JP2021118625A - センサレスモータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】速度変動が加えられた推定角速度に含まれる高調波による非干渉化制御の乱れを防ぎ、センサレスモータ制御装置の応答性を向上すること。【解決手段】センサレスモータ制御装置は、センサレスモータの軸誤差から該センサレスモータの平均推定速度を生成するPLL制御器と、軸誤差からセンサレスモータの速度変動を生成する補正速度生成器とを備える。また、モータ制御装置は、PLL制御器により生成された平均推定速度と補正速度生成器により生成された速度変動とに基づいてセンサレスモータの電流指令値を生成する電流指令生成器と、前記センサレスモータの電圧指令値を生成する電圧指令生成器を備える。また、センサレスモータ制御装置は、電圧指令値を補正する非干渉化補正値を、センサレスモータの速度指令値に補正速度生成器により生成された速度変動を加算した加算速度指令値と電流指令値とに基づいて生成する非干渉化制御器を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、センサレスモータ制御装置に関する。
回転するセンサレスの3相モータの角速度は、推定した制御軸(dc−qc軸)の回転角度位置(推定回転角度位置)θdcと、実際の回転軸である実軸(dq軸)の回転角度位置θdとの差である軸誤差Δθを比例積分(PI)することにより算出される。センサレスの3相モータの制御系では、算出した角速度をフィードバックして軸誤差Δθがゼロに近づくように角速度を調整する。このようにして得られた角速度は、角速度指令値ω*との比較のために用いられる。
モータの中には、空気調和装置等に用いられる圧縮機を駆動するモータがある。圧縮機は、吸入、圧縮、吐出の各行程におけるガス冷媒の圧力変化によって、圧縮機を駆動するモータのロータ1回転中において負荷トルクが周期的に変動する。この周期的な負荷トルク変動は、モータの速度が変動して振動や騒音を発生させる要因となるため、周期的な負荷トルク変動を抑制するトルク補正が一般的に行われる。
しかしながら、このトルク補正は、消費電力低減や過電流防止の観点から、振動や騒音が実用上問題とならない程度の速度変動を許容しているために、実際の角速度は、負荷トルクとモータの出力トルクとの差によって周期的に変動し、軸誤差Δθも周期的に変動する。この軸誤差Δθから求める推定角速度ωは、速度推定器(PLL)により、軸誤差Δθを比例積分(PI)することで算出されるため、推定角速度ωの平均角速度は推定できるものの(以下、平均推定角速度という)、瞬時的には実際の角速度との間に振幅と位相のずれがあり、この振幅と位相のずれは周期的に変動する。つまり推定角速度ωと実際の角速度は、同期しない状態となる。この結果、軸誤差Δθの変動が発生し続けることになる。
そこで、軸誤差Δθから変動成分を分離して、分離した変動成分から速度変動Δωを生成し、生成した速度変動Δωを平均推定角速度ωe0に加えた角速度を推定角速度ωとすることで、推定角速度ωと実際の角速度を同期させる従来技術がある。
特開2019−106768号公報
従来技術では、軸誤差Δθから速度変動Δωを生成し、Δθを比例積分(PI)することで算出される平均推定角速度ωe0に速度変動Δωを加えた推定角速度ω、各相の相電流(I、I、I)から変換したd軸電流Id、およびq軸電流Iqを、d軸電流制御およびq軸電流制御の干渉を打ち消すための非干渉化制御に用いる。しかしながら、速度変動が加えられた推定角速度やd軸電流Id、q軸電流Iqには高調波が含まれるため、高調波により非干渉化制御が乱され、モータ制御装置の応答性、すなわち電流指令値および速度指令値への追従性が低下する問題がある。
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、高調波による非干渉化制御の乱れを防ぎ、モータ制御装置の応答性を向上することを目的とする。
開示の態様では、センサレスモータを制御するセンサレスモータ制御装置であって、センサレスモータの軸誤差から該センサレスモータの平均推定速度を生成するPLL制御器と、軸誤差からセンサレスモータの速度変動を生成する補正速度生成器と、PLL制御器により生成された平均推定速度と補正速度生成器により生成された速度変動とに基づいてセンサレスモータの電流指令値を生成する電流指令生成器と、センサレスモータの電圧指令値を生成する電圧指令生成器と、電圧指令値を補正する非干渉化補正値を、センサレスモータの速度指令値に補正速度生成器により生成された速度変動を加算した加算速度指令値と電流指令値とに基づいて生成する非干渉化制御器とを備えたことを特徴とする。
開示のセンサレスモータ制御装置は、電圧指令値を補正する非干渉化補正値を、補正速度生成器により生成された速度変動が加算された速度指令値、q軸電流指令値Iq *、およびd軸電流指令値I *に基づいて生成する。したがって、開示のセンサレスモータ制御装置は、高調波による非干渉化制御の乱れを防ぎ、応答性を向上させる。
図1は、実施形態1に係るモータ制御装置の一例を示すブロック図である。 図2は、変動加算電気角速度指令値を用いた効果を示す図である。 図3は、実施形態1に係る補正速度生成器の一例を示すブロック図である。 図4は、軸誤差Δθの変動が抑制されるプロセスの一例を説明するための図である。 図5は、実施形態2に係る補正速度生成器の一例を示すブロック図である。 図6は、実施形態2に係る軸誤差を補正するための復調位相テーブルの一例を示す図である。
以下に添付図面を参照して開示の技術に係るセンサレスモータ制御装置の実施形態の例について説明する。以下の実施形態は、周期的な負荷トルク変動を有する圧縮機を駆動する永久磁石同期モータ(PMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor))のトルク制御を、位置センサレスベクトル制御により行う、例えば空気調和装置または低温保存装置等のモータ制御装置に関する。しかし、開示の技術は、周期的な負荷トルク変動を有する負荷を駆動するモータのトルク制御を行うモータ制御装置に広く適用可能である。また、以下の説明で単に速度と記した場合は、特に断らない限り角速度を表す。
なお、以下に示す実施形態は、開示の技術を限定するものではない。また、以下に示す実施形態は、開示の技術に係る構成および処理について主に示し、その他の構成および処理の説明を簡略または省略する。
なお、以下で用いる主な記号の説明の一覧を、下記(表1)に示す。
Figure 2021118625
[実施形態1]
(実施形態1に係るモータ制御装置)
図1は、実施形態1に係るモータ制御装置の一例を示すブロック図である。実施形態1に係るモータ制御装置100は、モータ10を制御する。モータ制御装置100は、減算器11,16,17、速度制御器12、加算器13,19,20,32,36、電流指令生成器14、補正トルク生成器15、電圧指令生成器18を有する。また、モータ制御装置100は、d−q/u,v,w変換器(2相/3相変換器)21、PWM(Pulse Width Modulation)変調器22、IPM(Intelligent Power Module)23を有する。また、モータ制御装置100は、シャント抵抗26(または電流センサ24,25)、3φ電流算出器27、u,v,w/d−q変換器(3相/2相変換器)28、軸誤差演算器29、PLL制御器30、補正速度生成器31、位置推定器33、非干渉化制御器34、1/Pn処理器35を有する。
減算器11は、モータ制御装置100へ入力された機械角速度指令値ωm *から、1/Pn処理器35により出力された現在の推定角速度である機械角推定角速度ωmを減算した角速度偏差を、速度制御器12へ出力する。
速度制御器12は、減算器11から入力された角速度偏差が小さくなるような平均トルク指令値T0 *を生成して出力する。加算器13は、速度制御器12により出力された平均トルク指令値T0 *と、補正トルク生成器15により出力された変動トルク指令値ΔTとを加算した合計トルク指令値T*を出力する。
電流指令生成器14は、加算器13により出力された合計トルク指令値T*から、dq座標軸上のd軸電流指令値Id *およびq軸電流指令値Iq *を生成して出力する。このd軸電流指令値Id *およびq軸電流指令値Iq *は、例えば、モータ電圧が電圧飽和領域でない通常制御領域では、最大トルク/電流曲線上の値となるように生成され、モータ電圧が電圧飽和領域であれば、誘起電圧楕円上の値となるように生成される。
補正トルク生成器15は、速度変動許容値|Δωm|*、1/Pn処理器35により出力された機械角推定角速度ωmに含まれるモータ1回転における周期的な速度変動である機械角推定角速度変動Δωm、位置推定器33により出力された機械角位相θmから、周期的な速度変動Δωmを抑制するための変動トルク指令値ΔTを生成する。変動トルク指令値ΔTは、消費電力低減やモータ10の減磁防止等を考慮して調整される。ここで、機械角位相θmは機械角で表したモータ(ロータ)の回転角度位置である。
減算器16は、電流指令生成器14により出力されたd軸電流指令値Id *から、u,v,w/d−q変換器28により出力されたd軸電流Idを減算したd軸電流偏差を出力する。減算器17は、電流指令生成器14により出力されたq軸電流指令値Iq *から、u,v,w/d−q変換器28により出力されたq軸電流Iqを減算したq軸電流偏差を出力する。
電圧指令生成器18は、減算器16により出力されたd軸電流偏差と、減算器17により出力されたq軸電流偏差とから、非干渉化前d軸電圧指令値Vd-piおよび非干渉化前q軸電圧指令値Vq-piを生成する。
加算器19は、電圧指令生成器18により出力された非干渉化前d軸電圧指令値Vd-piと、非干渉化制御器34により出力された、非干渉化前d軸電圧指令値Vd-piを非干渉化するためのd軸非干渉化補正値Vdaとを加算したd軸電圧指令値Vd *を出力する。加算器20は、電圧指令生成器18により出力された非干渉化前q軸電圧指令値Vq-piと、非干渉化制御器34により出力された、非干渉化前q軸電圧指令値Vq-piを補正するためのq軸非干渉化補正値Vqaとを加算したq軸電圧指令値Vq *を出力する。
d−q/u,v,w変換器21は、位置推定器33により出力された現在のロータ位置である電気角位相θeを用いて、加算器19、20により出力された2相のd軸電圧指令値Vd *およびq軸電圧指令値Vq *を3相のU相出力電圧指令値VU *,V相出力電圧指令値VV *,W相出力電圧指令値VW *へ変換する。そして、d−q/u,v,w変換器21は、U相出力電圧指令値VU *,V相出力電圧指令値VV *,W相出力電圧指令値VW *をPWM変調器22へ出力する。PWM変調器22は、U相出力電圧指令値VU *,V相出力電圧指令値VV *,W相出力電圧指令値VW *と、PWMキャリア信号から、6相のPWM信号を生成して、IPM23へ出力する。
IPM23は、PWM変調器22により出力された6相のPWM信号をもとに、外部から供給される直流電圧Vdcを変換して、モータ10のU相,V相,W相それぞれへ印加する交流電圧を生成し、それぞれの交流電圧をモータ10のU相,V相,W相へ印加する。
3φ電流算出器27は、1シャント(shunt)方式で母線電流を計測した場合、PWM変調器22により出力された6相のPWMスイッチング情報と、計測された母線電流とから、モータ10のU相電流値IU,V相電流値IV,W相電流値IWを算出する。
または、電流を計測する方式は、母線電流を計測する1シャント方式に限らず、2つのCT(Current Transformer)で、例えば、電流センサ24でモータ10のU相の電流を、電流センサ25でモータ10のV相の電流を計測してもよい。3φ電流算出器27は、電流センサ24,25および2つのCTでU相電流およびV相電流を計測した場合、残りのW相電流値Iwは、IU+IV+IW=0のキルヒホッフの法則より算出する。3φ電流算出器27は、算出した各相の相電流値IU,IV,IWをu,v,w/d−q変換器28へ出力する。
u,v,w/d−q変換器28は、位置推定器33により出力された電気角位相θeをもとに、3φ電流算出器27により出力された3相のU相電流値IU,V相電流値IV,W相電流値IWを、2相のd軸電流Idおよびq軸電流Iqへ変換する。そして、u,v,w/d−q変換器28は、d軸電流Idを減算器16、軸誤差演算器29へ、q軸電流Iqを減算器17、軸誤差演算器29へ、それぞれ出力する。
軸誤差演算器29は、加算器19により出力されたd軸電圧指令値Vd *および加算器20により出力されたq軸電圧指令値Vq *、u,v,w/d−q変換器28により出力されたd軸電流Idおよびq軸電流Iqから、軸誤差Δθを算出して、PLL制御器30および補正速度生成器31へそれぞれ出力する。
PLL制御器30は、軸誤差演算器29により出力された軸誤差Δθから、軸誤差Δθの平均成分をゼロに近づけるような平均推定速度ωe0を算出して、加算器32へ出力する。補正速度生成器31は、軸誤差演算器29により出力された軸誤差Δθと、位置推定器33により出力された機械角位相θmとから、軸誤差Δθの変動成分をゼロに近づけるような速度変動Δωeを生成して出力する。
加算器32は、PLL制御器30により出力された平均推定速度ωe0と、補正速度生成器31により出力された速度変動Δωeとを加算して補正した推定速度である電気角推定角速度ωeを生成して出力する。位置推定器33は、加算器32により出力された電気角推定角速度ωeから電気角位相θeおよび機械角位相θmを推定する。そして、位置推定器33は、推定した電気角位相θeをd−q/u,v,w変換器21およびu,v,w/d−q変換器28へそれぞれ出力する。また、位置推定器33は、推定した機械角位相θmを補正トルク生成器15および補正速度生成器31へそれぞれ出力する。
非干渉化制御器34は、d軸電流指令値Id *およびq軸電流指令値Iq *と、加算器36により出力された後述する変動加算電気角速度指令値とから、非干渉化前d軸電圧指令値Vd-piを補正するためのd軸非干渉化補正値Vdaを生成して加算器19へ出力すると共に、非干渉化前q軸電圧指令値Vq-piを補正するためのq軸非干渉化補正値Vqaを生成して加算器20へ出力する。ここで、変動加算電気角速度指令値は、軸誤差から生成された速度変動を速度指令値に加算した加算速度指令値であって、補正速度生成器31により生成された速度変動Δωeを電気角速度指令値ωe *に加算した値であり、電気角で表現される。
1/Pn処理器35は、加算器32により出力された電気角推定角速度ωeをモータ10の極対数Pnで除算して機械角推定角速度ωmを算出し、減算器11および補正トルク生成器15へそれぞれ出力する。加算器36は、補正速度生成器31により出力された速度変動Δωeと、電気角速度指令値ωe *とを加えて変動加算電気角速度指令値を生成して出力する。
(実施形態1に係る非干渉化制御器)
実施形態1に係る非干渉化制御器34は、変動加算電気角速度指令値(ωe *+Δωe)、q軸電流指令値Iq *、およびd軸電流指令値Id *を用いてd軸非干渉化補正値Vda、q軸非干渉化補正値Vqaを算出する。その理由は、以下のとおりである。
モータ10の制御は電圧方程式によって説明される。d軸に関する電圧方程式を下記(1−1)に示し、q軸に関する電圧方程式を下記(1−2)式に示す。
Figure 2021118625
ここで、vdはd軸電圧であり、vqはq軸電圧であり、Rは電気子抵抗であり、idはd軸電流であり、iqはq軸電流であり、pは微分演算子であり、Ldはd軸自己インダクタンスであり、Lqはq軸自己インダクタンスであり、ωは電気角速度であり、Ψaは電気子鎖交磁束である。
上記(1−1)式の右辺の第1項と第2項の“Rid+pLdd”および上記(1−2)式の右辺の第1項と第2項の“Riq+pLqq”は、モータ10のRLの応答項であり、上記(1−1)式の右辺の第3項の“-ωLqq”および上記(1−2)式の右辺の第3項と第4項の“ωLdd+ωΨa”は干渉項である。RLの応答項“Rid+pLdd”および“Riq+pLqq”に相当する電圧は、電圧指令生成器18により生成される。一方、干渉項“-ωLqq”および“ωLdd+ωΨa”に相当する電圧は非干渉化制御器34により生成される。
電圧指令生成器18はモータの状態変化(例えば機械角速度指令値や負荷トルクの変化など)に応じてモータを制御するために必要な電流を流すための電圧指令値を生成するものであり、モータの状態変化に応じたフィードバック制御を行う。
一方、モータが回転すると誘起電圧が発生し、d軸電圧にはq軸電流iqによる影響が表れ、q軸電圧にはd軸電流idと電機子鎖交磁束Ψaによる影響が表れる。この影響(d軸とq軸の干渉)を無くすことでd軸とq軸を独立に制御できる。非干渉化制御器34はd軸とq軸の干渉項“-ωLqq”および“ωLdd+ωΨa”をあらかじめ生成するものであり、dq軸間の干渉が制御に与える影響を先回りして打ち消すフィードフォワード制御を行う。
ここで、d軸電流idをd軸電流指令値Id *に追従させるために必要なd軸電圧指令値Vd *の生成と、q軸電流iqをq軸電流指令値Iq *に追従させるために必要なq軸電圧指令値Vq *の生成において、d軸電流idとq軸電流iqおよび電気角推定角速度ωeには高調波が含まれている。この高調波は、モータの状態変化に応じた制御であるフィードバック制御でその影響が抑制されるが、高調波がフィードフォワード制御である非干渉化制御に含まれるとモータ制御が安定しない。具体的には、高調波を含む電気角推定角速度ωe、d軸電流Id、およびq軸電流Iqを非干渉化制御器34に用いると、安定した状態にあるべきフィードフォワード制御が乱され、d軸電流idおよびq軸電流Iqがd軸電流指令値Id *およびq軸電流指令値Iq *にそれぞれ追従しにくくなる。そこで、非干渉化制御器34は、高調波を含まない指令値を用いる。具体的には電気角速度指令値ωe *を用いた変動加算電気角速度指令値(ωe *+Δωe)、d軸電流指令値Id *、q軸電流指令値Iq *を用いる。これらを用いることで、フィードフォワード制御を安定させ、d軸電流idおよびq軸電流Iqをd軸電流指令値Id *およびq軸電流指令値Iq *にそれぞれ追従させることができる。
以上をまとめると、非干渉化制御器34の出力であるd軸非干渉化補正値Vdaおよびq軸非干渉化補正値Vqaは、下記(8−1)式および(8−2)式で示される。
Figure 2021118625
図2は、変動加算電気角速度指令値を用いた非干渉化制御の効果を示す図である。図2(a)は、比較例であり、変動加算電気角速度指令値を用いずにモータ制御を行った場合の機械角推定角速度ωm、q軸電流Iqおよびq軸電圧指令値Vq *を示し、図2(b)は、実施形態1に係るモータ制御装置100により制御を行った場合の機械角推定角速度ωm、q軸電流Iqおよびq軸電圧指令値Vq *を示す。機械角推定角速度ωmは機械角速度指令値ωm *とともに示され、q軸電流Iqはq軸電流指令値Iq *とともに示され、q軸電圧指令値Vq *はq軸非干渉化補正値Vqaとともに示される。
図2において、横軸は時間であり、単位はms(ミリ秒)である。機械角推定角速度ωmでは、縦軸は回転数であり、単位はrps(回転毎秒)である。q軸電流Iqでは、縦軸は電流であり、単位はA(アンペア)である。q軸電圧指令値Vq *では、縦軸は電圧であり、単位はV(ボルト)である。
比較例のモータ制御装置は、非干渉化制御器の入力に、d軸電流Id、q軸電流Iqおよび電気角推定角速度ωeを用いる。一方、実施形態1に係るモータ制御装置100は、図1に示したように、非干渉化制御器34の入力に、d軸電流指令値Id *、q軸電流指令値Iq *および変動加算電気角速度指令値(ωe *+Δωe)を用いる。
図2(a)に示すように、比較例のモータ制御装置では、負荷変動によって生じる速度変動を抑制するための電流指令値の変動に電流が追従しておらず、電流ピーク値が指令値より増加している。すなわち、比較例のモータ制御装置は、速度変動は抑制されるものの、モータ電流の追従性が悪く大きな電力を必要とする。一方、実施形態1に係るモータ制御装置100では、図2(b)に示すように、電流指令値の変動に電流が追従しており、比較例に比べて電流追従性が向上している。したがって、実施形態1に係るモータ制御装置100は、比較例よりも電流ピーク値を低減し、消費電力を低減できる。
(実施形態1に係る補正速度生成器)
図3は、実施形態1に係る補正速度生成器31の一例を示すブロック図である。実施形態1に係る補正速度生成器31は、軸誤差変動成分分離器31−1、軸誤差変動積算器31−2、速度変動復調器31−3を有する。
軸誤差変動成分分離器31−1は、入力された軸誤差Δθから、その変動の基本波成分を分離する。具体的には機械角位相θmを用いて下記(2−1)式および(2−2)式から、2つのフーリエ係数Δθsin(sin成分)およびΔθcos(cos成分)を軸誤差Δθの変動の基本波成分として生成する。軸誤差Δθの変動の基本波成分のフーリエ係数を機械角周期毎に算出し、軸誤差Δθの変動成分として用いることで、軸誤差Δθの変動の高調波成分を排除した軸誤差Δθの変動の基本波成分を精度よく抽出できる。ΔθsinおよびΔθcosは、機械角周期毎に更新される値である。
Figure 2021118625
軸誤差変動積算器31−2は、下記(3−1)式および(3−2)式から、軸誤差変動成分分離器31−1により分離された軸誤差Δθの変動成分のフーリエ係数ΔθsinおよびΔθcosに修正ゲインk(軸誤差Δθを速度に変換する積分ゲイン)を適用し、ΔθsinおよびΔθcosを一周期毎に蓄積する。下記(3−1)式および(3−2)式におけるΔθsin_i_oldおよびΔθcos_i_oldのそれぞれは、前回の機械角周期におけるΔθsin_iおよびΔθcos_iである。
Figure 2021118625
速度変動復調器31−3は、下記(4)式の演算により、速度変動Δωeを算出する。この処理により、軸誤差変動積算器31−2による軸誤差Δθの変動の蓄積結果に対してπ/2だけ位相を遅らせた速度変動Δωeの位相へ変換され、機械角位相θmのタイミングでの速度変動Δωeの瞬時値が生成される。なお、上記の位相π/2は、後述の復調位相θshiftに相当し、実施形態1では速度変動復調器31−3が位相π/2を固定値として内部に有しているが、これに限られず、速度変動復調器31−3に外部から位相π/2を与えるようにしてもよい。
Figure 2021118625
図1に示すように、補正速度生成器31は軸誤差Δθからその変動成分を分離し、分離した軸誤差の変動成分から速度変動Δωeを生成する。加算器32は、速度変動ΔωeをPLL制御器30により出力された平均推定速度ωe0に加算して電気角推定角速度ωeを求める。電気角推定角速度ωeをモータ制御装置100の制御に適用することにより、軸誤差Δθの変動を抑制する。図4は、軸誤差Δθの変動が抑制されるプロセスの一例を説明するための図である。図4に示すように、モータのロータ1回転の周期(負荷トルク変動周期)T毎に軸誤差Δθの変動成分を抽出して積算し、次の周期で軸誤差Δθの変動位相からπ/2遅らせた速度変動Δωeを出力し、PLL制御器30により出力された平均推定速度ωe0に加算して電気角推定角速度ωeを生成する。この電気角推定角速度ωeをモータ制御装置の制御に適用し、フィードバック制御を行うことで、軸誤差Δθの変動を抑制する。
以上の実施形態1によれば、非干渉化制御器34は、電気角推定角速度ωe、q軸電流Iq、およびd軸電流Idの代わりに、電気角速度指令値ωe *に速度変動Δωeを加算した変動加算電気角速度指令値、q軸電流指令値Iq *、およびd軸電流指令値Id *を用いて非干渉化制御を行う。このため、非干渉化制御において、電気角推定角速度ωe、q軸電流Iq、およびd軸電流Idに含まれる高調波がフィードフォワード制御を乱すことを防ぎ、モータ制御装置100の応答性を向上できる。
[実施形態2]
実施形態1では、軸誤差Δθの変動に対して固定値であるπ/2(復調位相θshift)だけ位相を遅らせて速度変動Δωeを生成している。これは、位置変動と速度変動との位相関係に基づく。しかし、軸誤差演算器29により生成される軸誤差Δθ自体も誤差を含む場合には、位置変動と速度変動との位相関係が一定でなくなり、軸誤差Δθの変動に対する速度変動Δωeの復調位相θshiftがπ/2の固定値では、軸誤差Δθがゼロに収束しないおそれがある。軸誤差Δθ自体の誤差は、軸誤差演算器29の応答性能に起因すると考えられるが、軸誤差Δθと速度変動Δωeの位相関係に速度への依存性がある場合には、軸誤差Δθの変動に対する速度変動Δωeの復調位相θshiftを速度に応じて異ならせることにより、軸誤差Δθをゼロに収束させることができる。よって、実施形態2では、速度変動Δωeの復調位相θshiftを速度に応じて変化させる。例えば、モータ10の高速回転領域では復調位相θshiftをπ/2以下とし、低速回転領域では復調位相θshiftをπ/2より大とする。
以下の実施形態2に係るモータ制御装置100A(図1参照)は、補正速度生成器31A(図1参照)における速度変動復調器の構成および処理が実施形態1と異なり、その他は、実施形態1と同様である。
(実施形態2に係る補正速度生成器)
図5は、実施形態2に係る補正速度生成器の一例を示すブロック図である。実施形態2に係る補正速度生成器31Aは、軸誤差変動成分分離器31A−1、軸誤差変動積算器31A−2、速度変動復調器31A−3を有する。軸誤差変動成分分離器31A−1は実施形態1における軸誤差変動成分分離器31−1と同様であり、軸誤差変動積算器31A−2は実施形態1における軸誤差変動積算器31−2と同様である。
速度変動復調器31A−3は、速度変動振幅算出器31A−31、軸誤差変動位相算出器31A−32、復調位相算出器31A−33、Pn処理器31A−34、速度変動瞬時値算出器31A−35を有する。
速度変動振幅算出器31A−31は、軸誤差変動積算器31A−2により上記(3−1)式および(3−2)式から算出されたΔθsin_iおよびΔθcos_iをもとに、下記(5)式から、速度変動Δωeの基本波成分の振幅|Δωe|を算出する。Δθsin_iおよびΔθcos_iは、機械角周期毎に更新される値であることから、速度変動Δωeの基本波成分の振幅|Δωe|も機械角周期毎に更新される。
Figure 2021118625
軸誤差変動位相算出器31A−32は、下記(6)式から、機械角周期毎に更新された軸誤差変動成分の位相φΔθiを算出する。
Figure 2021118625
n処理器31A−34は、モータ制御装置100Aへ入力された機械角速度指令値ωm *にモータ10の極対数Pnを乗算して電気角速度指令値ωe *を算出し、復調位相算出器31A−33へ出力する。
復調位相算出器31A−33は、復調位相テーブル31A−33tを有する。図6は、実施形態2に係る軸誤差を補正するための復調位相テーブル31A−33tの一例を示す図である。復調位相テーブル31A−33tは、Pn処理器31A−34から出力された電気角速度指令値ωe *毎に軸誤差Δθをゼロに近づけるような復調位相θshiftをチューニングやシミュレーション、理論計算等により取得し、電気角速度指令値ωe *に対応付けて格納したテーブルである。復調位相テーブル31A−33tにおいて、例えば、電気角速度指令値ωe *1には、復調位相θshift1が対応付けられて格納されている。復調位相算出器31A−33は、入力された電気角速度指令値ωe *をもとに復調位相テーブル31A−33tを参照し、軸誤差Δθの変動に対する速度変動Δωeの復調位相θshiftを算出する。
なお、復調位相算出器31A−33は、復調位相テーブル31A−33tにおいて、入力された電気角速度指令値ωe *と一致する電気角速度指令値ωe *が存在しない場合には、入力された電気角速度指令値ωe *に最も近い値の電気角速度指令値ωe *に対応付けられた復調位相θshiftを取得する。あるいは、復調位相算出器31A−33は、復調位相テーブル31A−33tにおいて、入力された電気角速度指令値ωe *と一致する電気角速度指令値ωe *が存在しない場合には、入力された電気角速度指令値ωe *に最も近い2つの値に対応付けられた復調位相θshiftから、線形補完により、目的の復調位相θshiftを算出してもよい。
速度変動瞬時値算出器31A−35は、下記(7)式から、速度変動Δωeの瞬時値を算出する。この算出処理により、上記(3−1)式および(3−2)式による軸誤差変動の蓄積結果に対して速度変動の復調位相θshiftが反映され、機械角位相θmでの速度変動Δωeの瞬時値が生成される。速度変動瞬時値算出器31A−35により生成された瞬時値である速度変動Δωeは、実施形態1と同様に、加算器32において、平均推定速度ωe0に加算されることにより、変動成分を含めた補正後の電気角推定角速度ωeが生成される。なお、下記(7)式の右辺の正弦関数内の第2項“φΔθi”および第3項“θshift”の間の演算子は、位相を進ませる場合には“+”となり、位相を遅らせる場合には“−”となる。
Figure 2021118625
以上の実施形態2によれば、実施形態1に加え、軸誤差Δθがゼロに収束するための速度変動Δωeの復調位相θshiftが速度に依存することを加味して、速度変動Δωeの復調位相を回転数に応じて変化させるので、軸誤差Δθをゼロに収束できる。
10 モータ
11,16,17 減算器
12 速度制御器
13,19,20,32,36 加算器
14 電流指令生成器
15 補正トルク生成器
18 電圧指令生成器
21 d−q/u,v,w変換器
22 PWM変調器
23 IPM
24,25 電流センサ
26 シャント抵抗
27 3φ電流算出器
28 u,v,w/d−q変換器
29 軸誤差演算器
30 PLL制御器
31,31A 補正速度生成器
31−1,31A−1 軸誤差変動成分分離器
31−2,31A−2 軸誤差変動積算器
31−3,31A−3 速度変動復調器
31A−31 速度変動振幅算出器
31A−32 軸誤差変動位相算出器
31A−33 復調位相算出器
31A−33t 復調位相テーブル
31A−34 Pn処理器
31A−35 速度変動瞬時値算出器
33 位置推定器
34 非干渉化制御器
35 1/Pn処理器
100,100A モータ制御装置

Claims (3)

  1. センサレスモータを制御するセンサレスモータ制御装置であって、
    センサレスモータの軸誤差から該センサレスモータの平均推定速度を生成するPLL制御器と、
    前記軸誤差から前記センサレスモータの速度変動を生成する補正速度生成器と、
    前記PLL制御器により生成された平均推定速度と前記補正速度生成器により生成された速度変動とに基づいて前記センサレスモータの電流指令値を生成する電流指令生成器と、前記センサレスモータの電圧指令値を生成する電圧指令生成器と、
    前記電圧指令値を補正する非干渉化補正値を、前記センサレスモータの速度指令値に前記補正速度生成器により生成された速度変動を加えた加算速度指令値と前記電流指令値とに基づいて生成する非干渉化制御器と
    を備えることを特徴とするセンサレスモータ制御装置。
  2. 前記平均推定速度と前記速度変動を加算した推定速度から前記センサレスモータの回転角度位置を推定する位置推定器をさらに備え
    前記補正速度生成器は、
    前記軸誤差の変動成分から基本波成分を分離する軸誤差変動成分分離器と、
    前記軸誤差変動成分分離器により分離された前記基本波成分を、前記センサレスモータの機械角周期毎に積算する軸誤差変動積算器と、
    前記軸誤差変動積算器により積算された前記基本波成分と前記位置推定器により推定された回転角度位置とに基づいて前記速度変動を生成する速度変動復調器と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載のセンサレスモータ制御装置。
  3. 前記速度変動復調器は、
    前記軸誤差変動成分分離器により分離された前記基本波成分の大きさを算出する速度変動振幅算出器と、
    前記軸誤差変動成分分離器により分離された前記基本波成分から、前記機械角周期毎に更新された前記軸誤差の変動成分の位相を算出する軸誤差変動位相算出器と、
    前記センサレスモータ制御装置に入力された機械角速度指令値を電気角速度指令値に変換し、前記電気角速度指令値から、前記軸誤差の変動成分をゼロに近づけるような前記速度変動の復調位相を算出する復調位相算出器と、
    前記速度変動振幅算出器により算出された前記基本波成分の大きさと、前記軸誤差変動位相算出器により算出された前記軸誤差の変動成分の位相と、前記復調位相算出器により算出された前記速度変動の復調位相とから、前記センサレスモータの機械角位相での前記速度変動の瞬時値を生成する速度変動瞬時値算出器と
    をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のセンサレスモータ制御装置。
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