得られなかった。そのため、ローラーピッティング試験は実施しなかった。
製造例25は、Mn量が高く、焼入れ時に割れが発生した。そのため、ローラーピッティング試験は実施しなかった。
製造例26は、Cr量が低く、焼入れ性が不十分であり、軸受軌道に必要な硬度が得られなかった。そのため、ローラーピッティング試験は実施しなかった。
製造例27は、Cr量が高く、粗大な炭化物が生成したため、炭化物面積率が未達であり、鋼の鍛造性および被削性が低かった。そのため、ローラーピッティング試験は実施しなかった。
製造例28は、P量が高く、白色組織が発生又は成長する前に、生成した脆化部による剥離損傷が発生した。
製造例29は、S量が高く、白色組織が発生又は成長する前に、生成した硫化物を起点とした剥離損傷が生じた。
製造例30は、Al量が低く、白色組織が発生又は成長する前に、脱酸が不十分で、生成した酸化物を起点とした剥離損傷が生じた。
製造例31は、Al量が高く、白色組織が発生又は成長する前に、生成した粗大酸化物を起点とした剥離損傷が生じた。
製造例32は、N量が低く、白色組織が発生又は成長する前に、粗大化した結晶粒の界面を起点とした剥離損傷が生じた。
製造例33は、N量が高く、白色組織が発生又は成長する前に、生成した粗大AlNを起点とした剥離損傷が生じた。
製造例34は、O量が高く、白色組織が発生又は成長する前に、酸化物を起点とした剥離損傷が生じた。
製造例35は、Ni量が低く、水素侵入により生成した白色組織を起点とした剥離損傷が生じた。
製造例36は、Cu量が高く、熱間延性低下し、軸受軌道が製造できなかった。そのため、各種試験は実施できなかった。
製造例37は、Cu量が低く、水素侵入により生成した白色組織を起点とした剥離損傷が生じた。
製造例38〜40は、式(1)を満たさず、水素侵入により生成した白色組織を起点とした剥離損傷が生じた。
製造例41は、炭化物面積率が低く、軸受軌道に必要な炭化物面積率が得られなかった。そのため、白色組織が発生又は成長する前に、剥離損傷が発生した。
製造例42は、残留オーステナイト面積率が低く、軸受軌道に必要な残留オーステナイト面積率が得られなかった。そのため、白色組織が発生又は成長する前に、剥離損傷が発生した。
製造例43は、表層部のC量が高く、残留オーステナイトが多量に存在したため、残留オーステナイト面積率が未達であった。そのため、ローラーピッティング試験は実施しなかった。

Claims (5)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C :0.15〜0.50%、
    Si:0.05〜0.50%、
    Mn:0.05〜1.50%、
    Cr:0.57〜2.00%、
    P :0.025%以下、
    S :0.025%以下、
    Al:0.005〜0.100%、
    N :0.003〜0.030%、
    O :0.0015%以下、
    Ni:0.65〜1.98%、及び
    Cu:0.03〜0.20%、
    を含有し、
    残部がFe及び不純物からなり、
    NiおよびCuの含有量が式(1)を満たす、
    軸受軌道用鋼材。
    Ni<27×Cu・・・(1)
    式(1)中、元素記号は、質量%での各元素の含有量を示す。
  2. 質量%で、
    Mo:2.00%以下、
    V :2.00%以下、および
    B :0.0050%以下、
    よりなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する請求項1に記載の軸受軌道用鋼材。
  3. 質量%で、
    Nb:0.100%以下、
    Ti:0.100%以下、および
    REM:0.020%以下、
    よりなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する請求項1または請求項2に記載の軸受軌道用鋼材。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の軸受軌道用鋼材を用いた軸受軌道であって、
    軌道輪または軌道盤の軌道面となる部位の表面から深さ0.10〜0.50mmの領域において、
    C量が、質量%で0.60〜1.20%、
    組織が、面積率で、円相当径300nm以上の炭化物:1〜15%、残留オーステナイト:5〜40%を含み、残部が焼戻しマルテンサイトからなる軸受軌道。
  5. 軌道輪または軌道盤の軌道面となる部位の表面から深さ0.10〜0.50mmの領域における、ビッカース硬さが720HV以上である請求項4に記載の軸受軌道。
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