JP2021116351A - フィルム、及びフィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ダイシング用原反フィルム等として使用するのに十分な柔軟性を確保しつつ、表面形態の均一性を向上させたフィルムを提供する。【解決手段】フィルムは全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を20質量%以上75質量%以下含み、表面の最大粗さをRmax(μm)、表面の平均粗さをRa(μm)としたときに、少なくとも一方の表面において、1.00<Rmax/Ra<8.00であり、かつ0.1<Ra<1.0である。【選択図】なし

Description

本発明は、フィルム、及びフィルムの製造方法に関するものである。
室温下において低荷重で伸張可能な柔軟性の高いフィルムは、粘着テープなどの基材、成形用の転写基材、及びプレス時のクッション材等の様々な製品の他、回路や半導体チップの製造工程用途や加飾用途等幅広い分野で活用されている。
例えば、半導体チップの製造工程には、半導体ウェハのパターン表面に加工用粘着テープを貼り付ける工程、半導体ウェハの裏面を研磨して厚みを薄くするバックグラインド工程、バックグラインド工程で厚みを薄くした半導体ウェハをダイシングテープへマウントする工程、半導体ウェハから加工用粘着テープを剥離する工程、半導体ウェハを半導体チップに分割するダイシング工程、及びダイシングテープを放射状にエキスパンドして個々の半導体チップをピックアップする工程等、様々な工程が存在する。
近年では、電子機器の小型化に伴って半導体ウェハの薄型化が進んでおり、その強度が低下しているため、半導体チップの製造工程中で破損しやすく歩留まりの低下が課題となっている。このような課題を解消する手段の一つとして、例えば、ダイシングテープを放射状にエキスパンドして個々の半導体チップをピックアップする工程において生じる半導体ウェハへの負荷を緩和するために、ダイシングテープに用いるフィルム(以下、ダイシングテープ用原反フィルムということがある。)の改良が試みられている。
この工程における歩留まりには、ダイシングテープの柔軟性不足やエキスパンド時における均一拡張性の不足が大きく影響することから、ダイシングテープ用原反フィルムには、柔軟性と均一拡張性のさらなる向上が求められている。
また、このダイシングテープ用原反フィルムに粘着層を設けてダイシングテープを得る際に、塗布により粘着層を形成した工程フィルムの粘着層面をダイシングテープ用原反フィルムに押しつけて粘着層を転写する方法を用いるのであれば、フィルム表面の粗大突起によるエア溜まりや、フィルムの厚み斑によるエア抜け性不良などのトラブルも発生することから、ダイシングテープ用原反フィルムには、均一な表面形態も求められている。
このような課題を解決する手段として、例えば、樹脂を溶融押出して1組のカレンダーロールで加圧冷却結晶化させた後、熱処理、延伸、及び熱固定を行うことで微孔性フィルムを得る方法や(特許文献1)、2枚のシート基材の間に樹脂粒子を挟み込んで圧延を行うことで粒子の形状を転写させた後、2枚のシートを剥離することでシートの表面形態を均一化する方法が提案されている(特許文献2)。
平2−47031号公報 特開2018−165022号公報
しかしながら、特許文献1や2に記載の方法では、粗大突起の発生を抑制することは困難であり、ダイシングテープ用原反フィルムに粘着層を設ける際のエア溜まりやエア抜け性不良の改善効果が不十分である。
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消し、ダイシング用原反フィルム等として使用するのに十分な柔軟性を確保しつつ、表面形態の均一性を向上させたフィルムを提供することをその課題とする。
係る課題を解決するために本発明は、以下の構成からなる。
(1) 全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を20質量%以上75質量%以下含み、表面の最大粗さをRmax(μm)、表面の平均粗さをRa(μm)としたときに、少なくとも一方の表面において、1.00<Rmax/Ra<8.00であり、かつ0.1<Ra<1.0であることを特徴とする、フィルム。
(2) 平均破断伸度が500%以上900%以下であることを特徴とする、(1)に記載のフィルム。
(3) 前記ポリプロピレン系樹脂に非相溶な樹脂(樹脂A)を含むことを特徴とする、(1)又は(2)に記載のフィルム。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載のフィルムを製造するフィルムの製造方法であって、結晶化前に一対の金属ロールでシートの圧延を行う圧延工程を有することを特徴とする、フィルムの製造方法。
(5) 前記圧延工程前後におけるシートの厚みの変化率が10.0%以上60.0%以下であることを特徴とする、(4)に記載のフィルムの製造方法。
(6) 前記圧延工程における一対の金属ロールのうち、少なくとも一方の金属ロールの表面の平均粗さが0.1μm以上3.0μm以下であることを特徴とする、(4)又は(5)に記載のフィルムの製造方法。
(7) (1)〜(3)のいずれかに記載のフィルムを含むことを特徴とする、半導体加工用シート。
本発明により、柔軟性を確保しつつ、表面形態の均一性を向上させたフィルム、及びその製造方法を提供することができる。また、上記特性により、本発明のフィルムはダイシングテープ用原反フィルムとして好適に用いることができる。
本発明のフィルムは、全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を20質量%以上75質量%以下含み、表面の最大粗さをRmax(μm)、表面の平均粗さをRa(μm)としたときに、少なくとも一方の表面において、1.00<Rmax/Ra<8.00であり、かつ0.1<Ra<1.0であることを特徴とする。以下、本発明のフィルムについて具体的に説明する。
本発明のフィルムは、全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を20質量%以上75質量%以下含むことが重要である。ここでポリプロピレン系樹脂とは、ポリマーを構成する全構成単位を100モル%としたときに、プロピレン単位を50モル%より多く含む樹脂をいう。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、アイソタクティック若しくはシンジオタクティックな立体規則性を示すプロピレンの単独重合体や、プロピレン・α−オレフィン共重合体等が挙げられる。ここでいうα−オレフィンの具体例としては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテンー1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、及び5−メチル−2−ノルボルネン等が挙げられる。また、プロピレン・α−オレフィン共重合体は、本発明の効果を損なわない限り、2元系、3元系、及び4元系のいずれであってもよく、ランダム共重合体及びブロック共重合体のいずれであってもよい。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で複数種類を混合して用いてもよい。
本発明のフィルムは、その柔軟性を向上せしめる目的から、ポリプロピレン系樹脂に非相溶な樹脂(樹脂A)を含むことが好ましい。ここでポリプロピレン系樹脂に非相溶な樹脂とは、フィルム中のポリプロピレン系樹脂とのSP値の差の絶対値が1(MJ/m1/2以上10(MJ/m1/2以下の範囲である樹脂を意味する。ここでいうSP値とは、Fedorsの計算式を用いて求められる溶解度パラメータである。上記Federsの計算式によれば、溶解度パラメータは、各原子団のモル凝集エネルギーの和を体積で除したものの平方根であって、単位体積当たりの極性を示すものである。すなわち、溶解度パラメータが大きいほど極性が高いことになる。
なお、フィルム中のポリプロピレン系樹脂が複数種類である場合において、ポリプロピレン系樹脂に非相溶であるか否かの判定は、フィルム中に最も多く含まれるポリプロピレン系樹脂を基準に行うものとする。また、フィルム中に最も多く含まれるポリプロピレン系樹脂が複数ある場合(例えば、フィルム中に2種類のポリプロピレン系樹脂が等量含まれている場合等)は、これらのポリプロピレン系樹脂のいずれか一つについてSP値の差の絶対値が上記範囲となる樹脂は、樹脂Aに該当するものとみなすことができる。
樹脂Aは、フィルム中のポリプロピレン系樹脂に非相溶な樹脂であれば本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、柔軟性を向上せしめる観点から、炭化水素系エラストマー等が好ましく用いられる。炭化水素系エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、水添スチレン・ブタジエン共重合体(HSBR)等のスチレン・共役ジエン系共重合体やその水添物、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)、及びスチレン・イソブチレン共重合体等が挙げられる。これらの炭化水素系エラストマーは、本発明の効果を損なわない限り1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
本発明のフィルムは、全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を20質量%以上75質量%以下含み、かつその効果を損なわないのであれば特に限定されず、単層フィルムとしても2層以上の積層フィルムとしてもよい。但し、耐熱性と柔軟性を容易に両立する観点から、積層フィルムとすることが好ましく、樹脂Aの含有量が異なる複数の層を有する積層フィルムとすることがより好ましく、樹脂Aの含有量が異なる2種類の層からなる積層フィルムとすることがさらに好ましい。
ここで、「樹脂Aの含有量が異なる2種類の層からなる」とは、フィルムを構成する2種類の層が共に樹脂Aを含むが、層を構成する樹脂成分全体を100質量%としたときの樹脂Aの含有量が互いに異なる態様、若しくはフィルムを構成する2種類の層のうち一方のみが樹脂Aを含む態様をいう。なお、このときフィルムを構成する層は2層であっても3層以上であってもよく、層構成は例えば2種2層構成、2種3層構成等とすることができる。
本発明のフィルムが「樹脂Aの含有量が異なる2種類の層からなる積層フィルム」である場合、樹脂Aの含有量が相対的に少ない層をA層、樹脂Aの含有量が相対的に多い層をB層、A層における樹脂Aの含有量をM(質量%)、B層における樹脂Aの含有量をM(質量%)としたときに、A層が少なくとも一方の最表層に位置することが好ましい。ここで、「樹脂Aの含有量が相対的に少ない層」とは、層を構成する樹脂成分全体を100質量%としたときの樹脂Aの含有量が相対的に少ない層をいい、これに該当しない層が「樹脂Aの含有量が相対的に多い層」となる。また、A層における樹脂Aの含有量Mとは、A層を構成する樹脂成分全体を100質量%としたときの、A層における樹脂Aの含有量(質量%)をいい、B層における樹脂Aの含有量M(質量%)も同様に解釈することができる。
一般的に、樹脂Aはポリプロピレン系樹脂に比べて柔軟性に優れるが、耐熱性に劣る。そのため、樹脂Aの含有量が相対的に少ないA層はB層に比べて耐熱性に優れ、A層が少なくとも一方の最外層に位置することで、加熱による製造装置などへの密着を軽減することができる。一方で、A層に比べて柔軟性に優れるB層を有することにより、フィルムの柔軟性を向上させることができる。上記観点から、本発明のフィルムが「樹脂Aの含有量が異なる2種類の層からなる積層フィルム」である場合、A層が両側の最表層に位置する構成、例えばA層/B層/A層の2種3層構成が好ましい。
本発明のフィルムが「樹脂Aの含有量が異なる2種類の層からなる積層フィルム」である場合、各層における樹脂Aの含有量は、フィルムの全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を20質量%以上75質量%以下含むのであれば、その効果を損なわない限り特に制限されない。但し、加熱時のハンドリングの観点から、A層における樹脂Aの含有量は、A層における樹脂成分全体を100質量%としたときに、0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。また、B層における樹脂Aの含有量は、柔軟性を向上させる観点から、B層における樹脂成分全体を100質量%としたときに、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは50質量%以上90質量%以下である。なお、各層に含まれる樹脂Aが複数成分である場合、樹脂Aの含有量は該当する成分を合算して算出するものとする。
本発明のフィルムがA層/B層/A層の2種3層構成の積層フィルムである場合、フィルムの全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を20質量%以上75質量%以下含むのであれば、その効果を損なわない限り特に制限されないが、生産性の観点から、両A層の厚みを等しくすることが好ましい。
本発明のフィルムは、表面に粘着層等を形成する際のエア溜まりやエア抜け性不良を軽減する観点から、表面の最大粗さをRmax(μm)、表面の平均粗さをRa(μm)としたときに、少なくとも一方の表面において、1.00<Rmax/Ra<8.00であることが重要である。Rmax/Raは表面の凹凸の程度やバラツキを表す指標である。例えば表面の凹凸の深さや高さが均一である場合は通常、凹凸の深さや高さが大きいほどRmax/Raは大きくなる。また、均一な凹凸の中に、極端に深い凹部や極端に高い凸部が存在する場合にもRmax/Raが大きくなる。Rmax/Raが上記範囲であると、表面に粘着層を設ける工程でのエア溜まりやエア抜け性不良が軽減される。
Rmax/Raが1.00以下であることは表面の凹凸の深さや高さが極めて小さいことを意味するため、Rmax/Raが1.00以下であると、表面に粘着層を設ける工程でフィルム表面と粘着層を重ねたときの両者の接触面積が大きくなり、両者の密着過度になってエア溜まりが発生する場合がある。一方、Rmax/Raが8.00以上であることは、表面の凹凸の深さや高さが過剰であること、若しくは極端に深い凹部や極端に高い凸部が存在することを意味する。そのため、Rmax/Raが8.00以上であると、表面に粘着層を設ける工程でフィルム表面と粘着層を重ねたときに、両者の接触面積が小さくなって密着が不足することがあるだけでなく、極端に深い凹部や極端に高い凸部の付近で他の部分よりもエア溜まりが顕著になることや、エアが抜けやすくなってシワが発生することもある。上記観点から、Rmax/Raは、好ましくは1.00<Rmax/Ra<7.00である。
Rmax/Raを、1.00<Rmax/Ra<8.00の範囲又は上記の好ましい範囲とする手法は特に制限されないが、工程を簡略化でき生産性に優れることから、予めRmax/Raを規定した一対の金属ロールを用いて、後述する好ましいロール温度、線圧で無配向シートを圧延する方法を用いることが好ましい。より具体的には、金属ロールのRmax/Raを大きくすること、ロール線圧を高くすることにより、フィルムのRmax/Raを大きくすることができる。
本発明のフィルムは、表面に粘着層等を形成する際のエア溜まりやエア抜け性不良を軽減する観点から、0.1<Ra<1.0であることが重要である。Raが上記範囲であると、表面に粘着層を設ける工程でのエア溜まりやエア抜け性不良が軽減される。Raが0.1以下であるとフィルム表面の凹凸が不足するため、粘着層を設ける工程でフィルム表面と粘着層との密着が過度に強固となり、フィルムと粘着層との間からエアが抜けずにエア溜まりが発生する場合がある。一方、Raが1.0以上であるとフィルム表面の凹凸が過剰であるため、粘着層を設ける工程でフィルム表面と粘着層との密着性が全体的あるいは部分的に不良となる場合がある。
Raを、0.1<Ra<1.0の範囲とする手法は特に制限されないが、工程を簡略化でき生産性に優れることから、予めRaを規定した一対の金属ロールで無配向シートを圧延する方法を用いることが好ましい。このとき、一対の金属ロールのRaを大きくすることで、フィルムのRaを大きくすることができる。
Rmax及びRaは、接触式の微細形状測定機により測定することができ、接触式の微細形状測定機としては、例えば小坂研究所製のsurf−corder ET−4000A等を用いることができる。なお、同装置を用いる際の解析ソフト、測定条件、粒子解析(複数レベル)条件は下記のとおりである。
解析ソフト:i−Face model TDA31
<測定条件>
触針先端半径:0.5μm
測定視野(X方向):380μm ピッチ:1μm
測定視野(Y方向):280μm ピッチ:5μm
針圧:50μN
測定速度:0.1mm/s
カットオフ値:低域は−0.2mm、高域は無し
レベリング:全域
フィルター:ガウシアンフィルタ(2D)
倍率:10万倍
<粒子解析(複数レベル)条件>
出力内容設定:山粒子
ヒステリシス幅:5nm
スライスレベル等間隔:10nm。
本発明のフィルムは、エキスパンド時における均一拡張性を確保する観点から、平均破断伸度が500%以上900%以下であることが好ましい。平均破断伸度とは、長手方向(長手方向が不明な場合はフィルム面上で任意に定めた一方向)と、その方向からフィルム面内で右に45°、90°、135°回転させた各方向の計4方向の破断伸度の平均値をいう。平均破断伸度が500%以上であることにより、エキスパンド時に十分な拡張が得られ、さらにダイシング時の切りくず発生を軽減できる。一方、平均破断伸度が900%以下であることにより、ダイシング時にダイシングソーが半導体に十分な力を加えることが可能となる。上記観点から、フィルムの平均破断伸度は500%以上800%以下がより好ましく、700%以上800%以下がさらに好ましい。
破断伸度は、サンプルサイズを150mm(測定方向)×10mm長方形、初期引張チャック間距離を50mm、引張速度を300mm/分として、25℃の雰囲気下で引張試験を行って得られる荷重−歪曲線から算出することができる。引張試験機は測定が可能なものであれば公知のものから適宜選定することができ、例えば、“テンシロン”(登録商標)UCT−100(オリエンテック製)を好適に用いることができる。
平均破断伸度を500%以上900%以下又は上記の好ましい範囲とする方法は、例えば、樹脂Aの含有量を調整する方法を用いることができる。具体的には、フィルムを構成する成分における樹脂Aの比率を上げることにより、平均破断伸度を高くすることができる。また、平均破断伸度を500%以上900%以下又は上記の好ましい範囲とする方法として、Rmax/Raを、1.00<Rmax/Ra<8.00の範囲又は上記の好ましい範囲とする方法と同じ方法も用いることができる。
本発明のフィルムの厚みは、その効果を損なわない限り特に制限されないが、取り扱い性とダイシング時の切りくず発生軽減を両立する観点から、50μm以上250μm以下であることが好ましく、50μm以上220μm未満であることがより好ましい。フィルムの厚みを50μm以上とすることにより、取り扱い性を損なわない程度の剛性を確保することができ、フィルムの厚みを250μm以下とすることにより、ダイシング時の切りくずの発生を軽減することができる。なお、フィルムの厚みは、樹脂組成物を溶融押出してシート状に成型する際のスリット間隙を大きくすることや、圧延の線圧を小さくすることにより、大きくすることができる。
以下、本発明のフィルムの製造方法について具体的に説明する。本発明のフィルムの製造方法は、本発明のフィルムを製造するフィルムの製造方法であって、結晶化前に一対の金属ロールでシートの圧延を行う圧延工程を有することを特徴とする。ここでシートとは、フィルムの全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を20質量%以上75質量%以下含む樹脂シートをいい、圧延とは、2つのロールで挟み込むことでシートに線圧をかけて引き延ばすことをいう。また、結晶化前とは、シートの結晶化度が0%以上65%以下であることを意味し、結晶化度が0%であるとはシートが非晶状態であることをいう。
本発明のフィルムの製造方法は、結晶化前に一対の金属ロールでシートの圧延を行う圧延工程を有することが重要である。結晶化前に一対の金属ロールで圧延を行うことにより、シートに金属ロールの表面粗さを転写させながら分子を配向させることができるため、最終的に得られるフィルムのRmax(μm)、Ra(μm)を所望の範囲とすることができる。一方、シートの結晶化度が65%を超えると、圧延工程でシートが破断する場合や、金属ロールの表面粗さを転写させることができない場合がある。
シートの結晶化度を0%以上65%以下とする方法としては、例えば、樹溶融させた樹脂原料をシート状に押し出して冷却固化することによりシート化する際の、冷却温度を調整する方法が挙げられる。より具体的には、冷却温度を低くすることにより、結晶化度を低くすることができる。
シートの結晶化度は、以下の手順で測定することができる。先ず、フィルムを25mm×15mmの長方形状(各辺の方向は任意)にサンプリングする。得られたサンプルをフィルム厚み方向がアルミニウム製試料ホルダー表面の法線となるように貼り付け、X線回折装置を用いてX線の入射角度を変えながら、2θ−θ連続スキャンにて反射法で回折ピークを測定する。このときの測定条件は以下のとおりである。
測定範囲(2θ):5〜60°
測定ステップ(2θ):0.05°
積算時間:2秒。
次いで、得られた回折ピークについて、解析ソフトにより結晶性成分由来のピークと非晶性成分由来のピークを分離し、それぞれのピーク面積から以下の式1より結晶化度を算出する。解析ソフトは、目的とするピークの分離が可能なものであれば特に制限されず、公知のものを使用できる。このような解析ソフトとしては、例えば、JADE5.0、JADE 2010(MDI社)を用いることができる。
式1:結晶化度(%)=結晶性成分のピーク面積×100/(結晶性成分のピーク面積+非晶性成分のピーク面積)。
本発明のフィルムの製造方法においては、得られるフィルムの表面に粘着層を形成させる際のエア溜まりやエア抜け性不良を軽減する観点から、圧延工程における一対の金属ロールのうち、少なくとも一方の金属ロールの表面の平均粗さが0.1μm以上3.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2.0μm以下であることがより好ましい。
少なくとも一方の金属ロールの表面粗さを0.1μm以上とすることにより、フィルムの表面に粘着層を形成させる際のエア溜まりを、3.0μm以下とすることによりエア抜け性不良を軽減することができる。言い換えると、得られるフィルムの少なくとも片面のRmaxを容易に1.00<Rmax/Ra<8.00とし、Ra0.1<Ra<1.0とすることができる。
本発明のフィルムの製造方法においては、圧延工程におけるロール線圧を50kg/cm以上450kg/cm以下とすることが好ましく、100kg/cm以上400kg/cm以下とすることがより好ましく、200kg/cm以上400kg/cm以下とすることがさらに好ましい。ここで線圧とは、ロールへ係る荷重をロールの面長で割った値のことであり、油圧方式などで調整することができる。また、圧延工程におけるロール温度は、ポリプロピレン系樹脂を含むことから40℃以上150℃以下が好ましく、平均破断伸度を500%以上900%以下又は前記の好ましい範囲とする点も考慮すると、60℃以上100℃以下が好ましく、60℃以上85℃以下がより好ましい。
本発明のフィルムの製造方法においては、圧延工程前後におけるシートの厚みの変化率が10.0%以上60.0%以下であることが好ましく、20.0%以上40.0%以下がより好ましく、30.0%以上40.0%以下がさらに好ましい。圧延工程前後におけるシートの厚みの変化率とは、圧延前のシートの厚みと圧延により得られたフィルムの厚みとの差を、圧延前のシートの厚みで除して百分率で表した値をいう。圧延工程前後におけるシートの厚みの変化率を10.0%以上とすることにより、得られるフィルムの分子配向が適度に抑えられ、エキスパンド時に十分な拡張が得られる。一方、圧延工程前後におけるシートの厚みの変化率を60.0%以下とすることにより、ダイシング時にダイシングソーの力が十分に加わり、半導体のダイシングが容易となる。
以下、本発明のフィルムの製造方法について、具体的な例を挙げてより詳細に説明するが、本発明は係る例に限定して解釈されるものではない。
先ず、全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を20質量%以上75質量%以下含み、かつ樹脂Aを含む樹脂混合物を単軸押出機に供給し、200℃〜260℃で溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターで異物や変性ポリマーなどを除去した後、キャストドラム上で冷却固化して無配向シートを得る。キャストドラムの温度は、結晶化を抑制する観点から5℃以上50℃以下であると好ましい。
その後、圧延工程で無配向シートの圧延を行ってフィルムを得る。このときの線圧は50kg/cm以上450kg/cm以下とすることが好ましい。圧延時のロール温度は室温以上の任意の温度とすることができるが、ポリプロピレン系樹脂を含むことから40℃以上150℃以下が好ましく、平均破断伸度を500%以上900%以下又は前記の好ましい範囲とする点も考慮すると、60℃以上100℃以下が好ましく、60℃以上85℃以下がより好ましい。また、引き取り張力は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、圧延時のシワや弛み及びフィルムの変形を抑える観点から、0.1MPa以上1.5MPa以下とすることが好ましく、0.2MPa以上1.4MPa以下とすることがより好ましい。線圧の調整手段は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば油圧方式などで調整することができる。また、上下ロール間のクリアランスは、最終的に得られるフィルムの厚みに影響するために、得ようとするフィルムの厚みに応じて適宜設定することができる。
こうして得られた本発明のフィルムは、柔軟性、エキスパンド時の均一拡張性、及び耐熱性を兼ね備えたものとなり、半導体製造工程用基材、特にダイシング用原反フィルム等として好適に用いることができる。
以下、本発明の半導体加工用シートについて具体的に説明する。本発明の半導体加工用シートは、本発明のフィルムを含むことを特徴とする。半導体加工用シートとは、半導体加工の工程で用いることができるシートをいい、その具体例としては本発明のフィルムに粘着層を設けたダイシングテープ等が挙げられる。なお、粘着層を形成する組成物は本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、公知の組成物(例えば、アクリル共重合体を含むもの等)を用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
[測定及び評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示す条件で行った。
(1)フィルムの表面粗さ(Ra、Rmax)
surf−corder ET−4000A(小坂研究所製)を用いて、下記解析ソフト、測定条件、粒子解析(複数レベル)条件にてフィルムの表面の平均粗さ(Ra)、最大粗さ(Rmax)を測定した。測定は場所を変えて10回測定し、得られたそれぞれの測定値の平均値をフィルムの平均粗さ(Ra(μm))、フィルムの最大粗さ(Rmax(μm))とした。測定はフィルムの両面で行い、平均粗さ(Ra(μm))が大きい値となる面の値を、フィルムの表面粗さ(Ra(μm)、Rmax(μm))とした。
<解析ソフト>
i−Face model TDA31
<測定条件>
触針先端半径:0.5μm
測定視野(X方向):380μm ピッチ:1μm
測定視野(Y方向):280μm ピッチ:5μm
針圧:50μN
測定速度:0.1mm/s
カットオフ値:低域は0.2mm、高域は無し
レベリング:全域
フィルター:ガウシアンフィルタ(2D)
倍率:10万倍
<粒子解析(複数レベル)条件>
出力内容設定:山粒子
ヒステリシス幅:5nm
スライスレベル等間隔:10nm。
(2)金属ロールの表面粗さ(平均粗さ、最大粗さ)
金属ロールの表面を表面粗さ計SJ−210(Mitutoyo社製)を用いて下記条件にて平均粗さ、最大粗さを測定した。測定は場所を変えて10回測定し、得られたそれぞれの値の平均値をそれぞれ金属ロールの平均粗さ(μm)、最大粗さ(μm)とした。
<測定条件>
触針先端半径:2.0μm
測定範囲:360μm
針圧:0.75mN
測定速度:0.25mm/s
カットオフ値:0.25
フィルター:ガウシアンフィルタ(2CR75)。
(3)平均破断伸度
フィルムを150mm(長手方向)×10mmの長方形状に切り出し、長手方向の破断伸度を測定するサンプルを得た。続いて、引張試験機“テンシロン”(登録商標)UCT−100(オリエンテック製)を用いて、初期引張チャック間距離を50mm、引張速度を300mm/分として、25℃の雰囲気下で当該サンプルについて引張試験を行い、得られた荷重−歪曲線から破断伸度(%)を求めた。この測定を合計で5回繰り返し、平均値を算出して長手方向の破断伸度(%)とした。さらに、同様の手順により、長手方向から右/左に45°、90°、135°回転させた各方向の破断伸度(%)も測定した。その後、得られた4方向の破断伸度(%)の平均値をフィルムの平均破断伸度(%)とした。
(4)フィルム厚み、各層の厚み、積層構成
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、ミクロトームでフィルム面と垂直な断面を切り出した。該断面をライカマイクロシステムズ(株)製金属顕微鏡“Leica”(登録商標)DMLMを用いて、フィルムの断面を倍率100倍の条件で透過光を写真撮影して、フィルム厚み(μm)及び各層の厚み(μm)を求め、さらに積層構成を特定した。なお、フィルム厚み(μm)及び各層の厚み(μm)の測定はフィルムの異なる位置で5回行い、その平均値を採用した。
(5)圧延工程前後におけるシートの厚みの変化率
圧延前後のシート及びフィルムについて(4)の測定方法で厚み(μm)の測定を行った。その後、圧延前のシートの厚みから圧延後のフィルムの厚みを差し引いた値を求め、これを圧延前のシートの厚みで除して得られた値を、圧延工程前後におけるシートの厚みの変化率(%)とした。
(6)結晶化度
25mm×15mm(各辺の方向は任意)サイズの圧延工程前のシートをサンプリングし、これを厚み方向がアルミニウム製試料ホルダー表面の法線となるように貼り付けた。その後、X線回折装置(理学電機社製4036A2、X線源:CuKa線(Niフィルター使用)、出力40kV−30mA)を用いて、X線の入射角度を変えながら2θ−θ連続スキャンにて反射法で測定した。なお、測定条件は下記のとおりとした。
・測定範囲(2θ):5〜60°
・測定ステップ(2θ):0.05°
・積算時間:2秒
その後、測定により得られた回折ピークについて、解析ソフト(JADE5.0、MDI社)により結晶性成分由来のピーク((040)面+(110)面)と非晶性成分由来のピークを分離し、それぞれのピーク面積から次式により結晶化度(%)を算出した。位置を変えて同様の測定を5回行い、得られた値の平均値を圧延工程前のシートの結晶化度(%)として採用した。
結晶化度(%)=結晶性成分のピーク面積×100/(結晶性成分のピーク面積+非晶性成分のピーク面積)。
(7)粘着層の転写性
アクリル共重合体(2−エチルヘキシルアクリレート/酢酸ビニル/アクリル酸/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=18.5/75/1/5/0.5(質量比)、Mw=60万、Mw/Mn=8.2、Tg=5℃)100質量部に対し、エネルギー線硬化性化合物として2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(Mw=8,000)を60質量部、6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(Mw=2,000)を60質量部配合したエネルギー線硬化型粘着成分に、光重合開始剤(“イルガキュア”(登録商標)184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製))3質量部、多価イソシアナート化合物(“コロネート”(登録商標)L(日本ポリウレタン社製))3質量部を配合(すべて固形分換算による配合比)し、粘着層用組成物とした。これを100mm×100mmサイズの厚み100μmのPETフィルム“ルミラー”(登録商標)S10(東レ社製)に塗布した後、100℃で1分間乾燥させて厚み10μmの粘着層を有した複合PETフィルムを作製した。次いで、各実施例及び各比較例のフィルムの、圧延により金属ロールの表面を転写させた面(上ロールに接触した面)に、粘着層が接するように複合PETフィルムを重ね、上下ゴムロールのラミネーターで温度50℃、線圧25g/cm、速度2m/分でラミネートし、各実施例及び各比較例のフィルムに粘着層を転写した。転写後のフィルムを用いて、下記の基準で粘着層の転写性を評価した。なお、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量、Tgはガラス転移温度である。
A:エア溜まりが5個未満発生した。
B:エア溜まりが5個以上10個未満発生した。
C:エア溜まりが10個以上発生した。
(8)ダイシング性
(7)に記載のとおり調製した粘着層用組成物を、任意に切り出した400mm×400mmの正方形のフィルム表面に、ワイヤーバーコート法で厚み約10μmになるように塗布した後、100℃で1分間乾燥させて粘着層を有するフィルムを作製した。得られたサンプルに直径300mmのシリコンウェハを貼り付けてリングフレームに固定し、10mm×10mmのチップ単位にダイシングを行った。ダイシング後のサンプルを観察し、切りくずの発生状況を下記の基準で評価した。ダイシング性は、B以上を合格とした。
S:切りくずの発生が全くなかった。
A:切りくずの発生が2箇所以下であった。
B:切りくずの発生が2箇所より多く6箇所以下であった。
C:切りくずの発生が6箇所より多かった。
(樹脂)
フィルムの製造に用いた樹脂、及び粒子は以下のとおりである。
<ポリプロピレン系樹脂>
結晶性ポリプロピレン プライムポリマー(株)製、F113G
<樹脂A>
(樹脂A1)
エチレン−オクテン−1共重合体 デュポンダウ社製“エンゲージ”(登録商標)EG8200
(樹脂A2)
水添スチレン・ブタジエン共重合体(HSBR) JSR社製“DYNARON”(登録商標)1320P
<粒子>
シリコーン樹脂微粒子“トスパール”(登録商標)120(タナック社製:平均粒径2.0μm)。
(実施例1〜17)
表1に示す組成に調整したA層を得るための原料及びB層を得るための原料を、260℃に加熱された別々のベント式二軸押出機にそれぞれ投入して溶融させ、フィードブロック積層装置により積層比率が1/8/1になるようにA層/B層/A層をこの順に積層させた。その後、この溶融樹脂積層体をTダイよりシート状に押出し、ワイヤー式静電印加装置を用いて押し出されたシートの全幅に電圧を印加して、20℃に冷却されたキャスティングドラムに密着させて冷却固化させることで300μmの積層シートを得た。次いで、この積層シートを、表面の平均粗さと最大粗さが表1に示すとおりである直径300mmの硬質クロム綱メッキロールを上下に備えた縦型ロールプレステスト装置に供給し、ロール間隔を200μm、ロール回転速度を1m/分として表1に示す圧延条件で圧延して、フィルムを作製した。得られたフィルムの各特性の評価結果を表1に示す。
(比較例1〜6)
各層を得るための原料を表1の組成とした以外は実施例1と同様にして積層シートを得た。次いで、逐次二軸延伸装置にて、延伸温度120℃、倍率1.25倍の条件で積層シートを長手方向及び幅方向に延伸してフィルムを得た。得られたフィルムの各特性の評価結果を表1に示す。
Figure 2021116351
Figure 2021116351
本発明により、柔軟性、エキスパンド時の均一拡張性と耐熱性を兼ね備えたフィルム及びその製造方法を提供することができ、本発明のフィルムは半導体製造工程用基材として好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を20質量%以上75質量%以下含み、
    表面の最大粗さをRmax(μm)、表面の平均粗さをRa(μm)としたときに、少なくとも一方の表面において、1.00<Rmax/Ra<8.00であり、かつ0.1<Ra<1.0であることを特徴とする、フィルム。
  2. 平均破断伸度が500%以上900%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルム。
  3. 前記ポリプロピレン系樹脂に非相溶な樹脂(樹脂A)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムを製造するフィルムの製造方法であって、結晶化前に一対の金属ロールでシートの圧延を行う圧延工程を有することを特徴とする、フィルムの製造方法。
  5. 前記圧延工程前後におけるシートの厚みの変化率が10.0%以上60.0%以下であることを特徴とする、請求項4に記載のフィルムの製造方法。
  6. 前記圧延工程における一対の金属ロールのうち、少なくとも一方の金属ロールの表面の平均粗さが0.1μm以上3.0μm以下であることを特徴とする、請求項4又は5に記載のフィルムの製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムを含むことを特徴とする、半導体加工用シート。
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