JP2021120478A - 電解装置及び電解方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】殿物の巻き上げを抑制しながら電解槽内に給液される電解液を電解槽内により均一に供給することが可能な電解装置及び電解方法を提供する。【解決手段】電解液を収容する電解槽1の長手方向Xに互いに間隔を空けて配置された電極を電解液中に浸漬し、電解液を循環しながら電解処理する電解装置であって、電解槽1の長手方向Xに延びる第1の側壁11に沿って互いに間隔を空けて配置され、電解液を供給するための複数の給液口21と、給液口21から供給される電解液を収容し、電解液を開口部41からオーバーフローさせて電解槽1内へと供給する樋部4と、開口部41に形成され、周期的に形成された凹凸を有し、開口部41からオーバーフローする電解液の流出量を調整する流出量調整部49と、樋部よりも下方において第1の側壁と対向する第2の側壁に沿って互いに間隔を空けて配置され、電解液を排液するための複数の排液口31とを備える電解装置である。【選択図】図3

Description

本発明は、電解装置及び電解方法に関する。
従来の電解装置では、電解槽の長手方向の一端側の下部から電解液が供給され、他端側の上部から電解液が排液される下入れ上抜き方式と呼ばれる電解液の給排液が行われてきた。電解槽内の液組成及び添加剤濃度を均一に保つことは、例えば電気銅の品質及び電解成績を向上させるために重要な技術の一つであり、これまで色々な方法が検討されている。
例えば、特開2007−204779号公報(特許文献1)には、電解槽の長手方向の一端側から電解液の上層部及び下層部へ電解液を給液し、反対側の端部側の液面上層部から排液する方法が提案されている。特開2015−209550号公報(特許文献2)には、電解槽の長手方向の一端の上部から電解液が側面に向けて給液され、他端の下部から排液される方法が提案されている。また、全く別の方法として、特開2014−189851号公報(特許文献3)及び特許第5227404号公報(特許文献4)には、電解槽の底や電解槽脇から電解液を給液する方法が提案されている。
特開2007−204779号公報 特開2015−209550号公報 特開2014−189851号公報 特許第5227404号公報
しかしながら、電解が進むと電解槽内に液の濃度差が生まれ、電解槽底へいくほど比重の重い液が溜まる。給液口から給液された液は、電解槽底の液より比重が軽いため、特許文献1及び2に記載されるような下入れ上抜き方式の電解液の給排液を行った場合には、給液位置より下方に電解液や添加剤が供給されないデッドスペースが生じる。電解槽内に添加剤が供給されない領域が生じると電着物の表面が荒れる場合や、電解液が供給されないことによって液中の銅濃度が部分的に上昇して不動態化が起こりやすくなる場合がある。
特許文献3に記載された発明では、電解槽の下方且つカソードの側方から電解液を供給し、電解槽の上部の電解液排出口から電解液を排液することで、排液側の電解槽底部の銅濃度上昇を防ぐことはできる。しかしながら、給液側は、従来と同様に上方から供給されているため、給液側の電解槽下方には電解液が供給されないデッドスペースが生じ、電解槽内の混合状態を十分に改善できているとはいえない。
特許文献4に記載された発明では、電解槽の底及び電解槽脇から電解液を供給することにより、電解槽内の電解液の混合状態を改善することができる。しかしながら、特許文献4では、電解液を下方から上方へと強制的に対流させることにより、殿物の巻き上げなどによるカソードの汚染の問題が発生するおそれがある。
上記課題を鑑み、本開示は、殿物の巻き上げを抑制しながら電解槽内に給液される電解液を電解槽内により均一に供給することが可能な電解装置及び電解方法を提供する。
本発明の実施の形態に係る電解装置は一実施態様において、電解液を収容する電解槽の長手方向に互いに間隔を空けて配置された電極を電解液中に浸漬し、電解液を循環させながら電解処理する電解装置であって、電解槽の長手方向に延びる第1の側壁に沿って互いに間隔を空けて配置され、電解液を供給するための複数の給液口と、給液口から供給される電解液を収容し、該電解液を開口部からオーバーフローさせて電解槽内へと供給する樋部と、開口部に形成され、周期的に形成された凹凸を有し、開口部からオーバーフローする電解液の流出量を調整する流出量調整部と、樋部よりも下方において第1の側壁と対向する第2の側壁に沿って互いに間隔を空けて配置され、電解液を排液するための複数の排液口とを備える電解装置である。
本発明の実施の形態に係る電解方法は一実施態様において、電解液を収容する電解槽の長手方向に互いに間隔を空けて配置された電極を電解液中に浸漬し、電解液を循環させながら電解処理する電解方法であって、電解槽の長手方向に延びる第1の側壁に沿って互いに間隔を空けて配置された複数の給液口から電解液を供給し、給液口から供給される電解液を樋部に収容し、樋部の開口部に形成された周期的に形成された凹凸を有する流出量調整部から電解液をオーバーフローさせることにより、電解液を電解槽内へと供給し、樋部よりも下方において第1の側壁と対向する第2の側壁に沿って互いに間隔を空けて配置された複数の排液口を介して電解液を排液することを含む電解方法である。
本開示によれば、殿物の巻き上げを抑制しながら電解槽内に給液される電解液を電解槽内により均一に供給することが可能な電解装置及び電解方法が提供できる。
本発明の実施の形態に係る電解装置の上面概略図である。 本発明の実施の形態に係る電解装置を側面からみた場合の給液配管と排液配管との位置関係を示す概略図である。 図3(a)は、本発明の実施の形態に係る整流板を備える樋部の構成例を示す概略図であり、図3(b)は、樋部の開口端に設けられた流出量調整部の構成例を示す概略図である。 図4(a)、図4(c)、図4(e)は本発明の実施の形態に係る整流板が備える整流口の配置例を示す平面図であり、図4(b)、図4(d)、図4(f)は本発明の実施の形態に係る整流板が備える整流口の配置例を示す断面図である。 排液ボックスと排液配管の電解槽内の配置位置を表す説明図である。 給液部と排液ボックスとを表す上面概略図である。 電解液が排液ボックスから給液部へと流れる様子を表す断面概略図である。 本発明の実施の形態に係る電解装置を用いて電解液を給液した場合のシミュレーション結果の例を表す説明図である。 本発明の実施の形態に係る電解装置を用いて電解槽の長手方向から電解液をオーバーフローさせて供給した場合の流速分布の例を表すグラフである。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態に係る電解装置及び電解方法について説明する。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の構造、配置及び手順等を下記のものに特定するものではない。
(電解装置)
本発明の実施の形態に係る電解装置は、図1に示すように、電解液を収容するための直方体状の電解槽1を備える。電解槽1のサイズとしては、例えば、電解槽1の長さ(長手方向Xの内径)が5200〜5900mm、幅(短手方向Yの内径)が1095〜1110mm、深さが1275〜1510mmとなるように形成できる。
電解槽1は、長手方向Xに平行な方向に延びる第1の側壁11と、第1の側壁11に対向する第2の側壁12と、長手方向Xの一端において第1の側壁11及び第2の側壁12に垂直に延びる第3の側壁13と、長手方向Xの他端において第1の側壁11及び第2の側壁12に垂直に延び、第3の側壁13に対向する第4の側壁14とを有する。
図2に示すように、電解槽1の第1の側壁11の上方には、電解槽1内に収容される電解液の液面もしくは液面近傍となる高さにおいて電解槽1の長手方向に沿って延びる給液配管2a、2b、2cが配置されている。給液配管2a、2b、2cは、電解槽1の第3の側壁13の上方に配置された電解液を供給するための給液部20に接続されている。
給液部20は、ここでは図示を省略しているが、図2の電解槽1の他に、図2の電解槽1以外の他の電解槽に対しても電解液を給液することが可能な給液主管と、供給主管から給液配管2a、2b、2cへ電解液を分岐させる分岐配管とを備えることができる。
給液配管2a、2b、2cは、電解液への電解液の供給流量が20〜100L/分となるように電解液を電解槽1内へ供給することが好ましい。電解液の供給流量が20L/分未満では添加剤が電解槽1内に行き渡る前に分解してしまい、電着した金属の平滑性が損なわれる場合や、不動態化を起こす場合がある。電解液の供給流量は電解効率の面から高い方が好ましいが、電解液の供給流量が100L/分を超えると、電解槽1内の殿物が巻き上げられてカソード板表面へ付着する場合がある。
本実施形態に係る電解装置では、電解槽1への電解液の供給流量を20〜100L/分とすることで、殿物の巻き上げを抑制しながら電解槽1内に給液される電解液の混合状態をより改善することができ、より効率の高い電解精製を実施することができる。なお、電解液の供給流量は、30〜90L/分とすることが好ましく、30〜70L/分とすることがより好ましく、50〜70L/分とすることが更に好ましい。
給液配管2a、2b、2cの先端部には、給液口21が設けられている。給液口21はそれぞれ電解槽1の長手方向に互いに間隔を空けて離間するように、好ましくは等間隔に設けられている。図2に示すように、給液口21は、それぞれ樋部4の底部に接続されており、樋部4の下方から上方へ向けて電解液を流出させる。
樋部4は、複数の給液口21から供給される電解液を内部に収容し、電解液を一時的に貯留した後、電解液を開口部41からオーバーフローさせて電解槽1内へと供給するように構成されている。樋部4は、図1に示すように、電解槽1の長手方向Xに沿って第1の側壁11と実質的に平行に延びる壁部42と、第1の側壁11と壁部42との間に一定間隔Wを空けるように、壁部42と第1の側壁11との間を支える複数の梁部44とを備える。間隔Wは10〜30mm程度、より具体的には15mm程度とすることができる。
図1に示すように、壁部42側から梁部44内に、第1の側壁11側へ向けてねじ等の固定具47を差し込んで固定することにより、壁部42を樋部4に対して取り外し可能に配置することができる。壁部42が樋部4に対して取り外し可能に配置されることにより、樋部4内に発生した電解液中の不純物であるアンチモン等が原因で発生したスケールの除去作業を簡易に実施することができ、メンテナンス作業が簡易化できる。
図3(a)に示すように、樋部4内には、樋部4内に供給される電解液の流速を、電解槽1の長手方向Xで均一化させるための1以上の整流板46a、46b、46cが設けられている。整流板46a、46b、46cの数は限定されないが、2以上設けられることがより好ましい。
図3(b)に示すように、樋部4の開口部41には、周期的に形成された凹凸を有し、開口部41からオーバーフローする電解液の流出量を調整するための流出量調整部49が設けられている。流出量調整部49が周期的に形成された凹凸を有することによって、電解液の流速分布を電解槽1の長手方向で均一化することができる。
流出量調整部49の凹部は、電解槽1内に電極が配置された際に、電極間の隙間と対向するように配置されることにより、電極間の隙間へ電解液を流入しやすくすることができる。その結果、電極間の隙間の電解液の混合状態を良好にでき、不純物の少ない電着物を電極上に形成させることができる。なお、流出量調整部49の凹凸は、越流堰のような、オーバーフローして出てくる液を均等に流出できるような構成であれば、具体的形状は限定されない。流出量調整部49の凹部は、例えば、V字型の溝であってもよいし、U字型の溝であってもよいし、或いは矩形の溝であってもよい。
図2に示すように、整流板46a、46b、46cは、電解液を通水させる複数の整流口45を備えていることが好ましい。更に、上下の整流板46a、46bの整流口45が、鉛直方向(図2の紙面垂直方向)に互いに異なる位置に配置されるように、整流口45がそれぞれ互い違いに配置されることが好ましい。
これにより、給液口21から樋部4の上方へ向けて供給される電解液は、まず、樋部4の最も下端にある整流板46aとぶつかり、電解槽1の長手方向に流れる。その後、電解液は、整流板46aが備える整流口45を通って、その上方にある整流板46bとぶつかり、整流板46aと整流板46bの間を、電解槽1の長手方向に流れる。電解液は更に、整流板46bが備える整流口45を通って、その上方にある整流板46cにぶつかり、整流板46cが備える整流口45を通って樋部4の上方へと流れる。
このようにして、鉛直方向に異なる位置に互い違いに配置された複数の整流板46a、46b、46cの整流口45に給液口21から供給される電解液が通水されることで、電解液の流れを電解槽1の長手方向に拡げることができる。その結果、樋部4の開口部41から電解液をオーバーフローさせる際に、オーバーフローする電解液の流速分布を、電解槽1の長手方向で均一化できる。
樋部4へ供給される電解液の流速は、給液口21の付近が最も速い。そのため、給液口21の直上に電解液を通水させるための整流口45が形成されていると、整流口45を介して電解液が上方に流出してしまい、整流板46a、46b、46cによって、電解液を電解槽1の長手方向へ拡散させることが難しくなる。
本実施形態では、給液口21の直上に配置される整流口45の開口面積を、給液口21の直上以外の整流口45の開口面積よりも小さくするか、または、給液口21の直上の整流口45を塞ぐか、または、整流口45の位置を、給液口21の直上からずらして配置する。これにより、給液口21から上方へ向けて流れる電解液を、給液口21の直上にある整流板46aへ当てて、電解液を長手方向に流すことができるため、電解液の流れを電解槽1の長手方向に拡げることができる。その結果、樋部4の開口部41からオーバーフローする電解液の流速分布を、電解槽1の長手方向で均一化できる。
図3に示すように、給液口21の直上に配置される整流板46aと樋部4の電解液を貯留する底面48との間隔d1が、給液口21の直上に配置される整流板46aよりも上方にある他の整流板46b、46間の間隔d2、d3と比較して、最も狭くなるように、整流板46a、46b、46cの高さが調整されていることが好ましい。
給液口21の直上に配置される整流板46aと樋部4の底面48との間隔d1が、間隔d2、d3と比較して、最も狭くなるように配置されることにより、給液口21から上方へ流出する電解液の流速を有効に利用しながら電解液を電解槽1の長手方向に拡げることができる。
整流板46a、46b、46cを樋部4の上方に配置しすぎると、整流効果が得られない場合がある。整流板46a、46b、46cは、樋部4の高さの1/2以下、より好ましくは1/3以下の高さに配置されることが好ましい。
以下に限定されるものではないが、例えば、樋部4の高さhは150〜300mm程度、整流板46a、46b、46cの厚さは2〜8mm程度、間隔d1は5〜15mm程度、間隔d2、d3は20〜40mm程度とすることができる。
整流口45の開口面積が小さすぎると、整流口45を通水する電解液の抵抗が大きくなり、流速が低下しすぎる場合がある。例えば、図4(a)及び図4(b)に示すように、整流板46a、46b、46cの整流口45が、電解槽1の長手方向に、一定間隔を空けて、円形状で、一定直径を有して等間隔に配置される場合には、整流口45の直径を8mm以上、典型的には10mm程度とすることが好ましく、隣接する整流口45間の間隔を20〜40mm程度、典型的には約30mm程度とすることが好ましい。
このような構成において、給液口21からの流速の大きい電解液を、より効果的に電解槽1の長手方向に拡げて流すためには、最下段となる一段目の整流板46aの給液口21近傍の整流口45を例えば6〜10個所程度塞ぎ、二段目の整流板46bの給液口21近傍の整流口45を例えば1〜3個程度塞ぐことが好ましい。
整流口45の具体的構成は、給液口21への電解液の直上への流れを抑制し、電解液を電解槽1の長手方向に拡げて、樋部4からオーバーフローする電解液の流速を均一化できるような構成であれば特に限定されない。
例えば、図4(c)、図4(d)に示すように、矩形の整流口45が、上下の整流板46a、46b間で、鉛直方向に異なる位置に配置されるように形成されていてもよい。図4(e)、図4(f)に示すように、多角形(ここでは三角形)整流口45が、上下の整流板46a、46b間で、鉛直方向に異なる位置に配置されるように形成されていてもよい。
また、給液口21から供給される電解液の流れを電解槽1の長手方向に拡散しやすくするために、複数の整流口45の開口面積が、給液口21から遠ざかるにつれて大きくなるように形成されていてもよい。
このように、給液配管2a、2b、2cから給液された電解液が、樋部4の内部で一旦、貯留され、整流板46a、46b、46cで電解液の流速が整えられてから、電解槽1内へと供給されることによって、樋部4の開口部41からオーバーフローする電解液の流速分布が樋部4内で均一化されるため、電解液を電解槽1全体に渡って偏りなく供給することができる。
また、樋部4内において一旦、電解液が貯留されることにより、電解液及び添加剤の成分を電解槽1の長手方向に沿って均一化することができるため、電解槽内に給液される電解液の混合状態を総全体に渡り改善することが可能となる。また、電解液がオーバーフローによって電解槽1内へ供給されることにより、電解液の供給による電解液の液面の揺らぎを小さくできる。
樋部4の開口部41の高さが電解液の液面に対して高すぎると、樋部4からオーバーフローした電解液が電解液の液面と衝突して気泡が発生し、電解に影響を及ぼす場合がある。一方、樋部4の開口部41の高さが電解液の液面よりも低いと、電解槽1内の液面近傍に添加剤が供給されず電気銅上部の電着が荒れる可能性がある。
樋部4の開口部41の高さは、電解液の液面から400mm以内の高さ、より好ましくは200mm以内の高さ、さらに好ましくは50mm以内の高さに配置されることが好ましい。樋部4の高さhは、給液配管2a、2b、2cの管径や電解槽1の装置規模に応じて適宜変更することができる。
図1及び図2に示すように、電解槽1の第4の側壁14側上方には、電解槽1内の電解液を電解槽1外へ排出するための排液部30及び排液部30に接続された排液ボックス32が設けられている。図5に示すように、排液ボックス32には、複数の排液配管3a、3b、3cがそれぞれ接続されている。排液配管3a、3b、3cは、給液配管2a、2b、2cよりも下方に配置され、第2の側壁12上に固定されて第2の側壁12に沿って延び、互いに間隔を空けて電解槽1の長手方向に沿って配置された複数の排液口31を備える。
図2の例では、電解槽1の上流側、即ち、給液部20に近い側の電解槽1内の電解液を排液可能な排液口31を備える排液配管3aと、電解槽1の中央付近の電解液を排液可能な排液口31を備える排液配管3bと、電解槽1の排液ボックス32に近い側の電解液を排液可能な排液口31を備える排液配管3cの3本の配管が上下に離間してそれぞれ配置される。しかしながら、排液配管3a、3b、3cの配置は図2の配置に限定されないことは勿論である。
例えば、配管の長さが一番長い排液配管3aを、電解槽1の底部に最も近い位置に配置し、配管の長さが最も短い排液配管3cを、3つの排液配管3a、3b、3cの中で最も上部となるように配置することも可能であることは勿論である。
排液配管3a、3b、3cは、それぞれ排液ボックス32に接続された一端側とは反対側の先端部側に排液口31がそれぞれ設けられている。図2に示すように排液配管3a、3b、3cの先端部に選択的に排液口31が設けられることによって、一本の排液配管の全体に渡って排液口を均一に設ける場合に比べて、排液口31が形成される領域の電解槽1の長手方向に沿った長さをそれぞれ短くすることができるため、圧力損失を小さくでき、排液口31が配置された各領域の電解液をより効率的に排液しやすくなる。これにより、電解槽1長手方向の排液ムラが生じにくくなる。
なお、排液配管3a、3b、3cのそれぞれ最も先端部にある例えば排液口31は排液ボックス32から最も遠い位置にあるため、排液配管3a、3b、3c内を流れる電解液の抵抗や圧力損失等により、十分に排液されない場合がある。図2に示すように、排液配管3a、3b、3cの排液口31の先端部が互いに上下に重なるように配置されることによって、排液配管3a、3b、3cの先端部においても十分に排液が行われるように構成することができる。これにより、電解槽1の長手方向の排液ムラを生じにくくすることができる。
排液配管3a、3b、3cの管径は、給液配管2a、2b、2cの管径よりも大きくなるように構成されることが好ましい。給液配管2a、2b、2cの管径は同一であっても異なっていても構わない。排液配管3a、3b、3c側の管径を給液配管2a、2b、2cの管径よりも大きくすることによって、排液ボックス32から電解液のヘッド圧差を利用して電解液を電解槽1外へ排出させる際に、排液配管3a、3b、3cの圧力損失の影響をより小さくすることができる。これにより、より円滑に給液配管2a、2b、2c内に給液された電解液を電解槽1の外へ排出しやすくできる。
排液配管3a、3b、3cの管径は、給液配管2a、2b、2cの管径よりも1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、更に好ましくは4倍以上大きくすることができる。
排液配管3a、3b、3cの高さは、電解槽1の底部に近づけすぎると電解槽1の底部の殿物などを巻き込んで排液口31の詰まり或いは不具合等を生じさせる場合がある。排液口31は、例えば、電解槽1内に収容される電極の下端部を起点に、上方に100mm、下方に300mmの範囲に配置されることが好ましく、より好ましくは上方に100mm、下方に100mmの範囲に配置される。
給液配管2a、2b、2cが備える給液口21の開口面積よりも排液配管3a、3b、3cが備える排液口31の開口面積が大きくなるように形成されていることが好ましい。排液口31の開口面積を大きくとることによって、排液配管3a、3b、3c内の電解液を電解槽1外へ排出させる際の圧力損失の影響をより小さくすることができる。
以下に限定されるものではないが、排液口31の各開口面積を給液口21の各開口面積に対して1〜400倍、より典型的には100〜200倍大きくすることができる。これにより、排液口31から電解槽1内の電解液を効率よく排液することができる。給液口21及び排液口31の形状、穴径(スリット径)及び間隔は、電解槽1の大きさ等に応じて適宜調整することができる。
図6に示すように、排液部30には、電解槽1内の電解液を排出するための排出口300が設けられている。図7に示すように、排出口300の下方には、電解液を電解槽1外へ排出するために排出口300に接続された排出配管301が設けられている。
排液ボックス32は、図7に示す電解液の液面LSよりも下方となる底面32aを備える。底面32aには、図6に示すように、排液配管3a、3b、3cの出口3A、3B、3Cがそれぞれ接続されている。電解槽1から排液配管3a、3b、3c内に排液された電解液は、電解液の液面LSと排液ボックス32内の電解液の液面lsの高さの差Hにより汲み上げされる。
排液部30と排液配管3a、3b、3cとの間に排液ボックス32が配置されることにより、ポンプ等の動力を使用せず、且つ電解槽1の底部に沈積する殿物の巻き込みを抑制しながら、電解槽1の下方から電解液を電解槽1の外部へ抜き出すことができる。
排液ボックス32の電解液と接する側の側壁32bの上端部の高さは、電解槽1内の電解液の液面LSに対して数mm〜数十mm上方となるように配置されている。排液ボックス32は、電解槽1内に収容された電解液と接する側の側壁32bに、電解槽1内の電解液中の異物を排液ボックス32へ送るための切り欠き部33を備えることが好ましい。この切り欠き部33は、図6に示すように、電解槽1の上方側から下方側に向かってその開口幅AWが小さくなるような形状を有している。切り欠き部33の形状としては、V字形状、U字形状、台形形状等の種々の形状を取り得るが、具体的な形状は特に限定されない。
電解槽1内には、電解を行うにつれて電解液の液面LSにゴミ等の異物が溜まる場合がある。この異物が電解槽1内に留まると、電解に悪影響を与える恐れがある。本発明の実施の形態に係る電解装置によれば、電解槽1の電解液の液面LS付近にたまるゴミなどの異物を含む電解液を切り欠き部33からオーバーフローさせて排出することができるため、電解槽1内の電解液の液面LS付近のゴミの滞留を抑制することができる。
図6に示すように、排液ボックス32と排液部30との間には、排液ボックス32から排液部30へと流れる電解液を堰き止めるように配置された調整板35が配置されている。調整板35が配置されることにより、排液配管3を介して排液ボックス32内に回収された電解液が、調整板35の上端からオーバーフローして排液部30へと流れる。
例えば、大きさの異なる調整板35を配置することにより、調整板35の排液ボックス32の底面32aからの高さを変更することが可能である。調整板35の高さを変更することにより、電解槽1内の電解液の液面LSと排液ボックス32内の電解液の液面lsとの高さの差Hを調整することができる。これにより、電解槽1内の電解液の液面LSとの電解液の液面lsとの高さの差Hによるヘッド圧差を調整して、どのような給液量であっても電解槽1内の電解液の液面LSの高さを一定に保つことができる。
更に、排液ボックス32には、排液配管3a、3b、3cの出口3A、3B、3Cが接続された底面32aを複数の領域に分割するための分割壁37が排液ボックス32に設けられていることが好ましい。分割壁37を配置せずとも各出口3A、3B、3Cからそれぞれ排出される電解液の量を把握することは可能であるが、排液ボックス32に分割壁37が配置されることにより、各出口3A、3B、3Cからそれぞれ排出される電解液の量を目視により把握しやすくできる。
電解装置は、図1〜図7に不図示の電解液の環流機構が設けられている。環流機構は、電解槽1の排液部30から排出された電解液にニカワやチオ尿素等の添加剤を追加するとともに、必要な成分調整と温度調整を行い、調整後の電解液を給液配管2a、2b、2cから電解槽1内へと環流する。電解装置には不図示の給電機構が設けられている。給電機構は、電解槽1内の長手方向に沿って交互に配置されるアノード板とカソード板とを含む電極の間に直流電流を印加する電源装置と配線とを備えている。
アノード板及びカソード板の構成は特に限定されない。アノード板は電解精製もしくは電解採取を行う際の陽極となり、粗金属製の板材で構成される。カソード板は電解精製もしくは電解採取を行う際の陰極となり、導電性に優れた板状の金属で構成される。
電解槽1内の電解液の混合状態を改善するために種々の検討が行われてきたが、電解槽1内の長手方向の一端側から長手方向の他端側へと電解液を流す従来の下入れ上抜き方式の電解装置では電解液供給方向上流側と下流側で電解液中の銅などの金属イオン濃度及び添加物の濃度に偏りが生じるとともに、電解が進むにつれて電解槽1の上部から底部へいくほど金属イオン濃度が高くなる傾向にあった。
本発明の実施の形態に係る電解装置によれば、電解槽1の幅(Y)方向、即ち、電解槽1の第1の側壁11側から第2の側壁12側へと電解液を供給するように構成するとともに、樋部4の開口部41から電解液を流出させて、開口部41に比べて相対的に下方にある排液配管3a、3b、3cの排液口31を介して電解液を排液するように構成した、いわゆる、「横入れ上入れ下抜き方式」を採用する。その結果、電解槽1の底部の銅イオン濃度などの金属イオン濃度の上昇を効果的に抑制できるとともに、電解液中に含まれる種々の添加剤の濃度分布を電解槽1内全体でより均一化することができる。
さらに、電解槽1において上方から下方へと電解液を流すことにより、殿物の巻き上げの恐れも少なくなる。そのため、電解液の供給流量を大きくしても殿物の巻き上げを抑制しながら電解液の混合状態を改善することができ、電着物の電着効率も従来に比べて改善させることができる。さらに、電着物の表面性状に影響を及ぼすニカワなどの添加物を電解槽全体にわたって均一に行き渡らせることができるため、電解槽1全体において品質の揃った電着物が得られる。
(電解方法)
本発明の実施の形態に係る電解装置を用いて電解液を電気分解することにより、複数のカソード板に銅などの金属を電着させることができる。以下においては、本発明の実施の形態に係る電解装置を用いて電気分解する例として粗銅を精錬する場合について説明する。
まず、例えば純度が99mass%程度の粗銅の板材をアノード板とし、純度が99.99mass%程度の銅の板材又はステンレス板をカソード板として、複数のアノード板と複数のカソード板とを交互に板厚方向に間隔を空けて、電極板の下端が電解槽1の底面から所定の間隔が空くように且つ電極板の側面が樋部4と接触しないように電解槽1内に配置する。
給液部20内に配置された給液主管に接続された給液配管2a、2b、2cが備える複数の給液口21から硫酸銅及び硫酸の混合水溶液にニカワやチオ尿素などの添加剤を添加した電解液を供給する。給液配管2a、2b、2cの給液口21から樋部4内へ電解液を供給する。
次に、給液口21から供給される電解液を、1以上の整流板46a、46b、46cにより、電解槽1の長手方向で均一化させるように電解液の流れを整える。そして、樋部4の開口部41から、電解液をオーバーフローさせて電解槽内へと供給する。一方、排液ボックス32及び排液部30に接続された排液配管3a、3b、3cの複数の排液口31から電解槽1内の電解液を排液させる。
給電機構を用いてアノード板とカソード板との間に直流電流を印加し、アノード板の銅を電解液中にイオンとして溶出させてカソード板へ電着させる。電解液は上述のようにして電解槽1の第1の側壁11にある樋部4の開口部41から電解液を電解槽1内へ供給し、第1の側壁11と対向する電解槽1の第2の側壁12の下方で電解液を排液配管3a、3b、3c内へ排液させるようにして液流を発生させる。
排液配管3a、3b、3c内へ排液された電解液は、排液ボックス32により汲み上げられて、排液部30を介して排液される。電解槽1内の電解液の上層に浮遊するゴミなどの異物は、排液ボックス32が備える切り欠き部33から越流により排液ボックス32内へ収容され、電解槽1の外部へ排出され、不図示の環流機構によって、電解液を循環させる。
本発明の実施の形態に係る電解方法によれば、電解槽1の幅方向Yの一端から幅方向Yの他端側へ、且つ上方から下方へ向けて電解槽1の長手方向Xに沿った複数箇所から電解液を流すことにより、電解槽1の長手方向Xの一端側から他端側へと電解液を流す従来の方式と比べて、電解槽1内の電解液の混合状態をより良好にすることができる。
特に、本発明の実施の形態に係る電解方法によれば、電解槽1下部の銅イオンなどの金属イオン濃度の上昇を抑制し、金属イオンを液中により均一に分散できるため、高い電流密度又は不純物濃度の高い材料をアノード板に用いて電解精製を実施した場合の不動態化現象をより効率的に抑制することが可能となる。
(その他の実施の形態)
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態及び運用技術が明らかとなろう。即ち、本発明は上記の開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によって表されるものであり、実施段階においては、その要旨を逸脱しない範囲において変形し具体化し得る。
図8に、樋部4内に3枚の整流板を配置した場合の樋部の構成例と電解液の流速分布のシミュレーション結果の例を示す。この例では、樋部の高さh(図3(a)参照)を200mm、樋部4の壁部42から第1の側壁までの間隔、即ち樋部4の内径(図1参照)を15mm、電解槽1の長手方向の樋部4の長さを5400mmとした。厚さ5mmの整流板を3枚使用し、各整流板にはそれぞれ直径10mmの整流口を30mm間隔で等間隔に配置し、上下の整流板の整流口の位置が上下で重ならないように互い違いに配置した。更に、最下段の整流板の給液口の直上に位置する整流口を7ケ所個塞ぎ、中段の整流板の給液口の直上に位置する整流口を2ケ所塞いた。最下段の整流板と樋部の底面との間隔d1(図3(a)参照)を10mm、最下段と中段、中段と上段の整流板間の間隔d2、d3(図3(a)参照)をそれぞれ30mmとした。樋部4の開口部41に凹凸加工を施し、給液口21から電解液を流速1.35m/sで供給した。
図8に示すように、本実施形態によれば、給液口21の周囲には、電解液の流速の早い領域が形成されておらず、最下段の整流板46aと樋部4の底面の間の領域においては電解液が長手方向に良好に広がっている様子が観察できる。また、上段の整流板46b、46cに近づくにつれて整流口45からほぼ同程度の流速の電解液を排液できることが分かった。
図9は、樋部4からオーバーフローした電解液の流速分布を表すグラフの例である。図9中の番号1〜3は、給液口21の位置と対応する。図9に示すように、給液口21付近から流出される電解液の流速は、長手方向においていずれも2.7〜3.5cm/sの範囲に抑えられており、樋部4からオーバーフローにより供給される電解液の流速を長手方向において一定範囲に平均化できていることが分かる。
1…電解槽
2a、2b、2c…給液配管
3a、3b、3c…排液配管
4…樋部
11…第1の側壁
12…第2の側壁
13…第3の側壁
14…第4の側壁
20…給液部
21…給液口
30…排液部
31…排液口
32b…側壁
32a…底面
32…排液ボックス
33…切り欠き部
35…調整板
37…分割壁
41…開口部
42…壁部
44…梁部
45…整流口
46a、46b、46c…整流板
47…固定具
48…底面
49…流出量調整部
300…排出口
301…排出配管

Claims (7)

  1. 電解液を収容する電解槽の長手方向に互いに間隔を空けて配置された電極を電解液中に浸漬し、電解液を循環させながら電解処理する電解装置であって、
    前記電解槽の長手方向に延びる第1の側壁に沿って互いに間隔を空けて配置され、電解液を供給するための複数の給液口と、
    前記給液口から供給される電解液を収容し、該電解液を開口部からオーバーフローさせて前記電解槽内へと供給する樋部と、
    前記開口部に形成され、周期的に形成された凹凸を有し、前記開口部からオーバーフローする電解液の流出量を調整する流出量調整部と、
    前記樋部よりも下方において前記第1の側壁と対向する第2の側壁に沿って互いに間隔を空けて配置され、前記電解液を排液するための複数の排液口と
    を備える電解装置。
  2. 前記流出量調整部が備える凹部が、前記電解槽内に浸漬された電極間の隙間と対向するように配置されている請求項1に記載の電解装置。
  3. 前記樋部内に設けられ、前記電解液の流速分布を前記電解槽の長手方向で均一化させるための1以上の整流板を更に備える請求項1又は2に記載の電解装置。
  4. 前記1以上の整流板が、前記電解液を通水させる複数の整流口を備え、上下の整流板の前記整流口が、鉛直方向に互いに異なる位置に配置されている請求項3に記載の電解装置。
  5. 前記1以上の整流板が、前記樋部の高さの1/2以下の高さに配置されている請求項3又は4に記載の電解装置。
  6. 前記開口部が、前記電解液の液面から50mm以内となる高さに配置されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解装置。
  7. 電解液を収容する電解槽の長手方向に互いに間隔を空けて配置された電極を電解液中に浸漬し、電解液を循環させながら電解処理する電解方法であって、
    前記電解槽の長手方向に延びる第1の側壁に沿って互いに間隔を空けて配置された複数の給液口から電解液を供給し、
    前記給液口から供給される電解液を樋部に収容し、前記樋部の開口部に形成された周期的に形成された凹凸を有する流出量調整部から電解液をオーバーフローさせることにより、電解液を前記電解槽内へと供給し、
    前記樋部よりも下方において前記第1の側壁と対向する第2の側壁に沿って互いに間隔を空けて配置された複数の排液口を介して前記電解液を排液すること
    を含む電解方法。
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