JP2021126054A - バクテリアセルロース複合化粉末およびその製造方法 - Google Patents

バクテリアセルロース複合化粉末およびその製造方法 Download PDF

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【課題】塩類を含む液体に対しても、機械的な攪拌なしに均一に分散して粘度を発現できるバクテリアセルロース複合化粉末を提供する。【解決手段】本発明に係るバクテリアセルロース複合化粉末は、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、およびポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる第2の高分子物質が添加され、乾燥されたものである。【選択図】なし

Description

本発明は、バクテリアセルロース複合化粉末およびその製造方法に関する。
バクテリアセルロース(NFBC)は、一般的には水に分散したペースト状で製造されている。このため、バクテリアセルロースを食品に使用する際には、雑菌による汚染の問題が懸念される。しかも、ペースト状のバクテリアセルロースは、水を大量に含んでいるので輸送にはコストがかかる。そのため、バクテリアセルロースを安価に利用できるように粉末化が検討されている。
粉末化されたバクテリアセルロースは、水に分散された際に粉末化前と同様の分散状態になることが求められる。また、多様な食品や溶液に対応するために、粉末化されたバクテリアセルロースは、食塩などの塩類が含有されている溶液に対しても容易に分散溶解して、粉末化前の分散状態になることが求められる。
しかしながら、ペースト状のバクテリアセルロースを乾燥させると、バクテリアセルロース同士は水素結合により強く結合してセルロース分子が凝集してしまう。凝集したバクテリアセルロースを再度水に懸濁させても、セルロース分子が広がることができないため粘度は発現しない。水に再分散するバクテリアセルロース粉末を得るには、乾燥工程においてセルロース分子の凝集を防ぐ必要がある。乾燥時に凝集を抑制する方法として、バクテリアセルロースと高分子物質を複合化する方法が報告されている(例えば、特許文献1,2)。
ところで、カルボキシメチルセルロール(CMC)を含む培地で、攪拌培養することによって製造されたバクテリアセルロースが報告されている(例えば、特許文献3)。このバクテリアセルロースは細く長い均一な繊維であり、静電反発などによってセルロースミクロフィブリル表面にCMCが結着している。
さらに、バクテリアセルロースの乾燥物として、CMC、ヒドロキシプロビルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)を含むものが記載されている(例えば、特許文献4)。また、5〜300重量%の水溶性高分子を含有させたセルロースナノファイバーの乾燥固形物が、水に溶解した際に乾燥前と同等の特性を示すことが記載されている(例えば、引用文献5)。
特開平9−121787号公報 特開平11−178516号公報 特許第5752332号公報 国際公開第2018/038055号 特開2017−8176号公報
特許文献1には、微生物由来のセルロースとアニオン性物質とを複合化して得られる複合化物が記載されている。セルロース分子とアニオン性物質との相互作用によってセルロース分子同士の会合が阻害され、複合化物を乾燥した際の凝集を抑制することができる。しかしながら、特許文献1に記載されている複合化物の乾燥品は、使用する前に機械的な方法で分散処理を行って、繊維を十分にほぐしておくことが要求される。
特許文献1においては、微生物由来のセルロースがナノ化されていないことから、単一粒子が大きい。大きな粒子は、強力な衝撃を与えなければ壊れないため、例えばミキサーや撹拌機などを用いた分散処理が不十分な場合には、効果が得られないことがある。
特許文献2には、バクテリアセルロースおよびカルボキシメチルセルロース(CMC)のアルカリ塩を含有する食品用の分散安定化組成物が開示されている。この分散安定化組成物は、加熱殺菌処理によっても食品を凝集させることなく食品成分の均一性を維持できる。ただし、特許文献1と同様な理由により、食品へ添加する場合には、約100〜200kg/cm2の圧力でホモゲナイズすることが推奨されている。
特許文献3及び4に記載されているバクテリアセルロースは、表面にCMCやHPC、HECが結着した細く長い均一な繊維であるので、有機溶媒および水系溶媒のいずれの液体にもほぼ均一に分散するほど高い分散性を有している。しかしながら、このバクテリアセルロースを乾燥した場合、塩類溶液での分散性や溶解性についての記載はない。塩類を含む液体に十分に分散できる乾燥固形物は、引用文献5にも記載されていない。
そこで本発明は、塩類を含む液体に対しても、機械的な攪拌なしに均一に分散して粘度を発現できるバクテリアセルロース複合化粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定の第1の高分子物質を含む培地で培養されたバクテリアセルロースの溶液に、所定の第2の高分子物質を加えた混合溶液を乾燥することにより、塩類を含む液体に対しても、機械的な攪拌なしに均一に分散して粘度を発現できるバクテリアセルロース複合化粉末が得られること見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係るバクテリアセルロース複合化粉末は、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、およびポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる第2の高分子物質が添加され、乾燥されたものである。
また、本発明に係るバクテリアセルロース複合化粉末の製造方法は、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースを培養し、培養後、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、およびポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し、乾燥するものである。
本発明によれば、塩類を含む液体に対しても、機械的な攪拌なしに均一に分散して粘度を発現できるバクテリアセルロース複合化粉末およびその製造方法を提供することができる。
蒸留水中におけるバクテリアセルロース複合化粉末または製剤の分散の様子を表す写真であり、図1(a)はNFBC−HPC粉末、図1(b)はNFBC−CMC粉末、図1(c)はサンアーティストPN、図1(d)はサンアーティストPGについての写真である。 0.1重量%塩化ナトリウム水溶液中におけるバクテリアセルロース複合化粉末または製剤の分散の様子を表す写真であり、図2(a)はNFBC−HPC粉末、図2(b)はNFBC−CMC粉末、図2(c)はサンアーティストPN、図2(d)はサンアーティストPGについての写真である。
本実施形態のバクテリアセルロース複合化粉末は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびヒドロキシエチルセルロース(HEC)の少なくとも1以上からなる第1の高分子物質と、HPC、HEC、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、およびポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる第2の高分子物質とを含有する。
本実施形態のバクテリアセルロース複合化粉末は、第1の高分子物質を含む培地でバクテリアセルロースを培養し、培養されたバクテリアセルロースの溶液を第2の高分子物質の溶液と混合し、得られた混合溶液を乾燥させるよって製造することができる。
培養されたバクテリアセルロースにおいては、第1の高分子物質がバクテリアセルロースに複合化している。すなわち、第1の高分子物質は、バクテリアセルロースに高次的に絡み合っている。こうした第1の高分子物質は、例えば、国際公開第2018/038055号の段落0084に記載された方法等により確認することができる。
第1の高分子物質は、HPCおよびHECの少なくとも1以上からなる。これらは、バクテリアセルロースのフィブリルと反応する水溶性を備え、冷水可溶性である。しかも、食品添加物又は医薬品添加物として認められているもの、あるいは食用に供されている天然物から抽出されたものである。また、HPCおよびHECは、カチオン基やアニオン基を有していないので、電気的に中性である。HPCおよびHECは両親媒性セルロース誘導体であるので、これらが複合化して培養されたバクテリアセルロースも両親媒性となる。なお、食品にも使用できることを考慮すると、HPCが好ましい。
こうした第1の高分子物質をバクテリアセルロース生産時(発酵時)に添加して、バクテリアセルロースが培養される。第1の高分子物質は、菌体外に排出される個々のセルロースミクロフィブリルの表面に結着することで、フィブリルが束ねられて会合することを阻止するものと考えられる。こうして、第1の高分子物質を取り込みながら高次構造が形成される。具体的な製造方法については、例えば、特許第5752332号公報、国際公開第2018/038055号などを参照することができる。
培養されたバクテリアセルロースは、例えば、終濃度0.1±0.006%(w/w)で水に含有された際、波長500nmの光の透過率が35%以上という物性を有する。培養されたバクテリアセルロースを含有する水の光透過率は、このバクテリアセルロースの水への分散性の指標である。具体的には、光透過率が大きいほど、水への分散性が高いことを示す。
培養されたバクテリアセルロースにおける第1の高分子物質の割合は、5〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは7〜30重量%程度である。例えば第1の高分子物質の配合量を調節することによって、培養されたバクテリアセルロース中の第1の高分子物質の割合を所定の範囲内に制御することができる。
培養されたバクテリアセルロースは、例えば純水に溶解して0.1〜5重量%程度の溶液を調製しておく。そこに、第2の高分子物質の溶液を加えて乾燥することで、培養されたバクテリアセルロースと第2の高分子物質とが複合化、すなわち高次的に絡み合って、目的のバクテリアセルロース複合化粉末が得られる。乾燥前には、濾過や遠心分離等により不純物を除去しておくことが望まれる。
第2の高分子物質は、HPC、HEC、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、およびポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる。分散性向上の効果が高いことから、第2の高分子物質が、キサンタンガムを含むことが好ましい。第2の高分子物質は、多糖類、その誘導体、またはその塩ということができる。第2の高分子物質は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。第2の高分子物質は、純水に溶解して0.1〜5重量%程度の溶液を調製して添加しても、粉末のまま添加して溶解しても構わない。
第2の高分子物質は、培養されたバクテリアセルロースとともに乾燥されて分子中に入り込むものと考えられる。こうして、バクテリアセルロースと第1の高分子物質と第2の高分子物質とを含むバクテリアセルロース複合化物が得られる。乾燥により粉末化される際、形成されるセルロース同士の水素結合が第2の高分子物質によって弱まり、水等への溶解が容易になるのである。バクテリアセルロース複合化物中の第2の高分子物質は、例えば添加した量により確認することができる。
バクテリアセルロース複合化物においては、培養されたバクテリアセルロースと第2の高分子物質の比率(培養されたバクテリアセルロース:第2の高分子物質)は8:2〜2:8の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、7:3〜3:7程度である。各溶液の濃度や、配合量を調節することで、培養されたバクテリアセルロースと第2の高分子物質との重量比を所定の範囲内に制御することができる。
第2の高分子物質とともに、デキストリン、乳糖、糖類およびオリゴ糖など、一般的に増量剤として添加される物質を、培養されたバクテリアセルロースの溶液に添加してもよい。増量剤の添加によって固形分が増えるので、回収性(粉末化)の向上につながる。この場合、本発明の効果に何ら影響を及ぼすことはない。
本発明においては、培養されたバクテリアセルロースおよび第2の高分子物質を、いずれも溶液として混合するので、第1の高分子物質および第2の高分子物質がバクテリアセルロースに複雑に作用するものと推測される。発酵によりバクテリアセルロースが形成される際には、第1の高分子物質を取り込みながら高次構造が形成される。乾燥により粉末化される際には、セルロース同士の水素結合が第2の高分子物質により弱められることで、水への溶解が容易になる。
また、第1の高分子物質として用いられるHPCおよびHECは、電気的に中性であるので、塩化ナトリウム等の塩類が含まれている液体にも容易に溶解することができる。このように、本開示のバクテリアセルロース複合化粉末の効果は、バクテリアセルロース、第1の高分子物質、および第2の高分子物質の3成分の相乗効果によって達成されたものである。
培養されたバクテリアセルロースにおける第1の高分子物質の割合、および培養されたバクテリアセルロースと第2の高分子物質との比率は、乾燥、粉砕後のバクテリアセルロース複合化粉末においても維持される。なお、水や塩類を含む液体への分散性を考慮すると、バクテリアセルロース複合化物における高分子物質(第1の高分子物質と第2の高分子物質との合計)の含有量は、30〜70%であることが好ましい。
上述したように、培養されたバクテリアセルロースと第2の高分子物質とを含む混合溶液を、恒温槽等で乾燥させることによって、本発明のバクテリアセルロース複合化粉末が得られる。乾燥時の温度は、乾燥化物の品温が乾燥物溶媒の沸点未満となることが望まれる。例えば水溶液の場合には、100℃以下で乾燥することが好ましい。ただし、品温が100℃未満である場合は、設定送風温度を100℃以上としても構わない。
沸点未満の温度で乾燥させることによって、粘度を確実に発現させることができる。沸点未満の温度であれば、部分的に急激に乾燥されて乾燥状態が不均一になることは避けられる。しかも、過度の加熱により高分子物質が溶解して、バクテリアセルロースと高分子物質との複合体からなる高次構造が変化するおそれもないことによる。真空乾燥は、より低温で乾燥できるため有効である。乾燥に時間を要しても問題ない場合には、フリーズドライにより40℃以下で乾燥することもできる。
乾燥によって得られる乾燥物は、粒子径が均一でないため、複合化物の乾燥後、必要に応じて粉砕を行ってもよい。粉砕には、衝撃型粉砕機等を用いることができる。粉砕後の複合化粉末の大きさは特に限定されないが、一般的には、20μm〜500μm程度である。また、粉砕方式も衝撃、摩砕、および切断など、特に限定されず、任意の方式で粉砕することができる。
本開示のバクテリアセルロース複合化粉末は、手攪拌などの弱い攪拌で液体に均一に分散して粘度を発現する。具体的には、塩類が含まれる液体中に0.1重量%の濃度で加えた場合、機械的な均質化処理なしでも、20℃において50mPa・s以上の粘度を得ることができる。具体的には、1.0重量%の塩化ナトリウム水溶液に、本発明のバクテリアセルロース複合化粉末を0.1重量%の濃度で加えて手攪拌し、10分静置した後の20℃における粘度(η(s))が50mPa・s以上である。
なお、本実施形態のバクテリアセルロース複合化粉末は、蒸留水に0.1重量%の濃度で加えて手攪拌し、10分静置した後の20℃における粘度(η(w))も、50mPa・s以上である。
本実施形態と同様の材料を使用しても、本実施形態とは異なる方法で製造された複合化粉末の場合には、同様の条件で50mPa・s程度の粘度とするためには、ホモゲナイザーなどを用いた強い攪拌が必要とされていた。所定の方法で製造された本実施形態の複合化粉末は、手攪拌のみで50mPa・s以上の粘度とすることができ、最大500mPa・s程度の粘度とすることもできる。
バクテリアセルロース複合化粉末が溶解された溶液の粘度は、B型粘度計を用いて20℃、6rpm、ローターは適宜最適なものを使用し、測定することができる。本実施形態においては、測定された粘度が50mPa・s以上であれば、バクテリアセルロース複合化粉末が液体中に均一に分散しているものとする。粘度は、100mPa・s以上であることが好ましい。
50mPa・s以上の粘度が得られることに加えて、下記式で表される関係を満たした場合、本発明のバクテリアセルロース複合化粉末が、塩類が含まれる液体中に均一に分散していることになる。
η(s)≧0.3×η(w)
上述したように、η(s)は、1.0重量%の塩化ナトリウム水溶液に、本実施形態のバクテリアセルロース複合化粉末を0.1重量%の濃度で加えて手攪拌し、10分静置した後の20℃における粘度であり、η(w)は、本実施形態のバクテリアセルロース複合化粉末を0.1重量%の濃度で蒸留水に加えて手攪拌し、10分静置した後の20℃における粘度である。言い換えると、数式((η(s)/η(w))×100)で表される粘度比率(%)が30%以上であれば、塩類が含まれる液体中にもバクテリアセルロース複合化粉末が均一に分散しているものとする。
本実施形態のバクテリアセルロース複合化粉末は、所定の方法により製造されたものであるので、水以外の液体、例えば1重量%塩化ナトリウム水溶液中にも、手攪拌により良好に分散させて十分な粘度を得ることが可能となった。本実施形態と同様の材料を使用しても本実施形態とは異なる方法で製造された複合化粉末を、同様の塩化ナトリウム水溶液に手撹拌で分散させても、所望の粘度は得られない。手攪拌により水への分散が可能であることに加えて、塩化ナトリウム水溶液等にも分散して十分な粘度が得られることが、本実施形態のバクテリアセルロース複合化粉末の優れた特徴である。
以下、本開示の実施例を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
本実施例で使用した物質を示す。
CMC−Na:(和光純薬製)
HEC:SE600(ダイセルファンケム製)
HPC:HPC−L(日本壮曹達)
キサンタンガム:イナゲルV−10(伊那食品工業製)
プルラン:PI−20(林原製)
ローカストビーンガム:イナゲルL−15(伊那食品工業製)
タラガム:イナゲルタラガムA(伊那食品工業製)
グァーガム:イナゲルGR−10(伊那食品工業製)
グルコマンナン:イナゲルマンナン100(伊那食品工業製)
タマリンドガム:イナゲルV−250(伊那食品工業製)
サイリウムシードガム:イナゲルA−400(伊那食品工業製)
アラビアガム:イナゲルアラビアガムA(伊那食品工業製)
LMペクチン:イナゲルJP−20(伊那食品工業製)
HMペクチン:イナゲルJP−10(伊那食品工業製)
大豆多糖類:(三栄源製)
κ−カラギナン:イナゲルE−150(伊那食品工業製)
ι−カラギナン:V−120(伊那食品工業製)
λ−カラギナン:V−40(伊那食品工業製)
アルギン酸Na:イナゲルGS−80(伊那食品工業製)
ポリグリコール酸(PGA):(和光純薬)
デキストリン:パインデックス#2(松谷化学工業製)
<バクテリアセルロースの培養>
特許国際公開番号WO2018/038055の実施例8に記載されている方法にしたがって、炭素源と培養時高分子物質とを含有する培地中で細菌を培養した。培養時高分子物質としては、HPC、HEC、CMCを用意した。培養後の培養液について遠心分離(8000rpm、15分)を行い、沈殿物を回収した。1(W/V)%の水酸化ナトリウム水溶液を、沈殿物の5倍容量加え、70℃、100rpmで2時間振とうすることにより菌体を溶解した。
その後、これを同条件の遠心分離を行い、上清を除去して沈殿物を回収することにより、水溶液中の菌体成分を除去した。そこに超純水を加えて同条件の遠心分離を行った後、上清を除去する操作を、湿潤条件で沈殿物のpHが7以下となるまで繰り返し行った。この操作より培養されたバクテリアセルロースを精製した。培養されたバクテリアセルロースにおける各培養時高分子物質の割合は、それぞれ12重量%(CMC)、22重量%(HEC)、20重量%(HPC)である。
培養されたバクテリアセルロースは、純水に溶解して1重量%の濃度の水溶液とした。各水溶液の名称は、下記表1のように培養時高分子物質と対応する。
Figure 2021126054
<複合用高分子物質溶液の調製>
複合用高分子物質として、CMC−Na、HEC、HPC、キサンタンガム、プルラン、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、グルコマンナン、タマリンドガム、サイリウムシードガム、アラビアガム、LMペクチン、HMペクチン、大豆多糖類、κ−カラギナン、λ−カラギナン、ι−カラギナン、アルギン酸Na、ポリグリコール酸(PGA)、およびデキストリンを用意した。
複合用高分子物質は、それぞれ純水に溶解して1重量%の濃度の水溶液とした。
以下においては、培養されたバクテリアセルロースの水溶液に複合用高分子物質溶液をそれぞれ加えて、培養されたバクテリアセルロースと複合用高分子物質とを含有する混合溶液を得る。これを乾燥させた後、粉砕してバクテリアセルロース複合化物粉末を調製し、水又は塩化ナトリウム水溶液への分散性を評価する。
<試験例I−1>
NFBC−HPC溶液100gに対し、各複合用高分子物質溶液100gを加えて攪拌した。得られた混合溶液を、80℃の恒温槽中で薄くキャスティングし、水分値8%程度に乾燥した。その後、ハンマーミルを用いて粉砕して、バクテリアセルロース複合化粉末(NFBC−HPC粉末)を調製した。バクテリアセルロース複合化粉末においては、培養されたバクテリアセルロースと複合用高分子物質との重量比は、1:1程度である。
比較のために、複合用高分子物質溶液を添加せずにNFBC−HPC溶液のみを用いて、同様に乾燥、粉砕して粉末を得た。
(水及び塩化ナトリウム水溶液への分散性の評価)
得られたNFBC−HPC粉末0.1gを100mLの蒸留水に加え、マドラーを用いた手攪拌により均一に分散させた。これを静置して10分後、B型粘度計(BROOKFIELD(LVDV−1 PRIME))により粘度(20℃、6rpm)を測定して、η(w)とした。また、蒸留水を1.0%塩化ナトリウム水溶液に変更した以外は同様にして粘度を測定し、η(s)とした。さらに、数式((η(s)/η(w))×100)により粘度比率(%)を求めた。
特定の複合用高分子物質が含有されたNFBC−HPC粉末は、蒸留水中で粘度が発現した。その複合用高分子物質と、測定された粘度(η(w)、η(s))、および算出された粘度比率を下記表2にまとめる。
Figure 2021126054
複合用高分子物質として、HPC、HEC、キサンタンガム、アルギン酸NaまたはPGAを用いた場合には、塩化ナトリウム水溶液中の粘度η(s)が50mPa・s以上であり、しかも粘度比率は30%以上である。これらのバクテリアセルロース複合化粉末は、蒸留水のみならず1.0%塩化ナトリウム水溶液中にも良好に分散でき、分散性が高いことが示された。
なお、培養されたバクテリアセルロースのみの粉末の場合には、1.0%塩化ナトリウム水溶液中で粘度は発現しなかった。また、複合用高分子物質として、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、グルコマンナン、κ−カラギナン、ι−カラギナン、λ−カラギナン、またはデキストリンを用いた場合には、上述の濃度では粘度が発現しなかった。
<試験例I−2>
NFBC−HEC溶液100gに対し、各複合用高分子物質溶液100gを加えて攪拌した。得られた混合溶液を、80℃の恒温槽中で薄くキャスティングし、水分値8%程度に乾燥した。その後、ハンマーミルを用いて粉砕して、バクテリアセルロース複合化粉末(NFBC−HEC粉末)を調製した。バクテリアセルロース複合化粉末においては、培養されたバクテリアセルロースと複合用高分子物質との重量比は、1:1程度である。
比較のために、複合用高分子物質溶液を添加せずにNFBC−HEC溶液のみを用いて、同様に乾燥、粉砕して粉末を得た。
(水及び塩化ナトリウム水溶液への分散性の評価)
得られたNFBC−HEC粉末0.1gを100mLの蒸留水に加え、マドラーを用いた手攪拌により均一に分散させた。これを静置して10分後、B型粘度計(BROOKFIELD(LVDV−1 PRIME))により粘度(20℃、6rpm)を測定して、η(w)とした。また、蒸留水を1.0%塩化ナトリウム水溶液に変更した以外は同様にして粘度を測定し、η(s)とした。さらに、数式((η(s)/η(w))×100)により粘度比率(%)を求めた。
特定の複合用高分子物質が含有されたNFBC−HEC粉末は、蒸留水中で粘度が発現した。その複合用高分子物質と、測定された粘度(η(w)、η(s))、および算出された粘度比率を下記表3にまとめる。
Figure 2021126054
複合用高分子物質として、HPC、HEC、キサンタンガム、アルギン酸NaまたはPGAを用いた場合には、塩化ナトリウム水溶液中の粘度η(s)が50mPa・s以上であり、しかも粘度比率は30%以上である。これらのバクテリアセルロース複合化粉末は、蒸留水のみならず1.0%塩化ナトリウム水溶液中にも良好に分散でき、分散性が高いことが示された。
なお、培養されたバクテリアセルロースのみの粉末の場合には、1.0%塩化ナトリウム水溶液中で粘度は発現しなかった。また、複合用高分子物質として、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、グルコマンナン、κ−カラギナン、ι−カラギナン、λ−カラギナン、またはデキストリンを用いた場合には、上述の濃度では粘度が発現しなかった。
<試験例I−3>
NFBC−CMC溶液100gに対し、各複合用高分子物質溶液100gを加えて攪拌した。得られた混合溶液を、80℃の恒温槽中で薄くキャスティングし、水分値8%程度に乾燥した。その後、ハンマーミルを用いて粉砕して、バクテリアセルロース複合化粉末(NFBC−CMC粉末)を調製した。バクテリアセルロース複合化粉末においては、培養されたバクテリアセルロースと複合用高分子物質との重量比は、1:1程度である。
比較のために、複合用高分子物質溶液を添加せずにNFBC−CMC溶液のみを用いて、同様に乾燥、粉砕して粉末を得た。
(水及び塩化ナトリウム水溶液への分散性の評価)
得られたNFBC−HEC粉末0.1gを100mLの蒸留水に加え、マドラーを用いた手攪拌により均一に分散させた。これを静置して10分に、B型粘度計(BROOKFIELD(LVDV−1 PRIME))により粘度(20℃、6rpm)を測定して、η(w)とした。また、蒸留水を1.0%塩化ナトリウム水溶液に変更した以外は同様にして粘度を測定し、η(s)とした。さらに、数式((η(s)/η(w))×100)により粘度比率(%)を求めた。
特定の複合用高分子物質が含有されたNFBC−CMC粉末は、蒸留水中で粘度が発現した。その複合用高分子物質と、測定された粘度(η(w))を下記表4にまとめる。
Figure 2021126054
NFBC−HPC粉末、NFBC−HEC粉末の場合とは異なり、NFBC−CMC粉末の場合には、複合用高分子物質としてHPC、HEC、キサンタンガム、アルギン酸Na、またはPGAを用いても、塩化ナトリウム水溶液中で50mPa・s以上の粘度が出ることはなかった。バクテリアセルロース複合化粉末であって、培養時高分子物質としてCMCを用いたNFBC−CMC粉末は、1.0%塩化ナトリウム水溶液中に良好に分散せず、分散性が低いことが示された。
以上の結果から、培養時高分子物質としてHPCまたはHECを用いて培養されたバクテリアセルロースの水溶液(NFBC−HPC溶液、NFBC−HEC溶液)に、HPC、HEC、キサンタンガム、アルギン酸Na、およびPGAから選択される複合用高分子物質溶液を加えて複合化することによって、所望の特性を備えたバクテリアセルロース複合化粉末が得られることが確認された。
そこで、本実施例においては、HPCおよびHECから選択される少なくとも1種を第1の高分子物質とし、HPC、HEC、キサンタンガム、アルギン酸Na、およびPGAから選択される少なくとも1種を第2の高分子物質とする。こうした第1の高分子物質と第2の高分子物質とを含有するバクテリアセルロース複合化粉末が、本発明のバクテリアセルロース複合化粉末である。
<試験例II>
第1の高分子物質が複合化して培養されたバクテリアセルロースの水溶液として、前述のNFBC−HPC溶液を用い、第2の高分子物質溶液として、前述のキサンタンガム溶液を用い、これらの溶液を下記表5に示した比率で配合して混合溶液を調製した。得られた混合溶液を、80℃の恒温槽中で薄くキャスティングし、水分値8%程度に乾燥した。その後、ハンマーミルを用いて粉砕して、バクテリアセルロース複合化粉末(NFBC−HPC粉末)を調製した。
得られたNFBC−HPC粉末0.1gを100mLの蒸留水に加え、マドラーを用いた手攪拌により均一に分散させて試料を調製した。これを静置して10分後、B型粘度計(BROOKFIELD(LVDV−1 PRIME))により粘度(20℃、6rpm)を測定して、η(w)とした。また、蒸留水を1.0%塩化ナトリウム水溶液に変更した以外は同様にして粘度を測定し、η(s)とした。さらに、数式((η(s)/η(w))×100)により粘度比率(%)を求めた。
手攪拌後の粘度を測定した試料について、さらに機械的な均質化(ホモジナイズ)を行って同様に粘度(20℃、6rpm)を測定した。具体的には、TKホモミキサー(マークII fモデル、特殊機械社製))を用いて、100000rpmで1分間処理した。前述と同様に粘度(η(w)、η(s))を測定し、粘度比率((η(s)/η(w))×100)を求めた。
手攪拌後およびホモジナイズ後における粘度(η(w)、η(s))を、粘度比率とともに下記表5にまとめる。
Figure 2021126054
培養されたバクテリアセルロースの割合が多すぎると、培養されたバクテリアセルロースと複合化される第2の高分子物質(キサンタンガム)の量が不足して、複合化が不十分となるおそれがある。一方、培養されたバクテリアセルロースの割合が少なすぎる場合には、乾燥して粉末する際、培養されたバクテリアセルロースの周りを第2の高分子物質(キサンタンガム)が覆って強固な皮膜が形成される。皮膜中にはアニオンが多量に存在しているため、塩類を含む液体中ではイオン化が妨げられて溶解性が低下する。
培養されたバクテリアセルロースと第2の高分子物質との配合比(培養されたバクテリアセルロース:第2の高分子物質)が8:2〜2:8の場合には、手攪拌後においても、塩化ナトリウム水溶液中の粘度η(s)が50mPa・s以上である。したがって、こうした配合比であれば、粘度比率は30%以上である。この結果から、バクテリアセルロース複合化粉末が、蒸留水のみならず1.0%塩化ナトリウム水溶液中にも良好に分散しており、分散性が高いことになる。
<試験例III>
第1の高分子物質が複合化して培養されたバクテリアセルロースの溶液として、前述と同様の1重量%の濃度のNFBC−HPC溶液100g、第2の高分子物質溶液として、前述と同様の1重量%の濃度のCMC−Na溶液50g、および1重量%の濃度のキサンタンガム溶液50gを加えて攪拌して混合溶液を調製した。
この混合溶液を80℃の恒温槽中で薄くキャスティングし、水分値9%程度に乾燥した後、前述と同様に粉砕してバクテリアセルロース複合化物の粉末を得た。バクテリアセルロース複合化粉末においては、培養されたバクテリアセルロースと複合用高分子物質との重量比は、1:1程度である。
得られた粉末を用い、<試験例II>と同様にして、蒸留水中の粘度(η(w))および1.0%塩化ナトリウム水溶液中の粘度(η(s))を20℃、6rpmで測定した。その結果、蒸留水の場合、手攪拌後の粘度は450mPa・sであり、ホモジナイズ後の粘度は470mPa・sであった。また、1.0%塩化ナトリウム水溶液の場合、手攪拌後の粘度は150mPa・sであり、ホモジナイズ後の粘度は180mPa・sであった。粘度比率は、手攪拌後およびホモジナイズ後のいずれも30%以上と算出される。
NFBC−HPC溶液を同量の粉末セルロース溶液に変更する以外は同様にして、複合化物の粉末を調製し、得られた粉末を用いて前述と同様にして粘度を測定した。その結果、蒸留水での粘度(η(w))は、手攪拌後およびホモジナイズ後のいずれも、10mPa・sであった。また、1.0%塩化ナトリウム水溶液中での粘度(η(s))は、手撹拌およびホモジナイズ後の粘度は0mPa・sであった。
複合化物の粉末として、サンアーティスト(登録商標)PN(三栄源エフ・エフ・アイ社(株)製)を用いた。サンアーティスト(登録商標)PNは、18.3重量%の発酵セルロース、6.2重量%のCMC−Na、12.1重量%のキサンタンガム、および63.4重量%のデキストリンを含有する製剤である。この製剤は、HPCまたはHECが複合化されていない。
この粉末0.1gを100mLの蒸留水及び1.0%塩化ナトリウム水溶液に加え、マドラーを用いた手攪拌により均一に分散させた。これを静置して10分後に、B型粘度計により粘度(20℃、6rpm)を測定した。蒸留水での手攪拌後の粘度は110mPa・sであり、ホモジナイズ後の粘度は470mPa・sであった。また、1.0%塩化ナトリウム水溶液中での手撹拌の粘度は0mPa・sであり、ホモジナイズ後の粘度は40mPa・sであった。
複合化物の粉末としてサンアーティスト(登録商標)PG(三栄源エフ・エフ・アイ社(株)製)を用いて同様に測定を行なった。サンアーティスト(登録商標)PGは、発酵セルロース(20重量%)、CMC−Na(6.7重量%)、グァーガム(6.3重量%)およびデキストリン(66.6%)を含有する製剤である。この製剤は、HPCまたはHECが複合化されていない。
この粉末0.1gを100mLの蒸留水及び1.0%塩化ナトリウム水溶液に加え、マドラーを用いた手攪拌により均一に分散させた。これを静置して10分後に、B型粘度計により粘度(20℃、6rpm)を測定した。蒸留水での手攪拌後の粘度は5mPa・sであり、ホモジナイズ後の粘度は400mPa・sであった。また、1.0%塩化ナトリウム水溶液中での手撹拌の粘度は0mPa・sであり、ホモジナイズ後の粘度は50mPa・sであった。
本実施例のバクテリアセルロース複合化粉末を蒸留水に加えた場合には、手攪拌後においても、ホモジナイズ後と同程度の粘度が得られている。本実施例のバクテリアセルロース複合化粉末は、所定の第1の高分子物質と複合化した後、所定の第2の高分子物質とさらに複合化して製造されたものであるので、塩化ナトリウム水溶液中でも弱い攪拌で十分に分散できることがわかる。
これに対し、第1の高分子物質および、それに引き続いた第2の高分子物質による複合化が行われていない粉末セルロースを用いた場合には、ホモジナイズ後でも粘度が低く、良好に分散させることができない。HPCおよびHECから選択される第1の高分子物質が複合化されていないバクテリアセルロースを含有するサンアーティスト(登録商標)PN、およびサンアーティスト(登録商標)PGは、良好に分散させるためにはホモジナイズが必要であることが示されている。
<試験例IV>
前述の<試験例III>と同様のNFBC−HPC溶液、CMC−Na溶液、およびキサンタンガム溶液を、同様の量で用いて混合溶液を調製した。この混合溶液を60〜140℃の恒温槽、またはフリーズドライ(40℃)により、水分値が8.0%になるように乾燥した後、前述と同様に粉砕して複合化物粉末を調製した。
得られた粉末を用いて、前述の<試験例I>と同様にして1.0%塩化ナトリウム水溶液への分散性を評価した。その結果を、粉末調製時の乾燥温度とともに下記表6にまとめる。
Figure 2021126054
乾燥温度(品温)が低いほど粘度が大きく、複合化粉末が塩化ナトリウム水溶液中に良好に分散していることが、上記表6に示されている。
<試験例V>
第1の高分子物質が複合化して培養されたバクテリアセルロースの溶液として、前述と同様の1重量%の濃度のNFBC−HPC溶液を用い、第2の高分子物質溶液としては、前述と同様の1重量%のキサンタンガムと8重量%のデキストリンとを含有する水溶液を用意した。NFBC−HPC溶液100gと、第2の高分子物質溶液100gとを混合し、前述の<試験例I>と同様にして、バクテリアセルロース複合化物粉末(NFBC−HPC粉末)を調製した。
得られたバクテリアセルロース複合化粉末を、試料(V−1)とする。この試料(V−1)における培養されたバクテリアセルロースとキサンタンガムとの配合比率は、5:5程度である。
試料(V−1)のNFBC−HPC粉末0.1gを100mLの蒸留水に加え、<試験例1>と同様に手攪拌により分散させた。これを静置して10分後の粘度(20℃、6rpm)は、300mPa・sであった。また、蒸留水を1.0重量%塩化ナトリウム水溶液に変更した以外は同様にして測定した粘度(20℃、6rpm)は、280mPa・sであった。粘度比率は、98.3%と算出される。
所定の第1の高分子物質が複合化して培養されたバクテリアセルロースを、所定の第2の高分子物質(キサンタンガム)でさらに複合化する場合、培養されたバクテリアセルロースと第2の高分子物質との配合比が8:2〜2:8の範囲内であれば、増量剤(デキストリン)が含有されていてもよい。得られたバクテリアセルロース複合化粉末は、蒸留水のみならず1.0重量%塩化ナトリウム水溶液中にも、手攪拌で良好に分散する。この場合、塩化ナトリウム水溶液中での粘度値は蒸留水での粘度の30%以上であり、十分な粘度が発現することが確認された。
また、キサンタンガムをアルギン酸Naに変更し、デキストリンを乳糖に変更した以外は、試料(V−1)同様にして複合化物の粉末を調製した(試料(V−2))。この試料(V−2)における培養されたバクテリアセルロースとアルギン酸Naとの配合比率は、1:1程度である。試料(V−2)の粉末を用いて、同様にして蒸留水中および1重量%の塩化ナトリウム水溶液中での粘度(20℃、6rpm)を測定した。
その結果、蒸留水中では150mPa・sであり、塩化ナトリウム水溶液中では50mPa・sであり、粘度比率は33.3%と算出された。試料(V−1)と同様に、試料(V−2)においても、所定の第1の高分子物質が複合化して培養されたバクテリアセルロースが、所定の第2の高分子物質でさらに複合化されているので、十分な粘度を発現することがわかる。
さらに、NFBC−HPCを、NFBC−CMCに変更した以外は、試料(V−1)と同様にして複合化物の粉末を調製した(試料(V−3))。この試料(V−3)における培養されたバクテリアセルロースとキサンタンガムとの配合比率は、5:5程度である。さらにまた、発酵セルロースの粉末としてサンアーティスト(登録商標)PN、サンアーティスト(登録商標)PGの各粉末を用いて、同様にして1重量%の塩化ナトリウム水溶液中での粘度(20℃、6rpm)を測定した。いずれの粉末も、所定の第1の高分子物質が複合化して培養されたバクテリアセルロースが、所定の第2の高分子物質でさらに複合化されたものではないので、粘度0mPa・sであった。
各粉末を0.1重量%の濃度で蒸留水中に加え、手攪拌により分散させた様子を図1の写真に示す。図1(a)はNFBC−HPC粉末、図1(b)はNFBC−CMC粉末、図1(c)はサンアーティストPN、図1(d)はサンアーティストPGについての写真である。蒸留水の場合には、NFBC−HPC粉末(図1(a))のみならず、NFBC−CMC粉末(図1(b))、サンアーティストPN(図1(c))、およびサンアーティストPG(図1(d))は、いずれも手攪拌により良好に分散している。
図2の写真には、同様の粉末を0.1重量%の濃度で1重量%塩化ナトリウム水溶液に加え、手攪拌により分散させた様子を示す。図2(a)はNFBC−HPC粉末、図2(b)はNFBC−CMC粉末、図2(c)はサンアーティストPN、図2(d)はサンアーティストPGについての写真である。1重量%塩化ナトリウム水溶液中に良好に分散できるのは、本発明のバクテリアセルロース複合化粉末(NFBC−HPC粉末)のみであることが明確に示されている。

Claims (6)

  1. ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、
    培養後、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、およびポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる第2の高分子物質が添加され、乾燥されたバクテリアセルロース複合化粉末。
  2. 前記培養されたバクテリアセルロースにおける前記第1の高分子物質の割合は、5〜50重量%の範囲内であり、
    前記培養されたバクテリアセルロースと、前記第2の高分子物質との重量比(培養されたバクテリアセルロース:第2の高分子物質)は、8:2〜2:8の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1記載のバクテリアセルロース複合化粉末。
  3. 1.0重量%の塩化ナトリウム水溶液に0.1重量%の濃度で加えて手攪拌し、10分静置した後の20℃における粘度η(s)(mPa・s)が、下記式で表される関係を満たすことを特徴とする請求項1または2記載のバクテリアセルロース複合化粉末。
    η(s)≧50
    η(s)≧0.3×η(w)
    (ここで、η(w)は、蒸留水にバクテリアセルロース複合化粉末を0.1重量%の濃度で加えて手攪拌し、10分静置した後の20℃における粘度である。)
  4. ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースを培養し、
    培養後、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、およびポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し、乾燥する、バクテリアセルロース複合化粉末の製造方法。
  5. 前記培養されたバクテリアセルロースにおける前記第1の高分子物質の割合は、5〜50重量%の範囲内であり、
    前記培養されたバクテリアセルロースと、前記第2の高分子物質との重量比(培養されたバクテリアセルロース:第2の高分子物質)は、8:2〜2:8の範囲内である
    ことを特徴とする請求項4記載のバクテリアセルロース複合化粉末の製造方法。
  6. 1.0重量%の塩化ナトリウム水溶液に0.1重量%の濃度で加えて手攪拌し、10分静置した後の20℃における粘度η(s)(mPa・s)が、下記式で表される関係を満たすことを特徴とする請求項4または5記載のバクテリアセルロース複合化粉末の製造方法。
    η(s)≧50
    η(s)≧0.3×η(w)
    (ここで、η(w)は、蒸留水にバクテリアセルロース複合化粉末を0.1重量%の濃度で加えて手攪拌し、10分静置した後の20℃における粘度である。)
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