JP7225564B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、モータ制御装置に関する。
空気調和装置等に用いられる圧縮機は、圧縮機を駆動するモータのロータの1回転中において負荷トルクが周期的に変動する。この負荷トルク変動は、吸入、圧縮、吐出の各行程におけるガス冷媒の圧力変化に起因する。この周期的な負荷トルク変動は、モータの回転速度の変動を生じさせ、振動や騒音を発生させる要因となる。特に、シングルロータリー圧縮機では、低回転領域で振動が大きくなる傾向にある。このようなロータの1回転中の負荷トルク変動を有する圧縮機を駆動する場合、モータの速度変動を抑えるためにトルク制御(周期的外乱抑制制御)が行われる。
通常、振動が顕著に現れるのは低回転時(例えば、モータ最大トルク/電流制御が行われる通常制御領域)であるが、インバータやモータの仕様および負荷条件によっては、高回転時(例えば、弱め磁束制御が行われる電圧飽和領域)でも振動が発生し、それに起因してモータのピーク電流振幅が増大する。そして、振動の増加は、空気調和装置等において配管へのダメージや騒音を生じさせ、モータのピーク電流増加による効率低下や圧縮機モータの減磁、また、減磁を防止するためのインバータの保護機能が動作してモータが停止等に陥る。
そこで、特許文献1および特許文献2では、電圧飽和領域でのトルク制御として、出力電圧をインバータが出力可能な直流電圧に制限しつつ、電圧ベクトル角(δ角)を速度変動に同期して脈動させている。
特開2017-158414号公報 特開2017-158415号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2には、電圧ベクトル角変動と速度変動の変動位相や変動振幅の関係については明示されておらず、チューニングによって速度変動に対する電圧ベクトル角変動の位相を調整するといった工数を要する。このため、ある条件下で、電圧ベクトル角変動の変動位相のチューニングがなされて制振効果が得られたとしても、インバータやモータの仕様、負荷条件等が変われば最適な出力トルクを発生するための電圧ベクトル角変動とならずに制振効果を十分に発揮できないという問題がある。
また、特許文献2では、図1(a)で示すように通常制御領域から電圧飽和領域へ移行した直後(制御状態B)では、モータに印加する出力電圧がモータへの出力可能な限界値である出力電圧限界値を超えないようにするため、出力電圧を一定の傾きで増加(実線に相当)させる。言い換えれば、出力電圧を図1(a)の破線のように脈動させたりしない。しかし、出力電圧を脈動させないことにより、トルク制御が不十分となりモータの振動を抑えることができない。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電圧飽和領域の中で通常制御領域から移行した後から出力電圧が出力電圧限界値に達するまでの領域(制御状態Bの領域)におけるモータの振動を抑制(制振効果の向上)するモータ制御装置を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明の実施形態の一例は、速度指令値とモータの速度とからモータの電流指令値を生成する電流指令値算出器を備えたモータ制御装置において、前記モータの現在の制御領域が電圧飽和領域および電圧飽和領域以外の通常制御領域の何れであるかを判定する判定部を備え、前記電流指令値算出器は、前記判定部により前記モータの現在の制御領域が通常制御領域であると判定された場合には、前記モータの電流指令値を、前記モータの定トルク曲線と前記モータの最大トルク/電流曲線の交点に基づいて生成する通常制御を実行し、前記判定部により前記モータの現在の制御領域が電圧飽和領域であると判定された場合には、モータに印加する出力電圧がモータへの出力可能な最大電圧の限界値である出力電圧限界値以下で変動する振幅となるように、前記モータの電流指令値を、前記モータの定トルク曲線と前記モータの定誘起電圧楕円の交点に基づいて生成する。
本発明の実施形態の一例によれば、電圧飽和領域の中で通常制御領域から移行した後から出力電圧が出力電圧限界値に達するまでの領域(制御状態Bの領域)におけるモータの振動を抑制(制振効果の向上)することができる。
図1は、従来技術および実施形態の出力電圧の波形の一例を示す概略図である。 図2は、実施形態のトルク制御による電流ベクトルの一例を示す図である。 図3は、実施形態のモータ制御装置の一例を示すブロック図である。 図4は、実施形態の制御切替判定部の一例を示すブロック図である。 図5は、実施形態の補正トルク生成器の一例を示すブロック図である。 図6は、実施形態の電流指令値算出器の一例を示すブロック図である。 図7は、実施形態の出力電圧制限指令値生成器の一例を示すブロック図である。 図8は、実施形態の出力電圧制限指令値生成方法を説明するための概略図である。 図9は、実施形態のd軸電流設定の一例を説明するための図である。 図10は、実施形態の電流誤差補正値生成器の一例を示すブロック図である。
以下に添付図面を参照して開示の技術にかかるモータ制御装置の実施形態の一例について説明する。以下の実施形態は、周期的な負荷トルク変動を有する圧縮機を駆動する永久磁石同期モータ(PMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor))のトルク制御を、位置センサレスベクトル制御により行う、例えば空気調和装置または低温保存装置等のモータ制御装置に関する。しかし、開示の技術は、周期的な負荷トルク変動を有する負荷を駆動するモータのトルク制御を行うモータ制御装置に広く適用可能である。また、以下の説明で単に速度と記した場合は、特に断らない限り角速度を表す。
なお、以下に示す実施形態は、開示の技術を限定するものではない。また、以下に示す実施形態およびその変形例は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせることができる。また、以下に示す実施形態は、開示の技術にかかる構成および処理について主に示し、その他の構成および処理の説明を簡略または省略する。また、各実施形態において、同一の構成および処理には同一の符号を付与し、既出の構成および処理の説明は省略する。
なお、以下で用いる記号の説明の一覧を、下記(表1)に示す。
Figure 0007225564000001
また、以下の実施形態で示す各式における“Pn”はモータの極対数、“Ψa”はモータの鎖交磁束、“Id”はモータのd軸電流、“Iq”はモータのq軸電流、“Ld”はモータのd軸インダクタンス、“Lq”はモータのq軸インダクタンス、“T”はモータのトルクである。
(実施形態)
図1(b)は、実施形態における出力電圧の波形の概形図である。ここで、図1(b)に示すように、モータの制御状態は制御状態A、制御状態B、制御状態Cに分かれる。制御状態Aは、通常制御領域における最大トルク/電流制御(MTPI制御)が行われる状態である。制御状態Bは、通常制御領域(制御状態A)から電圧飽和領域に状態遷移した直後から出力電圧の変動振幅が出力電圧限界値以下になるような制御が行われる状態である(この制御状態を出力電圧制限制御とする)。制御状態Cは、制御状態Bにおいて出力電圧の変動振幅の中心である平均出力電圧が出力電圧限界値に達した後、出力電圧を出力電圧限界値に固定する制御(弱め磁束制御)が行われる状態である。
そして、図1(b)で示すように、通常制御領域(制御状態A)から電圧飽和領域(制御状態B)に状態遷移した直後も、出力電圧を出力電圧限界値以下に保ちつつ、さらに、出力電圧の変動位相を通常制御領域の変動位相と同一として、変動振幅のピーク値が出力電圧限界値になるように制御する。実施形態によれば、変動振幅を含めて出力電圧を出力電圧限界値以下の範囲で最大限に有効利用できる点や、通常制御領域と電圧飽和領域との状態遷移前後がスムーズに接続される点から、電圧飽和領域におけるトルク制御の制振効率向上、および、状態遷移に伴う切り替えショックの抑制を実現できる。
図2は、実施形態のトルク制御による電流ベクトルを示す図である。図2(a)は、通常制御領域における制御状態Aの電流ベクトル軌跡を示す。また、図2(b)は、電圧飽和領域(制御状態B、C)のため、負荷トルク変動の抑制に必要な出力電圧の変動分が得られない場合の電流ベクトル軌跡を示す。
図2(a)に示すように、制御状態AではMTPI出力電圧を得るための誘起電圧Voおよび推定速度ωの比(Vo/ω)からなる定誘起電圧楕円(図は楕円の一部)と、±ΔTの変動幅を有する合計トルク指令値T(=To±ΔT)からなる定トルク曲線との交点の電流ベクトル軌跡であるd軸電流指令値Idおよびq軸電流指令値Iqが、MTPI曲線と一致する。
一方、図2(b)に示すように、制御状態B、Cでは電圧飽和領域のためMTPI出力電圧の変動が制限される場合には、誘起電圧Voの変動も抑制され、誘起電圧Voおよび推定速度ωの比(Vo/ω)からなる定誘起電圧楕円(図は楕円の一部)の変動幅も小さくなる。そのため、MTPI曲線上をトレースするだけでは負荷トルク変動を抑制するために必要なトルクが得られなくなる。その必要なトルク(合計トルク指令値T)を得るには、d軸電流指令値Idの変動幅を増加させる必要がある。具体的には、定誘起電圧楕円と±ΔTの変動幅を有する合計トルク指令値T(=To±ΔT)からなる定トルク曲線との交点をd軸電流指令値Idおよびq軸電流指令値Iqとする。なお、このようにして得られたd軸電流指令値Idおよびq軸電流指令値Iqの電流ベクトル軌跡は、図2(b)に示すように楕円形になり、MTPI曲線と一致しなくなる。実施形態は、負荷変動に応じて調整される合計トルク指令値Tの変動と出力電圧の変動振幅の抑制度合いから、負荷変動周期における電流ベクトル軌跡を変化させてモータを駆動制御する(制御状態B、C)。なお、制御状態Cの場合、出力電圧は出力電圧限界値に固定されるため、負荷トルク変動による速度変動が生じないようにトルク制御を行うと、定誘起電圧楕円の変動はなくなる。しかし、後述の消費電力低減を図るために速度変動許容値|Δωm|を設けることで、図2(b)に示すようにモータの推定速度ωが変動し、定誘起電圧楕円は、誘起電圧Voおよび推定速度ωの比(Vo/ω)の範囲で変動する。なお、上述したように、定誘起電圧楕円や定トルク曲線は、モータパラメータ(リアクタンスなど)で一意に決まるものではなく、モータの運転状態によって刻々と変化するものである。
[実施形態のモータ制御装置]
図3は、実施形態のモータ制御装置の一例を示すブロック図である。実施形態のモータ制御装置100は、モータ10のトルク制御を行う際、速度制御器により生成された平均トルク指令値Toに補正トルクである変動トルク指令値ΔTを加算した合計トルク指令値Tからなる定トルク曲線と、出力電圧振幅Vaを任意の振幅とするための誘起電圧指令値V0および推定速度ωからなる定誘起電圧楕円の交点をもとに、q軸電流指令値Iqおよびd軸電流指令値Idを算出して電流制御することによりモータ10を制御する。
モータ制御装置100は、減算器11、18、19、速度制御器12、加算器13,16、17、21、22、電流指令値算出器14、制御切替判定部15、電圧指令生成器20、d-q/u,v,w変換器(2相-3相変換器)23、PWM(Pulse Width Modulation)変調器24、IPM(Intelligent Power Module)25を有する。速度制御器12および電流指令値算出器14は、速度指令値とモータの速度とからモータの電流指令値を生成する電流指令値算出器の一例である。制御切替判定部15は、モータの現在の制御領域が電圧飽和領域か否かを判定する判定部の一例である。
また、モータ制御装置100は、シャント抵抗26、電流センサ27a、27b、3φ電流算出器28を有する。なお、モータ制御装置100は、シャント抵抗26、もしくは、電流センサ27a、27bの何れか一方を備えていればよい。
また、モータ制御装置100は、u,v,w/d-q変換器(3相-2相変換器)29、軸誤差演算器30、PLL(Phase Locked Loop)制御器31、位置推定器32、1/Pn処理器33、補正トルク生成器34を有する。また、モータ制御装置100は、IIR(Infinite Impulse Response)35a、35b、非干渉化制御器36を有する。また、モータ制御装置100は、電流誤差補正値生成器37を有する。
減算器11は、モータ制御装置100へ入力された機械角速度指令値ωmから、1/Pn処理器33により出力された現在の推定角速度である機械角推定角速度ωmを減算した角速度偏差Δωを、速度制御器12へ出力する。
速度制御器12は、減算器11から入力された角速度偏差Δωが、ゼロに近付くような平均トルク指令値Toを生成して出力する。加算器13は、速度制御器12により出力された平均トルク指令値Toと、補正トルク生成器34により出力された変動トルク指令値ΔTとを加算した合計トルク指令値Tを出力する。
電流指令値算出器14は、通常制御領域および電圧飽和領域のそれぞれにおいて、加算器13により出力された合計トルク指令値Tを満たすd軸電流指令値Idおよびq軸電流指令値Iqを生成して出力する。電圧飽和領域とは、モータ10の高回転領域で出力電圧振幅Vaが飽和して弱め磁束制御を行う領域である。通常制御領域とは、電圧飽和領域以外の領域で電圧を可変してモータを制御する領域である。電流指令値算出器14は、通常制御領域電流指令値算出器14a、電圧飽和領域電流指令値算出器14b、接点14c-1、14c-2、14c-3を含むスイッチSW1、接点14c-4、14c-5、14c-6を含むスイッチSW2を有する。
電流指令値算出器14は、制御切替判定部15により通常制御領域であると判定された(CONTROL_TYPE:A(通常制御)が出力された)場合には、スイッチSW1の接点14c-1と接点14c-3を接続し、スイッチSW2の接点14c-4と接点14c-6を接続して、通常制御領域電流指令値算出器14aにより出力されるd軸電流指令値Idおよびq軸電流指令値Iqを出力する(図1(b)の制御状態A)。また、電流指令値算出器14は、制御切替判定部15により電圧飽和領域であると判定された(CONTROL_TYPE:B(電圧飽和制御)が出力された)場合には、スイッチSW1の接点14c-2と接点14c-3を接続し、スイッチSW2の接点14c-5と接点14c-6を接続して、電圧飽和領域電流指令値算出器14bにより出力されるd軸電流指令値Idおよびq軸電流指令値Iqを出力する(図1(b)の制御状態B、C)。電流指令値算出器14の詳細は、後述する。
制御切替判定部15は、出力電圧限界値Vdq_limit、非干渉化前d軸電圧指令値Vdtがd軸非干渉化補正値Vdaにより補正された結果であるd軸電圧指令値Vd、非干渉化前q軸電圧指令値Vqtがq軸非干渉化補正値Vqaにより補正された結果であるq軸電圧指令値Vqをもとに、現在のモータ10の制御領域が通常制御領域および電圧飽和領域の何れであるかを判定する。そして、制御切替判定部15は、現在のモータ10の制御領域が通常制御領域である場合にはCONTROL_TYPE:A(通常制御領域)を出力し、現在のモータ10の制御領域が電圧飽和領域である場合にはCONTROL_TYPE:B(電圧飽和領域)を出力する。制御切替判定部15の詳細は、後述する。
加算器16は、電流指令値算出器14により出力されたd軸電流指令値Idと電流誤差補正値生成器37により出力されたd軸電流誤差補正値ΔIdとを加算してd軸電流補正指令値Id_FFを出力する。加算器17は、電流指令値算出器14により出力されたq軸電流指令値Iqと電流誤差補正値生成器37により出力されたq軸電流誤差補正値ΔIqとを加算してq軸電流補正指令値Iq_FFを出力する。
減算器18は、加算器16により出力されたd軸電流補正指令値Id_FFから、u,v,w/d-q変換器29により出力されたモータ10のd軸電流Idを減算したd軸電流偏差Id_difを出力する。減算器19は、加算器17により出力されたq軸電流補正指令値Iq_FFから、u,v,w/d-q変換器29により出力されたモータ10のq軸電流Iqを減算したq軸電流偏差Iq_difを出力する。
電圧指令生成器20は、減算器18により出力されたd軸電流偏差Id_difと、減算器19により出力されたq軸電流偏差Iq_difそれぞれにPI(Portion Integral)制御を適用することで変動誤差を抑制した非干渉化前d軸電圧指令値Vdt、非干渉化前q軸電圧指令値Vqtを出力する。
加算器21は、電圧指令生成器20により出力された非干渉化前d軸電圧指令値Vdtと、非干渉化制御器36により出力されたd軸非干渉化補正値Vdaとを加算したd軸電圧指令値Vdを出力する。また、加算器22は、電圧指令生成器20により出力された非干渉化前q軸電圧指令値Vqtと、非干渉化制御器36により出力されたq軸非干渉化補正値Vqaとを加算したq軸電圧指令値Vqを出力する。
d-q/u,v,w変換器23は、位置推定器32により出力された現在のロータ位置である電気角位相(dq軸位相)θeから、加算器21、22により出力された2相のd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを3相のU相出力電圧指令値Vu、V相出力電圧指令値Vv、W相出力電圧指令値Vwへ変換する。そして、d-q/u,v,w変換器23は、U相出力電圧指令値Vu、V相出力電圧指令値Vv、W相出力電圧指令値VwをPWM変調器24へ出力する。PWM変調器24は、U相出力電圧指令値Vu、V相出力電圧指令値Vv、W相出力電圧指令値Vwと、図示しないPWMキャリア信号から、6相のPWM信号を生成して、IPM35へ出力する。
IPM25は、PWM変調器24により出力された6相のPWM信号をもとに、外部から供給される直流電圧Vdcを変換して、モータ10のU相、V相、W相それぞれへ印可する交流電圧を生成し、それぞれの交流電圧をモータ10のU相、V相、W相へ印加する。
3φ電流算出器28は、シャント抵抗26を用いた1シャント(shunt)方式で母線電流を計測した場合、PWM変調器24により出力された6相のPWMスイッチング情報と、計測された母線電流とから、モータ10のU相電流値Iu、V相電流値Iv、W相電流値Iwを算出する。
または、電流を計測する方式は、母線電流を計測する1シャント方式に限らず、例えば、2つの電流センサとしてCT(Current Transformer)を用い、電流センサ27aでモータ10のU相の電流を、電流センサ27bでモータ10のV相の電流を計測してもよい。3φ電流算出器28は、電流センサ27a、27bでU相電流およびV相電流を計測した場合、残りのW相電流値Iwは、Iu+Iv+Iw=0のキルヒホッフの法則より算出する。3φ電流算出器28は、算出した各相の相電流値Iu、Iv、Iwをu,v,w/d-q変換器29へ出力する。
u,v,w/d-q変換器29は、位置推定器32により出力された現在のロータ位置である電気角位相θeをもとに、3φ電流算出器28により出力された3相のU相電流値Iu、V相電流値Iv、W相電流値Iwを、2相のd軸電流Idおよびq軸電流Iqへ変換する。そして、u,v,w/d-q変換器29は、d軸電流Idを電流指令値算出器14、減算器18、軸誤差演算器30、IIR35a、電流誤差補正値生成器37へ、q軸電流Iqを電流指令値算出器14、減算器19、軸誤差演算器30、IIR35b、電流誤差補正値生成器37へ、それぞれ出力する。
軸誤差演算器30は、加算器21により出力されたd軸電圧指令値Vd、加算器22により出力されたq軸電圧指令値Vq、u,v,w/d-q変換器29により出力されたd軸電流Id、q軸電流Iqから推定した電気角位相θeと、実際の回転軸である実軸(dq軸)の回転角度位置θdとの差である軸誤差Δθを算出して、PLL制御器31へ出力する。
PLL制御器31は、軸誤差演算器30により出力された軸誤差Δθから、現在の推定角速度である電気角推定角速度ωeを算出して、位置推定器32および1/Pn処理器33へそれぞれ出力する。
位置推定器32は、PLL制御器31により出力された電気角推定角速度ωeから電気角位相θeおよび機械角位相θmを推定する。そして、位置推定器32は、推定した電気角位相θeをd-q/u,v,w変換器23およびu,v,w/d-q変換器29へそれぞれ出力する。また、位置推定器32は、推定した機械角位相θmを、電流指令値算出器14、電流誤差補正値生成器37、補正トルク生成器34へそれぞれ出力する。
1/Pn処理器33は、PLL制御器31により出力された電気角推定角速度ωeをモータ10の極対数Pnで除算して機械角推定角速度ωmを算出し、減算器11、補正トルク生成器34へそれぞれ出力する。
補正トルク生成器34は、速度変動許容値|Δωm|、1/Pn処理器33により出力された機械角推定角速度ωmから機械角速度指令値ωmを減算器38で減算した機械角推定角速度変動(速度変動)Δωm、位置推定器32により出力された機械角位相θmから、周期的な速度変動である機械角推定角速度変動(速度変動)Δωmを速度変動許容値|Δωm|以下に抑制するための変動トルク指令値ΔTを生成する。変動トルク指令値ΔTは、消費電力低減やモータ10の減磁防止等を考慮して調整される。補正トルク生成器34の詳細は、後述する。なお、上記の角速度偏差Δωと機械角推定角速度変動(速度変動)Δωmは正負の符号が異なるだけである。
IIR35aは、u,v,w/d-q変換器29により出力されたd軸電流Iを入力とし、ノイズを除去してd軸応答電流Id_iirを出力するフィルタである。IIR35bは、u,v,w/d-q変換器29により出力されたq軸電流Iを入力とし、ノイズを除去してq軸応答電流Iq_iirを出力するフィルタである。IIRは、無限インパルス応答フィルタ(Infinite Impulse Response Filter)であり、ノイズ除去フィルタの一例である。
非干渉化制御器36は、電気角速度指令値ωeと、d軸応答電流Id_iirとから、非干渉化前d軸電圧指令値Vdtを補正するためのd軸非干渉化補正値Vdaを生成する。また、非干渉化制御器36は、電気角速度指令値ωeと、q軸応答電流Iq_iirとから、非干渉化前q軸電圧指令値Vqtを補正するためのq軸非干渉化補正値Vqaを生成する。d軸非干渉化補正値Vdaおよびq軸非干渉化補正値Vqaは、dq軸間の干渉項を予めフィードフォワードして、電流制御による干渉をキャンセルするための補正値である。ここで、干渉項の演算については、安定制御を図るために、非干渉化補正値は直流化された値であることが望ましい。このために、例えば、速度については電気角速度指令値ωeを用い、d軸電流Idおよびq軸電流Iqについては変動成分が排除されたIIRの出力値であるd軸応答電流Id_iirおよびq軸応答電流Iq_iirを用いて演算される。
電流誤差補正値生成器37は、電流指令値算出器14の応答遅延やdq軸の干渉により、dq軸電流が電流指令値に追従し切れずに生じる変動誤差(位相誤差および振幅誤差)を積算し、積算値の反転出力を電流誤差補正値(d軸電流誤差補正値ΔIdおよびq軸電流誤差補正値ΔIq)として生成する。ここで、d軸電流誤差補正値ΔIdはd軸電流指令値Iとモータ10を流れるd軸電流Idとの変動誤差を補正するための電流フィードフォワード成分であり、q軸電流誤差補正値ΔIqはq軸電流指令値Iqとモータ10を流れるq軸電流Iqとの変動誤差を補正するための電流フィードフォワード成分である。
すなわち、電流誤差補正値生成器37は、電流指令値算出器14により出力されたd軸電流指令値Idおよびq軸電流指令値Iqと、u,v,w/d-q変換器29により出力されたd軸電流Idおよびq軸電流Iqと、位置推定器32により出力された機械角位相θmとからd軸電流誤差補正値ΔIdおよびq軸電流誤差補正値ΔIqを生成して出力する。電流誤差補正値生成器37の詳細は、後述する。
[実施形態の制御切替判定部]
図4は、実施形態の制御切替判定部の一例を示すブロック図である。制御切替判定部15は、電圧振幅算出器15a、制御切替判定器15bを有する。電圧振幅算出器15aは、加算器21より出力されたd軸電圧指令値Vdおよび加算器22より出力されたq軸電圧指令値Vqから、下記(1)式に基づき、出力電圧振幅Vaを算出する。
Figure 0007225564000002
制御切替判定器15bは、電圧振幅算出器15aで算出された出力電圧振幅Vaのピーク値と、出力電圧限界値Vdq_limitとの比較を行う。出力電圧限界値Vdq_limitは、インバータが出力可能な最大出力電圧である。制御切替判定器15bは、出力電圧振幅Va(ピーク値)<出力電圧限界値Vdq_limitである場合には、モータ10の現在の制御領域が通常制御領域であると判定する。また、制御切替判定器15bは、出力電圧振幅Va(ピーク値)≧出力電圧限界値Vdq_limitである場合には、モータ10の現在の制御領域が電圧飽和領域であると判定する。そして制御切替判定器15bは、判定した制御領域をCONTROL_TYPEの信号(A:通常制御領域、B:電圧飽和領域)にて出力し、電流指令値算出器14へ通知する。
[実施形態の補正トルク生成器]
図5は、実施形態の補正トルク生成器の一例を示すブロック図である。実施形態の補正トルク生成器34は、速度変動幅振幅|Δωm|を入力して、モータ10の振動が実使用上問題とならない範囲の速度変動許容値|Δωm|内になるように変動トルク指令値(補正トルク)ΔTの振幅(補正トルク振幅|ΔT|)および位相を機械角周期毎に調整する。補正トルク生成器34は、速度変動成分分離器34a、速度変動振幅算出器34b、減算器34c、補正トルク振幅算出器34d、速度変動位相修正器34e、直交成分分離器34f、補正トルク復調器34gを有する。
速度変動成分分離器34aは、機械角推定角速度変動(速度変動)Δωmを、下記(2.1)式および(2.2)式から、機械角位相θmをもとに、Δωmの基本波成分である2つのフーリエ係数ωsin(sin成分)とωcos(cos成分)へ分離する。機械角推定角速度変動Δωmの基本波成分のフーリエ係数を機械角周期毎に算出することで、機械角推定角速度変動Δωmの高調波成分を排除して機械角推定角速度変動Δωmの基本波成分を精度よく抽出することができる。ωsinおよびωcosは、機械角周期毎に更新される値である。
Figure 0007225564000003
速度変動振幅算出器34bは、下記(3)式から、機械角推定角速度変動Δωmのωsin(sin成分)およびωcos(cos成分)に基づく速度変動振幅|Δωm|を算出する。ωsinおよびωcosは、機械角周期毎に更新される値であるため、速度変動振幅|Δωm|も機械角周期毎に更新される。
Figure 0007225564000004
減算器34cは、速度変動振幅算出器34bにより出力された速度変動振幅|Δωm|から、入力された速度変動許容値|Δωm|を減算した速度変動偏差|Δωm|errを生成する。速度変動許容値|Δωm|は、モータ10の振動が許容できる範囲での速度変動振幅|Δωm|を規定したものである。
補正トルク振幅算出器34dは、速度変動振幅|Δωm|と速度変動許容値|Δωm|の偏差に応じて補正トルク振幅|ΔT|を機械角周期毎に調整する。例えば、補正トルク振幅算出器34dは、下記(4)式により、速度変動振幅|Δωm|と速度変動許容値|Δω|の偏差である速度変動偏差|Δωm|errに補正ゲインkを適用し、補正トルク振幅|ΔT|を積算する。下記(4)式における|ΔT|_oldは、前回の機械角周期における補正トルク振幅|ΔT|である。補正ゲインkを適切に設定することで、速度変動|Δω|が速度変動許容値|Δωm|の境界でハンチングする問題や、急激な負荷トルク変化によって速度変動|Δω|が速度変動許容値|Δωm|よりも大きくなって振動および騒音が発生する問題を抑制することができる。
Figure 0007225564000005
速度変動位相修正器34eは、機械角周期毎に取得される機械角推定角速度変動(速度変動)Δωmの位相を修正する。修正方法は、例えば、下記(5.1)式および(5.2)式の演算により、機械角推定角速度変動Δωmのωsin(sin成分)およびωcos(cos成分)それぞれに、補正ゲインkを適用して積算することによる。下記(5.1)式におけるωsin_i_oldは、前回の機械角周期におけるωsin_iである。また、下記(5.2)式におけるωcos_i_oldは、前回の機械角周期におけるωcos_iである。そして、下記(5.3)式に示すように、ωsin_iおよびωcos_iの逆正接(Arctangent)を取った結果が、速度変動修正位相φωiである。この速度変動修正位相φωiが、本実施形態におけるトルク制御位相の基準になり、これに対してπ/2遅角した位相が変動トルク指令値(補正トルク)ΔTの位相となる。
Figure 0007225564000006
直交成分分離器34fは、下記(6.1)式および(6.2)式に基づき、補正トルク振幅|ΔT|と速度変動修正位相φωiのsin成分(ωsin_i)およびcos成分(ωcos_i)を得る。この処理は、(5.1)式および(5.2)式の演算による位相修正時の発散を防止する役割も有する。
Figure 0007225564000007
補正トルク復調器34gは、下記(7.1)式および(7.2)式から、変動トルク指令値(補正トルク)ΔTを算出する。この処理により、速度変動修正位相φωiからπ/2だけ遅角した補正トルク位相へ変換され、機械角位相θmでの変動トルク指令値(補正トルク)ΔTの瞬時値が生成される。
Figure 0007225564000008
なお、補正トルク復調器34gは、下記(8)式からも変動トルク指令値(補正トルク)ΔTの瞬時値を算出できる。
Figure 0007225564000009
そして、下記(9)式のように、上述のように生成された変動トルク指令値(補正トルク)ΔTが、速度制御器12により出力された平均トルク指令値Toへ加算されることで、合計トルク指令値Tが生成される。
Figure 0007225564000010
なお、補正トルク生成器34は、モータ10の通常制御領域と電圧飽和領域とで同一の制御器を用いてもよい。
[実施形態の電流指令値算出器]
図6は、実施形態の電流指令値算出器の一例を示すブロック図である。実施形態の電流指令値算出器14は、通常制御領域電流指令値算出器14a(図1(b)の制御状態A)、電圧飽和領域電流指令値算出器14b(図1(b)の制御状態B、C)を有する。
通常制御領域電流指令値算出器14aは、電流指令値算出器(MTPI曲線上の電流を算出)14a1を有する。電圧飽和領域電流指令値算出器14bは、出力電圧制限指令値生成器14b1、誘起電圧指令値生成器14b2、電流指令値算出器(定誘起電圧楕円上の電流を算出)14b3を有する。
先ず、出力電圧制限指令値生成器14b1について説明する。出力電圧制限指令値生成器14b1は、d軸電流Id、q軸電流Iq、出力電圧限界値Vdq_limit、合計トルク指令値T、位置推定器32により推定された機械角位相θmを入力として、出力電圧制限指令値Vaを算出して出力する。
なお、出力電圧制限指令値とは、電圧指令生成器20および非干渉化制御器36により生成される実際の出力電圧のことではなく、実際の出力電圧が出力電圧制限指令値と一致するような電流指令値を生成するための理論電圧を指す。
以下、出力電圧制限指令値生成器14b1について詳述する。
[出力電圧制限指令値生成器の詳細]
図7は、実施形態の出力電圧制限指令値生成器の一例を示すブロック図である。図6に示した出力電圧制限指令値生成器14b1は、図7に示すように、より詳細には、MTPI電流指令値算出器14b1-1、MTPI電圧指令値算出器14b1-2、MTPI電圧振幅算出器14b1-3、平均出力電圧生成器14b1-4、MTPI電圧変動成分抽出器14b1-5、加算器14b1-6、MTPI電圧振幅制限処理器14b1-7、加算器14b1-8を有する。
MTPI電流指令値算出器14b1-1は、合計トルク指令値Tからなる定トルク曲線とMTPI曲線との交点であるMTPI想定d軸電流指令値Id_mtpiおよびMTPI想定q軸電流指令値Iq_mtpiを算出する。定トルク曲線とMTPI曲線の交点は、例えば、下記(10)式のモータトルク式、下記(11)式のq軸電流が既知の時のMTPI曲線上のd軸電流式の2式を用いて算出できる。
Figure 0007225564000011
Figure 0007225564000012
上記(10)式および(11)式より、d軸電流Idを消去すると、下記(12)式のように、以下のq軸電流Iqに関する4次方程式を得ることができる。
Figure 0007225564000013
この4次方程式の実数解の1つが、合計トルク指令値TとMTPI曲線の交点でのMTPI想定q軸電流指令値Iq_mtpiである。4次方程式の解は、例えばニュートン法などを用いて導出することができる。
そして、上記(12)式の解であるMTPI想定q軸電流指令値Iq_mtpiを上記(11)式のMTPI曲線上のd軸電流式へ代入することで、MTPI想定d軸電流指令値Id_mtpiを算出する。
MTPI電圧指令値算出器14b1-2では、MTPI想定d軸電流指令値Id_mtpi、MTPI想定q軸電流指令値Iq_mtpiおよび推定速度ωをもとに、下記(13.1)および(13.2)式のPMPSのモータ電圧方程式により、MTPI想定d軸電圧Vd_mtpiおよびMTPI想定q軸電圧Vq_mtpiを生成する。なお、下記(13.1)式および(13.2)式における“p”は、微分演算子である。
Figure 0007225564000014
なお、上記(13.1)式および(13.2)式では、インダクタンスでの電流変化に伴う誘起電圧(p項電圧)が考慮されているが、これは、トルク制御による電流変化によるp項電圧の変動が無視できないためである。p項電圧は、電流変動の微分値を計算できればよいが、検出電流の変化量をそのまま微分値とすると、電流ノイズを含んでしまう不都合が生じるため、微分値は、電流基本波変動をもとに、例えば以下のように生成する。
p項電圧の生成方法について説明するために、d軸電流Idおよびq軸電流Iqの変動成分ΔIdaおよびΔIqaを下記(14.1)式および(14.2)式のように定義する。
Figure 0007225564000015
ここで、機械角一回転で1回の周期変動の場合において、上記(14.1)式に含まれる“Ida”と“φd”は、それぞれΔIdの変動振幅と初期位相であり、上記(14.2)式に含まれる“Iqa”と“φq”は、それぞれΔIqの変動振幅と初期位相であり、θmは機械角位相の瞬時値を示す。
すると、電流基本波変動により生ずるp項電圧は、下記(15.1)式および(15.2)式のようになる。ただし、下記(15.1)式および(15.2)式において、“ωm”は、機械角推定角速度ωmである。すなわち、d軸電流変動およびq軸電流変動の位相をπ/2だけ進ませ、機械角推定角速度ωmを乗算することで、微分値を生成することができる。
Figure 0007225564000016
MTPI電圧振幅算出器14b1-3は、下記(16)式から、MTPI想定d軸電圧Vd_mtpiおよびMTPI想定q軸電圧Vq_mtpiをもとに、MTPI想定出力電圧Va_mtpiを算出する。
Figure 0007225564000017
平均出力電圧生成器14b1-4は、ロータの1回転毎に変動するd軸電流Idおよびq軸電流Iqの平均値が最大トルク/電流曲線上をトレースするように、平均出力電圧指令値Va0を調整して出力する。例えば、現在のq軸電流Iqから最大トルク/電流曲線上のq軸電流Iqtを算出し、現在のd軸電流Idとの偏差がなくなるようにPI制御等により平均出力電圧指令値Va0を調整する。平均出力電圧生成器14b1-4は、下記(17.1)式および(17.2)式をもとに、平均出力電圧指令値Va0を算出する。また、平均出力電圧生成器14b1-4は、平均出力電圧指令値Va0が出力電圧限界値Vdq_limitに到達した場合には、下記(18)式をもとに、出力電圧限界値Vdq_limitで平均出力電圧指令値Va0を制限処理する(図1(b)の制御状態Bから制御状態Cに移行)。
Figure 0007225564000018
Figure 0007225564000019
MTPI電圧変動成分抽出器14b1-5は、MTPI想定出力電圧Va_mtpiの変動振幅|ΔVa_mtpi|およびこの瞬時値ΔVa_mtpiを、例えば以下のように算出する。
先ず、MTPI電圧変動成分抽出器14b1-5は、下記(19.1)式および(19.2)式をもとに、MTPI想定出力電圧Va_mtpiの基本波成分を2つのフーリエ係数Va_mtpi_sinとVa_mtpi_cos(sin成分とcos成分)に分離する。MTPI電圧変動成分抽出器14b1-5は、MTPI想定出力電圧Va_mtpiの基本波成分のフーリエ係数を機械角周期毎に算出することで、MTPI想定出力電圧Va_mtpiの基本波成分を、高調波成分を排除して精度よく抽出することができる。
Figure 0007225564000020
次に、MTPI電圧変動成分抽出器14b1-5は、上記(19.1)式および(19.2)式をもとに算出したフーリエ係数Va_mtpi_sinとVa_mtpi_cosから、下記(20)式をもとに、MTPI想定出力電圧Va_mtpiの基本波成分の振幅|ΔVa_mtpi|を算出する。
Figure 0007225564000021
なお、フーリエ係数Va_mtpi_sinとVa_mtpi_cosは、機械角周期毎に更新される値であるため、MTPI想定出力電圧Va_mtpiの基本波成分の振幅|ΔVa_mtpi|も機械角周期毎に更新される。
そして、MTPI電圧変動成分抽出器14b1-5は、MTPI想定出力電圧Va_mtpiの基本波成分の瞬時値ΔVa_mtpiを、下記(21)式から算出する。
Figure 0007225564000022
加算器14b1-6は、下記(22)式のように、平均出力電圧生成器14b1-4により出力された平均出力電圧指令値Va0と、MTPI電圧変動成分抽出器14b-5により出力されたMTPI想定出力電圧Va_mtpiの基本波成分の瞬時値ΔVa_mtpiとを加算した出力電圧指令値(ピーク値)Va_mtpi_peakを出力する。
Figure 0007225564000023
MTPI電圧振幅制限処理器14b1-7は、平均出力電圧生成器14b1-4により出力された平均出力電圧指令値Va0と、加算器14b1-6により出力された出力電圧指令値(ピーク値)Va_mtpi_peakとの加算結果を出力電圧限界値Vdq_limit以下となるように調整した変動出力電圧制限指令値ΔVa_limit_mtpiを生成して出力する。
具体的には、MTPI電圧振幅制限処理器14b1-7は、平均出力電圧指令値Va0、出力電圧指令値(ピーク値)Va_mtpi_peak、および出力電圧限界値Vdq_limitの比較により、出力電圧変動成分の振幅比率scaleを算出し、MTPI想定出力電圧変動成分ΔVa_mtpiに乗算することで、変動出力電圧制限指令値ΔVa_limit_mtpiを生成する。MTPI電圧振幅制限処理器14b1-7は、このようにして、MTPI想定出力電圧ΔVa_mtpiと位相を一致させた変動出力電圧制限指令値ΔVa_limit_mtpiを生成できる。MTPI電圧振幅制限処理器14b1-7は、下記(23.1)式~(23.3)式に基づいて出力電圧変動成分の振幅比率scaleを算出し、算出した振幅比率scaleから下記(23.4)式に基づいて、変動出力電圧制限指令値ΔVa_limit_mtpiを生成する。
Figure 0007225564000024
加算器14b1-8は、下記(24)式により、平均出力電圧生成器14b1-4により出力された平均出力電圧指令値Va0と、MTPI電圧振幅制限処理器14b1-7により出力された変動出力電圧制限指令値ΔVa_limit_mtpiとを加算し、加算結果の出力電圧制限指令値Vaを出力する。
Figure 0007225564000025
以下、図8を参照して、変動出力電圧制限指令値ΔVa_limit_mtpiの生成方法について説明する。図8は、実施形態の出力電圧制限指令値生成方法を説明するための概略図である。
例えば、図8(a)に示すように、平均出力電圧指令値Va0を中心に変動するMTPI想定出力電圧変動成分ΔVa_mtpiの出力電圧指令値(ピーク値)Va_mtpi_peakが出力電圧限界値Vdq_limit以下である場合、上記(23.2)式の条件に該当するため、MTPI電圧振幅制限処理器14b1-7は、出力電圧変動成分の振幅比率scale=1とする。そして、MTPI電圧振幅制限処理器14b1-7は、上記(23.4)式において“scale=1”とし、MTPI想定出力電圧ΔVa_mtpiをそのまま変動出力電圧制限指令値ΔVa_limit_mtpiとして出力する。その結果、出力電圧制限指令値Vaは、MTPI想定出力電圧ΔVa_mtpiと一致する。
また、例えば、図8(b)に示すように、平均出力電圧指令値Va0を中心に変動するMTPI想定出力電圧変動成分ΔVa_mtpiの出力電圧指令値(ピーク値)Va_mtpi_peakが出力電圧限界値Vdq_limitを超え、かつ、MTPI想定出力電圧変動成分ΔVa_mtpiの平均出力電圧指令値Va0が出力電圧限界値Vdq_limitを超えない場合、上記(23.3)式の条件に該当するため、MTPI電圧振幅制限処理器14b1-7は、出力電圧変動成分の振幅比率scale=(Vdq_limit-Va0)/|ΔVa_mtpi|とする。そして、MTPI電圧振幅制限処理器14b1-7は、上記(23.4)式において“scale=(Vdq_limit-Va0)/|ΔVa_mtpi|”とした変動出力電圧制限指令値ΔVa_limit_mtpiを出力する。その結果、MTPI想定出力電圧ΔVa_mtpiと位相が一致しかつ変動振幅によるピーク値が出力電圧限界値Vdq_limit以下となるような出力電圧制限指令値Vaが生成される。
また、例えば、図8(c)に示すように、MTPI想定出力電圧変動成分ΔVa_mtpiの平均出力電圧指令値Va0が出力電圧限界値Vdq_limit以上である場合、上記(23.1)式の条件に該当するため、MTPI電圧振幅制限処理器14b1-7は、出力電圧変動成分の振幅比率scale=0とする。そして、MTPI電圧振幅制限処理器14b1-7は、上記(23.4)式において“scale=0”とし、変動出力電圧制限指令値ΔVa_limit_mtpi=0として出力する。その結果、出力電圧制限指令値Vaは、出力電圧限界値Vdq_limitと一致する。
このように、出力電圧制限指令値Vaを制御することで、図1(b)に示すように、通常制御領域から電圧飽和領域に状態遷移した直後も、出力電圧制限指令値Vaを出力電圧限界値Vdq_limit以下に保ちつつ、通常制御領域での出力電圧制限指令値Vaの変動の中心である平均出力電圧指令値Va0と、電圧飽和領域での出力電圧制限指令値Vaの変動の中心である平均出力電圧指令値Va0とを一致させ、状態遷移時の切り替えショックを低減できる。さらに、電圧飽和領域において、出力電圧制限指令値Vaの変動の中心である平均出力電圧指令値Va0が出力電圧限界値Vdq_limit以上となり、平均出力電圧指令値Va0を出力電圧限界値Vdq_limitとする制御を開始する際にも、すなわち制御状態Cに移行する際にも切り替えショックを低減できる。
図6に説明を戻す。誘起電圧指令値生成器14b2は、現在のd軸電流Id、q軸電流Iqおよび推定速度ωから、出力電圧制限指令値Vaに相当する出力電圧を得るための誘起電圧指令値Voをモータモデル式の演算により生成する。ここで、PMSMモータの電圧方程式(d軸電圧Vd、q軸電圧Vq)、出力電圧振幅Va、誘起電圧Voの理論式は、下記(25.1)式~(27)式のようになる。
Figure 0007225564000026
Figure 0007225564000027
Figure 0007225564000028
上記(25.1)式~(27)式から、出力電圧制限指令値Vaと誘起電圧指令値Voを関連づける式は、下記(28)式の通りとなる。
Figure 0007225564000029
電流指令値算出器(定誘起電圧楕円上の電流を算出)14b3は、合計トルク指令値Tからなる定トルク曲線と、誘起電圧指令値Voおよび推定速度ωからなる定誘起電圧楕円の交点であるq軸電流指令値Iqとd軸電流指令値Idを算出する(図2(b)参照)。
具体的には、定トルク曲線と定誘起電圧楕円の交点は、例えば下記(29)式~(30)式のように、モータトルク式と誘起電圧式の2式を用いて算出できる。
Figure 0007225564000030
Figure 0007225564000031
上記(29)式および(30)式からd軸電流Idを消去すると、下記(31)式のように、q軸電流Iqに関する4次方程式を得ることができる。ただし、下記(31)式において、“ΔL=Ld-Lq”であり、“Ψa”はモータ10の鎖交磁束であり、“Vo”はモータ10の誘起電圧であり、“ω”はモータ10の速度であり、“T”はモータ10の駆動トルクであり、“Pn”はモータ10の極対数であり、“Ld”はモータ10のd軸インダクタンスであり、“Lq”はモータ10のq軸インダクタンスである。
Figure 0007225564000032
上記(31)式の4次方程式の実数解の一つが、合計トルク指令値Tからなる定トルク曲線と、誘起電圧Voおよび推定速度ωからなる定誘起電圧楕円が交差する点でのq軸電流指令値Iqである(図2(b)参照)。4次方程式の解は、例えばニュートン法などを用いて導出することができる。
電流指令値算出器(定誘起電圧楕円上の電流を算出)14b3は、q軸電流指令値Iq算出後は、下記(32)式のように、上記(30)式の誘起電圧式をd軸電流の式に変換してq軸電流指令値Iqを代入することでd軸電流指令値Idを算出する。ただし、下記(31)式において、“Ψa”はモータ10の鎖交磁束であり、“Vo”はモータ10の誘起電圧であり、“ω”はモータ10の速度であり、“Ld”はモータ10のd軸インダクタンスであり、“Lq”はモータ10のq軸インダクタンスである。
Figure 0007225564000033
ここで、上記(32)式において、正負の符号の何れを採用するかは、定誘起電圧楕円の中心であるM点(-Ψa/Ld,0)(図9参照)を通るIq軸に平行な直線(以降、M点境界ラインという)と、定誘起電圧楕円が交差する点でのトルク(以降、M点境界上トルクという)を計算し、この計算結果と合計トルク指令値Tと比較することによって決定することができる。以下に、d軸電流指令値Idの算出手順を示す。また、図8は、実施形態のd軸電流設定の一例を説明するための図である。
まず、M点上のd軸電流Id_Mを、下記(33)式のように算出する。
Figure 0007225564000034
次に、M点境界ラインと定誘起電圧楕円が交差するq軸電流Iq_Mを算出する。q軸電流Iq_Mは、上記(30)式に示す定誘起電圧楕円の式にId_Mを代入することで算出でき、下記(34)式の通りとなる。
Figure 0007225564000035
よって、M点境界ラインと定誘起電圧楕円とが交差するM点境界上トルクT_Mは、下記(35)式のように計算される。
Figure 0007225564000036
最後に、合計トルク指令値TとM点境界上トルクT_Mとの大小を比較することで、d軸電流指令値Idを下記(36.1)式および(36.2)式のように決定する。下記(36.1)式は、図9(a)に示すように合計トルク指令値T≦M点境界上トルクT_Mの場合のd軸電流指令値Idであり、下記(36.2)式は、図9(b)に示すように合計トルク指令値T>M点境界上トルクT_Mの場合のd軸電流指令値Idである。ただし、下記(36.1)式および(36.2)式において、“T”はトルク指令値であり、“T_M”はモータの定誘起電圧楕円上のM点におけるトルクであるM点境界上トルクである。
Figure 0007225564000037
電流指令値算出器(定誘起電圧楕円上の電流を算出)14b3は、定トルク曲線と定誘起電圧楕円の交点であるq軸電流指令値Iqおよびd軸電流指令値Id算出後は、q軸電流(検出値)Iqおよびd軸電流(検出値)Idがq軸電流指令値Iqおよびd軸電流指令値Idにそれぞれ追従するように、電流制御を実施する。
また、電流指令値算出器(MTPI曲線上の電流を算出)14a1は、MTPI曲線上において、合計トルク指令値Tで示される定トルク曲線とMTPI曲線との交点であるq軸電流指令値Iqとd軸電流指令値Idを算出する。
ここで、定トルク曲線と、MTPI曲線の交点は、例えば、上記(29)式で表されるモータトルク式と、上記(17.1)式で表される、MTPI曲線上のd軸電流Idとq軸電流Iqの関係式を用いて算出できる。なお、上記(29)式の右辺の第1項がマグネットトルクを、第2項がリラクタンストルクを表し、マグネットトルクはq軸電流Iqのみを含み、リラクタンストルクはq軸電流Iqとd軸電流Idの両方を含む。従って、適正なトルクを発生させるには、q軸電流Iqとd軸電流Idを適切に制御しなければならない。
上記(29)式および(17.1)式よりd軸電流Idを消去すると、下記(37)式に示すような、q軸電流Iqに関する4次方程式を得ることができる。4次方程式は、ニュートン法等の既知の手法により解を求めることができる。
Figure 0007225564000038
上記(37)式に示す4次方程式の実数解の一つが、合計トルク指令値TとMTPI曲線の交点におけるq軸電流指令値Iqである。例えば、電流指令値算出器(MTPI曲線上の電流を算出)14a1は、上記(37)式をもとにq軸電流指令値Iqを取得する。そして、電流指令値算出器(MTPI曲線上の電流を算出)14a1は、上記(17.1)式のMTPI曲線上のd軸電流算出式に、算出したq軸電流指令値Iqを代入することで、d軸電流指令値Idを算出する。
ここで、電流指令値算出器(MTPI曲線上の電流を算出)14a1または電流指令値算出器(定誘起電圧楕円上の電流を算出)14b3により算出されたq軸電流指令値Iq*と、q軸電流(検出値)Iqとの偏差を電圧指令生成器20に入力してPI制御を実施しても、負荷トルク変動周期で変動するq軸電流指令値Iqの平均にq軸電流(検出値)Iqの平均値は追従するものの、変動成分については電圧指令生成器20の応答遅延やd軸およびq軸の干渉により、q軸電流(検出値)Iqがq軸電流指令値Iqに追従せずに位相誤差が発生する。
d軸電流に関しても同様であり、電流指令値算出器(MTPI曲線上の電流を算出)14a1または電流指令値算出器(定誘起電圧楕円上の電流を算出)14b3により算出されたd軸電流指令値Idと、d軸電流(検出値)Idとの偏差を電圧指令生成器20に入力してPI制御を実施するだけでは、位相誤差が発生する。そこで、この位相誤差を積算して、位相誤差の反転出力を電流誤差補正値として生成し、これを電流指令値に加算した電流補正指令値と電流検出値の偏差にPI制御を適用することで位相誤差を抑制できる。
[実施形態の電流誤差補正生成器]
図10は、実施形態の電流誤差補正値生成器の一例を示すブロック図である。電流誤差補正値生成器37は、減算器37a、37e、q軸電流誤差成分分離器37b、q軸電流誤差積算器37c、q軸電流誤差補正値復調器37d、d軸電流誤差成分分離器37f、d軸電流誤差積算器37g、d軸電流誤差補正値復調器37hを有する。
減算器37aは、q軸電流誤差補正値ΔIqの生成にあたり、下記(38)式に示すように、q軸電流Iqとq軸電流指令値Iqとの偏差であるq軸電流変動誤差Iq_errを算出する。
Figure 0007225564000039
q軸電流誤差成分分離器37bは、下記(39.1)式および(39.2)式により、q軸電流変動誤差Iq_errの基本波成分である2つのフーリエ係数(Iq_err_sin(sin成分)およびIq_err_cos(cos成分))を機械角周期毎に算出する。これにより、高調波成分を排除してq軸電流変動誤差Iq_errの基本波成分を精度よく抽出することができる。ここで、Iq_err_sinおよびIq_err_cosは、機械角周期毎に更新される値である。
Figure 0007225564000040
q軸電流誤差積算器37cは、下記(40.1)式および(40.2)式に示すように、q軸電流誤差成分分離器37bにより分離されたq軸電流変動誤差Iq_errのsin成分およびcos成分に補正ゲインkを適用し、q軸電流変動誤差Iq_errのsin成分Iq_err_sin_iおよびcos成分Iq_err_cos_iそれぞれを積算する。下記(40.1)式におけるIq_err_sin_i_oldは、前回の機械角周期におけるIq_err_sin_iである。また、下記(40.2)式におけるIq_err_cos_i_oldは、前回の機械角周期におけるIq_err_cos_i_oldである。
Figure 0007225564000041
q軸電流誤差補正値復調器37dは、下記(41.1)式および(41.2)式により、q軸電流誤差補正値ΔIqを算出する。この処理により、q軸電流変動誤差の位相を反転させて、機械角位相θmでのq軸電流誤差補正値ΔIqの瞬時値が生成される。
Figure 0007225564000042
d軸電流誤差補正値ΔIdについても同様である。すなわち、減算器37eは、d軸電流誤差補正値ΔIdの生成にあたり、下記(42)式に示すように、d軸電流Idとd軸電流指令値Idとの偏差であるd軸電流変動誤差Id_errを算出する。
Figure 0007225564000043
d軸電流誤差成分分離器37fは、下記(43.1)式および(43.2)式により、d軸電流変動誤差Id_errの基本波成分である2つのフーリエ係数(Id_err_sin(sin成分)およびId_err_cos(cos成分))を機械角周期毎に算出する。これにより、高調波成分を排除してd軸電流変動誤差Id_errの基本波成分を精度よく抽出することができる。ここで、Id_err_sinおよびId_err_cosは、機械角周期毎に更新される値である。
Figure 0007225564000044
d軸電流誤差積算器37gは、下記(44.1)式および(44.2)式に示すように、d軸電流誤差成分分離器37fにより分離されたd軸電流変動誤差Id_errのsin成分およびcos成分に補正ゲインkを適用し、d軸電流変動誤差Id_errのsin成分Id_err_sin_iおよびcos成分Id_err_cos_iそれぞれを積算する。下記(44.1)式におけるId_err_sin_i_oldは、前回の機械角周期におけるId_err_sin_iである。また、下記(44.2)式におけるId_err_cos_i_oldは、前回の機械角周期におけるId_err_cos_i_oldである。
Figure 0007225564000045
d軸電流誤差補正値復調器37hは、下記(45.1)式および(45.2)式により、d軸電流誤差補正値ΔIdを算出する。この処理により、d軸電流変動誤差の位相を反転させて、機械角位相θmでのd軸電流誤差補正値ΔIdの瞬時値が生成される。
Figure 0007225564000046
加算器16(図3参照)は、下記(46.1)式に示すように、q軸電流指令値Iqにq軸電流誤差補正値ΔIqを加算し、q軸電流補正指令値Iq_FFを生成する。また、加算器17(図3参照)は、下記(46.2)式に示すように、d軸電流指令値Idにd軸電流誤差補正値ΔIdを加算し、d軸電流補正指令値Id_FFを生成する。
Figure 0007225564000047
電圧指令生成器20(図3参照)は、下記(47.1)式および(47.2)式に示すように、q軸電流補正指令値Iq_FFとq軸電流(検出値)Iqの偏差にPI制御を実施し、非干渉化前q軸電圧指令値Vqtを生成し、d軸電流補正指令値Id_FFとd軸電流(検出値)Idの偏差にPI制御を実施し、非干渉化前d軸電圧指令値Vdtを生成する。
Figure 0007225564000048
加算器21(図3参照)は、下記(48.1)式で表されるq軸非干渉化補正値Vqaを、下記(48.3)式に示すように、電圧指令生成器20により出力された非干渉化前q軸電圧指令値Vqtに加算することにより、dq軸間の干渉項をあらかじめフィードフォワードして電流制御による干渉をキャンセルする非干渉化制御を実施する。また、加算器22(図3参照)は、下記(48.2)式で表されるd軸非干渉化補正値Vdaを、下記(48.4)式に示すように、電圧指令生成器20により出力された非干渉化前d軸電圧指令値Vdtに加算することにより、dq軸間の干渉項をあらかじめフィードフォワードして電流制御による干渉をキャンセルする非干渉化制御を実施する。
Figure 0007225564000049
ここで、非干渉化の演算については、制御安定を図るために、直流化された値を用いることが望ましい。例えば、速度に関しては、速度指令値ωを用い、d軸電流Idやq軸電流Iqに関しては、変動成分が排除されたフィルタ値であるd軸応答電流Id_iir、q軸応答電流Iq_iirを用いて演算する。こうすることで、安定した電流制御を行うことができる。
以上の実施形態によれば、モータ10の現在の制御領域が電圧飽和領域であると判定された場合に、出力電圧が出力電圧限界値以下で変動する振幅となるようにし、さらに出力電圧の位相が、通常制御領域における制御と同一の位相とするモータ10の電流指令値を、モータ10の定トルク曲線とモータ10の定誘起電圧楕円の交点に基づいて生成する。
また、以上の実施形態によれば、モータ10を流れるd軸電流Idおよびq軸電流Iqと、モータ10の所定の出力電圧限界値と、モータ10を駆動するための変動成分を含むトルク指令値T*と、モータ10の機械角位相θmと、モータの推定角速度である電気角推定角速度ωeに応じた可変値の出力電圧制限指令値Va*を生成する。そして、この可変値の出力電圧制限指令値に相当する出力電圧を得るための誘起電圧指令値を生成し、生成した誘起電圧指令値から求まるモータ10の定誘起電圧楕円とモータ10の定トルク曲線の交点に基づいてモータ10の電流指令値を生成する。
これらのことから、実施形態によれば、変動振幅を含めて出力電圧を出力電圧限界値以下の範囲で最大限に有効利用でき、通常制御領域と電圧飽和領域との状態遷移前後がスムーズに接続されるため、電圧飽和領域におけるトルク制御の制振効率向上、および、状態遷移に伴う切り替えショックを抑制することができる。なお、実施形態では、出力電圧の変動振幅のピーク値が出力電圧限界値になるように制御しているが、変動振幅のピーク値が出力電圧限界値に達しなくても、出力電圧を変動させることでトルク脈動を抑制する効果は得られる。
また、以上の実施形態によれば、速度指令値とモータ10の速度の偏差に基づいてモータ10のトルク指令値を補正するための補正トルクを生成する補正トルク生成器をさらに備えることから、電圧制限下(電圧飽和領域、弱め界磁制御領域)においてもモータ10のトルク脈動を抑制することができる。
また、以上の実施形態によれば、補正トルク生成器34は、モータ10の振動が許容できる範囲を示す速度変動許容値に応じて補正トルクを生成することから、モータ10の振動をある程度許容しつつ制振することにより、モータ10の消費電力の抑制を図ることができる。
上述の実施形態および図示の具体的名称、処理、制御、各種のデータやパラメータを含む情報については、一例を示すに過ぎず、特記する場合を除いて適宜変更することができる。また、上述の実施形態における各部もしくは各装置の構成は、処理負荷や実装効率等から適宜分散または統合されてもよい。また、上述の実施形態における各処理は、処理負荷や実装効率等から、処理順序を適宜入れ替えて実行されてもよい。
上述の実施形態のより広範な態様は、上述のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
10 モータ
11、38 減算器
12 速度制御器
13、16、17、21、22 加算器
14 電流指令値算出器
14a 通常制御領域電流指令値算出器
14a1 電流指令値算出器(MTPI曲線上の電流を算出)
14b 電圧飽和領域電流指令値算出器
14b1 出力電圧制限指令値生成器
14b1-1 MTPI電流指令値算出器
14b1-2 MTPI電圧指令値算出器
14b1-3 MTPI電圧振幅算出器
14b1-4 平均出力電圧生成器
14b1-5 MTPI電圧変動成分抽出器
14b1-6、14b1-8 加算器
14b1-7 MTPI電圧振幅制限処理器
14b2 誘起電圧指令値生成器
14b3 電流指令値算出器(定誘起電圧楕円上の電流を算出)
14c-1、14c-2、14c-3、14c-4、14c-5 接点
SW1、SW2 スイッチ
15 制御切替判定部
15a 電圧振幅算出器
15b 制御切替判定器
18、19 減算器
20 電圧指令生成器
23 d-q/u,v,w変換器
24 PWM変調器
25 IPM
26 シャント抵抗
27a、27b 電流センサ
28 3φ電流算出器
29 u,v,w/d-q変換器
30 軸誤差演算器
31 PLL制御器
32 位置推定器
33 1/Pn処理器
34 補正トルク生成器
34a 速度変動成分分離器
34b 速度変動振幅算出器
34c 減算器
34d 補正トルク振幅算出器
34e 速度変動位相修正器
34f 直交成分分離器
34g 補正トルク復調器
35a、35b IIR
36 非干渉化制御器
37 電流誤差補正値生成器
37a、37e 減算器
37b q軸電流誤差成分分離器
37c q軸電流誤差積算器
37d q軸電流誤差補正値復調器
37f d軸電流誤差成分分離器
37g d軸電流誤差積算器
37h d軸電流誤差補正値復調器
100 モータ制御装置

Claims (6)

  1. ータの現在の制御領域が電圧飽和領域および電圧飽和領域以外の通常制御領域の何れであるかを判定する判定部
    記判定部により前記モータの現在の制御領域が通常制御領域であると判定された場合には、前記モータの電流指令値を、前記モータの定トルク曲線と前記モータの最大トルク/電流曲線の交点に基づいて生成する通常制御を実行し、
    前記判定部により前記モータの現在の制御領域が電圧飽和領域であると判定された場合には、前記モータに印加する出力電圧の平均値が前記モータへの出力可能な電圧の限界値である出力電圧限界値に達していない一方で前記出力電圧の変動振幅が前記出力電圧限界値に達している場合に、前記変動振幅のピーク値が前記出力電圧限界値になるように、前記モータの電流指令値を、前記モータの定トルク曲線と前記モータの定誘起電圧楕円の交点に基づいて生成する電流指令値算出器と
    を具備するモータ制御装置。
  2. 記判定部により前記モータの現在の制御領域が電圧飽和領域であると判定された場合、出力電圧の変動位相が前記通常制御領域における制御と同一の位相となる、
    求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記電流指令値算出器は、
    前記モータを流れるd軸電流およびq軸電流と、前記モータの所定の出力電圧限界値と、前記モータを駆動するための変動成分を含むトルク指令値と、前記モータの機械角位相と、モータの推定角速度に応じた可変値の出力電圧制限指令値を生成する出力電圧制限指令値生成器と、
    前記出力電圧制限指令値生成器により生成された前記出力電圧制限指令値と、前記d軸電流および前記q軸電流と、前記推定角速度と、前記機械角位相とに基づいて、前記出力電圧制限指令値に相当する出力電圧を得るための誘起電圧指令値を生成する誘起電圧指令値生成器と、
    前記モータの電流指令値を、前記トルク指令値と、前記推定角速度と、前記誘起電圧指令値生成器により生成された前記誘起電圧指令値とから求まる前記モータの定トルク曲線と前記モータの定誘起電圧楕円の交点に基づいて生成する算出器と、
    有する請求項1に記載のモータ制御装置。
  4. 前記電流指令値算出器は、前記モータの電流指令値のうち、q軸電流指令値Iqを、モータのトルクおよび誘起電圧を規定する各数式から導出される下記(1)式から算出する求項に記載のモータ制御装置。
    Figure 0007225564000050
    ただし、上記(1)式において、q軸電流指令値Iqは“Iq”に該当し、“ΔL”は“Ld-Lq”であり、“Ψa”はモータの鎖交磁束であり、“Vo”はモータの誘起電圧であり、“ω”はモータの速度であり、“T”はモータの駆動トルクであり、“Pn”はモータの極対数であり、“Ld”はモータのd軸インダクタンスであり、“Lq”はモータのq軸インダクタンスである。
  5. 前記電流指令値算出器は、前記モータの電流指令値のうち、d軸電流指令値Idを下記(2)式から算出する請求項に記載のモータ制御装置。
    Figure 0007225564000051
    ただし、上記(2)式において、d軸電流指令値Idは“Id”に該当し、q軸電流指令値Iqは“Iq”に該当し、“Ψa”はモータの鎖交磁束であり、“Vo”はモータの誘起電圧であり、“ω”はモータの速度であり、“Ld”はモータのd軸インダクタンスであり、“Lq”はモータのq軸インダクタンスである。
  6. 前記電流指令値算出器は、上記(2)式から算出された正負のd軸電流指令値Idのうち、T≦T_MおよびT>T_Mの何れかに応じて、下記(3)式に基づいて正負のd軸電流指令値Idの何れか1つを前記モータの電流指令値として算出する求項に記載のモータ制御装置。
    Figure 0007225564000052
    ただし、上記(3)式において、“T”は合計トルク指令値であり、“T_M”はモータの定誘起電圧楕円上のM点におけるトルクであるM点境界上トルク(ただし、“M点”は、モータの定誘起電圧楕円の中心)である。
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